車両の制御装置
【課題】 精度良く道路勾配を推定し、道路勾配に応じた最適な変速制御を行う車両の制御装置を提供する。
【解決手段】第1のエンジン出力推定トルクからメインシャフトに伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出し、入力軸推定トルクに基づいて、ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、ドライブシャフト推定トルクに基づいて、車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、駆動力に基づいて、車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、平地走行推定加速度及び実加速度、並びに車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、自動変速機の変速段を選択する。
【解決手段】第1のエンジン出力推定トルクからメインシャフトに伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出し、入力軸推定トルクに基づいて、ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、ドライブシャフト推定トルクに基づいて、車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、駆動力に基づいて、車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、平地走行推定加速度及び実加速度、並びに車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、自動変速機の変速段を選択する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、車両が走行する道路勾配を推定し、推定した道路勾配、車速及びアクセルペダル開度に基づいて自動変速機(トランスミッション)の変速段を決定するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両はアクセルペダル開度と車速に応じてトランスミッションの最適な変速比を選択し、変速比を制御することにより快適な走行性を実現している。ところで、平地走行、登坂路走行、降坂路走行の場合では、アクセルペダル開度や車速が同じでも、最適な変速段が異なることから、道路勾配に応じた変速段を選択する必要がある。
【0003】
従来、道路勾配に応じて変速比を制御する技術として、特許文献1があった。特許文献1には、車両が走行する地の高度を示す高度パラメータを検出し、検出された高度パラメータに基づいて実加速度及び予想加速度の少なくともいずれかを補正し、車両が走行する地の高度が増加するにつれて登坂路走行用の変速特性の選択を早めるように構成することが記載されている。
【特許文献1】特許第2959937号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジン出力トルクは、エンジンの点火時期、EGR(Exhaust Gas Recirculation)により吸入系に還流された排気ガスによるエアー量、吸気弁のバルブタイミング(V/T)、空燃比等のエンジンコントロール、エンジン水温等のエンジン状態、エアコンのON/OFF、ライト、カーステレオ等による発電機(ACG)への電気負荷により、トランスミッションに入力されるトルクは、刻々変化しているため平地走行での車両加速度は一意的には定まらない。
【0005】
上記特許文献1では、上記エンジンコントロール、エンジン状態、エアコンのON/OFF、電気負荷によるエンジン出力トルクの変動は考慮されていないことから、車両が走行する地の高度による実加速度又は予想加速度の補正のみでは、補正後の加速度に誤差が生じる。そのため、誤差のある補正後の加速度に基づく変速制御が必ずしも最適なものとはならないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、精度良く道路勾配を推定し、道路勾配に応じた最適な変速制御を行う車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によると、エンジンと、前記エンジンのクランク軸より出力されるエンジン出力トルクに基づきメインシャフトに伝達された入力軸トルクをカウンタシャフトを介して、車輪が接続されるドライブシャフトに駆動トルクを伝達する自動変速機とを有する車両の制御装置であって、前記エンジンへの燃料が供給されているとき、前記エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク推定手段と、前記第1のエンジン出力推定トルクから前記自動変速機に伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、前記第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、前記メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク推定手段と、前記入力軸推定トルクに基づいて、前記ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、前記ドライブシャフト推定トルクに基づいて、前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、前記駆動力に基づいて、前記車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、前記車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、前記平地走行推定加速度及び前記実加速度、並びに前記車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、前記自動変速機の変速段を選択する変速段選択手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置が提供される。
【0008】
請求項1記載の車両の制御装置によると、エンジン出力トルク推定手段によりエンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出する。この第1のエンジン出力推定トルクには、EGRやV/Tによる影響を受けない。エンジン出力トルク補正手段により、第1のエンジン出力推定トルクより自動変速機に伝達されないトルク分を補正して、第2のエンジン出力推定トルクを算出する。これにより、第2のエンジン推定トルクは推定精度が良い。この第2のエンジン推定トルクに基づいて、精度の良い平地走行推定加速度を算出する。平地走行推定加速度と実加速度の差は走行道路の勾配を示すものであり、勾配が精度良く推定される。
【0009】
請求項2記載の発明によると、前記エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づいて、減速トルクを推定し、該減速トルクを前記第1のエンジン出力推定トルクとする。
【0010】
請求項2記載の車両の制御装置によると、請求項1記載の車両の制御装置において、エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づく減速トルクを第1のエンジン出力推定トルクとする。
【0011】
請求項3記載の発明によると、請求項1〜2のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する。
【0012】
請求項3記載の車両の制御装置によれば、第2のエンジン推定トルクはエンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン分が補正されている。
【0013】
請求項4記載の発明によると、請求項1〜3のいずれか記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンのエンジン水温によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する。
【0014】
請求項4記載の車両の制御装置によれば、第2のエンジン推定トルクはエンジンのエンジン水温によるトルクダウン分が補正されている。
【0015】
請求項5記載の発明によると、請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、ACG及びエアコンに消費されるトルク分を補正する。
【0016】
請求項5記載の車両の制御装置によると、第2のエンジン推定トルクはACG及びエアコンに消費されるトルク分が補正されている。
【0017】
請求項6記載の発明によると、請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記クランク軸の回転変化によるエンジンイナーシャトルク分を前記第1のエンジン出力推定トルクから減算して補正する。
【0018】
請求項6記載の車両の制御装置によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンイナーシャトルク分が補正されている。
【0019】
請求項7記載の発明によると、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記入力軸推定トルクの中で前記ドライブシャフトに伝達されないフリクショントルク分を補正して、第2の入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク補正手段を更に備え、前記ドライブシャフトトルク算出手段は、前記第2の入力軸推定トルクに基づいて前記ドライブシャフト推定トルクを算出する。
【0020】
請求項7記載の車両の制御装置によると、第2の入力軸推定トルクはフリクショントルク分が補正されている。
【0021】
請求項8記載の発明によると、請求項1〜7のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での転がり抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出する。
【0022】
請求項8記載の車両の制御装置によると、平地走行加速度は車両の転がり抵抗分が補正されている。
【0023】
請求項9記載の発明によると、請求項1〜8のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での車速に応じた空気抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出する。
【0024】
請求項9記載の車両の制御装置によると、平地走行加速度は車両の車速に応じた空気抵抗分が補正されている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によると、エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを推定するので、第1のエンジン出力推定トルクはEGRやV/Tによる影響を受けない。更に、第1のエンジン出力推定トルクよりメインシャフトに伝達されないトルク分を補正して、第2のエンジン出力推定トルクを算出するので、第2のエンジン出力推定トルクは精度が向上する。第2のエンジン出力推定トルクより推定される平地走行推定加速度と実加速度の差は走行道路の勾配を示すものであり、道路勾配が精度良く推定され、車両の走行性が向上する。
【0026】
請求項2記載の発明によると、フューエルカットされている場合にも、道路勾配が精度良く推定できる。
【0027】
請求項3記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0028】
請求項4記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンのエンジン水温によるトルクダウン分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0029】
請求項5記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはACG及びエアコンに消費されるトルク分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0030】
