薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器
【課題】性能および製造安定性を向上させることが可能な薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】薄膜トランジスタは、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部と、第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備える。ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。
【解決手段】薄膜トランジスタは、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部と、第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備える。ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、有機半導体部、ソース電極部およびドレイン電極部を備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびにその薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な電子機器に、スイッチング用の素子などとして薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている。このTFTとしては、最近では、半導体層(チャネル層)の形成材料として無機半導体材料を用いた無機TFTに代えて、有機半導体材料を用いた有機TFTが有望視されている。塗布法を用いて半導体層を形成可能であるため、低コスト化を実現できるからである。また、蒸着法などよりも低い温度で半導体層を形成可能であるため、支持基体として低耐熱性でフレキシブルなプラスチックフィルムなどを使用できるからである。
【0003】
有機TFTは、支持基体の上に、ゲート絶縁層を介してゲート電極から離間された有機半導体層と、その有機半導体層に接続されたソース電極およびドレイン電極とを備えている。
【0004】
この有機TFTの構造としては、ソース電極およびドレイン電極が有機半導体層の上側に重なるように配置されたトップコンタクト型と、下側に重なるように配置されたボトムコンタクト型とが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。中でも、フォトリソグラフィ法を用いた高精細なパターニングによりソース電極およびドレイン電極を形成可能であることから、一般的には、ボトムコンタクト型が広く採用されている。
【0005】
この他、有機TFTの構造としては、ゲート電極が有機半導体層の下側(支持基体に近い側)に配置されたボトムゲート型と、上側(支持基体から遠い側)に配置されたトップゲート型とが知られている。
【0006】
有機TFTを製造する場合には、電流経路を確保するために、有機半導体層とソース電極およびドレイン電極とを確実に接続させる必要がある。そこで、フォトリソグラフィ法またはリフトオフ法などを用いてソース電極およびドレイン電極を形成して、両電極の形成位置を高精度に制御することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アドバンスド マテリアルズ 14巻,99頁,2002年,シー.ディー.ディミトラコポウロス等(Advanded Materials vol.14 ,p.99(2002),C.D.Dimitrakopoulos et al.)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−053582号公報
【特許文献2】特開2006−286719号公報
【特許文献3】特開2006−165555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機半導体層のうち、実質的に電荷輸送を担う活性領域は、ゲート絶縁層と有機半導体層との界面から数分子層の厚さ(約10nm以下)に相当する極限られた領域であることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。よって、高性能な有機TFTを安定に製造するためには、電流経路として活性領域を利用することで性能向上を図りつつ、複数の有機TFT間における性能ばらつきを抑制することで製造安定性を向上させる必要がある。
【0010】
この点に関して、ボトムコンタクト型の有機TFTでは、ソース電極およびドレイン電極が活性領域に接続されるため、接触抵抗が小さくなる。しかしながら、両電極と有機半導体層との位置合わせが困難であるため、複数の有機TFT間で性能ばらつきが生じやすい。一方、トップコンタクト型の有機TFTでは、上記した位置合わせが困難であることに加えて、両電極は活性領域に接続されないため、両電極と活性領域との間に大きな抵抗が介在することに起因して接触抵抗が大きくなる。
【0011】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、性能および製造安定性を向上させることが可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本技術の薄膜トランジスタは、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部と、第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備えたものである。ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。また、本技術の電子機器は、上記した本技術の薄膜トランジスタを用いたものである。
【0013】
本技術の薄膜トランジスタの製造方法は、有機半導体層を形成し、有機半導体層の一部に導電性を向上させるための不純物を添加して、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部および第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方を、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部とするものである。また、本技術の他の薄膜トランジスタの製造方法は、第1の面および第2の面を有する有機半導体部を形成し、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を用いて、第1の面に隣接されたソース電極部および第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本技術の薄膜トランジスタまたはその製造方法、あるいは電子機器によれば、有機半導体部に隣接されたソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、その有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。よって、性能および製造安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタの他の構成を表す断面図である。
【図3】薄膜トランジスタのさらに他の構成を表す断面図である。
【図4】本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図8】薄膜トランジスタの他の構成を表す断面図である。
【図9】薄膜トランジスタのさらに他の構成を表す断面図である。
【図10】本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】図12に続く工程を説明するための断面図である。
【図14】薄膜トランジスタの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図15】薄膜トランジスタの構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図16】本技術の薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の構成を表す断面図である。
【図17】図16に示した液晶表示装置の回路図である。
【図18】薄膜トランジスタの適用例である有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の構成を表す断面図である。
【図19】図18に示した有機EL表示装置の回路図である。
【図20】薄膜トランジスタの適用例である電子ペーパー表示装置の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、以下の通りである。
1.第1実施形態
1−1.薄膜トランジスタの構成
1−2.薄膜トランジスタの製造方法
2.第2実施形態
2−1.薄膜トランジスタの構成
2−2.薄膜トランジスタの製造方法
3.変形例
4.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)
4−1.液晶表示装置
4−2.有機EL表示装置
4−3.電子ペーパー表示装置
【0017】
<1.第1実施形態/1−1.薄膜トランジスタの構成>
まず、本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの構成について説明する。図1は、チャネル層として有機半導体部4を備えた薄膜トランジスタ(有機TFT)の断面構成を表している。
【0018】
この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を備えている。この有機半導体部4は、2つの面(第1の面および第2の面)を有しており、ソース電極部5は第1の面に隣接されていると共にドレイン電極部6は第2の面に隣接されている。ここでは、例えば、2つの面は一対の側面M1,M2であり、ソース電極部5およびドレイン電極部6は、それぞれ側面M1,M2に隣接されている。
【0019】
すなわち、図1に示した有機TFTの構造は、例えば、トップコンタクト型およびボトムコンタクト型のいずれでもなく、ソース電極部5およびドレイン電極部6が有機半導体部4と同一階層内に配置されているコプラナー(coplanar)ホモ接合型である。なお、図1では、例えば、ゲート電極2が有機半導体部4の下側(支持基体1に近い側)に配置されているボトムゲート型を示している。
【0020】
支持基体1は、例えば、プラスチック材料、金属材料または無機材料などのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0021】
プラスチック材料は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチルエーテルケトン(PEEK)、ポリアクリレート(PAR)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはトリアセチルセルロース(TAC)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレスなどである。無機材料は、例えば、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )または他の金属酸化物などである。ただし、酸化ケイ素には、ガラス、石英またはスピンオングラス(SOG)なども含まれる。
【0022】
この支持基体1は、ウェハなどの剛性を有する基板でもよいし、可撓性を有するフィルムまたは箔などでもよい。また、支持基体1の表面には、所定の機能を有する被覆層が設けられていてもよい。この被覆層は、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などである。
【0023】
なお、支持基体1は、単層でもよいし、多層でもよい。多層の場合には、上記した各種材料の層が2層以上積層されている。このように単層でも多層でもよいことは、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6についても同様である。
【0024】
ゲート電極2は、支持基体1の上に形成されており、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6からゲート絶縁層3を介して離間されている。このゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0025】
金属材料は、例えば、アルミニウム、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、タングステン(W)、タンタル(Ta)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)またはポリアニリン(PANI)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極2は、例えば、PEDOT/PSSなどの多層でもよい。
【0026】
ゲート絶縁層3は、少なくともゲート電極2を覆うように形成されており、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料などのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸アクリレート、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素樹脂、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0027】
有機半導体部4は、ゲート絶縁層3の上に形成されており、例えば、ソース電極部5およびドレイン電極部6のうちの少なくとも一方と一体である。なぜなら、後述するように、有機半導体部4は、前準備層である有機半導体層12(図4〜図6参照)の一部にドープ処理が施された際に、その有機半導体層12のうちのドープ処理されなかった部分がそのまま残存したものだからである。一方、有機半導体部12のうちのドープ処理された部分は、ソース電極部5およびドレイン電極部6のうちの少なくとも一方となる。
【0028】
ここでは、例えば、ソース電極部5およびドレイン電極部6の双方が有機半導体層12に対するドープ処理により形成されたものであるため、有機半導体部4はソース電極部5およびドレイン電極部6の双方と一体化されている。これに伴い、上記した一対の側面M1,M2は、ここでは物理的に分離された有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6とが互いに接触し合う面(界面または接合面)ではない。すなわち、側面M1,M2は、有機半導体層12を組成(ドープ処理の有無)に応じて形式的に仕切る面(仮想面)である。なお、有機半導体部4は、少なくともゲート電極2と対向配置されていることが好ましい。
【0029】
有機半導体部4は、例えば、以下の有機半導体材料(以下、「チャネル用有機半導体材料」という。)のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。(1)ポリピロール、(2)ポリチオフェン、(3)ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン、(4)ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン、(5)ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)、(6)ポリアニリン、(7)ポリアセチレン、(8)ポリジアセチレン、(9)ポリアズレン、または(10)ポリピレンである。(11)ポリカルバゾール、(12)ポリセレノフェン、(13)ポリフラン、(14)ポリ(p−フェニレン)、(15)ポリインドール、(16)ポリピリダジン、(17)ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレンまたはサーカムアントラセンなどのアセン、(18)アセン類のうちの炭素の一部が窒素(N)、硫黄(S)または酸素(O)などの原子、あるいはカルボニル基などの官能基により置換された誘導体、例えば、トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジンまたはヘキサセン−6,15−キノンなど、(19)ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィドまたはポリビニレンスルフィドなどの高分子材料および多環縮合体、または(20)上記した高分子材料と同じ繰り返し単位を有するオリゴマーである。(21)銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン、(22)テトラチアフルバレン、(23)テトラチアペンタレン、(24)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドと共に、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)またはN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、(25)ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、(26)アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類に代表される縮合環テトラカルボン酸ジイミド、(27)C60、C70、C76、C78またはC84などのフラーレン、(28)単層ナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブ、(29)メロシアニン色素またはヘミシアニン色素などの色素、または(30)2,9−ジナフチル−ペリキサンテノキサンテンなどのペリキサンテノキサンテン化合物である。
【0030】
この他、チャネル用有機半導体材料は、上記した一連の材料の誘導体でもよい。誘導体とは、上記した材料に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類および導入位置などは、任意である。
