説明

エポキシ樹脂組成物、Bステージフィルム、積層フィルム、銅張り積層板及び多層基板

【課題】銅箔等の部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できるエポキシ樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、硬化促進剤としてシラン骨格を有するイミダゾール化合物と、充填剤とを含み、上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記活性エステル化合物の含有量が50〜200重量部の範囲内であり、かつ上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量が0.5〜7重量部の範囲内であるエポキシ樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、硬化促進剤と、充填剤とを含むエポキシ樹脂組成物、並びに該エポキシ樹脂組成物を用いたBステージフィルム、積層フィルム、銅張り積層板及び多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層板及びプリント配線板等の電子部品を形成するために、様々なエポキシ樹脂組成物が用いられている。
【0003】
上記エポキシ樹脂組成物の一例として、下記の特許文献1には、特定の複素環基を有する化合物と、エポキシ樹脂と、活性エステル化合物とを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。このエポキシ樹脂組成物には、硬化促進剤及びフィラーを添加できる。ここでは、吸水率が低く、誘電特性に優れており、かつ耐熱性及び寸法安定性が高い硬化物を得ることができることが記載されている。
【0004】
また、下記の特許文献2には、エポキシ樹脂と、イミダゾールシラン又はジメチルアミノシランとを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。このエポキシ樹脂組成物には、上記成分とは別の硬化剤及び硬化促進剤、並びに充填剤を添加できる。ここでは、エポキシ樹脂組成物又は該エポキシ樹脂組成物の硬化物の接着性及び貯蔵安定性を高めることができることが記載されている。
【0005】
下記の特許文献3には、エポキシ樹脂と、フェノール樹脂と、イミダゾールシランと、無機充填剤とを含むエポキシ樹脂組成物が開示されている。このエポキシ樹脂組成物には、上記成分とは別の硬化剤及び硬化促進剤を添加できる。ここでは、エポキシ樹脂組成物又はエポキシ樹脂組成物の硬化物の接着性及び耐湿性を高めることができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−028498号公報
【特許文献2】特開2001−187836号公報
【特許文献3】特開2002−128872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に記載のような従来のエポキシ樹脂組成物では、該エポキシ樹脂組成物を用いた多層基板等を用いて、HAST試験を行ったときに、多層基板にクラックが生じることがある。特に、活性エステル化合物を含むエポキシ樹脂組成物を用いた場合に、上記クラックが容易に生じる傾向がある。
【0008】
なお、HAST試験とは、高温高湿一定バイアスによる促進テストであり、信頼性を確認する促進試験である。
【0009】
本発明の目的は、銅箔等の部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できるエポキシ樹脂組成物、並びに該エポキシ樹脂組成物を用いたBステージフィルム、積層フィルム、銅張り積層板及び多層基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、硬化促進剤としてシラン骨格を有するイミダゾール化合物と、充填剤とを含み、上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記活性エステル化合物の含有量が50〜200重量部の範囲内、かつ上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量が0.5〜7重量部の範囲内である、エポキシ樹脂組成物が提供される。
【0011】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物のある特定の局面では、硬化剤促進剤としてシラン骨格を有しないイミダゾール化合物がさらに含まれており、上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物100重量部に対して、上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の含有量が100〜300重量部の範囲内である。
【0012】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物の他の特定の局面では、硬化剤として、ビフェニレン骨格及びジシクロペンタジエン骨格の内の少なくとも一種を有するフェノール化合物がさらに含まれており、上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記フェノール化合物の含有量が5〜100重量部の範囲内である。
【0013】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物のさらに他の特定の局面では、上記エポキシ樹脂が、23℃で液状の液状エポキシ樹脂を含み、上記エポキシ樹脂の合計100重量%中、上記液状エポキシ樹脂の含有量が30〜80重量%の範囲内である。
【0014】
