説明

塗装検査装置及び塗装検査方法

【課題】塗装の補修により発生する微小傷群を、作業者が確実に視認することが可能であって、作業者の官能に頼らず客観的に塗装の良否を判断できる装置を提案する。
【解決手段】塗装面Fの検査部位Faに光を照射する照明手段11と、検査部位Faの表面での反射光を撮像する撮像手段12と、該撮像手段12から信号を受けて画像処理を行う画像処理手段21と、検査部位Faの表面と撮像手段12との距離を検出する変位検出手段13Aと、検査部位Faの表面と撮像手段12の光軸との垂直度を検出する垂直度判定手段13Bと、変位検出手段13A・垂直度判定手段13Bからの信号を受けて撮像手段12と検査部位Faの表面との距離及び角度が検査可能な状態であるか否かの判定を行う判定手段13とを、塗装検査装置8に備えた。変位検出手段13A及び垂直度判定手段13Bとして超音波式変位センサを採用し、距離と同時に垂直度を検出可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装の良否を視覚的に判断するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輌ボデーの塗装では、塵や埃の混入による塗装不良に対して、当該不良箇所を微量に研磨することによって補修する方法が採用されている。上記補修作業では、塗装面を研磨することにより補修箇所に微小傷群が生じることがある。この微小傷群は、通常、補修によって目視できない程度にまで研磨されるが、研磨の程度によって傷の大きさが目視できない程度にまで小さくならずに残ってしまうことで、二次的に発生する塗装不良となる。このような補修箇所の補修による二次的な塗装不良は、作業者による目視にて判断されている。
【0003】
上記のように塗装の補修箇所に発生する二次的な塗装不良、すなわち、僅かに目視できる程度に残る微小傷群は、塗装ラインの照明(蛍光灯)下では目視し難いことから、作業者が補修工程において視認できないものであっても、商品となって晴れた日の直射日光下に置かれた場合に微小傷群が顕在化して、塗装不良が明らかになることがあった。
また、塗装の補修箇所に発生する二次的な塗装不良、すなわち、僅かに目視できる程度に残る微小傷群の検出は、作業者の目視などに基づいて行われているが、作業者によって傷の見え方が異なることから、補修による二次的な塗装不良の程度について客観的な判断基準を設けることが困難であった。
【0004】
一方、太陽光に含まれる紫外線から製品の表面を保護する紫外線吸収剤の透明塗膜の良否を検査する方法が、従来知られている。透明塗膜は、そのままでは視認することができないので、以下に示すように、視覚的に判別するための装置が存在する。
【0005】
例えば、特許文献1では、紫外線吸収透明塗装の塗膜が表面に形成された部材に対して紫外線を照射し、紫外線カメラを用いてその反射光の輝度を観察するとともに、前記反射光の輝度から塗装の良否を計測する装置が公開されている。
【特許文献1】特開2003−47907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、塗装の補修箇所に生じる微小傷群による二次的な塗装不良は、作業者の官能に基づいて判断しているため、この二次的な塗装不良を作業者が確実に視認することが可能であって、且つ、作業者の官能に頼らず客観的に塗装の良否を判断できる装置が必要とされている。
【0007】
そこで、本発明では、上記特許文献に記載された紫外線照射による塗装不良を検出する技術を応用させて、塗装の補修により発生する微小傷群による二次的な塗装不良を、作業者が確実に視認することが可能であって、且つ、作業者の官能に頼らず客観的に塗装の良否を判断できる装置を提案する。
【0008】
また、上記装置を実現するにおいて、塵や埃の混入による一時的な塗装不良の箇所は散在することから、当該塗装不良の補修箇所に装置を移動可能とするために、装置は可搬性又は可動性を備えることが好ましい。
