説明

半導体装置の製造方法および半導体装置

【課題】露光光源として真空紫外光を用いるホトリソ技術のパターン解像限界より微細な拡散抵抗を製造することはできないから、高抵抗の拡散抵抗は実現できなかった。
【解決手段】一組の薄膜構造体の対向する間隔に、サイドウォール形成用の絶縁膜を形成する際に生じる空隙を利用して露光光源として真空紫外光を用いるホトリソ技術のパターン解像限界より微細な拡散抵抗を形成する。薄膜構造体を配線抵抗として利用すれば、これらを接続して設けることにより温度特性に優れる抵抗素子を構成することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体基板上に設ける抵抗の製造方法及び構造に関する。特に、露光光源として真空紫外光を用いるホトリソ技術では製造が困難な細い線幅を有する拡散抵抗の製造方法及び構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体装置を構成する配線は、単に素子間を電気的に接続するという目的に加え、回路の特性や動作状態を調整する抵抗としての役割を果たす。さらに半導体装置においては、抵抗として機能する配線はその形態より、配線抵抗と拡散抵抗とに大別される。
【0003】
配線抵抗は、導電性材料をエッチングにより加工して形成するパターン配線を利用した抵抗である。
一般的には、半導体基板の上部に導電性材料からなる膜を形成して所定のパターン形状に加工して形成する抵抗であるから、微細な寸法の形成が可能である。また、材料の選択により様々な水準の抵抗値を有する抵抗素子を形成することができる。
【0004】
このような配線抵抗の配線材料として、一般的には化学気相成長法(以後、CVD;Chemical−Vapor−Deposition法と記載する)により形成される多結晶シリコンが知られている。その形状を精度が良く作ることができるから広く使用されるが、膜中に未結合のシリコンサイトが含まれることから、このシリコンサイトが後工程で原子状水素に終端されるなどして抵抗値が安定しないという短所もある。
【0005】
また、多結晶シリコンよりなる配線抵抗は、電気伝導が結晶粒界に存在するエネルギーバリアにより律速する。温度上昇に伴い電気伝導の担い手であるキャリアのエネルギーが増加すると、バリアを越えるキャリアの確率が増すことから、温度上昇に伴い抵抗値が減少するという温度特性を示す。
【0006】
一方、拡散抵抗は、半導体基板の内部に不純物を拡散させて形成する抵抗である。
一般的には、絶縁膜で囲まれた半導体基板表面の所定の領域に不純物を導入、活性化することにより形成する抵抗である。
【0007】
このような拡散抵抗は、基本的に単結晶基板である半導体基板表面に形成することから、多結晶シリコンからなる配線抵抗の短所であった未結合のシリコンサイトに起因する抵抗の不安定性という問題はないが、一般的な素子分離法であるLOCOS(Local−Oxidation−of−Silicon)法により拡散抵抗形成領域を形成した場合、その工程上の特徴から微細な抵抗を形成することが困難であるという短所もある。
【0008】
また、拡散抵抗は、基板(バルク)中の電気伝導の担い手であるキャリアが温度の増加と共にシリコン(Si)原子の格子振動により大きく散乱することから、温度上昇に伴い抵抗値が上昇するという温度特性を示す。
【0009】
拡散抵抗は、LOCOS法により素子分離された半導体基板表面に不純物をイオン注入するなどして導入し、それを熱拡散させるなどして構成する。このような製造技術は広く知られており、半導体装置の基本的な技術のひとつと言ってもよい。
【0010】
そのような一般的な拡散抵抗の製造方法を、図16を用いて簡単に説明する。
図16(a)に示したように、その表面にパッド酸化膜102を有するシリコン半導体
基板101の所定部分に、シリコン窒化膜よりなる耐酸化マスク103を所定の線幅Waで形成する。
図16(b)に示したように、水蒸気を用いた既知の熱酸化法により耐酸化膜マスク103に覆われていない領域にシリコン酸化膜よりなる素子分離膜104を形成する。素子分離膜104の形成が終了すると、耐酸化膜マスク103端部はめくれ上がったような形状となるこれは、その端部下にシリコン酸化膜が成長し、鳥のくちばし(Birds−Beak)状に形成されるためである。
【0011】
図16(c)に示したように、素子分離膜104形成後に耐酸化マスク103を熱燐酸等により除去して素子領域105とし、この部分に、例えばリン(P)のような不純物をイオン注入し、高温にてアニール処理することにより不純物拡散層106を形成する。この不純物拡散層が拡散抵抗となるのである。
【0012】
図に示した記号Laは、拡散抵抗の配線幅を示すものである。拡散抵抗は、所定の拡散長と拡散幅とで、例えば矩形状に形成されるが、拡散長を長手方向、拡散幅を短手方向とするとき、長手方向に電流が流れ、所定の抵抗値を得るものである。図16(c)の場合、図面手前方向と奥方向が拡散長となる。
【0013】
図16に示したように、LOCOS法を用いて素子分離膜を形成し、拡散抵抗形成領域を形成すると、素子分離膜の端部が鳥のくちばし状になる。このため、耐酸化マスク103を線幅Waで設計しても、実際には鳥のくちばし状の分だけ横方向にも酸化が進行し内側に食い込むため、不純物をイオン注入する領域の幅は、幅Wbとなる。この幅Wbは、拡散抵抗の配線幅Laの基本となる距離である。つまり、拡散抵抗の配線幅Laは、イオン注入領域の幅Wbよりアニール処理によって熱拡散してなる幅である。
【0014】
ところで、高い抵抗値の拡散抵抗を得ようとするときは、イオン注入する不純物の濃度を変えないとすると、拡散抵抗の配線幅Laを狭くすればよいことが知られている(もちろん、不純物濃度も同時に変えてよいことは無論である。)。
【0015】
そうすると、図16に示す例の場合、耐酸化マスク103の線幅Waを狭くするように設計すればよいのだが、LOCOS法を用いると鳥のくちばし状の酸化膜の横方向の成長があるために、この部分を加味した線幅以下には、耐酸化マスク103の線幅Waを狭くすることができない。つまり、高い抵抗値の拡散抵抗を作ることができない。
【0016】
そこで、素子領域105の幅そのものが拡散抵抗の配線幅とならないような設計手法が広く知られている。すなわち、素子領域105内の半導体基板に所定の線幅で拡散抵抗を形成するのである。
【0017】
そのような拡散抵抗の製造方法を、図17を用いて簡単に説明する。なお、図17にあっては、図16と同一の構成には同一の番号を付与している。
図17(a)に示したように、その表面にパッド酸化膜102及び素子分離膜104を有するシリコン半導体基板101の所定部分に、不純物のイオン注入用のマスクとしてホトレジスト107を形成する。ホトレジスト107には、開口部Kを設けている。記号Wcはこの開口部Kの幅である。
図17(b)に示したように、開口部Kに不純物をイオン注入し、高温にてアニール処理することにより不純物拡散層108を形成することができる。この不純物拡散層が拡散抵抗の配線幅となる。図に示した記号Lbは、その配線幅を示すものである。
