説明

サセプタ、半導体製造装置および半導体製造方法

【課題】成膜工程における金属汚染を抑え、ウェーハ上に均一に成膜することができ、歩留の低下を抑え、半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能なサセプタ、半導体製造装置および半導体製造方法を提供する。
【解決手段】サセプタ11は、ウェーハwの径より小さく、表面にウェーハwを載置するための凸部を有するインナーサセプタ12と、中心部に開口部を有し、インナーサセプタ12を開口部が遮蔽されるように載置するための第1の段部と、この第1の段部の上段に設けられ、ウェーハを載置するための第2の段部を有するアウターサセプタ13を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体ウェーハの裏面より加熱しながら表面に反応ガスを供給して成膜を行なうために用いられ、半導体ウェーハを保持するためのサセプタと、半導体製造装置および半導体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造工程におけるエピタキシャル膜の形成などに用いられるCVD(Chemical Vapor Deposition)装置において、ウェーハの下方に熱源、回転機構を有し、上方から均一なプロセスガスを供給することが可能な裏面加熱方式が用いられている。
【0003】
近年、半導体装置の微細化、高機能化に伴い、成膜工程における金属汚染のレベルには高い水準が要求されている。上述した裏面加熱方式においては、ウェーハの下方に熱源、回転機構を有しており、これら熱源、回転機構と完全に分離されていないことから、金属原子の拡散、移動により、ウェーハ汚染が生じるという問題がある。
【0004】
通常ウェーハは、成膜装置(反応炉)内において、サセプタにより保持され、搬送の際には、サセプタに設けられたピン穴を貫通する突き上げピンにより、上昇移動される。そのため、特にピン穴からのウェーハ汚染を遮断することが困難であるという問題がある。
【0005】
一方、例えば特許文献1などにおいて、ウェーハ温度分布の均一性を図るために、ピン穴を設けないサセプタの構造が提案されている。しかしながら、実際にピン穴を有していないサセプタ構造とすると、ウェーハを載置する際に、ウェーハ下部に気体の層が形成され、ウェーハが浮かび上がるため、安定して保持することが困難である。さらに、ウェーハを加熱し、回転させて、プロセスガスを供給することにより成膜する際、このような不安定な状態では、均一な成膜が困難である。そして、均一な成膜を行うためにはウェーハを高速回転させる必要があるが、このような不安定な状態では、高速回転時にウェーハがサセプタの載置位置から外れる可能性があり、高速回転による均一な成膜が困難となるという問題がある。
【特許文献1】特開2000−43302号公報([0019]〜[0022]、[0036]、図1など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、サセプタに設けられるピン穴からの汚染を遮断するために、ピン穴を設けないサセプタ構造とすると、ウェーハを安定して保持し、均一に成膜することが困難であるという問題がある。
【0007】
本発明は、成膜工程における金属汚染を抑え、ウェーハ上に均一に成膜することができ、歩留の低下を抑えるとともに、半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能なサセプタ、半導体製造装置および半導体製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のサセプタは、ウェーハの径より小さく、表面にウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタと、中心部に開口部を有し、インナーサセプタを開口部が遮蔽されるように載置するための第1の段部と、この第1の段部の上段に設けられ、ウェーハを載置するための第2の段部を有するアウターサセプタを備えることを特徴とする。
【0009】
この本発明のサセプタにおいて、第2の段部は、ウェーハのベベル部が載置される部分にテーパを有することが好ましい。
【0010】
また、この本発明のサセプタにおいて、第1の段部または第2の段部は、複数の段部より構成されることが好ましい。
【0011】
