説明

半導体装置

【課題】工程数や通信距離を変えず、小型化に有利なアンテナの構成を有する半導体装置を提供することを課題とする。
【解決手段】上記課題を解決する為の構成の一つは、基板と、基板上に設けられた薄膜素子からなるタグ部と、第1のアンテナと、第2のアンテナとを有し、第1のアンテナと第2のアンテナとは絶縁膜で隔てられた異なる層に形成され、第1のアンテナと第2のアンテナとはその一部で電気的に接続しており、第1のアンテナは前記薄膜素子に接続する配線と同じ材料で同じ層に形成されており、第2のアンテナは前記薄膜素子に接続する配線と異なる層に形成されている半導体装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置に関する。特に小型化に有利な無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICタグが搭載されたカード型、タグ型、コイン型などの無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、豊富な情報量と高いセキュリティを備えていることから、交通、流通、情報などの分野で普及が進んでいる。さらに非接触ICタグ装置は無線でデータ送信を行うことができ、信頼性に優れ、同時に複数枚のデータ処理が可能、などの特徴を有しているため注目を集めている。
【0003】
前記無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、例えば、本体装置と電磁結合により電源供給およびデータの送受信を行うためのアンテナと、タグの外部端子を接続したICモジュールをプラスチック等からなる外装材を両面から接着した構成などがある。
【0004】
前記無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置のアンテナとしては、プラスチックフィルム上に貼り付けた銅箔、またはアルミ箔をエッチングにて所定の形状に形成したもの、または導電ペーストを印刷で形成したものなどがある。
【0005】
前記無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の外形サイズは、アプリケーションにより異なる。一般的に電磁結合方式の半導体装置であれば、アンテナに鎖交する磁束の変化で電磁結合するため、アンテナ面積の小さいものは通信距離が短く、大きいものは長い。
【0006】
前記無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置のアプリケーションとしては、例えば、カード、ビデオテープ、CDボックスのインデックスなどがある。
【0007】
前記アンテナ搭載型の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置を用いて、近傍型として使用する場合は、図5の様に本体装置と電磁結合を行うためのアンテナ6502を用いて、電磁結合により半導体装置への電源供給およびデータ送受信を行う。なお、図5に示すように、アンテナ6502はアンテナ形成層6503で作製され、タグ6500は配線形成層6501で作製されている。
【0008】
また、非特許文献1には、通信距離を長くするために、1本のアンテナを2層に分けた場合が記載されている。具体的には、Si基板と1層目のアンテナとの間、及び1層目のアンテナと2層目とのアンテナとの間に樹脂を挟んだ構造とし、1層目のアンテナと2層目のアンテナを1本のCu配線を渦状に巻いて形成している(例えば非特許文献1参照)。
【非特許文献1】「日経エレクトロニクス」,2005年4月11日号,p.26−p.27
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現状、電波法でリーダ/ライタのアンテナから出される最大出力は定められている。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置はその決められた出力を効率よく受け取らなければならないため、アンテナの長さはできるだけ長くすることが望ましい。その結果、アンテナサイズは無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置内の回路よりも大きくなることが多い。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は現在様々な用途が考えられており、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置を小さく出来るとさらに用途が広がることが予想できる。例えば、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置を1cm四方の物品に取り付けその管理を行いたい場合を考える。このとき、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置が1cm四方よりも大きくなってしまったとしたら、物品の管理を行う上で支障がでると思われる。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置を物品の管理に支障が出ないサイズに作れれば、サイズによる無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の用途の制限が無くなり、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の用途は広がる可能性がある。以上の背景があり、無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置のサイズを小さくする際、いかに通信距離を変えずアンテナサイズを小さくするかが課題である。
【0010】
前記課題を解決するために非特許文献1では、アンテナ層が2層である無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置が開示されている。その際、問題となるのは、アンテナ層を2層作るために工程数が増え、スループットや歩留まりが落ちるということである。
【0011】
以上のことから本発明では工程数や通信距離を変えず、小型化に有利なアンテナの構成を有する半導体装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する為の本発明の構成の一つは、基板と、基板上に設けられた薄膜素子からなる回路を含むタグ部と、第1のアンテナと、第2のアンテナとを有し、第1のアンテナと第2のアンテナとは絶縁膜で隔てられた異なる層に形成され、第1のアンテナと第2のアンテナとは一部で電気的に接続しており、第1のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と同じ材料で同じ層に形成されており、第2のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と異なる層に形成されている半導体装置である。
【0013】
上記課題を解決する為の本発明の構成の一つは、基板と、基板上に設けられた薄膜素子からなる回路を含むタグ部と、第1のアンテナと、第2のアンテナとを有し、第1のアンテナと第2のアンテナとは絶縁膜で隔てられた異なる層に形成され、第1のアンテナと第2のアンテナとは一部で電気的に接続しており、第1のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と同じ材料で同じ層に形成されており、第2のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と異なる層に形成されており、第1のアンテナと第2のアンテナは、基板に垂直な方向から見た場合、交差する部分と電気的に接続する部分以外は重なっていない半導体装置である。