【0018】
このようにすれば、図16に示した耐酸化マスク103の線幅Wa、つまり素子領域105の幅に関係なく、ホトレジスト107の開口部Kの幅Wcで自由に拡散抵抗の配線幅
Lbを決めることができるから、より線幅の狭い(抵抗値の高い)拡散抵抗を形成することができる。
【0019】
このような素子領域よりも線幅の狭い拡散抵抗を形成する技術は広く知られていると共に、多くの応用技術の提案も散見する。
そのような応用技術のひとつに、素子領域内に複数の拡散抵抗を設ける場合に、素子分離膜に近い場所に設ける拡散抵抗と、素子分離膜から遠い場所に設ける拡散抵抗との形状のばらつきを防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0020】
特許文献1に示した従来技術は、LOCOS法により形成された素子分離膜の半導体基板より上に突出した分の膜厚によって、塗布したホトレジストのうち素子領域内の膜厚に違いが生じてしまい、拡散抵抗の幅に違いが生じてしまうことを防止する技術である。この技術によれば、半導体基板より上に突出した分の素子分離膜の膜厚を薄くすることでホトレジストの膜厚の違いを緩和するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2000−195944号公報(第2頁−3頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
特許文献1に示した従来技術では、素子分離膜を薄く加工するため、その絶縁耐圧が低下してしまうという問題がある。これを防止するには、素子分離膜の膜厚を厚く形成する必要がある。
しかし、そうすると、鳥のくちばし状に横方向に進行する酸化も増えてしまう。そうなると、場合のよっては、図17に示した例で言えば、開口部Kの幅Wcを設計値通りに形成できなくなるばかりか、半導体基板上の拡散抵抗以外の半導体素子を形成する領域にも影響が出てしまい、微細化を阻害する要因になりかねない。
このため、特許文献1に示した従来技術は、絶縁耐圧が低くてもよい半導体装置にしか用いることができないという大きな制約がある。
【0023】
ところで、図16に示した従来知られている技術であっても、もちろん特許文献1に示した従来技術であっても、拡散抵抗の線幅を決めるのは、マスクパターンそのものである。図17の例では、ホトレジスト107の開口部Kの幅Wcである。
知ってのとおり、真空紫外光を露光光源として用いるホトリソ技術では、パターン解像の限界があり、より高抵抗の拡散抵抗を得ようとして、より細い線幅のパターンを形成しようとしても、パターン解像の限界よりも小さいパターンを形成することはできない。
【0024】
したがって、従来知られているどのような製造方法を用いても、拡散抵抗の線幅は、パターン解像の限界よりも細い線幅にすることができず、より高抵抗を欲する要求に対応することができなかった。
【0025】
本発明の半導体装置の製造方法および半導体装置は、このような課題を解決するためにある。そしてその目的は、パターン加工に用いる露光装置のパターン解像限界よりも微細な拡散抵抗を形成する技術を提供することである。また、この技術の応用により、温度特性に優れた抵抗素子を実現することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置の製造方法は、以下の製造方法を採用する。
【0027】
半導体基板に設ける拡散抵抗を備える半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上部に、所定の間隔にて一組の薄膜構造体を形成する構造体形成工程を有し、
一組の薄膜構造体を覆い、間隔には空隙を形成するように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を有し、
絶縁膜を半導体基板方向にエッチング除去して空隙を露出させ、間隔に面する薄膜構造体の縦端面に絶縁膜をサイドウォールとして残すエッチバック工程と、
薄膜構造体及びサイドウォールをマスクとして間隔の前記半導体基板に所定の不純物イオンを注入するイオン注入工程と、
不純イオンを半導体基板に拡散させることで拡散抵抗を形成する拡散工程と、
を有することを特徴とする。
【0028】
このような構成にすることによって、露光光源として真空紫外光を用いるホトリソ工程のパターン解像限界より微細な拡散抵抗を形成することができる。
【0029】
半導体基板に設ける拡散抵抗を備える半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の表面に素子分離膜を形成する素子分離工程と、
素子分離膜の上部に、所定の間隔にて一組の薄膜構造体を形成する構造体形成工程を有し、
一組の薄膜構造体を覆い、間隔には空隙を形成するように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を有し、
絶縁膜を半導体基板方向にエッチング除去して空隙を露出させ、間隔に面する薄膜構造体の縦端面に絶縁膜をサイドウォールとして残すエッチバック工程と、
薄膜構造体及びサイドウォールをマスクとして間隔の素子分離膜をエッチング除去して半導体基板の表面を露出させる露出工程と、
露出工程により露出した半導体基板に所定の不純物イオンを注入するイオン注入工程と、
不純イオンを半導体基板に拡散させることで拡散抵抗を形成する拡散工程と、
を有することを特徴とする。
【0030】
このような構成にすることによって、素子分離膜領域に微細な拡散抵抗を形成することができる。
【0031】
イオン注入工程は、半導体基板に対して、所定の注入角度を与えて不純物イオンを注入するようにしてもよい。
【0032】
このような構成にすることによって、半導体基板により狭い面積で不純物イオンを導入できるから、より高い抵抗値の拡散抵抗を形成することができる。
【0033】
さらに本発明の半導体装置の製造方法は、
薄膜構造体と拡散抵抗とを電気的に接続する接続工程を有するようにしてもよい。
【0034】
このような構成にすることによって、薄膜構造体を抵抗体として用いることができる。薄膜構造体と拡散抵抗とを接続することにより、双方の温度特性を打ち消すようにできるので、温度特性の優れた微細な抵抗素子を形成することができる。
【0035】
上記目的を達成するために、本発明の半導体装置は、以下の構成を採用する。
【0036】
半導体基板に設ける拡散抵抗を有する半導体装置であって、
半導体基板の上部に、その縦端面にサイドウォールを有する薄膜構造体を所定の間隔で一組備え、
一組の薄膜構造体の間の半導体基板に、間隔よりも狭く、間隔に面するサイドウォール同士が対向する距離と同じかそれよりも広い幅の拡散抵抗を有する。
【0037】
このような構成にすることによって、拡散抵抗領域の面積効率が向上する。
【0038】
半導体基板の表面に素子分離膜を備え、
素子分離膜の上部に薄膜構造体を有し、素子分離膜の下部に拡散抵抗を備えるようにしてもよい。
