説明

薄膜多層配線基板およびその製造方法

【課題】 剥離の発生の少ない薄膜多層配線基板とその製造方法を提案する。
【解決手段】 少なくとも一つの前記配線層が、下層の配線層上に形成された第一のSiO薄膜と、前記第一のSiO薄膜上に形成されたSiON薄膜と、前記SiON薄膜上に形成された第二のSiO薄膜と、前記第二のSiO薄膜に埋め込まれて形成された配線導体と、前記配線導体と接続しかつ前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜を貫通して前記下層の配線層の配線導体と電気的に接続するビア導体と、前記第二のSiO薄膜上に形成されたSiN薄膜と、で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiOを絶縁膜とする多層配線層を有する半導体装置等の薄膜多層配線基板と、その製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
薄膜多層配線基板は、絶縁膜を介して複数の配線層が積層されており、各配線層がビア導体によって電気的に接続されている構造を有している。このような薄膜多層配線基板の構造は化学気相成長法(CVD法、以下CVDと略する。)等の薄膜形成プロセスによって形成される。
【0003】
近年、LSI等の半導体装置は、高速化を図るため、電気抵抗の小さいCuを配線導体に用いるようになってきた。Cuを配線導体とする薄膜多層配線基板を形成する手法としては、ダマシン加工が知られている。ダマシン加工とはフォトリソグラフィおよびエッチングによって絶縁膜に所望の加工を施し、配線導体を構成する導電材料が絶縁膜へ拡散するのを阻止するバリア層および導電材料を埋め込みするためのシード層を形成し、電解メッキによって導電材料を埋め込み、化学機械研磨(以下CMPと略する。)によって不要な導電材料を除去して配線導体を形成する手法である。ダマシン加工には、配線導体をダマシン加工で形成してビア導体を別途形成するシングルダマシン加工と、配線導体とビア導体とを同時にダマシン加工で形成するデュアルダマシン加工と、がある。
【0004】
絶縁膜にSiO、配線導体にCuを用いたデュアルダマシン加工による薄膜多層基板の製造プロセスについて説明する。配線導体さらには薄膜キャパシタ等の受動素子が形成された基板上に、第一のSiO薄膜、SiN薄膜および第二のSiO薄膜を順次CVDによって成膜する。次いで第二のSiO薄膜上にフォトリソグラフィプロセスによってフォトレジストのマスクを形成し、反応性イオンエッチング(以下RIEと略する。)によって第二のSiO薄膜の露出部分を除去して配線導体用の溝を形成し、続いてSiN薄膜および第一のSiO薄膜を貫通して下層の配線導体に達するビアを形成する。溝およびビアを形成した面にCu拡散を阻止するTaN/Taバリア膜およびCuシード層を連続してスパッタ法によって形成し、次いでCu電解メッキを行い溝およびビアにCuを埋め込む。その後CMPによって不要なCuを除去して、配線導体およびビア導体を有する配線層が得られる。
【0005】
ここで、SiN薄膜はエッチングストップ層の機能を有する。これはRIEの際にSiOとSiNとのエッチングレートの差を利用してエッチング深さを調整するか、あるいは例えばSiOとSiNとの発光強度の違いを信号としてプラズマモニタ等で読み取ることにより、加工の終了を検知するものである。なお、このようなエッチングストップ層に用いられる物質としては、他にSiON薄膜などがある。
【0006】
また、CVDによりSiO薄膜を形成する場合、熱CVD法やテトラエトキシシラン(以下TEOSと略する。)を原料とするプラズマCVD法が用いられる。熱CVDで形成したSiO薄膜は引張応力しか入らないため、0.5μm以上の比較的厚い膜を形成すると剥離を起こすことがある。一方TEOSを原料とするプラズマCVDで形成したSiO薄膜は、応力の制御がしやすく、圧縮応力を入れることができるため、剥離を起こすことなく比較的厚い膜を形成することができる。そのため、多層配線基板中に発生する寄生容量または寄生インダクタンス等の寄生成分を低減することができる。
【0007】
【特許文献1】特表2007−504652号公報
【特許文献2】特開2004−235637号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
