説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】寄生容量が低く、かつ、熱処理による抵抗値の変動が小さい抵抗素子を有する半導体装置を得ることのできる技術を提供する。
【解決手段】スパッタリングターゲット材料としてタンタルを用い、スパッタリングガスとしてアルゴンと窒素との混合ガスを用いた反応性直流スパッタリング法により、窒化タンタル膜からなる厚さ20nm、窒素濃度30原子%未満の第1抵抗層5a、及び窒化タンタル膜からなる厚さ5nm、窒素濃度30原子%以上の第2抵抗層5bを順次形成した後、第1及び第2抵抗層5a,5bを加工して抵抗素子R1を形成する。窒素濃度が30原子%以上の上部領域を設けることにより、配線工程において熱負荷が与えられても抵抗素子R1の抵抗変動率を1%未満に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造技術に関し、特に、金属膜からなる抵抗素子を有する半導体装置およびその製造に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログ信号を取り扱う半導体装置においては、容量素子、抵抗素子、インダクタ素子等の受動素子が集積回路の重要な構成要素となる。従来、これら受動素子は半導体チップの中に作りこむことが困難であったため、実装基板上に外付け部品として搭載されていた。しかしながら、近年、システムの高速化、省スペース化へのニーズが強くなっていることから、これら受動素子を半導体チップの内部へ取り込む試みがなされている。
【0003】
半導体チップの内部に抵抗素子を形成する方法としては、幾つかの方法が提案されているが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により成膜された多結晶シリコン膜を所望のパターンに加工し、これを抵抗素子とする形成方法が広く用いられている。例えば特開昭54−83786号公報(特許文献1)などに多結晶シリコン膜を用いた抵抗素子の形成方法が開示されている。
【0004】
また、抵抗素子の材料として低温形成が可能な金属膜を用いる方法が提案されている。一般的に金属膜は、成膜温度の低いスパッタリング法またはプラズマCVD法を用いても高品質の膜を得ることができる。このため、アルミニウムや銅を用いた配線を形成した後でも抵抗素子を形成することができるので、寄生容量が少なく、高周波特性に優れた抵抗素子の提供が可能となる。例えば特開昭56−64405号公報(特許文献2)などに金属膜を用いた抵抗素子の形成方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭54−83786号公報
【特許文献2】特開昭56−64405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、多結晶シリコン膜からなる抵抗素子については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
【0006】
抵抗素子の材料である多結晶シリコン膜は、一般に、成膜時の温度が700℃程度となる低圧CVD法により形成されるため、金属膜(例えばアルミニウムや銅)からなる配線を形成する前に、抵抗素子を形成する必要がある。このため、金属膜からなる配線よりも基板に近い位置に抵抗素子が形成されるので、基板と抵抗素子との間に寄生容量が発生し、高周波特性が劣化するという問題がある。
【0007】
また、金属膜からなる抵抗素子については、以下に説明する種々の技術的課題が存在する。
【0008】
金属膜からなる抵抗素子は、金属膜からなる配線を形成した後に形成することができるので、抵抗素子の寄生容量を減らすことができる。また、例えば正のTCR(Temperature Coefficient of Resistance:抵抗温度係数)を持つタンタル膜及び負のTCRを持つ窒化タンタル膜を積層した抵抗素子では、TCRをほぼ0にすることもできる。しかし、金属膜からなる抵抗素子は、その後の配線工程の熱履歴に応じて抵抗値が変動するという問題がある。具体的には、抵抗素子を形成した後に配線を形成すると、抵抗素子の抵抗値が増加し、その抵抗値は配線層数が増すに従ってさらに増加するため、多層配線を有するアナログ信号を取り扱う集積回路では、アナログ特性の著しい劣化を招いてしまう。本発明者らによって、抵抗値が増加した抵抗素子の構造観察及び組成分析を行ったところ、抵抗素子の上面及び下面の端部が酸化されて酸化タンタル膜が形成されており、配線層数が多いほどこの酸化タンタル膜の厚さが増していることが明らかとなった。この酸化タンタル膜は、配線を形成する際に、抵抗素子の周囲を被覆している層間絶縁膜中に含まれる酸素または水分が抵抗素子を構成するタンタル膜または窒化タンタル膜と反応して形成されたと考えられる。従って、金属膜からなる抵抗素子では、寄生容量を低減することはできるが、その後の熱処理によって抵抗値が増大し、所望する抵抗値が得られないという問題が生じる。
【0009】
本発明の目的は、寄生容量が低く、かつ、熱処理による抵抗値の変動が小さい抵抗素子を有する半導体装置を得ることのできる技術を提供することにある。
【0010】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0012】
本発明の半導体装置は、基板の主面上に窒素とタンタルとを主要な構成元素とする抵抗素子を備えており、抵抗素子の5〜10nmの厚さの上部領域は、窒素濃度を30原子%以上含み、非晶質相とTaN結晶相とを主たる構成相とするものである。
【0013】
本発明による半導体装置の製造方法は、基板の主面上に第1配線を形成する工程と、基板の主面上に第1配線を被覆する層間絶縁膜を形成する工程と、タンタルをターゲット材料とし、窒素ガスを含む混合ガスを用いたスパッタリング法により、層間絶縁膜上に第1混合ガスを用いて第1抵抗層を形成し、続いて、第1抵抗層上に第1混合ガスよりも窒素ガスの比率の高い第2混合ガスを用いて第2抵抗層を形成し、第1窒素濃度を含む第1抵抗層と、第1窒素濃度よりも窒素濃度の高い第2窒素濃度を含む第2抵抗層とからなる窒素とタンタルとを主要な構成元素とする抵抗層を形成する工程と、抵抗層を加工して、抵抗素子を形成する工程とを有するものである。
【0014】
