説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】Wを材質とするコンタクトプラグあるいはビアプラグを有する半導体装置およびその製造方法であって、コンタクトプラグあるいはビアプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置およびその製造方法を実現する。
【解決手段】コンタクトホールまたはビアホール内に、TiN膜等のバリアメタル膜を形成する。その後、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜をバリアメタル膜上に形成する。そして、CVD法によりW核付け膜上にコンタクトプラグまたはビアプラグとしてWプラグを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンタクトプラグあるいはビアプラグを有する半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体装置の微細化に伴い、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor、例えばMOSFET:Metal Oxide Semiconductor FET)においては、ソース・ドレイン領域の抵抗値の低減およびゲート電極の抵抗値の低減が求められている。そして、各抵抗値を減少させるために、ソース・ドレイン領域およびゲート電極の各表面に、自己整合的に金属シリサイドが形成される。
【0003】
金属シリサイドとしては、Ni(ニッケル)シリサイドが採用されることが多い。このNiシリサイドがソース・ドレイン領域の表面に形成された場合、上層配線とソース・ドレイン領域とを電気的に接続するコンタクトプラグは、Niシリサイド上に形成されることとなる。
【0004】
Niシリサイドは耐熱性が低い。そのため、コンタクトプラグ形成用のコンタクトホール内壁にバリアメタル膜を形成する場合、バリアメタル膜の形成には、低温で成膜可能な製法および低抵抗な材質を採用する必要がある。そのような製法および材質の例として、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により成膜されるTiN(窒化チタン)膜がある。
【0005】
バリアメタル膜としてMOCVD法により形成されたTiN膜上には、コンタクトプラグ本体としてW(タングステン)プラグが形成される。このWプラグの形成に当たっては、WF6(六フッ化タングステン)ガスをSiH4(シラン)ガスにより還元させるCVD法が採用される。
【0006】
また、半導体装置においては、Al(アルミニウム)やCu(銅)製の上層配線層上に、バリア膜を介して電気的に接続する、ビアプラグが形成される。このビアプラグ形成用のビアホール内壁にも、例えばMOCVD法により成膜されるTiN膜がバリアメタル膜として採用される。そして、ビアプラグ本体としてWプラグが、WF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により形成される。
【0007】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【0008】
【特許文献1】特開平8−264530号公報
【特許文献2】特表2001−525491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
MOCVD法により成膜されるTiN膜等のバリアメタル膜においては、抵抗率が高い。そのため、膜厚を大きく形成すれば、コンタクトプラグやビアプラグにおける抵抗値を高めることとなる。よって、コンタクトプラグやビアプラグ内のバリアメタル膜は、薄く形成されなければならない。
【0010】
ところが、WF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法によりバリアメタル膜上にWプラグを形成すると、薄いバリアメタル膜たるTiN膜に対してフッ素成分がダメージを与え、さらにはバリアメタル膜の下層のNiシリサイド(コンタクトプラグの場合)やAl配線(ビアプラグの場合)にまでフッ素成分が到達することがある。バリアメタル膜が充分に厚ければ、フッ素成分によるダメージをバリアメタル膜がバリアすることができる。しかし、上述のようにコンタクトプラグやビアプラグにおける抵抗値を低減するために、バリアメタル膜を厚く形成することはできない。
【0011】
特に、コンタクトプラグがソース・ドレイン領域およびゲート電極の双方に接続する、いわゆるシェアードコンタクトプラグ構造である場合には、サイドウォール絶縁膜が削れた部分に露出するポリシリコンゲート電極にバリアメタル膜を介してフッ素成分が到達し、ゲート電極における抵抗値にも影響を与える可能性がある。
【0012】
また、ビアプラグにおいては、ビアホールが、マスク位置ズレに起因して上層配線層のうちバリア膜に覆われていない部分を露出させてしまうことがある。この場合、露出した上層配線層部分にバリアメタル膜を介してフッ素成分が到達し、上層配線層における抵抗値にも影響を与える可能性がある。
【0013】
この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、Wを材質とするコンタクトプラグあるいはビアプラグを有する半導体装置およびその製造方法であって、コンタクトプラグあるいはビアプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置およびその製造方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、(a)半導体基板の表面に、ソース・ドレイン領域、ゲート絶縁膜およびゲート電極を有するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を形成する工程と、(b)前記半導体基板の前記表面および前記MISFETを覆う絶縁膜を形成する工程と、(c)前記ソース・ドレイン領域の少なくとも一部および前記ゲート電極の側面の少なくとも一部が露出するコンタクトホールを、前記絶縁膜内に形成する工程と、(d)前記コンタクトホール内にバリアメタル膜を形成する工程と、(e)WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、W(タングステン)核付け膜を前記バリアメタル膜上に形成する工程と、(f)WF6ガスを用いたCVD法により、前記W核付け膜上にW(タングステン)プラグを形成し、前記Wプラグを前記コンタクトホール内に埋め込む工程とを備える半導体装置の製造方法である。
