説明

モールドパッケージの製造方法

【課題】センサチップの一端側をモールド樹脂で封止してモールド樹脂で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法において、モールド樹脂による封止前におけるセンサチップのぐらつきを防止して、工程中のワークの取り扱い性に優れた製造方法を実現する。
【解決手段】センサチップ20の一端23側をモールド樹脂50で封止してモールド樹脂50で片持ち支持するようにしたモールドパッケージS1の製造方法においてリードフレーム30として、センサチップ20の他端24側を支持する支持部33を有するものを用意し、センサチップ20の他端23側を支持部33で受けて支持するようにし、支持部33による支持を維持した状態にてモールド樹脂50による封止を行った後に、リードフレーム30から支持部33をカットして、センサチップ20の他端24側から支持部33を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサチップの一端側をモールド樹脂で封止してモールド樹脂で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にこの種のモールドパッケージとしては、特許文献1に記載のものが提案されている。このモールドパッケージの製造方法は次のとおりである。
【0003】
まず、回路チップと、一端側に回路チップと電気的に接続される電気接続部を有するとともに他端側にセンシング部を有するセンサチップと、回路チップを搭載するアイランド部を有するリードフレームと、を用意する(第1の工程)。
【0004】
そして、アイランド部上に回路チップを搭載するとともに、センサチップの一端側を回路チップ側に位置させて電気接続部と回路チップとを、ボンディングワイヤなどの接続部材を介して電気的に接続する(第2の工程)。
【0005】
その後、アイランド部、回路チップ、接続部材およびセンサチップの一端側をモールド樹脂で封止するとともに、センサチップの他端側をモールド樹脂より突出させる(第3の工程)。こうして、モールドパッケージができあがる。このようなモールドパッケージは、最終的にセンサチップの他端側をモールド樹脂より突出させた状態とすることで、当該他端側に位置するセンシング部にて的確なセンシングを実現するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2009−505088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、上記従来の製造方法では、センサチップの一端側は、回路チップを搭載するリードフレームのアイランド部に支持されているものの、このようにセンサチップの一端側をアイランド部に支持させた状態、いわゆる片持ち支持の状態では、センサチップの他端側がぐらつきやすく、不安定である。
【0008】
そのため、センサチップの一端側がモールド樹脂で封止され、モールド樹脂によって支持される前においては、工程中のワークの取り扱いに極度の注意を要し、場合によっては、センサチップの一端側の支持部で剥離等が生じ、ひいては、回路チップとセンサチップとを電気的に接続する接続部材が破断したりするなどの不具合が生じる可能性がある。
【0009】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、センサチップの一端側をモールド樹脂で封止してモールド樹脂で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法において、モールド樹脂による封止前におけるセンサチップのぐらつきを防止して、工程中のワークの取り扱い性に優れた製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回路チップ(10)と、一端(23)側に回路チップ(10)と電気的に接続される電気接続部(26)を有するとともに他端(24)側にセンシング部(25)を有するセンサチップ(20)と、回路チップ(10)を搭載するアイランド部(31)を有するリードフレーム(30)と、を用意する第1の工程と、
アイランド部(31)上に回路チップ(10)を搭載するとともに、センサチップ(20)の一端(23)側を回路チップ(10)側に位置させて電気接続部(26)と回路チップ(10)とを接続部材(40、42)を介して電気的に接続する第2の工程と、
その後、アイランド部(31)、回路チップ(10)、接続部材(40、42)およびセンサチップ(20)の一端(23)側をモールド樹脂(50)で封止するとともに、センサチップ(20)の他端(24)側をモールド樹脂(50)より突出させる第3の工程と、を含むモールドパッケージの製造方法において、次のような特徴を有するものとしている。
【0011】
つまり、請求項1の製造方法では、第1の工程では、リードフレーム(30)として、センサチップ(20)の他端(24)側を支持する支持部(33)を有するものを用意し、第2の工程では、センサチップ(20)の他端(23)側を支持部(33)で受けて支持するようにし、第3の工程では、支持部(33)による支持を維持した状態にてモールド樹脂(50)による封止を行った後に、リードフレーム(30)から支持部(33)をカットして、センサチップ(20)の他端(24)側から支持部(33)を除去することを特徴としている。
