説明

ハードディスクメディア上のパターンの検査方法及び検査装置

【課題】パターンドメディアの検査方法において、ナノインプリントのプロセス管理を目的とした場合には、パターンの正確な形状を計測する必要があり、製品の品質管理が目的の場合には、製品全数を検査する必要があるが、SEMやAFMを用いた方法では、これらの要求を満たすことができない。
【解決手段】磁性体のパターンが形成されたハードディスクメディア表面に複数の波長を含む光を照射し、ハードディスクメディアからの反射光の強度を波長毎に検出する(S102)。次に、検出した反射光の強度から分光反射率を算出し(S104)、算出した分光反射率に基づいてハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状を検出する(S110)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードディスクメディアの製造工程における検査に係り、特に、パターンドメディアのパターンの形状、形状欠陥を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハードディスクドライブはサーバやコンピュータ向けの利用が増大するだけでなく、家庭用ハードディスクレコーダやカーナビゲーション,ポータブルAV再生機器等様々な用途への利用が拡大しており、またその容量も種々の用途のデジタル化に伴い増大する傾向にある。
【0003】
容量を増大することは、すなわちメディアディスクの記録密度を増大させることである。メディアディスクの記録密度を増大させる技術の一つとして、将来導入が期待されているのがパターンドメディアである。パターンドメディアには、図2に示すディスクリートトラックメディアとビットパターンドメディアの2つがある。ディスクリートトラックメディアとは同図左に示すようにメディアディスク10上に同心円状のトラックパターン14を形成する方式で、ビットパターンドメディアとは同図右に示すように無数のビットパターン16を形成する方式である。
【0004】
従来は、ディスク表面に形成した磁性膜を、後から1ビットに相当する領域に区分けして、それぞれの領域を磁化してデータを記録していた。パターンドメディアでは、上記の様な磁性体のパターンをディスク表面に形成し、形成したパターンに磁気情報を記録するものである。隣のパターンとの間に空間を設け磁気的に絶縁することにより、従来の連続膜媒体よりも記録密度を増大させることができる。
【0005】
パターンの形成には、ナノインプリント技術を用いる方法が有力視されている。ナノインプリント技術とは、図3に示すように、光を透過するモールド(型)20を、磁性膜を形成したディスク基板12の表面に塗布したレジスト22に押し当て、この状態でレジスト22を露光し、モールド20を取り除いた後にエッチングでビットパターンを形成するという方法である。このとき、モールド20自体に欠陥がある場合や、異物が付着している場合には、転写されるパターンにも欠陥が生じることになる。そのため、ナノインプリント技術の導入により、ビットパターンが適切に形成されているかを検査する必要が新たに生じることとなる。
【0006】
従来、連続膜ディスク表面の欠陥を検出する検査方法として、特許文献1に記載の方法がある。この方法は、レーザ光をディスク表面に照射し、ディスク表面からの正反射光と散乱光を検出する受光素子から得られる信号を適切に選択し、その信号に応じた処理を行なうことにより、各種の欠陥種類を正確に判別するものである。特に、線状欠陥、面状欠陥の区別、あるいは凹状欠陥、凸状欠陥の区別を正確に判別するものである。
【0007】
【特許文献1】特開2000−180376号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1記載の欠陥検査は、連続膜ディスク表面の面状・線状欠陥の区別、あるいは凹凸欠陥の区別を判別するものであり、パターンドメディアにおいてビットパターンが適切に形成されているかを検査するものではない。
【0009】
数十nmの微小なパターンを検査する方法としては、SEMやAFMを用いることが考えられる。しかし、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いた場合には、上から見たパターンの表面形状しかしか検査できず、パターンの断面形状を検査するには破壊しなければならない。一方、AFM(原子間力顕微鏡)では対象の3D形状を計測できるのであるが、探針の状態によって計測結果がばらつきパターン形状を正確に計測できない場合がある。また、これらの方法ではスループットの観点から、製品全数を検査することはできず、また、ディスク上の限られた領域の検査しかできない。