【0015】
また、本発明は、(a)半導体基板の上方に、配線層を形成する工程と、(b)前記配線層上に、バリア膜を形成する工程と、(c)前記配線層および前記バリア膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、(d)前記バリア膜の少なくとも一部および前記配線層の側面の少なくとも一部が露出するビアホールを、前記絶縁膜内に形成する工程と、(e)前記ビアホール内にバリアメタル膜を形成する工程と、(f)WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、W(タングステン)核付け膜を前記バリアメタル膜上に形成する工程と、(g)WF6ガスを用いたCVD法により、前記W核付け膜上にW(タングステン)プラグを形成し、前記Wプラグを前記ビアホール内に埋め込む工程とを備える半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜をバリアメタル膜上に形成した後、CVD法によりW核付け膜上にWプラグを形成する。このようにすれば、W核付け膜中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しない。よって、いわゆるシェアード構造のコンタクトプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置の製造方法を実現することができる。
【0017】
また、本発明によれば、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜をバリアメタル膜上に形成した後、CVD法によりW核付け膜上にWプラグを形成する。このようにすれば、W核付け膜中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しない。よって、ビアプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置の製造方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<実施の形態1>
本実施の形態は、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜をバリアメタル膜上に形成した後、CVD法によりW核付け膜上にコンタクトプラグとしてWプラグを形成する、半導体装置およびその製造方法である。
【0019】
図1〜図5は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。また図6は、本実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0020】
まず、図1に示すように、シリコン基板等の半導体基板1の表面に、ソース・ドレイン領域3、ソース・ドレインシリサイド2、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、ゲートシリサイド6および側壁絶縁膜8を有するMISFETを形成する。なお、ソース・ドレインシリサイド2、ゲート絶縁膜4、ゲート電極5、ゲートシリサイド6および側壁絶縁膜8はそれぞれ、例えばニッケルシリサイド、シリコン酸化膜、ポリシリコン膜、ニッケルシリサイドおよびシリコン窒化膜である。
【0021】
ゲート絶縁膜4およびゲート電極5は、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等によりシリコン酸化膜およびポリシリコン膜の積層膜を半導体基板1上に形成し、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を用いて、当該積層膜をパターニングすることにより形成する。側壁絶縁膜8は、半導体基板1の表面および上記MISFETを覆うようにシリコン窒化膜をCVD法等により形成した後、当該シリコン窒化膜に異方性エッチングを施すことにより形成する。
【0022】
また、ソース・ドレイン領域3は、半導体基板1の表面のうち該当領域に不純物注入を行うことにより形成する。そして、ソース・ドレインシリサイド2およびゲートシリサイド6は、ニッケル膜を半導体基板1の表面および上記MISFETを覆うように形成した後、当該ニッケル膜に熱処理を施してシリサイド化させ、未反応のニッケル膜を除去することにより形成する。その後、半導体基板1の表面および上記MISFETを覆う層間絶縁膜7をCVD法等により形成する。なお、層間絶縁膜7は、例えばシリコン酸化膜である。
【0023】
次に、図2に示すように、層間絶縁膜7上にフォトレジストPR1を形成する。そして、フォトレジストPR1を選択的に露光・現像してパターニングする。続いて、パターニングされたフォトレジストPR1をマスクとして層間絶縁膜7をドライエッチングする。これにより、上層配線層(後述)とソース・ドレイン領域3とを電気的に接続するコンタクトプラグ形成用のコンタクトホール9が層間絶縁膜7内に形成される。この後、フォトレジストPR1は、プラズマアッシング等により除去される。
【0024】
