説明

半導体装置

【課題】半導体装置に搭載された不揮発性記憶装置に格納された情報を読み出す時、アドレス信号などを入力し、センスアンプなどを用いて情報を読み出す。このとき所定の時間を要するので、その遅れを考慮した半導体装置の設計が必要である。また、センスアンプは消費電流が膨大である。さらに、読み出しビット数が決められているので、1ビットのみ読み出す場合にも、他の不要な情報も読み出す必要がある。
【解決手段】電気的に導通または絶縁する手段を有する電気素子と、リセット素子と、ラッチ素子と、から構成される記憶素子により、不揮発性記憶回路を構成する。記憶素子では、無線チップのリセット時に、電気素子が電気的に絶縁か導通かにより、異なる情報をラッチ素子に格納する。このような構成とすることで、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力の無線チップを安価に提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信用の半導体装置に関する。特に、半導体薄膜トランジスタを用いて形成した回路に、無線通信信号から生成した電源電圧を供給する半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型ICチップと、無線通信用のアンテナを組み合わせた小型半導体装置(以下、無線チップ)が脚光を浴びている。無線チップは、無線通信装置(以下、リーダ/ライタ)を使った通信信号の授受により、データの書き込み、データの読み出しを行うことができる。
【0003】
無線チップの応用分野として、例えば、流通業界における商品管理が挙げられる。現在では、バーコードなどを利用した商品管理が主流であるが、バーコードは光学的に読み取るため、遮蔽物があるとデータを読み取れない。一方、無線チップでは、無線でデータを読み取るため、電波が通過できるならば遮蔽物があっても読み取れる。従って、商品管理の効率化、低コスト化などが期待されている。その他、乗車券、航空旅客券、料金の自動精算など、広範な応用が期待されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−209162号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような無線チップの応用分野では、無線チップに固有情報を格納する不揮発性記憶装置が必要である。固有情報とは、例えば、固有番号や暗号通信のための秘密鍵などである。このような不揮発性記憶装置は、固有情報を格納する方法により、製造途中で書き込む方法を用いた不揮発性記憶装置と、製造後に書き込む方法を用いた不揮発性記憶装置とに大別できる。
【0006】
製造途中で書き込む方法を用いた不揮発性記憶装置としては、マスクROMと呼ばれる不揮発性記憶装置がある。これは、不揮発性記憶装置に、無線チップ毎に異なるフォトマスクを用いる。一方、製造後に書き込む方法を用いた不揮発性記憶装置としては、EPROMと呼ばれる電気的書き込み可能な不揮発性記憶装置がある。これは、EPROMに、書き込み装置を用いて、固有情報を書き込む。この場合、フォトマスクを変更することなく、無線チップ毎に異なる固有情報を不揮発性記憶装置に格納することが容易である。
【0007】
これらの不揮発性記憶装置では、格納された情報を取り出すには、アドレス信号、読み出し信号などを入力し、該当する記憶素子から電気信号を取り出し、センスアンプなどを用いて高電位信号または低電位信号(以下、高電位信号を”H”レベル、または単に”H”と記す。また低電位信号を”L”レベル、または単に”L”と記す)の出力情報を読み出す。このような不揮発性記憶装置では、必要な情報を読み出すまでに、読み出しを要求してから特定の時間を要する。したがって、このような不揮発性記憶装置を半導体装置に搭載するには、その遅れを考慮した設計が必要である。また、センスアンプは消費電流が膨大であり、半導体装置全体の消費電流上昇をもたらす。さらに、このような不揮発性記憶装置では、読み出しビット数が決められているので、1ビットのみ読み出す場合にも、他の不要な情報も読み出す必要がある。これは、半導体装置における消費電流をさらに上昇させる。
【0008】
このような問題に鑑み、本発明は、固有情報を格納する不揮発性記憶装置を搭載する半導体装置の消費電力を低減することを目的とする。また、本発明は、当該半導体装置において、不揮発性記憶装置から情報を読み出すまでの遅延時間の影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における無線チップでは、電気的に導通または絶縁する手段を有する電気素子と、リセット素子と、ラッチ素子と、から構成される記憶素子により、の不揮発性記憶回路を構成する。記憶素子では、無線チップのリセット時に、リセット素子と、電気素子と、により、ラッチ素子に情報を格納する。この情報は、電気素子を電気的に絶縁するか否かにより、”H”、または”L”となる。電気素子は、レーザー描画により機械的に切断することで電気的絶縁が可能な電気抵抗、過電流の印加により熱的に破壊することで電気的絶縁が可能な電気抵抗、ダイオード、相変化メモリ、浮遊ゲートを有するメモリトランジスタ、MONOS構造を有するメモリトランジスタなどがあり得る。
【0010】
以上のような構成とすることで、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力の無線チップを安価に提供することができる。また、センスアンプなどの読み出しに特別な回路を必要とせずに、不揮発性記憶装置から格納された情報を読み出すことができ、不揮発性記憶装置の回路規模の増大を抑えることができるので、さらに小面積且つ低消費電力の不揮発性記憶装置を搭載した無線チップを提供することができる。
【0011】
本明細書で開示する本発明の構成は、電気素子と、リセット素子と、ラッチ素子と、から構成される記憶素子を有する不揮発性記憶装置を搭載する半導体装置であって、電気素子が電気的に導通しているか、絶縁しているか、に応じて、リセット素子により、ラッチ素子に異なる情報を格納する手段を有することを特徴とする。
【0012】
上記構成において、電気素子は、レーザー描画により機械的に切断することで電気的に絶縁されることを特徴としてもよい。
【0013】
また、上記構成において、電気素子は、過電流を印加し、熱的に破壊することで電気的に絶縁されることを特徴としてもよい。
【0014】
また、上記構成において、電気素子は、第1のダイオードと、第2のダイオードと、から構成され、ダイオードの少なくとも一方に過電流を印加し、熱的に破壊することで電気的に導通されることを特徴としてもよい。
【0015】
また、上記構成において、電気素子は、相変化により電気抵抗値が変化する相変化メモリにより構成されていてもよい。
【0016】
また、上記構成において、電気素子は、浮遊ゲートを有する不揮発性メモリトランジスタであってもよい。
【0017】
また、上記構成において、電気素子は、MONOS構造を有するメモリトランジスタであってもよい。
【0018】
また、上記構成において、半導体装置を、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を活性層とする薄膜トランジスタを用いて構成してもよい。
【0019】
また、上記構成において、絶縁表面を有する基板とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、SOI基板のいずれかであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力で高性能な無線チップを安価に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0022】
(実施の形態1)
本発明における無線チップの第1の実施の形態として、図1を用いて説明する。図1は、本発明における無線チップに搭載される不揮発性記憶装置の記憶素子の回路図である。
【0023】
図1において、101は電源端子、102は接地端子、103はリセット端子、104は出力端子、105はP型トランジスタ、107は第1のインバータ、108は第2のインバータ、109は電気素子である。P型トランジスタ105は、リセット素子110を構成する。P型トランジスタ105のソース端子は電源端子101に、ドレイン端子は出力端子104に、ゲート端子はリセット端子103に各々接続されている。また、第1のインバータ107と、第2のインバータ108と、で、ラッチ素子111を構成する。
【0024】
電気素子は、レーザー描画により機械的に切断することで電気的絶縁が可能な電気抵抗、過電流の印加により熱的に破壊することで電気的絶縁が可能な電気抵抗またはダイオード、相変化メモリ、浮遊ゲートを有するメモリトランジスタ、MONOS構造を有するメモリトランジスタなどがあり得る。
【0025】
次に、記憶素子の動作について説明する。最初に、電気素子109が電気的に導通している場合を考える。なお、ここで、電気素子109の電気抵抗は、P型トランジスタ105のソースードレイン間抵抗よりは高いものとする。まず、無線チップのリセット時に、リセット端子103に”L”を印加する。P型トランジスタ105は電気的に導通するので、出力端子104には、”H”が出力される。また、同時にラッチ素子111には”H”が保持される。その後、リセット端子103に”H”を印加すると、P型トランジスタ105は電気的に絶縁し、電気素子109の電気抵抗により、出力端子104には、”L”が出力される。また、同時にラッチ素子111に保持される情報は”H”から、”L”に変化する。無線チップ動作時は、このままリセット端子103に”H”を保ち続ければ、出力端子104からは、常に”L”が出力されることになる。
【0026】
一方、電気素子109を電気的に絶縁している場合を考える。ここで、無線チップのリセット時に、リセット端子103に”L”を印加する。P型トランジスタ105は電気的に導通するので、出力端子104には、”H”が出力される。また、同時にラッチ素子111には”H”が保持される。その後、リセット端子103に”H”を印加すると、P型トランジスタ105は電気的に絶縁する。ここで、電気素子109は電気的に絶縁しているので、ラッチ素子111に保持される情報は”H”のままである。したがって、出力端子104には、”H”が出力されたままとなる。無線チップ動作時は、このままリセット端子103に”H”を保ち続ければ、出力端子104からは、常に”H”が出力されることになる。
【0027】
以上のように、記憶素子における電気素子が電気的に絶縁しているか、導通しているか、により、記憶素子の出力を”H”、または”L”とすることができる。また回路動作を始める最初にリセット端子103に”L”を印加するだけで、以降の読み出し時にアクセス時間を必要としない。そしてセンスアンプなど特別な回路を必要としない。
【0028】
なお、本実施の形態では、電気素子109を接地端子102と出力端子104との間に接続し、P型トランジスタ105のソース端子を電源端子101、ドレイン端子を出力端子104、ゲート端子をリセット端子103に各々接続する構成を示したが、電気素子を電源端子101と出力端子104との間に接続し、N型トランジスタのソース端子を接地端子102、ドレイン端子を出力端子104、ゲート端子をリセット端子103に各々接続する構成としてもよい。この場合、リセット時にリセット端子103に”H”を印加すれば、電気素子が電気的に絶縁しているか、導通しているか、により、記憶素子の出力を”L”、または”H”とすることができる。
【0029】
以上のような構成とすることで、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力の無線チップを安価に提供することができる。また、センスアンプなどの読み出しに特別な回路を必要とせずに、不揮発性記憶装置から格納された情報を読み出すことができ、不揮発性記憶装置の回路規模の増大を抑えることができるので、さらに小面積且つ低消費電力の不揮発性記憶装置を搭載した無線チップを提供することができる。
【0030】
(実施の形態2)
本発明における無線チップの第2の実施の形態として、第1の実施の形態とは異なる構成の無線チップについて、図2を用いて説明する。図2は、本発明における無線チップに搭載される不揮発性記憶装置の記憶素子の回路図である。
【0031】
