説明

半導体装置及びその製造方法

【課題】DRAMの微細化及び高集積化により、プロセス低温化が進み、400〜500℃熱処理による基板内の酸素ドナー化による電子発生量が多くなってきた。そのため、基板深くに形成されるウェル同士の分離耐圧が厳しくなり、デバイス劣化を引き起こしてしまう。
【解決手段】P型半導体基板11の表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有するNウェル層12の下方に、P型半導体基板11中に発生するキャリア電子濃度より高濃度のP型不純物を含有する空乏層拡大防止層17を有する半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DRAM等の半導体装置及びその製造方法に関し、特にN型ウェル構造を有する半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトリプルウェル構造を持つ半導体装置の代表例を図1に示す。通常約1E+15atom/cmの濃度のボロン、および約1E+18atom/cmの濃度の酸素を含有したCZ法にて作製されたP型のシリコン基板1上にN型の埋め込み層6を設け、さらにその上にP型のウェル(Pウェル3)を形成する3層構造になっている。N型の埋め込み層6は、溝型素子分離領域(STI)2より深いNウェル5とさらに深いDeep−Nウェル4の2層で構成されている。このトリプルウェル構造の特徴は、図1のNMOS(1)形成部がPウェル3で覆われ、さらにその周囲がNウェル5とDeep−Nウェル4で覆われており、P型基板1と独立してPウェル3が形成されている構造となっている。したがって、DRAMでは、メモリセル部のトランジスタをNMOS(1)形成部に形成すると、周辺回路部のNMOS(NMOS(2))とメモリセル部のNMOSとで異なった基板電位を取ることができるため、周辺回路部とメモリセル部とのトランジスタの電圧設計を独立して最適化することができる。さらに、メモリセル部のトランジスタが他の素子と電気的に絶縁されているために、他の素子からのノイズを遮断できる。例えば、周辺回路で発生したキャリアが、メモリセル部のトランジスタ領域に侵入できないので、メモリセル部のトランジスタに接続されているキャパシタに保持されているデータが破壊されない。図1において、7はゲート絶縁膜、8はゲート電極、9はソース・ドレインを示す。なお、このDeep−NウェルやNウェルは、表面より数ミクロン程度の基板の深いところまで高エネルギーイオン注入によりN型不純物を注入して形成される(例えば、図6参照)。
【0003】
DRAMのような高集積化デバイスでは、図1中に示してあるN型埋め込み層6とP基板1間や各N型埋め込み層6間同士の電気的な絶縁性(分離耐圧)がデバイス性能上重要となる。図2には、代表的なDRAMセルトランジスタ部の断面図が示してある。セルトランジスタ以外の周辺回路部は、一般的なCMOSプロセスが使用される。ここでは、本発明に関係するウェル構造について図2に示すDRAMセルトランジスタ構造を用いて説明する。まず、P型半導体基板21としてP型シリコンウェハが用意される。活性領域は、絶縁膜が埋め込まれた溝型素子分離領域(STI)22に囲まれており、少なくとも基板電位が与えられるp型ウェル層23とトランジスタのしきい値電圧を決定するp型チャネルドープ層が形成されている。ここで、溝型素子分離22および全セルトランジスタを覆うようにp型ウェル層23の下部には、n型埋め込みウェル層24(Deep−Nウェル)が形成されている。なお、図に記載はないが、このDeep−Nウェル24の形成される領域内には、セルトランジスタ以外にもセルトランジスタのデータをセンスする回路が搭載される。また、DRAMビット線25に接続されたプラグ26の両側に2つのゲート電極27が形成されており、ゲート電極27とp型チャネルドープ層の間にはゲート絶縁膜28が形成され、また、ゲート電極27とプラグ26の間にはサイドスペーサ29が形成されている。ゲート電極27が形成されていない活性領域には、ソース・ドレインとなるn型不純物拡散層(LDD30,高濃度拡散層31)が形成されている。n型不純物拡散層30,31は、ビット線25に接続されたプラグ26の他に、キャパシタに接続されているプラグ32に接している。プラグ間には、層間絶縁膜33が形成されている。