なお、本実施の形態に係るコンタクトプラグは、ソース・ドレイン領域3およびゲート電極5の双方に接続する、いわゆるシェアードコンタクトプラグ構造である。そして、このコンタクトホール9内では、ソース・ドレイン領域3(表面のソース・ドレインシリサイド2を含む)の少なくとも一部およびゲート電極5(表面のゲートシリサイド6を含む)の側面5aの少なくとも一部が露出する。また、層間絶縁膜7のエッチング時には、側壁絶縁膜8も若干、エッチングされて、シュリンクした側壁絶縁膜8aに変形する。
【0025】
次に、図3に示すように、コンタクトホール9内にバリアメタル膜10,11を形成する。なお、バリアメタル膜10,11の形成前には、ソース・ドレインシリサイド2およびゲートシリサイド6の各表面上の酸化膜やコンタクトホール9生成時のエッチング残渣を除去する前処理を行っておく。
【0026】
本実施の形態においては、バリアメタル膜はTi膜10およびTiN膜11の積層膜である。TiN膜11は、MOCVD法により例えば550℃以下の成膜温度で形成される。Ti膜10およびTiN膜11の積層膜の膜厚は、例えば10nmである。なお、バリアメタル膜には、Ti膜10およびTiN膜11の積層膜以外にも、WN(窒化タングステン)膜およびW(タングステン)膜の積層膜を採用しても良い。その場合、WN膜もMOCVD法により形成する。また、このほかにもバリアメタル膜を、TiN膜のみで、あるいは、WN膜のみで構成しても良い。バリアメタル膜がTiN膜のみ、あるいは、WN膜のみである場合にも、TiN膜およびWN膜は、MOCVD法により形成される。
【0027】
そして、バリアメタル膜たるTiN膜11上に、W(タングステン)核付け膜12aを形成する。このW核付け膜12aの形成は、WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD法により行い、より詳しくは、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)により形成される。W核付け膜12aは、次述のWプラグを形成する際の成長核となるW膜である。
【0028】
次に、図4に示すように、W核付け膜12a上にW(タングステン)プラグ12を形成し、Wプラグ12をコンタクトホール9内に埋め込む。このWプラグ12の形成は、WF6ガスを用いたCVD法により行い、より詳しくは、WF6ガスをSiH4(シラン)ガスにより還元させるCVD法により行えばよい。また、Wプラグ12の形成は、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により行っても良い。なお、Wプラグ12の形成は、W核付け膜12aの形成時に用いたCVD装置の同一のチャンバにて行っても良いし、あるいは、別個のチャンバにて行っても良い。
【0029】
次に、図5に示すように、層間絶縁膜7上のTi膜10およびTiN膜11、Wプラグ12をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等により除去し、層間絶縁膜7を露出させる。これにより、プラグ頂部13も露出する。
【0030】
そして、図6に示すように、プラグ頂部13に接続される上層配線層をスパッタ法等の膜形成技術、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により形成し、本実施の形態に係る半導体装置を製造する。なお、上層配線層は、例えばTi膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜とすればよい。なお、これら積層膜の表面には、バリア膜として、Ti膜17およびTiN膜18の積層膜が更に設けられる。また、AlまたはCu膜16にCu膜を採用する場合は、上層配線層はダマシン構造である。
【0031】
図7は、従来の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の例である。すなわち図7は、WF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により、バリアメタル膜たるTiN膜上にWプラグを形成したときの、プラグ頂部の電子顕微鏡写真である。また、図8は、本実施の形態に係る製造方法により製造された半導体装置における、プラグ頂部13の電子顕微鏡写真である。
【0032】
図7および図8を比較すればわかるように、図7においては、Wプラグ(楕円形の部分)の周囲の薄いバリアメタル膜(黒く表示された部分)がフッ素成分によるダメージを受けて変形しているのに対し、図8においては、Wプラグの周囲の薄いバリアメタル膜へのダメージが少ない。
【0033】
また、図9は、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法の効果を示すグラフである。このグラフでは、横軸にWプラグのコンタクト抵抗(単位はオーム)を採り、縦軸には複数のサンプルの累積発生率(単位はパーセント)を採っている。なお、図9は片対数グラフである。
【0034】
図9中、○で示された測定結果は、W核付け膜およびWプラグのいずれをも、従来のWF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により形成した場合のものである。また、同図中、●で示された測定結果は、W核付け膜12aを本実施の形態のようにWF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成し、その後、Wプラグ12を本実施の形態のようにWF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により形成した場合のものである。
【0035】
両グラフより分かるように、本実施の形態のようにW核付け膜12aを、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成すれば、Wプラグのコンタクト抵抗値は従来の場合に比べて二割程度、減少している。これは、B26ガス還元を採用することにより、W核付け膜12a中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しにくくなったためと考えられる。図8に示した成膜状態の良いバリアメタル膜も、W核付け膜12a中におけるフッ素濃度が低減し、フッ素によるダメージが低減したために得られたものと考えられる。
