説明

半導体装置

【課題】チップの横幅1に対して高さ比が0.5〜1.5の構造を有するセンサチップにワイヤボンディングするに際し、センサチップのチップクラックの発生を抑制することができる半導体装置を提供する。
【解決手段】第1のワイヤ50として硬いもの、第2のワイヤ70として第1のワイヤ50よりも軟らかいものを用意し、外部と電気的接続を行うためのケースステージ12と処理回路チップ30とを第1のワイヤ50で接続する。また、処理回路チップ30とセンサチップ20とを第2のワイヤ70で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するセンサチップと当該センサチップの出力信号を処理する処理回路チップとを備えた半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂パッケージに圧力検出を行うためのセンサチップを収納した半導体装置が、例えば特許文献1で提案されている。具体的に、特許文献1では、狭開口部と当該狭開口部よりも開口面積が大きい広開口部とが2段に設けられた凹部を有する樹脂パッケージと、凹部のうち狭開口部に設置されると共に台座上に固定され圧力検出を行うセンサチップと、狭開口部内に設けられ、樹脂材料若しくはゴム材料により構成された第1の保護部材と、広開口部内に設けられ、ゲル状物質により構成された第2の保護部材と、を備えた半導体圧力センサ装置が提案されている。
【0003】
このような半導体圧力センサ装置では、樹脂パッケージにターミナルがインサート成形されており、当該ターミナルの一端が凹部の広開口部内に露出している。そして、センサチップの出力端子とターミナルの一端とがワイヤボンディングされると共に、狭開口部内に第1の保護部材が充填され、広開口部内に第2の保護部材が充填されることで、センサチップおよびボンディングワイヤが汚れから保護されるようになっている。
【特許文献1】特開2001−343298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、金属で構成されるボンディングワイヤは、ゴムやゲルで構成される保護部材との熱応力差によって応力を受けるため、断線してしまう可能性がある。これにより、センサチップと外部との電気的接続が絶たれ、センサチップの出力を外部に取り出すことができなくなってしまう。
【0005】
そこで、ボンディングワイヤとして、太く、硬いものを採用し、センサチップの出力端子とターミナルの一端とを接続することが考えられる。しかし、ボンディングワイヤは硬いため、ボンディングワイヤをセンサチップの出力端子に強く押さえつけなければ接合することができない。これにより、センサチップの高さ方向に接合時の力が加わると共に、当該力がセンサチップの高さ方向に逃げることとなり、センサチップの出力端子下にチップクラックが発生してセンサチップが破壊されてしまう。
【0006】
上記従来のようにセンサチップは台座上に固定されており、センサチップに係る構造におけるトータルの高さが高いほど、チップクラックの発生が顕著に現れることが発明者らの検討により明らかとなった。特に、センサチップにおいて横幅1に対して高さ0.5〜1.5に該当する構造を有するものへのワイヤボンディング時に、出力端子下にチップクラックが発生し、センサチップの特性が変動してしまう。
【0007】
本発明は、上記点に鑑み、チップの横幅1に対して高さ比が0.5〜1.5の構造を有するセンサチップにワイヤボンディングするに際し、センサチップのチップクラックの発生を抑制することができる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、樹脂ケース(10)に設けられた凹部(11)に収納され、物理量を検出してそのレベルに応じた電気信号を発生するセンサチップ(20)と、凹部に収納され、センサチップの電気信号の信号処理を行う処理回路チップ(30)と、凹部に露出するように設置され、外部との電気的接続を行うケースステージ(12)と、ケースステージと処理回路チップとを電気的に接続する第1のワイヤ(50)と、処理回路チップとセンサチップとを電気的に接続する第2のワイヤ(70)と、を備え、センサチップの横方向の寸法が1、凹部の設置面からセンサチップの表面までの高さ方向の寸法が0.5〜1.5の比率であり、センサチップのチップサイズが3.0mm□以下の半導体装置において、第2のワイヤが第1のワイヤよりも軟らかいものであることを特徴とする。
【0009】
このように、上記寸法の比率を有するセンサチップに接続するワイヤとして処理回路チップに接続するものよりも軟らかいものを用いることにより、第1のワイヤを接合する場合よりも第2のワイヤをセンサチップに強く押さえつけずに第2のワイヤをセンサチップに接合することができる。これにより、センサチップにチップクラックが生じるほどの力を与えずに第2のワイヤを接合することができるため、センサチップにおけるチップクラックの発生を抑制し、ひいてはセンサチップの破壊を防止することができる。
【0010】
上記センサチップに接続される第2のワイヤは、少なくとも電気信号を出力する出力端子(23)に接続されていることが好ましい。これにより、センサチップに形成された素子に係る出力端子下のクラックの発生を抑制することができ、センサチップにおける素子の出力変動を回避することができる。