【0012】
それによれば、モールド樹脂(50)による封止前において、一端(23)側にて回路チップ(10)と接続部材(26)を介して電気的に接続されているセンサチップ(20)を、当該センサチップ(20)の他端(24)側にて支持部(33)にて受けて支持しているから、センサチップ(20)をぐらつかせることなく、ワークの取り扱いが行える。
【0013】
よって、本発明によれば、センサチップ(20)の一端(23)側をモールド樹脂(50)で封止してモールド樹脂(50)で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法において、モールド樹脂(50)による封止前におけるセンサチップ(20)のぐらつきを防止して、工程中のワークの取り扱い性に優れた製造方法を実現することができる。
【0014】
ここで、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載のモールドパッケージの製造方法において、第3の工程では、センサチップ(20)の一端(23)側のみをモールド樹脂(50)で封止するようにしてもよい。
【0015】
さらに、請求項3に記載の発明のように、請求項2に記載のモールドパッケージの製造方法においては、第3の工程の前に、センサチップ(20)における一端(23)側と他端(24)側の間の部位に、第3の工程にてモールド樹脂(50)がセンサチップ(20)の他端(24)側にはみ出すのをせき止める樹脂止め(70)を設けてもよい。
【0016】
それによれば、第3の工程において、モールド樹脂(50)がセンサチップ(20)の一端(23)側からセンサチップ(20)の他端(24)側にはみ出して付着するのを防止できるから、好ましい。
【0017】
また、請求項1に記載のモールドパッケージの製造方法においては、請求項4に記載の発明のように、第3の工程では、センサチップ(20)のうち支持部(33)で支持されている側とは反対側の面(21)については、センサチップ(20)の一端(23)から他端(24)までの全体をモールド樹脂(50)で封止するようにし、支持部(33)を除去した後、センサチップ(20)のうち支持部(33)で支持されている側とは反対側の面(21)について、センサチップ(20)の他端(24)側を封止しているモールド樹脂(50)を除去することにより、センサチップ(20)の他端(24)側をモールド樹脂(50)より突出させた状態とするようにしてもよい。
【0018】
この場合、上記請求項2の製造方法に比べて、モールド樹脂(50)による封止後から支持部(33)を除去する前までにおいて、センサチップ(20)が、より安定して固定される。
【0019】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法において、第2の工程では、センサチップ(20)は、接続部材(26)以外は支持部(33)のみと接触して支持部(33)のみで支持されるようにすることにより、第3の工程の後では、モールド樹脂(50)のみでセンサチップ(20)の一端(23)側が支持される状態とすることを特徴とする。
【0020】
それによれば、支持部(33)による支持の効果が発揮されることで、モールド樹脂(50)による封止前において、支持部(33)以外では、センサチップ(20)の一端(23)側を特に支持する構成を採用することなく、完成後は、モールド樹脂(50)のみでセンサチップ(20)の一端(23)側を支持する構成を実現できる。
【0021】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法においては、モールド樹脂(50)による封止前において、センサチップ(20)の支持をより安定化させるために、第2の工程では、センサチップ(20)の一端(23)側を、接着材(61)を介してアイランド部(31)に接着されて支持されるようにしてもよい。
【0022】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法において、第2の工程では、支持部(33)とセンサチップ(20)の他端(24)側とを、粘着性のフィルム(34)を介して貼り付けることを特徴とする。
【0023】
それによれば、支持部(33)とセンサチップ(20)の他端(24)側とをフィルム(34)によって隙間なく密着させることができ、これら両者の相対的な位置ずれを防止できる。
【0024】
また、請求項8に記載の発明のように、接続部材はボンディングワイヤ(40)であるものにできる。
【0025】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施形態に係るモールドパッケージS1の概略断面図である。
【図2】回路チップおよびセンサチップが取り付けられたリードフレームの概略平面図である。
【図3】第1実施形態に係る製造方法における第1の工程および第2の工程について、ワークを断面的に示す工程図である。