【0039】
このような構成にすることによって、素子分離膜領域に設ける拡散抵抗領域の面積効率が向上する。
【0040】
拡散抵抗と薄膜構造体とを並列に接続するようにしてもよい。
【0041】
このような構成にすることによって、温度特性に優れる抵抗素子の面積効率が向上する。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、露光光源として真空紫外光を用いるホトリソ工程のパターン解像限界より小さな寸法の拡散抵抗を形成することができる。このため、抵抗値として従来より高抵抗の拡散抵抗を実現することができる。
【0043】
さらに、拡散抵抗と配線抵抗とは温度特性(抵抗値の温度依存性)が異なる。したがって拡散抵抗を形成する際、サイドウォールを形成するための絶縁膜のエッチング及びイオン注入時にマスクとして用いる薄膜構造体を配線抵抗として使用し、拡散抵抗と並列に接続することで従来より温度特性に優れた抵抗素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の概要を説明する図であって、製造方法順に断面の様子を説明した断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法を示す図であり、製造方法を構成する工程を順に示すフローチャートである。
【図3】本発明の第1の実施形態における素子分離工程を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態における構造体形成工程を示す断面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態における絶縁膜形成工程を示す断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるエッチバック工程を示す断面図である。
【図7】本発明の第1の実施形態における露出工程を示す断面図である。
【図8】本発明の第1の実施形態におけるイオン注入工程を示す断面図である。
【図9】本発明の第1の実施形態における拡散工程を示す断面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態における配線形成工程を示す断面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態における絶縁膜形成工程の詳細を説明する断面図である。
【図12】本発明の第2の実施形態におけるイオン注入工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第3の実施形態における角度注入によるイオン注入工程を示す断面図である。
【図14】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法による半導体装置の構造で、拡散抵抗と配線抵抗とを並列に接続する構造を示す平面図である。
【図15】本発明の第1の実施形態における半導体装置の製造方法による半導体装置の構造で、拡散抵抗と配線抵抗とを直列に接続する構造を示す平面図である。
【図16】従来より知られている半導体装置の製造方法を示す図であり、LOCOS法を用いて拡散抵抗を形成する過程を説明する断面図である。
【図17】従来より知られている半導体装置の製造方法を示す図であり、素子領域よりも狭い線幅の拡散抵抗を形成する過程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の半導体装置の製造方法および半導体装置は、一組の薄膜構造体の向かい合う間隔に、後に薄膜構造体のサイドウォールとなる絶縁膜形成時に発生する空隙を利用し、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界より微細な拡散抵抗を形成するものである。
大きな特徴は、拡散抵抗の線幅を、パターニングで形成した所定のパターンによって決めるのではなく、別の膜を形成するときに生じる空隙を利用している点である。
【0046】
以下、図1を用いて本発明の特徴を説明する。
図1は、本発明の製造方法を工程順に示す断面図であり、説明に必要に無い構成を省き模式的に表した図である。この断面図は、拡散抵抗の一部を切断するように表した図であり、図面の手前方向と奥方向との間で電流が流れるような向きを示している。例えば、矩形形状の拡散抵抗の長手方向に電流が流れるものとしたときに、短手方向で切ったときの断面を見た図であって、従来より知られている半導体装置の製造方法を説明した図である図16、図17と同じ向きの断面図である。
【0047】
図1(a)は、構造体形成工程、図1(b)は、絶縁膜形成工程、図1(c)は、エッチバック工程、図1(d)は、イオン注入工程、図1(e)は、拡散工程をそれぞれ示す。
符号は、1は半導体基板、3aは薄膜構造体、5は絶縁膜を示す。5aと5bとは絶縁膜5をエッチバックして形成するサイドウォールである。6は空隙、9はイオン注入層、11は拡散抵抗をそれぞれ示す。
【0048】
まず、図1(a)に示すように、例えば、導電型がP型であるシリコンからなる半導体基板1上に一組の薄膜構造体3aを対向して形成する。薄膜構造体3aは、例えば、多結晶シリコンで形成する。
薄膜構造体3a同士が対向する間隔の距離L0は、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界と一致するかそれに近い距離である。例えば、薄膜構造体3aの膜厚が350nm程度であれば、450nm程度である。
【0049】
この距離をホトリソ工程のパターン解像限界よりも狭くしてしまうと、薄膜構造体3a自体が正しく形成できないため、パターン解像限界と同じにするのが好ましい。もちろん、加工誤差などを鑑みてやや広くしてもかまわないが、そのやや広くする距離は、用いる露光装置の性能や薄膜構造体3aの材質、後述する絶縁膜5の材質により変わってくるため、一概に数値で表しにくい。このため、実験などをして予めその距離を決めておくとよい。
【0050】
次に、図1(b)に示すように、絶縁膜5を所定の膜厚で形成する。この形成は、知られているCVD法で行う。絶縁膜5は、例えば、シリコン酸化膜で形成する。
一組の薄膜構造体3aは、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界と一致するかそれに近い距離L0で対向しているため、絶縁膜5を形成しようとすると、薄膜構造体3aの間隔に絶縁膜のない空隙6が形成される。
これは、絶縁膜5が薄膜構造体3aの側壁部に十分な膜厚で形成される前に、薄膜構造体3aの上端部付近同士が庇のように伸びて繋がるように形成され、薄膜構造体3aの間
隔上に蓋をしてしまうようになるためである。そして、結果として空隙6が形成されるのである。
【0051】
このような空隙6は、薄膜構造体3aをホトリソ工程のパターン解像限界と一致するかそれに近い距離L0で対向して形成しているからこそできるものである。この空隙6の形成に関しては、より詳しく後述する。
