説明

磁性膜センサ

【課題】従来のセンサとは別の動作原理に基づくMEMS技術を応用した新たな高感度センサを提供する。
【解決手段】磁性膜センサは、磁気歪を発生する矩形状の磁性膜を有し、磁性膜に磁気歪を発生させる磁気歪構造を有している。磁気歪構造は、例えば磁性膜を湾曲させて磁気歪を発生させるように構成されている。また、磁気歪構造は、例えば表面に凹部が形成された凹部付絶縁層を設け、その凹部を跨ぐようにして磁性膜を形成することによって得られる。磁性膜は、GMR膜等に永久磁石バイアス層が積層され、その永久磁石バイアス層によって磁性膜の短手辺に沿った方向の磁界がGMR膜に加えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GMR膜,AMR膜,TMR膜,MR膜等の磁性膜を用いた磁性膜センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、センサが様々な分野で利用され、センサの需要が大きく拡大している。例えば、MEMS技術(Micro Electro Mechanical Systems technology)を応用した加速度センサが、携帯電話機やノート型のパーソナルコンピュータ、デジタルカメラ、携帯型音楽プレーヤーといったデジタルメディア製品に搭載されている。
【0003】
また、カーエレクトロニクスの分野でも、圧力センサ、温度センサ、加速度センサといった形で応用され、イメージセンサが携帯電話機やデジタルカメラ等に搭載されている。さらに、航空、宇宙分野でも、あるいは軍需産業でも、MEMS技術とともに様々なセンサが利用されている。
【0004】
特にMEMS技術を応用したセンサは民生機器に数多く採用されており、小型軽量であることから、ロボットのセンサや自動車のタイヤの圧力センサといった様々な形で応用が進んでいる。
【0005】
このように、MEMS技術を使ったセンサには、圧力センサ、温度センサ、加速度センサといった様々なタイプのセンサがある。以下では、そのうちの圧力センサを一例に取り上げて、その構造や作用などについて説明する(圧力センサに関しては例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−221418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の圧力センサは、主に空気圧の変化を内部の感圧素子によって電気信号に変換して出力する構造を有している。この種の圧力センサは、外部から加わる圧力値が予め設定した値を超えたことを電気信号として出力し、例えば、空気圧を利用した吸着確認や着座確認、リークテスト、元圧管理といった様々用途で利用されている。この種の圧力センサには、例えば、図35(A)に示す圧力センサ300や図35(B)に示す圧力センサ303があった。
【0008】
ここで、図35は従来の圧力センサの構成の一例を模式的に示す断面図で、(A)は圧力センサ300の構成を模式的に示す断面図、(B)は圧力センサ303の構成を示す断面図である。図35(A)に示すように、圧力センサ300と、圧力センサ303とはともにシリコンチップの上に歪抵抗が形成された構成を有している。圧力センサ300と、圧力センサ303とはともに、一定の方向に圧力が加わり、その圧力によってシリコンチップが歪むと歪抵抗の抵抗値が変化する。圧力センサ300と圧力センサ303はこの抵抗値の変化を電気信号に変換して出力することにより、圧力を検出するようになっている。
【0009】
そして、圧力センサ300は、シリコンチップ301の上に歪抵抗302が形成され、圧力センサ303は、シリコンチップ304の上に歪抵抗302が形成されている。シリコンチップ304は歪抵抗302が圧力を感じ易くするため、歪抵抗302が形成されていない裏面側をエッチング等により除去して厚さを薄くした部分が形成されている。
【0010】
この圧力センサ304は、厚さの薄くなった部分に圧力が加わったときに、圧力センサ300よりも、歪抵抗302が変形しやすく歪抵抗302の抵抗値が変化しやすい。そのため、圧力センサ303は、圧力センサ300よりも圧力を検出しやすくなっている。
【0011】
圧力センサ300や圧力センサ303は空気圧や水圧等を検出するための圧力センサとしてだけではなく、走行中のタイヤの圧力コントロール装置にも応用され、特に最近では、ロボットのタッチセンサのような高い感度が要求されるセンサとしても応用されている。
【0012】
しかしながら、圧力センサ300や圧力センサ303のような構造を備えた従来の圧力センサでは、圧力の検出精度を高めることに限界があった。この点について、従来の圧力センサがロボットのタッチセンサとして利用される場合を例にとって説明する。
【0013】
ロボットの中には、人間の手の代わりを務め、人間の手の働きを補うものもある。そのようなロボットに応用されるタッチセンサは、安全性と機能性が求められ、より高感度であることが要求されている。
【0014】
ロボットは人間の手の感触を備えることが最も大きな課題の1つとされているが、タッチセンサの性能次第で活用される分野が大きく異なってくる。ロボットの活用分野としては、例えば、介護や介助の分野、火災や災害発生時における人命救助の分野等があり、タッチセンサはロボットがそれぞれの活用分野で要求される性能を発揮できるだけの感度を備えていなければならない。
【0015】
介護や介助の分野のロボットでは、安全性が重視されかつ高い信頼性が求められるから、タッチセンサもその要求に見合った感度が必要とされる。また、人命救助の分野のロボットでは、人間が出入り出来ない場所における迅速な動作と耐久性が要求されるから、タッチセンサもその要求に見合った感度が必要とされるといったことである。
【0016】
しかしながら、ロボットにはタッチセンサを含む何種類ものセンサが備えられており、各センサから得られるデータによってその行動や性能が決まってしまうため、ロボットがその活用分野で要求される性能を発揮できるようにするには、タッチセンサの感度を高める必要があった。
【0017】
一方、ロボットのタッチセンサは触ったか触らないか程度の微妙な力加減を検出する必要があるため、ロボットが人間の手の代わりを務めるには、タッチセンサを多く、しかも複雑に組み合わせる必要があった。しかしながら、たとえそのようにしても、ロボットが敏感な人間の手の感触を備えるには、タッチセンサについて多くの改善が必要であった。
【0018】
以上のように、圧力センサ300や圧力センサ303のような構造を備えた従来の圧力センサでは、感度を高めることに限界があり、とりわけロボットのタッチセンサに必要な感度を発揮するには限界があった。
【0019】
また、従来、高感度のセンサを必要とするロボットのほか、安全性が要求されるカーエレクトロニクスの分野や、各種の家庭用電化製品、血圧測定の医療機器などでも、高感度のセンサ(圧力センサ、温度センサ、加速度センサ)が求められていた。そのため、従来のセンサとは別の動作原理に基づくMEMS技術を応用した新たな高感度センサの登場が期待されていた。
【0020】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、従来のセンサとは別の動作原理に基づくMEMS技術を応用した新たな高感度センサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、本発明は磁気歪を発生するスピンバルブ膜を有し、そのスピンバルブ膜に磁気歪を発生させる磁気歪構造を有する磁性膜センサを特徴とする。
【0022】
この磁性膜センサはスピンバルブ膜に機械的な歪みが加わると、スピンバルブ膜の磁化が変化する。また、磁性膜センサは磁気歪構造を有するから、スピンバルブ膜に機械的な歪みが加わるようになっている。
【0023】
上記磁気歪構造は、スピンバルブ膜を湾曲させて磁気歪を発生させるように構成されているようにすることができる。
【0024】
また、スピンバルブ膜は、磁気歪に応じて抵抗値が変化するように構成されているようにすることができる。
【0025】
そして、本発明は磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有し、磁性膜が凹部を跨ぐようにして凹部付絶縁層に形成された構成を有する磁性膜センサを提供する。
【0026】
この磁性膜センサは磁性膜が凹部を跨ぐようにして形成されているので、微弱な外力によっても磁性膜が変形する。
【0027】
また、本発明は、磁性膜と、表面の少なくとも一部が磁性膜よりも柔軟な変形許容部となっているベース層とを有し、磁性膜が変形許容部を跨ぐようにしてベース層に形成された構成を有する磁性膜センサを提供する。
【0028】
この磁性膜センサは磁性膜が磁性膜よりも柔軟な変形許容部を跨ぐようにして形成されているので、微弱な外力によっても磁性膜が変形する。
【0029】
上記磁性膜センサは、凹部付絶縁層の表面上に凹部を跨ぐようにして形成されたバッファ絶縁層を更に有し、そのバッファ絶縁層の上に磁性膜が形成されているようにすることができる。
【0030】
上記磁性膜センサは、ベース層の表面上に変形許容部を跨ぐようにして形成されたバッファ絶縁層を更に有し、そのバッファ絶縁層の上に磁性膜が形成されているようにすることもできる。
【0031】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜に対し、凹部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、その第1の永久磁石層および第2の永久磁石層は、磁性膜の凹部を跨ぐ方向の両側に配置されているようにすることができる。
【0032】
上記磁性膜センサは、上記変形許容部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、その第1の永久磁石層および第2の永久磁石層は磁性膜の変形許容部を跨ぐ方向の両側に配置されているようにすることもできる。
