説明

半導体トランジスタの製造方法

【課題】プロセスの自由度を高めつつ、活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成できる半導体トランジスタの製造方法を提供する。
【解決手段】GaN系の半導体からなる活性層上に、オーミック電極を形成する半導体トランジスタの製造方法であって、活性層3上に、タンタル窒化物からなる第1の層11と、第1の層11上に積層されたAlからなる第2の層12とを形成する工程と、第1及び第2の層11,12を、520℃以上、600℃以下の温度で熱処理することにより、活性層3とオーミックコンタクトをとるオーミック電極9s,9dを形成する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体トランジスタの製造方法に関し、更に詳しくは、GaN系半導体からなる活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成する半導体トランジスタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム系半導体トランジスタ(以下、GaN系半導体トランジスタ)としては、GaN系半導体からなる活性層上に、Ti/Alからなるオーミック電極を有するものが知られている(例えば、特許文献1)。しかし、このGaN系半導体トランジスタは、高温環境下で使用されると、Tiの融点が低いために、Ti上に積層されているAlが拡散するエレクトロマイグレーションが発生するという問題があった。つまり、Ti/Alからなるオーミック電極では、電極としての耐性が低く、信頼性を確保することが困難である。
【0003】
上記問題に対して、特許文献2,3には、Tiよりも融点の高いTaを用いたTa/Alからなるオーミック電極を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−359256号公報
【特許文献2】特開2006−165207号公報
【特許文献3】特開2007−273545号公報
【特許文献4】特許第4268099号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記Ti/Al、Ta/Al電極の何れにも、Ti及びTaが酸化され易いという問題がある。このため、シングルターゲットの成膜装置を用いて、Ti(Ta)とAlとを個別に成膜すると、Ti(Ta)が酸化して、抵抗が高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、上記Ti/Al、Ta/Al電極は、いわゆるマルチターゲットの成膜装置を用いて、Ti(Ta)とAlとを連続で成膜する必要がある。ところが、マルチターゲットの成膜装置では、斜め方向からターゲットをスパッタするので、ウェハが大口径の場合には、ウェアの面内での膜厚等の均一性が悪くなり、歩留まりが低くなる。
【0007】
特許文献4には、TaN上にMoxGa1−xを形成するオーミック電極が記載されている。しかし、このオーミック電極を形成する際には、700℃以上の熱処理が必要であり、GaN系半導体に対する熱による影響が懸念される。
【0008】
本発明は、プロセスの自由度を高めつつ、活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成できる半導体トランジスタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、GaN系の半導体からなる活性層上に、オーミック電極を形成する半導体トランジスタの製造方法であって、
前記活性層上に、タンタル窒化物からなる第1の層と、前記第1の層上に積層されたAlからなる第2の層とを形成する工程と、
前記第1及び第2の層を、520℃以上、600℃以下の温度で熱処理することにより、前記活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体トランジスタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の半導体トランジスタの製造方法では、プロセスの自由度を高めつつ、活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)及び(b)は、本発明の実施形態に係るGaN系半導体トランジスタの構成を示す断面図。
【図2】TaN/Alのオーミック特性とTaNの膜厚との関係を示す図。
【図3】TaN/Alのオーミック特性と熱処理での温度との関係を示す図。
【図4】(a)〜(c)は、本発明の実施形態に係るGaN系半導体トランジスタの製造工程を示す図。
【図5】(a)〜(c)は、図4に続いて、GaN系半導体トランジスタの製造工程を示す図。
【図6】(a)及び(b)は、他のオーミック電極の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る半導体トランジスタの構成を示す断面図である。半導体トランジスタ10は、GaN系半導体からなる活性層を有するGaN系半導体ドランジスタである。半導体トランジスタ10は、図1(a)に示すように、基板1上に形成されたバッファ層2と、バッファ層2上にIII族窒化物半導体を用いて形成されたp型の活性層(p−GaN)3と、活性層3上に形成されたシリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜6と、を有する。
