説明

シリコンの結晶化方法、接合体、半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】比較的低温下で、結晶粒や成長方向の制御を確実に行うことができ、これにより半導体特性に優れたポリシリコン層を効率よく形成可能なシリコンの結晶化方法、熱処理を施すことにより良好な結晶化がなされる非晶質部を備える接合体、前記結晶化方法により形成された半導体部を備える半導体装置を製造する方法、および、この方法により製造された半導体装置を提供すること。
【解決手段】本発明のシリコンの結晶化方法は、a−Si膜30a(非晶質部)と、c−Siの種結晶30cとを用意する工程と、a−Si膜30aの表面と種結晶30cの表面に、それぞれエネルギーを付与する工程と、a−Si膜30aと種結晶30cとを接合し接合体305を得る工程と、接合体305を加熱することにより、a−Si膜30aを結晶化する工程とを有する。これにより、a−Si膜30aと種結晶30cとの接合界面が成長核となって結晶化が進行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンの結晶化方法、接合体、半導体装置の製造方法および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置(電気光学装置)においては、各画素部の液晶の駆動を制御するために、トランジスタ等の半導体素子が用いられている。この半導体素子は、電流のON/OFF制御を担う半導体層を有するが、この半導体層には、一般に、シリコン層が用いられる。
このシリコン層としては、従来、アモルファスシリコン層が用いられてきたが、近年では、ポリシリコン(多結晶シリコン)層が用いられている。ポリシリコン層では、アモルファスシリコン層に比べて電子移動度が高いため、素子特性の大幅な向上(駆動速度の向上等)を図ることができる。
【0003】
このようなポリシリコン層は、一般に、アモルファスシリコン層を結晶化させることによって形成される。この結晶化には、種々の方法が知られており、例えば、SPC(Solid Phase Crystallization:固相結晶化)法、LPC(Liquid Phase Crystallization:溶融結晶化)法、MILC(Metal-Induced Lateral Crystallization:金属誘起固相成長)法等が知られている。
このうち、SPC法は、加熱することにより、アモルファスシリコン層を結晶化する方法である。しかしながら、この結晶化には、一般に600℃超の高温での加熱が必要とされるため、アモルファスシリコン層を成膜する基材の材質は、このような高温に耐え得る耐熱性が必要とされる。このため、基材として安価で入手し易いガラス製基材を用いることができず、基材の選択の幅が狭くなるという問題がある。また、SPC法では、結晶化の速度が低いため、結晶化プロセスに長時間を要し、半導体素子の生産性に劣るという問題もある。
【0004】
一方、LPC法は、レーザー光を照射することにより、アモルファスシリコン層を結晶化する方法である(例えば、特許文献1参照)。レーザー光の照射によれば、アモルファスシリコン層を局所的に加熱することができるので、アモルファスシリコン層を支持する基材は、高温に曝され難い。このため、基材として、樹脂製基材やガラス製基材を用いることもできる。
【0005】
ところが、シリコンを瞬間的に溶融して再結晶化する方法であるため、結晶を十分に成長させることができない上、結晶粒や成長方向の制御が難しく、特性のバラツキが大きい等の課題が指摘されている。
また、MILC法は、Ni等の金属元素を、アモルファスシリコンの結晶化を促進する触媒として作用させることにより、比較的低温下で、結晶粒や成長方向を容易に制御し得る方法として注目されている。しかしながら、アモルファスシリコンの結晶化の際に、シリコン層に金属元素が取り込まれてしまい、この金属元素により半導体層の特性の低下を招くことが懸念されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−273030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、比較的低温下で、結晶粒や成長方向の制御を確実に行うことができ、これにより半導体特性に優れたポリシリコン層を効率よく形成可能なシリコンの結晶化方法、熱処理を施すことにより良好な結晶化がなされる非晶質部を備える接合体、前記結晶化方法により形成された半導体部を備える半導体装置を製造する方法、および、この方法により製造された半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明のシリコンの結晶化方法は、Si−H結合を含むアモルファスシリコンで構成された非晶質部と、Si−H結合を含む結晶シリコンで構成された種結晶とを用意する第1の工程と、
前記非晶質部の表面および前記種結晶の表面に、それぞれエネルギーを付与して、前記各表面の前記Si−H結合を切断して結合手を生じさせる第2の工程と、
前記非晶質部の前記表面と前記種結晶の前記表面とが密着するように、前記非晶質部と前記種結晶とを圧接することにより、前記各表面の前記結合手同士が再結合し、前記非晶質部と前記種結晶とが直接接合されてなる接合体を得る第3の工程と、
該接合体を、シリコンの結晶化温度以上の温度で加熱することにより、前記接合体の接合界面を成長核として、前記非晶質部を結晶化させる第4の工程とを有することを特徴とする。
これにより、比較的低温下で、結晶粒や成長方向の制御を確実に行うことができ、これにより半導体特性に優れたポリシリコン領域を効率よく形成することができる。
【0009】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記非晶質部は、層状をなしており、
前記層状をなす前記非晶質部の平均厚さは、10〜1000nmであることが好ましい。
これにより、最終的に得られる半導体膜が半導体特性に優れたものとなる。
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記非晶質部および前記種結晶の前記接合に供される面は、それぞれ平面であり、前記種結晶が有する前記平面の面積は、前記非晶質部が有する前記平面よりも小さいことが好ましい。
これにより、非晶質部は、種結晶との接合界面を成長核として、主に面方向に成長する。このため、アモルファスシリコンが結晶化してなるポリシリコンは、その結晶化方向が面方向に沿ったものとなる。その結果、得られたポリシリコンにおけるキャリアの移動方向が面方向に平行になるよう、ポリシリコン領域を備えた半導体素子を構築することによって、特に優れた半導体特性を発揮する半導体素子を得ることができる。
【0010】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記接合体は、前記非晶質部の前記平面上に、互いに離間して配置された複数の前記種結晶を接合してなるものであることが好ましい。
これにより、面積の広い表面を有する非晶質部の結晶化をも短時間で行うことができる。
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記接合体において、前記複数の種結晶は、前記非晶質部の前記平面上にほぼ均等に配置され、接合されていることが好ましい。
これにより、得られるポリシリコン領域の結晶特性および半導体特性がより均質なものとなる。
【0011】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記複数の種結晶は、フォトリソグラフィ技術を用いて、1つの種結晶を分割して得られたものであることが好ましい。
これにより、得られる複数の種結晶は、それぞれが同等の結晶特性および半導体特性を有するものとなる。このため、非晶質部の結晶化がより均一なものとなり、例えば、アクティブマトリクス装置において、複数のトランジスタ間のスイッチング特性のバラツキを抑制することができる。
【0012】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第4の工程における前記非晶質部の結晶化は、前記種結晶を中心に放射状に進行することが好ましい。
これにより、種結晶として小面積のものを用意しさえすれば、より大面積の非晶質部をも、容易に結晶化することができる。
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記種結晶は、犠牲体上に配置されており、
前記第3の工程において、前記非晶質部と前記種結晶とを貼り合わせた後、前記犠牲体を溶解または溶融することにより、前記種結晶と前記犠牲体とを分離することが好ましい。
これにより、非晶質部と種結晶とを接合する前においては、犠牲体によって、複数の種結晶をも確実に保持することができ、また、非晶質部と種結晶とを接合した後においては、犠牲体が溶解または溶融することによって、半導体素子を形成するにあたって不要な犠牲体を簡単に取り除くことができる。
【0013】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記非晶質部は、アモルファスシリコンで構成された母材に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施して形成されたものであることが好ましい。
これにより、非晶質部により多くのSi−H結合を付加することができ、非晶質部の表面に露出するSi−H結合の数がより多くなる。その結果、たとえ水素の含有率が低い非晶質部に対しても、十分な数のSi−H結合を付与することができるので、非晶質部に十分な接着性を発現させることができる。
【0014】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記アモルファスシリコンで構成された母材は、シラン系ガスを主成分とする原料ガスを用い、水素雰囲気下において化学蒸着法によって形成されたものであることが好ましい。
これにより、非晶質部に水素原子が均一に分布することができる。この水素原子は、非晶質部中のダングリングボンド(未結合手)を終端化する。その結果、非晶質部中においてキャリア移動度が向上し、非晶質部を結晶化して得られる半導体の特性をより高めることができる。
【0015】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記種結晶は、結晶シリコンで構成された母材に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施して形成されたものであることが好ましい。
これにより、種結晶により多くのSi−H結合を付加することができ、種結晶の表面に露出するSi−H結合の数がより多くなる。その結果、種結晶の接着性をより高めることができる。
【0016】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記結晶シリコンで構成された母材は、シラン系ガスを主成分とする原料ガスを用い、水素雰囲気下においてエピタキシャル成長法によって形成されたものであることが好ましい。
これにより、水素を均一に含有するポリシリコンで構成された種結晶が得られる。このような種結晶は、Si−H結合に由来する優れた接着性をムラなく示すとともに、エピタキシャル成長によって結晶性の高いポリシリコンで構成されたものとなる。
【0017】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記種結晶は、アモルファスシリコンで構成された母材を、水素雰囲気下における熱処理によって、結晶化させてなるものであることが好ましい。