【0033】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜に通電するための第1の電極および第2の電極を更に有し、その第1の電極および第2の電極は、磁性膜の凹部を跨ぐ方向の両側に配置されているようにすることができる。
【0034】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜に通電するための第1の電極および第2の電極を更に有し、その第1の電極および第2の電極は、磁性膜の変形許容部を跨ぐ方向の両側に配置されているようにすることもできる。
【0035】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜の凹部を跨ぐ方向のトラック幅がそのトラック幅に交差する方向の奥行きよりも大きく形成されているようにすることができる。
【0036】
上記磁性膜は、GMR膜、AMR膜、MR膜、TMR膜、CPP膜のいずれかと永久磁石からなる永久磁石層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有するようにすることができる。
【0037】
上記磁性膜は、凹部を跨ぐ方向のトラック幅の変化に応じて磁化の向きが変わる自由磁化層と、磁化の向きが変わらない固定磁化層とを積層した構成を有するようにすることができる。
【0038】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜に対し、凹部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、磁性膜は、GMR膜と、第1の永久磁石層および第2の永久磁石層によって加えられる磁界と交差する方向の磁界をGMR膜に加えるためのバイアス磁界層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有する磁性膜センサとすることができる。
【0039】
上記磁性膜センサは、上記磁性膜に対し、変形許容部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、磁性膜はGMR膜と、第1の永久磁石層および第2の永久磁石層によって加えられる磁界と交差する方向の磁界をGMR膜に加えるためのバイアス磁界層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有するようにすることもできる。
【0040】
さらに、上記磁性膜センサは、第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を接続する第3の永久磁石層と、第1、第2、第3の永久磁石層のいずれかの周囲を周回する薄膜コイルとを更に有するようにすることができる。
【0041】
上記磁性膜センサは、凹部付絶縁層の表面上に凹部を跨ぐようにして形成されたバイメタルを更に有し、そのバイメタルの上に磁性膜が形成されているようにすることができる。
【0042】
また、上記磁性膜センサは、凹部にフォトレジストが埋め込まれた構成を有するようにすることができる。
【0043】
そして、本発明は、磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有する磁性膜センサの製造方法であって、下記の(1)〜(3)の各工程を有する磁性膜センサの製造方法を提供する。
(1)絶縁層の表面に凹部を形成して凹部付絶縁層を形成する工程と、
(2)凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち、凹部を跨ぐようにして凹部付絶縁層の表面に磁性膜を形成する工程と、
(3)リフトオフを行い、凹部に埋め込まれているフォトレジストを除去する工程。
【0044】
また、本発明は、磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有する磁性膜センサの製造方法であって、下記の(4)〜(8)の各工程を有する磁性膜センサの製造方法を提供する。
(4)絶縁層の表面に凹部を形成して凹部付絶縁層を形成する工程と、
(5)絶縁層の表面に凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち凹部付絶縁層の表面に絶縁材からなる被膜を形成する工程と、
(6)被膜が形成された凹部付絶縁層の表面をCMPで研磨する工程と、
(7)CMPで研磨された凹部付絶縁層の表面に凹部を跨ぐようにして磁性膜を形成する工程と、
(8)リフトオフを行い、凹部に埋め込まれているフォトレジストを除去する工程。
【0045】
上記製造方法は、磁性膜を形成する工程と、フォトレジストを除去する工程との間に、磁性材からなる磁性層および導電材料からなる導電層を凹部付絶縁層の表面に形成する工程を更に有するようにすることができる。
【0046】
また、磁性膜を形成する工程において、凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち、凹部を跨ぐようにして凹部付絶縁層の表面にバッファ絶縁層を形成し、そのバッファ絶縁層に接するようにして磁性膜を形成するようにすることができる。
【発明の効果】
【0047】
以上詳述したように、本発明によれば、従来のセンサとは別の動作原理に基づくMEMS技術を応用した新たな高感度センサおよびその製造方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る磁性膜センサを示し、(A)は磁性膜センサの要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る磁性膜センサの図1における断面の方向からみた斜視図である。
【図3】センサ膜の積層構造を模式的に示す断面図で、(A)はセンサ膜を構成する各層を機能別に区分けして示す断面図、(B)はセンサ膜の積層構造を各層の材質とともに示す断面図である。
【図4】センサ膜を構成する固定磁化層、非磁性金属層および自由磁化層を磁化および磁界の向きとともに積層状態で示す斜視図である。
【図5】固定磁化層、非磁性金属層および自由磁化層の各層を磁化の向きとともに示す平面図で、(A)は自由磁化層、(B)は非磁性金属層、(C)は固定磁化層を示している。
【図6】センサ膜の構造を模式的に示す斜視図で、(A)は上述のセンサ膜の構造を模式的に示す斜視図、(B)は永久磁石層の代わりに軟磁性隣接層を有するセンサ膜の構造を模式的に示す斜視図である。
【図7】変形したセンサ膜およびバッファ絶縁層を模式的に示す断面図で、(A)はプラス方向の圧力が加わった場合、(B)はマイナス方向の圧力が加わった場合を示している。
【図8】センサ膜および永久磁石層を模式的に示す平面図で、(A)はセンサ膜が縮んだ場合、(B)はセンサ膜が伸びた場合を示している。
【図9】バイアス磁界と抵抗値との関係を示すグラフで、(A)はセンサ膜が縮んだ場合、(B)はセンサ膜が伸びた場合を示している。
【図10】バイアス磁界と抵抗値との関係を示す別のグラフで、(A)はセンサ膜10が縮んだ場合、(B)はセンサ膜10が伸びた場合を示している。
【図11】変形例に係る磁性膜センサを模式的に示す斜視図で、(A)は磁性膜センサ101を示す斜視図、(B)は磁性膜センサ102を示す斜視図である。
【図12】第1の実施の形態に係る磁性膜センサを製造する工程における図1(B)に対応する断面図である。
【図13】図12の後続の工程を示す断面図である。
【図14】図13の後続の工程を示す断面図である。
【図15】図14の後続の工程を示す断面図である。
【図16】本発明の第2の実施の形態に係る磁性膜センサを示し、(A)は磁性膜センサの要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。
【図17】第2の実施の形態に係る磁性膜センサを製造する工程における図1(B)に対応する断面図である。
【図18】図17の後続の工程を示す断面図である。
【図19】図18の後続の工程を示す断面図である。
【図20】図19の後続の工程を示す断面図である。
【図21】図20の後続の工程を示す断面図である。
【図22】図21の後続の工程を示す断面図である。
【図23】図22の後続の工程を示す断面図である。
【図24】本発明の第2の実施の形態に係る別の磁性膜センサを示し、(A)は磁性膜センサの要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図、(C)はさらに別の磁性膜センサにおける(B)同様の断面図である。
【図25】本発明の第3の実施の形態に係る磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図26】図25に示す磁性膜センサのフォトレジストが膨張したときを示す図1(B)同様の断面図である。
【図27】本発明の第4の実施の形態に係る別の磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図28】同じく、センサ膜が縮んだ場合の磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図29】同じく、センサ膜が伸びた場合の磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図30】第4の実施の形態に係る磁性膜センサを製造する工程における図1(B)に対応する断面図である。
【図31】本発明の第5の実施の形態に係る磁性膜センサを示す図1(A)同様の平面図である。
【図32】本発明の第6の実施の形態に係る磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図33】本発明の第6の実施の形態に係る別の磁性膜センサを示す図1(B)同様の断面図である。
【図34】CoFeからなる磁性材における組成と磁歪定数との関係を示す図である。
