説明

移動通信システム、該システムに用いられる通信制御方法及び通信制御プログラム

【課題】携帯電話機などの移動通信端末が紛失した場合でも、内部データの漏洩や付属機能の不正利用が防止される移動通信システムを提供する。
【解決手段】各通信端末k(k;1,2,…,N)により、自通信端末と少なくとも1つの他の通信端末との間で相互に現在位置情報(xk,yk,zk)が交換されると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離が検出され、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末に対して報知が行われ、一部の通信端末が持ち去られた場合や置き忘れなどの紛失が検知される。また、同距離が距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末が有する所定の機能が停止され、紛失が防止できない場合でも、内部データの漏洩や付属機能の不正利用が防止され、セキュリティが確保される。また、利用者は、通信端末の他に外部機器を持つことなく紛失が防止され、管理が容易になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、移動通信システム、該システムに用いられる通信制御方法及び通信制御プログラムに係り、たとえば携帯電話機などの移動通信端末が紛失したり盗難にあった場合でも、内部データの漏洩や付属機能の不正利用を防止する場合に用いて好適な移動通信システム、該システムに用いられる通信制御方法及び通信制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機に代表される移動通信端末は、ハードウェアの小型化やバッテリ技術などの発展に伴い、近年、広く普及してきている。移動通信端末の普及は、利用者に大きな利便をもたらしているが、その反面、端末の紛失や盗難によるリスクが高くなっている。この場合、端末自体の紛失にとどまらず、端末に保存された内部データの漏洩や悪用のリスクをも伴う。また、近年では、いわゆる「おさいふケータイ」のような金融機能を搭載する技術も開発され、今後、移動通信端末の紛失や盗難は、利用者に特に金銭面において、これまで以上の大きな不利益を生じさせることがある。このため、これを防止する対策が必要となっている。さらに、移動通信端末の中でも、特に携帯電話機の普及率は著しく高く、日本や世界の先進国では、一人当りに一台普及しているといっても過言ではない。このような移動通信端末に紛失対策手段を設けることにより、たとえば、登山パーティの行方不明や家族旅行時の迷子といった利用者自身の行方不明対策として応用することも可能である。
【0003】
この種の移動通信端末は、従来では、たとえば、特許文献5に記載されたものがある。
特許文献5に記載された携帯通信端末では、当該携帯通信端末本体と、同本体に対して着脱自在又は接離自在な付属ユニットとの間で、同付属ユニットが分離された後に微弱な近距離の無線通信が行われ、この微弱通信が範囲外であるか否かが検出され、範囲外となったことが検出されたとき、同携帯通信端末本体において、その使用を規制するロック状態とされるので、紛失などが検知される。
【0004】
上記の移動通信端末の他、従来、この種の技術としては、たとえば、次のような文献に記載されたものがある。
特許文献1に記載された自動集合判別システムでは、携帯サーバにより、予め登録されているメンバーの端末番号を基に、メンバーリストにある端末が順次ポーリング(pooling )され、該当端末の集合場所からの距離が算出され、集合時刻までに集合場所に到達できないメンバーが表示される。各メンバー所有の携帯端末により、上記ポーリングにより呼出しが受信されると、GPSセンサからの現在位置が読み出され、この現在位置が携帯サーバに送信される。そして、携帯サーバにより、未集合メンバーに自動的に電話連絡され、未集合メンバーの携帯端末のベルが鳴動する。このため、集合確認に要する時間が短縮される。
【0005】
特許文献2に記載されたグループメンバーの所在位置認識装置では、GPS受信機から得られた自己の所在位置情報が自己位置情報記憶手段に記憶され、自己の所在位置情報が情報伝送手段によって無線で他の全てのグループメンバーに伝送される。さらに、他のグループメンバーから伝送された所在位置情報は、情報受信手段で受信され、メンバー位置情報記憶手段に各メンバーに対応させて記憶される。また、各メンバーの所在位置が表示手段に表示される。これにより、各メンバーは、他のメンバーの所在位置を容易に認識できる。
【0006】
特許文献3に記載された位置監視システムでは、子端末により、監視センタからのコマンドに応じて、又は所定時間毎に位置情報が同監視センタに送信される。親端末により、監視センタからのコマンドに応じて、又は所定時間毎に位置情報が同監視センタに送信される。監視センタでは、親端末から受信した位置情報と子端末から受信した位置情報とに基づいて、親端末と子端末との位置関係が判定され、同位置関係が所定条件を満たすとき、異常信号が親端末に送信される。親端末では、監視センタから異常信号を受信したとき、その旨が報知される。
【0007】
特許文献4に記載された携帯端末装置では、GPS衛星の電波から現在位置が計算され、他の携帯端末装置に送信される。他の携帯端末装置では、受信した位置情報が地図に重ねて表示される。
【0008】
特許文献6に記載された双方向無線通信システムにおける距離情報通知装置では、複数の移動式加入者装置から選択されたグループが定義され、同グループのメンバーに対応する複数の位置が、基地局及びグループメンバーと協同するコントローラにより特定される。コントローラは、複数の位置から、選択されたメンバー間の少なくとも1つの距離を決定し、少なくとも1つの距離が所定の一連の規定を満たす際に通知を送信する。
【特許文献1】特開2002−071378号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2002−165258号公報(第3頁、図2)
【特許文献3】特開2003−018635号公報(第1頁、図1)
【特許文献4】特開2003−264861号公報(要約書、図1)
【特許文献5】特開2005−151392号公報(要約書、図1)
【特許文献6】特表2003−502890号公報(要約書、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の移動通信端末では、次のような問題点があった。
すなわち、特許文献5に記載された携帯通信端末では、当該携帯通信端末の他に接離自在又は独立した外部機器が必要である。このため、煩雑な機器管理が必要となり、利用者が携帯する総端末容量の増大から、携帯性が低下するなど、端末の通常利用時の利便性が損なわれるという問題点がある。さらに、この携帯通信端末では、紛失検知の感度(距離)を変えたい場合には、無線通信の送信レベルを調整しなければならないが、無線通信では、送信側と受信側との間の障害物などにより、送信側が同一の送信レベルを保っても、受信できる距離はばらついてしまう。このため、紛失などを検知する場合の信頼性が不十分になるという問題点もある。
【0010】
また、特許文献1に記載された自動集合判別システムでは、各メンバー所有の携帯端末の他に携帯サーバが設けられているため、この発明とは構成が異なり、上記の問題点は、改善されない。
