説明

車両制御装置

【課題】 車両走行中の振動を抑制すべき位置を適宜変更して常に最適な振動抑制効果を得ることができるようにする。
【解決手段】 乗員が振動抑制位置設定手段15のスイッチ位置を切り替えていれば、そのスイッチ位置に応じて振動抑制位置を設定する。また、コーナリング状態検出手段16でコーナリング状態が検出された場合、コーナリング前半は、前輪位置を振動抑制位置に設定し、コーナリング後半は、車両重心位置を振動抑制位置に設定する。また、荷物状態検出手段17の検出信号に基づいて積載荷物が振動に弱い荷物であることが検出されれば、積載荷物の位置(荷物室)に対応した振動抑制位置を設定する。また、着座位置検出手段18で検出した前席人数と後席人数の大小関係に応じて振動抑制位置を設定する。或は、後席に1人でも着座していれば、振動抑制位置を常に後席に設定しても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の振動を抑制する機能を備えた車両制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の振動抑制制御を最適化するために、特許文献1(特開2004−168148号公報)に示すように、運転者によるアクセル操作、ステアリング操作及びブレーキ操作の少なくとも1つに対応する入力指令により発生する、車両のタイヤの振動、サスペンションにおける車体バネ下の振動、及び、車体自体が受ける車体バネ上の振動の力学モデルである運動モデルを用いて、車体の振動を抑制するようにエンジン及び/又はブレーキ装置で発生する制駆動力を補正する技術が開発されている。
【0003】
この特許文献1には、振動を重点的に抑制する位置を、車体の重心位置や乗員の頭部に対応する位置に設定して制駆動力を補正することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−168148号公報(第2頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らの研究結果によれば、車両走行中の振動を抑制すべき位置は、その時の乗員の人数や後席の乗員の有無、車両走行状態等によって変更されることがより望ましいと考えられるが、上記特許文献1の技術では、振動を重点的に抑制する位置が車体の重心位置や乗員の頭部に対応する位置に固定されているため、常に最適な振動抑制効果が得られるとは限らない。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、車両走行中の振動を抑制すべき位置を適宜変更して常に最適な振動抑制効果を得ることができる車両制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、アクセル操作、ステアリング操作及びブレーキ操作の少なくとも1つに対応する物理量を入力指令として、当該入力指令に応じてエンジン及び/又はブレーキ装置で発生する制駆動力を制御する車両制御装置において、前記入力指令により発生する少なくとも車体バネ上の振動に関する運動モデルを用いて当該振動を抑制するように制駆動力を補正する振動抑制制御手段を備え、当該振動を重点的に抑制する位置(以下単に「振動抑制位置」という)を、乗員の状態、積載荷物の状態、車両の走行状態、乗員の操作の少なくとも1つに基づいて設定するようにしたものである。このようにすれば、振動抑制位置を、乗員の状態、積載荷物の状態、車両の走行状態、乗員の操作の少なくとも1つに応じて判断して適宜変更することが可能となり、常に最適な振動抑制効果を得ることができる。ここで、乗員の状態、積載荷物の状態、車両の走行状態、乗員の操作の中から複数の項目を判断する場合は、どの項目をどの程度の優先度で判断するかを車両の用途や種類・グレード等に応じて予め決めておけば良い。
【0007】
この場合、請求項2のように、前記乗員の状態を乗員の着座位置によって判定するようにしても良い。例えば、乗員が運転者だけの場合は、振動抑制位置を運転者の位置又は車両前寄りの位置に設定し、後席の乗員数が前席よりも多い場合や後席に客や役職者等が着座している場合は、振動抑制位置を後席の位置又は車両後ろ寄りの位置に設定したり、或は、後席に1人でも着座していれば、振動抑制位置を常に後席の位置に設定しても良く、また、前席と後席の乗員数が同数の場合は、振動抑制位置を前席と後席との中間位置に設定するようにしても良い。要は、乗員の着座位置と振動抑制位置との関係を車両の用途や種類・グレード等に応じて予め決めておけば良い。
