説明

電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法

【課題】空洞内に位置する可動部を品質良く作動できる電子装置を提供する。
【解決手段】基板2上の側壁部23及び第1封止層30に覆われた空洞部33内に位置する可動部7bと、空洞部33内に設置され空洞部33内の気体を吸着する第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35と、基板2と対向する場所に位置する第1封止層30及び第2封止層32と、を備え、第1封止層30は第1孔30a及び第2孔30bを有し、第2封止層32は第1孔30a及び第2孔30bを封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置、電子機器及び電子装置の製造方法にかかわり、特に、可動部を有する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を利用して形成された機能素子が基板上に設けられた空洞部に配置された電子装置が知られている。機能素子はマイクロ振動子やマイクロセンサー等であり、微小な構造体が振動や変形等の動作を行う。そして、機能素子が動作し易くするために空洞部内は減圧されている。
【0003】
空洞部を形成する方法が特許文献1に開示されている。これによると、基板上にMEMS構造体を形成し、その上に層間絶縁膜を形成する。その後、貫通孔を有する第1被覆層がMEMS構造体の周囲の層間絶縁膜を覆うように形成する。続いて、第1被覆層の貫通孔を通してエッチング液を流動させることにより層間絶縁膜を除去してMEMS構造体の可動部を可動可能にする。最後に第1被覆層の貫通孔を第2被覆層で覆うことにより、MEMS構造体の周囲に密閉された空洞が形成される。この方法を用いることにより、薄く微細な空洞部とその内部のMEMS構造体とを形成することができる。
【0004】
密閉空間内にゲッター膜を備えたMEMSデバイスが特許文献2に開示されている。凹部が形成された基板とゲッター膜が形成された基板とを接合する。これにより、凹部が密閉空間となり密閉空間にゲッター膜が配置される。そして、密閉空間にMEMSデバイスが配置される。ゲッター膜は密閉空間に放出されるガスや残留ガスを吸収してMEMSデバイスの性能を維持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−105411号公報
【特許文献2】特開2009−6428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
第1被覆層の貫通孔を通してエッチング液を流動させることにより層間絶縁膜を除去する。その後、エッチング液を洗浄して洗い流した後で乾燥する。続いて、空洞を減圧して密閉する。電子装置を加熱するとき空洞内に粘性を有する気体が発生することがある。これにより、MEMS構造体の可動部が気体の抵抗を受けて、可動部が動き難くなることがある。そこで、空洞内にMEMS構造体が形成された電子装置において、可動部を品質良く作動させることができる電子装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる電子装置であって、基板上の被覆部に覆われた空洞部内に位置する可動部と、前記空洞部内に設置され前記空洞部内の気体を吸着するゲッター部と、前記基板と対向する場所の前記被覆部に位置する蓋部と、を備え、前記蓋部は、開口部を有する第1蓋部と前記開口部を封止する第2蓋部とを有することを特徴とする。
【0009】
この電子装置によれば、被覆部に覆われた空洞部が基板上に設置されている。その空洞部内に可動部が位置している。蓋部は第1蓋部と第2蓋部とを有している。第1蓋部は開口部を有している。該開口部からエッチング液を流入させて被覆部内をエッチングすることにより被覆部内に空洞部を形成することができる。本適用例の方法は、2つの基板を接合して基板間に空洞を形成する方法に比べて薄く装置にすることができる。空洞部内にはゲッター部が設置されている。そして、空洞部内の気体をゲッター部が吸着する。ゲッター部は第1蓋部の開口部を通して空洞部に設置され、開口部は第2蓋部により封止される。従って、空洞部を形成するときに使用する液体が加熱により気化するときにもゲッター部が気体を吸着する。その結果、可動部を品質良く作動させることができる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる電子装置において、前記開口部は第1孔と、前記可動部との距離が前記第1孔より離れている第2孔と、を有し、前記第1孔の径は前記第2孔の径より小さいことを特徴とする。
【0011】
この電子装置によれば、可動部と近い場所に位置する第1孔の径は小さく、可動部と離れた場所に位置する第2孔の径は大きくなっている。ゲッター部を形成するとき開口部を通してゲッター部の材料を飛行させて堆積させる。第1孔の径は第2孔の径より小さいので、第1孔を通過するゲッター部の材料の量は第2孔を通過するゲッター部の材料の量より少なくなる。従って、可動部にゲッター部の材料が付着する可能性を小さくし、可動部に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、ゲッター部の材料が可動部に付着することにより可動部の作動状態が変動することを防止することができる。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる電子装置において、前記空洞部は前記可動部が位置する第1空洞部と、前記第1空洞部と連結し前記可動部が位置しない第2空洞部と、を有し、前記第2空洞部に位置する前記ゲッター部の体積は前記第1空洞部に位置する前記ゲッター部の体積より大きいことを特徴とする。
【0013】
この電子装置によれば、可動部が位置する第1空洞部におけるゲッター部の体積は小さく、可動部が位置しない第2空洞部におけるゲッター部の体積は大きくなっている。従って、可動部にゲッター部の材料が付着する可能性を小さくし、可動部に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、ゲッター部の材料が可動部に付着することにより可動部の作動状態が変動することを防止することができる。
【0014】
[適用例4]
上記適用例にかかる電子装置において、前記可動部はカンチレバー型振動子であることを特徴とする。
【0015】
この電子装置によれば、可動部はカンチレバー型振動子となっている。従って、可動部の形状を調整することにより所望の固有振動数にすることができる。その結果、可動部を所望の周波数で振動させることができる。そして、可動部は気体の影響を受け難くなっている為、可動部を品質の良い周波数で振動させることができる。
【0016】
[適用例5]
上記適用例にかかる電子装置において、前記可動部を用いて波形を形成する発振回路を有することを特徴とする。
【0017】
この電子装置によれば、電子装置は発振回路を備えており、発振回路は可動部を用いて波形を形成することができる。そして、可動部は気体の影響を受け難くなっている為、電子装置は品質の良い波形を出力することができる。
【0018】
[適用例6]
本適用例にかかる電子機器は、発振回路を備えた電子機器であって、前記発振回路に上記に記載の電子装置を用いたことを特徴とする。
【0019】
この電子機器によれば、空洞部にゲッター部を備えている。従って、加熱時に空洞内に気体が発生するときにも可動部が気体の影響を受け難い電子装置を備えた電子機器とすることができる。
【0020】
[適用例7]
本適用例にかかる電子装置の製造方法であって、基板上及び前記基板上に形成された可動部上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、前記可動部を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する第1蓋部を形成する蓋部形成工程と、前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記第1蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、前記空洞部にゲッター部を設置するゲッター部形成工程と、前記開口部を封止する封止工程と、を有することを特徴とする。
【0021】
この電子装置の製造方法によれば、層間絶縁膜形成工程において基板上及び基板上に形成された可動部上に層間絶縁膜を形成している。側壁形成工程では可動部を囲むように層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成している。そして、蓋部形成工程では側壁部と側壁部に囲まれた層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する第1蓋部を形成している。保護膜形成工程では側壁部を取り巻く層間絶縁膜上に保護膜を形成している。そして、空洞部形成工程では開口部からエッチング液を流入させて基板と側壁部と蓋部とに囲まれた場所の層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成している。ゲッター部形成工程では空洞部にゲッター部を設置している。そして、封止工程では開口部を封止している。
【0022】
基板上には可動部が形成され、可動部を取り囲んで側壁部が配置される。側壁部と重ねて蓋部が形成され、側壁と蓋部とに覆われた場所には空洞部が形成される。従って、可動部の周囲は空洞部となる。側壁及び蓋部は積層して形成することから薄い構造にすることができる。空洞部にはゲッター部が設置される。そして、空洞部内の気体をゲッター部が吸着する。ゲッター部は第1蓋部の開口部を通して空洞部に設置され、開口部は封止される。従って、空洞部を形成するための液体が加熱により気化するときにもゲッター部が気体を吸着する。その結果、可動部を品質良く作動させることができる。