プラグ26,32とビット線25との間には層間絶縁膜34が、さらに、ビット線25とキャパシタ35との間には層間絶縁膜36が形成されている。キャパシタ35の上には、層間絶縁膜39を挟んで配線層として第1Al膜37と第2Al膜38が形成される。なお、Al膜の間には、層間絶縁膜40が形成されている。上層の第2Al膜の上には、カバー膜としてプラズマ酸化膜41が形成される。その後、トランジスタMOSのゲート酸化膜界面やSTI界面の界面準位を水素終端するために水素アロイが行われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記に記載されたDRAM半導体装置には、いくつかの問題がある。通常CZ基板には格子間酸素が約1E+18atom/cm程度含まれている。その格子間酸素は、通常のDRAM熱処理温度で固溶できる濃度以上の過剰な濃度であるために、熱処理により酸素集合体(酸素ドナー)や酸素析出核(SiOx)を形成する。400℃〜500℃程度の長時間の熱処理では、格子間酸素が集合してドナー不純物として作用することが知られており、例えばボロンドープのP型シリコンウェハ中の酸素が集合して酸素ドナー化すると基板抵抗が高抵抗化してしまい、ボロンドープ量に比べ酸素ドナー化により発生するキャリア電子量が多くなってしまうとN型へと反転してしまう。これは、低消費電力用の高集積化DRAMでは、トランジスタの微細化によって、高温熱処理による過度の熱負荷を避けるため、酸素ドナーが発生する低温熱処理(400〜500℃)の合計処理時間が多くなってきているためにより深刻化する。図3(a)には、酸素ドナー発生による基板51内部の高抵抗化によりウェル耐圧が劣化する様子を示してある。Pウェル層53領域より深い部分は、ボロン濃度が少ないために高抵抗化するため、空乏層55が拡大し、隣接するNウェル(Deep−Nウェル52とNウェル54)間で接続されてリーク電流(矢印)が流れてしまう。また、図3(b)に示すように高温処理で発生する酸素析出核56は、PN接合の空乏層55中に存在すると生成再結合中心として作用するため、異常リーク電流を発生してしまい、デバイス特性劣化を招く。すなわち、基板内に深く形成する必要があるNウェル/P基板によるPN接合では、酸素析出核が空乏層に含まれる可能性が高くなる。リーク電流増加になると、消費電力増加を招き、最悪は、隣接するNウェル間の耐圧が低下してしまい、デバイス動作不良を起こすという問題が生じる。したがって、ウェル間リークによりデバイス不良を起こさないためには、(1)ウェル下方領域において酸素濃度に依存して発生する酸素ドナー量の制御(およびボロン分布制御)、(2)最表面の酸素析出核の深さ制御が必要となる。図4は、実際にDRAMを作製した場合の隣接するNウェル間の耐圧が酸素ドナー発生量を左右する低温熱処理条件およびNウェル直下の酸素濃度条件よって変化した結果である。なおこのNウェル直下のボロン濃度は、約1E+15atom/cmである。この結果から分かるように、Nウェル直下の酸素濃度が高いほど、450℃の熱処理時間が長いほどNウェル耐圧は低下する。なお、本実験の最も浅い酸素析出核深さは、基板表面より4〜5μmとなっている。
【0005】
以上のように基板表面近傍のデバイス活性領域の酸素濃度分布は、デバイス特性に悪影響を及ぼすため、CZ基板表面に無欠陥層としてエピタキシャルシリコン層(以下、エピ層という場合がある)を厚く設ける方法がある。しかしながら、3μm以上にエピ層を厚くすると、ウェハエッジ裏面側へエピ層が厚く回りこんで形成されるために、ウェハ周辺の平坦度が悪化する問題がある。ウェハ周辺の平坦度の悪化は、現在の微細化デバイス製造時のパターン露光に際して面内露光量の均一性を厳しくし、ウェハ周辺での良品取得率が低下するという問題がある。したがって、3μm以下のエピ層で上記問題を解決する必要が出てきた。また、エピ層が厚くなるにつれウェハコストも上昇する。一方、エピ層なし又は薄いエピ層で基板内酸素濃度を低くして、酸素ドナーや酸素析出核の発生量を減らす試みもあるが、基板内部の酸素析出核は、デバイス製造工程で混入する重金属汚染物を捕獲する、いわゆるゲッタリング効果をもたらすことから、基板内部には、ある程度の酸素析出核が必要である。また、CZ基板には、酸素ドナーや酸素析出核のほかに、ウェハ引き上げ条件によって発生量が変化するCOP(Crystal Originated Particle)や積層欠陥が存在するため、エピ層なしでCZ基板を使用すると上記欠陥によるデバイス歩留まり低下を引き起こすという問題も解決しなければならない。