【0052】
次に、図1(c)に示すように絶縁膜5をエッチバック(エッチングバックとも言う)することにより薄膜構造体3aの側壁にサイドウォール5a、5bを形成する。
絶縁膜5を半導体基板1方向にエッチング除去して空隙6を露出させ、薄膜構造体3aの間隔に面する薄膜構造体3aの縦端面に絶縁膜5をサイドウォールとして残すのである。
【0053】
サイドウォールは薄膜構造体3a同士が対向する側が5aであり、対向しない側が5bである。薄膜構造体3aが対向する側のサイドウォール5aは空隙6の存在により対向しない側のサイドウォール5bに比べ平面的な膜厚は小さく、サイドウォール5a同士は距離Lで離間して対向する。このサイドウォール5a同士が対向する距離Lは、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界より小さな寸法である(図1の例では、L0>Lとなる。)。
【0054】
本発明の特徴は、まさにこの点であり、絶縁膜5の形成にあたり、対向する薄膜構造体3aの間隔に意図的に空隙6を設けることで、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界より小さな寸法でサイドウォール5a同士を対向する距離Lを作り出すことにある。
【0055】
その後、図1(d)に示すように、薄膜構造体3aとサイドウォール5a、5bとをマスクとして、薄膜構造体3aの間隔のサイドウォール間に導電性がN型の不純物(例えば、砒素;As)をイオン注入し、イオン注入層9を形成する。
【0056】
そして、図1(e)に示すように、不活性気体雰囲気中にてアニール処理を実施することによりイオン注入層9を構成する不純物を電気的に活性化させると共に拡散させることにより拡散抵抗11を形成する。
図1(d)で示すイオン注入工程にて、マスクとして使用した対向するサイドウォール5aの離間する距離Lが、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程では実現できなかった微細な寸法であるため、拡散抵抗11は従来よりも微細に形成することができ、その結果、高抵抗を実現することができる。
すでに説明したように、図1は、図面の手前方向と奥方向との間で電流が流れるような向きを示しているから、拡散抵抗11の幅(図面左右方向)が狭いほど、高抵抗にすることができる。
【0057】
また、例えば、薄膜構造体3aを導電型がN型の多結晶シリコンで構成すると、この薄膜構造体3aは、配線抵抗として機能させることもできる。
サイドウォール及び薄膜構造体は、本来、配線幅の狭い高抵抗な拡散抵抗11を形成するために必要な要素であるから、拡散抵抗11形成後は除去してもかまわない。しかし、これらを配線抵抗として運用することもできるのである。
最終的に拡散抵抗と薄膜構造体とを電気的に接続することにより、拡散抵抗、配線抵抗それぞれの温度特性を相殺する、温度特性に優れた抵抗素子を実現することもできるのである。
【実施例1】
【0058】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最適な形態の半導体装置の製造方法を説明する。なお、説明に使用する断面図は、図1と同じ方向の断面図である。
【0059】
[第1の実施形態の製造方法の詳細説明;図2〜図11]
第1の実施形態は、一組の薄膜構造体を、素子領域を取り囲む素子分離膜上に形成する製造方法である。第1の実施形態の製造方法は、特に導電型がP型の半導体基板1表面に導電型がN型の拡散抵抗を形成する場合を例にして説明する。
【0060】
以下、第1の実施形態における半導体装置の製造方法を、図2から図11を用いて説明する。
図2は、本発明の最適な実施形態の概要を構成する工程順に示す製造方法のフローチャートである。図3から図10は、図2に示すフローチャートを構成する工程を詳しく説明する断面図であって、図1と同様に説明し易いように模式的に示す図である。図11は空隙が形成される経緯を説明する図となっている。
【0061】
図2に示す製造方法のフローチャートは、素子分離工程P01、構造体形成工程P10、絶縁膜形成工程P20、エッチバック工程P30、露出工程P40、イオン注入工程P50、拡散工程P60、配線形成工程P02の流れを示すものである。この図を参照しつつ図3から図10を用いて各製造工程を説明する。
【0062】
また、図3から図10において、その符号は、1は半導体基板、2は素子分離膜、3は多結晶シリコン膜を示す。3aは薄膜構造体を示し、多結晶シリコン膜3を加工して形成する。4はホトレジストパターン、5は絶縁膜を示す。5aと5bとは絶縁膜5をエッチバックして薄膜構造体3aの縦端面に形成するサイドウォールである。6は空隙、7は凹部、8は開口部、9はイオン注入層、10は層間絶縁膜、11は拡散抵抗、12はコンタクトホール、13は金属配線をそれぞれ示す。
【0063】
[素子分離工程P01の説明:図2、図3]
素子分離工程P01を図2及び図3を用いて説明する。この製造工程は、半導体基板上に素子分離膜を形成する工程である。
例えばシリコンよりなる半導体基板1の表面に半導体素子を設けるための素子領域を取り囲むようにシリコン酸化膜よりなる素子分離膜2を形成する。図3の断面図は、素子領域がない素子分離膜2の部分を表している。
【0064】
素子分離膜2は、半導体分野における代表的な素子分離手法であるのLOCOS法により素子領域の周りに選択的に形成され、水蒸気雰囲気下で1000℃の処理を行うことにより、300nmの膜厚で形成する。
【0065】
[構造体形成工程P10の説明:図2、図4]
次に、構造体形成工程P10を図2及び図4を用いて説明する。この製造工程は、所定の間隔を有する一組の薄膜構造体を形成する工程である。
【0066】
まず、図4(a)に示すように素子分離膜2上に多結晶シリコン膜3を形成する。多結晶シリコン膜3は、反応ガスとしてモノシラン(SiH)を用いるCVD法により、350nmの膜厚で形成する。
次に、多結晶シリコン膜3上に既知の回転塗布法によりホトレジストをコーティングする。その後、所定のホトマスクを用いて既知のホトリソグラフィ技術を用いてホトレジストを所定の形状に露光、現像することにより、多結晶シリコン膜3の上部の所定の部分に、一組のホトレジストパターン4を形成する。
【0067】
この一組のホトレジストパターン4同士の距離は、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界と一致するかそれに近い距離であり、例えば、450nm程度である。
【0068】
次に、図4(b)に示すように、ホトレジストパターン4を耐エッチングマスクとし、反応ガスに塩素(Cl)と臭化水素(HBr)とを用いるドライエッチングにより多結晶シリコン膜3を加工する。
ホトレジストパターン4は、その間隔を450nm程度で対向しているため、選択性の高いドライエッチングにより除去された一組の薄膜構造体3aの間隔も450nm程度となる。この距離は、図1で言えば、距離L0であるので、図4(b)にもその旨表示している。