本発明の半導体製造装置は、ウェーハが導入される反応炉と、反応炉にプロセスガスを供給するためのガス供給機構と、反応炉よりプロセスガスを排出するためのガス排出機構と、ウェーハの径より小さく、表面にウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタと、中心部に開口部を有し、インナーサセプタを開口部が遮蔽されるように載置するための第1の段部と、この第1の段部の上段に設けられ、ウェーハを載置するための第2の段部を有するアウターサセプタと、ウェーハをインナーサセプタおよびアウターサセプタの下部より加熱するためのヒータと、ウェーハを回転させるための回転機構と、ヒータを貫通し、インナーサセプタを上下駆動させるための突き上げピンを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の半導体製造方法は、反応炉内にウェーハを搬入し、反応炉内に設置され、ウェーハの径より小さく、表面に前記ウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタを、突き上げピンにより上昇させて、インナーサセプタ上にウェーハを載置し、突き上げピンを下降させ、インナーサセプタを、中心部に開口部を有するアウターサセプタの第1の段部上に開口部を遮蔽するように載置するとともに、ウェーハを、アウターサセプタの第1の段部の上段に設けられた第2の段部上に載置し、ウェーハをインナーサセプタおよびアウターサセプタを介して加熱し、ウェーハを回転させ、ウェーハ上にプロセスガスを供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のサセプタ、半導体製造装置および半導体製造方法を用いることにより、成膜工程における金属汚染を抑え、ウェーハ上に均一に成膜することができ、歩留の低下を抑え、半導体装置の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下本発明の実施形態について、図を参照して説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1に本実施形態のサセプタの断面図を示す。図に示すように、サセプタ11は、インナーサセプタ12と、このインナーサセプタ12と分離可能なアウターサセプタ13から構成されている。
【0016】
インナーサセプタ12は、図2に示すように、載置されるウェーハwの径より小さく、エッジ部分に段部12aが設けられている。そして、その上面には、ウェーハwを載置するために、例えば4か所のドット状の凸部12bが、同一円周上に略等間隔に配置されている。
【0017】
アウターサセプタ13は、図3に示すように、中心部に開口部13aが設けられており、この開口部13aのエッジ部分には、段部13b、13c、13dが設けられている。下段の段部13bには、開口部13aを遮蔽するように、インナーサセプタ12が載置され、中間の段部13cにより、ウェーハwとの間に例えば0.2mm程度の微小ギャップが形成され、最上段の段部13dに、ウェーハwが載置される。この段部13dのウェーハwのベベル部wが載置される部分には、例えば22°のベベルテーパ角とほぼ等しい角度となるように、テーパ13eが形成されている。
【0018】
このようなサセプタ11は、半導体製造装置内に載置され、以下のように用いられる。
【0019】
図4に半導体製造装置の断面図を示す。図に示すように、ウェーハwが成膜処理される反応炉21には、反応炉21上方よりプロセスガスをウェーハw上に整流板22を介して供給するためのガス供給口23と、反応炉21下方よりプロセスガスを排出するためのガス排出口24が設置されている。反応炉21の下方には、反応炉21の外部に駆動機構(図示せず)を有し、ウェーハwを回転させるための回転機構25が設置されている。そして、この回転機構25は、上述した構成のサセプタ11とアウターサセプタ13外周部において接続されている。
【0020】
サセプタ11の下方には、ウェーハwを加熱するためのインヒータ26aが設置され、サセプタ11とインヒータ26aの間に、ウェーハwの周縁部を加熱するためのアウトヒータ26bが設置されている。これらインヒータ26a、アウトヒータ26bは、温度測定機構(図示せず)により測定されるウェーハ温度に基づき、温度制御機構(図示せず)により制御される。インヒータ26aの下方には、円盤状のリフレクター27が設置されている。そして、インヒータ26a、リフレクター27を貫通するように、インナーサセプタ12を上下に移動させるための突き上げピン28が設置されている。
【0021】
このような半導体製造装置を用いて、ウェーハw上に例えばSiエピタキシャル膜が形成される。先ず、図5に示すように、12インチのウェーハwを、外周部分において搬送アーム29により保持し、反応炉21に搬入する。そして、突き上げピン28により、インナーサセプタ12を上昇させる。このとき、ウェーハwは、インナーサセプタ12の外側で搬送アーム29により保持されており、インナーサセプタ12を上昇させることにより、インナーサセプタ12上にウェーハwが載置される。そして、突き上げピン28により、インナーサセプタ12を下降させることにより、ウェーハwおよびインナーサセプタ12をアウターサセプタ13に保持させる。
