説明

半導体装置

【課題】dv/dtサージにより、支持基板と活性層との間の絶縁膜にて構成される寄生容量を充放電する変位電流が発生することを抑制し、回路の誤動作を防止する。
【解決手段】低電位基準回路部LVの下と高電位基準回路部HVの下にのみ支持基板2を残す。これにより、支持基板2のうち低電位基準回路部LVの下の部分と高電位基準回路部HVの下の部分とが絶縁部材30にて絶縁された状態となる。さらに、高電位基準回路部HVと支持基板2との間および低電位基準回路部LVと支持基板2との間の双方、もしくは、少なくとも高電位基準回路部HVと支持基板2との間を同電位にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の機器を駆動させるためのインバータ制御用の素子等に用いられる半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ等の負荷を駆動させるためのインバータ制御用の素子等に用いられる半導体装置として、HVIC(High Voltage Integrated Circuit)がある。このHVICにより、負荷を駆動するためのインバータ内に備えられるパワーデバイスを制御する。
【0003】
従来、インバータの駆動には、図14に示すように、モータ100の駆動を行うインバータ回路101のハイサイド側のIGBT102aを駆動する高電基準回路に相当する高電基準ゲート駆動回路が形成された素子103とローサイド側のIGBT102bを駆動する低電基準回路に相当する低電位基準ゲート駆動回路が形成された素子104を別チップで構成し、これら2チップの間にフォトカプラ105a、105bおよび制御回路106を備えた回路が用いられていた。この回路では、フォトカプラ105a、105bを通じて信号伝達を行うことにより高電位基準回路と低電基準回路における基準電圧のレベルシフトを行っている。
【0004】
近年、インバータの小型化の為に、1チップ化(HVIC化)が進められており、図15に示すように、モータ200の駆動を行うインバータ回路201に備えられるIGBT202a、202bを制御する高電基準回路203と低電基準回路204に加えて高耐圧のレベルシフト素子205(例えばLDMOS)を備えた半導体装置(HVIC)206が用いられている。
【0005】
しかしながら、このように1チップ化した半導体装置206では、高電位基準回路203と低電位基準回路204との間で電位の干渉が発生し、回路を誤動作させるという問題があった。このため、従来では、JI分離構造、誘電体分離構造、SOI(Silicon on insulator)基板を用いたトレンチ分離構造(例えば、特許文献1参照)などにより素子分離を行っているが、いずれもレベルシフトにおける低電位(例えば0V)から高電位(例えば750V)に切り替えるときに高電圧(例えば1200Vを超える電圧)が数十kV/μsecという早い立ち上がり速度で生じることから、この立ち上がりの早い高電圧サージ(以下、立ち上がり時間に対する電圧上昇が高いことからdv/dtサージという)を回路の誤動作無く扱うことが難しい。特に、ノイズに敏感なアナログ素子を含む回路を使用する場合はロジック回路よりも誤動作が顕著に発生し、問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−93229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した素子分離手法の中では、SOI基板を用いたトレンチ分離構造が最もノイズに強く、素子分離としては最もポテンシャルが高いと考えられる。しかしながら、この構造を用いて高耐圧のレベルシフト素子を開発してきたところ、SOI基板を用いたトレンチ分離構造のHVICにおいても、dv/dtサージが印加された際に支持基板を介して電位が干渉し、支持基板と活性層(SOI層)との間に配置された埋込酸化膜(BOX:Buried Oxide)にて形成される寄生容量を充放電する変位電流が発生し、回路を誤動作させてしまうという問題が生じた。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、SOI基板を用いたトレンチ分離構造により低電位基準回路と高電位基準回路およびレベルシフト素子を備えた半導体装置を構成する場合において、dv/dtサージにより、支持基板と活性層との間に配置される絶縁膜(例えば、BOX)にて構成される寄生容量を充放電する変位電流が発生することを抑制し、回路の誤動作を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、活性層(1)と支持基板(2)とが埋込絶縁膜(3)を介して貼り合わされたSOI基板(4)を有し、SOI基板(4)における活性層(1)に、第1の電位を基準電位として動作する低電位基準回路部(LV)と、第1の電位よりも高電位な第2の電位を基準電位として動作する高電