説明

半導体装置およびその製造方法

【課題】特性の劣化を効果的に抑制することのできる半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】半導体装置は、GaNを含む半導体層1と、電極とを備えている。電極は、電極本体6と、半導体層1から見て電極本体6よりも離れた位置に形成され、かつAlを含む接続用電極8と、電極本体6と接続用電極8との間に形成されたW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層7とを含んでいる。バリア層7の表面粗さRMSが3.0nm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置およびその製造方法に関し、より特定的には、GaN(窒化ガリウム)を含む半導体層を備える半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
GaNは、紫外光領域のバンドギャップを有しているため、青色や紫外光などの短波長の光を発振するレーザ装置などの光デバイスの材料としての応用が進められてきた。そして、GaNを用いた光デバイスにおいては、外部の配線(ワイヤなど)を接続するためのパッド電極として、低抵抗であるAu(金)が採用されていた。
【0003】
広いバンドギャップを有している性質や、高いキャリア移動度および破壊電界強度を有している性質に鑑みて、近年、GaNを光デバイスとしての用途のみならず、ショットキーバリアダイオード(SBD)やトランジスタなどのパワー半導体デバイスにも適用しようという試みが活発化している。GaNを用いたパワー半導体デバイスにおいては、大電流を流す必要性から、パワー半導体デバイスと外部装置との間の接続には、通常Al(アルミニウム)よりなる200μm以上の大径の配線(ワイヤ)が用いられる。
【0004】
ここで、従来のGaNを用いたパワー半導体デバイスの構造が、たとえば特開2006−196764号公報(特許文献1)や、F.Ren et al., "Wide Energy Bandgap Electronic Devices", World Scientific, 2003, p.152-155(非特許文献1)や、H.Otake et al., "Vertical GaN-Based Trench Gate Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistors on GaN Bulk Substrates", Appl. Phys. Express., 1(2008) 011105(非特許文献2)などに開示されている。特許文献1は、GaNよりなる化合物半導体層とショットキー接合するNi層と、低抵抗金属層との間に、Tix1-xN(0<x<1)からなる拡散防止層を設けることを開示している。非特許文献1は、GaN基板上に形成されたGaNショットキー整流器を開示しており、この整流器においてショットキー電極はPt/Ti/Auよりなっている。非特許文献2は、GaN基板上に形成されたGaNベースの縦型MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)を開示しており、このMOSFETにおいてゲート電極はNi(ニッケル)/Auよりなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−196764号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】F.Ren et al., "Wide Energy Bandgap Electronic Devices", World Scientific, 2003, p.152-155
【非特許文献2】H.Otake et al., "Vertical GaN-Based Trench Gate Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistors on GaN Bulk Substrates", Appl. Phys. Express., 1(2008) 011105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
GaN系材料のパワー半導体デバイスにおけるパッド電極として、従来と同様にAuを用いた場合、パッド電極にワイヤをボンディングする際の熱やデバイスの駆動時に生じる熱によって、パッド電極のAuとワイヤに含まれるAlとの間で合金が形成され、パッド電極の品質が低下するおそれがある。また、パワー半導体デバイスにおいては、パッド電極を、太いAlワイヤを実装する際のダメージに耐えうる厚みにする必要があり、パッド電極としてAuを採用するとコストの増大を招く。このため、GaN系材料のパワーデバイスにおいては、パッド電極として、ワイヤと同じ材質であるAlが用いられる。
【0008】
しかしながら、たとえばSBDや縦型MOSFETなどのGaN系材料のパワーデバイスにおいて、Alを含むパッド電極(接続用電極)を採用した場合、デバイスの実装時やデバイスの動作時などに生じる熱によってデバイスの特性が劣化するという問題があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、特性の劣化を効果的に抑制することのできる半導体装置およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、GaNを含む半導体層と、電極とを備えている。電極は、電極本体と、半導体層から見て電極本体よりも離れた位置に形成され、かつAlを含む接続用電極と、電極本体と接続用電極との間に形成されたW(タングステン)、TiW(チタンタングステン)、WN(窒化タングステン)、TiN(窒化チタン)、Ta(タンタル)、およびTaN(窒化タンタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層とを含んでいる。バリア層の表面粗さRMSが3.0nm以下である。