請求項6記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンイナーシャトルク分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0031】
請求項7記載の発明によると、第2の入力軸推定トルクはフリクショントルク分が補正されているので、ドライブシャフト推定トルクの推定精度が向上する。
【0032】
請求項8記載の発明によると、平地走行推定加速度は車両の転がり抵抗分が補正されているので、平地走行推定加速度の推定精度が向上する。
【0033】
請求項9記載の発明によると、平地走行推定加速度は車両の車速に応じた空気抵抗分が補正されているので、平地走行推定加速度の推定精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の実施形態による車両の概略構成図である。図1に示すように、車両は、エンジン2と、トランスミッション4と、ACG40と、動力伝達機構50と、車両用空調装置(エアコン)52と、吐出圧センサ54と、エアコンECU56と、エンジンECU60と、AT−ECU70と、油圧制御装置72と、エアーフローセンサ80と、スロットル弁82と、吸気管84と、スロットル開度センサ86と、燃料噴射弁88と、エンジン水温検出センサ90と、エンジン回転数検出センサ92と、メインシャフト(入力軸)回転数検出センサ94と、カウンタシャフト回転数センサ96と、車速センサ98と、A/Cスイッチ100と、アクセルペダル開度センサ102を主に含む。
【0035】
エンジン2の吸気管84には、図示しないエアクリーナの下流に吸入空気量を計測するエアーフローセンサ80が設けられている。この吸入空気量には、EGRにより還流された排気ガスも含まれる。更に、エアーフローセンサ80の下流にスロットル弁82が配置されている。スロットル弁82にはスロットル弁開度センサ86が連結されており、スロットル弁82の開度に応じて電気信号を出力する。
【0036】
燃料噴射弁88はエンジン2とスロットル弁82のとの間且つ吸気管84の図示しない吸気弁の少し上流側に気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にエンジンECU60に電気的に接続されてエンジンECU60からの信号により燃料噴射時間が制御される。
【0037】
エンジン2の本体に装着されたエンジン水温センサ90は、サーミスタ等からなり、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力する。エンジン回転数センサ92はクランク軸2aの回転数NEを検出して対応する電気信号を出力する。センサ80,86,90,92のセンサ出力値はエンジンECU60及びAT−ECU70に入力される。
【0038】
エンジン2のクランク軸2aがトランスミッション4に連結されている。トランスミッション4に設けられたトルクコンバータ6は、流体を介してトルクの伝達を行うものであり、クランク軸2aに連結されたフロントカバー6aと一体のポンプインペラ6bと、フロントカバー6aとポンプインペラ6bとの間でポンプインペラ6bに対向配置されたタービンランナ6cと、ステータ6dとを有する。
【0039】
タービンランナ6cとフロントカバー6aとの間には、AT−ECU70の指令に基づく油圧制御装置72による制御により、フロントカバー6aの内面に向かって押圧されることによりフロントカバー6aに係合し、押圧が解除されることにより係合が解除されるロックアップクラッチ8が設けられている。フロントカバー6a及びポンプインペラ6bにより形成される容器内に作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)が封入されている。
【0040】
AT−ECU70からの指令に基づきロックアップクラッチ8の係合が解除された状態では、ポンプインペラ6b及びタービンランナ6cの相対回転を許容する。この状態でクランク軸2aのトルクがフロントカバー6aを介してポンプインペラ6bに伝達されると、容器を満たしている作動油は、ポンプインペラ6bの回転により、ポンプインペラ6b→タービンランナ6c→ステータ6dと循環しながらポンプインペラ6bの回転トルクをタービンランナ6cに伝達し、メインシャフト10aを駆動する。
【0041】
また、AT−ECU70からの指令に基づきロックアップクラッチ8が係合された状態では、フロントカバー6aからタービンランナ6cへと作動油を介さずに直接回転し駆動力がメインシャフト10aに伝達される。
【0042】
トランスミッション4は、更に、AT−ECU70からの指令に基づく油圧制御装置72による油圧の制御により、複数のシンクロクラッチが駆動されることにより変速動作が制御されるものであり、メインシャフト10a、メインシャフト10aに平行に配設されたカウンタシャフト10b及び互いに異なるギア比に設定されている複数のメインシャフト10a側とカウンタシャフト10b側に設けられたギア対、例えば、前進1〜5速ギア対及び後進ギア対を有する。
【0043】
複数のギア対はメインシャフト10aに取り付けられた各入力側ギアとカウンタシャフト10bに取り付けられた各出力側ギアとから成り、対をなす各ギア同士は常に噛み合っている。
【0044】
各入力側ギア又は各出力側ギアの何れか一方は、メインシャフト10a又はカウンタシャフト10bに対して相対回転自在とされ、各シンクロクラッチによって、メインシャフト10a又はカウンタシャフト10bに接続又は分離される。
【0045】
例えば、図1では、複数のギア対のうち、前進ギア対の高速段(例えば、4速)と低速段(例えば、1速)の2個のギア対を一例として記載している。高速側ギア対の高速出力側ギア20b及び低速側ギア対の低速出力側ギア対22bはカウンタシャフト10bに対して一体に設けられている。
【0046】
高速側ギア対の高速入力側ギア20a及び低速側ギア対の低速入力側ギア対22aはメインシャフト10aに対して回転可能のアイドルギアとされ、各シンクロクラッチ24,26によってメインシャフト10aに対して接続または分離される。
【0047】
各シンクロクラッチ24,26は、例えば、図1に示すように、湿式多板クラッチ等により構成され、メインシャフト10aと一体に回転可能に配置された各アウタクラッチ板24a,26aと、アウタクラッチ板24a,26aと交互に重ね合わすように配置されてアウタクラッチ板24b,26bに当接可能とされ、メインシャフト10aに対してアイドルギアとされる入力側ギア20a,22aと一体的に回転可能に配置されたインナークラッチ板24b,26bと、AT−ECU70により制御される図示しない油圧アクチュエータとを有する。
【0048】
各油圧アクチュエータは、摺動可能に配置されてピストン室を形成するピストンを有し、ピストン室に供給される作動油の油圧に応じてスラスト力を発生させ、各アウタクラッチ板24a,26aと各インナークラッチ板24b,26bとを相互に係合させることによって、トランスミッション4のカウンタシャフト10bと各入力側ギア20a,22aの何れかと一体に締結する。ピストン室内に供給される作動油の油圧は、AT−ECU70によるクラッチ油圧指令値に基づいて制御され、各シンクロクラッチ24,26の係合状態が調整可能とされる。
【0049】
トランスミッション4のカウンタシャフト10bと一体に設けられた出力側ファイナルギア30aと、駆動輪Wに接続されたドライブシャフト32と一体に設けられた駆動側ファイナルギア30bとはファイナルギア対をなし、常に噛み合っている。
【0050】
発電機(ACG)40は、エンジン2からのエンジン出力トルクによるオルタネータの回転により発電し、図示しないライト、カーステレオ等の電気負荷に電力を供給する低圧バッテリを充電する。また、ACG40は発電によるエンジン2のエンジン出力トルクの消費量を示す信号、例えば、オルタネータ回転数NACGに応じた信号を出力する。
【0051】
動力伝達機構50は、エンジン2のエンジントルクをエアコン52が有する図示しない駆動軸に伝達するものである。エアコン52は、図示しない圧縮機と冷媒循環回路とを有し、冷媒循環回路より圧縮機に導入された冷媒ガスを吸入室に吸入し、動力伝達機構50を通して圧縮機に伝達されたトルクを用いた圧縮機に設けられたシリンダの往復運動により吸入した冷媒ガスを圧縮して、高圧ガスを吐出室を通して冷媒循環回路に吐出し、冷媒循環回路により冷媒の温度及び圧力に基づいて弁開度を自律的にフィードバック制御し、冷房負荷に見合った冷媒流量を調節する。
【0052】
エアコン52に設けられたセンサ54は、エアコン52が消費しているエンジントルク量を示す電気信号を出力する。消費エンジントルクは動力伝達機構50より伝達されるトルクであり、例えば、エアコン52の吐出圧PDにより消費エンジントルク量が推定可能であることから、センサ54は吐出圧PDを検出する吐出圧センサにより構成する。
【0053】
エアコンECU56は、A/Cスイッチ100のON/OFF状況、温度設定、室内の検出温度に基づいて、圧縮機の必要吐出ガス流量及びそれに対応する圧縮機の目標負荷トルクを算出し、圧縮機の実負荷トルクが目標負荷トルクとなるように、エアコン52をフィードバック制御することにより、室内の温度が設定温度となるようエアコン52を制御する。
【0054】
エンジンECU60は、次のようにしてエンジン2を制御する。(1)目標エンジントルクを算出する。目標エンジントルクは、例えば、エンジン回転数NE及びアクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θAより、マップを検索して、目標エンジン出力トルクを算出する。(2)算出した目標出力トルクに応じて目標スロットル開度を決定し、目標スロットル開度となるようスロットル弁82の開度を調節する。(3)エンジン2の下流側に設けられる図示しない触媒コンバータの浄化率の向上するように空燃比(A/F)を算出する。(4)スロットル弁82の直ぐ下流に設けられる図示しない吸入空気圧センサからの吸入空気圧及び算出された空燃比に基づいて、目標燃料噴射量及び点火時期を算出して、目標燃料噴射量及び点火時期に応じて、燃料噴射弁88を制御する。(5)減速時のエンジントルクを必要としない所定の場合には、燃料噴射弁8を制御して、燃料供給をカット(フューエルカット)する。
【0055】
尚、エンジンECU60へのセンサ86,90,92等からの入力ラインは図1では省略されている。
【0056】
AT−ECU70は、次のようにしてトランスミッション4を制御する。(1)後述するように、車両が走行している道路勾配を推定する。(2)道路勾配に応じて、アクセルペダル開度及び車速とトランスミッション4の変速段との関係が予め記憶されたシフトマップを参照して、推定道路勾配に応じたシフトマップを選択する。(3)選択したシフトマップをアクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θA、車速センサ98より検出された車速VCに対応する変速段を選択する。(4)選択した変速段に対応するシンクロクラッチ24,26に対するクラッチ油圧指令値を算出し、油圧制御装置72を通して、シンクロクラッチ24,26の係合を制御する。
【0057】
エアコンECU56及びエンジンECU60は、エアコン52を制御するために必要な情報をやり取りするための通信機能を有する。また、エンジンECU60及びAT−ECU70間は、AT−ECU70がトランスミッション4を制御するために必要な情報をやり取りするための通信機能を有する。
【0058】
油圧制御装置72は、AT−ECU70からのクラッチ油圧指令値に従って、ロックアップクラッチ8及びシンクロクラッチ24,26に作動油を供給する。メインシャフト回転数センサ94はメインシャフト10aの回転数NMを検出する。カウンタシャフト回転数センサ96は、カウンタシャフト10bの回転数NCを検出する。車速センサ98は車速VCを検出する。尚、車速は、カウンタシャフト回転数NCにより検出することが可能であることから、カウンタシャフト回転数センサ96で車速センサ98を代用することも可能である。センサ94,96,98のセンサ出力値はAT−ECU70に入力される。
【0059】
A/Cスイッチ100はエアコン52をON/OFFするスイッチであり、ON/OFF信号はエアコンECU56及びAT−ECU70に入力される。アクセルペダル開度センサ102はアクセルペダル開度θAを検出する。センサ102のセンサ出力値は、エンジンECU60及びAT−ECU70に入力される。
【0060】