これにより、熱処理の程度によって、アモルファスシリコンで構成された母材の結晶化の進行度合いを容易に制御することができるため、所望の結晶特性を有する種結晶を容易に得ることができる。
【0018】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記非晶質部中または前記種結晶中の水素原子の含有率は、1〜40原子%であることが好ましい。
これにより、非晶質部や種結晶中のSi−H結合の含有率が最適化されるので、非晶質部や種結晶に十分な接着性が発現する。その結果、非晶質部と種結晶とが確実に接合され、その接合界面が非晶質部の結晶化における成長核となることができる。
【0019】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第2の工程において、前記非晶質部および前記種結晶に対するエネルギーの付与は、エネルギー線を照射する方法、加熱する方法、および圧縮力を付与する方法から選択される1または2以上の方法を組み合わせた方法により行われることが好ましい。
これにより、非晶質部および種結晶に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0020】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第2の工程において照射されるエネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、非晶質部に付与されるエネルギー量が最適化されるので、非晶質部および種結晶中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、紫外線照射表面において、Si−H結合を選択的に切断することができる。これにより、Si−Si結合が不本意に切断されるのを防止しつつ、紫外線照射表面に接着性を確実に発現させることができる。
【0021】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第2の工程における加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、非晶質部を支持する基板や、非晶質部および種結晶が、熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、非晶質部および種結晶を確実に活性化させることができる。
【0022】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第2の工程において付与される圧縮力は、0.2〜100MPaであることが好ましい。
これにより、単に圧縮するのみで、非晶質部および種結晶に対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、非晶質部と種結晶とに十分な接着性を発現させることができる。
【0023】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第4の工程において、前記接合体を加熱する際の温度は、450〜590℃であることが好ましい。
これにより、例えば、非晶質部を支持する基板として、安価で入手し易いガラス基板を用いることができるようになり、基板の構成材料の選択幅が広がる。また、加熱温度が比較的低いので、加熱の際の昇温・降温を短時間で行うことができ、結晶化工程の効率を高めることができる。
【0024】
本発明のシリコンの結晶化方法では、前記第4の工程において、前記接合体を加熱する際の雰囲気は、水素ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
これにより、非晶質部の結晶化を妨げることなく、非晶質部の変質・劣化を確実に防止することができる。
本発明の接合体は、アモルファスシリコンで構成された層状の非晶質部と、結晶シリコンで構成された複数の種結晶とを有し、
前記非晶質部と前記各種結晶とが直接接合されており、
前記各種結晶の前記接合に供される面の面積が、それぞれ前記非晶質部の前記接合に供される面よりも大きく、かつ、前記複数の種結晶は、前記非晶質部に対して均等に分布するようにして接合されていることを特徴とする。
これにより、熱処理を施すことにより良好な結晶化がなされる非晶質部を備える接合体が得られる。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法は、アモルファスシリコンで構成された非晶質部を形成する工程と、
前記非晶質部を結晶化することにより、結晶シリコンで構成された半導体部を有する半導体装置を得る工程とを有し、
前記非晶質部の結晶化は、本発明のシリコンの結晶化方法によりなされることを特徴とする。
これにより、比較的低温下で、半導体特性に優れた半導体装置を効率よく製造することができる。
本発明の半導体装置は、本発明の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、半導体特性に優れた半導体装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明のシリコンの結晶化方法、接合体、半導体装置の製造方法および半導体装置を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<アクティブマトリクス装置>
まず、本発明の半導体装置を備えるアクティブマトリクス装置について説明する。
図1は、本発明の半導体装置を備えるアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図、図2は、図1に示すアクティブマトリクス装置の一部を拡大して示す平面図、図3は、図2のA−A線断面図およびB−B線断面図である。なお、以下の説明では、図3中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0027】
図1に示すアクティブマトリクス装置100は、互いに直交する複数のデータ線101と、複数の走査線102と、これらのデータ線101と走査線102との各交点付近に設けられたトップゲート構造の薄膜トランジスタ1とを有している。
また、データ線101と走査線102とで区画された複数の領域が、それぞれ画素領域103であり、そこには、薄膜トランジスタ1に接続された画素電極104が設けられている。この複数の画素電極104は、マトリクス状に、すなわち、縦横に規則正しく配列するように設けられている。なお、画素電極104と走査線102との間には、信号蓄積用のキャパシタが設けられていてもよい。
【0028】
そして、アクティブマトリクス装置100は、図3に示すように、下地保護膜21を介して基板20上に設けられている。
ここで、薄膜トランジスタ1は、図2および図3に示すように、ソース領域11、ドレイン領域12、チャネル領域13、ゲート絶縁膜14およびゲート電極15を有している。
また、チャネル領域13は、ソース領域11およびドレイン領域12の間に設けられている。
【0029】
また、チャネル領域13の上方には、ゲート絶縁膜14を介してゲート電極15が設けられている。なお、ゲート電極15は、走査線102の一部として構成されている。また、ゲート絶縁膜14は、ソース領域11およびドレイン領域12を覆うとともに、それらが設けられていない下地保護膜21の全体をも覆うように設けられている。
さらに、ゲート絶縁膜14上に重なるように、層間絶縁膜16が設けられている。
そして、ソース領域11上のゲート絶縁膜14および層間絶縁膜16には、これらを貫通するコンタクトホール17が設けられており、このコンタクトホール17内にデータ線101の一部が挿入されている。これにより、データ線101とソース領域11とが電気的に接続されている。
一方、ドレイン領域12上のゲート絶縁膜14および層間絶縁膜16には、これらを貫通するコンタクトホール18が設けられており、このコンタクトホール18内に画素電極104の一部が挿入されている。これにより、画素電極104とドレイン領域12とが電気的に接続されている。
【0030】
以下、各部の構成についてさらに詳細に説明する。
基板20は、薄膜トランジスタ1を構成する各層(各部)を支持するものである。基板20には、例えば、ガラス基板、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板等を用いることができる。
下地保護膜21は、基板20からのイオンの拡散を防止する目的、薄膜トランジスタ1や層間保護膜16と基板20との密着性を向上させる目的等により設けられる。
【0031】
この下地保護膜21は、例えば、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)等により構成することができる。
また、ソース領域11、ドレイン領域12およびチャネル領域13は、いずれもポリシリコン(多結晶シリコン)で構成されている。ポリシリコンで構成されたチャネル領域13は、電子移動度が高いものとなるため、薄膜トランジスタ1は、高速駆動が可能なものとなる。また、本実施形態では、これらのソース領域11、ドレイン領域12およびチャネル領域13は、ポリシリコンで一体的に形成されており、半導体層(半導体部)10を構成している。なお、半導体層10は、後述する本発明のシリコンの結晶化方法により、アモルファスシリコンを結晶化させて得られたものである。
【0032】
ゲート絶縁膜14は、ソース領域11およびドレイン領域12に対してゲート電極15を絶縁するものである。
このようなゲート絶縁膜14は、例えば、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(SiN)等により構成することができる。
また、層間絶縁膜16は、各薄膜トランジスタ1を保護することにより、各薄膜トランジスタ1の経時的な変質・劣化を防止するものである。
【0033】
このような層間絶縁膜16の構成材料としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、塩化ビニル−ビニルアルコール共重合体および酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体のような有機材料や、酸化ケイ素(SiO)のような無機材料を用いることができる。
また、データ線101、走査線102、ゲート電極15および画素電極104の各構成材料としては、それぞれ、Pd、Pt、Au、W、Ta、Mo、Al、Cr、Ti、Cuまたはこれらを含む合金等の金属材料、ITO、FTO、ATO、SnO等の導電性酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子材料等が挙げられる。
【0034】
このようなアクティブマトリクス装置100では、1本または複数本の走査線102に選択信号を付与すると、この選択信号が付与された走査線102に接続されている薄膜トランジスタ1がONになる。これにより、かかる薄膜トランジスタ1に接続されているデータ線101と画素電極104とが導通する。その結果、データ線101に所望のデータ(電圧)を供給した状態であれば、このデータ(電圧)が画素電極104に供給される。そして、画素電極104に隣接した液晶分子や有機EL素子、電気泳動素子等を駆動し、それにより所望の情報を表示することができる。すなわち、アクティブマトリクス装置100を用いることにより、表示装置を構築することができる。
【0035】