【0011】
本発明者らは、Alを含む接続用電極を備える半導体装置において特性が劣化する原因は、接続用電極に含まれるAlが熱によって半導体層内に拡散するためであることを見出した。さらに、本発明者らは、バリア層の表面粗さを3.0nm以下にすることによって、バリア層上に形成する接続用電極のAlの拡散を効果的に抑制できることを見い出した。そこで、本発明においては、半導体層と接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を3.0nm以下の表面粗さで形成することによって、接続用電極に含まれるAlの拡散を抑制し、特性の劣化を効果的に抑制することができる。
【0012】
本発明の半導体装置において好ましくは、電極本体は半導体層とショットキー接触している。これにより、SBDとしての機能を半導体装置に付加することができ、高性能のSBDを実現することができる。
【0013】
本発明の半導体装置において好ましくは、バリア層の厚みは3000Å以上である。
本発明者らは、バリア層の厚みを3000Å以上にすることによって、リーク電流の増加を効果的に抑制できることを見い出した。このため、特性の劣化をさらに効果的に抑制することができる。
【0014】
本発明の一の局面における半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。GaNを含む半導体層を形成する。電極を形成する。電極を形成する工程は以下の工程を含んでいる。電極本体を形成する。半導体層から見て電極本体よりも離れた位置にAlを含む接続用電極を形成する。電極本体と接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を形成する。バリア層を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加した状態でスパッタ法によりバリア層を形成する。
【0015】
本発明の他の局面における半導体装置の製造方法は、以下の工程を備えている。GaNを含む半導体層を形成する。電極を形成する。電極を形成する工程は以下の工程を含んでいる。電極本体を形成する。半導体層から見て電極本体よりも離れた位置にAlを含む接続用電極を形成する。電極本体と接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を形成する。バリア層を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度で電極本体を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層を形成する。
【0016】
本発明者らは、本発明の半導体装置を製造するために鋭意研究した結果、雰囲気の圧力と印加する電力とを、または、雰囲気の圧力と加熱温度とを、上記範囲にすることによって、表面粗さRMSが3.0nm以下のバリア層を形成できることを見い出した。そこで、本発明においては、半導体層と接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を3.0nm以下の表面粗さで形成することができる。したがって、接続用電極に含まれるAlの拡散を抑制し、特性の劣化を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の半導体装置およびその製造方法によれば、特性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の実施例1の試料1における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。
【図4】本発明の実施例1の試料2における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。
【図5】本発明の実施例1の試料3における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。
【図6】本発明の実施例1の試料4における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。
【図7】本発明の実施例1の試料5および6における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。図1を参照して、本実施の形態における半導体装置としてのSBD100は、半導体層1と、電極としてのショットキー電極2と、オーミック電極3とを備えている。半導体層1の上面側にショットキー電極2が形成されており、半導体層1の下面側にオーミック電極3が形成されている。
【0020】
半導体層1は基板4と、基板4上に形成されたドリフト層5とを含んでいる。基板4およびドリフト層5はGaNを含んでおり、たとえばn型GaNよりなっている。ドリフト層5のn型不純物濃度は基板4のn型不純物濃度よりも低くなっている。
【0021】
