説明

DC−DCコンバータ

【課題】出力短絡保護機能を設ける場合に、短絡電流をバイパスするバイパス回路を外部に設けることなく、内部回路(内部素子)を保護できるDC−DCコンバータの提供。
【解決手段】この発明は、直流電圧を昇圧して出力電圧を生成し、当該出力電圧の生成のために入力端子1と出力端子2との間に複数のMOSトランジスタM1〜M4が直列接続されたDC−DCコンバータである。MOSトランジスタM4は、自己の基板電位制御用のMOSトランジスタM41、M42を有する。DC−DCコンバータの定常動作時にはMOSトランジスタM42がオンし、MOSトランジスタM4の基板端子に出力端子2の電位が印加される。一方、DC−DCコンバータの出力短絡時にはMOSトランジスタM41がオンし、MOSトランジスタM4の基板端子に出力端子2とは反対側の電位が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャージポンプ方式のDC−DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のDC−DCコンバータの一例として、図7に示す構成の回路が知られている。
図7のDC−DCコンバータは、正方向4倍昇圧回路であって、入力端子1に印加される直流電源4の入力電圧VINを4倍に昇圧し、この昇圧した電圧を出力端子2から出力電圧VOUTとして出力するようになっている。
このため、図7のDC−DCコンバータは、図示のように、スイッチングトランジスタであるMOSトランジスタM1〜M8と、昇圧用のコンデンサC1〜C3と、出力コンデンサCOと、インバータ3と、を備えている。ここで、MOSトランジスタM1〜M4、M5、M7はP型のMOSトランジスタであり、MOSトランジスタM6、M8はN型のMOSトランジスタである。
【0003】
MOSトランジスタM2、M4、M5、M6は、クロック信号CLKによってオンオフ動作するようになっている。また、MOSトランジスタM1、M3、M7、M8は、クロック信号CLKをインバータ3で反転した反転信号によってオンオフ動作するようになっている。
このような構成の図7のDC−DCインバータでは、第1の期間と第2の期間の動作を交互に繰り返す。
すなわち、第1の期間には、MOSトランジスタM1、M3、M6、M7がオンになり、MOSトランジスタM2、M4、M5、M8がオフになる。一方、第2の期間には、MOSトランジスタM2、M4、M5、M8がオンになり、MOSトランジスタM1、M3、M6、M7がオフになる。
【0004】
このため、第1の期間では、入力電圧VIN(例えば5V)によりコンデンサC1が充電され、その充電電圧5VがコンデンサC1の端子電圧C1Pとなる。このとき、コンデンサC2は前回の充電により10Vになっており、これに入力電圧5Vが加算されて15Vとなり、この15VがコンデンサC3に充電されて充電電圧15Vが端子電圧C3Pとなる。
一方、第2の期間では、入力電圧5VにコンデンサC1の電圧5Vが加算され、コンデンサC1の端子電圧C1Pが10Vになり、これによりコンデンサC2が10Vまで充電される。このとき、コンデンサC3は前回の充電により15Vになっており、これに入力電圧5Vが加算されて20Vとなり、この20Vが出力端子2の出力電圧VOUTとなる。
【0005】
ところで、図7のDC−DCコンバータでは、入力端子1と出力端子との間に、MOSトランジスタM1〜M4が直列に接続されている。また、MOSトランジスタM1〜M4は、図示のようにドレイン端子と基板端子間に寄生ダイオードD1〜D4を有する。
このため、例えばMOSトランジスタM1〜M4がオフ状態であっても、出力端子2が何らかの理由で短絡状態になると、寄生ダイオードD1〜D4は順方向の接続状態となって入力端子1と出力端子2の間に、すなわち回路(具体的には集積回路)内に過大な電流が流れる。このため、アルミ配線の溶断、あるいはデバイスの破壊に至るということが考えられる。
【0006】
このような課題を解消するために、例えば特許文献1に記載の発明が知られている。
