説明

電界効果型半導体装置及びその製造方法

【課題】 電界効果型半導体装置及びその製造方法に関し、ゲート絶縁膜にダメージを与えることなく、少なくとも窒素を含有するとともにシリコンを主成分とする膜を組成制御性良く構成する。
【解決手段】 シリコンと、シリコンに対して5〜30原子数%の窒素を含有する導電膜をゲート電極3の少なくとも一部として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界効果型半導体装置及びその製造方法に関するものであり、特に、ゲート電極の主構成要素となるシリコン膜の結晶化を抑制するための構成に特徴のある電界効果型半導体装置及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路装置の高性能化・高速化の要請に伴って、半導体集積回路装置を構成するMOSFETの微細化も要請されており、そのためには、MOSFETのゲート幅(チャネル長)の微細化が必要になり、昨今では、微細MOSFETのゲート幅のバラツキはnmオーダーで制御することが必要になっている。
【0003】
従来よりゲート電極として用いられてきた多結晶シリコンは加工性に優れたゲート電極材料であるが、結晶粒径が影響したゲート幅のバラツキが問題となる。
即ち、低温で成膜した段階ではアモルファス膜であるが、注入イオンの活性化等の熱工程を経るとむしろ大きな結晶粒径の多結晶に変質してしまい、50nm以下、例えば、20〜30nmの幅のゲート電極のパターニング工程において、結晶粒界の影響が問題になる。
【0004】
また、大きな結晶粒径に変質した多結晶シリコンに、導電性を付与するための不純物を均一に且つ多量にドープすることは困難であるため、低濃度化しやすく、したがって、空乏化しやすくなるため、ゲート電極/ゲート絶縁膜界面におけるゲート電極の空乏化の増大が問題となる。
【0005】
このような熱工程に伴う結晶化を抑制するためには、シリコンに窒素を含有することが有効であり、それによりシリコン膜の結晶化の抑制は超微細多結晶(ナノクリスタル)の生成が可能になる。
【0006】
また、低窒素濃度の窒素含有シリコン膜は、絶縁膜である窒化シリコン膜、即ち、Si3 4 膜より半導体である多結晶シリコン膜或いはアモルファスシリコン膜に近く、ドーピングが可能であることも知られている(例えば、非特許文献1乃至非特許文献3参照)。
【0007】
一方、微細化に伴う配線抵抗の増大の問題を解決するために、多結晶シリコンゲート電極に代えて、金属電極を用いるMOSFETの開発も進められており、この場合の金属電極にはゲート絶縁膜との反応性、耐熱性、或いは、耐バリア性等を考慮して金属シリサイドや、TiN等の窒化金属材料、もしくは金属窒化シリコン材料を用いることが検討されている。
【0008】
金属ゲート電極のMOSFETの閾値電圧は用いる金属の仕事関数により規定されるが、金属窒化シリコン膜の仕事関数は膜組成に大きく依存することが知られており(例えば、非特許文献4或いは非特許文献5参照)、そのため、膜組成を制御することによって最適な仕事関数を有するゲート電極の形成が可能になる。
【非特許文献1】Jpn.J.Appl.Phys.,L811−L813,1981
【非特許文献2】J.Crys.Groth,Vol.95,p464−467,1989
【非特許文献3】Thin Solid Films,Vol.184,p373−377,1990
【非特許文献4】J.Vac.Sci.Technol.,Vol.B21,pp.11−17,2003
【非特許文献5】IEEE ELECTRON DEVICE LETTERS,Vol.24,p.429−431,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、シリコンに窒素を含有する際には、ゲート絶縁膜の信頼性を確保するためには化学気相成長(CVD)法での成膜が望ましいが、窒素源としてNH3 を用いたCVD法では、NH3 とシリコン原料ガス(SiH4 ,Si2 6 ,SiH2 Cl2 )の強い気相反応によりパーティクルが生成したり、或いは、窒素含有シリコン膜の組成ゆらぎや組成制御困難性の問題が生じる。
【0010】
また、CVD法は一般的に組成制御性に乏しいため、金属窒化シリコン膜を成膜しても、必ずしもトランジスタ特性にとって最適な仕事関数を有する組成の膜が堆積できないという問題がある。
【0011】
したがって、本発明は、ゲート絶縁膜にダメージを与えることなく、少なくとも窒素を含有するとともにシリコンを主成分とする膜を組成制御性良く構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
図1は本発明の原理的構成図であり、ここで図1を参照して、本発明における課題を解決するための手段を説明する。
なお、図における符号1,5,6は、それぞれ半導体基板、ソース領域及びドレイン領域である。
図1参照
