説明

ブレーキ制御装置

【課題】クルーズシステムにより走行停止させることに伴いアイドルストップシステムによりエンジンを自動停止させた場合に、車両が動き出してしまうことの防止を図ったブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】先行車両の走行停止に伴い自車両を走行停止させるよう制動ブレーキを自動作動させるクルーズシステムと、エンジン20を自動停止させるアイドルストップシステムと、パーキングブレーキ(パーキング用ブレーキシュー53)を電動モータ50で自動作動させる電動パーキングブレーキシステムと、を備えた車両に適用され、前記クルーズシステムにより走行停止させることに伴い前記アイドルストップシステムによりエンジン20を自動停止させた場合には、前記電動パーキングブレーキシステムによりパーキングブレーキを自動作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クルーズシステム、アイドルストップシステム、及び電動パーキングブレーキシステムを備える車両に適用されたブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、先行車両の走行停止に伴い、自車両を自動で走行停止させるよう制動ブレーキを自動作動させるクルーズシステムが記載されている。このクルーズシステムを、エンジンを自動停止させるアイドルストップシステムを備えた車両に適用した場合には、クルーズシステムにより走行停止させることに伴いエンジンが自動停止(アイドルストップ)することとなる。
【0003】
すると、制動ブレーキの作動油ポンプがエンジン駆動である場合には、アイドルストップ期間中に制動ブレーキの油圧が低下してブレーキ力が低下していくので、例えば登坂道や降坂道である場合には、ブレーキ力不足で車両が動き出すことが懸念される。
【0004】
また、制動ブレーキの作動油ポンプが電動である場合には、アイドルストップ期間中における電力消費が大きくなるので、バッテリが過放電状態に陥ることが懸念される。そして、バッテリから十分な電力が供給されなくなると、ブレーキ力が低下して車両が動き出すといった上記問題が生じるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−316644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、クルーズシステムにより走行停止させることに伴いアイドルストップシステムによりエンジンを自動停止させた場合に、車両が動き出してしまうことの防止を図ったブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0008】
請求項1記載の発明では、先行車両の走行停止に伴い自車両を走行停止させるよう制動ブレーキを自動作動させるクルーズシステムと、エンジンを自動停止させるアイドルストップシステムと、パーキングブレーキを電動モータで自動作動させる電動パーキングブレーキシステムと、を備えた車両に適用され、前記クルーズシステムにより走行停止させることに伴い前記アイドルストップシステムによりエンジンを自動停止させた場合には、前記電動パーキングブレーキシステムにより前記パーキングブレーキを自動作動させることを特徴とする。
【0009】
ここで、停車中の車両が動き出さないようにするためのパーキングブレーキに関し、近年では、パーキングブレーキを電動モータで自動作動させるものが開発されてきている(例えば特開2009−90854号公報等)。そこで本発明者は、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった上記問題を、電動パーキングブレーキシステムを利用して解決することを想起した。
【0010】
すなわち、上記発明によれば、クルーズシステムにより走行停止させることに伴いアイドルストップさせた場合には、電動パーキングブレーキシステムによりパーキングブレーキを自動作動させる。これによれば、油圧を用いることなく機械式にブレーキ力を発揮させるパーキングブレーキを自動作動させるので、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった上記問題を解決できる。また、制動ブレーキの作動油ポンプが電動である場合においては、パーキングブレーキを自動作動させる上記発明によれば、アイドルストップ中における油ポンプの駆動時間を短くできる(或いは駆動時間をゼロにできる)。よって、バッテリが過放電状態に陥ることを回避できる。
【0011】
請求項2記載の発明では、エンジンを自動停止させてから所定時間が経過したことを条件として、前記パーキングブレーキの自動作動を許可することを特徴とする。
【0012】
ここで、パーキングブレーキを自動作動させた場合には、その後アイドルストップを解除してエンジンを自動始動させる際に、パーキングブレーキの解除に要する時間だけ車両走行開始が遅れてしまうことが懸念される。したがって、必要以上にパーキングブレーキを自動作動させることは、迅速な車両走行開始を図る上で望ましくない。
