説明

半導体装置及び半導体装置の製造方法

【課題】エッチング量を少なくしても素子分離膜の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残ることを抑制できるようにする。
【解決手段】素子分離膜102はSTI構造を有しており、基板101に埋め込まれており、かつトランジスタが形成される素子形成領域を分離している。素子分離膜102の側面の上端は、トランジスタのチャネル形成層よりも上に位置しており、かつチャネル形成層の表面から素子分離膜102の側面の最上部までの高さhが35nm以下である。また素子分離膜102のうちチャネル形成層よりも上に位置している部分の側面は、基板の表面に対する角度θが80度以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子分離膜を有する半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゲート絶縁膜の薄膜化にSiO2やSiONでは対応できなくなり、High−k(ゲート絶縁膜)/メタル電極構造が使われるようになりつつある。ゲート絶縁膜にはHfやZr、La、Alなど、メタル電極にはTiやTa、Wなどを含む。これらは通常、金属汚染元素として扱われており、不必要な場所に導入されると歩留まり低下を招く。従って、ゲート加工直後には次工程以降に使用するプロセス装置への汚染や製造ラインへの飛散を避けるため、ゲート以外の領域の汚染元素を完全に除去する必要がある。更に、残ったメタルが後工程で除去されることで空孔などを形成しやすくなり、特性劣化を招くことも考えられる。このため、ゲート加工工程以降の金属汚染に対する管理が非常に重要である。
【0003】
なお、特許文献1には、メモリー部とロジック部のパターンの粗密差によって生じるSTI(Shallow Trench Isolation)構造の素子分離膜の突き出し量の違いにより、ゲート形成リソグラフィー時のフォーカスマージンを狭くすること、及びこれを解決するために、メモリー領域で実施するチャネル注入工程で素子分離膜の高さ調整のためのウェットエッチングを行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−032700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゲート電極の側面は垂直であることが求められる場合が多い。この場合、ドライエッチングプロセスでゲート電極の側面を垂直に加工したあとに、ゲート電極膜の残渣や汚染をエッチングにより除去することになる。しかしながら、このエッチング工程において、ゲート電極のエッジ近傍に位置するゲート絶縁膜やゲート電極も溶解するため、エッチング量はなるべく少なくする必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、基板と、
前記基板に埋め込まれ、素子形成領域を分離している素子分離膜と、
前記素子形成領域に形成されたトランジスタと、
を備え、
前記素子分離膜の側面の上端は、前記トランジスタのチャネル形成層よりも上に位置しており、かつ前記チャネル形成層の表面からの高さが35nm以下であり、
前記素子分離膜の側面は、前記基板の表面に対する角度が80度以下である半導体装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、素子分離膜の側面の上端は、トランジスタのチャネル形成層よりも上に位置しており、かつチャネル形成層の表面からの高さが35nm以下である。また素子分離膜の側面は、基板の表面に対する角度が80度以下である。このようにすることにより、エッチング量を少なくしても素子分離膜の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残ることを抑制できる。
【0008】
本発明によれば、基板に素子分離膜を埋め込み、素子形成領域を分離する工程と、
前記素子形成領域上及び前記素子分離膜上にゲート電極膜を形成し、前記ゲート電極膜を選択的に除去することにより、前記素子形成領域にトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
を備え、
前記素子分離膜を前記基板に埋め込む工程において、前記素子分離膜の側面の上端を前記基板よりも上にさせ、前記トランジスタのチャネル形成層の表面から前記上端までの高さを35nm以下にして、かつ前記素子分離膜の側面を、前記基板の表面に対する角度が80度以下となるようにする半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エッチング量を少なくしても素子分離膜の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1(a)】実施形態に係る半導体装置が有する素子分離膜102の形状を説明するための断面図である。
【図1(b)】素子分離膜の断面形状に対して、図1(a)に示した定義で角度θがどのようになるかを模式的に示したものである。
【図1(c)】素子分離膜の側面にゲート電極の残渣が非常に残りやすい逆テーパー形状の場合を模式的に示したものである。
【図2】図1(a)を用いた定義を使って、素子分離膜の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残らないことが確認できた範囲を示す図である。