【0006】
本発明の目的は、ウェル間分離耐圧低下による歩留まり低下を起こさないための、ウェル形成領域およびその下方領域に最適化されたP型不純物および酸素濃度分布を有する半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、
P型半導体基板の表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有するNウェル層の下方に、P型半導体基板中に発生するキャリア電子濃度より高濃度のP型不純物を含有する空乏層拡大防止層を有する半導体装置が提供される。
【0008】
特に、前記空乏層拡大防止層中のP型不純物濃度が2E+15〜1E+17atom/cmの範囲であり、また、前記Nウェル層のP型半導体基板の表面から1μm以上4μm以下の範囲に、図7に示す斜線部の範囲であって、前記ピーク濃度より低いN型不純物濃度を有する。
【0009】
また、本発明の別の実施形態によれば、P型半導体基板を準備する工程、P型半導体基板にN型不純物を注入して基板の表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有するNウェル層を形成する工程、とを有し、前記Nウェル層の下方に、製造過程でP型半導体基板中に発生するキャリア電子濃度よりも高濃度のP型不純物を含有する空乏層拡大防止層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法、が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、DRAMのウェル間リーク電流が抑制できるため高歩留まりで、低消費電力、かつ、高信頼性のDRAMが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】トリプルウェル構造を説明する断面模式図である。
【図2】DRAM断面構造(セルトランジスタ部)を示す概略断面図である。
【図3】ウェル耐圧劣化メカニズムを説明する模式図であり、(a)はNウェル間のリークについて、(b)は酸素析出核による異常リークを説明する図である。
【図4】酸素濃度と熱処理により影響を受けるウェル間耐圧の関係を示す図である。
【図5】本発明に係る半導体装置の効果を説明する模式図である。
【図6】Deep−NウェルとNウェルにおけるN型不純物の分布の一例を示す図である。
【図7】本発明によるNウェル形成のための、ピーク濃度よりも深い領域のN型不純物分布領域を示す図である。
【図8】本発明に係る酸素濃度分布領域の一例を示す図である。
【図9】本発明に係るP型不純物分布領域の一例を示す図である。
【図10】本発明による製造プロセスにより発生する電子濃度分布領域の一例を示す図である。
【図11】第1の実施形態であるDRAMのセルトランジスタ製法を示す工程断面図である。
【図12】第1の実施形態であるDRAMのセルトランジスタ製法を示す工程断面図である。
【図13】第1の実施形態であるDRAMのセルトランジスタ製法を示す工程断面図である。
【図14】第1の実施形態であるDRAMのセルトランジスタ製法を示す工程断面図である。
【図15】第1の実施形態であるDRAMのセルトランジスタ製法を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、本発明に係る半導体装置の構成について説明する。ここでは、先に示した図3に対して、本発明に係る半導体装置の効果について図5を参照して説明する。
【0013】
まず、図5は、前記図3(b)に対応して酸素析出核16を積極的に形成した場合を示すが、これに限定されるものではない。図5(a)では、図3(b)と同様に、P型半導体基板11には、Deep−Nウェル12、Pウェル13、Nウェル14が形成されており、本発明ではNウェル(Deep−Nウェル12)下に空乏層拡大防止層17を設けている点で異なる。Nウェル下に空乏層拡大防止層17を設けたことにより空乏層15は空乏層拡大防止層17を超えて基板11中に拡大することが抑制され、図3(a)に示したようなNウェル同士のリーク電流が発生するという問題は防止される。さらに、基板中に形成されるゲッタリングサイトとなる酸素析出核16まで空乏層15が拡大することも抑制される。また、空乏層拡大防止層17は図5(a)に示すように基板面に平行な領域に連続して形成される必要はなく、図5(b)に示すように、空乏層15の拡大が抑制される領域に不連続に形成しても良い。
