説明

ハイブリッド電気自動車の制御装置

【課題】不快な振動やショックを生じることなくPTO装置による動力の取り出しを迅速に開始できるようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン2及び電動機6の駆動力がそれぞれ変速機を介して車両の駆動輪16に伝達可能であって、変速機8から取り出した動力を作業装置38に伝達可能なPTO装置40,140を備え、エンジン2の運転中にPTO装置40,140を介した作業装置38への動力の伝達を開始する際には、変速機8から作業装置38に伝達される動力を遮断しているPTOクラッチ58,158を接続する前に、エンジン2から変速機8に伝達される駆動力を遮断する主クラッチ4を切断し、PTOクラッチ58,158の出力側回転数に対応した目標回転数Ntとなるように電動機6を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はハイブリッド電気自動車の制御装置に関し、特に変速機から取り出した動力を作業装置に伝達可能なPTO装置を備えたハイブリッド電気自動車の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、コンクリートポンプ車両やタンクローリ車両などのように作業装置を搭載した車両においては、作業装置の作動のために変速機から動力を取り出して作業装置に伝達するようにしたPTO装置を搭載することが知られている。
また、エンジンのほかに電動機を車両に搭載し、エンジンの駆動力と電動機の駆動力とをそれぞれ車両の駆動輪に伝達可能とした、いわゆるパラレル型ハイブリッド電気自動車が開発され実用化されている。
【0003】
このようなパラレル型ハイブリッド電気自動車においてPTO装置を搭載することにより変速機から動力を取り出すようにしたものが、特許文献1によって提案されている。
特許文献1のハイブリッド電気自動車においては、エンジンの駆動力が主クラッチ及び変速機を介して駆動輪に伝達可能であると共に、変速機内のカウンタ軸及びリバースアイドル軸を介してPTO軸に伝達可能となっており、PTO軸に伝達されたエンジンの駆動力は、PTOクラッチを介して作業装置に伝達されるようになっている。また、電動機の回転軸はリバースアイドル軸に連結されており、電動機の駆動力を駆動輪や作業装置に伝達することも可能となっている。
【0004】
このようなPTO装置を搭載したハイブリッド電気自動車では、エンジンが運転中であって主クラッチが閉じているときには、エンジンの回転が変速機のカウンタ軸に伝達されることによりPTO軸が回転している。そして、このような状態において作業装置を非作動とする場合には、PTOクラッチを切断することによりエンジンの駆動力が作業装置に伝達されず、作業装置を作動させる場合には、PTOクラッチを接続することによりエンジンの駆動力が作業装置に伝達されるようにしている。
【特許文献1】特開平11−146502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述のようにPTOクラッチを接続して作業装置を非作動状態から作動状態に切り換える際、作業装置は停止状態にあってPTOクラッチの出力側は停止しているのが一般的であり、このような状態でPTOクラッチを接続すると、PTOクラッチの入力側と出力側との回転数差が大きく、PTOクラッチの接続時に不快な振動やショックを生じる可能性がある。
【0006】
また、このような振動やショックを防止するため、PTOクラッチの接続前に主クラッチを切断することが考えられるが、特許文献1のハイブリッド電気自動車のように、変速機の回転軸には電動機が連結されているため、主クラッチを切断してもPTOクラッチの入力側の回転はすぐには停止しない。このため、主クラッチを切断してからすぐにPTOクラッチを接続した場合には、依然として振動やショックが発生する可能性があり、PTOクラッチの入力回転数が低下するのを待ってPTOクラッチを接続する場合には、作業装置が必要となったときに直ちに使用できないという不具合がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、不快な振動やショックを生じることなくPTO装置による動力の取り出しを迅速に開始できるようにしたハイブリッド電気自動車の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置は、エンジン及び電動機から変速機を介してそれぞれ車両の駆動輪に駆動力を伝達可能であって、上記変速機から取り出した動力を作業装置に伝達可能なPTO装置を備えたハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記エンジンから上記変速機に伝達される駆動力を遮断可能な主クラッチと、上記PTO装置に設けられ、上記変速機から上記作業装置に伝達される動力を遮断可能なPTOクラッチと、上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記PTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数となるように上記電動機を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする(請求項1)。
【0009】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジン及び電動機からそれぞれ変速機を介して駆動輪に駆動力を伝達することにより、車両を走行させることが可能である。
また、エンジンの運転中にPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際には、制御手段がPTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、PTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数となるように電動機を制御する。
【0010】
具体的には、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記電動機の回転数を検出する電動機回転数検出手段を更に備え、上記制御手段は、上記電動機回転数検出手段によって検出された上記電動機の回転数と上記目標回転数との差が所定回転数以下になったときに上記PTOクラッチを接続することを特徴とする(請求項2)。
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、制御手段が電動機を制御することにより電動機の回転数と目標回転数との差が減少して所定回転数以下になったときにPTOクラッチを接続する。
【0011】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記PTO装置は上記車両が停車中に使用され、上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、上記制御手段は、上記電動機回転数検出手段によって検出された上記電動機の回転数と上記目標回転数との差が所定の第1規定時間内に上記所定回転数以下にならない場合、上記変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換え、上記所定変速段への切り換え完了後に再びニュートラル状態としてから上記PTOクラッチを接続することを特徴とする(請求項3)。
【0012】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車しエンジンが運転中であるときにPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際、電動機の回転数と目標回転数との差が所定回転数以下になるように電動機を制御しても、第1規定時間内に電動機の回転数と目標回転数との差が所定回転数以下にならない場合、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換えることにより変速段切換機構のシンクロ機構によってPTOクラッチの入力側回転数が低下し、上記所定変速段への切り換えが完了後に再びニュートラル状態としてからPTOクラッチを接続する。
【0013】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記電動機が作動困難な所定状態にあることを検出する異常検出手段を更に備え、上記PTO装置は上記車両が停車中に使用され、上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、上記制御手段は、上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際に、上記異常検出手段によって上記電動機が上記所定状態にあることを検出した場合には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換え、上記所定変速段への切り換え完了後に再びニュートラル状態としてから上記PTOクラッチを接続することを特徴とする(請求項4)。