【0008】
また、請求項3のように、乗員の状態を乗員の行動によって判定するするようにしても良い。例えば、乗員が読書やテレビ・映画観賞等を行っている場合は、その乗員の位置に振動抑制位置を設定して読書やテレビ・映画観賞等の障害となる振動を抑制するようにすれば良い。乗員の行動は、車室内の読書灯の点灯やディスプレイの動作状態等に基づいて判断したり、乗員の行動を検出又は入力する別の手段を設けるようにしても良い。
【0009】
また、振動抑制位置を判定する際に、積載荷物の状態を荷物の積載量や積載位置で判定しても良いが、請求項4のように、積載荷物の状態を荷物の種類によって判定するようにしても良い。例えば、荷物の中には、振動に強い荷物もあるが、振動に弱く、壊れやすい荷物もある。振動に弱い荷物が車両に積載されている場合は、振動抑制位置を積載荷物の位置に設定すれば、車両走行中の振動により積載荷物が損傷することを防止することができる。荷物の種類は、例えば、荷物に電子タグ等を取り付けて、電子タグ等に記録された荷物情報を車両側の読取装置で読み取るようにしたり、荷物の種類を検出又は入力する別の手段を車両に設けるようにしても良い。
【0010】
また、振動抑制位置を判定する際に、車両の走行状態を、加減速状態、車速、路面状態等で判定しても良いが、請求項5のように、車両の走行状態を車両のコーナリング状態によって判定するようにしても良い。例えば、コーナリング初期においては、操舵輪(前輪)の操舵角により車両の向きを変化させることが特に重要と考えられるので、コーナリング初期を検出したときに、振動抑制位置を操舵輪(前輪)の位置に設定すると良い。また、コーナリングの後半においては、車両の走行安定性を高めるために、振動抑制位置を車両の重心位置に設定しても良いし、別の観点から、他の位置に振動抑制位置を設定しても良い。コーナリング状態の検出は、ハンドルの操舵角又は横加速度を検出するセンサを用いたり、ナビゲーションシステムの道路情報からコーナリング状態を判定しても良い。或は、車両前方の道路状態を撮影するカメラの映像信号を画像処理してコーナリング状態を判定するようにしても良い。
【0011】
また、振動抑制位置を判定する際に、請求項6のように、乗員の操作を車両に設けられた振動抑制位置設定手段に対する乗員の操作に基づいて判定するようにすると良い。このようにすれば、乗員の好みに合わせた振動抑制を行うことができる。
【0012】
また、請求項7のように、乗員の状態を検出する検出手段の故障診断を行う故障診断手段を設け、この故障診断手段によって前記検出手段の故障が検出されている場合は、振動抑制位置を運転者の位置に設定するようにすると良い。このようにすれば、検出手段が故障した場合でも、運転者は振動抑制の効果を享受することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した3つの実施例を説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の実施例1を図1乃至図6に基づいて説明する。まず、図1に基づいてシステム全体の構成を説明する。
制御装置11は、マイクロコンピュータを主体として構成され、エンジン制御用の各種プログラムによって要求空気量と要求噴射量と要求点火時期を演算して電子スロットル装置等の空気量制御装置19と燃料噴射装置12と点火装置13を制御してエンジン駆動力を制御すると共に、要求制動力に応じてブレーキ装置14を制御する。
【0015】
更に、制御装置11には、車両の振動を重点的に抑制する位置(以下単に「振動抑制位置」という)を手動設定するための振動抑制位置設定手段15と、コーナリング状態(走行状態)を検出するためのコーナリング状態検出手段16(走行状態検出手段)と、積載荷物の状態(荷物の種類)を検出するための荷物状態検出手段17と、乗員の着座位置(乗員の状態)を検出するための着座位置検出手段18が設けられている。
【0016】
