説明

半導体装置およびその作製方法

【課題】不揮発性メモリトランジスタの電荷保持特性を向上させる。
【解決手段】半導体基板と導電膜の間には、第1絶縁膜、電荷トラップ膜、第2絶縁膜が形成されている。電荷トラップ膜は水素濃度が低い上部領域と、水素濃度が高い下部領域を有する窒化シリコン膜でなる。このような窒化シリコン膜は、化学気相成長法により、水素を15atomic%以上含む窒化シリコン膜を形成し、その上部を窒化することで形成される。この窒化処理は、窒素ガスのプラズマ中に生成された窒素ラジカルで窒化シリコン膜を窒化することで行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、書込、消去および読み出しが可能な不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置およびその作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
不揮発性半導体素子は、電気的に書き換えが可能であり、電源を切ってもデータを記憶しておくことのできる半導体素子である。不揮発性半導体メモリ素子として、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)と類似の構造を有する不揮発性メモリ素子は、電荷トラップ膜の違いにより2種類に大別される。一方は、電荷トラップ膜が、チャネル形成領域とゲート電極の間の導電膜でなるFG(Floating−Gate)型である。他方は、電荷トラップ膜が絶縁膜であるMONOS(Metal−Oxide−Nitride−Oxide−Silicon)型およびMNOS(Metal−Nitride−Oxide−Silicon)型である。
【0003】
MONOS型およびMNOS型のメモリ素子の多くは、化学気相成長法で形成された窒化シリコン膜が電荷トラップ膜に用いられている。電荷トラップ膜を構成する窒化シリコン膜を2層構造にする、組成または組成比を調節することで、メモリトランジスタの保持特性を向上できることが知られている(特許文献1〜3参照。)。
【0004】
特許文献1(特公昭59−24547号公報)では、Siを比較的多く含む窒化シリコン膜と、Nを比較的多く含む窒化シリコン膜とを積層した2層構造の窒化シリコン膜が電荷トラップ膜に用いられている。上層と下層でSiとN濃度を異ならせるため、化学的気相成長法で窒化シリコン膜を形成するときのNH/SiHの流量比を変えている。
【0005】
特許文献2(特開2002−203917号公報)では、2層構造の窒化シリコン膜でなる電荷トラップ膜が用いられている。上層の窒化膜の電荷トラップ密度を下層の窒化膜よりも高くしている。このような電荷トラップ膜を形成するため、シリコンソースガスを異ならせることで、Si−H結合およびSi−Cl結合の濃度が異なる2種類の窒化シリコン膜を形成している。
【0006】
特許文献3(特開2004−221448号公報)には、電荷トラップ膜の電荷保持特性を向上させるため、SiClおよびNHを原料に減圧化学気相成長法により、Si−H結合密度が1×1019cm−3以下の窒化シリコン膜を形成することが記載されている。
【特許文献1】特公昭59−24547号公報
【特許文献2】特開2002−203917号公報
【特許文献3】特開2004−221448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
化学気相成長法(以下、「CVD法」という。)とは、形成したい膜の構成元素を組成とする原料ガスを分解し、該原料ガスを化学反応させることで、所望の物質でなる薄膜を形成する方法である。窒化シリコン膜をCVD法で形成するために、特許文献1〜3では、シリコンソースガスにはSiH、SiClなどが用いられ、窒素ソースガスにはNHが用いられている。これらの原料ガスから形成された窒化シリコン膜は原料ガスに含まれていたHやClを含むために、そのSiとNの組成比が化学量論的組成比からずれている非化学量論的組成の窒化シリコンでなる。そして、特許文献1〜3に記載されているように、窒化シリコン膜の組成や組成比は、窒化シリコン膜の電荷保持特性に影響を与える。
【0008】
このような問題点に鑑み、本発明は電荷トラップ膜として好適な窒化シリコン膜を開発することによりなされたものである。そして、本発明の目的は、電荷保持特性を向上させることを可能にする不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置およびその作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つは不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置である。その不揮発性半導体メモリ素子は、半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、チャネル形成領域と重なる導電膜とを有する。不揮発性半導体メモリ素子は、さらに、半導体領域と導電膜の間に少なくとも、チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜、第1絶縁膜上に形成された窒化シリコンでなる電荷トラップ膜を有し、かつ、電荷トラップ膜が厚さ方向(深さ方向ともいう。)に水素濃度に分布を有する窒化シリコン膜であることにある。なお、不揮発性半導体メモリ素子の半導体領域と導電膜の間に、電荷トラップ膜上に形成された第2絶縁膜を設けることもできる。
【0010】
本発明に係る半導体装置の特徴の1つは、不揮発性半導体メモリ素子の電荷トラップ膜は、厚さ方向に隣接し、第1絶縁膜側にある下部領域、および導電膜側にある上部領域を有し、下部領域の水素濃度は15atomic%以上であり、上部領域の水素濃度は下部領域の水素濃度よりも低い。なお、上部領域の厚さは、電荷トラップ膜の厚さの40%以上60%以下であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る半導体装置の特徴の1つは、不揮発性半導体メモリ素子の電荷トラップ膜は、厚さ方向に隣接する第1絶縁膜側にある下部領域および導電膜側にある上部領域を有し、上部領域の水素濃度は下部領域の水素濃度の0.7倍以下であることにある。なお、上部領域の厚さは電荷トラップ膜の厚さの40%以上60%以下であることが好ましい。また、下部領域の水素濃度は15atomic%以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の1つは、不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置の作製方法であり、本発明に係る方法で作製される不揮発性半導体メモリ素子は、半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域、およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、チャネル形成領域と重なる導電膜とを有する。不揮発性半導体メモリ素子は、さらに、半導体領域と導電膜の間に少なくとも、チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜、第1絶縁膜上に形成された窒化シリコンでなる電荷トラップ膜を有する。
【0013】
本発明の半導体装置の作製方法の特徴の1つは、電荷トラップ膜を形成する工程は、化学気相成長法により水素濃度が15atomic%以上の窒化シリコン膜を形成し、窒化シリコン膜の上部を窒化することを含むことである。この工程により、厚さ方向に水素濃度に分布を有する窒化シリコン膜でなる電荷トラップ膜が形成される。
【0014】
本発明の半導体装置の作製方法の特徴の1つは、電荷トラップ膜を形成する工程は、化学気相成長法により窒化シリコン膜を形成し、窒化シリコン膜の上部を窒化することで、窒化シリコン膜の上部に水素濃度を30%以上減少させた領域を形成することにある。このような工程によって、厚さ方向に水素濃度に分布を有する窒化シリコン膜が、形成される。上記発明において、化学気相成長法で、水素濃度が15atomic%以上の窒化シリコン膜を形成することが好ましい。
【0015】
これらの本発明に係る半導体装置の作製方法において、窒化シリコン膜上部の窒化は、窒素ラジカルと窒化シリコン膜を反応させることで行うことができる。例えば、Nガスを励起することで、窒素ラジカルを生成させることができる。
【0016】
また、窒化シリコン膜上部の窒化は、Nガスと希ガスを含む混合ガスを励起して、混合ガスのプラズマを生成し、このプラズマ中で生成された窒素ラジカルと窒化シリコン膜を反応させることで行うことができる。
【0017】
また、窒化シリコン膜上部の窒化は、マイクロ波によりNガスと希ガスを含む混合ガスを励起して、混合ガスのプラズマを生成し、このプラズマ中で生成された窒素ラジカルと窒化シリコン膜を反応させることで行うことができる。プラズマ励起源としてマイクロ波を用いることで、電子密度が1×1011cm−3以上かつ電子温度が3eV以下の高密度のプラズマを生成することが可能である。
【0018】
また、電荷トラップ膜を形成する工程において、窒化シリコン膜を形成するためのプロセスガスは、窒素ソースガスとしてNHを含んでいる。あるいは、このプロセスガスは、H、および窒素ソースガスとしてNを含んでいる。
【0019】
また、電荷トラップ膜を形成する工程において、プラズマ励起化学気相成長法により、窒化シリコン膜を形成することができる。
【0020】
なお、本発明において、半導体装置には、半導体特性を利用することで機能しうる装置全般が含まれる。例えば、集積回路、電子機器は全て半導体装置に含まれる。また、本発明において、不揮発性半導体メモリ素子のデータの書き込み方法及び消去方法には、ファウラー−ノルドハイム(Fowler−Nordheim:F−N)トンネル電流を用いる方法、ダイレクトトンネル電流を用いる方法、およびホットキャリアを用いる方法などを用いることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、不揮発性半導体メモリ素子の電荷保持特性を向上させることができ、高信頼のデータ記憶性能を有する半導体装置を提供することができる。また、このような半導体装置の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明を説明する。本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、異なる図面間で同じ参照符号が付されている要素は同じ要素を表しており、材料、形状、作製方法などについて繰り返しになる説明は省略している。
【0023】
(実施形態1)
本実施形態では、不揮発性メモリ素子として不揮発性メモリトランジスタの構成およびその作製方法を説明する。
【0024】
図1は、MONOS型の不揮発性メモリトランジスタの主要な構成を説明するための断面図である。図1の不揮発性メモリトランジスタは、半導体領域10が形成された半導体基板20を有する。半導体領域10には、チャネル形成領域16、並びにチャネル形成領域16を挟んで高濃度不純物領域17と高濃度不純物領域18が形成されている。高濃度不純物領域17、18の一方はメモリトランジスタのソース領域となる領域であり、他方はドレイン領域となる領域である。
【0025】
半導体領域10上には、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14、および導電膜15がこの順序で積層されている。これらの膜11、12、14、15は、半導体領域10のチャネル形成領域16と重なっている。導電膜15はメモリトランジスタのゲート電極として機能する。
【0026】
半導体基板20には、バルク状の単結晶又は多結晶シリコン基板(シリコンウエハー)、単結晶または多結晶シリコンゲルマニウム基板、単結晶または多結晶ゲルマニウム基板を用いることができる。また、絶縁層上に、厚さ1μm以下の半導体層が形成されたSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることもできる。SOI基板として、鏡面研磨ウェーハに酸素イオンを注入した後、高温アニールすることにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作られた所謂SIMOX(Separation by IMplanted OXygen)基板を用いることができる。また、スマートカット(登録商標)法を利用して形成されたSOI基板を用いることができる。また、SOI基板と同様に、SGOI(Silicon Germanium on Insulator)基板又はGOI(Germanium on Insulator)基板を用いることもできる。
【0027】
電荷トラップ膜12への電荷の出し入れの方法、言い換えると不揮発性メモリトランジスタの書込方法、消去方法には、F−Nトンネル電流を用いる方法、ダイレクトトンネル電流を用いる方法、およびホットキャリアを用いる方法がある。図1の不揮発性メモリトランジスタの書込方法、消去方法には、これらの方法から適宜選択することができる。そのため、第1絶縁膜11は電荷が通過するように薄く形成される。第1絶縁膜11の厚さは1nm以上10nm以下が好ましく、その厚さは1nm以上5nm以下がより好ましい。第1絶縁膜11は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン(SiOxNy、x>0、y>0)、金属酸化物から選ばれた絶縁材料でなる単層構造の膜で形成することができる。この金属酸化物としては、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウムなどがある。また、上部が窒化された酸化シリコン膜、または酸化窒化シリコン膜などで、単層構造の第1絶縁膜11を形成することができる。また、第1絶縁膜11は、酸化シリコン膜上に、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウムから選ばれた絶縁膜を積層した2層構造の絶縁膜で、第1絶縁膜11を形成することもできる。
【0028】
電荷トラップ膜12は窒化シリコン膜で形成されている。その厚さは2nm以上20nm以下とすることができ、5nm以上15nm以下が好ましい。また、電荷トラップ膜12は厚さ方向に窒素および水素の濃度分布を有する。電荷トラップ膜12において、水素濃度は下部よりも上部の方が低い。
【0029】
このように、厚さ方向に、水素に濃度差を有する窒化シリコン膜でなる電荷トラップ膜12を用いることにより、不揮発性メモリトランジスタの保持特性を向上させることができる。また、不揮発性メモリトランジスタにデータを書き込むときに、導電膜15に印加する電圧(より正確には電圧の絶対値)を小さくすることができる。また、不揮発性メモリトランジスタからデータを消去するときの導電膜15の電圧(より正確には電圧の絶対値)を小さくすることができる。
【0030】
電荷トラップ膜12において、上部領域12Bの厚さは、電荷トラップ膜12の厚さの40%以上60%以下とすることができる。上部領域12Bと下部領域12Aの厚さがほぼ等しくなるようにすることが好ましく、上部領域12Bの厚さは電荷トラップ膜12の厚さの45%以上55%以下がより好ましい。
【0031】
電荷トラップ膜12は厚さ方向に隣接する下部領域12A、上部領域12Bを有する。上部領域12Bの水素濃度は下部領域12Aよりも低い。また、下部領域12Aの水素濃度は15atomic%以上であることが好ましく、20atomic%以上がより好ましい。つまり、電荷トラップ膜12は厚さ方向に水素の濃度分布を有する。電荷トラップ膜12において、水素は半導体領域10側に多く存在する。このように、導電膜15側に水素濃度が低い上部領域12Bを有し、半導体領域10側に水素濃度が高い下部領域12Aを有する窒化シリコン膜でなる電荷トラップ膜12を用いることにより、不揮発性メモリトランジスタの保持特性を向上させることができる。
【0032】
なお、電荷トラップ膜12は、厚さ方向に窒素の濃度分布を有してもよく、上部領域12Bの方が下部領域12Aよりも窒素濃度が高い領域とすることができる。
【0033】
また、上部領域12Bの水素濃度は、下部領域12Aの水素濃度の0.7倍以下であることが好ましく、0.6倍以下がより好ましい。
【0034】
また、下部領域12Aの水素濃度は15atomic%以上とすることができるが、25atomic%以下とすることが好ましい。下部領域12Aの水素濃度が25atomic%を越えると、脆くなり、絶縁耐圧が下がり電荷トラップとして機能させることが困難になるからである。他方、上部領域12Bの水素濃度は下部領域12Aの水素濃度よりも低ければよく、12atomic%以下であることが好ましく、10atomic%以下がより好ましい。
【0035】
第2絶縁膜14は、電荷トラップ膜12から電荷が漏れることを防ぐ、また導電膜15から電荷トラップ膜12に電荷が注入することを防ぐための膜である。第2絶縁膜14は1nm以上20nm以下の厚さで形成することができる。第2絶縁膜14の厚さは5nm以上10nm以下が好ましい。第2絶縁膜14は、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、および酸化ハフニウムから選ばれた絶縁材料でなる単層膜、または2層以上の多層膜で形成することができる。単層構造の絶縁膜とする場合は、酸化物でなる膜または酸化窒化物膜を用いることが好ましい。例えば、2層構造とする場合は、この下層に、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜を形成し、上層に、酸化シリコン膜または酸化窒化シリコン膜よりも誘電率の高い絶縁膜を形成することが好ましい。例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜、酸化窒化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜がある。このような積層構造にすることにより、第2絶縁膜14の等価酸化物膜厚(EOT:Equivalent Oxide Thickness)を小さくすることができる。第2絶縁膜14の物理膜厚が同じでも、EOTを小さくすることで、書込、消去に必要なメモリ素子に印加する電圧を小さくすることができる。
【0036】
導電膜15は単層構造の膜または積層構造の膜であり、不揮発性メモリトランジスタのゲート電極を構成する。導電膜15を構成する導電性材料としては、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、ニオブ(Nb)等から選択された金属、又はこれらの金属を主成分とする合金若しくは化合物(例えば金属窒化物、シリサイド)、リン、ヒ素等のドーパントを含む多結晶シリコンを用いることができる。例えば、導電膜15は1層又は複数層の金属窒化物と、その上の単体金属でなる層の積層構造の膜とすることができる。この金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブデン、および窒化チタンを用いることができる。第2絶縁膜14に接して金属窒化物膜を形成することにより、その上の単体金属膜の剥離を防止することができる。また、窒化タンタルなどの金属窒化物は仕事関数が高いので、第2絶縁膜14との相乗効果により、第1絶縁膜11を厚く形成することが可能になる。
【0037】
次に、図2A〜図2Fを参照して、図1に示す不揮発性メモリトランジスタの作製方法を説明する。
【0038】
半導体基板20の上面に第1絶縁膜11を形成する。例えば、第1絶縁膜11として、酸化シリコン膜を形成する方法には、酸素を含む雰囲気で半導体基板20を加熱して、半導体基板20の表面を酸化する方法(熱酸化処理)、酸素を組成に含むガス(例えば、酸素(O)又は一酸化二窒素(NO))を励起して酸素ラジカルを生成し、酸素ラジカルにより半導体基板20の表面を酸化する方法(酸素ラジカルによる酸化処理)、PECVD法、熱CVD法などのCVD法により酸化シリコン膜を形成する方法などがある。
【0039】