【0014】
上記課題を解決する為の本発明の構成の一つは、上記構成において、薄膜素子には半導体層と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極よりなる薄膜トランジスタを含み、タグ部と前記第1のアンテナとは電気的に接続しており、タグ部と第1のアンテナを接続する配線は前記薄膜トランジスタのゲート電極と同じ材料で同じ層に形成されている半導体装置である。
【0015】
また、本発明の他の構成の1つは、上記構成において、ゲート電極がタンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた一種、もしくは複数種を含む合金や化合物を用いて形成されている半導体装置である。
【0016】
また、本発明の他の構成の1つは、上記構成において、前記第1のアンテナがアルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種または複数種からなる合金もしくは化合物を用いて形成されている半導体装置である。
【0017】
また、本発明の他の構成の1つは、上記構成において、前記第2のアンテナがアルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種または複数種からなる合金もしくは化合物を用いて形成されている半導体装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の半導体装置は、工程数や通信距離を変えずに小型化が可能な無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置である。また、本発明の半導体装置はサイズを変えず通信距離を伸ばすことも可能である。また、本発明の半導体装置は小型化もしくはサイズを変えずに通信距離が長くなった上、歩留まりやスループットの低下が抑制される。また、本発明の半導体装置は小型化もしくはサイズを変えずに通信距離が長くなった上、製造コストの上昇が抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態について図を用いて説明する。図1は非接触でデータのやりとりが可能である半導体装置の構成の一例を示す図である。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は利用の形態によって、RFID(Radio Frequency Identification)タグ、IDタグ、ICタグ、ICチップ、RFタグ(Radio Frequency)、無線タグ、電子タグまたは無線チップともよばれる。本発明では便宜上RFIDタグと称するが上記いずれの形態にも適用できる。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、リードライト通信制御回路100(以下、リーダ/ライタ、又はR/Wとする)のアンテナ部101と、通信制御回路を有する無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置のタグアンテナ502との間で通信及び電力の送受信をおこなう。無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、タグアンテナ502と、タグアンテナ502で受信した電波から電源電圧と復調信号をつくり、通信制御を行うタグ500で構成される。タグアンテナ502は第1のアンテナ102及び第2のアンテナ103で構成される。タグ500は、主に電源電圧と信号の復調、変調を行うアナログ部104と、アナログ部104で作られた電源電圧と復調信号を用いて、信号の解析及び送信データをつくるデジタル部105で構成される。
【0021】
本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の上面図を図2に示す。タグ500全体に安定に電源電位(VDD)及び基準電位(GND)を供給するため、アナログ部104とデジタル部105の周囲を取り巻くようにVDD配線200、GND配線201が配置される。アナログ部104は第1のアンテナ102の一端に電気的に接続されている。第1のアンテナ102の他端は第2のアンテナ103の一端に電気的に接続されている。第2のアンテナ103の他端はGND配線201に電気的に接続されている。また、図6に示すように、第1のアンテナ102はタグ500の配線形成層501で作製され、第2のアンテナ103は別途アンテナ形成層503で作製されている。このようにすることで2層構造のアンテナを工程数を増やすことなく作製することができるようになる。配線を2層で形成し接続することによって、サイズの大きなアンテナと同等のインダクタンスが生まれ、配線が1層の同サイズのアンテナよりも大きな通信距離を生むことができる。逆に同じ通信距離のアンテナを作製する場合にはサイズを小さくすることができる。
【0022】
また、配線形成層501に作製された第1のアンテナ102とタグ500との位置関係は、図6のようにタグ500を取り巻くように第1のアンテナ102を配置しても良いし、図7のように第1のアンテナ102の外側にタグ500を配置しても良い。また、タグ500とアンテナの位置関係は上記に限られず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において自由に配置することができる。図7のようにアンテナの外側にタグを配置する様な構成では、タグがアンテナの内側を通る磁束の影響を受けるのを小さくすることができる。
【0023】
本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の上面図、図2上のA−Bの断面図を図3に示す。図3に示すように、本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、基板300、第1の絶縁膜302、デジタル部105とアナログ部104からなるタグ500、VDD配線200、GND配線201、第1のアンテナ102、第2の絶縁膜303、第2のアンテナ103を含む。必要に応じて下地膜301やその他の構成を設けても良い。アナログ部104、デジタル部105からなるタグ500は、薄膜トランジスタに代表される多くの薄膜素子より構成されている。また、断面図の場合、アナログ部104、デジタル部105は、VDD配線200、GND配線201、第1のアンテナ102の間に位置している。第1の絶縁膜302は、薄膜トランジスタの配線形成層と半導体層形成層を電気的に絶縁する為に設けられている層である。また、第2の絶縁膜303は、第1のアンテナ102と、第2のアンテナ103とを隔てている層である。すなわち、第1のアンテナと第2のアンテナは、第2の絶縁膜303で隔てられた異なる層に設けられている。
【0024】
ところで、図2のように、図3における基板300に垂直な方向から見た場合に、第1のアンテナ102の配線と第2のアンテナ103の配線を、第2の絶縁膜303を挟んで重なる位置に配置した場合、第1のアンテナ102と第2のアンテナ103の配線間で、意図しない寄生容量が発生してしまう。この寄生容量は無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の共振を妨げてしまう。この影響を避けるため、基板300に垂直な方向から見た場合に、第1のアンテナ102の配線と第2のアンテナ103の配線の位置を、当該2つのアンテナが交差する位置と電気的に接続している位置以外は重ならないように配置すると良い。すなわち、第1のアンテナと第2のアンテナは、基板に垂直な方向から見た場合、交差する部分と電気的に接続する部分以外は重なっていないように配置すると良い。なお、図2には、基板300に垂直な方向から見た場合に、第1のアンテナ102と第2のアンテナ103が交差する部分210と、電気的に接続する部分220を例示してある。第1のアンテナ102の配線と第2のアンテナ103の配線の間隔については特に定めずともよく、使用者が適宜設定することができる。
