説明

薄膜トランジスタ及びその製造方法及び成膜装置

【課題】支持基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されて成るボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜と、半導体活性層間で汚れ付着等による汚染のない清浄な界面を実現と、生産性が高く、安価かつ大量に生産できる上、特性の優れたフレキシブル薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【解決手段】ゲート電極を形成した可撓性プラスチックの基材2上に、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層を形成するボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法であって、ロール状の基材2を連続巻取方式の成膜装置12の真空成膜室内で、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層とを大気開放することなく連続してスパッタ法により形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を活性層に有する薄膜トランジスタ及びその製造方法及び成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子デバイスの駆動用トランジスタとして、アモルファスシリコン膜や多結晶シリコン膜等を用いた薄膜トランジスタが用いられてきた。しかしながら、高品質なアモルファスシリコン膜や多結晶シリコン膜の作成には200℃以上の成膜温度を必要とするため、安価なポリマーフィルムを支持基材として用いるフレキシブルデバイスを実現することは困難であった。
【0003】
近年、有機半導体材料を用いた薄膜トランジスタが、盛んに研究されている。有機半導体材料は、真空プロセスを用いずに印刷方式のプロセスで形成できるため、大幅にコストを下げられる可能性があり、可撓性のプラスチック基材等の支持基板上に設けられる等の利点を有する。しかしながら、有機半導体材料の電子移動度は、極めて低く、また経時劣化、例えば品質耐久性に弱いという難点があり、未だ広範な実用に至っていない。
【0004】
以上のような状況を受け、透明酸化物半導体が、近年非常に注目を浴びている。透明酸化物は、低温で作成しても高い電子移動度を示す上に、さらに基材、電極、絶縁膜等に透明性の特徴を利用すれば透明なデバイスを実現できること等、従来の材料になかった特性を持つ有機半導体材料となる。透明酸化物半導体として、例えば非晶質In−Ga−Zn−O材料を用いた電界効果型トランジスタが提案されている。上記材料を用いたアモルファス酸化物半導体を半導体活性層として用いることで、野村らは室温でPET基板上に移動度10cm2/Vs前後の優れた特性を持つ透明電界効果型トランジスタの作成に成功している(非特許文献1参照)。
【0005】
酸化物を用いた薄膜トランジスタは、有機半導体などと比較して、真空プロセスを用いるため、装置コストが高くつくという問題がある。特に、従来のバッチ式(枚葉式)成膜装置においては、多数の真空成膜室が必要であり、そのため莫大な装置コストがかかる上、生産性も悪いという問題は解決されていない。
【0006】
また、電界効果型トランジスタにおいて、半導体活性層と絶縁膜との間の界面制御は極めて重要であり、半導体活性層と絶縁層間の界面において汚れやゴミなどが混入付着すると著しくトランジスタ特性が劣化することが知られている。
【0007】
以下に公知文献を記す。
【非特許文献1】K. Nomura et al Nature, 432, 488 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明者らは、かかる従来の薄膜トランジスタの界面制御性の問題や生産性の悪さ、装置コストの高さを解消せんと鋭意検討の結果、本発明の課題は、支持基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を大気開放することなく連続的に形成することで、ゲート絶縁
膜、半導体活性層間で汚れ付着等による汚染のない清浄な界面を実現と、生産性が高く、安価かつ大量に生産できる上、特性の優れた薄膜トランジスタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る発明は、支持基材である可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法において、ロール状の基材を連続して巻き取る方式の成膜装置の真空成膜室内で、ゲート電極を形成した可撓性プラスチック基材上に、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層とを大気開放することなく連続して形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法である。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、前記ゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性層の形成方法が、成膜装置の真空成膜室内で、スパッタ法により連続して成膜形成することを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法である。
【0011】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法において、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を大気開放することなく連続的に形成する方法で、生産性の高い製造方法である。ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を大気開放することなく連続的に作製することで、ゲート絶縁膜と半導体活性層の間で汚れ等付着することが防ぐことができる。
