油圧制御装置
【課題】エンジンにより駆動されるオイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する油圧制御装置を提供する。
【解決手段】動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンにより駆動される第1オイルポンプと、電動モータにより駆動され、かつ、第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプから吐出された油圧を蓄圧するアキュムレータとを有し、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧する油圧制御装置において、油圧室のオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段(ステップS1,S2,S3)と、動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないときに、第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する蓄圧手段(ステップS4,S5)とを備えている。
【解決手段】動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンにより駆動される第1オイルポンプと、電動モータにより駆動され、かつ、第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプから吐出された油圧を蓄圧するアキュムレータとを有し、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧する油圧制御装置において、油圧室のオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段(ステップS1,S2,S3)と、動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないときに、第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する蓄圧手段(ステップS4,S5)とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの動力でオイルポンプを駆動し、そのオイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧することができるように構成された油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動力でオイルポンプを駆動し、そのオイルポンプの油圧を油圧室に供給することにより、動力伝達装置の動力伝達状態を制御することができるように構成された油圧制御装置が知られており、その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、エンジンの出力軸にトルクコンバータを介在させてベルト型無段変速機を連結した車両が記載されている。このベルト型無段変速機は駆動プーリおよび従動プーリを有しており、その駆動プーリおよび従動プーリにVベルトが巻き掛けられている。また、駆動プーリには駆動プーリシリンダ室が設けられ、従動プーリには従動プーリシリンダ室が設けられている。このベルト型無段変速機の変速制御をおこなう油圧制御装置は、高圧用オイルポンプを有している。この高圧用オイルポンプは電磁ポンプであり、その高圧用オイルポンプから吐出された油圧が、第1レギュレータ弁により調圧されて駆動プーリシリンダ室および従動プーリシリンダ室に供給されるように構成されている。また、高圧用オイルポンプから第1レギュレータ弁に至る経路には、アキュムレータが設けられている。一方、エンジンにより駆動される低圧用オイルポンプが設けられており、その低圧用オイルポンプの吐出油圧が、第2レギュレータ弁により調圧されてトルクコンバータに供給されるように構成されている。
【0003】
この特許文献1に記載された油圧制御装置においては、高圧用オイルポンプに接続された油圧回路と、低圧用オイルポンプに接続された油圧回路とが、それぞれ独立して設けられているため、1つの高圧・大流量型のオイルポンプを用いる場合と比較してオイルポンプを小型化して駆動トルクを低減することができるとされている。なお、この他に車両の動力伝達装置を制御するために用いられる油圧制御装置は、特許文献2ないし5にも記載されている。
【0004】
このうち、特許文献4に記載された車両の油圧制御装置は、自動変速機の制御に用いられる油圧制御装置であり、エンジンの動力により駆動される機械式オイルポンプと、電動モータの動力により駆動される電動オイルポンプとを有している。この機械式オイルポンプの吐出口および電動オイルポンプの吐出口が、切り換え用のチェックボール機構、および圧力制御弁を介在させて、変速機の変速を制御する摩擦係合装置の油圧室に接続されている。また、チェックボール機構から圧力制御弁に至る経路には、アキュムレータコントロールソレノイドを介在させてアキュムレータが接続されている。このためアキュムレータコントロールソレノイドのポートが開放されているときに、一方のオイルポンプから作動油の供給があると、その圧力によりチェックボール機構が他方のオイルポンプからの油圧の供給孔を塞ぐように動作する。これにより、いずれか一方のオイルポンプから吐出されたオイルをアキュムレータに蓄圧することができるものとされている。この特許文献4においては、例えばエンジンの停止時には機械式オイルポンプが停止するため、電動オイルポンプを駆動して、アキュムレータに油圧を蓄圧することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−134368号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第985855号明細書
【特許文献3】特開2009−133428号公報
【特許文献4】特開2002−130449号公報
【特許文献5】特開2004−106782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献4に記載されているように、機械式オイルポンプおよび電動オイルポンプを備えた油圧制御装置においては、いずれか一方の油圧をアキュムレータに蓄圧することができる。一方、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを比べると、電動オイルポンプは電動モータを駆動するときの電損があるため、機械式オイルポンプに比べて効率が低く、なるべくなら機械式オイルポンプを使用してアキュムレータに蓄圧をおこなうことが望ましい。しかしながら、特許文献2に記載されているのは、エンジンの停止時に代替的に電動オイルポンプを用いるという駆動形態であり、いずれのオイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧するとその効率が相対的に高くなるのかについての検討がなされておらず、その点で改善の余地が残されていた。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、オイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧する際の効率を相対的に高くすることのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段と、この判断手段により前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないと判断されたときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、車両の駆動輪に連結されたエンジンと、このエンジンと共に回転して駆動されて油圧を発生するオイルポンプと、このオイルポンプから吐出された油圧を蓄圧し、かつ、蓄圧された圧力を放出することのできるアキュムレータと、前記車両に制動力を与えるブレーキ装置とを備えた油圧制御装置において、前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立しているか否かを判断する制動条件判断手段と、前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立していると判断された場合は、前記車両の惰力走行による運動エネルギーを前記エンジンに伝達して前記オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求めるエンジンブレーキ力算出手段と、前記ブレーキ装置で前記車両に与える目標制動力から、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、前記ブレーキ装置で車両に与える最終的な制動力を制御する制動力制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置の入力回転数と出力回転数との間の変速比を相対的に大きくする制御、または前記動力伝達装置に入力されるトルクを相対的に高くする制御をおこなうモードが選択されているか否かを判断するモード判断手段と、前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達し、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、前記モード選択手段により前記モードが選択されていると判断され、かつ、アキュムレータ前記条件判断手段により前記蓄圧条件が成立していると判断されたときに、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、前記モードに対応させて予め定められた所定の上昇速度となるように、前記エンジントルクを制御するエンジントルク制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置で動力伝達がおこなわれる際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルが供給されて潤滑または冷却される被潤滑部と、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記被潤滑部に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁とが設けられており、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する条件判断手段と、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立していないときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発明は、車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立したか否かを判断するエンジン停止条件判断手段と、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、かつ、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているか否かを判断する蓄圧状態判断手段と、前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立していると判断され、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれていると判断されたときに、前記エンジンにより前記第1オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときの第1消費エネルギーと、前記第2オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとを予測する消費エネルギー予測手段と、前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを比較する比較手段と、前記第1消費エネルギーが前記第2消費エネルギー未満であると判断された場合は、前記エンジンを停止させる条件が成立していても前記エンジンを停止させずに前記エンジンの運転を継続し、そのエンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが供給される低油圧供給部が設けられており、この低油圧供給部は、前記油圧室よりも相対的に低い油圧に制御されるように構成されており、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧室に供給する経路に逆止弁が設けられており、この逆止弁は前記エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが前記アキュムレータに供給される向きで開放され、かつ、前記アキュムレータから前記エンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項2の構成に加えて、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記オイルポンプよりも容量が大きい電動オイルポンプが設けられており、前記オイルポンプまたは電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することができるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記エンジンの動力により発電をおこなう発電機が設けられており、その発電機で発生した電力により前記電動モータが駆動されるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1の構成に加えて、前記動力伝達装置には入力回転数と出力回転数との間の変速比を無段階に変更可能な無段変速機が含まれており、前記判断手段は、前記無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する手段を含むことを特徴とする油圧制御装置である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項4の構成に加えて、前記エンジンが車両に搭載され、かつ、前記エンジンの動力が前記車両の駆動輪に伝達されるように構成されており、前記エンジンの動力が前記駆動輪に伝達されているときに前記駆動輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段を備え、前記条件判断手段は、前記駆動輪がスリップしていると判断されたときに、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する手段を含むことを特徴とする油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、エンジンの動力で駆動される第1オイルポンプ、または電動モータにより駆動される第2オイルポンプから吐出された油圧を油圧室に供給する前に、アキュムレータに蓄圧することができる。また、動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないときには、容量が相対的に小さい第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧することができる。したがって、アキュムレータに油圧を蓄圧する効率を相対的に高くすることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生し、、かつ、ブレーキ装置で車両に制動力を与える条件が成立している場合は、車両の惰力走行による運動エネルギーをエンジンに伝達して第1オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、第1オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求める。ついで、ブレーキ装置で車両に与える目標制動力から、オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、車両に与えるブレーキ装置の最終的な制動力を制御することができる。したがって、車両の惰力走行中に、車両に与えられる総合的な制動力が過度に強められることを抑制でき、運転者が違和感を持つことを回避できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、エンジンの動力を駆動輪に伝達し、かつ、エンジンの動力で第1オイルポンプを駆動するとともに、その第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する制御をおこなうにあたり、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、モードに対応して予め定められている所定の上昇速度に沿ったものとなるように、エンジントルクを制御することができる。したがって、必要以上にエンジントルクが上昇することを回避でき、アキュムレータに油圧を蓄圧する効率を相対的に高くすることができるとともに、エンジンの燃費が向上し、かつ、車両の減速時の違和感を低減することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、第1オイルポンプから吐出されたオイルを被潤滑部に供給する必要がないときに、第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう。したがって、被潤滑部における冷却不足または潤滑不足を回避することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、車両が停止しているときにエンジンを停止させる条件が成立し、かつ、エンジンの動力で第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときに、第1オイルポンプを駆動してアキュムレータに蓄圧するときの第1消費エネルギーと、第2オイルポンプを駆動してアキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとが予測される。そして、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを比較し、第1消費エネルギーが第2消費エネルギー未満である場合は、エンジンを停止させる条件が成立していてもエンジンを運転させておき、そのエンジンの動力で第1オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧する。したがって、消費エネルギーが相対的に少ない状態で、アキュムレータに油圧を蓄圧することができ効率が向上する。
【0023】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルは、油圧室または低油圧供給部に供給される。また、エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルがアキュムレータに供給される向きで逆止弁が開放され、かつ、アキュムレータからエンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは逆止弁が閉じられる。
【0024】
請求項7の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンにより駆動されるオイルポンプ、または電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧をアキュムレータに選択的に蓄圧することができる。
【0025】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、エンジンの動力により発電機で発電をおこない、その電力により電動モータを駆動することができる。
【0026】
請求項9の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断することができる。
【0027】
請求項10の発明によれば、請求項4の発明と同様の効果を得られる他に、構成に加えて、エンジンの動力が駆動輪に伝達されて駆動輪がスリップしているときに、被潤滑部にオイルを供給する必要があるか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第1制御例を示すフローチャートである。
【図2】この発明の油圧制御装置を有する車両の構成を示す模式図である。
【図3】図1のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図4】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第2制御例を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図6】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第3制御例を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図8】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第4制御例を示すフローチャートである。
【図9】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第5制御例を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートでおこなう制御を表す線図である。
【図11】図9のフローチャートでおこなう他の制御を表す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。この発明において、第1オイルポンプおよび第2オイルポンプは、オイルの吐出原理に相違があってもなくてもよく、動力源が異なっている。なお、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプとしては、ベーンポンプ、ギヤポンプ、ピストンポンプなどのいずれを用いてもよい。