【0025】
本発明において第1のアンテナ102の配線は薄膜トランジスタの配線形成層に薄膜トランジスタの配線材料で形成することから、第2のアンテナ103の配線に比べ膜厚が薄くなるため、インピーダンス(抵抗)が大きくなってしまう場合がある。このことは電力を取り出す際のロスになる。インピーダンス(抵抗)を小さくし、電磁結合の効率を上げるために第1のアンテナ102の配線幅を図8に示したように太く形成しても良い。
【0026】
アンテナの他の構成としては図9に示したように、アンテナに共振容量部506を設けても良い。共振容量部506は本来タグ500の中にある共振容量をカットすることができ、RFIDのサイズを小さくすることができる。
【0027】
本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の上面図である図2上におけるC−Dの断面図、すなわちアナログ部104と第1のアンテナ102の接続部分の断面図を図4に示す。ここではアナログ部104における多数の薄膜素子の中から一つの薄膜トランジスタのみを示して説明する。
【0028】
図4に示すように、薄膜トランジスタの活性層となる半導体層400は下地膜301上に設けられている。半導体層400はゲート絶縁膜401に覆われており、ゲート電極402と電気的に絶縁されている。図1で説明したタグ500を構成するアナログ部104には、図4に示すように半導体層400、ゲート絶縁膜401、ゲート電極402からなる薄膜トランジスタが設けられている。薄膜トランジスタの半導体層400には第1の絶縁膜302上に形成されたソース用又はドレイン用の配線404が、第1の絶縁膜302に設けられたコンタクトホールを介して電気的に接続している。第1の絶縁膜302上には、ソース用又はドレイン用の配線404と同じ材料で同じ層に同時に形成されたVDD配線200、GND配線201、第1のアンテナ102も設けられている。このとき、VDD配線200及びGND配線201は、ソース用又はドレイン用の配線404と第1のアンテナ102との間に位置している。
【0029】
また、図1で説明したタグ500を構成するアナログ部104は、図2に示すように第1のアンテナ102の一端と電気的に接続させる。このとき、図4に示すように、工程数の削減の為に、アナログ部104に設けられた薄膜トランジスタと、第1のアンテナ102とをつなぐ配線403はゲート電極402と同じ材料で同じ層に同時に形成すると良い。なお、アナログ部104に設けられた薄膜トランジスタは、ソース用又はドレイン用の配線404を介して、配線403と電気的に接続させる。言い換えると、ソース用又はドレイン用の配線404と第1のアンテナ102は、ゲート電極402と同じ材料で形成される配線403を介して接続されている。また、配線403上には、第1の絶縁膜302を介して、VDD配線200及びGND配線201が形成されている。
【0030】
また、図4に図示はしないが、第2の絶縁膜303上には、第2のアンテナが形成される。ここで形成される第2のアンテナは、第1のアンテナ102と第2の絶縁膜303で隔てられた異なる層に形成される。すなわち、第2のアンテナは、ソース用又はドレイン用の配線404と同じ材料で同じ層に同時に形成された第1のアンテナとは異なる層に形成される。
【0031】
このような構成を有する本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置は、工程数や通信距離を変えず、小型化が可能な無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置である。また、本発明の半導体装置はサイズを変えず通信距離を伸ばすことも可能である。また、本発明の半導体装置は小型化もしくはサイズを変えずに通信距離が長くなった上、歩留まりやスループットの低下が抑制された無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置である。また、本発明の半導体装置は小型化もしくはサイズを変えずに通信距離が長くなった上、製造コストの上昇が抑制された無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置である。
【0032】
(実施の形態2)
本実施の形態では本発明の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の作製方法について図10を参照しながら説明する。本実施の形態では、タグ内の薄膜素子に関してはアナログ部の一つの薄膜トランジスタのみ示して説明する。なお、その他の薄膜素子も同様に作製することが可能であり、本作製方法を他の薄膜素子に適用することは技術常識に基づいて当業者が容易になしえることである。
【0033】
基板300としては、例えばバリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、石英基板、セラミック基板などを用いることができる。また、半導体基板の表面に絶縁膜を形成した基板を用いても良い。プラスチックなどの可撓性を有する基板を用いても良い。また、基板の表面をCMP法などにより研磨して平坦化して用いても良く、さらにガラス基板、石英基板、半導体基板を研磨して薄くした基板を用いても良い。
【0034】
基板300上に下地膜301を形成する。下地膜301は酸化ケイ素や窒化ケイ素、また窒化酸化ケイ素などの絶縁膜により形成することができる。下地膜301を形成することによって、半導体層400に悪影響を及ぼす基板300中の不純物の拡散を抑制することができる。図10(A)では下地膜301は単層で形成しているが、2層以上の複数層で形成しても良い。なお、基板300中の不純物が問題にならない場合は下地膜301は形成しなくとも良い。
【0035】
下地膜301は基板300の表面を高密度プラズマによって処理することによって形成しても良い。高密度プラズマは例えば2.45GHzのマイクロ波を用いることによって生成され、電子密度が1×1011〜1×1013/cm且つ電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下であるものとする。このような高密度プラズマは活性種の運動エネルギーが低く、従来のプラズマ処理と比較してプラズマによるダメージが少なく、欠陥の少ない膜を形成することができる。マイクロ波を発生するアンテナから基板300までの距離は20〜80mm、好ましくは20〜60mmとすると良い。
【0036】
また、窒化性雰囲気、例えば、窒素と希ガスとを含む雰囲気下、または窒素と水素と希ガスを含む雰囲気下、またはアンモニアと希ガスを含む雰囲気下において、上記高密度プラズマ処理を行うことによって基板300の表面を窒化することができる。基板300としてガラス基板、石英基板またはシリコンウエハなどを用いた場合、上記高密度プラズマによる窒化処理を行った場合、基板300表面に形成される窒化膜は窒化ケイ素を主成分とするため、下地膜301として利用することができる。この窒化物層の上に酸化ケイ素または酸化窒化ケイ素をプラズマCVD法により形成して複数層よりなる下地膜301としても良い。
【0037】
