説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】 プラグと配線との接続抵抗および絶縁膜の誘電率を効果的に低下させる。
【解決手段】 半導体装置100は、半導体基板(不図示)と、半導体基板の上部に設けられ、銅含有金属により構成される第一配線108と、第一配線108の上部に設けられ、第一配線108に接続する導電性の第一プラグ114と、第一配線108の上部において、第一プラグ114が設けられた領域以外の領域に設けられたCuシリサイド層111と、第一プラグ114の上部に設けられたCuシリサイド層117と、第一配線108の側面から第一プラグ114の側面にわたって形成されるとともに、第一配線108の側面と、第一配線108の上部と、第一プラグ114の側面とを被覆する第一ポーラスMSQ膜105と、を含む配線構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層配線構造を有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図21は、従来の半導体装置の構成を示す断面図である。図21に示した半導体装置200は、以下の手順で製造される。
【0003】
まず、シリコン基板(不図示)上に、SiO2膜201およびSiC系のバリア絶縁膜203を形成する。そして、バリア絶縁膜203上に、第一Low−k(低誘電率)膜205として、ポーラスSiOC膜を70〜200nm程度の膜厚で形成する。第一Low−k膜205の上に、ハードマスクSiO2膜(不図示)を約50〜150nm形成する。その後、フォトリソグラフィー工程により、ハードマスクSiO2膜および第一Low−k膜205であるポーラスSiOC膜のフロロカーボン系のガスを用いたエッチングおよびアッシングを行い、配線溝を形成する。配線溝中に、バリアメタル膜211および銅配線213を形成した後、バリア絶縁膜207として、SiC膜を形成する。さらにその上に、第二Low−k膜209として、ポーラスSiOC膜を形成し、同様に加工を行い、ビアホール215を形成する。こうして、図21に示した半導体装置200が得られる。また、その後、ビアホール215中に金属膜を埋設し、ビアプラグ(不図示)を形成する。これを繰り返すことにより、多層配線が形成される。
【0004】
ところが、この製造方法では、層間絶縁膜の低誘電率化が加速するほど、加工による膜の劣化が顕著になってゆく。具体的には、フロロカーボン系のガスを用いたエッチングおよびアッシングを行うプロセスにより、第一Low−k膜205および第二Low−k膜209の露出部に劣化層217が形成される。劣化層217の形成領域では、Low−k膜中のSi−CH3結合が切断されて、Low−k膜の誘電率が上昇してしまう。また銅配線213上に、比誘電率の比較的高いバリア絶縁膜203が存在するため、実効誘電率の低減が困難になっている。
【0005】
また、銅配線213の形成層すなわち配線層上に、配線層よりもメタルの面積が少ないビアプラグが形成された層が設けられた積層部分において、剥離が生じる懸念があった。具体的には、第二Low−k膜209であるポーラスSiOC膜とバリア絶縁膜207膜であるSiC膜との密着性が悪かった。このため、多層配線を形成し、組み立て後、T/C(熱サイクル)試験を行ったときに、それぞれの膜の熱膨張係数の違いにより、これらが剥離して、剥離界面219が生じてしまう懸念があった。
【0006】
そこで、バリア絶縁膜の代わりとして、配線上にメタルキャップ技術を適用する方法が提案されている。
【0007】
図22は、こうした半導体装置の構成を示す断面図である。図22に示した半導体装置210においては、図21に示した半導体装置200と異なり、バリア絶縁膜207を有しないため、ビアホールを形成する際のエッチングストッパが必要となる。そこで、半導体装置210においては、銅配線213の上部にキャップメタル膜221が設けられている。キャップメタル膜221上に、バリアメタル膜225およびCu膜227からなるCuプラグが設けられており、Cuプラグ上にキャップメタル膜229が設けられている。
【0008】
図22に示した半導体装置210は、以下の工程で製造される。SiO2膜(不図示)上にSiC系のバリア絶縁膜203を形成し、その上に、Low−k膜として、ポーラスSiOC膜を形成する。さらに、ポーラスSiOC膜上にSiO2膜を形成し、第一積層膜233を得る。つづいて、フォトリソグラフィー技術を用いて、第一積層膜233を加工し、配線溝を形成する。その後、バリアメタル膜211、Cuシード(不図示)、および銅配線213となるCuめっき膜を順次形成し、CMPを行い溝中に配線を形成する。その後、選択成長法により、配線上にキャップメタル膜221としてCoWP層を形成する。
【0009】
その後、キャップメタル膜221上に、同様にして第二積層膜235を形成し、第二積層膜235中にビアホールを形成する。そして、ビアホール中に、バリアメタル膜225およびCu膜227からなるプラグを形成した後、選択成長法により、プラグ上にキャップメタル膜229としてCoWP層を形成する。
【0010】
また、特許文献1には、デュアルダマシン法により形成される多層配線構造において、キャップメタル膜としてタングステン膜を設け、コンタクトホール底部のタングステン膜を除去する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2003−152077号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、図22に示した半導体装置210の製造工程においては、キャップメタル膜221およびキャップメタル膜229の選択成長が完全ではないため、層間絶縁膜である第一積層膜233および第二積層膜235上に、それぞれ、非選択的成長物223および非選択成長物231として、メタルの堆積が存在する。非選択的成長物223および非選択成長物231の存在は、配線間リークの原因になる。また、キャップメタル膜221を形成したの後工程で、キャップメタル膜221であるCoWP膜上の第二積層膜235中にビアホールが形成されるが、キャップメタル膜221は、エッチングでは除去されないため、図22に示したように、キャップメタル膜221上にバリアメタル膜225が形成されることになる。このため、配線とビアとの間の接続抵抗が上昇してしまうという問題があった。
【0012】
また、背景技術の項に記載の特許文献1においては、デュアルダマシン法により配線構造を作製しているが、デュアルダマシン法で配線および接続プラグを銅により構成した場合、半導体装置の歩留が悪く、安定的に生産されないという課題があった。また、半導体装置を安定的に長期間利用するためには、なお改善の余地を有しており、半導体装置の素子の信頼性を高めるため、さらなる改良が望まれていた。
【0013】
また、特許文献1においては、配線上にタングステン膜を形成した後のエッチングによりコンタクトホール底部のタングステン膜を除去するとされているが、この方法について本発明者が検討したところ、底部からの除去物がコンタクトホールの側壁等に付着してしまい、除去が不充分となる懸念があった。このため、コンタクトホールにバリアメタル膜が安定的に形成されず、ビアの埋設不良等が生じる懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、
半導体基板と、
前記半導体基板の上部に設けられ、銅含有金属により構成される第一配線と、
前記第一配線の上部に設けられ、前記第一配線に接続する導電性のプラグと、
前記第一配線の上部において、前記プラグが設けられた領域以外の領域に設けられた第一キャップメタル膜と、
前記プラグの上部に設けられたプラグ保護膜と、
前記第一配線の側面から前記プラグの側面にわたって形成されるとともに、前記第一配線の側面と、前記第一配線の上部と、前記プラグの側面とを被覆する絶縁膜と、
を含む配線構造を有することを特徴とする半導体装置が提供される。
【0015】
本発明においては、第一配線の上部において、プラグが設けられた領域以外の領域に第一キャップメタル膜が設けられている。このため、第一配線とプラグとの間の接触抵抗を効果的に低減させることができる。また、第一配線の上部を確実に保護し、エレクトロマイグレーションまたはストレスマイグレーションを抑制することができる。
【0016】
また、第一の配線の側壁からビアの側壁にわたって絶縁膜が設けられており、当該絶縁膜が第一の配線の側壁、第一の配線の上部、およびビアの側壁を覆うように形成されている。ここで、下層にある第一の配線の形成層と上層にあるビアの形成層との境界部は、絶縁膜中のデータ率が不連続的に顕著に変化する部分である。このような部分に異種材料からなる膜が設けられていると、膜の界面において剥離が生じる原因となる。本発明によれば、第一の配線の形成層とビアの形成層との境界部に異種材料からなる膜が設けられていない構成とすることができるので、第一の配線の形成層とビアの形成層との境界部における絶縁膜の剥離を抑制することができる。また、異種材料からなる膜が設けられていないため、絶縁膜の誘電率を効果的に低下させることができる。