図2において、電源端子101、接地端子102、リセット端子103、出力端子104、P型トランジスタ105、N型トランジスタ106、第1のインバータ107、第2のインバータ108、電気素子109である。P型トランジスタ105と、N型トランジスタ106と、で、リセット素子210を構成する。P型トランジスタ105のソース端子は電源端子101に、ドレイン端子は出力端子104に、ゲート端子はリセット端子103に各々接続されている。N型トランジスタ106のソース端子は接地端子102に、ゲート端子はリセット端子103に各々接続されている。電気素子109が有する2つの端子は、一方がP型トランジスタのドレイン端子及び出力端子104に、他方がN型トランジスタ106のドレイン端子に、それぞれ接続されている。また、第1のインバータ107と、第2のインバータ108と、で、ラッチ素子111を構成する。
【0032】
電気素子109は、レーザー描画により機械的に切断することで電気的絶縁が可能な電気抵抗、過電流の印加により熱的に破壊することで電気的絶縁が可能な電気抵抗またはダイオード、相変化メモリ、浮遊ゲートを有するメモリトランジスタ、MONOS構造を有するメモリトランジスタなどがあり得る。
【0033】
次に、記憶素子の動作について説明する。最初に、電気素子109が電気的に導通している場合を考える。図2において、無線チップのリセット時に、リセット端子103に”L”を印加する。P型トランジスタ105は電気的に導通し、N型トランジスタ106は電気的に絶縁するので、出力端子104には、”H”が出力される。また、同時にラッチ素子111には”H”が保持される。その後、リセット端子103に”H”を印加すると、P型トランジスタ105は電気的に絶縁し、N型トランジスタ106は電気的に導通するので、出力端子104には、”L”が出力される。また、同時にラッチ素子111に保持される情報は”H”から、”L”に変化する。無線チップ動作時は、このままリセット端子103に”H”を保ち続ければ、出力端子104からは、常に”L”が出力されることになる。
【0034】
一方、電気素子109を電気的に絶縁している場合を考える。ここで、無線チップのリセット時に、リセット端子103に”L”を印加する。P型トランジスタ105は電気的に導通し、N型トランジスタ106は電気的に絶縁するので、出力端子104には、”H”が出力される。また、同時にラッチ素子111には”H”が保持される。その後、リセット端子103に”H”を印加すると、P型トランジスタ105は電気的に絶縁し、N型トランジスタ106は電気的に導通する。ここで、電気素子109が電気的に絶縁しているので、ラッチ素子111に保持される情報は”H”のままである。したがって、出力端子104には、”H”が出力されたままとなる。無線チップ動作時は、このままリセット端子103に”H”を保ち続ければ、出力端子104からは、常に”H”が出力されることになる。
【0035】
以上のように、記憶素子における電気素子が電気的に絶縁しているか、導通しているか、により、記憶素子の出力を”H”、または”L”とすることができる。また、回路動作を始める最初にリセット端子103に”L”を印加するだけで、以降の読み出し時に、情報読み出しにアクセス時間は必要なく、センスアンプなど特別な回路を必要としない。
【0036】
なお、本実施の形態では、電気素子109をN型トランジスタ106と出力端子104との間に接続する構成を示したが、電気素子をP型トランジスタ105と出力端子104との間に接続する構成としてもよい。この場合、電気素子が電気的に絶縁しているか、導通しているか、により、記憶素子の出力を”L”、または”H”とすることができる。
【0037】
本実施の形態における無線チップに搭載する不揮発性記憶装置を構成する記憶素子では、第1の実施の形態に比べ、リセット時における貫通電流を大幅に削減することができるので、更なる低消費電力化が可能である。
【0038】
以上のような構成とすることで、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力の無線チップを安価に提供することができる。また、センスアンプなどの読み出しに特別な回路を必要とせずに、不揮発性記憶装置から格納された情報を読み出すことができ、不揮発性記憶装置の回路規模の増大を抑えることができるので、さらに小面積且つ低消費電力の不揮発性記憶装置を搭載した無線チップを提供することができる。
【0039】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。但し、本発明は多くの異なる態様で実施することが可能であり、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、実施例を説明するための全図において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【実施例1】
【0040】
本実施例では、実施の形態1及び実施の形態2で示した本発明における無線チップに搭載されている不揮発性記憶装置を構成する電気素子の例について、図3を用いて説明する。
【0041】
図3(A)は、電気抵抗301を用いて電気素子を構成した例である。第1の端子302、第2の端子303は、実施の形態1で説明した図1において、出力端子104、接地端子102に、各々電気的に接続する。また、実施の形態2で説明した図2において、出力端子104、N型トランジスタ106に、各々電気的に接続する。
【0042】
電気抵抗301は、レーザー描画により機械的に切断する領域を設け、これをレーザー描画により切断することで電気的絶縁を可能にする。また、第1の端子302と、第2の端子303と、の間に過電流を印加して熱的に破壊することで電気的絶縁を可能にする。電気抵抗301として、金属薄膜、導電性を有する半導体薄膜、導電性を有する有機薄膜、などを用いることができる。また、電気抵抗301に、相変化により電気抵抗値の変化する相変化メモリを用いてもよい。相変化メモリを用いることで、本発明における無線チップに搭載する不揮発性記憶装置に格納される情報を何回も書き換えることができ、無線チップの高機能化が図れる。
【0043】
なお本実施例では、電気抵抗301を切断することで電気的絶縁を行う例について説明したが、本発明で行う電気的絶縁はこの構成に限定されない。接地端子102と、出力端子104及びリセット素子110とを電気的に絶縁することができれば良い。よって、例えば電気素子109と接地端子102の間を電気的に絶縁しても良いし、電気素子109とリセット端子103及び出力端子104との間を電気的に絶縁しても良い。
【0044】
電気素子を電気抵抗で構成することで、レイアウト面積を増大させる事無く、不揮発性記憶装置を搭載した無線チップを提供することが可能である。
【0045】
図3(B)は、第1のダイオード311と、第2のダイオード312と、を用いて電気素子を構成した例である。第1の端子313、第2の端子314は、実施の形態1で説明した図1において、出力端子104、接地端子102に、各々電気的に接続する。また、実施の形態2で説明した図2において、出力端子104、N型トランジスタ106に、各々電気的に接続する。
【0046】
第1の端子313と、第2の端子314と、の間は、初期状態では電気的に絶縁している。ここで、第1の端子313に高電圧を印加すると、第1のダイオード311は熱的に破壊して電気的に導通する。この時、第1の端子313を第2の端子314より高電位にすると、第1の端子313と、第2の端子314と、は電気的に導通する。
【0047】
電気素子をダイオードで構成することで、動作時の貫通電流を大幅に低減できるので、不揮発性記憶装置を搭載したより低消費電流の無線チップを提供することが可能である。
【0048】
図3(C)は、浮遊ゲート型メモリトランジスタ321を用いて電気素子を構成した例である。ここでは、浮遊ゲート型メモリトランジスタ321として、N型メモリトランジスタの例を考えるが、P型メモリトランジスタとすることも同様に可能である。また、浮遊ゲート型メモリトランジスタ以外にも、MONOS型メモリトランジスタとすることも同様に可能である。
【0049】
第1の端子322、第2の端子323、第3の端子324は、実施の形態1で説明した図1において、出力端子104、接地端子102、リセット端子103に、各々電気的に接続する。また、実施の形態2で説明した図2において、出力端子104、N型トランジスタ106、リセット端子103に、各々電気的に接続する。
【0050】
浮遊ゲート型メモリトランジスタ321は、浮遊ゲートに蓄積された電荷量に応じて、しきい値電圧を変更することができる。すなわち、しきい値電圧が高いときは電気的に絶縁、しきい値電圧が低いときは電気的に導通とすることが出来る。
【0051】
浮遊ゲート型メモリトランジスタ321は、例えば、第1の端子322と第2の端子323とを接地し、第3の端子324に高電圧を印加することで、しきい値電圧を増大、すなわち、電気的に絶縁とすることができる。また、第1の端子322と第2の端子323とを接地し、第3の端子324に負の高電圧を印加することで、しきい値電圧を低下、すなわち、電気的に導通とすることができる。
【0052】
電気素子を浮遊ゲート型メモリトランジスタで構成することで、何回も書き換えが可能で、動作時の貫通電流を大幅に低減できるので、不揮発性記憶装置を搭載したより高性能な低消費電流の無線チップを提供することが可能である。
【0053】
以上のような構成とすることで、不揮発性記憶装置を搭載した低消費電力の無線チップを安価に提供することができる。また、センスアンプなどの読み出しに特別な回路を必要とせずに、不揮発性記憶装置から格納された情報を読み出すことができ、不揮発性記憶装置の回路規模の増大を抑えることができるので、さらに小面積且つ低消費電力の不揮発性記憶装置を搭載した無線チップを提供することができる。
【実施例2】
【0054】
本実施例では、本発明における半導体装置の例として、暗号処理機能を有する無線チップについて図16、図17を用いて説明する。図16は、無線チップのブロック図、図17は無線チップのレイアウト図である。
【0055】
まず、図16を用いて無線チップのブロック構成を説明する。図16において、無線チップ2601は、CPU2602と、ROM2603と、RAM2604と、コントローラ2605と、を有する演算回路2606と、アンテナ2607と、共振回路2608と、電源回路2609と、リセット回路2610と、クロック生成回路2611と、復調回路2612と、変調回路2613と、電源管理回路2614と、を有するアナログ部2615と、を含む。
コントローラ2605は、CPUインターフェース(IF)2616と、制御レジスタ2617と、コード抽出回路2618と、符号化回路2619と、を有する。なお、図16では、説明の簡単化のため、通信信号を受信信号2620と、送信信号2621とに分けて示したが、実際には、両者は重ね合わされており、無線チップ2601及びリーダ/ライタの間で同時に送受信される。受信信号2620は、アンテナ2607と共振回路2608とで受信された後、復調回路2612により復調される。また、送信信号2621は、変調回路2613により変調された後、アンテナ2607より送信される。
【0056】
図16において、通信信号により形成される磁界中に無線チップ2601を置くと、アンテナ2607と共振回路2608により、誘導起電力を生じる。誘導起電力は、電源回路2609における電気容量により保持され、また電気容量によって電位が安定化され、無線チップ2601の各回路に電源電圧として供給される。リセット回路2610は、無線チップ2601全体の初期リセット信号を生成する。
【0057】
例えば、電源電圧の上昇に遅延して立ち上がる信号をリセット信号として生成する。クロック生成回路2611は、電源管理回路2614より生成される制御信号に応じて、クロック信号の周波数とデューティー比を変更する。復調回路2612は、ASK方式(振幅変調方式)の受信信号2620の振幅の変動を”0”/”1”の受信データ2622として検出する。復調回路2612は、例えばローパスフィルターとする。
【0058】
さらに、変調回路2613は、送信データをASK方式の送信信号2621の振幅を変動させて送信する。例えば、送信データ2623が”0”の場合、共振回路2608の共振点を変化させ、通信信号の振幅を変化させる。電源管理回路2614は、電源回路2609より演算回路2606に供給される電源電圧または演算回路2606における消費電流を監視し、クロック生成回路2611において、クロック信号の周波数とデューティー比を変更するための制御信号を生成する。
【0059】