【0030】
図2には、車両に搭載されている無段変速機1を含む動力伝達装置を対象とした油圧制御装置32に、この発明を適用した例を模式的に示してある。その無段変速機1は、従来知られているベルト式のものであり、駆動プーリ2と従動プーリ3とにベルト35を巻き掛けてこれらのプーリ2,3の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ2,3に対するベルト35の巻き掛け半径を変化させることにより、入力回転数と出力回転数との間の変速比を、無段階(連続的)に変化させることができるように構成されている。より具体的に説明すると、各プーリ2,3は、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように配置された可動シーブとを備え、それらの固定シーブと可動シーブとの間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されるように構成されている。そして、各プーリ2,3にはそれぞれの可動シーブをその軸線の方向に前後動させるための油圧アクチュエータ4,5が設けられている。それらの油圧アクチュエータ4,5のうちのいずれか一方、例えば従動プーリ3における油圧アクチュエータ5の油圧室5Aには、従動プーリ3がベルト35を挟み付ける挟圧力を発生させる油圧が供給され、また前記油圧アクチュエータ4,5のうちの他方、例えば駆動プーリ2における油圧アクチュエータ4の油圧室4Aには、ベルト35の巻き掛け半径を変化させて変速を行うための油圧が供給されている。
【0031】
上記の無段変速機1の入力側もしくは出力側に、駆動トルクの伝達および遮断を行うためのC1クラッチ6が設けられている。このC1クラッチ6は、供給される油圧に応じて伝達トルク容量が設定されるクラッチであり、例えば湿式の多板クラッチによって構成されている。さらに、エンジン10から駆動輪36に至る経路には前後進切換装置(図示せず)が設けられている。この前後進切換装置は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置により構成されており、その摩擦係合装置の係合および解放を切り替えることにより、回転要素の回転方向を正逆に切り換える装置である。この摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室(図示せず)が設けられており、その油圧室に前記油路15のオイルが供給されるように構成されている。上記の無段変速機1およびC1クラッチ6ならびに前後進切換装置は、車両の走行のためのトルクを伝達するものであり、しかも油圧に応じた伝達トルク容量に設定されるものであるから、前記各油圧アクチュエータ4,5およびC1クラッチ6の油圧室、前後進切換装置の摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室には、トルクに応じた高い油圧を供給することになり、したがって、油圧室4A,5A、C1クラッチ6の油圧室(図示せず)、前後進切換装置の摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室が、高油圧供給部である。
【0032】
他方、上記の無段変速機1を含む動力伝達装置には、ロックアップクラッチ(図示せず)を備えたトルクコンバータ(トルコン)7が設けられている。そのトルクコンバータ7の構成は、従来知られているものと同様であり、ポンプインペラとタービンランナとの回転数差が大きい(速度比が所定値より小さい)コンバータ領域ではトルクの増幅作用が生じ、またその回転数差が小さい(速度比が所定値より大きい)カップリングレンジでは、トルクの増幅作用のない流体継手として機能するように構成されている。そして、ロックアップクラッチはその入力側部材であるポンプインペラに一体のフロントカバーとタービンランナに一体のハブとを摩擦板を介して直接連結するように構成されている。その摩擦板をフロントカバーに接触させ、また離隔させるためのロックアップ油圧を制御するための制御弁(L/Uコントロールバルブ)8が設けられている。この制御弁8はロックアップクラッチに対する油圧の供給方向やその圧力を制御するためのものであり、したがって制御弁8は相対的に低い油圧で動作するようになっている。
【0033】
前記のように、エンジン10から駆動輪36に至る動力伝達装置には、相互に摩擦接触する箇所、軸受、ギヤ同士の噛み合い部分などのように、動力伝達にあたり摺動、発熱、摩耗が発生する被潤滑部9が存在し、その被潤滑部9にはオイルが供給されて冷却および潤滑される。この被潤滑部9は、低圧であっても必要量のオイル(潤滑油)が供給されればよいので、その被潤滑部9や前記制御弁8あるいはトルクコンバータ7を低油圧供給部と呼ぶ。
【0034】
つぎに、上記の高油圧供給部や低油圧供給部に対して油圧を給排するための構成について説明する。図2に示す例は、車両に搭載されているエンジン10によって駆動されるオイルポンプ(機械式オイルポンプ)11を油圧源とする例である。そのエンジン10は、ガソリンエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する熱機関であり、この発明ではそのエンジン10と併せてモータ・ジェネレータなどの電動機を設けてもよい。このエンジン10から駆動輪36に至る動力伝達経路に、前記無段変速機1、C1クラッチ6、トルクコンバータ7などが配置されている。
【0035】
前記オイルポンプ11はオイルパン33からオイルを吸入し、かつ、油路34にオイルを吐出するように構成されている。この油路34の油圧を所定の圧力に調圧する調圧弁12が設けられている。この調圧弁12は、所定方向に往復動するスプールと、油路34と被潤滑部9とを接続するポート12Aと、油路34とオイルパン33とを接続するポート12Bと、スプールを一方向に押圧するバネと、油路34の油圧が作用し、かつ、バネとは逆方向にスプールを押圧するフィードバックポートと、バネと同方向にスプールを押圧する磁気吸引力を生じる電磁コイルとを有している。つまり、調圧弁12はソレノイドバルブである。この調圧弁12は、油路34の油圧が相対的に低い場合は、バネの力でスプールが押圧されてポート12A,12Bが閉じられており、油路34のオイルは被潤滑部9およびオイルパン33へは排出されない。
【0036】
そして、油路34の油圧が上昇すると、フィードバックポートの油圧によりスプールがバネの力に抗して移動してポート12Aが開き、油路34のオイルが被潤滑部9に排出される。さらに油路34の油圧が上昇すると、スプールがさらに移動して、ポート12A,12Bが共に開き、油路34のオイルが被潤滑部9およびオイルパン33に排出されて、油路34の油圧が制御される。また、調圧弁12においては、電磁コイルへ供給される電流値を制御することにより、スプールがバネの力および磁気吸引力に抗して移動することとなる油路34の油圧を調整することができる。具体的には、電磁コイルへの通電により形成される磁気吸引力を相対的に強くするほど、油路34の油圧が相対的に高くなるまで、油路34のオイルは被潤滑部9およびオイルパン33には排出されない。このようにして、油路34の油圧が制御され、その油圧が制御弁8を経由してトルクコンバータ7に供給される。
【0037】
一方、油路34は逆止弁13および油路15を介してアキュムレータ(蓄圧器)14に連通されている。その逆止弁13は、オイルポンプ11からアキュムレータ14に向けて圧油が流れる場合に開き、これとは反対方向の圧油の流れを阻止するように閉弁する一方向弁である。また、アキュムレータ14は、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。そして、このアキュムレータ14から高油圧供給部に圧油を供給するように構成されている。すなわち、前述した駆動プーリ2におけるアクチュエータ4と、従動プーリ3におけるアクチュエータ5と、C1クラッチ6とが、アキュムレータ14に連通されている。
【0038】
さらに、図2に示す油圧制御装置32においては、エンジン10により駆動されるオイルポンプ11の他に、電動オイルポンプ28が設けられている。この電動オイルポンプ28は、電動モータ29によって駆動されてオイルパン33からオイルを吸い込み、かつ、油路15へオイルを吐出するポンプである。オイルポンプ11と電動オイルポンプ28とを比べると、オイルポンプ11の容量が電動オイルポンプ28の容量よりも小さく構成されている。このため、図2に示された油圧制御装置32においては、オイルポンプ11から吐出されたオイルの油圧、および電動オイルポンプ28から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ14に蓄えることができる。また、エンジン1によって駆動されて発電する発電機31が設けられており、この発電機31は電動モータ29に接続されている。発電機31は、直流発電機または交流発電機の何れでもよい。したがって、エンジン10の動力で発電機31が発電をおこない、その電力で電動モータ29を駆動することができる。
【0039】
前記アクチュエータ4の油圧室4Aには油路16が接続されており、油路15と油路16とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSP1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSP1を電気的に制御してオイルの供給経路を開閉することにより、アクチュエータ4に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。前記アクチュエータ5の油圧室5Aには油路18が接続されており、油路15と油路18とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSS1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSS1を電気的に制御して、油路15のオイルをアクチュエータ5に供給する経路を開閉することにより、アクチュエータ5に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。さらに、C1クラッチ6の係合および解放を制御する油圧室には油路19が接続されており、油路15と油路19とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSC1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSC1を電気的に制御してオイルの供給経路を開閉することにより、C1クラッチ6に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。
【0040】
また、アクチュエータ4、5の油圧室、およびC1クラッチ6の油圧室をオイルパン33に連通させる油路17が設けられており、その油路17と油路16とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSP2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSP2を電気的に制御して、アクチュエータ4のオイルをオイルパン33に排出する経路を開閉することにより、アクチュエータ4の油圧室4Aからオイルパン33に圧油を排出し、また圧油の排出を遮断できるように構成されている。これと同様に、油路18と油路17とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSS2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSS2を電気的に制御して、アクチュエータ5の油圧室5Aからオイルパン33にオイルを排出する経路を開閉することにより、アクチュエータ5からオイルパン33へ圧油を排出し、また圧油の排出を遮断するように構成されている。
【0041】
さらに、油路19と油路17とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSC2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSC2を電気的に制御して、C1クラッチ6の油圧室のオイルをオイルパン33に排出する経路を開閉することにより、C1クラッチ6から圧油をオイルパン33へ排出し、また圧油の排出を遮断できるように構成されている。これらの各電磁開閉弁DSP1,DSS1,DSC1,DSP2,DSS2,DSC2としては、閉弁状態においても油圧の漏れが生じないように構成されたバルブ、例えば、ポペット弁や逆止弁などを用いることができる。
【0042】
一方、エンジン10および無段変速機1ならびに油圧制御装置32を制御する電子制御装置37が設けられており、電子制御装置37には車速、アクセル開度、エンジン回転数、ブレーキペダルの操作状態、アキュムレータ14の内圧、無段変速機1の入力回転数および出力回転数、モードスイッチの操作状態、マニュアルシフト装置の操作状態、車輪の回転速度などを検知するセンサやスイッチの信号が入力される。また、電子制御装置37には、エンジン10、無段変速機1、油圧制御装置32、C1クラッチ6を制御するデータやプログラムが記憶されている。さらに、ブレーキペダルが踏み込まれたときに車輪に制動力を与えるブレーキ装置38が設けられている。このブレーキ装置38は、車輪に設けられたホイールシリンダを有しており、そのホイールシリンダの油圧によりブレーキパッドを回転部材に押し付けて、摩擦力により車輪に制動力を与えるように構成されている。そして、ブレーキペダルの踏み込み量、および電子制御装置37に入力される信号、電子制御装置37に記憶されているデータに基づいて、ブレーキ装置38のホイールシリンダの油圧を制御することができるように構成されている。
【0043】
上述した油圧制御装置32の作用について説明する。オイルポンプ11はエンジン10に連結されているので、エンジン10が回転している場合にはオイルポンプ11も同様に回転し、油圧を発生する。そのエンジン10の回転は、エンジン10に燃料が供給されて自律回転している場合と、燃料の供給および点火を止めて車両の走行慣性力で強制的に回転させられている場合のいずれでも生じる。すなわち、エンジン10の駆動時とエンジンブレーキ状態の被駆動時とのいずれであってもオイルポンプ11が回転して油圧を発生する。その圧力および油量は、オイルポンプ11の仕様、回転数ならびにトルクに応じたものとなる。こうして発生した油圧は、一方で、前記調圧弁12によって設計上、予め定めた低油圧に調圧された後、前記制御弁8を介してトルクコンバータ7に供給され、また被潤滑部9に供給される。
【0044】
他方、オイルポンプ11はエンジン10の動作状態に応じた油圧を発生するので、急加速時や大きいエンジンブレーキ力を生じさせている場合などにおいては、オイルポンプ11の吐出圧が高くなる。このような場合に生じた高油圧は、逆止弁13を押し開いてアキュムレータ14に供給される。また、逆止弁13は、オイルポンプ11の吐出圧がアキュムレータ14での油圧より低い場合に閉じるから、アキュムレータ14に供給された高油圧はここに蓄えられることになる。なお、アキュムレータ14に蓄えられる油圧は、無段変速機1で必要とする最高圧力より高い油圧である。
【0045】
無段変速機1のトルク容量はベルト35の滑りを防止できるように制御され、これは従動プーリ3のアクチュエータ5に供給される油圧に応じた挟圧力によって設定される。より具体的に説明すると、アクセル開度やスロットル開度などに基づいて要求駆動力が求められ、この要求駆動力に基づいて目標エンジントルクが求められており、無段変速機1に入力されるトルクが上昇する場合は、油圧室5Aの油圧を上昇させる制御がおこなわれる。図2に示す油圧制御装置32では、従動プーリ3のアクチュエータ5に連通する供給側電磁開閉弁DSS1を開弁し、排出側電磁開閉弁DSS2を閉じて、アキュムレータ14から油圧室5Aに油圧を供給することにより、油圧室5Aの油圧を上昇させることができる。このようにして、無段変速機1のトルク容量が上昇される。
【0046】
これに対して、無段変速機1に入力されるトルクが低下する場合は、油圧室5Aの油圧を低下させる制御がおこなわれる。図2に示す油圧制御装置32では、従動プーリ3のアクチュエータ5に連通する供給側電磁開閉弁DSS1を閉じ、排出側電磁開閉弁DSS2を開き、油圧室5Aからオイルを排出することにより、油圧室5Aの油圧を低下させることができる。このようにして、無段変速機1のトルク容量が低下される。なお、無段変速機1に入力されるトルクが一定である場合は、供給側電磁開閉弁DSS1を閉じ、かつ、排出側電磁開閉弁DSS2を閉じて、油圧室5Aにオイルを閉じこめて、トルク容量を一定に制御する。
【0047】
つぎに、無段変速機1における変速比の制御について説明する。まず、車速、アクセル開度に基づいて車両における要求駆動力が求められ、その要求駆動力に基づいて目標エンジン出力が求められる。さらに、実際のエンジン出力を目標エンジン出力に基づいて制御するにあたり、エンジン10の運転状態が最適燃費線に沿ったものとなるように、目標エンジン回転数および目標エンジン出力が求められる。そして、実際のエンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、無段変速機1の変速比が制御される。この無段変速機1の変速比の制御は、油圧室4Aに対して圧油を給排することによりおこなわれる。具体的には、供給側電磁開閉弁DSP1および排出側電磁開閉弁DSP2を開閉することによりおこなわれる。
【0048】
例えば、無段変速機1の変速比を相対的に小さくする制御(アップシフト)をおこなうために、駆動プーリ2の溝幅を狭くする(ベルト35の巻き掛け半径を大きくする)場合には、供給側電磁開閉弁DSP1が開制御されてアクチュエータ4に対して圧油が供給される。また反対に、無段変速機1の変速比を相対的に大きくする制御(ダウンシフト)をおこなうために、駆動プーリ2の溝幅を広くする(ベルト35の巻き掛け半径を小さくする)場合には、排出側電磁開閉弁DSP2が開制御されてアクチュエータ4からオイルがオイルパン33へ排出される。なお、無段変速機1の変速比を固定する場合は、供給側電磁開閉弁DSP1および排出側電磁開閉弁DSP2が共に閉状態に制御され、油圧室4Aにオイルが閉じ込められる。
【0049】
このように、基本的にはエンジン出力が最適燃費線に沿ったものとなるように、無段変速機1の変速比が制御される。一方、運転者により操作されるマニュアルシフト装置が設けられており、そのマニュアルシフト装置が操作された場合は、無段変速機1の変速比をステップ的に変更(アップシフトおよびダウンシフト)する制御をおこなうことができるように構成されている。このマニュアルダウンシフト装置が運転者により操作された場合は、最適燃費線に基づく無段変速機1の変速比の制御はおこなわれず、無段変速機1の変速比は、マニュアルシフト装置の操作により選択された変速比に固定される。
【0050】
そして、アクセル開度および車速がほぼ一定に維持される定常走行状態では、無段変速機1の変速比、および従動プーリ3からベルト35に与えられる挟圧力を一定に維持することになる。その場合、無段変速機1についての各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2を閉状態に制御して、各アクチュエータ4,5の油圧室に圧油を封じ込める。この状態で、各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2からの油圧の漏洩は生じないから、アキュムレータ14に蓄えた油圧が低下したり、あるいは各アクチュエータ4,5の圧力を維持するべくアキュムレータ14から油圧を継続して供給したりする必要がなく、したがって油圧の漏洩によるエネルギ損失が生じない。
【0051】
さらに、車両が走行する場合、C1クラッチ6を係合させて、エンジン10のトルクを駆動輪36に伝達する。したがってC1クラッチ6は走行に要する大きいトルクを伝達することになるので、車両が走行する場合、アキュムレータ14からC1クラッチ6に対して油圧を供給する。すなわち、車両が発進する場合は、供給側電磁開閉弁DSC1に通電してこれを開制御し、アキュムレータ14からC1クラッチ6に対して油圧を供給することによりC1クラッチ6を係合させる。これに対して、C1クラッチ6を解放する場合には、排出側電磁開閉弁DSC2を開に制御してC1クラッチ6から排圧する。
【0052】
そして、これらC1クラッチ6についての各電磁開閉弁DSC1,DSC2も、前述した無段変速機1についての各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2と同様に、油圧の実質的な漏洩の生じないものであるから、アキュムレータ14に蓄えた油圧を消費することなくC1クラッチ6に油圧を封じ込めて係合状態に維持することができるうえに、油圧の漏洩によるエネルギ損失を防止もしくは抑制することができる。
【0053】
ところで、図2に示された車両においては、アキュムレータ14に蓄える油圧を、電動オイルポンプ28およびオイルポンプ11の両方で発生することができるように構成されている。しかし、電動オイルポンプ28は電損により効率が低いため、電動オイルポンプ28で発生した油圧をアキュムレータ14に蓄圧すると、電動モータ29に供給する電力を発電機31で発電しているため、エンジン10の燃費が一時的に低下する。そこで、なるべくオイルポンプ11で発生した油圧をアキュムレータ14に蓄圧するようにすることが望ましい。以下、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する制御例を順次説明する。
【0054】
(第1制御例)
前記アキュムレータ14に油圧を蓄圧する場合に実行される第1制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。この第1制御例は、請求項1および請求項9の発明に対応するものである。この図1のフローチャートは、アクセルペダルが踏み込まれており、エンジン10のトルクが駆動輪36に伝達されて駆動力が発生している場合に実行される。まず、無段変速機1の変速比を固定する(一定とする)制御が実行されているか否かが判断される(ステップS1)。また、マニュアルシフト装置の操作に基づいて、無段変速機1の変速比を制御中であるか否かが判断される(ステップS2)。