次に、このようなアクティブマトリクス装置100の製造方法について説明する。
図4ないし図7は、アクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。なお、以下の説明では、図4ないし図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
アクティブマトリクス装置100の製造方法は、[1]基板20上に下地保護膜21を形成し、その上にアモルファスシリコン膜30aを形成する工程と、[2]このアモルファスシリコン膜30aを結晶化して、ポリシリコン膜30pを形成する工程と、[3]ポリシリコン膜30pを所定の形状(パターン)にエッチングする工程と、[4]ゲート絶縁膜14を形成する工程と、[5]ゲート電極15を形成する工程と、[6]ポリシリコン膜30pに不純物イオンを導入する工程と、[7]層間絶縁膜16を形成する工程と、[8]層間絶縁膜16およびゲート絶縁膜14に各コンタクトホール17、18を設け、データ線101および画素電極104を形成する工程とを有する。以下、これらの各工程について順次説明する。
【0036】
[1]まず、図4(a)に示すように、基板20を用意し、この基板20上に、下地保護膜21を形成した後、さらにその上にアモルファスシリコン膜30aを形成する。
下地保護膜21は、例えば、プラズマCVD法、熱CVD法、レーザーCVD法のような化学蒸着法(CVD法)、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法のような物理蒸着法(PVD法)、溶射法、ゾル・ゲル法等の各種成膜法により形成することができる。
【0037】
アモルファスシリコン膜30aは、Si−H結合を含むアモルファスシリコン(水素化アモルファスシリコン)で構成されている。すなわち、アモルファスシリコン膜30aは、その内部および表面にSi−H結合を含んでいる。このようなアモルファスシリコン膜30aは、エネルギーが付与されることにより、表面付近に存在するSi−H結合が切断され、H原子が脱離した後には、その表面に接着性が発現するという特徴を有する。
【0038】
以下、基板20上にアモルファスシリコン膜30aを形成する方法について説明する。
アモルファスシリコン膜30aは、Si−H結合を含むアモルファスシリコン(水素化アモルファスシリコン)で構成されている。
ここでは、アモルファスシリコン膜30aの形成方法について説明するが、それに先立って、アモルファスシリコン膜30aの形成に用いられる成膜装置について説明する。
図8は、アモルファスシリコン膜の形成に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0039】
図8に示す成膜装置100は、プラズマCVD(化学蒸着:Chemical Vapor Deposition)法により、水素化アモルファスシリコンで構成されたアモルファスシリコン膜30aを形成する装置である。プラズマCVD法は、原料ガスを放電によってプラズマ状態とし、ラジカルやイオン等の反応活性種を生成・堆積させることによって、低温で成膜する方法である
この成膜装置200は、チャンバー201と、基板20の下面を支持する下部電極230と、基板20を介して下部電極230と対向して配置された上部電極240と、各電極230、240間に高周波電圧を印加する電源回路280とを備えている。
【0040】
また、チャンバー201の側面には、アモルファスシリコン膜30aの原料となるガスを導入するための供給口202と、チャンバー201内のガスを排気するための排気口203が設けられている。そして、供給口202には、図示しないガス供給手段が接続されており、これにより、チャンバー201内にガスを供給することができる。また、排気口203には、図示しない排気ポンプが接続されており、これにより、チャンバー201内のガスを排気して、チャンバー201内を減圧することができる。以下、成膜装置200の各部の構成について詳述する。
【0041】
チャンバー201は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態に保持し得るものである。
図8に示すチャンバー201の形状は、軸線が鉛直方向に沿うよう配置された、ほぼ円筒形をなしている。
下部電極230は、チャンバー201内の下面に載置されている。この下部電極230は、その上面が平面状であり、基板20の下面全体を支持するとともに、基板20と電気的接触が図られている。
また、下部電極230には、アース線231が接続され、接地されている。
【0042】
一方、上部電極240は、チャンバー201内の上面に設けられている。この上部電極240も、その下面が平面状をなしており、基板20の全体を覆うよう構成されている。
上部電極240には、配線284の一端が接続されており、他端は接地している。また、配線284の途中には、高周波電源282とコンデンサ283とが設けられている。
このような高周波電源282、コンデンサ283および配線284により、電源回路280が構成されている。そして、電源回路280は、上部電極240と下部電極230との間に高周波電圧を印加し、これにより、上部電極240と下部電極230との間には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0043】
次に、成膜装置200を用いて、基板20上にアモルファスシリコン膜30aを形成する方法について説明する。
まず、チャンバー201内に基板20を収納して封止状態とした後、排気ポンプによってチャンバー201内を減圧状態とする。
次に、ガス供給手段により、チャンバー201内に原料ガス、キャリアガス等の混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー201内に充填される。
混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、アモルファスシリコン膜30aの形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
【0044】
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜1000sccm程度に設定するのが好ましく、10〜600sccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路280を作動させ、一対の電極230、240間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極230、240間に存在するガスの分子が電離し、ラジカルやイオン等の反応活性種が発生する。この反応活性種は、拡散作用または高周波電圧の印加に伴う電界による静電引力によって基板20上に堆積し、アモルファスシリコン膜30aを形成する。
【0045】
用いる原料ガスとしては、例えば、モノシラン(SiH)、ジシラン(Si)、ジクロルシラン(SiHCl)、三塩化シラン(SiHCl)等のシラン系ガスが挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
なお、ここでは、プラズマCVD法によりアモルファスシリコン膜30aを形成する方法について説明したが、例えば、熱CVD法、光CVD法、触媒CVD法等の各種化学蒸着法、スパッタリング法等の各種物理蒸着法等により形成するようにしてもよい。このうち、アモルファスシリコン膜30aは、水素存在下において化学蒸着法により形成されたものであるのが好ましい。これにより、アモルファスシリコン膜30a中に水素原子が均一に分布することができる。この水素原子は、アモルファスシリコン中のダングリングボンド(未結合手)を終端化する。その結果、アモルファスシリコン膜30a中においてキャリア移動度が向上し、アモルファスシリコン膜30aを結晶化して得られる半導体膜10の半導体としての特性をより高めることができる。
【0046】
また、前述したような化学蒸着法によって形成された膜に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施すことにより、アモルファスシリコン膜30aを形成するようにしてもよい。このような方法によれば、アモルファスシリコン膜30aにより多くのSi−H結合を付加することができ、アモルファスシリコン膜30aの表面301aに露出するSi−H結合の数がより多くなる。その結果、たとえ水素の含有率が低い膜に対しても、十分な数のSi−H結合を付与することができるので、後述する工程において、アモルファスシリコン膜30aに十分な接着性を発現させることができる。
【0047】
フッ酸含有液としては、例えば、フッ酸(HF)溶液、バッファードフッ酸(フッ酸とフッ化アンモニウム(NHF)との混合液)等が挙げられる。フッ酸含有液によれば、化学蒸着法によって形成された膜の表面を清浄化するとともに、清浄化に伴って膜の表面に露出した未結合手を、フッ酸含有液中の水素イオンによって瞬時に終端化することができる。その結果、アモルファスシリコン膜30aの表面301aに多くのSi−H結合を付加することができる。
【0048】
また、水素プラズマ処理は、タングステンフィラメント法またはマイクロ波を用いる方法等により発生した水素プラズマに、前述の化学蒸着法によって形成された膜を曝すことによって行うことができる。この水素プラズマ処理によっても、アモルファスシリコン膜30aの表面301aに多くのSi−H結合を付加することができる。
なお、この方法によれば、水素を全く含有していない膜に対しても、Si−H結合を付与することができる。すなわち、例えば、物理蒸着法によって形成された水素を含まないアモルファスシリコンで構成された膜に対しても、上述したような方法でSi−H結合を付与することにより、アモルファスシリコン膜30aを形成することができる。
以上のようにして、アモルファスシリコン膜30aを成膜することができる。
【0049】
なお、アモルファスシリコン膜30aにおける水素原子の含有率は、1〜40原子%程度であるのが好ましく、3〜30原子%程度であるのがより好ましい。これにより、アモルファスシリコン膜30a中のSi−H結合の含有率が最適化されるので、アモルファスシリコン膜30aに十分な接着性と十分なキャリア移動度が発現する。その結果、アモルファスシリコン膜30aを結晶化して得られる半導体膜10は、優れた半導体特性を有するものとなる。
また、アモルファスシリコン膜30aの平均厚さは、10〜1000nm程度であるのが好ましく、50〜500nm程度であるのがより好ましい。アモルファスシリコン膜30aの平均厚さを前記範囲内とすることにより、最終的に得られる半導体膜10が半導体特性に優れたものとなる。
【0050】
[2]次に、アモルファスシリコン膜30aを結晶化して、ポリシリコン膜30pを得る。
このアモルファスシリコン膜30aを、本発明のシリコンの結晶化方法により結晶化する。
すなわち、アモルファスシリコン膜30aの結晶化方法は、[2−1]アモルファスシリコン膜30a(非晶質部)と、シリコンの種結晶30cとを用意する第1の工程と、[2−2]アモルファスシリコン膜30aの表面と種結晶30cの表面に、それぞれエネルギーを付与して、各表面に接着性を発現させる第2の工程と、[2−3]アモルファスシリコン膜30aの表面と種結晶30cの表面とが密着するように、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとを貼り合わせて接合し、接合体305を得る第3の工程と、[2−4]接合体を加熱することにより、アモルファスシリコン膜30aを結晶化する第4の工程とを有する。以下、これらの各工程について順次説明する。