上記の課題を解決するために、本発明は、電界効果型半導体装置において、シリコンを主成分とするとともに、シリコンに対して5〜30原子数%の窒素を含有する導電膜をゲート電極4の少なくとも一部として用いたことを特徴とする。
【0013】
このように、シリコンに対して5〜30原子数%の窒素を含有する導電膜をゲート電極4の少なくとも一部として用いることにより、ゲート電極4の多結晶化を抑制することができるとともに、窒素の添加料を5〜30原子数%とすることによって、ゲート電極4として必要な導電性も保つことができる。
なお、「ゲート電極4の少なくとも一部」は、ゲート電極4の全体、ゲート電極4を構成する材料、或いは、積層構造のゲート電極4を構成する窒素含有シリコン層を意味する。
【0014】
この場合のゲート電極4の構造としては、ゲート電極4全体を5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3で構成しても良く、従来の多結晶シリコンゲートMOSFETよりゲートの空乏化が抑制された安定な特性を得ることができる。
【0015】
或いは、ゲート電極4全体をシリコンに対して30〜200原子数%の金属元素を含む金属窒化シリコンで構成しても良く、膜組成を精度良く制御することによって、トランジスタ特性にとって最適な仕事関数を有する組成のゲート電極4を実現することができ、且つ、窒素含有シリコン膜より導電性を高めることができる。
【0016】
或いは、ゲート電極4を、ゲート絶縁膜2側からシリコンに対して30〜200原子数%の金属元素を含む金属窒化シリコン膜と、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3とを積層した積層構造から構成しても良い。
【0017】
一般に、金属窒化シリコン膜はエッチング加工性が悪く、矩形状パターンが得にくく、肩部がだれたテーパ状になり、ゲート幅の制御性に劣るが、仕事関数が寄与するゲート絶縁膜2側のみを金属窒化シリコン膜にすることによって、ゲート幅のバラツキを少なくすることができる。
【0018】
さらには、ゲート電極4を、ゲート絶縁膜2側からシリコンに対して30〜200原子数%の金属元素を含む金属窒化シリコン膜と金属膜とを積層した積層構造で構成しても良く、それによって、ゲート電極4の抵抗を小さくすることができるとともに、特に、CMOSに適用した場合には、pチャネル型MOSFETのゲート電極4を積層構造を構成する金属膜によって形成すれば良いので製造工程数の低減に寄与することになる。
【0019】
なお、この場合の、金属窒化シリコン膜を構成する金属元素としては、CVD法を用いる場合には、Ti、Ta、W、Mo、Coを用い、また、PVD法を用いる場合には、前記の金属に加えてNi、Ru、及び、Ptの使用も可能になる。
【0020】
また、本発明は、電界効果型半導体装置の製造方法において、窒素を含有する無機シリコン原料を用いた化学気相堆積法を用いることによりNH3 を用いることなく、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3を堆積する工程を有するとともに、前記堆積した5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3をゲート電極4として用いる工程を有することを特徴とする。
【0021】
このように、化学気相堆積法(CVD法)により成膜するのに際して、窒素を含有する無機シリコン原料を用いることにより、窒源として反応が過激なNH3 を用いる必要がなく、それによって、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3をゲート絶縁膜2にダメージを与えることなく且つ多量のパーティクルを発生させることなく、また、組成バラツキを抑制するとともに、組成制御性良く堆積することが可能になる。
【0022】
また、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3を堆積する工程において、窒素を含有する無機シリコン原料に対して、SiH4 、Si2 6 、Si3 8 、或いは、SiH2 Cl2 のいずれを混合することにより、窒素を含有する無機シリコン原料におけるN:Si比に規定されることなく、5〜30原子数%の範囲内において任意の組成比の窒素を含有するシリコン膜3を堆積することが可能になる。
【0023】
また、堆積した5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3をゲート電極4として用いる工程において、前記5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3の堆積工程と、金属膜の堆積工程を交互に繰り返したのち、熱処理によって金属窒化シリコン膜を形成する工程を含むように構成しても良く、それによって、金属窒化シリコン膜を組成制御性良く堆積することができる。
【0024】
なお、この場合の金属膜の堆積工程において、堆積メカニズムが良く知られているとともに炭素(C)の混入を抑えることのできるTi、Ta、W、Mo或いはCoの塩化物またはフッ化物のいずれかを用いることが望ましい。