特許文献1に記載の発明は、チャージポンプ回路の出力端に接続された負荷が接地電圧に短絡したときに、チャージポンプ回路の前段にフの字特性を持った短絡保護回路を有する定電圧回路を設けて、かつチャージポンプ回路内を流れる短絡電流をバイパスするスイッチング回路を設けるようにしたものである。
しかし、特許文献1に記載の発明では、チャージポンプ回路の前段にフの字特性を持った短絡保護回路を有する定電圧回路を設ける必要があり、チャージポンプ回路の出力端に接続された負荷が接地電圧に短絡したときに、その短絡電流をバイパスする回路をチャージポンプ回路の外部に設ける必要があり、このためにバイパス用の配線が必要になる。
【特許文献1】特開平5−276011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、出力短絡保護機能を設ける場合に、チャージポンプ回路の前段にフの字特性を持った短絡保護回路を有する定電圧回路を設ける必要がなく、短絡電流をバイパスするバイパス回路を外部に設けることなく、内部回路(内部素子)を保護することが可能なDC−DCコンバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決し本発明の目的を達成するために、各発明は、以下のような構成からなる。
第1の発明は、直流電圧を昇圧して出力電圧を生成し、当該出力電圧の生成のために入力端子と出力端子との間にN個(Nは2以上の整数)のスイッチングトランジスタが直列接続されるDC−DCコンバータにおいて、前記N個のスイッチングトランジスタは、ドレイン端子あるいはソース端子と基板端子間に寄生ダイオード構造を有し、前記N個のスイッチングトランジスタのうちの(N−M)個(Mは1以上の整数)のスイッチングトランジスタは、アノードが前記入力端子側となりカソードが前記出力端子側となる寄生ダイオードを有し、あるいは、前記N個のスイッチングトランジスタのうちの(N−M)個(Mは1以上の整数)のスイッチングトランジスタは、カソードが前記入力端子側となりアノードが前記出力端子側となる寄生ダイオードを有し、前記M個のスイッチングトランジスタの基板端子には、定常動作時に第1電位が印加され、出力短絡時に第2電位が印加されるようになっている。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記M個のスイッチングトランジスタは、自己の基板電位として定常動作時に第1電圧を選択する第1トランジスタと、自己の基板電位として出力短絡時に第2電圧を選択する第2トランジスタと、を含む。
第3の発明は、第2の発明において、前記出力端子の出力電圧に基づいて定常動作状態または出力短絡状態のいずれかを検出する検出手段と、前記検出手段が定常動作状態を検出したときには前記第1トランジスタをオンにし、前記検出手段が出力短絡状態を検出したときには前記第2トランジスタをオンにする制御手段と、をさらに備える。
【0010】
第4の発明は、第3の発明において、前記検出手段は、前記出力電圧を分圧して分圧電圧を出力する分圧手段と、前記分圧手段の分圧電圧を基準電圧と比較し、当該比較結果に基づいて出力短絡状態のときに出力短絡信号を出力する比較手段と、前記比較手段から出力される出力短絡信号の出力継続時間を計測し、当該計測値が所定値以上の場合に前記第2トランジスタをオンにする信号を出力する計測手段と、を備える。
第5の発明は、第2の発明において、前記出力端子に流れる出力電流に基づいて出力短絡状態を検出する検出手段と、前記検出手段が出力短絡状態を検出しないときには前記第1トランジスタをオンにし、前記検出手段が出力短絡状態を検出したときには前記第2トランジスタをオンにする制御手段と、をさらに備える。
【0011】
第6の発明は、第5の発明において、前記検出手段は、前記出力端子に流れる出力電流を電圧に変換する電流センスアンプと、前記電流センサアンプの出力電圧を基準電圧と比較し、当該比較結果に基づいて出力短絡状態のときに出力短絡信号を出力する比較手段と、前記比較手段から出力される出力短絡信号の出力継続時間を計測し、当該計測値が所定値以上の場合に前記第2トランジスタをオンさせるためのトリガ信号を出力する計測手段と、前記計測手段から出力される前記第2トランジスタをオンさせるためのトリガ信号から前記第2トランジスタをオンにする信号を生成し保持するラッチ回路と、を備える。