ショットキー電極2は、電極本体6と、バリア層7と、接続用電極(パッド電極)8とを含んでいる。電極本体6はドリフト層5に接触しており、ドリフト層5との間でショットキー障壁を構成している。電極本体6は、たとえばNi/Auの積層膜、すなわちドリフト層5とショットキー接触するNi層と、Ni層上に形成されたAu層とによって構成されている。電極本体6上にはバリア層7が形成されており、バリア層7上には接続用電極8が形成されている。接続用電極8は、SBD100のショットキー電極と外部機器とを電気的に接続するための配線(たとえばAlよりなるワイヤなど)が直接接続される部分である。接続用電極8はAlを含んでおり、たとえばAlよりなっている。バリア層7は、接続用電極8に含まれるAlが熱によって半導体層1内へ拡散することを抑制する。バリア層7は、W、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。バリア層7はたとえばW、TiW、WN、TiN、Ta、またはTaNなどよりなっている。
【0022】
バリア層7の表面7aの表面粗さRMSは、3.0nm以下であり、2.0nm以下であることが好ましく、1.4nm以下であることがより好ましい。表面粗さRMSが3.0nm以下の場合、バリア層7上に形成される接続用電極8に含まれるAlの拡散を効果的に抑制できる。表面粗さRMSが2.0nm以下の場合、接続用電極8に含まれるAlの拡散をより効果的に抑制することができる。表面粗さRMSが1.4nm以下の場合、接続用電極8に含まれるAlの拡散を最も効果的に抑制することができる。なお、バリア層7の表面7aの表面粗さRMSは、小さいほど好ましいが、製造上の理由から、下限値はたとえば1nmである。
【0023】
ここで、表面粗さRMSは、JIS B0601に規定する表面の二乗平均粗さ、すなわち、平均面から測定面までの距離(偏差)の二乗を平均した値の平方根を意味する。
【0024】
また、バリア層7の厚みは、3000Å以上であることが好ましい。この場合、リーク電流の増加を抑制できる。
【0025】
オーミック電極3は、基板4とオーミック接触する材料よりなっており、たとえばTi/Al/Ti/Auの積層膜よりなっている。
【0026】
SBD100においては、電極本体6とドリフト層5との間のショットキー障壁を超える大きさの電圧がショットキー電極2とオーミック電極3との間に印加されると、ショットキー電極2から半導体層1を通ってオーミック電極3へ、基板4の主面に垂直な方向(図中縦方向)に電流が流れる。
【0027】
続いて、本実施の形態におけるSBD100の製造方法について説明する。始めに、基板4上にドリフト層5を形成する。これにより、半導体層1を形成できる。次に、ドリフト層5の上面にショットキー電極2を形成し、基板4の下面にオーミック電極3を形成する。ショットキー電極2を形成する際には、ドリフト層5の上面に電極本体6を形成し、次に電極本体6上にバリア層7を形成し、その後バリア層7上に接続用電極8を形成する。バリア層7は、たとえばスパッタ法により形成される。
【0028】
バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力(スパッタパワー)を印加した状態でスパッタ法によりバリア層7を形成する。あるいは、バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度で電極本体6を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層7を形成する。好ましくは、バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加した状態で、かつ135℃以上の温度で電極本体6を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層7を形成する。
【0029】
ここで、上記温度は、バリア層7を形成するためにスパッタ装置内に配置し、電極本体6の表面を熱電対で測定したときの温度を意味する。たとえばスパッタ装置内でヒータの温度を250℃以上に設定することにより、電極本体6を135℃以上に加熱することができる。この温度の測定では、スパッタ装置として、マグネット炉を有するRFスパッタ装置を用いることが好ましい。また、加熱温度の上限は、電極本体6のショットキー特性の劣化を抑制する観点から、たとえば450℃である。
【0030】
また、バリア層7を形成する工程では、電極本体6を加熱する場合には、加熱時間は、たとえば1時間程度である。
【0031】
以上説明したように、本実施の形態におけるSBD100は、GaNを含む半導体層1と、ショットキー電極2とを備えている。ショットキー電極2は、電極本体6と、半導体層1から見て電極本体6よりも離れた位置に形成され、かつAlを含む接続用電極8と、電極本体6と接続用電極8との間に形成されたバリア層7とを含んでいる。バリア層7の表面粗さRMSが3.0nm以下である。
【0032】
本実施の形態におけるSBD100の製造方法は、以下の工程を備えている。GaNを含む半導体層1を形成する。ショットキー電極2を形成する。ショットキー電極2を形成する工程は以下の工程を含んでいる。電極本体6を形成する。半導体層1から見て電極本体6よりも離れた位置にAlを含む接続用電極8を形成する。電極本体6と接続用電極8との間にバリア層7を形成する。バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力(スパッタパワー)を印加した状態でスパッタ法によりバリア層7を形成する。あるいは、バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度でショットキー電極2を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層7を形成する。