【0011】
特許文献2に記載された所在位置認識装置は、各メンバーの所在位置が表示手段に表示され、各メンバーが他のメンバーの所在位置を認識するものであるため、この発明とは構成が異なり、上記の問題点は、改善されない。
【0012】
特許文献3に記載された位置監視システムは、監視センタ、親端末及び子端末により、運用されるものであるため、この発明とは構成が異なり、上記の問題点は、改善されない。
【0013】
特許文献4に記載された携帯端末装置は、受信した位置情報が地図に重ねて表示されるものであるため、この発明とは構成が異なり、上記の問題点は、改善されない。
【0014】
特許文献6に記載された距離情報通知装置では、コントローラにより、複数の位置から、選択されたメンバー間の少なくとも1つの距離が決定され、少なくとも1つの距離が所定の一連の規定を満たす際に通知が送信されるので、この発明とは、効果は類似しているが、上記コントローラが介在することに限定されているため、構成が異なっている。
【0015】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、新たにハードウェアなどを追加することなく、移動体通信分野で既に普及している技術を用いることにより、内部データの漏洩や付属機能の不正利用が防止される移動通信システム、該システムに用いられる通信制御方法及び通信制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに係り、前記各移動通信端末は、自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出し、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記距離限界を超えた旨を報知する報知手段とを有してなることを特徴としている。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の移動通信システムに係り、前記報知手段は、他機を登録するための端末登録部と、該端末登録部に登録されている他機との間で前記移動通信ネットワークを介して相互に前記現在位置情報を交換する通信部と、該通信部で交換された前記現在位置情報に基づく前記距離が前記距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記報知を行う報知部とから構成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項3記載の発明は、移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに係り、前記各移動通信端末は、自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出し、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末が有する所定の機能を停止する機能停止手段とを有してなることを特徴としている。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の移動通信システムに係り、前記機能停止手段は、他機を登録するための端末登録部と、該端末登録部に登録されている他機との間で前記移動通信ネットワークを介して相互に前記現在位置情報を交換する通信部と、該通信部で交換された前記現在位置情報に基づく前記距離が前記距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末で前記所定の機能を停止する機能制御部とから構成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項5記載の発明は、請求項2又は4記載の移動通信システムに係り、前記端末登録部は、他機の前記移動通信ネットワークに対応したネットワークアドレスを登録する構成とされていることを特徴としている。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の移動通信システムに係り、前記報知部は、前記報知を、聴覚的、視覚的又は触覚的に行う構成とされていることを特徴としている。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1記載の移動通信システムに係り、前記複数の移動通信端末のうちの所定の1つの移動通信端末が親端末として設定されると共に他の移動通信端末が子端末として設定され、前記各子端末が前記現在位置情報を生成して前記親端末へ送信し、かつ、前記親端末が前記各子端末から送信された前記現在位置情報に基づいて前記報知を行う構成とされていることを特徴としている。
【0023】
請求項8記載の発明は、請求項3記載の移動通信システムに係り、前記複数の移動通信端末のうちの所定の1つの移動通信端末が親端末として設定されると共に他の移動通信端末が子端末として設定され、前記各子端末が前記現在位置情報を生成して前記親端末へ送信し、かつ、前記親端末が前記各子端末から送信された前記現在位置情報に基づいて前記機能を停止する構成とされていることを特徴としている。
【0024】
請求項9記載の発明は、請求項1又は3記載の移動通信システムに係り、前記位置情報生成手段は、GPS(Global Positioning System )装置で構成されていることを特徴としている。
【0025】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の移動通信システムに係り、前記GPS装置は、宇宙空間に位置する3機以上の衛星から発射された各信号電波を受波して前記各信号電波の伝搬速度及び伝搬時間に基づいて前記各衛星と前記移動通信端末との間の距離を計測することにより、少なくとも緯度及び経度を含む前記移動通信端末の現在位置を測定し、前記現在位置情報を生成する構成とされていることを特徴としている。
【0026】
請求項11記載の発明は、移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに用いられる通信制御方法に係り、前記各移動通信端末が、自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成処理と、自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出する相対位置検出処理と、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記距離限界を超えた旨を報知する報知処理とを行うことを特徴としている。
【0027】
請求項12記載の発明は、移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに用いられる通信制御方法に係り、前記各移動通信端末が、自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成処理と、自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出する相対位置検出処理と、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末が有する所定の機能を停止する機能停止処理とを行うことを特徴としている。
【0028】