本発明に係るBステージフィルムは、本発明に従って構成されたエポキシ樹脂組成物がフィルム状に成形されたものである。
【0015】
本発明に係る積層フィルムは、基材と、該基材の一方の面に積層されており、かつ本発明に従って構成されたBステージフィルムとを備える。
【0016】
本発明に係る銅張り積層板は、銅箔と、該銅箔の一方の面に積層されており、かつ本発明に従って構成されたBステージフィルムとを備える。
【0017】
本発明に係る多層基板は、回路基板と、該回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層とを備え、上記硬化物層が、本発明に従って構成されたBステージフィルムを硬化させることにより形成されている。
【0018】
本発明に係る多層基板のある特定の局面では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されており、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層がさらに備えられている。
【0019】
本発明に係る多層基板の他の特定の局面では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔がさらに備えられており、上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されている。
【0020】
本発明に係る多層基板のさらに他の特定の局面では、上記銅箔がエッチング処理されており、銅回路である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂、活性エステル化合物、シラン骨格を有するイミダゾール化合物及び充填剤を含み、活性エステル化合物及び上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量が上記特定の範囲内であるので、エポキシ樹脂組成物を銅箔等の部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できる。例えば、HAST試験が行われたときに、積層物にクラックが生じ難い。このため、本発明に係るエポキシ樹脂組成物の使用により、信頼性が高い各種の電子部品等を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0023】
(エポキシ樹脂組成物)
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、硬化促進剤としてシラン骨格を有するイミダゾール化合物と、充填剤とを含む。この組成の採用により、エポキシ樹脂組成物を銅箔等の部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できる。特にHAST試験が行われたときに、積層物にクラックが生じ難い。
【0024】
なお、HAST試験とは、高温高湿一定バイアスによる促進テストであり、信頼性を確認する促進試験である。
【0025】
上記エポキシ樹脂は、少なくとも2つのエポキシ基を有する有機化合物をいう。上記エポキシ樹脂は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記エポキシ樹脂は、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができ、特に限定されない。上記エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂及びアントラセン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0027】
上記エポキシ樹脂は、23℃で液状のエポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合には、エポキシ樹脂組成物の硬化物が曲げられときに、割れ難くなる。さらに、硬化物がカッター等で切断されたときに、切り屑が生じ難くなる。
【0028】
エポキシ樹脂組成物に含まれているエポキシ樹脂の合計100重量%中、上記液状エポキシ樹脂の含有量は30〜100重量%の範囲内であることが好ましく、30〜80重量%の範囲内であることがより好ましい。上記液状エポキシ樹脂の含有量が上記範囲内であると、硬化物が曲げられたときにより一層割れ難くなり、かつ切断されたときに切り屑がより一層生じ難くなる。
【0029】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として活性エステル化合物を含む。
【0030】
上記活性エステル化合物は、エステル基を2個以上有することが好ましく、エステル基を3個以上有することがより好ましい。上記活性エステル化合物は、例えば、特開2002−12650号公報及び特開2004−169021号公報等に記載されている。上記活性エステル化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記活性エステル化合物は、従来公知の方法により得ることができる。上記活性エステル化合物は、例えば、分子内に2個以上のエステル結合を有するカルボン酸と、芳香族ヒドロキシ化合物とを用いて、ショッテン・バウマン反応により得ることができる。上記分子内に2個以上のエステル結合を有するカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸及び安息香酸等が挙げられる。上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン等が挙げられる。
【0032】
上記活性エステル化合物の具体例としては、ジ(α−ナフチル)イソフタレート等が挙げられる。上記活性エステル化合物の市販品としては、DIC社製の商品名「EXB−9451」等が挙げられる。