【0017】
なお、本明細書において、データ率とは、絶縁層において金属膜の占める面積割合をいう。一般に、配線が形成された層はデータ率が高く、ビアが形成された層はデータ率が低く、これら層のデータ率は顕著に異なる。
【0018】
本発明において、前記絶縁膜が、前記第一の配線の側壁から前記ビアの側壁にわたって連続一体に形成された構成とすることができる。本明細書において、連続一体とは、連続体として一体に成形されていることをいう。また、単一部材からなり、接合部を有しない構造であることが好ましい。絶縁膜が、複数の膜が積層された構成の場合、膜と膜との界面が存在するため、界面において剥離が生じる懸念があるが、この構成によれば、このような界面が存在しないため、絶縁膜の熱サイクル特性をさらに向上させることができる。また、絶縁膜の誘電率をより一層効果的に低下させることができる。
【0019】
また、本発明によれば、
半導体基板の上部に第一犠牲層間絶縁膜を形成し、該第一犠牲層間絶縁膜中に銅含有金属膜を埋設して第一配線を形成する工程と、
前記第一犠牲層間絶縁膜の上部に第二犠牲層間絶縁膜を形成し、該第二犠牲層間絶縁膜を選択的に除去して孔を形成し、前記孔の底部から前記第一配線の上面の一部を露出させ、前記孔に銅含有金属膜を埋設し、前記第一配線の上面の一部に接続するプラグを形成する工程と、
プラグを形成する前記工程の後、前記第二犠牲層間絶縁膜を除去し、前記第一配線の上面を露出させる工程と、
第一配線の上面を露出させる前記工程の後、前記第一配線の上部と前記プラグの上部とにキャップメタル膜を同時に形成する工程と、
キャップメタル膜を同時に形成する前記工程の後、前記第一犠牲層間絶縁膜を除去して前記第一配線の側面を露出させて、前記第一配線の側面と前記第一配線の上部と前記プラグの側面とを被覆する絶縁膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法が提供される。
【0020】
本発明の製造方法においては、第一配線の上部とプラグの上部とにキャップメタル膜を同時に形成する。このため、第一配線の上部を保護することができる。また、プラグと第一配線との間にキャップメタル膜が形成されず、接触抵抗の低減効果に優れた半導体装置を安定的に製造することができる。また、第一配線の上部のキャップメタルを除去する工程を有しない製造方法とすることができるため、プラグの製造安定性を向上させて、製造歩留まりを向上させることができる。
【0021】
また、第一の犠牲層間膜、犠牲バリア絶縁膜、および第二の犠牲層間膜を除去して第一の配線およびプラグを露出させた後、第一配線の側面と第一配線の上部とプラグの側面とを被覆する絶縁膜を形成する。このため、絶縁膜を形成した後、これを選択的に除去して溝部や孔を形成する工程が生じない。このため、絶縁膜の加工処理による劣化を抑制することができる。
【0022】
なお、第一犠牲層間絶縁膜および第二犠牲層間絶縁膜は、一層の膜から構成されていてもよいし、複数の膜が積層された構成であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、プラグと配線との接続抵抗および絶縁膜の誘電率を効果的に低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、銅含有金属の多層配線構造が設けられた半導体装置をシングルダマシンプロセスにより製造する場合について、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、すべての図面において、共通の構成要素には同一の符号を付し、以下の説明において共通する説明を適宜省略する。
【0025】
(第一の実施形態)
図1および図2は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。図2に示した半導体装置110は、図1に示した半導体装置100において、配線とビアとの接続部分に目ずれが生じた場合の構成を示している。
図1に示した半導体装置100は、半導体基板(不図示)と、半導体基板の上部に設けられ、銅含有金属により構成される第一配線108と、第一配線108の上部に設けられ、第一配線108に接続する導電性のプラグ(第一プラグ114)と、第一配線108の上部において、第一プラグ114が設けられた領域以外の領域に設けられた第一キャップメタル膜(Cuシリサイド層111)と、第一プラグ114の上部に設けられたプラグ保護膜(Cuシリサイド層117)と、第一配線108の側面から第一プラグ114の側面にわたって形成されるとともに、第一配線108の側面と、第一配線108の上部と、第一プラグ114の側面とを被覆する絶縁膜(第一ポーラスMSQ膜105)と、を含む配線構造を有する。
本実施形態では、第一キャップメタルが、第一配線108の上部に設けられたCuシリサイド層111であり、これは第一配線108の上部がシリサイド化された膜である。第一プラグ114と第一配線108とは直接接しており、第一プラグ114との非接触部において、第一配線108の上部が選択的にシリサイド化されている。
また、プラグ保護膜は、Cuシリサイド層111と同一材料からなる第二キャップメタル膜すなわちCuシリサイド層117である。Cuシリサイド層117は、後述するように、Cuシリサイド層111と同一工程で形成される。第一プラグ114の上部に、Cuシリサイド層117を介して第一プラグ114に接続する第二配線124を有する。
また、半導体装置100は、第一ポーラスMSQ膜105の下層にあって、第一配線108の側面下部に接するとともに、第一ポーラスMSQ膜105よりも膜密度の高い第一補強絶縁膜(第一SiC膜103)を有する。また、第一SiC膜103に代えて、SiN膜またはSiON膜を用いてもよい。
第一ポーラスMSQ膜105は、第一配線108の側面から第一プラグ114の側面にわたって連続一体に設けられている。第一ポーラスMSQ膜105は、第一配線108の配線間および第一プラグ114間に埋設された中実の膜である。
第一ポーラスMSQ膜105は、低誘電率材料により構成されるとともに、上部(シリコン基板から遠い側)の膜密度が下部よりも高い膜である。また、第一ポーラスMSQ膜105は、上部の機械的強度が下部より高い膜である。また、第一ポーラスMSQ膜105は、構成元素として炭素を含む低誘電率材料により構成されるとともに、上部の炭素濃度が下部より低い膜である。
第一ポーラスMSQ膜105は、電子線照射または紫外線照射されてなる膜である。
低誘電率材料の赤外吸収スペクトルにおいて、1150cm-1近傍にピークを有する赤外吸収帯のピーク強度I1が、第一ポーラスMSQ膜105の下部よりも上部において小さい。この吸収帯は、Cage(かご)型Si−O構造を反映する吸収帯である。なお、1150cm-1近傍とは、たとえば1100〜1200cm-1である。
低誘電率材料の赤外吸収スペクトルにおいて、1050cm-1近傍にピークを有する赤外吸収帯のピーク強度I2が、第一ポーラスMSQ膜105の下部よりも上部において大きい。この吸収帯は、Ladder(梯子)型Si−O構造を反映する吸収帯である。なお、1050cm-1近傍とは、たとえば1000〜1100cm-1である。
低誘電率材料の赤外吸収スペクトルにおいて、3000cm-1近傍にピークを有する赤外吸収帯のピーク強度I3が、第一ポーラスMSQ膜105の下部よりも上部において小さい。この吸収帯は、C−H結合を反映する吸収帯であり、I3が大きいほど、膜中の炭素濃度が高い。なお、3000cm-1近傍とは、たとえば2950〜3050cm-1である。
なお、本明細書において、「ピーク強度」とは、赤外吸収スペクトル中の赤外吸収帯、つまり吸収曲線とそのベースラインとで囲まれる領域において、ピーク位置の吸光度から、ピーク位置の波数におけるベースラインの吸光度を差し引いた値である。それぞれの赤外吸収帯のベースラインは、通常、以下の範囲内でひくことができる。
1:1000〜1100cm-1
2:1100〜1200cm-1
3:3050〜2800cm-1
半導体装置100は、このような配線構造が複数積層されており、下層の配線構造の第一プラグ114が、当該配線構造の上部に設けられた上層の配線構造の第一の配線(第二配線124)に接続している。
また、半導体装置100は、Cuシリサイド層117の上部に設けられ、第一プラグ114に接続され、銅含有金属により構成される第二の配線(第二配線124)と、第一ポーラスMSQ膜105の上層にあって、第二配線124の側壁下部に接するとともに、第一ポーラスMSQ膜105よりも膜密度の高い第二の補強絶縁膜(第二SiC膜119)と、を有する。第二SiC膜119の上部には第二ポーラスMSQ膜121が設けられ、第二SiC膜119は第二ポーラスMSQ膜121よりも膜密度が高い膜である。
【0026】
以下、半導体装置100の構成をさらに詳細に説明する。