【0069】
ところで、一組の薄膜構造体3aの対向する間隔のアスペクト比(薄膜構造体3aの膜厚と間隔との比であり、膜厚を間隔で割った値)は、約0.78である。
図示しないが、その後ホトレジストパターン4は除去する。
【0070】
[絶縁膜形成工程P20の説明:図2、図5、図11]
次に、絶縁膜形成工程P20を図2及び図5、図11を用いて説明する。この製造工程は、薄膜構造体を覆い、一組の薄膜構造体の間隔に空隙を設けるように絶縁膜を形成する工程である。
【0071】
図5に示すように、反応ガスとして、モノシラン(SiH)と酸素(O)とを用いるCVD法により、シリコン酸化膜である絶縁膜5を300nmの膜厚で薄膜構造体3aを覆うように形成する。この際、一組の薄膜構造体3aの間隔に空隙6が形成される。
発明者によれば、薄膜構造体3aの膜厚が350nmの場合、アスペクト比が0.7以上で空隙が形成することを確認している。
【0072】
空隙6が形成される経緯を、図11を用いて詳しく説明する。
図11は、一組の薄膜構造体3aを絶縁膜5で覆うと同時に、一組の薄膜構造体3aの間隔に空隙が形成される経緯を詳細に示す断面図であり、その経過を図11(a)から図11(e)の順で図示している。
【0073】
図11(a)に示すように、半導体基板1の表面に設ける素子分離膜2上に一組の薄膜構造体3aが対向して形成している。その膜厚は350nm程度、その間隔の距離は450nm程度である。
【0074】
図11(b)は、絶縁膜5形成の初期過程であり、50nm程度の膜厚を形成した状態である。薄膜構造体3aの対向する間隔は狭小であるため、絶縁膜5を形成するための前駆体が入り込むのが難しく、平面的に間隔に位置する素子分離膜2表面に絶縁膜5が均一に形成できず、薄膜構造体3aの上端部(上部角部)に、より多く絶縁膜5が形成されている。
【0075】
図11(c)は、絶縁膜5を150nm程度の膜厚で形成した状態である。薄膜構造体3aの対向する間隔では、薄膜構造体3aの縦端面及び素子分離膜2表面と、上端部との膜厚差が徐々に拡大する。薄膜構造体3aの上端部では、絶縁膜5が庇のように薄膜構造体3aの間隔方向に突出して形成され始める。
【0076】
図11(d)は、絶縁膜5を250nm程度の膜厚で形成した状態である。薄膜構造体3aの対向する上端部の絶縁膜5同士が成長してまさに接触する様子を示している。このような形状であるから、薄膜構造体3a同士の間隔には絶縁膜5を形成するための前駆体
が入り込まなくなる。したがって、薄膜構造体3aの縦端面及び素子分離膜2表面への絶縁膜5の堆積による膜厚の増加が停止する。
【0077】
図11(e)は、絶縁膜5を300nm程度の膜厚保で形成した最終的な状態である。薄膜構造体3aの対向する間隔には空隙6が形成された後、空隙の上部に絶縁膜5がより厚く堆積している。薄膜構造体3aが対向する間隔の領域では、図11(d)に示すように絶縁膜5の膜厚が250nmの膜厚を超えるとほとんど膜の堆積が停止することから一組の薄膜構造体3aの縦端面に堆積する絶縁膜5の膜厚は、対向する側と反対側とで非対称となる。
【0078】
以上、このような経過をたどり、薄膜構造体3aの間隔には絶縁膜5の無い空隙6が形成されるのである。この空隙6は、一組の薄膜構造体3a同士の間隔が決まれば精度良く形成することができる。一例であるが、この空隙6の幅(図面左右方向)は、150nmである。
【0079】
[エッチバック工程P30の説明:図2、図6]
次に、エッチバック工程P30を図2及び図6を用いて説明する。この製造工程は、絶縁膜5を半導体基板1方向にエッチング除去して空隙6を露出させ、間隔に面する薄膜構造体3aの縦端面に絶縁膜5をサイドウォール5a、5bとして残す工程である。
【0080】
反応ガスとして、三フッ化メタン(CHF)と四フッ化メタン(CF)とを用いるドライエッチングにより絶縁膜5を垂直方向に素子分離膜2の表面が露出するまでエッチングする。
絶縁膜5の垂直方向の膜厚は、素子分離膜2の表面及び薄膜構造体3aの上部表面と、薄膜構造体3aの縦端面とで異なり、薄膜構造体3aの縦端面では薄膜構造体3aの膜厚分だけ厚くなる。したがって、ドライエッチングにより絶縁膜5を垂直方向にエッチングすると、薄膜構造体3aの縦端面に絶縁膜5が残りサイドウォール5a、5bが形成される。
【0081】
絶縁膜形成工程で形成した絶縁膜5の一組の薄膜構造体3aの縦端面に堆積する膜厚は、対向する側と反対側で非対称となるであることから、エッチバック後、一組の薄膜構造体3aの縦端面に形成される絶縁膜5よりなるサイドウォールの膜厚は、対向する側と反対側とで非対称となる。符号5aは対向する側のサイドウォールを、符号5bは反対側のサイドウォールをそれぞれ示している。
一例であるが、サイドウォール5aのおおよその膜厚は、150nm、サイドウォール5bのおおよその膜厚は、250nmである。
【0082】
なお、空隙6の存在により、薄膜構造体3aの間隔における絶縁膜5の膜厚(空隙6の下部)は、他の領域に比べ相対的に薄いことからエッチバック工程後、その部分の素子分離膜2の表面は少しエッチングされ、凹部7が形成される。
【0083】
[露出工程P40の説明:図2、図7]
次に、露出工程P40を図2及び図7を用いて説明する。この製造工程は、薄膜構造体3a及びサイドウォール5a、5bをマスクとして薄膜構造体3aの間隔の素子分離膜2をエッチング除去して半導体基板1の表面を露出させる工程である。
【0084】
反応ガスとして、三フッ化メタン(CHF)と四フッ化メタン(CF)とを用いるドライエッチングにより、一組の薄膜構造体3aの対向する間隔に平面的に位置する素子分離膜2を、薄膜構造体3aとサイドウォール5aとを耐エッチングマスクとし、垂直方向に半導体基板1の表面が露出するまでエッチングする。
【0085】
一組の薄膜構造体3aの対向する間隔に平面的に位置する素子分離膜2に半導体基板1が150nm程度の幅で露出する垂直な溝8が形成される。150nmの幅は、露光光源として真空紫外光を用いたホトリソ技術のパターン解像限界より小さな寸法である。
すなわち、この溝8の幅は、空隙6の幅と一致している。空隙6がホトリソ技術を使ったパターニングで形成されたものではないから、このような極小寸法の溝8を形成できるのである。
【0086】
ところで、すでに説明したように、空隙6の幅の一例は150nmであり、サイドウォール5aの幅の一例もまた150nmである。そうすると、図6や図7では空隙6により生成される凹部7や溝8の幅とサイドウォール5aの幅とに違いがあるように見えるが、これは図面を見やすくするためにあえて表現した結果である。以後の図面においても同様である。
【0087】
[イオン注入工程P50の説明:図2、図8]
次に、イオン注入工程P50を図2及び図8を用いて説明する。この製造工程は、露出工程P40により露出した半導体基板1に所定の不純物イオンを注入する工程である。
【0088】