請求項13記載の発明は、通信制御プログラムに係り、コンピュータを請求項1記載の報知手段として機能させるためにコンピュータ読み取り可能なことを特徴としている。
【0029】
請求項14記載の発明は、通信制御プログラムに係り、コンピュータを請求項3記載の機能停止手段として機能させるためにコンピュータ読み取り可能なことを特徴としている。
【発明の効果】
【0030】
この発明の構成によれば、各移動通信端末では、報知手段により、自機と他機との間で相互に現在位置情報が交換されると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離が検出され、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの移動通信端末に対して報知が行われる。これにより、一部の移動通信端末が持ち去られた場合や、置き忘れなどの紛失を検知できる。また、利用者は、移動通信端末の他に外部機器を持つことなく、紛失防止を実現でき、機器管理が容易になる。また、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの移動通信端末が有する所定の機能が停止される。これにより、紛失が防止できない場合でも、内部データの漏洩や付属機能の不正利用を防止でき、高いセキュリティを確保できる。また、通信制御プログラムの他は、移動体通信分野で既に普及している技術が用いられているため、新たにハードウェアなどを追加する必要がない。このため、コストアップや端末容量の増大によって携帯性が低下することがなく、移動通信端末の利便性を確保できる。
【0031】
また、複数の移動通信端末のうちの所定の1つの移動通信端末が親端末として設定されると共に他の通信端末が子端末として設定されているので、端末間の距離の計算及び紛失の判定処理が親端末に集中し、各移動通信端末の位置情報が子端末から親端末にのみ送信される。このため、上記の効果に加え、通信トラフィックを軽減できる。また、子端末では、端末間の距離の計算及び紛失の判定処理を行う必要がないため、この移動通信システム全体としての処理量を軽減できる。さらに、紛失監視処理の開始などが親端末主導で行われるため、端末間の開始タイミングの同期をとる処理も簡単にできる。また、現在位置情報は、GPS装置により生成されるので、紛失などを精度良く検知でき、信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
携帯電話機などの各移動通信端末により、自機と他機との間で相互に現在位置情報を交換すると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離を検出し、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの移動通信端末に対して、同距離が距離限界を超えた旨を表す報知や機能の停止を行い、紛失や不正利用が防止される移動通信システム、該システムに用いられる通信制御方法及び通信制御プログラムを提供する。
【実施例1】
【0033】
図1は、この発明の第1の実施例である移動通信システムが用いられる環境を示す模式図である。
この例の移動通信システムは、同図に示すように、携帯電話機のような移動通信端末(以下、「通信端末」という)k(k;1,2,…,N)を有している。通信端末kは、移動通信ネットワーク(たとえば、携帯電話通信ネットワーク)を介して相互に無線接続される。携帯電話通信ネットワークは、通信端末kと無線接続されて電波WSを送受信する無線基地局BS、図示しない在圏移動通信交換局、関門移動通信交換局及び一般電話回線網などから構成されている。
【0034】
また、通信端末kは、当該通信端末kの緯度及び経度及び高度を含む現在位置を所定の時間間隔毎に検出して現在位置情報を生成する位置情報生成手段を有している。位置情報生成手段は、たとえばGPS装置で構成されている。GPS装置は、宇宙空間に位置する、たとえば4つのGPS衛星A,B,C,D(ただし、同図1では、1つの衛星で表示されている)から発射された各信号電波Wを受信して同各信号電波Wの伝搬速度及び伝搬時間に基づいて同各GPS衛星A,B,C,Dと通信端末kとの間の距離を計測することにより、緯度、経度及び高度を含む同通信端末kの現在位置を測定し、3次元の現在位置情報を生成する。この場合、通信端末1に対して、3次元で表される現在位置情報(x1,y1,z1)、通信端末2に対して現在位置情報(x2,y2,z2)、通信端末Nに対して現在位置情報(xN,yN,zN)が生成される。
【0035】
また、特に、この実施例では、通信端末kには、当該通信端末kと少なくとも1つの他の通信端末との間で相互に現在位置情報を交換すると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離を検出し、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末に対して、同距離限界を超えた旨を報知する報知手段が設けられている。また、通信端末kには、当該通信端末kと少なくとも1つの他の通信端末との間で相互に現在位置情報を交換すると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離を検出し、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末が有する所定の機能を停止する機能停止手段が設けられている。
【0036】
図2は、図1中の通信端末1の要部の電気的構成を示すブロック図である。
この通信端末1は、同図2に示すように、CPU(Central Processing Unit 、中央処理装置)11と、バス12と、ROM(Read Only Memory)13と、作業用メモリ14と、設定用メモリ15と、マイク16と、レシーバ17と、スピーカ18と、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)19と、バイブレータ20と、キー入力部21と、操作キー22と、表示制御部23と、表示部24と、通信制御部25と、通信送受信部26と、GPS制御部27と、GPS受信部28と、タイマ29とから構成されている。CPU11は、バス12を介して同通信端末1内の各部と接続され、同通信端末1全体を制御する。ROM13は、CPU11を上記報知手段として機能させるための同CPU11に読み取り可能な通信制御プログラムが記録されている。また、ROM13は、CPU11を上記機能停止手段として機能させるための同CPU11に読み取り可能な通信制御プログラムが記録されている。
【0037】
作業用メモリ14は、RAM(Random Access Memory)で構成され、CPU11が通信制御プログラムを実行するときに一時的に必要とされるデータが格納され、電源がオフ状態になるとデータが消去される。設定用メモリ15は、不揮発メモリで構成され、通信端末1を好適に動作させるための個別調整値(たとえば、GPS装置による測位のタイミングや報知条件などの設定値)や電話帳などの個人情報が格納され、電源がオフ状態になっても消えない。特に、この実施例では、設定用メモリ15により、他の通信端末を登録するための端末登録部が構成され、携帯電話通信ネットワークに対応したネットワークアドレス(たとえば、メールアドレスや電話番号)が登録される。
【0038】
