説明

車両制御装置および車両制御方法

【課題】 車速変動の伝播を抑制することができる車両制御装置および車両制御方法を提供する。
【解決手段】
本発明に係る車両制御装置および車両制御方法においては、交通流量が最大化される自車11の減速制御をおこなう際、自車11と先行車両12との車間距離が所定の範囲内にあるときには、交通流量が最大化される車間距離と車速に自車を減速制御し、自車11と先行車両12との車間距離が所定の範囲内にないときには、交通流量が最大化される速度のみに自車を減速制御する。それにより、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車11を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を制御する車両制御装置および車両制御方法に関し、特に交通渋滞の回避に適用される車両制御装置および車両制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、高速道路上のサグ部においては、交通渋滞が頻発することが知られている。そこで、交通流量の情報を取得可能な制御システムを搭載して、交通渋滞を回避しようとする技術開発が進められている。たとえば、特許文献1では、サグ手前まで車間距離制御を行い、サグ部分から車速制御に切り換えることにより、車速の変化を抑えてサグでの渋滞を抑制しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−137652号公報
【特許文献2】特開2006−309736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような車両制御技術において、交通流量が所定の閾値を超えたときに、自車の走行方向におけるサグ部より手前の位置において、車車間通信システムを搭載した車両同士によって車間制御情報(たとえば、車両位置や車速)をお互いに通信し合い減速制御を行うことで、サグ部における減速伝搬を抑制し、サグ渋滞の発生を防ぐことが考えられる。
すなわち、この減速制御においては、前後する車両のうちの後続車両は、同一車線上を走行する先行車両を制御対象の車両として検出し、その先行車両との間で、適切な車間距離が保たれるように自車の減速制御をおこなう。
【0005】
しかしながら、後続車両が減速制御をおこなっている最中には、以下のケースが想定され得る。
(i) 先行車両と後続車両との間に、その他の車両が割り込むケース
(ii) 先行車両の車線変更により、制御対象を検出できなくなるケース
(iii)後続車両の車線変更により、制御対象を検出できなくなるケース
(iv) 先行車両の減速により、両車両の車間距離が著しく縮まるケース
(v) 後続車両の加速により、両車両の車間距離が著しく縮まるケース
【0006】
これらのケースでは、交通流量が最大となる車間距離を、サグ部に到達するまでに確保することが困難となってしまい、その結果、車速変動の伝播が生じ、サグ部における交通渋滞が引き起こされる。
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、車速変動の伝播を抑制することができる車両制御装置および車両制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る車両制御装置は、交通流量が最大化されるように自車を減速制御する車両制御装置であって、減速制御の間、自車の直前を走行する同一車線上の先行車両と自車との車間距離を繰り返し測定する車間距離測定手段と、車間距離測定手段によって測定した車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、判定手段によって車間距離が範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に自車を制御し、判定手段によって車間距離が範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに自車を制御する走行制御手段とを備える。
【0009】
この車両制御装置においては、交通流量が最大化される自車の減速制御をおこなう際、走行制御手段は、車間距離測定手段によって測定した自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にあると判定手段によって判定されたときには、交通流量が最大化される車間距離と車速に自車を減速制御し、自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にないと判定手段によって判定されたときには、交通流量が最大化される速度のみに自車を減速制御する。そのため、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる。
【0010】
本発明に係る車両制御装置は、交通流量が最大化されるように自車を減速制御する車両制御装置であって、減速制御の間、自車の直前を走行する先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一か否かを繰り返し識別する車線識別手段と、車線識別手段によって先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一であると識別されたときに、先行車両との車間距離を測定する車間距離測定手段と、車間距離測定手段によって測定した車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、判定手段によって車間距離が範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に制御し、判定手段によって車間距離が範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに制御する制御処理をおこなう走行制御手段と、車線識別手段によって先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一でないと識別されたときに、制御処理を、自車の後方を走行する後続車両におこなわせる制御引継手段とを備える。