しかし、上記特許文献に記載のように反射光の輝度に基づいて塗装の良否を判断する構成とするためには、光を反射する検査部位と、その反射光を受光する装置の部位との距離及び角度を適した状態に保持する必要がある。ところが、作業者が装置を支持して塗装の検査を行う場合には、作業者の目視に頼って検査部位と装置との相対的な位置関係を調整することは困難である。そこで、装置を可搬性又は可動性とする場合に、光を反射する反射面(検査部位)と、その反射光を受光する装置の部位との距離及び角度を略一定に保持するための機構を備えることが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
即ち、請求項1においては、塗装面の検査部位に光を照射する照明手段と、前記照明手段から前記検査部位に照射された光の反射光を撮像する撮像手段と、前記撮像手段からの信号を受けて画像化処理を行う画像処理手段と、前記検査部位の表面と前記撮像手段との距離を検出する変位検出手段と、前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定する垂直度判定手段と、前記変位検出手段及び前記垂直度判定手段からの信号を受けて、前記検査部位の表面と撮像手段との距離及び角度が検査可能な状態にあるかを判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果を出力する出力手段とを備えるものである。
【0011】
請求項2においては、前記塗装検査装置は、前記画像処理手段による処理結果を表示出力する表示出力手段をさらに備え、前記画像処理手段は、前記撮像手段にて撮像された反射光の電気的信号を画像として取得して該画像を階調又は色調にて反射光の輝度が示されるように画像処理するとともに、この処理画像を前記表示出力手段にて表示出力させるものである。
【0012】
請求項3においては、前記画像処理手段は、画像化処理に加え、前記撮像手段により撮像された反射光の輝度と予め設定された輝度の基準値とを比較することにより、塗装不良の有無を判断する処理を行うものである。
【0013】
請求項4においては、前記変位検出手段は、超音波式変位センサであって、前記垂直度判定手段は、該超音波式変位センサから前記判別手段への検出信号の有無によって前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定するものである。
【0014】
請求項5においては、前記照明手段にて発される光が紫外線であり、前記撮像手段は少なくとも紫外線用レンズと紫外線用撮像部とを具備するものである。
【0015】
請求項6においては、照明手段と、撮像手段と、画像処理手段とを少なくとも具備する塗装検査装置を用い、前記照明手段にて塗装面の検査部位に光を照射し、前記撮像手段にて照射された光の反射光を撮像し、前記画像処理手段にて撮像手段にて撮像された反射光の電気的信号を画像として取得し、該画像を階調又は色調にて反射光の輝度が示されるように画像処理して、塗装の補修箇所に生じる微小傷による二次的な塗装不良を検査する、塗装検査方法である。
【0016】
請求項7においては、前記塗装検査装置において、前記照明手段と前記撮像手段とを一体的に構成するとともに、変位検出手段及び垂直度判定手段をさらに備えて、前記変位検出手段にて検出された検査部位と前記撮像手段との距離と、前記垂直度判定手段にて前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかの判定結果とに基づいて、前記検査部位の表面と撮像手段との距離及び角度を検査可能な状態に調整したうえで、前記撮像手段にて照射された光の反射光を撮像するものである。
【0017】
請求項8においては、前記変位検出手段は、超音波式変位センサであって、前記垂直度判定手段は、該超音波式変位センサから前記判別手段への検出信号の有無によって前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、塗装検査装置にて、室内においても塗装の補修箇所に生じる微小傷を視認可能とすることができ、塗装の補修の良否をより明確に判断することができる。
変位検出手段にて、検査部位と撮像手段との距離(変位)を検出するとともに、垂直度判定手段にて検査部位と撮像手段が所定の垂直度にあることを検出して、撮像手段と検査部位との焦点距離と垂直度の調整を行うことが高精度にできる。
また、変位検出手段と垂直度判定手段とを備えるので、塗装検査装置のうち少なくとも撮像手段を移動可能とすることができ、所望の検査部位を撮像するように撮像手段を移動させて検査の実施を容易かつ確実に行うことができる。