本実施例における無線チップの動作を説明する。まず、無線チップ2601は、リーダ/ライタより送信された暗号文データを含む受信信号2620を受信する。受信信号2620は、復調回路2612で復調された後、コード抽出回路2618で制御コマンドや暗号文のデータなどに分解され、制御レジスタ2617に格納される。ここで、制御コマンドは、無線チップ2601の応答を指定するデータである。例えば、固有ID番号の送信、動作停止、暗号解読などを指定する。ここでは、暗号解読の制御コマンドを受信したとする。
【0060】
続いて、演算回路2606において、CPU2602が、ROM2603に格納された暗号解読プログラムにしたがって、ROM2603にあらかじめ格納された秘密鍵2624を用いて暗号文を解読(復号)する。
【0061】
復号された暗号文(復号文)は、制御レジスタ2617に格納される。この際、RAM2604をデータ格納領域として用いる。なお、CPU2602は、CPUIF2616を介してROM2603、RAM2604、制御レジスタ2617にアクセスする。CPUIF2616は、CPU2602が要求するアドレスより、ROM2603、RAM2604、制御レジスタ2617のいずれかに対するアクセス信号を生成する機能を有している。
【0062】
最後に、符号化回路2619において、復号文から送信データ2623を生成し、送信データ2623を変調回路2613で変調し、アンテナ2607より送信信号2621をリーダ/ライタに送信する。
【0063】
なお、本実施例では、演算方式として、ソフトウェア的に処理する方式、すなわち、CPUと大規模メモリとで演算回路を構成し、プログラムをCPUで実行する方式について説明したが、目的に応じて最適な演算方式を選び、当該方式に基づいて演算回路を構成することも可能である。例えば、演算方式として、他にも、演算をハードウェア的に処理する方式と、ハードウェア及びソフトウェアを併用する方式と、が考えられる。ハードウェア的に処理する方式では、専用回路で演算回路を構成すれば良い。ハードウェア及びソフトウェアを併用する方式では、専用回路と、CPUと、メモリと、で演算回路を構成し、専用回路で演算処理の一部分を行い、残りの演算処理のプログラムをCPUで実行すれば良い。
【0064】
次に、図17を用いて、無線チップのレイアウト構成について説明する。なお、図17において、図16に相当する部分には、同一の番号を付し、説明を省略する。
【0065】
図17において、FPCパッド2707は、FPC(Flexible Print Circuit)を無線チップ2601に貼る時に用いる電極パッド群であり、アンテナバンプ2708は、アンテナ(図示せず)を貼り付ける電極パッドである。なお、アンテナを貼り付ける際には、アンテナバンプ2708に過度の圧力が印加される可能性がある。したがって、アンテナバンプ2708の下には、トランジスタなど、回路を構成する部品を配置しないことが望ましい。
【0066】
なお、本実施例では、アンテナを外付けとする構成について説明するが、無線チップ2601上に直接アンテナ形成する、所謂オンチップアンテナとしてもよい。この場合、無線チップの小型化に有効である。
【0067】
FPCパッド2707は、主に不良解析時に用いると有効である。無線チップでは、電源電圧を通信信号から得るため、例えば、アンテナや電源回路で不良が発生している場合、演算回路が全く動作しない。このため、不良解析が著しく困難となる。しかし、FPCより、FPCパッド2707を介して無線チップ2601に電源電圧を供給し、また、アンテナより供給される電気信号の代わりに、任意の電気信号を入力することで、演算回路を動作させることが可能になる。したがって、不良解析が効率的に行える。
【0068】
さらに、FPCパッド2707を、プローバーを使った測定が可能な配置にすると更に有効である。すなわち、FPCパッド2707において、電極パッドを、プローバーの針のピッチに合わせて配置することで、プローバーによる測定が可能となる。プローバーを用いることで、不良解析時に、FPCを貼り付ける工数を減らすことができる。また、基板上に複数の無線チップを形成した状態でも測定できるので、個々の無線チップに分断する工数も減らすことができる。また、量産時に、アンテナを貼り付ける工程の直前に、無線チップの良品検査を行うことが可能である。したがって、工程の早い段階で不良品を選別できるので、生産コストを削減することができる。
【0069】
なお、実施の形態1、実施の形態2、実施例1で説明した電気素子から構成される不揮発性記憶装置を、本実施例におけるROM2603に組み込むことができる。
【実施例3】
【0070】
本実施例では、本発明における半導体装置を、薄膜トランジスタ(TFT)により構成する場合について、図5を用いて説明する。
【0071】
図5(A)は、絶縁基板1110上に形成されたTFT部1101とメモリ部1102の断面図を示す。TFT部1101は、例えば、演算回路のトランジスタに用いると良い。メモリ部1102は、例えば、不揮発性メモリのメモリ素子に用いると良い。絶縁基板1110には、ガラス基板、石英基板、珪素からなる基板、金属基板、プラスチック基板等を用いることができる。
【0072】
またガラス基板を用いる場合、TFT等が形成される側と反対面を研磨し、薄くしたものを用いることができる。このように薄くしたガラス基板は、装置の軽量化、薄型化を達成することができる。
【0073】
絶縁基板1110上には下地膜1111が設けられている。TFT部1101では下地膜1111を介して薄膜トランジスタ1120、1121が設けられ、メモリ部1102には下地膜1111を介して薄膜トランジスタ1122が設けられている。各薄膜トランジスタは、島状に加工された半導体膜1112、ゲート絶縁膜を介して設けられたゲート電極1114、ゲート電極側面に設けられた絶縁物(所謂サイドウォール)1113を有している。半導体膜1112は、膜厚が0.2μm以下、代表的には40nmから170nm、好ましくは50nmから150nmとなるように形成する。さらに、絶縁物(サイドウォール)1113、及び半導体膜1112を覆う絶縁膜1116、半導体膜1112に形成された不純物領域に接続する電極1115を有する。なお、ゲート絶縁膜及び絶縁膜1116にコンタクトホールを形成し、当該コンタクトホールに導電膜を形成し、当該導電膜を所望の形状に加工することにより、不純物領域に接続された電極1115を形成することができる。
【0074】
本発明における無線チップを構成する薄膜トランジスタにおいて、ゲート絶縁膜等を代表とする絶縁膜は、高密度プラズマ処理を用いて作製することができる。高密度プラズマ処理とは、プラズマ密度が1×1011cm−3以上、好ましくは1×1011cm−3から9×1015cm−3以下であり、マイクロ波(例えば周波数2.45GHz)といった高周波を用いたプラズマ処理である。このような条件でプラズマを発生させると、低電子温度が0.2eVから2eVとなる。このように低電子温度が特徴である高密度プラズマは、活性種の運動エネルギーが低いため、プラズマダメージが少なく欠陥が少ない膜を形成することができる。このようなプラズマ処理を可能とする成膜室に、被形成体、ゲート絶縁膜を形成する場合であれば所望の形状に加工された半導体膜が形成された基板を配置する。そして、プラズマ発生用の電極、所謂アンテナと被形成体との距離を20mmから80mm、好ましくは20mmから60mmとして成膜処理を行う。このような高密度プラズマ処理は、低温プロセス(基板温度400℃以下)の実現が可能となる。そのため、耐熱性の低いプラスチックを基板上に成膜することができる。
【0075】
このような絶縁膜の成膜雰囲気は窒素雰囲気、又は酸素雰囲気とすることができる。窒素雰囲気とは、代表的には、窒素と希ガスとの混合雰囲気、又は窒素と水素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。また酸素雰囲気とは、代表的には、酸素と希ガスとの混合雰囲気、酸素と水素と希ガスとの混合雰囲気、又は一酸化二窒素と希ガスとの混合雰囲気である。希ガスは、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの少なくとも1つを用いることができる。
【0076】
このように形成された絶縁膜は、他の被膜に与えるダメージが少なく、緻密なものとなる。また高密度プラズマ処理により形成された絶縁膜は、当該絶縁膜と接触する界面状態を改善することができる。例えば高密度プラズマ処理を用いてゲート絶縁膜を形成すると、半導体膜との界面状態を改善することができる。その結果、薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0077】
絶縁膜の作製に高密度プラズマ処理を用いる場合を説明したが、半導体膜に高密度プラズマ処理を施してもよい。高密度プラズマ処理によって、半導体膜表面の改質を行うことができる。その結果、界面状態を改善でき、強いては薄膜トランジスタの電気特性を向上させることができる。
【0078】
また平坦性を高めるため、絶縁膜1117、1118が設けられているとよい。このとき絶縁膜1117は有機材料から形成し、絶縁膜1118は無機材料から形成するとよい。絶縁膜1117、1118が設けられている場合、電極1115は、これら絶縁膜1117、1118にコンタクトホールを介して不純物領域と接続するように形成することができる。
【0079】
さらに絶縁膜1125が設けられ、電極1115と接続するように下部電極1127を形成する。下部電極1127の端部を覆い、下部電極1127が露出するように開口部が設けられた絶縁膜1128を形成する。開口部内に、メモリ材料層1129を形成し、上部電極1130を形成する。このようにして、下部電極1127、メモリ材料層1129、上部電極1130を有するメモリ素子1123が形成される。
【0080】
メモリ材料層1129は、電気的作用または光学的作用により導電性が変化する有機化合物、無機絶縁物、又は有機化合物と無機化合物とが混合してなる層で形成する。メモリ材料層1129は、単層で設けてもよいし、複数の層を積層させて設けてもよい。また、有機化合物と無機化合物との混合層及び他の電気的作用または光学的作用により導電性が変化する有機化合物からなる層とを積層させて設けてもよい。
【0081】
メモリ材料層1129を構成することが可能な無機絶縁物としては、酸化珪素、窒化珪素、酸化窒化珪素、窒化酸化珪素等を用いることができる。
【0082】
メモリ材料層1129を構成することが可能な有機絶縁物としては、ポリイミド、アクリル、ポリアミド、ベンゾシクロブテン、エポキシ等に代表される有機樹脂を用いることができる。
【0083】
また、メモリ材料層1129を構成することが可能な、電気的作用または光学的作用により導電性が変化する有機化合物としては、正孔輸送性が高い有機化合物材料又は電子輸送性が高い有機化合物材料を用いることができる。
【0084】
正孔輸送性の高い有機化合物材料としては、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:α−NPD)や4,4’−ビス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−ビフェニル(略称:TPD)や4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニル−アミノ)−トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニル−アミノ]−トリフェニルアミン(略称:MTDATA)や4,4’−ビス(N−(4−(N,N−ジ−m−トリルアミノ)フェニル)−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)などの芳香族アミン系(即ち、ベンゼン環−窒素の結合を有する)の化合物やフタロシアニン(略称:HPc)、銅フタロシアニン(略称:CuPc)、バナジルフタロシアニン(略称:VOPc)等のフタロシアニン化合物を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する物質である。但し、電子よりも正孔の輸送性が高い物質であれば、上記の物質以外のものを用いてもよい。
【0085】
電子を受け取りやすい無機化合物材料として、周期表第4族乃至第12族のいずれかの遷移金属の金属酸化物、金属窒化物または金属酸化窒化物を用いることができる。具体的には、チタン酸化物(TiOx)、ジルコニウム酸化物(ZrOx)、バナジウム酸化物(VOx)、モリブデン酸化物(MoOx)、タングステン酸化物(WOx)、タンタル酸化物(TaOx)、ハフニウム酸化物(HfOx)、ニオブ酸化物(NbOx)、コバルト酸化物(CoOx)、レニウム酸化物(ReOx)、ルテニウム酸化物(RuOx)、亜鉛酸化物(ZnO)、ニッケル酸化物(NiOx)、銅酸化物(CuOx)等を用いることができる。また、ここでは具体例として金属酸化物を例に挙げたが、もちろんこれら金属の窒化物や酸化窒化物を用いてもよい。