また、第1絶縁膜11として酸化窒化シリコン膜を形成する方法には、熱酸化処理や酸素ラジカルによる酸化処理により、表面を酸化して酸化シリコン膜を形成し、この酸化シリコン膜を窒化することで形成する方法がある。この窒化処理には、窒化性の雰囲気で半導体基板を加熱する処理(熱窒化処理)や、窒素ガスまたアンモニアガスなどを励起して窒素ラジカル(Nラジカル)または窒化水素ラジカル(NHラジカル)を生成し、これらのラジカルにより窒化する方法を用いることができる。また、酸化窒化シリコン膜は、PECVD法などのCVD法で形成することができる。第1絶縁膜11として酸化アルミニウム膜などの金属酸化物膜を形成することもできる。金属酸化物膜は、スパッタ法、有機金属気相成長法(Metal−Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)等の方法で形成することができる。
【0040】
酸素ラジカルによる酸化処理、若しくは窒素ラジカルまたは窒化水素ラジカルによる窒化処理を行う場合には、マイクロ波でガスを励起してプラズマを生成することが好ましい。これは、電子密度が1×1011cm−3以上、且つ電子温度が3eV以下の高密度プラズマを生成することができるからである。高密度プラズマを生成させるためのマイクロ波の代表的な周波数は2.45GHzである。高密度プラズマを用いることで、550℃以下の加熱温度で、実用的な反応速度で絶縁膜を形成することができる。つまり、マイクロ波によって高密度プラズマを生成させ、高密度プラズマで生成されたラジカルと処理物を反応させることで、基板加熱温度が550℃以下の低温かつ短時間で、処理物を固相反応によって酸化または窒化をすることができる。
【0041】
図3に、マイクロ波励起による高密度プラズマで各種の処理を行うための高密度プラズマ処理装置の構成例を示す。高密度プラズマを用いた処理(以下、「高密度プラズマ処理」という。)には、半導体材料、絶縁材料、および導電性材料に対する酸化処理、窒化処理、酸窒化処理、水素化処理、表面改質処理などがある。プラズマ励起するガスを変えることで、目的とする処理を行うことができる。
【0042】
図3の高密度プラズマ処理装置は、プラズマを生成するための処理室80を有する。処理室80には、基板などの処理物1を配置するためのステージ81、ガス供給部82に連結されたシャワープレート83、処理室80を排気するために真空ポンプに接続する排気口84を有する。処理室80の上部には、アンテナ85、誘電体板86、マイクロ波発生部87に連結された同軸導波管88を有する。また、ステージ81に温度制御部89を設けることによって、処理物1の温度を制御することも可能である。
【0043】
高密度プラズマ処理を行うには、所定のガスをガス供給部82から供給する。ガスはシャワープレート83の孔を通って、処理室80に導入される。マイクロ波発生部87から、周波数2.45GHzのマイクロ波を発生させ、同軸導波管88へ供給する。マイクロ波は同軸導波管88、アンテナ85から誘電体板86を通して処理室80内に供給される。マイクロ波によって、処理室80に供給されたガスが励起され、高密度プラズマが生成される。ステージ81とシャワープレート83との間隔(以下、電極間隔ともいう)は20mm以上80mm以下とすることができ、この間隔は20mm以上60mm以下が好ましい。また、温度制御部89によって、処理物1を加熱しながら高密度プラズマ処理することができる。
【0044】
酸化処理を行う場合には、プラズマ励起させるガスに、酸素を組成に含むガスと共に、希ガスを含ませることが好ましい。なお、酸素を組成に含むガスは、例えば、酸素(O)、一酸化二窒素(NO)などである。また、窒化処理を行う場合も、プラズマ励起させるガスに、窒素を組成に含むガスと共に希ガスを含ませることが好ましい。なお、窒素を組成に含むガスは、例えば、窒素(N)、アンモニア(NH)などである。希ガスを添加することで、プラズマ中に効率良く酸素ラジカル(以下、「O」と表記する。)、窒素ラジカル(以下、「N」と表記する。)を生成することができる。希ガスとして、He、Ne、Ar、Kr、およびXeから選ばれる1種類または複数種類のガスを用いることができる。高密度プラズマを生成させるためには、原子半径がより大きい、Ar、Kr、およびXeが好ましい。
【0045】
図3の高密度プラズマ処理装置を用いて、処理物を酸化処理する方法の一例を説明する。ガス供給部82からO、Krをそれぞれ処理室80に供給する。そして、マイクロ波を処理室80に導入することで、OおよびKrの混合ガスのプラズマが生成される。このプラズマ中では、導入されたマイクロ波によりKrが励起されて、Krラジカル(以下、「Kr」と表記する。)が生成され、このKrと酸素分子(O)とが衝突することにより、Oが生成される。そして、プラズマ中で生成されたOとステージ81上の処理物が反応して、処理物1が酸化される。また、さらに、酸素を組成に含むガス、希ガス共に水素(H)ガスを励起することで、プラズマ中にOHラジカル(以下、「OH」と表記する)を生成させて、OHにより処理物1を酸化することもできる。酸化処理のための加熱温度は、300℃以上550℃以下の範囲とすることができる。圧力は100Pa以上140Pa以下が好ましい。
【0046】
図3の高密度プラズマ処理装置を用いて、処理物を窒化処理する方法の一例を説明する。ガス供給部82からN、Krをそれぞれ処理室80に供給する。そして、マイクロ波を処理室80に導入することで、NおよびKrの混合ガスのプラズマが生成される。このプラズマ中では、導入されたマイクロ波によりKrが励起されて、Krが生成され、このKrと窒素分子(N)とが衝突することにより、Nが生成される。そして、プラズマ中で生成されたNとステージ81上の処理物1が反応して、処理物1が窒化される。また、N、Hおよび希ガスの混合ガス、またはNHと希ガスの混合ガスを励起することで、窒化処理を行うことができる。これらの混合ガスのプラズマ中には、NおよびNHラジカル(以下、「NH」と表記する)が生成され、N、NHにより処理物が窒化される。窒化処理のための加熱温度は、300℃以上550℃以下の範囲とすることができる。圧力は5Pa以上15Pa以下が好ましい。
【0047】
高密度プラズマ処理による第1絶縁膜11の形成方法の一例を説明する。まず、高密度プラズマにより酸素ラジカルを生成し、半導体基板20の表面を酸化して、2nm〜6nmの厚さの酸化膜を形成する。次に、高密度プラズマにより窒素ラジカルを生成し、窒素ラジカルにより酸化膜の上部を窒化する。
【0048】
次に、図2Bに示すように、第1絶縁膜11に接して、CVD法で窒化シリコン膜22を形成する。窒化シリコン膜22は電荷トラップ膜12を構成する。窒化シリコン膜22の厚さは、2nm以上20nm以下とすることができ、5nm以上15nm以下が好ましい。
【0049】
窒化シリコン膜22の水素濃度は15atomic%以上とする。このことにより、上部と下部で窒素および水素の濃度が異なる電荷トラップ膜12を容易に形成することができる。また、窒化シリコン膜22の水素濃度は25atomic%以下とすることが好ましい。これは、下部領域12Aの水素濃度が25atomic%を越えると脆くなって絶縁耐圧が下がり、電荷トラップとして機能させることが困難になるからである。
【0050】
窒化シリコン膜22の原料となる窒素ソースガスには、N−H結合を含む窒化水素ガスを用いることができる。具体的には、この窒素ソースガスにアンモニア(NH)を用いることが好ましく、アンモニア(NH)の替わりに、ヒドラジン(NHN)を用いることもできる。窒化水素ガスを窒素ソースガスに用いることで、CVD法で、水素濃度が15atomic%以上の窒化シリコン膜を容易に形成することができる。なお、窒素ソースガスにN−H結合を含まないガス、例えばNガスを用いる場合は、水素ガスをプロセスガスに添加するとよい。
【0051】
窒化シリコン膜22の原料となるシリコンソースガスは、水素又はハロゲンを組成に含むガスが用いられる。このようなガスとして、SiH4、Si6、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl3、SiFなどがある。PECVD法で窒化シリコン膜22を形成する場合は、シリコンソースガスはSiH(モノシラン)が好ましい。
【0052】
窒化シリコン膜22をCVD法で形成するためのプロセスガスには、原料となる窒素ソースガスおよびシリコンソースガス以外のガスを添加することができる。このようなガスとしては、He、Ar、Xe等の希ガスや、水素(H)ガス、塩素(Cl)ガス、フッ素(F)ガス等がある。
【0053】
例えば、プロセスガスには、SiH、NHおよびHの混合ガス、SiH、NHおよびArの混合ガス、SiH、NH、HおよびArの混合ガス、SiH、N、HおよびArの混合ガスなどを用いることができる。また、シリコンソースガスに対する窒素ソースガスの分圧比(Nソースガス/Siソースガス)は、0.1以上1000以下とすることができ、この分圧比は1以上400以下がより好ましい。分圧比は、シリコンソースガス、窒素ソースガスを反応室に供給する際の流量で調節することができる。
【0054】
熱CVD法で窒化シリコン膜22を形成するには、基板温度を700℃以上1100℃以下とすることができる。PECVD法で窒化シリコン膜22を形成する際には、基板温度を300℃以上500℃以下とすることができる。
【0055】
次に、窒化シリコン膜22の上部を窒化する。この窒化処理によって、図2Cに示すように、厚さ方向に隣接する上部領域12Bと下部領域12Aを有する電荷トラップ膜12が形成される。上部領域12Bは窒化処理によって窒化された領域である。下部領域12Aは、窒化シリコン膜22において窒化処理されなかった領域である。したがって、下部領域12Aは、窒化シリコン膜22と同様の組成を有する。
【0056】
窒化シリコン膜22の上部を窒化することにより、窒素濃度は第2絶縁膜14側が高く、水素濃度は第1絶縁膜11側が高い電荷トラップ膜12を形成することができる。厚さ方向に水素濃度に差を有する電荷トラップ膜12を設けることで、不揮発性メモリトランジスタの保持特性を向上させることができる。
【0057】
窒化シリコン膜22の上部の窒化処理では、Si−H結合、およびN−H結合のHが離脱し、ダングリングボンドが形成される。ダングリングボンドは電荷トラップ膜12の電荷のトラップサイトとして機能する。また、このタングリングボンドの一部に窒素が取り込まれ、窒化シリコン膜22の上部が窒化される。したがって、窒化処理によって、水素濃度が低下された上部領域12Bが形成され、上部領域12Bは、水素濃度が下部領域12Aよりも低くなる。
【0058】
また、上部領域12Bと下部領域12Aの水素濃度差は30%以上が好ましく、40%以上がより好ましい。すなわち、上部領域12Bの水素濃度は、下部領域12Aの水素濃度の0.7倍以下0.2倍以上が好ましく、0.6倍以下0.2倍以上がより好ましい。
【0059】
電荷トラップ膜12の導電膜15側には、窒化処理によってダングリングボンドが形成されることで、電荷トラップ密度が増加した領域(上部領域12B)が形成される。電荷トラップ膜12の電荷トラップ密度を増加させることで、不揮発性メモリトランジスタの書込電圧、および消去電圧を小さくすることができる。その一方、電荷トラップ膜12のチャネル形成領域16側には、窒化されず、ほとんど水素が離脱しない領域(下部領域12Aに相当する領域)が残る。
【0060】
このような構成により、電荷トラップ膜12において電荷トラップ密度が高い領域をチャネル形成領域から離して形成することができるため、電荷トラップ膜12の電荷トラップ量を増加させ、かつ蓄積した電荷がチャネル形成領域16から漏れる量を減少させることができるので、不揮発性メモリトランジスタの保持特性が向上する。
【0061】
また、電荷トラップ膜12は窒化シリコン膜22の上部を窒化した膜であるため、窒化シリコン膜22よりも誘電率が高くなる。したがって、この電荷トラップ膜12を有する不揮発性メモリトランジスタの書込電圧、および消去電圧を小さくすることができる。
【0062】
下部領域12Aと上部領域12Bの相乗効果により、半導体メモリ素子の書込特性、消去特性、および保持特性を向上させることができるため、上部領域12Bの厚さは、下部領域12Aと同程度になるようにすることが好ましい。よって上部領域12Bの厚さは、窒化シリコン膜22の厚さの40%以上60%以下が好ましく、45%以上55%以下がより好ましい。
【0063】
上部領域12Bの厚さが電荷トラップ膜12の厚さの40%未満であると書込電圧、消去電圧の低下という、電荷トラップ膜12の誘電率の上昇による効果が十分に得られない。他方、その厚さの割合が60%を越えると、チャネル領域に近いところに電荷がトラップされる確率が高くなるため、電荷保持特性が低下する。窒化シリコン膜22の窒化される領域の厚さは、窒化処理の処理時間、処理温度などで調節することができる。
【0064】
電荷トラップ膜12は、水素の濃度が異なる2つの領域が重なった積層構造を有する膜であるが、2つの領域の間に界面がない膜である。界面があると、界面での欠陥などにより、サブスレッショルド値(S値)が増加するなど電気的な特性に悪影響を与える。窒化シリコン膜中に界面を形成せずに、水素の濃度の異なる2つの領域を形成するには、CVD法で窒化シリコン膜22を形成し、その上部を窒化することで形成することができる。
【0065】
窒化シリコン膜22上部の窒化処理には、窒素ガスまたはアンモニアを含む雰囲気で800℃以上の加熱処理による固相熱窒化処理を用いることができる。この加熱手段としては、瞬間熱アニール(RTA)装置又はファーネスアニール炉などを用いることができる。また、窒化処理として、プラズマ中にNを生成し、このNにより処理物を窒化するプラズマ処理を行うことができる。なお、Nによる窒化処理の方が熱窒化処理よりも下部領域12Aと上部領域12Bの水素濃度差を大きくすることができるため好ましい。その理由は、熱窒化処理は800℃以上の温度で窒化シリコン膜22を加熱するため、下部領域12Aから水素が離脱しやすく、他方、Nによる窒化処理は、基板温度を300℃以上550℃以下の範囲で行うことができ、かつ短時間の処理のため、下部領域12Aからの水素の離脱をほとんど生じさせないようにできるからである。
【0066】
は、Nガスを励起することで生成することができる。Nガスを含むプラズマ中に効率良くNを生成するには、Nガスと希ガスの混合ガスを励起してプラズマを生成することが好ましい。希ガスとして、He、Ne、Ar、Kr、およびXeから選ばれる1種類または複数種類のガスを用いることができる。効率良くNを生成するには、原子半径が大きいAr、Kr、およびXeを選択するとよい。例えば、Nを生成するためにNとArの混合ガスを用いた場合、NおよびArの混合ガスを励起し、混合ガスのプラズマを生成する。このプラズマ中ではArが励起されて、Arラジカル(以下、「Ar」と表記する。)が生成され、このArと窒素分子(N)とが衝突することにより、Nが生成される。そして、プラズマ中で生成されたNと窒化シリコン膜22が反応して、窒化シリコン膜22の上部が窒化されて、上部領域12Bが形成される。
【0067】
ガスと希ガスの混合ガスを励起するには、マイクロ波を用いることが好ましい。これは、電子密度が1.0×1011cm−3以上、且つ電子温度が3.0eV以下の高密度プラズマを生成することができるからである。高密度プラズマを用いることで、処理温度を550℃以下で、かつ窒化シリコン膜22にプラズマによるダメージを抑えて短時間で窒化処理を行うことができる。
【0068】
高密度プラズマを生成させるためのマイクロ波の代表的な周波数は2.45GHzである。高密度プラズマを用いることで、550℃以下の加熱温度で、数分間の処理時間で窒化シリコン膜22の上部を窒化することができる。マイクロ波励起の高密度プラズマで窒化反応をさせるときの圧力は5Pa以上15Pa以下が好ましく、加熱温度は300℃以上550℃以下の範囲とすることができる。高密度プラズマによる窒化シリコン膜22の窒化処理には、図3に示す高密度プラズマ処理装置を用いることができる。
【0069】
また、NHにより、窒化シリコン膜22の上部を窒化することもできる。NHを生成するには、N、希ガスおよびHの混合ガスを励起して、混合ガスのプラズマを生成することで、このプラズマ中にNおよびNHラジカルを生成することができる。また、プラズマ中にNおよびNHラジカルを生成するには、NHおよび希ガスの混合ガスを励起することでも可能である。プロセスガスに水素を組成に含むガスが用いられるため、プラズマ中には、水素ラジカルが含まれる。そのため、NおよびNHラジカルによって、窒化シリコン膜22上部は窒化されると共に、プラズマ中の水素によって、ダングリングボンドが水素によって終端される。そのため、電荷トラップ膜12の上部領域12Bと下部領域12Aとの水素濃度差が広がりにくくなる。
【0070】
したがって、窒化シリコン膜22の上部をプラズマ処理で窒化する場合は、プラズマ励起するガスに水素を組成に含むガスを用いないことが好ましい。例えば、窒化処理のプロセスガスにはNガスと希ガスの混合ガスを用いることができる。
【0071】
次に、図2Dに示すように、電荷トラップ膜12に接して、CVD法、スパッタ法などで絶縁膜を形成し、単層構造または積層構造の第2絶縁膜14を形成する。しかる後、第2絶縁膜14に接して、スパッタ法などで単層構造または積層構造の導電膜15を形成する。なお、不揮発性メモリトランジスタをMNOS型とする場合には、第2絶縁膜14を形成せず、電荷トラップ膜12に接して導電膜15を形成する。
【0072】
次に、フォトリソグラフィー工程を行い、導電膜15上にフォトレジストでなるマスクを形成する。このマスクを用いて、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14および導電膜15でなる積層膜をエッチングする。このエッチングによって、図2Eに示す構造を得る。エッチングの後、フォトレジストでなるマスクを除去する。
【0073】
次に、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14および導電膜15でなる積層物をマスクとして、イオン注入法またはイオンドーピング法により、ドナーまたはアクセプタとなる不純物を半導体基板20に添加して、n型またはp型の導電性を示す高濃度不純物領域17、18を形成する。半導体基板20において、導電膜15と重なり、不純物が添加されなかった領域がチャネル形成領域16となる。ドナー不純物元素としては、リン、ヒ素などを用いることができる。アクセプタとなる不純物元素としては、ボロンなどを用いることができる。次いで、加熱処理などにより、高濃度不純物領域17、18に添加した不純物を活性化する。以上の工程を経て、図1に示す不揮発性メモリトランジスタが形成される。
【0074】
(実施形態2)
図1の不揮発性メモリトランジスタは、半導体基板に半導体領域が形成されているメモリ素子である。本実施形態では、絶縁膜上の半導体層を半導体領域とする不揮発性メモリトランジスタと、その作製方法について説明する。
【0075】
図4は、不揮発性メモリトランジスタの構成例を示す断面図である。基板30上に下地絶縁膜31が形成され、その上に半導体領域10となる半導体膜33が形成されている。半導体膜33には、チャネル形成領域16、n型またはp型の導電性を示す高濃度不純物領域17、18が形成されている。半導体膜33上には、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14、および導電膜15がこの順序で積層されている。これらの膜11、12、14、15は、チャネル形成領域16と重なっている。
【0076】
なお、図4の不揮発性メモリトランジスタも、図1の不揮発性メモリトランジスタと同様に、書込方法、消去方法には、F−Nトンネル電流を用いる方法、ダイレクトトンネル電流を用いる方法、およびホットキャリアを用いる方法から適宜選択することができる。以下、図1の不揮発性メモリトランジスタと異なる構成について説明する。
【0077】
基板30には、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、ステンレス基板、金属基板などを用いることができる。また、基板30は不揮発性メモリトランジスタの製造時に用いた基板とは異なる基板でもよい。この場合、基板30にはプラスチックフィルムを用いることもできる。
【0078】