【0051】
[2−1]シリコンの種結晶30cは、アモルファスシリコン膜30aを結晶化させる際に、結晶化の起点となる核(成長核)となるものである。
このような種結晶30cは、Si−H結合を含む単結晶シリコンまたはSi−H結合を含むポリシリコン(多結晶シリコン)で構成される。
ここで用意する種結晶30cは、後述する工程において、アモルファスシリコン膜30aの表面上に載置されるが、この載置面は例えば平面であり、またアモルファスシリコン膜30aの表面より面積が小さいものが用いられる。そして、このような種結晶30cを複数個用意する。
【0052】
以下、このような種結晶30cを支持基材22上に形成する方法について説明する。
種結晶30cは、Si−H結合を含む結晶シリコンで構成されている。
ここでは、種結晶30cの形成方法について説明するが、それに先立って、種結晶30cの形成に用いられる成膜装置について説明する。
図9は、種結晶の形成に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下の説明では、図9中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0053】
図9に示す成膜装置300は、エピタキシャル成長法により、支持基材22上に多結晶シリコンを成膜する装置である。エピタキシャル成長法は、支持基材22上に、その支持基材22と同じ結晶方位または異なる結晶方位の結晶を成長させる方法である。
この成膜装置300は、ベルジャ310と、ベルジャ310内に設けられたサセプタ320と、サセプタ320の下面に沿って配設された高周波誘導コイル330と、ベルジャ310内に原料ガスを導入するノズル340とを有する。以下、成膜装置300の各部の構成について詳述する。
【0054】
ベルジャ310は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態に保持し得るものである。
図9に示すベルジャ310は、軸線が鉛直方向に沿うよう配置された釣鐘状の形状をなしている。
このようなベルジャ310は、2層構造をなしており、外層が金属ベルジャ311、内層が石英ベルジャ312で構成されている。金属ベルジャ311は、ステンレス鋼等の各種金属材料で構成されており、石英ベルジャ312は、石英ガラスで構成されている。
【0055】
サセプタ320は、成膜する対象の支持基材22を支持するための支持台であり、ベルジャ310内を上下に仕切るように設けられている。また、サセプタ320の下面には、支持基材22を加熱する高周波誘導コイル330が設けられており、サセプタ320は、この高周波誘導コイル330からの熱を、支持基材22に伝達するための優れた熱伝導性も有している。
【0056】
高周波誘導コイル330の両端には、配線331が接続されており、この配線331は、ベルジャ310の外部に設けられた電源装置332に接続されている。この電源装置によって、高周波誘導コイル330に高周波を発生させ、高周波誘導加熱によって支持基材22を加熱し、高温に維持することができる。
また、サセプタ320の中心部には、貫通孔が形成されており、この貫通孔には、管状のノズル340が挿通されている。このノズル340の下端は、ベルジャ310の外部に設けられたガス供給装置341に接続されており、ノズル340の上端は、ベルジャ310内のサセプタ320上の空間に開口している。そして、ガス供給装置により、ノズル340を介してベルジャ310内に各種ガスを導入することができる。
なお、サセプタ320とベルジャ310との隙間は、ベルジャ310内のガスを排気するための排気路315となっており、この排気路315の下端は、排気ポンプ(図示せず)に接続されている。この排気ポンプにより、ベルジャ310内のガスを排気したり減圧したりすることができる。
【0057】
次に、成膜装置300を用いて、支持基材22上に種結晶30cを形成する方法について説明する。
なお、支持基材22の種結晶30cに接する領域の構成材料としては、例えば、石英(酸化ケイ素)、ガラス材料等が好ましく用いられる。これらの材料は、フッ酸含有液によって容易に溶解する(犠牲体として機能する)ため、後述する工程において、支持基材22と種結晶30cとを容易に分離することができる。
【0058】
種結晶30cを形成する場合、まず、ベルジャ310内に支持基材22を収納して封止状態とした後、排気ポンプによって、ベルジャ310内を減圧状態とする。
次に、ガス供給装置341により、ベルジャ310内を窒素ガスで置換する。次いで、窒素ガスを排気した後、今度は、ベルジャ310内を水素ガスで置換する。
次に、高周波誘導コイル330により、支持基材22を加熱し、高温に維持する。この際の支持基材22の温度は、950〜1200℃程度であるのが好ましい。これにより、支持基材22の表面に形成された酸化膜を還元して除去することができる。
【0059】
次に、ベルジャ310内に原料ガスを導入する。これにより、原料ガスの分子が支持基材22上に堆積し、シリコンの結晶がエピタキシャル成長する。その結果、水素を均一に含有するポリシリコンで構成された種結晶30cが得られる。このような種結晶30cは、Si−H結合に由来する優れた接着性をムラなく示すとともに、エピタキシャル成長によって結晶性の高いポリシリコンで構成されたものとなる。
なお、シリコンのエピタキシャル成長法には、熱分解法と水素還元法とがあるが、いずれの方法を用いるようにしてもよい。
【0060】
また、エピタキシャル成長時の支持基材22の温度は、600〜1000℃程度であるのが好ましく、600〜800℃程度であるのがより好ましい。
また、支持基材22上にシード層が形成されている場合、シード層上にエピタキシャル成長するシリコンの結晶は、シード層に対して結晶方位を維持しつつ成長するホモエピタキシャル成長によって成長する。これにより、シード層として結晶性の高いものを用いることにより、結晶性の高い種結晶30cが得られる。その結果、後述する工程において、半導体特性に優れたポリシリコン膜30pを確実に形成することができる。
【0061】
用いる原料ガスは、アモルファスシリコン膜30aを成膜する際に用いる原料ガスと同様である。
なお、支持基材22上に互いに分離して設けられた複数の種結晶30cを形成する場合には、まず、支持基材22上の全体に結晶シリコンの層を形成した後、フォトリソグラフィ技術を用いて、この層の不要な部分を除去することにより、所定の形状(パターン)の複数の種結晶30cを得る。このような方法によれば、得られる複数の種結晶30cは、それぞれが同等の結晶特性および半導体特性を有するものとなる。このため、アモルファスシリコン膜30aの結晶化がより均一なものとなり、例えば、アクティブマトリクス装置100において、複数の薄膜トランジスタ10間のスイッチング特性のバラツキを抑制することができる。
【0062】
また、このようなエピタキシャル成長法によって形成された結晶、または、フローティングゾーン(FZ)法やチョコラルスキ(CZ)法等のその他の結晶育成法により作製された結晶に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施すことにより、種結晶30cを形成するようにしてもよい。このような方法によれば、種結晶30cにより多くのSi−H結合を付加することができ、種結晶30cの表面に露出するSi−H結合の数がより多くなる。その結果、種結晶30cの接着性をより高めることができる。また、種結晶30cとして結晶性の高いものが得られる。
【0063】
用いるフッ酸含有液は、前述したフッ酸含有液と同様のものである。
また、水素プラズマ処理も、前述した水素プラズマ処理と同様である。
なお、このような種結晶30cは、支持基材22上に接着剤等を介して接着するようにしてもよい。
また、水素を含有するポリシリコンで構成された種結晶30cは、アモルファスシリコン膜30aの形成方法と同様にして水素化アモルファスシリコンで構成された膜に対し、水素雰囲気下において熱処理を施すことによっても形成することができる。この熱処理により、アモルファスシリコン膜30aが結晶化するとともに、膜中に水素原子が付与され、Si−H結合が付加される。その結果、水素を含有するポリシリコンで構成された種結晶30cが形成される。このような方法によれば、熱処理の程度によって、水素化アモルファスシリコンで構成された膜の結晶化の進行度合いを容易に制御することができるため、所望の結晶特性を有する種結晶30cを容易に得ることができる。
【0064】
このときの熱処理の温度は、アモルファスシリコンの結晶化温度や支持基材22の耐熱温度等を考慮して適宜設定される。
また、熱処理の方法としては、例えば、各種ヒータによる加熱方法のほか、レーザーを照射することによって加熱するレーザーアニール法等が挙げられる。
以上のようにして、図4(b)に示すように、支持基材22上に種結晶30cを形成することができる。
【0065】
なお、種結晶30cにおける水素原子の含有率は、1〜40原子%程度であるのが好ましく、3〜30原子%程度であるのがより好ましい。これにより、種結晶30c中のSi−H結合の含有率が最適化されるので、種結晶30cに十分な接着性が発現する。その結果、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが確実に接合され、その接合界面がアモルファスシリコン膜30aの結晶化における成長核となることができる。
【0066】
[2−2]次に、アモルファスシリコン膜30aの表面301aと種結晶30cの表面301cに、それぞれエネルギーを付与する。
各表面301a、301cにエネルギーを付与すると、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの各表面301a、301cに活性手が生じる。これにより、各表面301a、301cに接着性が発現する。
このような状態のアモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cは、化学的相互作用に基づいて互いに強固に接合可能なものとなる。
【0067】
ここで、各表面301a、301cに付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、各表面301a、301cにエネルギー線を照射する方法、各表面301a、301cを加熱する方法、各表面301a、301cに圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、各表面301a、301cをプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、各表面301a、301cをオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、各表面301a、301cにエネルギーを付与する方法として、特に、各表面301a、301cにエネルギー線を照射する方法、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cを加熱する方法、および各表面301a、301cに圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、各表面301a、301cに対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0068】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図4(c)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30c中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、各表面301a、301cにおいてSi−H結合を選択的に切断することができる。これにより、Si−Si結合が不本意に切断されるのを防止しつつ、各表面301a、301cに接着性を確実に発現させることができる。