【0055】
さらに、所定時間内におけるエンジントルクの変動量が所定範囲内であるか否か、または所定時間内における油圧室5Aの油圧変動が所定範囲内であるか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3は、油圧室5Aのオイル量を増加する必要があるかどうかを判断するステップである。例えば、エンジントルクの変動幅が所定範囲内であれば、油圧室5Aのオイル量を増加する必要はないことになる。また、オイル漏れなどによる油圧室5Aの油圧変動が所定範囲内であれば、油圧室5Aのオイル量を増加する必要はないことになる。このステップS1,S2,S3の判断は全て同時におこなってもよいし、いずれかのステップで肯定判断されたときに他のステップをおこなってもよい。
【0056】
上記のステップS1,S2,S3の全部で肯定的に判断された場合は、「無段変速機1の変速比が固定されている状況で、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件」が成立したか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4の判断は、例えば図3のマップを用いておこなわれる。図3のマップにはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する蓄圧ラインが示されている。また、図3にはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する制御の基準とし、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第1蓄圧ライン(実線)と、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第2蓄圧ライン(破線)とが示されている。第1蓄圧ラインは第2蓄圧ラインよりも高圧である。そして、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になり、かつ、第2蓄圧ラインを超えているときは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。また、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下になると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。なお、アキュムレータ14内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はない。
【0057】
上記のステップS4で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11を使用してアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこない(ステップS5)、この制御ルーチンを終了する。このステップS5の制御を具体的に説明すると、調圧弁12の電磁コイルに供給される電流値を制御して磁気吸引力を相対的に強くする。すると、油路34の油圧が相対的に高圧になってもポート12A,12Bが共に遮断された状態に維持されて、油路34の油圧が油路15の油圧よりも高圧になり、逆止弁13が開いてオイルポンプ11の油圧がアキュムレータ14に蓄圧される。
【0058】
前記ステップS4で否定的に判断された場合、例えば、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下であるときは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御がおこなわれ、この制御ルーチンを終了する。このように、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する場合は、調圧弁12の電磁コイルにより形成される磁気吸引力でが相対的に弱められる。すると、油路34の油圧が上昇したときに、フィードバックポートの油圧でスプールが移動し、ポート12A,12Bの少なくとも一方が開き、油路34のオイルが被潤滑部9またはオイルパン33の少なくとも一方へ排出されて、油路34の油圧の上昇が抑制される。したがって、逆止弁13が閉じた状態になり、オイルポンプ11の油圧がアキュムレータ14に蓄圧されることはなく、電動オイルポンプ28の油圧がアキュムレータ14に蓄圧される。なお、ステップS4の判断時点で、アキュムレータ14内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はなく、ステップS4で否定的に判断されてこの制御ルーチンを終了する。
【0059】
なお、ステップ1で否定的に判断されるということは、油圧室4Aに供給するオイル量が変化するため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなうことなくこの制御ルーチンを終了する。さらに、ステップ2で否定的に判断されるということは、再度マニュアルシフト装置が操作されて油圧室4Aに供給するオイル量が変化する可能性があるため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなうことなくこの制御ルーチンを終了する。さらに、ステップ3で否定的に判断された場合は、油圧室5Aのオイル量を増加する必要があり、アキュムレータ14の内圧が変化する可能性があるため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。
【0060】
このように、図1に示された制御例においては、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧することができ、電動オイルポンプ28を駆動してアキュムレータ14に蓄圧するよりも効率が良くなり、エンジン10の燃費が向上する。ここで、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧することができ、電動オイルポンプ28を駆動してアキュムレータ14に蓄圧するよりも効率が良くなる理由は、オイルポンプ11の容量がオイルポンプ28の容量よりも小さく、かつ、電動モータ29に電損があるからである。
【0061】
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1,S2,S3が、この発明の判断手段に相当し、ステップS4,S5が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、無段変速機1が、この発明の動力伝達装置に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当する。なお、上記の説明においては、ステップS1において、無段変速機1の変速比を固定する(一定とする)制御が実行されているか否かが判断されているが、その判断に代えて、無段変速機1で消費されるオイルの流量が変化するか否かを、ステップS1で判断してもよい。例えば、車両が定常走行を継続しているときには、無段変速機1で消費されるオイルの流量が変化しないため、そのステップS1で肯定的に判断される。
【0062】
(第2制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第2制御例を図4のフローチャートに基づいて説明する。この第2制御例は請求項2の発明に対応するものである。この第2制御例は電動オイルポンプ28の有無に関わりなく実行可能である。まず、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立しているか否かが判断される(ステップS12)。例えば、アキュムレータ14の内圧が、予め定められた基準圧以下であるときには、このステップS12で肯定的に判断されてステップS13に進む。このステップS13においては、エンジン10によりオイルポンプ11を駆動して、そのオイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなうとともに、ブレーキ装置38で発生する目標制動力を減少させる制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御は、図1のステップS5の制御と同じである。
【0063】
前記のようにブレーキペダルが踏み込まれているということは、車両が惰力走行状態にあり、その車両の惰力走行にともなう運動エネルギーでエンジンブレーキ力が発生している。また、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいて要求制動力が求められ、その要求制動力に基づいて、ブレーキ装置で発生する目標制動力が求められる。さらに、目標制動力に基づいて、ブレーキ装置38のホイールシリンダの目標油圧が求められる。ここで、オイルポンプ11を駆動するエンジン10は、車両の運動エネルギーにより回転させられているので、オイルポンプ11を駆動している分、エンジンブレーキ力が強められることになる。そこで、要求制動力に基づいてブレーキ装置で発生する目標制動力を求めるにあたり、オイルポンプ11の駆動により強められるエンジンブレーキ分の制動力を、目標制動力から差し引く制御をおこなう。これが、「ブレーキ装置38で発生する目標制動力を減少させる制御」の意味である。
【0064】
このステップS13の制御においては図5のマップを用いることができる。図5のマップには、横軸にオイルポンプ11の駆動によるロストルクが示され、縦軸にブレーキ装置38で発生する目標制動力の減少分の値が示されている。図5のマップからは、オイルポンプ11の駆動によるロストルクが増加するほど、ブレーキ装置38で発生する目標制動力の減少分(ブレーキ力分)が増加することが分かる。なお、オイルポンプ11の駆動によるロストルクTloss は下記の式で表される。
Tloss =k×NE×PL
ここで、kは係数であり、NEはエンジン回転数であり、PLはアキュムレータ14の内圧である。
【0065】
一方、前記ステップS12の判断時点でアキュムレータ14の内圧が、予め定められた基準値を超えていることにより、ステップS12で否定的に判断された場合は、アキュムレータ14に蓄圧をおこなうことなく、この制御ルーチンを終了する。また、ステップS11の判断時点でブレーキペダルが踏み込まれていない場合は、ステップS11で否定的に判断されて、制御ルーチンを終了する。
【0066】
このように、図4のフローチャートにおいては、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキ装置38で制動力を発生するときに、オイルポンプ11の駆動によるエンジンブレーキ力の増加分を考慮して、ブレーキ装置38で発生する目標制動力を求めるため、ブレーキペダルの踏み込み量に対応した制動力を超える制動力が車両で発生したり、減速度が大きくなり過ぎたりすることすることを防止できる。したがって、運転者が違和感を持つことを回避できるとともに、過度な減速により運転者が踏み込んだブレーキペダルを一旦戻し、再度ブレーキペダルを踏み込むなどの操作が繰り返されることを防止でき、エンジン10の燃費が向上する。この第2実施例は、オイルポンプ11を駆動してアキュムレータ14に蓄圧する制御例を提供するという意味の他に、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するにあたり、ブレーキ装置38で発生する制動力をどのように制御するのかという技術的意味をも有する。
【0067】
ここで、図4に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS11が、この発明の制動条件判断手段に相当し、ステップS12が、この発明のエンジンブレーキ力算出手段および制動力制御手段に相当する。図2に示された構成とこの発明との対応関係を説明すると、駆動輪36が、この発明の駆動輪に相当し、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明のオイルポンプに相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当する。
【0068】
なお、前記ブレーキ装置38は、摩擦力により制動力を発生する構成ではなく、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換することにより車輪に制動力を与えるモータ・ジェネレータであってもよい。ブレーキ装置38がこのようなモータ・ジェネレータにより構成された車両において、図4のフローチャートを実行することもできる。この場合、ステップS11で肯定的に判断され、かつ、ステップS13に進み、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいてモータ・ジェネレータで発生するべき目標回生制動力を求める。ここで、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、モータ・ジェネレータで発生するべき目標回生制動力を求める際に、オイルポンプ11の駆動により生じるエンジンブレーキ力分の制動力を差し引く制御をおこなう。
【0069】
(第3制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第3制御例を図6のフローチャートに基づいて説明する。この第3制御例は請求項3の発明に対応するものであり、エンジン10の動力が駆動輪36に伝達されて車両が走行している際に実行される。第3の制御例を実行可能な車両は、エンジン10および無段変速機1を制御するモードとして、ノーマルモードとスポーツモードとを切り替えて選択することができるように構成されている。前記ノーマルモードとスポーツモードとを比べると、車速およびアクセル開度が同じであっても、ノーマルモードが選択されたときの無段変速機1の変速比よりも、スポーツモードが選択されたときの無段変速機1の変速比の方が相対的に大きくなるように、電子制御装置37の制御プログラムが設定されている。また、ノーマルモードとスポーツモードとを比べると、車速およびアクセル開度が同じであっても、ノーマルモードが選択されたときの電子スロットルバルブの開度よりも、スポーツモードが選択されたときの電子スロットルバルブの開度の方が相対的に広くなるように、電子制御装置37の制御プログラムが設定されている。つまり、ノーマルモードが選択された場合のエンジントルクよりも、スポーツモードが選択された場合のエンジントルクの方が相対的に高くなる。
【0070】
図6のフローチャートにおいては、まず、エンジン10の動力を駆動輪36に伝達して車両が走行しているときに、スポーツモードが選択されているか否かが判断される(ステップS21)。このステップS21で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立しているが否かが判断される(ステップS22)。このステップS22の判断に用いるマップの一例を図7に示す。この図7のマップは電子制御装置37に記憶されている。図7のマップにはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する蓄圧ラインが示されている。また、図7にはオイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第1蓄圧ライン(実線)と、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第2蓄圧ライン(破線)とが示されている。第1蓄圧ラインは第2蓄圧ラインよりも高圧である。
【0071】
また、無段変速機1で使用するオイル量が急激に増加して、アキュムレータ14の内圧が一定時間内に最大速度で降下したとしても、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になった時点から、所定時間内にアキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下となることがないように、第1蓄圧ラインと第2蓄圧ラインとの差が決定されている。上記の「所定時間」の意味および長さは後述する。そして、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になり、かつ、第2蓄圧ラインを超えているときは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。また、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下になると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。なお、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はない。
【0072】
前記ステップS22で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなうとともに、アキュムレータ14への蓄圧速度に合わせてエンジントルクを補償する制御をおこなう(ステップS23)。このステップS23でおこなわれる制御のうち、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御は、図1のステップS5でおこなう制御と同じである。つぎに、アキュムレータ14への蓄圧速度に合わせてエンジントルクを補償する制御を、図7のマップにより説明する。前記のように、時刻t1でアキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になると、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御が開始される。また、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御と並行してエンジントルクを高める制御(エンジントルク補償)が実行される。
【0073】
しかしながら、エンジン10は燃料を燃焼させてトルクを発生する動力装置であるから、時刻t1からエンジントルクが上昇を開始するわけではなく、時刻t2からエンジントルクが上昇を開始する。つまり、時刻t1から時刻t2までの間に無駄時間(制御の遅れ)が生じる。このため、時刻t1から時刻t2までの間は、アキュムレータ14の内圧は低下している。そして、時刻t2以降はエンジントルクが上昇を開始するため、アキュムレータ14の内圧も上昇する。このように、時刻t1から時刻t2の間はエンジントルクが上昇しないため、アキュムレータ14の内圧も低下するが、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下にはならない。
【0074】
つまり、この時刻t1から時刻t2までの時間(無駄時間)の長さは、エンジントルク補償制御を開始してから、エンジントルクが実際に上昇を開始するまでの時間であり、この時間の長さが前記所定時間の長さに相当する。つまり、前記所定時間は、エンジントルク補償制御を開始してからエンジントルクが上昇を開始するまでに無駄時間があっても、アキュムレータ14の内圧がその無駄時間内に第2蓄圧ライン以下にならないようにするための時間である。なお、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するにあたり、そのアキュムレータ14の内圧の上昇速度(または、上昇勾配、単位時間当たりの上昇割合など)の基準となる所定の上昇速度が予め定められている。そして、実際のアキュムレータ14の内圧の上昇速度が所定の上昇速度に沿ったものとなるように、エンジントルクの上昇速度が制御される。これは電子スロットルバルブの開度を制御することにより達成される。なお、「所定の上昇速度」は、スポーツモードが選択されている状態において、無段変速機1に入力されるトルクが上昇するとき、または無段変速機1のトルク容量を高めるときに、油圧室5Aの油圧不足を回避することのできる値である。
【0075】
上記のステップS23についで、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を終了する条件が成立したか否かが判断される(ステップS24)。例えば、アキュムレータ14に所定圧以上の油圧が蓄圧された場合は、アキュムレータ14に蓄圧する制御を終了する条件が成立する。この所定圧は第1蓄圧ラインよりも高く、アキュムレータ14が一杯であることを意味する。このステップS24で否定的に判断された場合は、ステップS23に戻り、ステップS24で肯定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、前記ステップS22で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。つまり、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御はおこなわれない。また、ステップS21で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
【0076】
ここで、図6のフローチャートに示された機能的手段と,この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS21が、この発明のモード判断手段に相当し、ステップS22が、この発明の条件判断手段に相当し、ステップS23が、この発明のエンジントルク制御手段に相当する。また、図2に示された構成とこの発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の電動オイルポンプに相当し、無段変速機1がこの発明の動力伝達装置に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当する。
【0077】