【0036】
図10は、バリアメタル膜たるTiN膜11の膜厚とWプラグ12の抵抗値との関係を示すグラフである。このグラフでは、横軸にWプラグのコンタクト抵抗(単位はオーム)を採り、縦軸には複数のサンプルの累積発生率(単位はパーセント)を採っている。なお、図10も片対数グラフである。
【0037】
図10に膜厚4nm、6nm、8nm、の各場合が示されているように、MOCVD法により形成されたTiN膜11の膜厚が薄ければ薄いほど、Wプラグ12の抵抗値は低い。なお、本願発明者らが実験したところ、MOCVD法により形成されたTiN膜11の膜厚は、10nm以下が望ましいことが判明している。
【0038】
本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜12aをバリアメタル膜上に形成した後、CVD法によりW核付け膜12a上にWプラグ12を形成する。このようにすれば、W核付け膜12a中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しない。よって、いわゆるシェアード構造のコンタクトプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置およびその製造方法を実現することができる。
【0039】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、バリアメタル膜は、TiN膜、WN膜、TiN膜およびTi膜の積層膜、WN膜およびW膜の積層膜のいずれかであって、TiN膜およびWN膜は、MOCVD法により形成される。よって、バリアメタル膜を薄く成膜することができる。
【0040】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、W核付け膜12aは、原子層堆積法により形成される。よって、W核付け膜12aを薄く成膜することができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、W核付け膜12a上のWプラグ12も、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成することができる。よって、バリアメタル膜の下層に、より影響を与えにくい半導体装置の製造方法を実現することができる。
【0042】
<実施の形態2>
本実施の形態は、実施の形態1に係る半導体装置およびその製造方法の変形例であって、実施の形態1の上層配線層に接続するビアプラグを更に設け、そのビアプラグについても、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法にてW核付け膜をバリアメタル膜上に形成した後、CVD法にてW核付け膜上にWプラグを成膜することにより、形成するものである。
【0043】
図11〜図15は、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。また図16は、本実施の形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0044】
まず、図11に示すように、半導体基板1の上方に形成された層間絶縁膜7上の上層配線層(Ti膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜)およびバリア膜(Ti膜17およびTiN膜18の積層膜)と、層間絶縁膜7の表面とをともに覆う層間絶縁膜19をCVD法等により形成する。なお、層間絶縁膜19は、例えばシリコン酸化膜である。
【0045】
次に、図12に示すように、層間絶縁膜19上にフォトレジストPR2を形成する。そして、フォトレジストPR2を選択的に露光・現像してパターニングする。続いて、パターニングされたフォトレジストPR2をマスクとして層間絶縁膜19をドライエッチングする。これにより、上層配線層(Ti膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜)とさらなる上層配線層(後述)とを電気的に接続するビアプラグ形成用のビアホール20が層間絶縁膜19内に形成される。この後、フォトレジストPR2は、プラズマアッシング等により除去される。
【0046】
なお、本実施の形態に係るビアプラグは、上層配線層(Ti膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜)の表面に接続するだけではなく、上層配線層の側面にも接続する、いわゆる“肩落ち”が生じたビアプラグを想定している。このような“肩落ち”は、半導体装置の微細化に伴って、製造上、頻繁に生じる現象である。そして、このビアホール20内では、バリア膜(Ti膜17およびTiN膜18の積層膜)の少なくとも一部および上層配線層(Ti膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜)の側面16aの少なくとも一部が露出する。
【0047】
次に、図13に示すように、ビアホール20内にバリアメタル膜21,22を形成する。なお、バリアメタル膜21,22の形成前には、上層配線層(Ti膜14、TiN膜15、AlまたはCu膜16の積層膜)の側面上およびバリア膜(Ti膜17およびTiN膜18の積層膜)の表面上の酸化膜やコンタクトホール20生成時のエッチング残渣を除去する前処理を行っておく。
【0048】
本実施の形態においては、バリアメタル膜はTi膜21およびTiN膜22の積層膜である。TiN膜22は、MOCVD法により例えば450℃以下の成膜温度で形成される。Ti膜21およびTiN膜22の積層膜の膜厚は、例えば10nmである。なお、バリアメタル膜には、Ti膜21およびTiN膜22の積層膜以外にも、WN(窒化タングステン)膜およびW(タングステン)膜の積層膜を採用しても良い。その場合、WN膜もMOCVD法により形成する。また、このほかにもバリアメタル膜を、TiN膜のみで、あるいは、WN膜のみで構成しても良い。バリアメタル膜がTiN膜のみ、あるいは、WN膜のみである場合にも、TiN膜およびWN膜は、MOCVD法により形成される。