このような構成の本発明によれば、出力短絡保護機能を設ける場合に、チャージポンプ回路の前段にフの字特性を持った短絡保護回路を有する定電圧回路を設ける必要がなく、短絡電流をバイパスするバイパス回路を外部に設けることなく、内部回路(内部素子)を保護することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態のDC−DCコンバータは、図7に示す回路を基本とし、図7の回路に図1に示すような出力短絡保護機能を追加したものである。
図1は、図7のDC−DCコンバータの入力端子1と出力端子2との間に直列接続される、スイッチングトランジスタであるMOSトランジスタM1〜M4の部分のみを抜き出したものであり、その一部に出力短絡保護機能が追加されている。
このため、第1実施形態は、出力短絡の有無に応じてMOSトランジスタM4に供給される基板電位を変更(制御)できるように、MOSトランジスタM4は基板電位制御用のMOSトランジスタM41、M42を備えている。
また、この第1実施形態は、MOSトランジスタM41、42のオンオフ制御を出力短絡に応じて行うために、図1に示すように、出力電圧検出回路11と、コンパレータ(比較回路)12と、ナンド回路(NAND回路)13と、基板電位制御回路14と、を備えている。
【0013】
出力電圧検出回路11は、出力電圧VOUTを検出する回路であり、出力電圧VOUTを分圧抵抗R1、R2で分圧する。この分圧電圧は、コンパレータ12の反転入力端子(−端子)に供給される。
コンパレータ12は、出力電圧検出回路11の分圧電圧を基準電圧VRと比較し、分圧電圧が基準電圧VR以下の場合、すなわちDC−DCコンバータの出力短絡の場合にHレベルを出力する。また、コンパレータ12は、分圧電圧が基準電圧VR以上の場合、すなわち出力短絡ではなく定常動作(通常の昇圧動作)の場合にはLレベルを出力する。
ナンド回路13は、ソフトスタート期間終了信号によってコンパレータ12の出力信号を制御する。ソフトスタート期間終了信号は、DC−DCコンバータの起動時にソフトスタート期間T1だけLレベルであり、ソフトスタート期間T1の経過後にHレベルとなる信号である。このため、ナンド回路13の出力信号は、ソフトスタート期間T1の経過後に、DC−DCコンバータの出力短絡があってコンパレータ12の出力信号がHレベルになる場合に、Lレベルになる。
【0014】
基板電位制御回路14は、ナンド回路13の出力信号に基づいてMOSトランジスタM41、M42を選択的にオンする。すなわち、基板電位制御回路14は、ソフトスタート期間T1は、MOSトランジスタM42をオンにする。ソフトスタート期間T1の経過後、コンパレータ12の出力信号がHレベルであってDC−DCコンバータが出力短絡の場合に、MOSトランジスタM41をオンにする。これにより、MOSトランジスタM4の基板端子(サブストレート端子)には、MOSトランジスタM3のソース端子の電位が印加される。
一方、コンパレータ12の出力信号がLレベルであってDC−DCコンバータが定常動作の場合に、MOSトランジスタM42をオンにする。これにより、MOSトランジスタM4の基板端子には、出力端子2の電位が印加される。
【0015】
次に、基板電位制御回路14の具体的な回路構成について、図2を参照しながら説明する。
基板電位制御回路14は、図2に示すように、MOSトランジスタM11、M12と、抵抗R3、R4と、インバータ141と、を備えている。
MOSトランジスタM11のゲートには、ナンド回路13の出力信号をインバータ141で反転した信号が供給される。MOSトランジスタM11のソースは接地されている。MOSトランジスタM11のドレインは、MOSトランジスタM41のゲートに接続されるとともに、抵抗R3を介して出力電圧VOUTが印加されるようになっている。
MOSトランジスタM12のゲートには、ナンド回路13の出力信号が供給される。MOSトランジスタM12のソースは接地されている。MOSトランジスタM12のドレインは、MOSトランジスタM42のゲートに接続されるとともに、抵抗R4を介して出力電圧VOUTが印加されるようになっている。
