説明

車両の緊急通報装置

【課題】 他車両から受信した緊急情報を的確かつ迅速に緊急通報センターに送信する。
【解決手段】 情報制御部22は無線通信用の基地局1の通信可能領域1aの外部で他車両から緊急情報を受信した場合に、自車両周辺の無線通信用の基地局1又は無線通信用の基地局1に対する自車両周辺の通信可能領域1aと適宜の通信機器を備える自車両周辺の施設とをナビゲーション装置14の地図データに基づき検索する。情報制御部22は、検索した無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内へ移動して無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合と、検索した適宜の通信機器を備える施設へ移動して、施設の通信機器により緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合との何れが、緊急情報を緊急通報センター2に効率良く送信可能であるかを判定し、通信可能領域1a又は適宜の通信機器を備える施設を経路誘導の目的地或いは経由地とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の緊急通報装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車車間通信により他車両から緊急情報を受信した際に、無線通信用の基地局への通信が可能であれば受信した緊急情報を無線通信用の基地局へ送信し、無線通信用の基地局への通信が不可能であれば受信した緊急情報を他の他車両へ送信する通報システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−36185号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の一例に係る通報システムによれば、車車間通信により他車両から緊急情報を受信した際に、例えば自車両が無線通信用の基地局の通信可能領域の外部に位置することで無線通信用の基地局への直接の通信が不可能であれば、単に、受信した緊急情報を他の他車両へ送信するだけであるから、例えば無線通信用の基地局の通信可能領域内に全く他車両が存在しない場合には、自車両から送信される緊急情報を基地局まで中継する他車両が存在しないことになり、緊急情報を基地局に迅速に送信することができなくなるという問題が生じる。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、他車両から受信した緊急情報を的確かつ迅速に所定の緊急通報センターに送信することが可能な車両の緊急通報装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の車両の緊急通報装置は、他車両から緊急情報を受信する受信手段(例えば、実施の形態での通信装置12)と、該受信手段により受信した前記緊急情報を無線通信用の基地局を介して所定の緊急通報センター(例えば、実施の形態での緊急通報センター2)へ送信する送信手段(例えば、実施の形態での通信装置12)と、自車両を適宜の目的地へ誘導する誘導手段(例えば、実施の形態でのナビゲーション装置14)と、前記基地局に対する無線通信可能領域(例えば、実施の形態での通信可能領域1a)の外部で前記受信手段により前記緊急情報を受信した場合に、前記無線通信可能領域を前記目的地として設定し、前記誘導手段により自車両を前記無線通信可能領域内へ誘導させると共に、自車両が前記無線通信可能領域内に到達した時点で、前記送信手段により前記緊急情報を前記基地局を介して前記緊急通報センターへ送信させる制御手段(例えば、実施の形態での情報制御部22)とを備えることを特徴としている。
【0005】
上記の車両の緊急通報装置によれば、他車両から緊急情報を受信した自車両つまり緊急情報を中継する中継車両は、例えば無線通信用の基地局の無線通信可能領域外に位置する場合であっても、誘導手段により無線通信用の基地局の無線通信可能領域内へ誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を的確かつ迅速に無線通信用の基地局を介して所定の緊急通報センターに送信することができる。
【0006】
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の緊急通報装置は、通信手段(例えば、実施の形態での通信機器)を具備する自車両周辺の施設と前記無線通信可能領域との何れが前記緊急情報を前記緊急通報センターへ効率良く送信可能であるかを比較する比較手段(例えば、実施の形態でのステップS33)を備え、前記制御手段は、前記比較手段による比較結果に応じて前記無線通信可能領域と前記施設との何れか一方を前記目的地として設定し、前記誘導手段により自車両を前記目的地へ誘導させることを特徴としている。
【0007】
上記の車両の緊急通報装置によれば、無線通信用の基地局の無線通信可能領域外に位置する自車両が他車両から緊急情報を受信したときに、この無線通信用の基地局の無線通信可能領域内に移動して緊急情報を無線通信用の基地局を介して緊急通報センターに送信する場合と、自車両周辺で適宜の通信手段(例えば、有線電話や無線機等)を具備する施設(例えば、公共施設等)に移動して、この施設から通信手段により緊急通報センターへ緊急情報を送信する場合とに対して、何れの場合が緊急情報を緊急通報センターへ効率良く送信可能であるかを比較し、この比較結果に応じて自車両が誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を効率良く所定の緊急通報センターに送信することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、請求項1に記載の本発明の車両の緊急通報装置によれば、自車両が無線通信用の基地局の無線通信可能領域外で他車両から緊急情報を受信した場合であっても、誘導手段により無線通信用の基地局の無線通信可能領域内へ誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を的確かつ迅速に無線通信用の基地局を介して所定の緊急通報センターに送信することができる。