CVDにより形成したSiO−SiN−SiO薄膜は、成膜後アニール処理を行う。このアニール処理を行うと、SiO薄膜とSiN薄膜との間に剥離が生じることがあった。CVDで成膜したSiO薄膜は残留不純物を含有している。そのため、アニール処理によりSiO薄膜から残留不純物によるガスが発生する。特に原料としてTEOSを用いて形成したSiO薄膜は大量の水分を含んでいるため、アニール処理により水分がガス化する。SiN薄膜は水分を通しにくいので、結合の弱いSiO/SiN界面に水分が蓄積し、これによって剥離が引き起こされると考えられる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決して、剥離の発生の少ない薄膜多層配線基板とその製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、基板上に絶縁膜を介して複数の配線層が積層して形成され、各々の前記配線層が互いにビア導体で電気的に接続されている薄膜多層配線基板において、少なくとも一つの前記配線層が、下層の配線層上に形成された第一のSiO薄膜と、前記第一のSiO薄膜上に形成されたSiON薄膜と、前記SiON薄膜上に形成された第二のSiO薄膜と、前記第二のSiO薄膜に埋め込まれて形成された配線導体と、前記配線導体と接続しかつ前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜を貫通して前記下層の配線層の配線導体と電気的に接続するビア導体と、前記第二のSiO薄膜上に形成されたSiN薄膜と、で構成されている薄膜多層配線基板を提案する。
【0011】
また、本発明では、単層の配線基板を用意する第一ステップと、前記配線基板上に第一のSiO薄膜を形成する第二ステップと、前記第一のSiO薄膜の表面を窒化してSiON薄膜を形成する第三ステップと、前記SiON薄膜上に第二のSiO薄膜を形成する第四ステップと、前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜をアニールする第五ステップと、前記第二のSiO薄膜にエッチングによって配線導体用の溝を形成するとともに、前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜を貫通するビアホールを形成する第六ステップと、前記溝および前記ビアホールに導電性金属を埋め込んで配線導体およびビア導体を形成する第七ステップと、前記第二のSiO薄膜上にSiN薄膜を形成する第八ステップと、を有しており、その後所望の層数になるまで前記第二ステップ乃至前記第八ステップを繰返す薄膜多層配線基板の製造方法を提案する。
【0012】
SiON薄膜は、SiN薄膜に比べて水分を通しやすい。そのため、SiO−SiON−SiOの薄膜をアニール処理した場合、SiO薄膜中の水分が透過して抜けやすくなる。そのため、水分の蓄積による配線層内の剥離が発生しにくくなる。
【0013】
また、本発明の薄膜多層配線基板では、各配線層間にSiN薄膜が形成されている。このSiN薄膜はリーク電流特性などの特性劣化を防止する働きを有するが、さらに水分を通しにくいという性質を有しているので、配線層内への水分の侵入を防止する効果がある。そのため、薄膜多層配線基板内に水分が侵入することによる剥離を防止することができる。
【0014】
なお、SiON薄膜は第一のSiO薄膜を窒化して形成するので、出来上がったSiO−SiON−SiOの薄膜は界面での結合力に優れており、より剥離しにくくなる。また、SiO薄膜上にSiN薄膜を形成する場合は一旦CVD装置の反応器内をパージする必要があるが、SiON薄膜はSiO薄膜を形成した後そのまま窒素プラズマ処理を行うことができるので、SiO−SiN−SiOの薄膜よりも工程短縮が可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、配線層内に剥離が発生しにくく、内部に水分が侵入しにくい薄膜多層配線基板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の薄膜多層配線基板に係る実施の形態を、図面に基づいて説明する。図1に示す薄膜多層配線基板1は、配線導体SCおよび薄膜MIMキャパシタCAPが形成された基板2上に、配線層4、配線層5および配線層6が順次積層されている。
【0017】
配線層4は、第一のSiO薄膜4a、SiON薄膜4bおよび第二のSiO薄膜4cが順次積層されて絶縁膜を構成しており、第二のSiO薄膜4c内に埋め込まれた配線導体4eと、該配線導体4eと基板2上の配線導体SCまたは薄膜MIMキャパシタCAPの上部電極とを接続するビア導体4fと、を有しており、さらに耐水層となるSiN薄膜4dが形成されている。
【0018】
