説明

半導体装置の製造方法

【課題】デュアルゲート構造を有する半導体装置の製造技術において、MISFETのしきい値電圧の上昇を抑制することができる製造技術を提供する。
【解決手段】ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR2を形成する。そして、レジスト膜FR2に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR2をパターニングする。その後、パターニングしたレジスト膜FR2をマスクにしたイオン注入法により、露出しているnチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴン(Ar)を導入する。このアルゴン注入工程により、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1はアモルファス化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造技術に関し、特に、nチャネル型MISFETのゲート電極と、pチャネル型MISFETのゲート電極が繋がっている半導体装置の製造技術に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−214607号公報(特許文献1)には、ゲート電極となるシリコン膜全体にGeイオンを注入してアモルファス化した後、nチャネル型MISFET形成領域のシリコン膜にn型不純物を注入し、pチャネル型MISFET形成領域のシリコン膜にp型不純物を注入する技術が記載されている。
【0003】
特開2001−308325号公報(特許文献2)には、以下に示す技術が記載されている。すなわち、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後、ポリシリコン膜に対してGeイオンあるいはSiイオンを注入することにより、ポリシリコン膜の表面部分にアモルファスシリコン膜を形成する。続いて、アモルファスシリコン膜の表面にレーザを照射することにより、アモルファスシリコン膜の表面を多結晶化する。これにより、ポリシリコン膜/アモルファスシリコン膜/ポリシリコン膜の積層膜を形成する。その後、nチャネル型MISFET形成領域の積層膜にn型不純物を注入し、pチャネル型MISFET形成領域の積層膜にp型不純物を注入するとしている。
【0004】
特開2004−266061号公報(特許文献3)には、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後、シリコン、アルゴン、あるいは、窒素などの不活性イオンをポリシリコン膜に注入することにより、ポリシリコン膜内にアモルファスシリコン膜を形成する技術が記載されている。
【0005】
特開平08−264774号公報(特許文献4)には、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後、このポリシリコン膜に炭素イオンを注入し、その後、ポリシリコン膜にボロンを注入する技術が記載されている。そして、ポリシリコン膜をパターニングしてゲート電極を形成するとしている。
【0006】
特開2000−260728号公報(特許文献5)には、ゲート電極となるポリシリコン膜を形成した後、このポリシリコン膜をパターニングすることによりゲート電極を形成する技術が記載されている。そして、形成したゲート電極にGeイオンを注入するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−214607号公報
【特許文献2】特開2001−308325号公報
【特許文献3】特開2004−266061号公報
【特許文献4】特開平08−264774号公報
【特許文献5】特開2000−260728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体装置は、MISFET(Metal Insulator Semiconductor Field Effect Transistor)などの半導体素子と多層配線を形成した半導体チップと、この半導体チップを覆うように形成されたパッケージから形成されている。半導体チップに形成されているMISFETは、様々な回路を構成するための基本素子である。MISFETは、主に、半導体基板上に形成されたゲート絶縁膜と、ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極と、ゲート電極下の半導体基板内に形成されたチャネル形成領域と、チャネル形成領域を挟むように半導体基板内に形成されたソース領域およびドレイン領域から構成されている。このように構成されているMISFETには、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETがある。nチャネル型MISFETは、ソース領域およびドレイン領域をn型半導体領域から形成し、MISFETのオン時にn型半導体領域のチャネルが形成されることにより、チャネルを介してソース領域とドレイン領域が導通して、ソース領域とドレイン領域との間に電子を主体とする電流が流れるトランジスタである。一方、pチャネル型MISFETは、ソース領域とドレイン領域をp型半導体領域から形成し、MISFETのオン時にp型半導体領域のチャネルが形成されることにより、チャネルを介してソース領域とドレイン領域が導通して、ソース領域とドレイン領域との間に正孔を主体とする電流が流れるトランジスタである。
【0009】
近年、半導体装置の高集積化を実現するために、基本素子であるMISFETの微細化が進んでいる。MISFETの微細化に伴うスケーリング則により、MISFETの動作電圧も低くなってきている。したがって、低い動作電圧でも動作できるようにMISFETのしきい値電圧を低下することが望まれている。このしきい値電圧とは、MISFETをオフ状態からオン状態にするためにゲート電極に印加する電圧である。言い換えれば、しきい値電圧とは、半導体基板内に反転層であるチャネルを形成できる電圧ということができる。半導体装置には、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETが存在することから、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を下げることが望まれている。このため、nチャネル型MISFETのゲート電極にリンなどのn型不純物を導入し、かつ、pチャネル型MISFETのゲート電極にボロンなどのp型不純物を導入することが行なわれている。このようにnチャネル型MISFETのゲート電極にn型不純物を導入し、pチャネル型MISFETのゲート電極にp型不純物を導入する構造は、デュアルゲート構造と呼ばれており、このデュアルゲート構造によれば、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を下げることができる。
【0010】
具体的に、nチャネル型MISFET形成領域のゲート電極には、ポリシリコン膜中にn型不純物が導入されている。このため、ゲート電極の仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、nチャネル型MISFETのしきい値電圧を低減することができる。一方、pチャネル型MISFET形成領域のゲート電極には、ポリシリコン膜中にp型不純物が導入されている。このため、ゲート電極の仕事関数値をシリコンの価電子帯近傍(5.15eV)の値にすることができるので、pチャネル型MISFETのしきい値電圧を低減することができる。
【0011】
このようにnチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を下げるために、デュアルゲート構造が採用されているが、このデュアルゲート構造を採用すると、以下に示す問題点が発生することを本発明者は見出した。
【0012】
デュアルゲート構造を形成するには、例えば、半導体基板上にポリシリコン膜を形成した後、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜にリンなどのn型不純物を導入する。一方、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜にボロンなどのp型不純物を導入する。その後、ポリシリコン膜に導入したn型不純物やp型不純物を活性化させるために、半導体基板に対して熱処理を実施する。このときの熱処理によって、n型不純物やp型不純物は拡散する。具体的には、nチャネル型MISFET形成領域に導入したn型不純物がpチャネル型MISFET形成領域まで拡散したり、pチャネル型MISFET形成領域に導入したp型不純物がnチャネル型MISFET形成領域まで拡散する。この場合、例えば、nチャネル型MISFET形成領域に導入されたn型不純物の実質的な濃度が、pチャネル型MISFET形成領域から拡散してきたp型不純物の影響により低下する。同様に、pチャネル型MISFET形成領域に導入されたp型不純物の実質的な濃度が、nチャネル型MISFET形成領域から拡散してきたn型不純物の影響により低下する。つまり、デュアルゲート構造では、ポリシリコン膜に導入したn型不純物やp型不純物を活性化させるための熱処理によって、nチャネル型MISFET形成領域に導入されているn型不純物の実質的な濃度や、pチャネル型MISFET形成領域に導入されているp型不純物の実質的な濃度が設計値よりも低下する。
【0013】
この状態で、ポリシリコン膜をパターニングすることにより、nチャネル型MISFET形成領域にnチャネル型MISFETのゲート電極を形成し、pチャネル型MISFET形成領域にpチャネル型MISFETのゲート電極を形成することになる。このため、nチャネル型MISFETのゲート電極に導入されているn型不純物の実質的な濃度や、pチャネル型MISFETのゲート電極に導入されているp型不純物の実質的な濃度が設計値よりも低くなる。この結果、ゲート電極の空乏化が起こりやすくなり、これによって、しきい値電圧が上昇する問題点が生じる。
【0014】
本発明の目的は、デュアルゲート構造を有する半導体装置の製造技術において、MISFETのしきい値電圧の上昇を抑制することができる製造技術を提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0017】
代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板のnチャネル型MISFET形成領域に形成されたnチャネル型MISFETと前記半導体基板のpチャネル型MISFET形成領域に形成されたpチャネル型MISFETとを有し、前記nチャネル型MISFETの第1ゲート電極と、前記pチャネル型MISFETの第2ゲート電極が繋がっている半導体装置の製造方法に関するものである。この半導体装置の製造方法は、(a)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、(b)前記ゲート絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、(c)前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にp型不純物を導入する工程とを備える。そして、(d)前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に元素を導入することにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜をアモルファス化する工程と、(e)前記(d)工程後、前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にn型不純物を導入する工程とを備える。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1導体膜に導入した前記p型不純物および前記n型不純物を活性化する熱処理を実施する工程と、(g)前記(f)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に前記第1ゲート電極を形成し、前記pチャネル型MISFET形成領域に前記第2ゲート電極を形成する工程とを備える。続いて、(h)前記(g)工程後、前記半導体基板の前記nチャネル型MISFET形成領域に前記nチャネル型MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記半導体基板の前記pチャネル型MISFET形成領域に前記pチャネル型MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備えるものである。
【0018】
また、代表的な実施の形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板のnチャネル型MISFET形成領域に形成されたnチャネル型MISFETと前記半導体基板のpチャネル型MISFET形成領域に形成されたpチャネル型MISFETとを有し、前記nチャネル型MISFETの第1ゲート電極と、前記pチャネル型MISFETの第2ゲート電極が繋がっている半導体装置の製造方法に関するものである。この半導体装置の製造方法は、(a)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、(b)前記ゲート絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、(c)前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にn型不純物を導入する工程とを備える。そして、(d)前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に元素を導入することにより、前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜をアモルファス化する工程と、(e)前記(d)工程後、前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にp型不純物を導入する工程とを備える。さらに、(f)前記(e)工程後、前記第1導体膜に導入した前記p型不純物および前記n型不純物を活性化する熱処理を実施する工程と、(g)前記(f)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に前記第1ゲート電極を形成し、前記pチャネル型MISFET形成領域に前記第2ゲート電極を形成する工程とを備える。続いて、(h)前記(g)工程後、前記半導体基板の前記nチャネル型MISFET形成領域に前記nチャネル型MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記半導体基板の前記pチャネル型MISFET形成領域に前記pチャネル型MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備えるものである。
【発明の効果】
【0019】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0020】
デュアルゲート構造を有する半導体装置の製造技術において、MISFETのしきい値電圧の上昇を抑制することができる製造技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における半導体チップのレイアウト構成を示す図である。
【図2】実施の形態1におけるSRAMのメモリセルを示す等価回路図である。
【図3】SRAMのレイアウト構成を示す模式的な平面図である。
【図4】図3のA−A線で切断した断面図である。
【図5】実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図6】図5に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図7】図6に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図8】図7に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図9】図8に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図10】図9に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図11】図10に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図12】図11に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】図12に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】図13に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】図14に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図16】図15に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図17】図16に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図18】ポリシリコン膜をアモルファス化している領域が異なる構成を比較して示す模式図である。
