説明

車両及びその制御方法

【課題】内燃機関に接続された電力動力入出力装置と電動機とが接続された入力軸と車軸側との間の動力の伝達およびその解除を行なうものにおいて、シフトポジションが非走行ポジションにある状態でエンジンを運転する際に、内燃機関をより安定な状態で運転する。
【解決手段】ハイブリッド自動車20は、駐車ポジションでバッテリ50に蓄電する際、変速機60のクラッチC1,C2を接続解除しモータMG1,MG2による発電によりバッテリ50へ蓄電する。このとき、バッテリ50への蓄電要求電力が増加したときにはイナーシャの大きいモータMG2から回転数を増加させると共に、モータMG1の回転数を維持した状態でエンジン22の回転数を増加させる。また、バッテリ50への蓄電要求電力が減少したときにはイナーシャの大きいモータMG2の回転数を維持し、モータMG1から回転数を減少させエンジン22の回転数を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両としては、エンジンと、エンジンからの出力で発電可能な第1モータジェネレータと、このエンジンからの出力を第1モータジェネレータと出力部材とに分配する分配機構と、出力部材と駆動輪までの間で回転力を加える第2モータジェネレータと、第2モータジェネレータと駆動輪との間で動力伝達を接続・遮断するクラッチと、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載された車両は、停車中にクラッチにより動力を遮断した状態で、第1及び第2モータジェネレータを正方向に駆動するか、第1モータジェネレータを正方向へ回転駆動すると共に第2モータジェネレータで回転をロックするか、第1モータジェネレータをロックすると共に第2モータジェネレータを正方向へ回転駆動するかのいずれかによりエンジンを始動することにより、エンジン始動時の駆動力変動により生じる乗員の違和感を抑制する。
【特許文献1】特開平9−170533号公報(図13)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、この特許文献1に記載された車両では、停車状態でエンジンを運転するときは、例えば消費電力が大きくなりバッテリへの蓄電を行なう際などが考えられる。特許文献1に記載された車両では、このような場合のどのように第1,第2モータジェネレータ及びエンジンを運転するかは具体的に検討されていなかった。このように、第2モータジェネレータと駆動輪との間で動力伝達を遮断可能である場合は、第1,第2モータジェネレータ及びエンジンの運転ポイントを比較的自由に定めることが可能であり、エンジンをより安定な状態で運転することが望まれていた。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、内燃機関に接続された電力動力入出力装置と電動機とが接続された入力軸と車軸側との間の動力の伝達およびその解除を行なうものにおいて、シフトポジションが非走行ポジションにある状態でエンジンを運転する際に、内燃機関をより安定な状態で運転することができる車両及びその制御方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
内燃機関と、
前記内燃機関からの動力を入力する入力軸と車軸側との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な接続手段と、
前記入力軸に接続されると共に該入力軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、発電機を含んで構成され該発電機による電力の入出力と前記入力軸および前記出力軸への駆動力の入出力とを伴って前記入力軸に対する前記出力軸の回転数を調整可能な電力動力入出力手段と、
前記入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力をやりとり可能な蓄電手段と、
シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する際、前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達を解除するよう接続手段を制御すると共に前記発電機による発電及び前記電動機による発電により前記蓄電手段へ蓄電するよう前記内燃機関と該発電機と該電動機とを制御し、該蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する制御手段と、
を備えるものである。
【0007】
この車両では、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で蓄電手段に蓄電する際、入力軸と車軸側との間の動力の伝達を解除すると共に発電機による発電及び電動機による発電により蓄電手段へ蓄電するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、この蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ内燃機関の回転数が増加するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。このように、内燃機関の回転数を増加させる際に、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方を内燃機関の回転数を増加する制御に用いるため、例えば内燃機関から出力される動力が予定以上に大きくなり吹き上がってしまうようなときでも、イナーシャの大きい方の回転数は増加しにくく、対処の時間を稼ぐことが可能であり、内燃機関の回転数の大きな増加を抑制しやすい。したがって、内燃機関をより安定な状態で運転することができる。ここで、「非走行ポジション」には、例えば駐車ポジションやニュートラルポジションなどが含まれる。
【0008】
本発明の車両において、前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの小さい方の回転数を維持しながら前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段であるものとしてもよい。
【0009】