【0013】
一方、例えば制動ブレーキの作動油ポンプがエンジン駆動である場合において、エンジンを自動停止させて暫らくの間は、十分なブレーキ力を発揮できる程度の油圧が維持されている。また、制動ブレーキの作動油ポンプが電動である場合において、エンジンを自動停止させて暫らくの間は、バッテリの残存電力により十分なブレーキ力を発揮できる。
【0014】
これらの点を鑑みた上記発明によれば、エンジンを自動停止させてから所定時間が経過して初めて、十分なブレーキ力を発揮できないとみなしてパーキングブレーキの自動作動を許可するので、必要以上にパーキングブレーキを自動作動させることを回避できる。よって、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった問題の解決と、「車両走行開始が遅れてしまう」といった問題の解決の両立を図ることができる。
【0015】
請求項3記載の発明では、先行車両と自車両との車間距離が所定距離未満であることを条件として、前記パーキングブレーキの自動作動を許可することを特徴とする。
【0016】
ここで、必要以上にパーキングブレーキを自動作動させることは、迅速な車両走行開始を図る上で望ましくないことは先述した通りである。一方、先行車両と自車両との車間距離が長ければ、ブレーキ力低下による車両の動き出しを許容できる場合がある。また、そのように動き出した後にパーキングブレーキを自動作動させれば十分に安全を確保できる場合がある。
【0017】
これらの点を鑑みた上記発明によれば、先行車両と自車両との車間距離が所定距離未満であることを条件として、パーキングブレーキの自動作動を許可するので、必要以上にパーキングブレーキを自動作動させることを回避できる。よって、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった問題の解決と、「車両走行開始が遅れてしまう」といった問題の解決の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるブレーキ制御装置(ECU)、及びその装置が適用される車両のエンジン及びブレーキシステム等の概要を示す図。
【図2】図1のECUによる電動パーキングブレーキの制御手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態にかかるブレーキ制御装置が適用される車両は、エンジン(内燃機関)を駆動力として走行するものであり、後に詳述するクルーズシステム、アイドルストップシステム及び電動パーキングブレーキEPB(Electronic Parking Brake)のシステムを備えている。これらのシステムの作動は、図1に示す電子制御装置(ECU10)により制御される。なお、ECU10は、演算を行うマイクロコンピュータ、このマイコンに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを記憶するRAM等によって構成されている。
【0020】
エンジン20から出力された駆動力は、クラッチ21を介して自動変速機22に伝達される。自動変速機22に伝達された駆動力は、さらにディファレンシャル及びドライブシャフト等を介して車輪に伝達される。そして車輪が駆動されることにより、車両が走行する。
【0021】
ECU10には、アクセルペダル30(アクセル操作部材)の操作量(アクセル操作量)を検出するストロークセンサ31、エンジン20のクランク軸の回転速度(エンジン回転速度)を検出するクランク角センサ11、吸気量(エンジン負荷)検出するエアフローメータ12等の各種センサからの検出信号が入力されている。そして、検出したアクセル操作量、エンジン回転速度、エンジン負荷等に基づき、ECU10は燃料噴射弁23や点火装置24等の作動を制御する。これにより、燃料噴射量や点火時期等が制御されて、エンジン20の駆動力が制御される。
【0022】
さらにECU10は、シフトポジションセンサ13により検出された自動変速機22のシフトポジション、車輪速センサ14により検出された車速、ストロークセンサ31により検出されたアクセル操作量等に基づき、自動変速機22の作動を制御する。
【0023】
次に、先述したクルーズシステムについて説明する。
【0024】
車室内の運転席近傍にはクルーズスイッチ17が設けられており、車両運転者がクルーズスイッチ17をオン操作すると、クルーズ制御の実行条件が成立していることを条件として以下に説明するクルーズシステムが作動し、オフ操作するとクルーズシステムは停止する。クルーズシステムの作動時には、ECU10は、車両に搭載された車間距離センサ15から、前方車両と自車両との車間距離の検出信号を取得する。また、車両に搭載されたカメラ16から、自車両の前方状況を撮像した映像信号を取得する。そして、検出した車間距離及び映像信号に基づき、車間距離が設定距離で一定となるよう車両の走行状態を制御する。
【0025】