【0020】
請求項2においては、塗装検査装置にて、室内においても塗装の補修箇所に生じる微小傷をより明らかに視認可能とすることができ、塗装の補修の良否を判断することができる。
【0021】
請求項3においては、作業者の官能に頼ることなく、客観的に塗装の良否を判断することができる。
【0022】
請求項4においては、超音波式変位センサにて所定値の変位(焦点距離)を検出すると、自動的に垂直度を確保することができるので、超音波式変位センサから判定手段へ送られる検出信号によって検査部位と撮像手段との距離の検出及び垂直度の確保とを行うことができ、部材点数を削減し、装置をより簡易な構成とすることができる。
【0023】
請求項5においては、光の波長が短い紫外線を光源とすることで、可視光である場合と比較して反射光をより視認し易い状態とすることができる。
【0024】
請求項6においては、塗装検査装置にて、室内においても塗装の補修箇所に生じる微小傷を視認可能とすることができ、塗装の補修の良否をより明確に判断することができる。
【0025】
請求項7においては、変位検出手段にて、検査部位と撮像手段との距離(変位)を検出するとともに、垂直度判定手段にて検査部位と撮像手段が所定の垂直度にあることを検出して、撮像手段と検査部位との焦点距離と垂直度の調整を行うことが高精度にできる。そして、作業者は、変位及び垂直度が適正であるかを容易に認識することができるので、撮像手段を適切な姿勢に容易にセットすることができ、検査の実施を容易かつ確実に行うことができる。
【0026】
請求項8においては音波式変位センサにて所定値の変位(焦点距離)を検出すると、自動的に垂直度を確保することができるので、超音波式変位センサから判定手段へ送られる検出信号によって検査部位と撮像手段との距離の検出及び垂直度の確保とを行うことができ、部材点数を削減し、装置をより簡易な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施例に係る塗装検査装置の全体的な構成を示したブロック図、図2は塗装検査装置の検出部の正面図、図3は塗装検査装置の検出部の背面図である。図4は塗装検査装置の検出部の側面図である。図5は塗装検査装置の検出部の平面断面図である。
【0028】
先ず、本発明に係る塗装検査装置の構成について説明する。
塗装検査装置8は、塗装面Fを研磨することにより生じた微小傷群を、より視認しやすい状態として、該微小傷群による塗装不良の有無を検査するためのものである。図1に示すように、塗装検査装置8は、検出部9と、画像処理部10とで構成される。
【0029】
前記検出部9は、図5にも示すように、塗装面Fの検査部位に対して光の照射を行うとともに、その反射光を受光するものであり、作業者又は作業用ロボットが、所望の検査部位を検査できる位置に該検出部9を移動させて使用する。
塗装面Fの検査部位に照射された光は、該検査部位Faの表面に当接して反射するが、該検査部位Faの表面には微小傷群が存在するので、反射光は散乱光となる。検出部9ではこの散乱光を受光して撮像する。
【0030】
また、前記画像処理部10は、前記検出部9にて撮像した反射光(散乱光)を画像として取り込み、この画像を検査部位Faの表面の微小傷群を視認しやすい状態に画像処理したものを表示出力し、この表示出力された画像に基づいて検査部位Faの塗装の良否を判断するものである。
【0031】
まず、前記検出部9の構成について説明する。
図1乃至図5に示すように、前記検出部9には、照明手段11と、撮像手段12と、判定手段13と、変位検出手段13Aと、垂直度判定手段13Bと、標示手段14と、出力手段15と、遠隔操作手段19とが、フレーム17に一体的に備えられる。
【0032】
前記フレーム17は、検査部位Faに向かって開口する箱形に形成される。図1を検出部9の正面図として説明する(以下、同様)と、フレーム17は該検出部9の正面が開口された箱形形状となっている。
【0033】
検出部9は作業者又は作業ロボットによる移動を容易とするために、取手17aが該フレーム17の背面に備えられる。該取手17aは、その一側がフレーム17に直接固定され、他側がステー17bを介してフレーム17に固定される。作業者又は作業ロボットは、この取手17aを把持して検出部9を支持し、該検出部9を操作することができる。