【0025】
また、窒素を含有する無機シリコン原料としては、トリシリルアミン(N〔SiH3 3 )が典型的である。
なお、窒素を含有する有機シリコン原料、例えば、シラザン結合を有する有機化合物を用いても窒素を含有するシリコン膜3の成膜は可能であるが、炭素が混入するので望ましくない。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ゲート絶縁膜にダメージを与えることなく、組成が均一な窒素含有シリコン膜或いは金属窒化シリコン膜を成膜することができ、それによって、ゲート電極の多結晶化が抑制されるのでゲート幅のバラツキを小さくすることができるとともに、ゲート電極の空乏化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明は、例えば、HfSiON等のHigh−k膜からなるゲート絶縁膜上に5〜30原子数%の窒素を含むシリコン膜をCVD法により堆積する際に、窒素を含有する無機シリコン原料、典型的にはトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )を用い、必要に応じてSiH4 、Si2 6 、Si3 8 、或いは、SiH2 Cl2 等のシリコン源と混合して用いることによりNH3 を用いることなく、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜を堆積させ、この堆積させた5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜をゲート電極とする、例えば、全体を窒素含有シリコン膜として、或いは、金属窒化シリコン膜を構成する材料として、さらには、積層構造のゲート電極を構成する窒素含有シリコン層とするものである。
【0028】
なお、金属窒化シリコン膜を成膜する場合には、5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜の堆積工程と、CVD法を用いる場合にはTi、Ta、W、Mo、Coを、また、PVD法を用いる場合には前記金属に加えてNi、Ru或いはPtを用いた金属膜の堆積工程を交互に繰り返したのち、熱処理によって金属窒化シリコン膜を形成するものである。
【実施例1】
【0029】
ここで、図2乃至図4を参照して、本発明の実施例1のMISFETの製造工程を説明する。
図2参照
まず、p型シリコン基板11に素子分離領域12を形成したのち、全面にゲート絶縁膜となる絶縁膜を形成する。
例えば、減圧化学気相成長法(LPCVD法)を用いて厚さが、1.6nm〜5.0nm、例えば、2.4nmのゲート絶縁膜となるHfSiO2 膜13を堆積させる。
勿論、シリコン酸化膜等、他の材料からなる絶縁膜を形成しても良い。
【0030】
この堆積工程においては、Hf源として(t−C4 9 O)4 Hfを用い、Si源としてSi2 6 を用い、O源としてO2 またはO3 を用い、キャリアガスとしてN2 ガスを用いて成膜し、成膜のちに例えば、650℃でNH3 による窒化処理或いは450℃以下でのN2 プラズマ処理によりNを導入し、HfSiO2 膜13の組成比は(t−C4 9 O)4 Hfの流量で制御する。
【0031】
次いで、原料ガスとしてトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )を用いたCVD法により、500℃〜650℃、例えば、570℃の基板温度において、ゲート電極となる窒素を含有するシリコン膜であるSix N膜14を例えば、100nmの厚さに堆積させる。
この場合、Six N膜14の組成比xは、後述するように原料のトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )の組成比を反映して、ほぼx=3(窒素の原子数%としては25原子数%)となる。
【0032】
次いで、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを用いてSix N膜14及びHfSiO2 膜13を、50nm以下、例えば、30nmの幅に成形することによってゲート絶縁膜15及びゲート電極16からなるゲート構造を形成する。
【0033】
次いで、ゲート構造をマスクとして、P(リン)イオンを浅く注入することによってn型エクステンション領域17を形成する。
【0034】
図3参照
次いで、全面にSiO2 膜を形成したのち、異方性エッチングを施すことによってサイドウォール18を形成し、次いで、ゲート構造及びサイドウォール18をマスクとしてPイオンを注入することによってn型ソース・ドレイン領域19を形成するともに、ゲート電極16にPをドープする。
【0035】
次いで、全面にCo膜を堆積させたのち、熱処理により合金化することによって、n型ソース・ドレイン領域19の表面にCoシリサイド電極20を形成するとともに、ゲート電極16の表面に窒化Coシリサイド電極21を形成し、未反応のCo膜を除去する。