【0014】
なお、空乏層拡大防止層17は、明確な界面を有する層ではなく、機能的に空乏層の拡大を防止できる領域を意味する。
【0015】
空乏層拡大防止層17は、基板中の酸素のドナー化により発生したキャリア電子濃度よりも高濃度のP型不純物を有していれば良く、そのためには、Nウェル下にP型不純物を注入したり、予めP型不純物濃度の高い基板を使用したり、あるいは比較的酸素濃度の低い基板を用いる場合には、ドナー化により発生したキャリア電子を消失させるなどの方法が挙げられる。図5(b)に示すような不連続の空乏層拡大防止層17は、主にP型不純物の注入により形成される。
【0016】
また、上記例では、Deep−Nウェル12を有する場合について説明したが、これに限定されず、Nウェル14のみの場合にも適用できる。また、本発明では、後述する実施例に示すように、Nウェル中にPウェルが形成されたトリプルウェル構造への適用も好ましい。これらのNウェルは図6に示すように基板表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有する。図7に示すように、N型不純物はピーク濃度を有する領域よりも深い領域に分布させることができる。図7では、深さ1μm〜4μmの範囲の領域を示しているが、本発明はこの領域に限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0018】
〔実施例1〕
まず、ボロン濃度約1E+15atom/cmかつ酸素濃度が約8E+17〜13E+17atom/cmのCZ基板表面に、エピタキシャルシリコン層を厚さ1〜3μmに成長させたP型シリコンウェハ101を作製した。図8の斜線部に示す酸素濃度分布になるようにシリコンエピタキシャル成長に伴ってCZ基板内の酸素をエピタキシャル層に拡散させた。ここで図8の分布になるように酸素拡散用の追加熱処理を実施してもかまわない。その後、熱酸化膜102として850℃で5nmを形成し、その上にシリコン窒化膜103を熱CVD法により750℃で40nm形成する。この膜堆積工程において酸素析出核が基板表面より深さ約4−5μmくらいより深い領域に発生する。この酸素析出核の熱処理工程を追加熱処理で行っても良く、その場合は、850℃、約3時間の熱処理と750℃、約5時間の熱処理程度で良い。その形成された酸素析出核が、それ以降のデバイス形成熱処理により大きく成長する。熱酸化膜102と窒化膜103の積層膜上に、ホトレジスト(不図示)を塗布し、一般的に知られているホトリソグラフイ技術により溝型素子分離(STI)領域104を開口するレジストパターンを形成する。その後、レジストパターンをマスクにドライエッチングにより、熱酸化膜102と窒化膜103の積層膜と下地シリコンをエッチングする(図11)。
【0019】
続いて、露出するSTI領域104のシリコンを熱酸化して約5nm程度の熱酸化膜を形成した後、CVD酸化膜で埋め込み、CMPで平坦化することで素子分離絶縁膜106を形成する(図12)。
【0020】
マスクであった窒化膜103を除去後、Deep−Nウェル注入としてリン注入を、注入エネルギー 1000kV、ドーズ量3.0E+13atom/cm、注入角度7度で実施して、埋め込みN層107を形成する。ここで、Deep−Nウェル直下に空乏層拡大防止層108としてボロン注入を実施した。ボロン注入量は、1000kV、ドーズ量1E+12atom/cm注入した。その後Pウェル層109を形成するためにボロン注入を3回に分けて実施しているが、まず300keVで1E+13atom/cm、150keVで5E+12atom/cm、50keVで1E+12atom/cmのボロン注入を実施し、1000℃、5分の熱処理を実施した(図13)。
【0021】
その後、図14に示すように、上記Pウェル層形成のボロン注入の際に基板表面を覆っていた熱酸化膜102を除去したのち、熱酸化法により膜厚が5nmのゲート酸化膜110を形成し、さらに、ゲート電極114となる材料を堆積・加工する。ゲート電極材料は、下部には膜厚が50nmの高濃度にリンドープされた多結晶シリコン膜111で、上部には膜厚が70nmのタングステン窒化膜とタングステン膜の積層(WN/W膜112)で構成されている。なお、タングステン膜上には、膜厚が150nmのシリコン窒化膜113が形成されている。
