説明

窒化物半導体装置

【課題】ダイオード等の保護素子の外付けによる部品点数の増加及び占有面積の増大を抑えた、双方向に高いアバランシュエネルギー耐量を有する窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体基板10は、第1のn型領域12A、第2のn型領域12Bとともにトランジスタ11を構成する。半導体基板10の裏面には、裏面電極13が接合され、また、半導体基板10の上には、HFET21が形成されている。HFET21は、AlGaN層23A及びGaN層23Bを備える半導体層積層体23と、第1のオーミック電極24A、第2のオーミック電極24B、第1のゲート電極25A、第2のゲート電極25Bにより構成されている。第1のオーミック電極24Aと第1のn型領域12A、第2のオーミック電極24Bと第2のn型領域12Bはそれぞれ電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置に関し、特に、双方向に電流が導通可能な窒化物半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅用照明スイッチなどの2線式交流スイッチとして、双方向に電流を導電することが可能で双方向の電圧に対して耐圧を有するトライアックのような双方向スイッチ動作を行う半導体を用いて、調光機能やリモコン機能などを有する高機能な2線式交流スイッチが商品化されている。
近年、材料限界を打破して導通損失を低減するために、GaNに代表されるIII族窒化物半導体又は炭化珪素(SiC)などのワイドギャップ半導体を用いた半導体装置の導入が検討されている。特に窒化物半導体は、一般式がAlGaIn1−x−yN(但し、0≦x≦1、0≦y≦1、x+y≦1)で表される種々の多元混晶を形成する。
【0003】
従って、バンドギャップが異なる多元混晶を用いることによりヘテロ構造を容易に形成できる。例えば、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)と窒化ガリウム(GaN)とのへテロ構造においては、自発分極及びピエゾ分極により(0001)面上にてヘテロ界面に電荷が生じ、アンドープ時においても1×1013cm-2以上のシートキャリア濃度が得られる。このため、ヘテロ界面での2次元電子ガス(2DEG:2 Dimensional Electron Gas)を利用することにより、電流密度が大きいヘテロ接合電界効果トランジスタ(HFET:Hetero-junction Field Effect Transistor)が実現できる。このため、AlGaN/GaNヘテロ接合電界効果トランジスタ(AlGaN/GaN−HFET)は、低オン抵抗及び高耐圧を実現するパワースイッチングトランジスタとして期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
窒化物半導体からなるHFETをインバータ等に応用する場合には以下のような問題がある。
誘導性負荷が接続された場合、ターンオフした際に誘導性負荷に溜まっているエネルギー(E=1/2LI、L:自己インダクタンス、I:電流)を回路内で消費する必要がある。
【0006】
シリコンMOSFETの場合はデバイス構造にドレイン−ソース間に逆並列に接続(カソードをドレインと接続、アノードをソースと接続)された寄生ダイオードを有しており、MOSFETをオフしたときは誘導性負荷からのエネルギーを寄生ダイオードのアバランシェ領域を利用して消費することができるので比較的大きなアバランシェエネルギー耐量を有する。
【0007】
なお、アバランシュエネルギー耐量とは、デバイスの耐破壊性の指標であり、誘導性負荷に蓄積されたエネルギーをデバイスで消費した場合、デバイスが破壊に至らずに消費できる最大エネルギーと定義される。
一方、HFETは寄生ダイオード構造を持たず誘導性負荷からのエネルギーを積極的に消費できないためアバランシェエネルギー耐量は低く、大きな自己インダクタンスLを持つ誘導性負荷でターンオフすることが困難である。このため、保護ダイオード等を外付けすることによりアバランシェエネルギー耐量を向上させる必要がある。
【0008】
ダイオードを外付けすると、部品点数の増加及び占有面積の増大が生じる。これらは、微細化及びコストの削減が要求される半導体装置にとっては好ましくない問題である。
さらに、双方向スイッチ等の双方向に電流が流れる動作を伴うものに、トランジスタを応用する場合、前期のアバランシェ耐量を双方向に向上させる必要がある。
本発明は、上記特許文献1に開示の技術では解決できない、前記従来の問題を解決し、ダイオード等の保護素子の外付けによる部品点数の増加及び占有面積の増大を抑えた、双方向に高いアバランシュエネルギー耐量を有する窒化物半導体装置を実現できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