【0012】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法によれば、ゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性層の形成方法がスパッタ法を用いることで生産性が高く、大面積に均一なデバイス薄膜を成膜すうことができ、ゲート絶縁膜および半導体活性層の成膜形成方法をスパッタ法に統一することで、成膜装置のコストを大幅に削減し、生産性の高い製造方法を実現できる。
【0013】
本発明の請求項3に係る発明は、可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタのゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性膜を形成する成膜装置において、前記請求項1、又は2記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置であって、ロール状の可撓性プラスチック基材を真空成膜室内の一つの成膜ロールの表面上に把持させ、一定速度で成膜ロールを回転させながら、前記真空成膜室内でゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を連続して成膜形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置である。
【0014】
本発明の請求項4に係る発明は、前記真空成膜室は、ゲート絶縁膜の形成部と酸化物からなる半導体活性膜の形成部が互いに仕切り板で仕切られていることを特徴とする請求項3記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置である。
【0015】
本発明の請求項5に係る発明は、前記真空成膜室は、ゲート絶縁膜の形成部と酸化物からなる半導体活性膜の形成部が、互いに独立した排気系を持ち、各々の膜を成膜形成することを特徴とする請求項3、又は4記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置である。
【0016】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置によれば、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を形成する成膜室が互いに仕切り板などで仕切られていることで
、成膜室が互いに独立した排気系を持つ装置構成をとり、ゲート絶縁膜と半導体活性層が異なるガス圧や反応ガス種など任意の条件で同時に成膜することが可能となる。
【0017】
本発明の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置によれば、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を一つの成膜ロール上において形成する成膜であって、一つの成膜ロール上において順次に形成することで、装置のコストを大幅に低減することが可能であり、また成膜工程中のゲート絶縁膜と半導体活性層間の汚染を防ぐことができる。
【0018】
本発明の請求項6に係る発明は、可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されて成るボトムゲート型薄膜トランジスタにおいて、前記請求項3乃至5のいずれか1項記載の成膜装置を用いた成膜方法及び請求項1、又は2記載の薄膜トランジスタの製造方法を用いて薄膜トランジスタを形成したことを特徴とするボトムゲート型薄膜トランジスタである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の製造方法および成膜装置を用いることで、成膜装置のコストを抑え、高い生産性で、絶縁膜と半導体層界面に汚染の無い薄膜トランジスタを製造することができる。
【0020】
本発明の可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されて成るボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法を用いることで、ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を大気開放することなく連続的に形成することで、生産性が高く、特性の優れた薄膜トランジスタを提供することが可能となり、ボトムゲート型薄膜トランジスタの構成を取ることで、パターニングの必要が無いゲート絶縁膜の次に酸化物からなる半導体層を積層形成できるため、界面制御が極めて重要であるゲート絶縁膜、半導体活性層を大気開放することなく、連続的に作製することができる。
【0021】
本発明の成膜及びボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法を用いたボトムゲート型薄膜トランジスタでは、可撓性基材を用いて一つの成膜ロール上で連続的にゲート絶縁膜、半導体活性層を形成することで、従来のバッチ式と比較して、安価かつ大量に生産できる上、ゲート絶縁膜、半導体活性層間で汚れ付着等による汚染のない清浄な界面を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の薄膜トランジスタ及びその製造方法及び成膜装置を一実施形態に基づいて以下説明する。
【0023】
