説明

ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、並びにビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いてなるプリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板、並びに半導体装置

【課題】 本発明は、多層プリント配線板の絶縁層に用いる樹脂組成物に用いる場合、従来よりも優れた耐吸湿性、高耐熱、低誘電特性、低熱膨張性、及び難燃性に優れるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、並びにビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いた特性のバランスに優れるプリプレグ、樹脂シート、積層板、多層プリント配線板、並びに半導体装置を提供するものである。
【解決手段】 ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を必須成分とする樹脂組成物、および当該樹脂組成物を用いた樹脂シート、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板、並びに半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、並びにビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いてなるプリプレグ、積層板、樹脂シート、多層プリント配線板、並びに半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化等の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、更には高密度実装化等が進んでおり、これらに使用される高密度実装対応のプリント配線板等は、従来にも増して、小型化かつ高密度化が進んでいる。このプリント配線板の高密度化への対応として、ビルドアップ方式による多層プリント配線板が多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ビルドアップ方式による多層プリント配線板の絶縁層には、通常熱硬化性樹脂組成物が用いられる。信頼性等を考慮し、絶縁層には、低熱膨張率で、ガラス転移温度の高い樹脂組成物が求められる。
【0004】
このような絶縁層に用いる樹脂組成物に求められる要求特性に対し、ノボラック型シアン酸エステル樹脂に無機充填剤を配合した樹脂組成物(特許文献2)が提案されている。
しかし、今後のさらなる微細配線化、小型化にともないさらなる信頼性の向上が要求される。特に、吸湿後のさらなる信頼性の向上が要求されると予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平07−106767号公報
【特許文献2】特開2006−191150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、多層プリント配線板の絶縁層に用いる樹脂組成物に用いる場合、従来よりも優れた耐吸湿性、高耐熱、低誘電特性、低熱膨張性、及び難燃性に優れるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、並びにビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物、及び、当該樹脂組成物を用いた特性のバランスに優れるプリプレグ、樹脂シート、積層板、多層プリント配線板、並びに半導体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記[1]〜[11]項に記載の本発明により達成される。
[1]下記式(1)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。
【化1】


[式中 R1、及びRは、それぞれH、CH、またはCである。]
[2]ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させて得られることを特徴とするビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。
[3][1]又は[2]項に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を必須成分とする樹脂組成物。
[4][1]又は[2]項に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を必須成分とする樹脂組成物。
[5][1]又は[2]項に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、および無機充填材を必須成分とする樹脂組成物。
[6]前記無機充填材は、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類である[5]項に記載の樹脂組成物。
[7][3]ないし[6]項のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ
[8][7]項に記載のプリプレグを1枚以上成形してなる積層板。
[9][3]ないし[6]項のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層をフィルム上、または金属箔上に形成してなる樹脂シート。
[10][7]項に記載のプリプレグ、または[9]項に記載の樹脂シートを、[8]項に記載の積層板より作製された内層回路板の片面または両面に重ね合わせて加熱加圧成形してなる多層プリント配線板。
[11][10]項に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の発明である。当該ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物をプリント配線板の絶縁層に用いた場合、多層プリント配線板は、優れた難燃性、高い耐熱性、低い線膨張率であることはもちろん、低誘電特性であり、吸湿はんだ耐熱性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】合成例で得られたビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図2】ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の赤外吸収スペクトルチャートである。
