説明

内燃機関の吸入空気量調整装置

【課題】車速が所望する所定車速になったとき、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたときに、大きなトルクの段差による車速のハンチングを確実に防止することができる内燃機関の吸入空気量調整装置を提供する。
【解決手段】車速が法規制最高速度に到達したとき、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、SCVによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブを開位置または閉位置に固定するとともに、ACISの可変吸気システム制御バルブによる開閉切り換えを禁止するようにサージタンク内の複数の室を連通状態または遮断状態に固定し、この状態で、車速を法規制最高速度未満まで減速、または車速を一定速度に保つように、電子制御スロットルバルブによるスロットル開度の調整を実行させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットル開度調整手段によりスロットルバルブの開度を調整して吸入空気量を調整するようにした内燃機関の吸入空気量調整装置に関し、特に、車速が所望する所定車速になったときに吸気特性変更手段により内燃機関の吸気特性を変更した際の大きなトルクの段差による車速のハンチングを確実に防止する対策に係わる。
【背景技術】
【0002】
近年より、内燃機関においては、運転者によるアクセルペダルの操作量とは独立してスロットル開度を調整可能とする、いわゆるスロットル開度調整手段(例えば、電子制御スロットルバルブ機構)と、このスロットル開度調整手段によるスロットルバルブの開度とは異なるパラメータを調整することにより内燃機関の吸気特性を変更可能とする、いわゆる吸気特性変更手段(例えば、気筒内のスワール流強度をスワールコントロールバルブにより調整するスワールコントロールバルブシステムなど)とを備え、上記スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量を調整するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−293454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記従来のものでは、車速が所望する所定車速となったとき、つまり法規制最高速度(現時点での日本国内での法規制最高速度は180km/h)に車速が到達したり、クルーズコントロールシステムによって所望する一定速度に車速が設定されたときも、スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量が調整されることになる。
【0004】
その場合、車速が所望する所定車速(法規制最高速度、またはクルーズコントロールシステムによって設定された一定速度の車速)になったとき、スロットル開度調整手段との協調制御によって吸気特性変更手段による吸気特性が変更されると、大きなトルクの段差が発生し、これによって車速がハンチングしてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車速が所望する所定車速になったとき、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたときに、大きなトルクの段差による車速のハンチングを確実に防止することができる内燃機関の吸入空気量調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明では、内燃機関の吸気通路においてスロットル開度を調整するスロットル開度調整手段と、このスロットル開度調整手段によるスロットル開度とは異なるパラメータを調整することにより内燃機関の吸気特性を変更する吸気特性変更手段とを備え、上記スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量を調整するようにした内燃機関の吸入空気量調整装置を前提とする。そして、車速が法規制最高速度に到達したとき、上記吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、車速を法規制最高速度未満まで減速させるようにスロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみを実行させている。
【0007】
この特定事項により、車速が法規制最高速度に到達したとき、吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、スロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみが実行されるので、車速が法規制最高速度に到達すれば、吸気特性変更手段によって内燃機関の吸気特性が変更されることがなくなり、この吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更によって大きなトルクの段差が発生することが回避され、法規制最高速度到達時の車速のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【0008】
特に、吸気特性変更手段を特定するものとして、以下の構成が掲げられる。
【0009】
つまり、吸気特性変更手段として、気筒内のスワール流強度をスワールコントロールバルブにより調整するスワールコントロールバルブシステムを適用し、車速が法規制最高速度に到達したとき、上記スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブを固定している。
【0010】