【0036】
次いで、全面にBPSGからなる層間絶縁膜22を堆積させたのち、Coシリサイド電極20及び窒化Coシリサイド電極21に対するビアホールを形成し、次いで、このビアホール内をTiN膜を介してWで埋め込んでプラグ23,24を形成することによって、本発明の実施例1のMISFETの基本構造が完成する。
【0037】
図4参照
図4は、Six N膜における組成比xの成膜温度依存性の説明図であり、併せて成膜速度の温度依存性も示している。
図から明らかなように、Six N膜における組成比xは温度によらずほぼ一定のx=3を示しており、これは、原料のトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )の原子数比Si/N=3を反映していると考えられる。
なお、図における多少のバラツキは測定精度に伴う測定誤差である。
【0038】
したがって、本発明の実施例1においては、組成比が安定し、且つ、組成ムラのないSix N膜を精度良く成膜することができる。
また、Six N膜の成膜工程において、NH3 を用いないCVD法を用いているのでゲート絶縁膜がダメージを受けることがない。
【0039】
また、Six N膜はソース・ドレイン形成等に伴う熱工程においても多結晶化せず、アモルファス状態に近いナノクリスタル或いはマイクロクリスタル的な状態あるので、不純物を高濃度にドープすることができ、それにより、ゲート絶縁膜との界面におけるゲート電極の空乏化の増大を抑制することができる。
【実施例2】
【0040】
次に、図5を参照して、本発明の実施例2のMISFETの製造工程を説明する。
図5参照
まず、上記の実施例1と同様に、p型シリコン基板11に素子分離領域12を形成したのち、全面にLPCVD法を用いて厚さが1.6nm〜5.0nm、例えば、2.4nmのゲート絶縁膜となるHfSiO2 膜13を堆積させる。
【0041】
次いで、原料ガスとしてトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )とSi2 6 を用いたCVD法により500℃〜650℃、例えば、570℃の基板温度において、ゲート電極となる窒素を含有するシリコン膜であるSix N膜31を例えば、100nmの厚さに堆積させる。
この場合、Six N膜31の組成比xは、原料のトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )とSi2 6 の流量比を反映した値となり、ここでは、窒素の原子数%としては5〜25原子数%、例えば、15原子数%となるように流量比を設定する。
【0042】
以降は、再び、上記の実施例1と全く同様に、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを用いてSix N膜31及びHfSiO2 膜13を、50nm以下、例えば、30nmの幅に成形することによってゲート絶縁膜15及びゲート電極32からなるゲート構造を形成する。
【0043】
次いで、ゲート構造をマスクとして、P(リン)イオンを浅く注入することによってn型エクステンション領域17を形成し、次いで、全面にSiO2 膜を形成したのち、異方性エッチングを施すことによってサイドウォール18を形成し、次いで、ゲート構造及びサイドウォール18をマスクとしてPイオンを注入することによってn型ソース・ドレイン領域19を形成するともに、ゲート電極32にPをドープする。
【0044】
次いで、全面にCo膜を堆積させたのち、熱処理により合金化することによって、n型ソース・ドレイン領域19の表面にCoシリサイド電極20を形成するともに、ゲート電極32の表面に窒化Coシリサイド電極33を形成し、未反応のCo膜を除去する。
【0045】
次いで、全面にBPSGからなる層間絶縁膜22を堆積させたのち、Coシリサイド電極20及び窒化Coシリサイド電極33に対するビアホールを形成し、次いで、このビアホール内をTiN膜を介してWで埋め込んでプラグ23,34を形成することによって、本発明の実施例2のMISFETの基本構造が完成する。
【0046】
本発明の実施例2においては、ゲート電極となるSix N膜を成膜する際に、原料ガスとしてトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )だけではなく、Si源であるSi2 6 も併せて用いているので、Six N膜の組成比xを3以上の任意の値に設定することができ、xが大きいほど低抵抗となる。
但し、xがあまり大きいと多結晶シリコンと変わらなくなり、熱工程に伴う多結晶化の問題が生ずるので、窒素の原子数%としては5原子数%以上、xとしては19以下にすることが望ましい。
【実施例3】
【0047】
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施例3のMISFETの製造工程を説明する。
図6参照