(第4制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第4制御例を図8のフローチャートに基づいて説明する。この第4制御例は請求項4および請求項10の発明に対応するものであり、まず、エンジン10のトルクが駆動輪36に伝達されており、その駆動輪36がスリップしているか否かが判断される(ステップS31)。これは、エンジン10のトルクが伝達されない車輪の回転速度と、駆動輪36の回転速度とを比較することにより判断可能である。このステップS31で肯定的に判断された場合は、無段変速機1の変速比を固定する条件が成立したか否かが判断される(ステップS32)。このステップS32で肯定的に判断された場合は、Priシーブ側ソレノイド弁を閉じる制御をおこなう(ステップS33)。このステップS33では、具体的には、供給側電磁開閉弁DSP1を閉じ、かつ、排出側電磁開閉弁DSP2を閉じる制御をおこなう。
【0078】
また、Secシーブの油圧室5Aの油圧が設定圧に到達したか否かが判断される(ステップS34)。これは、油圧室5Aの実際の油圧が、その時点の目標エンジントルクに対応して予め定められた設定圧になったか否かを判断するものである。なお、「目標エンジントルクに対応して予め定められた設定圧」とは、ベルト35の滑りを回避するために定められた油圧」である。このステップS34で肯定的に判断された場合は、Secシーブ側ソレノイド弁を閉じる制御をおこなう(ステップS35)。つまり、供給側電磁開閉弁DSS1が閉じられ、かつ、排出側電磁開閉弁DSS2が閉じられ、無段変速機1のトルク容量が一定に維持される。ここでは、駆動輪36がスリップしたことにより、運転者がアクセルペダルの踏み込み量が減少してエンジントルクが低下しても、無段変速機1のトルク容量が一定に維持される。その理由は、アクセルペダルの踏み込み量が再度増加して、駆動輪36に伝達されるトルクが増加する可能性があるからである。
【0079】
そして、無段変速機1の変速比が「1」以上であるか否かが判断される(ステップS36)。このステップS36で肯定的に判断されるということは、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)の方が、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)よりも高く、その駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分が発熱、もしくは摩耗する可能性がある。そこで、ステップS36で肯定的に判断された場合は、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)が、所定回転数以下であるか否かが判断される(ステップS37)。このステップS37の判断に用いる所定回転数は、その駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性があるか否かを判断する基準である。このステップS37で肯定的に判断された場合は、駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性は低いため、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧し(ステップS38)、この制御ルーチンを終了する。このステップS38の制御は、図1のステップS5の制御と同じであり、オイルポンプ11から吐出されたオイルは被潤滑部9に供給されない。
【0080】
これに対して、ステップS37で否定的に判断されるということは、駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性が高いことになる。そこで、ステップS37で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。つまり、調圧弁12の制御によりポート12Aが開かれており、油路34のオイルが被潤滑部9に供給される。
【0081】
一方、前記ステップS36で否定的に判断されるということは、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)よりも、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)の方が高く、その従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分が発熱、もしくは摩耗する可能性がある。そこで、ステップS36で否定的に判断された場合は、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)が、所定回転数以下であるか否かが判断される(ステップS39)。このステップS39で用いる所定回転数は、その従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性があるか否かを判断する基準である。このステップS39で肯定的に判断された場合は、従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性は低いため、ステップS38に進む。
【0082】
これに対して、ステップS39で否定的に判断されるということは、従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性が高いことになる。そこで、ステップS39で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。つまり、調圧弁12の制御によりポート12Aが開かれており、油路34のオイルが被潤滑部9に供給される。このように、図8の制御例においては、被潤滑部9にオイルを供給する必要性がある場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわない。これに対して、被潤滑部9にオイルを供給する必要性がない場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなう。したがって、被潤滑部9の摩耗、焼き付きなどを防止できるとともに、アキュムレータ14に蓄圧することができる。このように、調圧弁12は、オイルポンプ11から吐出されたオイルを、被潤滑部9に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁としての機能を備えている。
【0083】
ここで、図8に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS31が、この発明のスリップ判断手段に相当し、ステップS37,S39が、この発明の条件判断手段に相当し、ステップS38が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、無段変速機1がこの発明の動力伝達装置に相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、アキュムレータ14が、この発明の油圧室に相当し、被潤滑部9が、この発明の被潤滑部に相当し、調圧弁12が、この発明の供給先切替弁に相当する。
【0084】
(第5制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第5制御例を、図9のフローチャートに基づいて説明する。この第5制御例は請求項5の発明に対応するものである。図9のフローチャートでは、まず、車両が停止しているか否かが判断され(ステップS41)、かつ、アイドルストップ制御を開始する条件が成立したか否かが判断され(ステップS42)、さらに、現在オイルポンプ11のオイルをアキュムレータ14に蓄圧する制御を実行中であるか否かが判断される(ステップS43)。前記アイドルストップ制御とは、車両の停止中にエンジン10への燃料の供給を停止して、そのエンジン10を停止させる制御である。このアイドルストップ制御を開始する条件は、車両が停止し、かつ、アクセルペダルが踏まれておらず、かつ、ブレーキペダルが踏まれていると成立する。
【0085】
このステップS41,S42,S43の判断は同時におこなってもよいし、各ステップの判断を順番におこなってもよい。そして、ステップS41,S42,S43の全てにおいて肯定的に判断された場合は、予想必要消費ガソリンエネルギーの方が、予想必要EOP消費エネルギー未満であるか否かが判断される(ステップS44)。前記のように、オイルポンプ11の容量は電動オイルポンプ28の容量よりも小さく、かつ、電動オイルポンプ28の駆動には電損が生じるが、上記のように車両が停止しているため、オイルポンプの容量および電損という条件だけでは、アキュムレータ14に油圧を蓄圧するときの効率を求めることが困難であるため、このステップS44の判断をおこなっている。ここで、予想必要消費ガソリンエネルギーとは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなっているときのエンジン10の消費エネルギーであり、このエンジン10の消費エネルギーGene は次式で求められる。
Tpacc=(PACCmax −PACCact )/ΔPACCupmax
Gene =Tpacc×gidl
ここで、Tpaccは、アキュムレータ14への蓄圧時間、gidlは、エンジン10をアイドリング状態としてオイルポンプ14を駆動するときのガソリンの消費量であり、PACCmax は、アキュムレータ14へ蓄圧される油圧の最大値(上限値)であり、PACCact は、現時点におけるアキュムレータ14の内圧であり、ΔPACCupmax は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときの最大勾配(蓄圧速度を示す勾配の最大値)である。
【0086】
これに対して、予想必要EOP消費エネルギーは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなった場合に消費されるものと予想されるエネルギーであり、予想必要EOP消費エネルギーEOPene は、次式により求められる。
t1=ΔPACCupmax /dPACCup
t2=(PACCmax −(PACCact +∬dPACCupdtdt))
/ΔPACCmax +t1
EOPene =t2×Weop
ここで、t1は、電動オイルポンプ28によりアキュムレータ14に蓄圧を開始してからΔPACCupに到達するまでの予想時間であり、ΔPACCupは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときのアキュムレータ14の内圧の上昇勾配であり、t2は、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を開始してから、アキュムレータ14の内圧が最大値となるまでの予想時間であり、Weopは、単位時間あたりにおける電動オイルポンプ28の使用エネルギーである。
【0087】
ステップS44の判断に関連して、アキュムレータ14の蓄圧勾配を図10に示す。現在は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧しているので、実線で示す蓄圧勾配はほぼ一定である。これに対して、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を開始することを想定すると、時間t1が経過すると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときの勾配(破線)が最大となる。また、図11には、時間t1が経過したときの消費エネルギーGene が実線で示され、時間t2が経過したときの消費エネルギーEOPene が破線で示されている。
【0088】
そして、ステップS44で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を継続し(ステップS45)、この制御ルーチンを終了する。つまり、アイドリングストップ制御は実行されない。これに対して、ステップS44で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を止め、かつ、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。つまり、アイドリングストップ制御が実行される。なお、ステップS41またはステップS42またはステップS43のいずれかで否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS41,S42,S43のうちの少なくとも1つのステップで否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
【0089】
このように、図9のフローチャートを実行すると、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御で消費される予想エネルギーと、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御で消費される予想エネルギーとを比較し、消費エネルギーが少ない方(エネルギー効率が相対的によい方)の制御を選択することができる。したがって、エンジン10の燃費が向上する。
【0090】
ここで、図9に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS41,S42が、この発明の停止条件判断手段に相当し、ステップS43が、この発明の蓄圧状態判断手段に相当し、ステップS44が、この発明の消費エネルギー予測手段および比較手段に相当し、ステップS45が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、消費エネルギーGene が、この発明の第1消費エネルギーに相当し、消費エネルギーEOPene が、この発明の第2消費エネエルギーに相当する。さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、駆動輪36が、この発明の駆動輪に相当し、無段変速機1が、この発明の無段変速機に相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当する。
【0091】
なお、図2に示された車両においては、動力伝達装置の一例として無段変速機が挙げられているが、前後進切換装置のトルク容量を制御する油圧室にオイルポンプの油圧を供給するように構成された油圧制御装置においても、各制御例を実行可能である。また、無段変速機としてベルト型無段変速機が挙げられているが、トロイダル型無段変速機を備えた車両においても、各制御例を実行可能である。このトロイダル型無段変速機においては、パワーローラがトラニオンにより支持されており、油圧室の油圧を制御することにより、パワーローラの傾転角度が制御されて、変速比が制御される。また、トロイダル型無段変速機においては、入力ディスクおよび出力ディスクの回転軸線に沿った方向に挟圧力を与える油圧室が設けられており、その油圧室に供給される油圧を制御することにより、トルク容量が制御される。さらに、この発明の動力伝達装置には、変速比を段階的に変更可能な有段変速機が含まれる。この有段変速機には、常時噛み合い式変速機、選択歯車式変速機、遊星歯車式変速機などが含まれる。いずれの構成の有段変速機においても、油圧室の油圧を制御することにより変速比が変更されるように構成されている油圧制御式変速機であれば、各制御例を実行可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…無段変速機、 4A,5A…油圧室、 9…被潤滑部、 10…エンジン、 11…オイルポンプ、 12…調圧弁、 14…アキュムレータ、 28…電動オイルポンプ、 29…電動モータ、 31…発電機、 36…駆動輪。
【技術分野】
【0001】
この発明は、エンジンの動力でオイルポンプを駆動し、そのオイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧することができるように構成された油圧制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動力でオイルポンプを駆動し、そのオイルポンプの油圧を油圧室に供給することにより、動力伝達装置の動力伝達状態を制御することができるように構成された油圧制御装置が知られており、その一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1には、エンジンの出力軸にトルクコンバータを介在させてベルト型無段変速機を連結した車両が記載されている。このベルト型無段変速機は駆動プーリおよび従動プーリを有しており、その駆動プーリおよび従動プーリにVベルトが巻き掛けられている。また、駆動プーリには駆動プーリシリンダ室が設けられ、従動プーリには従動プーリシリンダ室が設けられている。このベルト型無段変速機の変速制御をおこなう油圧制御装置は、高圧用オイルポンプを有している。この高圧用オイルポンプは電磁ポンプであり、その高圧用オイルポンプから吐出された油圧が、第1レギュレータ弁により調圧されて駆動プーリシリンダ室および従動プーリシリンダ室に供給されるように構成されている。また、高圧用オイルポンプから第1レギュレータ弁に至る経路には、アキュムレータが設けられている。一方、エンジンにより駆動される低圧用オイルポンプが設けられており、その低圧用オイルポンプの吐出油圧が、第2レギュレータ弁により調圧されてトルクコンバータに供給されるように構成されている。
【0003】
この特許文献1に記載された油圧制御装置においては、高圧用オイルポンプに接続された油圧回路と、低圧用オイルポンプに接続された油圧回路とが、それぞれ独立して設けられているため、1つの高圧・大流量型のオイルポンプを用いる場合と比較してオイルポンプを小型化して駆動トルクを低減することができるとされている。なお、この他に車両の動力伝達装置を制御するために用いられる油圧制御装置は、特許文献2ないし5にも記載されている。
【0004】
このうち、特許文献4に記載された車両の油圧制御装置は、自動変速機の制御に用いられる油圧制御装置であり、エンジンの動力により駆動される機械式オイルポンプと、電動モータの動力により駆動される電動オイルポンプとを有している。この機械式オイルポンプの吐出口および電動オイルポンプの吐出口が、切り換え用のチェックボール機構、および圧力制御弁を介在させて、変速機の変速を制御する摩擦係合装置の油圧室に接続されている。また、チェックボール機構から圧力制御弁に至る経路には、アキュムレータコントロールソレノイドを介在させてアキュムレータが接続されている。このためアキュムレータコントロールソレノイドのポートが開放されているときに、一方のオイルポンプから作動油の供給があると、その圧力によりチェックボール機構が他方のオイルポンプからの油圧の供給孔を塞ぐように動作する。これにより、いずれか一方のオイルポンプから吐出されたオイルをアキュムレータに蓄圧することができるものとされている。この特許文献4においては、例えばエンジンの停止時には機械式オイルポンプが停止するため、電動オイルポンプを駆動して、アキュムレータに油圧を蓄圧することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−134368号公報
【特許文献2】欧州特許出願公開第985855号明細書
【特許文献3】特開2009−133428号公報
【特許文献4】特開2002−130449号公報
【特許文献5】特開2004−106782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献4に記載されているように、機械式オイルポンプおよび電動オイルポンプを備えた油圧制御装置においては、いずれか一方の油圧をアキュムレータに蓄圧することができる。一方、機械式オイルポンプと電動オイルポンプとを比べると、電動オイルポンプは電動モータを駆動するときの電損があるため、機械式オイルポンプに比べて効率が低く、なるべくなら機械式オイルポンプを使用してアキュムレータに蓄圧をおこなうことが望ましい。しかしながら、特許文献2に記載されているのは、エンジンの停止時に代替的に電動オイルポンプを用いるという駆動形態であり、いずれのオイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧するとその効率が相対的に高くなるのかについての検討がなされておらず、その点で改善の余地が残されていた。
【0007】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、オイルポンプから吐出された油圧をアキュムレータに蓄圧する際の効率を相対的に高くすることのできる油圧制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段と、この判断手段により前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないと判断されたときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の発明は、車両の駆動輪に連結されたエンジンと、このエンジンと共に回転して駆動されて油圧を発生するオイルポンプと、このオイルポンプから吐出された油圧を蓄圧し、かつ、蓄圧された圧力を放出することのできるアキュムレータと、前記車両に制動力を与えるブレーキ装置とを備えた油圧制御装置において、前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立しているか否かを判断する制動条件判断手段と、前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立していると判断された場合は、前記車両の惰力走行による運動エネルギーを前記エンジンに伝達して前記オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求めるエンジンブレーキ力算出手段と、前記ブレーキ装置で前記車両に与える目標制動力から、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、前記ブレーキ装置で車両に与える最終的な制動力を制御する制動力制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の発明は、車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置の入力回転数と出力回転数との間の変速比を相対的に大きくする制御、または前記動力伝達装置に入力されるトルクを相対的に高くする制御をおこなうモードが選択されているか否かを判断するモード判断手段と、前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達し、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、前記モード選択手段により前記モードが選択されていると判断され、かつ、アキュムレータ前記条件判断手段により前記蓄圧条件が成立していると判断されたときに、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、前記モードに対応させて予め定められた所定の上昇速度となるように、前記エンジントルクを制御するエンジントルク制御手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4の発明は、動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記動力伝達装置で動力伝達がおこなわれる際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルが供給されて潤滑または冷却される被潤滑部と、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記被潤滑部に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁とが設けられており、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する条件判断手段と、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立していないときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0012】