振動抑制位置設定手段15は、前席と後席の両方又は前席のみに設けられ、図4に示すように、スイッチ位置を、“AUTO”、“1”、“2”、“3”、“4”のいずれか1つに切り替えることができるようになっている。“AUTO”は、コーナリング状態(走行状態)、積載荷物の状態、乗員の着座位置を所定の優先順位で判定して振動抑制位置を自動設定する自動設定モードであり、“1”は、振動抑制制御を実施しない振動抑制OFFモードであり、“2”は、前席を振動抑制位置に設定し、“3”は、車両中央(重心)を振動抑制位置に設定し、“4”は、後席を振動抑制位置に設定する。
【0017】
コーナリング状態検出手段16は、ステアリングの操舵角又は横加速度を検出するセンサを用いたり、ナビゲーションシステムの道路情報からコーナリング状態を判定しても良い。或は、車両前方の道路状態を撮影するカメラの映像信号を画像処理してコーナリング状態を判定するようにしても良い。
【0018】
荷物状態検出手段17は、荷物に電子タグ等を取り付けて、電子タグ等に記録された荷物種類情報を車両側の読取装置で読み取るようにしたり、荷物の種類を検出又は手動入力する別の手段を車両に設けるようにしても良い。
【0019】
着座位置検出手段18は、着座した乗員の体重を感知する圧力センサ(重量センサ)や、乗員の体温を感知する赤外線センサ等を各座席毎に設けたり、乗員の着座位置を手動入力する別の手段を設けるようにしても良い。
【0020】
制御装置11は、後述する図2の振動抑制位置設定ルーチンを所定周期で実行することで、振動抑制位置設定手段15のスイッチ位置、コーナリング状態検出手段16で検出したコーナリング状態、荷物状態検出手段17で検出した荷物の種類、着座位置検出手段18で検出した乗員の着座位置を所定の優先順位で判定して振動抑制位置を設定するようにしている。
【0021】
そして、制御装置11は、アクセル操作、ステアリング操作及びブレーキ操作の少なくとも1つに対応する物理量を入力指令として、当該入力指令に応じてエンジン及び/又はブレーキで発生する制駆動力を制御すると共に、当該入力指令により発生する少なくとも車体バネ上の振動に関する運動モデルを用いて当該振動を抑制するように制駆動力を補正する振動抑制制御手段として機能する。
【0022】
本実施例1の運動モデルは、前輪側及び後輪側のサスペンションに支持されるタイヤが受ける路面反力による上下及び/又は捻りの振動を考慮したタイヤモデルと、前記前輪側及び後輪側のサスペンションにおける車体バネ下上下方向の振動を考慮したサスペンションモデルと、前記前輪側及び後輪側のサスペンションに支持された車体自体のバネ上の振動を考慮した車体バネ上モデルとを1つの運動モデルとして構築され、乗員が受ける振動の感覚を低減するため、車体バネ上モデルを最優先に用いて制駆動力を補正するようにしている。この運動モデルの詳細は、特開2004−168148号公報に記載されている。
【0023】
制御装置11は、急なアクセル操作に対して演算されたエンジン駆動トルクによってバネ上すなわち車体がどのような挙動をなすかを運動モデルで演算する。そして、この運動モデルで演算した車両のピッチング及び上下動の挙動に基づいてフィードバックゲインを演算し、特にピッチレートや上下速度を低減するように制駆動力(エンジン駆動力とブレーキ力)を補正する。車体バネ上モデルは、予め車両の諸元等から使用する車両に適合されているので、制駆動力の補正によって実際の車両もほぼその運動モデル通りにバネ上の制振が行われ、結果として運転者への不快感が低減される。
【0024】
ステアリング操舵が行われた場合は、ハンドルを切り込んでいくときに前後輪の横力が発生すると共に、ドラグ(車両の進行を抑える方向に作用する力)も増大し、車体の前後方向の振動であるピッチング挙動が発生する。このドラグが車体バネ上モデルに外乱として入力されると、ドラグによる車体の挙動が演算されるので、この状態量をフィードバックした制駆動力は、切り込みによるドラグ増大時に高めに補正され、切り返しでは低めに補正されることで、ピッチング及び上下動を抑えるように働く。また、この補正により切り込み時は後輪に荷重が移動することでリヤの接地性が上がり車両のヨー挙動を安定させる効果を発生し、また切り返し時は前輪に荷重が移動して操舵の応答を高める効果を発生する。
【0025】
この際、要求制駆動力がマイナス値となるような場合は、エンジン駆動力の減量補正のみでは要求制駆動力を実現できないため、それを実現するための要求ブレーキ力を演算して、ブレーキ装置14を作動させることで、要求制駆動力を実現して振動を抑制する。