【0022】
その後、図15に示すように、ゲート電極114となる多結晶シリコン膜111およびWN/W膜112の側面を保護するためにシリコン窒化膜115を5nm形成した。その後ソース・ドレインとなるn型低濃度拡散層116を形成するためにリン注入を実施した。リン注入条件は、10keVで1E+13atom/cmとした。その後、1000℃、10秒の熱処理を実施した。
【0023】
サイドウォール118として膜厚が10nmのシリコン窒化膜を形成し、第1層間絶縁膜119として300nmのシリコン酸化膜を堆積した。その後、通常の平坦化法を用いて、第1層間絶縁膜119を平坦化したのち、第1層間絶縁膜119およびサイドウォール118を順次エッチングして、プラグ形成用の穴を加工した。或いは、サイドウォール118をマスクとして、自己整合的にプラグ形成用の穴を形成しても良い。ここで、電界緩和用のリン注入および拡散層抵抗低減用のヒ素注入を実施して、高濃度拡散層117を形成した。まずリン注入は30keVで1E+13atom/cmとし、次のヒ素注入は20keVで1E+13atom/cmとした。さらに、プラグ形成用の穴に高濃度のリン導入された多結晶シリコンプラグ120を埋め込んだ。その後、膜厚が100nmのシリコン酸化膜を堆積したのち、コンタクト→シリンダ形成→2層のAl配線工程となる。その後、界面準位終端するための水素アロイを450℃2時間実施した。その結果、図2に示すようなDRAMセル構造を作製した。以上のDRAM製造プロセスには、詳細は割愛するが、不純物活性化熱処理やCVD法による成膜処理等により700℃から1000℃程度の熱処理が施されるため、プロセスを経るにつれ酸素析出核が成長する。また、400℃〜500℃の熱処理としては、DRAMプロセスには、プラズマCVDによる成膜や水素アロイ処理などがあり、プロセスを経るにつれ、酸素ドナーが発生し、キャリア電子が図10のように発生するが、空乏層拡大防止層によりデバイス劣化は発生しない。
【0024】
デバイスプロセス中や組み立て工程中の熱処理時に混入される重金属汚染をゲッタリングするためには酸素析出が必要であり、図8に示すようにデバイス作製領域より深い基板深さ約4〜5μm以上では、酸素濃度が7E+17〜13E+17atom/cmが望ましく、デバイスプロセス中の700℃から900℃の熱処理工程で酸素析出核を発生させる。そして、デバイス作製領域では酸素濃度が低くなるように制御し、基板表面での酸素析出核の発生を抑制する。また酸素ドナー発生による発生電子濃度分布は、DRAM製造中の400−500℃の熱処理により図10に示すようになる。ここで、この発生した電子濃度により高抵抗化し、Nウェル層下部に伸びる空乏層に酸素析出核が含まれないようにするために、空乏層拡大防止層を設ける。この防止層には、発生する電子濃度以上のボロンを例えば2E+15〜1E+17atom/cmの濃度で含有させる。ここで、図3(a)に示すようなNウェル間の空乏層接触を防止するためには、ボロン量はより高濃度の方が良いが、あまり高濃度にすると接合電界が強くなり真性接合耐圧が低下するので、3E+15〜8E+15atom/cmの濃度を含有させるのが望ましい。
【0025】
〔実施例2〕
まず、ボロン濃度約3E+15〜8E+15atom/cmかつ酸素濃度が約8E+17〜13E+17atom/cmのCZ基板表面に、ボロン濃度1E+15atom/cmのエピ層を1〜3μm厚さで成膜したシリコンウェハを製造し、このウェハ表面に前記実施例1のDRAMプロセスにてDRAMを製造した。図9は、本実施例によるP型不純物(ボロン)の分布領域を示す図である。実施例1では、Deep−Nウェル直下に空乏層拡大防止層を形成するためにボロン注入を実施したが、本実施例では、この高エネルギー注入工程は必要ないため、DRAM製造コストが安くなる。また、CZ基板のボロン濃度は2E+15〜3E+15atom/cmまたは9E+15〜1E+17atom/cmでもデバイス特性上問題ないが、ウェル耐圧はわずかに低下するので、上記の範囲が望ましい。さらにエピ層のボロン濃度は1E+15atom/cm以下でもかまわない。
【0026】
〔実施例3〕