【0010】
検査の目的がナノインプリントのプロセス管理の場合には、パターンの正確な形状を計測する必要があり、また製品の品質管理が目的の場合には製品全数でディスク全面を検査する必要がある。上記の方法では、これらの要求を満たすことができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の代表的なハードディスクメディアの検査方法は、パターンが形成されたハードディスクメディア表面に複数の波長を含む光を照射するステップと、ハードディスクメディアからの反射光の強度を波長毎に検出するステップと、検出した反射光の強度から分光反射率を算出するステップと、算出した分光反射率に基づいてハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状を検出するステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の代表的なハードディスクメディアの検査装置は、パターンが形成されたハードディスクメディア表面に複数の波長を含む光を照射する手段と、ハードディスクメディア表面からの反射光の強度を波長毎に検出する分光検出光学手段と、ハードディスクメディアを保持し分光検出光学手段によってディスクメディア表面上の任意の位置で反射光の強度を検出するために、ハードディスクメディアまたは分光検出光学手段を移動させる手段と、分光検出光学手段が検出した反射光の強度から分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいてハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状の検出あるいは形状の良否を判定するデータ処理部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パターンドメディアのパターン形状を正確に評価することができる。また、光学的手法と高速回転ステージとを組み合わせることにより、パターンドメディアの全面について、スループットの高いパターン形状の検査が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず始めにディスク上に形成されたパターンの形状を光学的に検出する方法について説明する。本発明が主として対象としているパターンドメディアの場合には、ディスク上に大きさが数十nm程度の周期的なパターンが形成されている。このとき、パターンの高さや幅等が変化すると、パターンが形成された表面全体の分光反射率が変化する。一例を挙げると、図5は図4に示す幅の異なる2つのパターン(a),(b)の場合の表面の分光反射率を示したものである。図5から、パターン形状が異なると分光反射率も異なることがわかる。そのため、検出対象表面の分光反射率を検出することにより、対象パターンの形状を検出することができるのである。
【0015】
この様な周期的で微細なパターンの形状を検出する方法としては、いわゆるスキャットロメトリがある。例えばRCWA(Rigorous coupled−wave analysis)等の電磁波解析手法を用いることにより、パターン形状及びパターン材料の光学定数から検出対象表面の分光反射率を求めることができる。そこで、パターン高さや幅等パターン形状を表す値をパラメータとして、予め様々なパラメータで検出対象表面の反射率を算出しておいて、実際に検出した表面反射率と比較し最も近いものを抽出すれば、対象パターンの形状を検出することができる。または、実際に検出した表面反射率に対して、上記RCWA等を用いて算出した反射率を、パターン高さや幅等パターン形状を表す値をパラメータとして合わせ込むことにより(フィッティング)、対象パターンの形状を検出することができる。
【0016】
また別の方法として、有効媒質近似を用いることにより対象パターンの形状を検出することができる。まず、図6を用いて有効媒質近似について説明する。検出対象が同図の様に2つの媒質a(パターン16)およびb(空気)で構成されている場合を考える。この場合、それぞれの媒質の領域の大きさが、検出に用いる光の波長の10分の1程度以下の場合には、もはやそれぞれの媒質を区別する必要がなく、一つの層18として考えることができる(同図右図参照)。このとき、それぞれの媒質の誘電率をεおよびεbとし、パターンの占有率をfとすると、近似した層18の誘電率εは式1で表される。このように、複数の媒質で構成された層を単一の媒質の層として近似することを有効媒質近似という。なお、説明に用いた有効媒質近似の式1は一例であり、対象の形状や材質によって最適なものを選択する必要がある。
【0017】
【数1】