【0086】
電子輸送性の高い有機化合物材料としては、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(略称:BAlq)等キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等からなる材料を用いることができる。また、この他、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体などの材料も用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(略称:p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)等を用いることができる。ここに述べた物質は、主に10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質である。但し、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、上記の物質以外のものを用いてもよい。
【0087】
電子を与えやすい無機化合物材料として、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物、希土類金属酸化物、アルカリ金属窒化物、アルカリ土類金属窒化物、希土類金属窒化物を用いることができる。具体的には、リチウム酸化物(LiOx)、ストロンチウム酸化物(SrOx)、バリウム酸化物(BaOx)、エルビウム酸化物(ErOx)、ナトリウム酸化物(NaOx)、リチウム窒化物(LiNx)、マグネシウム窒化物(MgNx)、窒化カルシウム(CaNx)、イットリウム窒化物(YNx)、ランタン窒化物(LaNx)等を用いることができる。
【0088】
さらには、無機化合物材料として、アルミニウム酸化物(AlOx)、ガリウム酸化物(GaOx)、ケイ素酸化物(SiOx)、ゲルマニウム酸化物(GeOx)、インジウム錫酸化物(以下ITOとする)等のほか、種々の金属酸化物、金属窒素化物または金属酸化窒化物を用いることができる。
【0089】
また、メモリ材料層1129が金属酸化物または金属窒化物の中から選ばれた化合物と正孔輸送性の高い化合物とから形成される場合、さらに立体障害の大きな(平面構造とは異なり三次元的な広がりを有する構造をもつ)化合物を加えた構成としてもよい。立体障害の大きな化合物としては、5,6,11,12−テトラフェニルテトラセン(略称:ルブレン)が好ましい。但し、これ以外に、ヘキサフェニルベンゼン、t−ブチルペリレン、9,10−ジ(フェニル)アントラセン、クマリン545T等も用いることができる。この他、デンドリマー等も有効である。
【0090】
さらには、電子輸送性の高い有機化合物材料で形成される層と、正孔輸送性の高い有機化合物材料層との間に、4−ジシアノメチレン−2−メチル−6−[2−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−イル)エテニル]−4H−ピラン(略称:DCJT)、4−ジシアノメチレン−2−t−ブチル−6−(1,1,7,7−テトラメチルジュロリジル−9−エニル)−4H−ピラン、ペリフランテン、2,5−ジシアノ−1,4−ビス[2−(10−メトキシ−1,1,7,7−テトラメチルジュロリジン−9−イル)エテニル]ベンゼン、N,N’−ジメチルキナクリドン(略称:DMQd)、クマリン6、クマリン545T、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、9,9’−ビアントリル、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPA)や9,10−ビス(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2,5,8,11−テトラ−t−ブチルペリレン(略称:TBP)等の発光物質を設けてもよい。
【0091】
また、メモリ材料層1129には、光学的作用により、電気抵抗が変化する材料を用いることができる。例えば、光を吸収することによって酸を発生する化合物(光酸発生剤)をドープした共役高分子を用いることができる。共役高分子として、ポリアセチレン類、ポリフェニレンビニレン類、ポリチオフェン類、ポリアニリン類、ポリフェニレンエチニレン類等を用いることができる。また、光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩、アリールヨードニウム塩、o−ニトロベンジルトシレート、アリールスルホン酸p−ニトロベンジルエステル、スルホニルアセトフェノン類、Fe−アレン錯体PF塩等を用いることができる。
【0092】
なお、メモリ材料層1129としては、結晶状態と非晶質状態の間で可逆的に変化する材料や第1の結晶状態と第2の結晶状態の間で可逆的に変化する材料等の相変化材料を用いることもできる。また、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する材料を用いることも可能である。
【0093】
結晶状態と非晶質状態の間で可逆的に変化する材料とは、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、アンチモン(Sb)、硫黄(S)、酸化テルル(TeOx)、スズ(Sn)、金(Au)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)、インジウム(In)、タリウム(Tl)、Co(コバルト)及び銀(Ag)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Ge−Te−Sb−S、Te−TeO−Ge−Sn、Te−Ge−Sn−Au、Ge−Te−Sn、Sn−Se−Te、Sb−Se−Te、Sb−Se、Ga−Se−Te、Ga−Se−Te−Ge、In−Se、In−Se−Tl−Co、Ge−Sb−Te、In−Se−Te、Ag−In−Sb−Te系材料が挙げられる。また、第1の結晶状態と第2の結晶状態の間で可逆的に変化する材料とは、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、インジウム(In)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びテルル(Te)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Ag−Zn、Cu−Al−Ni、In−Sb、In−Sb−Se、In−Sb−Teが挙げられる。この材料の場合、相変化は2つの異なる結晶状態の間で行われる。また、非晶質状態から結晶状態にのみ変化する材料とは、テルル(Te)、酸化テルル(TeOx)、パラジウム(Pd)、アンチモン(Sb)、セレン(Se)及びビスマス(Bi)から選択された複数を有する材料であり、例えば、Te−TeO、Te−TeO−Pd、SbSe/BiTeが挙げられる。
【0094】
メモリ材料層1129は、蒸着法、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、CVD法等を用いて形成することができる。また、有機化合物と無機化合物とを含む混合層は、各々の材料を同時に成膜することにより形成することができ、抵抗加熱蒸着同士による共蒸着法、電子ビーム蒸着同士による共蒸着法、抵抗加熱蒸着と電子ビーム蒸着による共蒸着法、抵抗加熱蒸着とスパッタリングによる成膜、電子ビーム蒸着とスパッタリングによる成膜など、同種、異種の方法を組み合わせて形成することができる。
【0095】
なお、メモリ材料層1129は、電気的作用又は光学的作用により記憶素子の導電性が変化する膜厚で形成する。
【0096】
下部電極1127又は上部電極1130は、導電性材料から形成することができる。例えば、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)もしくはシリコン(Si)の元素からなる膜又はこれらの元素を用いた合金膜等から形成することができる。またインジウム錫酸化物(ITO)、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物、酸化インジウムに2〜20wt%の酸化亜鉛(ZnO)を混合したターゲットを用いて形成された酸化物導電性材料等の透光性材料を用いることができる。
【0097】
さらに平坦性を高め、不純物元素の侵入を防止するため、絶縁膜1131を形成するとよい。
【0098】
本実施例で説明した絶縁膜は、無機材料又は有機材料を用いることができる。無機材料は、酸化珪素、窒化珪素を用いることができる。有機材料はポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサン、ポリシラザンを用いることができる。なお、シロキサン樹脂とは、Si−O−Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサンは、シリコン(Si)と酸素(O)との結合で骨格構造が構成される。置換基として、少なくとも水素を含む有機基(例えばアルキル基、芳香族炭化水素)が用いられる。置換基として、フルオロ基を用いてもよい。または置換基として、少なくとも水素を含む有機基と、フルオロ基とを用いてもよい。ポリシラザンは、珪素(Si)と窒素(N)の結合を有するポリマー材料を出発原料として形成される。
【0099】
図5(B)は、図5(A)と異なり、電極1115のコンタクトホール1151内にメモリ材料層を形成したメモリの断面図を示す。図5(A)と同様に、下部電極として電極1115を用い、電極1115上にメモリ材料層1129、上部電極1130を形成し、メモリ素子1123を形成することができる。その後、絶縁膜1131を形成する。図5(B)のその他の構成は図5(A)と同様であるため、説明を省略する。
【0100】
このようにコンタクトホール1151にメモリ素子を形成すると、メモリ素子の小型化を図ることができる。またメモリ用の電極が不要となるため製造工程を削減し、低コストでメモリを搭載した無線チップを提供することができる。
【0101】
以上のように、半導体装置を、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板などの絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を活性層として用いた薄膜トランジスタから構成することで、高性能且つ低消費電力の半導体装置を、より軽量で安価に提供することができる。
【0102】
本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1、実施例2と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例4】
【0103】
本実施例では、本発明における半導体装置において、回路の一部を構成する薄膜トランジスタのレイアウトについて、図6〜図8を用いて説明する。
【0104】
実施例3で示した半導体膜1112に相当する半導体層は、絶縁表面を有する基板の全面若しくは一部(トランジスタの半導体領域として確定されるよりも広い面積を有する領域)に、下地膜等を介して形成される。
そして、フォトリソグラフィー技術によって、半導体層上にマスクパターンを形成する。
そのマスクパターンを利用して半導体層をエッチング処理することにより、図6に示す薄膜トランジスタのソース領域、ドレイン領域及びチャネル形成領域を含む特定形状を有する島状の半導体パターン1201を形成することができる。
【0105】
そのパターン形成された半導体層の形状は、薄膜トランジスタの特性に基づき、要求される回路特性やレイアウトの適切さを考慮して決められる。
【0106】
本発明における無線チップの回路を構成する薄膜トランジスタにおいて、半導体層を形成するためのフォトマスクは、パターンを備えている。
このフォトマスクのパターンは角部を有し、角部に存在する一辺が10μm以下の直角三角形を削除し、丸みを帯びている。
このマスクパターンの形状は、図6に示すように半導体層のパターン形状として転写することができる。
また半導体層への転写のとき、半導体パターン1201の角部は、フォトマスクパターンの角部よりさらに丸みを帯びるように転写されることがある。すなわち、半導体膜のパターンの角部には、フォトマスクのパターンよりもさらにパターン形状をなめらかにした丸みが設けられてもよい。なお図6において、後に形成されるゲート電極1114やゲート配線1301、電極1115を点線で示す。