本発明の車両において、前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方の回転数を維持しながら前記内燃機関の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段であるものとしてもよい。こうすれば、例えば内燃機関の回転数が予定以上に小さくなったときでも、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方の回転数は低下しにくいため、内燃機関の回転数をより安定させ、内燃機関の予期せぬ停止を抑制することができる。
【0010】
本発明の車両において、前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの小さい方から回転数を減少させ前記内燃機関の出力軸の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段であるものとしてもよい。こうすれば、発電機と電動機とのうちイナーシャの小さい方は回転数を変化させ易いため、より応答よく内燃機関の回転数を制御することができ、内燃機関をより安定な状態で運転しやすい。
【0011】
本発明の車両において、前記制御手段は、前記蓄電手段への蓄電制御中にシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへ変更された際には、自立運転するよう前記内燃機関を制御すると共に前記入力軸の回転を停止するよう前記電動機を制御し、その運転中に前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達が行なわれるよう前記接続手段を制御する手段であるものとしてもよい。こうすれば、比較的容易に入力軸と車軸側との接続を行なうことができる。また、電動機で入力軸の回転を停止するため、走行状態へ切り替わる際のショックをより抑えることができる。
【0012】
本発明の車両において、前記電力動力入出力手段は、前記接続手段の入力軸と前記内燃機関の出力軸と回転軸との3軸を有し該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力可能な発電機と、を備える手段であるものとしてもよい。また、本発明の車両において、前記接続手段は、入力軸と車軸側との間の変速段の変更を伴う動力の伝達および伝達の解除が可能な変速手段に含まれているものとしてもよい。こうすれば、接続手段を別に設ける必要がない。
【0013】
あるいは、本発明の車両は、
内燃機関と、
前記内燃機関からの動力を入力する入力軸と車軸側との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な接続手段と、
前記入力軸に接続されると共に該入力軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、発電機を含んで構成され該発電機による電力の入出力と前記入力軸および前記出力軸への駆動力の入出力とを伴って前記入力軸に対する前記出力軸の回転数を調整可能な電力動力入出力手段と、
前記入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力をやりとり可能な蓄電手段と、
シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する際、前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達を解除するよう接続手段を制御すると共に前記発電機による発電及び前記電動機による発電により前記蓄電手段へ蓄電するよう前記内燃機関と該発電機と該電動機とを制御し、該蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの小さい方から回転数を減少させ前記内燃機関の出力軸の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する、及び/又は、該蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方の回転数を維持しながら前記内燃機関の出力軸の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する制御手段と、
を備えるものとしてもよい。
【0014】
このように、内燃機関の回転数を減少させる際に、発電機と電動機とのうちイナーシャの小さい方を内燃機関の回転数を減少する制御に用いるものとすると、例えば内燃機関から出力される動力が予定以上に小さくなりストールしそうなときでも、イナーシャの小さい方の回転数は変化させやすく、内燃機関の回転数の調整をより容易に行なうことが可能であり、内燃機関の回転数の大きな減少を抑制しやすい。また、内燃機関の回転数を減少させる際に、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方の回転数を維持するものとすると、例えば内燃機関から出力される動力が予定以上に小さくなりストールしそうなときでも、イナーシャの大きい方の回転数は変化しにくく、内燃機関の回転数の低下をより抑制することが可能であり、内燃機関の回転数の大きな減少を抑制しやすい。したがって、内燃機関をより安定な状態で運転することができる。なお、この車両において、上述した車両の種々の態様を採用してもよい。
【0015】
本発明の車両の制御方法は、
内燃機関と、前記内燃機関からの動力を入力する入力軸と車軸側との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な接続手段と、前記入力軸に接続されると共に該入力軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、発電機を含んで構成され該発電機による電力の入出力と前記入力軸および前記出力軸への駆動力の入出力とを伴って前記入力軸に対する前記出力軸の回転数を調整可能な電力動力入出力手段と、前記入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力をやりとり可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する際、前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達を解除するよう接続手段を制御すると共に前記発電機による発電及び前記電動機による発電により前記蓄電手段へ蓄電するよう前記内燃機関と該発電機と該電動機とを制御し、該蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御するものである。
【0016】