【0026】
本実施例1の運動モデルは、振動抑制位置の座標データをパラメータとして含み、後述する図2の振動抑制位置設定ルーチンで設定された振動抑制位置の座標データを運動モデルに入力することで、設定された振動抑制位置で振動を重点的に抑制するように要求制駆動力を演算し、その要求制駆動力に基づいてエンジン及び/又はブレーキ装置14で発生する制駆動力を制御して、設定された振動抑制位置で振動を重点的に抑制する。以下、図2の振動抑制位置設定ルーチンの処理内容を説明する。
【0027】
図2の振動抑制位置設定ルーチンは、エンジン運転中に所定周期で実行され、特許請求の範囲でいう振動抑制制御手段としての役割を果たす。本ルーチンが起動されると、まずステップ101で、振動抑制位置設定手段1が手動設定モード(“1”、“2”、“3”、“4”)に操作されているか否かを判定し、手動設定モードに操作されていれば、ステップ104に進み、図3の手動設定ルーチンを実行して、次のようにして振動抑制位置を設定する。まず、ステップ201で、乗員が操作した振動抑制位置設定手段15のスイッチ位置が“1”以外であるか否か(“2”、“3”、“4”のいずれかであるか否か)を判定する。その結果、スイッチ位置が“1”と判定されれば、ステップ203に進み、振動抑制制御を実施しない振動抑制OFFモードに設定する。一方、スイッチ位置が“1”以外であると判定されれば、ステップ202に進み、図4のテーブルに従ってスイッチ位置に応じた振動抑制位置を次のように設定する。スイッチ位置が“2”であれば、前席を振動抑制位置に設定し、“3”であれば、車両中央(重心)を振動抑制位置に設定し、“4”であれば、後席を振動抑制位置に設定する。
【0028】
図2のステップ101で「No」と判定された場合(つまり振動抑制位置設定手段1が自動設定モード“AUTO”に設定されている場合)は、ステップ102に進み、コーナリング状態検出手段16の検出信号に基づいてコーナリング中であるか否かを判定し、コーナリング中であれば、ステップ105に進み、図5のコーナリング優先自動設定ルーチンを実行して、次のようにしてコーナリング状態に対応した振動抑制位置を設定する。まず、ステップ211で、コーナリング状態検出手段16の検出信号に基づいてコーナリング前半であるか否かを判定し、コーナリング前半であれば、ステップ212に進み、前輪位置を振動抑制位置に設定する。一方、上記ステップ211で、コーナリング前半でないと判定された場合(つまりコーナリング後半である場合)は、ステップ213に進み、車両重心位置を振動抑制位置に設定する。
【0029】
図2のステップ102で「No」と判定された場合(つまりコーナリング中でない場合)は、ステップ103に進み、荷物状態検出手段17の検出信号に基づいて積載荷物が振動に弱い荷物であるか否かを判定し、振動に弱い荷物であれば、ステップ106に進み、積載荷物の位置(荷物室)に対応した振動抑制位置を設定する。
【0030】
これに対して、上記ステップ103で「No」と判定された場合(つまり振動に弱い荷物が積載されていない場合)は、ステップ107に進み、図6の着座位置優先自動設定ルーチンを実行して、次のようにして乗員の着座位置に対応した振動抑制位置を設定する。まず、ステップ221で、着座位置検出手段18が正常であるか否かを判定し、着座位置検出手段18が正常でない(故障)と判定されれば、ステップ228に進み、着座位置検出手段故障フラグをONして、次のステップ229で、運転者の位置である前席を振動抑制位置に設定する。上記ステップ221の処理が特許請求の範囲でいう故障診断手段としての役割を果たす。
【0031】
一方、上記ステップ221で着座位置検出手段18が正常であると判定されれば、ステップ222に進み、着座位置検出手段故障フラグをOFFして、次のステップ223で、着座位置検出手段18で検出した前席人数と後席人数とを比較し、前席人数が後席人数よりも多ければ、ステップ225に進み、前席を振動抑制位置に設定し、前席人数が後席人数と同じであれば、ステップ226に進み、前席と後席との中間位置を振動抑制位置に設定し、前席人数が後席人数よりも少なければ、ステップ227に進み、後席を振動抑制位置に設定する。
【0032】