半導体基板1の全面に、拡散抵抗を構成する不純物である砒素(As)をイオン注入する。露出工程P40にて一組の薄膜構造体3aの対向する間隔に位置する領域に露出した半導体基板1の表面に不純物を導入し、イオン注入層9を形成する。
【0089】
イオン注入層9は、後の拡散工程P60を実施することにより、活性化して半導体基板に熱拡散し、極小寸法の拡散抵抗となる。
拡散抵抗を形成するためには、この工程以降は薄膜構造体3a及びサイドウォール5a、5bは不要であるかサイドウォールの材料により除去が可能であれば除去してもかまわない。
【0090】
ところで、このイオン注入工程P50の際、エッチバック工程P30及び露出工程P40にてマスクとして用いた多結晶シリコンよりなる薄膜構造体3aにも半導体基板1の表面と同様に、砒素(As)が注入されることから、この薄膜構造体3aを、所定の抵抗率を有する配線抵抗として用いることもできる。以後は、この薄膜構造体3aを抵抗体として用いる例として説明する。
【0091】
[拡散工程P60の説明:図2、図9]
次に、拡散工程P60を図2及び図9を用いて説明する。この製造工程は、イオン注入工程P50でイオン注入した不純物を半導体基板1に拡散させることで拡散抵抗を形成する工程である。
【0092】
この工程は、半導体基板1に熱処理を施すことで不純物を拡散させる。そのときの加熱温度は1000℃に近い温度である。後に控える配線形成工程P02後に熱処理を実施してしまうと、形成した金属配線にダメージが生じてしまうことから、その前に実施する必要がある。例えば、金属配線にアルミニウムを用いる場合、アルミニウムの融点は660℃である。
また、ここでの説明は、その金属配線形成のための絶縁膜である層間絶縁膜を形成した後に熱処理を実施する例を示すものとする。
【0093】
反応ガスとして、モノシラン(SiH)と酸素(O)とを用いるCVD法により、半導体基板1の上部にシリコン酸化膜よりなる層間絶縁膜10を形成する。
その後、窒素(N)雰囲気中にて、温度900℃にて熱処理であるアニール処理を実
施する。すると、イオン注入層9を構成する不純物が電気的に活性化し、同時に半導体基板1中に拡散していき、拡散抵抗11が形成できる。
【0094】
図9に示すように、距離L1は、薄膜構造体3a同士が対向する距離である。真空紫外光を用いたホトリソ工程のパターン解像限界と一致するかそれに近い距離である。この例では、450nm程度である。距離L2は、サイドウォール5a同士が対向する距離であり、すでに説明した空隙6の幅そのものである。この例では、すでに説明した通り150nm程度である。距離L3は、この拡散工程P60によりイオン注入層9が拡散してできた距離であって、拡散抵抗の配線幅そのものである。
【0095】
図9に示すように、イオン注入層9が半導体基板1の横方向に熱拡散する距離は、そもそもイオン注入された距離L2よりは大きくなり距離L3となるが、その横拡散する距離はわずかであって、距離L1に到達するものではない。もちろん、半導体基板1自体の不純物濃度、イオン注入層9の不純物濃度、熱処理条件などにより、不純物が半導体基板1に拡散する距離を制御することができる。しかし、半導体基板1の横方向に余剰に拡散させると極小の拡散抵抗ではなくなるので、実際の製造においては、実験するなどして適宜拡散条件を決めるとよい。
【0096】
[配線形成工程P02の説明:図2、図10]
次に、配線形成工程P02を図2及び図10を用いて説明する。この製造工程は、拡散抵抗11の所定の領域に金属配線を接続する工程である。
【0097】
まず、既知のホトリソ工程とエッチング工程とを用い、層間絶縁膜10の所定の領域に薄膜構造体3aと拡散抵抗11とが金属配線と接続するためのコンタクトホール12を形成する。その後、コンタクトホール12を介し、薄膜構造体3a及び拡散抵抗11と接続するアルミニウム材料よりなる金属配線13を形成することで半導体装置が完成する。このような金属配線形成工程はすでに知られているものであるから詳細な説明は省略する。
【0098】
なお、図10に示すコンタクトホール12は、薄膜構造体3aとサイドウォール5aとをマスクとして拡散抵抗11表面を露出し、薄膜構造体3aと拡散抵抗11とを、一つのコンタクトホール12内にて一括して金属配線13で接続している。
【0099】
なお、以上説明した第1の実施形態の製造方法では、図7に示す露出工程P40で半導体基板1の表面を露出しているが、素子分離膜2を通過して半導体基板1に不純物が到達できるイオン注入装置やイオン注入条件を用いることにより、半導体基板1にイオン注入層9を形成することができる。つまり、図6に示すように薄膜構造体3aの間隔に半導体基板1が露出せず素子分離膜2が残っている状態であったとしても、その素子分離膜2を通過させて半導体基板1にイオン注入層9を形成できる。要するに、この露出工程P40は、完全に半導体基板1を露出させない場合も含むのである。
【0100】
もちろん、素子分離膜2を通過して半導体基板1に不純物が到達できるイオン注入装置やイオン注入条件によっては、図6に示すように素子分離膜2が若干削れていなくても、その素子分離膜2を通過させて半導体基板1に不純物を導入することもできよう。そのような場合は、露出工程P40を省略することもできる。
【0101】
[第2の実施形態の製造方法の詳細説明:図12]
次に、半導体装置の製造方法の第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態は、一組の薄膜構造体3aを直接半導体基板上に形成する。すでに説明した第1の実施形態では、薄膜構造体3aを素子分離膜2の上部に設けるが、その点が異なる。
つまり、第1の実施形態の製造方法から露出工程P40を除いた製造方法である。このような製造方法とすることで、素子分離膜2で囲まれた素子領域内でも真空紫外光を用いたホトリソ技術のパターン解像限界より小さな寸法の拡散抵抗を形成することができるのである。
【0102】
図12は、第2の実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図であり、イオン注入工程P50について詳細を示している。なお、すでに説明した第1の実施形態の構成と同一の構成には同一の番号を付与している。また、図12において、層間絶縁膜10など、説明に関係の無い部分は図面を見やすくするために省略している。
【0103】
図12に示す第2の実施形態は、すでに説明した第1の実施形態と同様に、素子分離工程P01にて半導体基板1の所定の領域に素子分離膜2を形成する。その後の構造体形成工程P10では、薄膜構造体3aを素子分離膜2の上部ではなく素子領域である半導体基板1の表面上に形成する。
その後、絶縁膜形成工程P20、エッチバック工程P30、拡散工程P60に関する工程の詳細は同一であるが、薄膜構造体3aを設けている場所が素子分離膜2の上部ではないため、露出工程P40は実施しない。
【0104】
もちろん、半導体基板1全面が素子領域とするならば、素子分離膜2は不要であるから、素子分離工程P01そのものも不要である。
【0105】