【図3(a)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(b)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(c)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(d)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(e)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(f)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(g)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(h)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図3(i)】実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図4(a)】実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図4(b)】実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図4(c)】実施例2に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(a)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(b)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(c)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(d)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(e)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(f)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図5(g)】実施例3に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である
【図6】比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【図7】比較例に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0012】
図1(a)は、実施形態に係る半導体装置が有する素子分離膜102の形状を説明するための断面図である。実施形態に係る半導体装置は、基板101、素子分離膜102、及びFET(Field Effect Transistor)(本図では図示せず)を備えている。基板101は、例えばSi基板である。素子分離膜102はSTI構造を有しており、基板101に埋め込まれており、かつトランジスタが形成される素子形成領域を分離している。本発明では、素子分離膜102の高さを、トランジスタのチャネル形成層表面から測った素子分離膜102の最上部の高さhと規定する。ここでいうチャネル形成層表面とは、加工などによって生ずる局所的な凹凸は対象外として、グローバルな水平面(プロセスを行う前の基板101と平行)である。基板101に埋め込まれずに突き出ている素子分離膜102の表面の各点に対して、接線と水平面のなす角度θ(0〜90度の範囲:後述)とすると、素子分離膜102の側面に生ずるθのもっとも大きな値(90度に最も近い値)がゲート電極膜などの残渣の生じやすさに影響する。ここで、接線と水平面のなす角度θは2つ(0〜90度の範囲にあるものと、90〜180度の範囲にあるもの)あるが、角度θとしては図1(a)に示すように、その内の小さい方と定義する(0≦θ≦90度)。STI側面の傾きは、通常、上端近くが最も大きく、STI中央の最上部に向けてラウンド形状となる。
【0013】
図1(b)は、素子分離膜102の断面形状に対して、図1(a)に示した定義で角度θがどのようになるかを模式的に示したものである。角度θが小さければ、ゲート電極膜の残渣は残りにくい。
【0014】
図1(c)は、素子分離膜102の側面にゲート電極の残渣が非常に残りやすい逆テーパー形状の場合を模式的に示したものである。図1(a)の定義では、逆テーパー部分の角度が比較的大きくなる部分がある。しかしこのような形状の場合、STI側面の傾きが必ず90度になるところが現れるので、図1(c)に示した形状の場合、上記した角度θは素子分離膜102の側面の中で必ず90度のところが現れる。このため、素子分離膜102の側面に生ずる角度θの最大の値を用いることにより、コンタミネーションの残りやすさを的確に定義できている。
【0015】
図2は、図1を用いた定義を使って、素子分離膜102の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残らないことが確認できた範囲を示している。後述する作用及び効果の説明から明らかなように、この数値範囲はHigh−kゲート絶縁膜を形成する直前の値である。しかしながら、現実には、High−kゲート絶縁膜およびメタル電極を形成した後に、STI表面を削ることはほとんど無いので、概ね、半導体装置ができあがった状態の値になる。この範囲は、基板101の表面に溝を形成して、形成直後の素子分離膜102の高さhが50nmである場合の結果であるが、その値が変わっても、図2に示した範囲に大きな影響は無い。後述するようなプロセスフローにおいて、素子分離膜102の高さが35nm以下(図2の201で示す)で、かつ素子分離膜102の側面の角度θの最大値が80度以下(図2の202で示す)では、エッチング量を少なくしても素子分離膜102の周辺にHigh−kゲート絶縁膜材料やゲート電極材料が残ることはなかった。