この特定事項により、車速が法規制最高速度に到達したとき、スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブが固定されるので、車速が法規制最高速度に到達すれば、気筒内のスワール流強度が一定に保たれることになり、このスワールコントロールバルブシステムによる内燃機関の吸気特性の変更に伴って大きなトルクの段差が発生することが回避され、法規制最高速度到達時の車速のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【0011】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の解決手段としては、内燃機関の吸気通路においてスロットル開度を調整するスロットル開度調整手段と、このスロットル開度調整手段によるスロットル開度とは異なるパラメータを調整することにより内燃機関の吸気特性を変更する吸気特性変更手段とを備え、上記スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量を調整するようにした内燃機関の吸入空気量調整装置を同様に前提とし、所望する一定速度に車速を設定するクルーズコントロールシステムを設けている。そして、上記クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、車速が上記一定速度となるようにスロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみを実行させている。
【0012】
この特定事項により、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、スロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみが実行されるので、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されると、吸気特性変更手段によって内燃機関の吸気特性が変更されることがなくなり、この吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更によって大きなトルクの段差が発生することが回避され、クルーズコントロールシステム作動時の車速のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【0013】
特に、吸気特性変更手段を特定するものとして、以下の構成が掲げられる。
【0014】
つまり、吸気特性変更手段として、気筒内のスワール流強度をスワールコントロールバルブにより調整するスワールコントロールバルブシステムを適用し、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブを固定している。
【0015】
この特定事項により、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブが固定されるので、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されれば、気筒内のスワール流強度が一定に保たれることになり、このスワールコントロールバルブシステムによる内燃機関の吸気特性の変更に伴って大きなトルクの段差が発生することが回避され、クルーズコントロールシステム作動時の車速のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【0016】
更に、吸気特性変更手段として、スワールコントロールバルブシステムに加えて、サージタンクの内部が各気筒の少なくとも1つと連通するように区画された複数の室をそれぞれ連通状態または遮断状態に切り換える切替手段を有する可変吸気機構を適用し、車速が法規制最高速度に到達したとき、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記可変吸気機構の切替手段による切り換えを禁止するようにサージタンク内部の複数の室を連通状態または遮断状態に固定している場合には、車速が法規制最高速度に到達したり、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されれば、サージタンク内部の複数の室が連通状態または遮断状態に固定されることになり、この可変吸気機構の切替手段による切り換えに伴って大きなトルクの段差が発生することが回避され、法規制最高速度到達時またはクルーズコントロールシステム作動時の車速のハンチングを確実に防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
以上、要するに、車速が法規制最高速度に到達したとき、またはクルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、スロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみを実行することで、車速が法規制最高速度に到達したり、クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速を設定した際の内燃機関の吸気特性の変更による大きなトルクの段差の発生を回避し、法規制最高速度到達時またはクルーズコントロールシステム作動時の車速のハンチングを確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る内燃機関の吸入空気量調整装置の具体的な実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
図1は、本発明を適用する内燃機関のシステム概要を示す図式的断面図である。尚、本実施形態では、内燃機関1は、自動車などの車両に搭載される内燃機関であり、ガソリンを燃料とする4ストローク・サイクルの水冷式ガソリンエンジンが適用されている。
【0020】
図1において、内燃機関1の吸気系は、外気を取り込むためのエアダクトから吸入される空気が、エアフローメータ11、およびスロットルポジションセンサ12aを備えたスロットル開度調整手段としての電子制御スロットルバルブ12を経由して、吸気通路としての吸気管13からサージタンク14へ流れ、更に吸気ポート15を経由して、気筒10内の燃焼室16へ吸気されるように構成されている。吸気ポート15には、この吸気ポート15を開閉する吸気バルブ17が設けられている。