まず、ボロン濃度約1E+15atom/cmかつ酸素濃度が9E+17atom/cm以下のCZ基板表面に、前記実施例1のDRAMプロセスにてDRAMを製造した。この際、前記実施例1で実施した空乏層拡大防止層形成用のボロン注入工程は実施しない。ただし、DRAMデバイス製造終了直前に600℃〜700℃の熱処理を追加する。この熱処理によれば、400℃〜500℃の熱処理で発生していた酸素ドナーが消失し、見かけ上、Nウェル直下の半導体基板中のボロン濃度が高くなり、空乏層拡大を防止する。つまり、Nウェル直下の半導体基板は、キャリア電子濃度よりもボロン濃度が高い空乏層拡大防止層となる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、消費電力を抑制でき、また、製造歩留まり低下がないため、低コストで高集積DRAM装置の製造が可能であるので、PCサーバー用や携帯端末に使用されるDRAM用として利用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 P型半導体基板
2 溝型素子分離領域
3 Pウェル
4 Deep−Nウェル
5 Nウェル
6 N型の埋め込み層
7 ゲート絶縁膜
8 ゲート電極
9 ソース・ドレイン
11 P型半導体基板
12 Deep−Nウェル
13 Pウェル
14 Nウェル
15 空乏層
16 酸素析出核
17 空乏層拡大防止層
101 P型半導体基板
102 熱酸化膜
103 窒化膜
104 STI領域
105 活性層領域
106 素子分離絶縁膜
107 埋め込みN層
108 空乏層拡大防止層
109 Pウェル層
110 ゲート酸化膜
111 多結晶シリコン膜
112 WN/W膜
113 シリコン窒化膜
114 ゲート電極
115 シリコン窒化膜
116 n型低濃度拡散層
117 n型高濃度拡散層
118 サイドウォール
119 第1層間絶縁膜
120 多結晶シリコンプラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
P型半導体基板の表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有するNウェル層の下方に、P型半導体基板中に発生するキャリア電子濃度より高濃度のP型不純物を含有する空乏層拡大防止層を有する半導体装置。
【請求項2】
前記空乏層拡大防止層中のP型不純物濃度が2E+15〜1E+17atom/cmの範囲である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記Nウェル層のP型半導体基板の表面から1μm以上4μm以下の範囲に、図7に示す斜線部の範囲であって、前記ピーク濃度より低いN型不純物濃度を有する1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記P型半導体基板中であって、前記Nウェル層から前記空乏層拡大防止層により隔離された領域に、基板中に含まれる酸素に基づく酸素析出核をゲッタリングサイトとして有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記半導体基板は、前記Nウェル層内にPウェル層を有するトリプルウェル構造である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記トリプルウェル構造のPウェル層にメモリセルが形成された請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記メモリセルは、前記Pウェル層に形成されたNMOSトランジスタと該トランジスタに電気的に接続されたキャパシタを有する請求項6に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記P型半導体基板は、CZ基板上にエピタキシャルシリコン層を形成したシリコンウェハである請求項1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記空乏層拡大防止層が前記エピタキシャルシリコン層中に形成される無欠陥層を含む請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記キャリア電子濃度は、基板中の酸素が半導体製造装置の製造過程でドナー化して生成されるキャリア電子の濃度である請求項1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記P型半導体基板は、P型不純物濃度が1E+15atom/cmかつ酸素濃度が9E+17atom/cm以下のCZ基板であり、製造の最終段階でP型半導体基板中に発生するキャリア電子を消失させた請求項1に記載の半導体装置。