【0014】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車しエンジンが運転中であるときにPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際、電動機が作動困難な所定状態にある場合には、制御手段がPTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換えることにより変速段切換機構のシンクロ機構によってPTOクラッチの入力側回転数が低下し、上記所定変速段への切り換えが完了後に再びニュートラル状態としてからPTOクラッチを接続する。
【0015】
また、これらとは別の具体的態様として、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記PTO装置は、上記車両が停車中に使用され、上記変速機の出力軸と一体回転する所定変速段用の歯車に噛合するPTO歯車を介して上記変速機から動力を取り出すように構成され、上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、上記制御装置は、上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記変速機をニュートラル状態から上記所定変速段に切り換えると共に上記電動機を制御し、上記所定変速段への切り換え完了後に、上記PTOクラッチを接続することを特徴とする(請求項5)。
【0016】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車中であるときに、変速機の出力軸と一体回転する所定変速段用の歯車に噛合するPTO歯車を介して変速機から動力が取り出され、この動力がPTOクラッチを介して作業装置に伝達される。
また、車両が停車しエンジンが運転中のときにPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際には、PTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換える。このとき変速機の入力軸は電動機の慣性により回転を継続しており、所定変速段への切り換えに伴いPTOクラッチの入力側にもこの回転が伝達される。しかしながら、制御手段によりPTOクラッチの入力側と出力側との回転数差が生じないように電動機が制御されることにより、PTOクラッチの入力側はほとんど回転することなく所定変速段への切り換えが完了し、PTOクラッチの入力側は出力側と同様に停止状態となる。そして上記所定変速段への切り換え完了後にPTOクラッチが接続される。
【0017】
また、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記制御手段は、上記所定変速段への切り換えを行っても、所定の第2規定時間内に上記所定変速段への切り換えが完了されない場合には、上記電動機を制御して上記電動機の順回転方向と逆回転方向とに交互に所定の微小トルクを発生させ、該微小トルクを上記変速機の入力軸に伝達させることにより上記所定変速段の変速ギヤを回転方向に振動させる位置ずらし制御を行うことを特徴とする(請求項6)。
【0018】
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、所定変速段への切り換えを行っても、所定の第2規定時間内に所定変速段への切り換えが完了されない場合には、制御手段は電動機を制御して電動機の順回転方向と逆回転方向とに交互に所定の微小トルクを発生させ、該微小トルクを変速機の入力軸に伝達させることにより所定変速段の変速ギヤを回転方向に振動させる位置ずらし制御を行う。
【0019】
更に、上記ハイブリッド電気自動車の制御装置において、上記制御手段は、上記位置ずらし制御を開始してから所定の第3規定時間内に上記所定変速段への切り換えが完了されない場合には、上記所定変速段とは異なる変速段に一旦切り換えた後に、再び上記所定変速段への切り換えを行うことを特徴とする(請求項7)。
このように構成されたハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、上記位置ずらし制御を開始してから所定の第3規定時間内に所定変速段への切り換えが完了されない場合には、制御手段は所定変速段とは異なる変速段に一旦切り換えた後に、再び所定変速段への切り換えを行う。
【発明の効果】
【0020】
本発明のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、エンジンの運転中にPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際には、制御手段がPTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、PTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数となるように電動機を制御することにより、PTOクラッチの入力側回転数を出力側回転数に近づけることが可能となる。この結果、PTOクラッチを接続する際の不快な振動やショックの発生を防止することができる。更に、PTOクラッチの入力側回転数が自然に低下するのを待たず、電動機の制御によりPTOクラッチの入力側回転数を速やかに出力側回転数に近づけることができるので、PTO装置を迅速に使用開始することができる。
【0021】
また、請求項2のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、制御手段が電動機を制御することにより電動機の回転数と目標回転数との差が減少して所定回転数以下になったときにPTOクラッチを接続するようにしたので、PTOクラッチを接続する際の不快な振動やショックの発生を確実に防止することができる。
【0022】
更に、請求項3のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車しエンジンが運転中であるときにPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際、電動機の回転数と目標回転数との差が所定回転数以下になるように電動機を制御しても、第1規定時間内に電動機の回転数と目標回転数との差が所定回転数以下にならない場合、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換えることにより変速段切換機構のシンクロ機構によってPTOクラッチの入力側回転数が低下する。作業装置は一般的に停止した状態にありPTOクラッチの出力側は回転を停止しているが、上記所定変速段への切り換えが完了すると、PTOクラッチの入力側も回転を停止した状態となる。従って、この後に再び変速機をニュートラル状態としてからPTOクラッチを接続することにより、電動機が作動困難な所定状態にある場合であっても、振動やショックを生じることなくPTOクラッチを接続することが可能となる。
【0023】
更にまた、請求項4のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車しエンジンが運転中のときに変速機からPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際、電動機が作動困難な所定状態にある場合には、制御手段がPTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換えることにより変速段切換機構のシンクロ機構によってPTOクラッチの入力側回転数が低下する。作業装置は一般的に停止した状態にあってPTOクラッチの出力側は回転を停止しているが、上記所定変速段への切り換えが完了すると、PTOクラッチの入力側も回転を停止した状態となる。従って、この後に再び変速機をニュートラル状態としてからPTOクラッチを接続することにより、電動機が作動困難な所定状態にある場合であっても、振動やショックを生じることなくPTOクラッチを接続することが可能となる。
【0024】
また、請求項5のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、車両が停車しエンジンが運転中のときにPTO装置を介した作業装置への動力の伝達を開始する際には、PTOクラッチを接続する前に主クラッチを切断し、変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換える。このとき変速機の入力軸は電動機の慣性により回転を継続しており、所定変速段への切り換えに伴いPTOクラッチの入力側にもこの回転駆動力が伝達される。