また、酸化ケイ素や酸化窒化ケイ素などからなる下地膜301の表面に同様の高密度プラズマによる窒化処理を行うことによって、その表面に窒化膜を形成することができる。この窒化膜は基板300からの不純物の拡散を抑制することができる。また、きわめて薄く形成することができる為、その上に形成する半導体層への応力の影響が少ないので好ましい。
【0038】
続いて半導体層400を下地膜301上に形成する。半導体層400はパターニングされた結晶性半導体膜や非晶質半導体膜、もしくは有機半導体を用いることができる。パターニングには感光性のレジストをフォトマスクを用いて露光、現像して作製したマスクを用いる。このとき、フォトマスクの任意の部分において露光を行う光の透過率を抑制し、現像後のマスクの厚みを制御することができる。マスクの厚みを制御することによってより細やかで正確なパターニングを行うことができる。
【0039】
本実施の形態では半導体層400を結晶性半導体膜で形成する例を説明する。結晶性半導体膜は非晶質半導体膜を結晶化して得ることができる。結晶化の方法としてはレーザ結晶化、RTAまたはファーネスアニール炉を用いる熱結晶化、結晶化を助長する金属元素を用いる熱結晶化などを用いることができる。半導体層400はチャネル形成領域と導電型を付与する不純物元素が添加された不純物領域とを有する。なお、チャネル領域に相当する部分において導電型を付与する不純物元素が添加されていても良く、これにより半導体層の閾値電圧を制御することができる。
【0040】
続いて、ゲート絶縁膜401を形成する。ゲート絶縁膜401は酸化ケイ素、窒化ケイ素、窒化酸化ケイ素などを用いて単層もしくは複数層で形成すればよい。この場合、ゲート絶縁膜401の表面を酸化雰囲気もしくは窒化雰囲気で高密度プラズマにより処理し、酸化または窒化処理を行い緻密化しても良い。
【0041】
なお、ゲート絶縁膜401を形成する前に、半導体層400の表面に対し、高密度プラズマ処理を行って、半導体層の表面を酸化または窒化処理しても良い。このとき、基板300の温度を300〜450℃とし、酸化雰囲気または窒化雰囲気で処理することにより、その上に形成するゲート絶縁膜401と良好な界面を形成することができる。
【0042】
ゲート電極402としては、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた一種、もしくは複数種を含む合金や化合物からなる単層、もしくは複数層をパターニングして用いることができる。また、同時にアナログ部と第1のアンテナ102を電気的に接続する配線403を形成する。配線403をゲート電極402と同じ材料によって同時に形成することによって工程数を削減することができ、歩留まりやスループットを向上させることができる。ここで、ゲート電極402やゲート電極402と同時に作製する配線403等の配線は、基板300に垂直な方向から見た場合に角が丸くなるように引き回すのが好ましい。角部を丸くすることによってゴミなどが配線の角部に残るのを防止することができ、ゴミが原因で起きる不良を抑制し、歩留まりを向上させることができる。パターニングには感光性のレジストをフォトマスクを用いて露光、現像して作製したマスクを用いる。このとき、フォトマスクの任意の部分において露光を行う光の透過率を抑制し、現像後のマスクの厚みを制御することができる。マスクの厚みを制御することによってより細やかで正確なパターニングを行うことができる。
【0043】
薄膜トランジスタは、半導体層400と、ゲート絶縁膜401とゲート電極402で構成される。本実施の形態では薄膜トランジスタをトップゲート型のトランジスタとして説明したが、ボトムゲート型のトランジスタや、半導体層の上下にゲート電極を有するデュアルゲート型のトランジスタであっても良い。
【0044】
次に第1の絶縁膜302を形成する(図10(B))。第1の絶縁膜302としては、無機絶縁膜や有機絶縁膜の単層または積層構造を用いることができる。無機絶縁膜としては、CVD法により形成された酸化ケイ素膜や、SOG(Spin on Glass)法により塗布された酸化ケイ素膜などを用いることができる。有機絶縁膜としてはポリイミド、ポリアミド、BCB(ベンゾシクロブテン)、アクリルまたはポジ型感光性有機樹脂、ネガ型感光性有機樹脂などの膜を用いることができる。
【0045】
また、第1の絶縁膜302としてケイ素と酸素との結合で骨格構造が構成される材料を用いることもできる。この材料の置換基として少なくとも水素を含む置換基(例えばアルキル基、アリール基)が用いられる。置換基としてフルオロ基を用いても良い。また、これら両方の置換基を有していても良い。
【0046】
第1の絶縁膜302を複数層で形成する場合は、より半導体層400に近い層を窒化ケイ素が主成分である膜等、イオン性不純物をブロッキングするバリア性の絶縁膜で形成することが望ましい。これは半導体層400の汚染を防ぐ保護膜としてもちいることができる。この層を形成した後に、水素ガスを導入して高密度プラズマ処理をすることで水素化を行っても良い。これにより当該層を緻密化することができる。また、その後400〜450℃の熱処理を行って水素を放出させ、半導体層400の水素化をすることができる。
【0047】
薄膜トランジスタの配線404はアルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種、または複数種からなる合金もしくは化合物を用いた単層、または複数層をパターニングして形成される。図では単層構造の例を示した。なお、配線404は、基板300に垂直な方向から見た時に角部が丸くなるように形成することが好ましい。角部を丸くすることによってゴミなどが角部に残るのを防止することができる。また、配線404と同じ材料によって、同時にVDD配線200、GND配線201及び第1のアンテナ102を形成する。パターニングには感光性のレジストをフォトマスクを用いて露光、現像して作製したマスクを用いる。このとき、フォトマスクの任意の部分において露光を行う光の透過率を抑制し、現像後のマスクの厚みを制御することができる。マスクの厚みを制御することによってより細やかで正確なパターニングを行うことができる。
【0048】
次に、第2の絶縁膜303を形成する(図10(C))。第2の絶縁膜303としては無機絶縁膜または有機絶縁膜の単層または積層構造を用いることができる。具体的な材料は第1の絶縁膜302と同様である。
【0049】
その後、第2の絶縁膜303上に第2のアンテナ103を形成する。第2のアンテナ103は第1のアンテナ102と重ならないように形成する。第2のアンテナ103はアルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種、または複数種からなる合金もしくは化合物を用いた単層、または複数層で形成される。図では単層構造の例を示した。また、第2のアンテナ103はAu、Ag、Cu等のナノ粒子を含む導電性ペーストを用いて液滴吐出法により形成することもできる。液滴吐出法は、インクジェット法やディスペンサ法などの液滴を吐出してパターンを形成する方式の総称であり、材料の利用効率の向上などの利点を有する。
【0050】
続いて、第2の絶縁膜303、第2のアンテナ103上に第3の絶縁膜600を形成する。第3の絶縁膜600は無機絶縁膜や有機絶縁膜の単層もしくは積層構造で形成すれば良い。第3の絶縁膜600は第2のアンテナ103の保護層として機能する。
【0051】
その後、封止を行って本発明の半導体装置が完成する。なお、基板300上に形成された半導体装置をそのまま用いても良いが、基板300上から作製した素子を剥離してフレキシブル基板に貼り合わせて用いても良い。
【0052】