半導体装置100は、シリコン基板(不図示)上に、SiO2膜101、第一SiC膜103、第一ポーラスMSQ膜105、第二SiC膜119および第二ポーラスMSQ膜121がこの順に積層された構成である。
【0027】
第一ポーラスMSQ膜105は、第一配線108の底面近傍を除く領域と第一プラグ114とを内包する連続一体の膜である。第二ポーラスMSQ膜121は、第二配線124の底面近傍を除く領域と第二プラグ130とを内包する連続一体の膜である。
【0028】
第一ポーラスMSQ膜105中には、第一配線108、第一プラグ114およびCuシリサイド層117がこの順に接続された状態で埋設されている。また、第二ポーラスMSQ膜121中には、Cuシリサイド層117に接続された第二配線124、第二プラグ130、およびCuシリサイド層133がこの順に接続された状態で埋設されている。第一プラグ114および第二プラグ130は、配線に接続された導電性のビアプラグである。
【0029】
第一配線108は、第一ポーラスMSQ膜105から第一SiC膜103にわたって設けられており、第一Cu配線109と第一Cu配線109の側面および底面を被覆するバリアメタル膜107とから構成される。第一配線108は、第一プラグ114に接して設けられており、第一プラグ114との接触領域以外の領域において、第一配線108の上面がCuシリサイド層111により被覆されている。第一配線108は、側面下部において、第一SiC膜103により支持され、SiO2膜101上に固定されている。
【0030】
第一配線108上には、第一配線108に電気的に接続される第一プラグ114が設けられている。第一プラグ114は、第一Cuビア115と第一Cuビア115の側面および底面を被覆するバリアメタル膜113とから構成され、第一Cuビア115の上面はCuシリサイド層117により被覆されている。
【0031】
第二配線124は、第二ポーラスMSQ膜121から第二SiC膜119にわたって設けられており、第二Cu配線125と第二Cu配線125の側面および底面を被覆するバリアメタル膜123とから構成される。第二配線124は、第二プラグ130に接して設けられており、第二プラグ130との接触領域以外の領域において、第二配線124の上面がCuシリサイド層127により被覆されている。第二配線124は、側面下部において、第二SiC膜119により支持されて、第一ポーラスMSQ膜105上に固定されている。
【0032】
第二配線124上には、第二配線124に電気的に接続される第二プラグ130が設けられている。第二プラグ130は、第二Cuビア131と第二Cuビア131の側面および底面を被覆するバリアメタル膜129とから構成され、第二Cuビア131の上面はCuシリサイド層133により被覆されている。
【0033】
第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121は、低誘電率材料により構成された層間絶縁膜である。第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121は、上面側から紫外線照射または電子線照射されてなる膜である。紫外線の波長は、たとえば100nm以上400nm以下とすることができる。また、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121は、下部すなわちシリコン基板側よりも上部の膜密度が高く、機械的強度が強化された膜である。第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121において、たとえば膜の上部の機械的強度が下部の機械的強度の2倍以上である構成とすることができる。こうすれば、データ率の低い第一プラグ114の形成層の上部の強度をさらに確実に高めることができるため、製造安定性をより一層向上させることができる。
【0034】
また、さらなる機械的強度向上が必要な場合は、後処理条件の制御により、上層の炭素濃度を容易に減少させることができ、結果的に炭素濃度の減少は、SIMS(二次イオン質量分析法)やXPS(X線光電子分光分析法)などの測定により、簡単に観測できる。
【0035】
また、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121は、下部よりも上部において、ポーラスMSQ中のC−H結合の量が減少していてもよいし、ポーラスMSQ中のLadder(梯子)型のSi−O結合量が増加していてもよいし、ポーラスMSQ中のCage(かご)型のSi−O結合量が減少していてもよく、さらに、これらの複数が同時に満たされていてもよい。これらの結合量の変化は、たとえば赤外線吸収測定により検出することができる。
【0036】
なお、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121において、膜密度、機械的強度、ポーラスMSQ中のC−H結合量、ポーラスMSQ中のLadder型のSi−O結合量、およびポーラスMSQ中のCage型のSi−O結合の量といった膜の組成および物性は、膜の上部と下部において異なる構成であればよく、たとえば第一SiC膜103から遠ざかるに従って漸次的に変化している構成とすることができる。
【0037】
また、半導体装置100は、データ率が不連続的に変化する不連続面に、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の組成または物性が不連続的に変化する不連続面が位置しない構成である。特に、データ率の高い領域上にデータ率の低い領域が設けられている際に、データ率の低い領域の底面の位置する水準に、ポーラスMSQ膜の組成または物性の不連続面が存在しない。具体的には、第一配線108と第一プラグ114との境界面と同一水準、および第二配線124と第二プラグ130との境界面と同一水準に、それぞれ、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の組成または物性の不連続面が存在しない。
【0038】
また、少なくとも第一配線108の底面と同一の水準から第一プラグ114の底面と同一の水準までの範囲、および第二配線124の底面と同一の水準から第二プラグ130の底面と同一の水準までの範囲においては、両端を含めて、それぞれ、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の組成または物性の不連続面が存在しない。
【0039】
なお、第一プラグ114の底面よりも上部であって、第一プラグ114の上面以下の水準の領域、および第二プラグ130の底面よりも上部であって、第二プラグ130の上面以下の水準の領域には、それぞれ、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の組成または物性の不連続面が設けられていてもよい。第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121が、膜全体において組成または物性の不連続面を有しない構成とすることがさらに好ましい。こうすれば、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の熱サイクル特性をより一層向上させることができる。
【0040】
第一SiC膜103および第二SiC膜119は、それぞれ、第一配線108および第二配線124の側面下部に接し、それぞれ、第一配線108および第二配線124を支持する膜として機能する。また、第二SiC膜119は、金属膜のデータ率が急激に大きくなる第一プラグ114と第二配線124との境界部において、第二ポーラスMSQ膜121と第一ポーラスMSQ膜105との間に介在して配線構造間を補強する補強膜として機能する。
【0041】
また、図2に示した半導体装置110の基本構成は図1に示した半導体装置100と同様であるが、第一プラグ114に代わり、バリアメタル膜112と第一Cuビア116とから構成される第一プラグ118が設けられており、第一プラグ118が目ずれ部137を有する点が異なる。また、第二プラグ130に代わり、バリアメタル膜128と第二Cuビア132とから構成される第二プラグ134が設けられており、第二プラグ134が目ずれ部139を有する点が異なる。
【0042】
次に、図1に示した半導体装置100の製造方法を説明する。図3〜図11は、半導体装置100の製造工程を示す断面図である。
【0043】
本実施形態の製造方法は、半導体基板(不図示)の上部に第一犠牲層間絶縁膜(第一犠牲SiO2膜141)を形成し、第一犠牲SiO2膜141中に銅含有金属膜を埋設して第一配線108を形成する工程と、第一犠牲SiO2膜141の上部に第二犠牲層間絶縁膜(犠牲SiC膜143、第二犠牲SiO2膜145)を形成し、犠牲SiC膜143および第二犠牲SiO2膜145を選択的に除去して孔(ビアホール147)を形成し、ビアホール147の底部から第一配線108の上面の一部を露出させ、ビアホール147に銅含有金属膜を埋設し、第一配線108の上面の一部に接続するプラグ(第一プラグ114)を形成する工程と、第一プラグ114を形成する工程の後、犠牲SiC膜143および第二犠牲SiO2膜145を除去し、第一配線108の上面を露出させる工程と、第一配線108の上面を露出させる工程の後、第一配線108の上部と第一プラグ114の上部とにキャップメタル膜(Cuシリサイド層111、Cuシリサイド層117)を同時に形成する工程と、Cuシリサイド層111およびCuシリサイド層117を同時に形成する工程の後、第一犠牲SiO2膜141を除去して第一配線108の側面を露出させて、第一配線108の側面と第一配線108の上部と第一プラグ114の側面とを被覆する絶縁膜(第一ポーラスMSQ膜105)を形成する工程と、を含む。