【0021】
サージタンク14は、吸気特性変更手段としての可変吸気システム(ACIS:Acoustic Control Induction System)2を備えている。このACIS2は、吸気脈動を防止する機能を有し、複数の室に分割されたサージタンク14内部の容量を連通状態または遮断状態となるように可変とすることで、広いエンジン回転の範囲で高い体積効率が得られるようになっている。そして、可変吸気システム2は、可変吸気システム制御バルブ開度センサ21を有する可変吸気システム制御バルブ22(切替手段)を備え、この可変吸気システム制御バルブ22を開閉させてサージタンク14内の複数の室を連通状態または遮断状態に切り換えることによって、有効に働く吸気管13の長さ(有効吸気管長)を変えることができるようにしている。具体的には、ACIS2は、低速運転では、低回転で体積効率を上げるように、可変吸気システム制御バルブ22を開けて有効吸気管の長さを長くしかつ断面積を小さくすることによって、共鳴過給効果が利用されるようにしている。一方、高速運転では、高回転で体積効率を上げるように、可変吸気システム制御バルブ22を閉じて有効吸気管の長さを短くしかつ断面積を大きくすることによって、慣性過給効果が利用されるようにしている。
【0022】
また、吸気ポート15内には、気筒10内のスワール流強度をスワールコントロールバルブ31により調整する吸気特性変更手段としてのスワールコントロールバルブシステム(SCV:Swirl Control Valve System)3が設けられている。このSCV3は、スワールコントロールバルブ31を開放することによって、燃料と空気を十分に混合するために横方向の渦流を生成するスワールポートとして吸気ポート15を機能させ、スワールコントロールバルブ31の開時に燃料の霧化や燃焼速度を向上させる一方、スワールコントロールバルブ31の閉時にリーン燃焼を促進させて燃費を改善させるようにしている。また、スワールコントロールバルブ31は、スワールコントロールバルブ開度センサ32を備えている。
【0023】
他方で、内燃機関1の排気系は、排気ガスが、燃焼室16から排気ポート18、排気管、排気浄化触媒およびマフラを経由して、大気中へ排気されるように構成されている。排気ポート18には、排気ポート18を開閉する排気バルブ19が設けられている。
【0024】
次に、内燃機関1の運転状態を制御するための電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)4の構成を図2に基づいて説明する。
【0025】
図2は、ECU4と、これに対して各種検出信号やパラメータを入力する各種センサと、ECU4により制御される各種バルブ、駆動機構等とを示す概念図である。
【0026】
この図2において、ECU4は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAMなどから構成された算術論理演算回路である。このECU4は、前述したエアフローメータ11、スロットルポジションセンサ12a、可変吸気システム制御バルブ開度センサ21、スワールコントロールバルブ開度センサ32およびアクセルポジションセンサ40に加え、内燃機関1に取り付けられたクランクポジションセンサ41、車速センサ42および水温センサなどの各種センサの出力信号(電気信号)の他、クルーズコントロールシステム44からの指令信号を、予め設定されたプログラムに対する入力パラメータとして、所定種類の各種制御信号を生成する。そして、該各種制御信号によって、スワールコントロールバルブ31の開度、可変吸気システム制御バルブ22の開度、電子制御スロットルバルブ12の開度およびその他のアクチュエータを制御する。
【0027】
次に、内燃機関1の吸入空気量を調整するためにECU4がどのように各種アクチュエータを制御するかの概要を図3に基づいて説明する。この図3では、ECU4が目標トルクを得るために、各種アクチュエータを協調制御する様子を示している。
【0028】
具体的には、ECU4は、スワールコントロールバルブ31と可変吸気システム制御バルブ22と電子制御スロットルバルブ12とを協調制御して、内燃機関1の吸入空気量を所望の目標吸入空気量に収束させる制御(以下、目標吸入空気量制御と称する)を実行する。
【0029】
目標吸入空気量制御では、ECU4は、先ず内燃機関1がアイドル運転状態にあるか否かを判別する。例えば、ECU4は、アクセル開度が全閉状態にあり且つ車速が零であれば、内燃機関1がアイドル運転状態にあると判定する。ここで、目標吸入空気量制御には、非アイドル時制御とアイドル時制御との二種類の制御がある。以下これらについて順に説明する。
【0030】
(非アイドル時制御)
目標吸入空気量制御では、ECU4は、先ずクランクポジションセンサ41がパルス信号を出力する時間的間隔に従って機関回転数を算出するとともに、アクセルポジションセンサ40の出力信号値(アクセル開度)を読み込む。
【0031】
続いて、ECU4は、機関回転数とアクセル開度をパラメータとして、内燃機関1の目標トルクを決定する。このような決定は、例えば、予め設定され且つECU4の内蔵メモリ等に格納された、アクセル開度と目標トルクとの関係を規定するテーブル又は所定関数を用いることで迅速に行える。
【0032】
続いて、ECU4は、内燃機関1の実際のトルクが目標トルクと一致するために必要な吸入空気量(目標吸入空気量)を決定する。その際、目標吸入空気量は、アクセル開度が大きく且つ機関回転数が高くなるほど増加するように設定される。
【0033】
続いて、ECU4は、目標吸入空気量をパラメータとして、スワールコントロールバルブ31の開度、可変吸気システム制御バルブ22の開度、電子制御スロットル弁12の開度とを決定する。
【0034】