【0033】
本実施の形態におけるSBD100およびその製造方法によれば、実装時(たとえばダイボンドの際)に生じる熱やSBD100の駆動時に生じる熱などによって接続用電極8が加熱されたとしても、接続用電極8に含まれるAlの拡散がバリア層7によって阻止され、ショットキー接合界面へのAlの侵入を抑制することができる。特に、バリア層7の表面粗さRMSが3.0nm以下であると、バリア層7上に形成される接続用電極8を構成するAlの粒界が大きくなることを抑制できる。これにより、接続用電極8を構成するAlがスパイク的にバリア層7を突き抜けることを抑制し、ショットキー電極2中にAlが拡散することを抑制できる。その結果、実装後の自己発熱などの熱によるSBD100の特性の劣化を抑制することができる。
【0034】
(実施の形態2)
図2は、本発明の実施の形態2における半導体装置の構成を模式的に示す断面図である。図2を参照して、本実施の形態における半導体装置としての縦型nチャネルMOSFET101は、半導体層11と、電極としてのゲート電極12と、ソース電極13と、ドレイン電極14とを備えている。半導体層11の上面にはトレンチ11aが形成されており、トレンチ11aの内壁面およびトレンチ11a付近の半導体層11の上面には、ゲート絶縁膜19を挟んでゲート電極12が形成されている。また、半導体層11の上面におけるトレンチ11aおよびゲート絶縁膜19が形成されていない部分には、ソース電極13が形成されている。半導体層11の下面にはドレイン電極14が形成されている。
【0035】
半導体層11は、基板15と、n型ドリフト層16と、p型ボディ層17と、n型層18とを含んでいる。基板15上にはn型ドリフト層16が形成されており、n型ドリフト層16上にはp型ボディ層17が形成されており、p型ボディ層17上にはn型層18が形成されている。トレンチ11aはn型層18およびp型ボディ層17を貫通し、n型ドリフト層16にまで達している。基板15、n型ドリフト層16、p型ボディ層17、およびn型層18は、いずれもGaNを含んでおり、たとえばGaNよりなっている。n型ドリフト層16のn型不純物濃度は、基板15およびn型層18のn型不純物濃度よりも低くなっている。
【0036】
ゲート電極12は、電極本体6と、バリア層7と、接続用電極(パッド電極)8とを含んでいる。電極本体6はゲート絶縁膜19上に形成されており、電極本体6上にはバリア層7が形成されており、バリア層7上には接続用電極8が形成されている。接続用電極8は、MOSFET101のゲート電極12と外部機器とを電気的に接続するための配線が直接接続される部分である。電極本体6、バリア層7、および接続用電極8の構成は、実施の形態1における電極本体、バリア層、および接続用電極の構成と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0037】
ソース電極13は、オーミック電極13aと、オーミック電極13bとを有している。オーミック電極13aは、トレンチ11aの周囲を取り囲むように形成されており、たとえばTi/Alの積層膜よりなっている。オーミック電極13bは、オーミック電極13aの周囲を取り囲むように形成されており、p型ボディ層17およびオーミック電極13aと電気的に接続されている。オーミック電極13bはたとえばNi/Auの積層膜よりなっている。また、ドレイン電極14は、基板15の下面全面に形成されており、たとえばTi/Alよりなっている。
【0038】
MOSFET101においては、ゲート電極12およびドレイン電極14がソース電極13よりも高い電位である場合には、ゲート絶縁膜19を挟んでゲート電極12と対向するp型ボディ層17内にチャネルが形成され、このチャネルを通じて電流が流れる。その結果、ドレイン電極14から半導体層11を通ってソース電極13へ、基板15主面に垂直な方向(図中縦方向)に電流が流れる。
【0039】
続いて、本実施の形態におけるMOSFET101の製造方法について説明する。始めに、基板15上にn型ドリフト層16、p型ボディ層17、およびn型層18をこの順序で形成することによって半導体層1を作製する。次に、n型ドリフト層16に達するトレンチ11aを半導体層1の上面に形成する。次に、トレンチ11aの内壁面にゲート絶縁膜19を形成し、ゲート絶縁膜19の上にゲート電極12を形成する。次に、オーミック電極13aをn型層18上に形成し、オーミック電極13aの外周のn型層18をエッチングすることによりp型ボディ層17を露出させる。そして、オーミック電極13aおよびp型ボディ層17と電気的に接続するようにオーミック電極13bを形成する。オーミック電極13aとオーミック電極13bとによりソース電極13が構成される。その後、ドレイン電極14を基板15の下面に形成する。
【0040】
ゲート電極12を形成する際には、ゲート絶縁膜19上に電極本体6を形成し、次に電極本体6上にバリア層7を形成し、その後バリア層7上に接続用電極8を形成する。バリア層7を形成する工程は、実施の形態1と同様であるので、その説明は繰り返さない。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態におけるMOSFET101は、GaNを含む半導体層11と、ゲート電極12とを備えている。ゲート電極12は、電極本体6と、半導体層11から見て電極本体6よりも離れた位置に形成され、かつAlを含む接続用電極8と、電極本体6と接続用電極8との間に形成されたバリア層7とを含んでいる。バリア層7の表面粗さRMSは3.0nm以下である。