また、本実施形態の製造方法は、第一ポーラスMSQ膜105を形成する工程の後、Cuシリサイド層117をマスクとして第一ポーラスMSQ膜105の機械的化学研磨を実施し、第一プラグ114の上部に設けられたCuシリサイド層117において、研磨をとめる工程を含む。
また、本実施形態の製造方法は、第一ポーラスMSQ膜105を形成する工程の後、第一ポーラスMSQ膜105の上部に第三犠牲層間膜(不図示)を形成し、第三犠牲層間絶縁膜中に銅含有金属膜を埋設して、第一プラグ114に接続する第二配線124を形成する工程を含む。
Cuシリサイド層117とCuシリサイド層117とを同時に形成する工程は、第一配線108の上部および第一プラグ114の上部を同時にシリサイド化する工程である。
第一犠牲SiO2膜141を形成する前に、半導体基板の上部に補強絶縁膜(第一SiC膜103)を形成し、第一配線108を形成する工程が、第一犠牲SiO2膜141と第一SiC膜103とを順次選択的に除去して第一犠牲SiO2膜141と第一SiC膜103とを貫通する溝部を形成し、溝部中に銅含有金属膜を埋設する工程を含む。
【0044】
以下、半導体装置100の製造方法をさらに詳細に説明する。
まず、図3に示したように、SiO2膜101上に、SiC系の補強絶縁膜として、第一SiC膜103を約20〜50nm形成し、次に、第一犠牲層間膜として、70〜200nm程度の膜厚の第一犠牲SiO2膜141を形成する。リソグラフィー技術を用いて第一犠牲SiO2膜141の加工を行い、さらに第一SiC膜103をエッチバックして、配線溝を形成する。
【0045】
つづいて、バリアメタル膜107として、Ta系メタル膜を10〜30nm程度形成する。そして、スパッタリング法によりCuシード膜(不図示)を50〜150nm程度形成する。さらに、めっき技術を用いて、配線溝を埋め込むようにCuめっき膜を200〜600nm程度形成し、CMP(Chemical Mechanical Polish)技術を用いて、配線溝中に埋設された第一配線108を形成する。
【0046】
次に、第一配線108の上に、犠牲SiC膜143を20〜50nm程度形成する。次に、犠牲SiC膜143の上に、第二犠牲SiO2膜145を70〜200nm程度形成する。そして、リソグラフィー技術を用いて、第二犠牲SiO2膜145をパターニングした後、犠牲SiC膜143をエッチバックして、第二犠牲SiO2膜145および犠牲SiC膜143を貫通するビアホール147を形成する(図3)。
【0047】
つづいて、第二犠牲SiO2膜145の上面全面に、バリアメタル膜113としてTa系メタル膜を10〜30nm程度形成する。そして、Cuシード膜(不図示)をスパッタで50〜150nm程度形成する。さらに、めっき技術を用いて、Cuシード膜を起点としてCuめっき膜を100〜300nm程度成長させて、ビアホール147をCuめっき膜で埋め込む。次に、CMP法により、ビアホール147の外部に設けられたCuめっき膜を除去し、第一Cuビア115を得る。これにより、ビアホール147中に埋設された第一プラグ114が形成される(図4)。
【0048】
つづいて、このCuシリサイド層117をエッチングマスクにして、第二犠牲SiO2膜145をウェットエッチングにより除去する(図5)。エッチング液として、たとえばバファードHF(フッ酸)を用いる。さらに、ドライエッチング法により犠牲SiC膜143をエッチバックして除去する。これにより、第一プラグ114および第一配線108の上面を露出させる(図6)。
【0049】
次に、メタルキャップ技術を用いて、第一配線108および第一プラグ114の上面のシリサイド化、具体的にはSiH4処理を行い、第一配線108および第一プラグ114の上部に、それぞれ、キャップメタルとして機能するCuシリサイド(CuSix)層111およびCuシリサイド層117を2〜15nm程度の膜として選択的に形成する。このとき、第一配線108の上部においては、第一プラグ114との非接触領域にのみCuシリサイド層111が形成される。また、この工程で、第一犠牲SiO2膜141上にも、非選択的成長物159としてSiの反応物が形成される(図7)。
【0050】
そして、バファードHFを用い、第一犠牲SiO2膜141をウェットエッチングにより除去する(図8)。このとき、第一犠牲SiO2膜141の除去に伴い、第一犠牲SiO2膜141上に非選択的に成長した汚染物である非選択的成長物159がリフトオフ法により除去されて、第一SiC膜103の表面が露出するともに、第一配線108および第一プラグ114が残存し、第一配線108の側面が露出する。
【0051】
こうして犠牲膜として設けられた絶縁膜をすべて除去した後、シリコン基板(不図示)の上面全面を覆い、第一配線108間を埋め込むように、第一ポーラスMSQ膜105を約70〜200nm塗布して焼成し、第一プラグ114および第一配線108に接する絶縁膜とする(図9)。その後、第一ポーラスMSQ膜105の上面全面にEB(electron beam)を照射するEB処理またはUVランプを用いて紫外光を照射するUV処理を行い、第一ポーラスMSQ膜105の上部を高強度化する(図10)。その後、Cuシリサイド層117をCMPのストッパーとして、第一ポーラスMSQ膜105のCMP処理を行い、第一ポーラスMSQ膜105の表面を平坦化する(図11)。
【0052】
その後、第二SiC膜119の形成工程から、以上の手順を繰り返して、犠牲膜中にバリアメタル膜123、第二Cu配線125、バリアメタル膜129、および第二Cuビア131を形成する。そして、一部の犠牲層を除去して第二配線124および第二プラグ130の上面を露出させて、Cuシリサイド層127およびCuシリサイド層133を形成し、犠牲膜および犠牲物上の非選択成長物を除去する。さらに、除去した領域に第二ポーラスMSQ膜121を埋めこみ、高強度化する。以上により、シリコン基板(不図示)上に図1に示した多層配線構造が形成されて、半導体装置100が得られる。
【0053】
なお、図2に示した半導体装置110の基本的な製造工程は半導体装置100の場合と同様であるが、図2に示したように、第一Cu配線109の上部にビアホールを形成する際に目ずれが生じることにより、第一Cuビア115にかわり、目ずれ部137を有するビアホール中に第一Cuビア116が埋設される。また、第二Cu配線125の上部にも、第二Cuビア131にかわり、目ずれ部139を有する第二Cuビア132が形成される。
【0054】
次に、本実施形態の効果を説明する。
半導体装置100においては、第一配線108の上面の一部の領域が第一プラグ114に接続されているとともに、残りの領域にCuシリサイド層111が設けられている。そして、第一配線108と第一プラグ114との間にキャップメタル膜が形成されておらず、これらが直接接する構成となっている。このため、第一配線108上部を確実に保護しつつ第一配線108と第一プラグ114との間の接続抵抗を効果的に低減させることができる。背景技術の項で図22を参照して前述した半導体装置210においては、配線上にキャップメタルが設けられ、さらにその上にバリアメタルが存在するため、ビア抵抗が増加するが、本実施形態の構成によれば、第一配線108および第一プラグ114を形成した後で、メタルキャップ工程が行われるため、ビア抵抗の増加を抑制することができる。
【0055】
また、背景技術の項で図22を参照して前述した従来の半導体装置210においては、非選択的成長物223および非選択成長物231が残存することにより、配線間リークが生じる懸念があった。
【0056】
これに対し、本実施形態では、図7および図8を参照して前述したように、第一犠牲SiO2膜141が製造工程中で除去され、第一犠牲SiO2膜141上に非選択的に成長した非選択的成長物159が、第一犠牲SiO2膜141の除去工程で第一犠牲SiO2膜141とともにリフトオフされる。このため、配線間リークを抑制することができる。
【0057】
また、背景技術の項で前述した特許文献1は、配線上のキャップメタルを形成した後、プラグを形成することを前提とした技術であった。そして、配線上に形成したキャップメタル膜のうち、コンタクトホール部分を後工程においてエッチング除去しているため、除去物がコンタクトホールの側壁等に付着して残存し、バリアメタル膜の形成不良等が生じる懸念があった。
【0058】