【0013】
さらに、半導体トランジスタ10は、活性層3上に上記ゲート絶縁膜6を介して形成されたゲート電極7gと、ソース電極9s及びドレイン電極9dとを有する。ソース電極9s及びドレイン電極9dは、ゲート電極7gに対応して形成され、活性層3のn+型ソース領域5s及びn+型ドレイン領域5dとそれぞれオーミックコンタクトをとるオーミック電極である。
【0014】
ソース電極9s及びドレイン電極9dは、図1(b)に示すように、活性層3のn+型ソース領域5s及びn+型ドレイン領域5d上に形成された、タンタル窒化物(TaN)からなるTaN層(第1の層)11と、TaN層11上に積層されたAlからなるAl層(第2の層)12とを有する。
【0015】
本発明者らは、GaN系半導体トランジスタ10が高温環境下で使用されることを考慮し、エレクトロマイグレーションの抑制や生産性の向上を図るために、オーミック電極の形成技術に関して鋭意研究を重ねた。その結果、第1の層11の材料を、Taを窒化したTaNとすることで、Taの酸化を防止し、その上にAl層12を積層したTaN/Al系電極を形成することに想到した。
【0016】
また、本発明者らは、上記TaN/Al系電極のオーミック性が、熱処理(アニール)工程での温度に依存することを見出した。図2は、アニール時間を1minとし、横軸に示すアニールの温度と、縦軸に示す抵抗Rchとの関係を示している。なお、図中には、アニールを10min、温度600℃で行った場合のTi/Al系電極の抵抗を参照として示している。TaN/Al系電極は、図2に示すように、アニールの温度が520℃以上で抵抗値1.0E−04Ω・cm−2以下となり、オーミック性を有することが明らかになった。一方、アニールの温度の上限値は、Alの融点を越えない温度600℃以下とした。
【0017】
さらに、本発明者らは、上記TaN/Al系電極のオーミック性が、TaNの膜厚にも依存することを見出した。図3は、Al層12の膜厚を300nmとした場合での、横軸に示すTaNの膜厚と、縦軸に示す接触抵抗との関係を示している。TaN/Al系電極は、図3に示すように、TaNの膜厚が40nm以下で、接触抵抗値が1.0E−04Ω・cm−2以下となり、オーミック性を有することが明らかになった。ここでは、一例として、Al層12の膜厚を300nmに限定したが、例えば、膜厚を200nm程度にした場合であっても、TaNの膜厚を40nm以下にすることで、オーミック性を有することが予想される。
【0018】
つまり、ソース電極9s及びドレイン電極9dを、TaN/Al系電極とし、520〜600℃の範囲で熱処理を行い、更に、TaN層11の膜厚を例えば40nm以下にすることで、活性層3とオーミックコンタクトをとることができる。
【0019】
以下、半導体トランジスタ10の製造方法について説明する。まず、図4(a)に示すように、有機金属気相成長(MOCVD)法によりサファイア、SiC、Si、GaN等の基板1上に、AlN又はGaNよりなる厚さ20nm程度のバッファ層2と、厚さ1μm程度のp−GaN層3を順に成長する。p型ドーパントとしては、例えばMgが用いられ、そのドーパント濃度は、例えば1×1016〜1×1017/cmとする。なお、基板1上に成長されるGaN等は、MOCVD法に限られるものではなく、ハイドライド気相成長(HVPE)法、分子線エピタキシー(MBE)法等の他の成長法を用いてもよい。
【0020】
次に、図4(b)に示すように、p−GaN層3上にフォトレジスト4を塗布し、これを露光、現像してソース領域とドレイン領域に開口を形成した後に、その開口を通してn型ドーパント、例えばシリコンを注入してn+型ソース領域5s、n+型ドレイン領域5dを形成する。この場合、n型ドーパント濃度を、例えば1×1018〜2×1020/cmとする。
【0021】
フォトレジスト4を溶剤により除去した後に、図4(c)に示すように、例えば、プラズマフリーの触媒化学気相成長(Cat−CVD)法により、シリコン酸化膜(SiO膜)6を50nm〜100nm程度の厚さに形成する。
【0022】
次に、図5(a)に示すように、シリコン酸化膜6上に導電膜7を形成する。導電膜7としてはポリシリコンが一般に用いられるが、これに限られず、Ni/AlやWSi等の金属膜であってもよい。ポリシリコンの場合には、As,P(リン)、B(硼素)等がドープされてCVD法により成長され、金属膜の場合にはスパッタ等により形成される。
【0023】
さらに、導電膜7上にフォトレジスト8を塗布し、これを露光、現像してゲート領域に残すと共に、ソース領域5s、ドレイン領域5dの上から除去する。
【0024】
そして、図5(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト8をマスクにして導電膜7、シリコン酸化膜6をエッチングし、ゲート領域に残された導電膜7をゲート電極7gとする。ゲート電極7gの下のシリコン酸化膜6は、ゲート絶縁膜として機能する。
【0025】