下地絶縁膜31は、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン等の絶縁材料の単層膜または積層膜で形成することができる。これらの絶縁膜はCVD法、スパッタ法で形成することができる。下地絶縁膜31を形成せず、半導体膜33を基板30に接して形成することもできる。下地絶縁膜31を形成することで、半導体膜33の基板30側の界面準位密度を低減すること、基板30からアルカリ金属などの汚染物質が半導体膜33に侵入することを防ぐ、などの効果がある。
【0079】
半導体膜33は、非単結晶半導体膜であり、多結晶半導体で形成されたものが好ましい。半導体材料としては、シリコンが好ましく、その他、シリコンゲルマニウムおよびゲルマニウムを用いることができる。
【0080】
基板30にSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることもできる。SOI基板を用いた場合は、半導体膜33はSOI基板の半導体層で形成され、下地絶縁膜31はSOI基板中の絶縁層で形成される。
【0081】
図4の不揮発性メモリトランジスタも、図1の不揮発性メモリトランジスタと同様に、電荷トラップ膜12に、第2絶縁膜14側に水素濃度が低い領域を有する窒化シリコン膜を用いることで、その電荷保持特性を向上させることができる。
【0082】
以下、図5A〜図5Fを参照して、図4に示す不揮発性メモリトランジスタの作製方法を説明する。
【0083】
基板30上に、CVD法、スパッタ法などで絶縁膜を形成し、単層構造または積層構造の下地絶縁膜31を形成する。次に、下地絶縁膜31上に、半導体膜33を形成する(図5A参照)。半導体膜の形成方法の例として、非晶質シリコン、非晶質シリコンゲルマニウム、非晶質ゲルマニウムなどの非晶質半導体膜を厚さ10nm以上100nm以下形成し、非晶質半導体膜を結晶化して、結晶性半導体膜を形成する方法がある。非晶質半導体膜の結晶化法には、レーザ光を照射するレーザ結晶化法、瞬間熱アニール(RTA)装置、又はファーネスアニール炉を用いた熱処理による結晶化法等がある。
【0084】
次に、図5Bに示すように、フォトリソグラフィー工程とエッチング工程によって半導体膜33を素子ごとに島状に分割する。このように半導体膜33を島状に分割することで、同一の基板上にメモリセルアレイとメモリセルアレイを制御するための駆動回路を形成した場合にも、効果的に素子分離をすることができる。すなわち、10V〜20V程度の電圧で書込や消去を行う必要のあるメモリセルアレイと、3V〜7V程度の電圧で動作してデータの入出力や命令の制御を主として行う駆動回路を同一基板上に形成した場合でも、印加する電圧の違いによる素子間の相互干渉を防ぐことができる。
【0085】
次に、半導体膜33上に第1絶縁膜11を形成する。第1絶縁膜11の形成は、図2Bの第1絶縁膜11の形成と同様に行うことができる。なお、基板30に、ガラス基板のような耐熱温度が750℃以下の基板を用いた場合には、酸化処理または窒化処理で第1絶縁膜11を形成する場合は、高密度プラズマによる酸化処理または窒化処理を行うことが好ましい。例えば、第1絶縁膜11として、高密度プラズマによる酸化処理で半導体膜33を酸化して、酸化膜を形成することができる。また、高密度プラズマによって、半導体膜33を酸化処理し、しかる後、形成された酸化膜を高密度プラズマによる窒化処理を行うことによって、半導体膜33表面に第1絶縁膜11を形成することができる。
【0086】
また、CVD法やスパッタ法により半導体膜33上に絶縁膜を形成し、この絶縁膜をプラズマにより固相酸化若しくは固相窒化を行うことで、絶縁耐圧が改善された第1絶縁膜11を形成することができる。以降の工程は、図2B〜図2Fに示した工程と同様に行うことができる。
【0087】
次に、図5Bに示すように、第1絶縁膜11に接して、CVD法で窒化シリコン膜22を形成する。窒化シリコン膜22の形成方法は、図2Bを用いて説明した窒化シリコン膜22の形成方法と同じ方法を用いることができる。基板30に、ガラス基板のように耐熱温度が750℃以下の基板を用いた場合は、PECVD法で窒化シリコン膜22を形成することが好ましい。PECVD法では、成膜速度が熱CVD法よりも速く、また、加熱温度を500℃以下とすることができるからである。PECVD法で窒化シリコン膜22を形成する際には、基板温度を300℃以上500℃以下とすることができる。
【0088】
次に、窒化シリコン膜22の上部を窒化して、電荷トラップ膜12を形成する。この窒化処理によって、図5Cに示すように、厚さ方向に隣接する上部領域12Bと下部領域12Aを有する電荷トラップ膜12が形成される。上部領域12Bは、窒化処理によって窒化された領域であり、下部領域12Aは窒化されなかった領域である。別言すると、上部領域12Bは、窒化処理によって水素濃度が減少された領域であり、下部領域12Aは窒化処理によって水素濃度がほとんど変化していない領域である。
【0089】
窒化シリコン膜22の窒化処理は、図2Cの窒化シリコン膜22の窒化処理と同様に行うことができる。なお、基板30にガラス基板のように耐熱温度が700℃以下の基板を用いた場合は、窒化処理はマイクロ波励起による高密度プラズマによる窒化処理が好ましい。高密度プラズマ処理は、加熱温度550℃以下で、数分程度の処理時間で窒化処理を行うことができるからである。
【0090】
次に、図5Dに示すように、電荷トラップ膜12に接して、CVD法、スパッタ法などで絶縁膜を形成し、単層構造または積層構造の第2絶縁膜14を形成する。しかる後、第2絶縁膜14に接して、スパッタ法などで導電膜を形成し、単層構造または積層構造の導電膜15を形成する。なお、不揮発性メモリトランジスタをMNOS型とするには、第2絶縁膜14を形成せず、電荷トラップ膜12に接して導電膜15を形成する。
【0091】
次に、フォトリソグラフィー工程を行い、導電膜15上にフォトレジストでなるマスクを形成し、このマスクを用いて、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14および導電膜15でなる積層膜をエッチングする。このエッチングによって、図5Eに示す構造を得る。
【0092】
次に、第1絶縁膜11、電荷トラップ膜12、第2絶縁膜14および導電膜15でなる積層物をマスクとして、イオン注入法またはイオンドーピング法により、ドナーまたはアクセプタとなる不純物を半導体膜33に添加して、n型またはp型の導電性を示す高濃度不純物領域17、18を形成する。半導体膜33において、導電膜15と重なり、不純物が添加されなかった領域がチャネル形成領域16となる。次いで、加熱処理などにより、高濃度不純物領域17、18に添加した不純物を活性化する。以上の工程を経て、図5Fに示す不揮発性メモリトランジスタが形成される。なお、図5Fの断面図は図4と同じである。
【0093】
(実施形態3)
本実施の形態では、実験データを参照して、CVD法で形成した窒化シリコン膜の上部を窒化することで、不揮発性メモリ半導体素子の保持特性が改善されることを説明する。つまり、実施形態1および実施形態2の不揮発性メモリ半導体素子およびその作製方法の効果について説明する。
【0094】
本実施形態では、不揮発性メモリ半導体素子の電荷保持特性の向上を評価するために、p型単結晶シリコン基板を用いて不揮発性メモリ容量素子を作製した。図6は、作製した容量素子構成を示す断面図である。図6に示すように、容量素子は、シリコン基板40上に、第1絶縁膜41、窒化シリコン膜42、第2絶縁膜44、電極45の順に積層されている。窒化シリコン膜42は電荷トラップ膜として機能する膜である。
【0095】
また、本実施の形態では、窒化シリコン膜42の構造が異なる6種類のメモリ容量素子を形成した。本発明のメモリ素子として、実施形態1および実施形態2の不揮発性メモリトランジスタの電荷トラップ膜と同じ構成の窒化シリコン膜を有する2種類の不揮発性メモリ容量素子を作製した。これらの容量素子をそれぞれ「メモリ素子A」、「メモリ素子B」と呼ぶことにする。また、残りの4つ容量素子は、実施形態1および実施形態2の不揮発性メモリトランジスタの電荷トラップ膜と異なる構成の窒化シリコン膜を有する容量素子である。これらを「比較メモリ素子a」、「比較メモリ素子b」、「比較メモリ素子Z」、および「比較メモリ素子z」と呼ぶことにする。
【0096】
メモリ素子A、B、および比較メモリ素子a、b、Z、zの窒化シリコン膜42を区別するため、素子ごとに異なる参照符号を付することにする。その参照符号を、メモリ素子A、B、比較メモリ素子a、b、Z、zに対応して、42−A、42−B、42−a、42−b、42−Z、42−zとする。窒化シリコン膜42−a、42−b、42−zは、PECVD法で形成した膜である。他方、窒化シリコン膜42−A、42−B、42−Zは、それぞれ、PECVD法で形成された窒化シリコン膜42−a、42−b、42−zを同じ条件で高密度プラズマにより窒化処理した膜である。
【0097】
以下、メモリ素子Aおよび比較メモリ素子aの作製方法を説明する。第1絶縁膜41を形成するため、まず、高密度プラズマ中に生成されたOでシリコン基板40の表面を酸化し、酸化シリコン膜を形成した。この高密度プラズマ処理では、基板温度を400℃とし、圧力を106.67Paとし、プロセスガスにOガスおよびArガスを用い、流量900sccmでArガスを、流量5sccmでOガスをそれぞれ処理室に供給した。周波数2.45GHzのマイクロ波を処理室に導入し、プロセスガスを励起し、プロセスガスのプラズマ中に酸素ラジカルを発生させた。厚さ3nm程度の酸化シリコン膜がシリコン基板40の表面に形成されるように、高密度プラズマ処理の処理時間を調節した。
【0098】
次に、高密度プラズマ中に生成されたNで酸化シリコン膜の上部を窒化した。この高密度プラズマ処理では、基板温度を400℃とし、反応圧力12Paとし、プロセスガスにNガスおよびArガスを用いた。Arガスを流量1000sccm、Nガスを流量200sccmで反応室に供給しながら、周波数2.45GHzのマイクロ波を反応室内に導入し、プロセスガスを励起させ、窒素ラジカルを発生させた。
【0099】
次に、第1絶縁膜41上に厚さ10nmの窒化シリコン膜42−aをPECVD法で形成した。成膜装置には平行平板型のPECVD装置を用いた。窒化シリコン膜42−aのPECVD装置での成膜条件は次の通りである。
<窒化シリコン膜42−a>
・膜の厚さ 10nm
・プロセスガスとその流量
NH(流量400sccm)
SiH(流量2sccm)
・基板温度 400℃
・成膜圧力 40Pa
・電極間距離 30mm
・電極面積 600cm
・高周波電源出力 100W
【0100】
次に、PECVD法で作製した窒化シリコン膜42−aの上部を高密度プラズマにより窒化処理して、窒化シリコン膜42−Aを形成した。この高密度プラズマ処理の条件は次の通りである。
<高密度プラズマ窒化処理>
・プロセスガスとその流量
(流量200sccm)
Ar(流量1000sccm)
・基板温度 400℃
・反応圧力 40Pa
・マイクロ波周波数 2.45GHz
・マイクロ波電源出力 3000W
【0101】
次に、窒化シリコン膜42−A上に、第2絶縁膜44を形成した。ここでは、PECVD法で、厚さ10nmの酸化窒化シリコン膜を形成した。プロセスガスにはSiHおよびNOを用いた。基板温度400℃、成膜圧力40Paとし、SiHを流量1sccmで、NOを流量800sccmでPECVD装置の反応室に供給した。また、電極間距離を28mm、高周波電源出力を150Wとした。
【0102】
次に、第2絶縁膜44上に、スパッタ装置により、厚さ400nmのAl−Ti合金膜を形成し、エッチングによりAl−Ti合金膜を所定の形状に加工して、電極45を形成した。以上により、メモリ素子Aが完成した。また、比較メモリ素子aは、PECVD法で形成した窒化シリコン膜42−aをそのまま電荷トラップ膜に用いた素子である。高密度プラズマ窒化処理を行わない点の他は、メモリ素子Aと同じ方法を用いることで、比較メモリ素子aを作製した。
【0103】
メモリ素子B、比較メモリ素子b、Z、zの作製は、各素子の窒化シリコン膜42の形成工程以外は、メモリ素子Aと同じ方法で行った。以下、窒化シリコン膜42−b、42−zのPECVD装置での成膜条件を示す。
【0104】
<窒化シリコン膜42−b>
・膜の厚さ 10nm
・プロセスガスとその流量
NH(流量100sccm)
(流量400sccm)
SiH(流量2sccm)
・基板温度 400℃
・成膜圧力 40Pa
・電極間距離 30mm
・電極面積 600cm
・高周波電源出力 100W
【0105】
<窒化シリコン膜42−z>
・膜の厚さ 10nm
・プロセスガスとその流量
(流量400sccm)
SiH(流量2sccm)
Ar(流量50sccm)
・基板温度 400℃
・成膜圧力 40Pa
・電極間距離 30mm
・電極面積 600cm
・高周波電源出力 100W
【0106】
そして、窒化シリコン膜42−b、42−zの上部をそれぞれメモリ素子Aと同じ条件で高密度プラズマにより窒化処理を行い、窒化シリコン膜42−B、42−Zを形成した。
【0107】
以上の工程により、本発明および比較例の容量素子(A、B、Z、a、b、z)を作製した。
【0108】
メモリ素子A、Bと比較メモリ素子a、b、Z、zとの大きな違いは2点あり、PECVD法で窒化シリコン膜を形成するときのプロセスガスと、高密度プラズマによる窒化処理の有無である。メモリ素子A、Bと比較メモリ素子a、b、Z、zの各窒化シリコン膜42の対応を表1に示す。
【0109】
【表1】

【0110】
メモリ素子A、B、ならびに比較メモリ素子a、b、Z、zの電荷保持特性を評価するため、容量−電圧特性を測定した。測定は以下のように行った。データの書込後の電荷保持特性を評価するため、メタルハライドランプ光を照射しながら電極45に書込電圧15Vを10m秒印加し、窒化シリコン膜42に電子を注入することで書込動作を行った。なお、メモリ素子B、比較メモリ素子a、bの書込電圧は17Vとした。しかる後、ホットプレートを使用して、シリコン基板40を150℃に加熱した状態(保持状態)を維持した。初期状態(書込動作前)、書込動作直後、書込動作後、3時間加熱した保持状態において、各素子の容量−電圧特性を測定した。
【0111】
さらに、書き込んだデータを消去した後の各メモリ素子の電荷保持特性を評価するため、書込動作を行った後、消去動作を行った。まず、電極45に電圧15Vを10m秒印加し、窒化シリコン膜42に電子を注入し、書込を行った。なお、メモリ素子B、比較メモリ素子a、bの書込電圧は17Vとした。次いで、消去を行うため、電極45に−15Vの電圧を10m秒印加し、窒化シリコン膜42にホールを注入して、消去を行った。消去動作後、ホットプレートを使用してシリコン基板40を150℃に加熱した状態を維持した。初期状態(書込動作前)、書込動作直後、消去動作直後において、各素子の容量−電圧特性を測定した。さらに、消去動作後の電荷保持特性として、消去動作後、150℃での加熱状態を3時間維持した後の容量−電圧特性を測定した。
【0112】
図7A〜図7D、図8A〜図8Dおよび図9A〜図9Dに各素子の容量−電圧特性曲線(以下、「C−Vカーブ」という。)を示す。図7A、図7Bに、メモリ素子Aの書込状態、および消去状態のC−Vカーブを示し、図7C、図7Dに比較メモリ素子aの書込状態、および消去状態のC−Vカーブを示す。図8A、図8Bに、メモリ素子Bの書込状態、消去状態のC−Vカーブを示し、図8C、図8Dに比較メモリ素子bの書込状態、および消去状態のC−Vカーブを示す。図9A、図9Bに、比較メモリ素子Zの書込状態、消去状態のC−Vカーブを示し、図9C、図9Dに比較メモリ素子zの書込状態、および消去状態のC−Vカーブを示す。
【0113】
まず、これらのC−Vカーブから、メモリ素子Aは電荷保持能力が優れていることが分かる。図7Aおよび図7Bは、窒化シリコン膜42−aの上部を窒化した窒化シリコン膜42−Aを電荷トラップ膜に用いることにより、書込のための電圧が低下され、書込動作後の電荷保持特性が大きく改善されることを示している。
【0114】
一方、図9A〜図9DのC−Vカーブは、窒化シリコン膜42−zに対する窒化処理は、比較メモリ素子Zの電荷保持特性の向上にほとんど寄与しないことを表している。
【0115】
各C−Vカーブから求めた各メモリ素子のVthウインドウ(しきい値電圧ウインドウ)ΔVthを、表2に示す。メモリ素子A、メモリ素子BのVthウインドウが最も大きく、電荷保持特性が最も優れていることが分かった。
【0116】
【表2】

【0117】
表2のΔVthは、ΔVth=Vmw−Vmeから算出した値である。Vmwは、書込動作後の保持状態のC−Vカーブから算出した電圧値であり、Vmeは、消去動作後の保持状態のC−Vカーブから得られる電圧値である。書込後の保持状態のC−Vカーブの傾きが最大の接線において、y座標がそのC−Vカーブの容量の最大値(y座標の最大値)の半値である点のx座標の値が、電圧値Vmwである。他方、消去後の保持状態のC−Vカーブの傾きが最大の接線において、y座標がそのC−Vカーブの容量の最大値(y座標の最大値)の半値である点のx座標の値が、電圧値Vmeである。VmwとVmeの差分がΔVthである。
なお、ΔVthは、それぞれ、3時間、150℃の加熱状態を保持した各素子のC−Vカーブから算出した値である。
【0118】
さらに、表2には、窒化シリコン膜の窒化処理によるΔVthの変化を示している。表2は、窒化シリコン膜42−a、42−bの上部を窒化した窒化シリコン膜42−A、42−Bを電荷トラップ膜に用いることで、メモリ素子の電荷保持特性が向上すること、および、窒化シリコン膜42−zに対する窒化処理は、比較メモリ素子Zの電荷保持特性の向上にほとんど寄与しないことを表している。つまり、容量−電圧特性の測定データは、窒化される前の窒化シリコン膜の組成が、不揮発性半導体メモリ素子の電荷保持特性の向上に影響を与えることを示している。そこで、窒化処理後の窒化シリコン膜、および窒化処理前の窒化シリコン膜の組成を分析した。
【0119】
図10Aに、メモリ素子Aの窒化シリコン膜42−Aの組成元素の厚さ方向の濃度分布(デプスプロファイル)を示す。図10Bに、窒化シリコン膜42−Aの組成を分析した結果を示す。図10Aのデプスフロファイルの横軸は深さを示し、0nmは窒化シリコン膜42−Aの表面に相当する。
【0120】
まず、図10Aのデプスプロファイルについて説明する。分析手法には、高分解能ラザフォード後方散乱分析法(HR−RBS:High−Resolution Rutherford Backscattering Spectrometry:)、高分解能弾性反跳粒子検出法(HR−ERDA:High−Resolution Elastic Recoil Detection Analysis)を用いた。分析装置は、神戸製鋼所社製高分解能ラザフォード後方散乱分析装置(HRBS500)を用いた。また、入射イオンビームにHR−RBSではHeイオンビームを用い、HR−ERDAではNイオンビームを用いた。
【0121】
分析した試料は、直径2インチのシリコンウエハ上に、窒化シリコン膜42−aと同じ条件で形成された厚さ16.83nmの窒化シリコン膜である。高密度プラズマによる窒化処理時間は90秒である。
【0122】
HR−RBSスペクトルによって、窒化シリコン膜がSi、NおよびOを含むことが分かった。酸素が検出されたのは、窒化シリコン膜表面が酸素、水分などにより汚染され、また酸化されたためであると考えられる。HR−ERDAスペクトルから、窒化シリコン膜がHを含むことが分かった。図10Aは、HR−RBSスペクトルおよびHR−ERDAスペクトルから得られた窒化シリコン膜のSi、N、HおよびOのデプスプロファイルである。
【0123】
図10AのHのデプスプロファイルは、窒化シリコン膜が、水素濃度が低い上部領域と、水素濃度が高い下部領域を有することを示している。また、Nのデプスプロファイルから、N*による窒化処理によって、上部領域の窒素濃度が増加していることが分かる。なお、OおよびHのデプスプロファイルの表面(深さ0nm)から深さ2nm以下の範囲で、表面に向かって酸素濃度および水素濃度が急激に増加しているが、その理由は、窒化シリコン膜の表面が大気に含まれている酸素、水分によって汚染された、または酸化されたためである、と考えられる。この窒化シリコン膜の汚染および酸化の影響が、Nのデプスプロファイルの深さ2nm以下の範囲での窒素濃度の低下に現れている。
【0124】