【0011】
上記センサチップとして、感圧素子が形成されているものを用いることができる。すなわち、センサチップを圧力センサとして用いることができ、半導体装置を圧力媒体の圧力を検出するものとして用いることができる。
【0012】
また、凹部内に、第1のワイヤが接合されたケースステージおよび第1のワイヤの接合部分を覆うように、凹部内にゴム状の第1保護部材(80)を設けることができる。これにより、例えば凹部とケースステージとの界面等からの気泡の発生を阻止することができる。
【0013】
凹部内において、第1保護部材上にゲル状の第2保護部材(90)が設けられ、当該第2保護部材によって第1のワイヤおよび第2のワイヤ全体が保護されていることを特徴とする。このような各保護部材により、各ワイヤを保護することができる。さらに、各チップも外部からの振動や汚れから保護することができる。
【0014】
上記第1のワイヤとして、第1のワイヤの硬さが80000MPa以上100000MPa以下であることが好ましい。硬さが80000MPaを下回ると、第1のワイヤの硬さを保持できないため、下限値を80000MPaとしている。また、硬さが100000MPaを上回ると、第1のワイヤの硬さによって接合性に影響するため、上限値を100000MPaとしている。
【0015】
上記第2のワイヤとして、当該第2のワイヤの硬さが50000MPa以上70000MPa以下であることが好ましい。硬さが50000MPaを下回ると、ワイヤ接合時に第2のワイヤがつぶれてしまうため、下限値を50000MPaとしている。また、70000MPaを上回る硬さであると、第2のワイヤが軟らかいものではなくなってしまうため、上限値を70000MPaとしている。
【0016】
処理回路チップを凹部に接着剤(40)を介して直接接着することができる。また、センサチップを、凹部に接着剤を介して設置されたガラス状の台座(60)上に設置することもできる。
【0017】
上記処理回路チップおよびセンサチップにおいては、処理回路チップ上にセンサチップを積層し接合した構造とすることができる。このように、2層構造としてもセンサチップに第2のワイヤを接続することにより、センサチップのチップクラックの発生を抑制できる。
【0018】
第1のワイヤの一部または全部は第1保護部材に被覆されていることが好ましい。これにより、半導体装置を製造する上で生じる気泡の発生を抑制することができる。
【0019】
また、センサチップの出力端子以外の端子に第1のワイヤを接続することもできる。すなわち、センサチップの特性に影響を及ぼさない端子に関しては第1のワイヤを接合しても構わない。
【0020】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図を参照して説明する。本実施形態で示される半導体装置は、例えば車載用の環境的保護が必要な場所に設置されるものであり、圧力媒体の圧力を検出するものとして用いられる。
【0023】
図1は、本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。この図に示されるように、半導体装置S1は、ケース10と、センサチップ20と、処理回路チップ30と、を備えて構成されている。
【0024】
ケース10は、センサチップ20および処理回路チップ30を収納するものであり、例えば樹脂で成型されたものである。このようなケース10は凹部11を有しており、当該凹部11内に上記センサチップ20および処理回路チップ30を収納している。
【0025】
センサチップ20は、圧力を検出してその圧力に応じたレベルの電気信号を発生するものであり、ピエゾ抵抗効果を利用したものである。本実施形態では、センサチップ20は、圧力に応じたレベルの電気信号として電圧を検出する感圧素子を備えている。このようなセンサチップ20は、歪み部としてのダイヤフラムを有し、このダイヤフラムに拡散抵抗などにより形成されたブリッジ回路(ゲージ回路)などを備えた構成となっている。また、本実施形態では、センサチップ20として3.0mm□以下のサイズのものが採用される。
【0026】
処理回路チップ30は、センサチップ20に対する駆動信号の出力や外部への検出用信号の出力、センサチップ20からの電気信号を入力し、演算処理して外部へ出力する等の機能を有する制御回路等を備えたものである。このような処理回路チップ30は、例えばシリコン基板等に対してCMOSトランジスタやバイポーラトランジスタ等が半導体プロセスで形成されたものであり、ICチップや一般的なフリップチップ等で構成されたものである。
【0027】
図2は、図1のA−O−A断面図である。この図に示されるように、ケース10の凹部11に接着剤40を介して処理回路チップ30が設置されている。当該処理回路チップ30上には、処理回路チップ30に作り込まれた回路を保護するための保護膜31が形成されており、さらに処理回路チップ30が外部と電気的接続を行うための処理用端子32が複数形成されている。
【0028】
複数の処理用端子32のうちいくつかは、第1のワイヤ50を介して、半導体装置S1の外部と電気的接続を行うものであって凹部11内に露出したケースステージ12と電気的に接続されている。当該第1のワイヤ50は、例えば超音波接合の方法によりケースステージ12、処理用端子32に接合される。
【0029】