図12では、半導体基板1上に設ける薄膜構造体3aとエッチバック工程P30にて設けたサイドウォール5a、5bをマスクとして、一組の薄膜構造体3aの対向する間隔の半導体基板1の露出面に、不純物である砒素(As)をイオン注入し、イオン注入層9を形成する。
図12に示す例では、薄膜構造体3a同士が対向する間隔ではない半導体基板1にも不純物注入層9´が形成されてしまうが、もしこの部分に不純物注入層を形成したくなければ、マスクなどで覆えばよい。
【0106】
以後、図示しないが、拡散工程P60と配線形成工程P02とを経て半導体装置が完成する。第2の実施形態では、薄膜構造体3aは、例えば、シリコン窒化膜のような絶縁物質でもよい。
【0107】
以上説明した第2の実施形態の製造方法でも、薄膜構造体3aとサイドウォール5a、5bとは、第1の実施形態の製造方法と同様に、イオン注入層9形成のためのマスクとして使用後、不要であれば既知の方法により除去してもよいし、配線抵抗体として用いてもよい。
【0108】
[第3の実施形態の製造方法の詳細説明:図13]
次に、半導体装置の製造方法の第3の実施形態について説明する。
すでに説明した第1の実施形態及び第2の実施形態では、イオン注入工程P40は、いわゆる垂直打ち込みという技術で不純物のイオン注入を行う例を示した。つまり、半導体基板1に対し垂直に不純物のイオン注入を実施する例であり、薄膜構造体3aの間隔のサイドウォール5a同士が対向する部分の露出した半導体基板1表面全体にイオン注入層9を形成できる。
【0109】
第3の実施形態では、イオン注入工程P40は、いわゆる斜め打ち込みという技術で不純物のイオン注入を行う。つまり、半導体基板1に対して、所定の注入角度を与えた角度注入(斜め方向からのイオン注入)を実施することで、露出する半導体基板1表面の一部にのみイオン注入層を形成するのである。
【0110】
図13に示す例は、第2の実施形態の例と同様に薄膜構造体3aを半導体基板1の上に設け、右方向からの角度注入を実施する例を説明するものである。不純物は、斜め上方からイオン注入されるため、薄膜構造体3a及びサイドウォール5aに遮られ、薄膜構造体3aの間隔のサイドウォール5a同士が対向する部分には、図面左方向に偏って不純物がイオン注入される。サイドウォール5a同士の間隔よりも更に幅の狭い領域のみに導入されるのである。
【0111】
図9や図10を用いて行った第1の実施形態の説明では、イオン注入層9が拡散工程P60を経て拡散抵抗となったときの配線幅の距離L3は、イオン注入されたイオン注入層9の幅(垂直打ち込みであるから距離L2と同じ)より大きくなると説明した。これは、熱処理により不純物が半導体基板の横方向に熱拡散するためである。この第3の実施形態では、上述の通り、サイドウォール5a同士が対向する距離よりも狭くイオン注入層9を形成できるから、拡散工程P60を経て拡散抵抗となったときの配線幅は、サイドウォール5a同士が対向する距離(図9や図10でいう距離L2)と同じかそれ以下にすることができる。つまり、より高い抵抗値を有する拡散抵抗とすることができる。
【0112】
角度注入を実施するときは、半導体基板1に注入される不純物イオンが角度注入をしない場合に比べて少なくなる傾向があるが、その分を考慮に入れてイオン注入量を決めるなどすればよい。
もちろん、その他の条件も重要である。半導体基板1自体の不純物濃度、イオン注入層9の不純物濃度、熱処理条件などにより、不純物が半導体基板1に拡散する距離が変わるから、実際の製造においては、実験するなどして適宜拡散条件を決めるとよい。
【0113】
第3の実施形態は、第2の実施形態で説明した構造を例にして説明したが、もちろん第1の実施形態にも適用できる。すでに説明しているように、第1の実施形態は、素子分離膜2の上部に薄膜構造体3aを設けているから、この素子分離膜2の膜厚分を考慮に入れて、角度注入を実施するときの注入角度を決めればよい。
なお、図13に示す例は、図面右方向からのイオン注入であるが、図面左方向に傾斜させて実施してもよいことは無論である。
【実施例2】
【0114】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最適な形態の半導体装置の構造を説明する。
【0115】
[拡散抵抗と配線抵抗とを並列接続する構造:図10、図14、図15]
図10、図14、図15を用いてすでに説明した第1の実施形態の半導体装置の製造方法により形成した半導体装置を例にしてその構造の詳細を説明する。
その構造は、拡散抵抗11と2つの薄膜構造体3aとの3つの構造体を電気的に接続し、1つの抵抗素子として用いる例である。
【0116】
図14は、すでに説明した製造方法により形成した半導体装置の平面図であり、破断線A−A´に位置する断面図が、第1の実施形態の半導体装置の製造方法にて完成する半導体装置の断面図である図10に相当する。この例は、拡散抵抗11と2つの薄膜構造体3aとを並列接続する例である。図15は、拡散抵抗11と2つの薄膜構造体3aとを直列接続する例である。なお、すでに説明した同一の構成には同一の番号を付与している。
【0117】
図10、図14、図15に示すように、素子分離膜2上に離間して設ける一組の薄膜構造体3aと、薄膜構造体3aの対向する間隔に設ける露光光源として真空紫外光のパターン解像限界より微細な拡散抵抗11とを平行に設ける構造である。特に薄膜構造体3aは
導電型がN型である多結晶シリコンよりなり、導電型がN型の配線抵抗として機能する。
【0118】
図10、図14、図15に示すように、素子分離膜2上に離間して設ける一組の薄膜構造体3aと、薄膜構造体3aの対向する間隔に設ける露光光源として真空紫外光のパターン解像限界より微細な拡散抵抗11とを平行に設ける構造である。
すでに説明した製造方法により、拡散抵抗11は導電型がN型とするために、イオン注入工程P50にて導電型がN型の不純物である砒素(As)を注入されている。このとき薄膜構造体3aにも同様に不純物がイオン注入されるので、この薄膜構造体3aも導電型がN型となり、配線抵抗として機能することができる。
【0119】
図14に示すように、薄膜構造体3aと拡散抵抗11とは、その端部方向で共通のコンタクトホール12a、12bを介して金属配線13a、13bにより並列接続する構造となっている。
つまり、2つの薄膜構造体3aの一方の端部と拡散抵抗11の一方の端部とを、コンタクトホール12aを介して金属配線13aと接続している。そして、2つの薄膜構造体3aの他方の端部と拡散抵抗11の他方の端部とを、コンタクトホール12bを介して金属配線13bと接続している。
【0120】
このような構造により、拡散抵抗11と2つの薄膜構造体3aとを並列接続して1つの抵抗素子として使用することができる。抵抗体を並列接続するために、拡散抵抗11を単独で用いる場合に比べて抵抗値が低下してしまうことがあるが、温度依存性の無い抵抗体を構成することができる。つまり、拡散抵抗11と配線抵抗である薄膜構造体3aとは、抵抗値の温度依存性が互いに異なるためである。
【0121】