続いて、ECU4は、上記の決定された値を、予め設定されたプログラムに対する入力パラメータとして所定種類の各種制御信号を生成し、これらによって、スワールコントロールバルブ31の開度、可変吸気システム制御バルブ22の開度および電子制御スロットル弁12の開度とを実際に稼動する。
【0035】
(アイドル時制御)
通常のアイドル制御では、ECU4は先ず、補機類の作動状態などから、アイドル時における目標機関回転数(NE)を決定する。そして、この決定した目標機関回転数(NE)をパラメータとして、吸入空気量を制御する。
【0036】
次に、本発明の特徴部分である車速が法規制最高速度(現時点での日本国内での法規制最高速度は180km/h)に到達したときのECU4による制御の流れを図4のフローチャートに基づいて説明する。
【0037】
まず、図4のフローチャートのステップST1において、車速センサ42からの出力信号に基づいて車速が法規制最高速度に達したか否かを判定する。このステップST1の判定が、車速が法規制最高速度に達したYESである場合には、ステップST2において、SCV3による気筒10内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブ31を開位置または閉位置に固定するとともに、ACIS2の可変吸気システム制御バルブ22による開閉切り換えを禁止するようにサージタンク14内の複数の室を連通状態または遮断状態に固定する。
【0038】
そして、ステップST3において、車速を法規制最高速度未満まで減速させるように電子制御スロットルバルブ12によるスロットル開度の調整を実行する。具体的には、エンジン回転数とドライバ(運転者)が操作するアクセル開度に応じた要求(目標)トルク等の運転状態を表すパラメータとに応じて決定された目標吸入空気量を得るために、例えば予め設定されたパラメータテーブルに基づいて或いは予め設定された所定関数に従って目標となる電子制御スロットルバルブ12のスロットル開度特性等に係る制御量を決定している。
【0039】
また、クルーズコントロールシステム44を作動させたときのECU4による制御の流れを図5のフローチャートに基づいて説明する。
【0040】
まず、図5のフローチャートのステップST11において、クルーズコントロールシステム44が作動したか否か、つまりクルーズコントロールシステム44からの指令信号(クルーズコントロールシステム44により所望する一定速度に設定された車速の指令信号)が入力されたか否かを判定する。このステップST11の判定が、クルーズコントロールシステム44が作動しているYESである場合には、ステップST12において、SCV3による気筒10内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブ31を開位置または閉位置に固定するとともに、ACIS2の可変吸気システム制御バルブ22による開閉切り換えを禁止するようにサージタンク14内の複数の室を連通状態または遮断状態に固定する。
【0041】
そして、ステップST13において、クルーズコントロールシステム44により設定された所望する速度に車速が保たれるように電子制御スロットルバルブ12によるスロットル開度の調整を実行する。
【0042】
したがって、上記実施形態では、車速が法規制最高速度(例えば180km/h)に到達したとき、SCV3による気筒10内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブ31が開位置または閉位置に固定されるとともに、ACIS2の可変吸気システム制御バルブ22による開閉切り換えを禁止するようにサージタンク14内の複数の室が連通状態または遮断状態に固定され、この状態で、車速を法規制最高速度未満まで減速させるように電子制御スロットルバルブ12によるスロットル開度の調整が実行されるので、車速が法規制最高速度に到達すれば、気筒10内のスワール流強度が一定に保たれて固定される上、有効に働く吸気管14の長さ(有効吸気管長)が固定されることになり、このSCV3およびACIS2による内燃機関1の吸気特性の変更に伴う大きなトルクの段差の発生が回避され、法規制最高速度到達時の車速のハンチングを確実に防止することができる。
【0043】
また、クルーズコントロールシステム44が作動して所望する一定速度に車速が設定されたとき、SCV3による気筒10内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブ31が開位置または閉位置に固定されるとともに、ACIS2の可変吸気システム制御バルブ22による開閉切り換えを禁止するようにサージタンク14内の複数の室が連通状態または遮断状態に固定され、この状態で、車速が一定速度に保たれるように電子制御スロットルバルブ12によるスロットル開度の調整が実行されるので、クルーズコントロールシステム44により所望する一定速度に車速が設定されれば、気筒10内のスワール流強度が一定に保たれて固定される上、有効に働く吸気管14の長さ(有効吸気管長)が固定されることになり、このSCV3およびACIS2による内燃機関1の吸気特性の変更に伴う大きなトルクの段差の発生が回避され、クルーズコントロールシステム44作動時の車速のハンチングも確実に防止することができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記実施形態では、吸気特性変更手段として、気筒10内のスワール流強度をスワールコントロールバルブ31により調整するSCV3に加えて、サージタンク14内の容量を可変とする可変吸気システム制御バルブ22を備えたACIS2を適用したが、SCVのみ、または縦方向の渦流を生成するタンブルポートとして機能する「タンブルコントロールバルブシステム(TCV:Tumble Control Valve System)が単独で、もしくはACISとを組み合わせた吸気特性変更手段が適用されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係る内燃機関のシステム概要を示す図式的断面図である。