【0042】
本実施の形態におけるMOSFET101の製造方法は、以下の工程を備えている。GaNを含む半導体層11を形成する。ゲート電極12を形成する。ゲート電極12を形成する工程は以下の工程を含んでいる。電極本体6を形成する。半導体層11から見て電極本体6よりも離れた位置にAlを含む接続用電極8を形成する。電極本体6と接続用電極8との間にバリア層7を形成する。バリア層7を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加した状態でスパッタ法によりバリア層7を形成する、あるいは、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度で電極本体6を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層7を形成する。
【0043】
本実施の形態におけるMOSFET101およびその製造方法によれば、実装時(たとえばダイボンドの際)に生じる熱やMOSFET101の駆動時に生じる熱などによって接続用電極8が加熱されたとしても、接続用電極8に含まれるAlの拡散がバリア層7によって阻止され、MOS界面へのAlの侵入を抑制することができる。その結果、熱によるMOSFET101の特性の劣化を抑制することができる。
【0044】
なお、本実施の形態においては、電極本体とバリア層と接続用電極とによって構成される電極を、MOSFETのゲート電極として適用した場合について説明した。しかし、本発明における上記電極は、MOSFETのソース電極として適用してもよい。
【0045】
さらに、実施の形態1および2においては、本発明の半導体装置がSBDおよび縦型MOSFETである場合について説明した。しかし、本発明の半導体装置はこれらのデバイスの他、たとえば容量素子、横型MOSFET、または高電子移動度トランジスタ、バイポーラトランジスタなどであってもよい。本発明の半導体装置は特に、縦型デバイス、すなわち基板主面に対して実質的に垂直な電流経路を有するデバイスであることが好ましい。
【実施例1】
【0046】
本実施例では、始めに以下の条件で試料1〜6のSBDを製造した。
試料1(本発明例):図1に示す構造のSBDを製造した。具体的には、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)で作製したGaNの自立基板を準備した。この基板は、n型不純物濃度が3×1018cm-3、厚みが400μm、平均転位密度が1×106個/cm2であった。次に、この基板の(0001)面上に、OMVPE(Organometallic Vapor Phase Epitaxy)法を用いて、n型不純物濃度が5×1015cm-3、厚みが5μmのGaNよりなるドリフト層をエピタキシャル成長させた。次に、有機溶媒で基板を洗浄した後、基板の下面にオーミック電極を形成した。オーミック電極としては、EB(Electron Beam)蒸着法を用いてTi(厚み20nm)/Al(厚み100nm)/Ti(厚み20nm)/Au(厚み300nm)よりなる積層膜を形成した。その後、600℃の窒素雰囲気中で1分間、オーミック電極を熱処理した。
【0047】
次に、ドリフト層の上面にショットキー電極を形成した。ショットキー電極としては、EB蒸着法を用いてNi(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体を形成した後で、ターゲットとしてTiとWとの合金を用いてスパッタすることによってこの電極本体の上にTiWよりなる厚み3000Åのバリア層を形成し、続いてAlをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極を形成した。バリア層の形成においては、スパッタ装置として、マグネトロンRFスパッタを用いた。また、雰囲気の圧力が0.1Paで、かつ300Wの電力を印加し、電極本体を加熱せずに、スパッタ法によりバリア層を形成した。このバリア層の表面粗さRMSをJIS B0601に準拠して測定した結果、2.0nmであった。
【0048】
次に、1辺が1mmの正方形形状にショットキー電極をパターニングした。具体的には、フォトリソグラフィーによりレジストを接続用電極の上にパターニングし、このレジストをマスクとして、40℃の混合酸系エッチャント(燐酸+硝酸+酢酸+純水)を用いてAlをエッチングし、続いて室温のアンモニア系エッチャント(アンモニア水+過酸化水素水+純水)でバリア層をエッチングした。エッチング後のバリア層におけるTiの組成をICP(Inductively Coupled Plasma)分析で調べたところ、8重量%であった。なお、オーミック電極およびショットキー電極の蒸着直前には、室温のHCl水溶液(半導体用塩酸1:純水10)を用いて3分間、蒸着面を処理した。
【0049】
試料2(本発明例):試料2は、バリア層の形成方法において試料1と異なっていた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、電極本体上に、雰囲気の圧力が0.1Paの圧力で、かつ300Wの電力を印加し、135℃の温度で電極本体を加熱して、スパッタ法によりバリア層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTiW層上に形成した。バリア層の表面粗さRMSは1.4nmで、その厚みは3000Åであった。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0050】