窒化シリコン膜の上部領域、および下部領域の組成を調べるため、上部領域と下部領域の厚さを分析した。この分析にはエリプソメータを用いた。窒化シリコン膜を光学定数の異なる2層構造の多層膜と仮定したモデルを想定し、測定されたスペクトルを解析した。このような2層構造のモデルを想定できるのは、物質の組成により、屈折率、消衰係数などの光学定数が異なるからである。解析の結果、試料の上部領域の厚さは5〜6nm程度であることが分かった。
【0125】
HR−RBSスペクトルおよびHR−ERDAスペクトルから、窒化シリコン膜の上部領域と下部領域のSi、N、HおよびOの濃度を分析した。図10Bは窒化シリコン膜の組成およびその濃度を示した表である。図10Bの計算領域は、図10Aのデプスプロファイルの横軸の座標に対応する。図10Bには、深さ0.9nm以上2.6nm以下の範囲での窒化シリコン膜のデータと、深さ6.1nm以上11.3nm以下の範囲での窒化シリコン膜のデータが示されている。前者が、上部領域のデータであり、後者が下部領域のデータである。
なお、図10Bの濃度の測定誤差は、Siが±1atomic%、Nが±3atomic%、Hが±1atomic%、およびOが±2atomic%である。
【0126】
図10Bのデータでは、上部領域の水素濃度は下部領域の約50%に低下している。よって、窒化シリコン膜の上部領域と下部領域で水素濃度に差があることが、メモリ素子A、およびBが他の比較メモリ素子a、b、Z、zよりも優れた電荷保持特性を示すことの要因であると考えられる。ここでは、窒化シリコン膜(42−A、42−B、42−Z)の高密度プラズマ処理の基板温度は、PECVD装置での窒化シリコン膜(42−a、42−b、42−z)の成膜時の基板温度と同じ400℃であることから、窒化処理において、プラズマ中の活性種と反応していない下部領域は、PECVD法で形成されたときの窒化シリコン膜の組成と同じであると考えられる。
【0127】
図11に、PECVD装置で形成した5種類の窒化シリコン膜の組成およびその濃度を示す。測定した試料は、シリコンウエハ上の厚さ100nmの窒化シリコン膜である。分析には、ラザフォード後方散乱分析法(RBS)および、水素前方散乱分析法(HFS:Hydrogen Forward scattering Spectrometry)を用いた。以下の説明では、5種類の窒化シリコン膜を区別するための記号、SIN−1、SIN−2、SIN−3、SIN−4、SIN−5を使用する。
なお、図11の濃度の測定誤差は、Siが±1atomic%、Nが±3atomic%、Hが±1atomic%、およびOが±2atomic%である。
【0128】
SIN−1、SIN−2、SIN−3、SIN−4およびSIN−5の形成は、それぞれ、同じ平行平板型のPECVD装置で行い、基板温度400℃、成膜圧力40Pa、電極間距離を30mmとした。形成条件が異なるのはプロセスガスとその流量である。図11にプロセスガスとその流量を示す。例えば、SIN−1の「SiH/NH=2/400」との表記は、反応室に、2sccmの流量でSiHを供給し、400sccmの流量でNHを供給したことを表している。SIN−1、SIN−2およびSIN−3は窒素ソースガスがアンモニア(NH)であり、SIN−4およびSIN−5は窒素ソースガスが窒素(N)である。
【0129】
SIN−1は、メモリ素子Aおよび比較メモリ素子aを作製するために形成した窒化シリコン膜42−aと同じ条件で形成した膜である。また、SIN−3は、メモリ素子Bおよび比較メモリ素子bを作製するために形成した窒化シリコン膜42−bと同じ条件で形成した膜である。SIN−4は、比較メモリ素子Z、zを作製するために形成した窒化シリコン膜42−zと同じ条件で作製された膜である。そこで、SIN−1、SIN−3およびSIN−4の組成に注目して、SIN−1、SIN−3の上部の窒化処理によって、メモリ素子A、Bの電荷保持特性が向上した理由を説明する。
【0130】
図10Aおよび図10Bのデータは、窒化処理で窒化シリコン膜の上部は水素濃度が減少したことを示している。このことから、Nによる窒化処理では、Nと窒化シリコン膜のSi−H結合およびN−H結合が反応することで、これらの結合が切断されて、結合からHが離脱するという反応が生じていると考えられる。
【0131】
また、図11の水素濃度に注目すると、SIN−4の水素濃度は、10atomic%程度であり、SIN−1の50%以下である。よって、SIN−4をNで処理しても、膜から離脱するHが少ないと考えられる。このことは、比較メモリ素子ZのC−Vカーブ(図9A、図9(B)参照)と、比較メモリ素子zのC−Vカーブ(図9C、図9D参照)に変化がなく、ほぼ同じであることの要因と思われる。
【0132】
以上のことから、窒化処理によって、窒化シリコン膜の上部領域と下部領域の水素濃度差を大きくするには、CVD法で形成される窒化シリコン膜の水素濃度を高くすることが有効である。水素濃度が10atomic%程度のSIN−4がほとんど窒化されないこと、水素濃度が21atomic%程度の窒化シリコン膜(SIN−1)の上部を窒化処理した電荷トラップ膜を備えたメモリ素子Aの電荷保持特性が向上したこと、水素濃度が17atomic%程度の窒化シリコン膜(SIN−3)の上部を窒化処理した電荷トラップ膜を備えたメモリ素子Bの電荷保持特性が向上したこと、および、図10Aおよび図11の濃度の測定誤差(±1〜3atomic%)などを考慮すると、CVD法で少なくとも15atomic%の水素を含む窒化シリコン膜を形成し、この膜の上部を窒化処理することが電荷保持特性の向上に有効である。また、CVD法で形成される窒化シリコン膜の水素濃度は20atomic%以上がより好ましい。
つまり、電荷トラップ膜の下部領域の水素濃度は15atomic%以上とし、上部領域の水素濃度は下部領域よりも低くすることが、メモリ素子の電荷保持特性の向上に有効である。下部領域の水素の濃度を20atomic%以上とすることがより好ましい。
【0133】
このような電荷トラップ膜の形成は、CVD法で水素濃度が15atomic%以上の窒化シリコン膜を形成する工程、および、この窒化シリコン膜の上部を窒化する工程によって行うことができる。
【0134】
図11のデータを参照すると、水素濃度を15atomic%以上とするには、窒化シリコン膜の原料となる窒素ソースガスにNHを用いることが有効である。SIN−1、SIN−2、およびSIN−3は全て水素濃度が15atomic%以上である。これは、NHはN−H結合を有しているため、NHを原料に形成された窒化シリコン膜のN−H結合濃度が高くなるからである。このことにより、N−H結合を有しない窒素ソースを原料にする場合よりも、N−H結合を有する窒素ソースを原料にすることで、窒化シリコン膜の水素濃度を容易に高くすることができる。よって、窒化シリコン膜の水素濃度を高くするには、窒素ソースガスにN−H結合を有する窒化水素ガスを用いることが効果的である。なお、Nを窒素ソースガスに用いる場合は、Hをプロセスガスに添加するとよい。
【0135】
図12に、SIN−1、SIN−3およびSIN−4のN−H結合およびSi−H結合濃度を示す。結合濃度は、FTIR(フーリエ変換赤外分光計、Fourier Transform Infrared Spectroscopy)で測定した吸収スペクトルから算出した。NHを窒素ソースガスにしたSIN−1、SIN−3は、N−H結合に対するSi−H結合の濃度比(以下、「(Si−H/N−H)比」という。)が0.03以下であるのに対して、Nを原料にするSIN−4は結合濃度比(Si−H/N−H)が1以上である。
【0136】
(Si−H/N−H)比が小さい窒化シリコン膜は、深い準位にトラップ準位があり、かつその深い準位が膜中に局在している。このような窒化シリコン膜は、膜中に電荷がトラップされにくいため、メモリ素子の書込および消去に必要な電圧が高くなる。その一方、トラップ準位が深いため、トラップされている電荷が膜中から漏れにくく、電荷保持特性がよいと考えられる。このことは、図7(C)の比較メモリ素子aのC−Vカーブが示している。
【0137】
他方、(Si−H/N−H)比が大きい窒化シリコン膜は、その比が小さい窒化シリコン膜よりも多くのトラップ準位を有するが、その準位の多くが浅い準位にある。そのことから、(Si−H/N−H)比が大きい窒化シリコン膜は、電荷を容易にトラップするが、その反面、トラップ準位が浅いため、トラップされている電荷が漏れやすく、電荷保持特性が悪い。このことは、図9C、図9Dの比較メモリ素子zのC−Vカーブが示している。
【0138】
したがって、電荷トラップ膜において、半導体領域から遠い側である上部領域は電荷トラップ密度の高い窒化シリコンで形成し、半導体領域に近い側である下部領域は深い準位にトラップ準位を有する窒化シリコンで形成することが、不揮発性メモリ素子の書込および消去に必要な電圧を低下させ、かつ電荷保持特性を向上させることに効果的である。
【0139】
このような下部領域を形成するため、窒化シリコン膜を形成するための窒素ソースガスに、NH等のN−H結合を有する窒化水素ガスを用いることが効果的である。Nを窒素ソースガスに用いる場合は、Hをプロセスガスに添加するとよい。このようなプロセスガスを用いることで、(Si−H/N−H)比が0.1以下の窒化シリコン膜を容易に形成することができる。また、その比の値を0.05以下にすることも容易になる。また、このような上部領域を形成するためにCVD法で形成された窒化シリコン膜上部を窒化することは、電荷トラップ密度の増加に有効である。
【0140】
また、図10Bのデータから、窒化処理工程によって、窒化シリコン膜の上部領域の水素濃度を30%以上低下させることが、窒化シリコン膜の電荷保持特性の向上に有効であると考えられる。したがって、電荷トラップ膜を構成する窒化シリコン膜は、その上部領域の水素濃度は、半導体領域側にある領域の水素濃度の0.7倍以下であることが好ましく、0.6倍以下がより好ましい。
【0141】
なお、電荷トラップ膜の上部領域および下部領域の組成の分析方法には、図10Bのデータを取得した方法を用いることができる。ただし、上部領域の組成を分析する場合は、下部領域との境界、第2絶縁膜もしくは導電膜との界面が分析範囲に含まれないようにする。また、下部領域も同様であり、上部領域との境界、および第1絶縁膜との界面が分析範囲に含まれないようする。
【0142】
(実施形態4)
本実施形態では、本発明に係る半導体装置の一例として、不揮発性半導体記憶装置について説明する。
【0143】
図13は、不揮発性半導体記憶装置の構成例を示すブロック図である。図13の不揮発性半導体記憶装置50は、メモリセルアレイ51と、メモリセルアレイ51に接続され、書込動作、消去動作および読出動作などを制御する駆動回路部52が同一の基板上に形成されている。メモリセルアレイ51は、複数のワード線WLと、ワード線WLと交差して形成された複数のビット線BL、ならびにワード線WLおよびビット線BLに接続された複数のメモリセルMCを有する。メモリセルMCのデータの蓄積手段として、実施形態1乃至3で説明した不揮発性メモリトランジスタが用いられる。そのため、電荷保持特性に優れ、信頼性の高い不揮発性半導体記憶装置を得ることができる。
【0144】
駆動回路部52は、駆動回路部52の各種の回路を制御するためのコントロール回路60、ワード線選択のためのロウデコーダ61、ビット線選択のためのカラムデコーダ62、アドレスバッファ63、昇圧回路64、センスアンプ65、データバッファ66およびデータ入出力バッファ67を有する。
【0145】
データの書込、読出を行うメモリセルのアドレスAddは、アドレスバッファ63を介してコントロール回路60に入力される。コントロール回路60で、内部ロウアドレス信号および内部カラムアドレス信号が生成され、前者はロウデコーダ61に転送され、後者はカラムデコーダ62に転送される。
【0146】
データの書込および消去には、電源電位を昇圧した電位が用いられる。このため、コントロール回路60により動作モードに応じて制御される昇圧回路64が設けられている。昇圧回路64の出力はロウデコーダ61やカラムデコーダ62を介して、メモリセルアレイ51に形成されているワード線WLやビット線BLに供給される。
【0147】
カラムデコーダ62で、メモリセルアレイ51から読み出されたデータは、センスアンプ65に入力される。センスアンプ65に入力されたデータは、データバッファ66に保持される。コントロール回路60の制御により、データバッファ66に保持されているデータがデータ入出力バッファ67を介して、不揮発性半導体記憶装置50から出力される。書込データは、データ入出力バッファ67を介してデータバッファ66に一旦保持され、コントロール回路60の制御によりカラムデコーダ62に転送される。
【0148】
メモリセルアレイ51では、電源電位とは異なる電位を用いる必要がある。そのため、少なくともメモリセルアレイ51と駆動回路部52の間は、電気的に絶縁分離されていることが望ましい。実施形態2のように、不揮発性メモリ素子および駆動回路部52のトランジスタを絶縁膜上に形成した半導体膜で形成することにより、各半導体素子を容易に絶縁分離することができる。それにより、誤動作を無くし、消費電力の低い不揮発性半導体記憶装置を得ることができる。
【0149】
次に、図14〜図16を用いて、メモリセルアレイの構成例を説明する。
【0150】
図14は、NOR型のメモリセルを有するメモリセルアレイ51の構成例を示す回路図である。メモリセルMCが行列状に配置されている。図14には、3行×2列のメモリセルMCを示している。各メモリセルMCは1ビットの情報を記憶し、スイッチング用トランジスタTsと不揮発性メモリトランジスタTmを有し、これらのトランジスタが直列に接続されている。メモリセルアレイ51には、1列ごとにビット線BL(BL0、BL1)が設けられ、2列ごとにソース線SL(SL0)が設けられている。これらの信号線はカラムデコーダ62に接続されている。また、1行ごとに第1ワード線WL(WL1〜WL3)および第2ワード線WL(WL11、WL22、WL33)が設けられ、これらの信号線はロウデコーダ61に接続されている。
【0151】
ビット線BL0および第1ワード線WL1で特定されるメモリセルMCの構成について説明する。他のメモリセルMCも同様の構成を有する。スイッチング用トランジスタTsは、ゲートが第2ワード線WL11に接続され、ソースまたはドレインの一方がビット線BL0に接続され、他方が不揮発性メモリトランジスタTm(以下、「メモリトランジスタTm」という。)に接続されている。メモリトランジスタTmは、ゲートが第1ワード線WL1に接続され、ソースまたはドレインの一方がスイッチング用トランジスタTsに接続され、他方がソース線SL0に接続されている。
【0152】
スイッチング用トランジスタTsとメモリトランジスタTmを共にnチャネル型とした場合、ビット線BL0および第1ワード線WL1で特定されるメモリセルMCへのデータの書き込み方法、および消去方法の一例を説明する。
【0153】
データを書き込むには、第2ワード線WL11とビット線BL0の電位をハイレベル(以下、「Hレベル」という。)にし、ビット線BL1の電位をロウレベル(以下、「Lレベル」という。)にし、第1ワード線WL1に高電圧を印加する。これにより、メモリトランジスタTm01の電荷トラップ膜に電荷(この場合は電子)が注入される。メモリトランジスタTm01からデータを消去するには、第2ワード線WL11およびビット線BL0の電位をHレベルとし、第1ワード線WL1に負の高電圧を印加する。
【0154】
図15は、メモリセルアレイ51の他の構成例を示す回路図である。メモリセルMCは、スイッチング用トランジスタTsがなく、メモリトランジスタTmのソースまたはドレインの一方がスイッチング素子を介さずに、ビット線BLに電気的に接続している。また、1列ごとにソース線SL(SL0〜SL2)が形成されている。スイッチング用トランジスタTsがないため、図15のメモリセルアレイ51では、スイッチング用トランジスタTsのオン、オフ制御するための第2ビット線WL11、WL22、WL33を設けていない。これらの点が図14のメモリセルと異なる。
【0155】
次に、メモリトランジスタTmをnチャネル型とした場合、ビット線BL0および第1ワード線WL1で特定されるメモリセルMCへのデータ書込動作、および消去動作の一例を説明する。
【0156】
ソース線SL0の電位をLレベル(例えば0V)とし、第1ワード線WL1に高電圧を与え、ビット線BL0にはデータ”0”又は”1”に応じた電位を与える。例えば、”0”の場合はビット線BL0の電位をHレベルとし、”1”の場合はその電位をLレベルの電位にする。”0”データを書き込むため、ドレインにHレベルの電位が与えられたメモリトランジスタTm01ではドレイン近傍でホットエレクトロンが発生し、これが電荷トラップ膜に注入される。つまりF−Nトンネル電流により、電荷トラップ膜に電子が注入され、メモリトランジスタTm01のしきい値電圧が変動する。”0”データが与えられたメモリセルMCでは、ドレインとソースとの間の強い横方向電界により、ドレインの近傍でホットエレクトロンが生成され、これが電荷トラップ膜に注入される。電荷トラップ膜に電子が注入されることで、メモリトランジスタTm01のしきい値電圧が高くなる。この状態が、メモリセルMCで”0”のデータを保持している状態である。
【0157】
”1”データを書き込む場合は、電荷トラップ膜への電子注入は生じさせず、メモリトランジスタTm01のしきい値電圧を変動させない。つまり、しきい値電圧の低い状態が保持され、消去状態が保持される。
【0158】
データを消去するためには、ソース線SL0の電位を正の高電位(例えば、10V程度の正電位)とし、ビット線BL0は浮遊状態とする。そして第1ワード線WLlの電位を負の高電位とする。このことにより、メモリトランジスタTm01の電荷トラップ膜から電子が、半導体領域に引き抜かれる。これにより、データ”1”の消去状態になる。
【0159】
データの読出は、例えば、次のように行う。ソース線SLの電位を0V、ビット線BL0の電位を0.8V程度とし、第1ワード線WL1の電位を、データ”0”と”1”に相当するしきい値電圧の中間値に設定された読出電位を与える。この時、メモリトランジスタTmからビット線BL0に流れる電流の有無を、ビット線BLに接続されるセンスアンプ65で判定する。
【0160】
図16は、メモリセルアレイ51の他の構成例を示す回路図である。図16は、NAND型のメモリセルを有するメモリセルMCの等価回路を示す。複数のNANDセルが集まってブロックBLK1を構成している。図16で示すブロックBLK1のワード線は32本である(ワード線WL0〜WL31)。メモリセルMCは直列に接続された複数のメモリトランジスタTmでなる。
【0161】
ビット線BL0で特定されるNANDセルの構成を説明する。メモリトランジスタTm0〜Tm31のゲートは、それぞれ、互いに異なる第1ワード線WL0〜WL31に接続され、第1行目のメモリトランジスタTm0のソース又はドレインには第1選択トランジスタS1が接続され、第32行目のメモリトランジスタTm31には第2選択トランジスタS2が接続されている。第1選択トランジスタS1は、第1選択ゲート線SG1およびビット線BL0に接続され、第2選択トランジスタS2は、第2選択ゲート線SG2およびビット線BL0に接続されている。
【0162】
ここでは、メモリトランジスタTm0〜Tm31、第1選択トランジスタS1、および第2選択トランジスタS2が、nチャネル型として、書込動作および消去動作を説明する。NAND型のメモリセルでは、メモリセルMCを消去状態にしてから、書込動作を行う。消去状態とは、メモリセルMCの各メモリトランジスタTm0〜Tm31のしきい値電圧が負電圧値である状態をいう。
【0163】
図17Aは、メモリトランジスタTm0に”0”を書き込む動作の一例を説明する回路図であり、図17Bは、”1”を書き込む動作の一例を説明する回路図である。”0”を書き込むには、ビット線BL0を0V(接地電位)にして、第2選択ゲート線SG2に例えばVcc(電源電位)を印加し第2選択トランジスタS2をオン状態にする。他方、第1選択ゲート線SG1は0Vとして、選択トランジスタS1はオフ状態にする。次に、ワード線WL0の電位を高電位Vpgm(20V程度)とし、その他のワード線WL1〜WL31の電位を中間電位Vpass(10V程度)にする。ビット線BL0の電位は0Vなので、選択されたメモリトランジスタTm0のチャネル形成領域の電位は0Vとなる。ワード線WL0とチャネル形成領域との電位差が大きいため、メモリトランジスタTm0の電荷トラップ膜にはF−Nトンネル電流により電子が注入される。これにより、メモリトランジスタTm0のしきい値電圧が正電圧となり、”0”が書き込まれた状態となる。