配線層5は、第一のSiO薄膜5a、SiON薄膜5bおよび第二のSiO薄膜5cが順次積層されて絶縁膜を構成しており、第二のSiO薄膜5c内に埋め込まれた配線導体5eと、第一のSiO薄膜5a、SiON薄膜5b、第二のSiO薄膜5cおよび配線層4のSiN薄膜4dを貫通して該配線導体5eと配線層4の配線導体4eとを接続するビア導体5fと、を有しており、さらに耐水層となるSiN薄膜5dが形成されている。
【0019】
配線層6は、第一のSiO薄膜6a、SiON薄膜6bおよび第二のSiO薄膜6cが順次積層されて絶縁膜を構成しており、第二のSiO薄膜6c内に埋め込まれた配線導体6eと、第一のSiO薄膜6a、SiON薄膜6b、第二のSiO薄膜6cおよび配線層5のSiN薄膜5dを貫通して該配線導体6eと配線層5の配線導体5eとを接続するビア導体6fと、を有しており、さらに耐水層となるSiN薄膜6dが形成されている。
【0020】
基板2は、Siウェハ等の半導体基板や、Al等の絶縁性基板が用いられる。基板2としてSiウェハ等の半導体基板が用いられる場合、配線導体等を形成する面に酸化膜3を形成して絶縁性を持たせる。この酸化膜3上に配線導体SCおよび薄膜MIMキャパシタCAPが形成されることにより、薄膜多層配線基板1のベースとなる回路基板が形成される。
【0021】
配線層4の第一のSiO薄膜4aは、基板2上の配線導体SCや薄膜MIMキャパシタCAPを埋め込むと同時に、配線層4の配線導体4eとの絶縁性を持たせるため、また、寄生成分の低減のため、例えば0.5μmを超えるような厚めの膜に形成する必要がある。そのため第一のSiO薄膜4aは、好ましくはTEOSを原料とするCVDによって形成される。
【0022】
配線層4のSiON薄膜4bは、エッチングストップ層としての役割を有している。RIEによる加工時のプラズマ発光状態を終点検出モニターで観察すると、図2のグラフのように、SiON薄膜に達したときにピークが検出される。このピークを検出したときにエッチングを終了すれば良い。SiON薄膜4bは、第一のSiO薄膜4aの表面を窒素プラズマ処理で窒化することによって形成される。この場合、CVD装置の反応器内をクリーニングする必要はなく、第一のSiO薄膜4aを形成した後そのままの状態で窒素プラズマ処理を行うことができる。そのため、エッチングストップ層としてSiN薄膜を用いる場合に比べて工程を短縮することができる。また、SiON薄膜4bは、第一のSiO薄膜4aの表面を窒化して形成したものなので、SiON薄膜4bと第一のSiO薄膜4aとの密着性は比較的高いものとなる。
【0023】
配線層4の第二のSiO薄膜4cは、配線導体4eを埋め込む部分である。そのため、厚さは配線導体4eの厚さ分以上あれば良い。第二SiO薄膜4cの成膜条件は第一のSiO薄膜4aの成膜条件と略同じであっても良いし、適宜条件を変えても良い。第一のSiO薄膜4a、SiON薄膜4bおよび第二のSiO薄膜4cの成膜は、CVD装置の反応器内のクリーニングを行わずに一貫して行うことができる。
【0024】
第一のSiO薄膜4a、SiON薄膜4bおよび第二のSiO薄膜4cを形成した後、アニール処理を行う。このとき第一のSiO薄膜4aおよび第二のSiO薄膜4cに含まれている水分が抜ける。ここで、SiON薄膜4bはSiN薄膜に比べて水分を通しやすいので、第一のSiO薄膜4aとSiON薄膜4bの界面で水分が蓄積されにくくなり、剥離が生じにくくなる。
【0025】
配線層4の配線導体4eおよびビア導体4fは、ダマシン加工によって第二のSiO薄膜4c内に埋め込まれて形成される。配線導体4eおよびビア導体4fの材料としてはCuやAlが用いられる。なお、図示していないが、配線導体4eおよびビア導体4fの下地として、配線層4へのCuの拡散を阻止するTaN/Taバリア膜および電解Cuメッキ時の通電に用いるCuシード層等が形成されている。ビア導体4fは、SiON薄膜4bおよび第一のSiO2薄膜4aを貫通して、下層の配線導体SCあるいは薄膜MIMキャパシタCAPの上部電極に電気的に接続される。
【0026】
配線層4のSiN薄膜4dは、耐水層としての役割を有している。配線層4を形成した後、その上にさらに配線層を形成する場合、配線層4上にSiO薄膜が形成される。そのときこのSiO薄膜に含まれる水分が配線層4に侵入するのを、SiN薄膜4dによって防止することができる。
【0027】
配線層5および配線層6の構成は、配線導体とビア導体のパターンが異なる点以外は配線層4と略同じである。なお、配線層5のビア導体5fは、SiON薄膜5bと第一のSiO薄膜5aさらには配線層4のSiN薄膜4dを貫通して、配線層4の配線導体4eあるいはビア導体4fと電気的に接続するように形成される。また、配線層6のビア導体6fは、SiON薄膜6bと第一のSiO薄膜6aさらには配線層5のSiN薄膜5dを貫通して、配線層5の配線導体5eあるいはビア導体45と電気的に接続するように形成される。