具体的には、クルーズシステム作動時には、車両運転者がアクセルペダル30を操作していなくても、車間距離及び前方状況に基づき燃料噴射弁23や点火装置24等の作動を制御してエンジン20の駆動力を自動で制御するとともに、自動変速機22の作動を制御する。これにより、一定の車間距離となるよう走行状態を自動制御する。例えば、前方車両が加速して車間距離が設定距離よりも長くなった場合には、エンジン20の駆動力が増大するよう自動制御する。
【0026】
また、クルーズシステム作動時には、車両運転者がブレーキペダル40(ブレーキ操作部材)を操作していなくても、車間距離及び前方状況に基づきブレーキキャリパ41をECU10が自動で作動させることにより、制動力を発揮させるよう自動制御する。例えば、前方車両が減速して車間距離が設定距離よりも短くなった場合には、制動力が増大するよう自動制御する。
【0027】
ブレーキキャリパ41は、図示しないブレーキパッド及びホイールシリンダを内蔵するものであり、車両の各車輪に取り付けられたブレーキディスク42に対応して配置されている。ホイールシリンダは、ブレーキ配管43を介して油圧回路44に接続されている。また、ホイールシリンダは、ブレーキ配管43や油圧回路44を介してマスタシリンダ45にも接続されている。
【0028】
なお、ブレーキペダル40を車両運転者が踏み込んだ場合の通常ブレーキ時には、マスタシリンダ45内の圧力が上昇し、この圧力上昇が油圧回路44やブレーキ配管43を介してホイールシリンダに伝えられてホイールシリンダ内の圧力が上昇する。ホイールシリンダ内の油圧を上昇させると、ブレーキパッドがブレーキディスク42に押圧され、摩擦力によってブレーキディスク42と連結されている車輪が制動される。
【0029】
油圧回路44は、油圧ポンプや複数の電磁バルブなどを有しており、クルーズシステムにより制動力を自動制御する場合の制動ブレーキ自動制御時には、マスタシリンダ45とブレーキキャリパ41内のホイールシリンダとの連通が遮断され、制動時のホイールシリンダ内の油圧が保持される。そして、制動力が不足しているときには、油圧ポンプによって高圧化されたブレーキ油圧が電磁バルブを介してホイールシリンダに伝えられホイールシリンダ圧が増圧される。また、他の電磁バルブを駆動することによりホイールシリンダ圧を減圧することもできる。このようにして、各ブレーキキャリパ41の作動を自動制御することにより、各車輪の制動力が自動制御される。なお、油圧回路44の油圧ポンプや電磁バルブなどはECU10により制御される。
【0030】
なお、ECU10には、ストロークセンサ47により検出されたブレーキペダル40の踏込量(ブレーキ操作量)を表す信号、及びマスタシリンダ圧センサ46により検出されたマスタシリンダ45内の油圧を表す信号が入力される。
【0031】
次に、先述したアイドルストップシステムについて説明する。
【0032】
クルーズシステムが作動していないクルーズシステムオフ時において、車速が所定値以下又はゼロになっており、かつ、車両運転者がブレーキペダル40を所定量以上踏み込み操作していることを条件として、ECU10は、燃料噴射弁23からの燃料噴射を停止させてアイドルストップさせる。クルーズシステム作動時においては、車速が所定値以下又はゼロになっており、かつ、ブレーキキャリパ41による制動力が所定値以上であることを条件として、ECU10は、燃料噴射弁23からの燃料噴射を停止させてアイドルストップさせる。なお、上述したアイドルストップの条件に、車両運転者がアクセルペダル30を操作していないことを追加してもよい。また、後述するパーキングブレーキが作動していることを追加してもよい。
【0033】
クルーズシステムオフ時において、アイドルストップ中に車両運転者がブレーキペダル40を開放、又は踏込量が所定量未満になったことを条件として、或いはバッテリ容量が所定量未満になったことを条件として、ECU10は、アイドルストップ解除を要求する信号を発生させる。これにより、スタータモータ25を自動で駆動するとともに燃料噴射弁23及び点火装置24の作動を開始してエンジン20を自動で再始動させる。なお、上述したアイドルストップ解除の条件にアクセルペダル30を踏込操作していることを追加してもよい。また、後述するパーキングブレーキが作動していないことを追加してもよい。
【0034】
クルーズシステム作動時においては、アイドルストップ中に車両運転者がアクセルペダル30を踏込操作したことを条件として、ECU10は、アイドルストップ解除を要求する信号を発生させる。これにより、スタータモータ25を自動で駆動するとともに燃料噴射弁23及び点火装置24の作動を開始してエンジン20を自動で再始動させる。再始動させた後は、クルーズシステムの作動により、前方車両との車間距離が設定距離で一定となるよう、自動変速機22及び油圧回路44の作動を制御して車両を自動で走行させる。
【0035】
次に、先述したEPBシステム(電動パーキングブレーキシステム)について説明する。
【0036】