【0164】
メモリトランジスタTm0に”1”を書き込む場合は、図17Bに示すように、ビット線BLの電位を例えば電源電位Vccにする。第2選択ゲート線SG2の電位がVccであるため、選択トランジスタS2がカットオフする。従って、メモリトランジスタTm0のチャネル形成領域はフローティング状態となる。次に、ワード線WL0の電位を正の高電位である書込電位Vpgm(20V)とし、それ以外のワード線WL1〜WL31の電位を中間電位Vpass(10V)とする。各ワード線WL0〜WL31と、メモリトランジスタTm0のチャネル形成領域との容量カップリングにより、チャネル形成領域の電圧がVcc−Vthよりも高くなり、例えば8V程度となる。なお、VthとはメモリトランジスタTm0のしきい値電圧値である。そのため、ワード線WL0とチャネル形成領域の電位差が小さくなる。したがって、メモリトランジスタTm0の電荷トラップ膜には、F−Nトンネル電流による電子注入が起こらない。よって、メモリトランジスタTm0のしきい値電圧値は負の電圧値をとり、”1”が書き込まれた状態になる。
【0165】
図18Aは、消去動作の一例を説明する回路図である。図16のメモリセルアレイ51では、同じブロックBLK1に含まれる複数のメモリトランジスタTmのデータが同時に消去される。図18Aに示すように、選択されたブロック全てのワード線WL0〜WL31の電位を0Vとし、半導体領域を負の高電位である消去電位Versとし、ビット線BL、ソース線SLの電位をフローティング状態とする。これにより、ブロックBLK1に含まれる全てのメモリトランジスタTmの電荷トラップ膜から、電子がトンネル電流により半導体領域に放出され、メモリトランジスタTmのしきい値電圧が減少し、負の値となる。
【0166】
図18Bは、メモリトランジスタTm0からデータを読み出すための読出動作の一例を説明する回路図である。読出動作では、第1ワード線WL0の電位を読出電位Vr(例えば0V)とし、非選択のメモリセルのワード線WL1〜31および選択ゲート線SG1、SG2を電源電位Vccより少し高い読出し用中間電位Vreadとする。この結果、メモリトランジスタTm0以外のメモリトランジスタTm1〜Tm31はトランスファートランジスタとして機能するので、センスアンプ65において、ビット線BL0に流れる電流を検出することで、メモリトランジスタTm0に電流が流れるか否かを検出することができる。メモリトランジスタTm0に記憶されたデータが”0”の場合、メモリトランジスタTm0はオフ状態であるので、ビット線BL0に電流が流れない。一方、そのデータが”1”の場合、メモリトランジスタTm0はオン状態であるので、ビット線BL0に電流が流れる。
【0167】
(実施形態5)
本実施形態では半導体装置として不揮発性半導体記憶装置について説明する。さらに、本実施形態では、不揮発性半導体記憶装置の作製方法について説明する。本実施形態の不揮発性記憶装置は、図13の不揮発性半導体記憶装置50と同じ回路を有し、そのメモリセルアレイは図14の回路構成を有するものとする。
【0168】
不揮発性半導体記憶装置において、メモリセルアレイのトランジスタは駆動回路部のトランジスタと比較して駆動電圧が高いため、メモリセルアレイのトランジスタと駆動回路部のトランジスタは、それぞれ、駆動電圧によって構造を変えることが好ましい。例えば、駆動電圧が小さく、しきい値電圧値のばらつきを小さくしたい場合にはゲート絶縁膜を薄くすることが好ましい。駆動電圧が大きく、ゲート絶縁膜に高い絶縁耐圧性が求められる場合にはゲート絶縁膜を厚くすることが好ましい。
【0169】
そこで、本実施形態では、ゲート絶縁膜の厚さが異なるトランジスタを同一基板上に作製する方法を説明する。また、本実施形態では、トランジスタおよび不揮発性メモリトランジスタを薄膜トランジスタで作製する方法を説明する。
【0170】
図19は、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置の断面図であり、図20は、その上面図である。図19には、A−B間に駆動回路部52に設けられるpチャネル型トランジスタTrpの断面図が示され、C−D間に駆動回路部52に設けられるnチャネル型トランジスタTrnの断面図が示され、E−F間にメモリセルMCの不揮発性メモリトランジスタTmおよびスイッチング用トランジスタTsの断面図が示されている。図20AのA−B切断線による断面図、図20BのC−D切断線による断面図、および図20CのE−F切断線による断面図が、それぞれ、図19のA−B間、C−D間、E−F間に示されている。なお、図20には、隣り合う2つのメモリセルMCの上面図を示す。
【0171】
図19に示すように、pチャネル型トランジスタTrp(以下、「トランジスタTrp」という。)、nチャネル型トランジスタTrn(以下、「トランジスタTrn」という。)、メモリトランジスタTm、およびスイッチング用トランジスタTs(以下、「トランジスタTs」という。)は、同一の基板100上に形成されている。各トランジスタの半導体膜は、基板100上の下地絶縁膜101上に形成されている。
【0172】
トランジスタTrpの半導体膜にはp型の高濃度不純物領域137、138およびチャネル形成領域139が形成され、トランジスタTrnの半導体膜にはn型の高濃度不純物領域141、142およびチャネル形成領域143が形成されている。トランジスタTsおよびメモリトランジスタTmはnチャネル型のトランジスタであり、トランジスタTsの半導体膜にはn型の高濃度不純物領域144、145およびチャネル形成領域146が形成され、メモリトランジスタTmの半導体膜には、n型の高濃度不純物領域147、148およびチャネル形成領域149が形成されている。
【0173】
トランジスタTrpおよびトランジスタTrnのゲート絶縁膜は絶縁膜107でなり、トランジスタTsのゲート絶縁膜は絶縁膜106と絶縁膜107でなり、トランジスタTrp、Trnよりも厚く形成されている。トランジスタTrp、TrnおよびTsには、それぞれ、ゲート絶縁膜を介して、チャネル形成領域139、143、146と重なる導電膜131、132、133を有する。これらの導電膜131、132、133は、各トランジスタTrp、Trn、Tsのゲート電極を構成する。導電膜133は図14の第2ワード線WLを構成する。
【0174】
メモリトランジスタTmは、MONOS型のメモリ素子であり、チャネル形成領域149上に、絶縁膜111でなる第1絶縁膜、窒化シリコン膜112、絶縁膜107でなる第2絶縁膜、導電膜134を有する。窒化シリコン膜112は上部と下部で水素濃度が異なり、電荷トラップ膜として機能する。導電膜134はメモリトランジスタTmのゲート電極を構成し、かつ図14の第1ワード線WLを構成する。
【0175】
導電膜161、導電膜162は、トランジスタTrpのソース電極またはドレイン電極を構成し、導電膜163、導電膜164は、トランジスタTrnのソース電極またはドレイン電極を構成する。導電膜165は図14のソース線SLであり、導電膜167はビット線BLである。導電膜166はメモリトランジスタTmとトランジスタTsを電気的に接続する電極である。
【0176】
以下、図19、図21〜図24の断面図、ならびに図20、図25および図26の上面図を用いて、本実施形態の半導体装置の作製方法を説明する。
【0177】
まず、図21Aに示すように、基板100上に下地絶縁膜101を形成する。基板100は、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、金属基板(例えば、ステンレス基板など)を用いることができる。下地絶縁膜101は、CVD法やスパッタ法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン等の絶縁材料でなる単層構造、または積層構造とすることができる。例えば、下地絶縁膜101を2層構造とする場合、1層目に窒化酸化シリコン膜を形成し、2層目に酸化窒化シリコン膜を形成するとよい。また、1層目に窒化シリコン膜を形成し、2層目に酸化シリコン膜を形成してもよい。このように、ブロッキング層として機能する窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜を下地絶縁膜101として形成することによって、基板100に含まれるNaなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属などによって、トランジスタが汚染されることを防ぐことができる。
【0178】
次に、下地絶縁膜101上に、半導体膜180を形成する。半導体膜180の形成は、次の通りに行うことができる。スパッタ法、LPCVD法、PECVD法等を用いて、シリコン(Si)を主成分とする非晶質半導体膜を形成し、非晶質半導体膜を結晶化させて、結晶性半導体膜を形成する。なお、非晶質半導体膜として、非晶質シリコン膜、非晶質ゲルマニウムまたは非晶質シリコンゲルマニウム膜などを形成することができる。また非晶質半導体膜の結晶化は、レーザ結晶化法、RTA又はファーネスアニール炉を用いる熱結晶化法、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化法またはこれら方法を組み合わせた方法等により行うことができる。基板100として、SOI基板を用いた場合、SOI基板の半導体層が半導体膜180を構成し、半導体層の下層の絶縁層が下地絶縁膜101を構成する。
【0179】
次に、半導体膜180を島状にエッチングして、図21Bに示すように、半導体膜102〜105を形成する。図25Aは半導体膜102の上面図であり、図25Bは半導体膜103の上面図であり、図25Cは半導体膜104および105の上面図である。半導体膜102、103、104および105は、それぞれ、トランジスタTrp、トランジスタTrn、トランジスタTs、およびメモリトランジスタTmの半導体領域を構成する。図25(C)に示すように、1つの半導体膜105に2つのメモリトランジスタTmが形成される。
【0180】
次に、半導体膜102〜105を覆って、厚さ10nm〜50nm絶縁膜を形成する。この絶縁膜は、LPCVD法、PECVD法などにより、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコンでなる単層膜または2層以上の多層膜で形成される。次に、この絶縁膜を選択的に除去し、図21Bに示すように、半導体膜102、103、105の表面を露出させ、半導体膜104を覆う絶縁膜106を形成する。絶縁膜106の形成工程は、絶縁膜106を形成する部分をレジストよって覆い、そのほかの部分をエッチングで除去することで行うことができる。
【0181】
次に、図21Cに示すように、半導体膜102、103、105上に絶縁膜109、110、111をそれぞれ形成する。絶縁膜111はメモリトランジスタTmの第1絶縁膜を構成する。絶縁膜109〜111の厚さは、1nm以上10nm以下が好ましく、1nm以上5nm以下がより好ましい。
【0182】
絶縁膜109〜111は、半導体膜102、103、105への熱処理又はプラズマ処理等によって形成することができ、図2Aの第1絶縁膜11の作製工程と同様の方法で形成することができる。ここでは、マイクロ波励起された高密度プラズマを用いて、半導体膜102、103、105を酸化処理した後、窒化処理を行い、各半導体膜の表面に絶縁膜109〜111を形成する。酸化処理のプロセスガスには、酸素(O)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用い、窒化処理のプロセスガスには窒素(N)とアルゴン(Ar)との混合ガスを用いる。まず、高密度プラズマ中のOにより半導体膜102、103、105を酸化して、その表面に2nm〜5nm程度の厚さの酸化シリコン膜を形成する。次に、NとArの混合ガスをマイクロ波で励起して、高密度プラズマ中にNを生成させて、Nにより酸化シリコン膜の上部を窒化する。窒化処理時間を調節することで、窒素を10〜50atomic%程度含む、厚さ2nm程度領域を酸化シリコン膜の上部に形成することができる。
【0183】
次に、図22Aに示すように、半導体膜102〜105を覆って、窒化シリコン膜122を形成する。窒化シリコン膜122の形成は、図2Bの窒化シリコン膜22の形成と同様に行うことができる。例えば、PECVD法で、プロセスガスにNHおよびSiHの混合ガスを用い、流量比NH/SiH=400/2とし、基板温度400℃で窒化シリコン膜122を形成する。窒化シリコン膜122には15atomic%以上の水素を含ませる。
【0184】
次に、窒化シリコン膜122の上部を窒化し、窒化シリコン膜112を形成する。図22Bは窒化シリコン膜122の窒化処理工程を説明する断面図であり、図22の参照符号112Bは、窒化された上部領域を示し、参照符号112Aは窒化されていない下部領域を示す。この窒化処理工程は、図2(C)の窒化シリコン膜22の窒化処理工程と同様に行うことができる。例えば、マイクロ波で、NおよびArの混合ガスを励起させる高密度プラズマ処理で行うことができる。高密度プラズマ処理は、マイクロ波の周波数2.45GHz、基板温度400℃、反応圧力40Paの条件下で行うことができる。この窒化処理により、下部領域112Aよりも水素濃度が低い上部領域112Bを有する窒化シリコン膜112が形成される。このような窒化シリコン膜112でなる電荷トラップ膜を有することで、メモリトランジスタTmの電荷保持特性を向上させることができる。
【0185】
次に、窒化処理された窒化シリコン膜112をエッチングして、図22Cに示すように、半導体膜105上に電荷トラップ膜を形成する。このエッチング処理で、絶縁膜109および110を除去し半導体膜102、103を露出させる。
【0186】
次に、図23Aに示すように基板100上に絶縁膜107を形成する。この絶縁膜107は駆動回路部52のトランジスタTrpおよびTrnのゲート絶縁膜を構成し、メモリトランジスタTmの第2絶縁膜を構成する。絶縁膜107の形成は、図2Dの第2絶縁膜14の形成と同様に行うことができる。例えば、絶縁膜107を単層で設ける場合には、CVD法により酸化窒化シリコン膜を5〜50nmの厚さで形成する。また、絶縁膜107を3層構造で設ける場合には、1層目に酸化窒化シリコン膜を形成し、2層目に窒化シリコン膜を形成し、3層目に酸化窒化シリコン膜を形成する。
【0187】
次に、図23Bに示すように、絶縁膜107上に導電膜130を形成する。導電膜130は、トランジスタTrp、Trn、TsおよびメモリトランジスタTmのゲート電極を構成する。導電膜130は図2Dの導電膜15と同様に形成することができ、単層構造または2層以上の多層構造とすることができる。2層構造の場合、下層を窒化タングステン膜、窒化モリブデン膜、または窒化チタン膜で形成することができ、上層をタンタル膜、モリブデン膜、またはチタン膜で形成することができる。例えば、導電膜130を窒化タンタル膜とタングステン膜の積層膜で形成することができる。
【0188】
なお、メモリトランジスタTmをMNOS型とする場合は、導電膜130を形成する工程の前に、エッチングにより、メモリトランジスタTmが形成される領域から絶縁膜107を除去する。
【0189】
次に、図24Aに示すように、導電膜130をエッチングして、半導体膜102、103、104、105に重なる導電膜131、132、133、134を形成する。
【0190】
次に、図24Bに示すように、導電膜131、132、133、134をマスクに用いて、半導体膜102〜105にドーパント不純物元素を添加し、高濃度不純物領域を形成する。まず、半導体膜102を覆うレジストでなるマスクを形成する。そして、ドナー不純物元素を組成に含むガスを励起し、イオン注入法またはイオンドーピング法により、ドナー不純物元素を半導体膜103〜105に添加する。ドナー不純物元素はPまたはAsであり、プロセスガスには、PH、AsHを用いることができる。この工程により、半導体膜103〜105には、n型の高濃度不純物領域141、142、144、145、147、148が形成され、導電膜132〜134と重なっている領域には、チャネル形成領域143、146および149が形成される。
【0191】
次に、半導体膜102を覆っていたマスクを除去し、半導体膜103〜105を覆うマスクをレジストで形成する。そして、アクセプタ不純物元素を組成に含むガスを励起し、イオン注入法またはイオンドーピング法により、アクセプタ不純物元素を半導体膜102に添加する。アクセプタ不純物元素はBであり、プロセスガスには、B、BF、(CHB(トリメチルボロン)等を用いることができる。この工程により、半導体膜102には、p型の高濃度不純物領域137、138が形成され、導電膜131と重なっている領域には、チャネル形成領域139が形成される。
【0192】
なお、先に、半導体膜102にアクセプタ不純物元素を添加し、次に半導体膜103〜105にドナー不純物元素を添加してもよい。
【0193】
図24Bに対応する上面図が図26A〜Cに図示されている。図26(C)に示す導電膜133、導電膜134は、それぞれ、図14の第2ワード線WL、第1ワード線WLである。
【0194】
半導体膜103〜105を覆っているマスクを除去する。次に、図19に示すように、導電膜131〜134を覆う絶縁膜155を形成する。絶縁膜155、107、106および窒化シリコン膜112に開口部を形成し、高濃度不純物領域137、138、141、142、144、145、147、および148の一部を露出させる。絶縁膜155上に、半導体膜102〜105に形成された高濃度不純物領域に電気的に接続する導電膜161〜167を形成する。この状態の上面図が図20である。導電膜165、導電膜167は、それぞれ、図14のソース線SL、ビット線BLである。導電膜166はメモリトランジスタTmとトランジスタTsを電気的に接続する電極である。
【0195】
絶縁膜155は単層構造または積層構造とすることができる。絶縁膜155を構成する絶縁膜として、CVD法やスパッタ法等により、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等の無機絶縁膜を形成することができる。また、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリビニルフェノール、ベンゾシクロブテン、アクリル等の有機材料でなる膜、シロキサン樹脂等のシロキサン材料からなる膜を形成することができる。
【0196】
導電膜161〜167は単層構造または積層構造とすることができる。導電膜161〜167を構成する導電性材料には、CVD法やスパッタ法等により、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、マンガン(Mn)、ネオジム(Nd)から選択された単体金属元素、又はこれらの元素を主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることができる。アルミニウムを主成分とする合金材料とは、例えば、アルミニウムとニッケルの合金、ニッケルと、炭素とシリコンの一方又は両方とを含むアルミニウム合金などがある。アルミニウムやアルミニウムシリコンは抵抗値が低く、安価であるため、導電膜164を形成する材料に適している。
【0197】
例えば、導電膜161〜167を3層構造の導電膜で形成する場合、バリア層とアルミニウムシリコン(Al−Si)層とバリア層の積層膜、バリア層とアルミニウムシリコン(Al−Si)層とバリア層の積層膜などがある。なお、バリア層は、チタン、チタンの窒化物、モリブデン、又はモリブデンの窒化物からなる薄膜で形成される。上層と下層にバリア層を設けると、アルミニウムやアルミニウムシリコンのヒロックの発生を防止することができる。また、還元性の高い元素であるチタンからなるバリア層を形成すると、結晶質半導体層上に薄い自然酸化膜ができていたとしても、この自然酸化膜を還元し、結晶質半導体層と良好なコンタクトをとることができる。
【0198】
以上の工程により、メモリセルアレイ51および駆動回路部52を同一基板100上に集積された不揮発性半導体装置を作製することができる。
【0199】
(実施形態6)