また、センサチップ20は、接着剤40を介してケース10の凹部11に固定されたガラスの台座60上に接着されている。当該センサチップ20上にはセンサチップ20に作り込まれた回路を保護するための保護膜22が形成されており、さらにセンサチップ20が外部と電気的接続を行うための複数の外部端子21が形成されている。これら複数の外部端子21には、電源入力用の端子やグランド端子、ゲージ回路の出力端子等の各端子が含まれている。
【0030】
本実施形態では、センサチップ20の平面の一辺サイズを1としたとき、台座60を含めたセンサチップ20に係る高さの寸法比が0.5〜1.5になっている。
【0031】
そして、処理回路チップ30に設けられた処理用端子32のいずれかとセンサチップ20の外部端子21とがそれぞれ第2のワイヤ70で接続されている。当該第2のワイヤ70も第1のワイヤ50と同様に処理用端子32、外部端子21に超音波接合される。
【0032】
さらに、ケース10の凹部11内において処理回路チップ30の側面を覆う高さまで第1保護部材80が充填されている。したがって、この第1保護部材80によって、ケースステージ12に接合された第1のワイヤ50が端部を覆われている。このような第1保護部材80は、凹部11とケースステージ12との界面等からの気泡の発生を抑制するために高弾性率を持つゴム材料が採用される。
【0033】
当該第1保護部材80上には凹部11全体を密閉した第2保護部材90が充填されている。本実施形態では、第2保護部材90として例えばシリコン系ゲルが採用される。このような第2保護部材90によって、センサチップ20や処理回路チップ30の表面、各ワイヤ50、70を被覆しているため、これら部材が外部からの機械的振動や圧力媒体から保護されるようになっている。以上が、本実施形態に係る半導体装置S1の全体構成である。
【0034】
次に、上記半導体装置S1に用いられる各ワイヤ50、70について詳しく説明する。本実施形態では、各ワイヤ50、70の材質として例えばAu(金)が採用される。しかしながら、各ワイヤ50、70の物性値(硬さ)はそれぞれ異なった値になっている。
【0035】
具体的には、第1のワイヤ50の径は例えばφ38μmであり、硬さは例えば80000MPa〜100000MPaである。このように、第1のワイヤ50の硬さの下限を80000MPaとしているのは、硬さが80000MPaを下回ると、第1のワイヤ50の硬さを保持できないためである。そして、第1のワイヤ50の硬さの上限を100000MPaとしているのは、硬さが100000MPaを上回ると、第1のワイヤ50の硬さによって接合性に影響するためである。なお、第1のワイヤ50の硬さとしては、85000MPaであることが好ましい。
【0036】
また、第2のワイヤ70の径は例えば30μmであり、硬さは例えば50000MPa〜70000MPaである。このように、第2のワイヤ70の下限を50000MPaとしているのは、硬さが50000MPaを下回ると、ワイヤ接合時に第2のワイヤ70がつぶれてしまうためである。また、硬さの上限を70000MPaとしているのは、70000MPaを上回る硬さであると、第2のワイヤ70が軟らかいものではなくなってしまうためである。なお、第2のワイヤ70の硬さとしては、65000MPaであることが好ましい。
【0037】
このように、本実施形態では、第1のワイヤ50として硬いもの、第2のワイヤ70として第1のワイヤ50よりも軟らかいものが採用され、センサチップ20または処理回路チップ30のうちどちらに接合するかに応じて、各ワイヤ50、70のうちどちらを接合するかが選択される。上述のように、本実施形態では、センサチップ20の外部端子21に第2のワイヤ70が接合されるようになっている。
【0038】
上記のような各ワイヤ50、70を用いて、センサチップ20や処理回路チップ30にワイヤボンディングする場合について説明する。はじめに、凹部11が形成されたケース10にケースステージ12を設け、接着剤40を介して処理回路チップ30を設置する。また、台座60が接合されたセンサチップ20を接着剤40を介してケース10の凹部11に設置する。このような状態のものを用意し、続いてワイヤボンディングを行う。
【0039】
まず、処理回路チップ30の複数の処理用端子32のうちケースステージ12に対応するものとケースステージ12とを第1のワイヤ50でワイヤボンディングする。ここでは、超音波接合の方法によりワイヤボンディングする。第1のワイヤ50は上述のように硬いものであるが、処理回路チップ30は薄いものである。このため、超音波接合時に第1のワイヤ50を処理回路チップ30側に押さえつけたとしても、第1のワイヤ50を押さえつけた力が処理回路チップ30の面方向に分散されるため、処理回路チップ30にクラックを発生させずに第1のワイヤ50を処理用端子32に接合することができる。
【0040】
この後、処理回路チップ30の複数の処理用端子32のうちセンサチップ20の外部端子21に対応するものと外部端子21とを第2のワイヤ70でワイヤボンディングする。上述のように、センサチップ20は台座60に固定されているため、センサチップ20に係る部品のトータルの高さは台座60の高さとセンサチップ20の高さを合わせた高さになっている。このため、ワイヤボンディング時に第2のワイヤ70を押さえつける力がセンサチップ20の高さ方向に逃げることになるが、上述のように軟らかい第2のワイヤ70を用いるため、第2のワイヤ70をセンサチップ20に押さえつける力を、第1のワイヤ50の場合よりも小さくすることができるため、センサチップ20にクラックを発生させずに第2のワイヤ70をセンサチップ20に接合することができる。
