説明

基板から酸化物を除去する方法及びシステム

基板を処理する方法及びシステムは、上に酸化物を有する基板を処理チャンバ内に供する工程、処理チャンバと結合するリモートプラズマ源内で水素含有ガスを励起する工程、及び約900℃よりも低い第1基板温度の基板を励起された水素ガスに曝露することによって基板から酸化物を除去する工程を有する。基板は第1基板温度とは異なる第2基板温度に維持され、第2基板温度に基板上にシリコン含有膜が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基板処理に関し、より詳細には低温で基板から酸化物を除去し、それに続く基板上へのシリコン含有膜の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン含有膜は、半導体残業において広範な用途に用いられている。シリコン含有膜は、たとえばエピタキシャル成長シリコン、多結晶シリコン(poly−Si)、アモルファスシリコン、エピタキシャル成長シリコンゲルマニウム(SiGe)、シリコンゲルマニウムカーバイド(SiGeC)、シリコンカーバイド(SiC)、シリコンナイトライド(SiN)、シリコンカルボナイトライド(SiCN)、及びシリコンカルボキサイド(SiCO)のようなシリコン膜を有する。回路の幾何学的構造がより小さな特徴部位サイズにまで縮小されることで、より低い成膜温度が望ましくなっている。その理由は、半導体素子に新たな材料を導入するため、並びにソース領域及びドレインでの浅い注入物への熱の蓄積を減少させるためである。しかも、シリコン含有膜の非選択(全体的)成長及び選択成長が、将来の素子に必要となることは明らかである。
【0003】
シリコンのエピタキシャル成長とは、バルクのシリコンとは異なるドーピングレベルを有することのできる新たなシリコン含有膜の成長によって、バルクシリコンの結晶格子が引き延ばされる処理である。ターゲットであるエピタキシャル膜の厚さ及び抵抗のパラメータを適合させることは、続いて行われる適切に機能する素子の作製にとって重要である。基板上にシリコン含有膜を成膜させる前、たとえばシリコン基板上にシリコン又はシリコンゲルマニウムをエピタキシャル成長させる前に、高品質のエピタキシャル膜を成膜させるため、基板表面から自然酸化膜を除去する必要があると思われる。典型的には数Åの厚さである自然酸化膜は、たとえ室温でかつ大気圧であっても、清浄なシリコン表面上に容易に形成される。基板が、その上にシリコン含有膜を成膜させる前に清浄でない場合、つまり全ての酸素及び他の不純物が基板表面から除去される場合、続いて成膜されるシリコン含有膜は欠陥を含む。その欠陥により、その膜には大きな漏れ電流が生じ、マイクロエレクトロニクス素子が最適な状態で機能しなくなる。
【0004】
同様に、poly−Si膜は、poly−Si膜上に直接成膜されることで、電気コンタクトを形成して良い。他の処理は典型的にはpoly−Si成膜工程間に行われるので、基板(ウエハ)は、成膜工程と別な成膜工程との間では処理システムから外に取り出されて良い。それにより、基板上に自然酸化膜が形成されてしまう。Poly−Si膜の成膜前に自然酸化膜が除去されない場合、その結果として形成されるコンタクトは非常に高い電気抵抗を有してしまう。
【0005】
従来、(垂直)バッチ型の処理システムでは、成膜処理前に、基板から自然酸化膜を除去しかつ他の不純物を除去するのには、水素雰囲気中で900℃よりも高温にする高温アニーリングが用いられている。しかしそのような高温処理は、多くの先端処理にとっての現在又は未来の熱の蓄積に係る要求を満たさない。たとえば、現在のゲート長及び現代のマイクロエレクトロニクス構造に起因して、素子の熱蓄積を減少させることが求められていることは周知である。水素雰囲気中での高温アニーリングに代わる方法として、プラズマ処理であれば、処理中に基板温度を下げることが可能であることが見いだされた。しかし基板をプラズマ源に曝露する結果、基板に損傷を与える恐れがある。しかもプラズマの利用は、酸化物の除去温度を続いて行われる工程の温度と同一レベルの温度にまで下げることが提唱されている。しかし本発明者らは、このことは、処理工程の温度に望ましくない制約を課すものだと認識している。
【特許文献1】米国特許出願第10/673375号明細書
【特許文献2】特開2002−324760号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は、基板からの酸化物の除去に関連する上述の問題を解決することである。
【0007】
本発明の別な目的は、基板への損傷を減少させながらも低処理温度での基板からの酸化物の除去を可能にすることである。
【0008】