実施形態5では、メモリセルMCに形成される不揮発性メモリ素子の第2絶縁膜として機能する絶縁層と駆動回路部に形成される薄膜トランジスタのゲート絶縁膜を同時に形成する作製方法を説明したが、不揮発性半導体記憶装置の作製方法はこれに限られない。例えば、図27に示すように形成することもできる。
【0200】
まず、実施形態5の作製方法により、図23Aに示す工程までを行う。そして、絶縁膜107をエッチングして、図27Aに示すように、窒化シリコン膜112に重なる部分を残し、他の部分を除去する。
【0201】
次に、高密度プラズマによる酸化処理により、半導体膜102、および半導体膜103の表面を酸化して、図27Bに示すように、絶縁膜172、絶縁膜173を形成する。この高密度プラズマ処理は、図2Aの第1絶縁膜11の形成と同様に行うことができる。
【0202】
そして、実施形態5と同様に図23B以降の工程を行うことで、図27Cに示すように、トランジスタTrp、トランジスタTrn、メモリトランジスタTmおよびスイッチング用トランジスタTsを有する不揮発性半導体記憶装置が作製される。本実施形態の不揮発性半導体記憶装置は、トランジスタTrp、トランジスタTrnのゲート絶縁膜は、それぞれ、絶縁膜172、絶縁膜173でなり、トランジスタTsのゲート絶縁膜は絶縁膜106でなるという構成の他は、実施形態5の不揮発性半導体記憶装置(図19、図20参照)と同じ構成を有する。
【0203】
(実施形態7)
本実施形態では半導体装置として不揮発性半導体記憶装置について説明する。さらに、本実施形態では、不揮発性半導体記憶装置の作製方法について説明する。本実施形態の不揮発性記憶装置は、図13の不揮発性半導体記憶装置50と同じ回路を有し、そのメモリセルアレイは、図14の回路構成を有するものとする。
【0204】
また、本実施形態も、実施形態5と同様に、ゲート絶縁膜の厚さが異なるトランジスタを同一基板上に作製する方法を説明する。また、本実施形態では、トランジスタおよび不揮発性メモリトランジスタを薄膜トランジスタで作製する方法を説明する。
【0205】
図28は、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置の断面図であり、図20は、その上面図である。図28には、A−B間に駆動回路部52に設けられるpチャネル型トランジスタTrpの断面図が示され、C−D間に駆動回路部52に設けられるnチャネル型トランジスタTrnの断面図が示され、E−F間にメモリセルMCの不揮発性メモリトランジスタTmおよびスイッチング用トランジスタTsの断面図が示されている。図20Aの一点鎖線A−B、図20Bの一点鎖線C−Dで切った断面図、図20Cの一点鎖線E−Fで切った断面図が、それぞれ、図19に示されている。なお、図20には、隣り合う2つのメモリセルMCの上面図を示す。
【0206】
図28に示すように、トランジスタTrp、トランジスタTrn、メモリトランジスタTm、スイッチング用トランジスタTsは、同一の基板100上に形成されている。各トランジスタの半導体膜は基板100上の下地絶縁膜101上に形成されている。
【0207】
トランジスタTrpの半導体膜にはp型の高濃度不純物領域137、138およびチャネル形成領域139が形成されている。トランジスタTrnの半導体膜にはn型の高濃度不純物領域141、142およびチャネル形成領域143が形成されている。トランジスタTsおよびメモリトランジスタTmはnチャネル型のトランジスタである。トランジスタTsの半導体膜にはn型の高濃度不純物領域144、145およびチャネル形成領域146が形成され、メモリトランジスタTmの半導体膜にはn型の高濃度不純物領域147、148およびチャネル形成領域149が形成されている。
【0208】
トランジスタTrp、Trnのゲート絶縁膜は絶縁膜107でなる。トランジスタTsのゲート絶縁膜は絶縁膜182、窒化シリコン膜112、および絶縁膜107の積層膜でなり、トランジスタTrp、Trnよりも厚く形成されている。トランジスタTrp、TrnおよびTsには、それぞれ、ゲート絶縁膜を介して、チャネル形成領域139、143、146と重なる導電膜131、132、133を有する。これらの導電膜131、132、133は、各トランジスタTrp、Trn、Tsのゲート電極を構成する。また、導電膜133は、図14の第2ワード線WLを構成する。
【0209】
メモリトランジスタTmは、MONOS型のメモリ素子であり、半導体膜上に絶縁膜183でなる第1絶縁膜、窒化シリコン膜112でなる電荷トラップ膜、絶縁膜107でなる第2絶縁膜、導電膜134を有する。窒化シリコン膜112は上部と下部で水素濃度が異なる。導電膜134はメモリトランジスタTmのゲート電極を構成し、かつ図14の第1ワード線WLを構成する。
【0210】
導電膜161、導電膜162は、トランジスタTrpのソース電極またはドレイン電極を構成し、導電膜163、導電膜164は、トランジスタTrnのソース電極またはドレイン電極を構成する。導電膜165、導電膜167は、それぞれ、図14のソース線SL、ビット線BLを構成する。導電膜166はメモリトランジスタTmとトランジスタTsを電気的に接続する電極である。
【0211】
以下、図29〜図31の断面図、ならびに図20、図25および図26の上面図を用いて、本実施形態の半導体装置の作製方法を説明する。なお、本実施形態の作製方法において、図19〜図26と同じ符号の構成要素については、その構成および作製方法は実施形態5を適用することが可能であるため、その詳細な説明は実施形態5の説明を援用することとする。
【0212】
まず、図29Aに示すように、下地絶縁膜101上に半導体膜180を形成し、半導体膜180上に絶縁膜182を形成する。絶縁膜182は、図21Bの絶縁膜106と同様に形成することができる。
【0213】
次に、絶縁膜182をエッチングして、図29Bに示すように、トランジスタTsの半導体領域と重なる部分を残す。絶縁膜182は、トランジスタTsのチャネル形成領域と重なる部分に形成される。次に、半導体膜180の露出された部分に、酸化処理、窒化処理、またはこれらの処理の組み合わせた処理を行い、図29Bに示すように、半導体膜180表面に厚さ1nm以上10nm以下の絶縁膜183を形成する。絶縁膜183の形成は、図21Cの絶縁膜109〜111の形成と同様に行うことができ、例えば、半導体膜180を高密度プラズマ処理して、絶縁膜183を形成することができる。
【0214】
次に、図29Cに示すように、絶縁膜182、183を覆って窒化シリコン膜122を形成する。次に、窒化シリコン膜122の上部を窒化して、図30Aに示すように、下部領域112Aおよび上部領域112Bを有する窒化シリコン膜112を形成する。
【0215】
次に、レジストでなるマスクを形成し、図30Bに示すように、絶縁膜183、窒化シリコン膜112をエッチングする。トランジスタTsには、絶縁膜182、絶縁膜183および窒化シリコン膜112の積層膜が形成される。トランジスタTsにおいて、窒化シリコン膜112と絶縁膜183の端部はほぼ一致し、絶縁膜182の端部はこれらよりも内側に存在している。また、メモリトランジスタTmには、絶縁膜183でなる第1絶縁膜と、窒化シリコン膜112でなる電荷トラップ膜が形成される。メモリトランジスタTmにおいて、窒化シリコン膜112と絶縁膜183の端部はほぼ一致している。
【0216】
次に、半導体膜180を島状にエッチングして、図30Cに示すように、半導体膜102〜105を形成する。図25Aは半導体膜102の上面図であり、図25Bは半導体膜103の上面図であり、図25Cは半導体膜104および105の上面図である。半導体膜102、103、104および105は、それぞれ、トランジスタTrp、トランジスタTrn、トランジスタTs、およびメモリトランジスタTmの半導体領域を構成する。
【0217】
次に、図31Aに示すように、半導体膜102〜105を覆う、絶縁膜107を形成する。次に、半導体膜102〜105の上方にそれぞれ導電膜131、132、133、134を形成する。
【0218】
なお、メモリトランジスタTmをMNOS型とする場合は、導電膜134、136、138、140を形成する工程の前に、エッチングにより、メモリトランジスタTmが形成される領域から絶縁膜107を除去する。
【0219】
次に、実施形態5の図24Bと同様の工程を行い、導電膜131、132、133、134をマスクに用いて、半導体膜102にp型の高濃度不純物領域を形成し、半導体膜103、104、105にn型の高濃度不純物領域を形成する。半導体膜103〜105には、n型の高濃度不純物領域141、142、144、145、147、148が形成され、導電膜132〜134と重なっている領域には、チャネル形成領域143、146および149が形成される。半導体膜102には、p型の高濃度不純物領域137、138が形成され、導電膜131と重なっている領域には、チャネル形成領域139が形成される。なお、図31Bに対応する上面図が図26A〜Cに図示されている。
【0220】
次に、図19と同様に、絶縁膜155を形成し、絶縁膜上に半導体膜102〜105に形成された高濃度不純物領域に電気的に接続する導電膜161〜167を形成する。この状態の断面図が図28であり、上面図が図20である。
【0221】
以上のプロセスを経て、メモリセルアレイ51および駆動回路部52を同一基板100上に集積した不揮発性半導体記憶装置が作製される。
【0222】
(実施形態8)
本実施形態では、半導体基板を用いた不揮発性半導体記憶装置および、その作製方法について説明する。また、不揮発性記憶装置は図13の不揮発性半導体記憶装置50と同じ回路を有し、そのメモリセルアレイ51は、図16のNANDセルを有するものとして、その構成および作製方法を説明する。
【0223】
また、本実施形態も、ゲート絶縁膜の厚さが異なるトランジスタを同一基板上に作製する方法を説明する。本実施形態では、基板にバルク状の半導体基板が用いられ、半導体素子の半導体領域は、半導体基板中に形成される。
【0224】
図32は、本実施形態の不揮発性半導体記憶装置の断面図であり、図33は、その上面図である。図32には、A−B間に駆動回路部52に設けられる回路の代表例として、pチャネル型トランジスタTrpおよびnチャネル型トランジスタTrnでなるCMOS型インバータ回路の断面図が示されている。C−D間に、メモリセルアレイ51の主要な要素として、メモリセルMCの第1選択トランジスタS1、および不揮発性メモリトランジスタTmの断面図が示されている。
【0225】
図33Aはインバータ回路の上面図であり、図33AのA−B切断線による断面図が図32のA−B間に示されている。図33Bはメモリセルアレイ51の上面図であり、図33BのC−D切断線による断面図が図32のC−D間に示されている。図33Bには、3つのメモリトランジスタTmが直列に接続されたNANDセルと、NANDセルに接続された第1選択トランジスタS1(以下、「トランジスタS1」という。)と第2選択トランジスタS2(以下、「トランジスタS2」という。)とを有するメモリセルMCの上面図が図示されており、図33Bには、2列のメモリセルMCが図示されている。
【0226】
図32に示すように、トランジスタTrp、トランジスタTrn、トランジスタS1およびメモリトランジスタTmは、半導体基板1000に形成されている。各トランジスタの半導体領域は半導体基板1000に形成されている。トランジスタTrpの半導体領域には、チャネル形成領域1171、ソース領域またはドレイン領域を構成するp型の高濃度不純物領域1161、および、ソース領域またはドレイン領域の延長部であるp型のエクステンション領域1141が形成されている。トランジスタTrnの半導体領域には、チャネル形成領域1172、ソース領域またはドレイン領域を構成するn型の高濃度不純物領域1162、n型の低濃度不純物領域1142が形成されている。
【0227】
トランジスタS1およびメモリトランジスタTmは、nチャネル型のトランジスタである。トランジスタS1の半導体領域には、チャネル形成領域1173、ソース領域またはドレイン領域を構成するn型の高濃度不純物領域1163および1164、ならびにn型の低濃度不純物領域1143、1144が形成されている。メモリトランジスタTmの半導体領域には、チャネル形成領域1174、ソース領域またはドレイン領域を構成するn型の高濃度不純物領域1164、およびn型の低濃度不純物領域1144が形成されている。
【0228】
トランジスタTrpおよびトランジスタTrnのゲート絶縁膜は絶縁膜1107でなる。トランジスタS1のゲート絶縁膜は絶縁膜1106と絶縁膜1107でなり、トランジスタTrp、Trnよりも厚く形成されている。
【0229】
図33Aに示すように、トランジスタTrp、トランジスタTrnのソース領域には、それぞれ、導電膜1191、1193が電気的に接続されている。トランジスタTrpのドレイン領域とトランジスタTrnのドレイン領域が導電膜1192によって電気的に接続され、CMOS型のインバータ回路が構成されている。また、導電膜1131、1132は、それぞれ、トランジスタTrp、Trnのゲート電極を構成する。なお、図32のプラグ電極1181〜1184は、導電膜1191〜1193と、各トランジスタTrp、Trnのソース領域またはドレイン領域とを電気的に接続するための電極である。
【0230】
メモリトランジスタTmは、MONOS型のメモリ素子であり、チャネル形成領域1174上に、絶縁膜1111でなる第1絶縁膜、窒化シリコン膜1112でなる電荷トラップ膜、絶縁膜1107でなる第2絶縁膜、導電膜1134を有する。窒化シリコン膜1112は上部と下部で水素濃度が異なる。導電膜1134はメモリトランジスタTmのゲート電極を構成し、かつ図16のワード線WLを構成する。
【0231】
トランジスタS1は、高濃度不純物領域1164によりメモリトランジスタTmと直列に接続されている。トランジスタS1に電気的に接続されている導電膜1194は、図16のソース線SLを構成する。導電膜1194は、プラグ電極1185により高濃度不純物領域1163に接続されている。また、導電膜1133はトランジスタS1のゲート電極を構成し、かつ、図16の第1選択ゲート線SG1を構成する。
【0232】
なお、第2選択トランジスタS2(以下、「トランジスタS2」という。)は、n型のトランジスタであり、トランジスタS1を同じ構造を有する。トランジスタS2は高濃度不純物領域1164によりメモリトランジスタTmと直列に接続されている。トランジスタS2のゲート電極は、図33Bに図示する導電膜1135で構成されている。この導電膜1135は、図16の第2選択ゲート線SG1を構成する。また、図33Bのn型の高濃度不純物領域1165は、図16のビット線BLを構成し、かつ、トランジスタS2のソース領域またはドレイン領域を構成する。このことにより、トランジスタS2がビット線BLに電気的に接続されていることになる。
【0233】
図32、図34〜図38の断面図、ならびに図33、図39および図40の上面図を用いて、本実施形態の作製工程を説明する。
【0234】
まず、図34Aに示すように、半導体基板1000を用意する。ここではn型の導電型を有する単結晶シリコンウエハを半導体基板1000として用いる。半導体基板1000上に絶縁膜1001を形成する。絶縁膜1001の形成方法には、熱酸化処理により、半導体基板1000上面を酸化して、酸化シリコンを形成する方法を用いることができる。絶縁膜1001上にCVD法を用いて窒化シリコン膜1002を形成する。また、窒化シリコン膜1002は、絶縁膜1001を形成した後に高密度プラズマ処理により絶縁膜1001を窒化することで形成できる。
【0235】
次に、窒化シリコン膜1002上にレジストでなるマスクを形成し、このマスクを用いて、窒化シリコン膜1002、絶縁膜1001および半導体基板1000をエッチングする。このエッチングにより、図34Bに示すように、半導体基板1000に凹部1004を形成する。このエッチングはプラズマを利用したドライエッチングにより行うことができる。
【0236】
レジストのマスクを除去した後、図34Cに示すように、半導体基板1000に形成された凹部1004を埋める絶縁膜1005を形成する。絶縁膜1005は、CVD法やスパッタ法等を用いて、酸化シリコン、窒化シリコン、酸素を含む窒化シリコン、窒素を含む酸化シリコン等の絶縁材料でなる膜を用いて形成する。ここでは、絶縁膜1005として、常圧CVD法または減圧CVD法で、TEOS(テトラエチルオルソシリケート)ガスを用いて酸化シリコンを形成する。
【0237】
次に、研削処理、研磨処理又はCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことによって、図35Aに示すように、絶縁膜1005、窒化シリコン膜1002、および絶縁膜1001を除去し、半導体基板1000の表面を露出させる。この処理により、半導体基板1000の凹部1004に残った絶縁膜1005間に半導体領域1102、1103、1104が設けられる。次に、アクセプタ不純物元素を選択的に半導体基板1000に添加することによって、pウェル1101を形成する。図35AのA−B間の上面図が図39Aであり、C−D間の上面図が図39Bである。
【0238】
なお、本実施形態では、半導体基板1000としてn型の半導体基板を用いているため、半導体領域1102には不純物元素の導入を行っていないが、ドナー不純物元素を導入することにより半導体領域1102にnウェルを形成することもできる。なお、p型の半導体基板を用いる場合には、nウェルを形成することで半導体領域1102を形成する。この場合、半導体領域1103、1104にpウェルを形成してもよいし、形成しなくてもよい。
【0239】
次に、図35Bに示すように、半導体基板1000の上面に絶縁膜1106を形成する。この絶縁膜1106は、実施形態5の絶縁膜106と同様に形成することができる。ここでは、絶縁膜1106として、酸化窒化シリコンをCVD法で形成する。なお、半導体領域1104に形成された絶縁膜1106は、トランジスタS1およびトランジスタS2のゲート絶縁膜を構成する。
【0240】
次に、レジストでなるマスクを形成し、このマスクを用いて絶縁膜1106をエッチングして、図35Cに示すように、半導体領域1102および1103に形成された絶縁膜1106を除去し、かつ半導体領域1104のメモリトランジスタTmが形成される領域から絶縁膜1106を除去する。
【0241】
レジストでなるマスクを除去した後、半導体基板1000の表面を窒化処理、酸化処理、または両方の処理を行って、図35Cに示すように半導体領域1102の表面に絶縁膜1109を形成し、半導体領域1103の表面に絶縁膜1110を形成し、半導体領域1104の表面に絶縁膜1111を形成する。絶縁膜1109〜1111の形成は、図21Cの絶縁膜109〜111の形成と同様に行うことができ、例えば、高密度プラズマ処理で形成することができる。
【0242】
次に、図36Aに示すように、絶縁膜1106、1109〜1111を覆って、窒化シリコン膜1122を形成する。窒化シリコン膜1122は、図2Bの窒化シリコン膜22と同様に形成することができる。次に、窒化シリコン膜1122の上部を窒化して、図36Bに示すように、下部領域1112Aおよび上部領域1112Bを有する窒化シリコン膜1112を形成する。この窒化処理工程は、図2Cの窒化シリコン膜22上部の窒化処理工程と同様に行うことができる。
【0243】
次にレジストでなるマスクを形成し、このマスクを用いて、図36Cに示すように、窒化シリコン膜1112、絶縁膜1109、1110をエッチングする。このエッチングにより、半導体領域1102から、窒化シリコン膜1112、絶縁膜1109を除去し、半導体領域1103から、窒化シリコン膜1112、絶縁膜1110を除去する。また、半導体領域1104において、トランジスタS1およびS2が形成される領域から窒化シリコン膜1112を除去し、メモリトランジスタTmが形成される領域に絶縁膜1111と窒化シリコン膜1112の積層膜を形成する。
【0244】
レジストでなるマスクを除去した後、図37Aに示すように、半導体領域1102〜1104を覆う絶縁膜1107を形成する。絶縁膜1107は単層膜又は積層膜のいずれでもよい。絶縁膜1107は図2Dの第2絶縁膜14と同様に形成することができる。
【0245】
次に、図37Bに示すように、絶縁膜1107上に導電膜1130を形成する。導電膜1130は、図23Bの導電膜130と同様に形成することができる。ここでは、窒化タンタル膜とタングステンの積層膜で導電膜1130を形成する。