【0041】
このようにして各ワイヤ50、70を接合した後、ケース10の凹部11内に第1保護部材80、第2保護部材90を充填することで図1および図2に示される半導体装置S1が完成する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、センサチップ20に接合する第2のワイヤ70として、処理回路チップ30に接合される第1のワイヤ50よりも軟らかいものを用いていることが特徴となっている。これにより、センサチップ20において横幅が1に対して台座60を含めたセンサチップ20に係る高さが0.5〜1.5のものにおいて、第2のワイヤ70をセンサチップ20に接合する際、第1のワイヤ50を接合する場合よりも第2のワイヤ70をセンサチップ20に強く押さえつけなくても当該第2のワイヤ70を容易に接合することができる。したがって、第2のワイヤ70の接合時にセンサチップ20の外部端子21下におけるチップクラックの発生を抑制することができ、センサチップ20を破壊しないようにすることができる。
【0043】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。上記第1実施形態では、センサチップ20と処理回路チップ30とがケース10の凹部11内の異なる場所に設置されていたが、本実施形態ではセンサチップ20と処理回路チップ30とを積層した状態で各ワイヤ50、70を接合したことが特徴となっている。
【0044】
図3は、本発明の第2実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図4は図3のB−O−B断面図である。図3および図4に示されるように、本実施形態に示される半導体装置S2では、処理回路チップ30上にセンサチップ20が積層され接合された構造をなしている。このような場合、センサチップ20に係る高さは、センサチップ20と処理回路チップ30と合わせた高さとなる。
【0045】
そして、処理回路チップ30の処理用端子32のいずれかとケース10の凹部11に設けられたケースステージ12とに第1のワイヤ50がそれぞれ接合されている。また、センサチップ20の外部端子21と当該外部端子21に対応する処理回路チップ30の処理用端子32とに第2のワイヤ70がそれぞれ接合されている。
【0046】
このように、処理回路チップ30上にセンサチップ20を積層したものであっても、センサチップ20の外部端子21に接合するワイヤを第1のワイヤ50よりも軟らかい第2のワイヤ70とすることで、当該第2のワイヤ70をセンサチップ20に接合する際にセンサチップ20に掛かる力を低減することができ、センサチップ20のチップクラックの発生を抑制することができる。
【0047】
(第3実施形態)
本実施形態では、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。センサチップ20が電気的フローティングまたはゲージ回路の最高電位保持の場合であって、センサチップ20においてブリッジ抵抗を組んだセンサ素子の場合、チップクラックによるリーク電流が出力端子に流入しなければ、センサ素子の出力変動は起こらない。すなわち、センサチップ20の出力端子部分にクラックが生じなければ、特性変動は起こらない。したがって、本実施形態では、センサチップ20の外部端子21のうち、出力端子にのみ第2のワイヤ70を接合したことが特徴となっている。
【0048】
図5は、本発明の第3実施形態に係る半導体装置の平面図であり、図6は図5のC−O−C断面図である。図5および図6に示されるように、本実施形態で示される半導体装置S3では、センサチップ20の外部端子21のうち出力端子23と当該出力端子23に対応する処理回路チップ30の処理用端子32とに少なくとも第2のワイヤ70がそれぞれ接合されている。
【0049】
また、センサチップ20の外部端子21のうち出力端子23ではないもの、例えば電源用などのものには第1のワイヤ50が接合されている。このように、外部端子21のうちゲージ回路の特性に影響を及ぼさないものについては、第1のワイヤ50を接合しても構わない。もちろん、センサチップ20において出力端子23ではない外部端子21は、チップクラックの発生によってゲージ回路等の特性に影響を及ぼさない場所に形成されていることが好ましい。
【0050】
以上説明したように、センサチップ20の外部端子21のうち出力端子23に接合されるワイヤのみを第1のワイヤ50よりも軟らかい第2のワイヤ70とすることで、センサチップ20においてセンサ回路特性に影響を与えるブリッジ回路の出力端子23のクラックの発生を抑制し、センサチップ20におけるゲージ回路の出力変動を回避することも可能である。
【0051】
(他の実施形態)
上記各実施形態では、センサチップ20は圧力媒体の圧力を検出するものであったが、センサチップ20は他の物理量を検出する素子が形成されたものであっても構わない。センサチップ20として、例えば加速度センサ、磁気センサ、回転角センサ等が形成されたものでも構わない。
【0052】