【0023】
[適用例8]
上記適用例にかかる電子装置の製造方法において、前記開口部は第1孔と、前記可動部との距離が前記第1孔より離れている第2孔と、を有し、前記第1孔の径は前記第2孔の径より小さいことを特徴とする。
【0024】
この電子装置の製造方法によれば、可動部と近い場所に位置する第1孔の径は小さく、可動部と離れた場所に位置する第2孔の径は大きくなっている。ゲッター部を形成するとき開口部を通してゲッター部の材料を飛行させて堆積させる。第1孔の径は第2孔の径より小さいので、第1孔を通過するゲッター部の材料の体積は第2孔を通過するゲッター部の材料の体積より小さくなる。従って、可動部にゲッター部の材料が付着する可能性を少なくし、可動部に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、ゲッター部の材料が可動部に付着することにより可動部の作動状態が変動することを防止することができる。
【0025】
[適用例9]
上記適用例にかかる電子装置の製造方法において、前記ゲッター部形成工程では前記第2孔の軸方向から前記ゲッター部の材料を飛行させて設置させ、前記封止工程では前記第2孔の軸方向と交差する方向から封止する材料を飛行させて前記第2孔を封止することを特徴とする。
【0026】
この電子装置の製造方法によれば、ゲッター部形成工程では第2孔の軸方向からゲッター部の材料を飛行させて設置させている。これにより、ゲッター部が第2孔の孔に付着せずに通過させ易くすることができる。従って、生産性良くゲッター部を形成することができる。封止工程では第2孔の軸方向と交差する方向から封止する材料を飛行させて設置させている。これにより、ゲッター部の材料が第2孔の孔に付着させ易くすることができる。従って、生産性良く第2孔を封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態にかかわるレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図。
【図2】(a)及び(b)は、レゾネーターの要部模式断面図。
【図3】(a)は、レゾネーターの回路構成を示すブロック図、(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャート。
【図4】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図5】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図6】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図7】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図8】レゾネーターの製造方法を説明するための模式図。
【図9】第2の実施形態にかかわり、(a)は、レゾネーターの要部模式平断面図。(b)は、レゾネーターの要部模式断面図。
【図10】第3の実施形態にかかわるレゾネーターの要部模式平断面図。
【図11】第4の実施形態にかかわる時計の構成を示す電気ブロック図。
【図12】変形例にかかわり、(a)は、スイッチの構成を示す要部模式断面図、(b)は、走査ミラーの構成を示す概略斜視図、(c)は、ジャイロスコープの構成を示す要部模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、振動素子を空洞部内に備えて所定の周波数の波形を出力するレゾネーターとこのレゾネーターを製造する特徴的な例について、図1〜図8に従って説明する。尚、レゾネーターは、振動素子と振動素子を駆動する駆動回路を備え、発振波形を出力する装置を示している。
【0029】
(レゾネーター)
図1はレゾネーターの構成を示す概略分解斜視図である。図2(a)は図1のレゾネーターのA−A’線に沿う要部模式断面図であり、図2(b)は図1のレゾネーターのB−B’線に沿う要部模式断面図である。最初に電子装置としてのレゾネーター1について図1及び図2に従って説明する。レゾネーター1は長方形の基板2を備えている。基板2の長手方向をX方向とし、基板2の平面方向でX方向と直交する方向をY方向とする。基板2の厚み方向をZ方向とする。基板2の材質は特に限定されないが、シリコン基板等の半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板、サファイア基板、合成樹脂基板等の各種の基板を用いることができる。基板2上に半導体による集積回路を形成するときには、シリコン基板等の半導体基板を用いる。本実施形態では、例えば、シリコン基板を採用している。基板2の厚みは特に限定されないが本実施形態では例えば、50μm〜600μmの厚みを採用している。
【0030】
基板2上には第1下地層3が形成されている。第1下地層3としては、例えば、トレンチ絶縁層、LOCOS(Local oxidation of silicon)絶縁層、セミリセスLOCOS絶縁層を用いることができる。第1下地層3は、基板2上に形成された複数の素子間を電気的に絶縁する絶縁層となっている。
【0031】
第1下地層3の上の一部には第2下地層4が形成されている。第2下地層4の材質は、特に限定されないが二酸化シリコンの膜をエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材質であれば良い。例えば、第2下地層4の材質に窒化シリコンを用いることができる。これにより、第2下地層4は、第2下地層4上にてエッチング処理を行なうときのエッチングストッパー層として機能することができる。
【0032】
第2下地層4上の中央付近には機能素子としての振動素子5が設置されている。振動素子5は固定電極6と可動部としての可動電極7とを備えている。固定電極6は第2下地層4上に設置されている。可動電極7は固定部7aと可動部7bと支持部7cとを有する。固定部7aは第2下地層4上に形成され、可動部7bは固定電極6に対向する場所に配置されている。そして、支持部7cは、可動部7bと固定部7aとを連結するように配置され可動部7bを支持している。可動部7bは支持部7cにより支持された片持ち梁の構造になっている。これにより、可動部7bを振動させることにより、可動部7bと固定電極6との距離を変動させることができる。従って、振動素子5はカンチレバー型振動子となっている。
【0033】
第2下地層4上には配線としての第1配線8と配線としての第2配線9とが設置されている。そして、第1配線8は固定電極6と接続され、第2配線9は可動電極7と接続されている。第1下地層3上には駆動回路10が設置され、第2下地層4上には第1中間端子11及び第2中間端子12が設置されている。第1配線8の一端は駆動回路10と接続され、第1配線8の別の他端は第1中間端子11と接続されている。第2配線9の一端は駆動回路10と接続され、第2配線9の別の他端は第2中間端子12と接続されている。そして、第1中間端子11と第2中間端子12との間の電圧を検出することにより、振動素子5に印加される電圧信号を検出することができる。
【0034】
駆動回路10はトランジスターやキャパシター等の電気素子によって構成され、振動素子5に駆動信号を出力する。第1下地層3上には第3中間端子13、第4中間端子14、第5中間端子15が設置されている。そして、第3中間端子13と駆動回路10とは配線13aにより接続され、第4中間端子14と駆動回路10とは配線14aにより接続されている。同様に、第5中間端子15と駆動回路10とは配線15aにより接続されている。第3中間端子13はグランドライン用の端子であり、第4中間端子14は電源供給用の端子である。そして、第5中間端子15は信号出力用の端子である。
【0035】
駆動回路10は所定の周波数の電圧信号を形成する回路であり、形成した電圧信号を第5中間端子15に出力する。換言すれば、レゾネーター1は、振動素子5と駆動回路10とが同じ基板2上に併設された発振器となっている。レゾネーター1のうち駆動回路10以外の部分を発振装置1aとする。
【0036】
第2下地層4上において振動素子5のY方向側には第1包囲壁16が配置され、振動素子5の−Y方向側には第2包囲壁17が配置されている。第1包囲壁16の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第1包囲壁16の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。同様に、第2包囲壁17の一端は第1配線8の近くの場所まで延在し、第2包囲壁17の別の他端は第2配線9の近くの場所まで延在して配置されている。
【0037】
第1配線8を挟むように第1包囲壁16及び第2包囲壁17が接近して配置されている場所を第1貫通部8aとする。第1配線8において第1貫通部8aよりも振動素子5から離れる場所には絶縁膜8bが設置されている。絶縁膜8bは第1配線8の表面を酸化して形成された膜となっている。同様に、第2配線9を挟むように第1包囲壁16及び第2包囲壁17が接近して配置されている場所を第2貫通部9aとする。第2包囲壁17の近くには第6中間端子18が設置され、第2包囲壁17と第6中間端子18とは配線18aによって接続されている。さらに、第6中間端子18と駆動回路10とは配線18bによって接続されている。
【0038】
そして、第1貫通部8aでは第1配線8を覆うように層間絶縁膜としての第1絶縁層19が配置されている。そして、第1貫通部8aでは第1絶縁層19は第1配線8と第1包囲壁16との間及び第1配線8と第2包囲壁17との間に配置されている。これにより、第1配線8は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と絶縁される。
【0039】