【図4】回路チップおよびセンサチップが取り付けられたリードフレームをモールド樹脂成形用の金型に設置した状態を示す概略断面図である。
【図5】第1実施形態に係る製造方法における第3の工程について、ワークを断面的に示す工程図である。
【図6】第1実施形態における他の例としての製造方法を示す工程図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係るモールドパッケージの製造方法を示す工程図である。
【図8】図7に続くモールドパッケージの製造方法を示す工程図である。
【図9】図7(c)中のセンサチップおよび支持部のA矢視側面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係るモールドパッケージの製造方法の要部工程を示す工程図である。
【図11】本発明の第4実施形態に係るモールドパッケージの概略断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態に係るモールドパッケージの概略断面図であり、(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【図13】本発明の第6実施形態に係るモールドパッケージの製造方法の要部工程を示す工程図である。
【図14】本発明の他の実施形態に係るモールドパッケージの概略断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態に係るモールドパッケージの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0028】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るモールドパッケージS1の概略断面構成を示す図である。
【0029】
本実施形態のモールドパッケージS1は、大きくは、回路チップ10と、センサチップ20と、回路チップ10を搭載するアイランド部31を有するリードフレーム30と、これら両チップ10、20を電気的に接続する接続部材としてのボンディングワイヤ40と、これらを封止するモールド樹脂50とを備えて構成されている。
【0030】
回路チップ10は、一般的なICチップなどであり、シリコン半導体などを用いて一般的な半導体プロセスにより形成されたものである。この回路チップ10は、センサチップ20と電気的に接続されてセンサチップ20の制御等を行うものである。
【0031】
センサチップ20は、一方の板面を一面21、他方の板面を他面22とする板状を成すものであり、典型的には図1の左右方向を長手方向とする長方形板状を成すものである。センサチップ20は、長手方向の一端23側を回路チップ10側に位置させ、反対側の他端24側を回路チップ10とは反対側に位置させた状態で配置されている。
【0032】
ここで、センサチップ20は、モールド樹脂50より突出する他端24側にセンシング部25を備えたものである。このセンシング部25は、たとえばたとえば圧力検出や流量検出を行う薄肉部としてのメンブレンや、加速度や角速度検出を行う梁構造体などである。ここでは、センシング部25は、センサチップ20の一面21側に設けられている。
【0033】
また、センサチップ20の一面21のうちセンサチップ20の一端23側には、電気接続部としてのパッド26が設けられている。このパッド26は蒸着やスパッタにより形成されたアルミなどにより構成されている。このようなセンサチップ20も、シリコン半導体などを用いて一般的な半導体プロセスにより形成される。
【0034】
リードフレーム30は、回路チップ10を搭載して支持するアイランド部31と、外部との電気的接続を行う端子としてのリード部32とを備えている。このリードフレーム30は、一般的なものと同様、Cuや42アロイなどの導電性に優れた金属よりなるもので、エッチングやプレスなどにより形成されたものである。
【0035】
アイランド部31は、回路チップ10よりも一回り大きい板状をなし、回路チップ10は導電性あるいは電気絶縁性の接着剤60を介して、アイランド部31上に接着されて固定されている。そして、回路チップ10とリード部32とは、金やアルミなどよりなるボンディングワイヤ41により結線され電気的に接続されている。
【0036】
また、回路チップ10とセンサチップ20の一端23側のパッド26とは、金やアルミなどよりなる接続部材としてのボンディングワイヤ40を介して結線され電気的に接続されている。これにより、センサチップ20、回路チップ10、リード部32は、各ボンディングワイヤ40、41を介して互いに電気的に接続されている。
【0037】
そして、これら各チップ10、20、リードフレーム30、ボンディングワイヤ40、41は、モールド樹脂50により封止されている。このモールド樹脂50は、一般的なエポキシ樹脂などよりなるものであり、金型を用いたトランスファーモールド法により成形されたものである。
【0038】