【図35】従来の圧力センサの構成の一例を模式的に示す断面図で、(A)は圧力センサの構成を模式的に示す断面図、(B)は別の圧力センサの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、同一要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。本発明の実施の形態に係る磁性膜センサは、磁気歪を発生する磁性膜を有している。この磁性膜は例えば後述する第1の実施の形態におけるセンサ膜10とすることができる。また、磁性膜センサの磁性膜はスピンバルブ膜とも呼ばれ、反強磁性層、強磁性層、非磁性金属層および強磁性層を有している。このスピンバルブ膜は、例えば後述するセンサ膜10のような矩形状に形成されており、その幅方向が長手辺、幅方向と交差する方向が短手辺になっている。そして、スピンバルブ膜は、GMR膜、AMR膜、MR膜、TMR膜、CPP膜のいずれかに永久磁石からなる永久磁石バイアス層が積層されていて、その永久磁石バイアス層によってスピンバルブ膜の短手辺に沿った方向の磁界がGMR膜、AMR膜、MR膜、TMR膜、CPP膜のいずれかに加えられる構造を有している。また、磁性膜は磁気歪(Magnetostriction、磁歪ともいい、詳しくは後述する)を発生する。そのため、磁性膜に湾曲、屈曲、伸張といった機械的な歪みが加わると、磁性膜の磁化が変化する。磁性膜センサは、この性質を利用して機械的な変化を電気的な変化として検出できるようになっている。後述する磁性膜センサ100は、磁気歪に応じて抵抗値が変化するようになっている。
【0050】
そして、磁性膜センサは磁気歪構造を有している。この磁気歪構造は、磁性膜に湾曲、屈曲、伸張といった機械的な歪みを加えることによって磁気歪を発生させるための構造である。例えば、後述する磁性膜センサ100のように、センサ膜10がキャビティ2を跨ぐようにして設けられた構造や、磁性膜センサ106のように、フォトレジスト31の膨張によってセンサ膜40が変形するようにした構造、さらには、磁性膜センサ107のようにバイメタル層50に重ねてセンサ膜40を設けた構造とすることができる。もちろん、磁気歪構造は、磁性膜に湾曲、屈曲、伸張といった機械的な歪みを加えられる構造であればよく、以下の第1の実施の形態から第6の実施の形態に開示されている構造に限定されるものではない。
【0051】
本発明の実施の形態に係る磁性膜センサは、磁性膜に湾曲、屈曲、伸張といった機械的な歪みが加わると、たとえその機械的な歪が微少であっても磁気歪を発生する。そのため、磁性膜センサは、ごくわずかな機械的な変化を電気的な変化として検出することができるから、非常に高感度なセンサとなっている。特に、後述する磁性膜センサ100のように、GMR膜、TMR膜、MR膜、CPP(Current Perpendicular Plane)膜等を用いると、いっそう検出精度を高めることができる。また、本発明の実施の形態に係る磁性膜センサは、後述する磁性膜センサ100のように、永久磁石層4,5と、電極6,7とを有することが好ましい。永久磁石層4,5はセンサ膜10の幅方向の両側における端面部分に接していて、永久磁石層4,5によって、後述する静磁界H3がセンサ膜10に加えられる。電極6,7はそれぞれ永久磁石層4,5の上に形成されている。電極6,7によって、後述するセンス電流Isがセンサ膜10に流れる。
【0052】
続いて、本発明の実施の形態に係る磁性膜センサの具体的な構造、作用、効果などについて詳細に説明する。
【0053】
第1の実施の形態
(磁性膜センサの構造)
まず、図1および図2を参照して本発明の第1の実施の形態に係る磁性膜センサ100の構造について説明する。ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る磁性膜センサ100を示し、(A)は磁性膜センサ100の要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。図2は磁性膜センサ100の図1における断面の方向からみた斜視図である。なお、図示の都合上、図1(A)では後述する絶縁層1が省略され、図2では電極6,7が省略されている。
【0054】
磁性膜センサ100は、GMR(Giant Magneto Resistive)膜8を含む磁性膜としてのセンサ膜10を有している。この磁性膜センサ100は、外部から加わる圧力Fによるセンサ膜10の抵抗値が変化する性質を利用して圧力Fを検出する圧力センサである。
【0055】
磁性膜センサ100は、ベース層としての絶縁層1と、絶縁層1の表面に直に接しているバッファ絶縁層3とを有し、そのバッファ絶縁層3の上にセンサ膜10が直に形成された構成を有している。また、磁性膜センサ100は第1、第2の永久磁石層としての永久磁石層4,5と、第1、第2の電極としての電極6,7とを有している。
【0056】
絶縁層1は、アルミナ(Al)またはSiO等の絶縁材からなり、片側表面の幅方向中央に凹部としてのキャビティ(cavity)2が形成された凹部付絶縁層である。
【0057】
キャビティ2は絶縁層1の表面上に形成され、所定の幅、奥行きおよび深さを有し、底部に所定の大きさでくぼんだ穴部2a,2bを有している。穴部2a,2bはセンサ膜10を挟んで奥行き方向に対向するようにして配置されている。
【0058】
そして、このキャビティ2を跨ぐようにしてバッファ絶縁層3とセンサ膜10とが配置され、センサ膜10のキャビティ2を跨ぐ方向(幅方向といい、幅方向のうち、永久磁石4から永久磁石5に向かう方向を「X方向」ともいう)の両側に永久磁石層4,5が配置されている。なお、本実施の形態では、センサ膜10はキャビティ2の奥行きの方向と直交するようにして配置されている。
【0059】
バッファ絶縁層3は、アルミナ(Al3)またはSiOなどの絶縁材からなる薄膜であって、センサ膜10および永久磁石層4,5に対応した形状に形成されている。そして、バッファ絶縁層3のうちのセンサ膜10の接しない部分に永久磁石層4,5が直に接する形で形成されている。
【0060】
永久磁石層4,5は、永久磁石からなる薄膜であって、センサ膜10の幅方向の両側における端面部分に接している。永久磁石層4,5によって、後述する静磁界H3がセンサ膜10に加わるようになっている。
【0061】
電極6,7は、導電性の良好な金属からなり、永久磁石層4,5に対応した形状を有している。電極6,7は、それぞれ永久磁石層4,5の上に形成されている。この電極6,7は、後述するセンス電流Isをセンサ膜10に流すために設けられている。
【0062】
(センサ膜10の構成)
センサ膜10は、幅方向の長さ(トラック幅)W1、幅方向と交差する方向(奥行き方向といい、奥行き方向のうちの図1(B)の断面に向かう方向を「Y方向」という)の長さ(奥行き)がW2の矩形状に成形された薄膜である。本実施の形態では、トラック幅W1は約100nmに設定され、奥行きW2はトラック幅W1よりも小さく(W1>W2)設定されている。
【0063】
次に、図3〜図6を参照して、センサ膜10について詳しく説明する。図3はセンサ膜10の積層構造を模式的に示す断面図で、(A)はセンサ膜10を構成する各層を機能別に区分けして示す断面図、(B)はセンサ膜10の積層構造を各層の材質とともに示す断面図である。図4は、センサ膜10を構成する固定磁化層15、非磁性金属層16および自由磁化層17を磁化および磁界の向きとともに積層状態で示す斜視図である。図5は、固定磁化層15、非磁性金属層16および自由磁化層17の各層を磁化の向きとともに示す平面図で、(A)は自由磁化層17、(B)は非磁性金属層16、(C)は固定磁化層15を示している。
【0064】
さらに、図6はセンサ膜の構造を模式的に示す斜視図で、(A)はセンサ膜10の構造を模式的に示す斜視図、(B)は永久磁石バイアス層11の代わりに軟磁性隣接層19を有するセンサ膜20の構造を模式的に示す斜視図である。
【0065】
図3(A)に示すように、センサ膜10はGMR膜8、永久磁石バイアス層11および絶縁層12を有し、永久磁石バイアス層11と、絶縁層12と、GMR膜8とがこの順に積層された構成を有している。このセンサ膜10は永久磁石バイアス層11がバッファ絶縁層3に直に接する形で形成されている。
【0066】
GMR膜8は下地層13と、反強磁性層14と、固定磁化層15と、非磁性金属層16と、自由磁化層17と、保護層18とを有し、各層がこの順に積層された構成を有している。このGMR膜8は図4に示すように、非磁性金属層16に電極6,7を通って加えられるセンス電流Isが流され、そのセンス電流Isの形成する後述する電流磁界H2によって、自由磁化層17の磁化の向きを調整できるようになっている(詳しくは後述する)。また、GMR膜8は磁気抵抗効果のため、磁界の大きさによって抵抗値が変化する性質を有している。
【0067】
永久磁石バイアス層11は永久磁石からなる薄膜であって、図3(B)に示すように、CrTiからなるCrTi層11a(膜厚は約50Å)と、CoPtからなるCoPt層11b(膜厚は約300Å)と、TaからなるTa層11c(膜厚は約300Å)とを有し、各層がこの順に積層された3層構造を有している。この永久磁石バイアス層11はGMR膜8に後述する垂直バイアス磁界H1を加えるための垂直バイアス磁界層としての機能を有している。
【0068】
なお、永久磁石バイアス層11におけるCoPt層11bの厚みを増すことにより、垂直バイアス磁界H1の強度を高めることが可能である。また、センサ膜10の高さおよび永久磁石バイアス層11の高さを小さくすることでも、垂直バイアス磁界H1の強度を高めることが可能である。また、CoPt層11bの材質をパーマロイにすることもできる。
【0069】
絶縁層12は、アルミナ(Al)からなり、膜厚は約200Åとなっている。この絶縁層12はセンス電流IsがGMR膜8から永久磁石バイアス層11に流れないようにし、センス電流Isの永久磁石バイアス層11への分流による出力ロスを防ぐため、永久磁石バイアス層11とGMR膜8との間に挟み込まれている。
【0070】
下地層13は、NiCrからなる単層構造で膜厚は約50Åである。反強磁性層14はIrMnからなる単層構造で膜厚は約70Åである。
【0071】