なお、作業ロボットに検出部9を操作させる場合には、予め塗装面Fの検査部位Faの位置情報を該作業ロボットに与え、該検査部位Faに検出部9を移動させるように該作業ロボットを制御することができる。
【0034】
前記フレーム17の取手17aの近傍には、前記遠隔操作手段19が備えられる。遠隔操作手段19は、検出部9を操作する作業者が離れた位置から画像処理部10を操作するための該画像処理部10への入力手段である。この遠隔操作手段19を設けることにより、検出部9を操作しながら、離れた位置に配置された画像処理部10に画像を表示させたり、該画像の表示変換処理を行ったりすることが可能となる。
【0035】
前記照明手段11は、検査部位Faに光を照射するためのものであって、箱形のフレーム17の内部に設けられる。なお、照明手段11の光源と検査部位Faの表面とを結ぶ直線距離が、300mm以上となるように、これらの相対位置を定めることが好ましい。
【0036】
本実施例に係る照明手段11では、後述する撮像手段12を介して対称に光源が配置され、該撮像手段12を挟んで両側から検査部位Faを照らすように配置される。これにより、車輌ボデーなどのように塗装面が曲面である場合にも、撮像手段12に照明手段11の光源から直接に光が写り込み難い状態が形成される。
【0037】
前記照明手段11より発される光は、可視光とすることもできるが、紫外線とすることが望ましい。
検査部位Faの表面での反射光の強度は、光の波長が短い方が大きく、可視光と比較して波長の短い紫外線の方が、反射光の強度がより大きくなる。従って、反射光をより視認し易い状態とするために、照明手段11より発される光を紫外線とすることが望ましいのである。
上記理由により、本実施例においては照明手段11として、紫外線を発光するブラックライトを採用している。
【0038】
前記撮像手段12は、照明手段11より発され、検査部位Faの表面で反射した光を受光し、撮像するためのものである。該撮像手段12は、フレーム17の正面略中央部に配置される。
そして、塗装検査装置8の正面であって撮像手段12の周囲には、反射光以外の光を該撮像手段12で取り込まないようにするために、黒色板18が配置される。これにより、撮像手段12では、照明手段11にて発され、照明を検査部位Faの表面を介して間接的にのみ受光可能とされる。また、前記黒色板18により、照明手段11より発される光を直接撮像手段12で取り込むことにより生じるブルーミング現象が防止される。
【0039】
また、前記撮像手段12には、反射光を受光するレンズと、受光した光学像を電気信号に変換する撮像部とが具備される。上記撮像手段12では、前記照明手段11により発された光が、検査部位Faの表面に入射して反射し、レンズを介して受光され撮像部にて撮像されることとなる。この撮像手段12としては、例えば、カメラが採用される。
【0040】
なお、本実施例においては、照明手段11として紫外線を発するブラックライトを採用しているため、撮像手段12に具備されるレンズを紫外線を受ける紫外光用レンズとし、同じく撮像手段12に具備される撮像部をカメラを紫外域にのみに感度を有する紫外線用CCDとする、いわゆる、紫外線用カメラを採用している。
【0041】
ところで、上記塗装検査装置8では、塗装面の補修箇所は必ずしも同一の部位ではないので、所望の検査部位Faの表面の反射光を撮像することができるように、塗装検査装置8のうち少なくとも撮像手段12を具備する部分(検出部9)を移動可能に構成している。
しかし、検出部9を移動可能とすれば、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離や相対角度が変動するため、検査部位Faの表面が撮像手段12の焦点距離から外れたり、撮像手段12の光軸と検査部位Faの表面との角度がばらついたりして、以下のような不具合を生じることとなる。
【0042】
撮像手段12と検査部位Faの表面との距離が、該撮像手段12の焦点距離からずれた状態で、該検査部位Faの表面での反射光を撮像手段12にて撮像した場合の反射光の輝度は、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離が撮像手段12の焦点距離に一致した状態で撮像した場合の反射光の輝度に対して差異が生じることとなる。また、検査毎に撮像手段12と検査部位Faの表面との距離が異なれば、同程度の傷であっても反射光の輝度に差異が生じることとなる。