【0069】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、Si−H結合の切断を効率よく行うことができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと各表面301a、301cとの離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0070】
また、紫外線を照射する時間は、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの各表面301a、301c付近のSi−H結合を選択的に切断し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、波長等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0071】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cのレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱によるアモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを防止することができる。
【0072】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴ってアモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0073】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cのSi−Si結合が切断されてしまうのを防止しつつ、Si−H結合を選択的に切断することができる。
【0074】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの骨格をなすSi−Si結合までもが切断されてしまうのを防止しつつ、Si−H結合を選択的に切断することができる。また、アモルファスシリコン膜30aが結晶化してしまうのを防止することができる。
【0075】
また、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに照射するレーザ光は、その焦点を、各表面301a、301cに合わせた状態で、この各表面301a、301cに沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、各表面301a、301c付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、各表面301a、301cに存在するSi−H結合を選択的に切断することができる。
【0076】
また、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0077】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による基板20の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cにおいて切断されるSi−H結合の切断量を調整することが可能となる。このようにSi−H結合の切断量を調整することにより、接合強度を容易に制御することができる。
【0078】
すなわち、Si−H結合の切断量を多くすることにより、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの表面301a、301cおよび内部に、より多くの活性手が生じるため、発現する接着性をより高めることができる。一方、Si−H結合の切断量を少なくすることにより、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの表面301a、301cおよび内部に生じる活性手を少なくし、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに発現する接着性を抑えることができる。
【0079】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
一方、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cを加熱する場合、加熱温度を25〜100℃程度に設定するのが好ましく、50〜100℃程度に設定するのがより好ましい。かかる範囲の温度で加熱すれば、基板20、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cが熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cを確実に活性化することができる。
【0080】
また、加熱時間は、Si−H結合を切断し得る程度の時間とすればよく、具体的には、加熱温度が前記範囲内であれば、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、加熱方法は、特に限定されないが、ヒータを用いる方法、赤外線を照射する方法、火炎に接触させる方法等の各種方法で加熱することができる。
また、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに圧縮力を付与する場合、圧縮力(圧力)は0.2〜100MPa程度であるのが好ましく、1〜50MPa程度であるのがより好ましい。これにより、単に圧縮するのみで、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cに対して適度なエネルギーを簡単に付与することができ、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとに十分な接着性を発現させることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cの各構成材料によっては、これらに損傷等が生じるおそれがある。
【0081】
また、圧縮力を付与する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、圧縮力を付与する時間は、圧縮力の大きさに応じて適宜変更すればよい。具体的には、圧縮力の大きさが大きいほど、圧縮力を付与する時間を短くすることができる。
ここで、エネルギーが付与される前のアモルファスシリコン膜30aは、図10(a)に示すように、その表面301a付近および内部にSi−H結合302を有している。このようなアモルファスシリコン膜30aにエネルギーを付与すると、Si−H結合302が切断され、水素原子が脱離する。これにより、図10(b)に示すように、アモルファスシリコン膜30aの表面301aに活性手303が生じ、活性化される。その結果、表面301aに、活性手303に基づく接着性が発現する。なお、このような接着性の発現は、種結晶30cにおいても同様に生じる。
【0082】
ここで、本明細書中において、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cが「活性化された」状態とは、上述のようにアモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの表面301a、301cおよび内部のSi−H結合302が切断され、各表面301a、301cに終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)303が生じた状態のことを言う。
したがって、活性手303とは、未結合手(ダングリングボンド)のことを言う。このような活性手303同士が再結合することによって、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが強固に接合される。
【0083】
[2−3]次に、表面301aと表面301cとが密着するように、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとを貼り合わせる(図4(d)参照)。これにより、前記工程[2−2]において、各表面301a、301cに接着性が発現していることから、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが化学的に結合する。この際、アモルファスシリコン膜30aの表面301a上に、複数の種結晶30cを互いに離間して形成されているため、図4(e)に示すような接合体305が得られる。
【0084】
このようにして得られた接合体305では、共有接合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが接合されている。このため、接合界面が極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
なお、得られた接合体305に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([2−4A]および[2−4B])のうちの少なくとも1つの工程(接合体305の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体305の接合強度のさらなる向上、接合ムラのさらなる低減を容易に図ることができる。
【0085】
[2−4A]得られた接合体305を、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、アモルファスシリコン膜30aの表面301aと種結晶30cの表面301cとが互いにより近接し、接合体305における接合強度をより高めることができる。
また、接合体305を加圧することにより、接合体305中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体305における接合強度をさらに高めることができる。
【0086】
このようにして接合体305における接合強度を高めることにより、後述する工程において、種結晶30cの結晶構造をアモルファスシリコン膜30aに確実に反映させることができる。
なお、この圧力は、アモルファスシリコン膜30aおよび種結晶30cの厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、0.2〜100MPa程度であるのが好ましく、1〜50MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体305の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、アモルファスシリコン膜30aや種結晶30cに損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体305を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0087】
[2−4B]得られた接合体305を比較的低温で加熱する。