図2はAT−ECU70の本発明の車両の制御装置に係る道路勾配推定装置150を示す機能ブロック図である。図2に示すように、道路勾配推定装置150は、エンジン出力トルク推定手段152と、エンジン出力トルク補正手段154と、入力軸トルク推定手段156と、入力軸トルク補正手段158と、ドライブシャフトトルク推定手段160と、駆動力推定手段162と、平地走行加速度推定手段164と、変速段選択手段166を含む。
【0061】
エンジン出力トルク推定手段152は、図3に示すように、フューエルカット判定手段200と、非フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段202と、フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204を有する。フューエルカット判定手段200は、エンジンECU60によりフューエルカット(F/C)されているか否かを判定する。
【0062】
非フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段202は、F/Cされていない場合には、エアーフローセンサ80からのシリンダ吸入空気量AFSとエンジン回転数センサ92からのエンジン回転数NEから、吸入空気量及びエンジン回転数とロスがないと仮定したエンジン出力トルクとの関係を記憶するマップを検索し、エンジン出力トルクTEGAIR0を推定する。
【0063】
エアーフローセンサ80からのシリンダ吸入空気量AFSを使用してトルク推定を行うのは、EGR、吸気温(TA)、大気圧(PA)、吸気弁のバルブタイミング(V/T)などの状態にかかわらず発生トルクを推定するためである。
【0064】
ロスがないとは、最大エンジン出力トルクが得られる点火時期や空燃比等のエンジンコントロール及びエンジン水温等のエンジン状態、且つACG40及びエアコン52によるフリクションがない状態で出力されるエンジン出力トルクをいう。
【0065】
フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204は、エンジン回転数NE及びスロットル開度θTHより、エンジン回転数及びスロットル開度と減速トルクTETHFCとの関係が記憶されたマップを検索して、減速トルクTETHFCをエンジン出力推定トルクTEGAIR1として推定する。
【0066】
図2中のエンジン出力トルク補正手段154は、エンジン出力推定トルクからトランスミッション4に伝達されない、エンジンコントロール、エンジン状態によるトルクダウン分、フリクションによるトルクダウン分及びエンジンイナーシャトルク分を補正する。
【0067】
図4に示すように、エンジン出力トルク補正手段154は、点火時期トルクダウン率算出手段250と、エンジン水温トルクダウン率算出手段252と、空燃比トルクダウン率算出手段254と、トルクダウン率乗算手段256と、エアコントルクダウン量算出手段258と、ACGトルクダウン量算出手段260と、トルクダウン量減算手段262と、カウンタシャフト回転数変化量算出手段264と、メインシャフト回転数変化量換算手段266と、エンジンイナーシャトルク推定手段268と、エンジンイナーシャトルク補正手段270を有する。
【0068】
点火時期トルクダウン率算出手段250は、エンジンECU60より出力される点火時期から、点火時期とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索し、点火時期に応じたトルクダウン率KTEIGを算出する。尚、トルクダウン率(以下に同じ)は、0〜1の範囲の値であり、最もトルクがダウンするとき、0、トルクダウンしないとき、1とする。
【0069】
エンジン水温トルクダウン率算出手段252は、エンジン水温センサ90より出力されるエンジン水温TWより、エンジン水温とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索して、エンジン水温TWに応じたトルクダウン率KTETWを算出する。
【0070】
空燃比トルクダウン率算出手段254は、エンジンECU60より出力される空燃比AFより、空燃比とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索して、空燃比A/Fに応じたトルクダウン率KTEAFを算出する。尚、空燃比が理論比のとき、トルクダウン率=1となる。
【0071】
トルクダウン率乗算手段256は、エンジン出力トルクTEGAIR0に、点火時期トルクダウン率KTEIG、エンジン水温トルクダウン率KTETW、空燃比トルクダウン率KTEAFを乗算し(TEGAIR1=TEGAIR0*KTEIG*KTETW*KTEAF)、エンジンコントロールやエンジン状態によるトルクダウン分を補正したエンジン出力トルクTEGAIR1を出力する。
【0072】
エアコントルクダウン量算出手段258は、エアコン52の使用によるトルクダウン量DTEHACを算出する。即ち、A/Cスイッチ100より出力されるON/OFF信号HACがエアコン52のOFFを示すとき、DTEHACに0を代入する。HACがエアコン52のONを示すとき、吐出圧センサ54より出力される吐出圧PDから、吐出圧とエアコントルクダウン量との関係を記憶したテーブルを検索して、吐出圧PDに応じたエアコントルクダウン量DTEHACを算出する。
【0073】
ACGトルクダウン量算出手段260は、ACG40より出力されるオルタネータ回転数NACGから、オルタネータ回転数とACG負荷によるトルクダウン量の関係を記憶するテーブルを検索して、オルタネータ回転数NACGに応じたトルクダウン量DTEACGを算出する。
【0074】
トルクダウン量減算手段262は、フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204より出力されるエンジン出力トルクTEGAIR1又はトルクダウン率乗算手段256より出力されるエンジン出力トルクTEGAIR1からエアコントルクダウン量DTEHAC及びACGトルクダウン量DTEACGを減算し(TEGAIR2=TEGAIR1−DTEHAC−DTEACG)、フリクションによるエンジン出力トルクを補正して、エンジン出力トルクTEGAIR2を出力する。
【0075】
カウンタシャフト回転数変化量算出手段264は、カウンタシャフト回転数センサ96より出力されるカウンタシャフト回転数NCより、単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCを算出する。
【0076】
メインシャフト回転数変化量換算手段266は、単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCにギアレシオ(メインシャフト10aのギア数に対するカウンタシャフト10bのギア数のギア比)を乗算し(DNM=DNC*ギアレシオ)、メインシャフト回転数変化量DNMに換算する。
【0077】
エンジンイナーシャトルク推定手段268は、メインシャフト回転数変化量DNMにエンジンイナーシャを乗算し(DTEI=DNM*エンジンイナーシャ)、エンジンイナーシャトルクDTEIを推定する。
【0078】
エンジン回転数NEは加速/減速の状態、L/C8のコントロールの状態によって、とても不安定な動きをするため、安定した回転であるカウンタシャフト回転数NCをギアレシオ倍して、メインシャフト10a上の回転数に置き換え、その値をエンジン回転数に見立てて、エンジン回転数変化を算出している。
【0079】
エンジンイナーシャトルク補正手段270は、補正後のエンジン出力トルクTEGAIR2よりイナーシャトルクDTEIを減算し(TTGAIR0=TEGAIR2−DTEI)、メインシャフト10aへの入力軸トルクTTGAIR0を出力する。
【0080】
図2中の入力軸トルク推定手段156は、図5に示すように、トルク増幅率算出手段300と、トルク増幅率乗算手段302を有する。
【0081】
トルク増幅率算出手段300は、エンジン回転数NEに対するメインシャフト回転数NMの比(NM/NE)で表されるトルコン滑り率ETRより、トルコン滑り率とトルク増幅率の関係を記憶したマップを検索し、トルコン滑り率ETRに対応するトルク増幅率KTRを算出する。
【0082】
トルク増幅率乗算手段302は、入力軸トルクTTGAIR0にトルク増幅率KTRを乗算し(TTGAIR1=TTGAIR0*KTR)、トルク増幅された入力軸トルクTTGAIR1を出力する。
【0083】
図2中の入力軸トルク補正手段158は、メインシャフト回転数NMから、メインシャフト回転数とフリクションロストルクの関係を記憶したテーブルを検索して、メインシャフト回転数NMに応じたカウンタシャフト10b側に入力トルクが伝達されずにロスするフリクションロストルクDTQLOSSを算出する。
【0084】
ドライブシャフトトルク推定手段160は、入力軸トルクTTGAIR1にギアレシオ(カウンタシャフト10bのギア数に対するメインシャフト10aのギア数のギア比*駆動側ファイナルギア30bのギア数に対する出力側ファイナルギア30aにギア数のギア比比))を乗算し、それにフリクションロストルクDTQLOSSを減算し(TDS=TTAIR1*ギアレシオ−DTQLOSS)、ドライブシャフト32のドライブシャフトトルクTDSを算出する。
【0085】
駆動力推定手段162は、図6に示すように、駆動力算出手段350と、転がり抵抗算出手段352と、空気抵抗算出手段354と、抵抗減算手段356を有する。駆動力算出手段350は、ドライブシャフトトルクTDSをタイヤ半径で除算し(TDS/タイヤ半径)、駆動力FCAR0を算出する。
【0086】
転がり抵抗算出手段352は、車重に平地走行での転がり抵抗係数を乗算し、転がり抵抗MYUROADを算出する。空気抵抗算出手段354は、車速センサ98より出力される車速VCより、車速と平地走行での空気抵抗の関係が記憶されたテーブルを検索し、車速VCに応じた空気抵抗MYUAEROを算出する。
【0087】
抵抗減算手段356は、駆動力FCAR0から転がり抵抗MYUROAD,空気抵抗MYUAEROを減算し(FCAR1=FCAR0−MYUROAD−MYUAERO)、駆動力FCAR0に対して抵抗補正を行い、補正後駆動力FCAR1を出力する。
【0088】
平地走行加速度推定手段164は、補正後駆動力FCAR1を車重で除算し(DTVTRQ=FCAR1/車重)、平地走行での平地走行推定加速度DTVTRQを推定する。
【0089】
平地走行推定加速度DTVTRQは、(1)エアーフローセンサ80及びエンジン回転数NEより推定された最大のエンジン出力推定トルクが算出されていること、(2)エンジン出力推定トルクより点火時期、空燃比等のエンジンコントロール、エンジン水温等のエンジン状態によるトルクダウン補正、エアコン54やACG40等のフリクションによるトルクダウン補正、イナーシャトルク補正及びトルク増幅補正された入力軸トルクを算出していること、(3)入力軸トルクからフリクションロストルク補正したドライブシャフトトルクより抵抗補正をして車両加速度を算出していることから、平地走行における精度の良いものである。
【0090】
変速段選択手段166は、図7に示すように、実加速度算出手段400と、加速度差分算出手段402と、シフトマップ選択手段404を有する。実加速度算出手段400は、車速センサ98より検出された車速VCより単位時間当たりの車速変化量である実加速度DTVを算出する。
【0091】
加速度差分算出手段402は、平地走行推定加速度DTVTRQから実加速度DTVを減算し(PNOPKU=DTVTRQ−DTV)、車両が走行している道路勾配を示す勾配推定値PNOPKUを出力する。例えば、登坂路では、PNOPKUが正、降坂路では、PNOPKUが負、平地走行では、PNOPKUが0付近となる。また、勾配が大きいほど、PNOPKUの絶対値が大きくなる。
【0092】
変速段選択手段404は、PNOPKUから、勾配に応じて車速及びアクセルペダル開度と変速段の関係を記憶する複数のシフトマップからPNOPKUに該当するシフトマップを選択し、車速センサ98により検出された車速VC、アクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θAより、選択したシフトマップを検索し、勾配推定値PNOPKU、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。そして、決定された変速段に基づいて変速制御が行われる。エンジン出力トルク推定手段152〜変速段選択手段166は、一定周期、例えば、0.01秒毎に実行される。
【0093】