また、撮像手段12の光軸と塗装面Fの検査部位Faの表面とが略垂直に配置された場合と、撮像手段12の光軸と検査部位Faの表面とが略垂直に配置されなかった場合とでは、撮像される反射光の輝度に差異が生じるため、撮像手段12の光軸と塗装面Fの検査部位Faの表面との角度が検査毎で変化すると、同程度の傷であっても反射光の輝度に差異が生じることとなる。
上述のように、同程度の傷であっても輝度に差異が生じれば、輝度を基準として微小傷群の程度の判断をすることが困難となってしまう。
また、検査部位Faの表面に対して撮像手段12の光軸が垂直であるか否かを判断するためには、撮像した画像そのものを見て判断するなどの処置が必要となり、経験や習熟度に応じて検査の精度が異なるという問題がある。
【0043】
そこで、上記不具合を解消するために前記検出部9には、撮像手段12と検査部位Faの表面との離間距離が所定距離にあることを検出するとともに、撮像手段12の光軸と検査部位Faの表面とが略垂直な状態にあることを検出する手段(変位検出手段13A、垂直度判定手段13B)が設けられている。
これにより、塗装検査装置8の構成要素のうち少なくとも撮像手段12を移動可能な構成としたうえで、撮像手段12にて撮像された反射光の輝度に基づく検査部位Faの傷の程度の評価を、高い信頼性で容易に行うことを実現することができる。
【0044】
前記変位検出手段13Aは、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離(変位)を検出するためのものである。変位検出手段13Aは、撮像手段12と検査部位Faの表面との現実の距離により近い値を検出できるように、撮像手段12の近傍に設けられる。前記変位検出手段13Aは、渦電流式、光学式、超音波式、レーザフォー力ス式、レーザー式などの各種非接触式の変位センサを用いることができる。また、定規などの接触式の変位センサを用いることもできる。
【0045】
また、前記垂直度判定手段13Bは、前記撮像手段12の光軸(撮像手段12に具備されるレンズの光軸)と塗装面Fの検査部位Faの表面との垂直度が所定範囲内にあるか否かを判定するための情報を取得するためのものである。前記垂直度判定手段13Bは、光学式、超音波式、レーザフォー力ス式、レーザー式などの各種非接触式の垂直度検出センサを用いることができる。また、定規などの接触式の変位センサを用いることもできる。
【0046】
そして、前記判定手段13は、前記変位検出手段13A、前記垂直度判定手段13B及び前記出力手段15と電気的に接続され、前記変位検出手段13A及び前記垂直度判定手段13Bからの検出信号を受けて演算処理を行い、演算結果を出力手段15に表示出力させるものである。
【0047】
前記判定手段13は、変位検出手段13Aからの検出信号を受けて、センサヘッド13aと検査部位Faの表面との距離を、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離の代用値として取得し、検出された距離の値と予め設定された距離の基準値と比較することにより、距離が許容範囲内にあるか否かを判断し、許容範囲内にあれば、前記検査部位と撮像手段12との相互位置関係が検査可能な状態であると判定する。すなわち、撮像手段12の焦点距離が、検査部位Faの表面に合っているかを判定するのである。
【0048】
また、判定手段13は、垂直度判定手段13Bで取得された情報を受けて、検査部位Faの表面と撮像手段12の光軸との垂直度が所定範囲内にあるか否かを判断し、許容範囲内にあれば検査可能な状態であると判定する。すなわち、完全に平面ではない検査部位Faの表面に対して、略垂直に撮像手段12の光軸を略垂直であるかを判定するのである。
【0049】
なお、本実施例においては、上記変位検出手段13A及び垂直度判定手段13Bとして、一の超音波式変位センサを検出部9に備えて、塗装検査装置8のコストの低減と、装置構成の簡易化を図っている。前記変位検出手段13A及び垂直度判定手段13Bとしての超音波式変位センサは、前記撮像手段12に近接し、且つ、超音波式変位センサより発される検出信号(超音波)の進行方向と、前記撮像手段12の光軸とが、略平行となるように配置される。