ここで、センサチップ20の他端24側は、モールド樹脂50より突出して露出している。これにより、センシング部25における精度のよい検出が可能とされている。また、リード部32の一部がモールド樹脂50より突出して露出することで、外部との電気的接続が可能とされている。
【0039】
また、ここでは、センサチップ20の他端24側は、従来のようにアイランド部31に接触して支持されたものではなく、アイランド部31とは離れており、実質的にモールド樹脂50のみにより支持されている。
【0040】
次に、本モールドパッケージS1の製造方法について、図2〜図5を参照して述べる。図2は、上記両チップ10、20が取り付けられたリードフレーム30の概略平面図である。図3は、本製造方法における第1の工程および第2の工程について、ワークを断面的に示す工程図である。
【0041】
また、図4は、上記両チップ10、20が取り付けられたリードフレーム30をモールド樹脂成形用の金型100に設置した状態を示す概略断面図である。また、図5は、本製造方法における第3の工程について、ワークを断面的に示す工程図であり、図5では、金型100は省略してある。
【0042】
まず、本製造方法の第1の工程では、図2、図3(a)に示されるように、回路チップ10と、一端23側に回路チップ10と電気的に接続される電気接続部としてのパッド26を有するとともに他端24側にセンシング部25を有するセンサチップ20と、回路チップ10を搭載するアイランド部31およびリード部32を有するリードフレーム30と、を用意する。
【0043】
ここで、この第1の工程では、リードフレーム30として、センサチップ20の他端24側を支持する支持部33を有するものを用意する。この支持部33は、センサチップ20の他端24側が設けられるべき位置に配置され、センサチップ20の他端24側においてセンサチップ20の他面22を受けて支持するものである。
【0044】
ここでは、支持部33におけるセンサチップ20の支持面には、粘着性のフィルム34が貼り付けられている。このフィルム34は、粘着性を有するもので、ポリイミド樹脂や、各種の発泡樹脂、あるいはUV硬化性樹脂などを成形したものよりなる。
【0045】
そして、センサチップ20の搭載時には、支持部33とセンサチップ20の他面22におけるセンサチップ20の他端24側とを、粘着性のフィルム34を介して貼り付けるようにしている。
【0046】
ここで、図2に示されるように、リードフレーム30においては、これらアイランド部31、リード部32、支持部33は、これらの外側を取り囲むように位置する枠状のフレーム部35に対してタイバー36により連結され、一体化されている。また、図2においては、最終的に形成されるモールド樹脂50の外形を一点鎖線にて示してある。モールド樹脂50の封止後、このモールド樹脂50の外側に位置するタイバー36が適宜カットされるようになっている。
【0047】
次に、第2の工程では、図2および図3(b)、(c)に示されるように、アイランド部31上に回路チップ10を搭載するとともに、センサチップ20の一端23側を回路チップ10側に位置させてパッド26と回路チップ10とをボンディングワイヤ40を介して電気的に接続する。
【0048】
このとき、センサチップ20の他端24側を支持部33で受けて支持するが、センサチップ20は、接続部材であるボンディングワイヤ40以外は、フィルム34を介して支持部33のみと接触して支持部33のみで支持される。
【0049】
具体的には、まず、図3(b)に示されるように、接着剤60を介してアイランド部31上に回路チップ10を搭載し、固定する。一方で、センサチップ20の他端24側にてセンサチップ20の他面22を、フィルム34を介して支持部33に貼り付けて、支持部33に支持させる。
【0050】
次に、図3(c)に示されるように、回路チップ10とリード部32との間、および、回路チップ10とセンサチップ20のパッド26との間にて、ワイヤボンディングを行い、これらの間をボンディングワイヤ40、41で電気的に接続する。ここまでが、第2の工程である。
【0051】
次に、第3の工程では、図4、図5に示されるように、アイランド部31、回路チップ10、ボンディングワイヤ40、41およびセンサチップ20の一端23側をモールド樹脂30で封止するとともに、センサチップ20の他端24側をモールド樹脂50より突出させる。
【0052】
まず、図4に示されるように、図2に示されるワークをモールド樹脂30成形用の金型100に設置する。この金型100は、この種の一般的な金型と同様のものであり、たとえば上型と下型とを合致させてなるものである。
【0053】
ここでは、モールド樹脂50の外形に対応したキャビティ101を有し、このキャビティ101の外側では、リードフレーム30におけるフレーム部35、支持部33およびリード部32の一部、さらに、センサチップ20の他端24側が金型100に押さえ付けられて金型100に密着している。
【0054】
そして、図5(a)に示されるように、支持部33によるセンサチップ20の他端24側の支持を維持した状態にてキャビティ101に溶融したモールド樹脂50を注入し、充填することにより、モールド樹脂50による封止を行う。
【0055】