図8〜図12は、道路勾配推定方法の一例を示すフローチャートである。以下、図8〜図12を参照して、道路勾配推定方法の説明をする。図8中のステップS2で、図9に示すエアーフローセンサ80のセンサ出力値AFSからエンジン出力トルクを推定する。図9中のステップS10で、フューエルカット(F/C)中であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS22に進み、否定判定ならば、ステップS12に進む。ステップS12で、エアーフローセンサ80の出力値AFSとエンジン回転数NEから、図9に示すように、エンジン回転数及びシリンダ吸入空気量と最大に出力されるエンジン出力トルクの関係を予め記憶したマップを検索し、エアーフローセンサ出力値AFSとエンジン回転数NEに応じたエンジン出力トルクTEGAIR0を算出する。
【0094】
ステップS14で、エンジンECU60より出力される点火時期より、図9に示すように、点火時期とトルクダウン率KTEIGの関係を示すテーブルを検索し、点火時期に応じたトルクダウン率KTEIGを算出する。ステップS16で、エンジン水温センサ90より出力されるエンジン水温TWより、図9に示すように、エンジン水温とトルクダウン率KTETWの関係を示すテーブルを検索し、エンジン水温TWに応じたトルクダウン率KTETWを算出する。
【0095】
ステップS18で、エンジンECU60より出力される空燃比AFより、空燃比とトルクダウン率KTEAFの関係を示すテーブルを検索し、図9に示すように、空燃比AFに応じたトルクダウン率KTEAFを算出する。ステップS20で、TEGAIR1にTEGAIR0*KTEIG*KTETW*KTEAFを代入し、ステップS26に進む。
【0096】
一方、ステップS10で肯定判定であれば、ステップS22に進み、エンジン回転数NEとスロットル開度θTHから、図9に示すように、エンジン回転数及びスロットル開度と減速トルクTEHHFCの関係を示すマップを検索し、エンジン回転数NEとスロットル開度θTHに応じた減速トルクTETHFCを算出し、ステップS24に進む。ステップS24で、TEGAIR1にTETHFCを代入し、ステップS26に進む。
【0097】
ステップS26で、A/Cスイッチ100がONであるか否かを判定し、否定判定であれば、ステップS28に進み、肯定判定であれば、ステップS30に進む。ステップS28で、エアコン52がOFFなので、トルクダウン量DTEHECに0を代入し、ステップS32に進む。一方、ステップS26で肯定判定ならば、ステップS30でエアコン52の吐出圧センサ54より検出されたエアコン吐出圧PDから、図9に示すように、エアコン吐出圧とトルクダウン量DTEHACの関係を示すテーブルを検索し、エアコン吐出圧PDに対応するトルクダウン量DTEHACを算出し、ステップS32に進む。
【0098】
ステップS32でACG40のオルタネータ回転数NACGから、図9に示すように、オルタネータ回転数とトルクダウン量DTEACGの関係を示すテーブルを検索し、オルタネータ回転数NACGに応じたトルクダウン量DTEACGを算出し、ステップS34に進む。ステップS34でTEGAIR1から(DTEHAC+DTEACG)を減算し(TEGAIR1−DTEHAC−DTEACG)、TEGAIR2に代入し、図8中のステップS4に戻る。
【0099】
ステップS4で図10に示すイナーシャトルク補正およびトルクコンバータ6によるトルク増幅補正を行う。図10中のステップS50で、カウンタシャフト回転数NCより単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCを算出する。ステップS52で、DNC*ギアレシオ(メインシャフト10aのギア数に対するカウンタシャフト10bのギア数の比)を算出し、DNMに代入し、メインシャフト10aの回転数変化量に換算する。ステップS54でDNM*エンジンイナーシャを算出し、エンジンイナーシャトルクDTEIに代入し、エンジンイナーシャトルクを推定する。
【0100】
ステップS56でTEGAIR2からDTEIを減算し(TEGAIR2−DTEI)、入力軸トルクTTGAIR0に代入し、トランスミッション4に伝達されるエンジン出力トルクを推定する。ステップS58で、エンジン回転数NEに対するメインシャフト回転数NMの比であるトルクコンバータ6のトルコンスリップ率ETRを求め、トルコンスリップ率ETRから、図10に示すように、トルコン滑り率とトルク増幅率KTRの関係を示すテーブルを検索し、トルコンスリップ率ETRに応じたトルク増幅率KTRを算出する。ステップS60で、TTGAIR0にKTRを乗算し(TTGAIR0*KTR)、入力軸トルクTTGAIR1に代入し、図8中のステップS6に戻る。
【0101】
図8中のステップS6で図11に示す車両加速度を算出する。図11中のステップS100で、メインシャフト回転数NMから、図11に示すように、メインシャフト回転数とフリクションロストルクDTQLOSSの関係を示すテーブルを検索し、メインシャフト回転数NMに応じたフリクションロストルクDTQLOSSを算出する。ステップS102で、TTGAIR1にギアレシオ(カウンタシャフト10bのギア数に対するメインシャフト10aのギア数のギア比*駆動側ファイナルギア30bのギア数に対する出力側ファイナルギア30aにギア数のギア比)を乗算し(TTGAIR1*ギアレシオ)、フリクションロストルクDTQLOSSを減算し(TTGAIR1*ギアレシオ−DTQLOSS)、ドライブシャフトトルクTDSに代入する。
【0102】
ステップS104でドライブシャフトトルクTDSをタイヤ半径で除算し(TDS/タイヤ半径)、FCAR0に代入し、駆動力を算出する。ステップS106で車重に平地での転がり抵抗係数を乗算し(車重*転がり抵抗係数)、MYUROADに代入し、平地での転がり抵抗を算出する。ステップS108で、車速センサ98より検出された車速VCから、図11に示すように、車速と空気抵抗の関係を示すテーブルを検索し、平地での車速VCに応じた空気抵抗MYUAEROを算出する。
【0103】
ステップS110で駆動力FCAR0から転がり抵抗MYURAOD及び空気抵抗MYUAEROを減算し(FCAR0−MYUROAD−MYUAERO)、FCAR1に代入する。ステップS112でFCAR1を車重で除算し(FCAR1/車重)、平地での車両重力加速度DTVTRQに代入して、図8中のステップS8に戻る。
【0104】
図8中のステップS8で図12に示す勾配推定および勾配推定に基づき最適なシフトマップを選択する。図12中のステップS150で車速センサ98より検出された車速VCより単位時間当たりの車速変化量である実加速度DTVを算出する。ステップS152で平地走行推定加速度DTVRRQから実加速度DTVを減算し(DTVTRQ−DTV)、勾配推定値PNOPKUに代入する。ステップS154でPNOPKU>登り判定値であるか否かを判定し、肯定判定ならば、ステップS158に進み、否定判定ならば、ステップS156に進む。ステップS158で、図12に示すように、登りの度合いに応じて用意された複数の登りシフトマップの中からPNOPKUに応じた登りシフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、登りシフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。
【0105】
一方、ステップS156でPNOPKU<降り判定値であるか否かを判定し、肯定判定ならば、ステップS160に進み、否定判定ならば、ステップS162に進む。ステップS160で、図12に示すように、降りの度合いに応じて用意された複数の降りシフトマップの中からPNOPKUに応じた降りシフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、降りシフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。ステップS162で、図12に示すように、平地シフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、平地シフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。図8中のステップS2〜S8は、一定周期、例えば、0.01秒ごとに実行される。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力側による変動と出力(勾配)による変動が区分けできるので、精度良く、道路勾配が推定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施形態による車両の概略構成図である。
【図2】本発明に係る道路勾配推定装置のブロック図である。
【図3】図2中のエンジン出力トルク推定手段の機能ブロック図である。
【図4】図2中のエンジン出力トルク補正手段の機能ブロック図である。
【図5】図2中の入力軸トルク推定手段の機能ブロック図である。
【図6】図2中の駆動力推定手段の機能ブロック図である。
【図7】変速段選択手段の機能ブロック図である。
【図8】本発明に係る道路勾配推定方法のフローチャートある。
【図9】図8中のエアーフローセンサ値からエンジン出力トルクを推定するフローチャートである。
【図10】図8中のイナーシャトルク補正およびトルクコンバータによるトルク増幅補正を示すフローチャートである。
【図11】図8中の車両加速度算出のフローチャートである。
【図12】図8中の勾配推定および勾配推定に基づき最適なシフトマップ選択するフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
152 エンジン出力トルク推定手段
154 エンジン出力トルク補正手段
156 入力軸トルク推定手段
158 入力軸トルク補正手段
160 ドライブシャフトトルク推定手段
162 駆動力推定手段
164 平地走行加速度推定手段
166 変速段選択手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関し、特に、車両が走行する道路勾配を推定し、推定した道路勾配、車速及びアクセルペダル開度に基づいて自動変速機(トランスミッション)の変速段を決定するようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
車両はアクセルペダル開度と車速に応じてトランスミッションの最適な変速比を選択し、変速比を制御することにより快適な走行性を実現している。ところで、平地走行、登坂路走行、降坂路走行の場合では、アクセルペダル開度や車速が同じでも、最適な変速段が異なることから、道路勾配に応じた変速段を選択する必要がある。
【0003】
従来、道路勾配に応じて変速比を制御する技術として、特許文献1があった。特許文献1には、車両が走行する地の高度を示す高度パラメータを検出し、検出された高度パラメータに基づいて実加速度及び予想加速度の少なくともいずれかを補正し、車両が走行する地の高度が増加するにつれて登坂路走行用の変速特性の選択を早めるように構成することが記載されている。
【特許文献1】特許第2959937号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エンジン出力トルクは、エンジンの点火時期、EGR(Exhaust Gas Recirculation)により吸入系に還流された排気ガスによるエアー量、吸気弁のバルブタイミング(V/T)、空燃比等のエンジンコントロール、エンジン水温等のエンジン状態、エアコンのON/OFF、ライト、カーステレオ等による発電機(ACG)への電気負荷により、トランスミッションに入力されるトルクは、刻々変化しているため平地走行での車両加速度は一意的には定まらない。
【0005】