固定磁化層15は、図3(B)に示すように、CoFeからなる第1のCoFe層15a(膜厚は約15Å)と、RuからなるRu層15b(膜厚は約8Å)と、CoFeからなる第2のCoFe層15c(膜厚は約20Å)とを有し、各層がこの順に積層された3層構造(強磁性材、非磁性金属材および強磁性材が積層されたシンセティック・ピンド構造)を有している。
【0072】
本実施の形態では、固定磁化層15は図4および図5(A)に示すように、磁化の向きが方向d15に沿った方向を向くように設定されている。方向d15は図1に示した磁性膜センサ100の断面に向かうY方向から、概ね180度反対の方向になっている。
【0073】
この固定磁化層15は所定の熱処理(例えば、250度〜300度程度の温度を2時間〜5時間程度加える処理)が施された後に磁化され(例えば、5〜10kOeの外部磁界を加えて磁化されている)その上で反強磁性層14に接合されている。これにより、固定磁化層15は反強磁性層14との間で交換結合をしていて、磁化の向きが固定され一定の向きを向くようになっている。このように、固定磁化層15は磁化の向きが固定された磁性層なので、ピンド層(pinned layer)ともいう。
【0074】
なお、固定磁化層15は3層構造とすることによって、交換結合力が実効的に増大しているが、この点については、例えば、特開2000−137906号公報に開示されている。また、固定磁化層15は強磁性材を用いた単層構造にしてもよい。
【0075】
非磁性金属層16は、Cuからなる単層構造で膜厚は約20Åである。この非磁性金属層16は、センス電流Isが流れるようになっている。非磁性金属層16は、Cuの代わりにAgやAuを用いても良い。
【0076】
自由磁化層17はCoFe(CoとFeの原子組成比が60:40)からなる単層構造で膜厚は約50Åである。この自由磁化層17は磁化が固定されてなく外部から加えられる磁界(以下、「外部磁界」といい、本実施の形態では、後述する垂直バイアス磁界H1、電流磁界H2、および永久磁石4、5からの静磁界H3との合成磁界になっている)の向きに応じて磁化の向きが容易に変わる。そのため、自由磁化層17はセンス電流Isを調整して電流磁界H2の大きさを調整することによって磁化の向きを変えることができる。
【0077】
このように、自由磁化層17は磁化の向きが固定されない磁性層であるため、フリー層(free layer)ともいう。なお、本実施の形態では永久磁石層4,永久磁石層5、永久磁石バイアス層11等の永久磁石によって外部から自由磁化層17に加えられる磁界をバイアス磁界という。
【0078】
本実施の形態では、自由磁化層17は外部から圧力Fの加わっていない初期状態では、センス電流Isの値を調整し、図4および図5(A)に示すように、磁化が外部磁界によって方向d17に沿った方向を向くようにしている。この方向d17は、X方向からY方向に向かって概ね45度回転した方向になっている。
【0079】
自由磁化層17を構成しているCoFeは、本実施の形態では、磁歪定数が3×10−5になっている。この磁歪定数は通常のHDD(Hard Disk Drive)のGMRヘッドに用いられているフリー層の磁歪定数と比較して、約20倍程度大きな値になっている。なお、CoFe合金の磁歪定数は、CoとFeとの組成に依存することが知られている。外部から圧力Fが加わったときにおけるセンサ膜10の感度を高めたい場合には、磁歪定数の大きな材料を選択し、感度を弱めたい場合には、磁歪定数の小さな材料を選択すればよい。
【0080】
また、自由磁化層17は、外部磁界に対して敏感に反応することが望ましく、バルクハウゼンノイズが小さいことも望ましい。バルクハウゼンノイズを低減するためには、例えば、GMR膜8に対して幅W1方向にバイアス磁界が加えられるようにすることができる(このバイアス磁界を水平バイアス磁界ともいう)。センサ膜10に対する水平バイアス磁界は、例えば、GMR膜8の両側に永久磁石4,5を配置することによって行うことができる。そのほか、図示はしないが、GMR膜8の両側に永久磁石4,5の代わりにバイアス磁界印加層を配置してもよい。このバイアス磁界印加層は、強磁性層と反強磁性層との積層体等によって構成され、磁化の向きが固定されている
【0081】
保護層18はRuからなるRu層18a(膜厚は約5Å)と、TaからなるTa層(膜厚は約20Å)18bとを有し、各層がこの順に積層された2層構造を有している。この保護層18はGMR膜8を圧力Fから保護する役割を有している。
【0082】
なお、上述のとおり、センサ膜10は、永久磁石バイアス層11とGMR膜8との間に絶縁層12が挟み込まれた構造となっているが、この構造の最も大きな長所の1つとして、プロセス的な面も含めて設計が比較的簡単なことが挙げられる。例えば、詳しくは後述するが、バイアス磁界によって傾けようとするGMR膜8の磁化の向きをαとすると、永久磁石バイアス層11は(MS・t)sinαとほぼ等しい残留磁化と厚さの積があれば良く、設計指針が単純かつ明快である。ここで、MSはGMR膜8の飽和磁化の大きさ、tはGMR膜8の厚さである。
【0083】
次に、外部から加わる圧力Fと、センサ膜10の特性の変化について、図7〜図10を参照して説明する。ここで、図7は変形したセンサ膜10およびバッファ絶縁層3を模式的に示す断面図で、(A)はプラス方向の圧力が加わった場合、(B)はマイナス方向の圧力が加わった場合を示している。図8はセンサ膜10および永久磁石層4,5を模式的に示す平面図で、(A)はセンサ膜10が縮んだ場合、(B)はセンサ膜10が伸びた場合を示している。
【0084】
さらに、図9はバイアス磁界と抵抗値との関係を示すグラフで、(A)はセンサ膜10が縮んだ場合、(B)はセンサ膜10が伸びた場合を示している。図10はバイアス磁界と抵抗値との関係を示す別のグラフで、(A)はセンサ膜10が縮んだ場合、(B)はセンサ膜10が伸びた場合を示している
【0085】
ところで、一般に磁性材には、長さの伸縮に応じて磁化し易い方向が変化するという性質がある。磁性材には、この性質に関連して、「磁歪」という特性パラメータがある。磁歪(Magnetostriction)とは、強磁性体に長さの変化などの機械的な歪を加えると磁化が変化し、逆に強磁性体に長さなどの機械的な歪を加えると、磁化が変化する性質を意味している。
【0086】
磁歪が正の値の磁性材は、長さが伸びるとその伸びた方向に磁化され易くなるが、長さが縮むとその縮んだ方向に磁化され難くなるという性質を有している。また、磁歪が負の値の磁性材は、長さが伸びるとその伸びた方向に磁化され難くなり、長さが縮むと縮んだ方向に磁化され易くなるという性質を有している。
【0087】
そして、磁性膜センサ100はセンサ膜10のトラック幅W1の変化に応じて自由磁化層17の磁化の方向が変わり、それによってセンサ膜10の抵抗値が変化することに着目して圧力Fを検出する(詳しくは後述する)。なお、自由磁化層17のようなCoFeからなる磁性材における組成と磁歪定数との関係を図示すると、例えば図34のようになる。
【0088】
ここで、磁歪パラメータの大きさは、センサ膜10に用いられる磁性材では、−0.000001〜+0.000001の値をとるようになっている。磁歪が0(ゼロ)の場合には、伸び縮みに対して、磁気的に全く変化しないことを意味している。これを「ゼロ磁歪」という。本実施の形態では、センサ膜10に用いられる磁性材は磁歪が「正」の特性を有することを想定しているので、伸ばされた方向に磁化されやすい性質を有している。
【0089】
そして、図7(A)に示すように、センサ膜10に上側から下向き(この向きをプラス方向という)の圧力F1が加わると、センサ膜10はバッファ絶縁層3とともに両端部分が中央に向かって手繰り寄せられるようにして下向きアーチ状に変形、すなわち湾曲する。この場合、センサ膜10が幅方向に縮んでトラック幅W1が小さくなる。
【0090】
反対に図7(B)に示すように、センサ膜10に上側から上向き(この向きをマイナス方向という)の圧力F2が加わった(すなわち、それまで加わっていた圧力が小さくなった)とすると、センサ膜10はバッファ絶縁層3とともに中央部分が引っ張られるようにして上向きアーチ状に変形、すなわち湾曲する。この場合、センサ膜10が幅方向に伸びてトラック幅W1が大きくなる。
【0091】
上述のとおり、自由磁化層17が磁歪を有するとした場合、外部からの圧力Fに応じてセンサ膜10のトラック幅W1が大きくなったり小さくなったりする。そのため、このトラック幅W1の大きさの変化に応じて、自由磁化層17が幅方向に磁化され易くなったり磁化され難くなったりするという現象が発生することとなる。この点について、図8を参照して説明する。
【0092】
ここで、本実施の形態では、磁歪が正の材料を用いて自由磁化層17が構成されていることを想定している。そのため、図8(B)に示すように、センサ膜10が幅方向に伸張したときは、伸張した幅方向に自由磁化層17が磁化されやすくなるから、磁化の向きが幅方向の磁界の影響を強く受けやすくなる。すると、自由磁化層17に幅方向と交差する奥行き方向の垂直バイアス磁界H1が加えられても(図4参照)、垂直バイアス磁界H1の影響が相対的に小さくなり、磁化が幅方向を向きやすくなる。
【0093】
逆に、図8(A)に示すようにセンサ膜10が幅方向に縮んだときは、縮んだ幅方向に自由磁化層17が磁化され難くなる。この場合、自由磁化層17は、幅方向の磁界の影響を受け難くなるため、垂直バイアス磁界H1の影響が相対的に大きくなり、磁化が奥行き方向を向きやすくなる。
【0094】
一方、GMR膜8には永久磁石バイアス層11によって垂直バイアス磁界H1が加えられる。続いてGMR膜8に加えられる垂直バイアス磁界H1について、図6を参照して説明する。
【0095】
本実施の形態では、図6(A)にも示すように、GMR膜8に垂直バイアス磁界H1を加えるため、永久磁石バイアス層11のような永久磁石からなる薄膜がGMR膜8に隣接して成膜されている。そのため、永久磁石バイアス層11が図6(A)の矢印a1方向に磁化されていると、静磁結合によって、GMR膜8に矢印a2方向のバイアス磁界H1が加わるようになっている。このバイアス磁界H1は静磁界H3に直交しているので、本実施の形態では、垂直バイアス磁界という。
【0096】