【0246】
次に、導電膜1130をエッチングして、図37Bに示すように、導電膜1131〜1135を形成する(図37B、図40Aおよび図40B参照)。次に、導電膜1131〜1135をマスクにして、絶縁膜1107、絶縁膜1106、窒化シリコン膜1112、絶縁膜1111をエッチングし、半導体領域1102〜1104の導電膜1131〜1135と重ならない部分の表面を露出させる。
【0247】
次に、各半導体領域1102〜1104にドナー不純物元素またはアクセプタ不純物元素を選択的に導入し、図38Aに示すように不純物領域を形成する。導電膜1132〜1135をマスクにして、半導体領域1103、1104にドナー不純物を添加して、n型の低濃度不純物領域1142〜1144を形成する。ドナー不純物元素の添加工程では、半導体領域1102はレジストでなるマスクで覆われている。導電膜1131をマスクにして、半導体領域1102にアクセプタ不純物を添加して、p型のエクステンション領域1141を形成する。アクセプタ不純物元素の添加工程では、半導体領域1103、1104はレジストでなるマスクで覆われている。
【0248】
次に、導電膜1131〜1135の側面に接する絶縁膜でなるスペーサ1151〜1155を形成する(図38B、図40Aおよび図40B参照)。この絶縁膜でなるスペーサ1151〜1155はサイドウォールともよばれる。スペーサ1151〜1155の形成方法は、次の通りである。PECVD法やスパッタ法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン又は窒化酸化シリコン等の無機材料や、有機樹脂などの有機材料で、単層構造または2層以上の多層構造の絶縁膜を形成する。そして、垂直方向を主体とした異方性エッチングで、この絶縁膜を処理することで、導電膜1131〜1135の側面に接するスペーサ1151〜1155が形成される。
【0249】
次に、スペーサ1151〜1155、導電膜1131〜1135をマスクにして半導体領域1102〜1104にドナー不純物元素またはアクセプタ不純物元素を選択的に導入することで、ソース領域又はドレイン領域として機能する高濃度不純物領域を形成する(図38B、図40Aおよび図40B参照))。なお、図38AのA−B間の上面図が図40Aであり、図38BのC−D間の上面図が図40Bである。
【0250】
半導体領域1102には、アクセプタ不純物を添加して、p型の高濃度不純物領域1161を形成する。半導体領域1103、1104にドナー不純物を添加して、n型の高濃度不純物領域1162〜1165を形成する。アクセプタ不純物元素の添加工程では、半導体領域1103、および1104はレジストでなるマスクで覆われ、ドナー不純物元素の添加工程では、半導体領域1102はレジストでなるマスクで覆われている。この工程で、半導体領域1102〜1104には、導電膜1131〜1134と重なる領域が、チャネル形成領域1171〜1174となる。また、半導体領域1104の導電膜1135と重なる領域には、トランジスタS2のチャネル形成領域が形成される。
【0251】
なお、実施形態5〜7において、本実施形態と同様に、スペーサ(サイドウォール)の形成工程、およびドーパント不純物元素の添加工程を行うことで、トランジスタTrn、Ts、およびメモリトランジスタTmに、低濃度不純物領域を形成することができる。
【0252】
次に、図32に示すように、半導体基板1000を覆う絶縁膜1180を形成する。絶縁膜1180は、実施形態5の絶縁膜155と同様に形成することができる。ここでは、ポリシラザンを用いて、絶縁膜1180形成する。絶縁膜1180に、高濃度不純物領域1161〜1163に達するコンタクトホールを形成する。
【0253】
次に、コンタクトホールに埋め込まれたプラグ電極1181〜1185を形成する。プラグ電極1181〜1185は、ダマシン法を用いて、タングステンや銅で形成することができる。次に、絶縁膜1180上に、アルミニウムや銅などの低抵抗な材料でなる導電膜を形成し、この導電膜をエッチングして、プラグ電極1181に接続された導電膜1191、プラグ電極1182、1183接続された導電膜1192、プラグ電極1184に接続され導電膜1193、プラグ電極1185に接続された導電膜1194を形成する。
【0254】
以上の工程により、半導体基板1000に、p型のトランジスタTrpおよびn型のトランジスタTrnを有する駆動回路部52と、NAND型メモリセル、第1選択トランジスタS1、および第2選択トランジスタS2を有するメモリセルアレイ51とを備えた不揮発性半導体記憶装置が作製される。
【0255】
なお、図32の不揮発性半導体記憶装置では、素子分離のために凹部1004および絶縁膜1005を形成したが、凹部1004および絶縁膜1005を形成する代わりに、 選択酸化法(LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法)により、素子分離領域として半導体基板1000の酸化物を形成することができる。
【0256】
(実施形態9)
本実施形態では、半導体装置として、不揮発性半導体記憶装置を具備した電子機器について説明する。本発明は、記憶装置として不揮発性半導体記憶装置を具備したあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。例えば、ビデオカメラ、デジタルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、オーディオコンポ等)、コンピュータ、ゲーム機器、携帯情報端末(モバイルコンピュータ、携帯電話、携帯型ゲーム機または電子書籍等)、記録媒体を備えた画像再生装置(具体的にはDVD(digital versatile disc)等の記録媒体の音声データ、画像データが再生可能であり、かつその画像データを表示しうるディスプレイを備えた装置)などが挙げられる。それら電子機器の具体例を図41A〜図41Eに示す。
【0257】
図41A、図41Bは、デジタルカメラの外観図である。図41Bは、図41Aの裏側を示す図である。図41Aおよび図41Bに示すデジタルカメラは、筐体2111、表示部2112、レンズ2113、操作キー2114、シャッターボタン2115、不揮発性半導体記憶装置を具備する記憶媒体2116等を備えている。また、筐体2111は、使用者が記憶媒体2116を取り出すことができる構造となっている。デジタルカメラでは、撮影した静止画像データ、動画像データや、録音された音声データを記憶媒体2116に記憶できる。実施形態4〜8で説明した不揮発性半導体記憶装置が記憶媒体2116に適用されている。
【0258】
図41Cは、携帯電話の外観図である。携帯電話は携帯端末の1つの代表例である。携帯電話は筐体2121、表示部2122、操作キー2123などを含む。また、携帯電話は、不揮発性半導体記憶装置を具備する記憶媒体2125を備えており、筐体2111は、記憶媒体2125が取り出し可能な構造となっている。記憶媒体2125は、携帯電話の電話番号等のデータ、映像、音楽、音声データ等を記憶し、携帯電話において、記憶媒体2125に記憶された映像、音楽、音声データを再生することができる。実施形態4〜8で説明した不揮発性半導体記憶装置が記憶媒体2125に適用されている。
【0259】
図41Dは、デジタルプレーヤーの外観図である。デジタルプレーヤーはオーディオ装置の1つの代表例である。デジタルプレーヤーは、本体2130、表示部2131、操作部2133、イヤホン2134等を含む。なお、イヤホン2134の代わりにヘッドホンや無線式イヤホンを用いることができる。また、デジタルプレーヤーは、不揮発性半導体記憶装置を具備する記憶媒体2132が本体2130に内蔵されている。実施形態4〜8で説明した不揮発性半導体記憶装置が記憶媒体2132に適用されている。本体2130を使用者が記憶媒体2132を取り出すことができる構造としてもよい。
【0260】
記憶媒体2132には、例えば、記録容量が20〜200ギガバイトのNAND型不揮発性半導体記憶装置を用いることができる。操作部2133を操作することにより、静止画像、動画像、音声、音楽などのデータを記憶媒体2132に記憶し、また記憶されているデータを再生することができる。
【0261】
図41Eは、電子ブック(電子ペーパーともいう)の外観図である。電子ブックは、本体2141、表示部2142、操作キー2143、記憶媒体2144を含んでいる。またモデムが本体2141に内蔵されていてもよいし、無線で情報を送受信できる構成としてもよい。記憶媒体2144には、実施形態4〜8で説明した不揮発性半導体記憶装置を適用することができ、例えば、記録容量が20〜200ギガバイトのNAND型の不揮発性半導体記憶装置を用いることができる。操作キー2143を操作することにより、静止画像、動画像、音声、音楽などのデータを記憶媒体2144に記録することができ、また、記憶されているデータを再生することができる。なお、本体2141は、使用者が記憶媒体2144を取り出すことができる構造としてもよい。
【0262】
以上のように、本発明の半導体装置の適用範囲は極めて広く、記憶媒体を有するものであればあらゆる分野の電子機器に用いることが可能である。電荷保持特性が向上された不揮発性の記憶媒体を備えることで、電子機器の記憶性能の信頼性も向上させることができる。
【0263】
(実施形態10)
本実施形態では、非接触でデータの入出力が可能である半導体装置について説明する。半導体装置に、不揮発性半導体記憶装置が用いられる。本実施形態で説明する半導体装置は利用の形態によっては、RFIDタグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。
【0264】
図42は非接触でデータの入出力が可能である半導体装置の構成例を示すブロック図である。図42に示すように、半導体装置800は、非接触でデータを交信する機能を有し、高周波回路810、電源回路820、リセット回路830、クロック発生回路840、データ復調回路850、データ変調回路860、半導体装置800に含まれる回路の制御を行う制御回路870、記憶装置880およびアンテナ890を有する。
【0265】
アンテナ890で受信された信号は高周波回路810に入力される。高周波回路810は、その受信信号をデータ変調回路860、リセット回路830およびデータ復調回路850に出力する。電源回路820は受信信号から電源電位を生成する回路である。リセット回路830はリセット信号を生成する回路であり、クロック発生回路840は受信信号を基に各種クロック信号を生成する回路である。データ復調回路850は受信信号を復調して制御回路870に出力する回路であり、データ変調回路860は、制御回路870から出力された信号を変調する回路である。データ変調回路860で変調された信号は高周波回路810に入力され、アンテナ890から送信される。
【0266】
制御回路870としては、例えばコード抽出回路910、コード判定回路920、CRC判定回路930および出力ユニット回路940が設けられている。なお、コード抽出回路910は制御回路870に送られてきた命令に含まれる複数のコードをそれぞれ抽出する回路である。コード判定回路920は抽出されたコードとリファレンスに相当するコードとを比較して、命令の内容を判定する回路である。CRC判定回路930は判定されたコードに基づいて送信エラー等の有無を検出する回路である。
【0267】
記憶装置880は、書き変えが不可能なROMと、実施形態4〜8で説明した、書き換えが可能な不揮発性半導体記憶装置とを有する。この不揮発性半導体記憶装置は駆動電圧を低くすることができるため、半導体装置800全体の消費電力が抑えられるため、通信距離が伸び、また高品位の通信が可能となる。
【0268】
リーダ/ライタなどの通信機器から半導体装置800に信号を送り、半導体装置800から送られてきた信号を通信機器で受信することによって、半導体装置800のデータを読み取ることが可能となる。次に、半導体装置800の通信動作について説明する。アンテナ890により無線信号が受信される。無線信号は高周波回路810を介して電源回路820に送られ、高電源電位(以下、VDDと記す。)が生成される。VDDは半導体装置800が有する各回路に供給される。なお、半導体装置800を構成する複数の回路は、低電源電位(以下、VSSと記す。)が共通であり、VSSは接地電位とすることができる。
【0269】
データ復調回路850では、高周波回路810から送られた信号を復調して、復調信号を生成する。リセット回路830から出力されるリセット信号、クロック発生回路840から出力されるクロック信号、およびデータ復調回路850から出力される復調信号は制御回路870に送られる。制御回路870に送られた復調信号は、コード抽出回路910、コード判定回路920およびCRC判定回路930等によって解析される。そして、解析された信号にしたがって、記憶装置880に記憶されている情報が読み出される。この情報は出力ユニット回路940で符号化され、符号化された情報はデータ変調回路860で変調され、高周波回路810に入力される。高周波回路810に入力された信号は、アンテナ890から搬送波に載せられ、無線信号として送信される。
【0270】
図43A〜図43D、および図44A、図44Bを用いて、半導体装置800の使用例について説明する。図43Aは、半導体装置800を有するIDラベルの外観図である。ラベル台紙1500(セパレート紙)上に、半導体装置800を内蔵した複数のIDラベル1501が設けられている。IDラベル1501は、ボックス1502内に収納されている。
【0271】
IDラベル1501上には、その商品や役務に関する情報(商品名、ブランド、商標、商標権者、販売者、製造者等)が印刷されている。一方、内蔵されている半導体装置800には、商品の容器やラベルに明記しきれない多大な情報、例えば、商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状、価格、生産方法、使用方法、生産時期、使用時期、賞味期限、取扱説明、商品に関する知的財産情報等が記憶することがでる。このことにより、取引者や消費者は、簡易なリーダによって、半導体装置800に記憶されている情報にアクセスすることができる。また、生産者側からは半導体装置800に記憶されている情報は、書き換え、消去等も可能であるが、取引者、消費者側からは書き換え、消去等ができない仕組みになっている。
【0272】
図43Bは、IDラベル1501を野菜の包装1510に貼り付けて使用する方法を示す図である。IDラベル1501を商品に取り付けることにより、商品管理が容易になる。例えば、商品の経路を辿ることができるので、商品が盗難された場合でも、商品を迅速に発見することができる。
【0273】
図43Cは、本発明に係るIDカード1520の外観図である。IDカード1520には半導体装置800が内蔵されている。IDカード1520としては、キャッシュカード、クレジットカード、プリペイドカード、電子乗車券、電子マネー、テレフォンカード、会員カード等のあらゆるカード類が含まれる。
【0274】
図43Dは、パスポート1530の外観図である。パスポート1530には、半導体装置800が埋め込んだページがある。同様にして、運転免許証、クレジットカード、紙幣、硬貨、証券、商品券、チケット、トラベラーズチェック、健康保険証、住民票、戸籍謄本などに、半導体装置800を取り付けることができる。半導体装置800を取り付けることで、偽造防止の効果を持たせることができる。例えば、本物であることを示す情報のみを半導体装置800に記憶し、かつ不正に半導体装置800の情報を読み取ったり書き込んだりできないように、アクセス権を設定するとよい。
【0275】
図44Aおよび図44Bを用いて、半導体装置800の使用形態の一例について説明する。図44Aに示すように、表示部1610を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ1600が設けられている。品物1620の側面には半導体装置800が取り付けられている。半導体装置800にリーダ/ライタ1600をかざすと、半導体装置800から記憶されている情報が送信される。例えば、半導体装置800からは、品物の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴等、更に商品の説明等の商品に関する情報を送信する。リーダ/ライタ1600で情報を受信されると、携帯電話の表示部1610にその情報が表示される。
【0276】
また、図44Bに検品システムの構成例を示す。検品システムには、ベルトコンベア1630に、半導体装置800と通信を行うリーダ/ライタ1640が設けられている。リーダ/ライタ1640には、コンピュータ1641が接続され、コンピュータ1641にはデータベース1642が接続されている。商品1660には半導体装置800が取り付けられている。商品1660をベルトコンベア1630で搬送しながら、リーダ/ライタ1640と、商品1660に取り付けられた半導体装置800で通信を行い、半導体装置800の情報を読み取り、コンピュータ1641を介してデータベース1642に蓄積する。このように、検品システムに無線通信が可能な半導体装置800を利用することで、商品1660に直接表示できない多種多様な情報の取得を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】不揮発性メモリトランジスタの構成例を示す断面図。
【図2】図1の不揮発性メモリトランジスタの作製方法を説明する断面図。
【図3】高密度プラズマ処理装置の構成例を説明するための断面図。
【図4】不揮発性メモリトランジスタの断面図。
【図5】図4の不揮発性メモリトランジスタの作製方法を説明する断面図。
【図6】容量−電圧特性を測定した不揮発性メモリ容量素子の断面図。
【図7】不揮発性メモリ容量素子(メモリ素子A、比較メモリ素子a)の容量−電圧特性のグラフ。
【図8】不揮発性メモリ容量素子(メモリ素子B、比較メモリ素子b)の容量−電圧特性のグラフ。
【図9】不揮発性メモリ容量素子(比較メモリ素子Z、z)の容量−電圧特性のグラフ。
【図10】A:高密度プラズマによる窒化処理をした窒化シリコン膜のSi、N、HおよびOのデプスプロファイル。B:図10Aの窒化シリコン膜の組成およびその濃度を示す表。
【図11】PECVD法で形成した窒化シリコン膜の組成を示す表。
【図12】PECVD法で形成した窒化シリコン膜のSi−H結合、およびN−H結合の濃度を示す表。
【図13】半導体装置の構成例を示すブロック図。
【図14】メモリセルアレイの構成例を示す回路図。
【図15】メモリセルアレイの構成例を示す回路図。
【図16】メモリセルアレイの構成例を示す回路図。
【図17】A、B:メモリセルアレイの書込動作を説明する回路図。
【図18】A:メモリセルアレイの消去動作を説明する回路図。B:読出動作を説明する回路図。
【図19】半導体装置の断面図。
【図20】A〜C:図19の半導体装置の上面図。
【図21】A〜C:図19の半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図22】半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図23】A、B:図22Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図24】A、B:図23Bに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図25】A〜C:図21Bの上面図。
【図26】A〜C:図24Bの上面図。
【図27】半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図28】半導体装置の断面図。
【図29】A〜C:図28の半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図30】A〜C:図29Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図31】A、B:図30Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図32】半導体装置の断面図。
【図33】A、B:図32の半導体装置の上面図。