【0016】
次に、実施例に係る半導体装置について説明するが、その前に、比較例としての半導体装置を、図6,7に示す。図6に示す例では、Si基板601上に素子分離膜602が形成され、Si基板601表面にはHV(高耐圧)領域613、MV(中耐圧)領域623、LV(低耐圧)領域633があり、それぞれの領域にpFET611,621,631とnFET612,622,632が形成されている。pFET611,621,631が形成される領域にはSi基板601と異なる半導体膜603が形成され、それぞれの領域には材料や膜厚の異なるゲート絶縁膜604,605,606が形成されている。ゲート絶縁膜604,605,606上にはゲート電極607が形成されている。このような構造、即ち複数のゲート電極構造(以下、マルチゲートと呼ぶ)やSi基板上のpFET形成領域あるいはnFET形成領域にSiとは異なる半導体膜が形成された構造を用いる場合、作り分け工程を必要とし、その際に各領域で素子分離膜602に高さ差が生じやすくなる(図7)。図6の例では、pFET形成領域の表面にSiGe膜を形成し、HV領域のゲート絶縁膜形成、MV領域のゲート絶縁膜形成、LV領域にゲート絶縁膜形成、という順で形成しているが、その結果、ウエハ面内で最も高さが高い素子分離膜602はHV(高耐圧)のnFET形成領域(図7に614で示している)であり、最も高さが低いSTIはLV(低耐圧)のpFET形成領域(図7に634で示している)である。素子分離膜602の高さが高い領域では、素子分離膜602の側面にメタルなどのコンタミネーション608が残りやすく、素子分離膜602の高さが低くなって素子分離膜602中央部に窪みができるような極端なケースではやはりメタルなどのコンタミネーションが残りやすい。
【0017】
(実施例1)
図3(a)〜図3(i)は、実施例1に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。まず図3(a)に示すように、基板101に素子分離用の溝を形成し、この溝及び基板101上に絶縁膜を形成する。次いで、基板101の表面上に位置する絶縁膜を、例えばCMP法により除去する。これにより、素子分離膜102が形成される。素子分離膜102は、HV(高耐圧FET)形成領域313、MV(中耐圧FET)形成領域323、及びLV(低耐圧FET)形成領域333を分離している。HV形成領域313は、さらにpFET形成領域311及びnFET形成領域312に分離されており、MV形成領域323は、さらにpFET形成領域321及びnFET形成領域322に分離されており、LV形成領域333は、さらにpFET形成領域331及びnFET形成領域332に分離されている。この状態では、pFET形成領域であるかnFET形成領域であるかにかかわらず。素子分離膜102の高さhの差はほとんどない。なお素子分離膜102の幅は、例えば70nm以下であるが、これに限定されない。
【0018】
次いで図3(b)に示すように、基板101上に酸化シリコン膜303を選択的に形成する。酸化シリコン膜303の厚さは、例えば5nmである。次いで、nFET形成領域312,322,332に位置する酸化シリコン膜303上に、レジスト膜304を形成する。
【0019】
次いで図3(c)に示すように、レジスト膜304をマスクとして酸化シリコン膜303をエッチングする。ここで用いられるエッチング液は、例えばフッ酸、好ましくは希釈フッ酸(HF:H2O=1:200)を用いる。このエッチングでは、ある程度のオーバーエッチを行う(例えばSiO2膜を7nm、すなわち対象の酸化シリコン膜303の厚さに対して40%オーバーする程度)。これにより、nFET形成領域312,322,332に選択的に酸化シリコン膜303が形成され、かつpFET形成領域311,321,331は基板101が露出した状態になる。
【0020】
この処理において、pFET形成領域311,321,331の周囲に位置する素子分離膜102はフッ酸によりエッチングされ、その他の領域、例えばnFET形成領域312,322,332の周囲に位置する素子分離膜102と比較して低くなる。
【0021】
その後、レジスト膜304を除去する。次いで、pFET形成領域311,321,331に位置する基板101上に、半導体層305を選択的に形成する。半導体層305は、例えばSiGe層であるが、Ge膜であってもよい。半導体層305の厚さは、例えば10nmである。半導体層305は、pFETの移動度を上げるために形成される。
【0022】
次いで図3(d)に示すように、pFET形成領域311,321,331及びその周囲に位置する素子分離膜102を、レジスト膜306で覆う。
【0023】
次いで図3(e)に示すように、レジスト膜306で覆われていない領域の表面(nFET形成領域312,322,332上の酸化シリコン膜303および素子分離膜102)をフッ酸処理する。これにより、図3(c)を用いて説明した工程で生じた素子分離膜102の高さの差をなくすことができる。このエッチングでは、図3(c)の場合と同様に、ある程度のオーバーエッチを行う(例えばSiO2膜を7nm、すなわち対象の酸化シリコン膜303の厚さに対して40%オーバーする程度)。