そして、GMR膜8に対して垂直バイアス磁界H1を加える場合、次の点を考慮することが望ましい。一般に磁性材は外部から加わるバイアス磁界の大きさに応じて抵抗値が変化するが、その抵抗値の変化する割合が長さの伸縮に応じて変わるという性質を有している。GMR膜8の場合、図9(A)に示すように、センサ膜10のトラック幅W1が小さくなった場合は、センサ膜10の抵抗値の変化が急峻になり、図9(B)に示すように、トラック幅W1が大きくなった場合は抵抗値の変化が緩慢になるといった性質を有している。
【0097】
ところが、図10(A)、(B)に示すように、バイアス磁界の大きさを大きく設定しすぎると、バイアス磁界の大きさに応じて抵抗値の変化する大きさ(抵抗値の変動幅)が小さくなってしまう。
【0098】
このように、バイアス磁界をあまりに大きくしてしまうと、最大の抵抗変化量(MR変化率)で規定される抵抗値だけ(図10(A)では抵抗値R1、図10(B)では抵抗値R2)が検出値として常時現われるようになってしまい、所望の抵抗値の変化を得ることが困難になる。この点を考慮すると、バイアス磁界はセンサ膜10のトラック幅W1が最も小さくなり、自由磁化層17が最も磁化されやすい状態になっても、抵抗値が飽和しない程度の大きさに設定する必要がある。
【0099】
磁性膜センサ100の出力は、センサ膜10の抵抗値とセンス電流Isの積である電圧値として与えられる。従って、磁性膜センサ100の出力値はセンス電流Isを大きくするか、センサ膜10のトラック幅W1を大きくすることで高めることができる。また、センサ膜10の膜厚を小さくすると、それに応じて抵抗値が高くなるからセンサ膜10の膜厚を小さくするようにしても良い。
【0100】
(磁性膜センサの動作内容)
続いて、磁性膜センサ100の動作内容について、主にセンサ膜10の動作内容を中心に説明する。
【0101】
磁性膜センサ100は、電極6,7を通じてセンス電流Isをセンサ膜10に通電した状態で作動させる。このとき、センス電流Isは図5(B)に示すように、非磁性金属層16をX方向に沿って流れ、右ねじの法則によって、センス電流Isの周りを同心円状に取り巻く電流磁界H2を発生させる(図4参照)。
【0102】
そして、外力Fが加わっていない状態では、センサ膜10が次のようになっている。すなわち、固定磁化層15は図5(A)に示すように、方向d15の方向に磁化が固定されている。また、自由磁化層17は、磁化が外部磁界によって方向d17の方向を向いている。
【0103】
ここで、垂直バイアス磁界H1および電流磁界H2がY方向を向き、静磁界H3がX方向を向いている。外部磁界は、垂直バイアス磁界H1、電流磁界H2および静磁界H3を合成した磁界である。本実施の形態では、センス電流Isを調整することによって、この合成した磁界の向きがX方向からY方向に向かって概ね45度傾いた方向に設定されるようにしている。自由磁化層17の磁化の向きは外部磁界に沿った方向を向くため、外部磁界と同じ方向のd17の方向を向いている。この場合、固定磁化層15の磁化の向きと自由磁化層17の磁化の向きのなす角θは、θ1(約135度)になっている。
【0104】
ここで、プラス方向の圧力F1がセンサ膜10に加わったとする。この場合、センサ膜10は、キャビティ2を跨ぐようにして配置されている。キャビティ2は適度な深さを有するから、絶縁層1の表面にキャビティ2が形成されていることによって、センサ膜10が変形するときの障害となるものが除去された格好になっていて、センサ膜10が変形しやすくなっている。すなわち、絶縁層1において、キャビティ2がセンサ膜10の変形を許容する変形許容部となっている。そして、センサ膜10は、キャビティ2を跨ぐようにして配置されているから、図7(B)に示したように圧力F2が加わると、キャビティ2の両側2つの端部よりも内側がキャビティ2の外側に向かって湾曲するし、図7(A)に示したように圧力F1が加われば、キャビティ2の両側2つの端部よりも内側がキャビティ2の内側に入り込むようにも湾曲する。
【0105】
そのため、センサ膜10は圧力F1が微弱であっても敏感に反応して的確に変形するようになっている。しかも、センサ膜10はバッファ絶縁層3の上に形成されているから、変形したときにバッファ絶縁層3によって支えられるようにもなっている。
【0106】
そして、プラス方向の圧力F1がセンサ膜10に加わるとセンサ膜10のトラック幅W1が小さくなるため、自由磁化層17が幅方向に磁化され難くなる。この場合、自由磁化層17は奥行き方向に磁化されやすくなるため、垂直バイアス磁界H1、電流磁界H2の影響を受けやすくなり、磁化の方向が方向d17からY方向に動く。この場合、自由磁化層17の磁化の方向は例えば図5(C)に示す方向d17aのようになる。
【0107】
したがって、固定磁化層15の磁化の向きと自由磁化層17の磁化の向きとのなす角θはθ1からθ2(約180度)に変化する(θ1<θ2)。
【0108】
ところで、固定磁化層15の磁化の向きと自由磁化層17の磁化の向きとのなす角θと、センサ膜10の抵抗値Rとの間には、R=(1−cosθ)/2の関係があることがわかっている。
【0109】
そのため、上記のようになす角θがθ1からθ2に変化したことに伴い、抵抗値Rが変化することとなる。なす角θがθ1の場合、cosθは約−0.707であり、なす角θがθ2の場合、cosθは約−1なので、抵抗値Rは約0.853から1に変化する。
【0110】
これに対し、センサ膜10にマイナス方向の圧力F2が加わったとする。すると、センサ膜10のトラック幅W1が大きくなるため、幅方向に自由磁化層17が磁化されやすくなる。すると、自由磁化層17は静磁界H3の影響を受けやすくなるため、磁化の向きがY方向とは反対の方向に向かって動き(図示せず)、なす角θがθ1よりも小さくなる。したがって、抵抗値Rは初期状態よりも小さくなる。
【0111】
このように、磁性膜センサ100は圧力Fに応じてセンサ膜10のトラック幅W1が変わり、そのトラック幅W1の変化に応じて抵抗値Rが変化するようになっている。磁性膜センサ100の出力は、センサ膜10の抵抗値Rとセンス電流Isの積である電圧値Vとして与えられ、抵抗値Rの変化が電圧値Vの変化として取り出される。磁性膜センサ100はセンサ膜10が圧力Fが微弱でも敏感に反応して的確に変形し、それによって抵抗値Rが変化するから、圧力の検出精度が高い。磁性膜センサ100は、ロボットのタッチセンサのような高い感度が要求されるセンサとして好適である。特に、GMR膜8を用いることによって、抵抗値の変動幅を大きくすることができる(MR変化率を高くすることができる)ので、圧力の検出精度を高くすることができる。
【0112】
(変形例1)
上記のほか、GMR膜8に垂直バイアス磁界H1を加える場合、図6(B)に示すように、永久磁石バイアス層11の代わりに、軟磁性隣接層(Soft Adjacent Layer:SAL)と呼ばれる軟磁性層19を形成してセンサ膜20としてもよい。
【0113】
このセンサ膜20でも、図6(B)に示すように、軟磁性層19に電流を流さないようにするため、絶縁層12(または高抵抗相のTaからなる薄膜)が軟磁性層19とGMR膜8との間に挟み込まれている。
【0114】
センサ膜20では、センス電流Isが紙面手前側から奥に向かって流れ、右ねじの法則によって、電流磁界H2を発生させる。すると、軟磁性層19はこの電流磁界H2によって矢印a1方向に磁化される。軟磁性層19の磁化が変化し、端部に磁極が発生すると、GMR膜8には矢印a2方向の垂直バイアス磁界H1が加わるようになる。
【0115】
(変形例2)
図11は別の磁性膜センサを模式的に示す斜視図で、(A)は磁性膜センサ101を示す斜視図、(B)は磁性膜センサ102を示す斜視図である。
【0116】
磁性膜センサ101は磁性膜センサ100と比較して、バッファ絶縁層3を有しない点と、永久磁石層4,5を有しない点とで相違している。また、磁性膜センサ101は、電極6,7と形状の異なる電極26,27を有する点と、磁性膜センサ100のトラック幅W1が小さくなっている点でも相違している。
【0117】
磁性膜センサ101はバッファ絶縁層3を有しないから、磁性膜センサ100よりもセンサ膜10が変形しやすく、その分センサ膜10の感度が良好である。また、電極26,27は、センサ膜10の端面S側の端部が一部切り欠かれて切り欠き端面26a,27aとなっている。そのため、電極26,27はセンス電流Isが流れやすくなっている。また、永久磁石層4,5を有しないから、永久磁石バイアス層11にセンス電流Isが流れることによる出力ロスを防止することができる。磁性膜センサ101はその他の点では、磁性膜センサ100と同じ作用効果を奏するものである。
【0118】
磁性膜センサ102は磁性膜センサ101と比較して、永久磁石層24,25を有する点で相違している。そのため、磁性膜センサ102は自由磁化層17のバルクハウゼンノイズを低減できるようになっている。磁性膜センサ102もその他の点では、磁性膜センサ100と同じ作用効果を奏するものである。
【0119】
また、図示はしないが、磁性膜センサ101,102のほか、上述した磁性膜センサ100についても、GMR膜8の代わりにMR膜、TMR(トンネル磁気抵抗効果)膜、AMR(異方性磁気抵抗効果)膜を用いてもよい。
【0120】
(磁性膜センサの製造方法)
次に、上述の図1(A),(B)とともに、図12〜図15を参照して、上述の構造を有する磁性膜センサ100の製造方法について説明する。
【0121】
ここで、図12〜図15は、磁性膜センサ100を製造する各工程における図1(B)に対応する断面図を示している。
【0122】
本実施の形態に係る製造方法では、まず、図12に示すようにアルミナ(Al)またはSiOなどの絶縁層1の表面全体にフォトレジストを塗布する。その上で、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行い、絶縁層1の表面をキャビティ2に対応した形状に露出させるレジストパターン30を形成する。そして、レジストパターン30をマスクにして、反応性イオンエッチング(以下「RIE」という)を行い(この場合、BCLを用いる)、絶縁層1のレジストパターン30で被覆されない表面部分を一部除去する。すると、キャビティ2が形成される。