【0025】
このとき、電動機は制御手段によってPTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数に制御されるが、作業装置は一般的に停止した状態にあってPTOクラッチの出力側は回転を停止しているので、PTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数は0rpmとなる。
従って、このような電動機の制御により、変速機の出力軸への回転駆動力の伝達が抑制されながら所定変速段への切り換えが行われるので、所定変速段への切換時におけるシンクロ機構の負荷を軽減することができる。そして、所定変速段への切り換え完了後はPTOクラッチの入力側が出力側と同様に停止状態となるので、振動やショックを生じることなくPTOクラッチを接続することができる。
【0026】
更に、請求項6のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、所定の第2規定時間内に所定変速段への切り換えが完了されない場合には、電動機の順回転方向と逆回転方向とに交互に所定の微小トルクを電動機に発生させ、該微小トルクを変速機の入力軸に伝達させることにより所定変速段の変速ギヤを回転方向に振動させる位置ずらし制御を行うようにしたので、変速段の切換機構が噛み合うなどの機械的要因により所定変速段への切り換えができないときに、この機械的要因を解除して速やかに所定変速段への切り換えを完了することが可能となる。
また、請求項7のハイブリッド電気自動車の制御装置によれば、上記位置ずらし制御を開始してから所定の第3規定時間内に所定変速段への切り換えが完了されない場合には、制御手段は所定変速段とは異なる変速段に一旦切り換えた後に、再び所定変速段への切り換えを行うことにより、切換機構と所定変速段の変速ギヤとの相対的位置関係が変化し、所定変速段への切り換えが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態であるハイブリッド電気自動車1の制御装置の要部構成図である。ディーゼルエンジン(以下エンジンという)2の出力軸であるクランク軸にはクラッチ(主クラッチ)4の入力軸が連結されており、クラッチ4の出力軸は永久磁石式同期電動機(以下電動機という)6の回転軸を介して自動変速機(以下変速機という)8の入力軸が連結されている。また、変速機8の出力軸はプロペラシャフト10、差動装置12及び駆動軸14を介して左右の駆動輪16に接続されている。
【0028】
従って、クラッチ4が接続されているときには、エンジン2の出力軸と電動機6の回転軸とが連結されると共に変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となり、クラッチ4が切断されているときには、エンジン2の出力軸と電動機6の回転軸との連結が解除され、電動機6の回転軸のみが変速機8を介して駆動輪16と機械的に接続可能となる。
また、クラッチ4は内部に装着された図示しないクラッチアクチュエータによりクラッチストロークを制御することができるようになっている。
【0029】
電動機6は、バッテリ18に蓄えられた直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて供給されることによりモータとして作動し、その駆動トルクが変速機8によって適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。また、車両減速時には、電動機6が発電機として作動し、駆動輪16の回転による運動エネルギが変速機8を介し電動機6に伝達されて交流電力に変換されることにより回生制動トルクを発生する。そして、この交流電力はインバータ20によって直流電力に変換された後、バッテリ18に充電され、駆動輪16の回転による運動エネルギが電気エネルギとして回収される。
【0030】
一方、エンジン2の駆動トルクは、クラッチ4が接続されているときに電動機6の回転軸を経由して変速機8に伝達され、適切な速度に変速された後に駆動輪16に伝達されるようになっている。従って、エンジン2の駆動トルクが駆動輪16に伝達されているときに電動機6がモータとして作動する場合には、エンジン2の駆動トルクと電動機6の駆動トルクとがそれぞれ変速機8を介して駆動輪16に伝達されることになる。即ち、車両の駆動のために駆動輪16に伝達されるべき駆動トルクの一部がエンジン2から供給されると共に、残部が電動機6から供給される。
【0031】
また、バッテリ18の充電率(以下SOCという)が低下してバッテリ18を充電する必要があるときには、電動機6が発電機として作動すると共に、エンジン2の駆動力の一部を用いて電動機6を駆動することにより発電が行われ、発電された交流電力をインバータ20によって直流電力に変換した後にバッテリ18に充電するようにしている。
車両ECU22(制御手段)は、車速センサ34によって検出された車両の走行速度などの車両の運転状態、エンジン2の運転状態、電動機回転数センサ(電動機回転数検出手段)36によって検出された電動機6の回転数、及びエンジンECU24、インバータECU26並びにバッテリECU28からの情報などに応じて、クラッチ4の接続・切断制御及び変速機8の変速段切換制御を行うと共に、これらの制御状態や車両の発進、加速、減速など様々な運転状態に合わせてエンジン2や電動機6を適切に運転するための統合制御を行う。
【0032】
エンジンECU24は、車両ECU22からの情報に基づきエンジン2の始動・停止のための制御を行うほか、エンジン2のアイドル運転制御や排ガス浄化装置(図示せず)の再生制御など、エンジン2自体の運転に必要な各種制御を行うと共に、車両ECU22によって設定されたエンジン2に必要とされるトルクをエンジン2が発生するよう、エンジン2の燃料の噴射量や噴射時期などを制御する。
【0033】
一方、インバータECU26は、電動機6やインバータ20の温度などの状態を監視して車両ECU22にその情報を送るほか、車両ECU22によって設定された電動機6が発生すべきトルクに基づきインバータ20を制御することにより、電動機6をモータ作動または発電機作動させて運転制御する。
また、バッテリECU28は、バッテリ18の温度や、バッテリ18の電圧、インバータ20とバッテリ18との間に流れる電流などを検出すると共に、これらの検出結果からバッテリ18のSOCを求め、求めたSOCを検出結果と共に車両ECU22に送っている。
【0034】
そして車両ECU22は、これらエンジンECU24、インバータECU26及びバッテリECU28との間で相互に情報をやりとりしながら、エンジン2及び電動機6を適切に制御するようエンジンECU24及びインバータECU26に指示すると共に、クラッチ4及び変速機8を適宜制御する。
車両ECU22はこのような制御を行う際、アクセルペダル30の踏込量を検出するアクセル開度センサ32や、車速センサ34及び電動機回転数センサ36の検出結果に基づき、車両の走行に必要な要求トルクを演算する。そして、各ECUからの情報に基づき、そのときの車両の運転状態やエンジン2及び電動機6の運転状態に応じて、この要求トルクをエンジン2及び電動機6に配分し、エンジンECU24やインバータECU26に指示すると共に、必要に応じて変速機8やクラッチ4を制御する。
【0035】
このとき、電動機6のみにトルクを配分してエンジン2にはトルクを配分しない場合には、車両ECU22がクラッチ4を切断すると共に、インバータECU26に対して電動機6の出力トルクを要求トルクとするように指示する。
エンジンECU24はエンジン2をアイドル運転する一方、インバータECU26は、車両ECU22が指示したトルクに応じてインバータ20を制御し、バッテリ18の直流電力がインバータ20によって交流電力に変換されて電動機6に供給される。電動機6は交流電力が供給されることによってモータ作動して要求トルクを出力し、電動機6の出力トルクは変速機8を介して駆動輪16に伝達される。
【0036】
また、エンジン2及び電動機6の両方にトルクを配分する場合には、車両ECU22がクラッチ4を接続し、エンジンECU24に対してエンジン2に配分された出力トルクを指示すると共に、インバータECU26に対して電動機6に配分された出力トルクを指示する。
エンジンECU24は車両ECU22が指示したトルクをエンジン2が出力するようエンジン2を制御すると共に、インバータECU26は、車両ECU22が指示したトルクに応じてインバータ20を制御することにより、エンジン2の出力トルクと電動機6のトルクとの合計が要求トルクとなり、変速機8を介して駆動輪16に伝達される。