本発明の一実施形態を図示して説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。図1は、本発明の薄膜トランジスタの成膜装置を説明する部分拡大の概念図である。
【0024】
図1に示す本発明のゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性層を形成するための真空成膜装置は、真空成膜室と該成膜室内に設置される基板送出と、巻取の装置とを有し、該送出・巻取装置は、基板の巻き出しロール1と、成膜ロール4と、巻き取りロール3からなり、支持基板が巻き出しロール1から繰り出されて、成膜ロール4へと送られ、次いで成膜ロール4の回転に伴われて連続移動して巻き取りロール3に巻き取られるように構成されている。成膜ロールは温度制御が可能であり、基材や成膜される膜に応じて、適宜冷却したり、加熱したりすることができる。成膜形成時では、ゲート絶縁膜の成膜後、該ゲート絶縁膜成膜の表面が全く接触されず、且つ連続的に酸化物からなる半導体活性層をゲート絶縁膜上に形成されることが好ましい。
【0025】
図1の成膜装置では、成膜室は主として送出・巻取の装置の部分と真空の成膜室とを仕切壁10、11で仕切られており、真空の成膜室は、仕切板9を介して仕切られた構造であり、前方の絶縁膜形成室5と、後方の半導体層形成室7に分割されている。絶縁膜形成室5には、成膜ロール4表面と向き合う位置に絶縁膜形成用スパッタターゲット6が配置され、半導体層形成室7には、成膜ロール4表面と向き合う位置に半導体層形成用スパッタターゲット8が配置されている。成膜ロール4表面に把持されたマスキング薄膜及びゲート電極付き可撓性プラスチック基材2上に、ゲート電極含む基材全面に絶縁膜を成膜し、連続して酸化物の半導体層を成膜する装置である。なお図1には、真空排気部およびガス導入部は省略されている。
【0026】
ゲート絶縁膜と半導体活性層の成膜方法は、スパッタ法、パルスレーザー堆積法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE (Molecular Beam Epitaxy)法などが用いられるが、好ましくはスパッタ法である。スパッタ法を用いることで生産性が高く、高品質のデバイスを提供することができる。
【0027】
本発明で用いるスパッタガスは、該ガスをイオン化し、該イオンをターゲット材料に衝突させ、前記ターゲットの材料原子が粒子状にスパッタされるものであり、一般に希ガス、例えばアルゴンガスが頻繁に使用される。また、ゲート絶縁膜および金属酸化物半導体を所望の組成比率、分子構造にするため、流量ガス圧等を最適化の条件下で酸素、オゾン、窒素、NOx、CO2やそれらの混合ガス等の反応性ガスを用いることが好ましい。また、これらの反応性ガスは希ガス等で希釈されていても構わない。
【0028】
本発明で用いるスパッタ方式は、いかなるものであっても良い。例えば、電源の方式からみると、DC(Direct Current),RF(Radio Frequency),MF(Middle Frequency),パルスなど種種の方式が挙げられる。また、磁場の観点からは、マグネトロンスパッタ法と、そうでないものとがある。また、カソードの数の観点から、シングルカソード方式と、デュアルカソード方式とがある。適宜最適な方式を選択、使用することが重要である。
【0029】
本発明のスパッタ方式の成膜装置は、基材上に薄膜を形成するスパッタ成膜装置である。前記成膜装置は、極低圧気体中の成膜室に載置したターゲットへ希ガスのプラズマイオンが衝撃するとき、イオンの衝突によってターゲット表面からターゲット構成の原子粒が真空中に飛散して近傍の物体表面に付着する現象を用いて薄膜を形成する機能を備えた構成の装置である。また、真空ポンプを用いて、例えば、10-0〜10-3Paの極低圧気体中の雰囲気を形成する成膜室内に、ターゲット6、8を装着し、該ターゲットに希ガスのプラズマイオン衝撃等により該ターゲット表面から原子が気体中に飛散し、且つ該原子が、気体中を飛散して近傍の物体表面に付着するための十分な運動エネルギー、例えば電位差を与えられる電気エネルギー手段、すなわち電圧、電流等の条件を設定できる手段を備えた装置である。
【0030】
ゲート絶縁膜形成用のターゲットと半導体層形成用のターゲットは成膜レートや膜厚などを勘案して複数個備えられていることも好ましい。特に本発明のゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を製造する工程においては、ゲート絶縁膜の膜厚が厚く、成膜レート(成膜速度)が遅くなることが多いため、ゲート絶縁膜形成用のターゲット数が半導体形成用ターゲット数よりも多いことが一般的であるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
本発明の成膜装置においては、ゲート絶縁膜形成室と半導体層形成室の間を仕切り板等で空間的に分割されていることが好ましい。この際、仕切り板は各々の成膜室に供給され
るガスを他方の成膜室に影響を与えない程度にゲート絶縁膜形成室と半導体形成室間を分割していればよい。また成膜室と巻出ロール室および巻取ロール室を仕切り板で仕切ることが好ましい。この際、仕切り板と成膜ロールの間は被成膜基材が通れる程度のギャップが存在していれば良い。
【0032】
本発明の成膜装置においては、絶縁膜形成室と半導体層形成室が、互いに独立した排気系を持つことが好ましい。独立した排気系を備えることで、ゲート絶縁膜および半導体層を互いに最適なガス圧等の条件で成膜することができる。
【0033】