【0022】
このとき、ウェーハwは、インナーサセプタ12の凸部12b上に載置され、ウェーハw下部とインナーサセプタ12との間には間隙が形成される。インナーサセプタの段部12aは、アウターサセプタ13の段部13b上に載置され、ウェーハwは、段部13cとの間に微小ギャップが形成され、段部13d上に載置される。
【0023】
次いで、温度測定機構(図示せず)により測定されるウェーハwの温度に基づき、温度制御機構(図示せず)により、インヒータ26a、アウトヒータ26bの温度が例えば1400〜1500℃の範囲で適宜制御して、ウェーハwの温度を、面内で均一に例えば1100℃となるように制御する。さらに、回転機構25によりウェーハwを例えば900rpmで回転させる。
【0024】
そして、ガス供給口23より、例えば、キャリアガス:Hを20〜100SLM、成膜ガス:SiHClを50sccm〜2SLM、ドーパントガス:B、PH:微量からなるプロセスガスが、整流板22上に導入され、整流状態でウェーハw上に供給される。このとき、反応炉21内の圧力は、ガス供給口23、ガス排出口24のバルブを調整することにより、例えば1333Pa(10Torr)〜常圧に制御される。このようにして、各条件が制御され、ウェーハw上にエピタキシャル膜が形成される。
【0025】
このようにして形成されたエピタキシャル膜において、SPV(Surface Photovoltage)法により、Feの拡散長を測定した。測定の結果、従来のピン穴を有するサセプタを用いた場合、拡散長は不十分であったのに対し、本願発明のように、ピン穴を設けないサセプタを用いた場合、拡散長は十分(例えば400μm)となり、金属汚染が抑えられたことがわかる。
【0026】
また、ウェーハw下部とインナーサセプタ12との間には、凸部12bにより間隙が形成されているため、ウェーハwを安定した状態でサセプタ11に保持することが可能となる。さらに、段部13dは、ウェーハwのベベルテーパ角とほぼ等しいテーパ13eを有するため、ウェーハwをベベル部wにおいてより安定させることが可能となる。また、段部13cにより、ウェーハwとアウターサセプタ13との間に微小ギャップを形成することができるので、ウェーハwに反りなどが生じた場合でも、安定してウェーハ外周保持が可能となる。そして、ウェーハに与える熱伝導量を常に一定に保つことができ、ウェーハ面内温度分布を常に一定にすることができる。
【0027】
その結果、ウェーハ上に、例えば膜厚のばらつきが0.5%以下の均一なエピタキシャル膜を形成することが可能となる。
【0028】
そして、素子形成工程及び素子分離工程を経て半導体装置が形成される際、素子特性のばらつきを抑え、歩留り、信頼性の向上を図ることが可能となる。特にN型ベース領域、P型ベース領域や、絶縁分離領域などに数10μm〜100μm程度の厚膜成長が必要な、パワーMOSFETやIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)などのパワー半導体装置のエピタキシャル形成工程に適用されることにより、良好な素子特性を得ることが可能となる。
【0029】
本実施形態において、図1に示すように、インナーサセプタ12とアウターサセプタ13の段部を設けたが、段数、段差は適宜設計することができる。また、それぞれ適宜テーパを有していてもよい。
【0030】
例えば、図6に示すように、サセプタ31において、インナーサセプタ32、アウターサセプタ33の勘合部をそれぞれ2段としてもよい。このように多段とすることにより、サセプタ裏面側から汚染物質の通過を抑制し、ウェーハの金属汚染を、より効果的に抑えることが可能となる。
【0031】
また、インナーサセプタ12において、段部12aを設けることが金属汚染を抑える上では効果的であるが、必ずしも設ける必要はなく、裏面をフラットとしてアウターサセプタ13の段部13b上に載置してもよい。
【0032】
そして、インナーサセプタ12の上面に設けられる凸部12bは、ドット状のものを4か所としたが、ウェーハwを水平に保持できればよく、特にその形状、配置などは限定されるものではない。例えば、ウェーハwとの接触面積をできだけ小さくするためには、3か所のドット状の凸部で保持することが好ましい。また、1か所以上に切り欠き(非連続部)を有するリング状であってもよい。また、凸部は必ずしもインナーサセプタ12の外周近傍に配置される必要はなく、図7に示すように、インナーサセプタ42において、凸部42aは中央部の同一円周上に略等間隔に配置されていてもよい。このように配置させることにより、より安定したウェーハwの保持が可能となる。