これに対し、本実施形態では、第一配線108および第一プラグ114を形成した後で、これらの上部を一括してシリサイド化することによりキャップメタル膜を形成するため、製造工程が簡素化されており、また、キャップメタルの除去工程が不要である。このため、キャップメタルの材料によるビアホールの汚染が生じず、バリアメタル膜の形成不良を抑制することができる。
【0059】
また、特許文献1においては、配線上部にバリア絶縁膜としてTEOS膜が形成されており、低誘電率絶縁膜とTEOS膜との積層構造を有するため、層間絶縁膜を低誘電率膜としても、実効誘電率はあまり低減できない構造である。また、データ率が大きく変わる境界領域に、比較的密なTEOS膜と低誘電率絶縁膜との界面が存在していた。この構成では、データ率の不連続面と膜構造の不連続面が同じ水準にあったため、データ率の低いプラグの形成層の層間絶縁膜すなわち低誘電率絶縁膜とTEOS膜との界面で、T/Cサイクルにおける剥離が生じやすかった。
【0060】
これに対し、本実施形態では、バリア絶縁膜として機能する犠牲SiC膜143は製造工程中で除去されており、第一配線108の側面から第一プラグ114の側面にわたって連続一体の第一ポーラスMSQ膜105が設けられている。このため、実効誘電率の低減が実現できる。
【0061】
また、特許文献1では、デュアルダマシン法が用いられているため、プラグ上にはキャップメタルが形成されない。これに対し、本実施形態では、第一プラグ114上にもキャップメタルとして機能するCuシリサイド層117が形成されている。このため、銅配線と、その上部に接続するビアプラグとの界面近傍におけるいわゆるStress Induced Void(SIV)の発生を抑制することができる。よって、コンタクト不良や配線抵抗の増加を抑制し、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0062】
また、第一プラグ114上にもキャップメタルとして機能するCuシリサイド層117が設けられているため、特許文献1のようなデュアルダマシンプロセスに対し、配線やプラグを構成する銅や銅含有金属のマイグレーションを抑制し、製造安定性および製造歩留まりを向上させることができる。
【0063】
また、半導体装置100においては、第一プラグ114および第二プラグ130の底面が位置する水準に、それぞれ、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121と他の膜との界面が存在しない。また、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121は、膜の法線方向に沿って漸次的に組成または物性が変化した膜であって、組成および物性の不連続面が、それぞれ、第一プラグ114および第二プラグ130の底面が位置する水準に存在しない。このため、積層膜において熱膨張係数の差に起因して生じる剥離が生じず、熱サイクル特性を向上させることができる。また、誘電率の異なる膜の界面が存在しない構成とすることにより、層間絶縁膜を実効的に低誘電率化することができる。
【0064】
また、第一配線108の底部が位置する水準から第一プラグ114の底面が位置する水準の範囲に、組成および物性の不連続面が存在しないため、第一ポーラスMSQ膜105における低密度の領域における剥離や劣化をさらに確実に抑制することができる。なお、第一プラグ114の底面が位置する水準よりも上部においては、第一ポーラスMSQ膜105が下部よりも高密度化されているため、組成および物性の不連続面が存在してもよいが、第一ポーラスMSQ膜105の組成および物性が漸次的に変化し、不連続面が存在しない構成とすることが好ましい。こうすることにより、配線構造の製造安定性をさらに向上させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、第一ポーラスMSQ膜105の上面近傍、すなわち、第二配線124形成層との界面近傍において、第一ポーラスMSQ膜105が高密度化されて、機械的強度が向上している。そして、第一ポーラスMSQ膜105と第二ポーラスMSQ膜121との間に第二SiCN膜119を設け、第二SiCN膜119を第二配線124の支持膜としても機能させている。
【0066】
このため、半導体基板(不図示)の法線方向において、金属膜のデータ率の大きい領域においては、低密度な第二ポーラスMSQ膜121を設けて比誘電率を充分に低下させて、配線間容量を低下させている。それとともに、第一プラグ114の形成領域との境界面においては、ポーラスMSQ膜の形成領域の面積が急激に減少する領域の強度を充分に確保するために、第二ポーラスMSQ膜121の下層として第二SiCN膜119を設け、第二SiCN膜119により第二ポーラスMSQ膜121を補強している。このため、第二ポーラスMSQ膜121と第一ポーラスMSQ膜105とが連続一体に設けられて、第一プラグ114と第二配線124との界面近傍が一つの膜で覆われた構成に比べて、より一層配線構造の強度を向上させることができる。
【0067】
また、第一ポーラスMSQ膜105は、第一配線108および第一プラグ114の形成後、埋め込まれた膜である。このため、第一ポーラスMSQ膜105の成膜後の微細化工程が存在せず、第一ポーラスMSQ膜105のエッチングやアッシングがなされない。よって、第一配線108や第一プラグ114との界面近傍における劣化を抑制することができる。したがって、図21を参照して前述した場合に生じる劣化層217の形成が抑制されて、製造安定性を向上させることができる。
【0068】
また、第一配線108の形成後、後工程で除去される第一犠牲SiO2膜141と犠牲SiCN膜143が積層された状態でビアホール147が形成される(図3)。このため、図2に示したように、ビアホール147の形成時に目ずれが生じた場合にも、ビアホールのエッチングが目ずれ部137において深さ方向に進行することを抑制できる。よって、第一プラグ114を構成するバリアメタル膜113および第一Cuビア115の埋め込み特性不良を抑制することができる。したがって、目ずれが生じた場合の製造安定性を向上させることができる。また、ビアホール147の形成時に、エッチングストッパ膜として機能する犠牲SiC膜143と第一犠牲SiO2膜141とを加工し、第一ポーラスMSQ膜105中のいわゆるunlanded viaの加工工程が存在しないため、目ずれが存在する場合にも、第一ポーラスMSQ膜105中に第一プラグ118を安定的に製造可能することができる。
【0069】
なお、本実施形態においては、低誘電率膜がポーラスMSQ膜である場合を例に説明したが、本実施形態および以下の実施形態において、絶縁膜が、ポリオルガノシロキサン膜、水素化シロキサン膜、またはこれらの膜がポーラス化された膜であってもよい。これらの膜の製造方法は特に限定されず、たとえばCVD法や塗布法により形成される。
【0070】
ポリオルガノシロキサンとしては、たとえば、MSQ(メチルシルセスキオキサン)等のメチルポリシロキサン;
MHSQ(メチル化ハイドロジェンシルセスキオキサン)等の水素化メチルポリシロキサン;
OSG(Organo−Silicate Glass);および
CDO(Carbon Doped Oxide)が挙げられる。
【0071】
また、水素化シロキサンとしては、たとえば、HSQ(ハイドロジェンシルセスキオキサン);および
梯子型水素化シロキサン等のラダーオキサイドが挙げられる。このうち、梯子型水素化シロキサンとは、梯子型の分子構造を有するポリマーのことであり、配線遅延防止の観点から誘電率2.9以下のものが好ましく、また膜密度が低いものが好ましい。たとえば、膜密度が1.50g/cm2以上1.58g/cm2以下、633nmの屈折率が1.38以上1.40以下であることが好ましい。こうした膜材料の具体例としてラダーオキサイドとよばれるL−OxTM(商標)(以下単にL−Oxと示す。)等を例示することができる。なお、L−Oxをポーラス化した絶縁材料を用いることもできる。
【0072】
また、低誘電率絶縁膜として、パリレン系樹脂;
サイトップ(登録商標)等のフッ素系樹脂;
SiLK(登録商標)等の非フッ素系芳香族含有有機樹脂;
ポリアリールエーテル(PAE);および
ポリフェニレン等の有機樹脂の膜を用いることもできる。
【0073】
低誘電率膜の比誘電率は、たとえば3.5以下、好ましくは3以下とすることができる。また、低誘電率膜は、Si、OおよびHを構成元素として含む膜とすることができる。また、低誘電率膜は、Si、C、OおよびHを構成元素として含む膜とすることができる。
【0074】
また、本実施形態においては、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121の直下に設けられる補強絶縁膜がSiC膜である構成を例に説明したが、補強絶縁膜は、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121よりも高密度で、配線層とプラグ層との境界部に設けられた低誘電率層間絶縁膜の表面、具体的には、低誘電率層間絶縁膜の底面近傍の低密度で強度が低い領域を補強することができる膜であればよく、たとえばSiC膜に代わり、SiCN膜またはSiON膜を用いてもよい。