対象が単一の媒質の膜であれば、表面の分光反射率を検出することにより、その膜厚を求めることができる。例えば図7に示すような単層の膜を考える。このとき、膜50および下地52の屈折率nと消衰係数kが既知であれば、式2に示すフレネルの式により膜表面の分光反射率を算出することができる。そこで、実際に検出した分光反射率に対して、フレネルの式で求めた反射率を膜厚をパラメータとして合わせ込む(フィッティング)ことにより、膜厚を求めることができる。
【0018】
【数2】

屈折率nおよび消衰係数kと誘電率との間には式3で表される関係があり、フィッティングによる膜厚算出は、有効媒質近似を用いて近似した膜の場合にも適用できる。また、有効媒質近似の際の占有率fが未知の場合には、これもフィッティングの際のパラメータとすることで同時に求めることも可能である。
【0019】
【数3】

ここで、図8に示すような円柱状のパターンが周期的に配置されたパターンを考える。上記の有効媒質近似を用いることにより、検出した表面の分光反射率から、近似した層の膜厚とパターン部分とそうでない部分の占有比を求めることができる。
【0020】
このとき円柱状パターンの配置間隔が既知であれば、求めた膜厚と占有比から円柱状パターンの大きさを求めることができる。すなわち、求めた膜厚と円柱状パターンの高さとは同値であるから円柱状パターンの高さを求めることができ、また、占有比は表面に占めるパターンの占有率に相当することから、円柱の直径を演算により求めることができる。
【0021】
それでは、図9Aのようなパターンの断面形状が台形となっている場合はどうすればよいかというと、図9Bに示すようにパターンを複数の層に分割して考えればよい。このように複数の層に分割して、それぞれの層で有効媒質近似を適用することにより、それぞれの層の膜厚とパターン部分とそうでない部分の混合比を求めることができる。前記円柱パターンと同様に、パターンの平面形状が円形と仮定すると、それぞれの層で求めた膜厚と占有比からその層でのパターンの高さと直径を求めることができ、それらを重ね合わせることでパターン形状を求めることができる。
【0022】
上記例では、比較的単純な形状での例を示したが、図10に示すような複雑な断面形状のパターンでも同様の方法が適用でき、パターン形状を求めることができる。
【0023】
パターンを複数の層に分割する際の分割数は、パターンの複雑さや求める精度にあわせて選択すればよい。分割した層の厚さを全て同じ大きさとすれば、形状検出の際の演算量を低減することができる。また、パターンの断面形状を、分割数よりも少ないパラメータで形状を表すことができる多項式で近似すれば、同様に形状検出の際の演算量を低減することができる。
【0024】
パターンドメディアは前記の通り、ディスクメディア上に数十nmサイズのパターンが形成されている。検出光として200nmの深紫外から800nmの可視光を用いた場合、パターンサイズは検出光の波長の10分の1程度となるため、上記の有効媒質近似を適用することができる。
【0025】
上記説明では、パターンの平面形状や配置間隔が既知で、パターンの断面形状が対称であると仮定している。本発明が主として対称としているパターンドメディアでは、これらの仮定が成り立つ。その理由を以下に説明する。
【0026】
パターンドメディアは前述の通りナノインプリント技術を用いて製造されることが有力視されている。ナノインプリント技術は型押しによりパターンを転写する技術である。この様な型押しプロセスの性質上、転写ごとにパターンの周期や平面形状がばらつくことはほとんどない。そのため、パターン周期や平面形状は既知と考えることができる。また同様にプロセスの性質上、パターンの断面形状も対称であると仮定することができる。
【0027】
有効媒質近似を用いた場合、RCWA等の電磁波解析手法を用いる場合と比較して、対象を単純な層構造と考えることができるため、大幅に演算量を減らすことができる。この方式は高スループットを実現する手段として有利である。
【0028】
なお上記では、対象表面の反射率に基づいてディスク上に形成したパターンの形状を検出する方法を説明した。しかし、実際の製品検査においては、必ずしも形状を検出する必要がない場合が考えられる。すなわち、検査によって対象が良品であるか否かのみを判定できればよい場合が考えられる。
【0029】
次に、対象が良品であるか否かのみを判定する方法について説明する。前述した通り図5は、形状の異なる2つのパターンの場合の表面の分光反射率を示したものである。同図に示すとおり、パターンの形状が異なると、表面の分光反射率も異なったものとなる。ここで、例えば、図5の(a)が正常であると仮定すると、分光波形の違いを検出することにより(b)が異常であるかを判定することができる。
【0030】