このとき、支持部33およびセンサチップ20の他端24側は金型100に密着して被覆されているため、第3の工程では、センサチップ20のうち支持部33と接触していないセンサチップ20の一端23側のみがモールド樹脂50で封止される。
【0056】
この後、第3の工程では、図5(b)、(c)に示されるように、リードフレーム30から支持部33をカットして、センサチップ20の他端24側から支持部33を除去する。具体的には、上記リードフレーム30におけるタイバー36をカットして、アイランド部31およびリード部32を残して、フレーム部35とともに支持部33およびフィルム34を除去する。
【0057】
ここで、支持部33は、フィルム34をセンサチップ20の他面22から剥がすことにより除去される。フィルム34とセンサチップ20との粘着力は剥離可能な程度のものである。
【0058】
さらに言えば、たとえば、フィルム34が上記した発泡樹脂の場合は、発泡による孔によって接触面積が小さくなって剥離しやすくなり、また、上記したUV硬化性樹脂の場合はUV照射による粘着力低下を行うようにすれば、フィルム34をセンサチップ20の他端24側から容易に剥がすことができる。
【0059】
ここまでが、第3の工程であり、これにより、本実施形態では、第3の工程の後では、モールド樹脂50のみでセンサチップ20の一端23側が支持され、センサチップ20の他端24側がモールド樹脂50より突出した状態となる。こうして、本モールドパッケージS1ができあがる。
【0060】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、モールド樹脂50による封止前において、回路チップ10と接続部材26を介して電気的に接続されているだけのセンサチップ20を、他端24側にて支持部33にて受けて支持しているから、センサチップ20をぐらつかせることなく、ワークの取り扱いが行える。
【0061】
よって、本実施形態によれば、センサチップ20の一端23側をモールド樹脂50で封止してモールド樹脂50で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法において、モールド樹脂50による封止前におけるセンサチップ20のぐらつきを防止して、工程中のワークの取り扱い性に優れた製造方法を実現することができる。
【0062】
また、本実施形態の製造方法では、第2の工程にて、支持部33とセンサチップ20の他端24側とを、粘着性のフィルム34を介して貼り付けるようにしているため、支持部33とセンサチップ20の他端24側とをフィルム34によって隙間なく密着させることができ、これら両者20、33の相対的な位置ずれを防止できる。
【0063】
また、本実施形態の製造方法における第2の工程では、センサチップ20は、ボンディングワイヤ26以外は支持部33のみと接触して支持部33のみで支持されるようにすることにより、第3の工程の後では、モールド樹脂50のみでセンサチップ20の一端23側が支持される状態としている。
【0064】
つまり、本実施形態によれば、支持部33による支持の効果が発揮されることで、モールド樹脂50による封止前において、支持部33以外では、センサチップ20の一端23側を特に支持する構成を採用することなく、完成後は、モールド樹脂50のみでセンサチップ20の一端23側を支持する構成を実現できる。
【0065】
ここで、図6は、本実施形態における他の例としての製造方法を示す工程図であり、当該他の例における上記両チップ10、20が取り付けられたリードフレーム30をモールド樹脂成形用の金型100に設置した状態を示す概略断面図である。
【0066】
この図6に示されるように、第3の工程において、ワークを金型100に設置するときには、当該ワークと金型100との接触する部位にて、センサチップ20と金型100との間に封止フィルム102介在させてもよい。この封止フィルム102は、ポリイミドやアクリル樹脂などの粘着性のものである。
【0067】
この封止フィルム102は、金型100のうちモールドパッケージS1を構成する要素となるワークに接触する部位、すなわち、金型100のうちセンサチップ20、支持部33、リード部32と接触する部位に貼り付け、その後、この封止フィルム102を介して当該ワークを設置すればよい。
【0068】
なお、ここでは、それ以外にも、金型100のキャビティ101の内面にも封止フィルム102が貼り付けられているが、金型100のうちワークと接触しない部位には、封止フィルム102は、設けなくてもよい。
【0069】
このように、封止フィルム102を設けて、第3の工程でモールド樹脂50による封止を行えば、ワークのうち金型100と接触して金型100で被覆される部位が、封止フィルム102に密着して確実に被覆されるため、モールド樹脂50が付着することが防止される。
【0070】
(第2実施形態)
図7は、本発明の第2実施形態に係るモールドパッケージS2の製造方法を示す工程図であり、図8は、図7に続くモールドパッケージS2の製造方法を示す工程図である。これら、図7、図8では、ワークを概略断面的に示している。ここでは、第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0071】