本発明による半導体装置の製造方法は、基板の主面上に第1配線を形成する工程と、基板の主面上に第1配線を被覆する層間絶縁膜を形成する工程と、タンタルをターゲット材料とし、窒素ガスを含む混合ガスを用いたスパッタリング法により、層間絶縁膜上に第1窒素濃度を含む第1抵抗層を形成する工程と、窒素原子を含む雰囲気に第1抵抗層の表面をさらして第1抵抗層の上部領域に窒素原子を導入し、第1窒素濃度よりも窒素濃度の高い第2窒素濃度を含む第2抵抗層を形成して、第1抵抗層と第2抵抗層とからなる窒素とタンタルとを主要な構成元素とする抵抗層を形成する工程と、抵抗層を加工して、抵抗素子を形成する工程とを有するものである。
【発明の効果】
【0015】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0016】
窒素とタンタルとを主要な構成元素とし、配線工程の熱負荷を与えても抵抗変動率を1%未満に抑えることができる抵抗素子が得られるので、寄生容量が低く、かつ、熱処理による抵抗値の変動が小さい抵抗素子を有する半導体装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施の形態において、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0018】
また、本実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。さらに、本実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、本実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0019】
また、本実施の形態において、ウエハと言うときは、Si(Silicon)単結晶ウエハを主とするが、それのみではなく、SOI(Silicon On Insulator)ウエハ、集積回路をその上に形成するための絶縁膜基板等を指すものとする。その形も円形またはほぼ円形のみでなく、正方形、長方形等も含むものとする。
【0020】
また、本実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1による抵抗素子の形成方法の一例を図1から図11を用いて工程順に説明する。図1及び図2は抵抗素子の製造方法を示す要部断面図、図3は抵抗層を形成する際のスパッタリングシーケンスを示すグラフ図、図4は反応性直流スパッタリング法により形成した窒化タンタル膜の抵抗率または抵抗温度係数の窒素流量依存性を示すグラフ図、図5〜図8は抵抗素子の製造方法を示す要部断面図、図9は抵抗素子の平面レイアウト図、図10は抵抗素子の抵抗変化率と第2抵抗層の厚さとの関係を示すグラフ図、図11は窒素流量を変えてスパッタリング法により形成した窒化タンタル膜のX線回折パターンを示す解析図である。
【0022】
まず、図1に示すように、半導体素子(図示は省略)が形成された基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第1層間絶縁膜2を形成する。この酸化シリコン膜は、例えばプラズマCVD法により形成され、その厚さは、例えば1μmである。続いて、スパッタリング法により窒化チタン膜3d、アルミニウム合金膜3及び窒化チタン膜3uを順次形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法によりこれら積層膜を加工して、窒化チタン膜3d,3u及びアルミニウム合金膜3からなる第1配線M1を形成する。窒化チタン膜3d,3uの厚さは、例えば50nm、アルミニウム合金膜3の厚さは、例えば400nmである。続いて、基板1の主面上に第1配線M1を被覆する、例えば厚さ1.5μmの酸化シリコン膜を、例えばプラズマCVD法により形成した後、この酸化シリコン膜の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing)法により研磨して、酸化シリコン膜からなる第2層間絶縁膜4を形成する。
【0023】
次に、図2に示すように、スパッタリングターゲット材料としてタンタルを用い、スパッタリングガスとしてアルゴンと窒素との混合ガスを用いた反応性直流スパッタリング法により、窒素とタンタルとを主要な構成元素とする、いわゆる窒化タンタル膜からなる第1抵抗層5a及び窒化タンタル膜からなる第2抵抗層5bを順次形成する。第1抵抗層5aと第2抵抗層5bとは同一成膜室にて連続して形成されるが、後に説明するように、形成条件が互いに異なる。第1抵抗層5aを構成する窒化タンタル膜の厚さは、例えば20nm、第2抵抗層5bを構成する窒化タンタル膜の厚さは、例えば5nmである。続いて、アンモニアとモノシランガスを用いたプラズマCVD法により窒化シリコン膜からなる第1絶縁膜6aを形成する。第1絶縁膜6aの厚さは、例えば100nmである。その後、フォトリソグラフィ法を用いて第1絶縁膜6a上の所望の領域に感光性有機膜からなる第1レジストパターン7を形成する。
【0024】
図3に、第1及び第2抵抗層5a、5bを形成する際のスパッタリングシーケンスの一例を示す。図3の縦軸はアルゴンまたは窒素の流量であり、横軸はプロセス時間である。スパッタリング中のアルゴン流量は一定であり、例えば30sccm(1sccmは、標準状態において毎分1ccの流量)に固定されている。まず、スパッタリング中の窒素流量を、例えば20sccmとして17秒保持することで第1抵抗層5aを形成する。その後、窒素流量を、例えば100sccmとして5秒保持することで第2抵抗層5bを形成する。ターゲットへの投入電力は、例えば12キロワットの一定値としている。
【0025】
本実施の形態1では、第1及び第2抵抗層5a,5bの形成条件として、第1抵抗層5aを形成する際の窒素流量を20sccm、第2抵抗層5bを形成する際の窒素流量を100sccmとしたが、その理由について図4を用いて以下に説明する。
【0026】
図4の縦軸は反応性直流スパッタリング法により形成した窒化タンタル膜の抵抗率または抵抗温度係数であり、横軸は窒素流量である。アルゴン流量は30sccm、投入電力は12キロワットである。図4に示すように、窒素流量が増加するに従って、窒化タンタル膜の抵抗率は増加するが、抵抗温度係数は正から負へと変化する。そこで、第1抵抗層5aの形成条件としては、抵抗温度係数がほぼ0になる20sccmの窒素流量を採用した。また、第2抵抗層5bの形成条件としては、抵抗温度係数は−1800ppm/℃となるが、抵抗率は大幅に増大して2500μΩcmとなる100sccmの窒素流量を採用した。
【0027】
次に、図5に示すように、第1レジストパターン7をマスクとしたドライエッチング法により第1絶縁膜6aを加工して、非感光性絶縁膜からなる第1ハードマスク6を形成する。さらに、第1レジストパターン7を除去した後、第1ハードマスク6をマスクとしたドライエッチング法により第2抵抗層5b及び第1抵抗層5aを順次加工して、第1及び第2抵抗層5a,5bからなる抵抗素子R1を形成する。