位基準回路部(HV)と、低電位基準回路部(LV)と高電位基準回路部(HV)との間での基準電位のレベルシフトを行うためのレベルシフト素子(20)が備えられたレベルシフト素子形成部(LS)とが形成されてなる半導体装置において、支持基板(2)は、低電位基準回路部(LV)と対応する場所と高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられ、これら低電位基準回路部(LV)と対応する場所と高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)の間が絶縁部材(3)にて絶縁されており、かつ、高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)を高電位基準回路部(HV)の基準電位である第2の電位となる部位に電気的に接続することを特徴としている。
【0010】
このように、低電位基準回路部(LV)と対応する場所と高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)の間を絶縁部材(3)にて絶縁している。このため、低電位基準回路部(LV)の下部と高電位基準回路部(HV)の下部との間での電位の伝播が抑制され、活性層(1)と支持基板(2)の間の電位差が小さくなる。したがって、寄生容量を充放電する変位電流の発生を抑制することができ、回路を誤動作させてしまわないようにできる。また、高電位基準回路部(HV)と支持基板(2)との間、つまり埋込絶縁膜(3)を挟んだ両側が同電位とされるため、より変位電流が発生することを抑制することができる。
【0011】
例えば、請求項に示すように、絶縁部材(3)を空気にて構成することもできる。さらに、請求項に示すように、絶縁部材(3)を真空にて構成することもできる。
【0012】
さらに、請求項に記載したように、低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)を低電位基準回路部(LV)の基準電位である第1の電位となる部位に電気的に接続することもできる。
【0013】
このような構成とすれば、低電位基準回路部(LV)と支持基板(2)との間、つまり埋込絶縁膜(3)を挟んだ両側が同電位とされるため、より変位電流が発生することを抑制することができる。
【0014】
請求項に記載の発明では、低電位基準回路部(LV)と高電位基準回路部(HV)の間にレベルシフト素子形成部(LS)が形成されていると共に、これら低電位基準回路部(LV)と高電位基準回路部(HV)およびレベルシフト素子形成部(LS)がトレンチ分離部(5)にて囲まれることで、トレンチ分離部(5)の外部が素子外領域(50)とされており、支持基板(2)を素子外領域(50)と対応する場所にも備えることを特徴としている。
【0015】
このように、素子外領域(50)と対応する場所にも支持基板(2)を残すようにすることにより、半導体装置の外枠の強度を強くすることが可能となる。
【0016】
例えば、請求項に記載したように、素子外領域(50)と対応する場所に備えられた支持基板(2)を低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)と一体とした構造とすることができる。
【0017】
また、請求項に記載したように、素子外領域(50)と対応する場所に備えられた支持基板(2)を低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた支持基板(2)と電気的に接続した構造とすることもできる。
【0018】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置を上面側から見た時のレイアウト図である。
【図3】図1に示す半導体装置を裏面側から見た時のレイアウト図である。
【図4】図1に示す半導体装置を樹脂封止型半導体装置とした場合の製造工程を示した断面図である。
【図5】dv/dtサージが発生した場合の変位電流の大きさを調べた結果を示した図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図7】図1に示す半導体装置を樹脂封止型半導体装置とした場合の製造工程を示した断面図である。
【図8】dv/dtサージが発生した場合の変位電流の大きさを調べた結果を示した図である。
【図9】本発明の第3実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図10】図9に示す半導体装置を裏面側から見た時のレイアウト図である。
【図11】本発明の第4実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図12】本発明の第5実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。