さらに、請求項2に記載の本発明の車両の緊急通報装置によれば、無線通信用の基地局の無線通信可能領域内に移動して緊急情報を無線通信用の基地局を介して緊急通報センターに送信する場合と、自車両周辺で適宜の通信手段を具備する施設に移動して、この施設から緊急通報センターへ緊急情報を送信する場合とに対して、何れの場合が緊急情報を緊急通報センターへ効率良く送信可能であるかを比較し、この比較結果に応じて自車両が誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を効率良く所定の緊急通報センターに送信することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態に係る車両の緊急通報装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による車両の緊急通報装置10は、例えば図1に示すように、自車両周辺の外部を撮像するカメラ11と、通信装置12と、車両状態センサ13と、ナビゲーション装置14と、処理装置15とを備えて構成されている。
【0010】
カメラ11は、例えば、CCDカメラやCMOSカメラであって、車両のウィンドウ越しに撮像される自車両周辺の外界の撮像画像を出力する。
【0011】
通信装置12は、他車両との車車間通信あるいは自車両の外部の無線通信用の基地局1との間の通信により各種情報の送受信を行う。
なお、無線通信用の基地局1は、例えば携帯電話機のアンテナ塔等であって、例えば車両の通信装置12との間で無線通信を行う無線通信装置と、この無線通信装置を介して車両から受信した緊急情報等の各種の情報を有線通信により緊急通報センター2へ転送する有線通信装置とを備えている。つまり、後述する緊急情報等の各種の情報を収集する緊急通報センター2には、例えば複数の基地局1,…,1が有線通信可能に接続されている。
車両状態センサ13は、自車両の車両情報として、例えば自車両の速度(車速)を検出する車速センサや、例えば人工衛星を利用して車両の位置(例えば、緯度および経度)を測定するためのGPS(Global Positioning System)信号等の測位信号や自車両の外部の情報発信装置から発信される位置信号等、さらには、適宜のジャイロセンサや加速度センサ等の検出結果に基づいて自車両の現在位置および進行方向を検出する位置センサや、ヨー角(車両重心の上下方向軸回りの回転角度)やヨーレート(車両重心の上下方向軸回りの回転角速度)を検出するヨーレートセンサや、操舵角(運転者が入力した操舵角度の方向と大きさ)や操舵角に応じた実舵角(転舵角)を検出する舵角センサ等を備えて構成されている。
【0012】
ナビゲーション装置14は、表示画面(図示略)上に地図を表示するための地図データとして、例えば道路の幅員データや複数の道路の交差角度や交差点の形状や位置等の道路データを格納し、この道路データに対して車両状態センサ13により検出された車両の現在位置に基づくマップマッチングを行い、表示画面上での車両の現在位置の表示位置を補正すると共に、検出された車両の現在位置あるいは各種スイッチやキーボード等を介して操作者により入力された適宜の車両位置に対して、表示画面上での地図表示を制御する。
また、ナビゲーション装置14は、各種スイッチやキーボード等を介して操作者から入力された適宜の目的地および経由地あるいは処理装置15から出力される適宜の目的地および経由地に基づき経路探索の演算処理を実行し、道路データと共に目的地や経由地までの経路情報や各種の付加情報を表示画面上に表示すると共に、各種の音声メッセージをスピーカ(図示略)から出力して経路誘導を行う。
【0013】
処理装置15は、例えば画像処理部21と、情報制御部22と、緊急情報記憶部23と、受信時情報記憶部24とを備えて構成されている。
画像処理部21は、カメラ11の撮像により得られた撮像画像に対して、例えばフィルタリングおよび二値化処理等の所定の画像処理を行い、二次元配列の画素からなる画像データを生成して情報制御部22へ出力する。
【0014】
情報制御部22は、通信装置12を介した車車間通信によって自車両周辺に存在する他車両の位置を検知し、この検知結果を受信時情報記憶部24に格納する。
また、情報制御部22は、他車両から発信される緊急情報を受信した際には、受信した緊急情報を緊急情報記憶部23に格納すると共に、他車両から緊急情報を受信したことを自車両の乗員に報知するメッセージを、ナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力し、さらに、ナビゲーション装置14の表示画面上には、緊急情報から抽出した他車両の位置の情報を地図データと共に表示する。
さらに、情報制御部22は、他車両から発信される緊急情報を受信した際に、緊急情報を受信した時刻と、緊急情報を受信した時点で車両状態センサ13により検出された自車両の車両状態(例えば、位置、車速等)と、緊急情報を受信した時点でカメラ11の撮影により得られた画像データとを受信時情報記憶部24に格納する。
なお、他車両から発信される緊急情報は、例えば車両の位置と、車両の車種や特徴と、発生した緊急状態の内容を示すメッセージと、緊急状態の発生時刻または緊急情報の発信時刻と、車両周辺の外界を撮影して得た画像データ等とから構成されている。