【0050】
超音波式変位センサでは、センサヘッドより超音波を発信するとともに、該センサヘッドにて検査部位で反射した超音波を受信するが、発信された超音波が検査部位となる塗装面に略垂直に入射しなければ、同一のセンサヘッドにて超音波を受信することができない、つまり、センサヘッドと検査部位との間に所定の垂直度がある程度確保されなければ、変位が出力されないという特性を有する。
【0051】
そこで、検出部9では、上記の超音波式変位センサの特性を、垂直度判定手段13Bとして利用して、変位検出手段13A(又は垂直度判定手段13B)として、超音波式変位センサを採用することで、撮像手段12と検査部位Faの表面との離間距離が所定距離にあることを検出すると同時に、撮像手段12の光軸と検査部位Faの表面とが略垂直な状態にあることを検出することができるようにしている
【0052】

つまり、変位検出手段13Aのセンサヘッド13aから発された検出信号(超音波)が検査部位Faの表面に入射したことを検出することによって、撮像手段12に具備されるレンズの光軸と塗装面における検査部位Faの表面とが略垂直を為していることを検出する。さらに、変位検出手段13Aは、変位センサとしての本来の機能として、該変位検出手段13Aのセンサヘッド13aと検査部位Faの表面との変位を検出することによって、該センサヘッド13aの近傍に配置される撮像手段12と、検査部位Faの表面との変位を、疑似的に検出する。
従って、本実施例のように、変位検出手段13A及び垂直度判定手段13Bとしての一つの超音波式変位センサを備える場合には、撮像手段12と検査部位Faの表面との垂直度が確保されなければ検出信号が出力されないので、判定手段13では、超音波式変位センサからの出力信号の有無に基づいて、撮像手段12と検査部位Faの表面との垂直度が予め設定された許容値内であるかを判断することとなる。
【0053】
前記標示手段14は、撮像手段12により撮像される検査部位Faの表面の範囲又は一点を標示して、撮像される部位を作業者に視認可能とするためのものである。
本実施例においては、標示手段14として可視光を発するレーザーポインタが備えられ、可視光を発する標示手段14のレーザーヘッド14aは、撮像手段12の近傍であって、撮像手段12を介して変位検出手段13Aと反対側に設けられている。
【0054】
前記出力手段15は、図3又は図5に示すように、フレーム17の背面側に支持部材16を介して取り付けられた、小型モニタである。この支持部材16により、出力手段15はフレーム17に対して着脱可能且つ角度可変とされ、作業者は該出力手段15の位置や角度を自己が視認しやすい状態に調節することができる。なお、前記出力手段15は、検出部9から分離独立させて大型モニタとし、搬送ライン上方や、検出部9を吊設式とする場合には該検出部9の吊具など、作業者が視認し易い場所に設けることができる。
【0055】
前述の通り、出力手段15では前記判定手段13の判定結果が出力されるが、本実施例のように、前記出力手段15をモニタとする場合には、撮像手段12にて撮像された反射光の電気的信号を画像として取得し画像出力する画像処理手段をさらに設けて、撮像手段12にて撮像されたものを出力手段15にて画像として表示出力するように構成することもできる。
作業者は出力手段15に示された情報を見て、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離及び垂直度が許容範囲(検査可能範囲)内にあることを確認して、検査を行うことができる。また、作業者は出力手段15に示された情報を見て、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離及び垂直度が許容範囲(検査可能範囲)内となるように、検出部9に具備される撮像手段12の位置や姿勢を調整して、検査を行うことができる。
【0056】
但し、出力手段15はモニタなどの表示出力手段に限定されず、判定手段13の判定結果である、撮像手段12と検査部位Faの表面との距離及び角度が検査可能な状態にあるか否かを、音や光などで作業者に知らせるものとすることもできる。
【0057】
また、上述の検出部9は、回転及び変位可能な吊具で支持した状態で検査作業を行う場に配置することもできる。