【0031】
ソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、ゲート絶縁層3の上において、有機半導体部4の厚さにより規定される空間(階層)内に配置されている。これにより、上記したように、ソース電極部5は、有機半導体部4のうちの一方の側面M1に隣接されていると共に、ドレイン電極部6は、他方の側面M2に隣接されている。この場合には、例えば、図1に示しているように、ソース電極部5およびドレイン電極部6の上面と有機半導体部4の上面とは、同一面内に含まれている。言い替えれば、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6は、同一面を形成するように平坦化されている。
【0032】
このソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、上記したように、有機半導体部4と一体であり、有機半導体層12(図4〜図6参照)のうちのドープされた一部である。なお、図1に示した網掛けは、ソース電極部5およびドレイン電極部6がドープ処理により形成されたものであることを表している。
【0033】
ソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、有機半導体部4よりも高導電性の有機半導体材料(以下、「電極用有機半導体材料」という。)を含む高導電性電極部である。これに伴い、高導電性電極部であるソース電極部5およびドレイン電極部6と有機半導体部4とは、例えば、上記したように同一階層内の層として形成されている。また、同一階層内の層として形成されている有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6とゲート絶縁層3との界面は、例えば、1つの平面内に含まれている。
【0034】
電極用有機半導体材料は、上記したように、例えば、チャネル用有機半導体材料に導電性を向上させるための不純物(ドーパント)が添加(ドープ)されたものである。このドーパントは、例えば、以下の材料のいずれか1種類または2種類以上である。
【0035】
チャネル用有機半導体材料がp型である場合に用いられるドーパントは、アクセプタ性材料である。このアクセプタ性材料は、例えば、金属酸化物、金属ハロゲン化物、ハロゲン化物、炭酸塩または有機材料である。
【0036】
金属酸化物は、例えば、酸化モリブデン(MoOx )、酸化レニウム(ReO3 )、酸化バナジウム(V2 O5 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化チタン(TiO2 )、酸化金(AuO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )または酸化銅(CuO)などである。金属ハロゲン化物は、例えば、ヨウ化銅(CuI)、塩化アンチモン(SbCl5 )、フッ化アンチモン(SbF5 )、塩化鉄(FeCl3 )、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF2 )、フッ化カルシウム(CaF2 )またはフッ化マグネシウム(MgF2 )などである。ハロゲン化物は、例えば、フッ化ヒ素(AsF5 )、フッ化ホウ素(BF3 )、塩化ホウ素(BCl3 )、臭化ホウ素(BBr3 )またはフッ化リン(PF5 )などである。炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3 )、炭酸バリウム(BaCO3 )または炭酸リチウム(Li2 CO3 )などである。
【0037】
有機材料は、例えば、p−ベンゾキノン類、ジフェノキノン類、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)類、フルオレン類、ベンゾシアノ類または遷移金属錯体類などである。
【0038】
p−ベンゾキノン類は、例えば、2,3,5,6−テトラシアノ−(p−シアニル)、2,3−ジブロモ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジヨード−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジシアノ−p−ベンゾキノン、p−ブロマニル、p−クロラニル、p−ヨーデニル、p−フロラニル、2,5−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ベンゾキノン、クロラニル酸、ブロマニル酸、2,5−ジヒドリキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−3,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジブロモ−3,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、ジュロ−(テトラメチル)、o−ベンゾキノン類、o−ブロマニル、o−クロラニル、1,4−ナフトキノン類、2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジシアノ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノンまたは9,10−アンスラキノン類などである。
【0039】
ジフェノキノン類は、例えば、3,3’,5,5’−テトラブロモ−ジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラクロロ−ジフェノキノンまたはジフェノキノンなどである。TCNQ類は、例えば、TCNQ、テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、トリフルオロメチル−TCNQ、2,5−ジフルオロ−TCNQ、モノフルオロ−TCNQ、TNAP、デシル−TCNQ、メチル−TCNQ、ジヒドロバレレノ−TCNQ、テトラヒドロバレレノ−TCNQ、ジメチル−TCNQ、ジエチル−TCNQ、ベンゾ−TCNQ、ジメトキシ−TCNQ、BTDA−TCNQ、ジエトキシ−TCNQ、テトラメチル−TCNQ、テトラシアノアントラキノジメタン、ポリニトロ化合物、テトラニトロビフェノール、ジニトロビフェニル、ピクリン酸、トリニトロベンゼン、2,6−ジニトロフェノールまたは2,4−ジニトロフェノールなどである。
【0040】
フルオレン類としては、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレン、9−ジシアノメチレン−2,4,7−トリニトロ-フルオレン、2,4,5,7−テトラニトロ-フルオレノンまたは2,4,7−トリニトロ-フルオレノンなどである。が例示される。
【0041】
ベンゾシアノ類は、例えば、(TBA)2 HCTMM、(TBA)2 HCDAHD、K・CF、TBA・PCA、TBA・MeOTCA、TBA・EtOTCA、TBA・PrOTCA、(TBA)2 HCP、ヘキサシアノブタジエンテトラシアノエチレンまたは1,2,4,5−テトラシアノベンゼンなどである。なお、「TBA」とは、テトラブチルアンモニウムである。
【0042】
遷移金属錯体類は、例えば、(TPP)2 Pd(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Pt(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Ni(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Cu(ジチオオキザレート)2 または(TBA)2 Cu(オキザレート)2 などである。なお、「TPP」とは、テトラフェニルフォスフォニウムである。
【0043】
チャネル用有機半導体材料がn型である場合に用いられるドーパントは、ドナー性材料である。このドナー性材料は、例えば、アルカリ金属、金属炭酸塩、芳香族炭化水素、TTF類、アジン類、モノアミン類またはジアミン類などである。
【0044】
アルカリ金属は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはセシウム(Cs)などである。金属炭酸塩は、例えば、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )または炭酸ルビジウム(Rb2 CO3 )などである。芳香族炭化水素は、例えば、テトラセン、ペリレン、アントラセン、コロネン、ペンタセン、クリセン、フェナントレン、ナフタレン、p−ジメトキシベンゼン、ルブレンまたはヘキサメトキシトリフェニレンなどである。
【0045】
TTF類は、例えば、HMTTF、OMTTF、TMTTF、BEDO−TTF、TTeCn−TTF、TMTSF、EDO−TTF、HMTSF、TTF、EOET−TTF、EDT−TTF、(EDO)2 DBTTF、TSCn−TTF、HMTTeF、BEDT−TTF、CnTET−TTF、TTCn−TTF、TSFまたはDBTTFなどである。この他、TTT類は、例えば、テトラチオテトラセン、テトラセレノテトラセンまたはテトラテルロテトラセンなどである。
【0046】
アジン類は、例えば、ジベンソ[c,d]−フェチノアジン、ベンゾ[c]−フェノチアジン、フェノチアジン、N−メチル-フェノチアジン、ジベンソ[c,d]−フェノセレナジン、N,N−ジメチルフェナジンまたはフェナジンなどである。
【0047】
モノアミン類は、例えば、N,N−ジエチル−m−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N−エチル−o−トルイジン、ジフェニルアミン、スカトール、インドール、N,N−ジメチル−o−トルイジン、o−トルイジン、m−トルイジン、アニリン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリンまたはp−ニトロアニリンなどである。
【0048】
ジアミン類は、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−(ジュレンジアミン)、p−フェニルジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、ベンジジン、3,3’−ジブロモ−5,5’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジクロロ−5,5’−ジメチルベンジジンまたは1,6−ジアミノピレンなどである。
【0049】
この他、4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4’’−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(2TNATA)、α−NDP、銅フタロシアニン、1,4,6,8−テトラキスジメチルアミノピレン、1,6−ジチオピレン、デカメチルフェロセンまたはフェロセンなどである。
【0050】
なお、ソース電極部5およびドレイン電極部6の双方が有機半導体層12に対するドープ処理により形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ソース電極部5またはドレイン電極部6のいずれか一方だけが有機半導体層12に対するドープ処理により形成されていてもよい。有機半導体層12に対するドープ処理により形成されていないソース電極部5またはドレイン電極部6は、例えば、ゲート電極2と同様の材料を含んでおり、有機半導体部4と別体形成されていてもよい。この場合において、ソース電極部5またはドレイン電極部6は、有機半導体部4の側面M1,M2に隣接していてもよいし、その有機半導体部4の上側または下側に重なっていてもよい。
【0051】
ここで、有機TFTは、必要に応じて、上記以外の構成要素を備えていてもよい。図2および図3は、有機TFTの他の構成を表しており、いずれも図1に対応する断面構成を示している。
【0052】
図2に示した有機TFTは、例えば、さらに、層間絶縁層7と、その層間絶縁層7の上に形成されると共に互いに分離された配線8,9とを備えることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。層間絶縁層7は、少なくとも有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を覆うように形成されており、例えば、ゲート絶縁層3と同様の材料(例えばPVPなど)を含んでいる。配線8は、例えば、層間絶縁層7に設けられた開口部7KAを通じてソース電極部5の上面に接続されていると共に、配線9は、例えば、層間絶縁層7に設けられた開口部7KBを通じてドレイン電極部6の上面に接続されている。この配線8,9は、例えば、ゲート電極2と同様の材料、より具体的には、銅、アルミニウム、チタン、モリブデン、銀またはそれらの合金などの金属材料を含んでいる。また、配線8,9は、上記した金属材料層の積層膜でもよい。この場合におけるドーパントは、配線8,9に含まれる金属材料またはその金属材料の化合物を含んでいることが好ましい。
【0053】
図3に示した有機TFTは、例えば、さらに、互いに分離された配線10,11を備えることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。配線10は、例えば、ソース電極部5の上面および側面に接続されていると共に、配線11は、例えば、ドレイン電極部6の上面および側面に接続されている。この配線10,11の形成材料および構成に関する詳細は、例えば、配線8,9と同様である。
【0054】
<1−2.薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記した有機TFTの製造方法について説明する。図4〜図6は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。なお、有機TFTの各構成要素の形成材料については既に詳細に説明したので、以下では、その形成材料の一例を挙げながら説明する。
【0055】
有機TFTを製造する場合には、最初に、図4に示したように、プラスチックフィルムなどの支持基体1の上に、ゲート電極2を形成する。この場合には、例えば、支持基体1の表面を覆うように金属材料層(図示せず)を形成したのち、その金属材料層をパターニングする。
【0056】
金属材料層の形成材料は、例えば、銅などである。また、金属材料層の形成方法は、例えば、スパッタリング法、蒸着法または化学気相成長(CVD)法などの気相成長法であり、そのパターニング方法は、例えば、エッチング法などである。このエッチング法は、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法などのドライエッチング法でもよいし、ウェットエッチング法でもよい。
【0057】
なお、金属材料層をパターニングする場合には、フォトリソグラフィ法または紫外線描画法などを併用してもよい。この場合には、例えば、金属材料層の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。こののち、フォトリソグラフィ法などを用いてフォトレジスト膜をパターニング(露光および現像)してから、そのフォトレジスト膜をマスクとして金属材料層をエッチングする。ただし、フォトレジスト膜に代えて金属膜などをマスクとして用いてもよい。
【0058】
続いて、少なくともゲート電極2を覆うようにゲート絶縁層3を形成する。このゲート絶縁層3の形成材料は、例えば、PVPなどであり、その形成方法は、例えば、スピンコート法などの塗布法である。
【0059】
続いて、ゲート絶縁層3の上に有機半導体層12を形成する。この有機半導体層12は、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を形成するための前準備層であり、その形成材料は、例えば、ペンタセンなどのp型のチャネル用有機半導体材料である。また、有機半導体層12の形成方法は、例えば、(1)抵抗加熱蒸着法、スパッタリング、真空蒸着法またはCVD法などの気相成長法、(2)塗布法、浸漬法または印刷法などの液相成長法である。この塗布法は、例えば、スピンコート法、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、リバースロールコータ法、トランスファーロールコータ法、グラビアコータ法、キスコータ法、キャストコータ法、スプレーコータ法、スリットオリフィスコータ法またはカレンダーコータ法などである。これらの形成方法は、有機半導体層12の形成材料などに応じて適宜選択可能である。なお、有機半導体層12の厚さは、特に限定されないが、例えば、50nmである。
【0060】
続いて、有機半導体層12の上の一部にマスク13を形成する。この場合には、例えば、有機半導体層12の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜(図示せず)を形成したのち、フォトリソグラフィ法などを用いてフォトレジスト膜をパターニングする。また、例えば、有機半導体層12を所望の大きさにパターニングできるように、マスク13の形成範囲を調整する。なお、マスク13の形成材料は、フォトレジストに限らず、他の材料(有機材料または無機材料)でもよい。
【0061】
続いて、マスク13を用いて有機半導体層12を選択的に除去して、その有機半導体層12をパターニングする。これにより、図5に示したように、有機半導体層12のうち、マスク13の形成範囲に対応する部分が残存する。このパターニング方法は、例えば、イオンミリング法などのドライエッチング法であり、ここではマスク13はエッチング用のマスクとして用いられる。
【0062】
続いて、例えば、マスク13を選択的に除去して、そのマスク13をパターニングする。これにより、図6に示したように、マスク13の一部が残存する。この場合には、例えば、フォトリソグラフィ法を用いてマスク13を追い露光してから現像すると共に、有機半導体層12のうち、有機半導体部4の形成領域に対応する部分の上にマスク13を残存させる。なお、有機半導体層12をパターニングするために用いたマスク13を追い露光する代わりに、そのマスク13を除去してから同様の方法を用いて新たなマスクを形成してもよい。
【0063】