【図13】図12に示す半導体装置を裏面側から見た時のレイアウト図である。
【図14】従来のモータを駆動するインバータ回路を駆動するための回路構成を示した図である。
【図15】従来のモータを駆動するインバータ回路を駆動するための回路構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態にかかる半導体装置(HVIC)の断面図である。また、図2および図3は、それぞれ、図1に示す半導体装置を上面側から見た時のレイアウト図と、裏面側から見た時のレイアウト図である。なお、図1は、図2のA−A断面図に相当する図である。
【0022】
以下、これらの図を参照して、本実施形態の半導体装置の構成について説明する。なお、以下の説明では、図1の紙面上方を半導体装置の表面側、紙面下方を半導体装置の裏面側として説明する。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の半導体装置は、例えばn型シリコンにて構成されたSOI層1と支持基板2とが埋込酸化膜3を介して接合されたSOI基板4を用いて形成されている。
【0024】
SOI層1は、半導体装置の表面側に配置され、シリコン基板を所定膜厚に研削することにより構成されている。このSOI層1は、複数のトレンチ分離部5により素子分離されている。各トレンチ分離部5は、SOI層1の表面から埋込酸化膜3に達するトレンチ6とトレンチ6内に配置された絶縁膜7によって構成されており、例えば同等幅にて構成されている。
【0025】
複数のトレンチ分離部5は多重リング構造とされており、最も外側とそれよりも1つ内側のトレンチ分離部5の間に形成される領域(つまり図1〜図3の紙面左側の領域)が低電位基準回路部LV、最も内側のトレンチ分離部5内の領域(つまり紙面右側の領域)が高電位基準回路部HV、これら低電位基準回路部LVと高電位基準回路部HVの間に形成される領域がレベルシフト素子形成部LSとされている。
【0026】
SOI層1における低電位基準回路部LVには、小電位にて駆動されるロジック回路などの信号処理回路が構成されている。低電位基準回路部LVは、トレンチ分離部5にて半導体装置の他の部分から素子分離されている。この低電位基準回路部LVには、CMOS10などのように信号処理回路を構成する各種素子が備えられている。具体的には、SOI層1内がSTI(Shallow Trench Isolation)やLOCOS酸化膜等の素子分離用の絶縁膜11にて素子分離されており、素子分離された各領域はnウェル層12aもしくはpウェル層12bとされている。nウェル層12a内にはp+型ソース領域13aおよびp+型ドレイン領域14aが構成され、pウェル層12b内にはn+型ソース領域13bおよびn+型ドレイン領域14bが構成されている。そして、p+型ソース領域13aとp+型ドレイン領域14aの間に位置するnウェル層12aの表面、および、n+型ソース領域13bおよびn+型ドレイン領域14bの間に位置するpウェル層12bの表面に、ゲート絶縁膜15a、15bを介してゲート電極16a、16bが形成されている。これにより、nチャネルMOSFETとpチャネルMOSFETにて構成されたCMOS10が構成されている。
【0027】
なお、SOI層1の表面側には、CMOS10を構成するゲート電極16a、16bや各ソース領域13a、13bもしくは各ドレイン領域14a、14bと電気的に接続される配線部や層間絶縁膜などが形成されているが、ここでは図示を省略してある。また、CMOS10の他にも、バイポーラトランジスタや拡散抵抗、さらにはメモリなども備えられるが、これらの構造は周知であるため、ここでは代表してCMOS10のみを示してある。
【0028】
SOI層1における高電位基準回路部HVには、高電位にて駆動されるロジック回路などの信号処理回路が構成されている。高電位基準回路部HVは、トレンチ分離部5にて半導体装置の他の部分から素子分離されている。この高電位基準回路部HVにも、低電位基準回路部LVと同様の構造のCMOS10が備えられており、図示しないがバイポーラトランジスタや拡散抵抗、さらにはメモリなども備えられている。
【0029】
また、SOI層1におけるレベルシフト素子形成部LSには、レベルシフト素子として高耐圧LDMOS20が形成されている。高耐圧LDMOS20は、SOI層1の表層にそれぞれ位置するn型ドレイン領域21、p型チャネル領域22、n+型ソース領域23を有している。n型ドレイン領域21の表層にはn+型コンタクト層24が形成されており、p型チャネル領域22の表層にはp型コンタクト層25が形成されている。また、n型ドレイン領域21とp型チャネル領域22は、いわゆるLOCOS酸化膜26により、分離されている。そして、p型チャネル領域22上には、ゲート絶縁膜27を介して、ゲート電極28が配置されている。これにより、高耐圧LDMOS20が構成されている。
【0030】