剥離の方法としては予め基板300上に剥離層を設けておき、剥離層をエッチング剤により除去することで剥離する方法がある。その他、剥離層をエッチング剤により部分的に除去し、その後、物理的に除去する方法、基板300を機械的に除去する方法、基板300を溶液やガスによるエッチングで除去する方法等がある。
【0053】
また、剥離した素子のフレキシブル基板への貼り付けは市販の接着剤を用いれば良く、例えばエポキシ樹脂系接着剤などがある。
【0054】
このようにフレキシブル基板に本発明の半導体装置を作製することによって、厚さが薄く、軽く、落としても破損しにくい半導体装置とすることができる。また、可撓性を有するフレキシブル基板をもちいることによって曲面を有するものにも無理なく貼り合わせることができる。
【実施例1】
【0055】
本実施例では、本発明の半導体装置の用途について図11、図12及び図18を用いて説明する。本発明の半導体装置700は、例えば、紙幣、硬貨、有価証券、無記名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図12(A)参照)、包装用容器類(包装紙やボトル等、図12(B)参照)、DVDソフトやCDやビデオテープ等の記録媒体(図12(C)参照)、車やバイクや自転車等の乗物類(図12(D)参照)、鞄や眼鏡等の身の回り品(図12(E)参照)、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に設けて使用することができる。電子機器とは、液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置(単にテレビまたはテレビ受像器とも呼ぶ)および携帯電話機等を指す。
【0056】
本発明の半導体装置は、物品の表面に貼り付けたり、物品に埋め込んだりして物品に固定することができる。例えば、本なら紙に埋め込んだり、有機樹脂からなるパッケージなら当該有機樹脂に埋め込んだりするとよい。紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、証書類等に本発明の半導体装置を設けることにより、偽造を防止することができる。また、包装用容器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、電子機器等に本発明の半導体装置を設けることにより、検品システムやレンタル店のシステムなどの効率化を図ることができる。また乗物類に本発明の半導体装置を設けることにより、偽造や盗難を防止することができる。また、動物等の生き物に埋め込むことによって、個々の生き物の識別を容易に行うことができる。例えば、家畜等の生き物に無線タグを埋め込むことによって、生まれた年や性別または種類等を容易に識別することが可能となる。
【0057】
以上のように、本発明の半導体装置は物品(生き物を含む)であればどのようなものにでも設けて使用することができる。
【0058】
本発明の半導体装置は、小型化に有利な上、歩留まりやスループットが良く、安価に作製することができることから、添付しやすく、大量に使用されるこれら用途に関して非常に有効である。
【0059】
次に、本発明の半導体装置を用いたシステムの一形態について、図11を用いて説明する。表示部3301を含む携帯端末の側面には、リーダ/ライタ3302が設けられる。また、物品3303の側面には本発明の半導体装置700が設けられる(図11(A)参照)。物品3303が含む本発明の半導体装置700にリーダ/ライタ3302をかざすと、表示部3301に物品3303の原材料や原産地、生産工程ごとの検査結果や流通過程の履歴、商品の説明等の商品に関する情報が表示される。また別のシステムとして、物品3305をベルトコンベアにより搬送する際に、リーダ/ライタ3304と半導体装置700とを用いて、物品3305の検品を行うことができる(図11(B)参照)。このように、システムに本発明の半導体装置を活用することで、情報の取得を簡単に行うことができ、高機能化と高付加価値化を実現したシステムを提供することができる。
【0060】
図18は本発明の半導体装置を用いた他のシステムの一形態について示した図である。本システムは宅配業者を利用して荷物を送る際に適用される。図18(B)に示すように、送り主は予め送る物品805に本発明の半導体装置801を貼り付けておく。この半導体装置801の中には予め少なくとも送り主情報を記憶しておく。記憶しておく情報はそのほかに、送り先情報、宅配業者、内容など、その他の情報であっても良い。通信販売などの場合は支払う金額が表示されても良い。宅配業者が荷物を届けに来た際、玄関先800(もしくはエントランス)に取り付けられたリーダ/ライタ802が荷物情報を読み取り、図18(A)に示すような家屋内803のインターホンを兼ねても良い表示部804にその情報が表示される。家人はこの情報を確認してから対応することができ、誤配達や、宅配便を装った勧誘、犯罪などに遭うことを防ぐことができ、特に子供のいる家庭に安全対策として有効である。本発明の半導体装置は同じ大きさであれば通信距離が長い(感度が高い)ため、荷物内に本発明の半導体装置を設置したとしても確実に荷物の情報を受け取ることができる。また、本システムは大きな荷物だけではなく、書留や配達記録に代表される封書などの小さな郵便物に適用しても良く、この場合は小型化が容易な本発明の半導体装置を好適に用いることができる。
【実施例2】
【0061】
図13は本発明の半導体装置に含まれる回路の一部を構成するトランジスタの断面構造を示す図である。図13は、nチャネル型トランジスタ2001、nチャネル型トランジスタ2002、容量素子2004、抵抗素子2005、pチャネル型トランジスタ2003が示されている。各トランジスタは半導体層1305、ゲート絶縁層1308、ゲート電極1309を備えている。ゲート電極1309は、第1導電層1303と第2導電層1302の積層構造で形成されている。また、図14(A)〜(D)は、図13で示すトランジスタ、容量素子、抵抗素子に対応する上面図であり、合わせて参照することができる。
【0062】
図13において、nチャネル型トランジスタ2001は、チャネル長方向(キャリアの流れる方向)において、配線1304と接続されるソース及びドレイン領域を形成する不純物領域1306と、その不純物濃度よりも低濃度にドープされた不純物領域1307とが半導体層1305に形成されている。不純物領域1307は、低濃度ドレイン(LDD)とも呼ばれる。不純物領域1306と不純物領域1307には、nチャネル型トランジスタ2001を構成する場合、n型を付与する不純物としてリンなどが添加されている。LDDはホットエレクトロン劣化や短チャネル効果を抑制する手段として形成される。
【0063】
図14(A)で示すように、nチャネル型トランジスタ2001のゲート電極1309において、第1導電層1303は、第2導電層1302の両側に広がって形成されている。この場合において、第1導電層1303の膜厚は、第2導電層の膜厚よりも薄く形成されている。第1導電層1303の厚さは、10〜100kVの電界で加速されたイオン種を通過させることが可能な厚さに形成されている。不純物領域1307はゲート電極1309の第1導電層1303と重なるように形成されている。すなわち、ゲート電極1309とオーバーラップするLDD領域を形成している。この構造は、ゲート電極1309において、第2導電層1302をマスクとして、第1導電層1303を通して一導電型の不純物を添加することにより、自己整合的に不純物領域1307を形成している。すなわち、ゲート電極とオーバーラップするLDDを自己整合的に形成している。
【0064】