操作キー22は、たとえば、送信キー、英字/カナ/漢字/数字の変換キー、電源のオン/オフキー、カーソル操作を行うための十文字キー、及び終了キーなどから構成され、利用者により、たとえば、送信用のメッセージなどを作成するための操作が行われる。キー入力部21は、操作キー22からの入力信号を受け付ける入力回路である。表示制御部23は、表示部24での表示を制御する。表示部24は、たとえば液晶パネルや有機EL(電子蛍光)などで構成され、通信端末1の操作状態や、設定用メモリ15に格納された個人情報などを表示する。通信送受信部26は、通信制御部25によって制御され、音声、メール、映像、位置情報などのデータの送受信を無線で行う回路及びアンテナで構成されている。特に、この実施例では、通信送受信部26及び通信制御部25により、設定用メモリ15(端末登録部)に登録されている他の通信端末との間で携帯電話通信ネットワークを介して相互に現在位置情報を交換する通信部が構成されている。
【0039】
GPS受信部28は、GPS制御部27によって制御され、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wを受信する回路及びアンテナで構成されている。タイマ29は、報知手段又は機能停止手段が動作するまでの待機時間を計測する。マイク16及びレシーバ17は、通話時に使用される。スピーカ18、LED19、及びバイブレータ20は、着信時に使用される他、同スピーカ18は報知を聴覚的(鳴動)に行い、同LED19は報知を視覚的(点滅)に行い、同バイブレータ20は報知を触覚的(振動)に行う。特に、この実施例では、CPU11、スピーカ18、LED19、及びバイブレータ20により、上記通信部で交換された現在位置情報に基づく相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末に対して、上記報知を行う報知部が構成されている。また、CPU11及び設定用メモリ15により、上記通信部で交換された現在位置情報に基づく相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末が有する所定の機能を停止する機能制御部が構成されている。また、他の通信端末も、通信端末1と同様の構成となっている。
【0040】
図3は、通信端末kの動作を説明するフローチャート、図4は、設定用メモリ15に登録されるメールアドレスを示す図、図5は、通信端末kの他の動作を説明するフローチャート、図6は、通信端末kの他の動作を説明するフローチャート、図7は、通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出される状態を示す概念図、図8は、通信端末の置き忘れが発生した状態を示す概念図、図9は、通信端末の盗難が発生した状態を示す概念図、図10、図11及び図12が、通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出されるときの判定方法を示す図である。
これらの図を参照して、この例の移動通信システムに用いられる通信制御方法の処理内容について説明する。
この移動通信システムでは、各通信端末k(k;1,2,…,N)により、当該通信端末の現在位置が検出されて現在位置情報が生成され(位置情報生成処理)、当該通信端末と少なくとも1つの他の通信端末との間で相互に現在位置情報が交換されると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離が検出され(相対位置検出処理)、かつ、この距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末に対して、同距離が距離限界を超えた旨を表す報知が行われる(報知処理)。また、紛失が防止できない場合で、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの移動通信端末が有する所定の機能が停止される(機能停止処理)。
【0041】
すなわち、図3に示すように、利用者が操作キー22を操作することにより、各通信端末kに他の通信端末が登録される(ステップA1)。この場合、図4に示すように、他の通信端末のメールアドレスが登録される。メールアドレスは、操作キー22によって直接打ち込まれるか、又は電話帳から呼び出すことで入力される。入力されたメールアドレスは、設定用メモリ15に格納される。また、監視開始時刻T1、総監視時間T2、監視時間間隔T3、監視距離(閾値)Xが設定される(ステップA2)。この設定は、操作キー22によって入力される。これらの設定値は、利用者同士が相談して同一の数値を設定するものとする。この設定が終了した後、時刻T1になると、紛失検知のための監視動作が開始される(ステップA3)。このとき、タイマ29により、監視時間の計測が開始される。
【0042】
各通信端末kでは、監視動作が開始されると、GPS受信部28及びGPS制御部27からなるGPS装置により、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wが受信され(GPS情報受信、ステップA4)、現在位置情報(x1,y1,z1),(x2,y2,z2),…,(xN,yN,zN)が生成される(ステップA5)。各通信端末kでは、自現在位置情報を、設定用メモリ15に格納されているメールアドレス宛に電子メール(たとえば、MMS、Multimedia Messaging Service、写真などのマルチメディア・データを携帯電話機などでやりとりするためのプロトコル及びサービス)として他の通信端末へ送信し(ステップA6)、また、他の通信端末の現在位置情報を受信する(ステップA7)。そして、自通信端末と他の通信端末との各距離Lmn(m;1,2,…,N−1、n;2,3,…,N)が計算され(ステップA8)、この距離Lmnの最大値が監視距離X以上か否かが判定される(ステップA9)。
【0043】
図7に示すように、携帯端末1,2,…,Nの各利用者M1,M2,…,MN間の距離Lmn)の最大値が監視距離X以上でない場合、タイマ29の値が総監視時間T2以上か否かが判定される(ステップA10)。タイマ29の値が総監視時間T2以下であれば、監視時間間隔T3の間静止した後(ステップA11)、ステップA4に戻り、監視動作が継続される。また、ステップA10において、タイマ29の値が総監視時間T2以上であれば、スピーカ18により、紛失を検知せずにプログラムを終了する旨のアラーム1が鳴動(報知、たとえば、スピーカ18の鳴動、LED19の点滅、又はバイブレータ20の振動)され(ステップA12)、処理が終了する。一方、ステップA9において、距離Lmnの最大値が監視距離X以上である場合、紛失(たとえば、図8に示す置き忘れ、又は図9に示す泥棒BGによる盗難)を検知した旨のアラーム2が鳴動(報知、たとえば、スピーカ18の鳴動、LED19の点滅、又はバイブレータ20の振動)され(ステップA13)、利用者に紛失の旨が報知される。
【0044】
また、図3中のステップA1の後、ステップA2に進まず、図5に示すように、いずれか1つの通信端末kで設定値が入力され(ステップB2)、図3中のステップA6と同様に他の通信端末に送信され(ステップB3)、他の通信端末では、この設定値の着信があると(ステップB1)、この設定値が受信され(ステップB4)、設定用メモリ15に格納され(ステップB5)、設定が完了して図3中のステップA3へ進む。また、上記ステップA2又はステップB2における設定値の入力は、同設定値の一部又は全部を固定値としてROM13に書き込んでおき、同ROM13から読み出す処理としても良い。