【0107】
次に、角部に丸みが設けられるように加工された半導体層上には、ゲート絶縁膜が形成される。
そして、実施例3で示したように、半導体層と一部が重なるようにゲート電極1114、及び同時にゲート配線1301が形成される。ゲート電極又はゲート配線は、金属層や半導体層を成膜し、フォトリソグラフィー技術によって形成することができる。
【0108】
このゲート電極又はゲート配線を形成するためのフォトマスクは、パターンを備えている。このフォトマスクのパターンは、角部を有し、この角部に形成される直角三角形の一辺が10μm以下、または配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の大きさに角部を削除している。このマスクパターンの形状は、図7に示すように、ゲート電極又はゲート配線のパターン形状として転写することができる。またゲート電極又はゲート配線への転写のときに、ゲート電極又はゲート配線の角部がさらに丸みを帯びるように転写されることがある。すなわちゲート電極又はゲート配線の角部には、フォトマスクのパターンよりもさらにパターン形状をなめらかにした丸めが設けられていてもよい。
【0109】
このようなフォトマスクを用いて形成されたゲート電極又はゲート配線の角部に存在する、一辺が線幅の1/2以下で、1/5以上の直角三角形を削除し、角部に丸みをおびさせることができる。なお図7において、後に形成される電極1115を点線で示す。
【0110】
このようなゲート電極又はゲート配線は、レイアウトの制約上、矩形に折れ曲がる。そのため、ゲート電極又はゲート配線の丸みを帯びた角部には凸部(外側の辺)と凹部(内側の辺)が設けられる。この丸みを帯びた凸部ではプラズマによるドライエッチの際、異常放電による微粉の発生を抑えることができる。また丸みを帯びた凹部では、洗浄のときに、たとえできた微粉があっても、それが角に集まりやすいのを洗い流すことができる。その結果、歩留まりを向上させることができるという効果を有する。
【0111】
次に、ゲート電極又はゲート配線上には、上記実施例3で示したように絶縁膜1116、1117、1118に相当する絶縁層等を形成する。勿論、本発明において絶縁膜は単層であっても構わない。
【0112】
そして絶縁層上に、絶縁膜には所定の位置に開口を形成し、当該開口に電極1115に相当する配線を形成する。この開口は、下層に位置する半導体層又はゲート配線層と、配線層との間の電気的な接続をとるために設けられる。配線は、フォトリソグラフィー技術によってマスクパターンが形成され、エッチング加工により所定のパターンに形成される。
【0113】
配線によって、ある特定の素子間を連結することができる。この配線は、特定の素子と素子の間を直線で結ぶのではなく、レイアウトの制約上、矩形に折れ曲がる(以下、屈曲部と記す)。また配線は、開口部やその他の領域において配線幅が変化することがある。例えば開口部では、開口が配線幅と同等若しくは大きい場合には、その部分で配線幅が広がるように変化する。また、配線は回路のレイアウト上、容量部の一方の電極を兼ねるため、配線幅を大きくとることがある。
【0114】
この場合において、フォトマスクのパターンの屈曲部において、屈曲部に形成される一辺が10μm以下、または、配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の直角三角形を削除する。そして、図8に示すように、配線のパターンにも同様な丸みを帯びさせる。配線の角部に存在する一辺が線幅の1/2以下で、1/5以上の直角三角形を削除し、屈曲部に丸みをおびさせることができる。このような丸みを帯びた配線は、その屈曲部における凸部はプラズマによるドライエッチの際、異常放電による微粉の発生を抑え、凹部では、洗浄のときに、たとえできた微粉であっても、それが角に集まりやすいのを洗い流す結果として歩留まりを向上させることができるという効果を有する。配線の角部が丸みを帯びることにより、電気的にも伝導させることができる。
【0115】
図8に示したレイアウトを有する回路において、屈曲部や配線幅が変化する部位の角部をなめらかにして、丸みを付けることにより、プラズマによるドライエッチの際、異常放電による微粉の発生を抑え、洗浄のときに、たとえできた微粉であっても、それが角に集まりやすいのを洗い流す結果として歩留まりを向上させることができるという効果を有する。すなわち、製造工程における塵や微粉の問題を解消することができる。また、配線の角部が丸みを帯びた構成をとることにより、電気的にも伝導させることができる。
特に多数の平行配線が設けられる駆動回路部等の配線において、ゴミを洗い流すことを可能とすることは、きわめて好都合である。
【0116】
なお、本実施例では、半導体層、ゲート配線、配線の3つのレイアウトにおいて、角部又は屈曲部に丸みを帯びる形態を説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、いずれか一の層において、角部又は屈曲部に丸みを帯びさせ、製造工程における塵や微粉等の問題を解消することができればよい。
【0117】
以上のようなレイアウトを用いて、半導体装置を構成することで、高性能且つ低消費電力の半導体装置を、より軽量で安価に提供することができる。
【0118】
なお、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜3と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例5】
【0119】
本実施例では、本発明における半導体装置を構成する要素の一つとして、スタティックRAM(SRAM)を構成する一例について、図9〜図11を参照して説明する。
【0120】
図9(A)で示す半導体層1510、1511はシリコン若しくはシリコンを成分とする結晶性の半導体で形成することが好ましい。例えば、シリコン膜をレーザアニールなどによって結晶化された多結晶シリコン、単結晶シリコンなどが適用される。その他にも半導体特性を示す、金属酸化物半導体、アモルファスシリコン、有機半導体を適用することも可能である。
【0121】
いずれにしても、最初に形成する半導体層は絶縁表面を有する基板の全面若しくは一部(トランジスタの半導体領域として確定されるよりも広い面積を有する領域)に形成する。そして、フォトリソグラフィー技術によって、半導体層上にマスクパターンを形成する。そのマスクパターンを利用して半導体層をエッチング処理することにより、TFTのソース領域及びドレイン領域及びチャネル形成領域を含む特定形状の島状の半導体層1510、1511を形成する。その半導体層1510、1511はレイアウトの適切さを考慮して決められる。
【0122】
図9(A)で示す半導体層1510、1511を形成するためのフォトマスクは、図9(B)に示すマスクパターン1520を備えている。このマスクパターン1520は、フォトリソグラフィー工程で用いるレジストがポジ型かネガ型かで異なる。ポジ型レジストを用いる場合には、図9(B)で示すマスクパターン1520は、遮光部として作製される。マスクパターン1520は、多角形の頂部Aを削除した形状となっている。また、屈曲部Bにおいては、その角部が直角とならないように複数段に渡って屈曲する形状となっている。このフォトマスクのパターンは、例えば、パターンの角部であって(直角三角形)の一辺が10μm以下の大きさに角部を削除している。
【0123】
図9(B)で示すマスクパターン1520は、その形状が、図9(A)で示す半導体層1510、1511に反映される。その場合、マスクパターン1520と相似の形状が転写されても良いが、マスクパターン1520の角部がさらに丸みを帯びるように転写されていても良い。すなわち、マスクパターン1520よりもさらにパターン形状をなめらかにした、丸め部を設けても良い。
【0124】
半導体層1510、1511の上には、酸化シリコン若しくは窒化シリコンを少なくとも一部に含む絶縁層が形成される。この絶縁層を形成する目的の一つはゲート絶縁層である。そして、図10(A)で示すように、半導体層と一部が重なるようにゲート配線1612、1613、1614を形成する。ゲート配線1612は半導体層1510に対応して形成される。ゲート配線1613は半導体層1510、1511に対応して形成される。また、ゲート配線1614は半導体層1510、1511に対応して形成される。ゲート配線は、金属層又は導電性の高い半導体層を成膜し、フォトリソグラフィー技術によってその形状を絶縁層上に作り込む。
【0125】
このゲート配線を形成するためのフォトマスクは、図10(B)に示すマスクパターン1621を備えている。このマスクパターン1621は、角部であって、(直角三角形)の一辺が10μm以下、または、配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の大きさに角部を削除している。図10(B)で示すマスクパターン1621は、その形状が、図10(A)で示すゲート配線1612、1613、1614に反映される。その場合、マスクパターン1621と相似の形状が転写されても良いが、マスクパターン1621の角部がさらに丸みを帯びるように転写されていても良い。すなわち、マスクパターン1621よりもさらにパターン形状をなめらかにした、丸め部を設けても良い。すなわち、ゲート配線1612、1613、1614の角部に存在する、一辺が線幅の1/2以下であって1/5以上の直角三角形を削除し、コーナー部に丸みをおびさせる。凸部はプラズマによるドライエッチの際、異常放電による微粉の発生を抑え、凹部では、洗浄のときに、たとえできた微粉であっても、それが角に集まりやすいのを洗い流す結果として歩留まりを向上させることができるという効果を有する。
【0126】
層間絶縁層はゲート配線1612、1613、1614の次に形成される層である。層間絶縁層は酸化シリコンなどの無機絶縁材料若しくポリイミドやアクリル樹脂などを使った有機絶材料を使って形成する。この層間絶縁層とゲート配線1612、1613、1614の間には窒化シリコン若しくは窒化酸化シリコンなどの絶縁層を介在させても良い。また、層間絶縁層上にも窒化シリコン若しくは窒化酸化シリコンなどの絶縁層を設けても良い。この絶縁層は、外因性の金属イオンや水分などTFTにとっては良くない不純物により半導体層やゲート絶縁層を汚染するのを防ぐことができる。
【0127】
層間絶縁層には所定の位置に開口が形成されている。例えば、下層にあるゲート配線や半導体層に対応して設けられる。金属若しくは金属化合物の一層若しくは複数層で形成される配線層は、フォトリソグラフィー技術によってマスクパターンが形成され、エッチング加工により所定のパターンに形成される。そして、図11(A)で示すように、半導体層と一部が重なるように配線1715〜1720を形成する。配線はある特定の素子間を連結する。配線は特定の素子と素子の間を直線で結ぶのではなく、レイアウトの制約上屈曲部が含まれる。また、コンタクト部やその他の領域において配線幅が変化する。コンタクト部では、コンタクトホールが配線幅と同等若しくは大きい場合には、その部分で配線幅が広がるように変化する。
【0128】
この配線1715〜1720を形成するためのフォトマスクは、図11(B)に示すマスクパターン1722を備えている。この場合においても、配線は、そのコーナー部であって(直角三角形)の一辺が10μm以下、または、配線の線幅の1/2以下で、線幅の1/5以上の大きさに角部を削除し、コーナー部が丸みをおびるパターンを有せしめる。このような配線は、凸部はプラズマによるドライエッチの際、異常放電による微粉の発生を抑え、凹部では、洗浄のときに、たとえできた微粉であっても、それが角に集まりやすいのを洗い流す結果として歩留まりを向上させることができるという効果を有する。配線の角部がラウンドをとることにより、電気的にも伝導させることができる。また、多数の平行配線では、ゴミを洗い流すのにはきわめて好都合である。
【0129】
図11(A)には、nチャネル型トランジスタ1721〜1724、Pチャネル型トランジスタ1725、1726が形成されている。nチャネル型トランジスタ1723とPチャネル型トランジスタ1725及びnチャネル型トランジスタ1724とPチャネル型トランジスタ1726はインバータ1727、1728を構成している。この6つのトランジスタを含む回路はSRAMを形成している。これらのトランジスタの上層には、窒化シリコンや酸化シリコンなどの絶縁層が形成されていても良い。
【0130】