【0011】
この車両制御装置においては、車線識別手段によって先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一であると識別されたときには、走行制御手段が減速制御に係る上記制御処理を自車でおこない、車線識別手段によって先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一でないと識別されたときには、制御引継手段が上記制御処理を後続車両におこなわせる。そのため、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる上、上記制御処理をおこなう必要がないときに後続車両に上記制御処理をおこなわせることで、車速変動の増幅伝播を効果的に防止することができる。
【0012】
本発明に係る車両制御方法は、交通流量が最大化されるように自車を減速制御する制御方法であって、減速制御の間、自車の直前を走行する同一車線上の先行車両と自車との車間距離を繰り返し測定するステップと、車間距離が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、車間距離が所定の範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に自車を制御するステップと、車間距離が所定の範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに自車を制御するステップとを含む。
【0013】
この車両制御方法においては、交通流量が最大化される自車の減速制御をおこなう際、自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にあるときには、交通流量が最大化される車間距離と車速に自車を減速制御し、自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にないときには、交通流量が最大化される速度のみに自車を減速制御する。そのため、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる。
【0014】
本発明の車両制御方法は、交通流量が最大化されるように自車を減速制御する制御方法であって、減速制御の間、自車の直前を走行する先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一か否かを繰り返し識別するステップと、先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一であると識別されたときに、(a)先行車両との車間距離を測定するステップと、(b)車間距離が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、(c)車間距離が所定の範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に制御するステップと、(d)車間距離が所定の範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに制御するステップとを含む、制御処理を、自車においておこなうステップと、先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一でないと識別されたときに、制御処理を、自車の後方を走行する後続車両におこなわせるステップとを含む。
【0015】
この車両制御方法においては、先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一のときには、減速制御に係る上記制御処理が自車でおこなわれ、先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一でないときには、上記制御処理を後続車両におこなわせる。そのため、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる上、上記制御処理をおこなう必要がないときに後続車両に上記制御処理をおこなわせることで、車速変動の増幅伝播を効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、車速変動の伝播を抑制することができる車両制御装置および車両制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置の概略構成を示した図である。
【図2】図2は、自車周辺の交通状況について示した図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係る車両制御方法を示したフローチャートである。
【図4】図4は、自車速度における許容可能な車頭距離が示されたグラフである。
【図5】図5は、交通流量と平均速度との関係を示したグラフである。
【図6】図6は、第2実施形態に係る車両制御方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0019】
図1に本発明の実施形態に係る車両制御装置の概略構成図を示す。図1に示すように、本実施形態に係る車両制御装置1は、車両の走行制御を行うものであり、車両に搭載されている。車両制御装置1は、ECU(電子制御ユニット)2、ナビゲーション部3、通信部4、センサ部5、走行駆動部6、制動部7を備えている。
【0020】
ECU2は、制御装置の装置全体の制御を行うものであり、たとえば、CPU、ROM、RAM等を含むコンピュータで構成されている。ECU2は、後述する各種情報に基づいて、各種機能を発現する。
【0021】
ナビゲーション部3は、自車両の位置の位置情報を検出する部分であり、たとえば、GPS機能や、道路情報を含む地図データベースを備えたものが用いられ、目的地検索や走行案内経路を利用することができる。