【図19】実施の形態1の変形例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図20】実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図21】図20に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図22】図21に続く半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図23】実施の形態2の変形例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。
【図24】インバータ回路を示す回路図である。
【図25】インバータ回路のレイアウト構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明等の関係にある。
【0023】
また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0024】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0025】
同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0026】
また、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
【0027】
(実施の形態1)
本実施の形態1における半導体装置について図面を参照しながら説明する。まず、マイクロコンピュータを含むシステムが形成された半導体チップのレイアウト構成について説明する。図1は、本実施の形態1における半導体チップCHPのレイアウト構成を示す図である。図1において、半導体チップCHPは、CPU(Central Processing Unit)1、RAM(Random Access Memory)2、アナログ回路3、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)4、フラッシュメモリ5およびI/O(Input/Output)回路6を有している。
【0028】
CPU(回路)1は、中央演算処理装置とも呼ばれ、コンピュータなどの心臓部にあたる。このCPU1は、記憶装置から命令を読み出して解読し、それに基づいて多種多様な演算や制御を行なうものである。
【0029】
RAM(回路)2は、記憶情報をランダムに、すなわち随時記憶されている記憶情報を読み出したり、記憶情報を新たに書き込んだりすることができるメモリであり、随時書き込み読み出しができるメモリとも呼ばれる。ICメモリとしてのRAMには、ダイナミック回路を用いたDRAM(Dynamic RAM)とスタティック回路を用いたSRAM(Static RAM)の2種類がある。DRAMは、記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリであり、SRAMは、記憶保持動作が不要な随時書き込み読み出しメモリである。本実施の形態1では、RAM2をSRAMから構成することとする。
【0030】
アナログ回路3は、時間的に連続して変化する電圧や電流の信号、すなわちアナログ信号を扱う回路であり、例えば増幅回路、変換回路、変調回路、発振回路、電源回路などから構成されている。
【0031】
EEPROM4およびフラッシュメモリ5は、書き込み動作および消去動作とも電気的に書き換え可能な不揮発性メモリの一種であり、電気的消去可能なプログラマブル読み出し専用メモリとも呼ばれる。このEEPROM4およびフラッシュメモリ5のメモリセルは、記憶(メモリ)用の例えばMONOS(Metal Oxide Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタやMNOS(Metal Nitride Oxide Semiconductor)型トランジスタから構成される。EEPROM4およびフラッシュメモリ5の書き込み動作および消去動作には、例えばファウラーノルドハイム型トンネル現象を利用する。なお、ホットエレクトロンやホットホールを用いて書き込み動作や消去動作させることも可能である。EEPROM4とフラッシュメモリ5の相違点は、EEPROM4が、例えば、バイト単位で消去のできる不揮発性メモリであるのに対し、フラッシュメモリ5が、例えば、ワード線単位で消去できる不揮発性メモリである点である。一般に、フラッシュメモリ5には、CPU1で種々の処理を実行するためのプログラムなどが記憶されている。これに対し、EEPROM4には、書き換え頻度の高い各種データが記憶されている。
【0032】
I/O回路6は、入出力回路であり、半導体チップCHP内から半導体チップCHPの外部に接続された機器へのデータの出力や、半導体チップCHPの外部に接続された機器から半導体チップCHP内へのデータの入力を行なうための回路である。
【0033】
本実施の形態1における半導体チップCHPのレイアウトは上記のように構成されており、以下に、RAM2を構成するSRAMについて説明する。まず、SRAMを構成するメモリセルMCの等価回路について説明する。図2は、本実施の形態1におけるSRAMのメモリセルMCを示す等価回路図である。図2に示すように、このメモリセルMCは、一対の相補性データ線(データ線DL、データ線/(バー)DL)とワード線WLとの交差部に配置され、一対の駆動用MISFETQd1、Qd2、一対の負荷用MISFETQp1、Qp2および一対の転送用MISFETQt1、Qt2により構成されている。駆動用MISFETQd1、Qd2および転送用MISFETQt1、Qt2はnチャネル型MISFETで構成され、負荷用MISFETQp1、Qp2はpチャネル型MISFETで構成されている。
【0034】
メモリセルMCを構成する上記6個のMISFETのうち、駆動用MISFETQd1および負荷用MISFETQp1は、CMOSインバータINV1を構成し、駆動用MISFETQd2および負荷用MISFETQp2は、CMOSインバータINV2を構成している。これら一対のCMOSインバータINV1、INV2の相互の入出力端子(蓄積ノードA、B)は、交差結合され、1ビットの情報を記憶する情報蓄積部としてのフリップフロップ回路を構成している。また、このフリップフロップ回路の一方の入出力端子(蓄積ノードA)は、転送用MISFETQt1のソース領域、ドレイン領域の一方に接続され、他方の入出力端子(蓄積ノードB)は、転送用MISFETQt2のソース領域、ドレイン領域の一方に接続されている。
【0035】
さらに、転送用MISFETQt1のソース領域、ドレイン領域の他方はデータ線DLに接続され、転送用MISFETQt2のソース領域、ドレイン領域の他方はデータ線/DLに接続されている。また、フリップフロップ回路の一端(負荷用MISFETQp1、Qp2の各ソース領域)は電源電圧(Vcc)に接続され、他端(駆動用MISFETQd1、Qd2の各ソース領域)は基準電圧(Vss)に接続されている。
【0036】
上記回路の動作を説明すると、一方のCMOSインバータINV1の蓄積ノードAが高電位(“H”)であるときには、駆動用MISFETQd2がONになるので、他方のCMOSインバータINV2の蓄積ノードBが低電位(“L”)になる。したがって、駆動用MISFETQd1がOFFになり、蓄積ノードAの高電位(“H”)が保持される。すなわち、一対のCMOSインバータINV1、INV2を交差結合させたラッチ回路によって相互の蓄積ノードA、Bの状態が保持され、電源電圧が印加されている間、情報が保存される。
【0037】
転送用MISFETQt1、Qt2のそれぞれのゲート電極にはワード線WLが接続され、このワード線WLによって転送用MISFETQt1、Qt2の導通、非導通が制御される。すなわち、ワード線WLが高電位(“H”)であるときには、転送用MISFETQt1、Qt2がONになり、ラッチ回路と相補性データ線(データ線DL、/DL)とが電気的に接続されるので、蓄積ノードA、Bの電位状態(“H”または“L”)がデータ線DL、/DLに現れ、メモリセルMCの情報として読み出される。
【0038】
メモリセルMCに情報を書き込むには、ワード線WLを“H”電位レベル、転送用MISFETQt1、Qt2をON状態にしてデータ線DL、/DLの情報を蓄積ノードA、Bに伝達する。以上のようにして、SRAMを動作させることができる。
【0039】
次に、上述したSRAMのレイアウト構成の一例について図3を参照しながら説明する。図3は、SRAMのレイアウト構成を示す模式的な平面図である。SRAMのメモリセルMCは、例えば、図3に示すように、半導体基板に形成された一対の駆動用MISFETQd1、Qd2、一対の負荷用MISFETQp1、Qp2および一対の転送用MISFETQt1、Qt2の6つの電界効果トランジスタから構成されている。このとき、一対の駆動用MISFETQd1、Qd2および一対の転送用MISFETQt1、Qt2は、nチャネル型MISFETから構成され、一対の負荷用MISFETQp1、Qp2はpチャネル型MISFETから構成されている。
【0040】
図3に示すように、半導体基板には素子分離領域STIが形成されており、この素子分離領域STIでアクティブ領域An1、Ap1、Ap2、An2が区画されている。具体的に、素子分離領域STIで区画されたアクティブ領域An1は、Y方向に延在するように形成されており、このアクティブ領域An1の隣りに素子分離領域STIを介してアクティブ領域Ap1がY方向に延在するように形成されている。そして、アクティブ領域Ap1の隣りに素子分離領域STIを介してアクティブ領域Ap2がY方向に延在するように形成されている。さらに、アクティブ領域Ap2の隣りに素子分離領域STIを介してアクティブ領域An2がY方向に延在するように形成されている。このように、SRAMにおいては、図3に示すように、アクティブ領域An1、Ap1、Ap2、An2が素子分離領域STIを介してX方向に並んで形成されており、それぞれのアクティブ領域An1、Ap1、Ap2、An2はY方向に延在するように形成されている。
【0041】
アクティブ領域An1、An2は、半導体基板内にリンや砒素などのn型不純物が導入された半導体領域であり、アクティブ領域Ap1、Ap2は、半導体基板内にボロンなどのp型不純物が導入された半導体領域となっている。
【0042】
まず、アクティブ領域An1に着目すると、Y方向に延在するアクティブ領域An1と立体交差するようにゲート電極G1とゲート電極G2が形成されている。つまり、ゲート電極G1とゲート電極G2は、互いに並行し、かつ、X方向に延在するように配置されている。このとき、ゲート電極G1と、ゲート電極G1の両側に形成されたアクティブ領域An1によって、転送用MISFETQt1が形成されている。この転送用MISFETQt1においては、ゲート電極G1の両側に形成されているアクティブ領域An1がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域An1にプラグPLG1とプラグPLG2が接続されている。一方、転送用MISFETQt1のゲート電極G1は、アクティブ領域An1上から素子分離領域STI上にまで延在しており、素子分離領域STI上において、ゲート電極G1にはゲートプラグGPLG1が電気的に接続されている。なお、ゲート電極G1と並行するように、メモリセルMCと隣接するメモリセルに含まれるゲート電極G3が配置されている。このゲート電極G3もアクティブ領域An1上から素子分離領域STI上に延在するように形成されており、素子分離領域STI上でゲート電極G3は、ゲートプラグGPLG2と電気的に接続されている。
【0043】
さらに、メモリセルMC内のアクティブ領域An1に着目すると、ゲート電極G2と、ゲート電極G2の両側に形成されたアクティブ領域An1によって、駆動用MISFETQd1が形成されている。この駆動用MISFETQd1においては、ゲート電極G2の両側に形成されているアクティブ領域An1がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域An1にプラグPLG2とプラグPLG3が接続されている。このようにアクティブ領域An1には、転送用MISFETQt1と駆動用MISFETQd1が形成されており、プラグPLG2で接続されているアクティブ領域An1を転送用MISFETQt1と駆動用MISFETQd1で共用している。
【0044】
続いて、アクティブ領域Ap1に着目すると、Y方向に延在するアクティブ領域Ap1と立体交差するようにゲート電極G2が形成されている。つまり、アクティブ領域An1上に配置されているゲート電極G2は、さらに、X方向に延在して、アクティブ領域Ap1上にまで形成されている。ゲート電極G2と、ゲート電極G2の両側に形成されたアクティブ領域Ap1によって、負荷用MISFETQp1が形成されている。したがって、ゲート電極G2は、アクティブ領域An1との関係で駆動用MISFETQd1のゲート電極として機能するとともに、アクティブ領域Ap1との関係で負荷用MISFETQp1のゲート電極として機能することがわかる。
【0045】
負荷用MISFETQp1においては、ゲート電極G2の両側に形成されているアクティブ領域Ap1がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域Ap1にシェアードプラグSPLG1とプラグPLG4が接続されている。シェアードプラグSPLG1とは、アクティブ領域Ap1とゲート電極G4との両方に接続するプラグである。すなわち、メモリセルMC内においては、アクティブ領域Ap1の上端部に近接する位置にゲート電極G4の端部が配置されており、この近接するゲート電極G4とアクティブ領域Ap1の両方に接続するようにシェアードプラグSPLG1が形成されているのである。なお、ゲート電極G2と並行するように、メモリセルMCと隣接するメモリセルに含まれるゲート電極G5が配置されている。
【0046】
次に、アクティブ領域Ap2に着目すると、Y方向に延在するアクティブ領域Ap2と立体交差するようにゲート電極G4が形成されている。このゲート電極G4は、アクティブ領域Ap1の上端部と近接するように配置されているとともに、X方向に延在して、アクティブ領域Ap2と立体交差するように形成されている。このゲート電極G4と、ゲート電極G4の両側に形成されたアクティブ領域Ap2によって、負荷用MISFETQp2が形成されている。
【0047】
負荷用MISFETQp2においては、ゲート電極G4を挟む両側に形成されているアクティブ領域Ap2がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域Ap2にシェアードプラグやプラグが接続されている。このシェアードプラグとは、アクティブ領域Ap2とゲート電極G2との両方に接続するプラグである。すなわち、メモリセルMC内においては、アクティブ領域Ap2の下端部に近接する位置にゲート電極G2の端部が配置されており、この近接するゲート電極G2とアクティブ領域Ap2の両方に接続するようにシェアードプラグが形成されているのである。
【0048】
さらに、アクティブ領域An2に着目すると、Y方向に延在するアクティブ領域An2と立体交差するように、ゲート電極G4とゲート電極G6が形成されている。つまり、ゲート電極G4とゲート電極G6は、互いに並行し、かつ、X方向に延在するように配置されている。このとき、ゲート電極G4と、ゲート電極G4を挟む両側に形成されたアクティブ領域An2によって、駆動用MISFETQd2が形成されている。この駆動用MISFETQd2においては、ゲート電極G4の両側に形成されているアクティブ領域An2がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域An2にプラグが接続されている。このとき、ゲート電極G4は、一端部がアクティブ領域Ap1の上端部と近接する位置に配置されながら、X方向に延在し、アクティブ領域Ap2とアクティブ領域An2の両方と立体交差するように延在している。したがって、ゲート電極G4は、一端部において、アクティブ領域Ap1とシェアードプラグSPLG1で電気的に接続されている。そして、ゲート電極G4は、アクティブ領域Ap2との関係で負荷用MISFETQp2のゲート電極として機能するとともに、アクティブ領域An2との関係で駆動用MISFETQd2のゲート電極として機能していることがわかる。
【0049】
一方、ゲート電極G6と、ゲート電極G6を挟む両側に形成されたアクティブ領域An2によって、転送用MISFETQt2が形成されている。この転送用MISFETQt2においては、ゲート電極G6の両側に形成されているアクティブ領域An2がソース領域とドレイン領域となり、ソース領域あるいはドレイン領域となるアクティブ領域An2にプラグが接続されている。また、転送用MISFETQt2のゲート電極G6は、アクティブ領域An2上から素子分離領域STI上にまで延在しており、素子分離領域STI上において、ゲート電極G6にはゲートプラグが電気的に接続されている。
【0050】
このようにアクティブ領域An2には、転送用MISFETQt2と駆動用MISFETQd2が形成されており、アクティブ領域An2のうちゲート電極G4とゲート電極G6で挟まれる領域を転送用MISFETQt2と駆動用MISFETQd2で共用している。
【0051】