なお、SOI層1の表面側には、ゲート電極28、n+型ソース領域23およびp型コンタクト層25、もしくは、n+型コンタクト層24と電気的に接続される配線部や層間絶縁膜が形成されているが、ここでは図示を省略してある。
【0031】
このような構造の高耐圧LDMOS20は複数セル形成されており、低電位基準回路部LVと高電位基準回路部HVとの間において複数セルが配置されると共に、各セルがトレンチ分離部5によって素子分離されている。
【0032】
一方、支持基板2は、シリコン基板にて構成されているが、図1および図3に示されるように、低電位基準回路部LVと対応する部分と高電位基準回路部HVと対応する部分のみが残されている。そして、支持基板2が除去されてる部分には絶縁部材30が埋め込まれた構造とされている。絶縁部材30は、できるだけ誘電率の低い材質で構成されており、例えばエポキシ樹脂のような封止材料として用いられる樹脂等にて構成されている。
【0033】
このように構成された半導体装置では、低電位基準回路部LVの下と高電位基準回路部HVの下にのみ支持基板2が残された状態となっているため、支持基板2のうち低電位基準回路部LVの下の部分と高電位基準回路部HVの下の部分とが絶縁部材30にて絶縁された状態となる。このため、低電位基準回路部LVの下部と高電位基準回路部HVの下部との間での電位の伝播が抑制され、SOI層1と支持基板2の間の電位差が小さくなる。したがって、寄生容量を充放電する変位電流の発生を抑制することができ、回路を誤動作させてしまわないようにできる。
【0034】
なお、支持基板2のうち低電位基準回路部LVと対応する部分と高電位基準回路部HVと対応する部分が絶縁部材30にて絶縁されているものの、実際には、絶縁部材30の誘電率に応じた寄生容量が発生することになる。この寄生容量は、絶縁部材30にて分離されている距離(支持基板2の間隔)が長いため、非常に小さなものであり、変位電流の発生をほぼ抑制することができるが、絶縁部材30の誘電率によって寄生容量の大きさが変わるため、できるだけ絶縁部材30を誘電率の低い材料にて構成するのが好ましい。
【0035】
以上説明した本実施形態の半導体装置の製造方法に関しては、基本的にはほぼ従来と同様であるが、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVおよびレベルシフト素子形成部LSを構成する各素子を形成するためのプロセスを実施したのち、支持基板2を部分的に除去し、除去した部分を絶縁部材30にて埋め込むという工程を行えば良い。
【0036】
図4は、本実施形態の半導体装置を樹脂封止型半導体装置とした場合の製造工程を示した断面図(ただし、SOI層1内に形成された各素子に関しては図示省略)である。以下、この図を参照して、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。
【0037】
まず、図4(a)に示すように、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVおよびレベルシフト素子形成部LSを構成する各素子を形成するためのプロセスを実施したのち、支持基板2の裏面を研磨する。そして、研磨後の支持基板2の裏面にシリコン酸化膜31aやシリコン窒化膜31bで構成されたマスク31を配置し、マスク31を用いたエッチングを行うことで支持基板2を部分的に除去する。この工程に関しては、圧力センサなどのダイアフラム形成工程に用いられているような酸化膜との選択比が高いKOH溶液を用いたウェットエッチングにて行うことができる。
【0038】
次に、図4(b)に示すように、支持基板2およびエッチング除去した部分を覆うように樹脂等で構成された絶縁部材30を塗布する。そして、図4(c)に示すように絶縁部材30の表面にダイボンドフィルム32を配置したのち、図4(d)に示すようにダイボンドフィルム32を介して半導体装置をリードフレーム33に接着する。この後、図4(e)に示すように外部接続端子34と半導体装置の所定箇所とをボンディングワイヤ35にて電気的に接続したのち、半導体装置とリードフレーム33および外部接続端子34の一部を封止樹脂36にて覆うことにより、樹脂封止型半導体装置が完成する。このようにして、本実施形態の半導体装置が適用された樹脂封止型半導体装置を製造することができる。
【0039】
なお、絶縁部材30の塗布は支持基板2のうち除去された部分にのみ残るように、例えば絶縁部材30を塗布したのちに支持基板2が露出するまで絶縁部材30を研削しても良いが、図4に示したように、支持基板2が絶縁部材30にて全面的に覆われたままの状態であっても構わない。
【0040】