【0022】
通信部4は、自車の周囲を走行している周辺車両や走行する道路の路側に設けられたインフラ(ビーコン、交通監視システム等)との間で各種情報を送受信したり、交通情報センター(VICSセンター)から渋滞情報等を受信したりする部分である。この通信部4は、車車間通信により周辺車両からその位置や走行方向に関する情報を受信する。また、車車間通信として、後述する減速制御に利用される車間制御情報(車間目標値、減速位置、減速G、車速目標値、車線識別情報)などが送受信される。もしくは、インフラとの間で、先行車両との間の車間距離を計測することができる。
【0023】
センサ部5は、車両に搭載された複数のセンサによって構成されており、例えば車輪速センサやレーダー測距センサ、車載カメラ等が含まれる。このセンサ部5においても、先行車両との間の車間距離や先行車両の車速を計測可能となっている。さらに、センサ部5は、先行車両が走行している車線を検出可能となっている。
【0024】
走行駆動部6は、車両の走行駆動を行う部分であり、例えばエンジンECU、スロットルモータ、インジェクタなどにより構成される。この走行駆動部6は、ECU2の走行駆動信号を受けて作動し、その走行駆動信号に応じた車両走行駆動を実行する。また、走行駆動部6は、スロットルセンサによってアクセル開度に関する情報を取得し、その情報はECU2へ送られる。
【0025】
制動部7は、車両の制動を行う部分であり、例えばブレーキECU、ブレーキ油圧を調整する電磁弁、ブレーキ油圧を生成するポンプモータにより構成される。この制動部7は、ECU2の制動指令信号を受けて作動し、その制動指令信号に応じた車両制動を実行する。
【0026】
車両制御装置1は、以上で説明したとおりの構成であるため、ECU2は、単独でもしくは各部3〜7との協働により、以下のような機能を実現することができる。すなわち、自車の減速制御の間、自車の直前を走行する同一車線上の先行車両と自車との車間距離を繰り返し測定する車間距離測定手段としての機能、車間距離測定手段によって測定した車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段としての機能、判定手段によって車間距離が範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に自車を制御し、判定手段によって車間距離が範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに自車を制御する走行制御手段としての機能が実現される。
【0027】
さらに、ECU2は、単独でもしくは各部3〜7との協働により、以下のような機能を実現することもできる。すなわち、自車の減速制御の間、自車の直前を走行する先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一か否かを繰り返し識別する車線識別手段としての機能、車線識別手段によって先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一であると識別されたときに、先行車両との車間距離を測定する車間距離測定手段としての機能、車間距離測定手段によって測定した車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段としての機能、判定手段によって車間距離が範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に制御し、判定手段によって車間距離が範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに制御する制御処理をおこなう走行制御手段としての機能、車線識別手段によって先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一でないと識別されたときに、制御処理を、自車の後方を走行する後続車両におこなわせる制御引継手段としての機能が実現される。
【0028】
ここで、図2は、自車周辺の交通状況について示した図である。図2に示す交通状況においては、高速道路上を計5台の車両が走行している。この図に示すように、5台の車両の走行方向の先にはサグ部が存在しており、サグ部における渋滞の抑制または回避が必要な状況である。そこで、自車11の車両制御装置1は、交通流量が最大となるように、自車11と同じ車線L1の直前を走行している先行車両12を対象とする減速制御をおこなう。
【0029】
このような状況下においては、車両制御装置1のECU2が主体となって減速制御が行われる。以下、第1実施形態として、自車11の車両制御装置1により減速制御を行う方法について、図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。図3は、第1実施形態の車両制御方法について示したフローチャートである。
(車間計測処理)
【0030】
自車11は、減速制御の間、ステップ11として、自車11と先行車両12との間の車間距離D1を繰り返し測定する。この車間計測の方法は、上述したレーダーを用いる計測方法の他、公知の様々な計測方法を採用することができる。
(車間許容範囲)
【0031】
次に、ステップ12として、自車11と先行車両12との間の車間距離D1が、許容範囲内にあるか否かを判定する。この許容範囲の判定とは、サグ部に到達するまでに、減速制御中における自車速度で、車間距離D1をサグ部到達までに確保すべき車間距離にできるかどうかの判定である。この許容範囲に関するデータとして、図4に示すグラフを利用することができる。図4のグラフには、自車速度(km/h)ごとに許容可能な車頭距離(m)が示されている。この図4にグラフに対応する許容可能な車頭距離以上であれば、車間距離D1が許容範囲内であると判定される。
【0032】
そして、車間距離の上記判定において、許容範囲内にあると判定されたときにはステップ13に進み、許容範囲外であると判定されたときにはステップ14に進む。
(車間制御処理)