【0015】
そして、情報制御部22は、他車両から発信される緊急情報を受信した際に、無線通信用の基地局1に対する通信状態(例えば、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度の大小および時間変化等)が所定の状態であるか否かを判定することにより、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に位置するか否かを判定し、通信可能領域1a内に位置する場合には、緊急情報記憶部23に格納されている緊急情報に加えて、受信時情報記憶部24に格納されている各種情報を無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2へ送信する。
【0016】
一方、通信可能領域1aの外部に位置する場合には、情報制御部22は、自車両周辺の無線通信用の基地局1または無線通信用の基地局1に対する自車両周辺の通信可能領域1aと、適宜の通信機器(例えば、電話機や無線機等)を備える自車両周辺の施設(例えば、交番や公共施設や公衆電話や民家等)とを、ナビゲーション装置14の地図データに基づき検索する。そして、検索した無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内へ移動して無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合と、検索した適宜の通信機器を備える施設へ移動して、この施設から適宜の通信機器によって緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合との何れが、緊急情報を緊急通報センター2に効率良く送信可能(例えば、より短時間で送信可能等)であるかを判定する。
そして、この判定結果に応じて、検索した基地局1の通信可能領域1aまたは検索した適宜の通信機器を備える施設の何れか一方を、ナビゲーション装置14による経路誘導に対する目的地あるいは経由地に設定して経路探索の演算処理を実行し、この演算処理により得られた案内経路に応じた経路誘導を実行する。
【0017】
そして、情報制御部22は、無線通信用の基地局1の通信可能領域1aを経路誘導に対する目的地あるいは経由地として設定している状態で、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に到達した場合には、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域内に到達したことを自車両の乗員に報知するメッセージを、ナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力すると共に、緊急情報記憶部23に格納されている緊急情報に加えて、受信時情報記憶部24に格納されている各種情報を、無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2へ送信する。
【0018】
また、情報制御部22は、通信機器を備える施設を経路誘導に対する目的地あるいは経由地として設定している状態で、自車両が通信機器を備える施設に到達した場合には、自車両が通信機器を備える施設に到達したことを自車両の乗員に報知するメッセージを、ナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力すると共に、施設の通信機器により緊急通報センター2に送信する情報(例えば、緊急車両が到達するために要する情報であって、他車両の位置および緊急情報の発信時刻および他車両の車種や車両情報および緊急情報の受信時刻等の情報)を、緊急情報記憶部23に格納されている緊急情報に加えて受信時情報記憶部24に格納されている各種情報に基づき生成してナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力や適宜の印刷装置(図示略)等により出力する。
なお、情報制御部22は、施設の通信機器により緊急通報センター2に送信する情報を生成する際には、例えば操作者が口頭により伝達可能な内容を有するように生成する。
【0019】
また、自車両との車車間通信により緊急情報を発信する他車両は、緊急通報装置30として、例えば、車車間通信あるいは外部の無線通信用の基地局1との間の通信により緊急情報を送信可能な通信装置31と、車両外部の外界の撮像画像を出力するカメラ32と、車速および位置等の車両状態を検出する車両状態センサ33と、カメラ32の撮像により得られた撮像画像に対して所定の画像処理を行う画像処理部35および事故や乗員の異常等の緊急状態が発生した際に緊急情報を生成して通信装置31から発信させる情報制御部36を具備する処理装置34とを備えている。
【0020】
本実施の形態による車両の緊急通報装置10は上記構成を備えており、次に、この車両の緊急通報装置10の動作について説明する。
先ず、以下に、例えば事故や乗員の異常等の緊急状態が発生した車両から緊急情報を発信する処理について説明する。
例えば、図2に示すステップS01においては、事故や乗員の異常等の緊急状態の発生を検知する。
そして、ステップS02においては、所定の無線通信用の基地局1に対する通信状態(例えば、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度の大小および時間変化等)が所定の状態であるか否かを判定することにより、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に位置するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS03に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS05に進む。