本発明のさらに別な目的は、酸化物除去工程の温度に自由度を供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これら及び/又は他の目的は、基板の処理方法によって供されて良い。本発明の実施例に従うと、当該方法は、バッチ型処理システムの処理チャンバ内へ上に酸化膜が形成されている基板を供する工程、処理チャンバと結合するリモートプラズマ源内で水素含有ガスを励起する工程、約900℃よりも低温である第1基板温度の基板を励起された水素含有ガス流に曝露することで基板から酸化膜を除去する工程、基板を第1基板温度とは異なる第2基板温度に維持する工程、及び第2基板温度の基板上にシリコン含有膜を成膜する工程を有する。
【0010】
本発明の別な態様は基板処理システムを有する。その基板処理システムは、上に酸化膜が形成された基板を有するように備えられた処理チャンバ、並びに、処理チャンバと結合し、及び水素含有ガスを励起するように備えられたリモートプラズマ源を有する。またガスを処理チャンバへ流すように備えられたガス供給ライン、及び基板を加熱するように備えられた熱源も含まれる。制御装置は、熱源に、基板を約900℃よりも低温の第1温度に加熱させ、かつガス供給ラインによって、励起した水素含有ガスが処理チャンバへ流れるように備えられている。それにより、第1温度に加熱された基板が、励起した水素含有ガスに曝露される。制御装置はさらに、熱源に、基板を第1温度とは異なる第2温度に加熱させ、かつ、シリコン含有ガスを処理チャンバへ流すように備えられている。それにより、第2温度に加熱された基板が、シリコン含有ガスに曝露される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以降の説明では、本発明についての一貫した理解を助けるため、及び限定ではない例示目的のため、堆積システムの具体的構成及び様々な構成要素の説明のような具体的詳細について説明する。しかし本発明は、これらの具体的詳細から逸脱した他の実施例でも実施可能であることに留意すべきである。
【0012】
ここで図を参照する。図1は、本発明の実施例に従ったバッチ型処理システムの単純化されたブロック図を示している。バッチ型のプロセスシステム1は、処理チャンバ10及び処理管25を有する。処理管25は、排気パイプ80と接続する上側端部23及び円筒形マニホールド2の蓋27と密閉して接続する下側端部24を有する。排気パイプ80は、処理管25から真空排気システム88へガスを放出することで、処理システム1を所定の大気圧又は大気圧未満の圧力に維持する。複数の基板(ウエハ)40を段重ねで(垂直方向に間隔が設けられた各水平面内に)保持する基板ホルダ35が、処理管25内に設けられている。基板ホルダ35は回転台26上に存在する。回転台26は、蓋27を貫通する回転シャフト21上に設けられ、モーター28によって駆動する。回転台26は処理中に回転することで、全体の膜の均一性を改善させて良い。あるいはその代わりに回転台は、処理中に静止していても良い。処理管25へ基板ホルダを入れかつ処理管25から基板ホルダを出すための昇降機22上に、蓋27は設けられている。蓋27は、最上の位置にあるときに、マニホールド2の開口端部を閉じるように備えられている。
【0013】
ガス供給システム97は、ガスを処理チャンバへ導入するように備えられている。複数のガス供給ラインが、ガス供給ラインを介して複数種類のガスを処理管25へ供給するように、マニホールド2の周囲に備えられて良い。図1では、複数のガス供給ラインのうち1のガス供給ライン45のみが図示されている。図示されたガス供給ライン45はガス源94と接続する。一般的には、ガス源94は、基板40を処理する処理ガスを供給して良い。処理ガスには、基板40上に成膜するためのガス(たとえばシリコン含有膜を成膜するためのシリコン含有ガス)、基板40をエッチングするためのガス、又は基板40を酸化させるためのガスが含まれる。(リモート)プラズマ源95は、ガス供給ライン45によって処理チャンバ10と動作可能なように結合する。プラズマ源95は、ガス源96からの水素含有ガスを励起するように備えられている。励起(分解)した水素含有ガスは、続いてガス供給システム97のガス供給ライン45によって処理管25へ導入されて良い。プラズマ源95はたとえば、マイクロ波プラズマ源、高周波(RF)プラズマ源、又は光照射によって起動するプラズマ源であって良い。マイクロ波プラズマ源の場合では、マイクロ波出力は、約500ワット(W)から約5000Wであって良い。マイクロ波プラズマはたとえば、2.45GHzから8.3GHzであって良い。一例では、リモートプラズマ源は、MKSインスツルメンツによって製造されているAX7610型のダウンストリームプラズマ源(Downstream Plasma Source TypeAX7610)であって良い。
【0014】