【図3】合成例で得たビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、並びにビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物、プリプレグ、樹脂シート、積層板、及び半導体装置について詳細に説明する。
【0011】
まず、本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂について説明する。
【0012】
一般にシアン酸エステル樹脂は、ハロゲン化シアン化合物とフェノール化合物とを反応させることにより得ることができる。
【化2】

本願発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂は、下記一般式(2)に示すビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させることにより得ることができる。

[式中 R1、及びRは、それぞれH、CH、またはCである。]
【0013】
前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量5.0×10〜1.0×10が好ましく、特に8.0×10〜1.5×10が好ましい。
【0014】
本願発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成条件、及び方法は、特に限定されないが、例えば、有機溶媒中に前記一般式(2)で示されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を溶解させ、低温でハロゲン化シアン化合物を滴下し、次に低温で3級アミンなどの塩基性化合物を滴下する。ハロゲン化シアンと3級アミンなどの塩基性化合物は、交互に滴下しても良く、同時でも良い。発熱反応による副反応が起こらないよう、低温で反応を進めることにより、高収率でビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を得ることができる。低温とは、副反応がおこる温度以下をいう。好ましくは、0℃以下である。
【0015】
前記合成条件において、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとの仕込み比率は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂のフェノール性水酸基1に対してハロゲン化シアンを1.5〜3が好ましい。
【0016】
前記ハロゲン化シアン化合物としては、特に限定されないが、例えば、塩化シアン、臭化シアンなどを用いることができる。
【0017】
前記3級アミンとしては、特に限定されないが、例えば、アルキルアミン、アリールアミン、シクロアルキルアミンのいずれでも良く、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、メチルジブチルアミンなどが挙げられる。
【0018】
合成に用いる前記有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ケトン系溶剤、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、ハロゲン化炭素水素系溶剤、アルコール系溶剤、非プロトン系溶剤、二トリル系溶剤、エステル系溶剤、炭化水素系溶剤などがあり、いずれも用いることができる。これらの1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0019】
一般式(2)で示されるビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアン化合物とを反応させた後の処理としては、析出した3級アミンなどの塩基性化合物の塩化水素塩をろ過または水洗によって除去する。さらにアミン類を除去するため、酸性水溶液を用いて分液洗浄を行うことができる。希塩酸を主に用いる。最後に脱水のため、無水硫酸ナトリウムなどを用いる。水洗の場合は、分液作業が可能な溶媒を選択する必要がある。なお、洗浄後のイオン性不純物の含有量がNaイオン、Brイオン、Clイオンともに30ppm以下が好ましく。より好ましくは10ppm以下である。30ppm以上の場合、多層プリント配線板の絶縁層に用いた場合、絶縁信頼性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0020】
以下に、本発明の樹脂組成物について説明する。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、前記本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物である。本発明の樹脂組成物は、他のシアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、硬化促進剤、無機充填材、離型剤などの添加剤、その他必要に応じ添加剤を含有することができる。
【0022】
本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物の含有量は、特に限定されないが、前記樹脂組成物全体の5〜60重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは10〜50重量%、特に好ましくは15〜40重量%である。含有量が前記下限値未満であると耐熱性、低熱膨張性、難燃性が低下する。前記上限値を超えると高温高湿下での信頼性試験であるHAST試験やPCT試験での信頼性が低下する場合がある。
【0023】
前記本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂以外に用いることができる他のシアン酸エステル樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA型ジシアン酸エステル樹脂、ビスフェノールF型ジシアン酸エステル樹脂、フェノールノボラック型シアン酸エステル樹脂、クレゾールノボラック型シアン酸エステル樹脂等が挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