【0016】
次に、MOSトランジスタM4およびMOSトランジスタM41、M42の構造について、図3を参照して説明する。
P型の半導体基板301の表面にN型ウェル領域302が形成され、このN型ウェル領域302内に、MOSトランジスタM4およびMOSトランジスタM41、M42が形成されるとともに、N型ウェル領域302に電位供給するための高濃度N+領域303を有する。
MOSトランジスタM4は、高濃度P+領域304と、高濃度P+領域305と、ゲート電極306とからなる。MOSトランジスタM41は、高濃度P+領域307のドレインと、高濃度P+領域308のソースと、ゲート電極309とからなる。MOSトランジスタM42は、高濃度P+領域310のドレインと、高濃度P+領域308のソースと、ゲート電極311とからなる。
【0017】
次に、第1実施形態の動作例について、図1、図2、図4などを参照して説明する。
いま、第1実施形態に係るDC−DCコンバータが起動されると、この起動開始に伴って、ナンド回路13に供給されるソフトスタート期間終了信号がLレベルとなり、このLレベルがソフトスタート期間T1だけ継続される。
ソフトスタート期間T1の間、コンパレータ12の出力信号に関係なくソフトスタート期間T1中はソフトスタート期間終了信号がLレベルのため、ナンド回路13の出力信号はHレベルとなる。このため、図2に示す基板電圧制御回路14のMOSトランジスタM12はオンになるので、MOSトランジスタM42はオンになる。このときのMOSトランジスタM4の等価回路は、図4(A)に示すような状態になる。
【0018】
そして、ソフトスタート期間T1を経過すると、ソフトスタート期間終了信号はLレベルからHレベルになり、以後、Hレベルを維持する。
コンパレータ12は、出力電圧検出回路11の分圧電圧を基準電圧VRと比較し、この比較結果に応じた出力信号を出力する。すなわち、コンパレータ12は、分圧電圧が基準電圧VR以上の場合、定常動作の場合にはLレベルを出力する。一方、分圧電圧が基準電圧VR以下の場合、すなわち出力短絡の場合にHレベルを出力する。
ナンド回路13の出力信号は、コンパレータ12の出力信号がLレベルであって、DC−DCコンバータが定常動作の場合には、Hレベルとなる。このため、図2に示す基板電圧制御回路14のMOSトランジスタM12はオンになるので、MOSトランジスタM42はオンになる。このときのMOSトランジスタM4の等価回路は、図4(A)に示すような状態になり、MOSトランジスタM4の基板端子には、出力端子2の電位が印加される。
【0019】
これにより、DC−DCコンバータが定常動作の場合には、MOSトランジスタM4の寄生ダイオードD4の向きは、MOSトランジスタM1〜M3の寄生ダイオードD1〜D3の向きと同様になる。このため、MOSトランジスタM4は、MOSトランジスタM1〜M3と同様に昇圧動作を行うことができる。
一方、ナンド回路13の出力信号は、コンパレータ12の出力信号がHレベルであって、DC−DCコンバータが出力短絡した場合には、Lレベルとなる。このため、図2に示す基板電圧制御回路14のMOSトランジスタM11がオンになるので、MOSトランジスタM41はオンになる。このときのMOSトランジスタM4の等価回路は、図4(B)に示すような状態になり、MOSトランジスタM4の基板端子には、出力端子2とは反対側の端子に接続される。
【0020】
これにより、DC−DCコンバータの出力が短絡した場合、DC−DCコンバータの内部回路を構成するMOSトランジスタM1〜M4のうち、MOSトランジスタM1〜M3の寄生ダイオードD1〜D3は順方向に接続されるが、MOSトランジスタM4の寄生ダイオードD4は逆方向に接続されるので、短絡電流がスイッチングトランジスタの寄生構造によりIC内部に流れることを防止できる。
以上のように、第1実施形態によれば、出力短絡保護機能を設ける場合に、内部に流れる短絡電流をバイパスするバイパス回路を外部に設ける必要がなく、内部回路(内部素子)を保護することができる。