【0037】
一方、エンジン2のみにトルクを配分して電動機6にはトルクを配分しない場合は、車両ECU22がクラッチ4を接続状態とし、エンジンECU24に対してエンジン2の出力トルクを要求トルクとするよう指示すると共に、インバータECU26に対して電動機6の出力トルクを零とするように指示する。
エンジンECU24は車両ECU22が指示した要求トルクをエンジン2が出力するようエンジン2を制御すると共に、インバータECU26は、電動機6がモータ及び発電機のいずれとしても動作しないようインバータ20を制御することにより、エンジン2から出力された要求トルクが変速機8を介して駆動輪16に伝達される。
【0038】
ところで、ハイブリッド電気自動車1には例えばポンプなどのような作業装置38が搭載されており、変速機8からPTO装置40によって動力が取り出され、その取り出された動力が作業装置38に伝達されることによって、作業装置38が作動するようになっている。
図2は、このようなPTO装置40と変速機8の概略構成図であり、図2に示すように変速機8は電動機6の回転軸に連結された入力軸42と、カウンタ軸44と、プロペラシャフト10に連結された出力軸46とを備えている。
【0039】
入力軸42とカウンタ軸44との間には、入力軸42からカウンタ軸44に回転を伝達する1対の入力ギヤ48が設けられ、カウンタ軸44と出力軸46との間には、変速段毎のギヤ比で常時噛み合う複数対の変速ギヤ50a,50b,50c,50dが配設されている。そして、変速ギヤ50a及び50bについては、出力軸46側の歯車が出力軸46に対してそれぞれ相対回転可能であると共に、カウンタ軸44側の歯車がカウンタ軸44に対してそれぞれ固定されている。
【0040】
一方、変速ギヤ50c及び50dについては、カウンタ軸44側の歯車がカウンタ軸44に対してそれぞれ相対回転可能であると共に、出力軸46側の歯車が出力軸46に対してそれぞれ固定されている。
また、変速ギヤ50aは1速、変速ギヤ50bは2速、変速ギヤ50cは3速、変速ギヤ50dは4速にそれぞれ対応している。
【0041】
出力軸46側には、出力軸46と変速ギヤ50a又は変速ギヤ50bとの間の回転速度を同期させて変速段の切り換えを行うためのシンクロ機構52aが設けられており、カウンタ軸44側には、変速ギヤ50cと変速ギヤ50dとの間に、カウンタ軸44と変速ギヤ50c又は変速ギヤ50dとの間の回転速度を同期させて変速段の切り換えを行うためのシンクロ機構52bが設けられている。なお、シンクロ機構52a及び52b自体は公知の構成であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0042】
また、変速機8には車両ECU22からの制御信号に応じてこれらシンクロ機構52a或いは52bを作動させ、変速段の切り換えを行う変速アクチュエータ54が設けられている。従って、シンクロ機構52a及び52b並びに変速アクチュエータ54が本発明の変速段切換機構を構成する。
更に、変速機8には、変速機8がニュートラル状態にあることを含め、変速機8で現在どの変速段が使用されているかを検出して車両ECU22に出力する変速位置センサ56が設けられている。
【0043】
PTO装置40は、車両ECU22からの制御信号によって断接状態が制御される電磁式のPTOクラッチ58と、PTOクラッチ58の入力側に連結されたPTO入力軸60と、PTOクラッチ58の出力側に連結されて動力を作業装置38に伝達するPTO出力軸62とを備えている。
カウンタ軸44とPTO入力軸60との間には、常時噛合して変速機8の動力を取り出すためのPTOギヤ64が設けられ、カウンタ軸44側のPTOギヤ64の歯車はカウンタ軸44に固定され、PTO入力軸60側のPTOギヤ64の歯車はPTO入力軸60に固定されている。
【0044】
また、PTO装置40には、PTOクラッチ58の出力側回転数であるPTO出力軸62の回転数を検出するPTO回転センサ66が設けられ、PTO回転センサ66の検出信号は車両ECU22に送られるようになっている。
このように構成されたハイブリッド電気自動車1においてPTO装置40は、車速センサ34の検出結果に基づき車両が停車中であることが検出されると共に、図示しないパーキングブレーキが作動中であるという作動許可条件が満たされたときに作動が許可されるようになっている。そして、このような作動許可条件が満たされると、車両ECU22によって図3及び4のフローチャートによるPTO作動制御が開始される。
【0045】
PTO作動制御が開始されると、まずステップS1で図示しないインストルメントパネル上に配設されたPTOスイッチ68がオンになったか否かを判定する。このPTOスイッチ68は、作業装置38を作動させたい場合に、エンジンECU24によるエンジン2の制御モードを走行用モードからPTO作業モードに切り換えると共に、PTO装置40を介して作業装置38への動力の伝達を開始する処理を進めるために操作されるものである。従って、上記作動許可条件が満たされていてもPTOスイッチ68がオフ状態にある場合には、ステップS1の処理が繰り返されて待機状態となる。
【0046】
PTOスイッチ68がオン状態になると、処理はステップS2に進んでクラッチ4を切断指示するが、クラッチ4は完全に接続された状態(完接状態)から完全に切断された状態(完断状態)に直ちに移行するわけではなく、短時間ではあるがクラッチストロークの増大に伴い完接状態から半クラッチ状態を経て完断状態へと移行していく。図5にはこのときの様子がタイムチャートによって示されており、時間t1においてPTOスイッチ68がオンになると、クラッチ4は完接状態から完断状態に向けてクラッチストロークCSが増大していく。
【0047】
なお、このクラッチ4の切断制御は図示しない別の制御ルーチンによって実行され、処理がステップS3以降に進んだ後も、クラッチ4が完断状態となるまで継続されるようになっている。
次に処理がステップS3に進むと、クラッチ4に設けられてこのクラッチストロークCSを検出するクラッチセンサ70の検出出力を受け、クラッチストロークCSが所定の第1ストロークC1に達したか否かを判定する。この第1ストロークC1は、クラッチ4を接続方向に制御したときに半クラッチ状態となり始めるクラッチストローク、即ちこれ以上クラッチストロークCSが増大するとクラッチ4の入力側と出力側とが接触しない状態となるストロークであって、ステップS3ではクラッチストロークCSが増大して第1ストロークC1に達したことにより、今後はクラッチ4の出力側にエンジン2の駆動力が伝達されなくなることを判定している。
【0048】
クラッチストロークCSが第1ストロークC1に達していない場合には、ステップS3の処理が繰り返されステップS3で待機状態となるが、この間もステップS2によるクラッチ4の切断制御はクラッチ4が完断状態となるまで継続しており、クラッチストロークCSが増大して第1ストロークC1に達すると処理はステップS4に進む。
ステップS4では、電動機6が作動可能な状態にあるか否かを判定する。即ち、電動機6自体やバッテリ18、インバータ20、インバータECU26、或いはバッテリECU28などに何らかの故障が発生したり、電動機6やバッテリ18或いはインバータ20の温度が許容温度範囲外にあるなどの要因により、電動機6を作動困難な状態にあるか否かを判定する(異常検出手段)。
【0049】
ステップS4で電動機6が作動可能な状態にあると判定した場合にはステップS5に進んで電動機6を制御する。このとき、電動機6はPTO回転数センサ66によって検出されたPTOクラッチ58の出力側回転数に対応した目標回転数Ntとなるように制御が行われるが、通常は作業装置38は作動停止状態にあってPTOクラッチ58の出力側回転数は0rpmとなっており、目標回転数Ntも0rpmとされる。
【0050】
従って、車両ECU22はインバータECU26に対して電動機6の回転数を目標回転数Ntである0rpmとするよう指示する。
変速機8の入力軸42は、ステップS2でクラッチ4の切断制御が開始され、クラッチストロークCSが第1ストロークC1より大きくなることにより、エンジン2からの駆動力の伝達が遮断されるものの、電動機6の慣性などによって依然として回転状態にある。そこで、ステップS5ではこのような回転をなくすために電動機6の制御が行われ、インバータECU26は車両ECU22からの指示を受けて、電動機6の回転数を0rpmとするために電動機6を発電機作動させ回生制動を行う。
【0051】
このときの電動機6の回転数Nmの変化を図5に示しており、電動機6の回転軸、即ち変速機8の入力軸42は、時間t1でのクラッチ4の切断開始後もエンジン2のアイドル回転数から徐々に低下しながら回転を継続している。そして、時間t2でクラッチストロークCSが第1ストロークC1に達し、クラッチ4が半クラッチ状態から脱してエンジン2の駆動力が伝達されなくなると、ステップS5による電動機6の制御が開始され、回生制動力によって電動機6の回転数Nmが目標回転数Ntに向かって低下していく。