【0024】
前記他のシアン酸エステル樹脂の中でも、ビスフェノールA型ジシアン酸エステル樹脂、及びフェノールノボラック型シアン酸エステルを用いることが好ましい。ビスフェノールA型ジシアン酸エステル樹脂を用いると、吸水率を下げることができ、吸湿処理後の銅との密着性が向上する。また、フェノールノボラック型シアン酸エステルを用いると、高耐熱性、低熱膨張の樹脂組成物を得ることができる。
【0025】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂、ビスフェノールP型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、アリールアルキレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、フェノキシ型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノルボルネン型エポキシ樹脂、アダマンタン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
これらの中でも、特にビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が好ましい。これにより、プリント配線板の難燃性が向上する。
【0026】
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量5.0×10〜2.0×10が好ましく、特に8.0×10〜1.5×10が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグにタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時、繊維基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合がある。
前記エポキシ樹脂の重量平均分子量は、例えばGPCで測定することができる。
【0027】
前記エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に2〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であるとシアネート樹脂の反応性が低下したり、得られる製品の耐湿性が低下したりする場合があり、前記上限値を超えると耐熱性が低下する場合がある。
【0028】
前記硬化剤としては、分子内に水酸基を有するものであれば特に限定されない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ビスフェノールAノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂、未変性のレゾールフェノール樹脂、桐油、アマニ油、クルミ油等で変性した油変性レゾールフェノール樹脂等のレゾール型フェノール樹脂等のフェノール樹脂、フェノキシ樹脂などが挙げられる。これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、異なる重量平均分子量を有する2種類以上を併用したり、1種類または2種類以上と、それらのプレポリマーを併用したりすることもできる。
この中でもノボラック型フェノール樹脂が良く、その中でもビフェニルアラルキル型フェノール樹脂が好ましい。ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を用いることで低吸水の積層板を得ることができ、また得られた積層板は難燃性に優れる。
【0029】
前記のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の繰り返し単位数は、特に限定されないが、繰り返し単位数が、1〜12が好ましく、特に2〜8が好ましい。平均繰り返し単位数が前記下限値未満であると耐熱性が低下する場合がある。また、前記上限値を超えると他の樹脂との相溶性が低下し、作業性が低下する場合がある。
【0030】
前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、重量平均分子量4.0×10〜1.8×10が好ましく、特に5.0×10〜1.5×10が好ましい。重量平均分子量が前記下限値未満であるとプリプレグにタック性が生じる場合が有り、前記上限値を超えるとプリプレグ作製時、繊維基材への含浸性が低下し、均一な製品が得られない場合がある。前記フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えばGPCで測定することができる。
【0031】
前記フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の1〜55重量%が好ましく、特に5〜40重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると耐熱性が低下する場合があり、前記上限値を超えると低熱膨張の特性が損なわれる場合がある。
【0032】
本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物は、無機充填材を含むことが好ましい。これにより、積層板を薄膜化(厚さ0.5mm以下)にしても強度に優れるだけでなく、積層板の低熱膨張化、難燃性の向上を図ることができる。
【0033】
前記無機充填材としては、特に限定されないが、例えばタルク、焼成クレー、未焼成クレー、マイカ、ガラス等のケイ酸塩、酸化チタン、アルミナ、シリカ、溶融シリカ等の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ハイドロタルサイト等の炭酸塩、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム等の硫酸塩または亜硫酸塩、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、窒化炭素等の窒化物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等のチタン酸塩等を挙げることができる。無機充填材として、これらの中の1種類を単独で用いることもできるし、2種類以上を併用したりすることもできる。これらの中でも特に、シリカが好ましく、溶融シリカ(特に球状溶融シリカ)が低熱膨張性に優れる点で好ましい。その形状は破砕状、球状があるが、繊維基材への含浸性を確保するために樹脂組成物の溶融粘度を下げるには球状シリカを使う等、その目的にあわせた使用方法が採用される。