本発明の酸化物半導体層に用いる酸化物半導体材料は亜鉛、インジウム、スズ、タングステン、マグネシウム、ガリウムのうち一種類以上の元素を含む酸化物である、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タングステン、酸化亜鉛ガリウムインジウム等の公知の材料が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらの材料の構造は単結晶、多結晶、微結晶、結晶/アモルファスの混晶、ナノ結晶散在アモルファス、アモルファスのいずれであってもかまわない。半導体層の膜厚は少なくとも20nm以上が望ましい。
【0034】
本発明のボトムゲート型薄膜トランジスタの構成部品であるソース電極、ドレイン電極、ゲート電極には金、白金、銀、パラジウム、銅、アルミニウム、ニクロム、クロム、チタン、インジウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化カドミウム、酸化ガリウム、導電性ポリマーなどを使用することが出来る。各電極は真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法、レーザーアブレーション法、プラズマCVD法、光CVD法、ホットワイヤーCVD法、もしくは導電性ペーストを用いてスクリーン印刷、凸版印刷及び凹版印刷、平版印刷などで形成される。酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ等の透明導電性酸化物を使用する場合はドーパントを混入させることで透明導電膜の導電率を上げることが好ましい。例えば酸化亜鉛ではガリウム、アルミニウム、ボロンなど、酸化スズではフッ素、アンチモンなど、酸化インジウムではスズ、亜鉛、チタン、セリウム、ハフニウム、ジルコニアなど混入させ透明導電膜を縮退させることが好ましい。また電極材料に酸化物半導体と同じ母材料を用い、ドーパント濃度だけを高くすることも、生産効率増加のために望ましい。電極の膜厚は少なくとも10nm以上である必要がある。またゲート電極、ソース電極及びドレイン電極の材料は、全て同じものとしてもよく、異なるものとしても良い。
【0035】
本発明に用いる可撓性プラスチック基材は透明であっても不透明であってもかまわない。但し、透過型ディスプレー用薄膜トランジスタとして使用する場合は透明であることが好ましい。具体的にはポリメチルメタクリレート、ポリアリフレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルサルフェン、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合樹脂、耐候性ポリエチレンテレフタレート、耐候性ポリプロピレン、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネート、ポリイミド、透明性ポリイミド、フッ素系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂などを使用することができるが、これらに限定されるわけではない。これらは単独の基材として使用してもよいが、二種以上を積層した複合基材を使用することもできる。これらの基材の片面もしくは両面に透明もしくは不透明なガスバリア層が付与されていることも好ましい。
【0036】
本発明の絶縁層に用いる絶縁材料は、特に限定しないが、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ハフニウム、ハフニウムアルミネート、酸化ジルコニア、酸化チタン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロビレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテル
サルフェン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリルレート、ポリエチレン、ポリスチロール、テフロン(登録商標)、エボナイト、エポキシなどが使用できる。金属電極間のリーク電流を抑えるためには、絶縁材料の抵抗率は1012(Ω・cm)以上であることが好ましい。
【0037】
本発明の酸化物半導体からなる薄膜トランジスタは、液晶ディスプレー、有機ELディスプレー、光書き込み型コレステリック液晶型ディスプレー、Twisting Ball 方式ディスプレー、トナーディスプレー方式ディスプレー、可動フィルム方式ディスプレー、センサーなどのデバイスに使用することができる。
【0038】
図2は、本発明の薄膜トランジスタの層構成の部分拡大の側断面図である。
【0039】
図2の薄膜トランジスタは、支持基材である可撓性プラスチック基材21上に、ゲート電極22及び補助コンデンサ電極23等を形成し、該可撓性プラスチック基材21の一部分にマスキング薄膜を形成後、ゲート絶縁膜24と、酸化物からなる半導体活性層25とを形成、画素電極26と、ソース電極28及びドレイン電極27を形成、内部を保護する保護膜29からなる層を形成する構成である。なお、ゲート電極22及び補助コンデンサ電極23、酸化物からなる半導体活性層25、画素電極26、ソース電極28及びドレイン電極27、保護膜29は、フォトリソグラフィー法等、例えばエッチング処理により各々のパターン形状に形成されている。
【0040】
本発明の実施例を図1により説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【実施例1】
【0041】