【0028】
次に、図6に示すように、基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第3層間絶縁膜8を形成する。酸化シリコン膜は、例えばプラズマCVD法により形成され、その厚さは1μmである。続いて、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、第3層間絶縁膜8の所望の領域に第1及び第2接続孔9a,9bを形成する。この際、第1配線M1の表面の一部が露出するように第1接続孔9aが形成され、抵抗素子R1の上部を構成する第2抵抗層5bの表面の一部が露出するように第2接続孔9bが形成される。
【0029】
次に、図7に示すように、基板1の主面上に金属膜、例えばタングステン膜をスパッタリング法及びCVD法により形成した後、この金属膜をCMP法により研磨して、第1接続孔9aの内部に第1プラグ10aを形成し、第2接続孔9bの内部に第2プラグ10bを形成する。
【0030】
次に、図8に示すように、基板1の主面上に、スパッタリング法により窒化チタン膜11d、アルミニウム合金膜11及び窒化チタン膜11uを順次形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法によりこれら積層膜を加工して、窒化チタン膜11d,11u及びアルミニウム合金膜11からなる第2配線M2a,M2bを形成する。窒化チタン膜11d,11uの厚さは、例えば50nm、アルミニウム合金膜11の厚さは、例えば400nmである。
【0031】
図9に、抵抗素子の平面レイアウト図を示す。前記図1、図2及び図5〜図8に示した断面図は図9のA−A'線における断面を示している。
【0032】
図9に示すように、抵抗素子R1の一方の端部には、第2抵抗層5bに接して形成された第2プラグ10bと第2配線M2bとからなる引き出し電極が形成され、抵抗素子R1の他方の端部には、第2抵抗層5bに接して形成された第3プラグ10cと第2配線M2cとからなる引き出し電極が形成されている。第3プラグ10cは前記第2プラグ10bと同様に形成されたプラグであり、第2配線M2cは前記第2配線M2bと同様に形成された配線である。また、抵抗素子R1に隣接して、第1配線M1、第1プラグ10a及び第2配線M2aにより構成される配線が敷設してある。
【0033】
次に、前述した製造方法により形成された抵抗素子R1の性能について以下に説明する。まず、本実施の形態1では、抵抗素子R1の第2抵抗層5bの厚さを5nmとしたが、その効果について説明する。
【0034】
本実施の形態1による抵抗素子R1の第2抵抗層5bの厚さを変えた場合の抵抗変化率を調べた。図10は、抵抗素子の抵抗変化率と第2抵抗層の厚さとの関係を示すグラフ図である。図中、窒素濃度を一定とする窒化タンタル膜によって構成された抵抗層からなる抵抗素子(以下、従来の抵抗素子と記す)の抵抗変化率を一点破線で示す。従来の抵抗素子では、配線工程の熱処理を行うと10%程度の抵抗変化率(抵抗増大)が生じる。これに対して、本実施の形態1による抵抗素子では、配線工程の熱処理を行った後の抵抗変動率は第2抵抗層の厚さに依存し、第2抵抗層の厚さが厚くなるに従って抵抗変動率は減少して、5nm以上の厚さにおいては、1%以下のほぼ一定の抵抗変化率が得られる。従って、第2抵抗層の厚さが少なくとも5nmあれば、抵抗変化率を実用に適した1%以内の変動幅に抑えることができる。
【0035】
さらに、従来の抵抗素子、及び第2抵抗層の厚さが5nmの本実施の形態1による抵抗素子R1に対して、配線工程中の抵抗温度係数の変化率を求めたところ、従来の抵抗素子の場合は、抵抗温度係数が80ppm/℃から110ppm/℃へと増加したが、本実施の形態1による抵抗素子R1の場合は、抵抗温度係数は20ppm/℃から22ppm/℃への微少な増加にとどまった。
【0036】
また、本実施の形態1による抵抗素子R1の第1及び第2抵抗層5a,5bを構成する窒化タンタル膜の組成を、エネルギー分散型蛍光X線分析(Energy Dispersive X-ray Fluorescence Analysis:EDX)機能を有する透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope:TEM)を用いて調べた。その結果、第1抵抗層5aを構成する窒化タンタル膜の窒素濃度は30原子%未満(代表的な窒素濃度は20原子%)であり、膜厚の方向に対してほぼ一定の組成を示した。一方、第2抵抗層5bを構成する窒化タンタル膜の窒素濃度は30原子%以上(代表的な窒素濃度は30原子%)であることがわかった。
【0037】
また、本実施の形態1による抵抗素子R1の第1及び第2抵抗層5a,5bを構成する窒化タンタル膜の結晶構造をTEMを用いて調べた。その結果、第1抵抗層5aを構成する窒化タンタル膜はTaN結晶相を主たる構成相とし、第2抵抗層5bを構成する窒化タンタル膜は非晶質相とTaN結晶相とからなる混合相を主たる構成相とすることが確認された。
【0038】
このような窒素流量の違いによる窒化タンタル膜の結晶構造の違いは、窒化タンタル単層膜のX線回折測定結果からも得られた。図11に、窒素流量を変えてスパッタリング法により形成した窒化タンタル膜のX線回折測定結果を示す。図11に示すように、観察される回折ピークは窒素流量に依存する。窒素流量が20sccmではTaNの回折ピークが強いが、窒素流量が60sccmではTaNの回折ピークが強くなっており、窒素流量が増加するとTaNからTaNへと変化することがわかる。
【0039】
本実施の形態1では、第1抵抗層5a及び第2抵抗層5bの2層の抵抗層からなる抵抗素子R1を記載している。しかし、第1抵抗層5a及び第2抵抗層5bは同一成膜室で連続して形成されているので、窒素流量を20sccmから100sccmへ切り換えたとしても、実際には両者の界面は明確に分かれておらず、その界面においては約2nmの厚さの範囲において窒素濃度に勾配を有している。従って、第1抵抗層5aと第2抵抗層5bとを窒素濃度が異なる2つの領域を有する1層の抵抗層として考えることもできる。この場合、基板1と反対側に位置する第2抵抗層5bは、抵抗素子R1の窒素濃度を30原子%以上、厚さを5nmとする上部領域に該当する。
【0040】