【0034】
前記無機充填材の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01〜5.0μmが好ましく、特に0.1〜2.0μmが好ましい。無機充填材の粒径が前記下限値未満であるとワニスが高粘度となり、プリプレグ作製時の作業性に影響を与える場合がある。また、前記上限値を超えると、ワニス中で無機充填剤の沈降等の現象が起こる場合がある。
この平均粒子径は、例えば粒度分布計(HORIBA製、LA−500)により測定することができる。
【0035】
また前記無機充填材は、特に限定されないが、平均粒子径が単分散の無機充填材を用いることもできるし、平均粒子径が多分散の無機充填材を用いることができる。さらに平均粒子径が単分散及び/または、多分散の無機充填材を1種類または2種類以上とを併用したりすることもできる。
【0036】
更に平均粒子径5.0μm以下の球状シリカ(特に球状溶融シリカ)が好ましく、特に平均粒子径0.1〜2.0μmの球状溶融シリカが好ましい。これにより、無機充填剤の充填性を向上させることができる。
【0037】
前記無機充填材の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物全体の20〜80重量%が好ましく、特に30〜70重量%が好ましい。含有量が前記範囲内であると、得られる樹脂組成物の硬化物は、特に低熱膨張性に優れ、低吸水性である。
【0038】
前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物は、特に限定されないが、カップリング剤を用いることが好ましい。前記カップリング剤は、前記熱硬化性樹脂と、前記無機充填材との界面の濡れ性を向上させることにより、繊維基材に対して熱硬化性樹脂等および無機充填材を均一に定着させ、耐熱性、特に吸湿後の半田耐熱性を改良することができる。
【0039】
前記カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、チタネート系カップリング剤およびシリコーンオイル型カップリング剤等が上げられ、これらの中から選ばれる1種、または2種以上のカップリング剤を使用しても良い。これにより、無機充填材の界面との濡れ性を高くすることができ、それによって耐熱性をより向上させることできる。
【0040】
前記カップリング剤の添加量は、前記無機充填材の比表面積に依存するので特に限定されないが、無機充填材100重量部に対して0.05〜3重量部が好ましく、特に0.1〜2重量部が好ましい。含有量が前記下限値未満であると無機充填材を十分に被覆できないため耐熱性を向上する効果が低下する場合があり、前記上限値を超えると反応に影響を与え、曲げ強度等が低下する場合がある。
【0041】
前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤を用いても良い。前記硬化促進剤としては公知の物を用いることが出来る。例えば、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オクチル酸スズ、オクチル酸コバルト、ビスアセチルアセトナートコバルト(II)、トリスアセチルアセトナートコバルト(III)等の有機金属塩、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン等の3級アミン類、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシイミダゾール等のイミダゾール類、フェノール、ビスフェノールA、ノニルフェノール等のフェノール化合物、酢酸、安息香酸、サリチル酸、パラトルエンスルホン酸等の有機酸等、またはこの混合物が挙げられる。硬化促進剤として、これらの中の誘導体も含めて1種類を単独で用いることもできるし、これらの誘導体も含めて2種類以上を併用したりすることもできる。
【0042】
前記硬化促進剤の含有量は、特に限定されないが、前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物全体の0.05〜5重量%が好ましく、特に0.2〜2重量%が好ましい。含有量が前記下限値未満であると硬化を促進する効果が現れない場合があり、前記上限値を超えるとプリプレグの保存性が低下する場合がある。
【0043】
前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物は、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等のポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマ−、ポリブタジエン、エポキシ変性ポリブタジエン、アクリル変性ポリブタジエン、メタクリル変性ポリブタジエン等のジエン系エラストマーを併用しても良い。
また、前記ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を含む樹脂組成物には、必要に応じて、顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、発泡剤、酸化防止剤、難燃剤、イオン捕捉剤等の上記成分以外の添加物を添加しても良い。
【0044】
次に、プリプレグについて説明する。
【0045】
本発明のプリプレグは、前記の樹脂組成物を基材に含浸させてなるものである。これにより、誘電特性、高温多湿下での機械的、電気的接続信頼性等の各種特性に優れたプリント配線板を製造するのに好適なプリプレグを得ることができる。
【0046】
前記基材は、特に限定されないが、ガラス織布、ガラス不織布等のガラス繊維基材、ポリアミド樹脂繊維、芳香族ポリアミド樹脂繊維、全芳香族ポリアミド樹脂繊維等のポリアミド系樹脂繊維、ポリエステル樹脂繊維、芳香族ポリエステル樹脂繊維、全芳香族ポリエステル樹脂繊維等のポリエステル系樹脂繊維、ポリイミド樹脂繊維、フッ素樹脂繊維等を主成分とする織布または不織布で構成される合成繊維基材、クラフト紙、コットンリンター紙、リンターとクラフトパルプの混抄紙等を主成分とする紙基材等の有機繊維基材等が挙げられる。これらの中でもガラス繊維基材が好ましい。これにより、プリプレグの強度が向上し、吸水率を下げることができ、また熱膨張係数を小さくすることができる。