上記特許文献1では、上記エンジンコントロール、エンジン状態、エアコンのON/OFF、電気負荷によるエンジン出力トルクの変動は考慮されていないことから、車両が走行する地の高度による実加速度又は予想加速度の補正のみでは、補正後の加速度に誤差が生じる。そのため、誤差のある補正後の加速度に基づく変速制御が必ずしも最適なものとはならないという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、精度良く道路勾配を推定し、道路勾配に応じた最適な変速制御を行う車両の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明によると、エンジンと、前記エンジンのクランク軸より出力されるエンジン出力トルクに基づきメインシャフトに伝達された入力軸トルクをカウンタシャフトを介して、車輪が接続されるドライブシャフトに駆動トルクを伝達する自動変速機とを有する車両の制御装置であって、前記エンジンへの燃料が供給されているとき、前記エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク推定手段と、前記第1のエンジン出力推定トルクから前記自動変速機に伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、前記第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、前記メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク推定手段と、前記入力軸推定トルクに基づいて、前記ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、前記ドライブシャフト推定トルクに基づいて、前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、前記駆動力に基づいて、前記車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、前記車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、前記平地走行推定加速度及び前記実加速度、並びに前記車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、前記自動変速機の変速段を選択する変速段選択手段とを備えたことを特徴とする車両の制御装置が提供される。
【0008】
請求項1記載の車両の制御装置によると、エンジン出力トルク推定手段によりエンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出する。この第1のエンジン出力推定トルクには、EGRやV/Tによる影響を受けない。エンジン出力トルク補正手段により、第1のエンジン出力推定トルクより自動変速機に伝達されないトルク分を補正して、第2のエンジン出力推定トルクを算出する。これにより、第2のエンジン推定トルクは推定精度が良い。この第2のエンジン推定トルクに基づいて、精度の良い平地走行推定加速度を算出する。平地走行推定加速度と実加速度の差は走行道路の勾配を示すものであり、勾配が精度良く推定される。
【0009】
請求項2記載の発明によると、前記エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づいて、減速トルクを推定し、該減速トルクを前記第1のエンジン出力推定トルクとする。
【0010】
請求項2記載の車両の制御装置によると、請求項1記載の車両の制御装置において、エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づく減速トルクを第1のエンジン出力推定トルクとする。
【0011】
請求項3記載の発明によると、請求項1〜2のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する。
【0012】
請求項3記載の車両の制御装置によれば、第2のエンジン推定トルクはエンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン分が補正されている。
【0013】
請求項4記載の発明によると、請求項1〜3のいずれか記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンのエンジン水温によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する。
【0014】
請求項4記載の車両の制御装置によれば、第2のエンジン推定トルクはエンジンのエンジン水温によるトルクダウン分が補正されている。
【0015】
請求項5記載の発明によると、請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、ACG及びエアコンに消費されるトルク分を補正する。
【0016】
請求項5記載の車両の制御装置によると、第2のエンジン推定トルクはACG及びエアコンに消費されるトルク分が補正されている。
【0017】
請求項6記載の発明によると、請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記エンジン出力トルク補正手段は、前記クランク軸の回転変化によるエンジンイナーシャトルク分を前記第1のエンジン出力推定トルクから減算して補正する。
【0018】
請求項6記載の車両の制御装置によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンイナーシャトルク分が補正されている。
【0019】
請求項7記載の発明によると、請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記入力軸推定トルクの中で前記ドライブシャフトに伝達されないフリクショントルク分を補正して、第2の入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク補正手段を更に備え、前記ドライブシャフトトルク算出手段は、前記第2の入力軸推定トルクに基づいて前記ドライブシャフト推定トルクを算出する。
【0020】
請求項7記載の車両の制御装置によると、第2の入力軸推定トルクはフリクショントルク分が補正されている。
【0021】
請求項8記載の発明によると、請求項1〜7のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での転がり抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出する。
【0022】
請求項8記載の車両の制御装置によると、平地走行加速度は車両の転がり抵抗分が補正されている。
【0023】
請求項9記載の発明によると、請求項1〜8のいずれかに記載の車両の制御装置において、前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での車速に応じた空気抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出する。
【0024】
請求項9記載の車両の制御装置によると、平地走行加速度は車両の車速に応じた空気抵抗分が補正されている。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によると、エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを推定するので、第1のエンジン出力推定トルクはEGRやV/Tによる影響を受けない。更に、第1のエンジン出力推定トルクよりメインシャフトに伝達されないトルク分を補正して、第2のエンジン出力推定トルクを算出するので、第2のエンジン出力推定トルクは精度が向上する。第2のエンジン出力推定トルクより推定される平地走行推定加速度と実加速度の差は走行道路の勾配を示すものであり、道路勾配が精度良く推定され、車両の走行性が向上する。
【0026】
請求項2記載の発明によると、フューエルカットされている場合にも、道路勾配が精度良く推定できる。
【0027】
請求項3記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0028】
請求項4記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンのエンジン水温によるトルクダウン分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0029】
請求項5記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはACG及びエアコンに消費されるトルク分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0030】
請求項6記載の発明によると、第2のエンジン出力推定トルクはエンジンイナーシャトルク分が補正されているので、エンジン出力推定トルクの推定精度が向上する。
【0031】
請求項7記載の発明によると、第2の入力軸推定トルクはフリクショントルク分が補正されているので、ドライブシャフト推定トルクの推定精度が向上する。
【0032】
請求項8記載の発明によると、平地走行推定加速度は車両の転がり抵抗分が補正されているので、平地走行推定加速度の推定精度が向上する。
【0033】
請求項9記載の発明によると、平地走行推定加速度は車両の車速に応じた空気抵抗分が補正されているので、平地走行推定加速度の推定精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
図1は、本発明の実施形態による車両の概略構成図である。図1に示すように、車両は、エンジン2と、トランスミッション4と、ACG40と、動力伝達機構50と、車両用空調装置(エアコン)52と、吐出圧センサ54と、エアコンECU56と、エンジンECU60と、AT−ECU70と、油圧制御装置72と、エアーフローセンサ80と、スロットル弁82と、吸気管84と、スロットル開度センサ86と、燃料噴射弁88と、エンジン水温検出センサ90と、エンジン回転数検出センサ92と、メインシャフト(入力軸)回転数検出センサ94と、カウンタシャフト回転数センサ96と、車速センサ98と、A/Cスイッチ100と、アクセルペダル開度センサ102を主に含む。
【0035】
エンジン2の吸気管84には、図示しないエアクリーナの下流に吸入空気量を計測するエアーフローセンサ80が設けられている。この吸入空気量には、EGRにより還流された排気ガスも含まれる。更に、エアーフローセンサ80の下流にスロットル弁82が配置されている。スロットル弁82にはスロットル弁開度センサ86が連結されており、スロットル弁82の開度に応じて電気信号を出力する。
【0036】
燃料噴射弁88はエンジン2とスロットル弁82のとの間且つ吸気管84の図示しない吸気弁の少し上流側に気筒毎に設けられており、各噴射弁は図示しない燃料ポンプに接続されていると共にエンジンECU60に電気的に接続されてエンジンECU60からの信号により燃料噴射時間が制御される。
【0037】
エンジン2の本体に装着されたエンジン水温センサ90は、サーミスタ等からなり、エンジン水温(冷却水温)TWを検出して対応する温度信号を出力する。エンジン回転数センサ92はクランク軸2aの回転数NEを検出して対応する電気信号を出力する。センサ80,86,90,92のセンサ出力値はエンジンECU60及びAT−ECU70に入力される。
【0038】
エンジン2のクランク軸2aがトランスミッション4に連結されている。トランスミッション4に設けられたトルクコンバータ6は、流体を介してトルクの伝達を行うものであり、クランク軸2aに連結されたフロントカバー6aと一体のポンプインペラ6bと、フロントカバー6aとポンプインペラ6bとの間でポンプインペラ6bに対向配置されたタービンランナ6cと、ステータ6dとを有する。
【0039】
タービンランナ6cとフロントカバー6aとの間には、AT−ECU70の指令に基づく油圧制御装置72による制御により、フロントカバー6aの内面に向かって押圧されることによりフロントカバー6aに係合し、押圧が解除されることにより係合が解除されるロックアップクラッチ8が設けられている。フロントカバー6a及びポンプインペラ6bにより形成される容器内に作動油(ATF:Automatic Transmission Fluid)が封入されている。
【0040】
AT−ECU70からの指令に基づきロックアップクラッチ8の係合が解除された状態では、ポンプインペラ6b及びタービンランナ6cの相対回転を許容する。この状態でクランク軸2aのトルクがフロントカバー6aを介してポンプインペラ6bに伝達されると、容器を満たしている作動油は、ポンプインペラ6bの回転により、ポンプインペラ6b→タービンランナ6c→ステータ6dと循環しながらポンプインペラ6bの回転トルクをタービンランナ6cに伝達し、メインシャフト10aを駆動する。
【0041】
また、AT−ECU70からの指令に基づきロックアップクラッチ8が係合された状態では、フロントカバー6aからタービンランナ6cへと作動油を介さずに直接回転し駆動力がメインシャフト10aに伝達される。
【0042】
トランスミッション4は、更に、AT−ECU70からの指令に基づく油圧制御装置72による油圧の制御により、複数のシンクロクラッチが駆動されることにより変速動作が制御されるものであり、メインシャフト10a、メインシャフト10aに平行に配設されたカウンタシャフト10b及び互いに異なるギア比に設定されている複数のメインシャフト10a側とカウンタシャフト10b側に設けられたギア対、例えば、前進1〜5速ギア対及び後進ギア対を有する。