このように、本実施の形態1によれば、窒素とタンタルとを主要な構成元素とする窒化タンタル膜を抵抗素子の材料としていることから、金属膜からなる配線の上層に抵抗素子R1は形成できて、配線よりも基板1から離れて抵抗素子R1を配置することができるので、基板1と抵抗素子R1との間の寄生容量を小さくすることができる。また、窒化タンタル膜をスパッタリング法により形成する際に、スパッタリングガスに含まれる窒素ガスの比率を増加させることにより、抵抗素子R1の上部領域(第2抵抗層5b)の窒化タンタル膜中の窒素濃度を、例えば30原子%以上と高くし、また、その領域の窒化タンタル膜を非晶質とTaN結晶との混合相とすることにより、配線工程の熱負荷を与えても抵抗素子R1の抵抗変動率を1%未満に抑えることができる。
【0041】
なお、本実施の形態1では、第1抵抗層5aとして、アルゴン流量30sccm、窒素流量20sccm、ターゲット電力12キロワットの反応性直流スパッタリング法により形成した窒化タンタル膜を用いたが、これに限定されるものではない。前記図4に示したように、小さな抵抗温度係数が得られるのであれば、アルゴン流量、窒素流量、ターゲット電圧は任意に調整することは可能である。また、本実施の形態1では、直流スパッタリング法を用いたが、高周波(RF)スパッタリング法を用いることも可能である。
【0042】
また、本実施の形態1では、第2抵抗層5bとして、アルゴン流量30sccm、窒素流量100sccm、ターゲット電力12キロワットの反応性直流スパッタリング法により形成した窒化タンタル膜を用いたが、これに限定されるものではない。前記図4に示したように、高い抵抗率(目安として、例えば第1抵抗層5aを構成する窒化タンタル膜の抵抗率の10倍程度)が得られるのであれば、アルゴン流量、窒素流量、ターゲット電圧は任意に調整することは可能である。また、本実施の形態1では、直流スパッタリング法を用いたが、高周波(RF)スパッタリング法を用いることも可能である。
【0043】
また、本実施の形態1では、第1及び第2抵抗層5a,5bは同一成膜室にてターゲット電力を維持したまま成膜したが、これに限定されるものではない。第1抵抗層5aと第2抵抗層5bとを別の成膜室で形成する、また、成膜中に一旦スパッタリング放電を止めたりすることも可能である。
【0044】
また、本実施の形態1では、第1抵抗層5aとして厚さ20nmの窒化タンタル膜を用い、第2抵抗層5bとして厚さ5nmの窒化タンタル膜を用いたが、第1及び第2抵抗層5a,5bの厚さはこれに限定されるものではない。第1抵抗層5aの厚さは、回路設計上必要とされる抵抗層のシート抵抗と窒化タンタル膜の抵抗率とから決めることができる。第2抵抗層5bの厚さは、許容される抵抗変化率から決めることができる。前記図10に示したように、第2抵抗層5bとして厚さ5nmの窒化タンタル膜(窒素流量100sccmにて成膜)を用いることにより、抵抗変化率は1%以内に抑制することは可能であるが、抵抗変化に対する要求が緩い場合には、第2抵抗層5bの厚さを5nm未満と薄くすることは可能である。一方、高温・長時間の熱処理が行われる場合や抵抗変化に対するマージンを十分に取りたい場合には、第2抵抗層5bの厚さを5nm以上と厚くすることも可能である。但し、窒素流量100sccmにて成膜した窒化タンタル膜は抵抗率が高いことから、窒化タンタル膜の厚さが厚くなると第2プラグ10bと第2抵抗層5bとの間の接続抵抗が高くなるので、例えば5〜10nmが適切な範囲と考えられる。
【0045】
また、本実施の形態1では、前記図9に示したように、第2配線M2b、第2プラグ10b、第1及び第2抵抗層5a,5b、第3プラグ10c、第2配線M2cを同一方向に配置しているが、これに限定されるものではない。第1及び第2抵抗層5a,5bの形状、第2及び第3プラグ10b,10cの位置、数量、第2配線M2b,M2cの形状、引き出し方向等は必要に応じて変更することが可能である。
【0046】
また、本実施の形態1では、第1ハードマスク6として、プラズマCVD法を用いて形成された厚さ100nmの窒化シリコン膜を用いたが、膜厚および材料はこれに限定されるものではない。非導電性でエッチング耐性が高く、成膜工程が配線工程に整合していれば、他の材料を使用することも可能である。たとえば、炭化シリコン膜、窒素含有炭化シリコン膜、窒化アルミニウム膜などを用いてもよい。また、第1ハードマスク6の膜厚は、第2抵抗層5bの膜厚やエッチング時の選択比などに応じて変更することが可能である。
【0047】
また、本実施の形態1では、第1配線M1及び第2配線M2a,M2b,M2cとして、バリアメタルとして機能する窒化チタン膜3d,3u,11d,11uを上下層に形成したアルミニウム合金膜3,11を用いたが、これに限定されるものではない。アルミニウム合金膜3,11に代えて、タングステン膜等を用いることも可能である。また、窒化チタン膜3d,3u,11d,11uに代えて、タンタル膜、タングステン膜及びその窒化物を主たる成分とする金属膜を用いることも可能であり、信頼度的に余裕がある場合は、バリアメタルを用いない配線構造を利用することも可能である。
【0048】
また、本実施の形態1では、第1及び第2プラグ10a,10bは、CVD法で形成したタングステン膜を第1及び第2接続孔9a,9bに充填し、これをCMP法により研磨することで形成したが、他の方法を用いることも可能である。
【0049】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2による抵抗素子R2は、前述した実施の形態1による抵抗素子R1と同様に、窒化タンタル膜により構成されるものである。しかし、抵抗素子R2は、窒化タンタル膜に含まれる窒素濃度が前述した実施の形態1の抵抗素子R1と相違し、基板と反対側に位置する上部領域及び基板側に位置する下部領域の窒素濃度が中部領域の窒素濃度よりも高い抵抗素子である。以下に、本実施の形態2による抵抗素子R2を図12に示す抵抗素子R2の要部断面図を用いて説明する。なお、抵抗素子R2を構成する窒化タンタル膜以外の構造及び製造過程等は、前述した実施の形態1と同様であるため、その説明は省略する。
【0050】
本実施の形態2の抵抗素子R2を構成する窒化タンタル膜は、スパッタリングターゲット材料としてタンタルを用い、スパッタリングガスとしてアルゴンと窒素との混合ガスを用いた反応性直流スパッタリング法により、窒化タンタル膜からなる第3抵抗層(上記下部領域に該当)5c、窒化タンタル膜からなる第1抵抗層(上記中部領域に該当)5a及び窒化タンタル膜からなる第2抵抗層(上記上部領域に該当)5bを順次積層することで形成される。第1抵抗層5aを構成する窒化タンタル膜の厚さは、例えば20nm、上層に位置する第2抵抗層5b及び下層に位置する第3抵抗層5cを構成する窒化タンタル膜の厚さは、例えば5nmである。