請求項5の発明は、車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立したか否かを判断するエンジン停止条件判断手段と、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、かつ、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているか否かを判断する蓄圧状態判断手段と、前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立していると判断され、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれていると判断されたときに、前記エンジンにより前記第1オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときの第1消費エネルギーと、前記第2オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとを予測する消費エネルギー予測手段と、前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを比較する比較手段と、前記第1消費エネルギーが前記第2消費エネルギー未満であると判断された場合は、前記エンジンを停止させる条件が成立していても前記エンジンを停止させずに前記エンジンの運転を継続し、そのエンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの構成に加えて、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが供給される低油圧供給部が設けられており、この低油圧供給部は、前記油圧室よりも相対的に低い油圧に制御されるように構成されており、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧室に供給する経路に逆止弁が設けられており、この逆止弁は前記エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが前記アキュムレータに供給される向きで開放され、かつ、前記アキュムレータから前記エンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0014】
請求項7の発明は、請求項2の構成に加えて、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記オイルポンプよりも容量が大きい電動オイルポンプが設けられており、前記オイルポンプまたは電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することができるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0015】
請求項8の発明は、請求項1ないし7のいずれかの構成に加えて、前記エンジンの動力により発電をおこなう発電機が設けられており、その発電機で発生した電力により前記電動モータが駆動されるように構成されていることを特徴とする油圧制御装置である。
【0016】
請求項9の発明は、請求項1の構成に加えて、前記動力伝達装置には入力回転数と出力回転数との間の変速比を無段階に変更可能な無段変速機が含まれており、前記判断手段は、前記無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する手段を含むことを特徴とする油圧制御装置である。
【0017】
請求項10の発明は、請求項4の構成に加えて、前記エンジンが車両に搭載され、かつ、前記エンジンの動力が前記車両の駆動輪に伝達されるように構成されており、前記エンジンの動力が前記駆動輪に伝達されているときに前記駆動輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段を備え、前記条件判断手段は、前記駆動輪がスリップしていると判断されたときに、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する手段を含むことを特徴とする油圧制御装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、エンジンの動力で駆動される第1オイルポンプ、または電動モータにより駆動される第2オイルポンプから吐出された油圧を油圧室に供給する前に、アキュムレータに蓄圧することができる。また、動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないときには、容量が相対的に小さい第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧することができる。したがって、アキュムレータに油圧を蓄圧する効率を相対的に高くすることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生し、、かつ、ブレーキ装置で車両に制動力を与える条件が成立している場合は、車両の惰力走行による運動エネルギーをエンジンに伝達して第1オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、第1オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求める。ついで、ブレーキ装置で車両に与える目標制動力から、オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、車両に与えるブレーキ装置の最終的な制動力を制御することができる。したがって、車両の惰力走行中に、車両に与えられる総合的な制動力が過度に強められることを抑制でき、運転者が違和感を持つことを回避できる。
【0020】
請求項3の発明によれば、エンジンの動力を駆動輪に伝達し、かつ、エンジンの動力で第1オイルポンプを駆動するとともに、その第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する制御をおこなうにあたり、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、モードに対応して予め定められている所定の上昇速度に沿ったものとなるように、エンジントルクを制御することができる。したがって、必要以上にエンジントルクが上昇することを回避でき、アキュムレータに油圧を蓄圧する効率を相対的に高くすることができるとともに、エンジンの燃費が向上し、かつ、車両の減速時の違和感を低減することができる。
【0021】
請求項4の発明によれば、第1オイルポンプから吐出されたオイルを被潤滑部に供給する必要がないときに、第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう。したがって、被潤滑部における冷却不足または潤滑不足を回避することができる。
【0022】
請求項5の発明によれば、車両が停止しているときにエンジンを停止させる条件が成立し、かつ、エンジンの動力で第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧をアキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときに、第1オイルポンプを駆動してアキュムレータに蓄圧するときの第1消費エネルギーと、第2オイルポンプを駆動してアキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとが予測される。そして、第1消費エネルギーと第2消費エネルギーとを比較し、第1消費エネルギーが第2消費エネルギー未満である場合は、エンジンを停止させる条件が成立していてもエンジンを運転させておき、そのエンジンの動力で第1オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧する。したがって、消費エネルギーが相対的に少ない状態で、アキュムレータに油圧を蓄圧することができ効率が向上する。
【0023】
請求項6の発明によれば、請求項1ないし5のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルは、油圧室または低油圧供給部に供給される。また、エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルがアキュムレータに供給される向きで逆止弁が開放され、かつ、アキュムレータからエンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは逆止弁が閉じられる。
【0024】
請求項7の発明によれば、請求項2の発明と同様の効果を得られる他に、エンジンにより駆動されるオイルポンプ、または電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧をアキュムレータに選択的に蓄圧することができる。
【0025】
請求項8の発明によれば、請求項1ないし7のいずれかの発明と同様の効果を得られる他に、エンジンの動力により発電機で発電をおこない、その電力により電動モータを駆動することができる。
【0026】
請求項9の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断することができる。
【0027】
請求項10の発明によれば、請求項4の発明と同様の効果を得られる他に、構成に加えて、エンジンの動力が駆動輪に伝達されて駆動輪がスリップしているときに、被潤滑部にオイルを供給する必要があるか否かを判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第1制御例を示すフローチャートである。
【図2】この発明の油圧制御装置を有する車両の構成を示す模式図である。
【図3】図1のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図4】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第2制御例を示すフローチャートである。
【図5】図4のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図6】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第3制御例を示すフローチャートである。
【図7】図6のフローチャートで用いるマップの一例である。
【図8】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第4制御例を示すフローチャートである。
【図9】この発明の油圧制御装置でおこなわれる第5制御例を示すフローチャートである。
【図10】図9のフローチャートでおこなう制御を表す線図である。
【図11】図9のフローチャートでおこなう他の制御を表す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
つぎに、この発明を具体例を参照して説明する。この発明において、第1オイルポンプおよび第2オイルポンプは、オイルの吐出原理に相違があってもなくてもよく、動力源が異なっている。なお、第1オイルポンプまたは第2オイルポンプとしては、ベーンポンプ、ギヤポンプ、ピストンポンプなどのいずれを用いてもよい。
【0030】
図2には、車両に搭載されている無段変速機1を含む動力伝達装置を対象とした油圧制御装置32に、この発明を適用した例を模式的に示してある。その無段変速機1は、従来知られているベルト式のものであり、駆動プーリ2と従動プーリ3とにベルト35を巻き掛けてこれらのプーリ2,3の間でトルクを伝達し、かつ各プーリ2,3に対するベルト35の巻き掛け半径を変化させることにより、入力回転数と出力回転数との間の変速比を、無段階(連続的)に変化させることができるように構成されている。より具体的に説明すると、各プーリ2,3は、固定シーブとその固定シーブに対して接近・離隔するように配置された可動シーブとを備え、それらの固定シーブと可動シーブとの間にV溝状のベルト巻き掛け溝が形成されるように構成されている。そして、各プーリ2,3にはそれぞれの可動シーブをその軸線の方向に前後動させるための油圧アクチュエータ4,5が設けられている。それらの油圧アクチュエータ4,5のうちのいずれか一方、例えば従動プーリ3における油圧アクチュエータ5の油圧室5Aには、従動プーリ3がベルト35を挟み付ける挟圧力を発生させる油圧が供給され、また前記油圧アクチュエータ4,5のうちの他方、例えば駆動プーリ2における油圧アクチュエータ4の油圧室4Aには、ベルト35の巻き掛け半径を変化させて変速を行うための油圧が供給されている。
【0031】
上記の無段変速機1の入力側もしくは出力側に、駆動トルクの伝達および遮断を行うためのC1クラッチ6が設けられている。このC1クラッチ6は、供給される油圧に応じて伝達トルク容量が設定されるクラッチであり、例えば湿式の多板クラッチによって構成されている。さらに、エンジン10から駆動輪36に至る経路には前後進切換装置(図示せず)が設けられている。この前後進切換装置は、例えば、遊星歯車機構および摩擦係合装置により構成されており、その摩擦係合装置の係合および解放を切り替えることにより、回転要素の回転方向を正逆に切り換える装置である。この摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室(図示せず)が設けられており、その油圧室に前記油路15のオイルが供給されるように構成されている。上記の無段変速機1およびC1クラッチ6ならびに前後進切換装置は、車両の走行のためのトルクを伝達するものであり、しかも油圧に応じた伝達トルク容量に設定されるものであるから、前記各油圧アクチュエータ4,5およびC1クラッチ6の油圧室、前後進切換装置の摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室には、トルクに応じた高い油圧を供給することになり、したがって、油圧室4A,5A、C1クラッチ6の油圧室(図示せず)、前後進切換装置の摩擦係合装置の係合および解放を制御する油圧室が、高油圧供給部である。
【0032】
他方、上記の無段変速機1を含む動力伝達装置には、ロックアップクラッチ(図示せず)を備えたトルクコンバータ(トルコン)7が設けられている。そのトルクコンバータ7の構成は、従来知られているものと同様であり、ポンプインペラとタービンランナとの回転数差が大きい(速度比が所定値より小さい)コンバータ領域ではトルクの増幅作用が生じ、またその回転数差が小さい(速度比が所定値より大きい)カップリングレンジでは、トルクの増幅作用のない流体継手として機能するように構成されている。そして、ロックアップクラッチはその入力側部材であるポンプインペラに一体のフロントカバーとタービンランナに一体のハブとを摩擦板を介して直接連結するように構成されている。その摩擦板をフロントカバーに接触させ、また離隔させるためのロックアップ油圧を制御するための制御弁(L/Uコントロールバルブ)8が設けられている。この制御弁8はロックアップクラッチに対する油圧の供給方向やその圧力を制御するためのものであり、したがって制御弁8は相対的に低い油圧で動作するようになっている。
【0033】
前記のように、エンジン10から駆動輪36に至る動力伝達装置には、相互に摩擦接触する箇所、軸受、ギヤ同士の噛み合い部分などのように、動力伝達にあたり摺動、発熱、摩耗が発生する被潤滑部9が存在し、その被潤滑部9にはオイルが供給されて冷却および潤滑される。この被潤滑部9は、低圧であっても必要量のオイル(潤滑油)が供給されればよいので、その被潤滑部9や前記制御弁8あるいはトルクコンバータ7を低油圧供給部と呼ぶ。
【0034】
つぎに、上記の高油圧供給部や低油圧供給部に対して油圧を給排するための構成について説明する。図2に示す例は、車両に搭載されているエンジン10によって駆動されるオイルポンプ(機械式オイルポンプ)11を油圧源とする例である。そのエンジン10は、ガソリンエンジンなどの燃料を燃焼させて動力を出力する熱機関であり、この発明ではそのエンジン10と併せてモータ・ジェネレータなどの電動機を設けてもよい。このエンジン10から駆動輪36に至る動力伝達経路に、前記無段変速機1、C1クラッチ6、トルクコンバータ7などが配置されている。
【0035】
前記オイルポンプ11はオイルパン33からオイルを吸入し、かつ、油路34にオイルを吐出するように構成されている。この油路34の油圧を所定の圧力に調圧する調圧弁12が設けられている。この調圧弁12は、所定方向に往復動するスプールと、油路34と被潤滑部9とを接続するポート12Aと、油路34とオイルパン33とを接続するポート12Bと、スプールを一方向に押圧するバネと、油路34の油圧が作用し、かつ、バネとは逆方向にスプールを押圧するフィードバックポートと、バネと同方向にスプールを押圧する磁気吸引力を生じる電磁コイルとを有している。つまり、調圧弁12はソレノイドバルブである。この調圧弁12は、油路34の油圧が相対的に低い場合は、バネの力でスプールが押圧されてポート12A,12Bが閉じられており、油路34のオイルは被潤滑部9およびオイルパン33へは排出されない。
【0036】
そして、油路34の油圧が上昇すると、フィードバックポートの油圧によりスプールがバネの力に抗して移動してポート12Aが開き、油路34のオイルが被潤滑部9に排出される。さらに油路34の油圧が上昇すると、スプールがさらに移動して、ポート12A,12Bが共に開き、油路34のオイルが被潤滑部9およびオイルパン33に排出されて、油路34の油圧が制御される。また、調圧弁12においては、電磁コイルへ供給される電流値を制御することにより、スプールがバネの力および磁気吸引力に抗して移動することとなる油路34の油圧を調整することができる。具体的には、電磁コイルへの通電により形成される磁気吸引力を相対的に強くするほど、油路34の油圧が相対的に高くなるまで、油路34のオイルは被潤滑部9およびオイルパン33には排出されない。このようにして、油路34の油圧が制御され、その油圧が制御弁8を経由してトルクコンバータ7に供給される。
【0037】
一方、油路34は逆止弁13および油路15を介してアキュムレータ(蓄圧器)14に連通されている。その逆止弁13は、オイルポンプ11からアキュムレータ14に向けて圧油が流れる場合に開き、これとは反対方向の圧油の流れを阻止するように閉弁する一方向弁である。また、アキュムレータ14は、蓄圧室に弾性体で押圧されたピストンや弾性膨張体などを容器内に収容し、その弾性力以上の圧力で油圧を蓄えるように構成されている。そして、このアキュムレータ14から高油圧供給部に圧油を供給するように構成されている。すなわち、前述した駆動プーリ2におけるアクチュエータ4と、従動プーリ3におけるアクチュエータ5と、C1クラッチ6とが、アキュムレータ14に連通されている。
【0038】
さらに、図2に示す油圧制御装置32においては、エンジン10により駆動されるオイルポンプ11の他に、電動オイルポンプ28が設けられている。この電動オイルポンプ28は、電動モータ29によって駆動されてオイルパン33からオイルを吸い込み、かつ、油路15へオイルを吐出するポンプである。オイルポンプ11と電動オイルポンプ28とを比べると、オイルポンプ11の容量が電動オイルポンプ28の容量よりも小さく構成されている。このため、図2に示された油圧制御装置32においては、オイルポンプ11から吐出されたオイルの油圧、および電動オイルポンプ28から吐出されたオイルの油圧をアキュムレータ14に蓄えることができる。また、エンジン1によって駆動されて発電する発電機31が設けられており、この発電機31は電動モータ29に接続されている。発電機31は、直流発電機または交流発電機の何れでもよい。したがって、エンジン10の動力で発電機31が発電をおこない、その電力で電動モータ29を駆動することができる。
【0039】