【0045】
また、図3中のステップA2の後、ステップA3に進まず、設定値T1をなくし、表示部24に監視開始手順を表示し、利用者が任意のタイミングで操作キー22を操作することにより、監視開始が行われるようにしても良い。この場合、図6に示すように、監視動作は、全ての通信端末kでステップA2における設定が完了した後、同時に開始できるようにすることが望ましい。すなわち、各通信端末kは、ステップA2における設定が完了した旨の設定完了通知を、登録されている全ての通信端末のメールアドレス宛に送信し(ステップC1)、他の通信端末の設定完了通知を受信する(ステップC2)。ステップC2において全ての通信端末で設定完了したことが確認されると、表示部24に監視開始手順が表示される(ステップC3)。
【0046】
いずれか1つの通信端末kで操作キー22により監視開始操作が行われると(ステップC5)、監視開始操作が行われた旨の監視開始通知が登録されている全ての通信端末のメールアドレス宛に送信され(ステップC6)、監視動作が開始する。他の通信端末では、この監視開始通知の着信があると(ステップC4)、監視開始通知が受信され(ステップC7)、監視動作が開始する。この後、図3中のステップA4へ進む。
【0047】
また、図3中のステップA9では、端末間の距離Lmnの最大値が判定材料となっているが、この判定材料は、図10に示すように、端末間の距離Lmnの最小値や平均値などの他の統計値、図11に示すように、所定の絶対位置Pから各通信端末までの距離LmPの統計値、あるいは、図12に示すように、全ての通信端末の重心Gの位置から各通信端末までの距離LmGの統計値としても良い。この場合、図3中のステップA8における計算は、上記判定材料に対応したものとなる。
【0048】
また、図11に示す所定の絶対位置Pから各通信端末kまでの距離LmPの統計値を判定材料とする場合、同絶対位置Pは、ステップA2における設定値の1つに加える他、固定値として各通信端末k内のROM13に書き込むようにしても良い。さらに、ステップA9における判定条件として、下限の閾値X(閾値以上のとき、判定;YES)を用いて判定しているが、この判定条件は、たとえば、閾値Xを上限の閾値(閾値以下のとき、判定;YES)としたり、閾値を2つ以上(X以下Y以上のとき、判定;YES)としたり、また、閾値ではなく、一致判定(所定の値Xと一致すれば、判定;YES)などとしてもよい。
【0049】
また、ステップA13において、報知が行われるが、この報知と共に、所定の機能が停止されるようにしても良い。機能の停止は、通信端末kの全ての機能を停止してもよいし、一部の所定の機能(たとえば、内部データの表示機能など)を停止してもよい。後者の場合、停止する機能は、ステップA2における設定値とする他、固定値としてROM13に書き込んでも良い。
【0050】
以上のように、この第1の実施例では、各通信端末k(k;1,2,…,N)により、当該通信端末と少なくとも1つの他の通信端末との間で相互に現在位置情報(xk,yk,zk)が交換されると共に同現在位置情報に基づいて相対的な距離が検出され、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末に対して所定の報知が行われる。これにより、一部の通信端末が持ち去られた場合や、置き忘れなどの紛失が検知される。また、利用者は、通信端末kの他に外部機器を持つことなく、紛失防止を実現でき、機器管理が容易になる。また、同距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの通信端末が有する所定の機能が停止される。これにより、紛失が防止できない場合でも、内部データの漏洩や付属機能の不正利用が防止され、高いセキュリティが確保される。
【0051】
また、ROM13に記録されている通信制御プログラムの他は、移動体通信分野で既に普及している技術が用いられているため、新たにハードウェアなどを追加する必要がない。このため、コストアップや端末容量の増大によって携帯性が低下することがなく、通信端末の利便性が損なわれることがない。また、複数人で登山や買い物などのグループ行動を行う場合、各メンバーがそれぞれ通信端末kを保有することにより、特定の通信端末がグループから離れることが検出されたとき、当該メンバーが行方不明になることが防止される。
【実施例2】
【0052】
この第2の実施例の移動通信システムでは、図1中の複数の通信端末kのうちの所定の1つの通信端末が親端末として設定されると共に他の通信端末が子端末として設定されている。そして、各子端末が現在位置情報を生成して親端末へ送信し、かつ、同親端末が各子端末から送信された現在位置情報に基づいて報知を行う。また、親端末が各子端末から送信された現在位置情報に基づいて所定の機能を停止する。
【0053】
図13は、親端末の動作を説明するフローチャート、及び図14が、子端末の動作を説明するフローチャートである。
これらの図を参照して、この例の移動通信システムに用いられる通信制御方法の処理内容について説明する。
まず、図13に示すように、親端末の利用者が操作キー22を操作することにより、他の通信端末(子端末)が同親端末に登録される(ステップD1)。この場合、第1の実施例と同様に、メールアドレスが登録される。入力されたメールアドレスは、設定用メモリ15に格納される。次に、監視開始時刻T1、総監視時間T2、監視時間間隔T3、及び監視距離(閾値)Xが設定される(ステップD2)。これらの設定値は、操作キー22によって入力される。設定終了後、ステップD2で設定された設定値は、登録されている全ての子端末のメールアドレス宛に送信される(ステップD3)。時刻T1になると、紛失検知のための監視動作が開始される(ステップD4)。このとき、タイマ29により、監視時間の計測が開始される。
【0054】
監視動作が開始されると、親端末では、GPS受信部28及びGPS制御部27からなるGPS装置により、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wが受信され(GPS情報受信、ステップD5)、自端末の現在位置情報が検出される(ステップD6)。親端末では、登録されている各子端末の現在位置情報が受信され(ステップD7)、同親端末と同各子端末との距離Lmnが計算され(ステップD8)、この距離Lmnの最大値が監視距離X以上か否かが判定される(ステップD9)。端末間の距離Lmnの最大値が監視距離X以上でない場合、タイマ29の値が総監視時間T2以上か否かが判定される(ステップD10)。タイマ29の値が総監視時間T2以下であれば、監視時間間隔T3の間静止した後(ステップD11)、ステップD5に戻り、監視動作が継続される。また、ステップD10でタイマ29の値が総監視時間T2以上であれば、スピーカ18により、紛失を検知せずにプログラムを終了する旨のアラーム1が鳴動(報知、たとえば、スピーカ18の鳴動、LED19の点滅、又はバイブレータ20の振動)され(ステップD12)、処理が終了する。一方、ステップD9において、端末間の距離Lmnの最大値が監視距離X以上である場合は、紛失を検知した旨の紛失検知通知が、登録されている全ての子端末のメールアドレス宛に送信され(D13)、紛失を検知した旨のアラーム2が鳴動され(ステップD14)、利用者に紛失が報知される。