分光反射率の違いを検出する方法として、式4で示す判定指標値Deltaを用いる。Deltaは基準となる波形と検出した波形の差を表しており、この判定指標値と予め設定したしきい値とを比較することにより、パターンの形状が異常であるかを判定することができる。すなわち判定指標値がしきい値以上であれば不良と判定し、以下であれば良品と判定する。
【0031】
【数4】

判定しきい値を決める方法の一例としては、パターンの幅や高さを変えた場合の分光反射率を採取しておき、その内正常と判定すべき場合の分光反射率同士と及び異常とすべき場合の分光反射率との間で上記判定判定指標を算出し、正常と異常とを分離できるようにしきい値Sを設定する方法がある。図11は、正常と判定すべき場合の分光反射率同士での判定指標値(図中○で表示)と異常と判定すべき場合の分光反射率との判定指標値(図中◇で表示)を示したものである。同図に示すように判定しきい値Sを設定すれば、正常と異常とを分離することができる。
【0032】
しきい値設定に用いる分光反射率は、実際に検出した分光反射率で実施することが望ましいが、光学シミュレーションを用いて作成した分光反射率を用いることでもできる。
【0033】
また図5から、波長400nm以下の方が400nm以上よりも反射率の変化が大きいことがわかる。このことから、分光反射率の検出波長として紫外領域を検出することが形状や異常を検出する際の感度の観点で有利である。
【0034】
通常大気中で検出可能な光の波長は波長200nm程度からであることから、実用上は波長200nm程度以上の光を検出することが現実的である。もちろん200nm以下の波長帯域を検出すれば、形状や異常の検出感度の観点でより有利となる。
【0035】
また図5から、反射率の大きい波長帯域で分光反射率の変化が比較的大きいことが考えられる。そこで、対象となるパターンの光学定数を予め評価しておき、反射率が大きくなる波長帯域を主として検出する方法も考えられる。検出対象は多層構造であるので、再表面の材料の光学定数のみに着目するのではなく、多層構造での干渉を考慮して、見かけの反射率が大きくなる波長帯域を選択することが必要である。分光反射率の極大となる波長を検出すればよいので、対象の構造や材質にもよるが、検出する波長の数は3から20程度とすればよい。
【0036】
上記では、算出した分光反射率データを用いる方法を記載したが、算出したデータの変わりに、良品または基準となるデータを実際に検出しておき、これを用いてもよい。
【0037】
次に、上記検出方法を用いたハードディスク検査装置について説明する。図12は実施例によるハードディスク検査装置の構成を示したものである。本実施例による検査装置は、検査対象であるハードディスクメディア10に検出光を照射しハードディスクメディアからの反射光を分光検出する分光検出光学系1201と、検査対象であるハードディスクメディア10を保持しメディア上の任意の位置で分光検出できるように光学系との位置を相対的に移動できるステージ部1202、分光検出光学系やステージ部の動作を制御する制御部1203及び分光検出データに基づいて対象表面に形成されたパターンの形状または形状異常を検出するデータ処理部1204で構成される。データ処理部1204には表示部1205が備えられている。
【0038】
図13はステージ部1202の一例を示した概要図で、同図に示すとおりステージ部はディスク面と平行に移動するXステージ1301と、ディスク面に垂直な方向に移動するZステージ1302およびディスクを回転させるθステージ1303によって構成される。
【0039】
Zステージ1302は、光学系のフォーカス位置に検査対象ディスク10を移動させるためのものであり、Xステージ1301とθステージ1303とは検査対象ディスク表面の任意の位置に分光検出光学系1201を移動させるためのものである。検査対象ディスク表面の任意の位置に分光検出光学系1201を移動させる方法としては、XYステージを用いる方法も考えられるが、検査対象がディスクであり検査対象となるパターンも同心円状または同心円上に形成されていることからXθステージの方が適している。また、例えばディスク表面全面を高速に検査することを目的とした場合には、XYステージよりもXθステージの方が単純な動作となるためより適している。
【0040】
図14は図12に示した分光検出光学系1201の具体例を示した図である。同図に示すように分光検出光学系は主として、光源1401、ハーフミラー1402、偏光素子1403、対物レンズ1404および分光検出器1405で構成される。光源1401から出た光はハーフミラー1402でその向きをかえ、偏光素子1403および対物レンズ1404を介して検査対象ディスク10に照射される。ディスクからの反射光は再び対物レンズ1404および偏光素子1403を通って分光検出器1405に導かれる。