この場合、作業者がフレーム17の取手17aを把持して、検出部9を移動させるが、該検出部9の荷重は前記吊具に荷担されるので、作業者は容易に検出部9を操作することができる。これに加え、前記吊具は、検出部9を回転させることができるので、検査部位Faの表面に対する光源配置の自由度を高め、撮像手段12に照明手段11の光源が写り込まないようにすることができる。
【0058】
続いて、前記画像処理部10の構成について説明する。
【0059】
図1に示すように、前記画像処理部10には、画像処理手段21と、表示出力手段22とが備えられる。該画像処理部10の画像処理手段21では、撮像手段12にて撮像された反射光の情報の処理と、これらの処理結果を表示出力手段22にて出力表示させる処理とを行う。
【0060】
前記画像処理手段21は、検出部9に具備される撮像手段12にて撮像された反射光の電気的信号を、画像として取得する画像取込機能を有する。画像取込機能は、例えば、画像処理手段21に備えられたキャプチャーボード等により実現される。
また、前記画像処理手段21は、取得した画像を微小傷群が視認し易い状態に処理する画像処理機能を有する。画像処理では、階調又は色調にて反射光の輝度が示されるように画像が処理される。
さらに、画像処理手段21は、表示出力手段22に画像処理結果を前記表示出力手段22に表示出力させる表示出力機能を有する。
【0061】
上記画像処理手段21の機能を実行することによって、例えば、画像処理手段21は、検出部9の撮像手段12にて撮像された反射光の電気的信号を受けて、処理された画像を表示出力手段22にて即時に白黒階調表示(グレースケール表示)させることができる。この場合、検査部位Faの表面に存在する微小傷群は、中間色(灰色)で表示され、白色に近い箇所ほど、反射光の輝度が高く傷の程度が深いこととなる。
【0062】
また、上記画像処理手段21の機能を実行することによって、例えば、画像処理手段21は、検出部9の撮像手段12にて撮像された反射光の電気的信号を受けて処理された画像を、表示出力手段22にて即時に疑似カラー表示させることができる。この場合、反射光の輝度に基づいて色別に表示し、疑似カラー表示のスケールは、評価基準毎に任意に設定可能とし、また、車種・塗装色ごとにスケールを設定可能とする。
検査部位Faの表面の画像を疑似カラー表示させることによって、含まれる微小傷群をより際立たせることができ、微小傷群を視認し易い状態とすることができる。
【0063】
上述のように表示出力手段22に表示出力された画像では、階調又は色調にて反射光の輝度が示され、検査部位Faの表面に含まれる微小傷群の程度(深さ)が示される。よって、作業者は、この階調又は色調に基づいて、微小傷群の程度を視認し、塗装の良否を判断することができる。従って、塗装検査装置8を用いることによって、室内においても塗装の補修箇所に生じる微小傷を視認可能とすることができ、塗装の補修の良否をより明確に判断することができる。
【0064】
また、画像処理手段21では、予め設定登録された輝度の基準値と、画像より得られる反射光とを比較することにより、塗装不良の有無を判断する判断機能を有するとともに、塗装不良である場合は、表示出力手段22に塗装不良である旨を表示出力させる表示出力機能を有する。
これにより、作業者の官能のみに頼ることなく、客観的に検査部位Faの表面に含まれる微小傷群の程度から、塗装不良の有無を判断することが可能となる。
【0065】
なお、上述のように表示出力手段22に表示出力された画像は、静止画像情報として画像処理手段21にてメモリや記憶媒体等に保存することができる。この静止画像情報を、例えば、車輌情報として車輌に付与し、当該車輌のトレーサビリティを構成する情報として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施例に係る塗装検査装置の全体的な構成を示したブロック図。
【図2】塗装検査装置の検出部の正面図。
【図3】塗装検査装置の検出部の背面図。
【図4】塗装検査装置の検出部の側面図。
【図5】塗装検査装置の検出部の平面断面図。
【符号の説明】
【0067】
F 塗装面
Fa 検査部位
8 塗装検査装置
9 検出部
10 画像処理部
11 照明手段
12 撮像手段
13 判定手段
13A 変位検出手段
13B 垂直度判定手段
14 標示手段