これにより、接合体305における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体305を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体305の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体305が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0088】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[2−4A]、[2−4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、接合体305を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体305の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体305における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0089】
次に、種結晶30cとそれを支持する支持基材22とを分離する。
この分離は、例えば、エッチング等の方法により支持基材22の一部を溶解することによって行うことができる。具体的には、支持基材22のうち種結晶30cに接する領域(犠牲体)がガラス材料で構成されているような場合、フッ酸含有液によるエッチングを施すことにより、ガラス材料が溶解し、種結晶30cと支持基材22とを分離することができる。このように複数の種結晶30cが支持基材22に支持されていることにより、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとを接合する前においては、複数の種結晶30cの離間距離を確実に保持することができる。また、このように犠牲体を利用して種結晶30cから支持基材22を分離することにより、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとを接合した後においては、半導体素子を形成するにあたって不要な支持基材22を、複数の種結晶30cから一度に簡単に取り除くことができる。
【0090】
[2−5]次に、接合体305をシリコンの結晶化温度以上の温度で加熱する。これにより、図5(f)に示すように、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとの接合界面が、アモルファスシリコン膜30aが結晶化する際の起点となる核(成長核)となって、アモルファスシリコン膜30aが結晶化する。この際、アモルファスシリコン膜30aは、種結晶30cの結晶構造を反映した結晶構造を維持しつつ成長することができる。これは、前記[2−3]において得られた接合体305の接合界面では、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとが直接接触しているため、種結晶30cの結晶構造がアモルファスシリコン膜30aの結晶成長に確実な影響を及ぼしていることによるものである。このため、結晶性の高い結晶シリコンを種結晶30cとして用いることにより、アモルファスシリコン膜30aを結晶化してなる結晶シリコンを、結晶性の高いものとすることができる。その結果、キャリア移動度のような半導体特性に優れたポリシリコン膜30pが得られる。
【0091】
また、このような種結晶30cを用いてアモルファスシリコン膜30aを結晶化させることにより、従来のSPC法等に比べ、比較的低温で結晶化を図ることができる。このため、基板20の構成材料として、より耐熱性の低い材料を用いることができるので、材料の選択の幅を広げることができる。さらに、本発明では、接合体305の全体を加熱するため、局所的にレーザー光を照射して結晶化する場合に比べて、結晶化が均一に進行する。このため、ポリシリコン膜30pにおける半導体特性の均一化を図ることができる。
【0092】
ここで、図5(f)に示す種結晶30cは、その表面301cの面積が、アモルファスシリコン膜30aの表面301aの面積より小さいものである。このようなアモルファスシリコン膜30aは、その表面301aと表面301cとの接合界面を成長核として、主に面方向に成長する。このため、アモルファスシリコンが結晶化してなるポリシリコンは、その結晶化方向が面方向に沿ったものとなる。その結果、このようなポリシリコン膜30pにおけるキャリアの移動方向が面方向に平行になるよう、ポリシリコン膜30pを備えた半導体素子を構築することによって、特に優れた半導体特性を発揮する半導体素子を得ることができる。
【0093】
また、アモルファスシリコン膜30aの結晶化は、図5(g)に示すように、種結晶30cを中心に放射状に進行する。このため、種結晶30cとして小面積のものを用意しさえすれば、より大面積のアモルファスシリコン膜30aをも、容易に結晶化することができる。
接合体305を加熱する際の温度は、450〜590℃程度であるのが好ましく、500〜570℃程度であるのがより好ましい。このような温度であれば、例えば基板20としてガラス基板を用いた場合であっても、ガラス基板を軟化させることなくアモルファスシリコン膜30aを結晶化することができる。このため、基板20として、安価で入手し易いガラス基板を用いることが可能となる。また、このような温度であれば、昇温・降温を短時間で行うことができるので、結晶化工程の効率を高めることができる。
【0094】
また、接合体305を加熱する時間は、一般にアモルファスシリコン膜30aの全体が結晶化する時間とされる。具体的には、アモルファスシリコン膜30aの膜厚や加熱温度に応じて異なるものの、好ましくは0.1〜30時間程度、より好ましくは0.5〜20時間程度とされる。
また、接合体305を加熱する際の雰囲気は、アモルファスシリコン膜30aを変質・劣化させない雰囲気であれば特に限定されないが、水素ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気であるのが好ましい。このような雰囲気であれば、アモルファスシリコン膜30aの結晶化を妨げることなく、アモルファスシリコン膜30aの変質・劣化を確実に防止することができる。
【0095】
なお、接合体305の加熱方法は、特に限定されないが、例えば、ヒータによる加熱、赤外線照射等の方法を用いることができる。
また、図5(g)に示すように、アモルファスシリコン膜30aの表面301a上に、複数の種結晶30cを互いに離間して配置するようにした場合、複数の種結晶30cは、間隔が互いに等しくなるように、すなわち複数の種結晶30cが均一(均等)に分布するように配置されるのが好ましい。これにより、ポリシリコン膜30pの結晶特性および半導体特性がより均質なものとなる。なお、このように複数の種結晶30cを均等に配置する場合、前述したようにフォトリソグラフィ技術を用いて複数の種結晶30cを作製するようにすれば簡単に行える。
【0096】
また、この場合、各種結晶30c同士の離間距離は、特に限定されないが、好ましくは1〜100μm程度とされる。これにより、比較的短時間で均一な種結晶30cを形成することができる。
また、結晶性の高い領域が、例えば薄膜トランジスタ1の半導体層10を形成すべき領域に位置するように、種結晶30cの位置を調整するのが好ましい。具体的には、図6(h)に示すように、アモルファスシリコン膜30aの結晶化の成長端付近が、チャネル領域13を形成すべき領域に位置するように、種結晶30cの位置を調整するのが好ましい。結晶化の成長端付近は、成長核付近に比べて電子移動度等の半導体特性が優れている。このため、前述したようにして種結晶30cの配置を考慮することにより、高速駆動が可能な薄膜トランジスタ1を容易に作製することができる。
【0097】
なお、このようにして得られたポリシリコン膜30pの上には、種結晶30cが接合されている。このため、必要に応じて、この種結晶30cを、ポリシリコン膜30pから分離するようにしてもよい。
分離方法としては、例えば、ダイシング法、ブラスト法、研磨法等により種結晶30cそのものを除去する方法、種結晶30cとポリシリコン膜30pとの接合界面にエネルギーを付与して、接合界面をへき開する方法等が挙げられる。
【0098】
このうち、接合界面をへき開する方法では、種結晶30cとポリシリコン膜30pとの接合界面にエネルギーを付与することにより、接合界面に残存するSi−H結合を切断し、水素ガスを発生させる。この水素ガスが発生する際には、体積膨張を伴うため、接合界面を剥離させるような応力が生じることとなる。その結果、接合界面をへき開することができる。
【0099】
なお、接合界面にエネルギーを付与する方法には、前述したようなエネルギー付与方法を用いることができる。
また、このような方法で接合界面をへき開する場合、Si−H結合が特に接合界面近傍に偏在しているのが好ましい。これにより、接合界面により近い位置で、へき開を生じさせることができる。
【0100】
なお、接合界面にSi−H結合を偏在させるためには、結晶シリコンの表面にフッ酸含有液によるエッチングまたは水素プラズマ処理を施すことにより、種結晶30cを形成するようにすればよい。このような方法によれば、種結晶30cのアモルファスシリコン膜30aに接する面(接合界面)にSi−H結合を偏在させることができる。そして、前述した工程で、アモルファスシリコン膜30aと種結晶30cとを接合する際には、この接合界面に偏在したSi−H結合が全部切断されないよう、付与するエネルギー量を調整すればよい。これにより、前述した工程において、接合界面にSi−H結合が残存した(偏在した)接合体305を得ることができる。
以上のようにして、図6(h)に示すポリシリコン膜30pが得られる。
【0101】
[3]次に、得られたポリシリコン膜30pを所定の形状(パターン)にエッチングする。これにより、図6(i)に示す半導体膜10を得る。
エッチング方法には、例えば、プラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウエットエッチング等の化学的エッチング法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
[4]次に、図6(j)に示すように、半導体膜10および下地保護膜21を覆うように、ゲート絶縁膜14を形成する。
ゲート絶縁膜14は、前述した下地保護膜21の形成方法と同様の成膜方法により形成することができる。
[5]次に、図6(k)に示すように、ゲート絶縁膜14上にゲート電極15を形成する。
ゲート電極15は、前述した下地保護膜21の形成方法と同様の成膜方法と、フォトリソグラフィ技術とを組み合わせた方法により形成することができる。
【0103】
[6]次に、図7(L)に示すように、ゲート電極15をマスクとして、イオン注入装置(イオンドーピング装置)により半導体膜10に不純物イオンを導入する。これにより、ゲート絶縁膜14を貫通して不純物イオンが導入されることとなり、半導体膜10のうち、ソース領域11およびドレイン領域12に相当する領域に、不純物イオンが導入される。これにより、半導体膜10中にソース領域11およびドレイン領域12が形成される。また、ソース領域11およびドレイン領域12に挟まれた領域は、不純物イオンが導入されないため、チャネル領域13となる。
導入される不純物イオンとしては、例えば、ホウ素イオン、リンイオン等が挙げられる。
【0104】