以上のような構成とすることで、高性能且つ低消費電力の半導体装置を、より軽量で安価に提供することができる。
【0131】
なお、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例4と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例6】
【0132】
本実施例では、本発明における半導体装置を構成するトランジスタについて、図12及び図13を参照して説明する。
【0133】
本発明における半導体装置を構成するトランジスタは、単結晶基板に形成されるMOSトランジスタの他、薄膜トランジスタ(TFT)で構成することもできる。図12はこれらの回路を構成するトランジスタの断面構造を示す図である。図12には、nチャネル型トランジスタ1821、nチャネル型トランジスタ1822、容量素子1824、抵抗素子1825、pチャネル型トランジスタ1823が示されている。各トランジスタは半導体層1805、ゲート絶縁層1808、ゲート電極1809を備えている。ゲート電極1809は、第1導電層1803と第2導電層1802の積層構造で形成されている。また、図13(A)〜(E)は、図12で示すnチャネル型トランジスタ1821、nチャネル型トランジスタ1822、容量素子1824、抵抗素子1825、pチャネル型トランジスタ1823に対応する上面図であり、併せて参照することができる。
【0134】
図12において、nチャネル型トランジスタ1821は、チャネル長方向(キャリアの流れる方向)において、ゲート電極の両側に低濃度ドレイン(LDD)とも呼ばれ、配線1804とコンタクトを形成するソース領域及びドレイン領域を形成する不純物領域1806の不純物濃度よりも低濃度にドープされた不純物領域1807が半導体層1805に形成されている。不純物領域1806と不純物領域1807には、nチャネル型トランジスタ1821を構成する場合、n型を付与する不純物としてリンなどが添加されている。LDDはホットエレクトロン劣化や短チャネル効果を抑制する手段として形成される。
【0135】
図13(A)で示すように、nチャネル型トランジスタ1821のゲート電極1809において、第1導電層1803は、第2導電層1802の両側に広がって形成されている。この場合において、第1導電層1803の膜厚は、第2導電層の膜厚よりも薄く形成されている。第1導電層1803の厚さは、10〜100kVの電界で加速されたイオン種を通過させることが可能な厚さに形成されている。不純物領域1807はゲート電極1809の第1導電層1803と重なるように形成されている。すなわち、ゲート電極1809とオーバーラップするLDD領域を形成している。この構造は、ゲート電極1809において、第2導電層1802をマスクとして、第1導電層1803を通して一導電型の不純物を添加することにより、自己整合的に不純物領域1807を形成している。すなわち、ゲート電極とオーバーラップするLDDを自己整合的に形成している。
【0136】
両側にLDDを有するトランジスタは、実施の形態における電源回路の整流用のTFTや、論理回路に用いられるトランスミッションゲート(アナログスイッチとも呼ぶ)を構成するトランジスタに適用される。これらのTFTは、ソース領域、ドレイン領域に正負両方の電圧が印加されるため、ゲート電極の両側にLDDを設けることが好ましい。
【0137】
また第1導電層1803は、第2導電層1802を用いてゲート配線を形成する場合、それらの両端を揃えるように加工してもよい。その結果、微細なゲート配線を形成することができる。またゲート電極とオーバーラップするLDDを自己整合的に形成する必要もないからである。
【0138】
図12において、nチャネル型トランジスタ1822は、ゲート電極の片側に不純物領域1806の不純物濃度よりも低濃度にドープされた不純物領域1807が半導体層1805に形成されている。図13(B)で示すように、nチャネル型トランジスタ1822のゲート電極1809において、第1導電層1803は、第2導電層1802の片側に広がって形成されている。この場合も同様に、第2導電層1802をマスクとして、第1導電層1803を通して一導電型の不純物を添加することにより、自己整合的にLDDを形成することができる。
【0139】
片側にLDDを有するトランジスタは、ソース領域及びドレイン領域間に正電圧のみ、もしくは負電圧のみが印加されるトランジスタに適用すればよい。具体的には、インバータ回路、NAND回路、NOR回路、ラッチ回路といった論理ゲートを構成するトランジスタや、センスアンプ、定電圧発生回路、VCOといったアナログ回路を構成するトランジスタに適用すればよい。
【0140】
図12において、容量素子1824は、第1導電層1803と半導体層1805とでゲート絶縁層1808を挟んで形成されている。容量素子1824を形成する半導体層1805には、不純物領域1810と不純物領域1811を備えている。不純物領域1811は、半導体層1805において第1導電層1803と重なる位置に形成される。また、不純物領域1810は配線1804とコンタクトを形成する。不純物領域1811は、第1導電層1803を通して一導電型の不純物を添加することができるので、不純物領域1810と不純物領域1811に含まれる不純物濃度は同じにすることもできるし、異ならせることも可能である。いずれにしても、容量素子1824において、半導体層1805は電極として機能させるので、一導電型の不純物を添加して低抵抗化しておくことが好ましい。また、第1導電層1803は、図13(C)に示すように、第2導電層1802を補助的な電極として利用することにより、電極として十分に機能させることができる。このように、第1導電層1803と第2導電層1802を組み合わせた複合的な電極構造とすることにより、容量素子1824を自己整合的に形成することができる。
【0141】
容量素子は、実施の形態における電源回路が有する保持容量、あるいは共振回路が有する共振容量として用いられる。特に、共振容量は、容量素子の2端子間に正負両方の電圧が印加されるため、2端子間の電圧の正負によらず容量として機能することが必要である。
【0142】
図13(D)において、抵抗素子1825は、第1導電層1803によって形成されている。第1導電層1803は30〜150nm程度の厚さに形成されるので、その幅や長さを適宜設定して抵抗素子を構成することができる。
【0143】
抵抗素子は、実施の形態における変調復調回路が有する抵抗負荷として用いられる。また、VCOなどで電流を制御する場合の負荷としても用いられる場合がある。抵抗素子は、高濃度に不純物元素を含む半導体層や、膜厚の薄い金属層によって構成すればよい。抵抗値が膜厚、膜質、不純物濃度、活性化率などに依存する半導体層に対して、金属層は、膜厚、膜質で抵抗値が決定するため、ばらつきが小さく好ましい。
【0144】
図13(E)において、pチャネル型トランジスタ1823は、半導体層1805に不純物領域1812を備えている。この不純物領域1812は、配線1804とコンタクトを形成するソース領域及びドレイン領域を形成する。ゲート電極1809の構成は第1導電層1803と第2導電層1802が重畳した構成となっている。pチャネル型トランジスタ1823はLDDを設けないシングルドレイン構造のトランジスタである。pチャネル型トランジスタ1823を形成する場合、不純物領域1812にはp型を付与する不純物として硼素などが添加される。一方、不純物領域1812にリンを添加すればシングルドレイン構造のnチャネル型トランジスタとすることもできる。
【0145】
半導体層1805及びゲート絶縁層1808の一方若しくは双方に対してマイクロ波でプラズマが励起され、電子温度が2eV以下、イオンエネルギーが5eV以下、電子密度が1011〜1013/cm程度である高密度プラズマ処理によって酸化又は窒化処理しても良い。このとき、基板温度を300〜450℃とし、酸化雰囲気(O、NOなど)又は窒化雰囲気(N、NHなど)で処理することにより、半導体層1805とゲート絶縁層1808の界面の欠陥準位を低減することができる。ゲート絶縁層1808対してこの処理を行うことにより、この絶縁層の緻密化を図ることができる。すなわち、荷電欠陥の生成を抑えトランジスタのしきい値電圧の変動を抑えることができる。また、トランジスタを3V以下の電圧で駆動させる場合には、このプラズマ処理により酸化若しくは窒化された絶縁層をゲート絶縁層1808として適用することができる。また、トランジスタの駆動電圧が3V以上の場合には、このプラズマ処理で半導体層1805の表面に形成した絶縁層とCVD法(プラズマCVD法若しくは熱CVD法)で堆積した絶縁層とを組み合わせてゲート絶縁層1808を形成することができる。また、同様にこの絶縁層は、容量素子1824の誘電体層としても利用することができる。この場合、このプラズマ処理で形成された絶縁層は、1〜10nmの厚さで形成され、緻密な膜であるので、大きな電荷容量を持つ容量素子を形成することができる。
【0146】
図12及び図13を参照して説明したように、膜厚の異なる導電層を組み合わせることにより、さまざまな構成の素子を形成することができる。第1導電層のみが形成される領域と、第1導電層と第2導電層が積層されている領域は、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いて形成することができる。すなわち、フォトリソグラフィー工程において、フォトレジストを露光する際に、フォトマスクの透過光量を調節して、現像されるレジストマスクの厚さを異ならせる。この場合、フォトマスクまたはレチクルに解像度限界以下のスリットを設けて上記複雑な形状を有するレジストを形成してもよい。また、現像後に約200℃のベークを行ってフォトレジスト材料で形成されるマスクパターンを変形させてもよい。
【0147】
また、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いることにより、第1導電層のみが形成される領域と、第1導電層と第2導電層が積層されている領域を連続して形成することができる。図13(A)に示すように、第1導電層のみが形成される領域を半導体層上に選択的に形成することができる。このような領域は、半導体層上において有効であるが、それ以外の領域(ゲート電極と連続する配線領域)では必要がない。このフォトマスク若しくはレチクルを用いることにより、配線部分は、第1導電層のみの領域を作らないで済むので、配線密度を実質的に高めることができる。
【0148】
図12及び図13の場合には、第1導電層はタングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属、又は高融点金属を主成分とする合金もしくは化合物を30〜50nmの厚さで形成する。また、第2導電層はタングステン(W)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)またはモリブデン(Mo)などの高融点金属、又は高融点金属を主成分とする合金もしくは化合物で300〜600nmの厚さに形成する。例えば、第1導電層と第2導電層をそれぞれ異なる導電材料を用い、後に行うエッチング工程でエッチングレートの差が生じるようにする。一例として、第1導電層にTaNを用い、第2導電層としてタングステン膜を用いることができる。
【0149】
本実施例では、回折格子パターン或いは半透膜からなる光強度低減機能を有する補助パターンを設置したフォトマスクまたはレチクルを用いて、電極構造の異なるトランジスタ、容量素子、抵抗素子を、同じ加工工程によって作り分けることができることを示している。これにより、回路の特性に応じて、形態の異なる素子を、工程を増やすことなく作り込み、集積化することができる。
【0150】
以上のようなトランジスタにより、半導体装置を構成することで、高性能且つ低消費電力の無線チップを、より軽量で安価に提供することができる。
【0151】
本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例5と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例7】
【0152】
本実施例では、本発明における半導体装置を用いたシステム例について、図14及び図15を用いて説明する。本実施例では、本発明における半導体装置として無線チップを用いた、セキュリティー性に優れたパーソナルコンピュータの利用者認証システムについて説明する。
【0153】
図14は、本実施例における利用者認証システムの概要図で、パーソナルコンピュータ2001、無線チップ2002である。パーソナルコンピュータ2001には、入力装置2003及びリーダ/ライタ2004が接続されている。