最後に、マスク13を用いて有機半導体層12にドープ処理を行う。具体的には、ヨウ素(I2 )ガスなどのドーパントDを有機半導体層12に対して選択的にドープする。ここでは、マスク13はドーピング用のマスクとして用いられる。このドープ処理では、有機半導体層12のうち、マスク13により覆われている部分にはドーパントDがドープされないのに対して、そのマスク13により覆われていない部分にはドーパントDがドープされる。これにより、図1に示したように、ドープされない有機半導体層12(チャネル用有機半導体材料)により、一対の側面M1,M2を有する有機半導体部4が形成される。また、ドープされた有機半導体層12(チャネル有機半導体材料よりも高導電性の電極用有機半導体材料)により、有機半導体部4の側面M1,M2にそれぞれ隣接されたソース電極部5およびドレイン電極部6が形成される。
【0064】
なお、有機半導体層12に対するドープ処理により、ソース電極部5(またはドレイン電極部6)だけを形成してもよい。この場合には、例えば、ゲート電極2の形成方法と同様の手順により、ドレイン電極6(またはソース電極5)を形成すればよい。または、例えば、後述する第2実施形態で説明するドレイン電極部16(またはソース電極部15)の形成手順により、ドレイン電極6(またはソース電極5)を形成してもよい。
【0065】
こののち、上記したエッチング法などを用いてマスク13を除去することで、図1に示した有機TFTが完成する。ただし、マスク13を除去せずに残存させてもよい。マスク13が絶縁性であれば、残存していても有機TFTの性能に影響を及ぼさないからである。なお、マスク13をエッチングする際には、意図せずに有機半導体部4までエッチングされることがないように注意する必要がある。
【0066】
[薄膜トランジスタの製造方法に関する作用および効果]
この有機TFTおよびその製造方法では、有機半導体層12の一部にドーパントDをドープして、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を一体形成している。これにより、有機半導体部4の側面M1,M2のそれぞれに、その有機半導体部4よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部であるソース電極部5およびドレイン電極部6が隣接される。
【0067】
この場合には、ソース電極部5およびドレイン電極部6が有機半導体部4の活性領域に接続されると共に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6がいずれも同種類の材料(有機材料)により形成されるため、接触抵抗は著しく低下する。
【0068】
しかも、有機半導体層12に対するドープ処理によりソース電極部5およびドレイン電極部6が形成されるため、有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6とが互いに重なるように位置合わせする必要がない。これにより、有機TFTの性能がソース電極部5およびドレイン電極部6の形成位置のばらつきの影響を受けにくくなる。
【0069】
これらのことから、電流経路として有機半導体部4の活性領域が利用されることで接触抵抗が低下するため、有機TFTの性能が向上する。また、位置合わせが簡略化されることでと複数の有機TFT間における性能ばらつきが抑制されるため、製造安定性が向上する。よって、有機TFTの性能および製造安定性を向上させることができる。
【0070】
特に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6が一体形成されており、有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6との間に接合面が存在しないため、接触抵抗をより低下させることができる。
【0071】
なお、有機半導体層12の一部にドーパントDをドープしてソース電極部5またはドレイン電極部6のいずれか一方だけを形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0072】
<2.第2実施形態/2−1.薄膜トランジスタの構成>
次に、本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの構成について説明する。図7は、有機TFTの断面構成を表している。図7および以降の図面では、第1実施形態で説明した構成要素に同一の符号を付しており、その構成要素に関する説明を適宜省略している。また、以下では、第1実施形態で説明した構成要素を随時引用している。
【0073】
この有機TFTは、例えば、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6に代えて、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16を備えることを除き、第1実施形態の有機TFTと同様の構成を有している。この有機半導体部14は、例えば、第1の面および第2の面として一対の側面M3,M4を有しており、ソース電極部15およびドレイン電極部16は、それぞれ側面M3,M4に隣接されている。
【0074】
有機半導体部14は、例えば、ソース電極部15およびドレイン電極部16のうちの少なくとも一方と別体である。なぜなら、有機半導体部14は、後述するように、前準備層である有機半導体層17(図10〜図13参照)の一部が除去された際に、その除去されなかった部分がそのまま残存したものだからである。有機半導体層17が除去された箇所には、ソース電極部15およびドレイン電極16部のうちの少なくとも一方が事後的に形成される。
【0075】
ここでは、例えば、ソース電極15よびドレイン電極16の双方が事後的に形成されたものであるため、有機半導体部14はソース電極部15およびドレイン電極部16の双方と別体化されている。これに伴い、上記した一対の側面M3,M4は、第1実施形態とは異なり、ここでは物理的に分離された有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とが互いに接触し合う面(界面または接合面)となる。なお、上記以外の有機半導体部14の構成は、例えば、有機半導体部4の構成と同様である。
【0076】
ソース電極部15およびドレイン電極部16は、上記したように、有機半導体部14と別体であり、有機半導体層17(図10〜図13参照)が除去された箇所に有機半導体部14とは別工程で形成されたものである。
【0077】
このソース電極部15およびドレイン電極部16は、例えば、有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料(電極用有機半導体材料)のいずれか1種類または2種類以上を含む高導電性電極部である。この電極用有機半導体材料は、例えば、有機半導体部14の形成材料とは異なる材料でもよいし、有機半導体部14の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物でもよい。
【0078】
有機半導体部14の形成材料と異なる材料は、例えば、電極用有機半導体材料とは骨格が異なる他の種類の材料、または、電極用有機半導体材料と共通の骨格を有すると共にその骨格に導電性を向上させるための1または2以上の官能基が導入された材料などである。有機半導体部14の材料がペンタセンである場合には、例えば、前者の材料はペンタセン以外の材料であり、後者の材料は、ペンタセンに官能基が導入された材料である。
【0079】
有機半導体部14の形成材料と導電性材料との混合物に関して、有機半導体部14の形成材料に関する詳細は、例えば、有機半導体部4の形成材料と同様であり、導電性材料に関する詳細は、例えば、ドーパントDと同様である。
【0080】
なお、ソース電極部15およびドレイン電極部16の双方が電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ソース電極部15またはドレイン電極部16のいずれか一方だけが電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されていてもよい。電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されていないソース電極部15またはドレイン電極部16は、例えば、ゲート電極2と同様の材料を含んでおり、有機半導体部14と別体形成されていてもよい。この場合において、ソース電極部15またはドレイン電極部16は、有機半導体部14の側面M3,M4に隣接していてもよいし、その有機半導体部1の上側または下側に重なっていてもよい。
【0081】
ここで、有機TFTは、図2および図3にそれぞれ対応する図8および図9に示したように、層間絶縁層7および配線8〜11などの上記以外の構成要素を備えていてもよい。この場合における導電性材料は、配線8〜11に含まれる金属材料またはその金属材料の化合物を含んでいることが好ましい。
【0082】
<2−2.薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記した有機TFTの製造方法について説明する。図10〜図13は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図7に対応する断面構成を示している。なお、有機TFTの各構成要素の形成材料については既に詳細に説明したので、以下では、その形成材料の一例を挙げながら説明する。以下では、第1実施形態で説明した構成要素を随時引用している。
【0083】
有機TFTを製造する場合には、最初に、図10に示したように、有機半導体層12に代えて有機半導体層17を形成することを除き、第1実施形態と同様の手順により、支持基体1の上にゲート電極2、ゲート絶縁層3および有機半導体層17を形成する。この有機半導体層17の形成材料に関する詳細は、例えば、有機半導体層12の形成材料と同様であり、具体的には、下記の式(1)で表されるペリキサンテノキサンテン誘導体などである。また、有機半導体層17の形成方法に関する詳細は、例えば、有機半導体層12の形成材料と同様であり、具体的には、真空蒸着法などである。なお、有機半導体層17の厚さは、特に限定されないが、例えば、30nmである。
【0084】
【化1】
【0085】
続いて、有機半導体層17の上の一部にマスク18を形成する。このマスク18の形成手順は、例えば、有機半導体層17のうち、おおよそ有機半導体部14となる部分を覆うようにマスク18の形成位置を調整することを除き、マスク13の形成手順と同様である。
【0086】
続いて、マスク18を用いて有機半導体層17の一部を除去して、その有機半導体層17をパターニングする。これにより、図11に示したように、有機半導体層17のうち、マスク18の形成範囲に対応する部分が残存するため、一対の側面M3,M4を有する有機半導体部14が形成される。このパターニング方法は、例えば、イオンミリング法などのドライエッチング法であり、ここではマスク18はエッチング用のマスクとして用いられる。
【0087】
このパターニング工程では、有機半導体層17のうち、マスク18により覆われていなかった部分だけでなく、そのマスク18により覆われている部分も僅かに除去される。このため、側面M1,M2は、マスク18の両端よりも内側に後退する。
【0088】
続いて、図12に示したように、マスク18と共に、有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料19を用いて、有機半導体層17が除去された箇所にソース電極部15およびドレイン電極部16を形成する。この場合には、マスク18の上にも有機半導体材料19が堆積される。
【0089】
ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料は、例えば、式(1)に示したペリキサンテノキサンテン誘導体とその導電性を向上させるためのF4−TCNQとの混合物などである。また、ソース電極15部およびドレイン電極部16の形成方法は、例えば、(1)抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などの気相成長法、(2)塗布法、浸漬法または印刷法などの液相成長法である。この塗布法は、例えば、スピンコート法、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、リバースロールコータ法、トランスファーロールコータ法、グラビアコータ法、キスコータ法、キャストコータ法、スプレーコータ法、スリットオリフィスコータ法またはカレンダーコータ法などである。これらの形成方法は、ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料などの条件に応じて適宜選択可能である。なお、ソース電極部15およびドレイン電極部16の厚さは、特に限定されないが、例えば、30nmである。
【0090】
気相成長法を用いる場合には、例えば、ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料としてペリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとの混合物を用いて、それらを共蒸着などして一緒に堆積させることが好ましい。一方、液相成長法を用いる場合には、例えば、上記したペリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとの混合溶液を塗布または印刷することが好ましい。または、ペリキサンテノキサンテン誘導体の溶液を塗布または印刷したのち、乾固しないうちにF4−TCNQの溶液を塗布または印刷することで、ポリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとを混合してもよい。気相成長法を用いて高拡散性の有機材料を堆積させたり、液相成長法を用いて有機材料を塗布等すると、スパッタリング法または蒸着法などを用いて低拡散性の無機電極材料を堆積させる場合とは異なり、有機材料がマスク18の裏側に回り込んで側面M3,M4に付着しやすくなるからである。また、有機半導体部14の形成材料とソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料とは有機材料同士であるため、有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とが密着し、良好な界面が形成されるからである。これにより、ソース電極部15およびドレイン電極部16がそれぞれ側面M3,M4に隣接されるため、ソース電極部15およびドレイン電極部16と有機半導体部14との間に隙間が生じにくくなる。しかも、有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とは強固に接続される。
【0091】
続いて、必要に応じて、図13に示したように、ソース電極部15およびドレイン電極部16の一部を除去して、そのソース電極部15およびドレイン電極部16をパターニングする。このパターニング方法は、例えば、レーザアブレーション法などである。
【0092】
最後に、マスク18をその上に形成された有機半導体材料19と一緒に除去(リフトオフ)することにより、図7に示した有機TFTが完成する。なお、マスク18とその上の有機半導体材料19とを一緒に除去する代わりに、ドライエッチング法またはレーザアブレーション法などを用いてマスク18の上の不要な有機半導体材料19だけを除去してもよい。
【0093】
なお、有機半導体材料19を用いてソース電極部15(またはドレイン電極部16)だけを形成する場合には、例えば、ゲート電極2の形成方法と同様の手順によりドレイン電極16(またはソース電極15)を形成すればよい。
【0094】
[薄膜トランジスタの製造方法に関する作用および効果]
この有機TFTおよびその製造方法では、有機半導体部14を形成したのち、その有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料19を用いて、高導電性電極部であるソース電極部15およびドレイン電極部16を形成している。これにより、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16が別体形成される。この場合には、有機半導体部14の側面M3,M4に、その有機半導体部14よりも高導電性のソース電極部15およびドレイン電極部16が隣接される。よって、第1実施形態と同様の理由により、接触抵抗が低下すると共に複数の有機TFT間の性能ばらつきが抑制されるため、有機TFTの性能および製造安定性を向上させることができる。
【0095】
特に、気相成長法を用いてソース電極部15およびドレイン電極部16を形成すれば、有機半導体部14の側面M3,M4にそれぞれソース電極部15およびドレイン電極部16が密着しやすくなる。よって、接触抵抗をより低下させることができると共に、有機TFTの性能ばらつきをより抑制させることができる。
【0096】
なお、有機半導体材料19を用いてソース電極部15またはドレイン電極部16のいずれか一方だけを形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0097】
<3.変形例>
第1実施形態の有機TFT(図1参照)は、図14に示したように、ゲート電極2が有機半導体部4の上側(支持基体1から遠い側)に配置されているトップゲート型でもよい。この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層されていることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。図14に示したトップゲート型の有機TFTでも、同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、第2実施形態の有機TFT(図7参照)は、図15に示したように、ゲート電極2が有機半導体部14の上側に配置されているトップゲート型でもよい。この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層されていることを除き、図7に示した有機TFTと同様の構成を有している。図15に示したトップゲート型の有機TFTでも、同様の効果を得ることができる。
【0099】
<4.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)>
次に、上記した薄膜トランジスタである有機TFTの適用例について説明する。この有機TFTは、例えば、以下で説明するように、いくつかの電子機器に適用可能である。
【0100】