以上のようにして、SRAMのレイアウトが構成されている。次に、SRAMのメモリセルを構成するMISFETの断面構造について説明する。本実施の形態1では、SRAMのメモリセルを構成するMISFETのうち、nチャネル型MISFETからなる駆動用MISFETQd1とpチャネル型MISFETからなる負荷用MISFETQp1を例に挙げて説明する。この構造を説明するため、本実施の形態1では、図3のA−A線による断面図を使用することにする。
【0052】
図4は、図3のA−A線で切断した断面図である。まず、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているnチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1の構成について説明する。半導体基板1Sにはp型ウェルPWLが形成されている。このp型ウェルPWLは、ボロンなどのp型不純物を導入した半導体領域となっており、このp型ウェルPWL上に、駆動用MISFETQd1が形成されている。具体的に、p型ウェルPWL上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極G2が形成されている。
【0053】
ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されているが、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。例えば、ゲート絶縁膜GOXは、酸化ハフニウムに酸化ランタンを導入したハフニウム系絶縁膜から構成してもよい。ゲート電極G2は、ゲート絶縁膜GOX上に直接接触するように形成されたポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成されている。本実施の形態1では、ポリシリコン膜PF1の表面に、ゲート電極G2の低抵抗化を図るため、シリサイド膜CSを形成している。このシリサイド膜CSは、例えば、ニッケルプラチナシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、コバルトシリサイド膜、あるいは、プラチナシリサイド膜などから形成することができる。
【0054】
続いて、ゲート電極G2の両側の側壁には、例えば、サイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。ただし、サイドウォールSWの構成は、これに限らず、酸化シリコン膜の単層膜や窒化シリコン膜の単層膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成してもよい。
【0055】
サイドウォールSW下の半導体基板1S内には、半導体領域として、浅いn型不純物拡散領域EX1が形成されている。そして、浅いn型不純物拡散領域EX1の外側に深いn型不純物拡散領域NR1が形成され、この深いn型不純物拡散領域NR1の表面にシリサイド膜CSが形成されている。
【0056】
サイドウォールSWは、駆動用MISFETQd1の半導体領域であるソース領域およびドレイン領域をLDD構造とするために形成されたものである。すなわち、駆動用MISFETQd1のソース領域およびドレイン領域は、浅いn型不純物拡散領域EX1と深いn型不純物拡散領域NR1とシリサイド膜CSより形成されている。このとき、浅いn型不純物拡散領域EX1の不純物濃度は、深いn型不純物拡散領域NR1の不純物濃度よりも低くなっている。したがって、サイドウォールSW下のソース領域およびドレイン領域を低濃度の浅いn型不純物拡散領域EX1とすることにより、ゲート電極G2の端部下における電界集中を抑制できる。以上のようにして、半導体基板1S上にnチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1が形成されている。なお、SRAMのメモリセルを構成するその他のnチャネル型MISFET(転送用MISFETQt1、転送用MISFETQt2、駆動用MISFETQd2)も上述した駆動用MISFETQd1と同様の構成をしている。
【0057】
続いて、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているpチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1の構成について説明する。半導体基板1Sにはn型ウェルNWLが形成されている。このn型ウェルNWLは、リン(P)や砒素(As)などのn型不純物を導入した半導体領域となっており、このn型ウェルNWL上に、負荷用MISFETQp1が形成されている。具体的に、n型ウェルNWL上にゲート絶縁膜GOXが形成されており、このゲート絶縁膜GOX上にゲート電極G2が形成されている。
【0058】
ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成されているが、酸化シリコン膜よりも誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。例えば、ゲート絶縁膜GOXは、酸化ハフニウムに酸化ランタンを導入したハフニウム系絶縁膜から構成してもよい。ゲート電極G2は、ゲート絶縁膜GOX上に直接接触するように形成されたポリシリコン膜PF1と、このポリシリコン膜PF1の表面に形成されたシリサイド膜CSから形成されている。本実施の形態1では、ポリシリコン膜PF1の表面に、ゲート電極G2の低抵抗化を図るため、シリサイド膜CSを形成している。このシリサイド膜CSは、例えば、ニッケルプラチナシリサイド膜、ニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、コバルトシリサイド膜、あるいは、プラチナシリサイド膜などから形成することができる。
【0059】
続いて、ゲート電極G2の両側の側壁には、例えば、サイドウォールSWが形成されており、このサイドウォールSWは、例えば、酸化シリコン膜から形成されている。ただし、サイドウォールSWの構成は、これに限らず、酸化シリコン膜の単層膜や窒化シリコン膜の単層膜、あるいは、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜の積層膜から形成してもよい。
【0060】
サイドウォールSW下の半導体基板1S内には、半導体領域として、浅いp型不純物拡散領域EX2が形成されている。そして、浅いp型不純物拡散領域EX2の外側に深いp型不純物拡散領域PR1が形成され、この深いp型不純物拡散領域PR1の表面にシリサイド膜CSが形成されている。
【0061】
サイドウォールSWは、負荷用MISFETQp1の半導体領域であるソース領域およびドレイン領域をLDD構造とするために形成されたものである。すなわち、負荷用MISFETQp1のソース領域およびドレイン領域は、浅いp型不純物拡散領域EX2と深いp型不純物拡散領域PR1とシリサイド膜CSより形成されている。このとき、浅いp型不純物拡散領域EX2の不純物濃度は、深いp型不純物拡散領域PR1の不純物濃度よりも低くなっている。したがって、サイドウォールSW下のソース領域およびドレイン領域を低濃度の浅いp型不純物拡散領域EX2とすることにより、ゲート電極G2の端部下における電界集中を抑制できる。以上のようにして、半導体基板1S上にpチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1が形成されている。なお、SRAMのメモリセルを構成するその他のpチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp2)も上述した負荷用MISFETQp1と同様の構成をしている。
【0062】
次に、駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1を形成した半導体基板1Sの上方には多層配線が形成されている。以下に、多層配線の構成について説明する。図4に示すように、駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1を形成した半導体基板1S上には、駆動用MISFETQd1および負荷用MISFETQp1を覆うように窒化シリコン膜SN1が形成されており、この窒化シリコン膜SN1上にコンタクト層間絶縁膜CILが形成されている。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、オゾンとTEOS(tetra ethyl ortho silicate)とを原料に使用した熱CVD法により形成されるオゾンTEOS膜と、このオゾンTEOS膜上に設けられたTEOSを原料に使用したプラズマCVD法により形成されるプラズマTEOS膜との積層膜から形成されている。そして、このコンタクト層間絶縁膜CILおよび窒化シリコン膜SN1を貫通して、駆動用MISFETQd1および負荷用MISFETQp1のソース領域やドレイン領域に達するプラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4が形成されている。このプラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4は、例えば、チタン膜と、チタン膜上に形成された窒化チタン膜と、窒化チタン膜上に形成されたタングステン膜とをコンタクトホールCNTに埋め込むことにより形成されている。チタン膜および窒化チタン膜は、タングステン膜を構成するタングステンがシリコン中へ拡散することを防止するために設けられている膜である。なお、コンタクト層間絶縁膜CILは、酸化シリコン膜(SiO膜)、SiOF膜のいずれかの膜から形成されていてもよい。
【0063】
続いて、コンタクト層間絶縁膜CIL上に第1配線層として配線L1が形成されている。具体的に、配線L1は、プラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に形成されたバリア絶縁膜(図示せず)と層間絶縁膜IL1に埋め込まれるように形成されている。つまり、バリア絶縁膜(図示せず)と層間絶縁膜IL1を貫通して底部でプラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4が露出する配線溝に、バリア導体膜と、銅を主体とする膜(以下、銅膜と記載する)を埋め込むことにより、配線L1が形成されている。つまり、配線L1は、配線溝の側面と底面を覆うように形成されたバリア導体膜と、バリア導体膜上で配線溝を埋め込むように形成された銅膜から形成されている。さらに、配線L1上に多層配線が形成されるが、本実施の形態1では、その説明を省略する。以上のようにして、半導体基板1S上に駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1が形成され、この駆動用MISFETQd1および負荷用MISFETQp1上に配線L1が形成されている。
【0064】
次に、図4に示す駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1のさらなる詳細な構成について説明する。駆動用MISFETQd1はnチャネル型MISFETであり、負荷用MISFETQp1はpチャネル型MISFETである。このとき、本実施の形態1では、nチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1のゲート電極G2にリンなどのn型不純物を導入し、かつ、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1のゲート電極G2にボロンなどのp型不純物を導入している。このようにnチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1のゲート電極G2にn型不純物を導入し、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1のゲート電極G2にp型不純物を導入する構造は、デュアルゲート構造と呼ばれており、このデュアルゲート構造によれば、nチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1とpチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1の両方でしきい値電圧を下げることができる利点がある。
【0065】
具体的に、nチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1のゲート電極G2には、ポリシリコン膜PF1中にn型不純物が導入されている。このため、ゲート電極G2の仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、nチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1のしきい値電圧を低減することができる。一方、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1のゲート電極G2には、ポリシリコン膜PF1中にp型不純物が導入されている。このため、ゲート電極G2の仕事関数値をシリコンの価電子帯近傍(5.15eV)の値にすることができるので、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1のしきい値電圧を低減することができる。
【0066】
このようにnチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を下げるために、デュアルゲート構造が採用されているが、デュアルゲート構造によれば、しきい値電圧を下げることができる理由について説明する。
【0067】
まず、nチャネル型MISFETについて説明する。例えば、nチャネル型MISFETでは、ゲート電極G2の直下の半導体基板1S内にチャネル形成領域が存在する。このチャネル形成領域は、p型ウェルPWLの一部として形成されているため、p型半導体領域である。一方、nチャネル型MISFETのゲート電極G2では、ポリシリコン膜PF1にn型不純物が導入されている。したがって、nチャネル型MISFETのゲート電極G2は、n型半導体領域から形成されていることになる。ここで、ゲート絶縁膜GOXを挟んだゲート電極G2とチャネル形成領域とのバンド構造を考える。ゲート電極G2は、n型半導体領域から形成されているので、ゲート電極G2(n型半導体領域)のフェルミ準位はシリコンの伝導帯近傍に存在する。一方、チャネル形成領域は、p型半導体領域から形成されているので、チャネル形成領域(p型半導体領域)のフェルミ準位はシリコンの価電子帯近傍に存在する。したがって、バンドに曲がりが生じずに平坦な状態を維持するフラットバンド電圧では、ゲート電極G2のフェルミ準位とチャネル形成領域のフェルミ準位とは、概ねシリコンのバンドギャップに相当する差だけ離れていることになる。この状態で、ゲート電極G2の0Vを印加すると、ゲート電極G2のフェルミ準位と、チャネル形成領域のフェルミ準位が一致するように、チャネル形成領域のバンドが曲がる。このとき、チャネル形成領域のバンドは、ゲート電極G2に正電圧を印加したときに曲がる方向に曲がる。したがって、ゲート電極G2に正電圧を印加する場合、既にゲート電極G2に0Vが印加されている状態で、チャネル形成領域のバンドは、正電圧を印加する方向に曲がっているので、ゲート電極G2に印加する正電圧が小さくても、チャネル形成領域のバンドがさらに曲がり、チャネル形成領域の表面が擬似的にn型半導体領域と同等のバンド構造(フェルミ準位が伝導帯近傍に存在する)となる。すなわち、nチャネル型MISFETでは、ゲート電極G2にn型不純物を導入することにより、ゲート電極G2に0Vが印加されている状態であっても、チャネル形成領域のバンドを正電圧が印加される場合に曲がる方向へ曲がるようにすることができるのである。この結果、ゲート電極G2に印加する正電圧が小さくても、チャネル形成領域に反転層を形成することができるのである。言い換えれば、ゲート電極G2にn型不純物を導入していない場合には、チャネル形成領域のバンドを平坦な状態から曲げる必要があるため、チャネル形成領域に反転層ができる程度にまでバンドを曲げるためにゲート電極G2に印加するゲート電圧は大きくなる。これに対し、ゲート電極G2にn型不純物を導入している場合は、ゲート電圧を印加していない状態(0V)でもチャネル形成領域のバンドを曲げることができるので、チャネル形成領域に反転層ができるまでバンドを曲げるために印加するゲート電圧を低くすることができるのである。このことは、nチャネル型MISFETのゲート電極G2にn型不純物を導入することにより、nチャネル型MISFETのしきい値電圧を下げることができることを意味している。
【0068】