同様に、第2貫通部9aでも第2配線9を覆うように第1絶縁層19が配置されている。そして、第2貫通部9aでは第1絶縁層19は第2配線9と第1包囲壁16との間及第2配線9と第2包囲壁17との間に配置されている。これにより、第2配線9は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と絶縁される。
【0040】
振動素子5、第1配線8、第2配線9、第1中間端子11、第2中間端子12、第6中間端子18、配線18a,18b、第1包囲壁16及び第2包囲壁17の各部材の材質は同じ材質となっている。この材質は、電気伝導性があり二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難ければ良く特に限定されない。これらの材質には金属や電気伝導性のあるシリコン等を採用することができる。本実施形態では例えば、燐やホウ素等の不純物をドーピングすることにより電気伝導性が付与された多結晶シリコンを用いている。第3中間端子13〜第5中間端子15、配線13a〜配線15aの各部材の材質は導電性のある材料であればよく、例えば、多結晶シリコンや金属等を用いることができる。本実施形態では、例えば、アルミニウム銅合金を採用している。
【0041】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第1貫通部8a及び第2貫通部9aにおける第1絶縁層19の上には側壁部としての第3包囲壁20が配置されている。さらに、第3包囲壁20と重ねて側壁部としての第4包囲壁21が配置され、第4包囲壁21と重ねて側壁部としての第5包囲壁22が配置されている。第3包囲壁20、第4包囲壁21、第5包囲壁22は四角形の枠形状をしており、振動素子5の周囲を取り囲むように配置されている。第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20、第4包囲壁21、第5包囲壁22は振動素子5を取り囲む側壁部23を構成している。
【0042】
第3包囲壁20、第4包囲壁21、第5包囲壁22の材質は、電気伝導性と構造的強度とがあり、二酸化シリコンのエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く、多結晶シリコン、アルミニウム、銅、タングステン、チタン等の金属やその合金を用いることができる。本実施形態では例えば、アルミニウムと銅との合金を採用している。
【0043】
第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20、第4包囲壁21及び第5包囲壁22は共に電気伝導性のある材料からなり、電気的に接続している。そして、第6中間端子18は第2包囲壁17と電気的に接続している。従って、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20、第4包囲壁21及び第6中間端子18は同じ電位となる。第1配線8は第1絶縁層19を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20に囲まれている。第1絶縁層19は電気絶縁性のある材質からなっている。これにより、第1配線8は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20と電気的に絶縁されている。同様に、第2配線9も第1絶縁層19を介して第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20に囲まれている。これにより、第2配線9は第1包囲壁16、第2包囲壁17、第3包囲壁20と電気的に絶縁される。
【0044】
側壁部23の周囲には第1絶縁層19、第2絶縁層24、第3絶縁層25がこの順に積層された層間絶縁膜としての層間絶縁膜26が配置されている。第1絶縁層19は第1包囲壁16及び第2包囲壁17の間から側壁部23の周囲にかけて設置されている。層間絶縁膜26の材質は電気絶縁性があってエッチング液によって除去可能であれば良く、例えば、二酸化シリコンを用いることができる。
【0045】
第1中間端子11〜第5中間端子15及び第6中間端子18の上には各端子と重ねて第1貫通電極27が配置され、第1貫通電極27と重ねて第2貫通電極28及び第3貫通電極29がこの順に配置されている。第1貫通電極27、第2貫通電極28、第3貫通電極29は導電体でありそれぞれ第1絶縁層19、第2絶縁層24、第3絶縁層25を貫通する電極となっている。第1貫通電極27〜第3貫通電極29の材質は、例えば、側壁部23と同じ材質を用いることができる。
【0046】
側壁部23の上側には側壁部23に蓋をするように被覆部及び第1蓋部としての第1封止層30が配置されている。第1封止層30には開口部としての第1孔30a及び第2孔30bが複数形成されている。第1孔30a及び第2孔30bの数及び大きさは特に限定されない。本実施形態では例えば、第1封止層30に12個の第1孔30aと16個の第2孔30bとが形成されている。第1孔30aの径は第2孔30bより小さい径となっている。そして、第1孔30aは第2孔30bより振動素子5に近い場所に配置されている。
【0047】
第1封止層30の材質は電気伝導性と構造的強度があり、二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材質で有れば良く特に限定されない。第1封止層30の材質には各種金属を用いることができる。本実施形態では例えば、チタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層がこの順で積層された積層構造を採用している。
【0048】
第1封止層30上の外周に位置する部分と第3絶縁層25とに重ねて保護膜31が積層されている。この保護膜31は第1孔30a及び第2孔30bを塞がないように配置される。保護膜31の材質は二酸化シリコンをエッチングするエッチング液に対して腐食され難い材料であれば良く、特に限定されない。保護膜31の材質としてTEOS(テトラ・エトキシ・シラン)酸化膜、窒化シリコン等を用いることができる。本実施形態では例えば、保護膜31の材質にTEOS酸化膜と窒化シリコンの積層膜を採用している。
【0049】
第1封止層30と重ねて第2蓋部としての第2封止層32が積層されている。第2封止層32は第1封止層30の第1孔30a及び第2孔30bを塞いでいる。第2封止層32の材質としては第1孔30a及び第2孔30bを塞げる強度のある膜を形成でき、ゲッター効果を有する材料であれば良く、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35と同じ材料を用いている。
【0050】
第2下地層4、側壁部23、第1封止層30に囲まれて密閉された場所は空洞部33となっている。側壁部23、第1封止層30は空洞部33を覆う被覆部となっている。そして、振動素子5は空洞部33に設置されている。空洞部33の気圧は減圧されている。これにより、可動電極7の可動部7bは気体による抵抗が小さくなるので振動し易くなっている。そして、第1封止層30及び第2封止層32は、空洞部33が減圧した状態で空洞部33を封止する封止部材として機能する。
【0051】
第2下地層4上において第1包囲壁16及び第2包囲壁17に囲まれた場所にはゲッター部を構成する第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が設置されている。第1ゲッター部34は振動素子5の周囲に配置され、第2ゲッター部35は第1包囲壁16及び第2包囲壁17に沿って配置されている。そして、第1ゲッター部34は第2ゲッター部35より小さな体積となっている。第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は空洞部33に残留する気体や空洞部33へ放出される気体を吸引する部材である。
【0052】
第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35の材質は非蒸発型で気体を吸着させれば良く特に限定されない。第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35の材質にはチタン、ジルコニウム、ジルコニウム−チタン合金、ジルコニウム−アルミニウム合金、ハフニウム、バナジウム、アルミニウム、タンタル、タングステン、モリブデン、TiN(窒化チタン)、希土類金属の混合物であるLn(ランタノイド)を含んでなるLn−Ni−Co−Al−Mn系の合金、Pd(パラジウム)系合金、V(バナジウム)系合金、Mg(マグネシウム)系合金、Ca(カルシウム)系合金、ホウ素(B)、コバルト(Co)、ストロンチウム(Sr)、トリウム(Th)等を用いることができる。さらに好適には窒化チタン、ジルコニウム、ジルコニウム−チタン合金、ジルコニウム−アルミニウム合金を用いることができる。本実施形態では、例えば、窒化チタンを採用している。
【0053】
第3貫通電極29上には電極パッド36が設置され、保護膜31は電極パッド36を露出するように配置されている。保護膜31及び第2封止層32上には樹脂層37が積層されている。樹脂層37は電極パッド36と重ならないように配置される。該電極パッド36上から樹脂層37上にかけて配線38が設置されている。そして、配線38上には外部端子39が設置され、外部端子39は配線38と電気的に接続されている。
【0054】
樹脂層37の材質としては、ポリイミド樹脂、シリコン変性ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン変性エポキシ樹脂、BCB(ベンゾシクロブテン)、PBO(ポリベンゾオキサゾール)等の樹脂を好適に用いることができる。樹脂層37の膜厚は特に限定されないが、例えば、10μm以上が好ましい。これにより、レゾネーターを実装する際に樹脂層37が破損しないように応力を吸収することができる。
【0055】