【0028】
次に、本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスについて説明する。ここではSiウェハを基板として、その上に配線層を積み重ねた薄膜多層配線基板を例にとって説明する。なお、各薄膜の厚さや形成条件等は、以下のプロセス条件に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0029】
(第一ステップ)
まず、単層の配線基板を用意する。図3に示す単層の配線基板は、表面に絶縁膜3を形成したSi基板2上に配線導体SCおよび薄膜MIMキャパシタCAPが形成されている。ベースとなる単層の配線基板は、このようにキャパシタ等の受動素子を有していても良いし、無くても良い。また、図3に示す単層の配線基板は片面に配線導体が形成された片面基板であるが、両面に配線導体が形成された両面基板でも良い。
【0030】
(第二ステップ)
続いて図4に示すように、TEOSを原料としたプラズマCVDによって、第一のSiO薄膜4aを形成する。第一のSiO薄膜4aは、下層の配線導体SCおよび薄膜MIMキャパシタCAPを完全に覆うと同時に、上層の配線層との絶縁を確保するため、比較的厚く形成される。例えば配線導体SCの厚さが250nm、薄膜MIMキャパシタCAPの高さが700nmであった場合、第一のSiO薄膜4aの厚さを3μm程度の厚さに形成する。
【0031】
(第三ステップ)
続いて図5に示すように、第一のSiO薄膜4a上にSiON薄膜4bを形成する。SiON薄膜4bの形成は、第一のSiO薄膜4aを形成した後プラズマCVD装置の反応器から基板2を取り出さないで、続けて行われる。第一のSiO薄膜4aを形成した後窒素プラズマを放電させて、第一のSiO薄膜4aの表面を窒化させる。窒化させた部分がSiON薄膜4bとなる。SiON薄膜4bはエッチングストップ層としての役割を果たせば良いので、厚さは2〜5nm程度で良い。
【0032】
(第四ステップ)
続いて図6に示すように、SiON薄膜4b上に第二のSiO薄膜4cを形成する。第二のSiO薄膜4cの形成は、SiON薄膜4bを形成した後プラズマCVD装置の反応器から基板2を取り出さないで、続けて行われる。第二のSiO薄膜4cの成膜は第一のSiO薄膜4aと略同じ成膜条件で行っても良いし、適宜条件を変えて行っても良い。第二のSiO薄膜4cの厚さはこの後形成する配線導体の厚さ分あれば良い。
【0033】
(第五ステップ)
第ニのSiO薄膜4cを形成した後、アニールを行う。アニールは急加熱アニール(RTA)によって例えば600℃、30分の条件で行われる。このアニールによって第一のSiO薄膜4aおよび第二のSiO薄膜4cに含まれる水分を除去する。SiON薄膜4bは水分を透過しやすいので、第一のSiO薄膜4aに含まれる水分は、SiON薄膜4bを透過して除去される。
【0034】
(第六ステップ)
続いて図7に示すように、第二のSiO薄膜4c上にフォトレジストRG1によって配線導体のパターニングを行う。まず、第二のSiO薄膜4c上の全面にフォトレジストRG1を塗布する。次いで配線導体パターンが形成されたマスクを通して露光し、現像してエッチングする部分のフォトレジストRG1を除去する。
【0035】
次いで、RIEによって第二のSiO薄膜4cをエッチングする。プラズマがSiON薄膜4bに達して発光強度のピークが終点検出モニターで検出されたらエッチングを終了する。エッチング終了後、残ったフォトレジストRG1を除去すると、図8に示すように、配線導体用の溝MZが形成される。
【0036】
次いで図9に示すように、フォトレジストRG2によってビアのパターニングを行う。まず、第二のSiO薄膜4c上の全面にフォトレジストRG2を塗布する。次いでビアのパターンが形成されたマスクを通して露光し、現像してエッチングする部分のフォトレジストRG2を除去する。
【0037】
次いで、RIEによってSiON薄膜4bおよび第一のSiO薄膜4aをエッチングする。下層の配線導体SCおよび薄膜MIMキャパシタCAPの上部電極まで達したらエッチングを終了する。エッチング終了後、残ったフォトレジストRG2を除去すると、図10に示すように、ビアホールVHが形成される。なお、デュアルダマシン加工では、溝MZを先に形成するTrench−first手法と、ビアホールVHを先に形成するVia−first手法と、がある。ここではTrench−first手法を用いたが、本発明ではどちらの手法も適用可能である。