図2の振動抑制位置設定ルーチンは、振動抑制位置を設定する優先順位を、振動抑制位置設定手段15に対する乗員の操作>コーナリング状態>荷物状態>着座位置の順としたが、この優先順位を車両の用途や種類・グレード等に応じて適宜変更しても良い。
【0033】
以上説明した本実施例1では、振動抑制位置設定手段15に対する乗員の操作、コーナリング状態、荷物状態、着座位置に応じて振動抑制位置を適正な位置に設定することが可能となり、常に最適な振動抑制効果を得ることができる。
【0034】
尚、振動抑制位置設定手段15、コーナリング状態検出手段16、荷物状態検出手段17のいずれかの故障が検出された場合も、着座位置検出手段18の故障検出時と同様に、運転者の位置である前席を振動抑制位置に設定するようにしても良い。
【0035】
また、車両の走行状態を、コーナリング状態の他に、加減速状態、車速、路面状態等のいずれかに基づいて判定して、車両の走行状態に応じて振動抑制位置を設定するようにしても良い。
【実施例2】
【0036】
上記実施例1では、図6の着座位置優先自動設定ルーチンによって乗員の着座位置に応じて振動抑制位置を設定する際に、前席人数と後席人数との大小関係で振動抑制位置を設定するようにしたが、本発明の実施例2では、図7の着座位置優先自動設定ルーチンを実行することで、後席を優先して振動抑制位置を設定するようにしている。
【0037】
図7の着座位置優先自動設定ルーチンでは、まず、ステップ301で、着座位置検出手段18が正常であるか否かを判定し、着座位置検出手段18が正常でない(故障)と判定されれば、ステップ306に進み、着座位置検出手段故障フラグをONして、次のステップ307で、運転者の位置である前席を振動抑制位置に設定する。
【0038】
これに対して、上記ステップ301で着座位置検出手段18が正常であると判定されれば、ステップ302に進み、着座位置検出手段故障フラグをOFFして、次のステップ303で、着座位置検出手段18の検出信号に基づいて後席に着座している人がいるか否かを判定し、後席に着座している人がいれば、ステップ304に進み、後席を振動抑制位置に設定し、後席に着座している人がいなければ、ステップ305に進み、前席を振動抑制位置に設定する。
【0039】
以上説明した本実施例2によれば、後席を優先して振動抑制位置を設定することができるので、後席に客や役職者等が着座することが多い車両に最適な振動抑制制御を実施することができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3では、後席に着座する乗員の行動(例えば読書、テレビ・映画観賞等)を検出する乗員行動検出手段を車両に搭載し、図8の乗員行動優先自動設定ルーチンを実行することで、乗員の行動に応じて振動抑制位置を設定するようにしている。乗員行動検出手段は、車室内の読書灯の点灯やディスプレイの動作状態等に基づいて乗員の行動を検出したり、乗員の行動を入力する別の手段を設けるようにしても良い。
【0041】
図8の乗員行動優先自動設定ルーチンでは、まず、ステップ401で、乗員行動検出手段が正常であるか否かを判定し、乗員行動検出手段が正常でない(故障)と判定されれば、ステップ405に進み、乗員行動検出手段故障フラグをONして、次のステップ406で、運転者の位置である前席を振動抑制位置に設定する。
【0042】
これに対して、上記ステップ401で乗員行動検出手段が正常であると判定されれば、ステップ402に進み、着座位置検出手段故障フラグをOFFして、次のステップ403で、乗員行動検出手段によって後席の乗員の行動が検出されたか否かを判定し、後席の乗員の行動が検出されていれば、ステップ404に進み、後席を振動抑制位置に設定し、後席の乗員の行動が検出されていなければ、ステップ406に進み、前席を振動抑制位置に設定する。
【0043】
以上説明した本実施例3では、後席に着座した人が読書、テレビ・映画観賞等を安定して行うことができる。
尚、前席側にも乗員行動検出手段を設けるようにしても良い。
また、着座位置と乗員行動の両方を考慮して振動抑制位置を設定しても良いし、着座位置と乗員行動のどちらか一方のみを考慮して振動抑制位置を設定しても良い。
【0044】
また、本発明は、乗員の状態、積載荷物の状態、車両の走行状態、乗員の操作の全ての項目を所定の優先順位で判定して振動抑制位置を設定するものに限定されず、1つの項目のみ又は2〜3の項目のみを判定して振動抑制位置を設定するようにしても良い。