【0049】
そして、バリアメタル膜たるTiN膜22上に、W(タングステン)核付け膜23aを形成する。このW核付け膜23aの形成は、WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD法により行い、より詳しくは、原子層堆積法(ALD)により形成される。W核付け膜23aは、次述のWプラグを形成する際の成長核となるW膜である。
【0050】
次に、図14に示すように、W核付け膜23a上にW(タングステン)プラグ23を形成し、Wプラグ23をビアホール20内に埋め込む。このWプラグ23の形成は、WF6ガスを用いたCVD法により行い、より詳しくは、WF6ガスをSiH4(シラン)ガスにより還元させるCVD法により行えばよい。また、Wプラグ23の形成は、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により行っても良い。なお、Wプラグ23の形成は、W核付け膜23aの形成時に用いたCVD装置の同一のチャンバにて行っても良いし、あるいは、別個のチャンバにて行っても良い。
【0051】
次に、図15に示すように、層間絶縁膜19上のTi膜21およびTiN膜22、Wプラグ23をCMP法等により除去し、層間絶縁膜19を露出させる。これにより、プラグ頂部24も露出する。
【0052】
そして、図16に示すように、プラグ頂部24に接続される、更なる上層配線層をスパッタ法等の膜形成技術、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術により形成し、本実施の形態に係る半導体装置を製造する。なお、更なる上層配線層は、例えばTi膜25、TiN膜26、AlまたはCu膜27の積層膜とすればよい。なお、これら積層膜の表面には、バリア膜として、Ti膜28およびTiN膜29の積層膜が更に設けられる。また、AlまたはCu膜27にCu膜を採用する場合は、更なる上層配線層はダマシン構造である。
【0053】
図17は、図16と同様の本実施の形態に係る半導体装置を示す他の断面図である。図17に示すように、本実施の形態に係るビアプラグの“肩落ち”の度合いを、本来ビアプラグを形成すべき位置からの目外れ量Xにて規定する。
【0054】
また、図18は、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法の効果を示すグラフである。このグラフでは、縦軸にWプラグのコンタクト抵抗(単位はオーム)および複数のサンプルの累積発生率(I字棒の長さで大小を示す)を採り、横軸には図17の目外れ量X(単位はnm)を採っている。
【0055】
図18中、□で示された測定結果は、W核付け膜およびWプラグのいずれをも、従来のWF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により形成した場合のものである。また、同図中、■で示された測定結果は、W核付け膜23aを本実施の形態のようにWF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成し、その後、Wプラグ23を本実施の形態のようにWF6ガスをSiH4ガスにより還元させるCVD法により形成した場合のものである。
【0056】
両グラフより分かるように、本実施の形態のようにW核付け膜23aを、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成すれば、Wプラグのコンタクト抵抗値は従来の場合に比べて減少している。これは、B26ガス還元を採用することにより、W核付け膜23a中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しにくくなったためと考えられる。
【0057】
本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により、W核付け膜23aをバリアメタル膜上に形成した後、CVD法によりW核付け膜23a上にWプラグ23を形成する。このようにすれば、W核付け膜23a中におけるフッ素濃度が低減し、バリアメタル膜およびその下層にフッ素が侵食しない。よって、いわゆる肩落ちが生じたビアプラグ内のバリアメタル膜を薄く形成する場合であっても、バリアメタル膜の下層に影響を与えにくい半導体装置の製造方法を実現することができる。
【0058】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、バリアメタル膜は、TiN膜、WN膜、TiN膜およびTi膜の積層膜、WN膜およびW膜の積層膜のいずれかであって、TiN膜およびWN膜は、MOCVD法により形成される。よって、バリアメタル膜を薄く成膜することができる。
【0059】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、W核付け膜23aは、原子層堆積法により形成される。よって、W核付け膜23aを薄く成膜することができる。
【0060】
また、本実施の形態に係る半導体装置およびその製造方法によれば、W核付け膜23a上のWプラグ23も、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成することができる。よって、バリアメタル膜の下層に、より影響を与えにくい半導体装置の製造方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図2】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図3】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図4】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図5】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図6】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