続いて、図5(c)に示すように、フォトレジスト8を除去した後に、対向ターゲット式スパッタ(対向スパッタ)法により、図1(b)に示すように、ソース領域5s及びドレイン領域5d上に、ソース電極9s及びドレイン電極9dの第1の層となるTaN層11を形成する。次に、真空蒸着により、TaN層11上にソース電極9s及びドレイン電極9dの第2の層となるAl層12を形成する。ここでは、Al層12の膜厚を300nm程度とし、TaN層11の膜厚を40nm以下とした。続いて、520〜600℃の範囲で熱処理を行った。これにより、ソース電極9s及びドレイン電極9dは、ドレイン領域5d及びソース領域5sを構成するn+GaN層に対してオーミックコンタクトをとることができる。以上の工程を経ることで、図1(a)に示す半導体トランジスタ10を製造できる。
【0026】
本実施形態の半導体トランジスタ10の製造方法では、ソース電極9s及びドレイン電極9dの第1の層11をタンタル窒化物で形成しているので、酸化され難い。このため、第1の層11と第2の層12とを連続して成膜する必要がなく、第1及び第2の層11,12をシングルターゲットの成膜装置で成膜できる。なお、マルチターゲットの成膜装置は、斜めよりスパッタを行うために、シングルターゲットの成膜装置よりも膜質が劣る傾向にあり、特に、径の大きなウェハを用いた場合には、歩留まりが低下するとの問題があった。
【0027】
従って、本実施形態の半導体トランジスタ10の製造方法では、シングルターゲットの成膜装置で第1及び第2の層11,12を個別に成膜できるので、プロセスの自由度が高くなり、生産性を向上できる。また、520〜600℃の範囲で熱処理を行うこと、第1の層11の膜厚を40nm以下にすることで、ソース電極9s及びドレイン電極9dを、ソース領域5s及びドレイン領域5dとそれぞれオーミックコンタクトをとるオーミック電極とすることができる。さらに、第1の層11がタンタル窒化物であるから、高温環境下であっても、エレクトロマイグレーションを抑制できる。
【0028】
図6は、他のソース電極9s及びドレイン電極9dの構成を示す断面図である。図6(a)では、第2の層12上にWからなる第3の層13を形成している。ここで、第3の層13は、Wに限らず、Ni,Pd,Mo,Ta,Ti,TaN,TiNの何れか1つの材料から形成してもよい。図6(a)に示すソース電極9s及びドレイン電極9dでは、第3の層13を形成することで、金属自体の抵抗を小さくし、半導体トランジスタ10の抵抗を下げることができる。
【0029】
図6(b)では、第3の層13上にAuからなる第4の層14を形成している。図6(b)に示すソース電極9s及びドレイン電極9dでは、第3の層13上にAuを形成することで、Auの拡散を防止でき、更に表面がAuであるから、例えばボンディング等を行う際に好適となる。
【0030】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の半導体トランジスタの製造方法は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0031】
1:基板
2:バッファ層
3:活性層
4,8:フォトレジスト
5s:ソース領域
5d:ドレイン領域
6:シリコン酸化膜
7:導電膜
7g:ゲート電極
9s:ソース電極
9d:ドレイン電極
10:半導体トランジスタ
11:TaN層(第1の層)
12:Al層(第2の層)
13:W(第3の層)
14:Au(第4の層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
GaN系の半導体からなる活性層上に、オーミック電極を形成する半導体トランジスタの製造方法であって、
前記活性層上に、タンタル窒化物からなる第1の層と、前記第1の層上に積層されたAlからなる第2の層とを形成する工程と、
前記第1及び第2の層を、520℃以上、600℃以下の温度で熱処理することにより、前記活性層とオーミックコンタクトをとるオーミック電極を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記第1の層の膜厚は、40nm以下である、請求項1に記載の半導体トランジスタの製造方法。
【請求項3】
前記オーミック電極上に、W,Ni,Pd,Mo,Ta,Ti,TaN,TiNの何れか1つの材料からなる第3の層を形成する工程を更に備える、請求項1又は2に記載の半導体トランジスタの製造方法。
【請求項4】
前記第3の層上に、Auからなる第4の層を形成する工程を更に備える、請求項3に記載の半導体トランジスタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−181753(P2011−181753A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45548(P2010−45548)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(510035842)次世代パワーデバイス技術研究組合 (46)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】