【0045】
その他、本発明は、上記各実施例に限定されず、電気モータを駆動源とする電気自動車や、電気モータとエンジンの両方を駆動源とするハイブリッド車両にも適用して実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施例1のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】実施例1の振動抑制位置設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】実施例1の手動設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】振動抑制位置設定手段のスイッチ位置と振動抑制位置との関係を規定するテーブルの一例を説明する図である。
【図5】実施例1のコーナリング優先自動設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図6】実施例1の着座位置優先自動設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】実施例2の着座位置優先自動設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】実施例3の乗員行動優先自動設定ルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0047】
11…制御装置(振動抑制制御手段,故障診断手段)、12…燃料噴射装置、13…点火装置、14…ブレーキ装置、15…振動抑制位置設定手段、16…コーナリング状態検出手段(走行状態検出手段)、17…荷物状態検出手段、18…着座位置検出手段、19…空気量制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクセル操作、ステアリング操作及びブレーキ操作の少なくとも1つに対応する物理量を入力指令として、当該入力指令に応じてエンジン及び/又はブレーキ装置で発生する制駆動力を制御する車両制御装置において、
前記入力指令により発生する少なくとも車体バネ上の振動に関する運動モデルを用いて当該振動を抑制するように制駆動力を補正する振動抑制制御手段を備え、
前記振動抑制制御手段は、振動を重点的に抑制する位置を、乗員の状態、積載荷物の状態、車両の走行状態、乗員の操作の少なくとも1つに基づいて設定することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記振動抑制制御手段は、前記乗員の状態を乗員の着座位置によって判定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記振動抑制制御手段は、前記乗員の状態を乗員の行動によって判定することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記振動抑制制御手段は、前記積載荷物の状態を荷物の種類によって判定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記振動抑制制御手段は、前記車両の走行状態を車両のコーナリング状態によって判定することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記振動抑制制御手段は、前記乗員の操作を車両に設けられた振動抑制位置設定手段に対する乗員の操作に基づいて判定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記乗員の状態を検出する検出手段の故障診断を行う故障診断手段を備え、
前記振動抑制制御手段は、前記故障診断手段によって前記検出手段の故障が検出されている場合は、振動を重点的に抑制する位置を運転者の位置に設定することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−224687(P2006−224687A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−37027(P2005−37027)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】