【0043】
複数のギア対はメインシャフト10aに取り付けられた各入力側ギアとカウンタシャフト10bに取り付けられた各出力側ギアとから成り、対をなす各ギア同士は常に噛み合っている。
【0044】
各入力側ギア又は各出力側ギアの何れか一方は、メインシャフト10a又はカウンタシャフト10bに対して相対回転自在とされ、各シンクロクラッチによって、メインシャフト10a又はカウンタシャフト10bに接続又は分離される。
【0045】
例えば、図1では、複数のギア対のうち、前進ギア対の高速段(例えば、4速)と低速段(例えば、1速)の2個のギア対を一例として記載している。高速側ギア対の高速出力側ギア20b及び低速側ギア対の低速出力側ギア対22bはカウンタシャフト10bに対して一体に設けられている。
【0046】
高速側ギア対の高速入力側ギア20a及び低速側ギア対の低速入力側ギア対22aはメインシャフト10aに対して回転可能のアイドルギアとされ、各シンクロクラッチ24,26によってメインシャフト10aに対して接続または分離される。
【0047】
各シンクロクラッチ24,26は、例えば、図1に示すように、湿式多板クラッチ等により構成され、メインシャフト10aと一体に回転可能に配置された各アウタクラッチ板24a,26aと、アウタクラッチ板24a,26aと交互に重ね合わすように配置されてアウタクラッチ板24b,26bに当接可能とされ、メインシャフト10aに対してアイドルギアとされる入力側ギア20a,22aと一体的に回転可能に配置されたインナークラッチ板24b,26bと、AT−ECU70により制御される図示しない油圧アクチュエータとを有する。
【0048】
各油圧アクチュエータは、摺動可能に配置されてピストン室を形成するピストンを有し、ピストン室に供給される作動油の油圧に応じてスラスト力を発生させ、各アウタクラッチ板24a,26aと各インナークラッチ板24b,26bとを相互に係合させることによって、トランスミッション4のカウンタシャフト10bと各入力側ギア20a,22aの何れかと一体に締結する。ピストン室内に供給される作動油の油圧は、AT−ECU70によるクラッチ油圧指令値に基づいて制御され、各シンクロクラッチ24,26の係合状態が調整可能とされる。
【0049】
トランスミッション4のカウンタシャフト10bと一体に設けられた出力側ファイナルギア30aと、駆動輪Wに接続されたドライブシャフト32と一体に設けられた駆動側ファイナルギア30bとはファイナルギア対をなし、常に噛み合っている。
【0050】
発電機(ACG)40は、エンジン2からのエンジン出力トルクによるオルタネータの回転により発電し、図示しないライト、カーステレオ等の電気負荷に電力を供給する低圧バッテリを充電する。また、ACG40は発電によるエンジン2のエンジン出力トルクの消費量を示す信号、例えば、オルタネータ回転数NACGに応じた信号を出力する。
【0051】
動力伝達機構50は、エンジン2のエンジントルクをエアコン52が有する図示しない駆動軸に伝達するものである。エアコン52は、図示しない圧縮機と冷媒循環回路とを有し、冷媒循環回路より圧縮機に導入された冷媒ガスを吸入室に吸入し、動力伝達機構50を通して圧縮機に伝達されたトルクを用いた圧縮機に設けられたシリンダの往復運動により吸入した冷媒ガスを圧縮して、高圧ガスを吐出室を通して冷媒循環回路に吐出し、冷媒循環回路により冷媒の温度及び圧力に基づいて弁開度を自律的にフィードバック制御し、冷房負荷に見合った冷媒流量を調節する。
【0052】
エアコン52に設けられたセンサ54は、エアコン52が消費しているエンジントルク量を示す電気信号を出力する。消費エンジントルクは動力伝達機構50より伝達されるトルクであり、例えば、エアコン52の吐出圧PDにより消費エンジントルク量が推定可能であることから、センサ54は吐出圧PDを検出する吐出圧センサにより構成する。
【0053】
エアコンECU56は、A/Cスイッチ100のON/OFF状況、温度設定、室内の検出温度に基づいて、圧縮機の必要吐出ガス流量及びそれに対応する圧縮機の目標負荷トルクを算出し、圧縮機の実負荷トルクが目標負荷トルクとなるように、エアコン52をフィードバック制御することにより、室内の温度が設定温度となるようエアコン52を制御する。
【0054】
エンジンECU60は、次のようにしてエンジン2を制御する。(1)目標エンジントルクを算出する。目標エンジントルクは、例えば、エンジン回転数NE及びアクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θAより、マップを検索して、目標エンジン出力トルクを算出する。(2)算出した目標出力トルクに応じて目標スロットル開度を決定し、目標スロットル開度となるようスロットル弁82の開度を調節する。(3)エンジン2の下流側に設けられる図示しない触媒コンバータの浄化率の向上するように空燃比(A/F)を算出する。(4)スロットル弁82の直ぐ下流に設けられる図示しない吸入空気圧センサからの吸入空気圧及び算出された空燃比に基づいて、目標燃料噴射量及び点火時期を算出して、目標燃料噴射量及び点火時期に応じて、燃料噴射弁88を制御する。(5)減速時のエンジントルクを必要としない所定の場合には、燃料噴射弁8を制御して、燃料供給をカット(フューエルカット)する。
【0055】
尚、エンジンECU60へのセンサ86,90,92等からの入力ラインは図1では省略されている。
【0056】
AT−ECU70は、次のようにしてトランスミッション4を制御する。(1)後述するように、車両が走行している道路勾配を推定する。(2)道路勾配に応じて、アクセルペダル開度及び車速とトランスミッション4の変速段との関係が予め記憶されたシフトマップを参照して、推定道路勾配に応じたシフトマップを選択する。(3)選択したシフトマップをアクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θA、車速センサ98より検出された車速VCに対応する変速段を選択する。(4)選択した変速段に対応するシンクロクラッチ24,26に対するクラッチ油圧指令値を算出し、油圧制御装置72を通して、シンクロクラッチ24,26の係合を制御する。
【0057】
エアコンECU56及びエンジンECU60は、エアコン52を制御するために必要な情報をやり取りするための通信機能を有する。また、エンジンECU60及びAT−ECU70間は、AT−ECU70がトランスミッション4を制御するために必要な情報をやり取りするための通信機能を有する。
【0058】
油圧制御装置72は、AT−ECU70からのクラッチ油圧指令値に従って、ロックアップクラッチ8及びシンクロクラッチ24,26に作動油を供給する。メインシャフト回転数センサ94はメインシャフト10aの回転数NMを検出する。カウンタシャフト回転数センサ96は、カウンタシャフト10bの回転数NCを検出する。車速センサ98は車速VCを検出する。尚、車速は、カウンタシャフト回転数NCにより検出することが可能であることから、カウンタシャフト回転数センサ96で車速センサ98を代用することも可能である。センサ94,96,98のセンサ出力値はAT−ECU70に入力される。
【0059】
A/Cスイッチ100はエアコン52をON/OFFするスイッチであり、ON/OFF信号はエアコンECU56及びAT−ECU70に入力される。アクセルペダル開度センサ102はアクセルペダル開度θAを検出する。センサ102のセンサ出力値は、エンジンECU60及びAT−ECU70に入力される。
【0060】
図2はAT−ECU70の本発明の車両の制御装置に係る道路勾配推定装置150を示す機能ブロック図である。図2に示すように、道路勾配推定装置150は、エンジン出力トルク推定手段152と、エンジン出力トルク補正手段154と、入力軸トルク推定手段156と、入力軸トルク補正手段158と、ドライブシャフトトルク推定手段160と、駆動力推定手段162と、平地走行加速度推定手段164と、変速段選択手段166を含む。
【0061】
エンジン出力トルク推定手段152は、図3に示すように、フューエルカット判定手段200と、非フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段202と、フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204を有する。フューエルカット判定手段200は、エンジンECU60によりフューエルカット(F/C)されているか否かを判定する。
【0062】
非フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段202は、F/Cされていない場合には、エアーフローセンサ80からのシリンダ吸入空気量AFSとエンジン回転数センサ92からのエンジン回転数NEから、吸入空気量及びエンジン回転数とロスがないと仮定したエンジン出力トルクとの関係を記憶するマップを検索し、エンジン出力トルクTEGAIR0を推定する。
【0063】
エアーフローセンサ80からのシリンダ吸入空気量AFSを使用してトルク推定を行うのは、EGR、吸気温(TA)、大気圧(PA)、吸気弁のバルブタイミング(V/T)などの状態にかかわらず発生トルクを推定するためである。
【0064】
ロスがないとは、最大エンジン出力トルクが得られる点火時期や空燃比等のエンジンコントロール及びエンジン水温等のエンジン状態、且つACG40及びエアコン52によるフリクションがない状態で出力されるエンジン出力トルクをいう。
【0065】
フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204は、エンジン回転数NE及びスロットル開度θTHより、エンジン回転数及びスロットル開度と減速トルクTETHFCとの関係が記憶されたマップを検索して、減速トルクTETHFCをエンジン出力推定トルクTEGAIR1として推定する。
【0066】
図2中のエンジン出力トルク補正手段154は、エンジン出力推定トルクからトランスミッション4に伝達されない、エンジンコントロール、エンジン状態によるトルクダウン分、フリクションによるトルクダウン分及びエンジンイナーシャトルク分を補正する。
【0067】
図4に示すように、エンジン出力トルク補正手段154は、点火時期トルクダウン率算出手段250と、エンジン水温トルクダウン率算出手段252と、空燃比トルクダウン率算出手段254と、トルクダウン率乗算手段256と、エアコントルクダウン量算出手段258と、ACGトルクダウン量算出手段260と、トルクダウン量減算手段262と、カウンタシャフト回転数変化量算出手段264と、メインシャフト回転数変化量換算手段266と、エンジンイナーシャトルク推定手段268と、エンジンイナーシャトルク補正手段270を有する。
【0068】
点火時期トルクダウン率算出手段250は、エンジンECU60より出力される点火時期から、点火時期とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索し、点火時期に応じたトルクダウン率KTEIGを算出する。尚、トルクダウン率(以下に同じ)は、0〜1の範囲の値であり、最もトルクがダウンするとき、0、トルクダウンしないとき、1とする。
【0069】
エンジン水温トルクダウン率算出手段252は、エンジン水温センサ90より出力されるエンジン水温TWより、エンジン水温とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索して、エンジン水温TWに応じたトルクダウン率KTETWを算出する。
【0070】
空燃比トルクダウン率算出手段254は、エンジンECU60より出力される空燃比AFより、空燃比とトルクダウン率の関係を記憶するテーブルを検索して、空燃比A/Fに応じたトルクダウン率KTEAFを算出する。尚、空燃比が理論比のとき、トルクダウン率=1となる。
【0071】
トルクダウン率乗算手段256は、エンジン出力トルクTEGAIR0に、点火時期トルクダウン率KTEIG、エンジン水温トルクダウン率KTETW、空燃比トルクダウン率KTEAFを乗算し(TEGAIR1=TEGAIR0*KTEIG*KTETW*KTEAF)、エンジンコントロールやエンジン状態によるトルクダウン分を補正したエンジン出力トルクTEGAIR1を出力する。
【0072】
エアコントルクダウン量算出手段258は、エアコン52の使用によるトルクダウン量DTEHACを算出する。即ち、A/Cスイッチ100より出力されるON/OFF信号HACがエアコン52のOFFを示すとき、DTEHACに0を代入する。HACがエアコン52のONを示すとき、吐出圧センサ54より出力される吐出圧PDから、吐出圧とエアコントルクダウン量との関係を記憶したテーブルを検索して、吐出圧PDに応じたエアコントルクダウン量DTEHACを算出する。