【0075】
また、低誘電率膜と補強絶縁膜の組み合わせとしては、絶縁膜が、上述したポリオルガノシロキサン膜、水素化シロキサン膜、またはこれらの膜がポーラス化された膜であって、補強絶縁膜が、SiC膜、SiCN膜またはSiON膜である構成とすることができる。また、ポーラスSiOC膜とSiCとの組み合わせを用いることがさらに好ましい。
【0076】
以下の実施形態においては、第一の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0077】
(第二の実施形態)
第一の実施形態においては、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121が中実である構成を示したが、第一配線108の側壁から第一プラグ114の側壁にわたって設けられ、第一配線108の側壁と、第一配線108の上部と、第一プラグ114の側壁とを覆うように形成された絶縁膜中にエアギャップが設けられている構成とすることもできる。また、第二配線124の側壁から第二プラグ130の側壁にわたって設けられた絶縁膜についても、同様に、エアギャップを有する構成とすることができる。本実施形態では、このような態様について説明する。
【0078】
図12および図13は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。図13に示した半導体装置152は、図12に示した半導体装置150において、配線とビアとの接続部分に目ずれが生じた場合の構成を示している。
【0079】
図12および図13に示した半導体装置の基本構成としては、それぞれ、図1および図2に示した半導体装置の構成が用いられているが、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121に代えて、それぞれ、第一SiO2膜151および第二SiO2膜153が設けられている点が異なる。第一SiO2膜151および第二SiO2膜153には、それぞれ、エアギャップ155およびエアギャップ157が設けられている。エアギャップ155およびエアギャップ157は、それぞれ、第一配線108間および第二ポーラスMSQ膜121およびその周辺に設けられている。第一SiO2膜151および第二SiO2膜153は、膜中の組成、密度強度の分布を有しない膜とすることができる。
【0080】
次に、本実施形態の半導体装置の製造方法を説明する。半導体装置150および半導体装置152の製造工程には、それぞれ、第一の実施形態における半導体装置100および半導体装置110の製造工程を用いることができる。そして、第一ポーラスMSQ膜105および第二ポーラスMSQ膜121を設ける工程に代えて、それぞれ、第一SiO2膜151および第二SiO2膜153を設ける。第一SiO2膜151および第二SiO2膜153を設ける工程は、それぞれ、エアギャップ155およびエアギャップ157を設ける工程を含む。
【0081】
半導体装置150の製造方法は、具体的には、図3〜図8を参照して前述した手順を用いて、SiO2膜101上に、第一SiCN膜103、第一配線108および第一プラグ114を露出させる。
【0082】
そして、第一SiCN膜103上に、低誘電率膜である第一SiO2膜151を成膜し、エアギャップ155が形成されるように第一配線108間を埋め込む。このとき、第一配線108の幅よりも、第一SiC膜103の上面からCuシリサイド層117の上面までの高さを大きくする。これにより、第一SiO2膜151が埋設される凹部のアスペクト比を大きくすることができるため、エアギャップ155を確実に設けることができる。第一SiO2膜151は、プラズマCVD法で成膜し、その成膜条件をたとえば350℃以上400℃以下、5Torr以上8Torr以下とする。これにより、第一SiO2膜151中にエアギャップ155が形成される(図14)。
【0083】
その後、Cuシリサイド層117をCMPマスクにして、第一SiO2膜151のCMP処理を行い、第一SiO2膜151の表面を平坦化する(図15)。その後、第二SiC膜119の形成工程から、以上の手順を繰り返して、第一SiO2膜151上に第二SiC膜119、第二配線124および第二プラグ130を露出させる。そして、第二Cu配線125間および第二プラグ130間に第二SiO2膜153を埋め込むとともに第二SiO2膜153中にエアギャップ157を設ける。第二SiO2膜153の形成方法は、第一SiO2膜151の形成方法とすることができる。そして、第二SiO2膜153を平坦化することにより、図12に示した多層配線構造が形成されて、半導体装置150が得られる。
【0084】
なお、図13に示した半導体装置152は、基本的な製造工程は半導体装置150の場合と同様であるが、第一Cu配線109の上部にビアホールを形成する際に目ずれが生じることにより、第一Cuビア115にかわり、目ずれ部137を有するビアホール中に第一Cuビア116が埋設される。また、第二Cu配線125の上部にも、第二Cuビア131にかわり、目ずれ部139を有する第二Cuビア132が形成される。
【0085】
次に、本実施形態の効果を説明する。
本実施形態においても、第一配線108の側面から第一プラグ114の側面にわたって連続一体の第一SiO2膜151が設けられている。そして、第一SiO2膜151は、第一配線108および第一プラグ114を形成した後、形成される。第二SiO2膜153の層についても同様の構成となっている。そして、配線上部のうち、プラグ形成領域以外の領域にキャップメタルが設けられている。さらに、第一配線108および第二配線124の側面下部がそれぞれ第一SiC膜103および第二SiC膜119によって支持されている。このため、第一の実施形態と同様の効果が得られる。
【0086】
また、層間絶縁膜として機能する第一SiO2膜151および第二SiO2膜153が、プラズマCVD法により形成されている。この方法を用いると、配線間隔が狭いところにはエアギャップが形成され、広いところはエアギャップを有しないSiO2膜で形成できる構造ができあがる。こうすれば、必要な部分の低誘電率化と、機械的強度の確保が実現できる。また、成膜後の電子線照射または紫外線照射等の高強度化処理が不要であり、製造工程をさらに簡素化することができる。
【0087】
なお、本実施形態では、エアギャップ155およびエアギャップ157を有する層間絶縁膜が、第一SiO2膜151および第二SiO2膜153である構成を例に説明したが、SiO2膜に代えて、SiOC膜等の低誘電率膜を用いることもできる。こうすれば、SiO2膜の場合と同様に、配線間隔が狭いところにエアギャップが形成されるとともに、SiO2膜を用いた場合よりもさらなる実効誘電率の低下が実現できる。また、これらの絶縁膜を、たとえば第一の実施形態において例示した他の材料としてもよい。
【0088】
また、低誘電率膜を用いる場合、層間絶縁膜の比誘電率をたとえば3.5以下、好ましくは3.2以下とすることができる。こうすることにより、第一配線108および第二配線124の配線間容量を好適に低下させることができる。また、層間絶縁膜の比誘電率を、たとえば2.0以上、好ましくは2.5以上とすることができる。こうすることにより、層間絶縁膜の強度をさらに向上させることができる。よって、熱サイクル特性をさらに向上させることができる。
【0089】
(第三の実施形態)
第二の実施形態に記載の半導体装置において、第一SiC膜103および第二SiC膜119を有しない構成とすることもできる。
【0090】
図16および図17は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。図17に示した半導体装置162は、図16に示した半導体装置160において、配線とビアとの接続部分に目ずれが生じた場合の構成を示している。
【0091】
図16および図17に示した半導体装置の基本構成としては、それぞれ、第二の実施形態における半導体装置150(図12)および半導体装置152(図13)の構成が用いられているが、第一SiC膜103および第二SiC膜119が設けられていない点が異なる。
【0092】
半導体装置160および半導体装置162の製造方法は、第二の実施形態における半導体装置150および半導体装置152の製造方法を用いることができる。ただし、第一犠牲SiO2膜141を除去した後(図8)、第一SiO2膜151を設ける(図14)前に、第一SiC膜103をドライエッチングによりエッチバックして除去する。また、第二SiO2膜153を設ける前に、第二SiC膜119を除去する。
【0093】
本実施形態によれば、第一SiC膜103および第二SiC膜119を有しないため、第二の実施形態の構成に比べて、絶縁膜の実効誘電率をさらに効果的に低減することが可能である。なお、本実施形態において、図17の半導体装置162のように、第一プラグ118と第一配線108との間に目ずれが発生しても、第一プラグ118上にキャップメタルとしてCuシリサイド層117が形成されているため、層間絶縁膜へのCuの拡散を抑制することができる。