【0047】
前記ガラス繊維基材を構成するガラスは、特に限定されないが、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもEガラス、Tガラス、または、Sガラスが好ましい。これにより、ガラス繊維基材の高弾性化を達成することができ、熱膨張係数も小さくすることができる。
【0048】
前記プリプレグを製造する方法は、特に限定されないが、例えば、前述したエポキシ樹脂組成物を用いて樹脂ワニスを調製し、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーにより吹き付ける方法等が挙げられる。これらの中でも、基材を樹脂ワニスに浸漬する方法が好ましい。これにより、基材に対する樹脂組成物の含浸性を向上することができる。なお、基材を樹脂ワニスに浸漬する場合、通常の含浸塗布設備を使用することができる。
【0049】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒は、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
前記樹脂ワニスの固形分は、特に限定されないが、前記樹脂組成物の固形分50〜80重量%が好ましく、特に60〜78重量% が好ましい。これにより、樹脂ワニスの基材への含浸性を更に向上できる。前記基材に前記樹脂組成物を含浸させる所定温度、特に限定されないが、例えば90〜220℃等で乾燥させることによりプリプレグを得ることが出来る。
【0050】
次に、積層板について説明する。
【0051】
本発明の積層板は、上述のプリプレグを少なくとも1枚成形してなるものである。これにより、誘電特性、高温多湿化での機械的、電気的接続信頼性に優れた積層板を得ることができる。
プリプレグ1枚のときは、その上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。また、プリプレグを2枚以上積層することもできる。プリプレグ2枚以上積層するときは、積層したプリプレグの最も外側の上下両面もしくは片面に金属箔あるいはフィルムを重ねる。次に、プリプレグと金属箔等とを重ねたものを加熱、加圧することで積層板を得ることができる。前記加熱する温度は、特に限定されないが、120〜230℃が好ましく、特に150〜220℃が好ましい。また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、2〜5MPaが好ましく、特に2.5〜4MPaが好ましい。
【0052】
前記金属箔は、例えば銅及び銅系合金、アルミ及びアルミ系合金、銀及び銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金、鉄および鉄系合金等が挙げられる。
また、フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、フッ素系樹脂等を挙げることができる。
【0053】
次に、本発明の樹脂シートについて説明する。
【0054】
本発明の樹脂シートは、樹脂組成物からなる絶縁層をフィルム上、または金属箔上に形成してなるものである。
【0055】
樹脂組成物からなる絶縁層をフィルム上、または金属箔上に形成する方法としては、特に限定されないが、例えば、樹脂組成物を溶剤などに溶解・分散させて樹脂ワニスを調製して、各種塗工装置を用いて樹脂ワニスを基材に塗工した後、これを乾燥する方法、樹脂ワニスをスプレー装置にて基材に噴霧塗工した後、これを乾燥する方法、などが挙げられる。
これらの中でも、コンマコーター、ダイコーターなどの各種塗工装置を用いて、樹脂ワニスを基材に塗工した後、これを乾燥する方法が好ましい。これにより、ボイドがなく、均一な絶縁層の厚みを有する樹脂シートを効率よく製造することができる。
【0056】
前記樹脂ワニスに用いられる溶媒は、前記樹脂組成物中の樹脂成分に対して良好な溶解性を示すことが望ましいが、悪影響を及ぼさない範囲で貧溶媒を使用しても構わない。良好な溶解性を示す溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、セルソルブ系、カルビトール系等が挙げられる。
前記樹脂ワニス中の固形分含有量としては特に限定されないが、30〜80重量%が好ましく、特に40〜70重量%が好ましい。
【0057】
本発明の樹脂シートにおいて、樹脂組成物をフィルム上、または金属箔上に形成してなる絶縁層の厚さとしては特に限定されないが、5〜120μmであることが好ましい。さらに好ましくは10〜80μmである。これにより、この樹脂シートを用いて多層プリント配線板を製造する際に、内層回路の凹凸を充填して成形することができるとともに、好適な絶縁層厚みを確保することができる。また、樹脂シートの絶縁層部の割れ発生を抑え、裁断時の粉落ちを少なくすることができる。
【0058】
本発明の樹脂シートに用いられるフィルム、または金属箔としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性を有した熱可塑性樹脂フィルム、あるいは、銅及び/又は銅系合金、アルミ及び/又はアルミ系合金、鉄及び/又は鉄系合金、銀及び/又は銀系合金、金及び金系合金、亜鉛及び亜鉛系合金、ニッケル及びニッケル系合金、錫及び錫系合金等の金属箔などを用いることができる。
前記フィルム、または金属箔の厚みとしては、特に限定されないが、10〜120μmのものを用いると樹脂シートを製造する際の取り扱い性が良好であり好ましい。
【0059】
次に、多層プリント配線板について説明する。
【0060】
前記で得られた両面に金属箔を有する積層板を用意し、ドリル等によりスルーホールを形成し、メッキにより前記スルーホールを充填した後、積層板の両面に、エッチング等により所定の導体回路(内層回路)を形成し、導体回路を黒化処理等の粗化処理することにより内層回路基板を作製する。
次に内層回路基板の上下面に、前述した樹脂シート、または前述したプリプレグを形成し、加熱加圧成形する。
具体的には、前記樹脂シート、またはプリプレグと内層回路基板とを合わせて、真空加圧式ラミネーター装置などを用いて真空加熱加圧成形させる。その後、熱風乾燥装置等で加熱硬化させることにより内層回路基板上に絶縁層を形成することができる。