【図34】A〜C:図32の半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図35】A〜C:図34Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図36】A〜C:図35Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図37】A〜C:図36Cに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図38】A、B:図37Bに続く、半導体装置の作製方法を示す断面図。
【図39】A、B:図35Aの上面図。
【図40】A、B:図38Bの上面図。
【図41】不揮発性半導体記憶装置を有する電子機器の外観図。A、B:デジタルカメラ。C:携帯電話。D:デジタルプレーヤー。E:電子ブック。
【図42】非接触でデータの伝送が可能な半導体装置の構成例を示すブロック図。
【図43】A〜D:非接触でデータの伝送が可能な半導体装置の使用形態を示す図。
【図44】A、B:非接触でデータの伝送が可能な半導体装置の使用形態を示す図。
【符号の説明】
【0278】
BL ビット線
SL ソース線
SG1 第1選択ゲート線
SG2 第2選択ゲート線
WL ワード線、第1ワード線、第2ワード線
MC メモリセル
Tm 不揮発性メモリトランジスタ
Ts スイッチング用トランジスタ
S1、S2 選択トランジスタ
1 処理物
10 半導体領域
11 第1絶縁膜
12 電荷トラップ膜
12A 下部領域
12B 上部領域
14 第2絶縁膜
15 導電膜
16 チャネル形成領域
17、18 高濃度不純物領域
20 半導体基板
22 窒化シリコン膜
30 基板
31 下地絶縁膜
33 半導体膜
40 シリコン基板
41 第1絶縁膜
42 窒化シリコン膜
44 第2絶縁膜
45 電極
50 不揮発性半導体記憶装置
51 メモリセルアレイ
52 駆動回路部
60 コントロール回路
61 ロウデコーダ
62 カラムデコーダ
63 アドレスバッファ
64 昇圧回路
65 センスアンプ
66 データバッファ
67 データ入出力バッファ
80 処理室
81 ステージ
82 ガス供給部
83 シャワープレート
84 排気口
85 アンテナ
86 誘電体板
87 マイクロ波発生部
88 同軸導波管
89 温度制御部
100 基板
101 下地絶縁膜
102、103、104、105 半導体膜
106、107、109、111 絶縁膜
112 窒化シリコン膜
112A 下部領域
112B 上部領域
122 窒化シリコン膜
130、131、132、133、134 導電膜
137、138 p型の高濃度不純物領域
139、143、146、149 チャネル形成領域
141、142、144、145、147、148 n型の高濃度不純物領域
155 絶縁膜
161、161、162、163、164、165、166、167 導電膜
172、173 絶縁膜
180 半導体膜
182 絶縁膜
183 絶縁膜
800 半導体装置
810 高周波回路
820 電源回路
830 リセット回路
840 クロック発生回路
850 データ復調回路
860 データ変調回路
870 制御回路
880 記憶装置
890 アンテナ
910 コード抽出回路
920 コード判定回路
930 CRC判定回路
940 出力ユニット回路
1000 半導体基板
1001 絶縁膜
1002 窒化シリコン膜
1004 凹部
1005 絶縁膜
1101 pウェル
1102、1103、1104 半導体領域
1106 絶縁膜
1107 絶縁膜
1109、1110、1111 絶縁膜
1112 窒化シリコン膜
1112A 下部領域
1112B 上部領域
1130 導電膜
1131、1132、1133、1134、1135 導電膜
1141 エクステンション領域
1142、1143、1144 n型の低濃度不純物領域
1151、1152、1153、1154、1155 スペーサ
1161 p型の高濃度不純物領
1162、1163、1164、1165 n型の高濃度不純物領域
1171、1172、1173、1174 チャネル形成領域
1180 絶縁膜1181、1182、1183、1184、1185 プラグ電極
1191、1192、1193、1194 導電膜
1500 ラベル台紙
1501 IDラベル
1502 ボックス
1510 包装
1520 IDカード
1530 パスポート
1600 リーダ/ライタ
1610 表示部
1620 品物
1630 ベルトコンベア
1640 リーダ/ライタ
1641 コンピュータ
1642 データベース
1660 商品
2111 筐体
2112 表示部
2113 レンズ
2114 操作キー
2115 シャッターボタン
2116 記憶媒体
2121 筐体
2122 表示部
2123 操作キー
2125 記憶媒体
2130 本体
2131 表示部
2132 記憶媒体
2133 操作部
2134 イヤホン
2141 本体
2142 表示部
2143 操作キー
2144 記憶媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置であり、
前記不揮発性半導体メモリ素子は、
半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域、およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、
前記半導体領域上に形成され、前記チャネル形成領域と重なる導電膜と、
前記半導体領域と前記導電膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜と、
前記導電膜と前記第1絶縁膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる電荷トラップ膜と、
を有し、
前記電荷トラップ膜は窒化シリコン膜であり、厚さ方向に隣接する上部領域と下部領域を有し、
前記下部領域の水素濃度は、15atomic%以上であり、
前記上部領域の水素濃度は、前記下部領域の水素濃度よりも低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置であり、
前記不揮発性半導体メモリ素子は、
半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域、およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、
前記半導体領域上に形成され、前記チャネル形成領域と重なる導電膜と、
前記半導体領域と前記導電膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜と、
前記導電膜と前記第1絶縁膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる電荷トラップ膜と、
を有し、
前記電荷トラップ膜は窒化シリコン膜であり、厚さ方向に隣接する上部領域と下部領域を有し、
前記上部領域の水素濃度は、前記下部領域の水素濃度の0.7倍以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記下部領域の水素濃度は、15atomic%以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記上部領域の厚さは、前記電荷トラップ膜の厚さの40%以上60%以下であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記第1絶縁膜は前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は前記第1絶縁膜に接し、
前記導電膜は前記電荷トラップ膜に接することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記不揮発性メモリ素子は、前記チャネル形成領域に重なり、かつ前記電荷トラップ膜と前記導電膜の間に形成された第2絶縁膜を有し、
前記第1絶縁膜は、前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は、前記第1絶縁膜に接し、
前記第2絶縁膜は、前記電荷トラップ膜に接し、
前記導電膜は、前記第2絶縁膜に接することを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記不揮発性メモリ素子は、前記チャネル形成領域に重なり、かつ前記電荷トラップ膜と前記導電膜の間に形成された第2絶縁膜を有し、
前記第1絶縁膜は、前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は、前記第1絶縁膜に接し、
前記第2絶縁膜は、2以上の絶縁膜が積層された膜であり、かつ前記電荷トラップ膜に接し、
前記導電膜は、前記第2絶縁膜に接することを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記第2絶縁膜は、前記電荷トラップ膜に接する酸化シリコン膜と、前記酸化シリコン膜上に積層された窒化シリコン膜とを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
前記不揮発性半導体メモリ素子をガラス基板上に形成することを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項において、
前記不揮発性半導体メモリ素子を半導体基板に形成することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記半導体基板は、単結晶または多結晶のシリコン基板、シリコンゲルマニウム基板、またはゲルマニウム基板のいずれかであることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項10において、
前記半導体基板は、SOI(Silicon on Insulator)基板、SGOI(Silicon−Germanium on Insulator)基板、又はGOI(Germanium on Insulator)基板のいずれかであることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置の作製方法であり、
前記不揮発性半導体メモリ素子は、
半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域、およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、
前記半導体領域上に形成され、前記チャネル形成領域と重なる導電膜と、
前記半導体領域と前記導電膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜と、
前記導電膜と前記第1絶縁膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる電荷トラップ膜と、
を有し、
前記電荷トラップ膜を形成する工程は、
窒素ソースガスおよびシリコンソースガスを少なくとも含むプロセスガスを用いて、化学気相成長法により、水素濃度が15atomic%以上の窒化シリコン膜を形成し、
前記窒化シリコン膜の上部を窒化することを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項14】
不揮発性半導体メモリ素子を有する半導体装置の作製方法であり、
前記不揮発性半導体メモリ素子は、
半導体でなり、ソース領域、ドレイン領域、およびチャネル形成領域を有する半導体領域と、
前記半導体領域上に形成され、前記チャネル形成領域と重なる導電膜と、
前記半導体領域と前記導電膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる第1絶縁膜と、
前記導電膜と前記第1絶縁膜の間に形成され、前記チャネル形成領域と重なる電荷トラップ膜と、
を有し、
前記電荷トラップ膜を形成する工程は、
窒素ソースガスおよびシリコンソースガスを少なくとも含むプロセスガスを用いて、化学気相成長法により窒化シリコン膜を形成し、
前記窒化シリコン膜の上部を窒化することで、窒化された領域の水素濃度を30%以上減少させることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項15】
請求項14において、
化学気相成長法により形成される前記窒化シリコン膜は、水素濃度が15atomic%以上であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項16】
請求項13乃至15のいずれかにおいて、
前記窒化シリコン膜を窒化する厚さは、前記窒化シリコン膜の厚さの40%以上60%以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項17】
請求項13乃至15のいずれか1項において、
窒素ラジカルと前記窒化シリコン膜を反応させることにより、前記窒化シリコン膜の上部を窒化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項18】
請求項13乃至15のいずれか1項において、
ガスを励起することで、窒素ラジカルを生成し、
前記窒素ラジカルを前記窒化シリコン膜と反応させることで、前記窒化シリコン膜の上部を窒化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項19】
請求項13乃至15のいずれか1項において、
ガスと希ガスを含む混合ガスを励起して前記混合ガスのプラズマを生成し、前記プラズマ中で生成された窒素ラジカルを前記窒化シリコン膜と反応させることで、前記窒化シリコン膜の上部を窒化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項20】
請求項13乃至15のいずれか1項において、
マイクロ波によってNガスと希ガスを含む混合ガスを励起して、前記混合ガスのプラズマを生成し、前記プラズマ中に生成された窒素ラジカルを前記窒化シリコン膜と反応させることで、前記窒化シリコン膜の上部を窒化することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項21】
請求項20において、
前記プラズマは、電子密度が1×1011cm−3以上かつ電子温度が3eV以下であることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項22】
請求項13乃至21のいずれか1項において、
前記プロセスガスは、前記窒素ソースガスとしてNHを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項23】
請求項13乃至21のいずれか1項において、
前記プロセスガスは、H、および前記窒素ソースガスとしてNを含むことを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項24】
請求項13乃至22のいずれか1項において、
前記シリコンソースガスとして、SiH4、Si6、SiCl、SiHCl、SiHCl、SiHCl3、およびSiFから選ばれたガスを用いることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項25】
請求項13乃至24のいずれか1項において、
前記窒化シリコン膜をプラズマ励起化学気相成長法により形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項26】
請求項13乃至21のいずれか1項において、
前記シリコンソースガスはSiHであり、前記窒素ソースガスはNHであり、
SiHとNHの混合ガスを前記プロセスガスに用いて、プラズマ励起化学気相成長法により前記窒化シリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項27】
請求項13乃至21のいずれか1項において、
前記シリコンソースガスはSiHであり、前記窒素ソースガスはNHであり、
SiH、NHおよびHの混合ガスを前記プロセスガスに用いて、プラズマ励起化学気相成長法により、前記窒化シリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項28】
請求項13乃至21のいずれか1項において、
前記シリコンソースガスはSiHであり、前記窒素ソースガスはNHであり、
SiH、NH、HおよびArの混合ガスを前記プロセスガスに用いて、プラズマ励起化学気相成長法により前記窒化シリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項29】
請求項13乃至28のいずれか1項において、
被形成面の加熱温度を500℃以下にして、プラズマ励起化学気相成長法により前記窒化シリコン膜を形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項30】
請求項13乃至28のいずれか1項において、
前記第1絶縁膜は前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は前記第1絶縁膜に接し、
前記導電膜は前記電荷トラップ膜に接することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項31】
請求項13乃至29のいずれか1項において、
前記不揮発性メモリ素子は、前記チャネル形成領域に重なり、かつ前記電荷トラップ膜と前記導電膜の間に形成された第2絶縁膜を有し、
前記第1絶縁膜は、前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は、前記第1絶縁膜に接し、
前記第2絶縁膜は、前記電荷トラップ膜に接し、
前記導電膜は、前記第2絶縁膜に接することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項32】
請求項13乃至29のいずれか1項において、
前記不揮発性メモリ素子は、前記チャネル形成領域に重なり、かつ前記電荷トラップ膜と前記導電膜の間に形成された第2絶縁膜を有し、
前記第1絶縁膜は、前記半導体領域に接し、
前記電荷トラップ膜は、前記第1絶縁膜に接し、
前記第2絶縁膜は、2層以上の絶縁膜が積層された膜であって、前記電荷トラップ膜に接し、
前記導電膜は、前記第2絶縁膜に接することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項33】
請求項32において、
前記第2絶縁膜は、前記電荷トラップ膜に接する酸化シリコン膜と、前記酸化シリコン膜上に積層された窒化シリコン膜とを有することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項34】
請求項13乃至33のいずれか1項において、
前記不揮発性半導体メモリ素子をガラス基板上に形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項35】
請求項13乃至33のいずれか1項において、
前記不揮発性半導体メモリ素子を半導体基板に形成することを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項36】
請求項35において、
前記半導体基板は、単結晶または多結晶のシリコン基板、シリコンゲルマニウム基板、またはゲルマニウム基板のいずれかであることを特徴とする半導体装置の作製方法。
【請求項37】
請求項35において、
前記半導体基板は、SOI(Silicon on Insulator)基板、SGOI(Silicon−Germanium on Insulator)基板、又はGOI(Germanium on Insulator)基板のいずれかであることを特徴とする半導体装置の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【公開番号】特開2009−76885(P2009−76885A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212968(P2008−212968)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】