【0024】
その後図3(f)に示すように、HV(高耐圧FET)用絶縁膜307としてウエハ全面に例えばALD−SiO2またはHTO膜(High−Temperature Oxide;高温でCVD成膜したSiO2)を3.5nmの厚さで成膜し、レジスト膜(図示せず)を用いたフッ酸処理を行う。これにより、MV形成領域323に位置するHV用絶縁膜307のみが選択的に除去される。ここでも、エッチング量は対象のSiO2厚さに対して40%オーバーとした。その際、MV形成領域323及びその周囲に位置する素子分離膜102のみ高さが低くなる。
【0025】
次いで図3(g)に示すように、HV用絶縁膜307の場合と同様にMV用ゲート絶縁膜308をウエハ全面に、例えば3.5nmの厚さで成膜し、LV形成領域333に位置するHV用絶縁膜307及びMV用ゲート絶縁膜308のみをフッ酸を用いて除去する。エッチング量は、対象のSiO2厚さ7.0nmに対して40%オーバーとした。その際にはLV形成領域323及びその周囲に位置する素子分離膜102のみ高さが低くなる。上記の実施例では、最も素子分離膜102がエッチングされる領域はLV領域で、SiO2換算膜厚で24nm、素子分離膜102のエッチング速度はSiO2より20%速かったので、素子分離膜102で最も削れる領域は30nm弱となっている。ここでは、フッ酸溶液として、希釈フッ酸(HF:H2O=1:200)を用いた例を示したが、BHF(Buffered HF)を用いることもできる。
【0026】
このような、膜厚の異なる複数のゲート絶縁膜形成(以降、マルチオキサイド形成)により、特にHV形成領域313とLV形成領域333においてpFET形成領域とnFET形成領域の間で素子分離膜102に高さの差が生じるが、半導体層305を形成した後に図3(e)を用いて説明した工程を行うことにより、素子分離膜102の高さの面内分布を25nm以下、条件によっては10nm以下に抑える事ができる。
【0027】
次いで図3(h)に示すように、基板全体にHigh−kゲート絶縁膜309を形成する。次いで、LV形成領域333を除いて、High−kゲート絶縁膜309を選択的に除去する。High−kゲート絶縁膜309は、HfO2、ZrO2、HfSiO、又はZrSiOを主成分とし、不純物拡散防止のために窒素が添加されている。なお、FETのしきい値を制御するために不純物が添加されもよい。また、High−kゲート絶縁膜309としては、上記のHfO2、ZrO2、HfSiO、ZrSiOを主成分とした酸化膜とSiO2薄膜あるいはSiON薄膜との積層構造を用いることもできる。
【0028】
その後、図3(i)に示すように、基板101の全面にゲート電極膜を形成し、このゲート電極膜を選択的に除去する。これにより、各FETのゲート電極310が形成される。ゲート電極膜としては、ゲート絶縁膜との界面に金属含有膜、例えばTiNあるいはTaNなどの窒化金属膜を主成分とする金属薄膜を例えば5〜10nm形成し、その上にSiあるいは金属(Al、W、Cu)あるいはシリサイドあるいはジャーマナイドを積層した構造を用いることができる。本実施例において、nFETはチャネル形成層が基板101になり、pFETはチャネル形成層が半導体層305になる。
【0029】
その後、汚染除去のための洗浄処理を行うことによって、ゲートスタック部以外のメタル残渣やHigh−k膜残渣を完全に取り除くことができる。なお本図に示した半導体装置は、HV形成領域313におけるnFET形成領域312とpFET形成領域311の間の素子分離膜102の高さの差(第2の差分)が、HV形成領域313のnFET形成領域312とLV形成領域333のnFET形成領域332の間の素子分離膜102の高さの差(第1の差分)よりも小さい。
【0030】
以上、このようなプロセスによって、素子分離膜102の高さが最大となるHV形成領域313の素子分離膜102の上限を35nm以下にして、素子分離膜102の高さが最小となるLV領域の素子分離膜102の高さの下限を5nm程度以上にすることができる。素子分離膜102の側面の角度は、素子分離膜102の高さを減らすと共に図2の203のラインに沿って変化した。即ち、素子分離膜102のエッチングを増やした部分ほど、素子分離膜102の側面の角度は小さくなり、ゲート電極膜の材料やHigh−kゲート絶縁膜が残りにくいような形状になった。
【0031】
なお、素子分離膜102の高さを5nm未満にすることは可能であるが、この場合、素子分離膜102の表面に、図6に示した凹部609が形成される可能性が出てくる。凹部609が形成されると、凹部609内にゲート電極膜の材料やHigh−kゲート絶縁膜が残る可能性がでてくる。
【0032】
また工程数が増えることを厭わなければ、図3(f)の後に、素子分離膜102の高さが高い部分だけを選択的にフッ酸処理する(レジストパターンによるマスク形成とフッ酸処理)ことなどで、素子分離膜102の高さの違いを小さくすることもできる。
【0033】
(実施例2)
図4(a)〜図4(c)は実施例2の構造を形成するプロセスフローである。まず実施例1において図3(a)〜図3(c)で説明した処理を行う。これにより、図4(a)に示すように、図3(c)と同様の状態になる。具体的には、pFET形成領域311,321,331に位置する基板101上に半導体層305が形成される。
【0034】