参考として、本実施形態の半導体装置を図示しないインバータ回路に接続してモータの駆動を行った場合を想定したシミュレーションを行った。具体的には、高電位基準回路部HVと低電位基準回路部LVとの電圧基準のレベルシフトのために、レベルシフト用の電圧を0V〜750Vに所定時間ごとに切り替える矩形波として印加した場合を想定した。このようなレベルシフト用の電圧が印加される場合、0Vから750Vに切り替える瞬間に、瞬間的に750Vをオーバシュートする1200〜1300V程度の高電圧が発生することになるため、大きなdv/dtサージが生じることになるが、このdv/dtサージが発生した場合の変位電流の大きさを調べたところ、図5に示す結果が得られた。
【0041】
この図に示されるように、従来のような支持基板2が分断されていない一枚の基板である場合と比較して、2桁近く変位電流が小さくなっていることが判る。この結果からも、dv/dtサージに起因して発生する変位電流を抑制することが可能となり、上記効果が得られることが判る。
【0042】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して支持基板2の電位固定を行うものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0043】
図6は、本実施形態にかかる半導体装置の断面図である。この図に示されるように、本実施形態では、高電位基準回路部HVのSOI層1内の基準電位をとる端子(図示せず)と支持基板2のうち高電位基準回路部HVと対応する場所に残された部分とを同電位とすべく、これらの間を電気的に接続している。具体的には、支持基板2のうち高電位基準回路部HVと対応する場所に残された部分の裏面に導体パターン40が形成された基板41を接合し、導体パターン40と高電位基準回路部HVのSOI層1内の基準電位をとる端子とをワイヤ42にて電気的に接続している。
【0044】
また、低電位基準回路部LVのSOI層1内の基準電位をとる端子(図示せず)と支持基板2のうち低電位基準回路部LVと対応する場所に残された部分とを同電位とすべく、これらの間を電気的に接続している。具体的には、支持基板2のうち低電位基準回路部LVと対応する場所に残された部分の裏面に導体パターン43が形成された基板44を接合し、導体パターン43と高電位基準回路部HVのSOI層1内の基準電位をとる端子とをワイヤ45にて電気的に接続している。
【0045】
このような構成とすれば、高電位基準回路部HVと支持基板2との間および低電位基準回路部LVと支持基板2との間、つまり埋込酸化膜3を挟んだ両側が同電位とされるため、より変位電流が発生することを抑制することができる。
【0046】
以上説明した本実施形態の半導体装置の製造方法に関しては、基本的には上記第1実施形態と同様であるが、支持基板2と導体パターン40、43との電気的な接続等の工程に関して第1実施形態と異なる。
【0047】
図7は、本実施形態の半導体装置を樹脂封止型半導体装置とした場合の製造工程を示した断面図である。この図を参照して、本実施形態の半導体装置の製造方法について説明する。なお、本図に関しても、図4と同様、SOI層1内に形成された各素子に関しては省略してある。
【0048】
まず、第1実施形態で示した図4(a)に示す工程まで行う。そして、図7(a)に示すように、SOI層1側の表面をレジスト46aにて保護したのち、絶縁部材30を構成する樹脂をエッチングし、続いてマスク31をエッチングする。次に、図7(b)に示すように、レジスト46aを除去した後、支持基板2の裏面に金属層47をデポジションし、この金属層47をパターニングするためのマスク48を配置する。そして、図7(c)に示すように、再びSOI層1側の表面をレジスト46bにて保護したのち、マスク48を用いて金属層47をパターニングする。これにより、金属層47にて支持基板2のうちの高電位基準回路部HVの下部に残された部分と伝記的に接続される導体パターン40や低電位基準回路部LVの下部に残された部分と電気的に接続される導体パターン43が構成される。
【0049】
この後、図7(d)に示すように、マスク48やレジスト46bを除去した後、はんだ49を介して導体パターン40、43を基板41、44を構成するリードフレーム33を電気的に接続する。そして、図7(e)に示すように、外部接続端子34と半導体装置の所定箇所とをボンディングワイヤ35にて電気的に接続すると共に、リードフレーム33を外部接続端子34のうち低電位基準回路部LVもしくは高電位基準回路部HVとボンディングワイヤ35にて接続されたものと電気的に接続する。これにより、外部接続端子34およびリードフレーム33を介して、高電位基準回路部HVと支持基板2との間および低電位基準回路部LVと支持基板2との間、つまり埋込酸化膜3を挟んだ両側を同電位とすることができる。この後、半導体装置とリードフレーム34および外部接続端子34の一部を封止樹脂36にて覆うことにより、本実施形態の半導体装置を備えた樹脂封止型半導体装置が完成する。このようにして、本実施形態の半導体装置が適用された樹脂封止型半導体装置を製造することができる。
【0050】
参考として上述した図5と同様のシミュレーションを行ったところ、図8に示す結果が得られた。この図に示されるように、本実施形態の構造とした場合、第1実施形態の構造とした場合以上に変位電流の発生を抑制でき、従来の構造に対して3桁近く変位電流を小さくすることができた。