すでに説明したように、半導体基板に不純物を拡散した拡散抵抗は、温度の上昇と共に抵抗値が増大する温度特性を示す。一方、多結晶シリコンからなる配線抵抗は、温度の上昇と共に抵抗値が減少する温度特性を示す。
これら2つの温度特性を有する抵抗体を並列接続して用いることで、それぞれの温度依存性が相殺され、温度に対して抵抗値が一定となる、温度特性に優れた抵抗素子を構成することができるのである。
【0122】
もちろん、拡散抵抗11と2つの薄膜構造体3aとの3つの構造体を1つの抵抗素子として用いる場合は、図14に示すような並列接続する場合に限らない。3つの構造体を用いてより高い抵抗値を欲する場合は、それらを直列接続すればよい。その例が図15である。
【0123】
図15にはすでに説明に用いた図面と同様に2つの薄膜構造体3aがあるが、それぞれの薄膜構造体を区別するために、一方の符号をそのまま3aとし、他方を3a´とする。
図15に示すように、薄膜構造体3aの一方の端部にはコンタクトホール12cを介して金属配線13cが接続している。
薄膜構造体3aの他方の端部と拡散抵抗11の一方の端部とには、コンタクトホール12dが設けてあり、金属配線13dにより双方が接続している。
拡散抵抗11の他方の端部と薄膜構造体3a´の一方の端部とには、コンタクトホール12eが設けてあり、金属配線13eにより双方が接続している。
そして、薄膜構造体3a´の他方の端部にはコンタクトホール12fを介して金属配線13fが接続している。
【0124】
このような構造により、金属配線13cと金属配線13fとの間には、薄膜構造体3a、3a´と拡散抵抗11とが直列接続され、図14に示す並列接続の場合に比べ、より高抵抗とすることができる。
【0125】
図14と図15とを用いて説明した例は、欲する抵抗値の大きさに応じてどちらでも用いればよいのだが、図示はしないが、2つの薄膜構造体のうち一方のみを抵抗体として使用するようにしてもかまわない。
【0126】
また、第3の実施形態で説明した手法を用いて、より高い抵抗値で拡散抵抗を形成し、薄膜構造体と直列又は並列に接続してもよいことは無論である。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明は、高抵抗の拡散抵抗を形成することができるため、高抵抗を必要とするアナログ回路、検出回路用の半導体装置に好適である。また、温度依存性の無い抵抗値も構成できることから、その利用範囲は大きい。
【符号の説明】
【0128】
1、101 半導体基板
2、104 素子分離膜
3 多結晶シリコン膜
3a、3a´ 薄膜構造体
4 ホトレジストパターン
5 絶縁膜
5a、5b サイドウォール
6 空隙
7 凹部
8 溝
9 イオン注入層
10 層間絶縁膜
11 拡散抵抗
12、12a、12b、12c、12d、12e、12f コンタクトホール
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f 金属配線
103 耐酸化マスク
105 素子領域
106 不純物拡散層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板に設ける拡散抵抗を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の上部に、所定の間隔にて一組の薄膜構造体を形成する構造体形成工程を有し、
前記一組の薄膜構造体を覆い、前記間隔には空隙を形成するように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を有し、
前記絶縁膜を前記半導体基板方向にエッチング除去して前記空隙を露出させ、前記間隔に面する前記薄膜構造体の縦端面に前記絶縁膜をサイドウォールとして残すエッチバック工程と、
前記薄膜構造体及び前記サイドウォールをマスクとして前記間隔の前記半導体基板に所定の不純物イオンを注入するイオン注入工程と、
前記不純イオンを前記半導体基板に拡散させることで前記拡散抵抗を形成する拡散工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
半導体基板に設ける拡散抵抗を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の表面に素子分離膜を形成する素子分離工程と、
前記素子分離膜の上部に、所定の間隔にて一組の薄膜構造体を形成する構造体形成工程を有し、
前記一組の薄膜構造体を覆い、前記間隔には空隙を形成するように絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程を有し、
前記絶縁膜を前記半導体基板方向にエッチング除去して前記空隙を露出させ、前記間隔に面する前記薄膜構造体の縦端面に前記絶縁膜をサイドウォールとして残すエッチバック工程と、
前記薄膜構造体及び前記サイドウォールをマスクとして前記間隔の前記素子分離膜をエッチング除去して前記半導体基板の表面を露出させる露出工程と、
前記露出工程により露出した前記半導体基板に所定の不純物イオンを注入するイオン注入工程と、
前記不純イオンを前記半導体基板に拡散させることで前記拡散抵抗を形成する拡散工程と、
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記イオン注入工程は、前記半導体基板に対して、所定の注入角度を与えて前記不純物イオンを注入することを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記薄膜構造体と前記拡散抵抗とを電気的に接続する接続工程を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
半導体基板に設ける拡散抵抗を有する半導体装置であって、
前記半導体基板の上部に、その縦端面にサイドウォールを有する薄膜構造体を所定の間隔で一組備え、
前記一組の薄膜構造体の間の前記半導体基板に、前記間隔よりも狭く、前記間隔に面する前記サイドウォール同士が対向する距離と同じかそれよりも広い幅の前記拡散抵抗を有することを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
前記半導体基板の表面に素子分離膜を備え、
前記素子分離膜の上部に前記薄膜構造体を有し、前記素子分離膜の下部に前記拡散抵抗を備えることを特徴とする請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記拡散抵抗と前記薄膜構造体とを並列に接続することを特徴とする請求項5又は6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−45798(P2013−45798A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180553(P2011−180553)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(307023373)シチズン時計株式会社 (227)
【Fターム(参考)】