【0021】
そして、ステップS03においては、自車両と無線通信用の基地局1との間の通信接続を開始する。
そして、ステップS04においては、例えば自車両の現在位置および自車両の車種や特徴および車両状態および現在時刻および車載カメラの撮影による画像データ等からなる緊急情報を無線通信用の基地局1に送信して、一連の処理を終了する。
【0022】
また、ステップS05においては、自車両周辺に存在する他車両を車車間通信により検索する。
そして、ステップS06においては、自車両周辺に車車間通信可能な他車両が存在するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS05に戻る。
そして、ステップS07においては、車車間通信可能な他車両に緊急情報を送信して、一連の処理を終了する。
【0023】
次に、緊急状態が発生した他車両から発信された緊急情報を受信した車両の緊急通報装置10の動作について説明する。
【0024】
先ず、例えば図3に示すステップS11においては、車車間通信により自車両周辺に存在する他車両の位置を検知する。
次に、ステップS12においては、他車両から緊急情報を受信したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、上述したステップS11に戻る。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS13に進む。
次に、ステップS13においては、他車両から緊急情報を受信したことを自車両の乗員に報知するメッセージを表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力する。このとき、例えばナビゲーション装置14の表示画面上においては、緊急情報を受信したことを通知するメッセージに加えて、緊急情報から抽出した他車両の位置の情報を地図データと共に表示する。
【0025】
次に、ステップS14においては、緊急情報を受信した時刻と、緊急情報を受信した時点で車両状態センサ13により検出された自車両の位置および車両状態と、緊急情報を受信した時点でカメラ11の撮影により得られた画像データとを記憶する。
【0026】
そして、ステップS15においては、無線通信用の基地局1に対する通信状態(例えば、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度の大小および時間変化等)が所定の状態であるか否かを判定することにより、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に位置するか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS16に進み、このステップS16においては、後述する通報処理を実行して、一連の処理を終了する。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS17に進み、このステップS17においては、後述する誘導通報処理を実行して、一連の処理を終了する。
【0027】
以下に、上述したステップS16での通報処理について説明する。
先ず、例えば図4に示すステップS21においては、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に存在することを乗員に報知するメッセージを、表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力する。
次に、ステップS22においては、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度の時間変化が所定値未満となる安定状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS23に進み、走行状態の自車両の減速または停止、あるいは、停止状態の自車両の移動および停止を運転者に指示し、ステップS22の処理を繰り返す。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS24に進む。
【0028】
そして、ステップS24においては、他車両から受信した緊急情報に加えて、この緊急情報の受信時に記憶した自車両の各情報、つまり緊急情報を受信した時刻と、緊急情報を受信した時点で車両状態センサ13により検出された自車両の位置および車両状態と、緊急情報を受信した時点でカメラ11の撮影により得られた画像データとを無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に送信する。
そして、ステップS25においては、例えば送信の継続あるいは送信の完了等の送信状態を乗員に報知するメッセージを、ナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力して、一連の処理を終了する。
【0029】
以下に、上述したステップS16での誘導通報処理について説明する。
先ず、例えば図4に示すステップS31においては、自車両周辺の無線通信用の基地局1または無線通信用の基地局1に対する自車両周辺の通信可能領域1aと、適宜の通信機器を備える自車両周辺の施設とを、ナビゲーション装置14の地図データに基づき検索する。
次に、ステップS32においては、ステップS31での検索結果に基づき、適宜の通信機器を備える施設が自車両周辺に存在するか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS37に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS33に進む。