次いで図4(b)に示すように、基板101の全面にSiO2膜401を形成する。次いでレジストパターン(図示せず)を形成する。このレジストパターンは、pFET形成領域311,321,331及びその周囲に位置する素子分離膜102を覆い、nFET形成領域312,322,332及びその周囲に位置する素子分離膜102を覆っていない。次いでこのレジストパターンをマスクとしてSiO2膜401をエッチングする。エッチング液には、例えばフッ酸溶液が用いられる。これにより、nFET形成領域312,322,332に位置するSiO2膜401は除去され、基板101が露出する。この工程において、pFET形成領域311,321,331及びその周囲に位置する素子分離膜102の高さと、nFET形成領域形成領域312,322,332及びその周囲に位置する素子分離膜102の高さとが一致するようにエッチング条件(例えば時間)を調整することが望ましい。
【0035】
その後、nFET形成領域312,322,332に位置する基板101の表面に半導体膜402を選択的に形成する。半導体膜402はnFETのチャネルにおける電子移動度を上げるために設けられる。半導体膜402としては、例えばSiC、GaAs、InP、InAs、又はInGaAsなどを用いることができる。
【0036】
次いで図4(c)に示すように、pFET形成領域311,321,331に位置するSiO2膜401をエッチングにより除去する。この状態において、pFET形成領域311,321,331に位置する基板101上には半導体層305が位置しており、nFET形成領域312,322,332に位置する基板101上には半導体膜402が位置している。そして半導体層305,402の周囲に位置する素子分離膜102の高さのばらつきは小さくなっている。
【0037】
なお、さらに、半導体層305,402をレジスト膜で覆った状態で素子分離膜102をエッチングすることにより、基板101の全面において素子分離膜102の高さをそろえてもよい。
【0038】
なお図4(c)は、実施例1における図3(e)に対応する状態である。そして実施例1において図3(f)〜図3(i)を用いて説明した処理を行うことにより、第1の実施例と同様の構造を形成することができる。ただし、nFETは、半導体膜402上にゲート絶縁膜及びゲート電極が形成される。
【0039】
実施例2では、実施例1と同様の効果が得られる。またpFET形成領域311,321,331とnFET形成領域312,322,332の両方に、それぞれ基板101よりも電子移動度が高い半導体層305,402が形成されている。このような構成をとる場合、それぞれの半導体305,402膜を形成する前処理としてフッ酸処理を行うことができるので、素子分離膜102の高さを揃えるために新たな工程を追加する必要がない。
【0040】
(実施例3)
図5(a)〜図5(g)は実施例3にかかる半導体装置の製造方法を示す断面図である。実施例1において、pFET形成領域311,321,331とnFET形成領域312,322,332のそれぞれに対してフッ酸処理をする際に、それぞれ1回ずつレジストパターン形成プロセスを行った。これに対して本実施例は、レジストパターン形成プロセスを1回だけにして、そのパターン情報を元に、pFET形成領域311,321,331とnFET形成領域312,322,332のそれぞれに対してフッ酸処理を行えるようにしたものである。まず図5(a)は図3(a)と同じ状態を示している。
【0041】
次いで図5(b)に示すように、基板101の表面に薄いSiO2膜501を形成し、続いて基板101の表面から素子分離膜102の上端までの高さより厚くSiN膜502を形成する。
【0042】
次いで図5(c)に示すように、pFET形成領域311,321,331上に開口部を有するレジストパターン503を形成する。
【0043】
次いで図5(d)に示すように、レジストパターン503をマスクとしてエッチングを行う。これにより、pFET形成領域311,321,331に位置するSiN膜502を除去する。その後、レジストパターン503を除去し、更にフッ酸処理によってpFET形成領域311,321,331に位置するSiO2膜501および素子分離膜102の上部を除去する。
【0044】
次いで図5(e)に示すように、pFET形成領域311,321,331に位置する基板101上に半導体層305を形成する。
【0045】
次いで図5(f)に示すように、有機膜(例えば、非晶質のカーボン膜)504を基板101の全面に形成した後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)あるいはリフロー後のエッチバックによって、nFET形成領域312,322,332に位置するSiN膜502を露出させる。
【0046】
次いで図5(g)に示すように、nFET形成領域312,322,332に位置するSiN膜502を、例えば熱燐酸液を用いて除去する。次いでフッ酸処理によってnFET形成領域312,322,332に位置するSiO2膜502及び素子分離膜102の上部を除去する。これにより、図3(e)と同様の構造を形成することができる。これ以降の工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0047】
本実施例によれば、素子の微細化に伴って高価格化が予想される露光工程数を減らせる。また実施例1と比較して露光工程数が少なくなるため、露光工程の位置ずれの影響を小さくできる。
【0048】
