説明

楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置

【課題】 部品点数が少なく、簡単な回路で構成でき、複数の楽音信号を1本の信号経路で送信又は受信できる楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置を提供する。
【解決手段】 1ビットA/D変換部1L及び1Rにより、電子楽器などから入力された複数のアナログ楽音信号は各々1ビットデジタル信号に変換され、重み付け部2L及び2Rによりこれらの各1ビットデジタル信号は重み付け加算されて、出力部3により出力されることになると共に、受信部4により受信された重み付け加算信号は、分離部5により各1ビットデジタル信号に分離変換され、さらにD/A変換部6により、アナログ信号に復調されることになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の楽音信号を1本の信号経路で送信又は受信できる楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の楽音信号を送受信する場合、通常のアナログ伝送の他、デジタル伝送ではCDフォーマットと呼ばれるシリアル3線伝送方法や、COAXシリアル伝送方法などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、アナログ伝送では、楽音信号の数だけ伝送線が必要であり、さらに外来ノイズに弱いという欠点がある。
【0004】
またデジタルシリアル3線の伝送方法では、2つの信号を伝送することができるが、信号線と、2つの信号を識別するクロックの信号線と、シリアル信号のビットデータを識別するクロックの信号線の、計3本の伝送線が必要である。又アナログ信号を伝送する場合、送信する側の入力部にA/D変換するマルチビットA/D変換回路と受信する側の出力部にD/A変換するマルチビットD/A変換回路が必要であり、これらA/D及びD/A回路は、1ビットA/D変換回路及び1ビットデジタル信号のアナログ変換回路と比較すると、部品点数も多く且つ高価である。
【0005】
他方、所謂同軸ケーブルや光ケーブルなどを指すCOAXシリアル伝送方法では、1線で伝送できるが、変調及び復調する回路構成が複雑になるばかりか、上記の伝送方法と同様、アナログ信号を伝送する場合、送信する側の入り側にA/D変換する回路と受信する側の出側にD/A変換する回路が必要であり、それらの部品点数も多く且つ高価である。また1線あたり、2楽音信号しか伝送できない。
【0006】
本発明は、以上のような問題に鑑み創案されたもので、部品点数が少なく、簡単な回路で構成でき、複数の楽音信号を1本の信号経路で送信又は受信できる楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る楽音信号送信装置の構成は、
入力された複数のアナログ楽音信号を各々1ビットデジタル信号に変換する1ビットA/D変換手段と、
これらの各1ビットデジタル信号を重み付け加算する重み付け手段と、
重み付け加算された信号を出力する出力手段と
を有することを基本的特徴としている。
【0008】
また本願第2の発明に係る楽音信号受信装置の構成は、
上記第1の発明に係る楽音送信装置から出力された重み付け加算信号を入力する受信手段と、
上記重み付け加算信号を各1ビットデジタル信号に分離変換する分離手段と、
各1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と
を有することを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、1ビットA/D変換手段により入力された複数のアナログ楽音信号は各々1ビットデジタル信号に変換され、重み付け手段によりこれらの各1ビットデジタル信号は重み付け加算されて、出力手段により出力されることになると共に、受信手段により入力された重み付け加算信号は、分離手段により各1ビットデジタル信号に分離変換され、さらにD/A変換手段により、アナログ信号に復調されることになる。