15 出力手段
17 フレーム
18 黒色板
21 画像処理手段
22 表示出力手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装面の検査部位に光を照射する照明手段と、
前記照明手段から前記検査部位に照射された光の反射光を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段からの信号を受けて画像化処理を行う画像処理手段と、
前記検査部位の表面と前記撮像手段との距離を検出する変位検出手段と、
前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定する垂直度判定手段と、
前記変位検出手段及び前記垂直度判定手段からの信号を受けて、前記検査部位の表面と撮像手段との距離及び角度が検査可能な状態にあるかを判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果を出力する出力手段とを備えることを特徴とする、
塗装検査装置。
【請求項2】
前記塗装検査装置は、前記画像処理手段による処理結果を表示出力する表示出力手段をさらに備え、
前記画像処理手段は、前記撮像手段にて撮像された反射光の電気的信号を画像として取得して該画像を階調又は色調にて反射光の輝度が示されるように画像処理するとともに、この処理画像を前記表示出力手段にて表示出力させることを特徴とする、
請求項1に記載の塗装検査装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、画像化処理に加え、
前記撮像手段により撮像された反射光の輝度と予め設定された輝度の基準値とを比較することにより、塗装不良の有無を判断する処理を行うことを特徴とする、
請求項1又は請求項2に記載の塗装検査装置。
【請求項4】
前記変位検出手段は、超音波式変位センサであって、
前記垂直度判定手段は、該超音波式変位センサから前記判別手段への検出信号の有無によって前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定することを特徴とする、
請求項1〜請求項3の何れかに記載の塗装検査装置。
【請求項5】
前記照明手段にて発される光が紫外線であり、
前記撮像手段は少なくとも紫外線用レンズと紫外線用撮像部とを具備することを特徴とする、
請求項1〜請求項4の何れかに記載の塗装検査装置。
【請求項6】
照明手段と、撮像手段と、画像処理手段とを少なくとも具備する塗装検査装置を用い、
前記照明手段にて塗装面の検査部位に光を照射し、
前記撮像手段にて照射された光の反射光を撮像し、
前記画像処理手段にて撮像手段にて撮像された反射光の電気的信号を画像として取得し、該画像を階調又は色調にて反射光の輝度が示されるように画像処理して、
塗装の補修箇所に生じる微小傷による二次的な塗装不良を検査することを特徴とする塗装検査方法。
【請求項7】
前記塗装検査装置において、前記照明手段と前記撮像手段とを一体的に構成するとともに、変位検出手段及び垂直度判定手段をさらに備えて、
前記変位検出手段にて検出された検査部位と前記撮像手段との距離と、
前記垂直度判定手段にて前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかの判定結果とに基づいて、
前記検査部位の表面と撮像手段との距離及び角度を検査可能な状態に調整したうえで、
前記撮像手段にて照射された光の反射光を撮像することを特徴とする、
請求項6に記載の塗装検査方法。
【請求項8】
前記変位検出手段は、超音波式変位センサであって、
前記垂直度判定手段は、該超音波式変位センサから前記判別手段への検出信号の有無によって前記検査部位の表面と前記撮像手段の光軸とが所定の垂直度の範囲内にあるかを判定することを特徴とする、
請求項7に記載の塗装検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−93340(P2007−93340A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−281929(P2005−281929)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】