同様に、pチャネル型MISFETでは、ゲート電極G2の直下の半導体基板1S内にチャネル形成領域が存在する。このチャネル形成領域は、n型ウェルNWLの一部として形成されているため、n型半導体領域である。一方、pチャネル型MISFETのゲート電極G2では、ポリシリコン膜PF1にp型不純物が導入されている。したがって、pチャネル型MISFETのゲート電極G2は、p型半導体領域から形成されていることになる。ここで、ゲート絶縁膜GOXを挟んだゲート電極G2とチャネル形成領域とのバンド構造を考える。ゲート電極G2は、p型半導体領域から形成されているので、ゲート電極G2(p型半導体領域)のフェルミ準位はシリコンの価電子帯近傍に存在する。一方、チャネル形成領域は、n型半導体領域から形成されているので、チャネル形成領域(n型半導体領域)のフェルミ準位はシリコンの伝導帯近傍に存在する。したがって、バンドに曲がりが生じずに平坦な状態を維持するフラットバンド電圧では、ゲート電極G2のフェルミ準位とチャネル形成領域のフェルミ準位とは、シリコンのバンドギャップに相当する差(約1V)離れていることになる。この状態で、ゲート電極G2の0Vを印加すると、ゲート電極G2のフェルミ準位と、チャネル形成領域のフェルミ準位が一致するように、チャネル形成領域のバンドが曲がる。このとき、チャネル形成領域のバンドは、ゲート電極G2に負電圧を印加したときに曲がる方向に曲がる。したがって、ゲート電極G2に負電圧を印加する場合、既にゲート電極G2に0Vが印加されている状態で、チャネル形成領域のバンドは、負電圧を印加する方向に曲がっているので、ゲート電極G2に印加する負電圧が小さくても、チャネル形成領域のバンドがさらに曲がり、チャネル形成領域の表面が擬似的にp型半導体領域と同等のバンド構造(フェルミ準位が価電子近傍に存在する)となる。このようにゲート電極G2にp型不純物を導入している場合は、ゲート電圧を印加していない状態(0V)でもチャネル形成領域のバンドを曲げることができるので、チャネル形成領域に反転層ができるまでバンドを曲げるために印加するゲート電圧を低くすることができるのである。このことは、pチャネル型MISFETのゲート電極G2にp型不純物を導入することにより、pチャネル型MISFETのしきい値電圧を下げることができることを意味している。
【0069】
以上のような理由により、nチャネル型MISFETのゲート電極G2にn型不純物を導入し、pチャネル型MISFETのゲート電極G2にp型不純物を導入するデュアルゲート構造にすれば、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を下げることができることがわかる。
【0070】
ここで、図3に示すように、SRAMのメモリセルでは、例えば、駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1でゲート電極G2を共有している。つまり、駆動用MISFETQd1のゲート電極G2と、負荷用MISFETQp1のゲート電極G2は繋がっている。このとき、駆動用MISFETQd1はnチャネル型MISFETであり、負荷用MISFETQp1はpチャネル型MISFETであることから、駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1をデュアルゲート構造にする場合、1本のゲート電極G2において、nチャネル型MISFET形成領域のゲート電極G2にはn型不純物が導入され、pチャネル型MISFET形成領域のゲート電極G2にはp型不純物が導入されることになる。この場合、本発明者が検討した結果、以下に示す問題点が発生することを本発明者は新たに見出したのである。
【0071】
例えば、図3に示すゲート電極G2では、駆動用MISFETQd1を形成しているnチャネル型MISFET形成領域のゲート電極G2にはリン(P)が導入されており、負荷用MISFETQp1を形成しているpチャネル型MISFET形成領域のゲート電極G2にはボロン(B)が導入されている。
【0072】
このようなデュアルゲート構造は、例えば、以下のようにして形成される。すなわち、半導体基板上にゲート絶縁膜を形成し、このゲート絶縁膜上にポリシリコン膜を形成する。そして、nチャネル型MISFET形成領域に形成されているポリシリコン膜にリンを導入し、その後、pチャネル型MISFET形成領域に形成されているポリシリコン膜にボロンを導入する。続いて、半導体基板に熱処理を施すことにより、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているリンと、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているボロンとを活性化する。このときの熱処理によって、リンとボロンが拡散する。具体的には、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているリンが境界を越えて、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に拡散したり、逆に、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているボロンが境界を越えて、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に拡散する。この結果、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているリンの濃度が逆導電型不純物であるボロンによって相殺され、実質的に、リンの濃度が低下する。一方、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているボロンの濃度が逆導電型不純物であるリンによって相殺され、実質的に、ボロンの濃度が低下する。
【0073】
その後、半導体基板の主面全面に形成されているポリシリコン膜をパターニングすることにより、nチャネル型MISFET形成領域に駆動用MISFETQd1のゲート電極G2を形成し、pチャネル型MISFET形成領域に負荷用MISFETQp1のゲート電極G2を形成する。したがって、上述した現象により、駆動用MISFETQd1(nチャネル型MISFET)のゲート電極G2に導入されているリンの濃度が設計値よりも低下するとともに、負荷用MISFETQp1(pチャネル型MISFET)のゲート電極G2に導入されているボロンの濃度が設計値よりも低下する。
【0074】
特に、本実施の形態1では、駆動用MISFETQd1のゲート電極G2に導入されるリンの濃度が、負荷用MISFETQp1のゲート電極G2に導入されるボロンの濃度よりも多い場合を想定している。このため、リンの拡散によるボロンの濃度低下がより問題となる。つまり、nチャネル型MISFET形成領域からのリンの拡散により、pチャネル型MISFET形成領域のボロンの濃度低下がより問題となる。
【0075】
以下に、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1のゲート電極G2に導入されているボロンの濃度が低下することにより引き起こされる問題点について詳述する。例えば、負荷用MISFETQp1のゲート電極G2に導入されているボロンの濃度が設計値であれば、しきい値電圧を設計値通りに低下させることができる。ところがデュアルゲート構造で、かつ、駆動用MISFETQd1と負荷用MISFETQp1のように、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETでゲート電極G2が繋がっている場合、上述した熱処理によって、負荷用MISFETQp1のゲート電極G2に導入されているボロンの濃度が、拡散するリンによって相殺され、実質的に低下する。すると、負荷用MISFETQp1のゲート電極G2にゲート電圧を印加した場合、ゲート電極G2に導入されているボロンの濃度が実質的に低下していることから、ゲート電極G2の空乏化が生じる。具体的には、ゲート電極G2とゲート絶縁膜GOXの境界近傍でゲート電極G2の空乏化が発生する。
【0076】
ゲート電極G2の空乏化が生じると、空乏化領域は絶縁領域として機能することから、ゲート絶縁膜GOX上にさらに空乏化領域から形成される絶縁領域が形成されることになる。このことは、チャネル形成領域とゲート電極G2からなるゲート容量の容量絶縁膜がゲート絶縁膜GOXだけでなく、空乏化領域も容量絶縁膜として機能することを意味している。この結果、容量絶縁膜の膜厚が厚くなることから、ゲート容量が低下する。ゲート容量が低下するということは、ゲート電極G2に、空乏化が生じない場合と同じゲート電圧を印加しても、チャネル形成領域の表面に誘起される電荷量が少なくなることを意味している。このことは、空乏化が生じない場合と同等の電荷をチャネル形成領域の表面に誘起するためには、ゲート容量が低下した分、ゲート電極G2に印加するゲート電圧を大きくしなければならないことを意味している。つまり、ゲート電極G2に空乏化が生じると、チャネル形成領域の表面に充分な電荷を誘起させてチャネルを形成するためのしきい値電圧が上昇することになる。以上のように、デュアルゲート構造を有する半導体装置の製造技術では、例えば、活性化のための熱処理によって、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているリンと、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているボロンとが拡散することにより、MISFETのしきい値電圧が設計値から上昇してしまう問題点があることがわかる。特に、半導体ウェハ全体を均一に加熱することは困難であり、半導体ウェハの表面領域には温度分布が生じるため、リンやボロンの拡散の程度もチップ領域により異なることになる。このことは、半導体ウェハのチップ領域毎に、ゲート電極に導入されている不純物濃度にばらつきが生じる結果、ゲート電極のしきい値電圧にばらつきが生じてしまう。つまり、デュアルゲート構造を有する半導体装置の製造技術では、活性化のための熱処理によって、ゲート電極に導入されている不純物濃度の低下によるしきい値電圧の上昇と、チップ間でのMISFETのしきい値のばらつきが生じるのである。
【0077】
このように、デュアルゲート構造では、半導体基板の主面全面に形成されたポリシリコン膜において、nチャネル型MISFET形成領域に導入されたリンと、pチャネル型MISFET形成領域に導入されたボロンによる相互拡散が問題となることがわかる。
【0078】
ここで、nチャネル型MISFET形成領域にリンを導入しているが、リンよりも重いn型不純物である砒素を使用すれば、砒素のほうがリンよりも拡散しにくいので、ポリシリコン膜における相互拡散を抑制できるのではないかと考えることができる。しかし、ゲート電極に導入するn型不純物としてリンを使用しているのは、以下に示す理由のためである。つまり、リンは軽いので、熱処理によって拡散しやすいという性質を有している。このリンの拡散しやすいという性質を利用して、ゲート電極に導入するn型不純物としてリンを使用しているのである。なぜなら、ゲート電極を構成するポリシリコン膜に導入するn型不純物として拡散しやすいリンを使用することにより、ゲート電極を構成するポリシリコン膜全体にリンが容易に拡散する結果、ゲート電極の抵抗を下げることができるからである。一方、拡散しにくい砒素をゲート電極に導入するn型不純物として使用すると、ポリシリコン膜全体に砒素が拡散しにくい結果、ゲート電極の抵抗が上昇してしまうのである。すなわち、リンの拡散しやすいという性質は、ゲート電極の抵抗を下げる観点から望まれる性質なのである。ただし、上述したように、リンの拡散しやすいという性質は、ゲート電極の抵抗を下げる利点がある一方で、デュアルゲート構造における相互拡散の問題が副次的に発生するのである。
【0079】
そこで、本実施の形態1では、デュアルゲート構造における相互拡散を抑制するための工夫を施している。特に、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されるリンの不純物濃度が、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されるボロンの不純物濃度よりも高い場合を想定している。このため、本実施の形態1では、濃度の高いリンの拡散によって、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜に導入されているボロンの実質的な不純物濃度が低下することを抑制できる技術について説明する。以下に、本実施の形態1における半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0080】
まず、図5に示すように、ホウ素(B)などのp型不純物を導入したシリコン単結晶よりなる半導体基板1Sを用意する。このとき、半導体基板1Sは、略円盤形状をした半導体ウェハの状態になっている。そして、半導体基板1Sのnチャネル型MISFET形成領域NTRとpチャネル型MISFET形成領域PTRを分離する素子分離領域STIを形成する。素子分離領域STIは、素子が互いに干渉しないようにするために設けられる。この素子分離領域STIは、例えばLOCOS(local Oxidation of silicon)法やSTI(shallow trench isolation)法を用いて形成することができる。例えば、STI法では、以下のようにして素子分離領域を形成している。すなわち、半導体基板1Sにフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して素子分離溝を形成する。そして、素子分離溝を埋め込むように半導体基板1S上に酸化シリコン膜を形成し、その後、化学的機械的研磨法(CMP;chemical mechanical polishing)により、半導体基板1S上に形成された不要な酸化シリコン膜を除去する。これにより、素子分離溝内にだけ酸化シリコン膜を埋め込んだ素子分離領域STIを形成することができる。
【0081】
次に、素子分離領域STIで分離された活性領域に不純物を導入してウェルを形成する。例えば、活性領域のうちnチャネル型MISFET形成領域NTRには、p型ウェルPWLを形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRには、n型ウェルNWLを形成する。p型ウェルPWLは、例えばホウ素などのp型不純物をイオン注入法により半導体基板1Sに導入することで形成される。同様に、n型ウェルNWLは、例えばリン(P)や砒素(As)などのn型不純物をイオン注入法により半導体基板1Sに導入することで形成される。
【0082】
続いて、p型ウェルPWLの表面領域およびn型ウェルNWLの表面領域にチャネル形成用の半導体領域(図示せず)を形成する。このチャネル形成用の半導体領域は、チャネルを形成するしきい値電圧を調整するために形成される。
【0083】
次に、図6に示すように、半導体基板1S上にゲート絶縁膜GOXを形成する。ゲート絶縁膜GOXは、例えば、酸化シリコン膜から形成され、例えば熱酸化法を使用して形成することができる。ただし、ゲート絶縁膜GOXは、酸化シリコン膜に限定されるものではなく種々変更可能であり、例えば、ゲート絶縁膜GOXを酸窒化シリコン膜(SiON)としてもよい。すなわち、ゲート絶縁膜GOXと半導体基板1Sとの界面に窒素を偏析させる構造としてもよい。酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて膜中における界面準位の発生を抑制したり、電子トラップを低減する効果が高い。したがって、ゲート絶縁膜GOXのホットキャリア耐性を向上でき、絶縁耐性を向上させることができる。また、酸窒化シリコン膜は、酸化シリコン膜に比べて不純物が貫通しにくい。このため、ゲート絶縁膜GOXに酸窒化シリコン膜を用いることにより、ゲート電極中の不純物が半導体基板1S側に拡散することに起因するしきい値電圧の変動を抑制することができる。酸窒化シリコン膜を形成するのは、例えば、半導体基板1SをNO、NOまたはNHといった窒素を含む雰囲気中で熱処理すればよい。また、半導体基板1Sの表面に酸化シリコン膜からなるゲート絶縁膜GOXを形成した後、窒素を含む雰囲気中で半導体基板1Sを熱処理し、ゲート絶縁膜GOXと半導体基板1Sとの界面に窒素を偏析させることによっても同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、ゲート絶縁膜GOXは、例えば酸化シリコン膜より誘電率の高い高誘電率膜から形成してもよい。従来、絶縁耐性が高い、シリコン−酸化シリコン界面の電気的・物性的安定性などが優れているとの観点から、ゲート絶縁膜GOXとして酸化シリコン膜が使用されている。しかし、素子の微細化に伴い、ゲート絶縁膜GOXの膜厚について、極薄化が要求されるようになってきている。このように薄い酸化シリコン膜をゲート絶縁膜GOXとして使用すると、MISFETのチャネルを流れる電子が酸化シリコン膜によって形成される障壁をトンネルしてゲート電極に流れる、いわゆるトンネル電流が発生してしまう。
【0085】
そこで、酸化シリコン膜より誘電率の高い材料を使用することにより、容量が同じでも物理的膜厚を増加させることができる高誘電体膜が使用されるようになってきている。高誘電体膜によれば、容量を同じにしても物理的膜厚を増加させることができるので、リーク電流を低減することができる。
【0086】
例えば、高誘電体膜として、ハフニウム酸化物の一つである酸化ハフニウム膜(HfO膜)が使用されるが、酸化ハフニウム膜に変えて、ハフニウムアルミネート膜、HfON膜(ハフニウムオキシナイトライド膜)、HfSiO膜(ハフニウムシリケート膜)、HfSiON膜(ハフニウムシリコンオキシナイトライド膜)のような他のハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。さらに、これらのハフニウム系絶縁膜に酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどの酸化物を導入したハフニウム系絶縁膜を使用することもできる。ハフニウム系絶縁膜は、酸化ハフニウム膜と同様、酸化シリコン膜や酸窒化シリコン膜より誘電率が高いので、酸化ハフニウム膜を用いた場合と同様の効果が得られる。