【0041】
このとき、分光検出器1405の入射口位置を結像位置としておくと、入射口の形状によって分光検出する領域を制限することができる。例えば、入射口の大きさをφ200μmとし、結像面での倍率を20倍とすると、分光検出領域の大きさは検査対象ディスク上でφ10μmとなる。
【0042】
上記したように200nm付近の波長を利用しようとする場合、適用できる光学素子等は限られたものとなる。光源1401には、波長200nm付近以上の光を射出するキセノンランプや重水素ランプ等を用いることができる。ただし、検査対象によっては波長400nm程度以上でも十分性能を発揮できる場合もあり、その場合はハロゲンランプ等の可視光から赤外光の光を射出する光源を用いてもよい。
【0043】
本実施例の光学系では対物レンズ1404に反射型対物レンズを用いている。一般的に用いられるレンズで構成された屈折型の対物レンズでは200nm付近から可視光までをブロードに適用できるものはほとんど無い。反射型対物レンズはミラーで構成されており、波長200nm付近から使用することができる。
【0044】
分光検出器1405には、ZEISSや浜松ホトニクス社等市販の分光器で200nm付近から適用できるものがある。
【0045】
上記の説明では、ブロードな波長帯域を分光する場合を示しているが、複数の離散的な波長の光を検出する方法も考えられる。例えば図15の様に、複数のレーザー1501からの光をダイクロイックミラー1502を用いて同一光軸上に重ね合わせて検出光とし、ディスクからの反射光を同様にダイクロイックミラー1503を用いて分離して分光検出器1504で検出する方法がある。同図では3つのレーザーを用いた場合を示しているが、離散的な波長の数を3つに限定するものではない。
【0046】
また、以上では検出光を垂直に照射し、その正反射光を検出する方式を示したが、例えば図16に示すように、斜めから光を照射しその正反射光を検出する方式でも同様の効果を得ることができる。対象の形状や構造・材料によるが、斜め入射するほうがパターン形状・欠陥検出精度が向上する。
【0047】
データ処理部1204は、図1に示すように、大きく分けて次の二つの処理を実行する。一つは反射率の算出であり、もう一つはパターン形状・欠陥検出処理である。上記の通り本発明では検査対象表面の分光反射率に基づいて検査対象パターンの形状・欠陥を検出する。しかし、上記光学系で検出が可能なのは検査対象表面の分光反射強度分布である。そこで、予め鏡面Siの分光強度分布を検出しておき(S100)、これに対する検査対象表面の分光反射強度(S102)の比、すなわち相対反射率(S104)を用いる。比を求める際、検出器によっては分光反射強度データIにバックグラウンドノイズIが重畳している場合があり、これも予め検出しておき相対反射率算出の際には差し引いておく。このように算出した相対分光反射率に対して、上記で説明したパターン形状検出処理(S106,S108,S110)、欠陥検出処理(S112,S114)を実行することにより、パターンの形状・欠陥を検出することができる。同図では欠陥検出と形状検出の両方を記載しているが、必要に応じて何れか一方を実施すればよい。
【0048】
次に図17を参照して検査装置の動作について説明する。まず、必要に応じて予め中心と方向とを検出(アライメント)した検査対象ディスクをステージ上に設置する(S1700)。次にZステージ1302を駆動させて、検査対象ディスクを検出光学系のフォーカス位置に移動する(S1702)。続いてXステージ1301、θステージ1303を駆動させて、検査位置が検出光学系1201の直下となるように検査対象ディスク10を移動する(S1704)。ここで、検査対象ディスク表面の分光反射強度を検出し(S1708)、上記データ処理部1204にてパターン形状・欠陥を検出する(S1708)。これらステージの移動,分光検出およびデータ処理を繰返し、検査が終了した後に(S1710)、検査対象ディスクを取り出す(S1712)。なお、ディスクのアライメント,ステージへの設置および取り出しに関する説明は割愛する。
【0049】
Xステージ1301およびθステージ1303をそれぞれ連続的に動作させて、検査を実行した場合には、ディスク上の螺旋状の領域を検査することができる。例えば、θステージ1303が一回転する間にXステージ1301が検出スポットサイズ分だけ移動するような動作をさせた場合、ディスク全面を検査することができる。
【0050】
上記の様にディスク全面を検査した場合、図18の様に形状・欠陥検出結果を分布としてデータ処理部の表示部1205に表示することができる。同図は形状欠陥領域1902をディスクイメージ1901上の分布として2次元的に示したものである。同様にパターンの幅や高さ等のパターン形状を表すパラメータを3次元的に表示してもよい。