【0051】
第3、第1及び第2抵抗層5c,5a,5bを形成する際のスパッタリングシーケンスは以下の通りである。まず、スパッタリング中のアルゴン流量を、例えば30sccmに固定し、窒素流量を、例えば100sccmとして5秒保持することで第3抵抗層5cを形成し、窒素流量を、例えば20sccmとして17秒保持することで第1抵抗層5aを形成し、その後、窒素流量を、例えば100sccmとして5秒保持することで第2抵抗層5bを形成する。ターゲットへの投入電力は、例えば12キロワットの一定値としている。
【0052】
このようにして形成された抵抗素子R2では、上部領域及び下部領域に、窒素濃度が30原子%以上で、非晶質相とTaN結晶相とからなる混合相を主たる構成相とする窒化タンタル膜が形成されているので、前述した実施の形態1の効果に加え、さらに、抵抗素子R2の直下の第2層間絶縁膜4の透湿性が高く、抵抗素子R2の下面が酸化されるおそれのある場合であっても、抵抗素子R2の酸化による抵抗変動を抑制することができる。
【0053】
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3による抵抗素子R3は、前述した実施の形態1による抵抗素子R1と同様に、窒化タンタル膜により構成されるものである。しかし、抵抗素子R3では、第2層間絶縁膜4上に堆積した第1及び第2抵抗層5a,5bの加工方法が前述した実施の形態1の加工方法と相違し、第1ハードマスク6を用いずに、第1レジストパターン7をマスクとして、第1及び第2抵抗層5a,5bを加工する。以下に、本実施の形態3による抵抗素子R3の製造方法を図13に示す抵抗素子R3の要部断面図を用いて説明する。なお、抵抗素子R3を構成する窒化タンタル膜以外の構造及び製造過程等は、前述した実施の形態1と同様であるため、その説明は省略する。
【0054】
まず、前述した実施の形態1と同様にして、第2層間絶縁膜4上に第1抵抗層5a及び第2抵抗層5bを順次堆積する。次に、フォトリソグラフィ法を用いて第2抵抗層5b上の所望の領域に感光性有機膜からなる第1レジストパターン7を形成し、この第1レジストパターン7をマスクとしたドライエッチング法により第2抵抗層5b及び第1抵抗層5aを順次加工して、第1及び第2抵抗層5a,5bからなる抵抗素子R3を形成する。
【0055】
このようにして形成された抵抗素子R3では、前述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、第1及び第2抵抗層5a,5bを加工する際に、前述した実施の形態1で用いた第1ハードマスク6を用いずに、第1レジストパターン7をマスクとして加工しているので、工程数を削減することができ、また、微細加工時の寸法制御を容易とすることができる。第1レジストパターン7を除去する際、雰囲気中に含まれる酸化性ガスによって第1レジストパターン7の直下の第2抵抗層5bの表面が数nm程度酸化されるが、第2抵抗層5bは第1抵抗層5aに比べてもともと高抵抗であるため、第1レジストパターン7を除去する際の酸化による抵抗変動を抑制することができる。
【0056】
(実施の形態4)
本発明の実施の形態4による抵抗素子R4は、前述した実施の形態1による抵抗素子R1と同様に、窒化タンタル膜により構成されるものである。しかし、抵抗素子R4では、取り出し電極が前述した実施の形態1の取り出し電極と相違し、抵抗素子R4の下面に取り出し電極を設けている。以下に、本実施の形態4による抵抗素子R4の製造方法を図14〜図18に示す抵抗素子R4の要部断面図を用いて説明する。
【0057】
まず、図14に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第1層間絶縁膜2を形成し、窒化チタン膜3d,3u及びアルミニウム合金膜3からなる第1配線M1a,M1bを形成し、続いて、第1配線M1a,M1bを被覆する酸化シリコン膜からなる第2層間絶縁膜4を形成する。
【0058】
次に、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、第2層間絶縁膜4を加工して、第1配線M1bの表面の一部が露出するように第4接続孔41を形成する。続いて、基板1の主面上に金属膜、例えばタングステン膜をスパッタリング法及びCVD法により形成した後、この金属膜をCMP法により研磨して、第4接続孔41の内部に第4プラグ42を形成する。
【0059】
次に、図15に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、窒化タンタル膜からなる第1抵抗層5a及び窒化タンタル膜からなる第2抵抗層5bを順次形成し、さらに窒化シリコン膜からなる第1絶縁膜6aを形成する。続いて、フォトリソグラフィ法を用いて形成された第1レジストパターン7をマスクとしたドライエッチング法により第1絶縁膜6aを加工して、第1ハードマスク6を形成する。続いて、第1レジストパターン7を除去した後、第1ハードマスク6をマスクとしたドライエッチング法により第2抵抗層5b及び第1抵抗層5aを順次加工して、第1及び第2抵抗層5a,5bからなる抵抗素子R4を形成する。
【0060】
次に、図16に示すように、基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第3層間絶縁膜8を形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法により、第3層間絶縁膜8を加工して、第1配線M1aの表面の一部が露出するように第5接続孔43を形成する。
【0061】
次に、図17に示すように、基板1の主面上に金属膜、例えばタングステン膜をスパッタリング法及びCVD法により形成した後、この金属膜をCMP法により研磨して、第5接続孔43の内部に第5プラグ44を形成する。
【0062】
次に、図18に示すように、基板1の主面上に、スパッタリング法により窒化チタン膜11d、アルミニウム合金膜11及び窒化チタン膜11uを順次形成した後、フォトリソグラフィ法及びドライエッチング法によりこれら積層膜を加工して、第5プラグ44と電気的に接続する第2配線M2aを形成する。
【0063】
図19に、抵抗素子R4の平面レイアウト図を示す。前記図14〜図18に示した断面図は図19のA−A'線における断面を示している。
【0064】