【0030】
そして、ステップS33においては、例えば適宜の通信機器を備える施設は無線通信用の基地局1に対する自車両周辺の通信可能領域1aよりも所定の程度以上近い位置に存在するか否かを判定することによって、適宜の通信機器を備える施設と、無線通信用の基地局1に対する通信可能領域1aとの何れが、緊急情報を緊急通報センター2へ効率良く送信可能であるかを判定する。
この判定結果が「NO」の場合、つまり無線通信用の基地局1の通信可能領域1aは適宜の通信機器を備える施設よりも自車両に近い位置に存在、あるいは、無線通信用の基地局1の通信可能領域1aと適宜の通信機器を備える施設とは自車両から同程度の距離の位置に存在しており、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内へ移動して無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合は、自車両が適宜の通信機器を備える施設へ移動して、この施設から適宜の通信機器によって緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合に比べて、より効率良く、あるいは、同程度の効率で緊急情報を緊急通報センター2へ送信可能である場合には、後述するステップS37に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合、つまり無線通信用の基地局1の通信可能領域1aは適宜の通信機器を備える施設よりも所定の程度以上遠い位置に存在し、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内へ移動して無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合は、自車両が適宜の通信機器を備える施設へ移動して、この施設から適宜の通信機器によって緊急通報センター2に緊急情報を送信する場合に比べて、緊急情報を緊急通報センター2へ送信する際の効率が所定の程度以上低い場合には、ステップS34に進む。
【0031】
そして、ステップS34においては、自車両のナビゲーション装置14よる経路誘導の目的地が既に設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS35に進み、このステップS35においては、適宜の通信機器を備える施設を経路誘導の目的地として設定して、後述するステップS40に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS36に進み、このステップS36においては、適宜の通信機器を備える施設を既に設定されている目的地に対する経路誘導の経由地として設定し、後述するステップS40に進む。
【0032】
また、ステップS37においては、自車両のナビゲーション装置14よる経路誘導の目的地が既に設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS38に進み、このステップS38においては、無線通信用の基地局1に対する通信可能領域1aを経路誘導の目的地として設定して、後述するステップS40に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS39に進み、このステップS39においては、無線通信用の基地局1に対する通信可能領域1aを既に設定されている目的地に対する経路誘導の経由地として設定し、ステップS40に進む。
そして、ステップS40においては、設定されている目的地あるいは経由地および目的地に基づき案内経路を算出し、算出した案内経路に応じた経路誘導を実行する。
【0033】
そして、ステップS41においては、無線通信用の基地局1の通信可能領域1aが目的地あるいは経由地に設定されているか否かを判定する。
この判定結果が「YES」の場合には、ステップS42に進む。
一方、この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS51に進む。
そして、ステップS42においては、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度が所定値以上であるか否かを判定する。
ステップS42の判定結果が「NO」の場合には、ステップS42の処理を繰り返す。
一方、ステップS42の判定結果が「YES」の場合には、ステップS43に進む。
そして、ステップS43においては、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に到達したことを乗員に報知するメッセージを、表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力する。
【0034】
次に、ステップS44においては、無線通信用の基地局1から発信される電波の受信電界強度の時間変化が所定値未満となる安定状態であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS45に進み、走行状態の自車両の停止あるいは停止状態の自車両の移動および停止を運転者に指示し、ステップS44の処理を繰り返す。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS46に進む。
【0035】
そして、ステップS46においては、他車両から受信した緊急情報に加えて、この緊急情報の受信時に記憶した自車両の各情報、つまり緊急情報を受信した時刻と、緊急情報を受信した時点で車両状態センサ13により検出された自車両の位置および車両状態と、緊急情報を受信した時点でカメラ11の撮影により得られた画像データとを無線通信用の基地局1に送信する。