配線38の材質は特に限定されず電気伝導性を有する材質であれば良い。配線38には、例えば、チタン−タングステン合金層、銅層がこの順で積層された金属層や銅層、クロム層、アルミニウム層等の金属層の単層構造やこれらの層を積層した積層構造を用いてもよい。
【0056】
外部端子39の材質は特に限定されないが、電気伝導性を有していれば良く、各種類の金属を用いることができる。本実施形態では例えばハンダを採用している。外部端子39は略球状に形成されている。
【0057】
配線38及び樹脂層37上にレジスト層40が積層されている。レジスト層40は外部端子39の一部が露出するように形成されている。レジスト層40は配線38の酸化や腐食を防止し、塵等による電気的な不良を防ぐことができる。
【0058】
レゾネーター1は例えば上記のようにチップ状にした半導体基板からなる基板2の上方に外部端子39を直接設けることができる。そのため、レゾネーター1のパッケージサイズを、半導体チップとほぼ等しくすることができる。
【0059】
駆動回路10は第1配線8を介して固定電極6と接続され、第2配線9を介して可動電極7と接続されている。駆動回路10が振動素子5に電圧を印加することにより、固定電極6と可動電極7との間には静電気が作用する。そして、振動素子5に印加する電圧を変動させることにより可動電極7が振動する。これにより、固定電極6と可動電極7との間の静電容量を変動させることができる。そして、静電容量が変動する周波数特性は可動電極7の固有振動数によって設定される。従って、駆動回路10は振動素子5を用いて特定の周波数の電圧波形を形成することが可能になっている。
【0060】
空洞部33内は減圧されていることから、空気が充填されているときに比べて可動電極7は振動し易くなっている。さらに、空洞部33には第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が設置されていることにより、気体が吸着され真空度が高くなっている。従って、可動電極7はさらに振動し易くなっている。これにより駆動回路10は周波数変動が少なく、位相の変動が少なく、波形の変動が少ない品質の良い電圧波形を出力することができる。第3包囲壁20、第4包囲壁21、第5包囲壁22及び第1封止層30は電気伝導性があり第6中間端子18を通じて所定の電圧に維持されている。従って、レゾネーター1の外部から雑音となる電磁波が伝播するときにも、側壁部23及び第1封止層30が電磁波の伝播を遮ることができる。その結果、振動素子5は雑音となる電磁波の影響を受け難くすることができる。
【0061】
図3(a)はレゾネーターの回路構成を示すブロック図である。図3(a)に示すように、レゾネーター1が備える駆動回路10は発振回路42と波形形成回路43とを有している。発振回路42は振動素子5と接続され、所定の周波数の波形を形成する回路となっている。そして、波形形成回路43は発振回路42が出力する波形を分周して波形の周波数を変更したり、波形の形状を変更する機能を備えている。例えば、三角波、矩形波、パルス波等の波形を出力する。波形形成回路43は、発振回路42が出力する波形を分周することにより発振回路42が出力する波形の周波数より低い周波数の波形を出力することが可能となっている。
【0062】
(レゾネーターの製造方法)
次に上述したレゾネーター1の製造方法について図3(b)〜図8にて説明する。図3(b)は、レゾネーターの製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図8はレゾネーターの製造方法を説明するための模式図である。尚、駆動回路10、第3中間端子13〜第5中間端子15、配線13a〜配線15aの製造方法は公知であり説明を省略する。
【0063】
図3(b)のフローチャートにおいて、ステップS1は配線形成工程に相当し、基板上に配線、中間端子、第1包囲壁及び第2包囲壁を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は第1層間絶縁膜形成工程に相当し、振動素子及び第1絶縁層を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は第1側壁形成工程に相当し、第3包囲壁を形成する工程である。次にステップS4に移行する。
【0064】
ステップS4は第2層間絶縁膜形成工程に相当し、第1絶縁層に重ねて第2絶縁層を形成する工程である。次にステップS5に移行する。ステップS5は第2側壁形成工程に相当し、第3包囲壁に重ねて第4包囲壁を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は第3層間絶縁膜形成工程に相当し、第2絶縁層に重ねて第3絶縁層を形成する工程である。ステップS2の第1層間絶縁膜形成工程、ステップS4の第2層間絶縁膜形成工程、ステップS6の第3層間絶縁膜形成工程により層間絶縁膜形成工程が構成されている。次にステップS7に移行する。ステップS7は第3側壁形成工程に相当し、第4包囲壁に重ねて第5包囲壁を形成する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS3の第1側壁形成工程、ステップS5の第2側壁形成工程、ステップS7の第3側壁形成工程により側壁形成工程が構成されている。
【0065】
ステップS8は蓋部形成工程に相当し、第5包囲壁及び第5包囲壁に囲まれた場所に第1封止層を積層して形成する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は保護膜形成工程に相当し、第1封止層の周囲に保護膜を形成する工程である。次にステップS10に移行する。ステップS10は空洞部形成工程に相当し、包囲壁及び第1封止層に覆われた層間絶縁膜をエッチングして空洞を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11はゲッター部形成工程に相当し、包囲壁内にゲッター材を設置してゲッター部を形成する工程である。次にステップS12に移行する。ステップS12は封止工程に相当し、第1封止層に重ねて第2封止層を形成して空洞を封止する工程である。次にステップS13に移行する。ステップS13は端子部形成工程に相当し、中間端子と接続する外部端子を形成する工程である。次にステップS14に移行する。ステップS14はダイシング工程に相当し、マザー基板を切断してチップ状に分割する工程である。以上の製造工程にてレゾネーターが完成する。
【0066】
次に、図4〜図8を用いて、図3(b)に示したステップと対応させて、製造方法を詳細に説明する。まず、図4(a)〜図4(c)はステップS1の配線形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、ステップS1の配線形成工程ではマザー基板45を用意し、マザー基板45上に第1下地層3及び第2下地層4を形成する。第2下地層4は側壁部23を形成する予定の場所に形成する。マザー基板45は、例えば、シリコンウェハーであり、レゾネーター1を複数配置可能な広さを備えている。そして、マザー基板45を分割したものが基板2に相当する。第1下地層3は、例えば、STI(Shallow Trench Isolation)法、LOCOS法により形成される。第2下地層4は、例えば、CVD(Chemical Vaper Deposition)法、スパッタ法を用いて形成される。
【0067】
次に、第2下地層4上に固定電極6を形成し、第1下地層3及び第2下地層4上に第1配線8を形成する。固定電極6、第1配線8はCVD法やスパッタ法等による成膜処理と、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とを用いて形成される。多結晶シリコンからなるパターンを形成した後でこのパターンに電気伝導性を付与するために所定の不純物をドーピングする。ドーピングは例えば、POCL3やBBr3等のガス中でドーパントを堆積させ、熱拡散させることにより行うことができる。続いて、固定電極6及び第1配線8を熱酸化することにより、固定電極6の表面に絶縁膜6aを形成し、第1配線8の表面に絶縁膜8bを形成する。
【0068】
次に、図4(b)及び図4(c)に示すように、可動電極7、第2配線9、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17を形成する。このとき、同時に第1中間端子11、第6中間端子18も形成する。可動電極7、第2配線9、第1中間端子11、第2中間端子12、第1包囲壁16、第2包囲壁17、第6中間端子18の形成方法は固定電極6及び第1配線8と同様な方法であり、説明を省略する。
【0069】
図4(d)及び図4(e)はステップS2の第1層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図4(d)及び図4(e)に示すように、ステップS2の第1層間絶縁膜形成工程では固定電極6、可動電極7、第1配線8、第2配線9、第1包囲壁16及び第2包囲壁17に重ねて第1絶縁層19を積層する。第1絶縁層19はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。第1絶縁層19のうち第1包囲壁16及び第2包囲壁17に囲まれる予定の場所の第1絶縁層19を第1犠牲層47とする。
【0070】
図5(a)及び図5(b)はステップS3の第1側壁形成工程に対応する図である。図5(a)及び図5(b)に示すように、ステップS3の第1側壁形成工程では第1包囲壁16、第2包囲壁17及び第2中間端子12上に位置する第1絶縁層19をパターニングして第1絶縁層19を貫通する開口部を形成する。尚、第1配線8及び第2配線9上の第1絶縁層19は除去せずに残留させる。次に、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第3包囲壁20及び第1貫通電極27を形成する。尚、第3包囲壁20及び第1貫通電極27は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第3包囲壁20はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0071】