<4−1.液晶表示装置>
有機TFTは、例えば、液晶表示装置に適用される。図16および図17は、それぞれ液晶表示装置の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図16)および回路構成(図17)はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0101】
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図16に示したように、駆動基板20と対向基板30との間に液晶層41が封入されたものである。
【0102】
駆動基板20は、例えば、支持基板21の一面に有機TFT22、平坦化絶縁層23および画素電極24がこの順に形成されると共に、有機TFT22および画素電極24がマトリクス状に配置されたものである。ただし、1画素内に含まれる有機TFT22の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図16および図17では、例えば、1画素内に1つの有機TFT22が含まれる場合を示している。
【0103】
支持基板21は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、有機TFT22は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様であり、そのことは、以降で説明する場合においても同様である。平坦化絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでおり、画素電極24は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。なお、画素電極24は、平坦化絶縁層23に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT22に接続されている。
【0104】
対向基板30は、例えば、支持基板31の一面に対向電極32が全面形成されたものである。支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極32は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。
【0105】
駆動基板20および対向基板30は、液晶層41を挟んで画素電極24と対向電極32とが対向するように配置されていると共に、シール材40により貼り合わされている。液晶層41に含まれる液晶分子の種類は、任意に選択可能である。
【0106】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0107】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図17に示したように、有機TFT22および液晶表示素子44(画素電極24、対向電極32および液晶層41を含む素子部)と共に、キャパシタ45を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線42が配列されていると共に列方向に複数の走査線43が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT22、液晶表示素子44およびキャパシタ45が配置されている。有機TFT22におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図17に示した態様に限らず、任意に変更可能である。信号線42および走査線43は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。
【0108】
この液晶表示装置では、有機TFT22により液晶表示素子44が選択され、画素電極24と対向電極32との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層41における液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、画像が表示される。
【0109】
この液晶表示装置によれば、有機TFT22が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、有機TFT22の性能および製造安定性が向上する。よって、表示性能および製造安定性を向上させることができる。なお、液晶表示装置は、透過型に限らずに反射型でもよい。
【0110】
<4−2.有機EL表示装置>
有機TFTは、例えば、有機EL表示装置に適用される。図18および図19は、それぞれ有機EL表示装置の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図18)および回路構成(図19)はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0111】
ここで説明する有機EL表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の有機ELディスプレイである。この有機EL表示装置は、駆動基板50と対向基板60とが接着層70を介して貼り合わされたものであり、例えば、対向基板60を経由して光を放出するトップエミッション型である。
【0112】
駆動基板50は、例えば、支持基板51の一面に有機TFT52、保護層53、平坦化絶縁層54、画素分離絶縁層55、画素電極56、有機層57、対向電極58および保護層59がこの順に形成されたものである。有機TFT52、画素電極56および有機層57は、マトリクス状に配置されている。ただし、1画素内に含まれる有機TFT52の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図18および図19では、例えば、1画素内に2つの有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)が含まれる場合を示している。
【0113】
支持基板51は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されている。トップエミッション型では対向基板60から光が取り出されるため、支持基板51は、透過性材料または非透過性材料のいずれにより形成されていてもよい。有機TFT52は、上記した有機TFTと同様の構成を有しており、保護層53は、例えば、PVAまたはポリパラキシリレンなどの高分子材料を含んでいる。平坦化絶縁層54および画素分離絶縁層55は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでいる。この画素分離絶縁層55は、例えば、形成工程を簡略化すると共に所望の形状に形成可能にするために、光パターニングまたはリフローなどにより成形可能な感光性樹脂材料を含んでいることが好ましい。なお、保護層53により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層54は省略されてもよい。
【0114】
画素電極56は、例えば、アルミニウム、銀、チタンまたはクロムなどの反射性材料を含んでおり、対向電極58は、例えば、ITOまたはIZOなどの透過性導電性材料を含んでいる。ただし、カルシウム(Ca)などの透過性の金属材料またはその合金や、PEDOTなどの透過性の有機導電性材料を含んでいてもよい。有機層57は、赤色、緑色または青色などの光を発生させる発光層を含んでおり、必要に応じて正孔輸送層および電子輸送層などを含む積層構造を有していてもよい。発光層の形成材料は、発生させる光の色に応じて任意に選択可能である。画素電極56および有機層57は、画素分離絶縁層55により分離されながらマトリクス状に配置されているのに対して、対向電極58は、有機層57を介して画素電極56に対向しながら連続的に延在している。保護層59は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、ポリパラキシリレンまたはウレタンなどの光透過性誘電材料を含んでいる。なお、画素電極56は、保護層53および平坦化絶縁層54に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT52に接続されている。
【0115】
対向基板60は、例えば、支持基板61の一面にカラーフィルタ62が設けられたものである。支持基板61は、例えば、ガラスまたはブラスチック材料などの透過性材料により形成されており、カラーフィルタ62は、有機層57において発生した光の色に対応する複数の色領域を有している。ただし、カラーフィルタ62はなくてもよい。
【0116】
接着層70は、例えば、熱硬化型樹脂などの接着剤である。
【0117】
有機EL表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図19に示したように、有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)および有機EL表示素子73(画素電極56、有機層57および対向電極58を含む素子部)と共に、キャパシタ74を含んでいる。この回路では、複数の信号線71および走査線72が交差する位置に、有機TFT52、有機EL表示素子73およびキャパシタ74が配置されている。選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52Bにおけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図19に示した態様に限らず、任意に変更可能である。
【0118】
この有機EL表示装置では、例えば、選択用TFT52Aにより有機EL表示素子73が選択されると、その有機EL表示素子73が駆動用TFT52Bにより駆動される。これにより、画素電極56と対向電極58との間に電界が印加されると、有機層57において光が発生する。この場合には、例えば、隣り合う3つの有機EL表示素子73において、それぞれ赤色、緑色または青色の光が発生する。これらの光の合成光が対向基板60を経由して外部へ放出されるため、階調画像が表示される。
【0119】
この有機EL表示装置によれば、有機TFT52が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能および製造安定性を向上させることができる。
【0120】
なお、有機EL表示装置は、トップエミッション型に限らず、駆動基板50を経由して光を放出するボトムエミッション型でもよいし、駆動基板50および対向基板60の双方を経由して光を放出するデュアルエミッション型でもよい。この場合には、画素電極56および対向電極58のうち、光が放出される側の電極が透過性材料により形成され、光が放出されない側の電極が反射性材料により形成されることになる。
【0121】
<4−3.電子ペーパー表示装置>
有機TFTは、例えば、電子ペーパー表示装置に適用される。図20は、電子ペーパー表示装置の断面構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図20)および図17を参照して説明する回路構成はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0122】
ここで説明する電子ペーパー表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の電子ペーパーディスプレイである。この電子ペーパー表示装置は、例えば、駆動基板80と電気泳動素子93を含む対向基板90とが接着層100を介して貼り合わされたものである。
【0123】
駆動基板80は、例えば、支持基板81の一面に有機TFT82、保護層83、平坦化絶縁層84および画素電極85がこの順に積層されると共に、有機TFT82および画素電極85がマトリクス状に配置されたものである。支持基板81は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されており、有機TFT82は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。保護層83および平坦化絶縁層84は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでおり、画素電極85は、例えば、銀などの金属材料を含んでいる。なお、画素電極85は、保護層83および平坦化絶縁層84に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT82に接続されている。また、保護層83により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層84は省略されてもよい。
【0124】
対向基板90は、例えば、支持基板91の一面に対向電極92、および複数の電気泳動素子93を含む層がこの順に積層されると共に、その対向電極92が全面形成されたものである。支持基板91は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極92は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。電気泳動素子93は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせるものであり、その構成は、任意である。
【0125】
この他、電子ペーパー表示装置は、例えば、カラーフィルタなどの他の構成要素(図示せず)を備えていてもよい。
【0126】
電子ペーパー表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図17に示した液晶表示装置の回路と同様の構成を有している。電子ペーパー表示装置の回路は、有機TFT22および液晶表示素子44の代わりに、それぞれ有機TFT82および電子ペーパー表示素子(画素電極85、対向電極92および電気泳動素子93を含む素子部)を含んでいる。
【0127】
この電子ペーパー表示装置では、有機TFT82により電子ペーパー表示素子が選択され、その画素電極85と対向電極92との間に電界が印加されると、その電界に応じて電気泳動素子93においてコントラストが生じるため、階調画像が表示される。
【0128】
この電子ペーパー表示装置によれば、有機TFT82が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能および製造安定性を向上させることができる。
【0129】
以上、実施形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本技術の薄膜トランジスタが適用される電子機器は、液晶表示装置、有機EL表示装置または電子ペーパー表示装置に限らず、他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)表示部(MEMS型ディスプレイ)などが挙げられる。この場合においても、表示性能を向上させることができる。
【0130】
また、例えば、本技術の薄膜トランジスタは、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。このような電子機器としては、例えば、センサマトリクス、メモリセンサ、RFIDタグ(Radio Frequency Identification)またはセンサアレイなどが挙げられる。この場合においても、性能向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0131】
1…支持基体、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4,14…有機半導体部、5,15…ソース電極部、6,16…ドレイン電極部、12,17…有機半導体層、13…マスク、M1〜M4…側面。
【技術分野】
【0001】
本技術は、有機半導体部、ソース電極部およびドレイン電極部を備えた薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびにその薄膜トランジスタを用いた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な電子機器に、スイッチング用の素子などとして薄膜トランジスタ(TFT)が用いられている。このTFTとしては、最近では、半導体層(チャネル層)の形成材料として無機半導体材料を用いた無機TFTに代えて、有機半導体材料を用いた有機TFTが有望視されている。塗布法を用いて半導体層を形成可能であるため、低コスト化を実現できるからである。また、蒸着法などよりも低い温度で半導体層を形成可能であるため、支持基体として低耐熱性でフレキシブルなプラスチックフィルムなどを使用できるからである。
【0003】
有機TFTは、支持基体の上に、ゲート絶縁層を介してゲート電極から離間された有機半導体層と、その有機半導体層に接続されたソース電極およびドレイン電極とを備えている。
【0004】
この有機TFTの構造としては、ソース電極およびドレイン電極が有機半導体層の上側に重なるように配置されたトップコンタクト型と、下側に重なるように配置されたボトムコンタクト型とが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。中でも、フォトリソグラフィ法を用いた高精細なパターニングによりソース電極およびドレイン電極を形成可能であることから、一般的には、ボトムコンタクト型が広く採用されている。
【0005】
この他、有機TFTの構造としては、ゲート電極が有機半導体層の下側(支持基体に近い側)に配置されたボトムゲート型と、上側(支持基体から遠い側)に配置されたトップゲート型とが知られている。
【0006】
有機TFTを製造する場合には、電流経路を確保するために、有機半導体層とソース電極およびドレイン電極とを確実に接続させる必要がある。そこで、フォトリソグラフィ法またはリフトオフ法などを用いてソース電極およびドレイン電極を形成して、両電極の形成位置を高精度に制御することが提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アドバンスド マテリアルズ 14巻,99頁,2002年,シー.ディー.ディミトラコポウロス等(Advanded Materials vol.14 ,p.99(2002),C.D.Dimitrakopoulos et al.)
