説明

窒化ガリウム系化合物半導体基板とその製造方法

【課題】転位発生の防止と基板の反り低減を、中間層を構成する窒化物半導体層の積層数を少なくして実現できる窒化ガリウム系化合物半導体基板を提供する。
【解決手段】Si単結晶からなる基板1と、前記基板上に形成された窒化物半導体からなる中間層2と、前記中間層上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体3からなる活性層で構成される窒化ガリウム系化合物半導体基板であって、前記中間層は、前記基板上に第一層21と第二層22がこの順で積層された初期バッファ層200と、前記初期バッファ層上に第三層23と第四層24をこの順で複数回繰り返し積層し最後に第五層25を積層してなる複合層202を複数積層した周期堆積層203からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子用の化合物半導体に用いられる、窒化ガリウム系化合物半導体基板とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体は、シリコン(Si)と比べて広いバンドギャップを有しており、各種電子素子用の半導体として応用が期待されている。
【0003】
この窒化ガリウム系化合物半導体に用いられる基板の作製方法として、例えば、シリコン(Si)単結晶基板上に、気相成長法によって、複数の化合物半導体層を介して窒化ガリウム系化合物半導体を形成する方法がある。この方法は、他の方法に比べて生産性や放熱性の点で比較的優位であり、さらに改良が進められている。
【0004】
例えば、特許文献1には、Si基材上に形成された第1のAlaGaIn1-a-b0≦a≦1、0≦b≦1、かつ0≦a+b≦1)層と、前記第1のAlaGaIn1-a-b層上に形成された第2のAlcGaIn1-c-dw(0≦c≦1、0≦d≦1、かつ0≦c+ d≦1)層と、前記第2のAlcGadIn1 - c - d層上に位置し、第3のAle GafIn1 - e - f0≦e≦1、0≦f≦1、かつ0≦e+f≦1)層及び第4のAlgGahIn1-g-h0≦g≦1、0≦h≦1、かつ0≦g+h≦1)層を交互に積層した多層膜と、前記多層膜上に形成された第5のAliGajIn1-i-j(0≦i≦1、0≦j≦1、かつ0≦i+j≦1)層と、を具備し、前記多層膜における前記第3のAle GafIn1 - e - f層と前記第4のAlgGahIn1-g-h層の積層数は160層以下であることを特徴とする半導体基板が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、シリコン基板上に窒化物半導体領域を設けると、半導体ウエーハに反りが発生するという課題に対して、シリコン基板2の上に窒化物半導体から成るバッファ領域3を介して主半導体領域4を設けるが、その前記バッファ領域3を、複数の多層構造バッファ領域5,5′と、該複数の多層構造バッファ領域5,5′の相互間に配置された第2の単層構造バッファ領域8とで構成すること、そして、複数の多層構造バッファ領域5,5′のそれぞれを、交互に配置された複数の第1及び第2の層から成るサブ多層構造バッファ領域と第2の単層構造バッファ領域8よりも薄い第1の単層構造バッファ領域とで構成する、という技術が開示されている。
【0006】
さらに、非特許文献1には、Si基板上に、AlN層(〜40nm)、GaN層(160nm)を堆積後、複数の AlN層とGaN層を繰り返し堆積した構造を有する超格子層とこれらの間に配置したGaN層(200nm)をバッファ領域として構成する、という技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−258230号公報
【特許文献2】特開2008−205117号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Applied physics letters. Volume79 No.20 November 12 2001 Eric Feltim et.al「Stesscontrol in GaN grown on Si(111) by metalorganic vapor phase epitaxy」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に開示されている技術は、Si基板上に窒化物半導体の多層膜を介して、その上に厚いGaN層を形成することができる、好適な一例である。しかしながら、この技術をもってしても、より反りが低減された窒化物半導体基板を作製するには、必ずしも十分とはいえなかった。
【0010】