以上の各実施例をまとめると、以下のようになる。表面に段差がある状態で、表面に膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜など)を形成し、異方性ドライエッチングを施すと、基板に垂直方向からエッチングが進むことになる。段差部分が垂直に近いほど垂直方向から見た膜厚は、成膜した膜厚に較べて大きくなり、段差形状が垂直の場合、垂直方向から見た膜厚は成膜膜厚+段差となる。通常、ドライエッチングは、成膜膜厚分+30〜50%前後の時間で処理されることが多い。平坦部の膜がなくなると露出表面に占めるエッチング対象膜の比率は著しく減少するため、エッチング速度が著しく増加し、段差部のエッチング対象膜は除去される。ゲートスタック構造(ゲート電極、ゲート絶縁膜の積層構造)をドライ加工する場合、上層(即ち、ゲート電極)をエッチングする場合には、数10%のオーバーエッチングを行うことで段差部からも上層膜は除去される。しかし、平坦部の膜がなくなった(Justエッチ)時に露出表面に占めるエッチング対象膜の比率は、段差が大きいほどあるいは垂直形状に近いほど大きくなるので、除去されにくい傾向がある。
【0049】
最下層のゲート絶縁膜のエッチング時は、オーバーエッチングの余裕(平坦部で、下層膜がエッチングに曝される時間)は、微細化と共に小さくなっている。High−kゲート絶縁膜の場合、最下層には薄いSiO2かSiONが形成され、その層でエッチングを止める必要がある。その段階で、段差部から被エッチング材料を十分に除去する必要があり、素子分離膜の高さと側壁の角度の範囲を規定することで段差部からメタル材料およびHigh−k材料を十分に除去することができた。
【0050】
素子分離膜の形状を制御することで、ゲート加工時のドライエッチングプロセスによる相対的な膜厚が薄くなり、残渣が低減する。また、ボイドが発生しないため、ボイド中に高誘電率膜やメタル膜が残る事もない。ゲートのドライエッチングエッチ後の汚染除去ウェットプロセスで、ウェット量を少なくできるため、ゲートのサイドエッチが抑制され、特性劣化への影響を抑制できる。また、ゲート加工工程以降でのプロセス装置やライン内への金属汚染も生じない。
【0051】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。例えば上記した実施気形態および実施例では、説明をわかりやすくするために、角度θを素子分離膜102の側面に限るような記載にした。しかし、基板101に埋め込まれずにプロセス途中で露出する素子分離膜102の表面全体に対して角度θを算出して、角度θが80度を越えないようにすることで残渣の発生を防止できる。例えば、図6に記載したような凹部609が生じた場合、その部分での角度θの最大値は90度になるので、残渣が生じやすいと判断することができる。
【符号の説明】
【0052】
101 基板
102 素子分離膜
303 酸化シリコン膜
304 レジスト膜
305 半導体層
306 レジスト膜
307 HV用絶縁膜
308 MV用ゲート絶縁膜
309 High−kゲート絶縁膜
310 ゲート電極
311 pFET形成領域
312 nFET形成領域
313 HV形成領域
321 pFET形成領域
322 nFET形成領域
323 MV形成領域
331 pFET形成領域
332 nFET形成領域
333 LV形成領域
401 SiO2膜
402 半導体膜
501 SiO2膜
502 SiN膜
503 レジストパターン
504 有機膜
601 Si基板
602 素子分離膜
603 半導体膜
604 ゲート絶縁膜
605 ゲート絶縁膜
606 ゲート絶縁膜
607 ゲート電極
608 コンタミネーション
609 凹部
611 pFET
612 nFET
613 HV領域
614 nFET形成領域
621 pFET
622 nFET
623 MV領域
631 pFET
632 nFET
633 LV領域
634 pFET形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板に埋め込まれ、素子形成領域を分離している素子分離膜と、
前記素子形成領域に形成されたトランジスタと、
を備え、
前記素子分離膜の側面の上端は、前記トランジスタのチャネル形成層よりも上に位置しており、かつ前記チャネル形成層の表面からの高さが35nm以下であり、
前記素子分離膜の側面は、前記基板の表面に対する角度が80度以下である半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記トランジスタのゲート電極は、金属含有膜を含む半導体装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記チャネル形成層は前記基板である半導体装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
前記チャネル形成層として、前記素子形成領域に位置する前記基板上に形成された半導体層を有する半導体装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の半導体装置において、
第1の前記素子形成領域及び第2の前記素子形成領域と、
前記第1の素子形成領域に形成された第1チャネル導電型の前記トランジスタと、
前記第2の素子形成領域に形成された第2チャネル導電型の前記トランジスタと、
を備え、
前記第2素子形成領域に位置する前記基板上に形成された半導体層を有しており、