【0033】
上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記活性エステル化合物の含有量は50〜200重量部の範囲内である。上記活性エステル化合物の含有量が上記範囲内であるため、エポキシ樹脂組成物を部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できる。
【0034】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、上記活性エステル化合物に加えて、該活性エステル化合物以外の他の硬化剤を含んでいてもよい。上記他の硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0035】
上記他の硬化剤としては、フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物及びジシアンジアミド等が挙げられる。なかでも、フェノール化合物が好ましい。
【0036】
上記フェノール化合物としては、ノボラック型フェノール、ビフェノール型フェノール、ナフタレン型フェノール、ジシクロペンタジエン型フェノール、アラルキル型フェノール及びジシクロペンタジエン型フェノール等が挙げられる。
【0037】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化剤として、ビフェニレン骨格及びジシクロペンタジエン骨格の内の少なくとも一種を有するフェノール化合物を含むことが好ましい。この場合には、硬化物の誘電正接をより一層低くすることができ、かつ硬化物の表面を粗化処理したときにより一層微細な孔を形成できる。
【0038】
上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記フェノール化合物の含有量は、5〜100重量部の範囲内であることが好ましい。上記フェノール化合物の含有量が上記範囲内である場合には、硬化物の誘電正接をさらに一層低くすることができ、かつ粗化処理された硬化物の表面にさらに一層微細な孔を形成できる。
【0039】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、硬化促進剤としてシラン骨格を有するイミダゾール化合物を含む。
【0040】
上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物は、特開平9−169871号公報、特開2001−187836号公報及び特開2002−128872号公報等に記載されている。上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0041】
上記シラン骨格は、公知のシランカップリング剤と同様に、有機物と珪素とから構成される。上記シラン骨格を含有するイミダゾール化合物は、水酸基を有しないことが好ましい。シラン骨格を有し、かつ水酸基を有しないイミダゾール化合物の市販品としては、日鉱金属社製の商品名「IM−1000」等が挙げられる。
【0042】
上記エポキシ樹脂100重量部に対して、上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量は0.5〜7重量部の範囲内である。上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量が上記範囲内であるため、エポキシ樹脂組成物を部材に積層され、硬化された後に、過酷な条件に晒されたときに、積層物にクラックが生じるのを抑制できる。
【0043】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物に加えて、該シラン骨格を有するイミダゾール化合物以外の他の硬化促進剤を含んでいてもよい。上記他の硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0044】
上記他の硬化促進剤は、従来公知の硬化促進剤を用いることができ、特に限定されない。上記他の硬化促進剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
上記他の硬化促進剤として、シラン骨格を有しないイミダゾール化合物が好適に用いられる。硬化剤として上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物のみを用いた場合には、エポキシ樹脂組成物又は該エポキシ樹脂組成物を用いたBステージフィルムの回路への埋め込み性が低くなる傾向がある。上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の使用により、エポキシ樹脂組成物又は該エポキシ樹脂組成物を用いたBステージフィルムの回路への埋め込み性を高めることができる。
【0046】
上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、及び2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0047】
上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物100重量部に対して、上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の含有量は、100〜300重量部の範囲内であることが好ましい。上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の含有量が上記範囲内にある場合には、エポキシ樹脂組成物又は該エポキシ樹脂組成物を用いたBステージフィルムの回路への埋め込み性をさらに一層高めることができる。