電気伝導性のある第3包囲壁20は第1包囲壁16及び第2包囲壁17と接触して形成される。これにより、第1包囲壁16と第2包囲壁17との間は第3包囲壁20を介して通電可能となる。第3包囲壁20と第1配線8及び第2配線9との間には第1絶縁層19が配置されている。従って、第3包囲壁20と第1配線8との間は絶縁され、第3包囲壁20と第2配線9との間も絶縁される。第1貫通電極27は第1中間端子11〜第5中間端子15、第6中間端子18と接触して形成される。これにより、第1貫通電極27はこれらの端子との間で通電可能になる。
【0072】
図5(c)はステップS4の第2層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS4の第2層間絶縁膜形成工程では第1絶縁層19に重ねて第2絶縁層24を形成する。第2絶縁層24のうち第3包囲壁20に囲まれている場所の第2絶縁層24を第2犠牲層49とする。第2絶縁層24はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。
【0073】
図5(d)はステップS5の第2側壁形成工程に対応する図である。図5(d)に示すように、ステップS5の第2側壁形成工程では第3包囲壁20上に位置する第2絶縁層24をパターニングして第2絶縁層24を貫通する開口部を形成する。次に、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第4包囲壁21が形成される。そして、第4包囲壁21を形成する工程と同じ工程にて第2貫通電極28が第1貫通電極27上に形成される。尚、第4包囲壁21及び第2貫通電極28は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第4包囲壁21及び第2貫通電極28はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0074】
図5(e)はステップS6の第3層間絶縁膜形成工程に対応する図である。図5(e)に示すように、ステップS6の第3層間絶縁膜形成工程において第2絶縁層24に重ねて第3絶縁層25を形成する。第3絶縁層25のうち第3包囲壁20に囲まれている場所の第3絶縁層25を第3犠牲層50とする。そして、第1犠牲層47、第2犠牲層49、第3犠牲層50を合わせて犠牲層51と称す。第3絶縁層25はCVD法やスパッタ法等による成膜処理を用いて形成する。
【0075】
図6(a)はステップS7の第3側壁形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS7の第3側壁形成工程では第3絶縁層25の第4包囲壁21と対向する場所に開口部を形成する。開口部は第4包囲壁21が露出するように形成する。続いて、開口部にアルミニウム等の金属を埋め込むことで第5包囲壁22を形成する。そして、第5包囲壁22を形成する工程と同じ工程にて第3貫通電極29が第2貫通電極28上に形成される。尚、第5包囲壁22及び第3貫通電極29は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。第5包囲壁22及び第3貫通電極29はCVD法やスパッタ法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理により形成される。
【0076】
図6(b)はステップS8の蓋部形成工程に対応する図である。図6(b)に示すように、ステップS8の蓋部形成工程では第3絶縁層25に重ねてチタン層、窒化チタン層、アルミニウム−銅合金層、窒化チタン層をこの順で積層した金属層を形成する。金属層はスパッタ法やCVD法による成膜処理を用いて形成する。続いて、金属層をパターニングして第1封止層30を形成する。このとき、第1封止層30に第1孔30a及び第2孔30bを形成する。さらに、金属層をパターニングして第3貫通電極29上に電極パッド36を形成する。第1封止層30及び電極パッド36はフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングを用いて形成する。尚、第1封止層30及び電極パッド36は、同一の工程で形成されてもよいし、別々の工程で形成されてもよい。
【0077】
図6(c)はステップS9の保護膜形成工程に対応する図である。図6(c)に示すように、ステップS9の保護膜形成工程では第1封止層30及び電極パッド36の上面の少なくとも一部を避けて、第3絶縁層25上に保護膜31を形成する。このとき、第1封止層30に形成された第1孔30a及び第2孔30bが露出するように保護膜31を形成する。そして、保護膜31は第3犠牲層50以外の第3絶縁層25を覆うように形成する。保護膜31は、例えば、スパッタ法やCVD法等により成膜した後、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニングによって形成される。
【0078】
図6(d)はステップS10の空洞部形成工程に対応する図である。図6(d)に示すように、ステップS10の空洞部形成工程では第1孔30a及び第2孔30bを通してエッチング液を流動させて振動素子5の周囲に位置する犠牲層51をエッチングする。これにより、側壁部23と第1封止層30とに囲まれた場所に空洞部33を形成する。エッチングにはフッ化水素酸や緩衝フッ酸(フッ化水素酸とフッ化アンモニウムとの混合液)等を用いたエッチング液を用いてエッチングするウエットエッチングを採用している。
【0079】
第2下地層4、側壁部23、第1封止層30、保護膜31はエッチング液に腐食され難い材料から構成されている。従って、第2下地層4、側壁部23及び第1封止層30に囲まれた犠牲層51のみがエッチングされる。空洞部33に位置する固定電極6及び可動電極7もエッチング液に腐食され難い材料から構成されているので残留する。そして、固定電極6と可動電極7との間の絶縁膜6aは腐食される。これにより、固定電極6と可動電極7との間に隙間が形成されて、可動電極7が振動できるようになる。そして、保護膜31に覆われた側壁部23を取り囲む場所の層間絶縁膜26はエッチングされずに残留する。
【0080】
第3包囲壁20と第1配線8との間、第1包囲壁16と第1配線8との間、第2包囲壁17と第1配線8との間は間隔が狭く設定されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第1配線8に沿って側壁部23から層間絶縁膜26に漏洩し難くなっている。同様に、第3包囲壁20と第2配線9、第1包囲壁16と第2配線9との間、第2包囲壁17と第2配線9との間も間隔が狭く設定されている。従って、犠牲層51をエッチングするエッチング液が第2配線9に沿って側壁部23から層間絶縁膜26に漏洩し難くなっている。
【0081】
図7(a)はステップS11のゲッター部形成工程に対応する図である。図7(a)に示すように、ステップS11のゲッター部形成工程では複数の第2孔30bは軸の方向が同じ方向となるように形成されている。第2孔30bの軸の方向を第2貫通孔軸方向30cとする。第2貫通孔軸方向30cと平行な方向にゲッター部の材料としての粒子53をスパッタ法を用いて飛行させる。第1孔30aを通過する粒子53は第2下地層4、第1配線8、第2配線9上に堆積して第1ゲッター部34を形成する。そして、第2孔30bを通過する粒子53は第2下地層4、第1配線8、第2配線9上に堆積して第2ゲッター部35を形成する。
【0082】
第1孔30aは第2孔30bより振動素子5に近い場所に形成されているので、第1ゲッター部34が第2ゲッター部35より振動素子5に近い場所に形成される。そして、第1孔30aの径は第2孔30bの径より小さな径となっているので、第1ゲッター部34は第2ゲッター部35より小さな体積となる。これにより、第1ゲッター部34は振動素子5に接触しないように形成することができる。第1封止層30上に堆積する粒子53はゲッター材からなるゲッター膜54を形成する。
【0083】
図7(b)及び図7(c)はステップS12の封止工程に対応する図である。図7(b)に示すように、ステップS12の封止工程ではゲッター膜54上に封止する材料としての粒子53を飛行させる。封止する材料はゲッター部の材料と同じ材料を採用している。封止する材料とゲッター部の材料とは必ずしも同じ材料でなくとも良い。第2貫通孔軸方向30cに対して斜めの向きに粒子53を飛行させる。これにより、粒子53が第1孔30a及び第2孔30bの孔内の壁に付着する。そして、粒子53が第1孔30a及び第2孔30bを塞いで空洞部33を封止する。このとき、減圧状態において第1孔30a及び第2孔30bを塞ぐ。これにより、空洞部33を減圧状態のまま封止することができる。次に、図7(c)に示すように、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術を用いてゲッター膜54をパターニングして第2封止層32を形成する。
【0084】
図8(a)及び図8(b)はステップS13の端子部形成工程に対応する図である。図8(a)に示すように、ステップS13の端子部形成工程では電極パッド36の上面を除いて、保護膜31上及び第2封止層32上に樹脂層37を形成する。より具体的には、まず、スピンコート法により樹脂を塗布し窒素雰囲気中で300℃〜400℃程度の熱処理を行う。これにより塗布した樹脂を硬化させて樹脂の膜を形成する。次に、フォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によって樹脂の膜をパターニングして樹脂層37を形成する。電極パッド36上では樹脂層37に斜面を形成する。続いて、電極パッド36上及び樹脂層37上に配線38を形成する。配線38は、スパッタ法やめっき法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とにより形成される。