【0052】
なお、何らかの理由により作業装置38が回転を継続している場合には、PTO回転数センサ66によって検出されたPTOクラッチ58の出力側回転数を、PTOギヤ64の変速比と入力ギヤ48の変速比とを用いて電動機6の回転数に換算したものが目標回転数Ntとなる。そして、ステップS5において電動機6の回転数が目標回転数Ntとなるように電動機6が制御される。
【0053】
次に処理がステップS6に進むと、電動機回転数センサ36によって検出された電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値が、所定時間(第1規定時間)t1(例えば2秒)以内に所定回転数偏差ΔN以下となったか否かを判定する。
この回転数偏差ΔNは、PTOクラッチ58を接続しても入力側回転数と出力側回転数との違いによって車両の乗員や作業者が不快な振動やショックを感じることのない回転数偏差として予め実験等によって求められるものであって、本実施形態では例えば30rpmとしている。
【0054】
なお、前述したように何らかの理由によって作業装置38が回転を継続している場合には、目標回転数Ntが0rpmとはならず、電動機6の回転数Nmの方が目標回転数Ntより小さい場合もあり得るため、ステップS6では電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値を回転数偏差ΔNと比較している。
電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値が、所定時間t1以内に回転数偏差ΔN以下となった場合には、上述のようにPTOクラッチ58を接続しても不快な振動やショックを発生することがないため、これ以上の電動機6による回生制動は不要としてステップS7で電動機6の制御を終了した後、ステップS8に進んでPTOクラッチ58を接続する。
【0055】
即ち図5のタイムチャートでは、時間t2で開始されたステップS5での電動機6の回生制動によって電動機6の回転数Nmが減少していき、電動機6の回転数Nmが回転数偏差ΔNと等しくなる時間t3で、PTOクラッチ58が接続されると共に電動機6の回生制動が終了する。なお、電動機6の回転数Nmは、電動機6自体による駆動力の発生及び外部からの動力の伝達がないため引き続き減少していく。
【0056】
ここまでの処理により、PTOクラッチ58が接続されて変速機8からの動力を作業装置38に伝達することが可能な状態となったが、この時点ではクラッチ4が完断状態にあり、運転中のエンジン2の駆動力が変速機8に伝達されない状態であるため、処理は更にステップS12に進んで、作業装置38側に配設された作業スイッチ72がオン状態にあるか否かを判定する。
【0057】
この作業スイッチ72は、作業装置38及びその周辺の状況を作業者が確認した上で作業装置38を作動させることができるようにするために作業装置38の近傍に配設されており、作業者が作業装置38を実際に作動させる場合にオフ状態からオン状態に切り換え操作されるようになっている。
この作業スイッチ72がオン状態とされず、ステップS12で作業スイッチ72がオン状態にないと判定した場合には、ステップS12の判定処理が繰り返され、ステップS12で待機状態となる。
【0058】
そして、作業スイッチ72がオン状態となると処理はステップS13に進んで、インストルメントパネル上に配設されたインジケータランプ74を点滅させ、作業装置38への駆動力の伝達を開始するための処理を実行中であることを表示する。なお、このインジケータランプ74は、インストルメントパネル上だけではなく、作業装置38近傍に同様のものを設けるようにしても良い。また、インジケータランプ74による表示以外に音声等による報知を併用するようにしても良い。
【0059】
この作業スイッチ72のオフ状態からオン状態への切り換えは、図5のタイムチャートでは時間t4に行われ、この作業スイッチ72のオン状態への切り換え操作に伴い、時間t4からインジケータランプ74が点滅する。
処理がステップS13からステップS14に進むと、車両ECU22はクラッチ4のクラッチストロークCSが前述のクラッチ開始点に対応した第1ストロークC1となるようにクラッチ4を接続方向に制御し、次のステップS15に進む。
【0060】
このときも、クラッチ4のクラッチストロークCSは完断状態から直ちに第1ストロークC1となるわけではなく、短時間ではあるが完断状態から第1ストロークC1となるまでには、図5のタイムチャートに示すように時間を要する。
なお、このクラッチ4の接続制御も図示しない別の制御ルーチンによって実行され、処理がステップS15以降に進んだ後も、クラッチストロークCSが第1クラッチストロークC1となるまで継続されるようになっている。
【0061】
ステップS15では、クラッチセンサ70によって検出されたクラッチ4のクラッチストロークCSが第1ストロークC1よりΔCだけ切断側、即ちC1+ΔC以下となったか否かを判定する。
このステップS15の処理は、クラッチ4が切断状態から半クラッチ状態へと移行したことを判定して次の処理へ進むために実行されるものであるが、実際に半クラッチ状態となってから次の処理に移行したのでは制御に遅れが生じるため、ΔCだけ手前の時点で次の処理に移行するようにしているのである。
【0062】
クラッチ4のクラッチストロークCSがC1+ΔCより大きいときにはステップS15の処理が繰り返され、ステップS15で待機状態となる。そして、引き続き継続されているクラッチ4の接続制御によって、クラッチストロークCSがC1+ΔCに達すると、処理はステップS16に進んで、クラッチ4の接続制御を緩接続制御に切り換える。このクラッチ4の緩接続制御では、車両ECU22が半クラッチ状態のクラッチ4を、ステップS14で行われる接続制御よりも遅い所定の接続速度で接続するように制御し、図5のタイムチャートに示すように時間t5でクラッチストロークCSがC1+ΔCに達した時点からクラッチストロークCSが徐々に減少していく。
【0063】
クラッチ4の入力側に連結されたエンジン2はアイドル運転を行っており、クラッチ4が半クラッチ状態から徐々に接続していくことにより、エンジン2の駆動力が徐々にクラッチ4の出力側に伝達され、振動やショックを生じることなくクラッチ4を接続することができる。
なお、このクラッチ4の緩接続制御も図示しない別の制御ルーチンによって実行され、処理が次のステップS17以降に進んだ後も継続されるようになっている。
【0064】
処理がステップS17に進むと、クラッチセンサ70によって検出されたクラッチ4のクラッチストロークCSが第2ストロークC2以下となったか否かを判定する。この第2クラッチストロークC2は、クラッチ4が半クラッチ状態から更に接続された状態、即ちほぼ完接状態に移行するクラッチストロークである。クラッチストロークCSが第2ストロークC2より大きい場合にはステップS17の判定が繰り返され、ステップS17で待機状態となる。
【0065】
そして、引き続き行われているクラッチ4の緩接続制御により、クラッチストロークCSが第2ストロークC2以下となると、クラッチ4の緩接続制御を通常の接続制御に切り換え、クラッチ4を完接状態とする。そして、次のステップS19に進んでインジケータランプ74を点滅状態から点灯状態へと切り換え、PTO装置40を介してエンジン2の動力が作業装置38に伝達され、作業装置38が作動していることを表示し、PTO作動制御を終了する。
【0066】
即ち、図5のタイムチャートでは、クラッチ4の緩接続制御が行われることにより、クラッチストロークCSが徐々に減少し、時間t6でクラッチストロークCSが第2ストロークC2に達すると、クラッチ4の緩接続制御が通常の接続制御に切り換えられてクラッチ4が完接状態とされると共に、インジケータ74が点滅状態から点灯状態へと切り換わる。
【0067】
以上のようにしてPTO作動制御を行うことにより、エンジン2の運転中にPTOクラッチ58を接続してPTO装置40を介した作業装置38への動力の伝達を開始する際には、一旦クラッチ4を切断した後、PTOクラッチ58の出力側回転数に対応した目標回転数Ntとなるように電動機6を制御することにより、PTOクラッチ58の入力側回転数と出力側回転数との差を減少させ、PTOクラッチ58を接続する際の不快な振動やショックの発生を防止することができる。
【0068】
また、PTOクラッチ58の入力側回転数が自然に低下するのを待たず、電動機6の制御によりPTOクラッチ58の入力側回転数を速やかに出力側回転数に近づけることができるので、PTO装置40を迅速に使用開始することができる。