【0051】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第1実施形態に対して素子外領域と対応する場所にも支持基板2を残すようにしたものであり、その他に関しては第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図9は、本実施形態にかかる半導体装置の断面図である。また、図10は、図9に示す半導体装置を裏面側から見た時のレイアウト図である。なお、図9は、図10のB−B断面図に相当する図である。
【0053】
図9および図10に示すように、複数のトレンチ分離部5のうち最も外周側に配置されたものよりも更に外側を素子外領域50として、この素子外領域50と対応する場所にも支持基板2を残すようにしている。具体的には、図10に示すように、素子外領域50と対応する場所のうち低電位基準回路部LVとレベルシフト素子形成部LSおよび高電位基準回路部HVの配列方向と同方向の二辺および低電位基準回路部LVと対向する一辺にコの字状に支持基板2を残している。
【0054】
このように、素子外領域50と対応する場所にも支持基板2を残すようにすることにより、半導体装置の外枠の強度を強くすることが可能となる。
【0055】
(第4実施形態)
本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第2実施形態に対して、第3実施形態と同様に素子外領域と対応する場所にも支持基板2を残すようにしたものであり、その他に関しては第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
図11は、本実施形態にかかる半導体装置の断面図である。図11に示すように、本実施形態でも、素子外領域50と対応する場所において支持基板2を残した構造としている。このような構造とすることにより、第2実施形態の効果を得つつ、半導体装置の外枠の強度を強くすることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の場合、素子外領域50と対応する場所に残された支持基板2に関しても、導体パターン43を通じて低電位基準回路部LVの基準電位をとる端子と電気的に接続された構造としているが、この部分に関しては特に低電位基準回路部LVの基準電位と同電位にする必要はないため、フローティング状態にしても構わない。
【0058】
(第5実施形態)
本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態の半導体装置は、第3実施形態に対して、支持基板2の残し方を変更したものであり、その他に関しては第3実施形態と同様であるため、第3実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
図12は、本実施形態にかかる半導体装置の断面図である。また、図13は、図12に示す半導体装置を裏面側から見た時のレイアウト図である。なお、図13は、図12のC−C断面図に相当する図である。
【0060】
図12および図13に示すように、本実施形態でも、素子外領域50と対応する場所において支持基板2を残した構造としているが、低電位基準回路部LVおよび素子外領域50と対応する場所の支持基板2を繋げて一体としてある。このような構造としても、第2実施形態の効果を得つつ、半導体装置の外枠の強度を強くすることが可能となる。
【0061】
(他の実施形態)
上記第1〜第5実施形態では、低電位基準回路部LVや高電位基準回路部HVおよびレベルシフト素子形成部LSを構成する素子の一例を記載しているが、これらを構成する素子の種類に関しては適宜変更可能である。
【0062】
また、第1〜第5実施形態において、支持基板2の間に形成した絶縁部材30を樹脂等で構成する場合について説明したが、絶縁部材30は樹脂の他、酸化膜などの絶縁膜であっても構わないし、空気もしくは真空としても構わない。絶縁部材30を空気もしくは真空とする場合、絶縁部品を配置する訳ではないが、支持基板2の間に何も絶縁部品を備えないこと自体が空気を配置した構造にすることになり、絶縁部材30として機能することになる。ただし、絶縁部材30を真空とする場合には、半導体装置が収容されるケース内を真空封止するなど、絶縁部材30が外部から仕切られた構造とされる必要がある。
【0063】
また、第3〜第5実施形態では、素子外領域50と対応する場所に残した支持基板2の形状として、コの字形状を例に挙げて説明したが、この形状に限るものではない。例えば、素子外領域50と対応するする場所全域に形成することにより支持基板2を枠状に残しても良いし、低電位基準回路部LVとレベルシフト素子形成部LSおよび高電位基準回路部HVの配列方向と対応する二辺にのみ支持基板2を残すようにしても構わない。低電位基準回路部LVとレベルシフト素子形成部LSおよび高電位基準回路部HVの配列方向と対応する一辺と、低電位基準回路部LVもしくは高電位基準回路部HVと対応する一辺、つまりL字状に支持基板2を残すようにしても構わない。