なお、本実施形態では、イオン注入装置を用いた不純物イオンの導入方法を例に説明したが、この不純物イオンは、熱拡散法等の方法により導入するようにしてもよい。この場合、ゲート絶縁膜14を形成する前に、不純物イオンの導入を行うこととなる。
また、不純物イオンを導入した後、必要に応じて、半導体膜10に熱処理を施すことにより、不純物イオンを活性化する活性化処理を行うようにしてもよい。
以上のようにして、ソース領域11、ドレイン領域12、チャネル領域13、ゲート絶縁膜14およびゲート電極15を有する薄膜トランジスタ1が得られる。
【0105】
[7]次に、図7(m)に示すように、ゲート電極15およびゲート絶縁膜14上に層間絶縁膜16を形成する。
層間絶縁膜16は、前述した下地保護膜21の形成方法と同様の成膜方法により形成することができる。
【0106】
[8]次に、図7(n)に示すように、ゲート絶縁膜14および層間絶縁膜16に、各コンタクトホール17、18を形成する。その後、各コンタクトホール17、18を充填するように、ソース電極(データ線101)およびドレイン電極(画素電極104)を形成する。これにより、ソース電極(データ線101)とソース領域11とが電気的に接続され、ドレイン電極(画素電極104)とドレイン領域12とが電気的に接続される。
【0107】
なお、各コンタクトホール17、18の形成方法としては、例えば、前述したような各種エッチング方法等が挙げられる。
また、ソース電極(データ線101)およびドレイン電極(画素電極104)の形成方法には、例えば、ゲート電極15の形成方法と同様の方法を用いることができる。
以上のようにして、図7(o)に示すアクティブマトリクス装置100が得られる。
【0108】
<電気泳動表示装置>
次に、前述したアクティブマトリクス装置100を備える電気泳動表示装置(電気光学表示装置)について説明する。
図11は、電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
図11に示す電気泳動表示装置400は、基板500上に設けられたアクティブマトリクス装置(図示せず)と、このアクティブマトリクス装置に電気的に接続された電気泳動表示部600とで構成されている。
電気泳動表示部600は、図11に示すように、基板500上に順次積層された、画素電極104と、マイクロカプセル601と、透明電極(共通電極)602および透明基板603とを有している。
【0109】
そして、マイクロカプセル601がバインダ材604により、画素電極104と透明電極602との間に固定されている。
画素電極104は、マトリクス状に、すなわち、縦横に規則正しく配列するように分割されている。
各カプセル601内には、それぞれ、特性の異なる複数種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が封入されている。本実施形態では、各カプセル601内に、電荷の極性および色(色相)の異なる2種の電気泳動粒子621、622を含む電気泳動分散液620が封入されている。
【0110】
このような電気泳動表示装置400では、アクティブマトリクス装置100によって画素電極104と透明電極602との間に印加する電圧を制御することにより、電気泳動粒子621、622の泳動を制御することができる。これにより、画素ごとに電気泳動粒子621、622による光の反射率を制御することができる。その結果、電気泳動表示装置400の表示面側(透明基板603側)に、所望の画像(情報)を表示させることができる。
【0111】
なお、前述したようなアクティブマトリクス装置が組み込まれた電気光学表示装置は、このような電気泳動表示装置400への適用に限定されるものではなく、例えば、液晶表示装置、有機または無機EL表示装置等に適用することもできる。
以上、本発明のシリコンの結晶化方法、接合体、半導体装置の製造方法および半導体装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明のシリコンの結晶化方法および半導体装置の製造方法は、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
また、本発明の半導体装置では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することができる。
【実施例】
【0112】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.アクティブマトリクス装置の製造
(実施例1)
まず、平均厚さ1mmの石英ガラス基板を用意し、その上にプラズマCVD法により酸化ケイ素を成膜した。これにより、平均厚さ200nmの下地保護膜を形成した。
次に、下地保護膜上に、以下の成膜条件によりアモルファスシリコンを成膜した。これにより、平均厚さ60nmのアモルファスシリコン膜を形成した。
【0113】
<アモルファスシリコン膜の成膜条件>
・成膜方法 :プラズマCVD法
・原料ガスの組成 :モノシラン
・キャリアガスの組成:水素
・高周波電力の周波数:13.56MHz
・チャンバー内圧力 :100Pa
・高周波電力の出力 :100W
一方、平均厚さ1mmの酸化アルミニウム(アルミナ)基板を用意し、その上にプラズマCVD法により酸化ケイ素を成膜した。これにより、平均厚さ10nmの犠牲層(犠牲体)を形成した。そして、アルミナ基板と犠牲層とで、種結晶を支持する支持基材を得た。
次に、犠牲層上に、以下の成膜条件によりポリシリコンを成膜した。その後、このポリシリコンの膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、互いに離間した複数の種結晶(平均厚さ200nm)を得た。得られた複数の種結晶は、犠牲層上に均等に分布したものである。
【0114】
<種結晶の成膜条件>
・成膜方法 :エピタキシャル成長法(水素雰囲気下)
・原料ガスの組成 :モノシラン
次に、アモルファスシリコン膜および種結晶に、それぞれ以下に示す条件で紫外線を照射した。
【0115】
<紫外線照射条件>
・雰囲気 :窒素ガス雰囲気
・雰囲気温度 :20℃
・雰囲気圧力 :100Pa
・紫外線の波長 :172nm
・紫外線の照射時間:5分
次に、紫外線を照射した面同士が接触するように、石英ガラス基板とアルミナ基板とを重ね合わせ、これらを接合した。
【0116】
次いで、石英ガラス基板とアルミナ基板とが3MPaで加圧しつつ、80℃で加熱し、15分間維持した。これにより、石英ガラス基板とアルミナ基板との接合強度の向上を図った。
次に、得られた接合体を以下に示す条件で加熱した。これにより、アモルファスシリコン膜を結晶化させ、ポリシリコン膜を得た。
【0117】
<加熱条件>
・加熱温度 :500℃
・加熱時間 :15時間
・雰囲気 :水素ガス雰囲気
次に、得られた接合体に対してフッ酸含有液によるエッチングを施した。これにより、犠牲層(犠牲体)を溶解し、種結晶と支持基材とを分離した。
【0118】
次に、得られた接合体に対してレーザー光を照射した。これにより、接合体の接合界面をへき開し、作製したポリシリコン膜と種結晶とを分離した。
次に、得られたポリシリコン膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、所定形状の半導体膜を得た。
次に、半導体膜および下地保護膜を覆うように、プラズマCVD法により酸化ケイ素を成膜した。これにより、平均厚さ120nmのゲート絶縁膜を形成した。
【0119】
次に、ゲート絶縁膜を覆うように、スパッタリング法によりタンタル(Ta)を成膜した。そして、このタンタルの膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、平均厚さ600nmのゲート電極を得た。
次に、得られたゲート電極をマスクとして、イオン注入装置により半導体膜に対してリンイオンを導入した。これにより、半導体膜中に、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル領域を形成した。
【0120】
次に、ゲート電極およびゲート絶縁膜を覆うように、プラズマCVD法により酸化ケイ素を成膜した。これにより、平均厚さ500nmの層間絶縁膜を得た。
次に、フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート絶縁膜および層間絶縁膜にコンタクトホールを形成した。そして、このコンタクトホールを充填するように、スパッタリング法によりアルミニウム(Al)を成膜した。そして、このアルミニウムの膜を、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングすることにより、平均厚さ600nmのソース電極(データ線)およびドレイン電極(画素電極)を得た。
以上のようにして、マトリクス状に配置された多数の薄膜トランジスタを備えるアクティブマトリクス装置を得た。
【0121】
(実施例2)
紫外線を照射する前に、アモルファスシリコン膜の表面および種結晶の表面に対して、フッ酸含有液によるエッチング処理を施し、表面にSi−H結合を付与するようにした以外は、前記実施例1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
(実施例3)
フッ酸含有液によるエッチング処理に代えて、水素プラズマ処理を行うようにした以外は、前記実施例2と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
【0122】
(実施例4)
以下のようにして作製された種結晶を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。
まず、実施例1のアモルファスシリコン膜の成膜条件と同様にして、犠牲層上にアモルファスシリコンの膜(平均厚さ200nm)を形成した。
次に、得られたアモルファスシリコンの膜を、下記の条件で結晶化させることにより、ポリシリコンの膜を得た。
【0123】
<結晶化条件>
・結晶化方法 :加熱(アニール)
・加熱温度 :600℃
・加熱時間 :15時間
次に、実施例1と同様にして、ポリシリコンの膜の不要な部分を除去することにより、犠牲層上に均等に分布した複数の種結晶を得た。
【0124】
(比較例1)
アモルファスシリコン膜の結晶化を、以下のようなSPC法により行った以外は、前記実施例1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。なお、SPC法は、加熱によりアモルファスシリコンを結晶化する方法である。
<SPC法の条件>
・加熱温度 :600℃
・加熱時間 :15時間
【0125】
(比較例2)
アモルファスシリコン膜の結晶化を、以下のようなLPC法により行った以外は、前記実施例1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。なお、LPC法は、レーザー照射により、アモルファスシリコンを瞬間的に溶融化し、再結晶化させる方法である。
<LPC法の条件>
・レーザの種類 :エキシマレーザ
・レーザの波長 :308nm
・エネルギー密度:500mJ/cm
・パルス幅 :10ns
【0126】
(比較例3)
アモルファスシリコン膜の結晶化を、以下のようなMILC法により行った以外は、前記実施例1と同様にしてアクティブマトリクス装置を得た。なお、MILC法は、アモルファスシリコン膜上に、Ni等の金属元素を成膜した後、加熱することにより、アモルファスシリコンを結晶化する方法である。MILC法によれば、金属元素が、アモルファスシリコンの結晶化を促進する触媒として作用するため、結晶粒や成長方向を制御することが可能になる。