【0123】
続いて、図13に示すように、キャビティ2を埋めるためのフォトレジスト31を塗布し、その後、絶縁層1の表面全体にアルミナ(Al)またはSiO等の絶縁材の被膜3Aを形成し、その被膜3Aの不要な部分を除去するとバッファ絶縁層3が形成される。
【0124】
さらに、センサ膜10を形成するためのセンサ層32を絶縁層1の表面全体に形成する。その上で、センサ層32の表面全体にフォトレジストを塗布する。さらに、所定のフォトマスクを用いた露光、現像を行い、センサ膜10に対応した部分にフォトレジストが残るようにしてレジストパターン33を形成する。そのレジストパターン33を用いてセンサ層32を対象とするエッチングを行い、センサ層32のレジストパターン33で被覆されない部分を除去する。
【0125】
次に、図14に示すように、絶縁層1の表面全体に、永久磁石層4,5を形成するための磁性材を用いて、スパッタリング等により絶縁層1の表面全体に磁性層34を形成する。さらに、続いて、電極6,7を形成するための導電性材料を用いて、スパッタリング等により絶縁層1の表面全体に導電層35を形成する。
【0126】
続いて、フォトレジスト31とレジストパターン33を溶解させる材料を用いてリフトオフを行いフォトレジスト31とレジストパターン33を除去する。このとき、レジストパターン33とともに、レジストパターン33を被覆している磁性層34と導電層35も除去する。すると、図15に示す状態が得られる。このリフトオフを行うことにより、キャビティ2が形成されるが、リフトオフが行われたことによって、キャビティ2の底部に穴部2a,2bが形成されている。
【0127】
さらに続いて、残された磁性層34と導電層35のうちの不要な部分をエッチング等により除去して、永久磁石層4,5と電極6,7を形成する。すると、磁性膜センサ100が得られる。
【0128】
こうして得られる磁性膜センサ100は上述の構成を有するから、圧力の検出精度が高く、ロボットのタッチセンサのような高い感度が要求されるセンサとして好適である。
【0129】
また、以上のようにして磁性膜センサ100を製造することによって、磁性膜センサ100は、他の半導体装置と一緒に製造することができる。
【0130】
第2の実施の形態
(磁性膜センサ103の構造)
次に、図16を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る磁性膜センサ103の構造について説明する。ここで、図16は本発明の第2の実施の形態に係る磁性膜センサ103を示し、(A)は磁性膜センサ103の要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。なお、図示の都合上、図16(A)では絶縁層1および後述する被膜41が省略されている。
【0131】
磁性膜センサ103は、第1の実施の形態における磁性膜センサ100と比較して、センサ膜10の変わりにセンサ膜40を有する点、永久磁石層4,5がセンサ膜40の上面に接している点とで相違し、そのほかの点では一致している。センサ膜40はセンサ膜10と比較してトラック幅W1よりも大きいトラック幅W3を有する点で異なるが、その他の点では一致している。センサ膜40のトラックW3はセンサ膜10のトラック幅W1よりも大きいため(W3>W1)、センサ膜10よりも抵抗値Rの変化が大きくなっている。そのため、磁性膜センサ103は、磁性膜センサ100と同様の作用効果を奏するだけでなく、センサ膜40の抵抗値Rの変化が大きいことによって、圧力の検出精度が磁性膜センサ100よりも良好となっている。
【0132】
(磁性膜センサ103の製造方法)
次に、上述の図16(A),(B)とともに、図17〜図23を参照して、上述の構造を有する磁性膜センサ103の製造方法について説明する。
【0133】
ここで、図17〜図23は、磁性膜センサ103を製造する各工程における図16(B)に対応する断面図を示している。
【0134】
本実施の形態に係る製造方法では、まず、図17に示すように、絶縁層1の表面全体にフォトレジストを塗布する。その上で、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行い、絶縁層1の表面をキャビティ2に対応した形状に露出させるレジストパターン30を形成する。そして、そのレジストパターン30をマスクにして、第1の実施の形態と同様のRIEを行い、絶縁層1のレジストパターン30で被覆されない表面部分を一部除去する。すると、図18に示すように、キャビティ2が形成される。
【0135】
次に、図19に示すように、絶縁層1の表面全体に被膜41を形成する。この被膜41はRuを用いて形成され、化学機械研摩(以下「CMP」という)のストッパとしての役割を有するものである。続いて、キャビティ2を埋めるためのフォトレジスト31を塗布し、その後、絶縁層1の表面全体にアルミナ(Al)からなる被膜42を形成する。次いで図20に示すように、絶縁層1の表面全体をCMPにより研摩して、表面平坦化処理を行う。
【0136】
さらに、図21に示すように、絶縁層1の表面全体にアルミナ(Al)またはSiO等の絶縁材の被膜3Aを形成し、その被膜3Aの不要な部分を除去するとバッファ絶縁層3が形成される。また、バッファ絶縁層3の上にセンサ膜40を形成するためのセンサ層43を形成した上で、センサ層43の不要な部分を除去すると、センサ膜40が形成される。
【0137】
続いて、絶縁層1の表面全体にフォトレジストを塗布し、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行い図示しないレジストパターンを形成する。このレジストパターンはセンサ膜40のうちの永久磁石層4,5によって被覆されない部分にフォトレジストが残るようにして形成する。その上で、絶縁層1の表面全体に磁性層34を形成する。この磁性層34は永久磁石層4,5を形成するための磁性材を用いて、例えばスパッタリング等により形成される。続いて、絶縁層1の表面全体に導電層35を形成する。この導電層35は電極6,7を形成するための導電性材料を用いて、例えばスパッタリング等により形成される。
【0138】
続いて、フォトレジスト31とレジストパターンを溶解させる材料を用いてリフトオフを行いフォトレジスト31とそのレジストパターンを除去する。このとき、レジストパターンとともに、レジストパターンを被覆している磁性層34と導電層35も除去する。リフトオフを行うことにより、第1の実施の形態と同様のキャビティ2が形成される。
【0139】
さらに続いて、残された磁性層34と導電層35のうちの不要な部分をエッチング等により除去することにより、図22に示すように、磁性膜センサ103が得られる。以上のようにして磁性膜センサ103を製造する場合も、磁性膜センサ100を製造する場合と同様の作用効果が得られる。
【0140】
この磁性膜センサ103は、図23に示すように、外部からの圧力Fが加わったときにセンサ膜40が変形してトラック幅W3の大きさが変わるため、磁性膜センサ100と同様に高精度で圧力Fを検出することができる。また、トラック幅W3がトラック幅W1よりも大きいため、抵抗値Rの変化が大きく、磁性膜センサ100よりも高精度で圧力Fを検出することができる。
【0141】
(変形例1)
図24は別の磁性膜センサ104を模式的に示し、(A)は磁性膜センサ104の要部を示す平面図、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。また、(C)は別の磁性膜センサ105における(B)同様の断面図である。
【0142】
磁性膜センサ104は第2の実施の形態における磁性膜センサ103と比較して、バッファ絶縁層3を有しない点で相違し、そのほかの点では一致している。磁性膜センサ104はバッファ絶縁層3を有しないから、磁性膜センサ103よりもセンサ膜40が変形しやすく、その分センサ膜40の感度が良好である。
【0143】
磁性膜センサ105は磁性膜センサ104と比較して、永久磁石層4,5、電極6,7およびセンサ膜40の形成されている場所が異なっている点で相違している。
【0144】
磁性膜センサ104の場合、永久磁石層4,5、電極6,7は絶縁層1の表面上に形成されているが、磁性膜センサ105の場合、永久磁石層4,5、電極6,7は絶縁層1の中に埋め込まれている。そして、その埋め込まれた永久磁石層4,5に接するようにして、センサ膜40が形成されている。
【0145】
また、磁性膜センサ104の場合、永久磁石バイアス層11が絶縁層1の表面上に形成されているが、磁性膜センサ105の場合は永久磁石バイアス層11が外側を向いている。そのため、プラス方向の圧力Fが加わった場合、磁性膜センサ104では、センサ膜40のトラック幅W3が小さくなるが、磁性膜センサ105では、センサ膜40のトラック幅W3が大きくなる。したがって、磁性膜センサ104と磁性膜センサ105とは抵抗値Rの変化の仕方が相違している。
【0146】
第3の実施の形態
(磁性膜センサ106の構造)
次に、図25、図26を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る磁性膜センサ106の構造について説明する。ここで、図25は本発明の第3の実施の形態に係る磁性膜センサ106を示す図1(B)同様の断面図である。また、図26は磁性膜センサ106のフォトレジスト31が膨張したときを示す図1(B)同様の断面図である。この磁性膜センサ106は、磁性膜センサ100、103などと異なり、温度を検出する温度センサである。
【0147】
磁性膜センサ106は上述した磁性膜センサ103と比較して、キャビティ2の幅が磁性膜センサ103のキャビティ2よりも大きく形成されている点と、キャビティ2にフォトレジスト31が埋め込まれている点とで相違し、そのほかの点では一致している。
【0148】
磁性膜センサ106は、キャビティ2にフォトレジスト31が埋め込まれている。フォトレジスト31はセンサ膜40よりも柔軟な材料であって熱膨張により変形しやすい。そのため、フォトレジスト31はセンサ膜40の変形を許容する変形許容部となっている。