【0048】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物に含まれている充填剤は、従来公知の充填剤を用いることができ、特に限定されない。上記充填剤としては、無機充填剤、有機充填剤及び有機無機複合充填剤等が挙げられる。上記充填剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0049】
上記無機充填剤としては、シリカ、タルク、クレイ、マイカ、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム及び窒化ホウ素等が挙げられる。なかでも、シリカが好ましく、溶融シリカがより好ましい。シリカの形状は略球状であることが好ましい。
【0050】
上記有機充填剤としては、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記有機無機複合充填剤は、無機充填剤の表面に有機化合物が共有結合された化合物等が挙げられる。上記有機無機複合充填剤を構成する材料としては、例えばシリコン樹脂及びポリシルセスキオキサン等が挙げられる。
【0052】
充填剤の分散性を高める観点及び粗化処理された硬化物の表面に微細な孔を形成する観点からは、上記充填剤の平均粒子径は、0.1〜30μmの範囲内であることが好ましい。上記平均粒子径の好ましい下限は0.3μm、好ましい上限は9μm以下である。
【0053】
上記充填剤は、カップリング剤により表面処理されていてもよい。上記カップリング剤としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤及びアルミニウムカップリング剤などが挙げられる。上記シランカップリング剤としては、アミノシラン、イミダゾールシラン及びエポキシシラン等が挙げられる。
【0054】
上記充填剤の添加量は、特に限定されない。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含まない場合にはエポキシ樹脂組成物100重量%中、エポキシ樹脂組成物が溶剤を含む場合には溶剤を除く成分の合計100重量%中、上記充填剤の含有量は0.1〜70重量%の範囲内であることが好ましい。上記100重量%中の上記充填剤の含有量の好ましい下限は25重量%、好ましい上限は60重量%の範囲内である。上記充填剤の含有量が上記範囲内であると、硬化物の耐屈曲性を高めることができ、かつ硬化物の寸法変化を小さくすることができる。
【0055】
耐衝撃性、耐熱性、樹脂の相溶性及び作業性等の改善を目的として、エポキシ樹脂組成物には、着色剤、酸化防止剤、紫外線劣化防止剤、消泡剤、増粘剤、揺変性付与剤及び上記エポキシ樹脂以外の他の樹脂等を添加してもよい。
【0056】
上記他の樹脂としては、ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリブチラール樹脂、ジビニルベンジルエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、ベンゾオキサゾール樹脂、ビスマレイミド樹脂、シアネート樹脂及びアクリレート樹脂等が挙げられる。
【0057】
上記他の樹脂が含まれている場合に、上記他の樹脂の含有は特に限定されない。エポキシ樹脂組成物に含まれている充填剤と溶剤を除く成分の合計100重量%中に、上記他の樹脂の含有量は0.1〜35重量%の範囲内であることが好ましい。
【0058】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、溶剤を含んでいてもよい。上記溶剤としては、アセトン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、メチルイソブチルケトン、N−メチル−ピロリドンn−ヘキサン及びシクロヘキサン等が挙げられる。上記溶剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0059】
溶剤を含むエポキシ樹脂組成物はワニスとして用いることができる。用途に応じて溶剤の含有量を調整することにより、ワニスの粘度を調整できる。上記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量部に対して、上記溶剤の含有量は、10〜800重量部の範囲内であることが好ましい。上記固形分とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0060】
(Bステージフィルム及び積層フィルム)
本発明に係るエポキシ樹脂組成物をフィルム状に成形することにより、Bステージフィルムを得ることができる。
【0061】
上記Bステージフィルムは、半硬化状態にある半硬化物である。半硬化物は、完全に硬化しておらず、硬化がさらに進行され得る。
【0062】
上記エポキシ樹脂組成物をフィルム状に成形する方法は、特に限定されない。この方法としては、例えば、押出機を用いて、上記エポキシ樹脂組成物を溶融混練し、押出した後、Tダイやサーキュラーダイ等により、フィルム状に成形する押出成形法、溶剤を含むエポキシ樹脂組成物をキャスティングしてフィルム状に成形するキャスティング成形法、又は従来公知のその他のフィルム成形法等が挙げられる。なかでも、薄型化を進めることができるので、押出成形法又はキャスティング成形法が好ましい。
【0063】
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、基材と、該基材の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える積層フィルムを形成するために好適に用いることができる。積層フィルムのBステージフィルムが、本発明に係るエポキシ樹脂組成物により形成される。