【0087】
続いて、ゲート絶縁膜GOX上にポリシリコン膜PF1を形成する。ポリシリコン膜PF1は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。このとき形成されるポリシリコン膜PF1は多結晶状態のシリコンから形成されている。
【0088】
そして、図7に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR1を形成する。その後、このレジスト膜FR1に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR1をパターニングする。レジスト膜FR1のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRにレジスト膜FR1が残り、pチャネル型MISFET形成領域PTRにレジスト膜FR1が残らないように行なわれる。
【0089】
次に、パターニングしたレジスト膜FR1をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRに露出しているポリシリコン膜PF1にボロン(B)を導入する。このとき、ボロンの注入エネルギーは、例えば、4keVであり、ドーズ量は、例えば、2×1015/cmである。なお、nチャネル型MISFET形成領域NTRはレジスト膜FR1で覆われているため、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にはボロンが注入されない。
【0090】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR1を除去した後、図8に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR2を形成する。そして、レジスト膜FR2に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR2をパターニングする。レジスト膜FR2のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRを露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRをレジスト膜FR2で覆うように行なわれる。
【0091】
その後、パターニングしたレジスト膜FR2をマスクにしたイオン注入法により、露出しているnチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴン(Ar)を導入する。このとき、アルゴンの注入エネルギーは、例えば、10keVであり、ドーズ量は、例えば、2×1015/cmである。なお、pチャネル型MISFET形成領域PTRはレジスト膜FR2で覆われているため、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にはアルゴンが注入されない。
【0092】
このアルゴン注入工程により、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1はアモルファス化する。一方、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にはアルゴンが導入されないため、アモルファス化しない。このように本実施の形態1の特徴は、パターニングしたレジスト膜FR2をマスクにして、nチャネル型MISFET形成領域NTRにだけアルゴンを導入することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているポリシリコン膜PF1をアモルファス化することにある。なお、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRに露出するポリシリコン膜PF1をアモルファス化するために導入する元素として、アルゴンを使用しているが、これに限らず、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化できる種々の元素を使用することができる。例えば、アルゴンの他、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムのいずれかを使用することができる。
【0093】
次に、図9に示すように、パターニングしたレジスト膜FR2をそのまま使用して、nチャネル型MISFET形成領域NTRに露出するアモルファス化したシリコン膜にリン(P)を導入する。このとき、リンの注入エネルギーは、例えば、10keVであり、ドーズ量は、例えば、5×1015/cmである。なお、pチャネル型MISFET形成領域PTRはレジスト膜FR2で覆われているため、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にはリンが注入されない。
【0094】
本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にリンを導入する前に、アルゴンを導入して、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1をアモルファス化することに特徴がある。つまり、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にリンを導入する工程の前に、アルゴンを導入する工程が追加されるが、図8および図9に示すように、アルゴンを導入する工程で使用するマスクと、リンを導入する工程で使用するマスクは同じであるので、アルゴンを導入する工程のために、新たなマスクを使用する必要がない。このため、アルゴンを導入する工程を追加しても、工程が複雑化することを抑制できる。
【0095】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR2を除去した後、図10に示すように、半導体基板1Sに対して熱処理を実施する。この熱処理は、nチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化したシリコン膜に導入されているリンと、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1に導入されているボロンとを活性化させるために行なわれる。
【0096】
このときの熱処理によって、リンとボロンは拡散するが、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているシリコン膜はアモルファス化されているので、リンのnチャネル型MISFET形成領域NTRからpチャネル型MISFET形成領域PTRへの拡散を抑制することができる。この理由について説明する。ポリシリコン膜PF1は、多数のシリコン微結晶からなり、微結晶間に粒界が存在する。このため、ポリシリコン膜PF1に導入されたリンは、シリコン微結晶間に存在する粒界を通って容易に拡散する。したがって、ポリシリコン膜PF1にリンを導入して熱処理を施すと、リンは拡散しやすくなる。これに対し、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンを導入することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1をアモルファス化している。アモルファス化したシリコン膜には、結晶が存在しないため、結晶間に存在する粒界も存在しない。つまり、アモルファス化したシリコン膜には、導入したリンが容易に拡散する拡散経路である粒界が存在しない。したがって、本実施の形態1によれば、nチャネル型MISFET形成領域NTRのシリコンをアモルファス化することにより、導入されているリンの拡散を抑制することができるのである。特に、本工程では、半導体基板1Sの主面全面にシリコン膜(ポリシリコン膜+アモルファス化したシリコン膜)が存在するため、nチャネル型MISFET形成領域NTRとpチャネル型MISFET形成領域PTR間の不純物(リンやボロン)の相互拡散が顕著となるが、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているポリシリコン膜PF1をアモルファス化しているので、リンの拡散を効果的に抑制できる。なお、活性化のための熱処理後には、nチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化したシリコン膜は、結晶化してポリシリコン膜PF1となる。
【0097】
次に、図11に示すように、パターニングしたレジスト膜をマスクにしたエッチングによりポリシリコン膜PF1を加工して、nチャネル型MISFET形成領域NTRにゲート電極G2を形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにゲート電極G2を形成する。
【0098】
ここで、nチャネル型MISFET形成領域NTRのゲート電極G2には、ポリシリコン膜PF1中にn型不純物が導入されている。このため、ゲート電極G2の仕事関数値をシリコンの伝導帯近傍(4.15eV)の値にすることができるので、nチャネル型MISFET(駆動用MISFETQd1)のしきい値電圧を低減することができる。一方、pチャネル型MISFET形成領域PTRのゲート電極G2には、ポリシリコン膜PF1中にp型不純物が導入されている。このため、ゲート電極G2の仕事関数値をシリコンの価電子帯近傍(5.15eV)の値にすることができるので、pチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp1)のしきい値電圧を低減することができる。このように本実施の形態1では、nチャネル型MISFETとpチャネル型MISFETの両方でしきい値電圧を低減することができる(デュアルゲート構造)。
【0099】
続いて、図12に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRにnチャネル型MISFETのゲート電極G2に整合した浅いn型不純物拡散領域EX1を形成する。浅いn型不純物拡散領域EX1は、n型半導体領域である。具体的には、ゲート電極G2を形成した半導体基板1S上にレジスト膜FR3を形成し、このレジスト膜FR3に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR3をパターニングする。レジスト膜FR3のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRを露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRをレジスト膜FR3で覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR3をマスクにしたイオン注入法により、nチャネル型MISFET形成領域NTRに砒素(As)を導入する。このとき、砒素の注入エネルギーは、例えば、3.5keVであり、ドーズ量は、例えば、8×1014/cmである。なお、pチャネル型MISFET形成領域PTRはレジスト膜FR3で覆われているため、pチャネル型MISFET形成領域PTRの半導体基板1S内には砒素が注入されない。
【0100】
同様に、パターニングしたレジスト膜FR3を除去した後、図13に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRにnチャネル型MISFETのゲート電極G2に整合した浅いp型不純物拡散領域EX2を形成する。浅いp型不純物拡散領域EX2は、p型半導体領域である。具体的には、ゲート電極G2を形成した半導体基板1S上にレジスト膜FR4を形成し、このレジスト膜FR4に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR4をパターニングする。レジスト膜FR4のパターニングは、pチャネル型MISFET形成領域PTRを露出し、nチャネル型MISFET形成領域NTRをレジスト膜FR4で覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR4をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRにフッ化ボロン(BF)を導入する。このとき、フッ化ボロンの注入エネルギーは、例えば、1.5keVであり、ドーズ量は、例えば、2×1014/cmである。なお、nチャネル型MISFET形成領域NTRはレジスト膜FR4で覆われているため、nチャネル型MISFET形成領域NTRの半導体基板1S内にはフッ化ボロンが注入されない。このようにして、nチャネル型MISFET形成領域NTRにゲート電極G2に整合した浅いn型不純物拡散領域EX1を形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにゲート電極G2に整合した浅いp型不純物拡散領域EX2を形成した後、導入した不純物の活性化のために、半導体基板1Sに対して熱処理を実施する。
【0101】
次に、パターニングしたレジスト膜FR4を除去した後、図14に示すように、半導体基板1S上に酸化シリコン膜を形成する。酸化シリコン膜は、例えば、CVD法を使用して形成することができる。そして、酸化シリコン膜を異方性エッチングすることにより、サイドウォールSWをゲート電極G2の側壁に形成する。サイドウォールSWは、酸化シリコン膜の単層膜から形成するようにしたが、これに限らず、例えば、窒化シリコン膜と酸化シリコン膜の積層膜からなるサイドウォールSWを形成してもよい。
【0102】
続いて、図15に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRにサイドウォールSWに整合した深いp型不純物拡散領域PR1を形成する。深いp型不純物拡散領域PR1は、p型半導体領域である。具体的には、ゲート電極G2を形成した半導体基板1S上にレジスト膜FR5を形成し、このレジスト膜FR5に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR5をパターニングする。レジスト膜FR5のパターニングは、pチャネル型MISFET形成領域PTRを露出し、nチャネル型MISFET形成領域NTRをレジスト膜FR5で覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR5をマスクにしたイオン注入法により、pチャネル型MISFET形成領域PTRにボロン(B)を導入する。このとき、ボロンの注入エネルギーは、例えば、2.5keVであり、ドーズ量は、例えば、4×1015/cmである。なお、nチャネル型MISFET形成領域NTRはレジスト膜FR5で覆われているため、nチャネル型MISFET形成領域NTRの半導体基板1S内にはボロンが注入されない。
【0103】
この深いp型不純物拡散領域PR1と浅いp型不純物拡散領域EX2によってソース領域が形成される。同様に、深いp型不純物拡散領域PR1と浅いp型不純物拡散領域EX2によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いp型不純物拡散領域EX2と深いp型不純物拡散領域PR1で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0104】
同様に、図16に示すように、フォトリソグラフィ技術およびイオン注入法を使用することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRにサイドウォールSWに整合した深いn型不純物拡散領域NR1を形成する。深いn型不純物拡散領域NR1は、n型半導体領域である。具体的には、ゲート電極G2を形成した半導体基板1S上にレジスト膜FR6を形成し、このレジスト膜FR6に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR6をパターニングする。レジスト膜FR6のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRを露出し、pチャネル型MISFET形成領域PTRをレジスト膜FR6で覆うように行なわれる。そして、パターニングしたレジスト膜FR6をマスクにしたイオン注入法により、nチャネル型MISFET形成領域NTRに砒素(As)とリン(P)を導入する。このとき、砒素の注入エネルギーは、例えば、20keVであり、ドーズ量は、例えば、2×1015/cmである。一方、リンの注入エネルギーは、例えば、10keVであり、ドーズ量は、例えば、2×1015/cmである。なお、pチャネル型MISFET形成領域PTRはレジスト膜FR6で覆われているため、pチャネル型MISFET形成領域PTRの半導体基板1S内には砒素やリンが注入されない。
【0105】
この深いn型不純物拡散領域NR1と浅いn型不純物拡散領域EX1によってソース領域が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域NR1と浅いn型不純物拡散領域EX1によってドレイン領域が形成される。このようにソース領域とドレイン領域を浅いn型不純物拡散領域EX1と深いn型不純物拡散領域NR1で形成することにより、ソース領域およびドレイン領域をLDD(Lightly Doped Drain)構造とすることができる。
【0106】