また、第1実施形態では、チャージポンプ回路の前段にフの字特性を持った短絡保護回路を有する定電圧回路を設ける必要がないので、出力短絡保護機能を設ける場合にその分の面積が不要となって、省面積、低コストで出力短絡保護機能を実現できる。
【0021】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態のDC−DCコンバータは、図7に示す回路を基本とし、この回路に図5に示すような出力短絡保護機能を追加したものである。
この第2実施形態が図1の第1実施形態の構成と異なるのは、第1実施形態では出力短絡を出力端子2の出力電圧VOUTを用いて検出するようにしたのに対し、第2実施形態では出力短絡を出力端子2に流れる電流Iを用いて検出するようにした点にある。
このため、第2実施形態は、MOSトランジスタM41、42のオンオフ制御を出力短絡に応じて行うために、図5に示すように、電流検出回路15と、ナンド回路(NAND回路)13と、短絡検出信号保持回路16と、基板電位制御回路14と、を備えている。
【0022】
すなわち、第2実施形態は、図1の出力電圧検出回路11およびコンパレータ12を図5の電流検出回路15に置き換えたものである。同一の構成要素には同一符号を付してその説明をできるだけ省略する。
電流検出回路15は、出力端子2に流れる電流、すなわち出力端子2とMOSトランジスタM4との間に接続される電流検出抵抗R5に流れる電流Iを検出する。そして、その検出電流Iが所定値以下であって、DC−DCコンバータが定常動作の場合には、Lレベルの出力信号を出力する。一方、その検出電流Iが所定値以上であって、DC−DCコンバータが出力短絡の場合には、Hレベルの出力信号を出力する。
【0023】
ナンド回路13は、ソフトスタート期間終了信号によって電流検出回路15の出力信号を制御する。ソフトスタート期間終了信号は、DC−DCコンバータの起動時にソフトスタート期間T1だけLレベルであり、ソフトスタート期間T1の経過後にHレベルとなる信号である。このため、ナンド回路13の出力信号は、ソフトスタート期間T1の経過後に、DC−DCコンバータの出力短絡があって、電流検出回路15の出力信号がHレベルになる場合に、Lレベルになる。
短絡検出信号保持回路16は、ラッチ回路構成になっており、ソフトスタート期間内はHレベル出力を基板電位制御回路14に出力する。ソフトスタート期間終了後は、ナンド回路13の出力がHレベルの場合は、Hレベル出力を基板電位制御回路14に出力する。出力端子2が短絡して短絡電流が流れ、ナンド回路13の出力がLレベルになった場合はLレベル出力を基板電位制御回路14に出力する。短絡電流が流れなくなりナンド回路13の出力がHレベルに復帰しても、短絡検出信号保持回路16はLレベル出力を維持して基板電位制御回路14に出力し続ける。
【0024】
基板電位制御回路14は、短絡検出信号保持回路16の出力信号に基づいてMOSトランジスタM41、M42を選択的にオンする。すなわち、基板電位制御回路14は、短絡検出信号保持回路16の出力信号がLレベルであってDC−DCコンバータが出力短絡の場合に、MOSトランジスタM41をオンにする。また、短絡検出信号保持回路16の出力信号の出力信号がHレベルであってDC−DCコンバータが定常動作の場合に、MOSトランジスタM42をオンにする。
【0025】
次に、電流検出回路15の具体的な構成について、図6を参照して説明する。
この電流検出回路15は、図6に示すように、電流センスアンプ151と、コンパレータ152と、を備えている。
電流センスアンプ151は、電流検出抵抗R5に流れる電流Iを電圧値に変換し、変換した電圧を増幅して出力電圧を出力する。このため、電流センスアンプ151の2つの入力端子は、電流検出抵抗R5の両端に接続されている。電流センスアンプ151の出力電圧は、コンパレータ152の非反転入力端子(+入力端子)に供給される。
【0026】
このような構成の電流センスアンプ151は、DC−DCコンバータが定常動作の場合には所定範囲の出力電圧となり、DC−DCコンバータが出力短絡の場合には過大な短絡電流が流れて出力電圧がその所定範囲よりも相対的に相当に大きくなる。