【0085】
次に、図8(b)に示すように、樹脂層37上及び配線38上に、レジスト層40を形成する。レジスト層40は、配線38の外部端子39が形成される予定の場所を除いて形成される。レジスト層40は、例えば、スピンコート法等による成膜処理とフォトリソグラフィー技術及びエッチング技術によるパターニング処理とにより形成される。
【0086】
次に、配線38上に外部端子39を形成する。外部端子39は、例えば、配線38上にハンダ膜を形成した後、180℃〜300℃程度に加熱してハンダ膜を溶融する。そして、液状化したハンダに表面張力が作用することによりハンダが球形に形成される。
【0087】
ステップS14のダイシング工程ではマザー基板45を切断予定線にて切断する。該切断予定線は基板2の外形に沿うように設定されている。マザー基板45を粘着性のあるシートに貼る。続いて、先端にダイヤモンド粉が塗布された回転刃を用いて切断予定線に沿って切り込みを入れる。この後、シートを広げることにより切断予定線に沿ってマザー基板45が破断される。そして、各レゾネーター1がチップ状に分離する。その結果、図1に示すように、レゾネーター1が完成する。
【0088】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、側壁部23及び第1封止層30に覆われた空洞部33が基板2上に設置されている。その空洞部33内には振動素子5が位置している。第1封止層30は第1孔30a及び第2孔30bを有している。該第1孔30a及び第2孔30bからエッチング液を流入させて側壁部23内をエッチングすることにより側壁部23内に空洞部33が形成されている。
【0089】
本実施形態の方法は、2つの基板を接合して基板間に空洞を形成する方法に比べて薄く装置にすることができる。空洞部33内には第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が設置されている。そして、空洞部33内の気体を第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が吸着する。第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は第1孔30a及び第2孔30bを通して空洞部33に設置され、第1孔30a及び第2孔30bは第2封止層32により封止される。従って、空洞部33内に残留する液体が加熱により気化するときにも第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が気体を吸着する。その結果、空洞部33内は真空度が高くなる為、振動素子5を品質良く作動させることができる。
【0090】
(2)本実施形態によれば、振動素子5と近い場所に位置する第1孔30aの径は小さく、振動素子5と離れた場所に位置する第2孔30bの径は大きくなっている。第1ゲッター部34を形成するとき第1孔30aを通してゲッター部の材料を飛行させて堆積させる。第2ゲッター部35を形成するとき第2孔30bを通してゲッター部の材料を飛行させて堆積させる。第1孔30aの径は第2孔30bの径より小さいので、第1孔30aを通過するゲッター部の材料の体積は第2孔30bを通過するゲッター部の材料の体積より小さくなる。従って、振動素子5にゲッター部の材料が付着する可能性を小さくし、振動素子5に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、振動素子5が作動するときゲッター部の材料によって受ける影響を小さくできる。
【0091】
(3)本実施形態によれば、振動素子5はカンチレバー型振動子となっている。従って、可動電極7の形状を調整することにより所望の固有振動数にすることができる。その結果、振動素子5を所望の周波数で振動させることができる。そして、振動素子5は気体の影響を受け難くなっている為、振動素子5を品質の良い周波数で振動させることができる。
【0092】
(4)本実施形態によれば、レゾネーター1は発振回路42を備えており、発振回路42は振動素子5を用いて波形を形成することができる。振動素子5は気体の影響を受け難くなっている為、レゾネーター1は品質の良い波形を出力することができる。
【0093】
(5)本実施形態によれば、ステップS11のゲッター部形成工程では第2孔30bの軸方向からゲッター部の材料を飛行させて設置させている。これにより、ゲッター部の材料が第2孔30bに付着せずに通過させ易くすることができる。従って、生産性良く第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35を形成することができる。ステップS12の封止工程では第2孔30bの軸方向と交差する方向から封止材料を飛行させて設置させている。これにより、ゲッター部の材料が第2孔30bに付着させ易くすることができる。従って、生産性良く第2孔30bを封止することができる。
【0094】
(6)本実施形態によれば、ステップS11のゲッター部形成工程はステップS10の空洞部形成工程の後に行われている。従って、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35に犠牲層51をエッチングするエッチング液が付着しないようにすることができる。その結果、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は空洞部33に位置する気体を品質良く吸着することができる。
【0095】
(7)本実施形態によれば、ステップS11のゲッター部形成工程において第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35はスパッタ法を用いて形成されている。従って、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は内部に微小空間が形成される。その結果、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は表面積が広い構造となり、品質よく気体を吸着させることができる。
【0096】
(第2の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図9を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第1ゲッター部と第2ゲッター部との間に仕切り壁を設けた点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0097】
図9(a)はレゾネーターの要部模式平断面図であり、包囲壁の基板側を示す図である。図9(b)は図9(a)のレゾネーターのC−C’線に沿う要部模式断面図である。すなわち、本実施形態では、図9に示すように電子装置としてのレゾネーター56は第2下地層4、第1配線8、第2配線9上に第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35が設置されている。そして、第1ゲッター部34と第2ゲッター部35との間には仕切り板57が設置されている。該仕切り板57により空洞部33は振動素子5が位置する第1空洞部33aと振動素子5が位置しない第2空洞部33bとに分けられている。
【0098】
仕切り板57は8箇所の貫通部57aを有し、貫通部57aにおいて第1空洞部33aと第2空洞部33bとが連結している。これにより、空洞部33に位置する気体は第1空洞部33aと第2空洞部33bとの間を移動可能になっている。仕切り板57は基板2側から第1封止層30側に第1仕切り板57b、第2仕切り板57c、第3仕切り板57dの順に重ねて設置されている。第1仕切り板57bは第2下地層4と重ねて設置されている。そして、第1仕切り板57bは第1配線8及び第2配線9とは隙間を空けて設置されている。これにより、仕切り板57は第1配線8及び第2配線9と絶縁されている。
【0099】
仕切り板57は第1孔30aと第2孔30bとの間に設置されている。そして、ステップS11のゲッター部形成工程にて第1孔30aを通過する粒子53は第1空洞部33aに堆積して第1ゲッター部34を形成する。第2孔30bを通過する粒子53は第2空洞部33bに堆積して第2ゲッター部35を形成する。該第2孔30bを通過する粒子53は仕切り板57に阻まれる為第1空洞部33aに侵入し難くなっている。従って、第2孔30bの径が大きいときにも振動素子5にゲッター材が付着することを防止することができる。
【0100】
第1空洞部33aに繋がる第1孔30aの径は小さくなっている。このため、第1空洞部33aに堆積する第1ゲッター部34の体積は小さくなっている。これにより、振動素子5にゲッター部の材料を付着し難くすることができる。
【0101】
第1仕切り板57bは第3包囲壁20と同じ工程にて形成することができる。そして、第2仕切り板57cは第4包囲壁21と同じ工程にて形成することができる。第3仕切り板57dは第5包囲壁22と同じ工程にて形成することができる。尚、必ずしも同じ工程にて形成することに限定されず別の工程で形成しても良い。
【0102】
第1仕切り板57bと第1配線8との間に第1包囲壁16及び第2包囲壁17と同じ材料の部材を同じ厚みにて配置しても良い。このとき、第1仕切り板57bと第3包囲壁20との厚みを同じ厚みにすることができる。これにより、第1仕切り板57bと第3包囲壁20とを同じ製造条件にて形成することができる。
【0103】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、振動素子5が位置する第1空洞部33aにおける第1ゲッター部34の体積は小さく、振動素子5が位置しない第2空洞部33bにおける第2ゲッター部35の体積は大きくなっている。従って、ゲッター部の材料が振動素子5に付着する可能性を小さくし、振動素子5に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、ゲッター部の材料は振動素子5に付着し難くなる為、振動素子5が作動するときゲッター部の材料が付着することによって受ける影響を小さくできる。