円筒形遮熱材30は、反応管25を覆うように設けられている。遮熱材30は、鏡面仕上げの内側表面を有する。鏡面仕上げの内側表面は、主ヒーター20、下部ヒーター65、上部ヒーター15及び排気パイプヒーター70によって放出される放射熱の分散を抑制する。ヘリカル冷却水路(図示されていない)が、冷却媒体路として処理チャンバ10の壁内に形成される。
【0015】
真空排気システム88は、真空ポンプ86、トラップ84及び自動圧力制御装置(APC)82を有する。真空ポンプ86はたとえば、最大20000リットル/秒(以上)の排気速度での排気が可能なドライ真空ポンプを有して良い。処理中では、ガス注入システム97のガス供給ライン45を介してガスが処理チャンバ10へ導入され、かつ処理圧力はAPC82によって調節されて良い。トラップ84は、処理チャンバ10から未反応ルテニウムカルボニル先駆体材料及び副生成物を回収して良い。
【0016】
処理監視システム92は、リルタイムで処理を監視する能力を有するセンサ75を有する。また処理監視システム92は、たとえばMS、FTIR分光計又はパーティクルカウンタを有して良い。制御装置90は、マイクロプロセッサ、メモリ及びデジタルI/Oポートを有する。デジタルI/Oポートは、処理システム1からの出力を監視するのみならず、処理システム1の入力とやり取りし、かつ操作を行うのに十分な制御電圧を発生させる能力を有する。制御装置90は、ガス注入システム97、モーター28、処理監視システム92、ヒーター20、ヒーター15、ヒーター65、ヒーター70、及び真空排気システム88と結合し、かつこれらと情報をやり取りする。制御装置90は、デルコーポレーションから販売されているDELL PRECISION WORKSTATION610(商標)で実装されて良い。制御装置90はまた、汎用コンピュータシステムで実装されても良い。その制御装置は、基板処理装置に、コンピュータによる読み取りが可能な媒体から制御装置に格納されている1以上の命令に係る1以上のシーケンスを実行する制御装置90に応答して、本発明に係る処理工程の一部又は全部を実行させる。コンピュータによる読み取りが可能な媒体又はメモリは、本発明の教示に従ってプログラミングされた命令を保持し、かつ本発明を実装するのに必要なデータ構造、テーブル、レコード又は他のデータを有する。
【0017】
コンピュータによる読み取りが可能な媒体の例には、コンパクトディスク(たとえばCD−ROM)若しくは他の光学式媒体、ハードディスク、フロッピーディスク、テープ、磁気光学ディスク、PROMs(EPROM、EEPROM、フラッシュEPROM)、DRAM、SRAM、SDRAM若しくは他の磁気媒体、パンチカード、紙テープ若しくは穴のパターンを有する他の物理媒体、又は搬送波(後述)若しくはコンピュータによる読み取りが可能な他の媒体がある。
【0018】
制御装置90は、処理システム1に対して局所的に設置されても良いし、又はインターネット又はイントラネットを介して処理システム1に対して離れた場所に設置されても良い。よって制御装置90は、直接接続、イントラネット、インターネット及びワイヤレス接続のうちの少なくとも1を用いることによって処理システム1とのデータのやり取りをして良い。制御装置90は、たとえば顧客側(つまりデバイスメーカー等)のイントラネットと結合して良いし、又はたとえば売り手側(つまり装置製造者等)のイントラネットと結合しても良い。さらに別なコンピュータ(つまり制御装置、サーバー等)が、たとえば制御装置とアクセスすることで、直接接続、イントラネット及びインターネットのうちの少なくとも1を介してデータのやり取りをして良い。
【0019】
本発明を実施するのに特定ハードウエアについての多くの変化型を用いることが可能であり、かつこれらの変化型は当業者にはすぐに思いつくので、図1に図示されているバッチ型の処理システム1は、例示目的でのみ図示されている。図1のプロセスシステム1はたとえば、200mm基板、300mm基板、又はそれ以上の大きさの基板というような如何なる大きさの基板をも処理して良い。さらに処理システム1は、最大で約200以上の基板を同時に処理して良い。あるいはその代わりに、処理システムは、最大で約25の基板を同時に処理しても良い。たとえばシリコンウエハのような半導体基板に加えて、基板は、たとえばLCD基板、ガラス基板、又は化合物半導体基板を有しても良い。
【0020】
本発明者らは、処理前に基板から酸化膜及び他の不純物を除去するために実行される、900℃よりも高温である従来の水素アニーリングは、現在又は未来の熱蓄積に関する要求を満たさないと考えた。よって小さな熱蓄積が求められる先端素子プロセスとの相性の良い、酸化膜を除去する低温処理が必要である。プラズマ源を利用するプラズマ処理が、低温で酸化膜を除去するのに用いることが可能な一方で、そのようなプラズマ処理はまた基板に損傷を起こしてしまう恐れがある。本発明者らは、この損傷は、プラズマ環境中の高エネルギー種(たとえばイオン及び電子)が基板と衝突することで生じると考えた。なぜなら基板は、プラズマの直接視野にあるからである。それに加えて、基板温度がたとえば約900℃よりも高温というように高すぎる場合には、プラズマ処理の結果、基板材料(たとえばシリコン)の損傷又はエッチングが生じうる。