チャネル形成領域の両側にLDD有するトランジスタは、電源回路の整流用のトランジスタや、論理回路に用いられるトランスミッションゲート(アナログスイッチとも呼ぶ)を構成するトランジスタに適用される。これらのトランジスタは、ソース電極及びドレイン電極に正負両方の電圧が印加されるため、チャネル形成領域の両側にLDDを設けることが好ましい。
【0065】
図13において、nチャネル型トランジスタ2002は、半導体層1305に配線1304と接続されるソース及びドレイン領域を形成する不純物領域1306と、その不純物濃度よりも低濃度にドープされた不純物領域1307が形成されている。不純物領域1307は、チャネル形成領域の片側に、不純物領域1306と接するように設けられている。図14(B)で示すように、nチャネル型トランジスタ2002のゲート電極1309において、第1導電層1303は、第2導電層1302の片側に広がって形成されている。この場合も同様に、第2導電層1302をマスクとして、第1導電層1303を通して一導電型の不純物を添加することにより、自己整合的にLDDを形成することができる。
【0066】
チャネル形成領域の片側にLDDを有するトランジスタは、ソース及びドレイン電極間に正電圧のみ、もしくは負電圧のみが印加されるトランジスタに適用すればよい。具体的には、インバータ回路、NAND回路、NOR回路、ラッチ回路といった論理ゲートを構成するトランジスタや、センスアンプ、定電圧発生回路、VCOといったアナログ回路を構成するトランジスタに適用すればよい。
【0067】
図13において、容量素子2004は、第1導電層1303と半導体層1305とでゲート絶縁層1308を挟んで形成されている。容量素子2004を形成する半導体層1305には、不純物領域1310と不純物領域1311を備えている。不純物領域1311は、半導体層1305において第1導電層1303と重なる位置に形成される。また、不純物領域1310は配線1304とコンタクトを形成する。不純物領域1311は、第1導電層1303を通して一導電型の不純物を添加することができるので、不純物領域1310と不純物領域1311に含まれる不純物濃度は同じにすることもできるし、異ならせることも可能である。いずれにしても、容量素子2004において、半導体層1305は電極として機能させるので、一導電型の不純物を添加して低抵抗化しておくことが好ましい。また、第1導電層1303は、図14(C)に示すように、第2導電層1302を補助的な電極として利用することにより、電極として十分に機能させることができる。このように、第1導電層1303と第2導電層1302を組み合わせた複合的な電極構造とすることにより、容量素子2004を自己整合的に形成することができる。
【0068】
容量素子は、電源回路が有する保持容量、あるいは共振回路有する共振容量として用いられる。特に、共振容量は、容量素子の2端子間に正負両方の電圧が印加されるため、2端子間の電圧の正負によらず容量として機能することが必要である。
【0069】
図13において、抵抗素子2005は、第1導電層1303によって形成されている。第1導電層1303は30〜150nm程度の厚さに形成されるので、その幅や長さを適宜設定して抵抗素子を構成することができる。
【0070】
抵抗素子は、変調回路が有する抵抗負荷として用いられる。また、VCOなどで電流を制御する場合の負荷としても用いられる場合がある。抵抗素子は、高濃度に不純物元素を含む半導体層や、膜厚の薄い金属層によって構成すればよい。抵抗値が膜厚、膜質、不純物濃度、活性化率などに依存する半導体層に対して、金属層は、膜厚、膜質で抵抗値が決定するため、ばらつきが小さく好ましい。
【0071】
図13において、pチャネル型トランジスタ2003は、半導体層1305に不純物領域1312を備えている。この不純物領域1312は、配線1304と接続されるソース及びドレイン領域を形成する。ゲート電極1309の構成は第1導電層1303と第2導電層1302が重畳した構成となっている。pチャネル型トランジスタ2003はLDDを設けないシングルドレイン構造のトランジスタである。pチャネル型トランジスタ2003を形成する場合、不純物領域1312にはp型を付与する不純物として硼素などが添加される。一方、不純物領域312にリンを添加すればシングルドレイン構造のnチャネル型トランジスタとすることもできる。
【0072】
半導体層1305及びゲート絶縁層1308の一方若しくは双方に対して、マイクロ波で励起され、電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下、電子密度が1×1011〜1×1013/cm程度である高密度プラズマ処理によって酸化又は窒化処理しても良い。このとき、基板温度を300〜450℃とし、酸化雰囲気(O、NOなど)又は窒化雰囲気(N、NHなど)で処理することにより、半導体層1305とゲート絶縁層1308の界面の欠陥準位を低減することができる。ゲート絶縁層1308対してこの処理を行うことにより、この絶縁層の緻密化を図ることができる。すなわち、荷電欠陥の生成を抑えトランジスタのしきい値電圧の変動を抑えることができる。また、トランジスタを3V以下の電圧で駆動させる場合には、このプラズマ処理により酸化若しくは窒化された絶縁層をゲート絶縁層1308として適用することができる。また、トランジスタの駆動電圧が3V以上の場合には、このプラズマ処理で半導体層1305の表面に形成した絶縁層とCVD法(プラズマCVD法若しくは熱CVD法)で堆積した絶縁層とを組み合わせてゲート絶縁層1308を形成することができる。また、同様にこの絶縁層は、容量素子2004の誘電体層としても利用することができる。この場合、このプラズマ処理で形成された絶縁層は、1〜10nmの厚さで形成され、緻密な膜であるので、大きな電荷容量を持つ容量素子を形成することができる。
【0073】
図13及び図14を参照して説明したように、膜厚の異なる導電層を組み合わせることにより、さまざまな構成の素子を形成することができる。第1導電層のみが形成される領域と、第1導電層と第2導電層が積層されている領域は、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いて形成することができる。すなわち、フォトリソグラフィー工程において、フォトレジストを露光する際に、フォトマスクの透過光量を調節して、現像されるレジストマスクの厚さを異ならせる。この場合、フォトマスクまたはレチクルに解像度限界以下のスリットを設けて上記複雑な形状を有するレジストを形成してもよい。また、現像後に約200℃のベークを行ってフォトレジスト材料で形成されるマスクパターンを変形させてもよい。
【0074】
また、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いることにより、第1導電層のみが形成される領域と、第1導電層と第2導電層が積層されている領域を連続して形成することができる。図14(A)に示すように、第1導電層のみが形成される領域を半導体層上に選択的に形成することができる。このような領域は、半導体層上において有効であるが、それ以外の領域(ゲート電極と連続する配線領域)では必要がない。このフォトマスク若しくはレチクルを用いることにより、配線部分は、第1導電層のみの領域を作らないで済むので、配線密度を実質的に高めることができる。
【0075】
図13及び図14の場合には、第1導電層はタングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属、又は高融点金属を主成分とする合金もしくは化合物を30〜50nmの厚さで形成する。また、第2導電層はタングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属、又は高融点金属を主成分とする合金もしくは化合物で300〜600nmの厚さに形成する。例えば、第1導電層と第2導電層をそれぞれ異なる導電材料を用い、後に行うエッチング工程でエッチングレートの差が生じるようにする。一例として、第1導電層としてTaNを用い、第2導電層としてタングステン膜を用いることができる。