図19に示すように、抵抗素子R4の一方の端部には、第1抵抗層5aに接して形成された第4プラグ42と第1配線M1bとからなる引き出し電極が形成され、抵抗素子R4の他方の端部には、第1抵抗層5aに接して形成された第6プラグ45と第1配線M1cとからなる引き出し電極が形成されている。第6プラグ45は前記第4プラグ42と同様に形成されたプラグであり、第1配線M1cは前記第1配線M1bと同様に形成された配線である。また、抵抗素子R4に隣接して、第1配線M1a、第5プラグ44及び第2配線M2aにより構成される配線が敷設してある。
【0065】
なお、前述した実施の形態3と同様に、第1及び第2抵抗層5a,5bを加工する際に、第1ハードマスク6を用いずに、第1レジストパターン7をマスクとして加工してもよい。
【0066】
このようにして形成された抵抗素子R4では、前述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、抵抗素子R4の取り出し電極を抵抗素子R4の下面に設けることにより、基板1と抵抗素子R4との間の距離が相対的に長くなるので、抵抗素子R4の寄生容量が、例えば前述した実施の形態1による抵抗素子R1よりも小さくなり、高周波特性の面で好適である。
【0067】
(実施の形態5)
本発明の実施の形態5による抵抗素子R5は、前述した実施の形態1による抵抗素子R1と同様に、窒化タンタル膜により構成されるものである。しかし、第1配線M1及び第2配線M2a,M2bの形成方法が前述した実施の形態1の形成方法と相違し、第1配線M1及び第2配線M2a,M2bをダマシン法で形成する。以下に、本実施の形態5による抵抗素子R5の製造方法を図20〜図22に示す抵抗素子R5の要部断面図を用いて説明する。
【0068】
まず、図20に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第1層間絶縁膜2を形成した後、シングルダマシン法により第1配線M1を形成する。第1配線M1は、例えば以下の製造過程により形成される。まず、第1層間絶縁膜2の所定の領域に、例えば500nmの深さの配線溝51を形成する。続いて、基板1の主面上に、スパッタリング法により、例えば50nmの厚さの窒化タンタル膜及び100nmの厚さの銅膜を形成した後、硫酸銅溶液を主成分とする溶液を用いた電解めっき法により、例えば600nmの厚さの銅膜を堆積する。その後、銅膜及び窒化タンタル膜をCMP法により研磨することにより、配線溝51の内部に銅膜及び窒化タンタル膜を埋め込んで、第1配線M1を形成する。
【0069】
次に、基板1の主面上に、プラズマCVD法により窒化シリコン膜52及び酸化シリコン膜からなる第2層間絶縁膜4を形成する。窒化シリコン膜52は、後に第1配線M1に接続する接続孔を形成する際のエッチングのストッパ膜として機能する。
【0070】
次に、図21に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、窒化タンタル膜からなる第1抵抗層5a及び窒化タンタル膜からなる第2抵抗層5bを順次形成し、さらに窒化シリコン膜からなる第1絶縁膜6aを形成する。続いて、フォトリソグラフィ法を用いて形成された第1レジストパターン7をマスクとしたドライエッチング法により第1絶縁膜6aを加工して、第1ハードマスク6を形成する。続いて、第1レジストパターン7を除去した後、第1ハードマスク6をマスクとしたドライエッチング法により第2抵抗層5b及び第1抵抗層5aを順次加工して、第1及び第2抵抗層5a,5bからなる抵抗素子R5を形成する。
【0071】
次に、図22に示すように、基板1の主面上に、酸化シリコン膜からなる第3層間絶縁膜8を形成する。酸化シリコン膜は、例えばプラズマCVD法により形成され、その厚さは1.5μmである。次に、デュエルダマシン法により第2配線M2a,M2bを形成する。第2配線M2a,M2bは、例えば以下の製造過程により形成される。まず、フォトリソグラフィ法により第3層間絶縁膜8上に配線溝加工用のレジストパターンを形成した後、配線溝加工用のレジストパターンをマスクとしたドライエッチング法により、第3層間絶縁膜8の所定の領域に、例えば500nmの深さの配線溝53を形成する。続いて、配線溝加工用のレジストパターンを除去し、フォトリソグラフィ法により第3層間絶縁膜8上に接続孔加工用のレジストパターンを形成した後、接続孔加工用のレジストパターンをマスクとしたドライエッチング法により、第2及び第3層間絶縁膜4,8に第1配線M1または第2抵抗層5bに接する接続孔54を形成する。ここで、第1ハードマスク6及び窒化シリコン膜52は、エッチングのストッパ膜として機能する。続いて、接続孔54の底部の第1ハードマスク6及び窒化シリコン膜52を除去する。
【0072】
次に、基板1の主面上に、スパッタリング法により、例えば50nmの厚さの窒化タンタル膜及び100nmの厚さの銅膜を形成した後、硫酸銅溶液を主成分とする溶液を用いた電解めっき法により、例えば600nmの厚さの銅膜を堆積する。その後、銅膜及び窒化タンタル膜をCMP法により研磨することにより、配線溝53及び接続孔54の内部に銅膜及び窒化タンタル膜を埋め込み、第2配線M2a,M2bを形成する。
【0073】
なお、前述した実施の形態2と同様に、抵抗素子R5の上部領域及び下部領域に窒素濃度が30原子%以上で、非晶質相とTaN結晶相とからなる混合相を主たる構成相とする窒化タンタル膜を形成してもよい。また、前述した実施の形態3と同様に、第1及び第2抵抗層5a,5bを加工する際に、第1ハードマスク6を用いずに、第1レジストパターン7をマスクとして加工してもよい。
【0074】
このようにして形成された抵抗素子R5では、前述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、第1配線M1及び第2配線M2a,M2bの配線材料として銅を用いているので、第1配線M1及び第2配線M2a,M2bの寄生抵抗を小さくすることができて、抵抗素子R5の寄生成分が、例えば前述した実施の形態1の抵抗素子R1よりも小さくなり、高周波特性の面で好適である。
【0075】
(実施の形態6)
本発明の実施の形態6による抵抗素子R6は、前述した実施の形態1による抵抗素子R1と同様に、窒化タンタル膜により構成されるものである。しかし、抵抗素子R6の上部領域への窒素の導入方法が前述した実施の形態1の窒素の導入方法と相違する。以下に、本実施の形態6による抵抗素子R6の製造方法を図23及び図24に示す抵抗素子R6の要部断面図を用いて説明する。なお、抵抗素子R6を構成する窒化タンタル膜以外の構造及び製造過程等は、前述した実施の形態1と同様であるため、その説明は省略する。
【0076】