【0021】
本発明者らは、処理(たとえば基板上にシリコン含有膜を成膜するような)前に基板から酸化膜を除去することに関連する上述の問題を解決することは、処理チャンバと結合するリモートプラズマ源内で水素含有ガスを励起し、かつ励起した水素含有ガスに基板を曝露することによって解決されると考えた。ここでリモートプラズマ源は、処理チャンバ内の被処理基板には直接視野にない。この構成は、基板への損傷を減少させながら、900℃よりも低温での低温プラズマ処理を供することが可能である。たとえば特許文献2では、リモートプラズマ源が自然酸化膜を除去するのに用いることが可能であることが示唆されているが、この参考文献はリモートプラズマを実装することで、酸化物除去工程が、その後に行われる処理工程と同一の温度で実行可能にしている。この制約が処理システムの処理能力を改善させるかもしれないが、本発明者らは、処理結果を最適化させるため、各異なる工程が各異なる温度で実行できることが望ましい場合がよくあることを認識していた。
【0022】
この認識に基づき、本発明の実施例は、第1基板温度での酸化膜の除去に続いて、基板温度を異なる温度に維持し、基板をシリコン含有ガスに曝露することによって、シリコン含有膜を基板上に成膜する。よって本発明の酸化膜除去工程は、他の処理工程の処理温度に基づく制約を受けない。一の実施例では、シリコン含有膜は、第1基板温度よりも高温である第2基板温度の基板上に成膜される。それにより、素子製造にとって十分な成膜速度が実現され、かつ成膜されたシリコン含有膜が所望の材料特性を有することが確かめられた。所望の材料特性とは例えば、結晶構造(つまりエピタキシャル成長したものか、多結晶か、又はアモルファスか)及び元素組成を有して良い。さらに第2基板温度は、基板の曝露されたシリコン含有表面上での選択成長、又は基板全体上での非選択(全体的)成長を行うために選択されて良い。基板上に新たな酸化膜が生成されるのを防止するため、基板を大気曝露せずに、シリコン含有膜は基板上に成膜される。
【0023】
ここで図2A及び図2Bを参照する。図2Aは、本発明の実施例に従った、バッチ型の処理システム内での基板からの酸化物の除去及びその後に続いて行われるその基板上へのシリコン含有膜の成膜についてのフローチャートである。図2Bは、本発明の実施例に従った、基板からの酸化物の除去及びその後に続いて行われるその基板上へのシリコン含有膜の成膜についての処理時間の関数として基板温度を図示している。ここで図2Aを参照すると、処理200は、210で、上に酸化膜を有する基板をバッチ型処理システムの処理チャンバ内に供する工程を有する。基板はたとえば、シリコン基板、ゲルマニウム含有シリコン基板、ゲルマニウム基板又は化合物半導体基板のような半導体基板であって良い。また基板は、多数の能動素子及び/又は分離領域を有して良い。さらに基板は、ビア若しくは溝又はこれらの結合を有して良い。
【0024】
210で処理チャンバ内に基板を供した後、図2Bに図示されているように、基板は、時間周期t中に第1基板温度Tに加熱される。一の実施例では、Tは、基板へのエッチングによる損傷のような処理に係る損傷を減少するため、約500℃未満である。しかし当業者にとって明らかなように、熱の蓄積及び損傷の許容度は、それぞれの処理及び素子で変化する。よって本発明の目的では、Tは、従来の酸化物除去に用いられてきた約900℃より低温で十分である。時間周期tは遷移段階であり、たとえば約2分から約15分であって良い。しかしこれは本発明にとって必須ではない。
【0025】
212では、処理チャンバに結合するリモートプラズマ源内で水素含有ガスが励起される。プラズマ源はたとえば、マイクロ波プラズマ源、高周波(RF)プラズマ源、又は光照射によって起動するプラズマ源を有して良い。本発明の実施例に従うと、水素含有ガスは水素(H)であって良い。本発明の別な実施例に従うと、水素含有ガスはH及び不活性ガスを有して良い。不活性ガスはたとえば、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、クリプトン(Kr)若しくはキセノン(Xe)又はこれら2以上の混合ガスを有して良い。本発明の一実施例に従うと、水素含有ガスはH及びArを有して良い。励起した水素ガスにArガスを加えることで、プラズマ源下流の原子状水素の再結合が減少することで、水素含有ガスを含むガス流内の原子状水素の寿命が延びることが示された。よってより効率的な酸化物の除去を可能にするより高濃度の原子状水素に(複数の)基板は曝露される。
【0026】