車室内の運転席近傍にはパーキングスイッチ18が設けられており、車両運転者がパーキングスイッチ18をオン操作すると、電動モータ50が作動してパーキングブレーキが作動する。つまり、運転者の操作力でパーキングブレーキを作動させるのではなく、電動モータ50でパーキングブレーキを作動させるのがEPBシステムである。電動モータ50の駆動力は、ギア機構51及びケーブル52を介してパーキング用のブレーキシュー53(パーキングブレーキ)に伝達される。これにより、ブレーキシュー53は、リア車輪に設けられたブレーキドラム54に押し付けられて、その摩擦力によりパーキングブレーキ力が発揮され、車輪がロックされる。
【0037】
そして、ギア機構51は、ケーブル52が引っ張られた状態(車輪ロック状態)を保持するラッチ等の保持装置を有している。そのため、電動モータ50でケーブル52を引っ張り車輪をロックした後は、電動モータ50の駆動を停止させてギア機構51の保持装置によりロック状態を保持させる。要するに、ブレーキペダル40による制動力が油圧で発揮されるのに対し、パーキングブレーキ力は、電動モータ50の駆動力で発揮させた後にギア機構51の保持装置で保持される。
【0038】
なお、車両運転者がパーキングスイッチ18をオフ操作すると、ケーブル52のテンションを緩めるようギア機構51が作動して、ブレーキシュー53はブレーキドラム54から離れる。これにより、パーキングブレーキが自動解除される。例えば、電動モータ50を逆転駆動させると、ケーブル52のテンションを緩めるようギア機構51が作動するよう構成すればよい。
【0039】
また、クルーズシステムにより走行停止させることに伴いアイドルストップシステムによりエンジン20を自動停止させた場合には、車両運転者がパーキングスイッチ18をオン操作していなくても、EPBの電動モータ50を駆動させるようECU10(ブレーキ制御装置)が自動制御する。つまり、クルーズシステムにより自動で走行停止してアイドルストップさせた時には、EPBを自動でオン作動させて車輪をロックさせる。
【0040】
なお、クルーズシステムによりアイドルストップを解除した場合には、ケーブル52のテンションを緩めるようギア機構51を作動させる。これにより、EPBを自動でオフ作動させて車輪のロックを解除させる。
【0041】
図2は、ECU10が有するマイコンにより、上述の如くEPBを自動でオン作動させる手順を示すフローチャートであり、当該処理は所定周期(例えばマイコンの演算周期)で繰り返し実行される。
【0042】
先ず、図2に示すステップS10ではクルーズ制御中であるか否かを判定し、続くステップS20では車速がゼロであるか否かを判定し、続くステップS30では、アイドルストップ条件が成立しているか否かを判定する。そして、クルーズ制御中であり、車速がゼロであり、かつ、アイドルストップ条件が成立していると判定された場合(S10:YES、S20:YES、S30:YES)には、次のステップS40に進み、アイドルストップによりエンジン20が自動停止してからの経過時間Tstpが、所定時間Tthを超えたか否かを判定する。
【0043】
Tstp≦Tthと判定された場合には(S40:NO)、タイマーによりカウントされる経過時間TstpをカウントアップしてステップS10に戻る。一方、Tstp>Tthと判定された場合には(S40:YES)、ステップS60において、前方車両と自車両との車間距離が所定値以上であるか否かを判定する。車間距離が所定値未満であると判定された場合には(S60:NO)ステップS70に進み、ストロークセンサ31により検出されたアクセル踏込量が所定値以上であるか否かを判定する。
【0044】
そして、アクセル踏込量が所定値未満であると判定されれば(S70:NO)、続くステップS80において、電動モータ50を駆動させてEPBを自動でオン作動させる。一方、アクセル踏込量が所定値以上であると判定されれば(S70:YES)、続くステップS90において、ケーブル52のテンションを緩めるようギア機構51を作動させてEPBを自動でオフ作動(ロック解除)させる。
【0045】
ここで、クルーズシステムにより走行停止させることに伴いアイドルストップシステムによりエンジン20を自動停止させた場合(S30:YES)には、車両運転者はブレーキペダル40を操作していないため、ブレーキキャリパ41への供給油圧が低下してブレーキ力が低下していくことにより車両が動き出したとしても、その動き出しに気がつきにくい。そのため、ブレーキペダル40を踏み込んで車両の動きを停止させるといった運転者によるブレーキ操作が遅れてしまうことが懸念される。
【0046】
この懸念に対し、以上詳述した本実施形態によれば、クルーズシステムにより走行停止してアイドルストップさせた場合(S30:YES)には、EPBを自動でオン作動させる(S80)。よって、登坂道や降坂道においてクルーズシステムにより走行停止してアイドルストップさせた場合であっても、ギア機構51の保持装置により油圧を用いることなく機械的にブレーキ力を保持させるので、上述の如く車両が動き出してしまうといった問題を解消できる。
【0047】