【図7】従来の半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の例を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る半導体装置の製造方法により製造された半導体装置の例を示す図である。
【図9】実施の形態1に係る半導体装置およびその製造方法の効果を示すグラフである。
【図10】実施の形態1に係る半導体装置のバリアメタル膜厚と抵抗率との関係を示す図である。
【図11】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図12】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図13】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図14】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図15】実施の形態2に係る半導体装置の製造方法の一工程を示す断面図である。
【図16】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
【図17】実施の形態2に係る半導体装置の他の断面図である。
【図18】実施の形態2に係る半導体装置およびその製造方法の効果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0062】
1 半導体基板、3 ソース・ドレイン領域、4 ゲート絶縁膜、5 ゲート電極、7,19 層間絶縁膜、9 コンタクトホール、11,22 TiN膜(バリアメタル膜)、12a,23a W核付け膜、12,23 Wプラグ、16,27 AlまたはCu膜(上層配線層)、17,28 Ti膜(バリア膜)、18,29 TiN膜(バリア膜)、20 ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)半導体基板の表面に、ソース・ドレイン領域、ゲート絶縁膜およびゲート電極を有するMISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)を形成する工程と、
(b)前記半導体基板の前記表面および前記MISFETを覆う絶縁膜を形成する工程と、
(c)前記ソース・ドレイン領域の少なくとも一部および前記ゲート電極の側面の少なくとも一部が露出するコンタクトホールを、前記絶縁膜内に形成する工程と、
(d)前記コンタクトホール内にバリアメタル膜を形成する工程と、
(e)WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、W(タングステン)核付け膜を前記バリアメタル膜上に形成する工程と、
(f)WF6ガスを用いたCVD法により、前記W核付け膜上にW(タングステン)プラグを形成し、前記Wプラグを前記コンタクトホール内に埋め込む工程と
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
(a)半導体基板の上方に、配線層を形成する工程と、
(b)前記配線層上に、バリア膜を形成する工程と、
(c)前記配線層および前記バリア膜を覆う絶縁膜を形成する工程と、
(d)前記バリア膜の少なくとも一部が露出するビアホールを、前記絶縁膜内に形成する工程と
を備え、
前記工程(d)において、前記配線層の側面の少なくとも一部も前記ビアホールに露出し、
(e)前記ビアホール内にバリアメタル膜を形成する工程と、
(f)WF6(六フッ化タングステン)ガスをB26(ジボラン)ガスにより還元させるCVD(Chemical Vapor Deposition)法により、W(タングステン)核付け膜を前記バリアメタル膜上に形成する工程と、
(g)WF6ガスを用いたCVD法により、前記W核付け膜上にW(タングステン)プラグを形成し、前記Wプラグを前記ビアホール内に埋め込む工程と
をさらに備える半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記バリアメタル膜は、TiN(窒化チタン)膜、WN(窒化タングステン)膜、TiN膜およびTi(チタン)膜の積層膜、WN膜およびW(タングステン)膜の積層膜のいずれかであって、
前記TiN膜および前記WN膜は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により形成される
半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記W核付け膜は、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)により形成される
半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記Wプラグも、WF6ガスをB26ガスにより還元させるCVD法により形成する
半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法により形成された
半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−194468(P2007−194468A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12355(P2006−12355)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(503121103)株式会社ルネサステクノロジ (4,790)
【Fターム(参考)】