【0149】
磁性膜センサ106は、その変形許容部としてのフォトレジスト31を跨ぐようにしてセンサ膜40が形成されているので、温度変化に起因してフォトレジスト31の膨張があったときにセンサ膜40が変形し、それによってセンサ膜40の長さが変化する。センサ膜40のトラック幅W3の大きさが変化すれば、抵抗値Rが変わるから、温度変化に応じて電圧値Vが変化する。
【0150】
したがって、磁性膜センサ106は温度を検出することができるようになっている。また、センサ膜40が温度変化に敏感に反応するから、温度変化を精度よく検出できるようになっている。
【0151】
(磁性膜センサ106の製造方法)
磁性膜センサ106は、磁性膜センサ103とほぼ同様の手順によって製造することができる。磁性膜センサ106は、図17〜図20までの工程を磁性膜センサ103と同様に実行する。ただし、磁性膜センサ103よりもキャビティ2の幅を大きくする。そして、図21に示すように、磁性膜センサ103と同様にして絶縁層1の表面にバッファ絶縁層3を形成し、さらに、センサ膜40を形成する。
【0152】
続いて、磁性膜センサ103と同様にして絶縁層1の表面全体にフォトレジストを塗布し、所定のフォトマスクを用いて露光、現像を行って、磁性膜センサ103の場合と同様のレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、センサ膜40のうちの永久磁石層4,5を形成しようとする部分を露出させるようにして形成する。その上で、磁性膜センサ103と同様にして、磁性層34および導電層35を形成し、その後、レジストパターンを除去する。この場合、フォトレジスト31は除去しないようにする。以上のようにすることによって、磁性膜センサ106が得られる。
【0153】
第4の実施の形態
(磁性膜センサ107の構造)
次に、図27〜図29を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る磁性膜センサ107の構造について説明する。ここで、図27〜図29は本発明の第4の実施の形態に係る磁性膜センサ107を示す図1(B)同様の断面図である。この磁性膜センサ107も、磁性膜センサ106と同様に温度を検出する温度センサである。
【0154】
磁性膜センサ107は磁性膜センサ106と比較すると、バッファ絶縁層3を有しない点と、バイメタル層50を有する点とで相違している。
【0155】
バイメタル層50は熱膨張率の異なる2枚の金属層42,43を張り合わせたもので、金属層42,43がこの順に積層された2層構造を有している。また、バイメタル層50は、センサ膜40と同様の矩形状に形成されている。さらに、バイメタル層50はセンサ膜40の下側に配置されて永久磁石バイアス層11に接しており、永久磁石バイアス層11と被膜41との間に挟みこまれている。
【0156】
金属層42,43は、鉄(Fe)とニッケル(Ni)の合金に、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、銅(Cu)等を添加して、熱膨張率が異なるようにして形成されている。
【0157】
バイメタル層50は熱膨張率が異なる2枚の金属層42,43を張り合わせたものであるから、温度の変化によって曲がり方が変化する性質を有している。この場合、例えば、図28に示すように、バイメタル層50がキャビティ2の内側に向かって曲がったり、図29に示すように、キャビティ2の外側に向かって曲がったりする。バイメタル層50がこのような性質を有することから、温度の変化によってセンサ膜40のトラック幅W3の大きさが変わり、センサ膜40の抵抗値Rが変化する。
【0158】
したがって、磁性膜センサ107は温度変化に応じて電圧値Vが変化するから温度を検出することができる。また、センサ膜40が温度変化に敏感に反応するから、温度変化を精度よく検出できるようになっている。しかも、バイメタル層50を有することにより、磁性膜センサ106よりも敏感に温度変化に反応するため、温度変化をより精度よく検出できるようになっている。
【0159】
(磁性膜センサ107の製造方法)
磁性膜センサ107は、磁性膜センサ103とほぼ同様の手順によって製造することができる。磁性膜センサ107は、図17〜図20までの工程を磁性膜センサ103と同様に実行する。ただし、磁性膜センサ103よりもキャビティ2の幅を大きくする。そして、図30に示すように、絶縁層1の表面にバッファ絶縁層3を形成することなくバイメタル層50を形成し、その上に重ねてセンサ膜40を形成する。これ以降の工程を磁性膜センサ103と同様にして実行することによって、磁性膜センサ107が得られる。
【0160】
第5の実施の形態
(磁性膜センサ108の構造)
次に、図31を参照して、本発明の第5の実施の形態に係る磁性膜センサ108について説明する。ここで、図31は本発明の第5の実施の形態に係る磁性膜センサ108を示す図1(A)同様の平面図である。この磁性膜センサ108は圧力を検出する圧力センサである。
【0161】
磁性膜センサ108は、磁性膜センサ100と比較して、永久磁石層4,5の代わりに永久磁石層47を有する点と、電極6,7の代わりに電極45,46を有する点とが相違している。また、磁性膜センサ108は、磁性膜センサ100と比較して、センサ膜10の代わりにセンサ膜44を有する点と、キャビティ2の寸法が異なる点と、コイル48を有する点とで相違し、そのほかの点では一致している。
【0162】
電極45,46はセンサ膜44の幅方向の両側部分に接続されている。永久磁石層47は、図31に示すように、奥行き方向に沿って伸びる第1の永久磁石層および第2の永久磁石層としての2つの磁性部47a,47bと、幅方向に沿って伸びる第3の永久磁石層としての磁性部47cとを有している。永久磁石層47は、磁性部47cの両側に磁性部47a,47bが接続され一体となった構造を有している。そして、磁性部47a,47bがそれぞれ電極45,46に対峙し、磁性部47a,47bの間にセンサ膜44、電極45,46が位置するようにして配置されている。また、磁性部47cには、図31に示すように、コイル48が巻き付けられている。コイル48は磁性部47cに螺旋状に巻きつけられたヘリカル状コイルである。
【0163】
以上の構成を有する磁性膜センサ108では、磁性膜センサ100と同様に、センサ膜44に対して、外部磁界として、磁性部47a,47bによる静磁界H3が加えられる。また、磁性部47cに巻き付けられているコイル48に電流Icを流すことによって、磁界H4が形成され、この磁界H4もセンサ膜44に加えられるようになっている。
【0164】
磁性膜センサ108も、圧力の変化に応じてセンサ膜44のトラック幅の大きさが変わり、それによってセンサ膜44の抵抗値Rが変化するため、磁性膜センサ100と同様に圧力を検出することができる。また、センサ膜44が圧力Fに敏感に反応して的確に変形し、それによって抵抗値Rが変化するから、圧力の検出精度が高い。磁性膜センサ108も、ロボットのタッチセンサのような高い感度が要求されるセンサとして好適である。
【0165】
第6の実施の形態
(磁性膜センサ109,110の構造)
次に、図32、33を参照して、本発明の第6の実施の形態に係る磁性膜センサ109,110について説明する。ここで、図32は本発明の第6の実施の形態に係る磁性膜センサ109を示す図1(B)同様の断面図、図33は磁性膜センサ110を示す図1(B)同様の断面図である。この磁性膜センサ109,110は圧力を検出する圧力センサである。
【0166】
磁性膜センサ109は絶縁層51,52、53、54を有し、各層がこの順に積層された構成を有している。また、磁性膜センサ110も絶縁層51,52、53、54を有し、各層がこの順に積層された構成を有している。
【0167】
磁性膜センサ109,110は双方ともに絶縁層52に埋め込まれた第3の永久磁石層としての永久磁石層55と、絶縁層54に埋め込まれた第1の永久磁石層および第2の永久磁石層としての永久磁石層56、57とを有している。
【0168】
また、磁性膜センサ109,110は双方ともに第1の電極および第2の電極としての電極58,59を有し、それぞれ薄膜コイル60、61を有している。
【0169】
絶縁層54は絶縁層1と同様に表面にキャビティ2を有する凹部付絶縁層である。このキャビティ2を跨ぐようにして、バッファ絶縁層3が形成され、バッファ絶縁層3にセンサ膜40が形成されている。センサ膜40の両側部分に電極58,59が接続されている。また、電極58,59の外側に永久磁石層56、57が配置されている。
【0170】
そして、磁性膜センサ109では、永久磁石層56、57が永久磁石層55に接続されている。この永久磁石層55に薄膜コイル60が巻きつけられ、永久磁石層55の周囲を周回している。薄膜コイル60はヘリカル型のコイルである。
【0171】
また、磁性膜センサ110でも、永久磁石層56、57が永久磁石層55に接続されている。ただし、磁性膜センサ110では、薄膜コイル61が永久磁石層56、57の周囲に形成されている。薄膜コイル61は図示しない軸を中心にして、永久磁石層56、57の周囲を周回するように形成された渦巻き状のコイルである。
【0172】
磁性膜センサ109,110はX方向の静磁界H3として、永久磁石層56、57によって形成される静磁界と、薄膜コイル60、61に通電して形成される電流磁界H4とがセンサ膜40に加えられる。また、電極58,59を通じてセンス電流Isを流せば電流磁界H2(図32では図示せず)もセンサ膜40に加えられる。
【0173】
磁性膜センサ109,110も、圧力の変化に応じてセンサ膜40のトラック幅の大きさが変わり、それによってセンサ膜40の抵抗値Rが変化するため、磁性膜センサ100と同様に圧力を検出することができる。また、センサ膜40が圧力Fに敏感に反応して的確に変形し、それによって抵抗値Rが変化するから、磁性膜センサ109,110による圧力の検出精度が高いものとなる。したがって、磁性膜センサ109,110も、ロボットのタッチセンサのような高い感度が要求されるセンサとして好適である。