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明の構成によれば、重み付け加算された信号状態で送受信を行っているため、波高値の変化に着目すれば良く、時間を基準にする必要はなくなるため、送受信装置間で同期をとる同期クロック信号やデータラッチのためのビットクロック信号のやりとりが必要なくなり、複数の楽音信号を1本の伝送線で送受信できるようになる。それと共に、上記装置の各回路は部品点数が少なく、簡単な回路構成で済む。さらに、分離手段により復調する際に、任意の閾値を用いてその閾値を境に変換しているため、アナログ伝送と比較して伝送ケーブルでの外来ノイズによる影響を除去できるという特徴的な効果を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、説明する。
図1は、第1の本発明に係る楽音信号送信装置の回路概要図であり、また図3は、第3の発明に係る楽音信号受信装置の回路概要図である。これらの送受信装置は、音楽演奏練習用に、それらの学習者が、これらの内容を教示する先生との間で、個々に学習内容を指示したり、或いは全体にその指示を出したり、各学習者が先生に演奏内容を送ったり、両間で会話をする場合に用いられる構成である。図1及び図3の構成で、片方向の送受信が可能であるので、両方向の通信には、もう一組必要である。また、演奏学習者が多い場合には、先生に対して、学習者人数分の組の送受信装置を用いることになる。
【0012】
図1における楽音信号送信装置の構成は、アナログ信号をパルス信号に変調する構成であり、電子楽器(図示なし)などから入力された複数のアナログ楽音信号を各々1ビットデジタル信号に変換するA/D変換部1L及び1Rと、これらの各1ビットデジタル信号を重み付け加算する重み付け部2L及び2Rと、重み付け加算された信号を出力する出力部3とを備えている。
【0013】
上記A/D変換部1L及び1Rは、インバータで主に構成される自己発信型の1ビット変換回路で構成されており、電子楽器などから入力されたアナログ楽音信号が各々1ビットデジタル信号に変換されることになる。この構成では、図2に示すように、パルス周期が一定で上記入力楽音信号の波高値に応じてパルス幅が変化する(デューティー比が変わる)ように変換される。
【0014】
上記重み付け部2L(左)及び2R(右)は、抵抗で構成されており、2R(右)が2L(左)の半分の抵抗値(rに対して2r(この場合は2倍のr値))であるため、2R(右)側の1ビットデジタル信号は2L(左)側の1ビットデジタル信号の2倍のパルス振幅値となって、すなわち、重み付け部2R(右)を通った電圧は、重み付け部2L(左)を通った電圧の2倍となり、結果的に、2/3×(右)+1/3×(左)と合算され出力される。
【0015】
上記出力部3は、1本の信号線につながる端子である。
【0016】
他方図3における楽音信号受信装置の構成は、パルス信号をアナログ信号に復調する構成であり、上記出力部3から引き出された信号線がつながっていて、そこから出力された重み付け加算信号を入力する受信部4と、上記重み付け加算信号を各1ビットデジタル信号に分離変換する分離部5と、各1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換部6とを備えている。
【0017】
上記受信部4は、1本の上記信号線につながるジャックである。
【0018】
上記分離部5は、基準電圧Vから抵抗50a〜50d(r、2r(2倍のr値)、2r(同左)、r)により作成された各閾値として用いられる閾値電圧Vc(5/6V)、Vb(3/6V)及びVa(1/6V)と受信部4から入力されるパルス信号の振幅値(電圧)とを比較し、閾値電圧Vc(5/6V)より高い電圧の場合に一定振幅値のパルス信号を出力するコンパレータ52a、閾値電圧Va(1/6V)より高い電圧の場合に一定振幅値のパルス信号を出力するコンパレータ52b、及び閾値電圧Vb(3/6V)より高い電圧の場合に一定振幅値のパルス信号を出力するコンパレータ52cと、これらのパルス信号の出力によって元の各パルス波形に復調され最終的に各1ビットデジタル信号に分離変換するイクルーシブオア素子54a〜54dとが備えられており、重み付け加算信号が各1ビットデジタル信号に分離変換されることになる。
【0019】
上記D/A変換部6は、抵抗60a〜60dと、コンデンサ62a〜62dとで構成されるローパスフィルタで構成されており、上記各1ビットデジタル信号がアナログ信号に変換されることになる。
【0020】