【0094】
(第四の実施形態)
第一および第二の実施形態に記載において、プラグ上にキャップメタルが設けられていない構成としてもよい。以下、第一の実施形態の構成の場合を例に説明するが、第二の実施形態に本実施形態の構成を適用することもできる。
【0095】
図18および図19は、本実施形態の半導体装置の構成を示す断面図である。図19に示した半導体装置172は、図18に示した半導体装置170において、配線とビアとの接続部分に目ずれが生じた場合の構成を示している。
【0096】
図18および図19に示した半導体装置の基本構成としては、それぞれ、第一の実施形態における半導体装置100(図1)および半導体装置110(図2)の構成が用いられているが、Cuシリサイド層117およびCuシリサイド層133が設けられていない点が異なる。第一配線108はCuシリサイド層を介さずに第一プラグ114または第一プラグ118に接している。また、第二配線124も、Cuシリサイド層を介さずに、第二プラグ130または第二プラグ134に接している。半導体装置170および半導体装置172は、第一プラグ114の上部に設けられて、第一プラグ114に接する第二配線124と、第二配線124の側面下部に接するとともに、第一ポーラスMSQ膜105よりも膜密度の高い第二補強絶縁膜(第二SiC膜119)と、を有し、プラグ保護膜が、第二SiC膜119である。なお、第二SiC膜119に代えて、SiN膜またはSiON膜とすることもできる。
【0097】
本実施形態の半導体装置の製造方法は、第一ポーラスMSQ膜105を形成する工程の後、第一ポーラスMSQ膜105およびCuシリサイド層117を機械的化学研磨することにより、第一プラグ114の上部に設けられた第一ポーラスMSQ膜105と、第一プラグ114の上部に設けられたCuシリサイド層117とを除去する工程を含む。また、第一プラグ114の上部に設けられたCuシリサイド層117を除去する工程の後、第一ポーラスMSQ膜105の上部に、絶縁性のプラグ保護膜(第二SiC膜119)を設ける工程を含む。
【0098】
さらに具体的には、半導体装置170および半導体装置172の製造には、第一の実施形態における半導体装置100および半導体装置110の製造方法を用いることができる。ただし、第一ポーラスMSQ膜105を平坦化した後(図11)、さらにCMP法によりCuシリサイド層117を除去する。また、第二ポーラスMSQ膜121を平坦化した後、さらにCMP法によりCuシリサイド層133を除去する。これらのCuシリサイド層の除去は、たとえば、Cuシリサイド層117をマスクとしてその上部の第1ポーラスMSQ膜105を研磨により除去した後、Cu膜が研磨されずCuシリサイド層が研磨されるものにスラリーを変えて研磨することにより行う。なお、第三の実施形態とは異なり、本実施形態では、第一SiC膜103および第二SiC膜119は除去せずに残し、プラグ保護膜とする。
【0099】
本実施形態によれば、第一プラグ114、第1プラグ118、第二プラグ130および第2プラグ134上にキャップメタルが設けられていないため、これらのプラグと、その上部に設けられた配線との接続抵抗をより一層効果的に低下させることができる。また、本実施形態では、第一プラグ114および第1プラグ118の上部が第二SiC膜119に被覆されているため、層間絶縁膜へのCuの拡散を抑制することができる。
【0100】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。この実施形態はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0101】
たとえば、以上の実施形態において、絶縁膜の膜密度は半導体装置の断面のTEM(透過型電子顕微鏡)観察により把握することができる。
【0102】
また、本実施形態においては、配線層上にプラグが設けられた配線構造が2層積層された構成を例に説明したが、配線構造の積層数に特に制限はない。本実施形態の構成を用いれば、3層以上の積層体の場合にも、配線間の接続抵抗および配線間容量を効果的に低下させるとともに、製造安定性を向上させることができる。
【0103】
また、本実施形態では、キャップメタル膜としてCVD法によりCuシリサイド層を選択成長させる場合を例に説明したが、窒化Cuシリサイド層を選択成長させることもできる。また、キャップメタル膜としては、他に、CoWP膜またはCoWB膜を選択めっき法により形成することもできる。また、CVD法によりW膜を選択成長させることもできる。
【実施例】
【0104】
本実施例では、低誘電率層間絶縁材料であるポーラスSiOCについて、成膜後の後処理による膜質変化について検討した。
【0105】
200nm程度の膜厚を有するポーラスSiOC膜を形成し、EB(Electron Beam:電子線)の照射処理を行ったところ、膜質が向上した。たとえば、EBの条件を0.2mC/cm2とし、酸素濃度100ppm以下の雰囲気で、350℃で実施すると、誘電率が2.35で機械的強度(Modulus)が7GPaまでとなり、EB処理を行う前の約2倍に向上できた。
【0106】
また、EB処理前後のポーラスSiOC膜の断面をTEM(透過型電子顕微鏡)観察したところ、EBの照射面の側は、反対側の面の側よりも高密度化されている様子が観察された。また、この膜は、EB照射面の裏面から遠ざかるにつれて高密度化されており、密度が不連続的に変化する領域は観察されなかった。
【0107】
このときの膜質をFTIRスペクトル(Furier Transmittance Infra Red Spectrum)により評価した。図20は、ポーラスSiOC膜のFTIRスペクトルを示す図である。図20より、EB処理前は、Cage(かご)型Si−O構造と想定される約1150cm-1(1100〜1200cm-1)にピークが存在する結合の吸収スペクトル、およびLadder(梯子)型Si−O構造と想定される約1050cm-1(1000〜1100cm-1)にピークが存在する結合の吸収スペクトルとが確認された。これに対し、上述したEB処理を実施した後は、Cage型Si−O構造を反映する1150cm-1付近のピーク強度が減少し、Ladder型Si−O構造を反映する約1050cm-1付近のピーク強度が増加した。これより、EB処理により、Si−Oの結合状態を変えることができた。
【0108】
また、ポーラスSiOC膜の膜厚をさらに厚くして同様の処理を行ったところ、深さ方向に膜の構造の分布が生じ、表面は深いところに比較して、Ladder型Si−O構造リッチとなり、深いところは、浅いところに比較してCage型Si−Oリッチの構造となった。
【0109】
また、EB処理により、C−H結合由来の3000cm-1付近にピークが存在する結合の吸収帯のピーク強度が減少した。これより、EB照射面の炭素濃度が、反対側の面の炭素濃度よりも低下したと推察される。
【0110】
また、EB時のドーズ量をさらに増加させることにより、機械的強度をさらに向上させることができた。このとき、EB処理後の膜は、処理前の膜に比べてSi−O結合が増加し、かつ、C−H結合がEB照射面で減少する膜になるという特徴が確認された。
【0111】
また、EBに代えて、UV(紫外線)光を用いたランプを用いても以上と同様の傾向が確認された。
【0112】
また、低誘電率材料として、SiOCに代えて水素化ポリシロキサンを用いた場合においても、同様のEB照射効果が確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図3】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図4】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図5】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図6】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】図1の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図12】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図13】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図14】図12の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図12の半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図17】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図18】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図19】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