【0104】
(第3の実施形態)
次に、レゾネーターの一実施形態について図10を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、第1ゲッター部と第2ゲッター部とを設置する部屋を別に設けた点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0105】
図10はレゾネーターの要部模式平断面図であり、包囲壁の基板側を示す図である。すなわち、本実施形態では、図10に示したように電子装置としてのレゾネーター60は第2下地層4上に振動素子5を備えている。振動素子5は固定電極6と可動電極7とを有している。固定電極6には第1配線8が接続され、可動電極7には第2配線9が接続されている。
【0106】
振動素子5は包囲壁61に囲まれている。包囲壁61は第1配線8及び第2配線9を跨いで配置されている。これにより、包囲壁61は第1配線8及び第2配線9と絶縁されている。包囲壁61は第1室62〜第5室66を形成している。そして、第1室62の内部は第1空洞部62aであり、第2室63〜第5室66の内部は第2空洞部63a〜第2空洞部66aとなっている。
【0107】
第1室62と第2室63との間の包囲壁61は一部が開口された第2開口部63bが設置されている。第2開口部63bにより第1空洞部62aと第2空洞部63aとが接続されている。同様に、第1室62と第3室64との間の包囲壁61には第3開口部64bが設置され、第3開口部64bにより第1空洞部62aと第2空洞部64aとが接続されている。さらに、第1室62と第4室65との間の包囲壁61には第4開口部65bが設置され、第4開口部65bにより第1空洞部62aと第2空洞部65aとが接続されている。さらに、第1室62と第5室66との間の包囲壁61には第5開口部66bが設置され、第5開口部66bにより第1空洞部62aと第2空洞部66aとが接続されている。これにより、第1室62〜第5室66の内部の空間は繋がっているので、第1空洞部62a〜第2空洞部63a,64a,65a,66aの間で気体が移動可能になっている。
【0108】
第1空洞部62aには振動素子5の周囲に第1ゲッター部34が12個設置されている。第2室63の第2空洞部63a及び第5室66の第2空洞部66aには第2ゲッター部35が各3個設置されている。そして、第3室64の第2空洞部64a及び第4室65の第2空洞部65aには第2ゲッター部35が各6個設置されている。包囲壁61が形成する部屋の数、第1ゲッター部34の数、第2ゲッター部35の数は特に限定されない。レゾネーター60の形状と大きさに合わせて設定することができる。
【0109】
包囲壁61を覆って第1の実施形態における第1封止層30に相当する第1封止層が配置される。該第1封止層には第1貫通孔と第2貫通孔とが設置されている。第1貫通孔の径は第2貫通孔の径より小さくなっている。そして、第1室62には第1貫通孔が設置され、第2室63〜第5室66には第2貫通孔が設置されている。
【0110】
第2貫通孔を通過する粒子53は包囲壁61に阻まれる為第1空洞部62aに侵入し難くなっている。従って、第2貫通孔の径が大きいときにも振動素子5にゲッター材が付着することを防止することができる。
【0111】
第1空洞部62aに繋がる第1貫通孔の径は小さくなっている。このため、第1空洞部62aに堆積する第1ゲッター部34の体積は小さくなっている。これにより、振動素子5にゲッター部の材料を付着し難くすることができる。
【0112】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、振動素子5が位置する第1空洞部62aにおける第1ゲッター部34の体積は小さく、振動素子5が位置しない第2空洞部63a,64a,65a,66aにおける第2ゲッター部35の体積は大きくなっている。従って、振動素子5にゲッター部の材料が付着する可能性を小さくし、振動素子5に付着しない場所にゲッター部の材料を多く堆積させることができる。その結果、ゲッター部の材料は振動素子5に付着し難くなる為、振動素子5が作動するときゲッター部の材料が付着することによって受ける影響を小さくできる。
【0113】
(第4の実施形態)
次に、レゾネーターを用いた電子機器の1つである時計の一実施形態について図11を用いて説明する。本実施形態が第1の実施形態と異なるところは、レゾネーターを活用した電子機器である点にある。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0114】
図11は、時計の構成を示す電気ブロック図である。図11に示すように、電子機器としての時計70は制御部71を備えている。制御部71はレゾネーター1と接続され、レゾネーター1は一定の周波数の矩形波信号を制御部71に出力する。制御部71は演算部及び記憶部を備え、演算部は矩形波信号と同期して各種の演算を行う。
【0115】
制御部71は表示部72及び入力部73を備えている。表示部72は制御部71の演算部が演算結果を表示する装置であり、液晶表示装置、有機EL(Electro−Luminescence)表示装置、時針分針等アナログ式表示装置等を用いることができる。入力部73は押しボタン式のスイッチや回転式のダイヤル等を用いることができる。
【0116】
時計70は現在時刻を表示する機能を備えている。入力部73を用いて操作者は所定の時刻における時刻を入力する。制御部71はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、時刻を入力された時からの経過時間を加算して現在時刻を算出した結果を表示部72に出力する。表示部72は制御部71の信号を受けて現在時刻を表示する。
【0117】
時計70はストップウォッチの機能を備えている。入力部73を用いて操作者はボタン式のスイッチを押すことにより計時開始の指示信号を入力する。制御部71はレゾネーター1の出力を用いて時間の経過を演算する。そして、計時開始の信号を入力された時からの経過時間を算出し、算出した結果を表示部72に出力する。表示部72は制御部71の信号を受けて経過時間を表示する。
【0118】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、時計70はレゾネーター1を備えている。このレゾネーター1の空洞部33は気体分子が少なく真空度が高い空間となっている。これにより、振動素子5が品質良く動作することができる。従って、時計70は振動素子5が品質良く振動するレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【0119】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
前記第1の実施形態では、空洞部33に振動素子5が設置されたが、空洞部33内に設置される構造物は振動素子5に限らない。例えば、図12(a)に示すようなスイッチ74を設置しても良い。スイッチ74は基板75を備え、基板75上に可動電極76、固定電極77、第1接点電極78、第2接点電極79を備えている。基板75上に固定電極77、第1接点電極78、第2接点電極79がこの順に配置されている。そして、固定電極77、第1接点電極78、第2接点電極79と対向する場所にカンチレバー型の可動電極76が配置されている。可動電極76は先端の接点部76bと根元の駆動電極76aが導体であり、接点部76bと駆動電極76aとの間の中間部76c(76)は絶縁体となっている。
【0120】
固定電極77と対向する場所には駆動電極76aが位置する。そして、固定電極77と駆動電極76aとの間に電圧を印加するとき、固定電極77と駆動電極76aとの間に静電気が作用するので固定電極77と駆動電極76aとが接近する。第1接点電極78及び第2接点電極79と対向する場所には接点部76bが位置する。そして、固定電極77と駆動電極76aとが接近するとき、接点部76bは第1接点電極78及び第2接点電極79と接触する。これにより、第1接点電極78と第2接点電極79とが電気的に接続する。
【0121】
空洞部33の真空度が高い為、接点部76bと第1接点電極78との間の接点が劣化し難くなっている。同様に、接点部76bと第2接点電極79との間の接点が劣化し難くなっている。従って、スイッチ74は接点が劣化し難く寿命の長い装置にすることができる。また、空洞部33の真空度が高い為、可動電極76が作動し易くなっている。従って、固定電極77と駆動電極76aとに電圧を印加するとき、高速にスイッチを切り替えることができる。
【0122】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、空洞部33に振動素子5が設置されたが、空洞部33内に設置される構造物は振動素子5に限らない。例えば、図12(b)に示すような走査ミラー80を設置しても良い。走査ミラー80は光を反射する方向を走査する装置である。走査ミラー80は基板81を備え、基板81上には支持部82に両端を支持された鏡体83が設置されている。支持部82は支持軸82aを有し、鏡体83の両端が支持軸82aに固定されている。鏡体83において基板81と反対側の面は鏡面となっており光を反射する。そして、鏡体83は支持軸82aを中心にして所定の角度内を回動する。基板81上において鏡体83と対向する場所には第1電極84と第2電極85とが設置されている。
【0123】
鏡体83、第1電極84、第2電極85は導体となっている。そして、鏡体83と第1電極84とを同じ極性の電位とし、鏡体83と第2電極85とを異なる電位にする。このとき、鏡体83は第1電極84との間で反発し、第2電極85との間で引力が作用する。従って、鏡体83は回転し基板81に対して傾斜する。次に、鏡体83、第1電極84、第2電極85の電位を切替える。そして、鏡体83を逆方向に回転させて基板81に対して傾斜させる。この操作を連続して行うことにより、鏡体83を揺動させる。