まず、上記の実施例1と同様に、p型シリコン基板11に素子分離領域12を形成したのち、全面にLPCVD法を用いて厚さが、1.6nm〜5.0nm、例えば、2.4nmのゲート絶縁膜となるHfSiO2 膜13を堆積させる。
【0048】
次いで、原料ガスとしてトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )とSi2 6 を用いたCVD法により500℃〜650℃、例えば、570℃の基板温度において、厚さが、例えば、10nmのSiw N膜41を堆積させる。
この場合、Siw N膜41の組成比wは、窒素の原子数%としては5〜25原子数%、例えば、15原子数%となるように流量比を設定する。
【0049】
次いで、原料ガスとしてTiCl4 を用い、キャリアガスとしてH2 を用いた熱CVD法によって厚さが、例えば、10nmのTi膜42を堆積させる。
この工程をゲート絶縁膜として必要な回数だけ交互に繰り返して、全体の厚さを例えば、50nmとする。
【0050】
次いで、H2 雰囲気中において500℃〜650℃、例えば、650℃の基板温度でアニールすることによって、(Siw N膜/Ti膜)n からなる積層膜43をTix Siy z 膜44に変換する。
【0051】
この場合のTix Siy z 膜44の組成比は、Siw N膜41の組成比wと、Siw N膜41とTi膜42の膜厚比とにより決まる。
なお、この時、H2 の還元作用によって、(Siw N膜/Ti膜)n に含まれるTiCl4 由来のClを還元除去することができる。
【0052】
図7参照
以降は、再び、上記の実施例1と全く同様に、フォトリソグラフィー工程とドライエッチング工程とを用いてTix Siy z 膜44及びHfSiO2 膜13を、50nm以下、例えば、30nmの幅に成形することによってゲート絶縁膜15及びゲート電極45からなるゲート構造を形成する。
【0053】
次いで、ゲート構造をマスクとして、P(リン)イオンを浅く注入することによってn型エクステンション領域17を形成し、次いで、全面にSiO2 膜を形成したのち、異方性エッチングを施すことによってサイドウォール18を形成し、次いで、ゲート構造及びサイドウォール18をマスクとしてPイオンを注入することによってn型ソース・ドレイン領域19を形成するともに、ゲート電極45にPをドープする。
【0054】
次いで、全面にCo膜を堆積させたのち、熱処理により合金化することによって、n型ソース・ドレイン領域19の表面にCoシリサイド電極20を形成するとともに、ゲート電極45の表面に窒化Coシリサイド電極46を形成し、未反応のCo膜を除去する。
【0055】
次いで、全面にBPSGからなる層間絶縁膜22を堆積させたのち、Coシリサイド電極20及び窒化Coシリサイド電極46に対するビアホールを形成し、次いで、このビアホール内をTiN膜を介してWで埋め込んでプラグ23,47を形成することによって、本発明の実施例3のMISFETの基本構造が完成する。
【0056】
本発明の実施例3においては、ゲート電極をTix Siy z 膜、即ち、金属窒化シリコン膜で形成しており、且つ、Siw N原料としてトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )を用いているので、組成ムラがなく且つ組成比が安定したTix Siy z 膜を形成することができ、トランジスタ特性にとって最適な仕事関数を有する組成のゲート電極を形成することが可能になる。
【実施例4】
【0057】
次に、図8を参照して、本発明の実施例4のMISFETを説明するが、ゲート電極構造が異なるだけで、基本的な製造工程は上記の実施例1乃至実施例3と同様であるので、ゲート電極構造のみを説明する。
図8参照
図8は、本発明の実施例4のMISFETの概略的断面図であり、ゲート電極51をTix Siy z 膜52からなる下層ゲートと、Six N膜53からなる上層ゲートとの2層構造によって形成したものである。
【0058】
この場合のTix Siy z 膜52は、上記の実施例3と全く同じ方法で成膜するものであり、厚さは、例えば、10nmとし、一方、Six N膜53は上記の実施例1或いは実施例2と全く同じ方法で成膜するものであり、厚さは、例えば、100nmとする。
【0059】
この実施例4においては、ドライエッチング加工性に劣るTix Siy z 膜52を薄くして、ドライエッチング加工性が多結晶シリコンと同様なSix N膜53を厚くしているので、ゲート構造の加工精度を高く保つことができる。
【0060】
また、トランジスタ特性に関与する仕事関数は、Tix Siy z 膜52の仕事関数が反映されるので、上記の実施例3と同様にトランジスタ特性にとって最適な仕事関数を有する組成のゲート電極を形成することが可能になる。
【実施例5】
【0061】
次に、図9を参照して、本発明の実施例5のMISFETを説明するが、この場合もゲート電極構造が異なるだけで、基本的な製造工程は上記の実施例3と同様であるので、ゲート電極構造のみを説明する。
図9参照