ところで、アイドルストップを解除してエンジン20を自動始動させる際に、ブレーキキャリパ41への油圧を低下させて制動力を解除するのに要する時間に比べ、EPBのオフ作動に要する時間の方が長い。したがって、アイドルストップ中に車両走行を要求する信号が生じた場合に迅速に走行開始させるには、アイドルストップ中にEPBを作動させるよりも、ブレーキキャリパ41を作動させている方が有利である。つまり、必要以上にEPBを自動作動させることは、迅速な車両走行開始を図る上で望ましくない。一方、エンジン20を自動停止させて暫らくの間は、ブレーキキャリパ41への供給油圧が十分なブレーキ力を発揮できる程度に維持されている。
【0048】
これらの点を鑑みた本実施形態では、エンジン20が自動停止してからの経過時間Tstpが所定時間Tthを超えたことを条件(S40:YES)としてEPBを自動オン作動させるので、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった問題の解決と、「車両走行開始が遅れてしまう」といった問題の解決の両立を図ることができる。
【0049】
また、先行車両と自車両との車間距離が長ければ、ブレーキキャリパ41への供給圧が低下して降坂道にて車両が動き出すことを許容できる場合がある。また、そのように動き出した後にEPBを自動オン作動させれば十分に安全を確保できる場合がある。これらの点を鑑みた本実施形態では、先行車両と自車両との車間距離が所定距離未満であることを条件(S60:NO)としてEPBを自動オン作動させるので、必要以上にEPBを自動オン作動させることを回避できる。よって、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった問題の解決と、「車両走行開始が遅れてしまう」といった問題の解決の両立を促進できる。
【0050】
さらに本実施形態によれば、十分にアクセルペダル30が踏み込まれて走行駆動力が発揮されている場合にはEPBのオン作動が不要である点に着目し、アクセル踏込量が所定値未満であることを条件(S70:NO)としてEPBを自動オン作動させる。よって、「ブレーキ力が低下して車両が動き出す」といった問題の解決と、「車両走行開始が遅れてしまう」といった問題の解決の両立を促進できる。
【0051】
(他の実施形態)
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、以下のように変更して実施してもよい。また、各実施形態の特徴的構成をそれぞれ任意に組み合わせるようにしてもよい。
【0052】
・図1に示す上記実施形態では、ブレーキキャリパ41へ油圧を供給する油圧アクチュエータをエンジン20で駆動させている。これに対し、油圧アクチュエータを電動モータで駆動させるようにしてもよい。
【0053】
・クルーズシステムにより走行停止してアイドルストップさせたことに伴いEPBを自動でオン作動させる時に、油圧回路44の作動状態をそのまま維持させて、ブレーキキャリパ41による制動ブレーキ力もパーキングブレーキ力とともに発揮させるようにしてもよい。或いは、上述の如く油圧アクチュエータを電動モータで駆動させる場合には、EPBのオン作動に伴い前記電動モータを停止させて、バッテリ容量の低下抑制を図るようにしてもよい。
【0054】
・図1に示す制動用ブレーキは、ブレーキディスク42をブレーキパッドで挟み込んで生じさせた摩擦により制動力を発揮させるディスクブレーキシステムであるが、ブレーキシューをブレーキドラムに押し付けて生じさせた摩擦により制動力を発揮させるドラムブレーキシステムでもよい。
【符号の説明】
【0055】
10…ECU(ブレーキ制御装置)、50…電動モータ、53…パーキング用のブレーキシュー(パーキングブレーキ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先行車両の走行停止に伴い自車両を走行停止させるよう制動ブレーキを自動作動させるクルーズシステムと、エンジンを自動停止させるアイドルストップシステムと、パーキングブレーキを電動モータで自動作動させる電動パーキングブレーキシステムと、を備える車両に適用され、
前記クルーズシステムにより走行停止させることに伴い前記アイドルストップシステムによりエンジンを自動停止させた場合には、前記電動パーキングブレーキシステムにより前記パーキングブレーキを自動作動させることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
エンジンを自動停止させてから所定時間が経過したことを条件として、前記パーキングブレーキの自動作動を許可することを特徴とする請求項1に記載のブレーキ制御装置。
【請求項3】
先行車両と自車両との車間距離が所定距離未満であることを条件として、前記パーキングブレーキの自動作動を許可することを特徴とする請求項1又は2に記載のブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−11969(P2012−11969A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152835(P2010−152835)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】