まず、前述した実施の形態1と同様にして、第2層間絶縁膜4上に第1抵抗層5aを堆積する。次に、図23に示すように、誘導結合型プラズマ(Inductively Coupled Plasma:ICP)法により第1抵抗層5aの表面にプラズマ窒化層61を形成する。ICPチャンバにアンモニアガスを含む混合ガスを導入して第1抵抗層5aの表面をプラズマ窒化することにより、窒素濃度が30原子%以上で非晶質のプラズマ窒化層61が形成される。プラズマ窒化層61の厚さは、例えば10nmである。また、プラズマ窒化層61の下に位置し、第1抵抗層5aを構成する窒化シリコン膜の窒素濃度は22%、結晶相はTaN結晶であり、誘導結合型プラズマプラズマ法による第1抵抗層5aを構成する窒化シリコン膜の窒素濃度及び結晶相への影響は見られなかった。
【0077】
次に、図24に示すように、前述した実施の形態1と同様にして、プラズマ窒化層61上に第1絶縁膜6aを形成し、第1レジストパターン7をマスクとして第1絶縁膜6aを加工して、第1ハードマスク6を形成する。続いて、第1レジストパターン7を除去した後、第1ハードマスク6をマスクとしたドライエッチング法によりプラズマ窒化層61及び第1抵抗層5aを順次加工して、プラズマ窒化層61及び第1抵抗層5aからなる抵抗素子R6を形成する。
【0078】
なお、アンモニアガスを用いて窒化タンタル膜の上部領域のプラズマ窒化を行ったが、窒素原子を含む雰囲気に第1抵抗層5aの表面をさらすことにより、第1抵抗層5aの上部領域に窒素が導入されればよく、用いるガスまたは窒化の方法はこれに限定されるものではない。例えば原子状窒素(窒素ラジカル)を用いることも可能である、また、窒化する厚さは、10nmに限定されるものではなく、要求される抵抗変化率などに応じて調整することは可能である。
【0079】
このようにして形成された抵抗素子R6では、前述した実施の形態1と同様の効果を得ることができる。さらに、窒化タンタル膜のプラズマ窒化により、窒素濃度が30原子%以上で、非晶質の上部領域を有する抵抗素子R6を容易に形成することができる。
【0080】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、半導体装置に含まれる基板の主面上に形成された金属膜からなる抵抗素子に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図2】図1に続く抵抗素子の製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1による抵抗層を形成する際のスパッタリングシーケンスを示すグラフ図である。
【図4】本発明の実施の形態1による反応性直流スパッタリング法により形成した窒化タンタル膜の抵抗率または抵抗温度係数の窒素流量依存性を示すグラフ図である。
【図5】図2に続く抵抗素子の製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図6】図5に続く抵抗素子の製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図7】図6に続く抵抗素子の製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図8】図7に続く抵抗素子の製造工程中の図1と同じ箇所の要部断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1による抵抗素子の平面レイアウト図である。
【図10】本発明の実施の形態1による抵抗素子の抵抗変化率と第2抵抗層の厚さとの関係を示すグラフ図である。
【図11】本発明の実施の形態1による窒素流量を変えてスパッタリング法により形成した窒化タンタル膜のX線回折パターンを示す解析図である。
【図12】本発明の実施の形態2による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図14】本発明の実施の形態4による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図15】図14に続く抵抗素子の製造工程中の図14と同じ箇所の要部断面図である。
【図16】図15に続く抵抗素子の製造工程中の図14と同じ箇所の要部断面図である。
【図17】図16に続く抵抗素子の製造工程中の図14と同じ箇所の要部断面図である。
【図18】図17に続く抵抗素子の製造工程中の図14と同じ箇所の要部断面図である。
【図19】本発明の実施の形態4による抵抗素子の平面レイアウト図である。
【図20】本発明の実施の形態5による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図21】図20に続く抵抗素子の製造工程中の図20と同じ箇所の要部断面図である。
【図22】図21に続く抵抗素子の製造工程中の図20と同じ箇所の要部断面図である。
【図23】本発明の実施の形態6による抵抗素子の製造方法を示す要部断面図である。
【図24】図23に続く抵抗素子の製造工程中の図23と同じ箇所の要部断面図である。
【符号の説明】
【0083】
1 基板
2 第1層間絶縁膜
3 アルミニウム合金膜
3d 窒化チタン膜
3u 窒化チタン膜
4 第2層間絶縁膜
5a 第1抵抗層
5b 第2抵抗層
5c 第3抵抗層
6 第1ハードマスク
6a 第1絶縁膜
7 第1レジストパターン
8 第3層間絶縁膜
9a 第1接続孔
9b 第2接続孔
10a 第1プラグ
10b 第2プラグ
10c 第3プラグ
11 アルミニウム合金膜
11d 窒化チタン膜
11u 窒化チタン膜
41 第4接続孔
42 第4プラグ
43 第5接続孔
44 第5プラグ
45 第6プラグ
51 配線溝
52 窒化シリコン膜
53 配線溝
54 接続孔
61 プラズマ窒化層
M1,M1a,M1b,M1c 第1配線
M2a,M2b,M2c 第2配線