【0051】
以上の結果、実施例の検査装置により、例えばパターンドメディアのパターン形状・欠陥の分布を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施例によるパターンの形状検出、欠陥検出方法におけるデータ処理を示す図である。
【図2】パターンドメディアの一例を示す概略図である。
【図3】ナノインプリントプロセスを示す工程図である。
【図4】形状の異なる2つのパターンの一例を示す概略図である。
【図5】図3に示す2つのパターンの場合の表面の分光反射率を示す図である。
【図6】有効媒質近似の一例を示す概略図である。
【図7】単層膜の一例を示す概略図である。
【図8】円柱状のパターンの一例を示す概略図である。
【図9A】断面形状が台形のパターンの一例を示す概略図である。
【図9B】断面形状が台形のパターンの場合の有効媒質近似の適用方法を示す概略図である。
【図10】断面形状が複雑な形状のパターンの一例を示す概略図である。
【図11】判定指標値(Delta)の分布の一例を示す図である。
【図12】本発明の実施例によるよるハードディスク検査装置の構成を示す概略図である。
【図13】ステージ部の一例を示す概略図である。
【図14】分光検出光学系の一例を示す概略図である。
【図15】分光検出光学系の他の例を示す概略図である。
【図16】分光検出光学系の他の例を示す概略図である。
【図17】実施例によるハードディスク検査装置の動作を示す流れ図である。
【図18】形状・欠陥検出結果を分布として表示した一例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10…パターンドメディアディスク,12…ディスク基板,14…トラックパターン,
16…ビットパターン,20…モールド(型),22…レジスト,18…有効媒質近似した層,
1201…分光検出光学系,1202…ステージ部,1203…制御部,1204…データ処理部,1205…表示部,1301…Xステージ,1302…Zステージ,1303…θステージ,
1401…光源,1402…ハーフミラー,1403…偏光素子,1404…対物レンズ,
1405…分光器,1501…レーザー,1502,1503…ダイクロイックミラー,
1504…検出器,1901…ディスクイメージ,1902…形状欠領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成されたハードディスクメディア表面に複数の波長を含む光を照射するステップと、
前記ハードディスクメディアからの反射光の強度を波長毎に検出するステップと、
検出した反射光の強度から分光反射率を算出するステップと、
算出した分光反射率に基づいて前記ハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状を検出するステップと、を含むことを特徴とするハードディスクメディアの検査方法。
【請求項2】
前記パターンの形状を検出するステップは、前記算出した分光反射率と予め検出しておいた良品の分光反射率を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項3】
前記パターンの形状を検出するステップは、前記算出した分光反射率と検査対象の形状や材質に基づいて予め作成しておいた分光反射率を比較するステップを含むことを特徴とする請求項1記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項4】
前記検査対象の形状や材質に基づく分光反射率の作成には、電磁波解析手法を用いることを特徴とする請求項3記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項5】
前記検査対象の形状や材質に基づく分光反射率の作成には、有効媒質近似を用いることを特徴とする請求項3記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項6】
前記有効媒質近似を用いる際、対象パターンを多層膜構造に分割し、分割したそれぞれの層で有効媒質近似を用いること特徴とする請求項5記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項7】
前記有効媒質近似を用いる際、対象パターンの平面形状、断面形状および配置間隔を有効媒質近似のパラメータとして用いることを特徴とする請求項5記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項8】