図7に示されるように、本実施形態では、第2の工程において、センサチップ20における一端23側と他端24側の間の部位に、モールド樹脂50のはみ出し防止用の樹脂止め70を設けている。
【0072】
この樹脂止め70は、第3の工程において、センサチップ20の一端23側を封止するモールド樹脂50が、当該モールド樹脂50より突出するセンサチップ20の他端24側にはみ出して付着するのを防止するためのものである。
【0073】
ここで、図9は、図7(c)中の矢印A方向からセンサチップ20および支持部33を視たときの側面図である。具体的に、樹脂止め70は、センサチップ20の一面21および側面上に突出する壁形状のものとして設けられる。この樹脂止め70は、エポキシ樹脂などよりなり、塗布および硬化などの一般的な手法で形成される。
【0074】
こうして、本実施形態では、第3の工程の前に、予めセンサチップ20に樹脂止め70を形成しておくことにより、第3の工程において、モールド樹脂50がセンサチップ20の一端23側からセンサチップ20の他端24側にはみ出して付着するのを防止できる。なお、この樹脂止めは、第3の工程前に行えばよく、たとえば、リードフレーム30に組み付ける前のセンサチップ20に対して設けるようにしてもよい。
【0075】
(第3実施形態)
図10は、本発明の第3実施形態に係るモールドパッケージS3の製造方法の要部工程を示す工程図であり、本製造方法における第3の工程を示している。ここでは、第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0076】
上記第1実施形態の第3工程では、センサチップ20の一端23側のみをモールド樹脂50で封止するものであったが、図10(a)に示されるように、本実施形態の第3の工程においては、さらに、センサチップ20のうち支持部33で支持されている他面22側とは反対側の一面21について、センサチップ20の一端23から他端24までの全体をモールド樹脂50で封止するようにする。
【0077】
この封止形態は、上記金型100におけるキャビティ101の形状を一部変更することにより容易に実現可能であることは言うまでもない。そして、本第3の工程においても、樹脂封止後には、図10(b)に示されるように、上記同様、リードフレーム30から支持部33をカットして、フィルム34とともにセンサチップ20の他端24側から支持部33を除去する。
【0078】
さらに、本実施形態の第3の工程では、図10(c)に示されるように、支持部33を除去した後、センサチップ20の一面21側について、モールド樹脂50のうちセンサチップ20の他端24側を封止している部分を除去する。この除去の方法としては、たとえば、レーザ焼却、エッチング、研磨などが適用される。
【0079】
こうして、第3の工程では、モールド樹脂50による封止後に、さらにモールド樹脂50の一部除去を行うことにより、センサチップ20の他端24側をモールド樹脂50より突出させた状態とする。これにより、本実施形態においても、上記第1実施形態と同様のモールドパッケージS3ができあがる。
【0080】
ところで、本実施形態の製造方法によれば、上記第1実施形態に比べてモールド樹脂50によるセンサチップ20の封止面積が大きいから、モールド樹脂50による封止後から支持部33を除去する前までにおいて、センサチップ20が、より安定して固定される。そのため、センサチップ20から支持部33を剥離するときなどに、センサチップ20の固定が安定しているから、当該剥離が容易となる。
【0081】
(第4実施形態)
図11は、本発明の第4実施形態に係るモールドパッケージS4の概略断面構成を示す図である。
【0082】
上記第1実施形態では、第2の工程にて、センサチップ20を、ボンディングワイヤ26以外は支持部33のみと接触して支持部33のみで支持することにより、第3の工程の後では、モールド樹脂50のみでセンサチップ20の一端23側が支持される状態としていた。
【0083】
それに対して、本実施形態では、第2の工程において、ボンディングワイヤ26以外にも、更にセンサチップ20の一端23側を、接着材61を介してアイランド部31に接着されて支持するようにしたものである。ここで、接着材61としては、一般的な樹脂接着剤やはんだなどを採用できる。
【0084】
これにより、図11に示されるように、モールド樹脂50だけでなく、アイランド部31によっても、センサチップ20の一端23側が支持される状態としている。そして、この本実施形態の製造方法によれば、モールド樹脂50による封止前において、センサチップ20の支持をより安定化させることが可能となる。
【0085】
なお、本実施形態の製造方法は、上記第1実施形態において、センサチップ20の一端23側をアイランド部31に支持させたものであるから、上記第2実施形態や第3実施形態とも組み合わせが可能であることはもちろんである。
【0086】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係るモールドパッケージS5の概略断面構成を示す図であり、図12において(a)は第1の例、(b)は第2の例を示す。
【0087】