更に、作業装置38が何らかの理由により停止しておらず、回転している場合であっても、PTO回転数センサ66によって検出されたPTOクラッチ58の出力側回転数をPTOギヤ64の変速比と入力ギヤ48の変速比とを用いて電動機6の回転数に換算して求めた目標回転数Ntを用いて同様に制御が行われるので、PTOクラッチ58を接続する際の不快な振動やショックを防止することができる。
【0069】
ところで、上述のPTO作動制御のステップS4で、電動機6自体やバッテリ18、インバータ20、インバータECU26、或いはバッテリECU28などに何らかの故障が発生したり、電動機6やバッテリ18或いはインバータ20の温度が許容温度範囲外にあるなどの要因により、電動機6が作動困難な状態にあると判定した場合には、処理がステップS10に進む。
【0070】
ステップS10では、車両ECU22が変速機8の変速アクチュエータ54を制御し、ニュートラル状態から最も低速段である1速の変速段への切り換えを行う。即ち、変速アクチュエータ54がシンクロ機構52aを用いて1速の変速段である変速ギヤ50aの出力軸46側の歯車と出力軸46とを回転同期させる。
このときカウンタ軸44は前述のように電動機6の慣性などによって回転を継続しているが、変速機8の出力軸46は車両が停車しているため回転していない。従って、シンクロ機構52aによる出力軸46と変速ギヤ50aとの同期作用によって変速ギヤ50aの回転、即ちカウンタ軸44の回転は抑制され、1速の変速段への切り換えが完了した時点でカウンタ軸44の回転は停止する。一方、作業装置38は通常は停止した状態にあることから、PTOクラッチ58の入力側及び出力側が共に停止した状態となる。
【0071】
そこで、ステップS10における1速の変速段への切り換えが完了した後、次のステップS11で変速アクチュエータ54を制御して1速の変速段に切り換えた状態からニュートラル状態へと戻した後、ステップS8でPTOクラッチ58を接続してPTO作動制御を終了する。PTOクラッチ58の入力側及び出力側は共に停止した状態にあるため、PTOクラッチ58を接続する際に振動やショックが生じることはない。
【0072】
このように、電動機6が何らかの理由により作動困難な状態にあっても、変速機8をニュートラル状態から1速の変速段に切り換えた後、再びニュートラル状態としてからPTOクラッチ58を接続することにより、振動やショックを生じることなく確実にPTOクラッチ58を接続することが可能となる。
また、PTO作動制御のステップS6で、電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値が、所定時間t1以内に所定回転数偏差ΔN以下とならなかった場合にも、何らかの理由により電動機6による必要な回生制動力や駆動力が得られないものとして、ステップS9で電動機6の制御を中止した後、ステップS10及びS11で上述のようにして変速機8をニュートラル状態から最も低速段である1速の変速段に切り換えた後、再びニュートラル状態としてから、ステップS8でPTOクラッチ58を接続してPTO作動制御を終了する。
【0073】
このように、何らかの理由により電動機6の制御によって電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値を所定時間t1以内に所定回転数偏差ΔN以下とすることができない状態にあっても、変速機8をニュートラル状態から1速の変速段に切り換えた後、再びニュートラル状態としてからPTOクラッチ58を接続することにより、振動やショックを生じることなく確実かつ迅速にPTOクラッチ58を接続することが可能となる。
【0074】
以上で本発明の一実施形態に係るハイブリッド電気自動車の制御装置についての説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、PTO装置38として変速機8のカウンタ軸44からPTOギヤ64を介して動力の取り出しを行うようにしたものを用いたが、PTO装置はこれに限られるものではない。
【0075】
そこで、上記実施形態の変形例として、変速機8の出力軸46から動力の取り出しを行うようにしたPTO装置140を用いるハイブリッド電気自動車1の制御装置について以下に説明する。
なお、ハイブリッド電気自動車1の制御装置の全体構成は、PTO装置140を除いて上記実施形態と同様であり、同一の部材には同一の符号を用い、上記実施形態と重複する部分の説明は省略し、上記実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0076】
図6は、このようなPTO装置140と変速機8の概略構成図であり、変速機8は一部の構成部材について配置が上記実施形態とは相違するものの、各構成部材の機能及び構成は上記実施形態と同じである。
図6に示すように、PTO装置140は、車両ECU22からの制御信号によって断接状態が制御される電磁式のPTOクラッチ158と、PTOクラッチ158の入力側に連結されたPTO入力軸160と、PTOクラッチ158の出力側に連結されて動力を作業装置38に伝達するPTO出力軸162とを備えている。
【0077】
4速の変速段に対応した変速ギヤ50dの出力軸46側の歯車には、変速機8の動力を取り出すためのPTOギヤ歯車164が常時噛合しており、PTOギヤ歯車164はPTO入力軸160に固定されている。
また、PTO装置140には、PTOクラッチ158の出力側回転数であるPTO出力軸162の回転数を検出するPTO回転センサ166が設けられ、PTO回転センサ166の検出信号は車両ECU22に送られるようになっている。
【0078】
このように構成されたPTO装置140の作動許可条件は上記実施形態と同様であり、作動許可条件が満たされたときにPTO装置140の作動が許可され、車両ECU22によってPTO作動制御が開始される。このPTO作動制御は、上記実施形態で用いた図3のフローチャートの部分が上記実施形態と相違しており、この相違部分を図7のフローチャートで示す。
【0079】
PTO作動制御が開始されると、まずステップS21でインストルメントパネル上に配設されたPTOスイッチ68がオン状態になったか否かを判定する。前述したように、このPTOスイッチ68は、作業装置38を作動させたい場合にエンジンECU24によるエンジン2の制御モードを走行用モードからPTO作業モードに切り換えると共に、PTO装置40を介して作業装置30への動力の伝達を開始する処理を進めるために操作されるものであって、PTO装置140の作動許可条件が満たされていてもPTOスイッチ68がオフ状態にある場合には、ステップS21の処理が繰り返され待機状態となる。
【0080】
PTOスイッチ68がオンになると、処理はステップS22に進んでクラッチ4を切断するが、クラッチ4は完接状態から完断状態に直ちに移行するわけではなく、短時間ではあるがクラッチストロークの増大に伴い完接状態から半クラッチ状態を経て完断状態へと移行していく。
なお、このクラッチ4の切断制御は図示しない別の制御ルーチンによって実行され、処理がステップS23以降に進んだ後も、クラッチ4が完断状態となるまで継続されるようになっている。
【0081】
次に処理がステップS23に進むと、クラッチセンサ70によって検出されたクラッチ4のクラッチストロークCSが所定の第1ストロークC1に達したか否かを判定する。この第1ストロークC1は上記実施形態で用いたものと同じものであって、ステップS23ではクラッチストロークCSが増大して第1ストロークC1に達したことにより、今後はクラッチ4の出力側にはエンジン2の駆動力が伝達されなくなることを判定している。
【0082】
クラッチストロークCSが第1ストロークC1に達していない場合には、ステップS23の処理が繰り返されステップS23で待機状態となるが、この間もステップS22によるクラッチ4の切断制御はクラッチ4が完断状態となるまで継続しており、クラッチストロークCSが増大して第1ストロークC1に達すると処理はステップS24に進む。
ステップS24では、車両ECU22が変速機8の変速アクチュエータ54を制御し、ニュートラル状態から4速の変速段への切り換えを行うと共に、電動機6を制御する。なお、ステップS24の制御はそれぞれ図示しない別の制御ルーチンによって実行され、次のステップS25に進んだときにも継続されるようになっている。
【0083】
ステップS24の制御のうち変速アクチュエータ54に対する制御により、変速アクチュエータ54がシンクロ機構52bを用いて4速の変速段である変速ギヤ50dのカウンタ軸44側の歯車とカウンタ軸44とを回転同期させる。
このときカウンタ軸44は電動機6の慣性などによりクラッチ4の切断後も回転を継続しているが、変速機8の出力軸46は車両が停車しているため回転していない。従って、シンクロ機構52bによるカウンタ軸44と変速ギヤ50dとの同期作用によって変速ギヤ50dの回転、即ちカウンタ軸44の回転は抑制される。