【0055】
また、図14に示すように、子端末では、図13中のステップD3において親端末から送信された登録端末情報とステップD2における設定値が受信される(ステップE1)。時刻T1になると、紛失検知のための監視動作が開始される(ステップE2)。タイマ29では、この時点で監視時間の計測が開始される。監視動作が開始されると、子端末では、GPS受信部28及びGPS制御部27からなるGPS装置により、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wが受信され(GPS情報受信、ステップE3)、自通信端末の現在位置情報が検出される(ステップE4)。各子端末から、これらの現在位置情報が親端末に送信される(ステップE5)。
【0056】
ここで、図13中のステップD13における紛失検知通知を親端末から受信したか否かが判定され(ステップE6)、受信していない場合、タイマ29の値が総監視時間T2以上か否かが判定される(ステップE7)。タイマ29の値が総監視時間T2以下であれば、監視時間間隔T3の間静止した後(ステップE8)、ステップE3に戻り、監視動作が継続される。ステップE7においてタイマ29の値が総監視時間T2以上であれば、スピーカ18から、紛失を検知せずにプログラムを終了する旨のアラーム1が鳴動(報知、たとえば、スピーカ18の鳴動、又はLED19の点滅、バイブレータ20の振動)され(ステップE9)、処理が終了する。一方、ステップE6において紛失検知通知が受信された場合、紛失を検知した旨のアラーム2が鳴動(報知、たとえば、スピーカ18の鳴動、LED19の点滅、又はバイブレータ20の振動)され(ステップE10)、利用者に紛失が報知される。
【0057】
なお、図13中のステップD9では、紛失の判定材料が、親端末と各子端末との距離の最大値Lmnとなっているが、親端末は全端末の現在位置情報を得るので、上記第1の実施例の図10、図11及び図12に示す各判定材料を用いても良い。
【0058】
以上のように、この第2の実施例では、複数の通信端末kのうちの所定の1つの通信端末が親端末として設定されると共に他の通信端末が子端末として設定されているので、端末間の距離の計算及び紛失の判定処理が親端末に集中し、各通信端末の位置情報が子端末から親端末にのみ送信されれば良い。このため、第1の実施例の利点に加え、通信トラフィックが軽減される。また、子端末では、端末間の距離の計算及び紛失の判定処理を行う必要がないため、システム全体としての処理量が軽減される。さらに、紛失監視処理の開始などが親端末主導で行われるため、端末間の開始タイミングの同期をとる処理も簡単になる。
【実施例3】
【0059】
図15は、この発明の第3の実施例である移動通信システムを構成する各携帯端末kに1対1で組み合わせて用いられる受信機40の電気的構成を示すブロック図である。
この受信機40では、同図15に示すように、CPU41と、バス42と、ROM43と、作業用メモリ44と、設定用メモリ45と、スピーカ46と、LED47と、バイブレータ48と、通信制御部49と、通信受信部50と、GPS制御部51と、GPS受信部52と、タイマ53とから構成されている。CPU41は、バス42を介して同受信機40内の各部と接続され、同受信機40全体を制御する。
【0060】
ROM43は、CPU41を報知手段として機能させるための同CPU41に読み取り可能な通信制御プログラムが記録されている。作業用メモリ44は、RAMで構成され、CPU41が通信制御プログラムを実行するときに一時的に必要とされるデータが格納され、電源がオフ状態になると消去される。設定用メモリ45は、不揮発メモリで構成され、監視の対象となる通信端末kを好適に動作させるための個別調整値(たとえば、GPS装置による測位のタイミングや報知条件などの設定値)が格納され、電源がオフ状態になっても消えない。特に、この実施例では、設定用メモリ45により、監視の対象となる通信端末kを登録するための端末登録部が構成され、携帯電話通信ネットワークに対応したネットワークアドレス(たとえば、メールアドレスや電話番号)が登録される。
【0061】
スピーカ46は、報知を聴覚的(鳴動)に行い、LED47は、報知を視覚的(点滅)に行い、バイブレータ48は、報知を触覚的(振動)に行う。通信受信部50は、通信制御部49によって制御され、通信端末kと無線接続されて位置情報などのデータの受信を行う回路及びアンテナで構成されている。GPS受信部52は、GPS制御部51によって制御され、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wを受信する回路及びアンテナで構成されている。タイマ53は、報知手段(スピーカ46、LED47、又はバイブレータ48)が動作するまでの待機時間を計測する。
【0062】
図16は、通信端末kの動作を説明するフローチャート、図17は、受信機40の動作を説明するフローチャート、図18は、通信端末kと受信機40との間の相対的な距離が検出される状態を示す概念図、及び図19が、通信端末kの置き忘れが発生した状態を示す概念図である。
これらの図を参照して、この例の移動通信システムに用いられる通信制御方法の処理内容について説明する。
まず、図16に示すように、通信端末k(kは、たとえば1)では、利用者が操作キー22を操作することにより、監視開始時刻T1、総監視時間T2、監視時間間隔T3、及び監視距離(閾値)Lmが設定される(ステップF1)。これらの設定値は、受信機40に送信される(ステップF2)。時刻T1になると、紛失検知のための監視動作が開始される(ステップF3)。このとき、タイマ29により、監視時間の計測が開始される。
【0063】
監視動作が開始されると、通信端末1では、GPS受信部28及びGPS制御部27からなるGPS装置により、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wが受信され(GPS情報受信、ステップF4)、自端末の現在位置情報が検出される(ステップF5)。この現在位置情報は、受信機40に送信される(ステップF6)。タイマ29の値が総監視時間T2以上か否かが判定され(ステップF7)、同タイマ29の値が総監視時間T2以下であれば、監視時間間隔T3の間静止した後(ステップF8)、ステップF4に戻り、監視動作が継続される。上記ステップF7において、タイマ29の値が総監視時間T2以上であれば、処理が終了する。
【0064】
また、図17に示すように、受信機40では、図16中のステップF2において通信端末1から送信された監視開始時刻T1、総監視時間T2、監視時間間隔T3及び監視距離(閾値)Lmの設定値が受信される(ステップG1)。時刻T1になると、通信端末1側でステップF3における紛失監視動作が開始され、受信機40では、同通信端末1からステップF6において送信された現在位置情報が受信される(ステップG2)。タイマ53では、時刻T1の時点で監視時間の計測が開始される。さらに、受信機40では、GPS受信部52及びGPS制御部51からなるGPS装置により、GPS衛星A,B,C,Dからの各信号電波Wが受信され(GPS情報受信、ステップG3)、同受信機40の位置情報が検出される(ステップG4)。
【0065】
受信機40では、次式を用いて同受信機40と通信端末1との距離Lが計算され(ステップG5)、この距離の最大値が監視距離Lm以上か否かが判定される(ステップG6)。