【0076】
本実施例では、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いて、電極構造の異なるトランジスタ、容量素子、抵抗素子を、同じパターニング工程によって作り分けることができることを示している。これにより、回路の特性に応じて、形態の異なる素子を、工程を増やすことなく作り込み、集積化することができる。
【実施例3】
【0077】
図1で示す半導体装置を構成する要素の一つとして、スタティックRAM(SRAM)を構成する一例について、図15〜図17を参照して説明する。
【0078】
図15(A)で示す半導体層10、11はシリコン若しくはシリコンを成分とする結晶性の半導体で形成することが好ましい。例えば、シリコン膜をレーザアニールなどによって結晶化された多結晶シリコン、単結晶シリコンなどが適用される。その他にも半導体特性を示す、金属酸化物半導体、アモルファスシリコン、有機半導体を適用することも可能である。
【0079】
いずれにしても、最初に形成する半導体層は絶縁表面を有する基板の全面若しくは一部(トランジスタの半導体領域として確定されるよりも広い面積を有する領域)に形成する。そして、フォトリソグラフィー技術によって、半導体層上にマスクパターンを形成する。そのマスクパターンを利用して半導体層をエッチング処理することにより、TFTのソース及びドレイン領域及びチャネル形成領域を含む特定形状の島状の半導体層10、11を形成する。その半導体層10、11はレイアウトの適切さを考慮して決められる。
【0080】
図15(A)で示す半導体層10、11を形成するためのフォトマスクは、図15(B)に示すマスクパターン2000を備えている。このマスクパターン2000は、フォトリソグラフィー工程で用いるレジストがポジ型かネガ型かで異なる。ポジ型レジストを用いる場合には、図15(B)で示すマスクパターン2000は、遮光部として作製される。マスクパターン2000は、多角形の頂部Aを削除した形状となっている。また、屈曲部Bにおいては、その角部(コーナー部の内側)が直角とならないように複数段に渡って屈曲する形状となっている。このフォトマスクのパターンは、例えば、パターンの角部であって(直角三角形)の一辺が10μm以下の大きさに角部を削除している。
【0081】
図15(B)で示すマスクパターン2000は、その形状が、図15(A)で示す半導体層10、11に反映される。その場合、マスクパターン2000と相似の形状が転写されても良いが、マスクパターン2000の角部がさらに丸みを帯びるように転写されていても良い。すなわち、マスクパターン2000よりもさらにパターン形状をなめらかにした、丸め部を設けても良い。
【0082】
半導体層10、11の上には、酸化シリコン若しくは窒化シリコンを少なくとも一部に含む絶縁層が形成される。この絶縁層を形成する目的の一つはゲート絶縁層である。そして、図16(A)で示すように、半導体層と一部が重なるようにゲート配線12、13、14を形成する。ゲート配線12は半導体層10に対応して形成される。ゲート配線13は半導体層10、11に対応して形成される。また、ゲート配線14は半導体層10、11に対応して形成される。ゲート配線は、金属層又は導電性の高い半導体層を成膜し、フォトリソグラフィー技術によってその形状を絶縁層上に作り込む。
【0083】
このゲート配線を形成するためのフォトマスクは、図16(B)に示すマスクパターン2100を備えている。このマスクパターン2100は、角部であって、(直角三角形)の一辺が10μm以下、または、配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の大きさに角部を削除している。図16(B)で示すマスクパターン2100は、その形状が、図16(A)で示すゲート配線12、13、14に反映される。その場合、マスクパターン2100と相似の形状が転写されても良いが、マスクパターン2100の角部がさらに丸みを帯びるように転写されていても良い。すなわち、ゲート配線12,13,14にマスクパターン2100よりもさらにパターン形状をなめらかにした、丸みをおびさせてもよい。つまり、ゲート配線12、13、14の角部は、線幅の1/2以下であって1/5以上にコーナー部に丸みをおびさせてもよい。ゲート配線12,13,14の凸部(コーナー部の外側)はプラズマによるドライエッチングの際、異常放電による微粉の発生を抑えることができる。また、凹部(コーナー部の内側)では、洗浄のときに、基板に微粉が付着していても洗浄液を配線パターンのコーナー部に滞留させずに洗い流すことができ、歩留まり向上が甚だしく期待できる。
【0084】
層間絶縁層はゲート配線12、13、14の次に形成される層である。層間絶縁層は酸化シリコンなどの無機絶縁材料若しくポリイミドやアクリル樹脂などを使った有機絶材料を使って形成する。この層間絶縁層とゲート配線12、13、14の間には窒化シリコン若しくは窒化酸化シリコンなどの絶縁層を介在させても良い。また、層間絶縁層上にも窒化シリコン若しくは窒化酸化シリコンなどの絶縁層を設けても良い。この絶縁層は、外因性の金属イオンや水分などTFTにとっては良くない不純物により半導体層やゲート絶縁層を汚染するのを防ぐことができる。
【0085】
層間絶縁層には所定の位置に開孔が形成されている。例えば、下層にあるゲート配線や半導体層に対応して設けられる。金属若しくは金属化合物の一層若しくは複数層で形成される配線層は、フォトリソグラフィー技術によってマスクパターンが形成され、エッチング加工により所定のパターンに形成される。そして、図17(A)で示すように、半導体層と一部が重なるように配線15〜20を形成する。配線はある特定の素子間を連結する。配線は特定の素子と素子の間を直線で結ぶのではなく、レイアウトの制約上屈曲部が含まれる。また、コンタクト部やその他の領域において配線幅が変化する。コンタクト部では、コンタクトホールが配線幅と同等若しくは大きい場合には、その部分で配線幅が広がるように変化する。
【0086】
この配線15〜20を形成するためのフォトマスクは、図17(B)に示すマスクパターン2200を備えている。この場合においても、配線は、L字形に折れ曲がった各コーナー部であって直角三角形の一辺が10μm以下、または、配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の長さに角部を削除し、コーナー部を丸みをおびるパターンを有せしめる。即ち、上面からみたコーナー部における配線層の外周は曲線を形成するようにする。具体的には、コーナー部の外周縁に丸みを帯びさせるため、コーナー部を挟む互いに垂直な2つの第1直線と、これら2つの第1直線と約45度の角度をなす一つの第2直線と、で形成される直角2等辺三角形の部分に相当する配線層の一部を除去する。除去すると新たに2つの鈍角の部分が配線層に形成されるが、マスク設計や、エッチング条件を適宜設定することにより、各鈍角部分に第1直線と第2直線との両方に接する曲線が形成されるように配線層をエッチングすることが好ましい。なお、前記直角2等辺三角形の互いに等しい2辺の長さは、配線幅の1/5以上1/2以下とする。またコーナー部の内周についても、コーナー部の外周に沿って内周が丸みを帯びるよう形成する。このような配線形状は、プラズマによるドライエッチングの際、異常放電による微粉の発生を抑えることができる。また、基板を洗浄する際に、基板に微粉が付着していても、洗浄液を配線パターンのコーナー部に滞留させずに洗い流すことができ、結果として歩留まりを向上させるという効果を有する。このことは、基板上に多数の平行配線がある場合に、付着した微粉を洗浄により除去しやすくなるという利点でもある。配線の角部がラウンドをとることにより、電気的にも伝導させることが期待できる。また、多数の平行配線では、ゴミを洗い流すのにはきわめて好都合である。