【0124】
該走査ミラー80では空洞部33の真空度が高い為、鏡体83が回転するときに気体の抵抗を受け難くなっている。従って、走査ミラー80は品質良く揺動し光を走査させることができる。尚、第1封止層30及び第2封止層32に相当する層は光透過性の材質を用いる必要がある。
【0125】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、空洞部33に振動素子5が設置されたが、空洞部33内に設置される構造物は振動素子5に限らない。例えば、図12(c)に示すようなジャイロスコープ86を設置しても良い。ジャイロスコープ86は基板87を備え、基板87上に振動子88が設置されている。振動子88は中央に固定部88aを有し、固定部88aから4つの駆動腕88bと2つの検出腕88cとが突出して配置されている。そして、駆動腕88bを振動させた状態でジャイロスコープ86を回転させるとき、検出腕88cが振動する。該検出腕88cの振動を検出することによりジャイロスコープ86の回転を検出することができる。
【0126】
該ジャイロスコープ86では空洞部33の真空度が高い為、駆動腕88b及び検出腕88cが振動するときに気体の抵抗を受け難くなっている。従って、ジャイロスコープ86は品質良く回転角度を検出することができる。
【0127】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、空洞部33に振動素子5が設置されたが、空洞部33内に設置される構造物は振動素子5に限らない。例えば、特表2008−512964号公報に開示されたMEMSによるフィルターを配置しても良い。当該フィルターは両持ち梁型の振動子を備えている。他にも、特表2004−507921号公報には円盤状の振動子を備えたフィルターが開示されている。該円盤状の振動子を空洞部33に設置しても良い。他にも一対の櫛歯状の電極を移動可能に設置したフィルターが雑誌IEEE International Ultrasonics Symposium,Tronto,Canada,October 5−8,1997 pages323−327に開示されている。該フィルターを空洞部33に設置しても良い。空洞部33の真空度が高い為、振動子または電極が振動するときに気体の抵抗を受け難くなっている。従って、フィルターは品質良く所定の周波数の波形を通過させることができる。
【0128】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、側壁部23の平面形状は図1に示すように四角形の枠形状とした。側壁部23の平面形状は振動素子5を囲む形状であれば特に限定されず、例えば、円形、楕円形、多角形の枠形状等の任意の形状にすることができる。これにより、配線、端子、駆動回路10を設定する配置の自由度を高めることができる。
【0129】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、第1孔30a及び第2孔30bは円形であった。そのため、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35は平面視で円形となっていた。第1孔30a及び第2孔30bは円形に限らない。楕円形、四角形、長方形やこれらを組み合わせた形状でも良い。これにより、第1ゲッター部34及び第2ゲッター部35の平面視を第1孔30a及び第2孔30bと相似形の形状とすることができる。そして、空洞部33に設置するゲッター材の量を増やすことができる。
【0130】
(変形例7)
前記第2の実施形態では、第1仕切り板57bと重ねて第2仕切り板57cを配置した。第2仕切り板57cがないときに第2孔30bを通過する粒子53が第1空洞部33aに移動しない場合には第2仕切り板57cが無くても良い。第2仕切り板57cの材料を削減できるので省資源にすることができる。
【0131】
(変形例8)
前記第3の実施形態では、第1室62〜第5室66は包囲壁61により区切られていた。そして、第2室63〜第5室66は第1室62と隣り合っていた。第2室63〜第5室66は必ずしも第1室62と隣り合わなくとも良い。第1室62と離れていても各部屋の空洞部が通路により繋がっていれば良い。そして、各部屋の空洞部に位置する気体が部屋間を移動可能になっていれば良い。これにより、部屋の配置の自由度を高くすることができる。
【0132】
(変形例9)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いたがレゾネーター1の代わりに前記第2の実施形態におけるレゾネーター56または前記第3の実施形態におけるレゾネーター60を用いても良い。このときにも、品質良く所定の周波数の波形を活用することができる。
【0133】
(変形例10)
前記第4の実施形態では、レゾネーター1を用いる電子機器として時計70の例を示したが、電子機器は時計70に限らない。レゾネーター1を各種の電子機器に適用することができる。例えば、携帯電話、パーソナルコンピューター、電子辞書、デジタルカメラ、デジタル録音再生装置等に用いることができる。このとき、品質良く所定の周波数の波形を活用することができる。従って、電子機器は振動素子5が品質良い波形を出力するレゾネーター1を備えた機器とすることができる。
【符号の説明】
【0134】
1,56,60…電子装置としてのレゾネーター、2…基板、7…可動部としての可動電極、7b…可動部、19…層間絶縁膜としての第1絶縁層、20…側壁部としての第3包囲壁、21…側壁部としての第4包囲壁、23…被覆部としての側壁部、24…層間絶縁膜としての第2絶縁層、26…層間絶縁膜、30…被覆部及び第1蓋部としての第1封止層、30a…開口部としての第1孔、30b…開口部としての第2孔、31…保護膜、32…第2蓋部としての第2封止層、33…空洞部、33a,62a…第1空洞部、33b,63a,64a,65a,66a…第2空洞部、34…ゲッター部としての第1ゲッター部、35…ゲッター部としての第2ゲッター部、42…発振回路、53…ゲッター部の材料及び封止する材料としての粒子、70…電子機器としての時計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の被覆部に覆われた空洞部内に位置する可動部と、
前記空洞部内に設置され前記空洞部内の気体を吸着するゲッター部と、
前記基板と対向する場所の前記被覆部に位置する蓋部と、を備え、
前記蓋部は、開口部を有する第1蓋部と前記開口部を封止する第2蓋部とを有することを特徴とする電子装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子装置であって、
前記開口部は第1孔と、前記可動部との距離が前記第1孔より離れている第2孔と、を有し、前記第1孔の径は前記第2孔の径より小さいことを特徴とする電子装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子装置であって、
前記空洞部は前記可動部が位置する第1空洞部と、前記第1空洞部と連結し前記可動部が位置しない第2空洞部と、を有し、
前記第2空洞部に位置する前記ゲッター部の体積は前記第1空洞部に位置する前記ゲッター部の体積より大きいことを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子装置であって、
前記可動部はカンチレバー型振動子であることを特徴とする電子装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電子装置であって、
前記可動部を用いて波形を形成する発振回路を有することを特徴とする電子装置。
【請求項6】
発振回路を備えた電子機器であって、
前記発振回路に請求項1〜5のいずれか一項に記載の電子装置を用いたことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
基板上及び前記基板上に形成された可動部上に層間絶縁膜を形成する層間絶縁膜形成工程と、
前記可動部を囲むように前記層間絶縁膜を筒状に除去し、除去した場所に側壁部を形成する側壁形成工程と、
前記側壁部と前記側壁部に囲まれた前記層間絶縁膜とに重ねて開口部を有する第1蓋部を形成する蓋部形成工程と、
前記側壁部を取り巻く前記層間絶縁膜上に保護膜を形成する保護膜形成工程と、
前記開口部からエッチング液を流入させて前記基板と前記側壁部と前記第1蓋部とに囲まれた場所の前記層間絶縁膜をエッチングして除去し空洞部を形成する空洞部形成工程と、
前記空洞部にゲッター部を設置するゲッター部形成工程と、
前記開口部を封止する封止工程と、を有することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電子装置の製造方法であって、
前記開口部は第1孔と、前記可動部との距離が前記第1孔より離れている第2孔と、を有し、前記第1孔の径は前記第2孔の径より小さいことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置の製造方法であって、
前記ゲッター部形成工程では前記第2孔の軸方向から前記ゲッター部の材料を飛行させて設置させ、
前記封止工程では前記第2孔の軸方向と交差する方向から封止する材料を飛行させて前記第2孔を封止することを特徴とする電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−119821(P2012−119821A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266216(P2010−266216)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】