コンパレータ152は、電流センスアンプ151の出力電圧を基準電圧VRと比較し、その出力電圧が基準電圧VR以上の場合、すなわち出力短絡の場合にHレベルを出力する。また、コンパレータ152は、その出力電圧が基準電圧VR以下の場合、すなわち出力短絡ではなく定常動作の場合にはLレベルを出力する。
以上のような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用・効果を実現することができる。
【0027】
(第1、第2実施形態の変形例)
次に、第1実施形態の変形例について、図1を参照して説明する。
この第1実施形態の変形例は、図1のコンパレータ12の出力端子とナンド回路13の入力端子との間に、計測回路を設けるようにした。
この計測回路は、コンパレータ12からの出力信号としてHレベルの信号が出力されたとき、すなわちコンパレータ12から出力短絡を示す旨のHレベルの信号が出力されたときに、その信号の継続時間を計測し、この計測値が所定値以上になったときに、Hレベルの信号を出力する。
このため、第1実施形態の変形例によれば、DC−DCコンバータの出力電圧のノイズによる影響などを受けずに出力短絡を確実に検出し、出力短絡を検出したときには基板電位制御回路14がMOSトランジスタM41をオンできる。
【0028】
次に、第2実施形態の変形例について、図5を参照して説明する。
この第2実施形態の変形例は、図5の電流検出回路15の出力端子とナンド回路13の入力端子との間に、計測回路を設けるようにした。
この計測回路は、電流検出回路15からの出力信号としてHレベルの信号が出力されたとき、すなわち電流検出回路15から出力短絡を示す旨のHレベルの信号が出力されたときに、その信号の継続時間を計測し、この計測値が所定値以上になったときに、Hレベルの信号を出力する。
このため、第2実施形態の変形例によれば、DC−DCコンバータの出力電圧のノイズによる影響などを受けずに出力短絡を確実に検出し、出力短絡を検出したときには基板電位制御回路14がMOSトランジスタM41をオンできる。
【0029】
(その他の実施形態)
上記の実施形態では、DC−DCコンバータの入力端子1と出力端子2との間に直列接続されるMOSトランジスタM1〜M4のうち、MOSトランジスタM4のみについて出力短絡保護機能を設けるようにした。
しかし、出力短絡保護機能は、MOSトランジスタM1〜M4のうちの何れか1つに設ければ良い。また、MOSトランジスタM1〜M4のうちの所定の2つ以上に設けても良い。この場合には、その個数に応じて基板電位制御回路14を追加すれば良い(図1参照)。
また、上記の実施形態は、正の4倍昇圧回路の場合について説明したが、正の2倍昇圧や正の3倍昇圧などの場合についても適用可能である。
【0030】
また、上記の実施形態は、入力端子VINと出力端子VOUT間に直列接続されたPチャネルトランジスタを使用した正方向昇圧回路の場合について説明したが、入力端子VINと出力端子VOUT間に直列接続されたNチャネルトランジスタを使用した負方向昇圧回路についても適用可能である。
この場合には、Nチャネルトランジスタはドレイン端子と基板端子間に寄生ダイオード構造を有し、その寄生ダイオードの向きは、上記の実施形態のPチャネルトランジスタの寄生ダイオードの向きとは逆になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明のDC−DCコンバータの第1実施形態の出力短絡保護機能に係る部分の構成を示す図である。
【図2】基板電位制御回路の具体例を示す回路図である。
【図3】MOSトランジスタM4およびMOSトランジスタM41、M42の構造例を示す断面図である。
【図4】MOSトランジスタM4の動作時の等価回路である。
【図5】本発明のDC−DCコンバータの第2実施形態の出力短絡保護機能に係る部分の構成を示す図である。
【図6】電流検出回路の具体例を示す回路図である。
【図7】従来装置の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0032】