【0087】
図17(A)には、nチャネル型トランジスタ21〜24、pチャネル型トランジスタ25、26が形成されている。nチャネル型トランジスタ23とpチャネル型トランジスタ25及びnチャネル型トランジスタ24とpチャネル型トランジスタ26はインバータを構成している。この6つのトランジスタを含む回路はSRAMを形成している。これらのトランジスタの上層には、窒化シリコンや酸化シリコンなどの絶縁層が形成されていても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明での半導体装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の半導体装置の平面図。
【図3】本発明の半導体装置の断面図。
【図4】本発明の半導体装置におけるアナログ部と第1のアンテナの接続部の断面図。
【図5】従来の無線通信によりデータの送受信が可能な半導体装置の構成を示す図。(A)
【図6】本発明の半導体装置の実施の形態の1つを表す図。
【図7】本発明の半導体装置実施の形態の1つを表す図。
【図8】本発明の半導体装置実施の形態の1つを表す図。
【図9】本発明の半導体装置実施の形態の1つを表す図。
【図10】本発明の半導体装置の作製方法を表す図。
【図11】本発明の半導体装置を用いたシステムを示す図。
【図12】本発明の半導体装置の用途を表す図。
【図13】本発明の半導体装置の一部における断面図。
【図14】本発明の半導体装置の一部における上面図。
【図15】本発明の半導体装置の一部における上面図。
【図16】本発明の半導体装置の一部における上面図。
【図17】本発明の半導体装置の一部における上面図。
【図18】本発明の半導体装置を用いたシステムを示す図。
【符号の説明】
【0089】
10 半導体層
11 半導体層
12 ゲート配線
13 ゲート配線
14 ゲート配線
15 配線
21 nチャネル型トランジスタ
23 nチャネル型トランジスタ
24 nチャネル型トランジスタ
25 pチャネル型トランジスタ
26 pチャネル型トランジスタ
100 リードライト通信制御回路
101 アンテナ部
102 第1のアンテナ
103 第2のアンテナ
104 アナログ部
105 デジタル部
200 VDD配線
201 GND配線
210 交差する部分
220 電気的に接続する部分
300 基板
301 下地膜
302 第1の絶縁膜
303 第2の絶縁膜
312 不純物領域
400 半導体層
401 ゲート絶縁膜
402 ゲート電極
402 ゲート電極
403 配線
404 配線
500 タグ
501 配線形成層
502 アンテナ
503 アンテナ形成層
506 共振容量部
600 第3の絶縁膜
700 半導体装置
800 玄関先
801 半導体装置
802 リーダ/ライタ
803 家屋内
804 表示部
805 物品
1302 第2導電層
1303 第1導電層
1304 配線
1305 半導体層
1306 不純物領域
1307 不純物領域
1308 ゲート絶縁層
1309 ゲート電極
1310 不純物領域
1311 不純物領域
1312 不純物領域
2000 マスクパターン
2001 nチャネル型トランジスタ
2002 nチャネル型トランジスタ
2003 pチャネル型トランジスタ
2004 容量素子
2005 抵抗素子
2100 マスクパターン
2200 マスクパターン
3301 表示部
3302 リーダ/ライタ
3303 物品
3304 リーダ/ライタ
3305 物品
6500 タグ
6501 配線形成層
6502 アンテナ
6503 アンテナ形成層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた薄膜素子からなる回路を含むタグ部と、
第1のアンテナと、第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは絶縁膜で隔てられた異なる層に形成され、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは一部で電気的に接続しており、
前記第1のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と同じ材料で同じ層に形成されており、前記第2のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と異なる層に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられた薄膜素子からなる回路を含むタグ部と、
第1のアンテナと、第2のアンテナと、を有し、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは絶縁膜で隔てられた異なる層に形成され、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは一部で電気的に接続しており、
前記第1のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と同じ材料で同じ層に形成されており、前記第2のアンテナは前記薄膜素子に接続するソース用又はドレイン用の配線と異なる層に形成されており、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナは、基板に垂直な方向から見た場合、交差する部分と電気的に接続する部分以外は重なっていないことを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記薄膜素子は半導体層と、ゲート絶縁膜と、ゲート電極よりなる薄膜トランジスタを含み、
前記回路と前記第1のアンテナとは電気的に接続しており、
前記回路と前記第1のアンテナを接続する配線は前記薄膜トランジスタのゲート電極と同じ材料で同じ層に形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ゲート電極は、タンタル、タングステン、チタン、モリブデン、アルミニウム、銅、クロム、ニオブから選ばれた一種、もしくは複数種を含む合金や化合物を用いて形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第1のアンテナは、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種または複数種からなる合金もしくは化合物を用いて形成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一において、
前記第2のアンテナは、アルミニウム、ニッケル、タングステン、モリブデン、チタン、白金、銅、タンタル、金、マンガンから選ばれた一種または複数種からなる合金もしくは化合物を用いて形成されていることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2007−13120(P2007−13120A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147597(P2006−147597)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】