このようにして、深いn型不純物拡散領域NR1および深いp型不純物拡散領域PR1を形成した後、1000℃程度の熱処理を行なう。これにより、導入した不純物の活性化が行なわれる。
【0107】
その後、図17に示すように、半導体基板1S上にニッケルプラチナ膜を形成する。このとき、ゲート電極G2に直接接するようにニッケルプラチナ膜が形成される。同様に、深いn型不純物拡散領域NR1や深いp型不純物拡散領域PR1にもニッケルプラチナ膜が直接接する。
【0108】
ニッケルプラチナ膜は、例えば、スパッタリング法を使用して形成することができる。そして、ニッケルプラチナ膜を形成した後、熱処理を施すことにより、ゲート電極G2を構成するポリシリコン膜PF1とニッケルプラチナ膜を反応させて、ニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド膜CSを形成する。これにより、ゲート電極G2は、ポリシリコン膜PF1とシリサイド膜CSの積層構造となる。シリサイド膜CSは、ゲート電極G2の低抵抗化のために形成される。同様に、上述した熱処理により、深いn型不純物拡散領域NR1の表面においてもシリコンとニッケルプラチナ膜が反応してニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド膜CSが形成される。このため、深いn型不純物拡散領域NR1においても低抵抗化を図ることができる。また、上述した熱処理により、深いp型不純物拡散領域PR1の表面においてもシリコンとニッケルプラチナ膜が反応してニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド膜CSが形成される。このため、深いp型不純物拡散領域PR1においても低抵抗化を図ることができる。
【0109】
そして、未反応のニッケルプラチナ膜は、半導体基板1S上から除去される。なお、本実施の形態1では、ニッケルプラチナシリサイド膜からなるシリサイド膜CSを形成するように構成しているが、例えば、ニッケルプラチナシリサイド膜に代えてニッケルシリサイド膜、チタンシリサイド膜、コバルトシリサイド膜、あるいは、プラチナシリサイド膜などからシリサイド膜CSを形成するようにしてもよい。以上のようにして、例えば、半導体基板1S上にnチャネル型MISFETである駆動用MISFETQd1と、pチャネル型MISFETである負荷用MISFETQp1を形成することができる。
【0110】
次に、配線工程について図4を参照しながら説明する。図4に示すように、半導体基板1Sの主面上に窒化シリコン膜SN1を形成し、この窒化シリコン膜SN1上にコンタクト層間絶縁膜CILを形成する。このコンタクト層間絶縁膜CILは、例えば、酸化シリコン膜から形成される。その後、コンタクト層間絶縁膜CILの表面を、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法を使用して平坦化する。
【0111】
続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用して、コンタクト層間絶縁膜CILにコンタクトホールCNTを形成する。例えば、図4では、駆動用MISFETQd1(nチャネル型MISFET)のソース領域とドレイン領域、および、負荷用MISFETQp1(pチャネル型MISFET)のソース領域とドレイン領域に接続するコンタクトホールCNTが図示されている。なお、図4では、図示されていないが、ゲート電極G2にもコンタクトホールCNTが接続される。
【0112】
その後、コンタクトホールCNTの底面および内壁を含む層間絶縁膜上にチタン/窒化チタン膜を形成する。チタン/窒化チタン膜は、チタン膜と窒化チタン膜の積層膜から構成され、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。このチタン/窒化チタン膜は、例えば、後の工程で埋め込む膜の材料であるタングステンがシリコン中へ拡散するのを防止する、いわゆるバリア性を有する。
【0113】
そして、コンタクトホールCNTを埋め込むように、半導体基板1Sの主面の全面にタングステン膜を形成する。このタングステン膜は、例えばCVD法を使用して形成することができる。そして、コンタクト層間絶縁膜CIL上に形成された不要なチタン/窒化チタン膜およびタングステン膜を例えばCMP法で除去することにより、プラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4を形成することができる。
【0114】
次に、図4に示すように、プラグPLG3、プラグPLG2、シェアードプラグSPLG1、プラグPLG4を形成したコンタクト層間絶縁膜CIL上に層間絶縁膜IL1を形成する。そして、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、層間絶縁膜IL1に溝を形成する。その後、溝内を含む層間絶縁膜IL1上にタンタル/窒化タンタル膜を形成する。このタンタル/窒化タンタル膜は、例えば、スパッタリング法により形成することができる。続いて、タンタル/窒化タンタル膜上に薄い銅膜よりなるシード膜を、例えば、スパッタリング法で形成した後、このシード膜を電極とする電解めっき法により、溝を形成した層間絶縁膜IL1上に銅膜を形成する。その後、溝の内部以外の層間絶縁膜IL1上に露出している銅膜を、例えば、CMP法で研磨して除去することにより、層間絶縁膜IL1に形成された溝内にだけ銅膜を残す。これにより、配線L1を形成することができる。さらに、配線L1の上層に配線を形成するが、ここでの説明は省略する。このようにして、最終的に本実施の形態1における半導体装置を形成することができる。
【0115】
なお、本実施の形態1では、銅膜よりなる配線L1を形成する例について説明したが、例えば、アルミニウム膜よりなる配線L1を形成してもよい。この場合は、コンタクト層間絶縁膜CILおよびプラグ上にチタン/窒化チタン膜、アルミニウム膜、チタン/窒化チタン膜を順次、形成する。これらの膜は、例えばスパッタリング法を使用することにより形成することができる。続いて、フォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用することにより、これらの膜のパターニングを行い、配線L1を形成する。これにより、アルミニウム膜よりなる配線L1を形成することができる。
【0116】
本実施の形態1の技術的思想は、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化した膜にリンなどのn型不純物を導入する工程に特徴がある。つまり、本実施の形態1の特徴は、半導体装置の製造方法にあるが、この痕跡が最終的に製造される半導体装置に残る。具体的には、nチャネル型MISFET(駆動用MISFETQd1)のゲート電極G2内に、アモルファス化する際に導入したアルゴン、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムなどの元素が導入されている。一方、pチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp1)のゲート電極G2内には上述した元素が導入されていない。
【0117】
上述したように、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化した膜にリンなどのn型不純物を導入している。この工程は、半導体基板1Sの主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されている状態で行なわれる。この工程を実施した後、nチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化したシリコン膜に導入されているリンと、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1に導入されているボロンとを活性化するための熱処理が行なわれるが、本実施の形態1では、アモルファス化したシリコン膜にリンが導入されているので、この熱処理工程によるリンの拡散を抑制することができる。
【0118】
このときの熱処理後、アモルファス化したシリコン膜はポリシリコン膜PF1に変化する。その後、半導体基板1Sの主面全面に形成されているポリシリコン膜PF1をパターニングして、nチャネル型MISFET形成領域NTRにnチャネル型MISFET(駆動用MISFETQd1)のゲート電極G2を形成し、pチャネル型MISFET形成領域PTRにpチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp1)のゲート電極G2を形成する。
【0119】
ここで、nチャネル型MISFET(駆動用MISFETQd1)のゲート電極G2と、pチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp1)のゲート電極G2とは繋がっているため、その後に加えられる熱処理によって、nチャネル型MISFETのゲート電極G2に導入されているリンが、pチャネル型MISFETのゲート電極G2へ拡散してしまうことが考えられる。
【0120】
しかし、リンの拡散が特に問題となるのは、半導体基板1Sの主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されている場合である。この場合、nチャネル型MISFET形成領域NTRの全体にポリシリコン膜PF1が形成されており、このポリシリコン膜PF1内にリンが導入されている。一方、pチャネル型MISFET形成領域PTRの全体にポリシリコン膜PF1が形成されており、このポリシリコン膜PF1内にボロンが導入されている。したがって、この状態では、nチャネル型MISFET形成領域NTRの全体に形成されているポリシリコン膜PF1から、pチャネル型MISFET形成領域PTRに向ってリンが拡散する。つまり、nチャネル型MISFET形成領域NTRの全体に形成されているポリシリコン膜PF1からリンが拡散するため、リンの量が多く、リンの拡散が特に問題となるのである。
【0121】
これに対し、ゲート電極G2を加工した後は、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているゲート電極G2からだけリンが拡散する。この場合のリンの拡散は、nチャネル型MISFET形成領域NTRの全体にポリシリコン膜PF1が形成されている場合のリンの拡散に比べてわずかである。つまり、半導体基板1Sの主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されている段階でのリンの拡散が問題となり、ゲート電極G2をパターニングした後の段階でのリンの拡散はそれほど問題とならないのである。
【0122】
このことから、本実施の形態1では、半導体基板1Sの主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されている段階で、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化した膜にリンなどのn型不純物を導入しているのである。これにより、本実施の形態1によれば、リンの拡散を効果的に抑制することができる。
【0123】
次に、本実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されておりポリシリコン膜PF1にだけアルゴンなどの元素を導入して、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化している。これは、本発明者の実験の結果、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1だけをアモルファス化することにより、リンの拡散が顕著に抑制されることが判明したからである。このことについて図面を参照しながら説明する。
【0124】
図18は、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化している領域が異なる構成を比較して示す模式図である。まず、図18(a)は、半導体基板の主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されている従来例を示す図である。図18(a)に示すように、破線の上側領域がpチャネル型MISFET形成領域を示しており、破線の下側領域がnチャネル型MISFET形成領域を示している。そして、pチャネル型MISFET形成領域とnチャネル型MISFET形成領域を含む半導体基板の全面にポリシリコン膜PF1が形成されている。図18(a)では、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にボロンが導入され、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にリンが導入されている。図18(a)に示す従来例では、リンおよびボロンの活性化のための熱処理を施すと、リンがnチャネル型MISFET形成領域から境界を越えてpチャネル型MISFET形成領域まで充分に拡散してしまう問題点が発生する。
【0125】
次に、図18(b)は、半導体基板の主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されており、このポリシリコン膜PF1にアルゴンARが導入されている比較例1を示す図である。図18(b)に示すように、破線の上側領域がpチャネル型MISFET形成領域を示しており、破線の下側領域がnチャネル型MISFET形成領域を示している。そして、pチャネル型MISFET形成領域とnチャネル型MISFET形成領域を含む半導体基板の全面に形成されているポリシリコン膜PF1にアルゴンARが導入されている。したがって、比較例1では、pチャネル型MISFET形成領域およびnチャネル型MISFET形成領域の両方でポリシリコン膜PF1がアモルファス化されている。図18(b)では、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にボロンが導入され、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にリンが導入されている。図18(b)に示す比較例1では、リンおよびボロンの活性化のための熱処理を施す場合、pチャネル型MISFET形成領域とnチャネル型MISFET形成領域の両方がアモルファス化されていることから、リンの拡散を抑制できることが想定されたが、実際の実験結果では、リンの拡散を抑制する充分な効果は得られなかった。
【0126】
続いて、図18(c)は、半導体基板の主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されており、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にアルゴンARが導入されている比較例2を示す図である。図18(c)に示すように、破線の上側領域がpチャネル型MISFET形成領域を示しており、破線の下側領域がnチャネル型MISFET形成領域を示している。そして、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1だけにアルゴンARが導入されている。したがって、比較例2では、pチャネル型MISFET形成領域だけでポリシリコン膜PF1がアモルファス化されている。図18(c)では、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にボロンが導入され、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にリンが導入されている。図18(c)に示す比較例2では、リンおよびボロンの活性化のための熱処理を施す場合、pチャネル型MISFET形成領域がアモルファス化されていることから、pチャネル型MISFET形成領域に移動してくるリンの拡散を抑制できることが想定されたが、実際の実験結果では、リンの拡散を抑制する充分な効果は得られなかった。
【0127】
最後に、図18(d)は、半導体基板の主面全面にポリシリコン膜PF1が形成されており、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にアルゴンARが導入されている本願発明を示す図である。図18(d)に示すように、破線の上側領域がpチャネル型MISFET形成領域を示しており、破線の下側領域がnチャネル型MISFET形成領域を示している。そして、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1だけにアルゴンARが導入されている。したがって、本願発明では、nチャネル型MISFET形成領域だけでポリシリコン膜PF1がアモルファス化されている。図18(d)では、pチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にボロンが導入され、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にリンが導入されている。図18(d)に示す本願発明では、リンおよびボロンの活性化のための熱処理を施す場合、nチャネル型MISFET形成領域がアモルファス化されている。この構成の場合、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1内に導入されているリンの拡散が充分に抑制できる実験結果が得られた。
【0128】