前記アクチュエータ4の油圧室4Aには油路16が接続されており、油路15と油路16とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSP1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSP1を電気的に制御してオイルの供給経路を開閉することにより、アクチュエータ4に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。前記アクチュエータ5の油圧室5Aには油路18が接続されており、油路15と油路18とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSS1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSS1を電気的に制御して、油路15のオイルをアクチュエータ5に供給する経路を開閉することにより、アクチュエータ5に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。さらに、C1クラッチ6の係合および解放を制御する油圧室には油路19が接続されており、油路15と油路19とを接続および遮断する供給側電磁開閉弁DSC1が設けられている。この供給側電磁開閉弁DSC1を電気的に制御してオイルの供給経路を開閉することにより、C1クラッチ6に対して圧油を供給し、また圧油の供給を遮断するように構成されている。
【0040】
また、アクチュエータ4、5の油圧室、およびC1クラッチ6の油圧室をオイルパン33に連通させる油路17が設けられており、その油路17と油路16とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSP2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSP2を電気的に制御して、アクチュエータ4のオイルをオイルパン33に排出する経路を開閉することにより、アクチュエータ4の油圧室4Aからオイルパン33に圧油を排出し、また圧油の排出を遮断できるように構成されている。これと同様に、油路18と油路17とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSS2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSS2を電気的に制御して、アクチュエータ5の油圧室5Aからオイルパン33にオイルを排出する経路を開閉することにより、アクチュエータ5からオイルパン33へ圧油を排出し、また圧油の排出を遮断するように構成されている。
【0041】
さらに、油路19と油路17とを接続および遮断する排出側電磁開閉弁DSC2が設けられている。この排出側電磁開閉弁DSC2を電気的に制御して、C1クラッチ6の油圧室のオイルをオイルパン33に排出する経路を開閉することにより、C1クラッチ6から圧油をオイルパン33へ排出し、また圧油の排出を遮断できるように構成されている。これらの各電磁開閉弁DSP1,DSS1,DSC1,DSP2,DSS2,DSC2としては、閉弁状態においても油圧の漏れが生じないように構成されたバルブ、例えば、ポペット弁や逆止弁などを用いることができる。
【0042】
一方、エンジン10および無段変速機1ならびに油圧制御装置32を制御する電子制御装置37が設けられており、電子制御装置37には車速、アクセル開度、エンジン回転数、ブレーキペダルの操作状態、アキュムレータ14の内圧、無段変速機1の入力回転数および出力回転数、モードスイッチの操作状態、マニュアルシフト装置の操作状態、車輪の回転速度などを検知するセンサやスイッチの信号が入力される。また、電子制御装置37には、エンジン10、無段変速機1、油圧制御装置32、C1クラッチ6を制御するデータやプログラムが記憶されている。さらに、ブレーキペダルが踏み込まれたときに車輪に制動力を与えるブレーキ装置38が設けられている。このブレーキ装置38は、車輪に設けられたホイールシリンダを有しており、そのホイールシリンダの油圧によりブレーキパッドを回転部材に押し付けて、摩擦力により車輪に制動力を与えるように構成されている。そして、ブレーキペダルの踏み込み量、および電子制御装置37に入力される信号、電子制御装置37に記憶されているデータに基づいて、ブレーキ装置38のホイールシリンダの油圧を制御することができるように構成されている。
【0043】
上述した油圧制御装置32の作用について説明する。オイルポンプ11はエンジン10に連結されているので、エンジン10が回転している場合にはオイルポンプ11も同様に回転し、油圧を発生する。そのエンジン10の回転は、エンジン10に燃料が供給されて自律回転している場合と、燃料の供給および点火を止めて車両の走行慣性力で強制的に回転させられている場合のいずれでも生じる。すなわち、エンジン10の駆動時とエンジンブレーキ状態の被駆動時とのいずれであってもオイルポンプ11が回転して油圧を発生する。その圧力および油量は、オイルポンプ11の仕様、回転数ならびにトルクに応じたものとなる。こうして発生した油圧は、一方で、前記調圧弁12によって設計上、予め定めた低油圧に調圧された後、前記制御弁8を介してトルクコンバータ7に供給され、また被潤滑部9に供給される。
【0044】
他方、オイルポンプ11はエンジン10の動作状態に応じた油圧を発生するので、急加速時や大きいエンジンブレーキ力を生じさせている場合などにおいては、オイルポンプ11の吐出圧が高くなる。このような場合に生じた高油圧は、逆止弁13を押し開いてアキュムレータ14に供給される。また、逆止弁13は、オイルポンプ11の吐出圧がアキュムレータ14での油圧より低い場合に閉じるから、アキュムレータ14に供給された高油圧はここに蓄えられることになる。なお、アキュムレータ14に蓄えられる油圧は、無段変速機1で必要とする最高圧力より高い油圧である。
【0045】
無段変速機1のトルク容量はベルト35の滑りを防止できるように制御され、これは従動プーリ3のアクチュエータ5に供給される油圧に応じた挟圧力によって設定される。より具体的に説明すると、アクセル開度やスロットル開度などに基づいて要求駆動力が求められ、この要求駆動力に基づいて目標エンジントルクが求められており、無段変速機1に入力されるトルクが上昇する場合は、油圧室5Aの油圧を上昇させる制御がおこなわれる。図2に示す油圧制御装置32では、従動プーリ3のアクチュエータ5に連通する供給側電磁開閉弁DSS1を開弁し、排出側電磁開閉弁DSS2を閉じて、アキュムレータ14から油圧室5Aに油圧を供給することにより、油圧室5Aの油圧を上昇させることができる。このようにして、無段変速機1のトルク容量が上昇される。
【0046】
これに対して、無段変速機1に入力されるトルクが低下する場合は、油圧室5Aの油圧を低下させる制御がおこなわれる。図2に示す油圧制御装置32では、従動プーリ3のアクチュエータ5に連通する供給側電磁開閉弁DSS1を閉じ、排出側電磁開閉弁DSS2を開き、油圧室5Aからオイルを排出することにより、油圧室5Aの油圧を低下させることができる。このようにして、無段変速機1のトルク容量が低下される。なお、無段変速機1に入力されるトルクが一定である場合は、供給側電磁開閉弁DSS1を閉じ、かつ、排出側電磁開閉弁DSS2を閉じて、油圧室5Aにオイルを閉じこめて、トルク容量を一定に制御する。
【0047】
つぎに、無段変速機1における変速比の制御について説明する。まず、車速、アクセル開度に基づいて車両における要求駆動力が求められ、その要求駆動力に基づいて目標エンジン出力が求められる。さらに、実際のエンジン出力を目標エンジン出力に基づいて制御するにあたり、エンジン10の運転状態が最適燃費線に沿ったものとなるように、目標エンジン回転数および目標エンジン出力が求められる。そして、実際のエンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、無段変速機1の変速比が制御される。この無段変速機1の変速比の制御は、油圧室4Aに対して圧油を給排することによりおこなわれる。具体的には、供給側電磁開閉弁DSP1および排出側電磁開閉弁DSP2を開閉することによりおこなわれる。
【0048】
例えば、無段変速機1の変速比を相対的に小さくする制御(アップシフト)をおこなうために、駆動プーリ2の溝幅を狭くする(ベルト35の巻き掛け半径を大きくする)場合には、供給側電磁開閉弁DSP1が開制御されてアクチュエータ4に対して圧油が供給される。また反対に、無段変速機1の変速比を相対的に大きくする制御(ダウンシフト)をおこなうために、駆動プーリ2の溝幅を広くする(ベルト35の巻き掛け半径を小さくする)場合には、排出側電磁開閉弁DSP2が開制御されてアクチュエータ4からオイルがオイルパン33へ排出される。なお、無段変速機1の変速比を固定する場合は、供給側電磁開閉弁DSP1および排出側電磁開閉弁DSP2が共に閉状態に制御され、油圧室4Aにオイルが閉じ込められる。
【0049】
このように、基本的にはエンジン出力が最適燃費線に沿ったものとなるように、無段変速機1の変速比が制御される。一方、運転者により操作されるマニュアルシフト装置が設けられており、そのマニュアルシフト装置が操作された場合は、無段変速機1の変速比をステップ的に変更(アップシフトおよびダウンシフト)する制御をおこなうことができるように構成されている。このマニュアルダウンシフト装置が運転者により操作された場合は、最適燃費線に基づく無段変速機1の変速比の制御はおこなわれず、無段変速機1の変速比は、マニュアルシフト装置の操作により選択された変速比に固定される。
【0050】
そして、アクセル開度および車速がほぼ一定に維持される定常走行状態では、無段変速機1の変速比、および従動プーリ3からベルト35に与えられる挟圧力を一定に維持することになる。その場合、無段変速機1についての各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2を閉状態に制御して、各アクチュエータ4,5の油圧室に圧油を封じ込める。この状態で、各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2からの油圧の漏洩は生じないから、アキュムレータ14に蓄えた油圧が低下したり、あるいは各アクチュエータ4,5の圧力を維持するべくアキュムレータ14から油圧を継続して供給したりする必要がなく、したがって油圧の漏洩によるエネルギ損失が生じない。
【0051】
さらに、車両が走行する場合、C1クラッチ6を係合させて、エンジン10のトルクを駆動輪36に伝達する。したがってC1クラッチ6は走行に要する大きいトルクを伝達することになるので、車両が走行する場合、アキュムレータ14からC1クラッチ6に対して油圧を供給する。すなわち、車両が発進する場合は、供給側電磁開閉弁DSC1に通電してこれを開制御し、アキュムレータ14からC1クラッチ6に対して油圧を供給することによりC1クラッチ6を係合させる。これに対して、C1クラッチ6を解放する場合には、排出側電磁開閉弁DSC2を開に制御してC1クラッチ6から排圧する。
【0052】
そして、これらC1クラッチ6についての各電磁開閉弁DSC1,DSC2も、前述した無段変速機1についての各電磁開閉弁DSP1,DSP2,DSS1,DSS2と同様に、油圧の実質的な漏洩の生じないものであるから、アキュムレータ14に蓄えた油圧を消費することなくC1クラッチ6に油圧を封じ込めて係合状態に維持することができるうえに、油圧の漏洩によるエネルギ損失を防止もしくは抑制することができる。
【0053】
ところで、図2に示された車両においては、アキュムレータ14に蓄える油圧を、電動オイルポンプ28およびオイルポンプ11の両方で発生することができるように構成されている。しかし、電動オイルポンプ28は電損により効率が低いため、電動オイルポンプ28で発生した油圧をアキュムレータ14に蓄圧すると、電動モータ29に供給する電力を発電機31で発電しているため、エンジン10の燃費が一時的に低下する。そこで、なるべくオイルポンプ11で発生した油圧をアキュムレータ14に蓄圧するようにすることが望ましい。以下、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する制御例を順次説明する。
【0054】
(第1制御例)
前記アキュムレータ14に油圧を蓄圧する場合に実行される第1制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。この第1制御例は、請求項1および請求項9の発明に対応するものである。この図1のフローチャートは、アクセルペダルが踏み込まれており、エンジン10のトルクが駆動輪36に伝達されて駆動力が発生している場合に実行される。まず、無段変速機1の変速比を固定する(一定とする)制御が実行されているか否かが判断される(ステップS1)。また、マニュアルシフト装置の操作に基づいて、無段変速機1の変速比を制御中であるか否かが判断される(ステップS2)。
【0055】
さらに、所定時間内におけるエンジントルクの変動量が所定範囲内であるか否か、または所定時間内における油圧室5Aの油圧変動が所定範囲内であるか否かが判断される(ステップS3)。このステップS3は、油圧室5Aのオイル量を増加する必要があるかどうかを判断するステップである。例えば、エンジントルクの変動幅が所定範囲内であれば、油圧室5Aのオイル量を増加する必要はないことになる。また、オイル漏れなどによる油圧室5Aの油圧変動が所定範囲内であれば、油圧室5Aのオイル量を増加する必要はないことになる。このステップS1,S2,S3の判断は全て同時におこなってもよいし、いずれかのステップで肯定判断されたときに他のステップをおこなってもよい。
【0056】
上記のステップS1,S2,S3の全部で肯定的に判断された場合は、「無段変速機1の変速比が固定されている状況で、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件」が成立したか否かが判断される(ステップS4)。このステップS4の判断は、例えば図3のマップを用いておこなわれる。図3のマップにはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する蓄圧ラインが示されている。また、図3にはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する制御の基準とし、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第1蓄圧ライン(実線)と、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第2蓄圧ライン(破線)とが示されている。第1蓄圧ラインは第2蓄圧ラインよりも高圧である。そして、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になり、かつ、第2蓄圧ラインを超えているときは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。また、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下になると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。なお、アキュムレータ14内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はない。
【0057】
上記のステップS4で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11を使用してアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこない(ステップS5)、この制御ルーチンを終了する。このステップS5の制御を具体的に説明すると、調圧弁12の電磁コイルに供給される電流値を制御して磁気吸引力を相対的に強くする。すると、油路34の油圧が相対的に高圧になってもポート12A,12Bが共に遮断された状態に維持されて、油路34の油圧が油路15の油圧よりも高圧になり、逆止弁13が開いてオイルポンプ11の油圧がアキュムレータ14に蓄圧される。
【0058】
前記ステップS4で否定的に判断された場合、例えば、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下であるときは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御がおこなわれ、この制御ルーチンを終了する。このように、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する場合は、調圧弁12の電磁コイルにより形成される磁気吸引力でが相対的に弱められる。すると、油路34の油圧が上昇したときに、フィードバックポートの油圧でスプールが移動し、ポート12A,12Bの少なくとも一方が開き、油路34のオイルが被潤滑部9またはオイルパン33の少なくとも一方へ排出されて、油路34の油圧の上昇が抑制される。したがって、逆止弁13が閉じた状態になり、オイルポンプ11の油圧がアキュムレータ14に蓄圧されることはなく、電動オイルポンプ28の油圧がアキュムレータ14に蓄圧される。なお、ステップS4の判断時点で、アキュムレータ14内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はなく、ステップS4で否定的に判断されてこの制御ルーチンを終了する。
【0059】
なお、ステップ1で否定的に判断されるということは、油圧室4Aに供給するオイル量が変化するため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなうことなくこの制御ルーチンを終了する。さらに、ステップ2で否定的に判断されるということは、再度マニュアルシフト装置が操作されて油圧室4Aに供給するオイル量が変化する可能性があるため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなうことなくこの制御ルーチンを終了する。さらに、ステップ3で否定的に判断された場合は、油圧室5Aのオイル量を増加する必要があり、アキュムレータ14の内圧が変化する可能性があるため、アキュムレータ14への蓄圧をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。
【0060】
このように、図1に示された制御例においては、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧することができ、電動オイルポンプ28を駆動してアキュムレータ14に蓄圧するよりも効率が良くなり、エンジン10の燃費が向上する。ここで、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧することができ、電動オイルポンプ28を駆動してアキュムレータ14に蓄圧するよりも効率が良くなる理由は、オイルポンプ11の容量がオイルポンプ28の容量よりも小さく、かつ、電動モータ29に電損があるからである。
【0061】
ここで、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1,S2,S3が、この発明の判断手段に相当し、ステップS4,S5が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、無段変速機1が、この発明の動力伝達装置に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当する。なお、上記の説明においては、ステップS1において、無段変速機1の変速比を固定する(一定とする)制御が実行されているか否かが判断されているが、その判断に代えて、無段変速機1で消費されるオイルの流量が変化するか否かを、ステップS1で判断してもよい。例えば、車両が定常走行を継続しているときには、無段変速機1で消費されるオイルの流量が変化しないため、そのステップS1で肯定的に判断される。
【0062】
(第2制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第2制御例を図4のフローチャートに基づいて説明する。この第2制御例は請求項2の発明に対応するものである。この第2制御例は電動オイルポンプ28の有無に関わりなく実行可能である。まず、ブレーキペダルが踏み込まれているか否かが判断される(ステップS11)。このステップS11で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立しているか否かが判断される(ステップS12)。例えば、アキュムレータ14の内圧が、予め定められた基準圧以下であるときには、このステップS12で肯定的に判断されてステップS13に進む。このステップS13においては、エンジン10によりオイルポンプ11を駆動して、そのオイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなうとともに、ブレーキ装置38で発生する目標制動力を減少させる制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御は、図1のステップS5の制御と同じである。
【0063】
前記のようにブレーキペダルが踏み込まれているということは、車両が惰力走行状態にあり、その車両の惰力走行にともなう運動エネルギーでエンジンブレーキ力が発生している。また、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいて要求制動力が求められ、その要求制動力に基づいて、ブレーキ装置で発生する目標制動力が求められる。さらに、目標制動力に基づいて、ブレーキ装置38のホイールシリンダの目標油圧が求められる。ここで、オイルポンプ11を駆動するエンジン10は、車両の運動エネルギーにより回転させられているので、オイルポンプ11を駆動している分、エンジンブレーキ力が強められることになる。そこで、要求制動力に基づいてブレーキ装置で発生する目標制動力を求めるにあたり、オイルポンプ11の駆動により強められるエンジンブレーキ分の制動力を、目標制動力から差し引く制御をおこなう。これが、「ブレーキ装置38で発生する目標制動力を減少させる制御」の意味である。
【0064】
このステップS13の制御においては図5のマップを用いることができる。図5のマップには、横軸にオイルポンプ11の駆動によるロストルクが示され、縦軸にブレーキ装置38で発生する目標制動力の減少分の値が示されている。図5のマップからは、オイルポンプ11の駆動によるロストルクが増加するほど、ブレーキ装置38で発生する目標制動力の減少分(ブレーキ力分)が増加することが分かる。なお、オイルポンプ11の駆動によるロストルクTloss は下記の式で表される。