具体的に、本発明に係る第1の窒化物半導体装置は、少なくともp型領域を有する半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1のn型領域と、前記半導体基板内に前記第1のn型領域とは間隔をおいて形成された第2のn型領域と、前記半導体基板の上に形成されたトランジスタとを備える。
前記トランジスタは、前記半導体基板側から順次形成されてなる第1の窒化物半導体層及び前記第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を含む半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上または上方にある第1のオーミック電極と、前記半導体層積層体の上または上方であって、前記第1のオーミック電極とは離隔した第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第2のゲート電極からなる。
【0010】
そして、前記第1のオーミック電極と前記第1のn型領域、及び前記第2のオーミック電極と前記第2のn型領域はそれぞれ電気的に接続されていることを特徴とする。
上記の様な構成を採用する場合、本発明に係る窒化物半導体装置の占有面積は、ほぼトランジスタの面積と等しくなり、面積の増大がほとんどない。また、誘導性負荷のエネルギーは、半導体基板に形成されたnpnバイポーラトランジスタによって消費される。このようにすることで、双方向からの電圧印加に対して、アバランシェ耐量を向上させることができるだけでなく、保護素子としてダイオードを形成した時に比べ、より誘導性負荷のエネルギーを消費させることができる。
【0011】
npnバイポーラトランジスタを形成した時は、ダイオードを形成した時に比べ、より誘導性負荷のエネルギーを消費させることができる理由は、バイポーラトランジスタのスナップバック特性にある。バイポーラトランジスタは、サージがエミッタ端子に印加されると、エミッタ・ベース間の空乏層に高電界がかかる。この電界で加速された電子がアバランシェを起こし、次々に電子正孔対を形成する。正孔はベース電流となり、ベース電圧が上昇する。それがオン電圧に達すると、コレクタからエミッタに電子が流れ込む。つまり、エミッタ端子とベース端子との間にバイポーラトランジスタが動作する程度のキャリアが発生するエミッタ端子とコレクタ端子との電位差がバイポーラトランジスタの動作開始電圧であり、この動作開始電圧をスナップバック電圧という。
【0012】
バイポーラトランジスタがスナップバックすると、エミッタ端子とコレクタ端子との電位差は、コレクタ端子とエミッタ端子間のブレイクダウン電圧まで低下する。
その後、コレクタ・エミッタ間に流れる電流とバイポーラトランジスタの導通状態における抵抗(オン抵抗) とに応じて、コレクタ・エミッタ間の電圧が上昇する。従って、破壊に至るまでに流すことができる電流量は、pnダイオードに比べ、バイポーラトランジスタの方が大きくなる。
【0013】
本発明に係る第1の窒化物半導体装置は、半導体基板の第1の面に形成された裏面電極をさらに備え、トランジスタは第2の面の上に形成されていてもよい。この場合において、第1の面は、半導体基板の素子形成面であり、第2の面は素子形成面と反対側の面(裏面)である。
本発明に係る第1の窒化物半導体装置において、第1のオーミック電極と第1のn型領域とを接続する第1のビアプラグと、第2のオーミック電極と第2のn型領域とを接続する第2のビアプラグとをさらに備えていることが好ましい。
【0014】
前記の半導体装置において、半導体基板はシリコン、炭化硅素又は窒化ガリウムからなることが好ましい。
本発明に係る第2の窒化物半導体装置は、少なくともp型領域を有する半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1のn型領域と、前記半導体基板内に前記第1のn型領域とは間隔をおいて形成された第2のn型領域と、前記半導体基板の上に形成された複数の単位セルを持つトランジスタとを備える。
【0015】
前記単位セルは、前記半導体基板側から順次形成された第1の窒化物半導体層及び前記第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を含む半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上または上方にある第1のオーミック電極と、前記半導体層積層体の上または上方であって、前記第1のオーミック電極とは離隔した第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第2のゲート電極からなる。
【0016】
そして、各セルの第1のオーミック電極同士、第2のオーミック電極同士、第1のゲート電極同士、第2のゲート電極同士がそれぞれ電気的に接続されて、ある前記単位セルの前記第1のオーミック電極と前記第1のn型領域が電気的に接続されていて、さらにそれとは別の任意の前記単位セルの前記第2のオーミック電極と前記第2のn型領域が電気的に接続されていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る第2の窒化物半導体装置は、半導体基板の第1の面に形成された裏面電極をさらに備え、トランジスタは第2の面の上に形成されていてもよい。