以上の実験結果から、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にだけアルゴンなどの元素を導入してアモルファス化することにより、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1に導入されているリンの拡散を抑制できることが判明した。この実験結果を論理的に説明するメカニズムの詳細は不明であるが、再現性のある実験事実として明らかになった。そこで、本実施の形態1では、上述した実験結果に基づいて、nチャネル型MISFET形成領域のポリシリコン膜PF1にだけアルゴンなどの元素を導入してアモルファス化するように構成している。
【0129】
最後に本実施の形態1の変形例について説明する。図19は、本実施の形態1の変形例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。図19は、実施の形態1における半導体装置の製造工程を示す図7および図8を実施した後の工程を示す断面図である。
【0130】
具体的には、図7に示すように、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にボロンを導入した後、図8に示すように、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンを導入することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRに形成されているポリシリコン膜PF1をアモルファス化する。
【0131】
その後、図19に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR7を形成し、このレジスト膜FR7に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR7をパターニングする。このレジスト膜FR7のパターニングに変形例の特徴があり、具体的に、レジスト膜FR7のパターニングは、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆い、かつ、境界を越えて、nチャネル型MISFET形成領域NTRの一部領域まで覆うように行なわれる。このパターニングしたレジスト膜FR7をマスクにしたイオン注入法により、レジスト膜FR7から露出しているnチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化したシリコン膜内にリン(P)を導入する。このとき、リンの注入エネルギーは、例えば、10keVであり、ドーズ量は、例えば、5×1015/cmである。
【0132】
ここで、図19に示すように、レジスト膜FR7は、pチャネル型MISFET形成領域PTRから境界を越えてnチャネル型MISFET形成領域NTRの一部領域を覆うように形成されている。このことから、nチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化されたシリコン膜に導入されるリンは、レジスト膜FR7で覆われているnチャネル型MISFET形成領域NTRの一部領域には導入されない。このことは、nチャネル型MISFET形成領域NTRのアモルファス化されたシリコン膜には、境界領域からレジスト膜FR7で覆われている一部領域よりも離れた領域にだけリンが導入されることを意味している。
【0133】
したがって、リンの導入されている領域がpチャネル型MISFET形成領域PTRから離れることになるので、リンが拡散してpチャネル型MISFET形成領域PTRに達する確率を低くすることができる。言い換えれば、リンの導入されている領域をpチャネル型MISFET形成領域PTRから離すことにより、熱処理によって、リンが拡散しても、pチャネル型MISFET形成領域PTRまで到達しにくくすることができる。このように本実施の形態1の変形例によれば、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入してアモルファス化した後にリンを導入する構成と、リンの導入領域をpチャネル型MISFET形成領域PTRとnチャネル型MISFET形成領域NTRの境界から離す構成との相乗効果で、リンがpチャネル型MISFET形成領域PTRまで拡散することを充分に抑制できる効果が得られる。
【0134】
なお、本実施の形態1の変形例では、図8に示すレジスト膜FR2のパターニングと、図19に示すレジスト膜FR7のパターニングとが相違することから、図8に示すアルゴン注入工程で使用するマスクと、図19に示すリン注入工程で使用するマスクの共有化をしていないが、例えば、図8に示すアルゴン注入工程で使用するレジスト膜FR2のパターニングを図19に示すレジスト膜FR7のパターニングと同じにすることにより、本変形例においてもマスクの共有化を図ることができる。つまり、アルゴン注入工程で使用するレジスト膜FR2のパターニングを、図19に示すように、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆い、かつ、境界線を越えて、nチャネル型MISFET形成領域NTRの一部領域まで覆うように行なうことにより、レジスト膜FR2とレジスト膜FR7の共有化を図ることができる。この結果、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0135】
(実施の形態2)
前記実施の形態1では、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化したシリコン膜にリンを導入することで、その後の熱処理によるリンの拡散を抑制する技術的思想について説明した。これに対し、本実施の形態2では、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化したシリコン膜にボロンを導入することで、その後の熱処理によるリンの拡散を抑制する技術的思想について説明する。つまり、前記実施の形態1では、リンの不純物濃度がボロンの不純物濃度よりも高いことを前提として、不純物濃度の高いリンの拡散によって、ボロンの実質的な濃度低下が問題となる場合について説明した。これに対し、本実施の形態2では、ボロンの不純物濃度がリンの不純物濃度よりも高いことを前提として、不純物濃度の高いボロンの拡散によって、リンの実質的な濃度低下が問題となる場合について説明する。
【0136】
以下に、本実施の形態2における半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。本実施の形態2における半導体装置の製造方法は、前記実施の形態1とほぼ同様である。具体的に、本実施の形態2における半導体装置の製造方法において、図5〜図6に示す工程までは前記実施の形態1における半導体装置の製造方法と同様である。
【0137】
続いて、図20に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR8を形成した後、このレジスト膜FR8に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR8をパターニングする。レジスト膜FR8のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、かつ、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているポリシリコン膜PF1を露出するように行なわれる。
【0138】
その後、パターニングしたレジスト膜FR8をマスクにしたイオン注入法により、露出しているpチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にアルゴン(Ar)を導入する。なお、nチャネル型MISFET形成領域NTRはレジスト膜FR8で覆われているため、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にはアルゴンが注入されない。
【0139】
このアルゴン注入工程により、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1はアモルファス化する。一方、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にはアルゴンが導入されないため、アモルファス化しない。このように本実施の形態2の特徴は、パターニングしたレジスト膜FR8をマスクにして、pチャネル型MISFET形成領域PTRにだけアルゴンを導入することにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているポリシリコン膜PF1をアモルファス化することにある。なお、本実施の形態2では、pチャネル型MISFET形成領域PTRに露出するポリシリコン膜PF1をアモルファス化するために導入する元素として、アルゴンを使用しているが、これに限らず、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化できる種々の元素を使用することができる。例えば、アルゴンの他、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムのいずれかを使用することができる。
【0140】
次に、図21に示すように、パターニングしたレジスト膜FR8をそのまま使用して、pチャネル型MISFET形成領域PTRに露出するアモルファス化したシリコン膜にボロン(B)を導入する。なお、nチャネル型MISFET形成領域NTRはレジスト膜FR8で覆われているため、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1にはボロンが注入されない。
【0141】
本実施の形態2では、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にボロンを導入する前に、アルゴンを導入して、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1をアモルファス化することに特徴がある。つまり、本実施の形態2では、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にボロンを導入する工程の前に、アルゴンを導入する工程が追加されるが、図20および図21に示すように、アルゴンを導入する工程で使用するマスクと、ボロンを導入する工程で使用するマスクは同じであるので、アルゴンを導入する工程のために、新たなマスクを使用する必要がない。このため、アルゴンを導入する工程を追加しても、工程が複雑化することを抑制できる。
【0142】
続いて、パターニングしたレジスト膜FR8を除去した後、図22に示すように、ポリシリコン膜PF1(アモルファス化したシリコン膜を含む)上にレジスト膜FR9を形成する。そして、レジスト膜FR9に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR9をパターニングする。レジスト膜FR9のパターニングは、pチャネル型MISFET形成領域PTRを覆い、かつ、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1を露出するように行なわれる。その後、パターニングしたレジスト膜FR9をマスクとして、nチャネル型MISFET形成領域NTRに露出するポリシリコン膜PF1にリン(P)を導入する。なお、pチャネル型MISFET形成領域PTRはレジスト膜FR9で覆われているため、pチャネル型MISFET形成領域PTRのアモルファス化したシリコン膜にはリンが注入されない。
【0143】
次に、パターニングしたレジスト膜FR9を除去した後、半導体基板1Sに対して熱処理を実施する。この熱処理は、pチャネル型MISFET形成領域PTRのアモルファス化したシリコン膜に導入されているボロンと、nチャネル型MISFET形成領域NTRのポリシリコン膜PF1に導入されているリンとを活性化させるために行なわれる。
【0144】
このときの熱処理によって、リンとボロンは拡散するが、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているシリコン膜はアモルファス化されているので、ボロンのpチャネル型MISFET形成領域PTRからnチャネル型MISFET形成領域NTRへの拡散を抑制することができる。
【0145】
その後の工程は前記実施の形態1と同様であり、図11〜図17に示す工程が実施される。以上のようにして本実施の形態2における半導体装置を製造することができる。本実施の形態2の技術的思想は、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入することにより、ポリシリコン膜PF1をアモルファス化した後、アモルファス化した膜にボロンなどのn型不純物を導入する工程に特徴がある。つまり、本実施の形態2の特徴は、半導体装置の製造方法にあるが、この痕跡が最終的に製造される半導体装置に残る。具体的には、pチャネル型MISFET(負荷用MISFETQp1)のゲート電極G2内に、アモルファス化する際に導入したアルゴン、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムなどの元素が導入されている。一方、nチャネル型MISFET(駆動用MISFETQd1)のゲート電極G2内には上述した元素が導入されていない。
【0146】
続いて、本実施の形態2の変形例について説明する。図23は、本実施の形態2の変形例における半導体装置の製造工程を示す断面図である。図23は、前記実施の形態2における半導体装置の製造工程を示す図20を実施した後の工程を示す断面図である。
【0147】
具体的には、図20に示すように、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンを導入することにより、pチャネル型MISFET形成領域PTRに形成されているポリシリコン膜PF1をアモルファス化する。
【0148】
その後、図23に示すように、ポリシリコン膜PF1上にレジスト膜FR10を形成し、このレジスト膜FR10に対して露光・現像処理を施すことにより、レジスト膜FR10をパターニングする。このレジスト膜FR10のパターニングに変形例の特徴があり、具体的に、レジスト膜FR10のパターニングは、nチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、かつ、境界を越えて、pチャネル型MISFET形成領域PTRの一部領域まで覆うように行なわれる。このパターニングしたレジスト膜FR10をマスクにしたイオン注入法により、レジスト膜FR10から露出しているpチャネル型MISFET形成領域PTRのアモルファス化したシリコン膜内にボロン(B)を導入する。
【0149】
ここで、図23に示すように、レジスト膜FR10は、nチャネル型MISFET形成領域NTRから境界を越えてpチャネル型MISFET形成領域PTRの一部領域を覆うように形成されている。このことから、pチャネル型MISFET形成領域PTRのアモルファス化されたシリコン膜に導入されるボロンは、レジスト膜FR10で覆われているpチャネル型MISFET形成領域PTRの一部領域には導入されない。このことは、pチャネル型MISFET形成領域PTRのアモルファス化されたシリコン膜には、境界領域からレジスト膜FR10で覆われている一部領域よりも離れた領域にだけボロンが導入されることを意味している。
【0150】
したがって、ボロンの導入されている領域がnチャネル型MISFET形成領域NTRから離れることになるので、ボロンが拡散してnチャネル型MISFET形成領域NTRに達する確率を低くすることができる。言い換えれば、ボロンの導入されている領域をnチャネル型MISFET形成領域NTRから離すことにより、熱処理によって、ボロンが拡散しても、nチャネル型MISFET形成領域NTRまで到達しにくくすることができる。このように本実施の形態2の変形例によれば、pチャネル型MISFET形成領域PTRのポリシリコン膜PF1にアルゴンなどの元素を導入してアモルファス化した後にボロンを導入する構成と、ボロンの導入領域をnチャネル型MISFET形成領域NTRとpチャネル型MISFET形成領域PTRの境界から離す構成との相乗効果で、ボロンがnチャネル型MISFET形成領域NTRまで拡散することを充分に抑制できる効果が得られる。
【0151】
なお、本実施の形態2の変形例でも、例えば、図20に示すアルゴン注入工程で使用するレジスト膜FR8のパターニングを図23に示すレジスト膜FR10のパターニングと同じにすることにより、本変形例においてもマスクの共有化を図ることができる。つまり、アルゴン注入工程で使用するレジスト膜FR8のパターニングを、図23に示すように、nチャネル型MISFET形成領域NTRを覆い、かつ、境界線を越えて、pチャネル型MISFET形成領域PTRの一部領域まで覆うように行なうことにより、レジスト膜FR8とレジスト膜FR10の共有化を図ることができる。この結果、半導体装置の製造工程を簡略化することができる。
【0152】
(実施の形態3)
前記実施の形態1および前記実施の形態2では、デュアルゲート構造で、かつ、nチャネル型MISFETのゲート電極と、pチャネル型MISFETのゲート電極とが繋がっている例として、SRAMを取り上げたが、本実施の形態3では、ロジック回路の一つであるインバータ回路を取り上げる。
【0153】