214では、時間周期t中に、約900℃よりも低い第1基板温度Tの基板が励起した水素含有ガス流に曝露されることで、基板のシリコン含有表面から酸化膜が除去される。第1基板温度Tは、全体の熱蓄積を考慮して、及び/又は、基板材料若しくは基板材料上に形成された他の材料のエッチングのような損傷を最小にしながら効率的に基板から酸化膜を除去できるように選ばれて良い。たとえばより高温での熱蓄積が許容され、かつ基板エッチングが重要でなくなることで、Tは従来温度である900℃に近づいて良い。しかし本発明に従ったリモートプラズマ源を用いて、基板へ到達する高エネルギー種の数を減少させることで、基板への損傷を最小にすることが可能である。本発明の実施例に従うと、第1基板温度は、約0℃よりも高温でかつ約500℃よりも低温であるか、又は200℃と300℃との間であって良い。酸化物除去に係る処理条件には、処理チャンバ内で約100Torr未満のガス圧力が含まれて良い。あるいはその代わりにガス圧力は、処理チャンバ内で約10Torr未満であって良い。標準状態で約0.010リットル/分(slm)から約20slmのガス流速が、水素含有ガスに用いられて良い。
【0027】
基板からの酸化膜除去に続き、216では、基板は、時間周期t中に、第1基板温度Tから第1基板温度Tとは異なる第2基板温度Tに加熱される。図2Bに図示された実施例では、第2温度は第1温度よりも高温である。一の実施例では、水素含有ガスは、時間周期t前又は時間周期t中に排気されることで、基板へのエッチングによる損傷が最小となる。時間周期tは遷移段階であり、その長さは、システム設計、及び、基板温度Tでの酸化物除去工程と基板温度Tとの処理温度差に依存して変化して良い。時間周期tはたとえば、約5分から約45分であって良いが、これは本発明にとって必須ではない。本発明の実施例に従うと、第2基板温度Tは、約500℃から約900℃であって良い。本発明の別な実施例に従うと、第2基板温度Tは、約550℃から約750℃であって良い。本発明の一実施例では、第1処理温度Tが約200℃から300℃であるのに対し、第2処理温度Tが約550℃から750℃である。しかし本発明に従った処理温度が用いられて良い。
【0028】
218では、第2基板温度Tの基板上にシリコン含有膜が成膜される。基板上に酸化膜を形成する恐れのある大気にシリコン含有表面を曝露せずに酸化膜を除去した後、基板上にシリコン含有膜が成膜される。本発明の実施例に従うと、たとえばSiH、SiCl、Si、SiHCl若しくはSiCl又はこれら2以上の混合ガスのようなシリコン含有ガスに基板を曝露させることによって、その基板上にシリコン含有膜が成膜される。本発明の実施例に従うと、シリコン含有膜は、たとえばGeH、GeCl、又はこれらの混合ガスのようなゲルマニウム含有ガスをさらに有して良い。シリコン含有膜は、たとえば図1のガス源94のような非プラズマガス源からシリコン含有ガスを供することによって成膜されて良い。しかしプラズマ源95によって励起される、図1のガス源96のようなガス源からのガスが、成膜を補助するのに用いられて良い。時間周期tは成膜段階であり、一般的には所望の膜厚に依存する。約500Å未満の膜厚である多くの用途については、時間周期tは約1時間未満であって良い。
【0029】
所望の厚さを有するシリコン含有膜が基板上に成膜されたとき、シリコン含有ガスの流れが止まり、基板は時間周期t中に冷却されて良く、その後処理チャンバから取り出される。時間周期t及びt同様に、時間周期tも遷移段階であって、その長さは可変であって良い。時間周期tは、たとえば約2分から約15分であって良い。しかしこれは本発明にとって必須ではない。
【0030】
当業者にとって明らかなように、フローチャート図2B中の各工程又は各段階は、1以上の独立した工程及び/又は操作を含んで良い。従って210、212、214、216及び218において5工程のみ列挙しているのは、本発明を5工程又は段階に限定するものと解してはならない。しかもそれぞれの代表的工程又は段階210、212、214、216及び218を、単一処理のみであると解してはならない。
【0031】
図3A−図3Cは、図2Aのフローダイヤグラムに記述された処理に従って、基板から酸化物を除去した後に清浄基板上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。図3Aは、基板310を含む構造300及び基板310上の酸化膜320を図示している。本発明の実施例に従うと、酸化膜320は自然酸化膜であって良い。基板310はたとえば、Si、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiCN、又はSiCOを有して良い。基板310上に酸化膜320が存在しているために、適切なシリコン含有シード(核化)層の形成が阻害されることで、構造体300上のシリコン成膜に影響が及ぼされる。
【0032】