パターンが形成されたハードディスクメディア表面に複数の波長を含む光を照射するステップと、
前記ハードディスクメディアからの反射光の強度を波長毎に検出するステップと、
検出した反射光の強度から分光反射率を算出するステップと、
算出した分光反射率に基づいて前記ハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状の良否を判定するステップと、を含むことを特徴とするハードディスクメディアの検査方法。
【請求項9】
前記パターンの形状の良否の判定には、パターンの有無の判定も含むことを特徴とする請求項8記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項10】
前記パターンの形状の良否を判定するステップは、予め検出しておいた良品の分光反射率と前記算出した分光反射率との差を求めるステップと、前記ステップで求めた差が予め設定したしきい値以下の場合にパターン形状は良と判定し、しきい値以上の場合にパターン形状は不良と判定するステップを含むことを特徴とする請求項8記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項11】
前記しきい値は、パターン形状を良と判定すべき場合の分光反射率と、パターン形状を不良と判断すべき場合の分光反射率とを、分離できる値に設定されることを特徴とする請求項9記載のハードディスクメディアの検査方法。
【請求項12】
パターンが形成されたハードディスクメディア表面に、複数の波長を含む光を照射する手段と、
前記ハードディスクメディア表面からの反射光の強度を波長毎に検出する分光検出光学手段と、
前記ハードディスクメディアを保持し、前記分光検出光学手段によってディスクメディア表面上の任意の位置で反射光の強度を検出するために、前記ハードディスクメディアまたは前記分光検出光学手段を移動させる手段と、
前記分光検出光学手段が検出した反射光の強度から分光反射率を算出し、算出した分光反射率に基づいて前記ハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状の検出あるいは形状の良否を判定するデータ処理部と、
を備えることを特徴とするハードディスクメディアの検査装置。
【請求項13】
前記分光検出光学手段は、波長毎の反射光を分離するダイクロイックミラーを有することを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項14】
前記分光検出光学手段は、検出する反射光強度に対応する波長の数が3〜20であることを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項15】
前記複数の波長を含む光をハードディスクメディア表面に照射する手段は、前記ハードディスクメディア表面に対して垂直又は斜めに照射することを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項16】
前記ハードディスクメディアまたは前記分光検出光学手段を移動させる手段は、少なくとも一軸の直動機構および回転機構を備えることを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項17】
前記複数の波長を含む光として、紫外領域の波長の光を用いることを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項18】
前記複数の波長を含む光として、検査対象である前記パターンの屈折率または見かけの屈折率が大きな値となる波長を含む光を用いることを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項19】
前記複数の波長を含む光として、前記ハードディスクメディア上に形成されたパターンの形状の変化によって、反射光強度の変化が最も大きくなる波長を含む光を用いることを特徴とする請求項12記載のハードディスクメディアの検査装置。
【請求項20】
前記データ処理部は表示部を有し、前記判定結果に基づいて、パターンの形状および形状不良を表すパラメータの分布を、前記表示部に2次元的または3次元的に表示することを特徴とする請求項12記載ハードディスクメディアの検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−150832(P2009−150832A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330482(P2007−330482)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】