特許文献2に開示されている技術は、周期構造と他の1層からなる多層膜があり、さらに他の1層を介して、再度この多層膜を形成している点が特徴といえる。しかし、この方法では、層数が膨大になること、製造工程数の増加、基板の設計に対する制約増加、という点も懸念される。
【0011】
非特許文献1に開示されている技術も、Si等の基板上に、窒化物半導体の多層膜を形成することで、転位密度を減少し、結晶性を向上する効果を呈する。しかしながら、この技術でも、反りやクラックが発生する場合があり、結晶性と反り抑制とを両立した窒化半導体基板を作製するには、必ずしも十分とはいえなかった。
【0012】
本発明は、これらの課題を鑑みてなされたもので、効果的に転位発生の防止と基板の反りを低減すること、そして、これらの効果を簡易に実現できる、Si単結晶基板を用いた窒化ガリウム系化合物半導体基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板は、Si単結晶からなる基板と、前記基板上に形成された窒化物半導体からなる中間層と、前記中間層上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体からなる活性層で構成される窒化ガリウム系化合物半導体基板であって、前記中間層は、前記基板上に第一層と第二層がこの順で積層された初期バッファ層と、前記初期バッファ層上に第三層と第四層をこの順で複数回繰り返し積層し最後に第五層を積層してなる複合層を複数積層した周期堆積層からなることを特徴とする。このような構成をとることで、単純構造でも反りの制御性に優れ、厚膜成膜も可能な、結晶性の良い窒化ガリウム系化合物半導体基板とすることができる。
【0014】
本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板の製造方法は、Si単結晶からなる基板上に第一層と第二層をこの順で積層する初期バッファ層形成工程と、前記初期バッファ層上に第三層と第四層をこの順に複数回繰り返し積層し最後に第五層を積層してなる複合層を複数積層して周期堆積層を形成する工程と、からなることを特徴とする。このような構成をとることで、少ない積層数で反りの制御性に優れた窒化ガリウム系化合物半導体基板を製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板では、中間層を構成する窒化物半導体層の積層数が少なくても、転位発生の防止と基板の反り低減を図ることが出来る。また、異なる材質の薄膜を多数積層することで発生する応力発生を緩和し、塑性変形を抑制することにより、Si基板上に成膜できる総膜厚の増加が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一態様に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板を、基板の断面方向からみたときの積層構造を示す概念図である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一態様に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板を、基板の断面方向からみたときの積層構造を示す概念図。
【0018】
本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板100は、Si単結晶からなる基板1と、前記基板1上に形成された窒化物半導体からなる中間層2と、前記中間層上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体からなる活性層3で構成される。
【0019】
基板1に用いられるSi単結晶は、化合物半導体を形成する下地としての役割を有するが、基本的な製法や結晶構造は特に限定されるものではなく、公知の半導体デバイス用Si単結晶基板を広く用いることができる。例えば、Si単結晶育成方法は、CZ法でもFZ法でもよい。さらには、基板加工処理として各種熱処理を施したSi単結晶基板も適用できる。また、Si単結晶基板の面方位やベベル形状、化合物半導体が形成される主面および裏面の面粗さ等の仕上げ状態についても、設計する窒化ガリウム系化合物半導体基板100の仕様に合わせて適時選択できる。
【0020】
基板1上に形成された窒化物半導体からなる中間層2は、Si単結晶と活性層に用いられる窒化物半導体との格子定数の違いによる不整合や、熱膨張係数の違いにより発生する応力を、効果的に緩和する働きをもつ。中間層2としては、任意の厚さと組成をもつ窒化物半導体を積層した多層構造が、好適に用いられる。
【0021】
中間層2上には、窒化物半導体からなる活性層3が形成される。ここには、窒化ガリウム系化合物半導体基板として各種の材料が適用でき、例えばAlGaN、GaN等の窒化物半導体結晶が用いられる。