図3Bは、本発明の実施例に従った、基板310から酸化膜320が除去された後の構造300を図示している。図3Cは、続いて基板310上にシリコン含有膜が成膜された後の構造体300を図示している。膜330はたとえば、エピタキシャル成長したシリコン膜であって良い。このとき新たなシリコン膜330の成長によって、シリコン基板310の結晶格子が引き延ばされる。あるいはその代わりに、成膜された膜330はpoly−Si膜又はアモルファスSi膜であって良い。またあるいはその代わりに、成膜された膜330はSiGe膜であって良い。
【0033】
図4A−図4Dは、本発明の実施例に従って、パターニング構造から酸化物を除去した後に続いてそのパターニング構造上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。図4Aは、基板410、パターニング膜420及び基板410上の開口部430中に成膜された酸化膜440を有するパターニング構造400を図示している。開口部430はたとえば、ビア若しくは溝又はこれらの結合であって良い。パターニング構造400は、素子作製に用いられる典型的な構造であって、シリコン基板410及びその上に存在するフォトリソグラフィによってパターニングされた酸化膜420を有して良い。
【0034】
図4Bは、図2のフローダイヤグラムで記述された処理に従って、開口部430から酸化膜440を除去した後のパターニング構造400を図示している。本発明の実施例に従うと、酸化膜は、バッチ型処理システムの処理チャンバ内に基板を供し、処理チャンバと操作可能なように結合するプラズマ源内で水素含有ガスを励起し、かつ約500℃よりも低温の第1基板温度の基板を励起したガスに曝露することによって、基板のシリコン含有表面から除去される。
【0035】
図4Cは、基板410の曝露部分上にシリコン含有膜450を選択的に堆積した後のパターニング構造400を図示している。選択的に堆積された膜450はたとえば、シリコン基板410上に堆積されたエピタキシャル成長したシリコン膜であって良い。エピタキシャル成長したシリコン膜450はたとえば、図1に図示されたバッチ型処理システム1内において、たとえば基板温度約800℃でSiClを含む処理ガスを用いることによって、シリコン基板410の曝露部分上に選択的に堆積されて良い。あるいはその代わりに基板温度は約550℃から約750℃であって良い。HCDガスを用いたシリコン含有膜の成膜に関するさらなる詳細は特許文献1を参照のこと。
【0036】
エピタキシャル成長したSi含有膜450を選択的に堆積させることで、当業者にとって既知の方法を用いたパターニング膜の除去に続いて、隆起したエピタキシャル成長したシリコン含有膜450をシリコン基板410上に形成することが可能となる。一般的には、パターニング膜420は、酸化物マスク(たとえばSiO)及び窒化物マスク(たとえばSi)のうちの少なくとも1を有して良い。エピタキシャル成長したSi含有膜の選択成長は、隆起したソース及びドレイン領域を有する絶縁体上のシリコン(SOI)素子の作製に用いられて良い。SOI素子作製中、処理が、ソース及びドレイン領域で全シリコンを使い尽くすことで、別なシリコンがこれらの領域に必要となっても良い。このようなシリコンは、シリコン含有膜の選択エピタキシャル成長(SEG)によって供されて良い。シリコン含有膜の選択成長によって、必要とされるフォトリソグラフィ及びエッチング工程の数を減少させることが可能である。これにより、全体的なコスト及び素子作製に含まれる複雑さを減少させることが可能である。
【0037】
図4Dは、パターニング膜400上にシリコン含有膜460を非選択的(全体的)に成長させた後のパターニング構造400を図示している。本発明の一実施例に従うと、膜460はシリコン膜であって良い。シリコン膜460は、基板410及びパターニング膜420を有する材料の型によらず、ほぼ均一の厚さでパターニング構造400上に成膜されて良い。一例では、シリコン膜460は、約500℃以上の基板温度でSiClを用いることによって、パターニング構造400上に成膜されて良い。別な例では、SiCl及びSiHを含む処理ガスが用いられて良い。当業者には明らかであるように、成膜されたシリコン含有膜の結晶構造は、基板温度、処理圧力及びガスの組成を含む処理条件の関数であって良い。
【0038】
たとえ本発明のある典型的実施例のみが詳細に説明されたとしても、当業者は、本発明の新規な教示及び利点からほとんど逸脱することなく、多くの修正型が可能であることをすぐに理解する。従って多くの係る修正型は、本発明の技術的範囲内に含まれるものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施例に従ったバッチ型処理システムの単純化されたブロック図を示している。
【図2A】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内で基板から酸化物を除去し、それに続いて基板上にシリコン含有膜を成膜するフローダイヤグラムである。