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−053582号公報
【特許文献2】特開2006−286719号公報
【特許文献3】特開2006−165555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
有機半導体層のうち、実質的に電荷輸送を担う活性領域は、ゲート絶縁層と有機半導体層との界面から数分子層の厚さ(約10nm以下)に相当する極限られた領域であることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。よって、高性能な有機TFTを安定に製造するためには、電流経路として活性領域を利用することで性能向上を図りつつ、複数の有機TFT間における性能ばらつきを抑制することで製造安定性を向上させる必要がある。
【0010】
この点に関して、ボトムコンタクト型の有機TFTでは、ソース電極およびドレイン電極が活性領域に接続されるため、接触抵抗が小さくなる。しかしながら、両電極と有機半導体層との位置合わせが困難であるため、複数の有機TFT間で性能ばらつきが生じやすい。一方、トップコンタクト型の有機TFTでは、上記した位置合わせが困難であることに加えて、両電極は活性領域に接続されないため、両電極と活性領域との間に大きな抵抗が介在することに起因して接触抵抗が大きくなる。
【0011】
本技術はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、性能および製造安定性を向上させることが可能な薄膜トランジスタおよびその製造方法、ならびに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本技術の薄膜トランジスタは、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部と、第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備えたものである。ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。また、本技術の電子機器は、上記した本技術の薄膜トランジスタを用いたものである。
【0013】
本技術の薄膜トランジスタの製造方法は、有機半導体層を形成し、有機半導体層の一部に導電性を向上させるための不純物を添加して、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、第1の面に隣接されたソース電極部および第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、ソース電極部およびドレイン電極部のうちの少なくとも一方を、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部とするものである。また、本技術の他の薄膜トランジスタの製造方法は、第1の面および第2の面を有する有機半導体部を形成し、有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を用いて、第1の面に隣接されたソース電極部および第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成するものである。
【発明の効果】
【0014】
本技術の薄膜トランジスタまたはその製造方法、あるいは電子機器によれば、有機半導体部に隣接されたソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、その有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である。よって、性能および製造安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタの他の構成を表す断面図である。
【図3】薄膜トランジスタのさらに他の構成を表す断面図である。
【図4】本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図5】図4に続く工程を説明するための断面図である。
【図6】図5に続く工程を説明するための断面図である。
【図7】本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの構成を表す断面図である。
【図8】薄膜トランジスタの他の構成を表す断面図である。
【図9】薄膜トランジスタのさらに他の構成を表す断面図である。
【図10】本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの製造方法を説明するための断面図である。
【図11】図10に続く工程を説明するための断面図である。
【図12】図11に続く工程を説明するための断面図である。
【図13】図12に続く工程を説明するための断面図である。
【図14】薄膜トランジスタの構成に関する変形例を表す断面図である。
【図15】薄膜トランジスタの構成に関する他の変形例を表す断面図である。
【図16】本技術の薄膜トランジスタの適用例である液晶表示装置の構成を表す断面図である。
【図17】図16に示した液晶表示装置の回路図である。
【図18】薄膜トランジスタの適用例である有機エレクトロルミネセンス(EL)表示装置の構成を表す断面図である。
【図19】図18に示した有機EL表示装置の回路図である。
【図20】薄膜トランジスタの適用例である電子ペーパー表示装置の構成を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、以下の通りである。
1.第1実施形態
1−1.薄膜トランジスタの構成
1−2.薄膜トランジスタの製造方法
2.第2実施形態
2−1.薄膜トランジスタの構成
2−2.薄膜トランジスタの製造方法
3.変形例
4.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)
4−1.液晶表示装置
4−2.有機EL表示装置
4−3.電子ペーパー表示装置
【0017】
<1.第1実施形態/1−1.薄膜トランジスタの構成>
まず、本技術の第1実施形態における薄膜トランジスタの構成について説明する。図1は、チャネル層として有機半導体部4を備えた薄膜トランジスタ(有機TFT)の断面構成を表している。
【0018】
この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を備えている。この有機半導体部4は、2つの面(第1の面および第2の面)を有しており、ソース電極部5は第1の面に隣接されていると共にドレイン電極部6は第2の面に隣接されている。ここでは、例えば、2つの面は一対の側面M1,M2であり、ソース電極部5およびドレイン電極部6は、それぞれ側面M1,M2に隣接されている。
【0019】
すなわち、図1に示した有機TFTの構造は、例えば、トップコンタクト型およびボトムコンタクト型のいずれでもなく、ソース電極部5およびドレイン電極部6が有機半導体部4と同一階層内に配置されているコプラナー(coplanar)ホモ接合型である。なお、図1では、例えば、ゲート電極2が有機半導体部4の下側(支持基体1に近い側)に配置されているボトムゲート型を示している。
【0020】
支持基体1は、例えば、プラスチック材料、金属材料または無機材料などのいずれか1種類または2種類以上により形成されている。
【0021】
プラスチック材料は、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチルエーテルケトン(PEEK)、ポリアクリレート(PAR)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)またはトリアセチルセルロース(TAC)などである。金属材料は、例えば、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)またはステンレスなどである。無機材料は、例えば、ケイ素(Si)、酸化ケイ素(SiOx )、窒化ケイ素(SiNx )、酸化アルミニウム(AlOx )または他の金属酸化物などである。ただし、酸化ケイ素には、ガラス、石英またはスピンオングラス(SOG)なども含まれる。
【0022】
この支持基体1は、ウェハなどの剛性を有する基板でもよいし、可撓性を有するフィルムまたは箔などでもよい。また、支持基体1の表面には、所定の機能を有する被覆層が設けられていてもよい。この被覆層は、例えば、密着性を確保するためのバッファ層またはガス放出を防止するためのガスバリア層などである。
【0023】
なお、支持基体1は、単層でもよいし、多層でもよい。多層の場合には、上記した各種材料の層が2層以上積層されている。このように単層でも多層でもよいことは、ゲート電極2、ゲート絶縁層3、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6についても同様である。
【0024】
ゲート電極2は、支持基体1の上に形成されており、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6からゲート絶縁層3を介して離間されている。このゲート電極2は、例えば、金属材料、無機導電性材料、有機導電性材料または炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
【0025】
金属材料は、例えば、アルミニウム、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル、パラジウム(Pd)、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、タングステン(W)、タンタル(Ta)またはそれらを含む合金などである。無機導電性材料は、例えば、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)または酸化亜鉛(ZnO)などである。有機導電性材料は、例えば、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、ポリスチレンスルホン酸(PSS)またはポリアニリン(PANI)などである。炭素材料は、例えば、グラファイトなどである。なお、ゲート電極2は、例えば、PEDOT/PSSなどの多層でもよい。
【0026】
ゲート絶縁層3は、少なくともゲート電極2を覆うように形成されており、例えば、無機絶縁性材料または有機絶縁性材料などのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。無機絶縁性材料は、例えば、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン(TiO2 )、酸化ハフニウム(HfOx )またはチタン酸バリウム(BaTiO3 )などである。有機絶縁性材料は、例えば、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリメタクリル酸アクリレート、エポキシ樹脂、ベンゾシクロブテン(BCB)、フッ素樹脂、感光性ポリイミド、感光性ノボラック樹脂またはポリパラキシリレンなどである。
【0027】
有機半導体部4は、ゲート絶縁層3の上に形成されており、例えば、ソース電極部5およびドレイン電極部6のうちの少なくとも一方と一体である。なぜなら、後述するように、有機半導体部4は、前準備層である有機半導体層12(図4〜図6参照)の一部にドープ処理が施された際に、その有機半導体層12のうちのドープ処理されなかった部分がそのまま残存したものだからである。一方、有機半導体部12のうちのドープ処理された部分は、ソース電極部5およびドレイン電極部6のうちの少なくとも一方となる。
【0028】
ここでは、例えば、ソース電極部5およびドレイン電極部6の双方が有機半導体層12に対するドープ処理により形成されたものであるため、有機半導体部4はソース電極部5およびドレイン電極部6の双方と一体化されている。これに伴い、上記した一対の側面M1,M2は、ここでは物理的に分離された有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6とが互いに接触し合う面(界面または接合面)ではない。すなわち、側面M1,M2は、有機半導体層12を組成(ドープ処理の有無)に応じて形式的に仕切る面(仮想面)である。なお、有機半導体部4は、少なくともゲート電極2と対向配置されていることが好ましい。
【0029】
有機半導体部4は、例えば、以下の有機半導体材料(以下、「チャネル用有機半導体材料」という。)のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。(1)ポリピロール、(2)ポリチオフェン、(3)ポリイソチアナフテンなどのイソチアナフテン、(4)ポリチェニレンビニレンなどのチェニレンビニレン、(5)ポリ(p−フェニレンビニレン)などのポリ(p−フェニレンビニレン)、(6)ポリアニリン、(7)ポリアセチレン、(8)ポリジアセチレン、(9)ポリアズレン、または(10)ポリピレンである。(11)ポリカルバゾール、(12)ポリセレノフェン、(13)ポリフラン、(14)ポリ(p−フェニレン)、(15)ポリインドール、(16)ポリピリダジン、(17)ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ヘプタセン、ジベンゾペンタセン、テトラベンゾペンタセン、ピレン、ジベンゾピレン、クリセン、ペリレン、コロネン、テリレン、オバレン、クオテリレンまたはサーカムアントラセンなどのアセン、(18)アセン類のうちの炭素の一部が窒素(N)、硫黄(S)または酸素(O)などの原子、あるいはカルボニル基などの官能基により置換された誘導体、例えば、トリフェノジオキサジン、トリフェノジチアジンまたはヘキサセン−6,15−キノンなど、(19)ポリビニルカルバゾール、ポリフェニレンスルフィドまたはポリビニレンスルフィドなどの高分子材料および多環縮合体、または(20)上記した高分子材料と同じ繰り返し単位を有するオリゴマーである。(21)銅フタロシアニンなどの金属フタロシアニン、(22)テトラチアフルバレン、(23)テトラチアペンタレン、(24)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド、N,N’−ビス(4−トリフルオロメチルベンジル)ナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミドと共に、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロオクチル)、N,N’−ビス(1H,1H−ペルフルオロブチル)またはN,N’−ジオクチルナフタレン1,4,5,8−テトラカルボン酸ジイミド誘導体、(25)ナフタレン2,3,6,7テトラカルボン酸ジイミドなどのナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、(26)アントラセン2,3,6,7−テトラカルボン酸ジイミドなどのアントラセンテトラカルボン酸ジイミド類に代表される縮合環テトラカルボン酸ジイミド、(27)C60、C70、C76、C78またはC84などのフラーレン、(28)単層ナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブ、(29)メロシアニン色素またはヘミシアニン色素などの色素、または(30)2,9−ジナフチル−ペリキサンテノキサンテンなどのペリキサンテノキサンテン化合物である。
【0030】
この他、チャネル用有機半導体材料は、上記した一連の材料の誘導体でもよい。誘導体とは、上記した材料に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類および導入位置などは、任意である。
【0031】
ソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、ゲート絶縁層3の上において、有機半導体部4の厚さにより規定される空間(階層)内に配置されている。これにより、上記したように、ソース電極部5は、有機半導体部4のうちの一方の側面M1に隣接されていると共に、ドレイン電極部6は、他方の側面M2に隣接されている。この場合には、例えば、図1に示しているように、ソース電極部5およびドレイン電極部6の上面と有機半導体部4の上面とは、同一面内に含まれている。言い替えれば、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6は、同一面を形成するように平坦化されている。
【0032】
このソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、上記したように、有機半導体部4と一体であり、有機半導体層12(図4〜図6参照)のうちのドープされた一部である。なお、図1に示した網掛けは、ソース電極部5およびドレイン電極部6がドープ処理により形成されたものであることを表している。
【0033】
ソース電極部5およびドレイン電極部6は、例えば、有機半導体部4よりも高導電性の有機半導体材料(以下、「電極用有機半導体材料」という。)を含む高導電性電極部である。これに伴い、高導電性電極部であるソース電極部5およびドレイン電極部6と有機半導体部4とは、例えば、上記したように同一階層内の層として形成されている。また、同一階層内の層として形成されている有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6とゲート絶縁層3との界面は、例えば、1つの平面内に含まれている。
【0034】
電極用有機半導体材料は、上記したように、例えば、チャネル用有機半導体材料に導電性を向上させるための不純物(ドーパント)が添加(ドープ)されたものである。このドーパントは、例えば、以下の材料のいずれか1種類または2種類以上である。
【0035】
チャネル用有機半導体材料がp型である場合に用いられるドーパントは、アクセプタ性材料である。このアクセプタ性材料は、例えば、金属酸化物、金属ハロゲン化物、ハロゲン化物、炭酸塩または有機材料である。
【0036】
金属酸化物は、例えば、酸化モリブデン(MoOx )、酸化レニウム(ReO3 )、酸化バナジウム(V2 O5 )、酸化タングステン(WO3 )、酸化チタン(TiO2 )、酸化金(AuO)、酸化アルミニウム(Al2 O3 )または酸化銅(CuO)などである。金属ハロゲン化物は、例えば、ヨウ化銅(CuI)、塩化アンチモン(SbCl5 )、フッ化アンチモン(SbF5 )、塩化鉄(FeCl3 )、フッ化リチウム(LiF)、フッ化バリウム(BaF2 )、フッ化カルシウム(CaF2 )またはフッ化マグネシウム(MgF2 )などである。ハロゲン化物は、例えば、フッ化ヒ素(AsF5 )、フッ化ホウ素(BF3 )、塩化ホウ素(BCl3 )、臭化ホウ素(BBr3 )またはフッ化リン(PF5 )などである。炭酸塩は、例えば、炭酸カルシウム(CaCO3 )、炭酸バリウム(BaCO3 )または炭酸リチウム(Li2 CO3 )などである。
【0037】
有機材料は、例えば、p−ベンゾキノン類、ジフェノキノン類、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)類、フルオレン類、ベンゾシアノ類または遷移金属錯体類などである。
【0038】
p−ベンゾキノン類は、例えば、2,3,5,6−テトラシアノ−(p−シアニル)、2,3−ジブロモ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジヨード−5,6−ジシアノ−p−ベンゾキノン、2,3−ジシアノ−p−ベンゾキノン、p−ブロマニル、p−クロラニル、p−ヨーデニル、p−フロラニル、2,5−ジクロロ−p−ベンゾキノン、2,6−ジクロロ−p−ベンゾキノン、クロラニル酸、ブロマニル酸、2,5−ジヒドリキシ−p−ベンゾキノン、2,5−ジクロロ−3,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,5−ジブロモ−3,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、p−ベンゾキノン、2,5−ジメチル−p−ベンゾキノン、2,6−ジメチル−p−ベンゾキノン、ジュロ−(テトラメチル)、o−ベンゾキノン類、o−ブロマニル、o−クロラニル、1,4−ナフトキノン類、2,3−ジシアノ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジシアノ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−5−ニトロ−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロ−1,4−ナフトキノン、1,4−ナフトキノンまたは9,10−アンスラキノン類などである。