【0064】
上記Bステージフィルムは、溶剤を含むことができる。基材との密着性や機械搬送時の屈曲に対応するなど、用途に応じて溶剤の含有量を調整することができる。上記エポキシ樹脂組成物の固形分100重量部に対して、上記溶剤の含有量は、0.1〜8重量部の範囲内であることが好ましい。上記固形分とは、不揮発成分であり、成形又は加熱時に揮発しない成分をいう。
【0065】
上記積層フィルムの上記基材としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム及びポリブチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステル樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム及びポリプロピレンフィルムなどのオレフィン樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、銅箔及びアルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。上記基材の表面は、必要に応じて、離型処理されていてもよい。
【0066】
(銅張り積層板及び回路基板)
本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、銅張り積層板を得るために好適に用いられる。上記銅張り積層板の一例として、銅箔と、該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板が挙げられる。この銅張り積層板のBステージフィルムが、本発明に係るエポキシ樹脂組成物により形成される。
【0067】
上記銅張り積層板の上記銅箔の厚さは特に限定されない。上記銅箔の厚さは、1〜50μmの範囲内であることが好ましい。また、Bステージフィルムを硬化した硬化物層と銅箔との接着強度を高めるために、上記銅箔は微細な凹凸を表面に有することが好ましい。凹凸の形成方法は特に限定されない。上記凹凸の形成方法としては、公知の薬液を用いた処理による形成方法等が挙げられる。
【0068】
また、本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、多層基板を得るために好適に用いられる。上記多層基板の一例として、回路基板と、該回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層とを備える回路基板が挙げられる。この多層基板の硬化物層が、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成される。
【0069】
上記多層基板では、上記硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されていることが好ましい。粗化処理方法は、従来公知の粗化処理方法を用いることができ特に限定されない。上記硬化物層の表面は、粗化処理の前に膨潤処理されていてもよい。
【0070】
また、上記多層基板は、上記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備えることが好ましい。
【0071】
また、上記多層基板の他の例として、回路基板と、該回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層と、該硬化物層の上記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔とを備える回路基板が挙げられる。上記硬化物層及び上記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、上記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されていることが好ましい。さらに、上記銅箔はエッチング処理されており、銅回路であることが好ましい。
【0072】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0073】
実施例及び比較例では、以下に示す材料を用いた。
【0074】
(エポキシ樹脂)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE−410S」)
4官能エポキシ樹脂(DIC社製「EXA−4710」)
【0075】
(硬化剤)
活性エステル化合物(DIC社製「EXB−9451」)
フェノール化合物(明和化成社製「MEH−7851H」)
【0076】
(硬化促進剤)
シラン骨格を有するイミダゾール化合物(日鉱金属社製「IM−1000」)
シラン骨格を有しないイミダゾール化合物(四国化成社製「2P4MZ」)
シラン骨格を有しないイミダゾール化合物(四国化成社製「2MA−OK」)
【0077】
(充填剤)
シリカ(龍森社製「EXR−3」)
【0078】
(溶剤)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
【0079】
(実施例1)
上記N,N−ジメチルホルムアミド60重量部に、上記シリカ(龍森社製「EXR−3」)30重量部と、上記シラン骨格を有するイミダゾール化合物(日鉱金属社製「IM−1000」)0.5重量部と、上記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物(四国化成社製「2P4MZ」)0.75重量部とを加え、よく混合し、均一な溶液となるまで常温で攪拌した。
【0080】