ここで加熱加圧成形する条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度60〜160℃、圧力0.2〜3MPaで実施することができる。また、加熱硬化させる条件としては特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、時間30〜120分間で実施することができる。
あるいは、前記樹脂シート、またはプリプレグを内層回路基板に重ね合わせ、これを平板プレス装置などを用いて加熱加圧成形することにより内層回路基板上に絶縁層を形成することもできる。
ここで加熱加圧成形する条件としては、特に限定されないが、一例を挙げると、温度140〜240℃、圧力1〜4MPaで実施することができる。
【0061】
上述した方法にて得られた基板は、絶縁層表面を過マンガン酸塩、重クロム酸塩等の酸化剤などにより粗化処理した後、金属メッキにより新たな導電配線回路を形成することができる
【0062】
その後、前記絶縁層を加熱することにより硬化させる。硬化させる温度は、特に限定されないが、例えば、100℃〜250℃の範囲で硬化させることができる。好ましくは150℃〜230℃で硬化させることである。
次に、絶縁層に、炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図る。なお、外層回路には、半導体素子を実装するための接続用電極部を設ける。
その後、最外層にソルダーレジストを形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、所定の大きさに切断し、多層プリント配線板を得ることができる。
【0063】
次に、半導体装置について説明する。
半導体装置は、上述した方法にて製造された多層プリント配線板に半導体素子を実装し、製造することができる。半導体素子の実装方法、封止方法は特に限定されない。例えば、半導体素子と多層プリント配線板とを用い、フリップチップボンダーなどを用いて多層プリント配線板上の接続用電極部と半導体素子の半田バンプの位置合わせを行う。その後、IRリフロー装置、熱板、その他加熱装置を用いて半田バンプを融点以上に加熱し、多層プリント配線板と半田バンプとを溶融接合することにより接続する。そして、多層プリント配線板と半導体素子との間に液状封止樹脂を充填し、硬化させることで半導体装置を得ることができる。
【0064】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例】
【0065】
本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成例を以下に示す。尚、以下に示す合成例は、例示であり、以下の方法に限定されるものでない。
【0066】
(合成例1)
(1)ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂の合成
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂20g(重量平均分子量950、水酸基当量210 g/eq)とメチルイソブチルケトン(以下MIBK)を80g仕込み、室温で攪拌溶解する。溶解後、−10℃まで冷却を行った。−10℃にて臭化シアン(以下BrCN)21.7g(純度95%、0.195mol)を投入し、内温が−15℃になったら、トリメチルアミン(以下TEA)20g(0.198mol)を1時間かけて滴下した。滴下後、さらに30分熟成し、さらに約2時間熟成させ反応を完結させた。
得られた溶液に、純粋100mlを加えて分液し、さらに5%塩化水素水溶液(HCl)1100mlを加えて分液した。さらに、10%食塩水110gで2回洗浄分液し、純粋100mlにて2回洗浄した。
有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水後、水分の真空除去し、24gの樹脂を得た。このようにして得られたビフェニルアラルキル型シアン酸エステルは、赤外吸収スペクトル測定(島津製作所製IR Prestige−21、KBr透過法)により分析した。赤外吸収スペクトルチャートを図1に示す。図1からフェノール性水酸基の吸収帯である3200〜3600cm−1が消失し、シアン酸エステルの二トリルの吸収帯である2264cm−1付近を有することが確認された。
図2にビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の赤外吸収スペクトルチャートを示す。
【0067】
また図3に前記合成例で得たビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂は、GPC(ゲルパーメーションクロマトグラフィー、東ソー株式会社製HLC−8120GPC) を用いて分析を行った。図3に前記合成例で得たビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂のGPCチャートにより、分子量分布を確認した。
【0068】
以下に、本発明のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を用いた樹脂組成物を、実施例及び比較例により説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
【0069】
(1)樹脂ワニスの調製
前記合成例1で得られたビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂(重量平均分子量1260)20重量部、ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、NC−3000H、エポキシ当量275)15重量部、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂(明和化成株式会社製、MEH−7851−3H、水酸基当量230)15重量部、およびエポキシシラン型カップリング剤(GE東芝シリコーン株式会社製、A−187)0.3重量部をメチルエチルケトンに常温で溶解し、球状溶融シリカ(株式会社アドマテックス社製、球状溶融シリカ、SO−25R、平均粒径0.5μm)49.7重量部を添加し、高速攪拌機を用いて10分攪拌して、樹脂ワニスを得た。
【0070】
(2)プリプレグの製造
前記樹脂ワニスをガラス織布(厚さ94μm、日東紡績製、WEA−2116)に含浸し、170℃の加熱炉で2分間乾燥して、プリプレグ中のワニス固形分が約50重量%のプリプレグを得た。