図9は、本発明の実施例5のMISFETの概略的断面図であり、ゲート電極61をTix Siy z 膜62からなる下層ゲートと、Ru膜63からなる上層ゲートとの2層構造によって形成したものである。
【0062】
この場合のTix Siy z 膜62は、上記の実施例3と全く同じ方法で成膜するものであり、厚さは、例えば、10nmとし、一方、Ru膜63の厚さは、例えば、100nmとする。
【0063】
この実施例5においては、上層ゲートとして金属膜の中ではドライエッチング加工性に優れるRuを用いているので、ゲート構造の加工精度を高く保つことができる。
また、トランジスタ特性に関与する仕事関数は、Tix Siy z 膜62の仕事関数が反映されるので、上記の実施例3と同様にトランジスタ特性にとって最適な仕事関数を有する組成のゲート電極を形成することが可能になる。
【0064】
また、実施例5においては、上層ゲートとしてpチャネル型MISFETのゲート電極となるRuを用いているので、CMOSの製造工程に適用した場合には、この上層ゲートのRuの堆積工程においてpチャネル型MISFET側にも堆積させることによって、nチャネル型MISFETの上層ゲートとpチャネル型MISFETのゲート電極を同時に形成することが可能になる。
【0065】
以上、本発明の各実施例を説明したが、本発明は各実施例に示した構成、条件、数値に限られるものではなく、各種の変更が可能であり、例えば、上記の各実施例においては、nチャネル型MISFETとして説明しているが、仕事関数との関係はあるがpチャネル型MISFETに適用しても良いものである。
【0066】
また、上記の各実施例においては、窒素を含むシリコン原料として現在入手可能なトリシリルアミン(N〔SiH3 3 )を用いているが、原理的には、トリシリルアミン(N〔SiH3 3 )に限られるものではなく、C及びOを含まず、且つ、N及びSiを主成分とする無機化合物であれば良い。
【0067】
また、上記の実施例2においては、トリシリルアミン(N〔SiH3 3 )に混合するSi源としてSi2 6 を用いているが、Si2 6 に限られるものではなく、SiH4 、Si3 8 、或いは、SiH2 Cl2 等の他のシランを用いても良いものである。
【0068】
また、上記の実施例3においては、金属源としてTiCl4 を用いているが、TiCl4 に限られるものではなく、TaCl5 等の他の金属塩化物等を用いても良いものである。
例えば、W、Mo、Coの塩化物、或いは、Ti、Ta、W、Mo、Coのフッ化物を用いても良いものである。
【0069】
また、上記の実施例4においては、金属をCVD法によって成膜しているが、蒸着法等のPVD法によって成膜して良いものであり、その場合には、上述の金属に加えてNi、Ru或いはPtを金属膜として堆積しても良いものである。
【0070】
また、上記の各実施例においては、ゲート絶縁膜としてHigh−k膜であるHfSiONを用いているが、HfSiONに限られるものではなく、例えば、HfO2 、HfSiO、HfAlO、或いはHfAlON等の他のHigh−k膜を用いても良いものである。
【0071】
さらには、ゲート絶縁膜はHigh−k膜に限られるものではなく、SiO2 ,SiON、或いは、Si3 4 等の絶縁膜を用いても良いものである。
【0072】
ここで、再び図1を参照して、改めて、本発明の詳細な特徴を説明する。
再び、図1参照
(付記1) シリコンと、前記シリコンに対して5〜30原子数%の窒素を含有する導電膜をゲート電極4の少なくとも一部として用いたことを特徴とする電界効果型半導体装置。
(付記2) シリコンと、前記シリコンに対して30〜200原子数%の金属元素を含む金属窒化シリコン層をゲート電極4として用いたことを特徴とする電界効果型半導体装置。
(付記3) 前記ゲート電極4が、ゲート絶縁膜2上に形成された前記金属窒化シリコン膜と、前記金属窒化シリコン膜上に形成された5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3とを積層した積層構造からなることを特徴とする付記2記載の電界効果型半導体装置。
(付記4) 前記ゲート電極4が、ゲート絶縁膜2上に形成された前記金属窒化シリコン膜と、前記金属窒化シリコン膜上に形成された金属膜との積層構造からなることを特徴とする付記2記載の電界効果型半導体装置。
(付記5) 前記金属窒化シリコン膜を構成する金属元素が、Ti、Ta、W、Mo、Co、Ni、Ru、或いは、Ptの少なくとも一つからなることを特徴とする付記2乃至4のいずれか1項に記載の電界効果型半導体装置。
(付記6) 半導体基板1上に、絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に、窒素を含有する無機シリコン原料を用いた化学気相堆積法を用いて5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜3を堆積する工程と、前記シリコン膜3をパターニングする工程と、前記半導体基板1にソース領域5及びドレイン領域6を形成する工程と、を有することを特徴とする電界効果型半導体装置の製造方法。