試料3(本発明例):試料3は、バリア層の形成方法において試料1と異なっていた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、電極本体上に、雰囲気の圧力が0.1Paの圧力で、かつ50Wの電力を印加し、135℃の温度で電極本体を加熱して、スパッタ法によりバリア層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTiW層上に形成した。バリア層の表面粗さRMSは、3.0nmで、その厚みは3000Åであった。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0051】
試料4(比較例):試料4は、バリア層の形成方法において試料1と異なっていた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、電極本体上に、雰囲気の圧力が0.1Paの圧力で、かつ50Wの電力を印加し、電極本体を加熱せず、スパッタ法によりバリア層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTiW層上に形成した。バリア層の表面粗さRMSは3.2nmで、その厚みは3000Åであった。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0052】
試料5(比較例):試料5は、バリア層を形成しなかった点において試料1と異なっていた、具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、バリア層を形成せずに、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極を電極本体上に形成した。また、ショットキー電極のパターニングの際には、40℃の混合酸系エッチャント(燐酸+硝酸+酢酸+純水)を用いてAlをエッチングした。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0053】
試料6(比較例):試料6は、バリア層の形成方法において試料1と異なっていた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、厚み0.15μmのTi層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTi層上に形成した。ショットキー電極のパターニングの際には、40℃の混合酸系エッチャント(燐酸+硝酸+酢酸+純水)を用いてAlをエッチングし、続いて室温のアンモニア系エッチャント(アンモニア水+過酸化水素水+純水)でTi層をエッチングした。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0054】
次に、試料1〜6の熱的安定性を評価した。具体的には、SBDの実装時(ダイボンド時)の温度として想定される温度である350℃で試料1〜6の各々を熱処理(アニール)し、熱処理前と熱処理後との各々において、逆方向電圧に対する電流密度を測定した。その結果を図3〜7および表1に示す。なお、表1におけるリーク電流とは、逆方向電圧を350V印加した時の電流密度について、熱処理前の電流密度に対する熱処理後の電流密度の増加を示す。
【0055】
【表1】

【0056】
図3〜図6は、本発明の実施例1の試料1〜4における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。図7は、本発明の実施例1の試料5および6における、逆方向電圧に対する電流密度変化を示す図である。図3〜図5および表1を参照して、表面粗さRMSが3.0nm以下のバリア層を備えていた試料1〜3は、逆方向電圧に対する電流密度変化に大きな変化は見られず、加熱による特性の劣化は効果的に抑制されていた。特に、表面粗さRMSが1.4nm以下の試料2は、加熱による特性の劣化が非常に効果的に抑制されていた。
【0057】
一方、図6および表1を参照して、表面粗さRMSが3.0nmを超えたバリア層を備えていた試料4は、逆方向電圧に対する電流密度変化に大きな変化が見られ、加熱による特性の劣化が見られた。さらに、図7を参照して、本発明のバリア層を備えていなかった試料5および6においては、熱処理後における逆方向電圧に対する電流密度が極端に増加し、加熱による特性の劣化が大きく見られた。
【0058】
以上より、本実施例によれば、バリア層を形成することによって、特性の劣化を抑制でき、さらに、バリア層の表面粗さRMSを3.0nm以下にすることによって、特性の劣化を効果的に抑制できることがわかった。
【実施例2】
【0059】
本実施例では、表面粗さRMSが3.0nm以下のバリア層を形成する条件について調べた。そのため、本実施例では、試料1〜4に加えて、以下の条件で試料7、8のSBDを製造した。
【0060】
試料7(比較例):試料7は、バリア層の形成方法において試料1と異なっていた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、電極本体上に、雰囲気の圧力が0.5Paの圧力で、かつ300Wの電力を印加し、電極本体を加熱せず、スパッタ法によりバリア層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTiW層上に形成した。バリア層の厚みは3000Åであった。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0061】