【0071】
(3)樹脂シートの製造
前記樹脂ワニスをPET(ポリエチレンテレフタレート、帝人デュポンフィルム製ピューレックスフィルム36um)上に塗工し、150℃の乾燥機で2分間乾燥して、樹脂シートを得た。
【0072】
(4)積層板の製造
上述のプリプレグを2枚重ね、両面に18μmの銅箔を重ねて、圧力4MPa、温度220℃で2時間加熱加圧成形することによって、厚さ0.2mmの両面に銅張を有する積層板を得た。
【0073】
(5)多層プリント配線板の作製
前記で得られた両面に銅張を有する積層板に、0.1mmのドリルビットを用いてスルーホール加工を行った後、メッキによりスルーホールを充填した。さらに、両面をエッチングにより回路形成し、内層回路基板として用いた。前記内層回路基板の表裏に、市販の樹脂フィルム(ビルドアップ材と称す場合もある。)(味の素ファインテクノ社製、ABF GX−13、厚さ40μm)を内層回路上に真空積層装置を用いて積層し、温度170℃、時間60分間加熱硬化し積層体を得た。
【0074】
その後、前記で得られた積層体に、炭酸レーザー装置を用いてφ60μmの開孔部(ブラインド・ビアホール)を形成し、70℃の膨潤液(アトテックジャパン社製、スウェリングディップ セキュリガント P)に5分間浸漬し、さらに80℃の過マンガン酸カリウム水溶液(アトテックジャパン社製、コンセントレート コンパクト CP)に15分浸漬後、中和して粗化処理を行った。次に脱脂、触媒付与、活性化の工程を経た後、無電解銅メッキ皮膜を約0.5μmの給電層を形成した。次にこの給電層表面に、厚さ25μmの紫外線感光性ドライフィルム(旭化成社製AQ−2558)をホットロールラミネーターにより貼り合わせ、最小線幅/線間が20/20μmのパターンが描画されたクロム蒸着マスク(トウワプロセス社製)を使用して、位置を合わせ、露光装置(ウシオ電機社製UX−1100SM−AJN01)にて露光、炭酸ソーダ水溶液にて現像し、めっきレジストを形成した。
【0075】
次に、給電層を電極として電解銅めっき(奥野製薬社製81−HL)を3A/dm2、30分間行って、厚さ約25μmの銅配線を形成した。ここで2段階剥離機を用いて、前記めっきレジストを剥離した。各薬液は、1段階目のアルカリ水溶液層にはモノエタノールアミン溶液(三菱ガス化学社製R−100)、2段階目の酸化性樹脂エッチング剤には過マンガン酸カリウムと水酸化ナトリウムを主成分とする水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9275、9276)、中和には酸性アミン水溶液(日本マクダーミッド社製マキュダイザー9279)をそれぞれ用いた。
【0076】
そして、給電層を過硫酸アンモニウム水溶液(メルテックス(株)製AD−485)に浸漬処理することで、エッチング除去し、配線間の絶縁を確保した。次に絶縁層を温度200℃時間60分で最終硬化させ、最後に回路表面にソルダーレジスト(太陽インキ社製PSR4000/AUS308)を形成し多層プリント配線板を得た。
【0077】
(6)半導体装置の作製
前記で多層プリント配線板の絶縁層に炭酸レーザー装置を用いて開口部を設け、電解銅めっきにより絶縁層表面に外層回路形成を行い、外層回路と内層回路との導通を図った。なお、外層回路は、半導体素子を実装するための接続用電極部を設けた。
その後、最外層にソルダーレジスト(太陽インキ社製、PSR4000/AUS308)を形成し、露光・現像により半導体素子が実装できるよう接続用電極部を露出させ、ニッケル金メッキ処理を施し、50mm×50mmの大きさに切断し、多層プリント配線板を得た。
その後、半導体素子(TEGチップ、サイズ15mm×15mm、厚み0.8mm)は、半田バンプはSn/Pb組成の共晶で形成され、回路保護膜はポジ型感光性樹脂(住友ベークライト社製CRC−8300)で形成されたものを使用した。半導体装置の組み立ては、まず、半田バンプにフラックス材を転写法により均一に塗布し、次にフリップチップボンダー装置を用い、上記多層プリント配線板上に加熱圧着により搭載した。次に、IRリフロー炉で半田バンプを溶融接合した後、液状封止樹脂(住友ベークライト社製、CRP−4152S)を充填し、液状封止樹脂を硬化させることで半導体装置を得た。尚、液状封止樹脂は、温度150℃、120分の条件で硬化させた。
【0078】
実施例2〜13、比較例1は、表1に記載の配合表に従い樹脂ワニスを調製した以外は、実施例1と同様にプリプレグ、樹脂シート、積層板、多層プリント配線板、及び半導体装置を作製した。
尚、実施例1に用いた原料以外の実施例2〜13、及び比較例1に用いた原料を以下に示す。
(1)シアネート樹脂/ノボラック型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットPT−30」、シアネート当量124
(2)シアネート樹脂/ビスフェノールA型シアネート樹脂:ロンザジャパン社製・「プリマセットBA−230」、シアネート当量232
(3)エポキシ樹脂/ビフェニルジメチレン型エポキシ樹脂:日本化薬社製・「NC−3000H」、エポキシ当量275
(4)エポキシ樹脂/ナフタレン型2官能エポキシ樹脂:DIC社製・「HP−4032D」、エポキシ当量140g/eq
(5)エポキシ樹脂/ナフタレン型4官能エポキシ樹脂:DIC社製・「HP−4700」、エポキシ当量165g/eq
(6)フェノール樹脂/ビフェニルアルキレン型ノボラック樹脂:明和化成社製「MEH−7851−3H」、水酸基当量230
(7)無機充填材/球状シリカ;アドマテックス社製・「SO-25R」、平均粒子径0.5μm
(8)無機充填材/球状シリカ;アドマテックス社製・「SO-31R」、平均粒子径1.0μm
(9)無機充填材/球状シリカ;トクヤマ社製・「NSS−5N」、平均粒子70nm
(10)無機充填材/ベーマイト;河合石灰社製・「BMT−3L」、平均粒子2.9μm
(11)無機充填材/窒化ホウ素;水島合金鉄社製・「HP−P1」、平均粒径2.0μm
(12)無機充填材/アルミナ;日本軽金属社製・「LS−22」、平均粒径2.4μm
(13)無機充填材/タルク;富士タルク社製・「LMS−200」、平均粒子径6.0μm
(14)カップリング剤/エポキシシラン;GE東芝シリコーン社製・「A‐187」
【0079】
表1に実施例、並びに比較例の樹脂ワニスの配合、及び評価結果を表1、及び表2に示す。
【0080】
【表1】

【0081】