【0033】
また、本実施形態においては、Si単結晶層(エピタキシャル成長層)形成の場合を説明したが、ポリSi層形成時にも適用されることも可能である。さらに、他の化合物半導体、例えばGaAs層、GaAlAsやInGaAsなどにも適用可能である。また、SiO膜やSi膜形成の場合にも適用可能で、SiO膜の場合、モノシラン(SiH)の他、N、O、Arガスを、Si膜の場合、モノシラン(SiH)の他、NH、N、O、Arガスなどが供給されることになる。その他要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一態様におけるサセプタの断面図。
【図2】本発明の一態様におけるインナーサセプタの断面図。
【図3】本発明の一態様におけるアウターサセプタの断面図。
【図4】本発明の一態様における半導体製造装置の断面図。
【図5】本発明の一態様における半導体製造装置の断面図。
【図6】本発明の一態様におけるサセプタの断面図。
【図7】本発明の一態様におけるインナーサセプタの断面図。
【符号の説明】
【0035】
11、31…サセプタ、12、32…インナーサセプタ、12a、13b、13c、13d…段部、12b、42a…凸部、13、33…アウターサセプタ、13a…開口部、13e…テーパ、21…反応炉、22…整流板、23…ガス供給口、24…ガス排出口、25…回転機構、26a…インヒータ、26b…アウトヒータ、27…リフレクター、28…突き上げピン、29…搬送アーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハの径より小さく、表面に前記ウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタと、
中心部に開口部を有し、前記インナーサセプタを前記開口部が遮蔽されるように載置するための第1の段部と、この第1の段部の上段に設けられ、前記ウェーハを載置するための第2の段部を有するアウターサセプタを備えることを特徴とするサセプタ。
【請求項2】
前記第2の段部は、前記ウェーハのベベル部が載置される部分にテーパを有することを特徴とする請求項1に記載のサセプタ。
【請求項3】
前記第1の段部または前記第2の段部は、複数の段部より構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサセプタ。
【請求項4】
ウェーハが導入される反応炉と、
前記反応炉にプロセスガスを供給するためのガス供給機構と、
前記反応炉より前記プロセスガスを排出するためのガス排出機構と、
前記ウェーハの径より小さく、表面に前記ウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタと、
中心部に開口部を有し、前記インナーサセプタを前記開口部が遮蔽されるように載置するための第1の段部と、この第1の段部の上段に設けられ、前記ウェーハを載置するための第2の段部を有するアウターサセプタと、
前記ウェーハを前記インナーサセプタおよび前記アウターサセプタの下部より加熱するためのヒータと、
前記ウェーハを回転させるための回転機構と、
前記ヒータを貫通し、前記インナーサセプタを上下駆動させるための突き上げピンを備えることを特徴とする半導体製造装置。
【請求項5】
反応炉内にウェーハを搬入し、
前記反応炉内に設置され、前記ウェーハの径より小さく、表面に前記ウェーハを載置するための凸部を有するインナーサセプタを、突き上げピンにより上昇させて、前記インナーサセプタ上に前記ウェーハを載置し、
前記突き上げピンを下降させ、前記インナーサセプタを、中心部に開口部を有するアウターサセプタの第1の段部上に前記開口部を遮蔽するように載置するとともに、前記ウェーハを、前記アウターサセプタの前記第1の段部の上段に設けられた第2の段部上に載置し、
前記ウェーハを前記インナーサセプタおよび前記アウターサセプタを介して加熱し、
前記ウェーハを回転させ、
前記ウェーハ上にプロセスガスを供給することを特徴とする半導体製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−70915(P2009−70915A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235685(P2007−235685)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(504162958)株式会社ニューフレアテクノロジー (669)
【Fターム(参考)】