試料8(比較例):試料8は、バリア層の形成方法において試料1と異なってた。具体的には、ショットキー電極として、Ni(厚み50nm)/Au(厚み300nm)よりなる電極本体をEB蒸着法を用いて形成した後で、電極本体上に、雰囲気の圧力が1.5Paの圧力で、かつ300Wの電力を印加し、電極本体を加熱せず、スパッタ法によりバリア層を形成し、続いて、Alをスパッタすることによって厚み3μmの接続用電極をTiW層上に形成した。バリア層の厚みは3000Åであった。上記以外の製造方法は上記試料1と同様であった。
【0062】
また、試料7、8についても試料1〜4と同様に、バリア層の表面粗さRMSをJIS B0601に準拠して測定した。その結果を下記の表2に示す。
【0063】
【表2】

【0064】
表2に示すように、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加した状態でスパッタ法によりバリア層を形成した試料1、2は、表面粗さRMSが2.0nm以下になった。また、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度で電極本体を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層を形成した試料2、3においては、表面粗さRMSが3.0nm以下になった。さらに、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加し、かつ135℃以上の温度で電極本体を加熱した状態で、スパッタ法によりバリア層を形成した試料2は、1.4nm以下の表面粗さRMSを実現できた。
【0065】
一方、いずれの条件も満たしていない試料4、7、8においては、3.2nm以上の表面粗さRMSのバリア層となった。
【0066】
以上より、本実施例によれば、雰囲気の圧力および印加する電力、または、雰囲気の圧力および加熱温度、を制御したスパッタ条件により、バリア層の表面粗さRMSを3.0nm以下にすることを見い出した。
【0067】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明はGaN系材料よりなるパワー半導体デバイスとして適している。
【符号の説明】
【0069】
1,11 半導体層、2 ショットキー電極、3 オーミック電極、4,15 基板、5 ドリフト層、6 電極本体、7 バリア層、7a 表面、8 接続用電極、11a トレンチ、12 ゲート電極、13 ソース電極、13a,13b オーミック電極、14 ドレイン電極、16 n型ドリフト層、17 p型ボディ層、18 n型層、19 ゲート絶縁膜、100 SBD、101 MOSFET。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムを含む半導体層と、
電極とを備え、
前記電極は、電極本体と、前記半導体層から見て前記電極本体よりも離れた位置に形成され、かつアルミニウムを含む接続用電極と、前記電極本体と前記接続用電極との間に形成されたW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層とを含み、
前記バリア層の表面粗さRMSが3.0nm以下である、半導体装置。
【請求項2】
前記電極本体は前記半導体層とショットキー接触している、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記バリア層の厚みは3000Å以上である、請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
窒化ガリウムを含む半導体層を形成する工程と、
電極を形成する工程とを備え、
前記電極を形成する工程は、電極本体を形成する工程と、前記半導体層から見て前記電極本体よりも離れた位置にアルミニウムを含む接続用電極を形成する工程と、前記電極本体と前記接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を形成する工程とを含み、
前記バリア層を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下で、かつ300W以上の電力を印加した状態でスパッタ法により前記バリア層を形成する、半導体装置の製造方法。
【請求項5】
窒化ガリウムを含む半導体層を形成する工程と、
電極を形成する工程とを備え、
前記電極を形成する工程は、電極本体を形成する工程と、前記半導体層から見て前記電極本体よりも離れた位置にアルミニウムを含む接続用電極を形成する工程と、前記電極本体と前記接続用電極との間にW、TiW、WN、TiN、Ta、およびTaNよりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むバリア層を形成する工程とを含み、
前記バリア層を形成する工程では、雰囲気の圧力が0.1Pa以下の圧力で、かつ135℃以上の温度で前記電極本体を加熱した状態で、スパッタ法により前記バリア層を形成する、半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−263127(P2010−263127A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113836(P2009−113836)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】