【表2】

【0082】
評価方法を以下の(1)〜(7)に示す。
(1)ガラス転移温度:
厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する銅張積層板を全面エッチングし、得られた積層板から10mm×60mmのテストピースを切り出し、動的粘弾性測定装置(TAインスツルメント社製、DMA983)を用いて3℃/分で昇温し、測定した。ガラス転移温度は、tanδのピーク位置の温度とした。
【0083】
(2)線膨張係数:
厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する積層板を全面エッチングし、得られた積層板から2mm×2mmのテストピースを切り出し、TMA(TAインスツルメント社製)を用いて厚み方向(XY方向)の線膨張係数を測定した。
測定は、窒素雰囲気下、引っ張りモードで昇温速度5℃/min、温度25〜300℃、荷重5g、2サイクル測定を行った。熱膨張率は、2サイクル目の温度50〜100℃における平均線熱膨張係数とした。
【0084】
(3)比誘電率:
トリプレート線路共振器法にて厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する積層板を全面エッチングし、得られた積層板から20mm×50mmのテストピースを切り出し16枚重ねて1.6mm厚にして1GHzの値を測定した。
【0085】
(4)難燃性:
UL−94規格に従い、厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する積層板を全面エッチングし、得られた積層板から13mm×125mmのテストピースを切り出し0.1mm厚のテストピースを垂直法により測定した。
【0086】
(5)吸水率:
厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する積層板を全面エッチングし、得られた積層板から50mm×50mmのテストピースを切り出し、JIS6481に従い測定した。
【0087】
(6)吸湿はんだ耐熱性:
厚さ0.1mmの両面に銅箔を有する積層板から50mm×50mmに切り出し、JIS6481に従い半面エッチングを行ってテストピースを作製した。
プレッシャークッカーを用いて121℃で、24時間処理後、288℃の半田に60秒浸漬させ、膨れの有無を観察した。各符号は以下のとおりである。
○:異常なし
×:膨れが発生
【0088】
(7)吸湿マルチリフロー
前記で得られた多層プリント配線板を、IPC/JEDECのJ−STD−20に準拠して、温度85℃湿度60%時間168時間前処理後に、260℃リフロー炉を通し、5回毎に、超音波深傷検査装置で多層プリント配線板の絶縁層の剥離、およびクラックの欠損を評価した。
各符号は以下の通りである。
◎:20回以上絶縁層の剥離、及びクラックの発生なし。
○:10回以上、20回未満で剥離、またはクラックが発生した。
△:5回以上、10回未満で剥離、またはクラックが発生した。
×:5回未満 絶縁層の剥離、またはクラックが発生した。
【0089】
各実施例で得られた積層板は、ハロゲン系難燃剤およびリン化合物を使用していないにもかかわらず優れた難燃性を有しており、近年の電子機器に求められる耐熱性、低熱膨張率、低誘電特性、耐吸湿特性吸湿を有したバランスに優れたものであることがわかる。また、多層プリント配線板の吸湿後のリフロー耐熱性に優れていた。一方、比較例1は、難燃性、吸水率、耐半田性において良好な結果を得ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
ビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を用いた樹脂組成物は低熱線膨張率であり、流動性に優れるため、プリプレグに好適に用いることができる。当該プリプレグは、スジムラ等外観不良がなく、成形性、加工性に優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。
【化1】


[式中 R1、及びRは、それぞれH、CH、またはCである。]
【請求項2】
ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂とハロゲン化シアンとを反応させて得られることを特徴とするビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂を必須成分とする樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、および硬化剤を必須成分とする樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のビフェニルアラルキル型シアン酸エステル樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、および無機充填材を必須成分とする樹脂組成物。
【請求項6】
前記無機充填材は、シリカ、水酸化アルミニウム、ベーマイト、タルク、及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種類である請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
請求項3ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物を基材に含浸させてなるプリプレグ
【請求項8】
請求項7に記載のプリプレグを1枚以上成形してなる積層板。
【請求項9】
請求項3ないし6のいずれかに記載の樹脂組成物からなる絶縁層をフィルム上、または金属箔上に形成してなる樹脂シート。
【請求項10】
請求項7に記載のプリプレグ、または請求項9に記載の樹脂シートを請求項8に記載の積層板より作製された内層回路板の片面または両面に重ね合わせて加熱加圧成形してなる多層プリント配線板。
【請求項11】
請求項10に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−174242(P2010−174242A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296751(P2009−296751)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】