上記図1及び図3から明らかなように、左右2入力(IN1及びIN2)で、途中送信装置及び受信装置間(MIX OUT−MIX IN)は、1本の信号線となり、さらに受信装置の出力側で左右2出力(OUT1及びOUT2)となっている。
【0021】
図1の1ビットデジタル信号に変換する1ビットA/D変換部1Lの出側の信号の状態は、図4(1)に示すようなパルス信号波形をしている。また図1の1ビットデジタル信号に変換するA/D変換部1Rの出側の信号の状態は、(1)の波形と位相の異なる図4(2)に示すようなパルス信号波形をしている。上述のように、上記重み付け部2R(右)が重み付け部2L(左)の半分の抵抗値(rに対して2r(この場合は2倍のr値))であるために、この場合同図(2)のパルス信号波形の振幅値は、同図(1)のパルス信号波形の振幅値の2倍の状態である。そして、2R(右)側の1ビットデジタル信号が2L(左)側の1ビットデジタル信号の2倍のパルス振幅値となって、両方の出力が合算されている上記出力部3側の信号の状態は、図4(3)に示すようなパルス信号波形をしている。
【0022】
ここで図4(3)に示すようなパルス信号波形の内訳は、1ビットA/D変換部1Rの出側の信号[同図(2)参照]が先にあり振幅値2の状態に、さらにA/D変換部1Lの出側の信号[同図(1)(2)参照]も一緒に加わるため振幅値3の状態になり、最後にA/D変換部1Lの出側の信号[同図(1)参照]のみが残るため振幅値1の状態になる。このような信号状態では、波高値の変化に着目すれば良く、時間を見る必要はないという利点を有している(従って送受信装置間で同期をとるクロックやリセット信号のやりとりが必要なくなる)。
【0023】
図3の受信部4における受信パルス信号が、図4(3)’のような状態の場合、この信号は、各コンパレータ52a〜52cのプラス側に各抵抗を介して入力される。他方、上記閾値電圧Vc(5/6V)、Vb(3/6V)及びVa(1/6V)が各コンパレータ52a〜52cのマイナス側に入力される。
【0024】
Vaは最低の閾値電圧(1/6V)であるので、図4(3)’パルス信号が出力されている間、コンパレータ52bの出側では、図4(5)の振幅幅のパルス信号が出力される。
【0025】
Vbは中間の閾値電圧(3/6V)であるので、図4(3)’パルス信号がVb以上の出力の間、コンパレータ52cの出側では、図4(6)の振幅幅のパルス信号が出力される。
【0026】
Vc最高の閾値電圧(5/6V)であるので、図4(3)’パルス信号がVc以上の出力の間、コンパレータ52aの出側では、図4(4)の振幅幅のパルス信号が出力される。
【0027】
コンパレータ52a及び52bの双方のパルス信号[図4(4)及び同図(5)の信号]が入力されるイクルーシブオア素子54aは、両方の信号が非一致の場合レベルハイを出力し、両方の信号が一致する場合レベルローを出力するので、その出力側の信号は、図4(9)のようなパルス信号として出力される。
【0028】
コンパレータ52cのパルス信号が入力され、他方の入力が接地されているイクルーシブオア素子54cは、片方が常に接地状態なので、その出力側の信号は、図4(6)と同じ状態の(7)のようなパルス信号として出力される。イクルーシブオア素子54dについても同じであり、その出力側の信号は、図4(6)と同じ状態の(8)のようなパルス信号として出力される。尚、54c及び54dはバッファとしての役割のほか、出力(9)と(7)及び出力(10)と(8)との伝搬遅延時間あわせとしての役割もある。
【0029】
イクルーシブオア素子54aと54cの信号が入力されるイクルーシブオア素子54bは、図4(7)と(9)のイクスクルーシブオアなので、その出力側の信号は、図4(10)のようなパルス信号として出力される。
【0030】
図4(10)のパルス信号は丁度同図(1)の信号と、また図4(8)のパルス信号は丁度同図(2)の信号と同じ状態に復調される。
【0031】
これらの信号は、図3のD/A変換部6のローパスフィルタにより、上記各1ビットデジタル信号がアナログ信号に変換され、元と同じアナログ波形がOUT1(左)とOUT2(右)とから取り出されることになる。
【0032】