1・・・入力端子、2・・・出力端子、11・・・出力電圧検出回路、12・・・コンパレータ、13・・・ナンド回路、14・・・基板電位制御回路、15・・・電流検出回路、M1〜M4・・・スイッチング用のMOSトランジスタ、M41、M42・・・基板電位制御用のMOSトランジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を昇圧して出力電圧を生成し、当該出力電圧の生成のために入力端子と出力端子との間にN個(Nは2以上の整数)のスイッチングトランジスタが直列接続されるDC−DCコンバータにおいて、
前記N個のスイッチングトランジスタは、ドレイン端子あるいはソース端子と基板端子間に寄生ダイオード構造を有し、
前記N個のスイッチングトランジスタのうちの(N−M)個(Mは1以上の整数)のスイッチングトランジスタは、アノードが前記入力端子側となりカソードが前記出力端子側となる寄生ダイオードを有し、
あるいは、前記N個のスイッチングトランジスタのうちの(N−M)個(Mは1以上の整数)のスイッチングトランジスタは、カソードが前記入力端子側となりアノードが前記出力端子側となる寄生ダイオードを有し、
前記M個のスイッチングトランジスタの基板端子には、定常動作時に第1電位が印加され、出力短絡時に第2電位が印加されるようになっていることを特徴とするDC−DCコンバータ。
【請求項2】
前記M個のスイッチングトランジスタは、
自己の基板電位として定常動作時に第1電圧を選択する第1トランジスタと、
自己の基板電位として出力短絡時に第2電圧を選択する第2トランジスタと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項3】
前記出力端子の出力電圧に基づいて定常動作状態または出力短絡状態のいずれかを検出する検出手段と、
前記検出手段が定常動作状態を検出したときには前記第1トランジスタをオンにし、前記検出手段が出力短絡状態を検出したときには前記第2トランジスタをオンにする制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記出力電圧を分圧して分圧電圧を出力する分圧手段と、
前記分圧手段の分圧電圧を基準電圧と比較し、当該比較結果に基づいて出力短絡状態のときに出力短絡信号を出力する比較手段と、
前記比較手段から出力される出力短絡信号の出力継続時間を計測し、当該計測値が所定値以上の場合に前記第2トランジスタをオンにする信号を出力する計測手段と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項5】
前記出力端子に流れる出力電流に基づいて出力短絡状態を検出する検出手段と、
前記検出手段が出力短絡状態を検出しないときには前記第1トランジスタをオンにし、前記検出手段が出力短絡状態を検出したときには前記第2トランジスタをオンにする制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載のDC−DCコンバータ。
【請求項6】
前記検出手段は、
前記出力端子に流れる出力電流を電圧に変換する電流センスアンプと、
前記電流センサアンプの出力電圧を基準電圧と比較し、当該比較結果に基づいて出力短絡状態のときに出力短絡信号を出力する比較手段と、
前記比較手段から出力される出力短絡信号の出力継続時間を計測し、当該計測値が所定値以上の場合に前記第2トランジスタをオンさせるためのトリガ信号を出力する計測手段と、
前記計測手段から出力される前記第2トランジスタをオンさせるためのトリガ信号から前記第2トランジスタをオンにする信号を生成し保持するラッチ回路と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のDC−DCコンバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−57264(P2010−57264A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219411(P2008−219411)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】