なお、図12(a)、(b)においては、製造工程中にてセンサチップ20の他端24側の部位を支持するリードフレーム30の支持部33およびフィルム34を破線で示すことにより、この状態で製造工程時に、支持部33による支持が行われていることを示している。
【0088】
上記第1実施形態においては、センサチップ20の一端23側に設けられているパッド26と回路チップ10とを電気的に接続する接続部材は、ボンディングワイヤ40であったが、図12に示されるように、接続部材としては、はんだや金、Cuなどよりなるバンプ42であってもよい。
【0089】
本実施形態の場合、センサチップ20において、センシング部25およびパッド26は、支持部33に支持される他面22側に設けられている。そして、第1の例(図12(a)参照)では、センサチップ20の一端23側におけるセンサチップ20の他面22側をアイランド部31に対向させ、パッド26とこれに対向するアイランド部31とを、バンプ42を介して電気的に接続している。これにより、センサチップ20は、バンプ42、アイランド部31を介して回路チップ10と電気的に接続される。
【0090】
また、第2の例(図12(b)参照)では、センサチップ20の一端23側におけるセンサチップ20の他面22側を、回路チップ10に対向させ、パッド26とこれに対向する回路チップ10とを、バンプ42を介して電気的に接続している。
【0091】
これら本実施形態のモールドパッケージS5は、上記第2の工程において、当該バンプ42を介したセンサチップ20の組み付けを行い、その後は、図12に示されるような支持部33による支持を維持した状態で、上記同様の第3の工程を行うことにより、製造されるものである。
【0092】
それゆえ、本実施形態においても、センサチップ20の一端23側をモールド樹脂50で封止してモールド樹脂50で片持ち支持するようにしたモールドパッケージの製造方法において、モールド樹脂50による封止前におけるセンサチップ20のぐらつきを防止して、工程中のワークの取り扱い性に優れた製造方法を実現することができる。
【0093】
また、本実施形態は、上記第1実施形態における接続部材をボンディングワイヤ40からバンプ42に置き換えたものであるから、上記第2〜第4の各実施形態と組み合わせが可能であることはもちろんである。
【0094】
(第6実施形態)
図13は、本発明の第6実施形態に係るモールドパッケージの製造方法の要部工程を示す工程図であり、本製造方法における第3の工程を示している。図13に示されるように、支持部33は、センサチップ20側に近づくようにディプレス加工されたものであってもよい。
【0095】
この場合、ディプレス加工による支持部33の高さを調整することで、回路チップ10とセンサチップ20との高さ方向(図13中の上下方向)における相対的な位置を合わせることが容易となる。たとえば、上記図12(b)に示されるように、センサチップ20が回路チップ10よりもかなり高い位置にある場合などには、特に有効である。
【0096】
なお、図13では、フィルム34は省略してあるが、支持部33は上記同様、フィルム34を介して支持を行うものであってもよい。
【0097】
(他の実施形態)
図14、図15は、本発明の他の実施形態に係るモールドパッケージの概略断面構成を示す図である。
【0098】
図14に示されるように、第3の工程では、金型100のキャビティ101形状を健康することにより、センサチップ20の一端23側のうちセンサチップ20の一面21側のみモールド樹脂50で封止し、他面22側は露出させる形態としてもよい。この場合、センサチップ20の一面21側は、ボンディングワイヤ40の接続部位であるからモールド樹脂50による封止が必要となる。
【0099】
また、図15に示されるように、予め用意するセンサチップ20として、センサチップ20の一端23側の表面に、モールド樹脂50と噛み合って密着性を向上させるための溝27が設けられたものを用いてもよい。このような溝27は、エッチングや切削などにより形成される。
【0100】
また、上記各実施形態の製造方法では、第2の工程にて、支持部33とセンサチップ20の他端24側とを、粘着性のフィルム34を介して貼り付けるようにしていたが、可能ならば、このフィルム34を省略し、支持部33とセンサチップ20の他端24側とを直接接触させて、支持部34による支持を行うようにしてもよい。
【0101】
また、センサチップ20の電気接続部としては、上記パッド26以外にも、たとえば金属板などよりなる端子をセンサチップ20に貼り付けたものであってもよい。また、接続部材としては、上記したボンディングワイヤ40やバンプ42以外にも、たとえば導電性接着剤などで接続される板状のリード部材などであってもよい。
【0102】
また、アイランド部31は、回路チップ10を搭載するものであるが、それ以外にも、受動素子などの各種の電子部品が搭載され、これらもモールド樹脂50で封止された形態としてもよい。
【符号の説明】
【0103】
10 回路チップ
20 センサチップ
21 センサチップの一面
22 センサチップの他面
23 センサチップの一端
24 センサチップの他端
25 センシング部