本発明に係る第2の窒化物半導体装置において、第1のオーミック電極と第1のn型領域とを接続する第1のビアプラグと、第2のオーミック電極と第2のn型領域とを接続する第2のビアプラグとをさらに備えていることが好ましい。
【0018】
前記の本発明に係る第2の窒化物半導体装置において、半導体基板はシリコン、炭化硅素又は窒化ガリウムからなることが好ましい。
本発明に係る第2の窒化物半導体装置は、第1の半導体装置と比べ、第1のn型領域と第2のn型領域の距離が大きく、npnバイポーラトランジスタの耐圧を大きくすることが出来る。
【0019】
本発明に係る第3の窒化物半導体装置は、少なくともp型領域を有する半導体基板と、前記半導体基板内に形成された第1のn型領域と、前記半導体基板内に前記第1のn型領域とは間隔をおいて形成された第2のn型領域と、前記半導体基板の上に形成された複数の単位セルを持つトランジスタとを備える。
前記単位セルは、前記半導体基板側から順次形成された第1の窒化物半導体層及び前記第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を含む半導体層積層体と、前記半導体層積層体の上または上方にある第1のオーミック電極と、前記半導体層積層体の上または上方であって、前記第1のオーミック電極とは離隔した第2のオーミック電極と、前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第2のゲート電極からなる。
【0020】
そして、各セルの第1のオーミック電極同士、第2のオーミック電極同士、第1のゲート電極同士、第2のゲート電極同士がそれぞれ電気的に接続されて、第1のオーミック電極と電気的に接続された第1のオーミック電極パッドと、第2のオーミック電極と電気的に接続された第2のオーミック電極パッドを、前記半導体層積層体の上または上方に備えており、前記第1のオーミック電極パッドと前記第1のn型領域が電気的に接続されていて、前記第2のオーミック電極パッドと前記第2のn型領域が電気的に接続されていることを特徴とする。
【0021】
半導体層積層体は、活性領域と、活性領域を囲む高抵抗領域とを有し、第1のオーミック電極パッド及び第2のオーミック電極パッドの少なくても一部は活性領域上に形成されていてもよい。
本発明に係る第3の窒化物半導体装置は、半導体基板の第1の面に形成された裏面電極をさらに備え、トランジスタは第2の面の上に形成されていてもよい。
【0022】
本発明に係る第3の窒化物半導体装置において、第1のオーミック電極パッドと第1のn型領域とを接続する第1のビアプラグと、第2のオーミック電極と第2のn型領域とを接続する第2のビアプラグとをさらに備えていることが好ましい。
前記の本発明に係る第3の窒化物半導体装置において、半導体基板はシリコン、炭化硅素又は窒化ガリウムからなることが好ましい。
【0023】
本発明に係る第3の窒化物半導体装置は、第1の半導体装置と比べ、第1のn型領域と第2のn型領域の距離が大きく、npnバイポーラトランジスタの耐圧を大きくすることが出来る。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる半導体装置によれば、双方向からの電圧印加に対して、アバランシェ耐量を向上させることができるだけでなく、保護素子としてダイオードを形成した時に比べ、より誘導性負荷のエネルギーを消費させることができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施形態にかかる半導体装置の一部構成を示す模式断面図である。
【図2】第2の実施形態にかかる半導体装置の一部構成を示す模式平面図である。
【図3】第2の実施形態にかかる半導体装置の一部構成を示す模式断面図である。
【図4】第3の実施形態にかかる半導体装置の一部構成を示す模式平面図である。
【図5】第3の実施形態にかかる半導体装置の一部構成を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。図1は第1の実施形態に係る半導体装置の一部構成を示す模式断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態の半導体装置は、p型のシリコン基板と、基板に形成したn型不純物の拡散層からなるnpnバイポーラトランジスタ11が形成された半導体基板10と、半導体基板10の上に形成された窒化物半導体からなるヘテロ接合トランジスタ(HFET)21とを備えている。
【0027】
npnバイポーラトランジスタ11は、半導体基板10内の第1の面10A側に、互いに間隔をおいて形成された第1のn型領域12Aと第2のn型領域12Bを有し構成されている。半導体基板10は、その第2の面10B側に形成された裏面電極13とオーミック接続している。この場合において、第1の面10Aは、半導体基板の素子形成面であり、第2の面10Bは素子形成面と反対側の面(裏面)である。