【0154】
パーソナルコンピュータ2001及び無線チップ2002は、暗号用の共通鍵2005を有する。具体的には、パーソナルコンピュータ2001及び無線チップ2002のメモリに共通鍵2005のデータを各々格納する。共通鍵2005は、例えば64ビット〜128ビットのデータで、平文(暗号化する前のデータ)の暗号化及び暗号文の復号に用いられる。共通鍵は、正規に登録された利用者毎に異なる共通鍵が作成され、パーソナルコンピュータ1501は、全てを有している。すなわち、正規に登録された利用者数分の共通鍵をパーソナルコンピュータ1501は有している。一方、無線チップ2002は、正規に登録された利用者が所有し、当該の利用者に固有な共通鍵のみを有している。共通鍵は、他者に知られぬよう、保存しなければならない。
【0155】
なお、本実施例では、暗号方式として共通鍵暗号方式(ISO/IEC 9798−2 Information technology−Security techniques−Entity authentication− Part 2 : Mechanisms using symmetric encipherment algorithms参照)を用いる場合の例について示すが、公開鍵暗号方式(ISO/IEC 9798−3 Information technology−Security techniques−Entity authentication− Part 3 : Mechanisms using digital signature techniques参照)など、他の暗号方式でも適用することができる。
【0156】
パーソナルコンピュータ2001は、共通鍵2005を用いて、平文を暗号化する手段を有する。具体的には、暗号化アルゴリズムを実行するソフトウェアを搭載しているものとする。また、無線チップ2002は、共通鍵2005を用いて、暗号文を復号する手段を有する。具体的には、前記実施の形態で示した演算回路において、復号アルゴリズムを実行する。
【0157】
以下、図15のフローチャートを用いて、本実施例における利用者認証システムの利用方法を説明する。
【0158】
まず、利用希望者が入力装置2003を用いて、パーソナルコンピュータ2001における利用者名及びパスワードを入力する(利用者名入力2101)。パスワードは、正規の利用者が事前に登録しておく。パーソナルコンピュータ2001は、入力された利用者名から、該当する共通鍵を用いて、ある平文を暗号化する(暗号データ作成2102)。ここで、平文は、特定の意味を持ったデータでも、無意味なデータでも良い。次に、暗号データをリーダ/ライタ2004から送信する(暗号データ送信2103)。無線チップ2002は、暗号データを受信し、共通鍵2005を用いて暗号データを復号し(復号化処理2104)、復号データをリーダ/ライタに送信する(復号データ送信2105)。パーソナルコンピュータ2001は、復号データを、最初の平文と比較し(認証2106)、一致した場合のみ、利用希望者が正規に登録されている利用者であると認め、利用可能とする(平常利用2107)。
【0159】
以上のような、本実施例における利用者認証システムでは、パスワードを知り、且つ無線チップを所有していないとコンピュータを利用できない。従って、パスワードのみの認証よりセキュリティー性が非常に高い。また、利用者は、無線チップを携帯していれば、従来のパスワードのみによる認証と、何ら変わりなくパーソナルコンピュータを利用でき、新たな負担は少ない。
【0160】
なお、本実施例では、パーソナルコンピュータの利用者認証について説明したが、正規に登録された利用者のみが利用できる他のシステムに対しても容易に適用できる。例えば、ATM(Automated Teller Machine 現金自動支払機)、CD(Cash Dispenser 現金自動払出機)などに、容易に適用できる。
【0161】
以上のような構成とすることで、本発明における半導体装置を用いた、非常にセキュリティー性が高い利用者認証システムを安価に構築することができる。
【0162】
なお、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例6と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例8】
【0163】
本実施例では、本発明における半導体装置に搭載するアンテナについて、図18を用いて説明する。アンテナは、電波法に定められた範囲内で目的見合った大きさ、形状であればよい。送受信される信号は、125kHz、13.56MHz、915MHz、2.45GHzなどがあり、それぞれISO規格などが設定される。具体的なアンテナとしては、ダイポールアンテナ、パッチアンテナ、ループアンテナ、八木アンテナなどが用いればよい。以下、無線チップに接続されるアンテナ形状について説明する。
【0164】
図18(A)には、外付けアンテナ1602が接続された無線チップ1601を示す。図18(A)において、無線チップ1601が中心部に設けられ、アンテナ1602は無線チップ1601の接続端子に接続されている。アンテナの長さを確保するため、アンテナ1602は折れ曲がって矩形状になっている。
【0165】
図18(B)には、外付けアンテナ1603が無線チップ1601の一端側の接続端子に設けられた形態を示す。アンテナの長さを確保するため、アンテナ1603は折れ曲がって矩形状になっている。
【0166】
図18(C)には、折れ曲がって矩形状になった外付けアンテナ1604が無線チップ1601の両端に設けられた形態を示す。
【0167】
図18(D)には、無線チップ1601の両端に直線状の外付けアンテナ1605が設けられている形態を示す。
【0168】
このようにアンテナの形状は無線チップの構造若しくは偏波、又は用途に見合ったものを選択すればよい。そのため、ダイポールアンテナであれば折り返しダイポールアンテナであってもよい。ループアンテナであれば、円形ループアンテナ、方形ループアンテナであってもよい。パッチアンテナであれば円形パッチアンテナ、方形アンテナであってもよい。
【0169】
なお、パッチアンテナの場合、セラミック等の誘電材料を用いたアンテナを用いればよい。パッチアンテナの基板として用いる誘電材料の誘電率を高くすることによってアンテナを小型化することができる。また、パッチアンテナの場合、機械強度が高いため、繰り返し使用することが可能である。
【0170】
なお、パッチアンテナの誘電材料は、セラミック、有機樹脂、又はセラミックと有機樹脂の混合物等で形成することができる。セラミックの代表例としては、アルミナ、ガラス、フォルステライト等が挙げられる。さらには、複数のセラミックを混合して用いてもよい。また、高い誘電率を得るためには、誘電体層を、強誘電体材料で形成することが好ましい。強誘電体材料の代表例としては、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、ジルコン酸鉛(PbZrO)、二オブ酸リチウム(LiNbO)、チタン酸ジルコン鉛(PZT)等が挙げられる。さらには、複数の強誘電体材料を混合して用いてもよい。
【0171】
なお無線チップ1601には、上記実施の形態及び実施例で示した構造を適用することができる。
【0172】
以上のような構成とすることで、高性能な半導体装置を提供することができる。
【0173】
なお、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例7と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例9】
【0174】
本実施例では、本発明における半導体装置に搭載するアンテナについて、実施例8で説明した例とは異なる構成を、図4を用いて説明する。図4は、本実施例における無線チップと、第1のアンテナと、第2のアンテナと、第3のアンテナと、電気容量と、から構成される半導体装置の回路図及びレイアウトである。
【0175】
図4(A)は、本実施例における半導体装置の回路図である。図4(A)に示す半導体装置は、無線チップ401、無線チップ401に搭載された第1のアンテナ(内側アンテナ)402、第2のアンテナ403、第3のアンテナ404、電気容量405を有する。第2のアンテナ403と、第3のアンテナ404と、電気容量405と、から外側アンテナ406が構成される。
【0176】
リーダ/ライタからの通信信号を、第3のアンテナ404で受信すると、第3のアンテナ404では電磁誘導による誘導起電力が生じる。この誘導起電力により、第2のアンテナ403から、誘導電磁界が発生する。この誘導電磁界を、第1のアンテナ402で受信することで、第1のアンテナ402では、電磁誘導による誘導起電力が生じることになる。
【0177】
ここで、第3のアンテナ404のインダクタンスを大きくすることで、第1のアンテナ402が受信する誘導電磁界を大きくすることができる。すなわち、第1のアンテナ402のインダクタンスが小さくても、無線チップ401を動作させるのに十分な誘導電磁界を供給することができる。第1のアンテナ402をオンチップアンテナとした場合、無線チップ401は面積が小さいため、インダクタンスはあまり大きくできない。したがって、第1のアンテナ402のみ用いた場合は、無線チップ401の通信距離を伸長することは困難である。ところが、本実施例に示した構成により、オンチップアンテナの無線チップでも、通信距離を伸長することが可能である。
【0178】
図4(B)は、本実施例における半導体装置のアンテナレイアウトの第1の例である。図4(B)は、第3のアンテナ404の外部に第2のアンテナ403を形成した例である。第1のスルーホール407と、第2のスルーホール408と、は電気的に接続されており、第2のアンテナ403と、第3のアンテナ404と、電気容量405と、から外側アンテナを形成する。電気容量405には、チップコンデンサ、フィルムコンデンサなどを用いることができる。図4(B)のようなレイアウトは、幅の狭いアンテナを形成することができるので、幅の狭い形状の半導体装置を提供するときに有効である。
【0179】
図4(C)は、本実施例における半導体装置のアンテナレイアウトの第2の例である。図4(C)は、第3のアンテナ404の内部に第2のアンテナ403を形成した例である。第1のスルーホール409と、第2のスルーホール410と、は電気的に接続されており、第2のアンテナ403と、第3のアンテナ404と、電気容量405と、から外側アンテナを形成する。電気容量405には、チップコンデンサ、フィルムコンデンサなどを用いることができる。図4(C)のようなレイアウトは、幅の狭いアンテナを形成することができるので、幅の狭い形状の半導体装置を提供するときに有効である。
【0180】
以上のような構成とすることで、通信距離を伸長した高性能な半導体装置を提供することができる。
【0181】
なお、本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例8と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例10】
【0182】
本実施例は、本発明における半導体装置を3次元的な多層積層構造とする例を、図19を用いて説明する。
【0183】
図19は、異なる基板に作製された集積回路520a、集積回路520b、集積回路520cがそれぞれの基板より剥離され、絶縁層510a及び絶縁層510bによって貼り合わされている。積層される集積回路に前記実施の形態及び実施例で示す本発明の不揮発性記憶装置を用いており、本実施例では、集積回路520aとして不揮発性記憶装置を用いている。図19における多層構造の半導体装置は、絶縁層501、502、503、504、505、506、507、508、配線層531a、531b、532a、532b、メモリ素子530を有している。基板500上のトランジスタを有する集積回路520aは、絶縁層510aによって、絶縁層504上のトランジスタを有する集積回路520bと貼り合わされ、同様に集積回路520bは、絶縁層510bによって、絶縁層506上のトランジスタを有する集積回路520cと貼り合わされ多層積層構造の半導体装置を形成している。
【0184】