<MILC法の条件>
・加熱温度 :550℃
・加熱時間 :15時間
・金属触媒の種類:Ni
その後、Ni膜を除去することにより、ポリシリコン膜を得た。
【0127】
2.アクティブマトリクス装置の評価
2.1 キャリア移動度の評価
各実施例および各比較例で得られたアクティブマトリクス装置の薄膜トランジスタの電界効果移動度(キャリア移動度)を測定したところ、各実施例における電界効果移動度は、いずれも各比較例における電界効果移動度を上回った。
【0128】
2.2 トランジスタ特性のバラツキ評価
各実施例および各比較例で得られたアクティブマトリクス装置について、各薄膜トランジスタのしきい値電圧(Vth)のバラツキを測定した。
その結果、各実施例で得られたアクティブマトリクス装置では、各薄膜トランジスタのしきい値電圧は、いずれも比較的小さかった。
これに対し、各比較例で得られたアクティブマトリクス装置では、各薄膜トランジスタのしきい値電圧は、いずれも各実施例に比べて大きかった。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の半導体装置を備えるアクティブマトリクス装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すアクティブマトリクス装置の一部を拡大して示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図およびB−B線断面図である。
【図4】アクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図5】アクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図6】アクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図7】アクティブマトリクス装置の製造方法を説明するための図である。
【図8】アモルファスシリコン膜の形成に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図9】種結晶の形成に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図10】アモルファスシリコン膜のエネルギー付与前後の状態を模式的に示す縦断面図である。
【図11】電気泳動表示装置の実施形態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0130】
1……薄膜トランジスタ 10……半導体膜 11……ソース領域 12……ドレイン領域 13……チャネル領域 14……ゲート絶縁膜 15……ゲート電極 16……層間絶縁膜 17、18……コンタクトホール 20……基板 21……下地保護膜 22……支持基材 30a……アモルファスシリコン膜 30c……種結晶 301c……表面 30p……ポリシリコン膜 302……Si−H結合 303……活性手 305……接合体 100……アクティブマトリクス装置 101……データ線 102……走査線 103……画素領域 104……画素電極 200……成膜装置 201……チャンバー 202……供給口 203……排気口 230……下部電極 231……アース線 240……上部電極 280……電源回路 282……高周波電源 283……コンデンサ 284……配線 300……成膜装置 310……ベルジャ 311……金属ベルジャ 312……石英ベルジャ 320……サセプタ 330……高周波誘導コイル 331……配線 332……電源装置 340……ノズル 341……ガス供給装置 400……電気泳動表示装置 500……基板 600……電気泳動表示部 601……マイクロカプセル 620……電気泳動分散液 621、622……電気泳動粒子 602……透明電極 603……透明基板 604……バインダ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si−H結合を含むアモルファスシリコンで構成された非晶質部と、Si−H結合を含む結晶シリコンで構成された種結晶とを用意する第1の工程と、
前記非晶質部の表面および前記種結晶の表面に、それぞれエネルギーを付与して、前記各表面の前記Si−H結合を切断して結合手を生じさせる第2の工程と、
前記非晶質部の前記表面と前記種結晶の前記表面とが密着するように、前記非晶質部と前記種結晶とを圧接することにより、前記各表面の前記結合手同士が再結合し、前記非晶質部と前記種結晶とが直接接合されてなる接合体を得る第3の工程と、
該接合体を、シリコンの結晶化温度以上の温度で加熱することにより、前記接合体の接合界面を成長核として、前記非晶質部を結晶化させる第4の工程とを有することを特徴とするシリコンの結晶化方法。
【請求項2】
前記非晶質部は、層状をなしており、
前記層状をなす前記非晶質部の平均厚さは、10〜1000nmである請求項1に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項3】
前記非晶質部および前記種結晶の前記接合に供される面は、それぞれ平面であり、前記種結晶が有する前記平面の面積は、前記非晶質部が有する前記平面よりも小さい請求項1または2に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項4】
前記接合体は、前記非晶質部の前記平面上に、互いに離間して配置された複数の前記種結晶を接合してなるものである請求項3に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項5】
前記接合体において、前記複数の種結晶は、前記非晶質部の前記平面上にほぼ均等に配置され、接合されている請求項4に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項6】
前記複数の種結晶は、フォトリソグラフィ技術を用いて、1つの種結晶を分割して得られたものである請求項4または5に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項7】
前記第4の工程における前記非晶質部の結晶化は、前記種結晶を中心に放射状に進行する請求項3ないし6のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項8】
前記種結晶は、犠牲体上に配置されており、
前記第3の工程において、前記非晶質部と前記種結晶とを貼り合わせた後、前記犠牲体を溶解または溶融することにより、前記種結晶と前記犠牲体とを分離する請求項1ないし7のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項9】
前記非晶質部は、アモルファスシリコンで構成された母材に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施して形成されたものである請求項1ないし8のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項10】
前記アモルファスシリコンで構成された母材は、シラン系ガスを主成分とする原料ガスを用い、水素雰囲気下において化学蒸着法によって形成されたものである請求項9に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項11】
前記種結晶は、結晶シリコンで構成された母材に対し、フッ酸含有液によるエッチングおよび水素プラズマ処理のうちの少なくとも一方を施して形成されたものである請求項1ないし10のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項12】
前記結晶シリコンで構成された母材は、シラン系ガスを主成分とする原料ガスを用い、水素雰囲気下においてエピタキシャル成長法によって形成されたものである請求項11に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項13】
前記種結晶は、アモルファスシリコンで構成された母材を、水素雰囲気下における熱処理によって、結晶化させてなるものである請求項1ないし12のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項14】
前記非晶質部中または前記種結晶中の水素原子の含有率は、1〜40原子%である請求項1ないし13のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項15】
前記第2の工程において、前記非晶質部および前記種結晶に対するエネルギーの付与は、エネルギー線を照射する方法、加熱する方法、および圧縮力を付与する方法から選択される1または2以上の方法を組み合わせた方法により行われる請求項1ないし14のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項16】
前記第2の工程において照射されるエネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項15に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項17】
前記第2の工程における加熱の温度は、25〜100℃である請求項15に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項18】
前記第2の工程において付与される圧縮力は、0.2〜100MPaである請求項15に記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項19】
前記第4の工程において、前記接合体を加熱する際の温度は、450〜590℃である請求項1ないし18のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項20】
前記第4の工程において、前記接合体を加熱する際の雰囲気は、水素ガス雰囲気または不活性ガス雰囲気である請求項1ないし19のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法。
【請求項21】
アモルファスシリコンで構成された層状の非晶質部と、結晶シリコンで構成された複数の種結晶とを有し、
前記非晶質部と前記各種結晶とが直接接合されており、
前記各種結晶の前記接合に供される面の面積が、それぞれ前記非晶質部の前記接合に供される面よりも大きく、かつ、前記複数の種結晶は、前記非晶質部に対して均等に分布するようにして接合されていることを特徴とする接合体。
【請求項22】
アモルファスシリコンで構成された非晶質部を形成する工程と、
前記非晶質部を結晶化することにより、結晶シリコンで構成された半導体部を有する半導体装置を得る工程とを有し、
前記非晶質部の結晶化は、請求項1ないし20のいずれかに記載のシリコンの結晶化方法によりなされることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項23】
請求項22に記載の半導体装置の製造方法により製造されたことを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−194259(P2009−194259A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35328(P2008−35328)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】