【図2】内燃機関の運転状態を制御するためのECUと、これに対して各種検出信号やパラメータを入力する各種センサと、ECUにより制御される各種弁、駆動機構等とを示す概念図である。
【図3】内燃機関の電子制御ユニットが吸入空気量を調整する概要を示す概念図である。
【図4】車速が法規制最高速度に到達したときのECUによる制御の流れを示すフローチャート図である。
【図5】クルーズコントロールシステムを作動させたときのECUによる制御の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0046】
1 内燃機関
10 気筒
12 電子制御スロットル弁(スロットル開度調整手段)
13 吸気管(吸気通路)
14 サージタンク
16 燃焼室
2 可変吸気システム(吸気特性変更手段、可変吸気機構)
22 可変吸気システム制御バルブ(切替手段)
3 スワールコントロールバルブシステム(吸気特性変更手段)
31 スワールコントロールバルブ
44 クルーズコントロールシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路においてスロットル開度を調整するスロットル開度調整手段と、このスロットル開度調整手段によるスロットル開度とは異なるパラメータを調整することにより内燃機関の吸気特性を変更する吸気特性変更手段とを備え、上記スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量を調整するようにした内燃機関の吸入空気量調整装置であって、
車速が法規制最高速度に到達したとき、上記吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、車速を法規制最高速度未満まで減速させるようにスロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみが実行されていることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。
【請求項2】
上記請求項1に記載の内燃機関の吸入空気量調整装置において、
吸気特性変更手段としては、気筒内のスワール流強度をスワールコントロールバルブにより調整するスワールコントロールバルブシステムが適用されており、
車速が法規制最高速度に到達したとき、上記スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブが固定されることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。
【請求項3】
上記請求項2に記載の内燃機関の吸入空気量調整装置において、
吸気特性変更手段としては、スワールコントロールバルブシステムに加えて、サージタンクの内部が各気筒の少なくとも1つと連通するように区画された複数の室をそれぞれ連通状態または遮断状態に切り換える切替手段を有する可変吸気機構が適用されており、
車速が法規制最高速度に到達したとき、上記可変吸気機構の切替手段による切り換えを禁止するようにサージタンク内部の複数の室が連通状態または遮断状態に固定されることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。
【請求項4】
内燃機関の吸気通路においてスロットル開度を調整するスロットル開度調整手段と、このスロットル開度調整手段によるスロットル開度とは異なるパラメータを調整することにより内燃機関の吸気特性を変更する吸気特性変更手段とを備え、上記スロットル開度調整手段および吸気特性変更手段を協調制御することによって燃焼室内に供給される吸入空気量を調整するようにした内燃機関の吸入空気量調整装置であって、
所望する一定速度に車速を設定するクルーズコントロールシステムを備え、
上記クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記吸気特性変更手段による内燃機関の吸気特性の変更を禁止して内燃機関の吸気特性を固定した状態で、車速が上記一定速度となるようにスロットル開度調整手段によるスロットル開度の調整のみが実行されていることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。
【請求項5】
上記請求項4に記載の内燃機関の吸入空気量調整装置において、
吸気特性変更手段としては、気筒内のスワール流強度をスワールコントロールバルブにより調整するスワールコントロールバルブシステムが適用されており、
クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記スワールコントロールバルブシステムによる気筒内のスワール流強度を調整不能とするようにスワールコントロールバルブが固定されることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。
【請求項6】
上記請求項5に記載の内燃機関の吸入空気量調整装置において、
吸気特性変更手段としては、スワールコントロールバルブシステムに加えて、サージタンクの内部が各気筒の少なくとも1つと連通するように区画された複数の室をそれぞれ連通状態または遮断状態に切り換える切替手段を有する可変吸気機構が適用されており、
クルーズコントロールシステムにより所望する一定速度に車速が設定されたとき、上記可変吸気機構の切替手段による切り換えを禁止するようにサージタンク内部の複数の室が連通状態または遮断状態に固定されることを特徴とする内燃機関の吸入空気量調整装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−132199(P2007−132199A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−323462(P2005−323462)
【出願日】平成17年11月8日(2005.11.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】