【図2B】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内で基板から酸化物を除去し、それに続いて基板上にシリコン含有膜を成膜するための処理時間の関数としての基板温度を図示している。
【図3A】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内で基板から酸化物を除去し、それに続いて基板上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図3B】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内で基板から酸化物を除去し、それに続いて基板上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図3C】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内で基板から酸化物を除去し、それに続いて基板上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図4A】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内でパターニング構造から酸化物を除去し、それに続いてパターニング構造上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図4B】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内でパターニング構造から酸化物を除去し、それに続いてパターニング構造上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図4C】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内でパターニング構造から酸化物を除去し、それに続いてパターニング構造上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。
【図4D】本発明の実施例に従って、バッチ型の処理システム内でパターニング構造から酸化物を除去し、それに続いてパターニング構造上にシリコン含有膜を成膜する様子を概略的に図示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の処理方法であって:
上に酸化膜が形成されている前記基板を処理チャンバ内に供する工程;
前記処理チャンバと結合するリモートプラズマ源内で水素含有ガスを励起する工程;
約900℃よりも低温である第1基板温度の前記基板を前記の励起した水素含有ガス流に曝露することで前記基板から前記酸化膜を除去する工程;
前記基板を前記第1基板温度とは異なる第2基板温度に維持する工程;及び
前記第2基板温度の前記基板上にシリコン含有膜を成膜する工程;
を有する方法。
【請求項2】
前記水素含有ガスがHガスを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素含有ガスが不活性ガスをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記不活性ガスが、Ar、He、Ne、Kr若しくはXe又はこれら2以上の混合ガスを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記水素含有ガスの流速が、約0.010slmから約20slmである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記の成膜工程が、前記基板をシリコン含有ガスに曝露する工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコン含有ガスが、SiH、SiCl、Si、SiHCl若しくはSiCl又はこれら2以上の混合ガスを有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記の成膜工程が、前記基板をシリコン含有ガス及びゲルマニウム含有ガスに曝露する工程を有し、
前記シリコン含有ガスは、SiH、SiCl、Si、SiHCl若しくはSiCl又はこれら2以上の混合ガスを有し、