以上のように、本実施例構成では、1ビットA/D変換部1L及び1Rにより、電子楽器などから入力された2つのアナログ楽音信号は各々1ビットデジタル信号に変換され、重み付け部2L及び2Rによりこれらの各1ビットデジタル信号は重み付け加算されて、出力部3により出力されることになると共に、受信部4により入力された重み付け加算信号は、分離部5により各1ビットデジタル信号に分離変換され、さらにD/A変換部6により、アナログ信号に復調されることになる。その場合、以上のような信号状態で送受信を行っているため、波高値のみ閾値電圧を基準に見ていれば良く、時間を見る必要はなくなるため、送受信装置間で同期をとる左右の同期クロック信号やデータラッチのためのビットクロック信号のやりとりが必要なくなる。従って、複数のアナログ楽音信号を1本の伝送線で送受信できるようになる。それと共に、上記装置の各回路は安価な部品で構成できるだけでなく、部品点数が少ないため、簡単な回路構成で済む。さらに分離部5により復調する際に、任意の閾値を用いてその閾値を境に変換しているため、外来ノイズによる影響を除去することができる。
【0033】
また以上の構成は、LとRの入出力であるが、これに限られず、3以上の信号についても適用できることは言うまでもない。さらに、逆方向に同様な装置構成を用いれば、逆方向の送受信も可能である。
【0034】
さらに、本実施例構成では、音楽演奏学習用の送受信装置構成として用いたが、語学練習用に、それらの学習者が、これらの内容を教示する先生との間で、個々に学習内容を指示したり、或いは全体にその指示を出したり、各学習者が先生に音声を送ったり、両間で会話をする場合に用いられる集団学習装置の構成としても適用可能である。上記図1及び図3の構成で、片方向の送受信が可能であるので、両方向の通信には、もう一組必要である。また、学習者が多い場合には、先生に対して、学習者人数分の組の送受信装置を用いることになる。
【0035】
尚、本発明の楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の楽音信号送信装置及び楽音信号受信装置は、音楽演奏学習用や語学練習用の1対多数ないし多数対多数間の送受信を行う集団学習装置の構成として用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1の本発明に係る楽音信号送信装置の回路概要図である。
【図2】パルス幅変調の状態を説明する説明図である。
【図3】第3の発明に係る楽音信号受信装置の回路概要図である。
【図4】図1及び図3各部におけるパルス信号の状態を示す信号説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1L、1R 1ビットA/D変換部
2L、2R 重み付け部
3 出力部
4 受信部
5 分離部
6 D/A変換部
50a〜50d、60a〜60d 抵抗
52a〜52c コンパレータ
54a〜54d イクルーシブオア素子
62a〜62d コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された複数のアナログ楽音信号を各々1ビットデジタル信号に変換する1ビットA/D変換手段と、
これらの各1ビットデジタル信号を重み付け加算する重み付け手段と、
重み付け加算された信号を出力する出力手段と
を有することを特徴とする楽音信号送信装置。
【請求項2】
上記楽音信号送信装置の出力手段の出力は、1本の伝送線でなることを特徴とする請求項1記載の楽音信号送信装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の楽音送信装置から出力された重み付け加算信号を入力する受信手段と、
上記重み付け加算信号を各1ビットデジタル信号に分離変換する分離手段と、
各1ビットデジタル信号をアナログ信号に変換するD/A変換手段と
を有することを特徴とする楽音信号受信装置。
【請求項4】
上記楽音信号受信装置の受信手段の入力は、1本の伝送線でなることを特徴とする請求項3記載の請求項記載の楽音信号受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−226407(P2010−226407A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−71190(P2009−71190)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)
【Fターム(参考)】