本発明の成膜装置の断面図を図1、本発明の方法で形成された薄膜トランジスタの断面を図2に一実施例として示す。まず、初めにPETの基材21上にアルミのゲート電極22の薄膜をスパッタ法にて50nm形成し、フォトリソグラフィー法を用いて所定の形状にエッチングした。続いて、ゲート電極22が形成された基材21を図1記載のスパッタ装置の巻き出しロール部1に装着した。ここで、絶縁膜および半導体層が走査電極および信号電極の電極取り出し部を被覆することのないよう、前記走査及び信号電極の取り出し部をレジストのマスキング薄膜の形成により被覆した。スパッタ法の成膜装置はPET基材を搬送するための巻き出しロール1と、巻き取りロール3を備え、成膜するための成膜室内には仕切り板9で仕切られた絶縁膜形成室5と半導体層形成室7から形成されている。絶縁膜形成室5はSiNの焼結体からなるターゲット6が4個、半導体層形成室7はドーピングのための不純物が含まれていないZnOの焼結体からなるターゲット8が2個備えた。各々のターゲットはRF電源に接続された。また各々の真空の各々成膜室は独立したターボ分子ポンプで排気されており、10-3Pa以下に排気可能である。各々の層の成膜条件を表1に示す。
【0042】
【表1】

なお、表での基材温度は、成膜装置の成膜ロールの温度制御を用いた。
【0043】
それぞれのガスはボンベより供給され、流量はマスフローコントローラーを介して成膜室内に導入した。絶縁膜形成室5および半導体層形成室7にそれぞれ所望のガスを流し、オートプレッシャーコントローラーにて所定の圧力になるようメインバルブの開口率を調節したあと放電状態とし、巻き出しロール1からゲート電極22が形成された基材を基材速度2m/分の速度で絶縁膜形成室5へと供給しゲート絶縁膜24と連続して半導体層形成室7で半導体活性層25を連続的に形成した。
【0044】
ゲート絶縁膜24および半導体活性層25が形成された基材21は巻き取りロール3から取り外し、フォトリソグラフィー法で半導体活性層25を所定のパターン形状にエッチングし、続いてITOからなるソース電極28およびドレイン電極27をリフトオフ法によるスパッタ法で形成し、所定のパターン形状のソース電極28とドレイン電極27とを形成した。最後にスパッタ法でSiNからなる保護膜29を形成した。以上により本発明のボトムゲート型薄膜トランジスタを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の成膜装置の一実施例の側断面図である。
【図2】本発明の成膜方法で作成したボトムゲート型トランジスタの一実施例の側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…巻き出しロール
2…ゲート電極付き可撓性プラスチック基材
3…巻き取りロール
4…成膜ロール
5…絶縁膜形成室
6…絶縁膜形成用スパッタターゲット
7…半導体層形成室
8…半導体層形成用スパッタターゲット
9…仕切り板
10、11…仕切り板
12…巻き取り式真空成膜装置
21…可撓性プラスチック基材、基材
22…ゲート電極
23…補助コンデンサー電極
24…ゲート絶縁膜
25…酸化物からなる半導体活性層
26…画素電極
27…ドレイン電極
28…ソース電極
29…保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材である可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタの製造方法において、
ロール状の基材を連続して巻き取る方式の成膜装置の真空成膜室内で、
ゲート電極を形成した可撓性プラスチック基材上に、
ゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層とを大気開放することなく連続して形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項2】
前記ゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性層の形成方法が、成膜装置の真空成膜室内で、スパッタ法により連続して成膜形成することを特徴とする請求項1記載の薄膜トランジスタの製造方法。
【請求項3】
可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されてなるボトムゲート型薄膜トランジスタのゲート絶縁膜および酸化物からなる半導体活性膜を形成する成膜装置において、
前記請求項1、又は2記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置であって、ロール状の可撓性プラスチック基材を真空成膜室内の一つの成膜ロールの表面上に把持させ、一定速度で成膜ロールを回転させながら、前記真空成膜室内でゲート絶縁膜と酸化物からなる半導体活性層を連続して成膜形成することを特徴とする薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置。
【請求項4】
前記真空成膜室は、ゲート絶縁膜の形成部と酸化物からなる半導体活性膜の形成部が互いに仕切り板で仕切られていることを特徴とする請求項3記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置。
【請求項5】
前記真空成膜室は、ゲート絶縁膜の形成部と酸化物からなる半導体活性膜の形成部が、互いに独立した排気系を持ち、各々の膜を成膜形成することを特徴とする請求項3、又は4記載の薄膜トランジスタの製造方法に用いる成膜装置。
【請求項6】
可撓性プラスチック基材上に、ゲート電極、ゲート絶縁膜、酸化物からなる半導体活性層、ソース電極、ドレイン電極が形成されて成るボトムゲート型薄膜トランジスタにおいて、
前記請求項3乃至5のいずれか1項記載の成膜装置を用いた成膜方法及び請求項1、又は2記載の薄膜トランジスタの製造方法を用いて薄膜トランジスタを形成したことを特徴とするボトムゲート型薄膜トランジスタ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−150155(P2007−150155A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345455(P2005−345455)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】