【0064】
また、第2、第4実施形態では、高電位基準回路部HVと支持基板2との間および低電位基準回路部LVと支持基板2との間の双方を同電位にしているが、少なくとも高電位基準回路部HVと支持基板2との間を同電位にすれば、上記効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 SOI層
2 支持基板
3 埋込酸化膜
4 SOI基板
5 トレンチ分離部
10 CMOS
20 LDMOS
40、43 導体パターン
41、44 基板
42、45 ワイヤ
50 素子外領域
LS レベルシフト素子形成部
LV 低電位基準回路部
HV 高電位基準回路部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層(1)と支持基板(2)とが埋込絶縁膜(3)を介して貼り合わされたSOI基板(4)を有し、
前記SOI基板(4)における前記活性層(1)に、第1の電位を基準電位として動作する低電位基準回路部(LV)と、前記第1の電位よりも高電位な第2の電位を基準電位として動作する高電位基準回路部(HV)と、前記低電位基準回路部(LV)と前記高電位基準回路部(HV)との間での基準電位のレベルシフトを行うためのレベルシフト素子(20)が備えられたレベルシフト素子形成部(LS)とが形成されてなる半導体装置において、
前記支持基板(2)は、前記低電位基準回路部(LV)と対応する場所と前記高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられ、これら前記低電位基準回路部(LV)と対応する場所と前記高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)の間が絶縁部材(3)にて絶縁されており、
かつ、前記高電位基準回路部(HV)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)は、前記高電位基準回路部(HV)の基準電位である前記第2の電位となる部位に電気的に接続されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記絶縁部材(3)は、空気であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記絶縁部材(3)は、真空であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)は、前記低電位基準回路部(LV)の基準電位である前記第1の電位となる部位に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項5】
前記低電位基準回路部(LV)と前記高電位基準回路部(HV)の間に前記レベルシフト素子形成部(LS)が形成されていると共に、これら前記低電位基準回路部(LV)と前記高電位基準回路部(HV)および前記レベルシフト素子形成部(LS)がトレンチ分離部(5)にて囲まれることで、前記トレンチ分離部(5)の外部が素子外領域(50)とされており、
前記支持基板(2)は、前記素子外領域(50)と対応する場所にも備えられていることを特徴とする請求項1ないしのいずれか1つに記載の半導体装置。
【請求項6】
前記素子外領域(50)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)は、前記低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)と一体とされていることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記素子外領域(50)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)は、前記低電位基準回路部(LV)と対応する場所に備えられた前記支持基板(2)と電気的に接続されていることを特徴とする請求項5または6に記載の半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−74178(P2010−74178A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263881(P2009−263881)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【分割の表示】特願2007−323064(P2007−323064)の分割
【原出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】