Tloss =k×NE×PL
ここで、kは係数であり、NEはエンジン回転数であり、PLはアキュムレータ14の内圧である。
【0065】
一方、前記ステップS12の判断時点でアキュムレータ14の内圧が、予め定められた基準値を超えていることにより、ステップS12で否定的に判断された場合は、アキュムレータ14に蓄圧をおこなうことなく、この制御ルーチンを終了する。また、ステップS11の判断時点でブレーキペダルが踏み込まれていない場合は、ステップS11で否定的に判断されて、制御ルーチンを終了する。
【0066】
このように、図4のフローチャートにおいては、ブレーキペダルが踏み込まれてブレーキ装置38で制動力を発生するときに、オイルポンプ11の駆動によるエンジンブレーキ力の増加分を考慮して、ブレーキ装置38で発生する目標制動力を求めるため、ブレーキペダルの踏み込み量に対応した制動力を超える制動力が車両で発生したり、減速度が大きくなり過ぎたりすることすることを防止できる。したがって、運転者が違和感を持つことを回避できるとともに、過度な減速により運転者が踏み込んだブレーキペダルを一旦戻し、再度ブレーキペダルを踏み込むなどの操作が繰り返されることを防止でき、エンジン10の燃費が向上する。この第2実施例は、オイルポンプ11を駆動してアキュムレータ14に蓄圧する制御例を提供するという意味の他に、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するにあたり、ブレーキ装置38で発生する制動力をどのように制御するのかという技術的意味をも有する。
【0067】
ここで、図4に示された機能的手段とこの発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS11が、この発明の制動条件判断手段に相当し、ステップS12が、この発明のエンジンブレーキ力算出手段および制動力制御手段に相当する。図2に示された構成とこの発明との対応関係を説明すると、駆動輪36が、この発明の駆動輪に相当し、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明のオイルポンプに相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当する。
【0068】
なお、前記ブレーキ装置38は、摩擦力により制動力を発生する構成ではなく、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換することにより車輪に制動力を与えるモータ・ジェネレータであってもよい。ブレーキ装置38がこのようなモータ・ジェネレータにより構成された車両において、図4のフローチャートを実行することもできる。この場合、ステップS11で肯定的に判断され、かつ、ステップS13に進み、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいてモータ・ジェネレータで発生するべき目標回生制動力を求める。ここで、ブレーキペダルの踏み込み量に基づいて、モータ・ジェネレータで発生するべき目標回生制動力を求める際に、オイルポンプ11の駆動により生じるエンジンブレーキ力分の制動力を差し引く制御をおこなう。
【0069】
(第3制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第3制御例を図6のフローチャートに基づいて説明する。この第3制御例は請求項3の発明に対応するものであり、エンジン10の動力が駆動輪36に伝達されて車両が走行している際に実行される。第3の制御例を実行可能な車両は、エンジン10および無段変速機1を制御するモードとして、ノーマルモードとスポーツモードとを切り替えて選択することができるように構成されている。前記ノーマルモードとスポーツモードとを比べると、車速およびアクセル開度が同じであっても、ノーマルモードが選択されたときの無段変速機1の変速比よりも、スポーツモードが選択されたときの無段変速機1の変速比の方が相対的に大きくなるように、電子制御装置37の制御プログラムが設定されている。また、ノーマルモードとスポーツモードとを比べると、車速およびアクセル開度が同じであっても、ノーマルモードが選択されたときの電子スロットルバルブの開度よりも、スポーツモードが選択されたときの電子スロットルバルブの開度の方が相対的に広くなるように、電子制御装置37の制御プログラムが設定されている。つまり、ノーマルモードが選択された場合のエンジントルクよりも、スポーツモードが選択された場合のエンジントルクの方が相対的に高くなる。
【0070】
図6のフローチャートにおいては、まず、エンジン10の動力を駆動輪36に伝達して車両が走行しているときに、スポーツモードが選択されているか否かが判断される(ステップS21)。このステップS21で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立しているが否かが判断される(ステップS22)。このステップS22の判断に用いるマップの一例を図7に示す。この図7のマップは電子制御装置37に記憶されている。図7のマップにはアキュムレータ14に油圧を蓄圧する蓄圧ラインが示されている。また、図7にはオイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第1蓄圧ライン(実線)と、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するための第2蓄圧ライン(破線)とが示されている。第1蓄圧ラインは第2蓄圧ラインよりも高圧である。
【0071】
また、無段変速機1で使用するオイル量が急激に増加して、アキュムレータ14の内圧が一定時間内に最大速度で降下したとしても、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になった時点から、所定時間内にアキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下となることがないように、第1蓄圧ラインと第2蓄圧ラインとの差が決定されている。上記の「所定時間」の意味および長さは後述する。そして、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になり、かつ、第2蓄圧ラインを超えているときは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。また、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下になると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する条件が成立する。なお、アキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以上である場合は、アキュムレータ14に蓄圧をする必要はない。
【0072】
前記ステップS22で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなうとともに、アキュムレータ14への蓄圧速度に合わせてエンジントルクを補償する制御をおこなう(ステップS23)。このステップS23でおこなわれる制御のうち、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御は、図1のステップS5でおこなう制御と同じである。つぎに、アキュムレータ14への蓄圧速度に合わせてエンジントルクを補償する制御を、図7のマップにより説明する。前記のように、時刻t1でアキュムレータ14の内圧が第1蓄圧ライン以下になると、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御が開始される。また、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御と並行してエンジントルクを高める制御(エンジントルク補償)が実行される。
【0073】
しかしながら、エンジン10は燃料を燃焼させてトルクを発生する動力装置であるから、時刻t1からエンジントルクが上昇を開始するわけではなく、時刻t2からエンジントルクが上昇を開始する。つまり、時刻t1から時刻t2までの間に無駄時間(制御の遅れ)が生じる。このため、時刻t1から時刻t2までの間は、アキュムレータ14の内圧は低下している。そして、時刻t2以降はエンジントルクが上昇を開始するため、アキュムレータ14の内圧も上昇する。このように、時刻t1から時刻t2の間はエンジントルクが上昇しないため、アキュムレータ14の内圧も低下するが、アキュムレータ14の内圧が第2蓄圧ライン以下にはならない。
【0074】
つまり、この時刻t1から時刻t2までの時間(無駄時間)の長さは、エンジントルク補償制御を開始してから、エンジントルクが実際に上昇を開始するまでの時間であり、この時間の長さが前記所定時間の長さに相当する。つまり、前記所定時間は、エンジントルク補償制御を開始してからエンジントルクが上昇を開始するまでに無駄時間があっても、アキュムレータ14の内圧がその無駄時間内に第2蓄圧ライン以下にならないようにするための時間である。なお、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するにあたり、そのアキュムレータ14の内圧の上昇速度(または、上昇勾配、単位時間当たりの上昇割合など)の基準となる所定の上昇速度が予め定められている。そして、実際のアキュムレータ14の内圧の上昇速度が所定の上昇速度に沿ったものとなるように、エンジントルクの上昇速度が制御される。これは電子スロットルバルブの開度を制御することにより達成される。なお、「所定の上昇速度」は、スポーツモードが選択されている状態において、無段変速機1に入力されるトルクが上昇するとき、または無段変速機1のトルク容量を高めるときに、油圧室5Aの油圧不足を回避することのできる値である。
【0075】
上記のステップS23についで、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を終了する条件が成立したか否かが判断される(ステップS24)。例えば、アキュムレータ14に所定圧以上の油圧が蓄圧された場合は、アキュムレータ14に蓄圧する制御を終了する条件が成立する。この所定圧は第1蓄圧ラインよりも高く、アキュムレータ14が一杯であることを意味する。このステップS24で否定的に判断された場合は、ステップS23に戻り、ステップS24で肯定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、前記ステップS22で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。つまり、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御はおこなわれない。また、ステップS21で否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
【0076】
ここで、図6のフローチャートに示された機能的手段と,この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS21が、この発明のモード判断手段に相当し、ステップS22が、この発明の条件判断手段に相当し、ステップS23が、この発明のエンジントルク制御手段に相当する。また、図2に示された構成とこの発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の電動オイルポンプに相当し、無段変速機1がこの発明の動力伝達装置に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当する。
【0077】
(第4制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第4制御例を図8のフローチャートに基づいて説明する。この第4制御例は請求項4および請求項10の発明に対応するものであり、まず、エンジン10のトルクが駆動輪36に伝達されており、その駆動輪36がスリップしているか否かが判断される(ステップS31)。これは、エンジン10のトルクが伝達されない車輪の回転速度と、駆動輪36の回転速度とを比較することにより判断可能である。このステップS31で肯定的に判断された場合は、無段変速機1の変速比を固定する条件が成立したか否かが判断される(ステップS32)。このステップS32で肯定的に判断された場合は、Priシーブ側ソレノイド弁を閉じる制御をおこなう(ステップS33)。このステップS33では、具体的には、供給側電磁開閉弁DSP1を閉じ、かつ、排出側電磁開閉弁DSP2を閉じる制御をおこなう。
【0078】
また、Secシーブの油圧室5Aの油圧が設定圧に到達したか否かが判断される(ステップS34)。これは、油圧室5Aの実際の油圧が、その時点の目標エンジントルクに対応して予め定められた設定圧になったか否かを判断するものである。なお、「目標エンジントルクに対応して予め定められた設定圧」とは、ベルト35の滑りを回避するために定められた油圧」である。このステップS34で肯定的に判断された場合は、Secシーブ側ソレノイド弁を閉じる制御をおこなう(ステップS35)。つまり、供給側電磁開閉弁DSS1が閉じられ、かつ、排出側電磁開閉弁DSS2が閉じられ、無段変速機1のトルク容量が一定に維持される。ここでは、駆動輪36がスリップしたことにより、運転者がアクセルペダルの踏み込み量が減少してエンジントルクが低下しても、無段変速機1のトルク容量が一定に維持される。その理由は、アクセルペダルの踏み込み量が再度増加して、駆動輪36に伝達されるトルクが増加する可能性があるからである。
【0079】
そして、無段変速機1の変速比が「1」以上であるか否かが判断される(ステップS36)。このステップS36で肯定的に判断されるということは、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)の方が、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)よりも高く、その駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分が発熱、もしくは摩耗する可能性がある。そこで、ステップS36で肯定的に判断された場合は、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)が、所定回転数以下であるか否かが判断される(ステップS37)。このステップS37の判断に用いる所定回転数は、その駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性があるか否かを判断する基準である。このステップS37で肯定的に判断された場合は、駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性は低いため、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧し(ステップS38)、この制御ルーチンを終了する。このステップS38の制御は、図1のステップS5の制御と同じであり、オイルポンプ11から吐出されたオイルは被潤滑部9に供給されない。
【0080】
これに対して、ステップS37で否定的に判断されるということは、駆動プーリ2を支持する軸受、あるいは駆動プーリ2とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性が高いことになる。そこで、ステップS37で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。つまり、調圧弁12の制御によりポート12Aが開かれており、油路34のオイルが被潤滑部9に供給される。
【0081】
一方、前記ステップS36で否定的に判断されるということは、Pri回転数(駆動プーリ2の回転数)よりも、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)の方が高く、その従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分が発熱、もしくは摩耗する可能性がある。そこで、ステップS36で否定的に判断された場合は、Sec回転数(従動プーリ3の回転数)が、所定回転数以下であるか否かが判断される(ステップS39)。このステップS39で用いる所定回転数は、その従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性があるか否かを判断する基準である。このステップS39で肯定的に判断された場合は、従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性は低いため、ステップS38に進む。
【0082】
これに対して、ステップS39で否定的に判断されるということは、従動プーリ3を支持する軸受、あるいは従動プーリ3とベルトVとの接触部分をオイルにより潤滑または冷却する必要性が高いことになる。そこで、ステップS39で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわずに、この制御ルーチンを終了する。つまり、調圧弁12の制御によりポート12Aが開かれており、油路34のオイルが被潤滑部9に供給される。このように、図8の制御例においては、被潤滑部9にオイルを供給する必要性がある場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなわない。これに対して、被潤滑部9にオイルを供給する必要性がない場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなう。したがって、被潤滑部9の摩耗、焼き付きなどを防止できるとともに、アキュムレータ14に蓄圧することができる。このように、調圧弁12は、オイルポンプ11から吐出されたオイルを、被潤滑部9に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁としての機能を備えている。
【0083】
ここで、図8に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS31が、この発明のスリップ判断手段に相当し、ステップS37,S39が、この発明の条件判断手段に相当し、ステップS38が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、無段変速機1がこの発明の動力伝達装置に相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、アキュムレータ14が、この発明の油圧室に相当し、被潤滑部9が、この発明の被潤滑部に相当し、調圧弁12が、この発明の供給先切替弁に相当する。
【0084】
(第5制御例)
つぎに、アキュムレータ14に油圧を蓄圧する際に実行される第5制御例を、図9のフローチャートに基づいて説明する。この第5制御例は請求項5の発明に対応するものである。図9のフローチャートでは、まず、車両が停止しているか否かが判断され(ステップS41)、かつ、アイドルストップ制御を開始する条件が成立したか否かが判断され(ステップS42)、さらに、現在オイルポンプ11のオイルをアキュムレータ14に蓄圧する制御を実行中であるか否かが判断される(ステップS43)。前記アイドルストップ制御とは、車両の停止中にエンジン10への燃料の供給を停止して、そのエンジン10を停止させる制御である。このアイドルストップ制御を開始する条件は、車両が停止し、かつ、アクセルペダルが踏まれておらず、かつ、ブレーキペダルが踏まれていると成立する。
【0085】
このステップS41,S42,S43の判断は同時におこなってもよいし、各ステップの判断を順番におこなってもよい。そして、ステップS41,S42,S43の全てにおいて肯定的に判断された場合は、予想必要消費ガソリンエネルギーの方が、予想必要EOP消費エネルギー未満であるか否かが判断される(ステップS44)。前記のように、オイルポンプ11の容量は電動オイルポンプ28の容量よりも小さく、かつ、電動オイルポンプ28の駆動には電損が生じるが、上記のように車両が停止しているため、オイルポンプの容量および電損という条件だけでは、アキュムレータ14に油圧を蓄圧するときの効率を求めることが困難であるため、このステップS44の判断をおこなっている。ここで、予想必要消費ガソリンエネルギーとは、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなっているときのエンジン10の消費エネルギーであり、このエンジン10の消費エネルギーGene は次式で求められる。
Tpacc=(PACCmax −PACCact )/ΔPACCupmax
Gene =Tpacc×gidl
ここで、Tpaccは、アキュムレータ14への蓄圧時間、gidlは、エンジン10をアイドリング状態としてオイルポンプ14を駆動するときのガソリンの消費量であり、PACCmax は、アキュムレータ14へ蓄圧される油圧の最大値(上限値)であり、PACCact は、現時点におけるアキュムレータ14の内圧であり、ΔPACCupmax は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときの最大勾配(蓄圧速度を示す勾配の最大値)である。
【0086】
これに対して、予想必要EOP消費エネルギーは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこなった場合に消費されるものと予想されるエネルギーであり、予想必要EOP消費エネルギーEOPene は、次式により求められる。
t1=ΔPACCupmax /dPACCup
t2=(PACCmax −(PACCact +∬dPACCupdtdt))
/ΔPACCmax +t1
EOPene =t2×Weop