【0038】
(第七ステップ)
続いて、溝MZおよびビアホールVHが形成された加工面の全面に、スパッタ法によって図示しないTaN/Taバリア膜を形成する。このTaN/Taバリア膜はCuのSiOへの拡散を抑制する働きを有している。なお、Cuの拡散を抑制する働きを有しているものであれば、TaN/Ta以外の材料を用いても良い。続いてTaN/Taバリア膜上にスパッタ法によって図示しないCuシード層を形成する。このCuシード層は、この後行う電解Cuメッキの通電層としての働きを有する。
【0039】
次いで、電解Cuメッキを行い、図11に示すように、Cuシード層上にCuを析出させて導電性金属膜CLを形成する。この導電性金属膜CLによって溝MZ内およびビアホールVH内に導電性金属を充填する。溝MZの部分、ビアホールVHの部分および第二のSiO薄膜4c表面でCuの析出の仕方が異なるので、導電性金属膜CLの表面には凹凸が形成される。この場合、導電性金属膜CLの凹凸の最も低い部分の高さが、第二のSiO薄膜4cの表面の位置より高くなるまでCuを析出させる。
【0040】
次いで図12に示すように、余分なCuを除去して配線導体4eおよびビア導体4fを形成する。導電性金属膜CLを、第二のSiO薄膜4cの表面が露出するまでCMPによって研磨する。CMPは既存のCMP装置および条件を適用して行うことが可能である。
【0041】
(第八ステップ)
続いて図13に示すように、配線導体4eおよびビア導体4fを埋め込んだ第二のSiO薄膜4c上に、CVDによってSiN薄膜4dを形成する。CVD装置はSiO薄膜の形成に用いた装置と別の装置を用いても良いし、同じ装置を用いても良い。同じ装置を用いる場合は、成膜条件が異なるので、反応器内のクリーニングが必要になる。SiN薄膜4dは耐水層として働き、配線層4内への水分の侵入を抑制する。SiN薄膜4dは100nm程度の厚さに形成される。このように第二ステップから第八ステップを経て配線層4が形成される。
【0042】
(配線層5の形成)
続いて、上記の第二ステップから第四ステップを行って、図14に示すように、配線層4のSiN薄膜4d上に、配線層5を構成する第一のSiO薄膜5a、SiON薄膜5bおよび第二のSiO薄膜5cを順次形成する。成膜条件は配線層4の各層を形成したときと略同じで良い。次いで第五ステップのアニールを行い、第一のSiO薄膜5a内および第二のSiO薄膜5c内の水分を除去する。アニールの条件は配線層4を形成したときと略同じで良い。このとき、除去された水分はSiN薄膜4dによって配線層4への侵入が抑制されているので、第一のSiO薄膜5a内の水分はSiON薄膜5bを透過して第二のSiO薄膜5c内の水分とともに除去される。
【0043】
次いで、上記の第六ステップを行って、図15に示すように、配線導体用の溝MZおよびビアホールVHを形成する。RIEの条件等は配線層4を形成したときと略同じで良い。なお、ビアホールVHは、SiON薄膜5bと第一のSiO薄膜5aと、さらに配線層4のSiN薄膜4dを貫通して、配線層4の配線導体4eあるいはビア導体4fに達するように形成される。
【0044】
次いで、上記の第七ステップおよび第八ステップを行って、図16に示すように、配線層5を形成する。導電性金属膜の形成条件、CMPの条件およびSiN薄膜5dの成膜条件は配線層4を形成したときと略同じで良い。
【0045】
(配線層6の形成)
続いて、上記第二ステップから第八ステップを行って配線層6を形成し、図1に示す薄膜多層配線基板1を形成する。プロセス条件は配線層5を形成したときと略同じで良い。なお、本実施形態の説明では、配線層6までであるが、さらに配線層を形成する場合は、所望の層数になるまで上記第二ステップから第八ステップを繰返す。また、図示していないが、最上層の配線層上に、薄膜多層配線基板1の配線導体と外部回路とを接続する接続パッドなどの導体を設けても良い。
【0046】
以上のように、本発明によれば、配線層内の剥離を抑制することができる薄膜多層配線基板を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、LSI等の半導体装置の多層配線層の他、CSP(Chip Scale Package)の半導体装置の再配線に用いられるインターポーザに適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の薄膜多層配線基板を模式的に示す部分断面図である。
【図2】終点検出モニターの検出結果を示すグラフである。