【0028】
HFET21は、半導体基板10の第1の面(素子形成面)10Aの上にバッファ層22を介在させて形成された半導体層積層体23と、半導体層積層体23にX軸方向に互いに間隔をおいて第1のオーミック電極24A及び第2のオーミック電極24Bが形成されている。第1のオーミック電極24A及び第2のオーミック電極24Bの間に、コントロール層26Aを介在させて形成された第1のゲート電極25Aを有しており、第1のゲート電極25Aと第2のオーミック電極24Bの間にコントロール層26Bを介在させて形成された第2のゲート電極25Bを有している。
【0029】
半導体層積層体23は、Z軸方向の下側から順次形成されたアンドープのAlGaN層23AとアンドープのGaN層23Bとを有し、AlGaN層23AにおけるGaN層23Bとの界面領域には2次元電子ガス(2DEG)からなるチャネル領域が形成されている。
第1のオーミック電極24A及び第2のオーミック電極24Bは、チャネル領域とオーミック接続している。本実施形態においては、第1のオーミック電極24Aと第1のn型領域12A、第2のオーミック電極24Bと第2のn型領域12Bはそれぞれ、第1のビアプラグ31A、第2のビアプラグ31Bにより電気的に接続されている。
【0030】
コントロール層26A及び26Bは、たとえば厚さ200nm程度のp型のGaNからなり、パラジウム(Pd)又はニッケル(Ni)からなる第1のゲート電極25A及び第2のゲート電極25Bがコントロール層26A及び26Bとそれぞれオーミック接触している。p型のコントロール層26A及び26Bを設けることにより、HFET21をノーマリオフ動作させることが可能となる。
【0031】
なお、ノーマリオフ動作させる必要がない場合には、コントロール層26A及び26Bを省き、第1のゲート電極25A及び第2のゲート電極25Bを通常のショットキー電極とすればよい。
本実施形態においてnpnバイポーラトランジスタ11の耐圧はHFETの耐圧及び、基板縦方向に存在する寄生pnダイオードの耐圧以下にする必要がある。また、npnバイポーラトランジスタ11のスナップバックした電圧は、HFET21が保証する電圧以上にする必要がある。この時、オフ時に誘導性負荷に発生する逆起電圧はnpnバイポーラトランジスタ11の耐圧でクランプされるので、HFET21の耐圧がクランプされた電圧よりも高くなければHFET21が破壊されるからである。具体的には、耐圧が400V程度で、保証する電圧が300VのHFET21の場合には、npnバイポーラトランジスタ11の耐圧を370V程度とし、npnバイポーラトランジスタ11のスナップバックした電圧は320V程度とし、基板縦方向に存在する寄生pnダイオードの耐圧は、400V程度とすればよい。
【0032】
なお、第1の実施形態において、半導体基板10の第2の面10B側に裏面電極13を備えている例を示したが、裏面電極は無くてもよい。
第1の実施形態において、シリコン基板を用いる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11が形成でき且つ窒化物半導体からなる半導体層積層体23を形成できればどのようなものであってもよい。例えば、シリコン(Si)基板に代えて、炭化硅素(SiC)基板又は窒化ガリウム(GaN)基板等を用いることができる。
【0033】
第1の実施形態において、形成されたnpnバイポーラトランジスタ11を用いて、アバランシェ耐量を向上させる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11の耐圧が基板縦方向に存在する寄生pnダイオードの耐圧以上の場合は、寄生pnダイオードを保護ダイオードとして用いてもよい。
(第2の実施形態)
以下に、本発明の第2の実施形態について図面を参照して説明する。図2は、第2の実施形態に係る半導体装置の一部構成の模式平面図を示している。図3は、図2における切断線70で切断した模式断面図を示している。図2及び図3において、図1と同一の構成要素には、同一の番号を附すことにより説明を省略する。
【0034】
図2に示すように、第2の実施形態の半導体装置において、半導体層積層体53(図3を参照)は活性領域53Cと活性領域53Cを囲む高抵抗領域53Dとを有しており、活性領域53Cの上には互いに間隔をおいてフィンガー状の第1の引出配線64Aと第2の引出配線64Bが交互に形成されている。高抵抗領域53Dはイオン注入などにより高抵抗化された領域である。
【0035】
図2に示すように、第1の引出配線64Aと、そこからいくつかの引き出し配線を経た先にある第2の引出配線64Bの下に、それぞれ、第1のn型領域12Aと第2のn型領域12Bを備えている。図3に示すように、AlGaN層53AとGaN層53Bとの積層体である半導体層積層体53の上には、第1のオーミック電極54A、第2のオーミック電極54B、第1のゲート電極55A及び第2のゲート電極55Bを覆うように絶縁膜57が形成されている。図2に示すように、絶縁膜57の上には、第1のオーミック電極パッド44A、第2のオーミック電極パッド44B、第1のゲート電極パッド45A及び第2のゲート電極パッド45Bが形成されている。