次に、エポキシ樹脂としてビスフェノールA型エポキシ樹脂(日本化薬社製「RE−410S」)22重量部を添加し、均一な溶液となるまで常温で攪拌した。その後、硬化剤として活性エステル化合物(DIC社製「EXB−9451」)24重量部をさらに添加し、均一な溶液となるまで常温で攪拌して、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0081】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
使用した材料の種類及び配合量を下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、エポキシ樹脂組成物を調製した。
【0082】
(評価)
離型処理された透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(商品名「PET5011 550」、厚み50μm、リンテック社製)を用意した。このPETフィルム上にアプリケーターを用いて、乾燥後の厚みが40μmとなるように、得られたエポキシ樹脂組成物を塗工した。次に、100℃のギアオーブン内で12分間乾燥することにより、縦180mm×横250mm×厚み40μmの大きさのエポキシ樹脂組成物の未硬化物を形成し、未硬化物とPETフィルムとの積層体を得た。
【0083】
次に、得られた積層体を170℃のギアオーブン内で1時間加熱し、上記未硬化物を半硬化させ、Bステージフィルム(樹脂層)とPETフィルムとの積層フィルムを得た。
【0084】
両面銅張ガラスエポキシ基板に、バイアス回路となるL/S=15/15の櫛状銅パターンを形成し、回路基板を作製した。上記積層フィルムを、回路基板上にBステージフィルムが接するように、真空ラミネートし、回路基板と積層フィルムとを接着させた。PETフィルムを剥離した後、樹脂層付き回路基板をギアオーブン内に入れ、150℃で1時間予備硬化させ、さらに180℃で3時間硬化させ、硬化積層体を得た。
【0085】
基板上の配線間に常時10Vの直流電圧を印加した状態で、得られた硬化積層体のHAST試験を実施した。
【0086】
なお、HAST試験(超加速寿命試験)は、試験デバイスに温度、湿度、バイアスを一定の圧力下で行う試験である。JEDEC規格A110−B(Temp=130℃、85%RH、2atm)に定められた方法でHAST試験を実施し、評価した。
【0087】
また、得られた硬化積層体において、樹脂層が硬化した絶縁層の上面の凹凸の深部と頂部との高さを、接触式粗さ計(ミツトヨ社製「SJ301」)により測定した。さらに、回路基板上の絶縁層のTgをDSC(TAインスツルメント社製「Q2000」)により測定した。
【0088】
結果を下記の表1に示す。
【0089】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、硬化促進剤としてシラン骨格を有するイミダゾール化合物と、充填剤とを含み、
前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記活性エステル化合物の含有量が50〜200重量部の範囲内、かつ前記シラン骨格を有するイミダゾール化合物の含有量が0.5〜7重量部の範囲内である、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤促進剤としてシラン骨格を有しないイミダゾール化合物をさらに含み、
前記シラン骨格を有するイミダゾール化合物100重量部に対して、前記シラン骨格を有しないイミダゾール化合物の含有量が100〜300重量部の範囲内である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
硬化剤として、ビフェニレン骨格及びジシクロペンタジエン骨格の内の少なくとも一種を有するフェノール化合物をさらに含み、
前記エポキシ樹脂100重量部に対して、前記フェノール化合物の含有量が5〜100重量部の範囲内である、請求項1又は2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂が、23℃で液状の液状エポキシ樹脂を含み、
前記エポキシ樹脂の合計100重量%中、前記液状エポキシ樹脂の含有量が30〜80重量%の範囲内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物がフィルム状に成形されたBステージフィルム。
【請求項6】
基材と、
前記基材の一方の面に積層された請求項5に記載のBステージフィルムとを備える、積層フィルム。
【請求項7】
銅箔と、
前記銅箔の一方の面に積層された請求項5に記載のBステージフィルムとを備える、銅張り積層板。
【請求項8】
回路基板と、
前記回路基板の回路が形成された表面に積層された硬化物層とを備え、
前記硬化物層が、請求項5に記載のBステージフィルムを硬化させることにより形成されている、多層基板。
【請求項9】
前記硬化物層の前記回路基板が積層された表面とは反対側の表面が粗化処理されており、
前記硬化物層の粗化処理された表面に積層された銅めっき層をさらに備える、請求項8に記載の多層基板。
【請求項10】
前記硬化物層の前記回路基板が積層された表面とは反対側の表面に積層された銅箔をさらに備え、
前記硬化物層及び前記銅箔が、銅箔と該銅箔の一方の面に積層されたBステージフィルムとを備える銅張り積層板を用いて、前記Bステージフィルムを硬化させることにより形成されている、請求項8に記載の多層基板。
【請求項11】
前記銅箔がエッチング処理されており、銅回路である、請求項10に記載の多層基板。

【公開番号】特開2010−275511(P2010−275511A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−132483(P2009−132483)
【出願日】平成21年6月1日(2009.6.1)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】