貼り合わせ工程について説明する。集積回路520a上に液状の(流動性を有する)絶縁性材料をスピンコート法や液滴吐出法によって付着させ、流動性の失われないうちに剥離工程によって基板から剥離された集積回路520bを貼り合わせる。その後絶縁性材料を乾燥させることで固化し、絶縁層510aを形成する。よって、絶縁層510aを接着層として、集積回路520a及び集積回路520bは固着される。同様に、集積回路520b上に流動性の有する絶縁性材料を付着させ、流動性の失われないうちに剥離工程によって基板から剥離された集積回路520cを貼り合わせる。乾燥後、集積回路520a、絶縁層510a、集積回路520b、絶縁層510b、及び集積回路520cの積層が形成される。絶縁層510a、絶縁層510bにはポリイミド、アクリル、ポリアミド、ポリイミドアミド、レジスト又はベンゾシクロブテン、シロキサンなどを用いることができる。なお、本実施例では、シロキサン樹脂を用いる。絶縁層510a、絶縁層510bは流動性を有する絶縁性材料とした場合、粘性が比較的高く、集積回路同士と密着性が高い方が好ましい。本実施例の様に、絶縁層を集積回路同士の接着層に用いることによって、別途貼り合わせるための接着層を形成する必要がなくなり、工程を簡略化することができる。
【0185】
次に積層構造を構成する絶縁層に開口を形成し、集積回路520a、集積回路520b、及び集積回路520cを電気的に接続する。絶縁層505上に設けられている配線層532a及び絶縁層502上に設けられている配線層531aに接して配線層550aを形成し、絶縁層505上に設けられ ている配線層532b及び絶縁層502上に設けられている配線層531bに接して配線層550bを形成する。配線層550aは、絶縁層503、504、505、506及び507に形成され配線層531a及び配線層532aを露出する開口に形成される。同様に配線層550bは、絶縁層503、504、505、506及び507に形成され配線層531b及び配線層532bを露出する開口に形成される。配線層550aは、配線層531a及び配線層532aと電気的に接続し、配線層550bは、配線層531b及び配線層532bと電気的に接続する。
【0186】
以上の工程により、絶縁層を介して貼り合わせた集積回路による積層構造を有し、かつ各層の集積回路が電気的に接続する多層構造の半導体装置を作製することができる。
【0187】
本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例9と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【実施例11】
【0188】
本実施例では、本発明の不揮発性記憶装置の例としてマスクROMを形成する例について述べる。
【0189】
マスクROMは複数のトランジスタ、及び電子素子で形成され、マスクROMを構成するトランジスタ及び電子素子は、フォトリソグラフィ法によって形成される。その際、例えば電子素子の一方の端子(例えば図2における電気素子109)と接続する配線用のコンタクトホールを開口するか開口しないかによってデータを書き込むことが可能であり、例えば開口する場合は1(オン)、開口しない場合は0(オフ)のデータ(情報)を、メモリセルに書き込むことが可能である。
【0190】
フォトレジストを露光する工程において、ステッパなどの露光装置を用いてレチクル(フォトマスク)を通して露光する工程の前又は後に、上記コンタクトホールが開口される領域上のフォトレジストに電子ビーム又はレーザーを照射する。その後、通常どおり現像、エッチング、フォトレジストの剥離などの工程をおこなう。こうすることで、レチクル(フォトマスク)を交換せずに、電子ビーム又はレーザーの照射領域を選択するのみで、上記コンタクトホールを開口するパターンと開口しないパターンをつくり分けることができる。すなわち、電子ビーム又はレーザーの照射領域を選択することで、半導体装置の製造時において、半導体装置毎に異なるデータが書き込まれたマスクROMを作製することが可能となる。
【0191】
このようなマスクROMを用いて、半導体装置の製造時に半導体装置ごとの固有識別子(UID:Unique Identifier)等を形成することが可能となる。さらに、本実施例の半導体装置は、追記が可能なメモリも有するため、半導体装置の製造後にも、データの書き込みが可能である。
【0192】
本実施例は、実施の形態1、実施の形態2、実施例1〜実施例10と自由に組み合わせて実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0193】
【図1】本発明における半導体装置の記憶素子の回路図。
【図2】本発明における半導体装置の記憶素子の回路図。
【図3】本発明における半導体装置の記憶素子の一例を示す図。
【図4】本発明における半導体装置に搭載するアンテナの回路図とレイアウトを示す図。
【図5】本発明における半導体装置の断面図。
【図6】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(半導体層)
【図7】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(ゲート配線)
【図8】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(配線)
【図9】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(半導体層)
【図10】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(ゲート配線)
【図11】本発明における半導体装置のレイアウトを示す図。(配線)
【図12】本発明における半導体装置の断面図を示す図。
【図13】本発明における半導体装置を構成する電気素子を示す図。
【図14】本発明における半導体装置を用いた利用者認証システムの概要図。
【図15】本発明における半導体装置を用いた利用者認証システムのフローチャート。
【図16】本発明における半導体装置の構成例を示す図。
【図17】本発明における半導体装置のレイアウト例を示す図。
【図18】本発明における半導体装置に搭載するアンテナのレイアウトを示す図。
【図19】本発明における半導体装置の構成例を示す図。
【符号の説明】
【0194】
101 電源端子
102 接地端子
103 リセット端子
104 出力端子
105 P型トランジスタ
106 N型トランジスタ
107 インバータ
108 インバータ
109 電気素子
110 リセット素子
111 ラッチ素子
210 リセット素子
301 電気抵抗
302 端子
303 端子
311 ダイオード
312 ダイオード
313 端子
314 端子
321 浮遊ゲート型メモリトランジスタ
322 端子
323 端子
324 端子
400 低温プロセス(基板温度
401 無線チップ
402 第1のアンテナ
403 第2のアンテナ
404 第3のアンテナ
405 電気容量
406 外側アンテナ
407 第1のスルーホール
408 第2のスルーホール
409 第1のスルーホール
410 第2のスルーホール
500 基板
501 絶縁層
502 絶縁層
503 絶縁層
504 絶縁層
505 絶縁層
506 絶縁層
507 絶縁層
508 絶縁層
530 メモリ素子
907 不純物領域
1101 TFT部
1102 メモリ部
1110 絶縁基板
1111 下地膜
1112 半導体膜
1113 絶縁物
1114 ゲート電極
1115 電極
1116 絶縁膜
1117 絶縁膜
1118 絶縁膜
1120 薄膜トランジスタ
1122 薄膜トランジスタ
1123 メモリ素子
1125 絶縁膜
1127 下部電極
1128 絶縁膜
1129 メモリ材料層
1130 上部電極
1131 絶縁膜
1151 コンタクトホール
1201 半導体パターン
1301 ゲート配線
1501 パーソナルコンピュータ
1502 無線チップ
1510 半導体層
1520 マスクパターン
1601 無線チップ
1602 アンテナ
1603 アンテナ
1604 アンテナ
1605 アンテナ
1612 ゲート配線
1613 ゲート配線
1614 ゲート配線
1621 マスクパターン
1715 配線
1721 nチャネル型トランジスタ
1722 マスクパターン
1723 nチャネル型トランジスタ
1724 nチャネル型トランジスタ
1725 Pチャネル型トランジスタ
1726 Pチャネル型トランジスタ
1727 インバータ
1802 導電層
1803 導電層
1804 配線
1805 半導体層
1806 不純物領域
1807 不純物領域
1808 ゲート絶縁層
1809 ゲート電極
1810 不純物領域
1811 不純物領域
1812 不純物領域
1821 nチャネル型トランジスタ
1822 nチャネル型トランジスタ
1823 pチャネル型トランジスタ
1824 容量素子
1825 抵抗素子
2001 パーソナルコンピュータ
2002 無線チップ
2003 入力装置
2004 リーダ/ライタ
2005 共通鍵
2101 (利用者名入力
2102 (暗号データ作成
2103 (暗号データ送信
2104 (復号化処理
2105 (復号データ送信
2106 (認証
2107 (平常利用
2601 無線チップ
2602 CPU
2603 ROM
2604 RAM
2605 コントローラ
2606 演算回路
2607 アンテナ
2608 共振回路
2609 電源回路
2610 リセット回路
2611 クロック生成回路
2612 復調回路
2613 変調回路
2614 電源管理回路
2615 アナログ部
2616 CPUIF
2617 制御レジスタ
2618 コード抽出回路
2619 符号化回路
2620 受信信号
2621 送信信号
2622 受信データ
2623 送信データ
2624 秘密鍵
2707 FPCパッド
2708 アンテナバンプ
501b 絶縁層
510a 絶縁層
510b 絶縁層
520a 集積回路
520b 集積回路
520c 集積回路
531a 配線層
531b 配線層
532a 配線層
532b 配線層
545T クマリン
550a 配線層
550b 配線層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気素子と、リセット素子と、ラッチ素子とを含む記憶素子を有する不揮発性記憶装置を搭載し、
前記リセット素子により前記ラッチ素子へ前記情報が格納され、
前記電気素子が電気的に導通しているか、絶縁しているか、に応じて、前記ラッチ素子に格納される情報が決まることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記電気素子は、レーザー描画により切断することで電気的に絶縁されることを特徴とする半導体装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記電気素子は、過電流を印加し破壊することで電気的に絶縁されることを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記電気素子は、第1のダイオードと、第2のダイオードとを含み、前記第1のダイオード及び前記第2のダイオードの少なくとも一方に過電流を印加し破壊することで電気的に導通されることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記電気素子は、相変化により電気抵抗値が変化する相変化メモリであることを特徴とする半導体装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記電気素子は、浮遊ゲートを有する不揮発性メモリトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記電気素子は、MONOS構造を有するメモリトランジスタであることを特徴とする半導体装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一において、
前記リセット素子または前記ラッチ素子が、絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を活性層とする薄膜トランジスタを用いていることを特徴とする半導体装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記絶縁表面を有する基板とは、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、SOI基板のいずれかであることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−201437(P2007−201437A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342689(P2006−342689)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】