【図3】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図4】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図5】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図6】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図7】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図8】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図9】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図10】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図11】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図12】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図13】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図14】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図15】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【図16】本発明の薄膜多層配線基板の製造プロセスを示す図である。
【符号の説明】
【0049】
1 薄膜多層配線基板
2 基板
3 絶縁膜
4 配線層
5 配線層
6 配線層
4a、5a、6a 第一のSiO薄膜
4b、5b、6b SiON薄膜
4c、5c、6c 第ニのSiO薄膜
4d、5d、6d SiN薄膜
4e、5e、6e 配線導体
4f、5f、6f ビア導体
MZ 配線導体用の溝
VH ビアホール
CL 導電性金属膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に絶縁膜を介して複数の配線層が積層して形成され、各々の前記配線層が互いにビア導体で電気的に接続されている薄膜多層配線基板において、
少なくとも一つの前記配線層は、
下層の配線層上に形成された第一のSiO薄膜と、
前記第一のSiO薄膜上に形成されたSiON薄膜と、
前記SiON薄膜上に形成された第二のSiO薄膜と、
前記第二のSiO薄膜に埋め込まれて形成された配線導体と、
前記配線導体と接続しかつ前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜を貫通して前記下層の配線層の配線導体と電気的に接続するビア導体と、
前記第二のSiO薄膜上に形成されたSiN薄膜と、
で構成されていることを特徴とする薄膜多層配線基板。
【請求項2】
基板上に絶縁膜を介して複数の配線層が積層して形成され、各々の前記配線層が互いにビア導体で電気的に接続されている薄膜多層配線基板の製造方法において、
単層の配線基板を用意する第一ステップと、
前記配線基板上に第一のSiO薄膜を形成する第二ステップと、
前記第一のSiO薄膜の表面を窒化してSiON薄膜を形成する第三ステップと、
前記SiON薄膜上に第二のSiO薄膜を形成する第四ステップと、
前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜をアニールする第五ステップと、
前記第二のSiO薄膜にエッチングによって配線導体用の溝を形成するとともに、前記第一のSiO薄膜、前記SiON薄膜および前記第二のSiO薄膜を貫通するビアホールを形成する第六ステップと、
前記溝および前記ビアホールに導電性金属を埋め込んで配線導体およびビア導体を形成する第七ステップと、
前記第二のSiO薄膜上にSiN薄膜を形成する第八ステップと、
を有しており、その後所望の層数になるまで前記第二ステップ乃至前記第八ステップを繰返す
ことを特徴とする薄膜多層配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−123904(P2010−123904A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−298828(P2008−298828)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】