【0039】
ジフェノキノン類は、例えば、3,3’,5,5’−テトラブロモ−ジフェノキノン、3,3’,5,5’−テトラクロロ−ジフェノキノンまたはジフェノキノンなどである。TCNQ類は、例えば、TCNQ、テトラフルオロ−テトラシアノ−キノジメタン(F4−TCNQ)、トリフルオロメチル−TCNQ、2,5−ジフルオロ−TCNQ、モノフルオロ−TCNQ、TNAP、デシル−TCNQ、メチル−TCNQ、ジヒドロバレレノ−TCNQ、テトラヒドロバレレノ−TCNQ、ジメチル−TCNQ、ジエチル−TCNQ、ベンゾ−TCNQ、ジメトキシ−TCNQ、BTDA−TCNQ、ジエトキシ−TCNQ、テトラメチル−TCNQ、テトラシアノアントラキノジメタン、ポリニトロ化合物、テトラニトロビフェノール、ジニトロビフェニル、ピクリン酸、トリニトロベンゼン、2,6−ジニトロフェノールまたは2,4−ジニトロフェノールなどである。
【0040】
フルオレン類としては、9−ジシアノメチレン−2,4,5,7−テトラニトロ−フルオレン、9−ジシアノメチレン−2,4,7−トリニトロ-フルオレン、2,4,5,7−テトラニトロ-フルオレノンまたは2,4,7−トリニトロ-フルオレノンなどである。が例示される。
【0041】
ベンゾシアノ類は、例えば、(TBA)2 HCTMM、(TBA)2 HCDAHD、K・CF、TBA・PCA、TBA・MeOTCA、TBA・EtOTCA、TBA・PrOTCA、(TBA)2 HCP、ヘキサシアノブタジエンテトラシアノエチレンまたは1,2,4,5−テトラシアノベンゼンなどである。なお、「TBA」とは、テトラブチルアンモニウムである。
【0042】
遷移金属錯体類は、例えば、(TPP)2 Pd(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Pt(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Ni(ジチオオキザレート)2 、(TPP)2 Cu(ジチオオキザレート)2 または(TBA)2 Cu(オキザレート)2 などである。なお、「TPP」とは、テトラフェニルフォスフォニウムである。
【0043】
チャネル用有機半導体材料がn型である場合に用いられるドーパントは、ドナー性材料である。このドナー性材料は、例えば、アルカリ金属、金属炭酸塩、芳香族炭化水素、TTF類、アジン類、モノアミン類またはジアミン類などである。
【0044】
アルカリ金属は、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)またはセシウム(Cs)などである。金属炭酸塩は、例えば、炭酸セシウム(Cs2 CO3 )または炭酸ルビジウム(Rb2 CO3 )などである。芳香族炭化水素は、例えば、テトラセン、ペリレン、アントラセン、コロネン、ペンタセン、クリセン、フェナントレン、ナフタレン、p−ジメトキシベンゼン、ルブレンまたはヘキサメトキシトリフェニレンなどである。
【0045】
TTF類は、例えば、HMTTF、OMTTF、TMTTF、BEDO−TTF、TTeCn−TTF、TMTSF、EDO−TTF、HMTSF、TTF、EOET−TTF、EDT−TTF、(EDO)2 DBTTF、TSCn−TTF、HMTTeF、BEDT−TTF、CnTET−TTF、TTCn−TTF、TSFまたはDBTTFなどである。この他、TTT類は、例えば、テトラチオテトラセン、テトラセレノテトラセンまたはテトラテルロテトラセンなどである。
【0046】
アジン類は、例えば、ジベンソ[c,d]−フェチノアジン、ベンゾ[c]−フェノチアジン、フェノチアジン、N−メチル-フェノチアジン、ジベンソ[c,d]−フェノセレナジン、N,N−ジメチルフェナジンまたはフェナジンなどである。
【0047】
モノアミン類は、例えば、N,N−ジエチル−m−トルイジン、N,N−ジエチルアニリン、N−エチル−o−トルイジン、ジフェニルアミン、スカトール、インドール、N,N−ジメチル−o−トルイジン、o−トルイジン、m−トルイジン、アニリン、o−クロロアニリン、o−ブロモアニリンまたはp−ニトロアニリンなどである。
【0048】
ジアミン類は、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−(ジュレンジアミン)、p−フェニルジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルベンジジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、ベンジジン、3,3’−ジブロモ−5,5’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジクロロ−5,5’−ジメチルベンジジンまたは1,6−ジアミノピレンなどである。
【0049】
この他、4,4’,4’’−トリス(N−3−メチルフェニル−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(m−MTDATA)、4,4’,4’’−トリス(N−(2−ナフチル)−N−フェニルアミノ)−トリフェニルアミン(2TNATA)、α−NDP、銅フタロシアニン、1,4,6,8−テトラキスジメチルアミノピレン、1,6−ジチオピレン、デカメチルフェロセンまたはフェロセンなどである。
【0050】
なお、ソース電極部5およびドレイン電極部6の双方が有機半導体層12に対するドープ処理により形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ソース電極部5またはドレイン電極部6のいずれか一方だけが有機半導体層12に対するドープ処理により形成されていてもよい。有機半導体層12に対するドープ処理により形成されていないソース電極部5またはドレイン電極部6は、例えば、ゲート電極2と同様の材料を含んでおり、有機半導体部4と別体形成されていてもよい。この場合において、ソース電極部5またはドレイン電極部6は、有機半導体部4の側面M1,M2に隣接していてもよいし、その有機半導体部4の上側または下側に重なっていてもよい。
【0051】
ここで、有機TFTは、必要に応じて、上記以外の構成要素を備えていてもよい。図2および図3は、有機TFTの他の構成を表しており、いずれも図1に対応する断面構成を示している。
【0052】
図2に示した有機TFTは、例えば、さらに、層間絶縁層7と、その層間絶縁層7の上に形成されると共に互いに分離された配線8,9とを備えることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。層間絶縁層7は、少なくとも有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を覆うように形成されており、例えば、ゲート絶縁層3と同様の材料(例えばPVPなど)を含んでいる。配線8は、例えば、層間絶縁層7に設けられた開口部7KAを通じてソース電極部5の上面に接続されていると共に、配線9は、例えば、層間絶縁層7に設けられた開口部7KBを通じてドレイン電極部6の上面に接続されている。この配線8,9は、例えば、ゲート電極2と同様の材料、より具体的には、銅、アルミニウム、チタン、モリブデン、銀またはそれらの合金などの金属材料を含んでいる。また、配線8,9は、上記した金属材料層の積層膜でもよい。この場合におけるドーパントは、配線8,9に含まれる金属材料またはその金属材料の化合物を含んでいることが好ましい。
【0053】
図3に示した有機TFTは、例えば、さらに、互いに分離された配線10,11を備えることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。配線10は、例えば、ソース電極部5の上面および側面に接続されていると共に、配線11は、例えば、ドレイン電極部6の上面および側面に接続されている。この配線10,11の形成材料および構成に関する詳細は、例えば、配線8,9と同様である。
【0054】
<1−2.薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記した有機TFTの製造方法について説明する。図4〜図6は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図1に対応する断面構成を示している。なお、有機TFTの各構成要素の形成材料については既に詳細に説明したので、以下では、その形成材料の一例を挙げながら説明する。
【0055】
有機TFTを製造する場合には、最初に、図4に示したように、プラスチックフィルムなどの支持基体1の上に、ゲート電極2を形成する。この場合には、例えば、支持基体1の表面を覆うように金属材料層(図示せず)を形成したのち、その金属材料層をパターニングする。
【0056】
金属材料層の形成材料は、例えば、銅などである。また、金属材料層の形成方法は、例えば、スパッタリング法、蒸着法または化学気相成長(CVD)法などの気相成長法であり、そのパターニング方法は、例えば、エッチング法などである。このエッチング法は、イオンミリング法または反応性イオンエッチング(RIE)法などのドライエッチング法でもよいし、ウェットエッチング法でもよい。
【0057】
なお、金属材料層をパターニングする場合には、フォトリソグラフィ法または紫外線描画法などを併用してもよい。この場合には、例えば、金属材料層の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。こののち、フォトリソグラフィ法などを用いてフォトレジスト膜をパターニング(露光および現像)してから、そのフォトレジスト膜をマスクとして金属材料層をエッチングする。ただし、フォトレジスト膜に代えて金属膜などをマスクとして用いてもよい。
【0058】
続いて、少なくともゲート電極2を覆うようにゲート絶縁層3を形成する。このゲート絶縁層3の形成材料は、例えば、PVPなどであり、その形成方法は、例えば、スピンコート法などの塗布法である。
【0059】
続いて、ゲート絶縁層3の上に有機半導体層12を形成する。この有機半導体層12は、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を形成するための前準備層であり、その形成材料は、例えば、ペンタセンなどのp型のチャネル用有機半導体材料である。また、有機半導体層12の形成方法は、例えば、(1)抵抗加熱蒸着法、スパッタリング、真空蒸着法またはCVD法などの気相成長法、(2)塗布法、浸漬法または印刷法などの液相成長法である。この塗布法は、例えば、スピンコート法、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、リバースロールコータ法、トランスファーロールコータ法、グラビアコータ法、キスコータ法、キャストコータ法、スプレーコータ法、スリットオリフィスコータ法またはカレンダーコータ法などである。これらの形成方法は、有機半導体層12の形成材料などに応じて適宜選択可能である。なお、有機半導体層12の厚さは、特に限定されないが、例えば、50nmである。
【0060】
続いて、有機半導体層12の上の一部にマスク13を形成する。この場合には、例えば、有機半導体層12の表面にフォトレジストを塗布してフォトレジスト膜(図示せず)を形成したのち、フォトリソグラフィ法などを用いてフォトレジスト膜をパターニングする。また、例えば、有機半導体層12を所望の大きさにパターニングできるように、マスク13の形成範囲を調整する。なお、マスク13の形成材料は、フォトレジストに限らず、他の材料(有機材料または無機材料)でもよい。
【0061】
続いて、マスク13を用いて有機半導体層12を選択的に除去して、その有機半導体層12をパターニングする。これにより、図5に示したように、有機半導体層12のうち、マスク13の形成範囲に対応する部分が残存する。このパターニング方法は、例えば、イオンミリング法などのドライエッチング法であり、ここではマスク13はエッチング用のマスクとして用いられる。
【0062】
続いて、例えば、マスク13を選択的に除去して、そのマスク13をパターニングする。これにより、図6に示したように、マスク13の一部が残存する。この場合には、例えば、フォトリソグラフィ法を用いてマスク13を追い露光してから現像すると共に、有機半導体層12のうち、有機半導体部4の形成領域に対応する部分の上にマスク13を残存させる。なお、有機半導体層12をパターニングするために用いたマスク13を追い露光する代わりに、そのマスク13を除去してから同様の方法を用いて新たなマスクを形成してもよい。
【0063】
最後に、マスク13を用いて有機半導体層12にドープ処理を行う。具体的には、ヨウ素(I2 )ガスなどのドーパントDを有機半導体層12に対して選択的にドープする。ここでは、マスク13はドーピング用のマスクとして用いられる。このドープ処理では、有機半導体層12のうち、マスク13により覆われている部分にはドーパントDがドープされないのに対して、そのマスク13により覆われていない部分にはドーパントDがドープされる。これにより、図1に示したように、ドープされない有機半導体層12(チャネル用有機半導体材料)により、一対の側面M1,M2を有する有機半導体部4が形成される。また、ドープされた有機半導体層12(チャネル有機半導体材料よりも高導電性の電極用有機半導体材料)により、有機半導体部4の側面M1,M2にそれぞれ隣接されたソース電極部5およびドレイン電極部6が形成される。
【0064】
なお、有機半導体層12に対するドープ処理により、ソース電極部5(またはドレイン電極部6)だけを形成してもよい。この場合には、例えば、ゲート電極2の形成方法と同様の手順により、ドレイン電極6(またはソース電極5)を形成すればよい。または、例えば、後述する第2実施形態で説明するドレイン電極部16(またはソース電極部15)の形成手順により、ドレイン電極6(またはソース電極5)を形成してもよい。
【0065】
こののち、上記したエッチング法などを用いてマスク13を除去することで、図1に示した有機TFTが完成する。ただし、マスク13を除去せずに残存させてもよい。マスク13が絶縁性であれば、残存していても有機TFTの性能に影響を及ぼさないからである。なお、マスク13をエッチングする際には、意図せずに有機半導体部4までエッチングされることがないように注意する必要がある。
【0066】
[薄膜トランジスタの製造方法に関する作用および効果]
この有機TFTおよびその製造方法では、有機半導体層12の一部にドーパントDをドープして、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6を一体形成している。これにより、有機半導体部4の側面M1,M2のそれぞれに、その有機半導体部4よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部であるソース電極部5およびドレイン電極部6が隣接される。
【0067】
この場合には、ソース電極部5およびドレイン電極部6が有機半導体部4の活性領域に接続されると共に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6がいずれも同種類の材料(有機材料)により形成されるため、接触抵抗は著しく低下する。
【0068】
しかも、有機半導体層12に対するドープ処理によりソース電極部5およびドレイン電極部6が形成されるため、有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6とが互いに重なるように位置合わせする必要がない。これにより、有機TFTの性能がソース電極部5およびドレイン電極部6の形成位置のばらつきの影響を受けにくくなる。
【0069】
これらのことから、電流経路として有機半導体部4の活性領域が利用されることで接触抵抗が低下するため、有機TFTの性能が向上する。また、位置合わせが簡略化されることでと複数の有機TFT間における性能ばらつきが抑制されるため、製造安定性が向上する。よって、有機TFTの性能および製造安定性を向上させることができる。
【0070】
特に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6が一体形成されており、有機半導体部4とソース電極部5およびドレイン電極部6との間に接合面が存在しないため、接触抵抗をより低下させることができる。
【0071】
なお、有機半導体層12の一部にドーパントDをドープしてソース電極部5またはドレイン電極部6のいずれか一方だけを形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0072】
<2.第2実施形態/2−1.薄膜トランジスタの構成>
次に、本技術の第2実施形態における薄膜トランジスタの構成について説明する。図7は、有機TFTの断面構成を表している。図7および以降の図面では、第1実施形態で説明した構成要素に同一の符号を付しており、その構成要素に関する説明を適宜省略している。また、以下では、第1実施形態で説明した構成要素を随時引用している。
【0073】
この有機TFTは、例えば、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6に代えて、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16を備えることを除き、第1実施形態の有機TFTと同様の構成を有している。この有機半導体部14は、例えば、第1の面および第2の面として一対の側面M3,M4を有しており、ソース電極部15およびドレイン電極部16は、それぞれ側面M3,M4に隣接されている。
【0074】
有機半導体部14は、例えば、ソース電極部15およびドレイン電極部16のうちの少なくとも一方と別体である。なぜなら、有機半導体部14は、後述するように、前準備層である有機半導体層17(図10〜図13参照)の一部が除去された際に、その除去されなかった部分がそのまま残存したものだからである。有機半導体層17が除去された箇所には、ソース電極部15およびドレイン電極16部のうちの少なくとも一方が事後的に形成される。
【0075】
ここでは、例えば、ソース電極15よびドレイン電極16の双方が事後的に形成されたものであるため、有機半導体部14はソース電極部15およびドレイン電極部16の双方と別体化されている。これに伴い、上記した一対の側面M3,M4は、第1実施形態とは異なり、ここでは物理的に分離された有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とが互いに接触し合う面(界面または接合面)となる。なお、上記以外の有機半導体部14の構成は、例えば、有機半導体部4の構成と同様である。
【0076】
ソース電極部15およびドレイン電極部16は、上記したように、有機半導体部14と別体であり、有機半導体層17(図10〜図13参照)が除去された箇所に有機半導体部14とは別工程で形成されたものである。
【0077】
このソース電極部15およびドレイン電極部16は、例えば、有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料(電極用有機半導体材料)のいずれか1種類または2種類以上を含む高導電性電極部である。この電極用有機半導体材料は、例えば、有機半導体部14の形成材料とは異なる材料でもよいし、有機半導体部14の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物でもよい。
【0078】