【0033】
ステップ12において車間距離が許容範囲内にあると判定されたときには、ステップ13として、車間制御処理をおこなう。この車間制御処理とは、目標位置に対する減速位置および減速Gを算出して、交通流量が最大となる車間距離および車速を目標とした減速制御である。この減速制御の目標速度は、たとえば60km/h程度とするのが好ましい。図5のグラフのデータを参照すると、車速が60km/h程度の場合に交通流量が最大化されるからである。
(車速制御処理)
【0034】
一方、ステップ12において車間距離が許容範囲外であると判定されたときには、ステップ14として、車速制御処理をおこなう。この車間制御処理とは、交通流量が最大となる速度のみを目標とした減速制御である。
【0035】
ここで、車間距離が許容範囲から外れる状況としては、以下のような状況が考えられる。
(i) 先行車両12と自車11との間にその他の車両13が割り込むケース(図2参照)
(ii)先行車両12の車線変更(L1→L2)により制御対象を検出できなくなるケース
(iii)自車11の車線変更(L1→L2)により、制御対象を検出できなくなるケース
(iv)先行車両12の減速により、両車両11、12の車間距離が著しく縮まるケース
(v) 自車11の加速により、両車両11、12の車間距離が著しく縮まるケース
【0036】
たとえば、(i)に示したケースのように、先行車両12と自車11との間に車両13が割り込んだ場合には、自車11における前方車両との車間距離はD1からD2に大幅に短縮され、車間距離が許容範囲から外れてしまう。
【0037】
自車11において上述した減速制御をおこなった場合、先行車両12との車間距離D1に急激な変化があったときには、車間距離および車速を目標にする減速制御処理(車間制御処理)から、速度のみを目標とする減速制御処理(車速制御処理)に切り替わる。それにより、自車11の減速制御が継続されることとなり、減速制御中の急激な速度変動を抑制することができ、それに起因する減速伝播が効果的に防止される。
【0038】
以上で説明したとおり、第1実施形態に係る車両制御方法は、車両制御装置1において実行され、交通流量が最大化される自車の減速制御をおこなう際、走行制御手段は、車間距離測定手段によって測定した自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にあると判定手段によって判定されたときには、交通流量が最大化される車間距離と車速に自車を減速制御し、自車と先行車両との車間距離が所定の範囲内にないと判定手段によって判定されたときには、交通流量が最大化される速度のみに自車を減速制御する。
【0039】
すなわち、交通流量が最大化される自車11の減速制御をおこなう際、自車11と先行車両12との車間距離が所定の範囲内にあるときには、交通流量が最大化される車間距離と車速に自車を減速制御し、自車11と先行車両12との車間距離が所定の範囲内にないときには、交通流量が最大化される速度のみに自車を減速制御する。
【0040】
それにより、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車11を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる。
【0041】
続いて、第2実施形態として、自車11の車両制御方法について、図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。図6は、第2実施形態の車両制御方法について示したフローチャートである。
(車線識別処理)
【0042】
まず、ステップ21として、自車11の走行車線を識別する。この車線識別の方法は、上述した車載カメラやレーダーの他、公知の様々な技術を採用することができる。
(制御対象判定処理)
【0043】
次に、ステップ22として、前方を走行している車両が、自車11の走行車線L1と同一の車線を走行中か否かを判定する。この判定には、自車11と前方走行車両との間の車車間通信を利用することができる。すなわち、制御対象となるべき車両が、自車11と同じ車線L1か違う車線L2かがここで判定される。
【0044】
そして、上記判定において、同じ車線であると判定されたときにはステップ23に進み、違う車線であると判定されたときにはステップ28に進む。
(車間計測処理)
【0045】
ステップ22において同じ車線であると判定されたときには、ステップ23として、上述したステップ11同様、自車11と先行車両12との間の車間距離D1を測定する。
(車間許容範囲)
【0046】
次に、ステップ24として、上述したステップ12同様、先行車両12との間の車間距離D1が、許容範囲内にあるか否かを判定する。そして、車間距離の判定において、許容範囲内にあると判定されたときにはステップ25に進み、許容範囲外であると判定されたときにはステップ26に進む。
(車間制御処理)
【0047】
ステップ24において車間距離が許容範囲内にあると判定されたときには、ステップ25として、上述したステップ13同様の車間制御処理をおこなう。
(車速制御処理)
【0048】
一方、ステップ24において車間距離が許容範囲外である判定されたときには、ステップ26として、上述したステップ14同様の車速制御処理をおこなう。
(車間制御情報を後方車へ引継ぎ処理)
【0049】
ステップ26に続くステップ27では、上述した車間制御情報を後方車14へ送って、後方車14に車間制御をおこなわせる。
(車間制御情報を後方車へ引継ぎ処理)
【0050】
一方、ステップ22において違う車線であると判定されたときには、ステップ28として、上述した車間制御情報を後方車14へ送って、後方車に車間制御をおこなわせる。
(減速制御解除)
【0051】
ステップ28に続くステップ29では、自車11の減速制御を解除して、以降の減速制御をおこなわないようにする。
【0052】
自車11において上述した減速制御をおこなうことで、制御対象となる車両が存在しないときには、後方車14に車間制御情報を送り、それ以降の車間制御を後方車14に引き継ぐ。それにより、自車11の減速制御が後方車14において継続される。