【0084】
一方、ステップS24において電動機6は、PTO回転数センサ166によって検出されたPTOクラッチ158の出力側回転数に対応した目標回転数Ntとなるように制御されるが、通常は作業装置38は作動停止状態にあってPTOクラッチ58の出力側回転数は0rpmとなっており、目標回転数Ntも0rpmとされる。
従って、車両ECU22はインバータECU26に対して電動機6の回転数を目標回転数Ntである0rpmとするよう指示し、インバータECU26は車両ECU22からの指示を受けて、電動機6の回転数を0rpmとするために電動機6を発電機作動させ、回生制動を行う。
【0085】
このようにして、4速への変速段の切り換えによるカウンタ軸44の回転の抑制と、電動機6の回生制動が行われることにより、4速の変速段への切り換えが完了した時点でカウンタ軸44の回転は停止する。この結果、PTOクラッチ58の入力側及び出力側が共に停止した状態となる。
ステップS25では、変速位置センサ56から送られる検出出力に基づき、4速の変速段への切り換えが所定の第2規定時間t2(例えば2秒)以内に完了したか否かを判定する。そして、第2規定時間t2以内に4速の変速段への切り換えが完了していれば、上述したようにPTOクラッチ58の入力側及び出力側が共に停止していることから、振動やショックを生じることなくPTOクラッチ158を接続できるので、ステップS26に進んでPTOクラッチ158を接続する。
【0086】
ステップS26でPTOクラッチ158を接続した後の処理は上記実施形態と同じく、図4のステップS12乃至S19によって実行される。ステップS12乃至S19の処理についての説明は前述の通りであってここでは省略するが、PTOクラッチ158の接続後、ステップS12乃至S19の処理によってクラッチ4が接続されると、エンジン2の駆動力が変速機8の入力軸42からカウンタ軸44に伝達される。図7のステップS24の処理により変速機8は4速の変速段に切り換えられているので、カウンタ軸44に伝達された駆動力は4速の変速段に対応した変速ギヤ50dに噛合するPTOギヤ歯車164を介してPTO入力軸160に伝達され、更にPTOクラッチ158を介して作業装置38に伝達される。
【0087】
なお、このとき変速機8の出力軸46からプロペラシャフト10への動力の伝達は図示しない遮断機構により遮断されている。
このようにしてPTO作動制御を行うことにより、本変形例においてエンジン2の運転中にPTOクラッチ158を接続してPTO装置140を介した作業装置38への動力の伝達を開始する際には、一旦クラッチ4を切断した後、PTOギヤ歯車164が噛合する変速ギヤ50dに対応した4速の変速段への切り換えを行う際に、PTOクラッチ158の出力側回転数に対応した目標回転数Nt(=0rpm)に電動機6が制御されることにより、変速機6のカウンタ軸44の回転が抑制されるので、4速の変速段への切り換えを行う際のシンクロ機構52bの負荷を軽減することができる。そして、4速の変速段への切り換え完了後はPTOクラッチ158の入力側が出力側と同様に停止状態となるので、振動やショックを生じることなくPTOクラッチ158を接続することができる。
【0088】
一方、ステップS25で4速の変速段への切り換えが第2規定時間t2以内に完了していないと判定した場合には、ステップS27に進んで位置ずらし制御を行う。
即ち、4速の変速段への切り換えが第2規定時間t2以内に完了しないのは、例えばシンクロ機構52bのスプラインギヤ(図示せず)と変速ギヤ50d側のクラッチギヤ(図示せず)とが突き当たったり噛み合ったりして正常に嵌合できないことが原因と考えられる。そこで、車両ECU22はステップS25の判定結果を受け、電動機6が、図8に示すように回転の順方向と逆方向とに交互に所定の微小トルク(例えば10分の数N・m)を所定周期(例えば100ms〜200ms程度)で発生するようインバータECU26に指示する。
【0089】
この指示を受け、インバータECU26が電動機6を制御することにより、電動機6から回転の順方向と逆方向とに交互に所定の微小トルクが所定周期で出力される。
こうして電動機6から出力された微小トルクは、電動機6の回転軸に連結された変速機8の入力軸42に伝達され、入力軸42が回転方向に所定周期で振動する。この振動はカウンタ軸44を介して変速ギヤ50dにも伝達され、変速ギヤ50dが振動することによって、シンクロ機構52bと変速ギヤ50dとの相対位置が変化するため、例えばスプラインギヤとクラッチギヤとの嵌合ができないというような、変速段の切り換えができない状態が解除されて4速の変速段への切り換えが行われる。
【0090】
なお、この位置ずらし制御で電動機6に発生させる微小トルクの大きさ及び周期は、車両の乗員が不快に感じることのない程度に設定されている。
次のステップS28では、変速位置センサ56の検出結果から、ステップS27の位置ずらし制御によって変速機8の変速段がニュートラル状態から4速の変速段に切り換わったか否かを判定しており、所定の第3規定時間t3(例えば2秒)以内に4速の変速段への切り換えが完了した場合には位置ずらし制御を終了した後、ステップS26に進んでPTOクラッチ158を接続する。
【0091】
一方、位置ずらし制御を行って第3規定時間t3が経過してもニュートラル状態から4速の変速段への切り換えが完了しない場合にはステップS29に進み、位置ずらし制御に代えてリトライ制御を行う。
即ち、このリトライ制御では、車両ECU22がステップS28の判定結果を受け、4速の変速段への切り換えを一旦中止し、4速の変速段以外の変速段として例えば3速の変速段への切り換えを行う。
【0092】
シンクロ機構52a或いは52bと各変速ギヤとの相対位置関係は必ずしも同一とはならないため、4速の変速段への切り換えが行えないような場合であっても、4速以外の変速段への切り換えを行うことができる。そして、このように4速以外の変速段に一旦切り換えた場合には、4速以外の変速段においてシンクロ機構52a或いは52bのスプラインギヤがクラッチギヤを押しのけて嵌合することにより、4速の変速段におけるシンクロ機構52bと変速ギヤ50dとの相対位置関係も変化する。その結果、4速の変速段においてもスプラインギヤをクラッチギヤと嵌合させることが可能となる。
【0093】
ステップS30では、変速位置センサ56の検出結果から、ステップS29のリトライ制御によって変速機8の変速段がニュートラル状態から4速の変速段に切り換わったか否かを判定しており、第3規定時間t3以内に4速の変速段への切り換えが完了した場合には、ステップS26に進んでPTOクラッチ158を接続する。
一方、第3規定時間t3が経過してもニュートラル状態から4速の変速段への切り換えが完了しない場合には、シンクロ機構52bや変速アクチュエータ54などの故障により切り換えを行うことができない可能性があるため、ステップS31に進んでインストルメントパネル上に配設された警告灯76を点灯させ、ニュートラル状態から4速の変速段への切り換えができず、PTO装置140を使用することができない旨を警報表示する。
【0094】
なお、警告灯76は作業装置38の近傍にも設けても良いし、警告灯76以外に音声等による警報を併用するようにしても良い。
このように、第2規定時間t2内にニュートラル状態から4速の変速段への切り換えが完了されない場合には、電動機6の順回転方向と逆回転方向とに交互に微小トルクを発生させ、この微小トルクを変速機8の入力軸42に伝達させることにより4速の変速段の変速ギヤ50dを回転方向に振動させるようにしたので、例えばシンクロ機構52bのスプラインギヤと変速ギヤ50d側のクラッチギヤとが突き当たるなどして4速の変速段への切り換えができない状態を解除して、速やかに4速の変速段への切り換えを完了し、PTOクラッチ158の接続を行うことが可能となる。
【0095】
また、上述のような位置ずらし制御を行っても、第3規定時間t3内に4速の変速段への切り換えが完了されない場合には、4速とは異なる変速段に一旦切り換えることによって、シンクロ機構52bと4速の変速段の変速ギヤ50dとの相対位置がずれるので、再び4速の変速段への切り換えを行ったときに4速の変速段への切り換えを完了し、PTOクラッチ158の接続を行うことが可能となる。
【0096】
以上のように、変速機8の出力軸42側から動力を取り出して作業装置38に伝達するようにしたPTO装置140をハイブリッド電気自動車1に用いる場合でも、不快な振動やショックを生じることなくPTOクラッチ158を接続して作業装置38への動力の伝達を開始することができる。
なお、上記実施形態及びその変形例では、変速機8の前進変速段が4段であったが、変速段の数はこれに限られるものではなく、任意に変更可能である。
【0097】