【0073】
ACGトルクダウン量算出手段260は、ACG40より出力されるオルタネータ回転数NACGから、オルタネータ回転数とACG負荷によるトルクダウン量の関係を記憶するテーブルを検索して、オルタネータ回転数NACGに応じたトルクダウン量DTEACGを算出する。
【0074】
トルクダウン量減算手段262は、フューエルカット時エンジン出力トルク推定手段204より出力されるエンジン出力トルクTEGAIR1又はトルクダウン率乗算手段256より出力されるエンジン出力トルクTEGAIR1からエアコントルクダウン量DTEHAC及びACGトルクダウン量DTEACGを減算し(TEGAIR2=TEGAIR1−DTEHAC−DTEACG)、フリクションによるエンジン出力トルクを補正して、エンジン出力トルクTEGAIR2を出力する。
【0075】
カウンタシャフト回転数変化量算出手段264は、カウンタシャフト回転数センサ96より出力されるカウンタシャフト回転数NCより、単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCを算出する。
【0076】
メインシャフト回転数変化量換算手段266は、単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCにギアレシオ(メインシャフト10aのギア数に対するカウンタシャフト10bのギア数のギア比)を乗算し(DNM=DNC*ギアレシオ)、メインシャフト回転数変化量DNMに換算する。
【0077】
エンジンイナーシャトルク推定手段268は、メインシャフト回転数変化量DNMにエンジンイナーシャを乗算し(DTEI=DNM*エンジンイナーシャ)、エンジンイナーシャトルクDTEIを推定する。
【0078】
エンジン回転数NEは加速/減速の状態、L/C8のコントロールの状態によって、とても不安定な動きをするため、安定した回転であるカウンタシャフト回転数NCをギアレシオ倍して、メインシャフト10a上の回転数に置き換え、その値をエンジン回転数に見立てて、エンジン回転数変化を算出している。
【0079】
エンジンイナーシャトルク補正手段270は、補正後のエンジン出力トルクTEGAIR2よりイナーシャトルクDTEIを減算し(TTGAIR0=TEGAIR2−DTEI)、メインシャフト10aへの入力軸トルクTTGAIR0を出力する。
【0080】
図2中の入力軸トルク推定手段156は、図5に示すように、トルク増幅率算出手段300と、トルク増幅率乗算手段302を有する。
【0081】
トルク増幅率算出手段300は、エンジン回転数NEに対するメインシャフト回転数NMの比(NM/NE)で表されるトルコン滑り率ETRより、トルコン滑り率とトルク増幅率の関係を記憶したマップを検索し、トルコン滑り率ETRに対応するトルク増幅率KTRを算出する。
【0082】
トルク増幅率乗算手段302は、入力軸トルクTTGAIR0にトルク増幅率KTRを乗算し(TTGAIR1=TTGAIR0*KTR)、トルク増幅された入力軸トルクTTGAIR1を出力する。
【0083】
図2中の入力軸トルク補正手段158は、メインシャフト回転数NMから、メインシャフト回転数とフリクションロストルクの関係を記憶したテーブルを検索して、メインシャフト回転数NMに応じたカウンタシャフト10b側に入力トルクが伝達されずにロスするフリクションロストルクDTQLOSSを算出する。
【0084】
ドライブシャフトトルク推定手段160は、入力軸トルクTTGAIR1にギアレシオ(カウンタシャフト10bのギア数に対するメインシャフト10aのギア数のギア比*駆動側ファイナルギア30bのギア数に対する出力側ファイナルギア30aにギア数のギア比比))を乗算し、それにフリクションロストルクDTQLOSSを減算し(TDS=TTAIR1*ギアレシオ−DTQLOSS)、ドライブシャフト32のドライブシャフトトルクTDSを算出する。
【0085】
駆動力推定手段162は、図6に示すように、駆動力算出手段350と、転がり抵抗算出手段352と、空気抵抗算出手段354と、抵抗減算手段356を有する。駆動力算出手段350は、ドライブシャフトトルクTDSをタイヤ半径で除算し(TDS/タイヤ半径)、駆動力FCAR0を算出する。
【0086】
転がり抵抗算出手段352は、車重に平地走行での転がり抵抗係数を乗算し、転がり抵抗MYUROADを算出する。空気抵抗算出手段354は、車速センサ98より出力される車速VCより、車速と平地走行での空気抵抗の関係が記憶されたテーブルを検索し、車速VCに応じた空気抵抗MYUAEROを算出する。
【0087】
抵抗減算手段356は、駆動力FCAR0から転がり抵抗MYUROAD,空気抵抗MYUAEROを減算し(FCAR1=FCAR0−MYUROAD−MYUAERO)、駆動力FCAR0に対して抵抗補正を行い、補正後駆動力FCAR1を出力する。
【0088】
平地走行加速度推定手段164は、補正後駆動力FCAR1を車重で除算し(DTVTRQ=FCAR1/車重)、平地走行での平地走行推定加速度DTVTRQを推定する。
【0089】
平地走行推定加速度DTVTRQは、(1)エアーフローセンサ80及びエンジン回転数NEより推定された最大のエンジン出力推定トルクが算出されていること、(2)エンジン出力推定トルクより点火時期、空燃比等のエンジンコントロール、エンジン水温等のエンジン状態によるトルクダウン補正、エアコン54やACG40等のフリクションによるトルクダウン補正、イナーシャトルク補正及びトルク増幅補正された入力軸トルクを算出していること、(3)入力軸トルクからフリクションロストルク補正したドライブシャフトトルクより抵抗補正をして車両加速度を算出していることから、平地走行における精度の良いものである。
【0090】
変速段選択手段166は、図7に示すように、実加速度算出手段400と、加速度差分算出手段402と、シフトマップ選択手段404を有する。実加速度算出手段400は、車速センサ98より検出された車速VCより単位時間当たりの車速変化量である実加速度DTVを算出する。
【0091】
加速度差分算出手段402は、平地走行推定加速度DTVTRQから実加速度DTVを減算し(PNOPKU=DTVTRQ−DTV)、車両が走行している道路勾配を示す勾配推定値PNOPKUを出力する。例えば、登坂路では、PNOPKUが正、降坂路では、PNOPKUが負、平地走行では、PNOPKUが0付近となる。また、勾配が大きいほど、PNOPKUの絶対値が大きくなる。
【0092】
変速段選択手段404は、PNOPKUから、勾配に応じて車速及びアクセルペダル開度と変速段の関係を記憶する複数のシフトマップからPNOPKUに該当するシフトマップを選択し、車速センサ98により検出された車速VC、アクセルペダル開度センサ102より検出されたアクセルペダル開度θAより、選択したシフトマップを検索し、勾配推定値PNOPKU、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。そして、決定された変速段に基づいて変速制御が行われる。エンジン出力トルク推定手段152〜変速段選択手段166は、一定周期、例えば、0.01秒毎に実行される。
【0093】
図8〜図12は、道路勾配推定方法の一例を示すフローチャートである。以下、図8〜図12を参照して、道路勾配推定方法の説明をする。図8中のステップS2で、図9に示すエアーフローセンサ80のセンサ出力値AFSからエンジン出力トルクを推定する。図9中のステップS10で、フューエルカット(F/C)中であるか否かを判定する。肯定判定ならば、ステップS22に進み、否定判定ならば、ステップS12に進む。ステップS12で、エアーフローセンサ80の出力値AFSとエンジン回転数NEから、図9に示すように、エンジン回転数及びシリンダ吸入空気量と最大に出力されるエンジン出力トルクの関係を予め記憶したマップを検索し、エアーフローセンサ出力値AFSとエンジン回転数NEに応じたエンジン出力トルクTEGAIR0を算出する。
【0094】
ステップS14で、エンジンECU60より出力される点火時期より、図9に示すように、点火時期とトルクダウン率KTEIGの関係を示すテーブルを検索し、点火時期に応じたトルクダウン率KTEIGを算出する。ステップS16で、エンジン水温センサ90より出力されるエンジン水温TWより、図9に示すように、エンジン水温とトルクダウン率KTETWの関係を示すテーブルを検索し、エンジン水温TWに応じたトルクダウン率KTETWを算出する。
【0095】
ステップS18で、エンジンECU60より出力される空燃比AFより、空燃比とトルクダウン率KTEAFの関係を示すテーブルを検索し、図9に示すように、空燃比AFに応じたトルクダウン率KTEAFを算出する。ステップS20で、TEGAIR1にTEGAIR0*KTEIG*KTETW*KTEAFを代入し、ステップS26に進む。
【0096】
一方、ステップS10で肯定判定であれば、ステップS22に進み、エンジン回転数NEとスロットル開度θTHから、図9に示すように、エンジン回転数及びスロットル開度と減速トルクTEHHFCの関係を示すマップを検索し、エンジン回転数NEとスロットル開度θTHに応じた減速トルクTETHFCを算出し、ステップS24に進む。ステップS24で、TEGAIR1にTETHFCを代入し、ステップS26に進む。
【0097】
ステップS26で、A/Cスイッチ100がONであるか否かを判定し、否定判定であれば、ステップS28に進み、肯定判定であれば、ステップS30に進む。ステップS28で、エアコン52がOFFなので、トルクダウン量DTEHECに0を代入し、ステップS32に進む。一方、ステップS26で肯定判定ならば、ステップS30でエアコン52の吐出圧センサ54より検出されたエアコン吐出圧PDから、図9に示すように、エアコン吐出圧とトルクダウン量DTEHACの関係を示すテーブルを検索し、エアコン吐出圧PDに対応するトルクダウン量DTEHACを算出し、ステップS32に進む。
【0098】
ステップS32でACG40のオルタネータ回転数NACGから、図9に示すように、オルタネータ回転数とトルクダウン量DTEACGの関係を示すテーブルを検索し、オルタネータ回転数NACGに応じたトルクダウン量DTEACGを算出し、ステップS34に進む。ステップS34でTEGAIR1から(DTEHAC+DTEACG)を減算し(TEGAIR1−DTEHAC−DTEACG)、TEGAIR2に代入し、図8中のステップS4に戻る。
【0099】
ステップS4で図10に示すイナーシャトルク補正およびトルクコンバータ6によるトルク増幅補正を行う。図10中のステップS50で、カウンタシャフト回転数NCより単位時間当たりのカウンタシャフト回転数変化量DNCを算出する。ステップS52で、DNC*ギアレシオ(メインシャフト10aのギア数に対するカウンタシャフト10bのギア数の比)を算出し、DNMに代入し、メインシャフト10aの回転数変化量に換算する。ステップS54でDNM*エンジンイナーシャを算出し、エンジンイナーシャトルクDTEIに代入し、エンジンイナーシャトルクを推定する。
【0100】
ステップS56でTEGAIR2からDTEIを減算し(TEGAIR2−DTEI)、入力軸トルクTTGAIR0に代入し、トランスミッション4に伝達されるエンジン出力トルクを推定する。ステップS58で、エンジン回転数NEに対するメインシャフト回転数NMの比であるトルクコンバータ6のトルコンスリップ率ETRを求め、トルコンスリップ率ETRから、図10に示すように、トルコン滑り率とトルク増幅率KTRの関係を示すテーブルを検索し、トルコンスリップ率ETRに応じたトルク増幅率KTRを算出する。ステップS60で、TTGAIR0にKTRを乗算し(TTGAIR0*KTR)、入力軸トルクTTGAIR1に代入し、図8中のステップS6に戻る。
【0101】
図8中のステップS6で図11に示す車両加速度を算出する。図11中のステップS100で、メインシャフト回転数NMから、図11に示すように、メインシャフト回転数とフリクションロストルクDTQLOSSの関係を示すテーブルを検索し、メインシャフト回転数NMに応じたフリクションロストルクDTQLOSSを算出する。ステップS102で、TTGAIR1にギアレシオ(カウンタシャフト10bのギア数に対するメインシャフト10aのギア数のギア比*駆動側ファイナルギア30bのギア数に対する出力側ファイナルギア30aにギア数のギア比)を乗算し(TTGAIR1*ギアレシオ)、フリクションロストルクDTQLOSSを減算し(TTGAIR1*ギアレシオ−DTQLOSS)、ドライブシャフトトルクTDSに代入する。
【0102】