【0053】
以上で説明したとおり、第2実施形態に係る車両制御方法は、車両制御装置1において実行され、第1実施形態に係る車両制御方法のステップ11−14と同様のステップ23−26を含んでいる。そのため、第1実施形態と同様の効果が得られる。すなわち、交通流量が最大となる車間距離をサグ部に到達するまでに確保できない事態や維持できない事態が生じた場合であっても、少なくとも交通流量が最大となる車速となるように自車を減速制御するため、車速変動の伝播が効果的に抑制され、サグ渋滞の抑制につながる。
【0054】
加えて、第2実施形態においては、車線識別手段によって先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一であると識別されたときには、走行制御手段が減速制御に係る制御処理を自車でおこない、車線識別手段によって先行車両の走行車線と自車の走行車線とが同一でないと識別されたときには、制御引継手段が上記制御処理を後続車両におこなわせる。制御対象となる車両が存在しないときには、後方車14に車間制御情報を送って自車11において不要な制御処理が後方車に引き継がれる。つまり、上記減速制御をおこなう必要がないときに後方車14にその制御処理をおこなわせることで、車速変動の増幅伝播を効果的に防止されるとともに減速制御の負荷が分散される。
【符号の説明】
【0055】
1…車両制御装置、2…ECU、11…自車、12…先行車両、14…後方車。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通流量が最大化されるように自車を減速制御する車両制御装置であって、
前記減速制御の間、自車の直前を走行する同一車線上の先行車両と自車との車間距離を繰り返し測定する車間距離測定手段と、
前記車間距離測定手段によって測定した前記車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記車間距離が前記範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に自車を制御し、前記判定手段によって前記車間距離が前記範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに自車を制御する走行制御手段と
を備える、車両制御装置。
【請求項2】
交通流量が最大化されるように自車を減速制御する車両制御装置であって、
前記減速制御の間、自車の直前を走行する先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一か否かを繰り返し識別する車線識別手段と、
前記車線識別手段によって前記先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一であると識別されたときに、先行車両との車間距離を測定する車間距離測定手段と、
前記車間距離測定手段によって測定した前記車間距離が、所定の範囲内にあるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記車間距離が前記範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に制御し、前記判定手段によって前記車間距離が前記範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに制御する制御処理をおこなう走行制御手段と、
前記車線識別手段によって前記先行車両の走行車線が自車の走行車線と同一でないと識別されたときに、前記制御処理を、自車の後方を走行する後続車両におこなわせる制御引継手段と
を備える、車両制御装置。
【請求項3】
交通流量が最大化されるように自車を減速制御する制御方法であって、
前記減速制御の間、自車の直前を走行する同一車線上の先行車両と自車との車間距離を繰り返し測定するステップと、
前記車間距離が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、
前記車間距離が前記範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に自車を制御するステップと、
前記車間距離が前記範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに自車を制御するステップと
を含む、車両制御方法。
【請求項4】
交通流量が最大化されるように自車を減速制御する制御方法であって、
前記減速制御の間、自車の直前を走行する先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一か否かを繰り返し識別するステップと、
前記先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一であると識別されたときに、(a)先行車両との車間距離を測定するステップと、(b)前記車間距離が所定の範囲内にあるか否かを判定するステップと、(c)前記車間距離が前記範囲内にあると判定されたときに、交通流量が最大化される車間距離および速度に制御するステップと、(d)前記車間距離が前記範囲内にないと判定されたときに、交通流量が最大化される速度のみに制御するステップとを含む、制御処理を、自車においておこなうステップと、
前記先行車両の走行車線が、自車の走行車線と同一でないと識別されたときに、前記制御処理を、自車の後方を走行する後続車両におこなわせるステップと
を含む、車両制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−31768(P2011−31768A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180818(P2009−180818)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】