【図20】実施例におけるポーラスSiOC膜のFTIRスペクトルを示す図である。
【図21】従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【図22】従来の半導体装置の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0114】
100 半導体装置
101 SiO2
103 第一SiC膜
105 第一ポーラスMSQ膜
107 バリアメタル膜
108 第一配線
109 第一Cu配線
110 半導体装置
111 Cuシリサイド層
112 バリアメタル膜
113 バリアメタル膜
114 第一プラグ
115 第一Cuビア
116 第一Cuビア
117 Cuシリサイド層
118 第一プラグ
119 第二SiC膜
121 第二ポーラスMSQ膜
123 バリアメタル膜
124 第二配線
125 第二Cu配線
127 Cuシリサイド層
128 バリアメタル膜
129 バリアメタル膜
130 第二プラグ
131 第二Cuビア
132 第二Cuビア
133 Cuシリサイド層
134 第二プラグ
137 目ずれ部
139 目ずれ部
141 第一犠牲SiO2
143 犠牲SiC膜
145 第二犠牲SiO2
147 ビアホール
150 半導体装置
151 第一SiO2
152 半導体装置
153 第二SiO2
155 エアギャップ
157 エアギャップ
159 非選択的成長物
160 半導体装置
162 半導体装置
170 半導体装置
172 半導体装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上部に設けられ、銅含有金属により構成される第一配線と、
前記第一配線の上部に設けられ、前記第一配線に接続する導電性のプラグと、
前記第一配線の上部において、前記プラグが設けられた領域以外の領域に設けられた第一キャップメタル膜と、
前記プラグの上部に設けられたプラグ保護膜と、
前記第一配線の側面から前記プラグの側面にわたって形成されるとともに、前記第一配線の側面と、前記第一配線の上部と、前記プラグの側面とを被覆する絶縁膜と、
を含む配線構造を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記絶縁膜の下層にあって、前記第一配線の側面下部に接するとともに、前記絶縁膜よりも膜密度の高い第一補強絶縁膜を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の半導体装置において、
前記第一キャップメタル膜が、前記第一配線の上部がシリサイド化された膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置において、前記プラグ保護膜が、前記第一キャップメタル膜と同一材料からなる第二キャップメタル膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第二キャップメタル膜を介して前記プラグに接続する第二配線が、前記プラグの上部に設けられたことを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至3いずれかに記載の半導体装置において、
前記プラグの上部に設けられて、前記プラグに接する第二配線と、
前記第二配線の側面下部に接するとともに、前記絶縁膜よりも膜密度の高い第二補強絶縁膜と、
を有し、
前記プラグ保護膜が、前記第二補強絶縁膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の半導体装置において、前記絶縁膜の材料が低誘電率材料であって、前記絶縁膜の上部の膜密度が下部よりも高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至6に記載の半導体装置において、
前記絶縁膜が、低誘電率材料により構成されるとともに、前記絶縁膜の上部の機械的強度が下部より高いことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項1乃至6いずれかに記載の半導体装置において、
前記絶縁膜が、構成元素として炭素を含む低誘電率材料により構成されるとともに、前記絶縁膜の上部の炭素濃度が下部より低いことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項7乃至9いずれかに記載の半導体装置において、
前記絶縁膜が、電子線照射または紫外線照射されてなる膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
請求項10に記載の半導体装置において、
前記絶縁膜が、ポリオルガノシロキサン膜、水素化シロキサン膜、またはこれらの膜がポーラス化された膜であることを特徴とする半導体装置。
【請求項12】
請求項1乃至6いずれかに記載の半導体装置において、前記絶縁膜中にエアギャップが設けられていることを特徴とする半導体装置。
【請求項13】
請求項1乃至12いずれかに記載の半導体装置において、
複数の前記配線構造が積層されており、
下層の前記配線構造の前記プラグが、上層の前記配線構造の前記第一配線に接続することを特徴とする半導体装置。
【請求項14】
半導体基板の上部に第一犠牲層間絶縁膜を形成し、該第一犠牲層間絶縁膜中に銅含有金属膜を埋設して第一配線を形成する工程と、
前記第一犠牲層間絶縁膜の上部に第二犠牲層間絶縁膜を形成し、該第二犠牲層間絶縁膜を選択的に除去して孔を形成し、前記孔の底部から前記第一配線の上面の一部を露出させ、前記孔に銅含有金属膜を埋設し、前記第一配線の上面の一部に接続するプラグを形成する工程と、
プラグを形成する前記工程の後、前記第二犠牲層間絶縁膜を除去し、前記第一配線の上面を露出させる工程と、
第一配線の上面を露出させる前記工程の後、前記第一配線の上部と前記プラグの上部とにキャップメタル膜を同時に形成する工程と、
キャップメタル膜を同時に形成する前記工程の後、前記第一犠牲層間絶縁膜を除去して前記第一配線の側面を露出させて、前記第一配線の側面と前記第一配線の上部と前記プラグの側面とを被覆する絶縁膜を形成する工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体装置の製造方法において、絶縁膜を形成する前記工程の後、前記絶縁膜の機械的化学研磨を実施し、前記プラグの上部に設けられた前記キャップメタル膜において、研磨をとめる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の半導体装置の製造方法において、絶縁膜を形成する前記工程の後、前記絶縁膜および前記キャップメタル膜を機械的化学研磨することにより、前記プラグの上部に設けられた前記絶縁膜と、前記プラグの上部に設けられた前記キャップメタル膜とを除去する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の半導体装置の製造方法において、
プラグの上部に設けられたキャップメタル膜を除去する前記工程の後、前記絶縁膜の上部に、絶縁性のプラグ保護膜を設ける工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項14乃至17いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
絶縁膜を形成する前記工程の後、前記絶縁膜の上部に第三犠牲層間膜を形成し、該第三犠牲層間絶縁膜中に銅含有金属膜を埋設して、前記プラグに接続する第二配線を形成する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項14乃至18いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、キャップメタル膜を同時に形成する前記工程が、前記第一配線の上部および前記ビアの上部を同時にシリサイド化する工程であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項14乃至19いずれかに記載の半導体装置の製造方法において、
第一犠牲層間絶縁膜を形成する前に、前記半導体基板の上部に補強絶縁膜を形成し、
第一配線を形成する前記工程が、前記第一犠牲層間絶縁膜と前記補強絶縁膜とを順次選択的に除去して前記第一犠牲層間絶縁膜と前記補強絶縁膜とを貫通する溝部を形成し、前記溝部中に前記銅含有金属膜を埋設する工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2006−261440(P2006−261440A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77720(P2005−77720)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】