【0022】
そして、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板100においては、前記初期バッファ層200上に、第三層23と第四層24をこの順で複数回繰り返し積層し最後に第五層25を積層してなる複合層202を複数積層した周期堆積層203と、周期堆積層203上に活性層3が積層された構造からなる。
【0023】
基板1上に中間層2を直接形成する前に、初期バッファ層200を介在させることで、初期バッファ層200がない場合と比べて、周期堆積層の積層数を増やすことなく積層界面が平坦化され、また、基板100全体の反り低減、クラック発生の抑制の効果が増す。
【0024】
さらに、本発明においては、初期バッファ層200が、異なる組成の窒化物半導体からなる2層構造をとる。このような構成をとると、1層のみで単に基板のSiとGaの反応を抑制するだけではなく、応力制御バッファ層203に移る前の格子不整合緩衝層として成膜表面平坦化に特化することも可能となる。よって、この上に形成される多層構造の領域における反り低減、転位密度低減効果が、より効果的に発揮される。さらに、中間層2における多層構造の層数が、必要以上に増大することも抑制できる。
【0025】
初期バッファ層200は、窒化ガリウム系化合物半導体基板100の要求仕様に応じて、その組成や膜厚は適時選択されるが、その組成は、AlGaN系が好ましい。また、その膜厚は、この上に形成される多層構造で用いられる各層の膜厚に対して、5倍から100倍の厚さを有していることが好ましい。このような構成をとることで、初期バッファ層200における第一層にて基板を保護するだけでなく、第二層にて最も大きな基板との格子不整合による欠陥多発にともなう第一層の成膜表面荒れ(段差、凹凸等)を緩和でき、成膜表面の平坦化が可能となるからである。
【0026】
初期バッファ層200のより好ましい例としては、第一層21が50nmから200nmの厚さのAlN、第二層22が100nmから300nmの厚さのAlGaNで構成される。初期バッファ層としては、Si、GaNとの親和性が高く、メルトバックエッチング反応を起こさないAlN単結晶が適しており、また、AlN単結晶層表面の段差を早期に平坦化するためには、下地に近いAlが含まれるGaNとAlNの混晶であるAlGaN単結晶層も挿入しておくことが好ましいためである。
【0027】
次に、この初期バッファ層200上に、窒化物半導体からなる第三層23と第四層24をこの順で積層した対の層201を複数回繰り返し積層する。公知の技術にもあるように、異なる2つの組成、膜厚の層から形成される対の層を繰り返し形成することで、窒化ガリウム系化合物半導体基板100の反りを緩和できる。
【0028】
なお、第三層23と第四層24の組成や膜厚は、設計される窒化ガリウム系化合物半導体基板100の仕様に応じて任意に設定できる。本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板100では、第三層23と第四層24がAlGaN系の窒化物半導体であることが好ましい。第三層23と第四層24のAlの比率が大きく離れていると、格子歪みが大きくなり、応力制御および結晶性向上の効果を薄い膜厚から発揮する)ので、より好ましい。好適な一例として、第三層23がGaN、第四層24がAlNで構成される。
【0029】
第三層23と第四層24の膜厚は、繰り返し積層する観点から、あまり厚く形成しないほうが好ましい。好適には、それぞれ1〜50nmである。また、第三層23がと第四層24の繰り返し回数は、設計される窒化ガリウム系化合物半導体基板100の仕様に応じて任意に設定できるが、5回以上20回以下であることが好ましい。少なすぎると、反りや転位の低減効果が十分得られず、多すぎると、成膜中の応力発生により基板の塑性変形を誘発し、成膜後の反りへの影響が懸念されるからである。
【0030】
そして、本発明においては、対の層201を複数回繰り返し積層した上に、さらに第五層25を1層積層して、複合層202とする。第五層25の組成や膜厚も、設計される窒化ガリウム系化合物半導体基板100の仕様に応じて任意に設定できるが、AlGaN系の窒化物半導体であることが好ましい。好適な一例として、第三層23がGaN、第四層24がAlNで構成される場合に、第五層25がGaNで構成される。
【0031】
中間層2の多層構造は、反り、転位密度、熱導電性、高抵抗化、その他の特性への影響度に応じて、任意に設計できる。対の層201の繰り返しのみで中間層2を形成することは、反りや転位の低減には有効である。しかし、基板1と中間層2との格子不整合による積層界面平坦性劣化、すなわち面荒れは、対の層201の繰り返しの早期段階において緩和することができない。このため、従来は、対の層201の繰り返し数をかなり多くとる必要があった。また、この場合、中間層2が必要以上に厚膜化して反り量増加の影響が大きくなり、窒化ガリウム系化合物半導体基板100全体の反りを低減することが、困難になるおそれがあった。