ステップS104でドライブシャフトトルクTDSをタイヤ半径で除算し(TDS/タイヤ半径)、FCAR0に代入し、駆動力を算出する。ステップS106で車重に平地での転がり抵抗係数を乗算し(車重*転がり抵抗係数)、MYUROADに代入し、平地での転がり抵抗を算出する。ステップS108で、車速センサ98より検出された車速VCから、図11に示すように、車速と空気抵抗の関係を示すテーブルを検索し、平地での車速VCに応じた空気抵抗MYUAEROを算出する。
【0103】
ステップS110で駆動力FCAR0から転がり抵抗MYURAOD及び空気抵抗MYUAEROを減算し(FCAR0−MYUROAD−MYUAERO)、FCAR1に代入する。ステップS112でFCAR1を車重で除算し(FCAR1/車重)、平地での車両重力加速度DTVTRQに代入して、図8中のステップS8に戻る。
【0104】
図8中のステップS8で図12に示す勾配推定および勾配推定に基づき最適なシフトマップを選択する。図12中のステップS150で車速センサ98より検出された車速VCより単位時間当たりの車速変化量である実加速度DTVを算出する。ステップS152で平地走行推定加速度DTVRRQから実加速度DTVを減算し(DTVTRQ−DTV)、勾配推定値PNOPKUに代入する。ステップS154でPNOPKU>登り判定値であるか否かを判定し、肯定判定ならば、ステップS158に進み、否定判定ならば、ステップS156に進む。ステップS158で、図12に示すように、登りの度合いに応じて用意された複数の登りシフトマップの中からPNOPKUに応じた登りシフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、登りシフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。
【0105】
一方、ステップS156でPNOPKU<降り判定値であるか否かを判定し、肯定判定ならば、ステップS160に進み、否定判定ならば、ステップS162に進む。ステップS160で、図12に示すように、降りの度合いに応じて用意された複数の降りシフトマップの中からPNOPKUに応じた降りシフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、降りシフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。ステップS162で、図12に示すように、平地シフトマップを選択し、車速VC及びアクセルペダル開度θAから、平地シフトマップを検索し、車速VC及びアクセルペダル開度θAに応じた変速段を決定する。図8中のステップS2〜S8は、一定周期、例えば、0.01秒ごとに実行される。
【0106】
以上説明したように、本実施形態によれば、入力側による変動と出力(勾配)による変動が区分けできるので、精度良く、道路勾配が推定可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の実施形態による車両の概略構成図である。
【図2】本発明に係る道路勾配推定装置のブロック図である。
【図3】図2中のエンジン出力トルク推定手段の機能ブロック図である。
【図4】図2中のエンジン出力トルク補正手段の機能ブロック図である。
【図5】図2中の入力軸トルク推定手段の機能ブロック図である。
【図6】図2中の駆動力推定手段の機能ブロック図である。
【図7】変速段選択手段の機能ブロック図である。
【図8】本発明に係る道路勾配推定方法のフローチャートある。
【図9】図8中のエアーフローセンサ値からエンジン出力トルクを推定するフローチャートである。
【図10】図8中のイナーシャトルク補正およびトルクコンバータによるトルク増幅補正を示すフローチャートである。
【図11】図8中の車両加速度算出のフローチャートである。
【図12】図8中の勾配推定および勾配推定に基づき最適なシフトマップ選択するフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
152 エンジン出力トルク推定手段
154 エンジン出力トルク補正手段
156 入力軸トルク推定手段
158 入力軸トルク補正手段
160 ドライブシャフトトルク推定手段
162 駆動力推定手段
164 平地走行加速度推定手段
166 変速段選択手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンのクランク軸より出力されるエンジン出力トルクに基づきメインシャフトに伝達された入力軸トルクをカウンタシャフトを介して、車輪が接続されるドライブシャフトに駆動トルクを伝達する自動変速機とを有する車両の制御装置であって、
前記エンジンへの燃料供給がカットされていないとき、前記エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク推定手段と、
前記第1のエンジン出力推定トルクから前記自動変速機に伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、
前記第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、前記メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク推定手段と、
前記入力軸推定トルクに基づいて、前記ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、
前記ドライブシャフト推定トルクに基づいて、前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、
前記駆動力に基づいて、前記車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、
前記車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、
前記平地走行推定加速度及び前記実加速度、並びに前記車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、前記自動変速機の変速段を選択する変速段選択手段と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づいて、減速トルクを推定し、該減速トルクを前記第1のエンジン出力推定トルクとする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する請求項1〜2のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンのエンジン水温によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記エンジン出力トルク補正手段は、ACG及びエアコンに消費されるトルク分を補正する請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記クランク軸の回転変化によるエンジンイナーシャトルク分を前記第1のエンジン出力推定トルクから減算して補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記入力軸推定トルクの中で前記ドライブシャフトに伝達されないフリクショントルク分を補正して、第2の入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク補正手段を更に備え、前記ドライブシャフトトルク算出手段は、前記第2の入力軸推定トルクに基づいて前記ドライブシャフト推定トルクを算出することを特徴する請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での転がり抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での車速に応じた空気抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンのクランク軸より出力されるエンジン出力トルクに基づきメインシャフトに伝達された入力軸トルクをカウンタシャフトを介して、車輪が接続されるドライブシャフトに駆動トルクを伝達する自動変速機とを有する車両の制御装置であって、
前記エンジンへの燃料供給がカットされていないとき、前記エンジンへの吸入空気量及びエンジン回転数に基づいて、第1のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク推定手段と、
前記第1のエンジン出力推定トルクから前記自動変速機に伝達されないトルク分を補正し、第2のエンジン出力推定トルクを算出するエンジン出力トルク補正手段と、
前記第2のエンジン出力推定トルクに基づいて、前記メインシャフトへの入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク推定手段と、
前記入力軸推定トルクに基づいて、前記ドライブシャフトへのドライブシャフト推定トルクを算出するドライブシャフトトルク算出手段と、
前記ドライブシャフト推定トルクに基づいて、前記車輪の駆動力を算出する駆動力算出手段と、
前記駆動力に基づいて、前記車両の平地走行での平地走行推定加速度を算出する平地走行加速度推定手段と、
前記車両の速度に基づいて、実加速度を算出する実加速度算出手段と、
前記平地走行推定加速度及び前記実加速度、並びに前記車両の速度及びアクセルペダル開度に基づいて、前記自動変速機の変速段を選択する変速段選択手段と、
を備えたことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記エンジンへの燃料供給がカットされているとき、エンジン回転数とスロットル開度に基づいて、減速トルクを推定し、該減速トルクを前記第1のエンジン出力推定トルクとする請求項1記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンの点火時期及び前記エンジンの空燃比によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する請求項1〜2のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記エンジンのエンジン水温によるトルクダウン率に基づいてトルクダウン分を補正する請求項1〜3のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項5】
前記エンジン出力トルク補正手段は、ACG及びエアコンに消費されるトルク分を補正する請求項1〜4のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項6】
前記エンジン出力トルク補正手段は、前記クランク軸の回転変化によるエンジンイナーシャトルク分を前記第1のエンジン出力推定トルクから減算して補正することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項7】
前記入力軸推定トルクの中で前記ドライブシャフトに伝達されないフリクショントルク分を補正して、第2の入力軸推定トルクを算出する入力軸トルク補正手段を更に備え、前記ドライブシャフトトルク算出手段は、前記第2の入力軸推定トルクに基づいて前記ドライブシャフト推定トルクを算出することを特徴する請求項1〜6のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項8】
前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での転がり抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の車両の制御装置。
【請求項9】
前記平地走行加速度推定手段は、前記駆動力から平地走行での車速に応じた空気抵抗分を補正した駆動力に基づいて、前記平地走行推定加速度を算出することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の車両の制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−322588(P2006−322588A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148070(P2005−148070)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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