例えば、図1に示す半導体チップCHPには、CPU1が形成されているが、このCPU1はロジック回路から構成されている。そして、ロジック回路を構成する基本回路として、例えば、インバータ回路がある。
【0154】
図24は、一般的なインバータ回路を示す回路図である。図24に示すように、インバータ回路は、電源電位VDDと基準電位VSSとの間に直列接続されたpチャネル型MISFET5Pとnチャネル型MISFET6Nより構成されている。このとき、pチャネル型MISFET5Pが電源電位側に接続され、nチャネル型MISFET6Nが基準電位側に接続される。pチャネル型MISFET5Pのゲート電極とnチャネル型MISFET6Nのゲート電極とは電気的に接続されており、このゲート電極がインバータ回路の入力(Ta)となっている。一方、インバータ回路の出力(Tb)は、pチャネル型MISFET5Pとnチャネル型MISFET6Nの接続部位となっている。
【0155】
次に、図24を用いてインバータ回路の動作を説明する。図24において、インバータ回路の入力(IN)に“H”(ハイレベル信号)が入力されると、pチャネル型MISFET5Pはオフしたままである一方、nチャネル型MISFET6Nがオンする。このため、インバータ回路の出力は、導通したnチャネル型MISFET6Nを介して基準電位VSSになる。したがって、インバータ回路の出力は“L”(ローレベル信号)となる。一方、インバータ回路の入力(IN)に“L”(ローレベル信号)が入力されると、nチャネル型MISFET6Nはオフしたままである一方、pチャネル型MISFET5Pがオンする。このため、インバータ回路の出力は、導通したpチャネル型MISFET5Pを介して電源電位VDDになる。したがって、インバータ回路の出力は“H”(ハイレベル信号)となる。このようにインバータ回路では、入力信号とは反対の出力信号が出力されることがわかる。
【0156】
続いて、インバータ回路のレイアウト構成について説明する。図25はインバータ回路のレイアウト構成例を示す平面図である。図25に示すように、半導体基板内には、アクティブ領域Ac5が形成されている。さらに、アクティブ領域Ac5とy方向に並ぶようにアクティブ領域Ac6が配置されている。そして、アクティブ領域Ac5上を通ってアクティブ領域Ac6上を横切るようにゲート電極Gがy方向へ一直線状に延在している。このゲート電極Gは、インバータ回路の入力(IN)となっている。
【0157】
アクティブ領域Ac5はpチャネル型MISFET5Pの形成領域となっている。さらに、アクティブ領域Ac6はnチャネル型MISFET6Nの形成領域となっている。ここで、アクティブ領域Ac5のうちゲート電極Gを挟む一対の領域にpチャネル型MISFET5Pのソース領域およびドレイン領域が形成されている。具体的に、ゲート電極Gの左側領域にドレイン領域が形成されており、ゲート電極Gの右側領域にソース領域が形成されている。さらに、アクティブ領域Ac6のうちゲート電極Gを挟む一対の領域にnチャネル型MISFET6Nのソース領域およびドレイン領域が形成されている。具体的に、ゲート電極Gの左側領域にソース領域が形成されており、ゲート電極Gの右側領域にドレイン領域が形成されている。
【0158】
pチャネル型MISFET5Pのドレイン領域はプラグを介してドレイン配線DL5で電気的に接続されており、このドレイン配線DL5は電源電位を供給する電源配線VDDLと電気的に接続されている。一方、pチャネル型MISFET5Pのソース領域はプラグを介してソース配線SL5で電気的に接続されており、このソース配線SL5の出力がインバータ回路の出力(OUT)となっている。
【0159】
続いて、nチャネル型MISFET6Nのドレイン領域はプラグを介してドレイン配線DL6に接続されており、このドレイン配線DL6は、インバータ回路の出力(OUT)となっているソース配線SL5と電気的に接続されている。一方、nチャネル型MISFET6Nのソース領域はプラグを介してソース配線SL6に接続されており、このソース配線SL6は、基準電位を供給する基準配線VSSLと電気的に接続されている。
【0160】
このように構成されているインバータ回路においては、図25に示すように、pチャネル型MISFET5Pのゲート電極Gと、nチャネル型MISFET6Nのゲート電極Gとが繋がっている。このため、インバータ回路を構成するpチャネル型MISFET5Pとnチャネル型MISFET6Nの両方のしきい値電圧を低下させるために、デュアルゲート構造を採用すると、前記実施の形態1および前記実施の形態2と同様に、デュアルゲート構造で、かつ、nチャネル型MISFETのゲート電極と、pチャネル型MISFETのゲート電極とが繋がっている構造が実現される。したがって、インバータ回路においても、前記実施の形態1で説明したリンの拡散や、前記実施の形態2で説明したボロンの拡散が問題となるため、インバータ回路の製造工程においては、前記実施の形態1や前記実施の形態2で説明した技術的思想が有用である。
【0161】
以上のように、本願発明の技術的思想は、SRAMだけでなく、インバータ回路にも有効に適用することができる。さらに、本願発明の技術的思想は、インバータ回路に限らず、ロジック回路全般に適用することができる。例えば、ロジック回路は、標準セル(スタンダードセル)を用いて構成される。この標準セルでは、電源配線と基準配線の間にp型ウェル(アクティブ領域)とn型ウェル(アクティブ領域)を配置し、このp型ウェル上からn型ウェル上に延在するようにゲート電極が形成されている。このとき、p型ウェル上に配置されたゲート電極がpチャネル型MISFETのゲート電極となり、n型ウェル上に配置されたゲート電極がnチャネル型MISFETのゲート電極となる。したがって、標準セルでは、pチャネル型MISFETのゲート電極とnチャネル型MISFETのゲート電極が繋がっている構造をしていることがわかる。そして、標準セルを構成するpチャネル型MISFETとnチャネル型MISFETの両方でしきい値を低下させるため、デュアルゲート構造をとる場合、標準セルにおいて、デュアルゲート構造で、かつ、nチャネル型MISFETのゲート電極と、pチャネル型MISFETのゲート電極とが繋がっている構造が実現される。このことから、標準セル全般に本願発明の技術的思想を適用することが有用である。具体的に、ロジック回路を構成するインバータ回路、NAND回路、NOR回路、EX−OR回路、フリップフロップ回路などに本願発明の技術的思想を適用することができる。
【0162】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明は、半導体装置を製造する製造業に幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0164】
1 CPU
1S 半導体基板
2 RAM
3 アナログ回路
4 EEPROM
5 フラッシュメモリ
5P pチャネル型MISFET
6 I/O回路
6N nチャネル型MISFET
Ac5 アクティブ領域
Ac6 アクティブ領域
An1 アクティブ領域
An2 アクティブ領域
Ap1 アクティブ領域
Ap2 アクティブ領域
AR アルゴン
CHP 半導体チップ
CS シリサイド膜
DL データ線
DL5 ドレイン配線
DL6 ドレイン配線
/DL データ線
EX1 浅いn型不純物拡散領域
EX2 浅いp型不純物拡散領域
FR1 レジスト膜
FR2 レジスト膜
FR3 レジスト膜
FR4 レジスト膜
FR5 レジスト膜
FR6 レジスト膜
FR7 レジスト膜
FR8 レジスト膜
FR9 レジスト膜
FR10 レジスト膜
G ゲート電極
GOX ゲート絶縁膜
GPLG1 ゲートプラグ
GPLG2 ゲートプラグ
G1 ゲート電極
G2 ゲート電極
G3 ゲート電極
G4 ゲート電極
G5 ゲート電極
G6 ゲート電極
IN 入力
INV1 CMOSインバータ
INV2 CMOSインバータ
MC メモリセル
NR1 深いn型不純物拡散領域
NTR nチャネル型MISFET形成領域
NWL n型ウェル
OUT 出力
PF1 ポリシリコン膜
PLG1 プラグ
PLG2 プラグ
PLG3 プラグ
PLG4 プラグ
PR1 深いp型不純物拡散領域
PTR pチャネル型MISFET形成領域
PWL p型ウェル
Qd1 駆動用MISFET
Qd2 駆動用MISFET
Qp1 負荷用MISFET
Qp2 負荷用MISFET
Qt1 転送用MISFET
Qt2 転送用MISFET
SPLG1 シェアードプラグ
SL5 ソース配線
SL6 ソース配線
STI 素子分離領域
SW サイドウォール
Ta 入力
Tb 出力
Vcc 電源電圧
VDD 電源電位
VDDL電源配線
VSS 基準電位
Vss 基準電圧
VSSL 基準配線
WL ワード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板のnチャネル型MISFET形成領域に形成されたnチャネル型MISFETと前記半導体基板のpチャネル型MISFET形成領域に形成されたpチャネル型MISFETとを有し、前記nチャネル型MISFETの第1ゲート電極と、前記pチャネル型MISFETの第2ゲート電極が繋がっている半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記ゲート絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、
(c)前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にp型不純物を導入する工程と、
(d)前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に元素を導入することにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜をアモルファス化する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にn型不純物を導入する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1導体膜に導入した前記p型不純物および前記n型不純物を活性化する熱処理を実施する工程と、
(g)前記(f)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に前記第1ゲート電極を形成し、前記pチャネル型MISFET形成領域に前記第2ゲート電極を形成する工程と、
(h)前記(g)工程後、前記半導体基板の前記nチャネル型MISFET形成領域に前記nチャネル型MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記半導体基板の前記pチャネル型MISFET形成領域に前記pチャネル型MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程で導入される前記n型不純物の導入量は、前記(c)工程で導入される前記p型不純物の導入量よりも多いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程で導入される前記元素は、アルゴン、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムのいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記p型不純物は、ボロンであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記n型不純物は、リンであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記nチャネル型MISFETは、SRAMのメモリセルを構成する駆動用MISFETであり、前記pチャネル型MISFETは、SRAMのメモリセルを構成する負荷用MISFETであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項1記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程は、前記pチャネル型MISFET形成領域を覆い、かつ、前記nチャネル型MISFET形成領域を露出するレジスト膜をマスクにして、前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に前記n型不純物を導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程は、前記pチャネル型MISFET形成領域から、前記pチャネル型MISFET形成領域と前記nチャネル型MISFET形成領域の境界を越えて、前記nチャネル型MISFET形成領域の一部領域までを覆うようにパターニングされた前記レジスト膜をマスクに使用することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
半導体基板のnチャネル型MISFET形成領域に形成されたnチャネル型MISFETと前記半導体基板のpチャネル型MISFET形成領域に形成されたpチャネル型MISFETとを有し、前記nチャネル型MISFETの第1ゲート電極と、前記pチャネル型MISFETの第2ゲート電極が繋がっている半導体装置の製造方法であって、
(a)前記半導体基板上にゲート絶縁膜を形成する工程と、
(b)前記ゲート絶縁膜上に第1導体膜を形成する工程と、
(c)前記nチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にn型不純物を導入する工程と、
(d)前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に元素を導入することにより、前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜をアモルファス化する工程と、
(e)前記(d)工程後、前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜にp型不純物を導入する工程と、
(f)前記(e)工程後、前記第1導体膜に導入した前記p型不純物および前記n型不純物を活性化する熱処理を実施する工程と、
(g)前記(f)工程後、前記第1導体膜をパターニングすることにより、前記nチャネル型MISFET形成領域に前記第1ゲート電極を形成し、前記pチャネル型MISFET形成領域に前記第2ゲート電極を形成する工程と、
(h)前記(g)工程後、前記半導体基板の前記nチャネル型MISFET形成領域に前記nチャネル型MISFETの第1ソース領域および第1ドレイン領域を形成し、前記半導体基板の前記pチャネル型MISFET形成領域に前記pチャネル型MISFETの第2ソース領域および第2ドレイン領域を形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程で導入される前記p型不純物の導入量は、前記(c)工程で導入される前記n型不純物の導入量よりも多いことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(d)工程で導入される前記元素は、アルゴン、窒素、炭素、シリコン、ゲルマニウムのいずれかであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項12】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記p型不純物は、ボロンであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記n型不純物は、リンであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項14】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記nチャネル型MISFETは、SRAMのメモリセルを構成する駆動用MISFETであり、前記pチャネル型MISFETは、SRAMのメモリセルを構成する負荷用MISFETであることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項15】
請求項9記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程は、前記nチャネル型MISFET形成領域を覆い、かつ、前記pチャネル型MISFET形成領域を露出するレジスト膜をマスクにして、前記pチャネル型MISFET形成領域に形成された前記第1導体膜に前記p型不純物を導入することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の半導体装置の製造方法であって、
前記(e)工程は、前記nチャネル型MISFET形成領域から、前記nチャネル型MISFET形成領域と前記pチャネル型MISFET形成領域の境界を越えて、前記pチャネル型MISFET形成領域の一部領域までを覆うようにパターニングされた前記レジスト膜をマスクに使用することを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2011−222745(P2011−222745A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90302(P2010−90302)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】