上記各実施形態では、各ワイヤ50、70としてAuを材質としたものを用いているが、Al(アルミニウム)を材質としたワイヤを採用しても構わない。この場合、ワイヤの硬さを調整したものを用意すれば良い。
【0053】
上記各実施形態では、ケースステージ12に接合された第1のワイヤ50はその一部が第1保護部材80に被覆された状態になっているが、第1のワイヤ50全体が第1保護部材80に被覆された状態になっていても構わない。
【0054】
また、第3実施形態で示された構造を第2実施形態の構造に適用することもできる。すなわち、処理回路チップ30上にセンサチップ20が積層されたものにおいて、センサチップ20の外部端子21のうち出力端子23にのみ第2のワイヤ70を接合するようにしても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図2】図1のA−O−A断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図4】図3のB−O−B断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る半導体装置の平面図である。
【図6】図5のC−O−C断面図である。
【符号の説明】
【0056】
10…樹脂ケース、11…凹部、12…ケースステージ、20…センサチップ、23…出力端子、30…処理回路チップ、40…接着剤、50…第1のワイヤ、60…台座、70…第2のワイヤ、80…第1保護部材、90…第2保護部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部(11)を有する樹脂ケース(10)と、前記凹部に収納され、物理量を検出してそのレベルに応じた電気信号を発生するセンサチップ(20)と、前記凹部に収納され、前記センサチップの電気信号の信号処理を行う処理回路チップ(30)と、前記凹部に露出するように設置され、外部との電気的接続を行うケースステージ(12)と、前記ケースステージと前記処理回路チップとを電気的に接続する第1のワイヤ(50)と、前記処理回路チップと前記センサチップとを電気的に接続する第2のワイヤ(70)と、を備え、前記センサチップの横方向の寸法が1、前記凹部の設置面から前記センサチップの表面までの高さ方向の寸法が0.5〜1.5の比率であり、前記センサチップのチップサイズが3.0mm□以下の半導体装置であって、
前記第2のワイヤが前記第1のワイヤよりも軟らかいものであることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記センサチップに接続される前記第2のワイヤは、少なくとも前記電気信号を出力する出力端子(23)に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記センサチップに感圧素子が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記凹部内に、前記第1のワイヤが接合された前記ケースステージおよび前記第1のワイヤの接合部分を覆うように、前記凹部内にゴム状の第1保護部材(80)が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに半導体装置。
【請求項5】
前記凹部内において、前記第1保護部材上にゲル状の第2保護部材(90)が設けられ、当該第2保護部材によって前記第1のワイヤおよび前記第2のワイヤ全体が保護されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のワイヤの硬さが80000MPa以上100000MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2のワイヤの硬さが50000MPa以上70000MPa以下であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記処理回路チップは前記凹部に接着剤(40)を介して直接接着されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記センサチップは、前記凹部に前記接着剤を介して設置された前記ガラス状の台座(60)上に設置されていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記処理回路チップ上に前記センサチップが積層され接合された構造をなしていることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1のワイヤの一部または全部が前記第1保護部材に被覆されていることを特徴とする請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記センサチップの前記出力端子以外の端子には前記第1のワイヤが接続されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−107183(P2008−107183A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289670(P2006−289670)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】