前記第1チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さと、前記第2チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さとの差は、10nm以下である半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
複数の前記第1の素子形成領域と複数の前記第2の前記素子形成領域と、
いずれかの前記第1の素子形成領域に形成され、第1の閾値電圧を有する前記第1チャネル導電型の前記トランジスタと、
他の前記第1の素子形成領域に形成され、第2の閾値電圧を有する前記第1チャネル導電型の前記トランジスタと、
いずれかの前記第2の素子形成領域に形成され、前記第1の閾値電圧を有する前記第2チャネル導電型の前記トランジスタと、
他の前記第2の素子形成領域に形成され、前記第2の閾値電圧を有する前記第2チャネル導電型の前記トランジスタと、
を備え、
前記第1の閾値電圧を有する前記第1チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さと、前記第2の閾値電圧を有する前記第1チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さとの差を第1の差分とし、
前記第1の閾値電圧を有する前記第1チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さと、前記第1の閾値電圧を有する前記第2チャネル導電型の前記トランジスタの前記チャネル形成層の表面から当該トランジスタを分離している前記素子分離膜の側面の上端までの高さとの差を第2の差分とした場合、
前記第2の差分は前記第1の差分よりも小さい半導体装置。
【請求項7】
基板に素子分離膜を埋め込み、素子形成領域を分離する工程と、
前記素子形成領域上及び前記素子分離膜上にゲート電極膜を形成し、前記ゲート電極膜を選択的に除去することにより、前記素子形成領域にトランジスタのゲート電極を形成する工程と、
を備え、
前記素子分離膜を前記基板に埋め込む工程において、前記素子分離膜の側面の上端を前記基板よりも上にさせ、前記トランジスタのチャネル形成層の表面から前記上端までの高さを35nm以下にして、かつ前記素子分離膜の側面を、前記基板の表面に対する角度が80度以下となるようにする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置において、
前記基板に素子分離膜を埋め込む工程において、第1チャネル導電型の前記トランジスタが形成される第1の前記素子形成領域と、第2チャネル導電型の前記トランジスタが形成される第2の前記素子形成領域と、を分離し、
前記ゲート電極を形成する工程の前に、前記第2の素子形成領域に位置する前記基板上に選択的に半導体層を形成する工程を有し、
前記素子分離膜を形成する工程の後に、前記第1の素子形成領域を分離する前記素子分離膜を選択的にエッチングする工程を有する半導体装置の製造方法。

【図1(a)】
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【図1(b)】
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【図1(c)】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図3(c)】
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【図3(d)】
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【図3(e)】
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【図3(f)】
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【図3(g)】
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【図3(h)】
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【図3(i)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図4(c)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図5(c)】
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【図5(d)】
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【図5(e)】
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【図5(f)】
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【図5(g)】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216589(P2011−216589A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81926(P2010−81926)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】