(付記7) 前記シリコン膜3を堆積する工程において、窒素を含有する無機シリコン原料に対して、SiH4 、Si2 6 、Si3 8 、或いは、SiH2 Cl2 のいずれを混合することを特徴とする付記6記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
(付記8) 前記シリコン膜3と積層状に金属膜を形成し、熱処理によって前記金属膜と前記シリコン膜を反応させる工程をさらに含むことを特徴とする付記6または7に記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
(付記9) 前記金属膜の堆積工程は、原料としてTi、Ta、W、Mo或いはCoの塩化物またはフッ化物のいずれかを用いたCVD法によって行われることを特徴とする付記9記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
(付記10) 前記窒素を含有する無機シリコン原料が、トリシリルアミン(N〔SiH3 3 )であることを特徴とする付記6乃至9のいずれか1に記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の活用例としては、絶縁ゲート型トランジスタのゲート電極が典型的なものであるが、ゲート電極に限られるものではなく、内部局所配線としても用いられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】本発明の実施例1のMISFETの途中までの製造工程の説明図である。
【図3】本発明の実施例1のMISFETの図2以降の製造工程の説明図である。
【図4】Six N膜における組成比xの成膜温度依存性の説明図である。
【図5】本発明の実施例2のMISFETの製造工程の説明図である。
【図6】本発明の実施例3のMISFETの途中までの製造工程の説明図である。
【図7】本発明の実施例3のMISFETの図6以降の製造工程の説明図である。
【図8】本発明の実施例4のMISFETの概略的断面図である。
【図9】本発明の実施例5のMISFETの概略的断面図である。
【符号の説明】
【0075】
1 半導体基板
2 ゲート絶縁膜
3 窒素を含有するシリコン膜
4 ゲート電極
5 ソース領域
6 ドレイン領域
11 p型シリコン基板
12 素子分離領域
13 HfSiO2
14 Six N膜
15 ゲート絶縁膜
16,32,45 ゲート電極
17 n型エクステンション領域
18 サイドウォール
19 n型ソース・ドレイン領域
20 Coシリサイド電極
21,33,46,54 窒化Coシリサイド電極
23,24,34,47,55,64 プラグ
31 Six N膜
41 Siw N膜
42 Ti膜
43 積層膜
44 Tix Siy z
51 ゲート電極
52 Tix Siy z
53 Six N膜
61 ゲート電極
62 Tix Siy z
63 Ru膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、絶縁膜を形成する工程と、前記絶縁膜上に、窒素を含有する無機シリコン原料を用いた化学気相堆積法を用いて5〜30原子数%の窒素を含有するシリコン膜を堆積する工程と、前記シリコン膜をパターニングする工程と、前記半導体基板にソース領域及びドレイン領域を形成する工程と、を有することを特徴とする電界効果型半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記シリコン膜を堆積する工程において、窒素を含有する無機シリコン原料に対して、SiH4 、Si2 6 、Si3 8 、或いは、SiH2 Cl2 のいずれを混合することを特徴とする請求項1記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記シリコン膜と積層状に金属膜を形成し、熱処理によって前記金属膜と前記シリコン膜を反応させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記窒素を含有する無機シリコン原料が、トリシリルアミン(N〔SiH3 3 )であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電界効果型半導体装置の製造方法。
【請求項5】
シリコンと、前記シリコンに対して5〜30原子数%の窒素を含有する導電膜をゲート電極の少なくとも一部として用いたことを特徴とする電界効果型半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−218661(P2008−218661A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−53217(P2007−53217)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】