【0036】
第1のオーミック電極パッド 44A、第2のオーミック電極パッド44B、第1のゲート電極パッド45A及び第2のゲート電極パッド45Bはそれぞれ半導体層積層体53における高抵抗領域53D上に形成されている。第1のオーミック電極パッド44Aは第1の引出配線64Aと、第2のオーミック電極パッド44Bは第2の引出配線64Bとそれぞれ、接続されている。
【0037】
図3に示すように、第1の引出配線64Aと第2の引出配線64Bはそれぞれ、絶縁膜に形成された開口部において、第1のオーミック電極54Aと第2のオーミック電極54Bに接続されている。第1の引出配線64A及び第2の引出配線64Bは、たとえば、厚さが100nm程度のチタン(Ti)と厚さが5000nm程度の金(Au)の積層体からなる。
【0038】
第1のゲート電極55A及び第2のゲート電極55Bは、それぞれ、第3の引き出し配線85A及び第4の引き出し線85Bと接続されている。第3の引き出し配線85Aは、第1のゲート電極55A同士を電気的に接続して第1のゲート電極55Aと交差する方向に延びている。第4の引き出し配線85Bは、第2のゲート電極55B同士を電気的に接続して第2のゲート電極55Bと交差する方向に延びている。第3の引き出し配線及び第4の引き出し配線は、たとえば、厚さが100nm程度のニッケル(Ni)と厚さが400nm程度の金(Au)の積層体からなる。
【0039】
第2の実施形態において、半導体基板10の第2の面10B側に裏面電極13を備えている例を示したが、裏面電極は無くてもよい。
第2の実施形態において、シリコン基板を用いる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11が形成でき且つ窒化物半導体からなる半導体層積層体53を形成できればどのようなものであってもよい。例えば、シリコン(Si)基板に代えて、炭化硅素(SiC)基板又は窒化ガリウム(GaN)基板等を用いることができる。
【0040】
第2の実施形態において、形成されたnpnバイポーラトランジスタ11を用いて、アバランシェ耐量を向上させる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11の耐圧が基板縦方向に存在する寄生pnダイオード11の耐圧以上の場合は、寄生pnダイオードを保護ダイオードとして用いてもよい。
(第3の実施形態)
以下に、本発明の第3の実施形態について図面を参照して説明する。図4は、第3の実施形態に係る半導体装置の一部構成を示す模式平面図である。図5は、図4における切断線110で切断した模式断面図を示している。図4及び図5において、図1〜図3と同一の構成要素には、同一の番号を附すことにより説明を省略する。
【0041】
図4に示すように、第3の実施形態の半導体装置は、第1のオーミック電極パッド94Aと、第2のオーミック電極パッド94Bの下に、それぞれ、第1のn型領域12Aと第2のn型領域12Bを備えている。
図5に示すように、npnバイポーラトランジスタ11が形成された半導体基板10の上に、バッファ層22を介して半導体層積層体83が形成されている。半導体層積層体83は、上記同様に、AlGaN層83AとGaN層83Bとを有し構成されている。半導体層積層体83の上には、X軸方向に互いに間隔をあけた状態で第3の引出配線85Aと第4の引出配線85Bとが形成され、それらを含む半導体層積層体83の上が絶縁膜87で被覆されている。
【0042】
絶縁膜87、半導体層積層体83、およびバッファ層22を貫通する状態で、第1のオーミック電極パッド94A、第2のオーミック電極パッド94Bとが形成されている。第1のオーミック電極パッド94Aは、npnバイポーラトランジスタ11の第1のn型領域12Aと電気的に接続され、また、第2のオーミック電極パッド94Bは、npnバイポーラトランジスタ11の第2のn型領域12Bと電気的に接続されている。
【0043】
第3の実施形態において、半導体基板10の第2の面10B側に裏面電極を13備えている例を示したが、裏面電極は無くてもよい。
第3の実施形態において、シリコン基板を用いる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11が形成でき且つ窒化物半導体からなる半導体層積層体83を形成できればどのようなものであってもよい。例えば、シリコン(Si)基板に代えて、炭化硅素(SiC)基板又は窒化ガリウム(GaN)基板等を用いることができる。
【0044】