また、上記実施形態では、電動機6が作動困難である場合や、電動機6の制御によって電動機6の回転数Nmと目標回転数Ntとの差の絶対値が所定時間t1以内に回転数偏差ΔN以下にならない場合には、変速機8のニュートラル状態から1速の変速段に切り換えるようにしたが、切り換える変速段は1速以外であっても良い。
更に、上記変形例では、変速機8の動力を4速の変速段に対応した変速ギヤ50dから取り出すようにしたが、4速以外の変速ギヤから取り出すようにしても良い。この場合には、PTO作動制御のステップS24でニュートラル状態から切り換える変速段が、動力を取り出す変速ギヤの変速段となる。
【0098】
また、上記実施形態及び変形例では、エンジン2の駆動力をPTO装置40又は140を介して作業装置38に伝達可能となった後、エンジン2の駆動力で作業装置38を作動させるようにしたが、電動機6の駆動力を併用するようにしても良い。
この場合、電動機6の出力トルクを調整することにより、エンジン2を比較的高効率の運転領域で運転することにより燃費を改善したり、排ガス特性の良好な運転領域で運転して排ガス性能を向上させたりすることができる。
【0099】
また、バッテリ18のSOCに応じ、SOCが比較的高い場合には電動機6の出力トルクの割合を増大させてSOCの更なる上昇を抑制したり、SOCが比較的低い場合には、電動機6を発電機作動させてエンジン2の駆動力を作業装置38に伝達しながらバッテリ18の充電を行ったりすることも可能である。
また、上記実施形態や変形例では、PTO作動制御において電動機6を制御する際の目標回転数Ntを、PTO回転センサ66,166が検出したPTOクラッチ58,158の出力側回転数であるPTO出力軸62,162の回転数に基づいて設定するようにしたが、前述したように作業装置38が停止している場合にはPTO出力軸62,162の回転数が0rpmとなるため、目標回転数Ntも0rpmとなる。従って、作業装置38が停止している場合に限ってPTO装置40,140による動力の取り出しを可能とする場合には、PTO回転センサ66,166を設けず、PTOクラッチ58,158の出力側回転数に対応した目標回転数Ntを常に0rpmとするようにしても良い。
【0100】
更に、上記実施形態及び変形例では、エンジン2をディーゼルエンジンとしたが、エンジンの形式はこれに限られるものではなく、種々知られているものを適宜用いることが可能である。
また、上記実施形態及び変形例では、電動機6を永久磁石式同期電動機としたが電動機の形式はこれに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】本発明の一実施形態であるハイブリッド電気自動車の制御装置の全体構成図である。
【図2】図1のハイブリッド電気自動車における変速機及びPTO装置の概略構成図である。
【図3】図1の制御装置によるPTO作動制御の一部を示すフローチャートである。
【図4】図1の制御装置によるPTO作動制御の残部を示すフローチャートである。
【図5】図1の制御装置によるPTO作動制御の際の各部の動作を示すタイムチャートである。
【図6】図1の実施形態の変形例であるハイブリッド電気自動車における変速機及びPTO装置の概略構成図である。
【図7】変形例におけるPTO作動制御の一部を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートにおける位置ずらし制御で電動機が発生するトルクを示す図である。
【符号の説明】
【0102】
1 ハイブリッド電気自動車
2 エンジン
4 クラッチ(主クラッチ)
6 電動機
8 自動変速機
16 駆動輪
22 車両ECU(制御手段、異常検出手段)
36 電動機回転数センサ(電動機回転数検出手段)
38 作業装置
40,140 PTO装置
52a,52b シンクロ機構(切換機構)
54 変速アクチュエータ(切換機構)
58,158 PTOクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン及び電動機から変速機を介してそれぞれ車両の駆動輪に駆動力を伝達可能であって、上記変速機から取り出した動力を作業装置に伝達可能なPTO装置を備えたハイブリッド電気自動車の制御装置において、
上記エンジンから上記変速機に伝達される駆動力を遮断可能な主クラッチと、
上記PTO装置に設けられ、上記変速機から上記作業装置に伝達される動力を遮断可能なPTOクラッチと、
上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記PTOクラッチの出力側回転数に対応した目標回転数となるように上記電動機を制御する制御手段
とを備えたことを特徴とするハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項2】
上記電動機の回転数を検出する電動機回転数検出手段を更に備え、
上記制御手段は、上記電動機回転数検出手段によって検出された上記電動機の回転数と上記目標回転数との差が所定回転数以下になったときに上記PTOクラッチを接続することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項3】
上記PTO装置は上記車両が停車中に使用され、
上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、
上記制御手段は、上記電動機回転数検出手段によって検出された上記電動機の回転数と上記目標回転数との差が所定の第1規定時間内に上記所定回転数以下にならない場合、上記変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換え、上記所定変速段への切り換え完了後に再びニュートラル状態としてから上記PTOクラッチを接続することを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項4】
上記電動機が作動困難な所定状態にあることを検出する異常検出手段を更に備え、
上記PTO装置は上記車両が停車中に使用され、
上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、
上記制御手段は、上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際に、上記異常検出手段によって上記電動機が上記所定状態にあることを検出した場合には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記変速機をニュートラル状態から所定変速段に切り換え、上記所定変速段への切り換え完了後に再びニュートラル状態としてから上記PTOクラッチを接続することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項5】
上記PTO装置は、上記車両が停車中に使用され、上記変速機の出力軸と一体回転する所定変速段用の歯車に噛合するPTO歯車を介して上記変速機から動力を取り出すように構成され、
上記変速機はシンクロ機構を有する変速段切換機構を備え、
上記制御装置は、上記エンジンの運転中に上記PTO装置を介した上記作業装置への動力の伝達を開始する際には、上記PTOクラッチを接続する前に上記主クラッチを切断し、上記変速機をニュートラル状態から上記所定変速段に切り換えると共に上記電動機を制御し、上記所定変速段への切り換え完了後に、上記PTOクラッチを接続することを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項6】
上記制御手段は、上記所定変速段への切り換えを行っても、所定の第2規定時間内に上記所定変速段への切り換えが完了されない場合には、上記電動機を制御して上記電動機の順回転方向と逆回転方向とに交互に所定の微小トルクを発生させ、該微小トルクを上記変速機の入力軸に伝達させることにより上記所定変速段の変速ギヤを回転方向に振動させる位置ずらし制御を行うことを特徴とする請求項5に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。
【請求項7】
上記制御手段は、上記位置ずらし制御を開始してから所定の第3規定時間内に上記所定変速段への切り換えが完了されない場合には、上記所定変速段とは異なる変速段に一旦切り換えた後に、再び上記所定変速段への切り換えを行うことを特徴とする請求項6に記載のハイブリッド電気自動車の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−261491(P2007−261491A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−91297(P2006−91297)
【出願日】平成18年3月29日(2006.3.29)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】