【請求項12】
P型半導体基板を準備する工程、
P型半導体基板にN型不純物を注入して基板の表面から0.2〜1μmの範囲の深さに2E+17atom/cm以上のピーク濃度を有するNウェル層を形成する工程、
とを有し、前記Nウェル層の下方に、製造過程でP型半導体基板中に発生するキャリア電子濃度よりも高濃度のP型不純物を含有する空乏層拡大防止層を形成することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記空乏層拡大防止層は、P型不純物濃度が2E+15〜1E+17atom/cmの範囲となるように形成する請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記P型半導体基板を準備する工程は、CZ基板表面に、エピタキシャルシリコン層を厚さ1〜3μmに成長させる工程を含む請求項12又は13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記P型半導体基板を準備する工程は、前記CZ基板中に含まれる酸素を前記エピタキシャルシリコン層中に拡散させ、前記CZ基板と前記エピタキシャルシリコン層の界面近傍から前記P型半導体基板の表面に向かって酸素濃度が減少するプロファイルを形成する工程を含む請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
P型不純物濃度が1E+15atom/cmかつ酸素濃度が8E+17〜13E+17atom/cmのCZ基板を用い、前記Nウェル形成後に、Nウェルよりも深い領域にP型不純物注入を行うことで前記空乏層拡大防止層を形成する請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項17】
P型不純物濃度が3E+15〜8E+15atom/cmかつ酸素濃度が8E+17〜13E+17atom/cmのCZ基板を用い、P型不純物濃度が1E+15atom/cm以下のエピタキシャルシリコン層を形成することで前記空乏層拡大防止層を形成する請求項14又は15に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
前記P型半導体基板を準備する工程は、P型不純物濃度が1E+15atom/cmかつ酸素濃度が9E+17atom/cm以下のCZ基板を準備する工程であり、半導体装置製造の最終段階に600℃〜700℃の熱処理工程を実施することで前記空乏層拡大防止層を形成する請求項12に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項19】
製造工程中に400〜500℃の酸素ドナーの発生する熱処理工程を含む請求項12乃至18のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項20】
製造工程中に、前記P型半導体基板中の酸素を酸素析出核として析出させる700〜900℃の熱処理工程を含む請求項12乃至19のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項21】
前記Nウェル層中にPウェル層形成工程をさらに有する請求項12乃至20のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項22】
前記Pウェル層にメモリセル用のNMOSトランジスタを形成する形成と、該NMOSトランジスタに電気的に接続されるキャパシタを形成する工程をさらに有する請求項21に記載の半導体装置の製造方法。

【図15】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−151458(P2012−151458A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280087(P2011−280087)
【出願日】平成23年12月21日(2011.12.21)
【出願人】(500174247)エルピーダメモリ株式会社 (2,599)
【Fターム(参考)】