前記ゲルマニウム含有ガスは、GeH、GeCl、又はこれらの混合ガスを有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記の曝露工程及び前記の成膜工程が、約100Torr未満の処理チャンバ圧力で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の曝露工程及び前記の成膜工程が、約10Torr未満の処理チャンバ圧力で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記の基板を供する工程が、前記基板をバッチ処理チャンバ内に供する工程を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記基板がシリコン含有膜材料を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記シリコン含有膜材料が、Si、SiGe、SiGeC、SiC、SiN、SiCN、又はSiCOを有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記シリコン含有膜が、多結晶Si、アモルファスSi、エピタキシャル成長Si又はSiGeを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記第1基板温度が前記第2基板温度よりも低温である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記第1基板温度が約500℃よりも低温である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記第1基板温度が約200℃から約300℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記第2基板温度が約500℃から約900℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記第2基板温度が約550℃から約750℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記第1基板温度が約200℃から約300℃である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記基板が、1以上のビア若しくは溝又はこれらの結合を有するパターニング基板を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記シリコン含有膜が、前記基板の曝露されたシリコン含有表面上に選択的に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記シリコン含有膜が、前記基板上に非選択的に形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
基板を処理するシステムであって:
上に酸化膜が形成された基板を有するように備えられた処理チャンバ;
前記処理チャンバと結合し、及び水素含有ガスを励起するように備えられたリモートプラズマ源;
前記処理チャンバへガスを流すように備えられたガス供給ライン;
前記基板を加熱するように備えられた熱源;及び
制御装置;
を有し、
前記制御装置は、前記熱源に、基板を約900℃よりも低温の第1温度に加熱させ、
前記ガス供給ラインによって、前記の励起した水素含有ガスが前記処理チャンバへ流れるように備えられ、それにより、前記第1温度に加熱された前記基板が、前記の励起した水素含有ガスに曝露され、
前記熱源に、前記基板を前記第1温度とは異なる第2温度に加熱させ、かつ、
前記処理チャンバへシリコン含有ガスを流すように備えられ、それにより、前記第2温度に加熱された前記基板が、前記シリコン含有ガスに曝露される、
システム。
【請求項25】
前記処理チャンバが1から200の基板を収容するように備えられている、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記リモートプラズマ源が、マイクロ波プラズマ源、RFプラズマ源、又は光照射を利用するプラズマ源を有する、請求項24に記載のシステム。
【請求項27】
プロセッサ上で実行されるプログラム命令を有するコンピュータによる読み取りが可能な媒体であって、前記プロセッサによって実行されるときに、基板処理装置に、請求項1に記載の方法中の工程を実行させる、コンピュータによる読み取りが可能な媒体

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2008−538161(P2008−538161A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504164(P2008−504164)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際出願番号】PCT/US2006/010536
【国際公開番号】WO2006/104819
【国際公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】