【0032】
ここで、対の層201を複数回繰り返し積層した上に、さらに第五層25を1層積層することで、少ない層数で、効果的に反り低減効果が得られる。これは、転位の消滅を考えず圧縮応力の発生のみを考えるのであれば、格子定数の小さい材料の上に、格子定数の大きい材料を数100nm以上コヒーレント成長させるのが、応力発生効果においては最も好ましいと考えられるが、より低転位な結晶であるほどその効果が向上するためである。このような構成とすることで、応力発生と転位消滅の両効果を発揮し、最も効果的な反りの低減が可能となる。
【0033】
なお、第五層25の膜厚は、対の層201の厚さの2倍以上20倍以下であることが、より好ましい。第五層25は、対の層201を伝播して基板上方に進展してきた転位を、基板主面に対して水平方向に屈曲させる作用を有する。このとき、第五層25の膜厚を対の層201に対して十分な厚さを持たせることで、効果的にこの作用を発揮させることが出来る。しかしながら、あまり厚すぎると、本発明の効果がほとんど変わらない一方で、膜厚が大きいことによる反り増大の影響が懸念されるので、好ましいものではない。
【0034】
この複合層202がさらに複数回繰り返して積層され、周期堆積層203が構成される。複合層202単体でも反り低減効果が見られるが、活性層3の厚膜化に伴う反り増加をより効果的に低減するために、複合層202を繰り返し積層する。
【0035】
複合層202の繰り返し回数は、3回以上10回以下が好ましい。繰り返し回数が増えるに従い、中間層2の厚膜化による反り量増加の影響が大きくなるので、この範囲内で設計することで、より適切な反り制御が可能となる。
【0036】
そして、周期堆積層203上には、活性層3が積層される。HEMT構造の場合、活性層3は、電子供給層として成膜される。活性層3は、窒化ガリウム系化合物半導体で形成され、電子走行層,チャネル層としての役割をもつ。なお、活性層3の組成や膜厚は、設計する窒化ガリウム系化合物半導体基板100の仕様に基づき、任意に設定できる。一例として、組成としては、好適にはAlGaNが、より好適にはGaNが適用される。また、その膜厚は、好適には500nm以上3000nm、より好適には1000nm以上2000nm以下である。
【0037】
このように、本発明の中間層2は、初期バッファ層200と、第一層から第五層を適切に組み合わせた複合層202の繰返し積層からなる周期堆積層203という構成をとる。特に、薄い対の層201の繰り返し積層のみでは、積層数を数多くする必要があったのに対して、繰り返し積層の下には2層を、上には単層を介在させ、これに合わせて繰り返し積層を最適化したことで、中間層2全体の層数を抑制することが可能となった。
【0038】
以上のとおり、本発明に係る窒化ガリウム系化合物半導体基板では、転位発生の防止と基板の反り低減を、中間層を構成する窒化物半導体層の積層数を少なくして実現できる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態を実施例に基づき説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【0040】
面方位(111)、直径4インチ、厚さ625μm、CZ法により引上げたSi単結晶基板1を、MOCVD装置にセットし、原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、およびNH3を用い、1100℃での気相成長により、厚さ100nmのAlN単結晶層21を形成した。さらにその上に、原料としてトリメチルガリウム(TMG)、TMAおよびNH3を用い、1000℃での気相成長により厚さ200nmのAl0.1Ga0.9N単結晶層22を積層させ、この2層を初期バッファ層200とした。
【0041】
次に、前記初期バッファ層200上に、原料としてTMAおよびNH3を用い、1000℃での気相成長により、それぞれ厚さを、25nm(実施例1)、20nm(実施例2)、15nm(実施例3)のGaN単結晶層23を積層させ、続けて、厚さ5nmのAlN単結晶層24を積層させ、対の層201を形成した。この対の層201を同様の工程にて繰り返し積層して、それぞれ積層数を、6回(実施例1)、8回(実施例2),10回(実施例3)とした。さらにこの上に、第五層25として、それぞれGaN層を、220nm(実施例1)、200nm(実施例2)、400nm(実施例3)の厚さで形成し、これを複合層202とした。この複合層202を、それぞれ積層数を、6層(実施例1)、5層(実施例2)、4層(実施例3)として、周期堆積層203とした。以上のようにして、中間層2を形成した。