26 電気接続部としてのパッド
30 リードフレーム
31 アイランド部
32 リード部
33 支持部
34 粘着性のフィルム
40 接続部材としてのボンディングワイヤ
41 接続部材としてのバンプ
50 モールド樹脂
61 接着材
70 樹脂止め

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路チップ(10)と、一端(23)側に前記回路チップ(10)と電気的に接続される電気接続部(26)を有するとともに他端(24)側にセンシング部(25)を有するセンサチップ(20)と、前記回路チップ(10)を搭載するアイランド部(31)を有するリードフレーム(30)と、を用意する第1の工程と、
前記アイランド部(31)上に前記回路チップ(10)を搭載するとともに、前記センサチップ(20)の一端(23)側を前記回路チップ(10)側に位置させて前記電気接続部(26)と前記回路チップ(10)とを接続部材(40、42)を介して電気的に接続する第2の工程と、
その後、前記アイランド部(31)、前記回路チップ(10)、前記接続部材(40、42)および前記センサチップ(20)の一端(23)側をモールド樹脂(50)で封止するとともに、前記センサチップ(20)の他端(24)側を前記モールド樹脂(50)より突出させる第3の工程と、を含むモールドパッケージの製造方法において、
前記第1の工程では、前記リードフレーム(30)として、前記センサチップ(20)の他端(24)側を支持する支持部(33)を有するものを用意し、
前記第2の工程では、前記センサチップ(20)の他端(23)側を前記支持部(33)で受けて支持するようにし、
前記第3の工程では、前記支持部(33)による支持を維持した状態にて前記モールド樹脂(50)による封止を行った後に、前記リードフレーム(30)から前記支持部(33)をカットして、前記センサチップ(20)の他端(24)側から前記支持部(33)を除去することを特徴とするモールドパッケージの製造方法。
【請求項2】
前記第3の工程では、前記センサチップ(20)の一端(23)側のみを前記モールド樹脂(50)で封止することを特徴とする請求項1に記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項3】
前記第3の工程の前に、前記センサチップ(20)における一端(23)側と他端(24)側の間の部位に、前記第3の工程にて前記モールド樹脂(50)が前記センサチップ(20)の他端(24)側にはみ出すのをせき止める樹脂止め(70)を設けることを特徴とする請求項2に記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項4】
前記第3の工程では、前記センサチップ(20)のうち前記支持部(33)で支持されている側とは反対側の面(21)については、前記センサチップ(20)の一端(23)から他端(24)までの全体を前記モールド樹脂(50)で封止するようにし、
前記支持部(33)を除去した後、前記センサチップ(20)のうち前記支持部(33)で支持されている側とは反対側の面(21)について、前記センサチップ(20)の他端(24)側を封止している前記モールド樹脂(50)を除去することにより、前記センサチップ(20)の他端(24)側を前記モールド樹脂(50)より突出させた状態とすることを特徴とする請求項1に記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項5】
前記第2の工程では、前記センサチップ(20)は、前記接続部材(26)以外は前記支持部(33)のみと接触して前記支持部(33)のみで支持されるようにすることにより、
前記第3の工程の後では、前記モールド樹脂(50)のみで前記センサチップ(20)の一端(23)側が支持される状態とすることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項6】
前記第2の工程では、前記センサチップ(20)の一端(23)側を、接着材(61)を介して前記アイランド部(31)に接着されて支持されるようにしたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程では、前記支持部(33)と前記センサチップ(20)の他端(24)側とを、粘着性のフィルム(34)を介して貼り付けることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法。
【請求項8】
前記接続部材はボンディングワイヤ(40)であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載のモールドパッケージの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−16686(P2013−16686A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149058(P2011−149058)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】