有機半導体部14の形成材料と異なる材料は、例えば、電極用有機半導体材料とは骨格が異なる他の種類の材料、または、電極用有機半導体材料と共通の骨格を有すると共にその骨格に導電性を向上させるための1または2以上の官能基が導入された材料などである。有機半導体部14の材料がペンタセンである場合には、例えば、前者の材料はペンタセン以外の材料であり、後者の材料は、ペンタセンに官能基が導入された材料である。
【0079】
有機半導体部14の形成材料と導電性材料との混合物に関して、有機半導体部14の形成材料に関する詳細は、例えば、有機半導体部4の形成材料と同様であり、導電性材料に関する詳細は、例えば、ドーパントDと同様である。
【0080】
なお、ソース電極部15およびドレイン電極部16の双方が電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されている場合について説明したが、必ずしもこれに限られない。例えば、ソース電極部15またはドレイン電極部16のいずれか一方だけが電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されていてもよい。電極用有機半導体材料を用いて事後的に形成されていないソース電極部15またはドレイン電極部16は、例えば、ゲート電極2と同様の材料を含んでおり、有機半導体部14と別体形成されていてもよい。この場合において、ソース電極部15またはドレイン電極部16は、有機半導体部14の側面M3,M4に隣接していてもよいし、その有機半導体部1の上側または下側に重なっていてもよい。
【0081】
ここで、有機TFTは、図2および図3にそれぞれ対応する図8および図9に示したように、層間絶縁層7および配線8〜11などの上記以外の構成要素を備えていてもよい。この場合における導電性材料は、配線8〜11に含まれる金属材料またはその金属材料の化合物を含んでいることが好ましい。
【0082】
<2−2.薄膜トランジスタの製造方法>
次に、上記した有機TFTの製造方法について説明する。図10〜図13は、有機TFTの製造方法を説明するためのものであり、いずれも図7に対応する断面構成を示している。なお、有機TFTの各構成要素の形成材料については既に詳細に説明したので、以下では、その形成材料の一例を挙げながら説明する。以下では、第1実施形態で説明した構成要素を随時引用している。
【0083】
有機TFTを製造する場合には、最初に、図10に示したように、有機半導体層12に代えて有機半導体層17を形成することを除き、第1実施形態と同様の手順により、支持基体1の上にゲート電極2、ゲート絶縁層3および有機半導体層17を形成する。この有機半導体層17の形成材料に関する詳細は、例えば、有機半導体層12の形成材料と同様であり、具体的には、下記の式(1)で表されるペリキサンテノキサンテン誘導体などである。また、有機半導体層17の形成方法に関する詳細は、例えば、有機半導体層12の形成材料と同様であり、具体的には、真空蒸着法などである。なお、有機半導体層17の厚さは、特に限定されないが、例えば、30nmである。
【0084】
【化1】
【0085】
続いて、有機半導体層17の上の一部にマスク18を形成する。このマスク18の形成手順は、例えば、有機半導体層17のうち、おおよそ有機半導体部14となる部分を覆うようにマスク18の形成位置を調整することを除き、マスク13の形成手順と同様である。
【0086】
続いて、マスク18を用いて有機半導体層17の一部を除去して、その有機半導体層17をパターニングする。これにより、図11に示したように、有機半導体層17のうち、マスク18の形成範囲に対応する部分が残存するため、一対の側面M3,M4を有する有機半導体部14が形成される。このパターニング方法は、例えば、イオンミリング法などのドライエッチング法であり、ここではマスク18はエッチング用のマスクとして用いられる。
【0087】
このパターニング工程では、有機半導体層17のうち、マスク18により覆われていなかった部分だけでなく、そのマスク18により覆われている部分も僅かに除去される。このため、側面M1,M2は、マスク18の両端よりも内側に後退する。
【0088】
続いて、図12に示したように、マスク18と共に、有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料19を用いて、有機半導体層17が除去された箇所にソース電極部15およびドレイン電極部16を形成する。この場合には、マスク18の上にも有機半導体材料19が堆積される。
【0089】
ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料は、例えば、式(1)に示したペリキサンテノキサンテン誘導体とその導電性を向上させるためのF4−TCNQとの混合物などである。また、ソース電極15部およびドレイン電極部16の形成方法は、例えば、(1)抵抗加熱蒸着法、スパッタリング法、真空蒸着法またはCVD法などの気相成長法、(2)塗布法、浸漬法または印刷法などの液相成長法である。この塗布法は、例えば、スピンコート法、エアドクタコータ法、ブレードコータ法、ロッドコータ法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、リバースロールコータ法、トランスファーロールコータ法、グラビアコータ法、キスコータ法、キャストコータ法、スプレーコータ法、スリットオリフィスコータ法またはカレンダーコータ法などである。これらの形成方法は、ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料などの条件に応じて適宜選択可能である。なお、ソース電極部15およびドレイン電極部16の厚さは、特に限定されないが、例えば、30nmである。
【0090】
気相成長法を用いる場合には、例えば、ソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料としてペリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとの混合物を用いて、それらを共蒸着などして一緒に堆積させることが好ましい。一方、液相成長法を用いる場合には、例えば、上記したペリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとの混合溶液を塗布または印刷することが好ましい。または、ペリキサンテノキサンテン誘導体の溶液を塗布または印刷したのち、乾固しないうちにF4−TCNQの溶液を塗布または印刷することで、ポリキサンテノキサンテン誘導体とF4−TCNQとを混合してもよい。気相成長法を用いて高拡散性の有機材料を堆積させたり、液相成長法を用いて有機材料を塗布等すると、スパッタリング法または蒸着法などを用いて低拡散性の無機電極材料を堆積させる場合とは異なり、有機材料がマスク18の裏側に回り込んで側面M3,M4に付着しやすくなるからである。また、有機半導体部14の形成材料とソース電極部15およびドレイン電極部16の形成材料とは有機材料同士であるため、有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とが密着し、良好な界面が形成されるからである。これにより、ソース電極部15およびドレイン電極部16がそれぞれ側面M3,M4に隣接されるため、ソース電極部15およびドレイン電極部16と有機半導体部14との間に隙間が生じにくくなる。しかも、有機半導体部14とソース電極部15およびドレイン電極部16とは強固に接続される。
【0091】
続いて、必要に応じて、図13に示したように、ソース電極部15およびドレイン電極部16の一部を除去して、そのソース電極部15およびドレイン電極部16をパターニングする。このパターニング方法は、例えば、レーザアブレーション法などである。
【0092】
最後に、マスク18をその上に形成された有機半導体材料19と一緒に除去(リフトオフ)することにより、図7に示した有機TFTが完成する。なお、マスク18とその上の有機半導体材料19とを一緒に除去する代わりに、ドライエッチング法またはレーザアブレーション法などを用いてマスク18の上の不要な有機半導体材料19だけを除去してもよい。
【0093】
なお、有機半導体材料19を用いてソース電極部15(またはドレイン電極部16)だけを形成する場合には、例えば、ゲート電極2の形成方法と同様の手順によりドレイン電極16(またはソース電極15)を形成すればよい。
【0094】
[薄膜トランジスタの製造方法に関する作用および効果]
この有機TFTおよびその製造方法では、有機半導体部14を形成したのち、その有機半導体部14よりも高導電性の有機半導体材料19を用いて、高導電性電極部であるソース電極部15およびドレイン電極部16を形成している。これにより、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16が別体形成される。この場合には、有機半導体部14の側面M3,M4に、その有機半導体部14よりも高導電性のソース電極部15およびドレイン電極部16が隣接される。よって、第1実施形態と同様の理由により、接触抵抗が低下すると共に複数の有機TFT間の性能ばらつきが抑制されるため、有機TFTの性能および製造安定性を向上させることができる。
【0095】
特に、気相成長法を用いてソース電極部15およびドレイン電極部16を形成すれば、有機半導体部14の側面M3,M4にそれぞれソース電極部15およびドレイン電極部16が密着しやすくなる。よって、接触抵抗をより低下させることができると共に、有機TFTの性能ばらつきをより抑制させることができる。
【0096】
なお、有機半導体材料19を用いてソース電極部15またはドレイン電極部16のいずれか一方だけを形成しても、同様の効果を得ることができる。
【0097】
<3.変形例>
第1実施形態の有機TFT(図1参照)は、図14に示したように、ゲート電極2が有機半導体部4の上側(支持基体1から遠い側)に配置されているトップゲート型でもよい。この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、有機半導体部4、ソース電極部5およびドレイン電極部6と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層されていることを除き、図1に示した有機TFTと同様の構成を有している。図14に示したトップゲート型の有機TFTでも、同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、第2実施形態の有機TFT(図7参照)は、図15に示したように、ゲート電極2が有機半導体部14の上側に配置されているトップゲート型でもよい。この有機TFTは、例えば、支持基体1の上に、有機半導体部14、ソース電極部15およびドレイン電極部16と、ゲート絶縁層3と、ゲート電極2とがこの順に積層されていることを除き、図7に示した有機TFTと同様の構成を有している。図15に示したトップゲート型の有機TFTでも、同様の効果を得ることができる。
【0099】
<4.薄膜トランジスタの適用例(電子機器)>
次に、上記した薄膜トランジスタである有機TFTの適用例について説明する。この有機TFTは、例えば、以下で説明するように、いくつかの電子機器に適用可能である。
【0100】
<4−1.液晶表示装置>
有機TFTは、例えば、液晶表示装置に適用される。図16および図17は、それぞれ液晶表示装置の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図16)および回路構成(図17)はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0101】
ここで説明する液晶表示装置は、例えば、有機TFTを用いたアクティブマトリクス駆動方式の透過型液晶ディスプレイであり、その有機TFTは、スイッチング(画素選択)用の素子として用いられる。この液晶表示装置は、図16に示したように、駆動基板20と対向基板30との間に液晶層41が封入されたものである。
【0102】
駆動基板20は、例えば、支持基板21の一面に有機TFT22、平坦化絶縁層23および画素電極24がこの順に形成されると共に、有機TFT22および画素電極24がマトリクス状に配置されたものである。ただし、1画素内に含まれる有機TFT22の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図16および図17では、例えば、1画素内に1つの有機TFT22が含まれる場合を示している。
【0103】
支持基板21は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、有機TFT22は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。プラスチック材料の種類は、例えば、有機TFTについて説明した場合と同様であり、そのことは、以降で説明する場合においても同様である。平坦化絶縁層23は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでおり、画素電極24は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。なお、画素電極24は、平坦化絶縁層23に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT22に接続されている。
【0104】
対向基板30は、例えば、支持基板31の一面に対向電極32が全面形成されたものである。支持基板31は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極32は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。
【0105】
駆動基板20および対向基板30は、液晶層41を挟んで画素電極24と対向電極32とが対向するように配置されていると共に、シール材40により貼り合わされている。液晶層41に含まれる液晶分子の種類は、任意に選択可能である。
【0106】
この他、液晶表示装置は、例えば、位相差板、偏光板、配向膜およびバックライトユニットなどの他の構成要素(いずれも図示せず)を備えていてもよい。
【0107】
液晶表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図17に示したように、有機TFT22および液晶表示素子44(画素電極24、対向電極32および液晶層41を含む素子部)と共に、キャパシタ45を含んでいる。この回路では、行方向に複数の信号線42が配列されていると共に列方向に複数の走査線43が配列されており、それらが交差する位置に有機TFT22、液晶表示素子44およびキャパシタ45が配置されている。有機TFT22におけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図17に示した態様に限らず、任意に変更可能である。信号線42および走査線43は、それぞれ図示しない信号線駆動回路(データドライバ)および走査線駆動回路(走査ドライバ)に接続されている。
【0108】
この液晶表示装置では、有機TFT22により液晶表示素子44が選択され、画素電極24と対向電極32との間に電界が印加されると、その電界強度に応じて液晶層41における液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶分子の配向状態に応じて光の透過量(透過率)が制御されるため、画像が表示される。
【0109】
この液晶表示装置によれば、有機TFT22が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、有機TFT22の性能および製造安定性が向上する。よって、表示性能および製造安定性を向上させることができる。なお、液晶表示装置は、透過型に限らずに反射型でもよい。
【0110】
<4−2.有機EL表示装置>
有機TFTは、例えば、有機EL表示装置に適用される。図18および図19は、それぞれ有機EL表示装置の断面構成および回路構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図18)および回路構成(図19)はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0111】
ここで説明する有機EL表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の有機ELディスプレイである。この有機EL表示装置は、駆動基板50と対向基板60とが接着層70を介して貼り合わされたものであり、例えば、対向基板60を経由して光を放出するトップエミッション型である。
【0112】
駆動基板50は、例えば、支持基板51の一面に有機TFT52、保護層53、平坦化絶縁層54、画素分離絶縁層55、画素電極56、有機層57、対向電極58および保護層59がこの順に形成されたものである。有機TFT52、画素電極56および有機層57は、マトリクス状に配置されている。ただし、1画素内に含まれる有機TFT52の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。図18および図19では、例えば、1画素内に2つの有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)が含まれる場合を示している。
【0113】
支持基板51は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されている。トップエミッション型では対向基板60から光が取り出されるため、支持基板51は、透過性材料または非透過性材料のいずれにより形成されていてもよい。有機TFT52は、上記した有機TFTと同様の構成を有しており、保護層53は、例えば、PVAまたはポリパラキシリレンなどの高分子材料を含んでいる。平坦化絶縁層54および画素分離絶縁層55は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでいる。この画素分離絶縁層55は、例えば、形成工程を簡略化すると共に所望の形状に形成可能にするために、光パターニングまたはリフローなどにより成形可能な感光性樹脂材料を含んでいることが好ましい。なお、保護層53により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層54は省略されてもよい。
【0114】
画素電極56は、例えば、アルミニウム、銀、チタンまたはクロムなどの反射性材料を含んでおり、対向電極58は、例えば、ITOまたはIZOなどの透過性導電性材料を含んでいる。ただし、カルシウム(Ca)などの透過性の金属材料またはその合金や、PEDOTなどの透過性の有機導電性材料を含んでいてもよい。有機層57は、赤色、緑色または青色などの光を発生させる発光層を含んでおり、必要に応じて正孔輸送層および電子輸送層などを含む積層構造を有していてもよい。発光層の形成材料は、発生させる光の色に応じて任意に選択可能である。画素電極56および有機層57は、画素分離絶縁層55により分離されながらマトリクス状に配置されているのに対して、対向電極58は、有機層57を介して画素電極56に対向しながら連続的に延在している。保護層59は、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、ポリパラキシリレンまたはウレタンなどの光透過性誘電材料を含んでいる。なお、画素電極56は、保護層53および平坦化絶縁層54に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT52に接続されている。
【0115】
対向基板60は、例えば、支持基板61の一面にカラーフィルタ62が設けられたものである。支持基板61は、例えば、ガラスまたはブラスチック材料などの透過性材料により形成されており、カラーフィルタ62は、有機層57において発生した光の色に対応する複数の色領域を有している。ただし、カラーフィルタ62はなくてもよい。
【0116】
接着層70は、例えば、熱硬化型樹脂などの接着剤である。
【0117】