R1,R2,R3,R4,R5,R6 抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上に窒素とタンタルとを主要な構成元素とする抵抗素子を有する半導体装置であって、前記抵抗素子の前記基板と反対側に位置する上部領域の窒素濃度が30原子%以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記上部領域の厚さは5〜10nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記上部領域以外に窒素濃度が30%原子未満の領域を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記上部領域は非晶質相とTaN結晶相、または非晶質相を主たる構成相とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置において、前記抵抗素子の下面の2箇所に接続するプラグと、前記抵抗素子よりも下層に位置し、前記プラグにそれぞれ接続する配線とにより、前記抵抗素子の引き出し電極を構成することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記基板側に位置する下部領域の窒素濃度が30原子%以上であることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項6記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記下部領域の厚さは5〜10nmであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項6記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記上部及び下部領域以外に窒素濃度が30原子%未満の領域を含むことを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項6記載の半導体装置において、前記抵抗素子の前記下部領域は非晶質相とTaN結晶相とを主たる構成相とすることを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
請求項6記載の半導体装置において、前記抵抗素子の下面の2箇所に接続するプラグと、前記抵抗素子よりも下層に位置し、前記プラグにそれぞれ接続する配線とにより、前記抵抗素子の引き出し電極を構成することを特徴とする半導体装置。
【請求項11】
(a)基板の主面上に第1配線を形成する工程と、
(b)前記基板の主面上に前記第1配線を被覆する層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)タンタルをターゲット材料とし、窒素ガスを含む混合ガスを用いたスパッタリング法により、前記層間絶縁膜上に窒素とタンタルとを主要な構成元素とする抵抗層を形成する工程と、
(d)前記抵抗層を加工して、抵抗素子を形成する工程とを有する半導体装置の製造方法であって、
前記(c)工程において、第1混合ガスを用いて第1抵抗層を形成した後、前記第1混合ガスよりも窒素ガスの比率の高い第2混合ガスを用いて第2抵抗層を形成し、第1窒素濃度を含む前記第1抵抗層と、前記第1窒素濃度よりも窒素濃度の高い第2窒素濃度を含む前記第2抵抗層とからなる前記抵抗層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
(a)基板の主面上に第1配線を形成する工程と、
(b)前記基板の主面上に前記第1配線を被覆する層間絶縁膜を形成する工程と、
(c)タンタルをターゲット材料とし、窒素ガスを含む混合ガスを用いたスパッタリング法により、前記層間絶縁膜上に窒素とタンタルとを主要な構成元素とする第1窒素濃度を含む第1抵抗層を形成する工程と、
(d)窒素原子を含む雰囲気に前記第1抵抗層の表面をさらして前記第1抵抗層の上部領域に窒素原子を導入し、前記第1窒素濃度よりも窒素濃度の高い第2窒素濃度を含む第2抵抗層を形成して、前記第1抵抗層と前記第2抵抗層とからなる抵抗層を形成する工程と、
(e)前記抵抗層を加工して、抵抗素子を形成する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項11または12記載の半導体装置の製造方法において、前記第2抵抗層の厚さが5〜10nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項11または12記載の半導体装置の製造方法において、前記第2抵抗層の窒素濃度は30原子%以上であり、前記第1抵抗層の窒素濃度は30原子%未満であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、前記第2抵抗層は非晶質相とTaN結晶相とを主たる構成相とし、前記第1抵抗層はTaN結晶相を主たる構成相とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項12記載の半導体装置の製造方法において、前記第2抵抗層は非晶質相を主たる構成相とし、前記第1抵抗層はTaN結晶相を主たる構成相とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項17】
請求項11または12記載の半導体装置の製造方法において、所望するパターンに加工され、前記抵抗層上に形成された感光性の有機膜または非感光性の絶縁膜をマスクとして、前記抵抗層はエッチングにより加工されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項18】
請求項11記載の半導体装置の製造方法において、さらに、前記(c)工程において、前記第1抵抗層を形成する前に、前記第1混合ガスよりも窒素ガスの比率の高い第3混合ガスを用いて第3抵抗層を形成し、前記第1窒素濃度よりも窒素濃度の高い第3窒素濃度を含む前記第3抵抗層と、前記第1抵抗層と、前記第2抵抗層とからなる前記抵抗層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項19】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、前記第3抵抗層の厚さは5〜10nmであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項20】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、前記第3抵抗層の窒素濃度は30原子%以上であることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項21】
請求項18記載の半導体装置の製造方法において、前記第3抵抗層は非晶質相とTaN結晶相とを主たる構成相とすることを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2009−21509(P2009−21509A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184614(P2007−184614)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】