【0174】
以上の各実施の形態では、圧力センサおよび温度センサを例にとって説明しているが、本発明は、加速度センサにも適用することができる。
【0175】
例えば、磁性膜センサ100、103のセンサ膜10、40に加速度に応じた外力が加わるようにして、磁性膜センサ100、103を加速度センサとして用いることができる。この加速度センサでは、例えば、携帯電話機やハードディスクドライブといった電子機器の落下により発生する加速度を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0176】
本発明を適用することにより、従来のセンサとは別の動作原理に基づくMEMS技術を応用した新たな高感度センサおよびその製造方法が得られる。本発明は磁性膜センサおよびその製造方法で利用することができる。
【符号の説明】
【0177】
1…絶縁層、2…キャビティ、3…バッファ絶縁層、4,5…永久磁石層、6,7…電極、8…GMR膜、10、20…センサ膜、11…永久磁石バイアス層、15…固定磁化層、16…非磁性金属層、17…自由磁化層、50…バイメタル層、100,102,102,103,104,105…磁性膜センサ、106,107,108,109,110…磁性膜センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気歪を発生するスピンバルブ膜を有し、該スピンバルブ膜に前記磁気歪を発生させる磁気歪構造を有する磁性膜センサ。
【請求項2】
前記磁気歪構造は、前記スピンバルブ膜を湾曲させて前記磁気歪を発生させるように構成されている請求項1記載の磁性膜センサ。
【請求項3】
前記スピンバルブ膜は、前記磁気歪に応じて抵抗値が変化するように構成されている請求項1または2記載の磁性膜センサ。
【請求項4】
磁気歪を発生する磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有し、前記磁性膜が前記凹部を跨ぐようにして前記凹部付絶縁層に形成された構成を有する磁性膜センサ。
【請求項5】
磁気歪を発生する磁性膜と、表面の少なくとも一部が前記磁性膜よりも柔軟な変形許容部となっているベース層とを有し、前記磁性膜が前記変形許容部を跨ぐようにして前記ベース層に形成された構成を有する磁性膜センサ。
【請求項6】
前記凹部付絶縁層の表面上に前記凹部を跨ぐようにして形成されたバッファ絶縁層を更に有し、該バッファ絶縁層の上に前記磁性膜が形成されている請求項4記載の磁性膜センサ。
【請求項7】
前記ベース層の表面上に前記変形許容部を跨ぐようにして形成されたバッファ絶縁層を更に有し、該バッファ絶縁層の上に前記磁性膜が形成されている請求項5記載の磁性膜センサ。
【請求項8】
前記磁性膜に対し、前記凹部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、該第1の永久磁石層および第2の永久磁石層は、前記磁性膜の前記凹部を跨ぐ方向の両側に配置されている請求項4または6記載の磁性膜センサ。
【請求項9】
前記磁性膜に対し、前記変形許容部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、該第1の永久磁石層および第2の永久磁石層は、前記磁性膜の前記変形許容部を跨ぐ方向の両側に配置されている請求項5または7記載の磁性膜センサ。
【請求項10】
前記磁性膜に通電するための第1の電極および第2の電極を更に有し、該第1の電極および第2の電極は、前記磁性膜の前記凹部を跨ぐ方向の両側に配置されている請求項4,6,8のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項11】
前記磁性膜に通電するための第1の電極および第2の電極を更に有し、該第1の電極および第2の電極は、前記磁性膜の前記変形許容部を跨ぐ方向の両側に配置されている請求項5,7,9のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項12】
前記磁性膜の前記凹部を跨ぐ方向のトラック幅が該トラック幅に交差する方向の奥行きよりも大きく形成されている請求項4,6,8,10のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項13】
前記磁性膜は、GMR膜、AMR膜、MR膜、TMR膜、CPP膜のいずれかと永久磁石からなる永久磁石層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有する請求項4,6,8,10,12のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項14】
前記磁性膜は、前記凹部を跨ぐ方向のトラック幅の変化に応じて磁化の向きが変わる自由磁化層と、磁化の向きが変わらない固定磁化層とを積層した構成を有する請求項4,6,8,10,12,13のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項15】
前記磁性膜に対し、前記凹部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、
前記磁性膜は、GMR膜と、前記第1の永久磁石層および第2の永久磁石層によって加えられる磁界と交差する方向の磁界を前記GMR膜に加えるためのバイアス磁界層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有する請求項4,6,8,10,12,13のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項16】
前記磁性膜に対し、前記変形許容部を跨ぐ方向に沿った磁界を加えるための第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を更に有し、
前記磁性膜は、GMR膜と、前記第1の永久磁石層および第2の永久磁石層によって加えられる磁界と交差する方向の磁界を前記GMR膜に加えるためのバイアス磁界層との間に絶縁層が挟み込まれた構成を有する請求項5,7,9,11のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項17】
前記第1の永久磁石層および第2の永久磁石層を接続する第3の永久磁石層と、前記第1、第2、第3の永久磁石層のいずれかの周囲を周回する薄膜コイルとを更に有する請求項8記載の磁性膜センサ。
【請求項18】
前記凹部付絶縁層の表面上に前記凹部を跨ぐようにして形成されたバイメタルを更に有し、該バイメタルの上に前記磁性膜が形成されている請求項4,6,8,10,12,13のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項19】
前記凹部にフォトレジストが埋め込まれた構成を有する請求項4,6,8,10,12,13のいずれか一項記載の磁性膜センサ。
【請求項20】
磁気歪を発生する磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有する磁性膜センサの製造方法であって、
絶縁層の表面に凹部を形成して前記凹部付絶縁層を形成する工程と、
前記凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち、前記凹部を跨ぐようにして前記凹部付絶縁層の表面に前記磁性膜を形成する工程と、
リフトオフを行い、前記凹部に埋め込まれている前記フォトレジストを除去する工程とを有する磁性膜センサの製造方法。
【請求項21】
磁気歪を発生する磁性膜と、表面に凹部が形成された凹部付絶縁層とを有する磁性膜センサの製造方法であって、
絶縁層の表面に凹部を形成して前記凹部付絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面に前記凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち、前記凹部付絶縁層の表面に絶縁材からなる被膜を形成する工程と、
前記被膜が形成された前記凹部付絶縁層の表面をCMPで研磨する工程と、
前記CMPで研磨された前記凹部付絶縁層の表面に前記凹部を跨ぐようにして前記磁性膜を形成する工程と、
リフトオフを行い、前記凹部に埋め込まれている前記フォトレジストを除去する工程とを有する磁性膜センサの製造方法。
【請求項22】
前記磁性膜を形成する工程と、前記フォトレジストを除去する工程との間に、磁性材からなる磁性層および導電材料からなる導電層を前記凹部付絶縁層の表面に形成する工程を更に有する請求項20記載の磁性膜センサの製造方法。
【請求項23】
前記磁性膜を形成する工程において、前記凹部を埋めるフォトレジストを塗布したのち、前記凹部を跨ぐようにして前記凹部付絶縁層の表面にバッファ絶縁層を形成し、該バッファ絶縁層に接するようにして前記磁性膜を形成する請求項20記載の磁性膜センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2011−247897(P2011−247897A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149309(P2011−149309)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【分割の表示】特願2007−230674(P2007−230674)の分割
【原出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【特許番号】特許第4800452号(P4800452)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(500475649)ヘッドウェイテクノロジーズ インコーポレイテッド (251)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【出願人】(507298522)
【Fターム(参考)】