有機EL表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図19に示したように、有機TFT52(選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52B)および有機EL表示素子73(画素電極56、有機層57および対向電極58を含む素子部)と共に、キャパシタ74を含んでいる。この回路では、複数の信号線71および走査線72が交差する位置に、有機TFT52、有機EL表示素子73およびキャパシタ74が配置されている。選択用TFT52Aおよび駆動用TFT52Bにおけるソース電極、ゲート電極およびドレイン電極の接続先は、図19に示した態様に限らず、任意に変更可能である。
【0118】
この有機EL表示装置では、例えば、選択用TFT52Aにより有機EL表示素子73が選択されると、その有機EL表示素子73が駆動用TFT52Bにより駆動される。これにより、画素電極56と対向電極58との間に電界が印加されると、有機層57において光が発生する。この場合には、例えば、隣り合う3つの有機EL表示素子73において、それぞれ赤色、緑色または青色の光が発生する。これらの光の合成光が対向基板60を経由して外部へ放出されるため、階調画像が表示される。
【0119】
この有機EL表示装置によれば、有機TFT52が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能および製造安定性を向上させることができる。
【0120】
なお、有機EL表示装置は、トップエミッション型に限らず、駆動基板50を経由して光を放出するボトムエミッション型でもよいし、駆動基板50および対向基板60の双方を経由して光を放出するデュアルエミッション型でもよい。この場合には、画素電極56および対向電極58のうち、光が放出される側の電極が透過性材料により形成され、光が放出されない側の電極が反射性材料により形成されることになる。
【0121】
<4−3.電子ペーパー表示装置>
有機TFTは、例えば、電子ペーパー表示装置に適用される。図20は、電子ペーパー表示装置の断面構成を表している。なお、以下で説明する装置構成(図20)および図17を参照して説明する回路構成はあくまで一例であるため、それらの構成は適宜変更可能である。
【0122】
ここで説明する電子ペーパー表示装置は、例えば、有機TFTをスイッチング用の素子として用いたアクティブマトリクス駆動方式の電子ペーパーディスプレイである。この電子ペーパー表示装置は、例えば、駆動基板80と電気泳動素子93を含む対向基板90とが接着層100を介して貼り合わされたものである。
【0123】
駆動基板80は、例えば、支持基板81の一面に有機TFT82、保護層83、平坦化絶縁層84および画素電極85がこの順に積層されると共に、有機TFT82および画素電極85がマトリクス状に配置されたものである。支持基板81は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などにより形成されており、有機TFT82は、上記した有機TFTと同様の構成を有している。保護層83および平坦化絶縁層84は、例えば、ポリイミドなどの絶縁性樹脂材料を含んでおり、画素電極85は、例えば、銀などの金属材料を含んでいる。なお、画素電極85は、保護層83および平坦化絶縁層84に設けられたコンタクトホール(図示せず)を通じて有機TFT82に接続されている。また、保護層83により十分な平坦性が得られていれば、平坦化絶縁層84は省略されてもよい。
【0124】
対向基板90は、例えば、支持基板91の一面に対向電極92、および複数の電気泳動素子93を含む層がこの順に積層されると共に、その対向電極92が全面形成されたものである。支持基板91は、例えば、ガラスまたはプラスチック材料などの透過性材料により形成されており、対向電極92は、例えば、ITOなどの透過性導電性材料を含んでいる。電気泳動素子93は、電気泳動現象を利用してコントラストを生じさせるものであり、その構成は、任意である。
【0125】
この他、電子ペーパー表示装置は、例えば、カラーフィルタなどの他の構成要素(図示せず)を備えていてもよい。
【0126】
電子ペーパー表示装置を駆動させるための回路は、例えば、図17に示した液晶表示装置の回路と同様の構成を有している。電子ペーパー表示装置の回路は、有機TFT22および液晶表示素子44の代わりに、それぞれ有機TFT82および電子ペーパー表示素子(画素電極85、対向電極92および電気泳動素子93を含む素子部)を含んでいる。
【0127】
この電子ペーパー表示装置では、有機TFT82により電子ペーパー表示素子が選択され、その画素電極85と対向電極92との間に電界が印加されると、その電界に応じて電気泳動素子93においてコントラストが生じるため、階調画像が表示される。
【0128】
この電子ペーパー表示装置によれば、有機TFT82が上記した有機TFTと同様の構成を有しているので、液晶表示装置と同様に表示性能および製造安定性を向上させることができる。
【0129】
以上、実施形態を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施形態で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、本技術の薄膜トランジスタが適用される電子機器は、液晶表示装置、有機EL表示装置または電子ペーパー表示装置に限らず、他の表示装置でもよい。このような他の表示装置としては、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)表示部(MEMS型ディスプレイ)などが挙げられる。この場合においても、表示性能を向上させることができる。
【0130】
また、例えば、本技術の薄膜トランジスタは、表示装置以外の他の電子機器に適用されてもよい。このような電子機器としては、例えば、センサマトリクス、メモリセンサ、RFIDタグ(Radio Frequency Identification)またはセンサアレイなどが挙げられる。この場合においても、性能向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0131】
1…支持基体、2…ゲート電極、3…ゲート絶縁層、4,14…有機半導体部、5,15…ソース電極部、6,16…ドレイン電極部、12,17…有機半導体層、13…マスク、M1〜M4…側面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、
前記第1の面に隣接されたソース電極部と、
前記第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備え、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である、
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記第1の面および前記第2の面は、前記有機半導体部の一対の側面である、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは一体であり、
前記高導電性電極部の形成材料は、導電性を向上させるための不純物が前記有機半導体部の形成材料に添加された材料を含む、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは別体であり、
前記高導電性電極部の形成材料は、前記有機半導体部の形成材料とは異なる材料、または、前記有機半導体部の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物を含む、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記高導電性電極部に、金属材料を含む配線が接続されており、
前記不純物は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項3記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記高導電性電極部に、金属材料を含む配線が接続されており、
前記導電性材料は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項4記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは同一階層内の層として形成され、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに備え、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面は、1つの平面内に含まれている、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
有機半導体層を形成し、
前記有機半導体層の一部に導電性を向上させるための不純物を添加して、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、前記第1の面に隣接されたソース電極部および前記第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方を、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部とする、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部を形成し、
前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を用いて、前記第1の面に隣接されたソース電極部および前記第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成する、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記第1の面および前記第2の面を、前記有機半導体部の一対の側面とする、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記第1の面および前記第2の面を、前記有機半導体部の一対の側面とする、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記高導電性電極部である前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方に、金属材料を含む配線を接続し、
前記不純物は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記有機半導体部の形成材料とは異なる材料、または、前記有機半導体部の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物を用いて、前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方に、金属材料を含む配線を接続し、
前記導電性材料は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記高導電性電極部である前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方と前記有機半導体部とを同一階層内の層として形成し、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに形成し、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面が1つの平面内に含まれるようにする、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方と前記有機半導体部とを同一階層内の層として形成し、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに形成し、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面が1つの平面内に含まれるようにする、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部の形成方法は気相成長法または液相成長法である、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、前記第1の面に隣接されたソース電極部と、前記第2の面に隣接されたドレイン電極部とを含む薄膜トランジスタを備え、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である、
電子機器。
【請求項1】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、
前記第1の面に隣接されたソース電極部と、
前記第2の面に隣接されたドレイン電極部とを備え、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である、
薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記第1の面および前記第2の面は、前記有機半導体部の一対の側面である、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは一体であり、
前記高導電性電極部の形成材料は、導電性を向上させるための不純物が前記有機半導体部の形成材料に添加された材料を含む、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは別体であり、
前記高導電性電極部の形成材料は、前記有機半導体部の形成材料とは異なる材料、または、前記有機半導体部の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物を含む、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記高導電性電極部に、金属材料を含む配線が接続されており、
前記不純物は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項3記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記高導電性電極部に、金属材料を含む配線が接続されており、
前記導電性材料は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項4記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記高導電性電極部と前記有機半導体部とは同一階層内の層として形成され、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに備え、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面は、1つの平面内に含まれている、
請求項1記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
有機半導体層を形成し、
前記有機半導体層の一部に導電性を向上させるための不純物を添加して、第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、前記第1の面に隣接されたソース電極部および前記第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方を、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部とする、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項9】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部を形成し、
前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を用いて、前記第1の面に隣接されたソース電極部および前記第2の面に隣接されたドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成する、
薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項10】
前記第1の面および前記第2の面を、前記有機半導体部の一対の側面とする、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項11】
前記第1の面および前記第2の面を、前記有機半導体部の一対の側面とする、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項12】
前記高導電性電極部である前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方に、金属材料を含む配線を接続し、
前記不純物は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項13】
前記有機半導体部の形成材料とは異なる材料、または、前記有機半導体部の形成材料とその導電性を向上させるための導電性材料との混合物を用いて、前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方を形成し、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方に、金属材料を含む配線を接続し、
前記導電性材料は、前記金属材料またはその金属材料の化合物を含む、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項14】
前記高導電性電極部である前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方と前記有機半導体部とを同一階層内の層として形成し、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに形成し、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面が1つの平面内に含まれるようにする、
請求項8記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項15】
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方と前記有機半導体部とを同一階層内の層として形成し、
前記同一階層内の層からゲート絶縁層を介して配置されたゲート電極をさらに形成し、
前記ゲート絶縁層と前記同一階層内の層との界面が1つの平面内に含まれるようにする、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項16】
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部の形成方法は気相成長法または液相成長法である、
請求項9記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項17】
第1の面および第2の面を有する有機半導体部と、前記第1の面に隣接されたソース電極部と、前記第2の面に隣接されたドレイン電極部とを含む薄膜トランジスタを備え、
前記ソース電極部および前記ドレイン電極部のうちの少なくとも一方は、前記有機半導体部よりも高導電性の有機半導体材料を含む高導電性電極部である、
電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2013−45971(P2013−45971A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183986(P2011−183986)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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