距離L
=SQRT{(x2−x1)^2+(y2−y1)^2+(z2−z1)^2}
ただし、
(x1,y1,z1);受信機40の位置情報
(x2,y2,z2);通信端末1の現在位置情報
図18に示すように、距離Lの最大値が監視距離Lm以上でない場合(監視中)、タイマ53の値が総監視時間T2以上か否かが判定される(ステップG7)。タイマ53の値が総監視時間T2以下であれば、ステップG2に戻り、監視動作が継続される。ステップG7においてタイマ53の値が総監視時間T2以上であれば、スピーカ46から、紛失を検知せずにプログラムを終了する旨のアラーム1が鳴動(報知、たとえば、スピーカ46の鳴動、又はLED19の点滅、バイブレータ20の振動)され(ステップG8)、処理が終了する。一方、ステップG6において、図19に示すように、距離Lの最大値が監視距離Lm以上である場合、通信端末1の紛失(置き忘れ)を検知した旨のアラーム2が鳴動され(ステップG9)、利用者に紛失が報知される。
【0066】
以上のように、この第3の実施例では、利用者が通信端末1以外に受信機40を携帯しなければならないが、GPS装置を用いた位置情報検出を利用しているため、同通信端末1と同受信機40との間に障害物などがあっても、同受信機40が同通信端末1の現在位置情報を受信できる状態にあれば、紛失などが精度良く検知され、信頼性が向上する。また、受信機40は、通信端末1よりもハードウェアの規模が小さいため、携帯性が良い。
【0067】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記各実施例では、移動通信ネットワークが携帯電話通信ネットワークであるが、たとえば、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)としても良い。この場合、端末登録部には、無線LANに対応したネットワークアドレスが登録される。また、移動通信ネットワークは、たとえば、Bluetooth やIrDA(Infrared Data Association )などの近距離無線通信手段や、市民無線などの免許不要局通信手段としても良い。この場合も、端末登録部には、それぞれの通信手段に対応したネットワークアドレスが登録される。また、移動通信端末は、携帯電話機の他、たとえば、携帯電話機の機能を含むPDA(Personal Digital Assistants )、ノートパソコン、カーナビゲーションシステム、航空機電話、船舶電話などでも良い。
【0068】
また、第1の実施例では、各通信端末kは、現在位置情報をMMSとして他の通信端末へ送信しているが、端末登録部(設定用メモリ15)に他の通信端末の電話番号を登録し、現在位置情報をSMS(Short Message Service 、ショート・メッセージ・サービス、携帯電話機間で短いテキストをできるようにするサービス)として他の通信端末へ送信しても良い。また、他の通信端末の電話番号を登録する場合、同電話番号と電話帳データからメールアドレスを引き、同メールアドレスを用いて現在位置情報をMMSとして送信しても良い。また、各通信端末kを相互にPoC(Push to Talk over Cellular、プッシュ・トゥ・トーク・オーバ・セルラ)接続しても良い。この場合、1つの通信端末が他の通信端末のネットワークアドレスを登録することにより、全ての通信端末で相互に通信が確立するため、各通信端末で個別に端末登録をする手間を省くことができる。また、各通信端末kが他の通信端末を登録する場合、同各通信端末kを相互にIM(Instant Messenge、短文のテキスト文書をリアルタイムで送信し、相手のコンピュータの画面に表示させるメッセージ・アプリケーション)接続しても良い。
【0069】
また、上記各実施例では、GPS装置は、4つのGPS衛星A,B,C,Dの各信号電波Wを受信して3次元の現在位置情報を生成するようになっているが、3つのGPS衛星を用いて2次元の現在位置情報を生成しても、上記実施例に準じた作用、効果が得られる。また、上記各実施例では、位置情報生成手段としてGPS装置が用いられているが、たとえば、ヨーロッパで計画されている「Galileo」や、日本で計画されている「準天頂衛星」が実用化されたとき、これらに対応した位置情報生成手段を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0070】
この発明は、移動通信端末の置き忘れ、移動中の落下、盗難などによる紛失と、それに伴う個人情報の漏洩、又は音声通話やデータ通信、電子マネー、クレジットカード決済などの同移動通信端末に付属した機能の不正利用に対して、同移動通信端末の通常利用時の利便性を損なうことなく、好適に防止する場合に適用できる。また、利用者を含む所定のグループ(たとえば、団体行動の参加者や家畜など)が各移動通信端末を付帯することにより、利用者自身や所有物を保護するための管理ツールとしても適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】この発明の第1の実施例である移動通信システムが用いられる環境を示す模式図である。
【図2】図1中の通信端末1の要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】通信端末kの動作を説明するフローチャートである。
【図4】設定用メモリ15に登録されるメールアドレスを示す図である。
【図5】通信端末kの他の動作を説明するフローチャートである。
【図6】通信端末kの他の動作を説明するフローチャートである。
【図7】通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出される状態を示す概念図である。
【図8】通信端末の置き忘れが発生した状態を示す概念図である。
【図9】通信端末の盗難が発生した状態を示す概念図である。
【図10】通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出されるときの判定方法を示す図である。
【図11】通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出されるときの判定方法を示す図である。
【図12】通信端末kと他の通信端末との間の相対的な距離が検出されるときの判定方法を示す図である。
【図13】この発明の第2の実施例である移動通信システムに用いられる親端末の動作を説明するフローチャートである。
【図14】子端末の動作を説明するフローチャートである。
【図15】この発明の第3の実施例である移動通信システムを構成する各携帯端末に組み合わせて用いられる受信機40の電気的構成を示すブロック図である。
【図16】通信端末kの動作を説明するフローチャートである。
【図17】受信機40の動作を説明するフローチャートである。
【図18】通信端末kと受信機40との間の相対的な距離が検出される状態を示す概念図である。
【図19】通信端末の置き忘れが発生した状態を示す概念図である。
【符号の説明】
【0072】
1,2,…,N 通信端末(移動通信端末)
11 CPU(中央処理装置、報知部の一部、機能停止手段の一部、機能制御部の一部)
13 ROM(Read Only Memory、移動通信端末の一部)
14 作業用メモリ(移動通信端末の一部)
15 設定用メモリ(端末登録部の一部、機能制御部の一部)
18 スピーカ(報知部の一部)