そして、ステップS47においては、例えば送信の継続あるいは送信の完了等の送信状態を乗員に報知するメッセージを、ナビゲーション装置14の表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力して、一連の処理を終了する。
【0036】
また、ステップS51においては、自車両が通信機器を備える施設に到達したか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、ステップS51の処理を繰り返す。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS52に進む。
そして、ステップS52においては、自車両が通信機器を備える施設に到達したことを乗員に報知するメッセージを、表示画面上の表示やスピーカからの音声出力等により出力する。
そして、ステップS53においては、施設の通信機器により緊急通報センター2に送信する情報を、緊急情報記憶部23に格納されている緊急情報に加えて受信時情報記憶部24に格納されている各種情報に基づき生成して表示画面上の表示やスピーカからの音声出力や印刷装置(図示略)等により出力して、一連の処理を終了する。
【0037】
上述したように、本実施の形態による車両の緊急通報装置10によれば、自車両が無線通信用の基地局1の通信可能領域1aの外部で他車両から緊急情報を受信した場合であっても、ナビゲーション装置14により無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内へ誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を的確かつ迅速に無線通信用の基地局1を介して所定の緊急通報センター2に送信することができる。
さらに、情報制御部22は、無線通信用の基地局1の通信可能領域1a内に移動して緊急情報を無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に送信する場合と、自車両周辺で適宜の通信機器を具備する施設(例えば、公共施設等)に移動して、この施設から緊急通報センター2へ緊急情報を送信する場合とに対して、何れの場合が緊急情報を緊急通報センター2へ効率良く送信可能であるかを比較し、この比較結果に応じて自車両が誘導されることから、他車両から受信した緊急情報を効率良く緊急通報センター2に送信することができる。
【0038】
しかも、情報制御部22は、他車両から受信した緊急情報を無線通信用の基地局1を介して緊急通報センター2に送信する際に、緊急情報を受信した時点で車両状態センサ13により検出された自車両の位置およびカメラ11の撮影により得られた画像データを、緊急情報と共に送信することから、緊急通報センター2においては、緊急状態の他車両との通信が可能な領域および他車両周辺の領域での交通状態や天候状態等を容易に把握することができ、例えば緊急車両等を効率良く派遣することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態に係る車両の緊急通報装置の構成図である。
【図2】緊急状態が発生した車両から緊急情報を発信する処理のフローチャートである。
【図3】緊急状態が発生した他車両から発信された緊急情報を受信した車両の緊急通報装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】図3に示す通報処理のフローチャートである。
【図5】図3に示す誘導通報処理のフローチャートである。
【図6】図3に示す誘導通報処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0040】
1 無線通信用の基地局
2 緊急通報センター
10 車両の緊急通報装置
11 カメラ
12 通信装置(受信手段、送信手段)
14 ナビゲーション装置(誘導手段)
22 情報制御部(制御手段)
ステップS33 比較手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
他車両から緊急情報を受信する受信手段と、該受信手段により受信した前記緊急情報を無線通信用の基地局を介して所定の緊急通報センターへ送信する送信手段と、
自車両を適宜の目的地へ誘導する誘導手段と、
前記基地局に対する無線通信可能領域の外部で前記受信手段により前記緊急情報を受信した場合に、前記無線通信可能領域を前記目的地として設定し、前記誘導手段により自車両を前記無線通信可能領域内へ誘導させると共に、自車両が前記無線通信可能領域内に到達した時点で、前記送信手段により前記緊急情報を前記基地局を介して前記緊急通報センターへ送信させる制御手段と
を備えることを特徴とする車両の緊急通報装置。
【請求項2】
通信手段を具備する自車両周辺の施設と前記無線通信可能領域との何れが前記緊急情報を前記緊急通報センターへ効率良く送信可能であるかを比較する比較手段を備え、
前記制御手段は、前記比較手段による比較結果に応じて前記無線通信可能領域と前記施設との何れか一方を前記目的地として設定し、前記誘導手段により自車両を前記目的地へ誘導させることを特徴とする請求項1に記載の車両の緊急通報装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−65838(P2007−65838A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−249011(P2005−249011)
【出願日】平成17年8月30日(2005.8.30)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】