ここで、t1は、電動オイルポンプ28によりアキュムレータ14に蓄圧を開始してからΔPACCupに到達するまでの予想時間であり、ΔPACCupは、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときのアキュムレータ14の内圧の上昇勾配であり、t2は、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を開始してから、アキュムレータ14の内圧が最大値となるまでの予想時間であり、Weopは、単位時間あたりにおける電動オイルポンプ28の使用エネルギーである。
【0087】
ステップS44の判断に関連して、アキュムレータ14の蓄圧勾配を図10に示す。現在は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧しているので、実線で示す蓄圧勾配はほぼ一定である。これに対して、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を開始することを想定すると、時間t1が経過すると、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧するときの勾配(破線)が最大となる。また、図11には、時間t1が経過したときの消費エネルギーGene が実線で示され、時間t2が経過したときの消費エネルギーEOPene が破線で示されている。
【0088】
そして、ステップS44で肯定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を継続し(ステップS45)、この制御ルーチンを終了する。つまり、アイドリングストップ制御は実行されない。これに対して、ステップS44で否定的に判断された場合は、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御を止め、かつ、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御をおこない、この制御ルーチンを終了する。つまり、アイドリングストップ制御が実行される。なお、ステップS41またはステップS42またはステップS43のいずれかで否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。なお、ステップS41,S42,S43のうちの少なくとも1つのステップで否定的に判断された場合は、この制御ルーチンを終了する。
【0089】
このように、図9のフローチャートを実行すると、オイルポンプ11の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御で消費される予想エネルギーと、電動オイルポンプ28の油圧をアキュムレータ14に蓄圧する制御で消費される予想エネルギーとを比較し、消費エネルギーが少ない方(エネルギー効率が相対的によい方)の制御を選択することができる。したがって、エンジン10の燃費が向上する。
【0090】
ここで、図9に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS41,S42が、この発明の停止条件判断手段に相当し、ステップS43が、この発明の蓄圧状態判断手段に相当し、ステップS44が、この発明の消費エネルギー予測手段および比較手段に相当し、ステップS45が、この発明の蓄圧手段に相当する。また、消費エネルギーGene が、この発明の第1消費エネルギーに相当し、消費エネルギーEOPene が、この発明の第2消費エネエルギーに相当する。さらに、図2に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、エンジン10が、この発明のエンジンに相当し、オイルポンプ11が、この発明の第1オイルポンプに相当し、電動オイルポンプ28が、この発明の第2オイルポンプに相当し、駆動輪36が、この発明の駆動輪に相当し、無段変速機1が、この発明の無段変速機に相当し、油圧室4A,5Aが、この発明の油圧室に相当し、アキュムレータ14が、この発明のアキュムレータに相当し、電動モータ29が、この発明の電動モータに相当する。
【0091】
なお、図2に示された車両においては、動力伝達装置の一例として無段変速機が挙げられているが、前後進切換装置のトルク容量を制御する油圧室にオイルポンプの油圧を供給するように構成された油圧制御装置においても、各制御例を実行可能である。また、無段変速機としてベルト型無段変速機が挙げられているが、トロイダル型無段変速機を備えた車両においても、各制御例を実行可能である。このトロイダル型無段変速機においては、パワーローラがトラニオンにより支持されており、油圧室の油圧を制御することにより、パワーローラの傾転角度が制御されて、変速比が制御される。また、トロイダル型無段変速機においては、入力ディスクおよび出力ディスクの回転軸線に沿った方向に挟圧力を与える油圧室が設けられており、その油圧室に供給される油圧を制御することにより、トルク容量が制御される。さらに、この発明の動力伝達装置には、変速比を段階的に変更可能な有段変速機が含まれる。この有段変速機には、常時噛み合い式変速機、選択歯車式変速機、遊星歯車式変速機などが含まれる。いずれの構成の有段変速機においても、油圧室の油圧を制御することにより変速比が変更されるように構成されている油圧制御式変速機であれば、各制御例を実行可能である。
【符号の説明】
【0092】
1…無段変速機、 4A,5A…油圧室、 9…被潤滑部、 10…エンジン、 11…オイルポンプ、 12…調圧弁、 14…アキュムレータ、 28…電動オイルポンプ、 29…電動モータ、 31…発電機、 36…駆動輪。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないと判断されたときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
車両の駆動輪に連結されたエンジンと、このエンジンと共に回転して駆動されて油圧を発生するオイルポンプと、このオイルポンプから吐出された油圧を蓄圧し、かつ、蓄圧された圧力を放出することのできるアキュムレータと、前記車両に制動力を与えるブレーキ装置とを備えた油圧制御装置において、
前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立しているか否かを判断する制動条件判断手段と、
前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立していると判断された場合は、前記車両の惰力走行による運動エネルギーを前記エンジンに伝達して前記オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求めるエンジンブレーキ力算出手段と、
前記ブレーキ装置で前記車両に与える目標制動力から、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、前記ブレーキ装置で車両に与える最終的な制動力を制御する制動力制御手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置の入力回転数と出力回転数との間の変速比を相対的に大きくする制御、または前記動力伝達装置に入力されるトルクを相対的に高くする制御をおこなうモードが選択されているか否かを判断するモード判断手段と、
前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達し、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、
前記モード選択手段により前記モードが選択されていると判断され、かつ、アキュムレータ前記条件判断手段により前記蓄圧条件が成立していると判断されたときに、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、前記モードに対応させて予め定められた所定の上昇速度となるように、前記エンジントルクを制御するエンジントルク制御手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置で動力伝達がおこなわれる際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルが供給されて潤滑または冷却される被潤滑部と、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記被潤滑部に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁とが設けられており、
前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する条件判断手段と、
前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立していないときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立したか否かを判断するエンジン停止条件判断手段と、
前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、かつ、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているか否かを判断する蓄圧状態判断手段と、
前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立していると判断され、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれていると判断されたときに、前記エンジンにより前記第1オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときの第1消費エネルギーと、前記第2オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとを予測する消費エネルギー予測手段と、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを比較する比較手段と、
前記第1消費エネルギーが前記第2消費エネルギー未満であると判断された場合は、前記エンジンを停止させる条件が成立していても前記エンジンを停止させずに前記エンジンの運転を継続し、そのエンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが供給される低油圧供給部が設けられており、この低油圧供給部は、前記油圧室よりも相対的に低い油圧に制御されるように構成されており、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧室に供給する経路に逆止弁が設けられており、この逆止弁は前記エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが前記アキュムレータに供給される向きで開放され、かつ、前記アキュムレータから前記エンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の油圧制御装置。
【請求項7】
電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記オイルポンプよりも容量が大きい電動オイルポンプが設けられており、前記オイルポンプまたは電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することができるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の油圧制御装置。
【請求項8】
前記エンジンの動力により発電をおこなう発電機が設けられており、その発電機で発生した電力により前記電動モータが駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の油圧制御装置。
【請求項9】
前記動力伝達装置には入力回転数と出力回転数との間の変速比を無段階に変更可能な無段変速機が含まれており、前記判断手段は、前記無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項10】
前記エンジンが車両に搭載され、かつ、前記エンジンの動力が前記車両の駆動輪に伝達されるように構成されており、
前記エンジンの動力が前記駆動輪に伝達されているときに前記駆動輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段を備え、
前記条件判断手段は、前記駆動輪がスリップしていると判断されたときに、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の油圧制御装置。
【請求項1】
動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記第1オイルポンプよりも容量が大きい第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する判断手段と、
この判断手段により前記動力伝達装置の油圧室におけるオイルの消費量が変化しないと判断されたときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項2】
車両の駆動輪に連結されたエンジンと、このエンジンと共に回転して駆動されて油圧を発生するオイルポンプと、このオイルポンプから吐出された油圧を蓄圧し、かつ、蓄圧された圧力を放出することのできるアキュムレータと、前記車両に制動力を与えるブレーキ装置とを備えた油圧制御装置において、
前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立しているか否かを判断する制動条件判断手段と、
前記車両が惰力走行してエンジンブレーキ力が発生しているときに、前記ブレーキ装置で前記車両に制動力を与える条件が成立していると判断された場合は、前記車両の惰力走行による運動エネルギーを前記エンジンに伝達して前記オイルポンプを駆動してその油圧をアキュムレータに蓄圧するにあたり、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を求めるエンジンブレーキ力算出手段と、
前記ブレーキ装置で前記車両に与える目標制動力から、前記オイルポンプの駆動に伴うエンジンブレーキ力の増加分を差し引いて、前記ブレーキ装置で車両に与える最終的な制動力を制御する制動力制御手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項3】
車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置の入力回転数と出力回転数との間の変速比を相対的に大きくする制御、または前記動力伝達装置に入力されるトルクを相対的に高くする制御をおこなうモードが選択されているか否かを判断するモード判断手段と、
前記エンジンの動力を前記駆動輪に伝達し、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧条件が成立しているか否かを判断する条件判断手段と、
前記モード選択手段により前記モードが選択されていると判断され、かつ、アキュムレータ前記条件判断手段により前記蓄圧条件が成立していると判断されたときに、実際のアキュムレータ内圧の上昇速度が、前記モードに対応させて予め定められた所定の上昇速度となるように、前記エンジントルクを制御するエンジントルク制御手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項4】
動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記動力伝達装置で動力伝達がおこなわれる際に、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルが供給されて潤滑または冷却される被潤滑部と、前記第1オイルポンプから吐出されたオイルを前記被潤滑部に供給する状態と供給しない状態とに切り替える切替弁とが設けられており、
前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する条件判断手段と、
前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立していないときに、前記第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項5】
車両に搭載され、かつ、駆動輪に伝達される動力を発生するエンジンと、このエンジンから前記駆動輪に至る経路に設けられた動力伝達装置と、この動力伝達装置の動力伝達状態を制御する油圧室と、前記エンジンの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第1オイルポンプと、電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出する第2オイルポンプと、前記第1オイルポンプまたは前記第2オイルポンプから吐出されたオイルが前記油圧室に供給される前にその油圧を蓄圧し、かつ、蓄えられた圧力を放出することのできるアキュムレータとを有し、前記第1オイルポンプまたは第2オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することのできる油圧制御装置において、
前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立したか否かを判断するエンジン停止条件判断手段と、
前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、かつ、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているか否かを判断する蓄圧状態判断手段と、
前記車両が停止しているときに前記エンジンを停止させる条件が成立していると判断され、かつ、前記エンジンの動力で前記第1オイルポンプが駆動され、その第1オイルポンプの油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれていると判断されたときに、前記エンジンにより前記第1オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御がおこなわれているときの第1消費エネルギーと、前記第2オイルポンプを駆動して前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなうことを想定したときの第2消費エネルギーとを予測する消費エネルギー予測手段と、
前記第1消費エネルギーと前記第2消費エネルギーとを比較する比較手段と、
前記第1消費エネルギーが前記第2消費エネルギー未満であると判断された場合は、前記エンジンを停止させる条件が成立していても前記エンジンを停止させずに前記エンジンの運転を継続し、そのエンジンの動力で前記第1オイルポンプを駆動してその油圧を前記アキュムレータに蓄圧する制御をおこなう蓄圧手段と
を備えていることを特徴とする油圧制御装置。
【請求項6】
前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが供給される低油圧供給部が設けられており、この低油圧供給部は、前記油圧室よりも相対的に低い油圧に制御されるように構成されており、前記エンジンの動力により駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルを前記油圧室に供給する経路に逆止弁が設けられており、この逆止弁は前記エンジンにより駆動されるオイルポンプから吐出されたオイルが前記アキュムレータに供給される向きで開放され、かつ、前記アキュムレータから前記エンジンにより駆動されるオイルポンプに向けてオイルが流れる向きでは閉じられるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の油圧制御装置。
【請求項7】
電動モータの動力により駆動されて前記油圧室に供給するオイルを吐出し、かつ、前記オイルポンプよりも容量が大きい電動オイルポンプが設けられており、前記オイルポンプまたは電動オイルポンプのいずれか一方から吐出された油圧を前記アキュムレータに選択的に蓄圧することができるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の油圧制御装置。
【請求項8】
前記エンジンの動力により発電をおこなう発電機が設けられており、その発電機で発生した電力により前記電動モータが駆動されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の油圧制御装置。
【請求項9】
前記動力伝達装置には入力回転数と出力回転数との間の変速比を無段階に変更可能な無段変速機が含まれており、前記判断手段は、前記無段変速機の変速比を制御する油圧室、または無段変速機のトルク容量を制御する油圧室におけるオイルの消費量が変化するかしないかを判断する手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の油圧制御装置。
【請求項10】
前記エンジンが車両に搭載され、かつ、前記エンジンの動力が前記車両の駆動輪に伝達されるように構成されており、
前記エンジンの動力が前記駆動輪に伝達されているときに前記駆動輪がスリップしているか否かを判断するスリップ判断手段を備え、
前記条件判断手段は、前記駆動輪がスリップしていると判断されたときに、前記被潤滑部にオイルを供給する条件が成立したか否かを判断する手段を含むことを特徴とする請求項4に記載の油圧制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
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【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−132993(P2011−132993A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291134(P2009−291134)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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