19 LED(発光ダイオード、報知部の一部)
20 バイブレータ(報知部の一部)
21 キー入力部(移動通信端末の一部)
22 操作キー(移動通信端末の一部)
23 表示制御部(移動通信端末の一部)
24 表示部(移動通信端末の一部)
25 通信制御部(通信部の一部)
26 通信送受信部(通信部の一部)
27 GPS制御部(位置情報生成手段の一部)
28 GPS受信部(位置情報生成手段の一部)
29 タイマ(移動通信端末の一部)
40 受信機(移動通信端末の一部)
41 CPU(中央処理装置、報知部の一部)
43 ROM(受信機の一部)
44 作業用メモリ
45 設定用メモリ(端末登録部)
46 スピーカ(報知部の一部)
47 LED(報知部の一部)
48 バイブレータ(報知部の一部)
49 通信制御部(通信部の一部)
50 通信受信部(通信部の一部)
51 GPS制御部(位置情報生成手段の一部)
52 GPS受信部(位置情報生成手段の一部)
53 タイマ(移動通信端末の一部)
A,B,C,D GPS衛星
BS 無線基地局(移動通信ネットワークの一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムであって、
前記各移動通信端末は、
自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、
自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出し、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記距離限界を超えた旨を報知する報知手段とを有してなることを特徴とする移動通信システム。
【請求項2】
前記報知手段は、
他機を登録するための端末登録部と、
該端末登録部に登録されている他機との間で前記移動通信ネットワークを介して相互に前記現在位置情報を交換する通信部と、
該通信部で交換された前記現在位置情報に基づく前記距離が前記距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記報知を行う報知部とから構成されていることを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項3】
移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムであって、
前記各移動通信端末は、
自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成手段と、
自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出し、検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末が有する所定の機能を停止する機能停止手段とを有してなることを特徴とする移動通信システム。
【請求項4】
前記機能停止手段は、
他機を登録するための端末登録部と、
該端末登録部に登録されている他機との間で前記移動通信ネットワークを介して相互に前記現在位置情報を交換する通信部と、
該通信部で交換された前記現在位置情報に基づく前記距離が前記距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末で前記所定の機能を停止する機能制御部とから構成されていることを特徴とする請求項3記載の移動通信システム。
【請求項5】
前記端末登録部は、
他機の前記移動通信ネットワークに対応したネットワークアドレスを登録する構成とされていることを特徴とする請求項2又は4記載の移動通信システム。
【請求項6】
前記報知部は、
前記報知を、聴覚的、視覚的又は触覚的に行う構成とされていることを特徴とする請求項2記載の移動通信システム。
【請求項7】
前記複数の移動通信端末のうちの所定の1つの移動通信端末が親端末として設定されると共に他の移動通信端末が子端末として設定され、
前記各子端末が前記現在位置情報を生成して前記親端末へ送信し、かつ、前記親端末が前記各子端末から送信された前記現在位置情報に基づいて前記報知を行う構成とされていることを特徴とする請求項1記載の移動通信システム。
【請求項8】
前記複数の移動通信端末のうちの所定の1つの移動通信端末が親端末として設定されると共に他の移動通信端末が子端末として設定され、
前記各子端末が前記現在位置情報を生成して前記親端末へ送信し、かつ、前記親端末が前記各子端末から送信された前記現在位置情報に基づいて前記機能を停止する構成とされていることを特徴とする請求項3記載の移動通信システム。
【請求項9】
前記位置情報生成手段は、
GPS(Global Positioning System )装置で構成されていることを特徴とすることを特徴とする請求項1又は3記載の移動通信システム。
【請求項10】
前記GPS装置は、
宇宙空間に位置する3機以上の衛星から発射された各信号電波を受波して前記各信号電波の伝搬速度及び伝搬時間に基づいて前記各衛星と前記移動通信端末との間の距離を計測することにより、少なくとも緯度及び経度を含む前記移動通信端末の現在位置を測定し、前記現在位置情報を生成する構成とされていることを特徴とする請求項9記載の移動通信システム。
【請求項11】
移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに用いられる通信制御方法であって、
前記各移動通信端末が、
自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成処理と、
自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出する相対位置検出処理と、
検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末に対して前記距離限界を超えた旨を報知する報知処理とを行うことを特徴とする通信制御方法。
【請求項12】
移動通信ネットワークと、該移動通信ネットワークを介して相互に無線接続される複数の移動通信端末とからなる移動通信システムに用いられる通信制御方法であって、
前記各移動通信端末が、
自機の現在位置を検出して現在位置情報を生成する位置情報生成処理と、
自機と少なくとも1つの他機との間で相互に前記現在位置情報を交換すると共に、前記現在位置情報に基づいて自機と各他機との間の相対的な距離を検出する相対位置検出処理と、
検出された相対的な距離が予め設定された距離限界を超えたとき、少なくとも1つの前記移動通信端末が有する所定の機能を停止する機能停止処理とを行うことを特徴とする通信制御方法。
【請求項13】
コンピュータを請求項1記載の報知手段として機能させるためのコンピュータ読み取り可能な通信制御プログラム。
【請求項14】
コンピュータを請求項3記載の機能停止手段として機能させるためのコンピュータ読み取り可能な通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−208334(P2007−208334A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−21519(P2006−21519)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】