【0042】
前記中間層2上に、原料としてTMGおよびNH3を用い、1000℃での気相成長により、厚さ1500nmのGaN単結晶層を形成してこれを活性層3とした。さらに、前記活性層3の上に、原料としてTMG、TMA、およびNH3を用い、1000℃での気相成長により、厚さ50nmのAlGaN単結晶層を積層させて、電子供給層を形成した。以上の工程を経て、実施例1から実施例3の評価用窒化物半導体基板を得た。なお、気相成長で形成した各層の厚さは、原料供給流量および原料供給時間の調整により行った。加えて、実施例1の中間層2上に活性層3を3500nm積層したものを実施例4,中間層2の複合周期数を8周期とし、活性層3を3000nm積層したものを実施例5とした。
【0043】
次に、初期バッファ層200を省略した構造となるようにして、比較例1の評価用窒化物半導体基板を得た。
【0044】
また、実施例1における初期バッファ層200のうち、第二層22のみ省略し、それ以外は実施例1と同様の構造となるようにして、比較例2の評価用窒化物半導体基板を得た。
【0045】
さらに、複合層202から第三層を除いた構造を比較例3、比較例3から複合周期数と活性層厚さを増加した構造を比較例4、実施例2において、第二層の厚さを薄く、第五層を除いた構造を比較例5,6、第三層と第四層の厚さを好ましい範囲より薄くしたものを比較例7として、それぞれ評価用窒化物半導体基板を得た。
【0046】
作製した実施例および比較例の評価用窒化物半導体基板について、活性層として用いられるGaN単結晶層の基板面中心部における転位密度を、AFM観察により評価した。また、反りおよびクラックの発生(基板外周を除く)についても、レーザー変位計および光学顕微鏡の暗視野像により評価した。なお、反りは、エピタキシャル成長前の基板裏面が基板厚さ方向に変位した距離の最大値と最小値の差により評価した。表1に、成膜後の外観、AFM観察による転位密度、XRDによる結晶性(半値幅)、レーザー変位計による反り評価結果を示す。
【0047】
【表1】

【0048】
これらの結果から、周期堆積層203の下に位置する初期バッファ層200の有無や、本発明の好ましい構成を有する周期堆積層の有無によって、転位密度や反りの点で優位差がみられ、本発明の構成による効果が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、発光ダイオード、レーザー発光素子、また、高速・高温での動作可能な電子素子等に好適に用いられるHEMT(High Electron Mobility Transistor;高電子移動度トランジスタ)構造を有する窒化ガリウム系化合物半導体基板として、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1…Si単結晶基板、2…中間層、3…活性層、21…第一層、22…第二層、23…第三層、24…第四層、25…第五層、200…初期バッファ層、201…対の層、202…複合層、203…周期堆積層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si単結晶からなる基板と、前記基板上に形成された窒化物半導体からなる中間層と、前記中間層上に形成された窒化ガリウム系化合物半導体からなる活性層で構成される窒化ガリウム系化合物半導体基板であって、前記中間層は、前記基板上に第一層と第二層がこの順で積層された初期バッファ層と、前記初期バッファ層上に第三層と第四層をこの順で複数回繰り返し積層し最後に第五層を積層してなる複合層を複数積層した周期堆積層からなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体基板。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化ガリウム系化合物半導体基板の製造方法であって、Si単結晶からなる基板上に第一層と第二層をこの順で積層する初期バッファ層形成工程と、前記初期バッファ層上に第三層と第四層をこの順に複数回繰り返し積層し最後に第五層を積層してなる複合層を複数積層して周期堆積層を形成する工程と、からなることを特徴とする窒化ガリウム系化合物半導体基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−79952(P2012−79952A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224558(P2010−224558)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】