第3の実施形態において、形成されたnpnバイポーラトランジスタ11を用いて、アバランシェ耐量を向上させる例を示したが、npnバイポーラトランジスタ11の耐圧が基板縦方向に存在する寄生pnダイオードの耐圧以上の場合は、寄生pnダイオードを保護ダイオードとして用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の窒化物半導体装置は、保護素子の外付けによる部品点数の増加及び占有面積の増大を抑えた、高いアバランシュエネルギー耐量を有する窒化物半導体装置を実現でき、交流スイッチ等に用いられる窒化物半導体装置等として有用である。
【符号の説明】
【0046】
10.基板
11.npnバイポーラトランジスタ
12A.第1のn型領域
12B.第2のn型領域
13.裏面電極
21.HFET
22.バッファ層
23,53,83.半導体層積層体
23A,53A,83A.AlGaN層
23B,53B,83B.GaN層
24A,54A.第1のオーミック電極
24B,54B.第2のオーミック電極
25A,55A.第1のゲート電極
25B,55B.第2のゲート電極
26A.第1のコントロール層
26B.第2のコントロール層
31A,61A.第1のビアプラグ
31B,61B.第2のビアプラグ
44A,94A.第1のオーミック電極パッド
44B,94B.第2のオーミック電極パッド
45A,105A.第1のゲート電極パッド
45B,105B.第2のゲート電極パッド
53C.活性領域
53D.高抵抗領域
57,87.絶縁膜
64A.第1の引出配線
64B.第2の引出配線
85A.第3の引出配線
85B.第4の引出配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともp型領域を有する半導体基板と、
前記半導体基板内に形成された第1のn型領域と、
前記半導体基板内に前記第1のn型領域とは間隔をおいて形成された第2のn型領域と、
前記半導体基板の上に形成されたトランジスタと、
を備え、
前記トランジスタは、
前記半導体基板側から順次形成されてなる第1の窒化物半導体層及び前記第1の窒化物半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の窒化物半導体層を含む半導体層積層体と、
前記半導体層積層体の上または上方にある第1のオーミック電極と、
前記半導体層積層体の上または上方であって、前記第1のオーミック電極とは離隔した第2のオーミック電極と、
前記第1のオーミック電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記第2のオーミック電極の間に形成された第2のゲート電極からなり、
前記第1のオーミック電極と前記第1のn型領域、及び前記第2のオーミック電極と前記第2のn型領域はそれぞれ電気的に接続されている
ことを特徴とする窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記半導体基板のp型領域と、前記第1のn型領域及び前記第2のn型領域が、npnバイポーラトランジスタを形成している
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記半導体基板のp型領域と前記第1のn型領域が第1のダイオードを形成し、
前記半導体基板のp型領域と前記第2のn型領域が第2のダイオードを形成し、
前記半導体基板の裏面に形成された裏面電極を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記第1のゲート電極と前記半導体層積層体との間に、p型の導電性を有する第1のコントロール層を有し、
前記第2のゲート電極と前記半導体層積層体との間に、p型の導電性を有する第2のコントロール層を有する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記第1のゲート電極及び第2のゲート電極が、前記半導体層積層体とショットキー接合を形成する
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記第1のゲート電極及び第2のゲート電極が、絶縁ゲート型の電極である
ことを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記半導体基板がシリコンである
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記半導体基板が炭化珪素である
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記半導体基板が窒化ガリウムである
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の窒化物半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−16627(P2013−16627A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148172(P2011−148172)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】