この車両の制御方法では、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で蓄電手段に蓄電する際、入力軸と車軸側との間の動力の伝達を解除すると共に発電機による発電及び電動機による発電により蓄電手段へ蓄電するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御し、この蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ内燃機関の回転数が増加するよう内燃機関と発電機と電動機とを制御する。このように、内燃機関の回転数を変化させる際に、発電機と電動機とのうちイナーシャの大きい方を内燃機関の回転数を増加する制御に用いるため、例えば内燃機関から出力される動力が予定以上に大きくなり吹き上がってしまうようなときでも、イナーシャの大きい方の回転数は増加しにくく、対処の時間を稼ぐことが可能であり、内燃機関の回転数の変化を抑制しやすい。したがって、内燃機関をより安定な状態で運転することができる。なお、この車両の制御方法において、上述した車両の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した車両の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0018】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された入力軸としてのリングギヤ軸32aに接続されたモータMG2と、リングギヤ軸32aの動力を変速して駆動輪39a,39bに連結された駆動軸36に出力する変速機60と、駆動輪39a,39bをロックするパーキングロック機構90と、自動車全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0019】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0020】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32には入力軸としてのリングギヤ軸32aがそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aから変速機60,駆動軸36,デファレンシャルギヤ38を介して、最終的には車両の駆動輪39a,39bに出力される。なお、入力軸としてのリングギヤ軸32aには動力分配統合機構30を介してエンジン22の動力が入力される。
【0021】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。ここでは、モータMG2は、モータMG1に比してイナーシャが大きい構成となっているものとした。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。
【0022】
変速機60は、ブレーキB1〜B3やクラッチC1,C2を有し、入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側である駆動軸36との接続および接続の解除を行なうと共に両軸の接続をリングギヤ軸32aの回転数を複数段(ここでは4段)に変速して駆動軸36に伝達できるよう構成されている。
【0023】
パーキングロック機構90は、駆動軸36に取り付けられたパーキングギヤ92と、パーキングギヤ92と噛み合ってその回転駆動を停止した状態でロックするパーキングロックポール94と、から構成されている。パーキングロックポール94は、他のポジションから駐車ポジション(Pポジション)への操作信号または駐車ポジションから他のポジションへの操作信号を入力したハイブリッド用電子制御ユニット70により図示しないアクチュエータが駆動制御されることによって作動し、パーキングギヤ92との噛合およびその解除によりパーキングロックおよびその解除を行なう。駆動軸36は機械的に駆動輪39a,39bに接続されているから、パーキングロック機構90は間接的に駆動輪39a,39bをロックしていることになる。
【0024】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、バッテリECU52では、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量(SOC)も演算している。
【0025】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速Vなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、変速機60の図示しないブレーキやクラッチのアクチュエータへの駆動信号やパーキングロック機構90の図示しないアクチュエータへの駆動信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0026】
なお、実施例のハイブリッド自動車20では、シフトポジションセンサ82により検出するシフトレバー81のポジションとしては、非走行ポジションとして駐車ポジション(Pポジション)や中立ポジション(Nポジション)など、走行ポジションとしてドライブポジション(Dポジション),リバースポジション(Rポジション)などがある。シフトレバー81が駐車ポジション及び中立ポジションの状態のときには、変速機60のブレーキB1〜B3やクラッチC1,C2が開放されて入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側である駆動軸36とが切り離される。
【0027】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて入力軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。
【0028】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、まず、シフトポジションに応じた動作について説明する。図2は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるメイン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ROM74に記憶され、ハイブリッド自動車20のシステム起動後に繰り返し実行される。ここでは、説明の便宜のため、ハイブリッド自動車20が走行状態であるときから説明する。このルーチンを実行すると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、シフトポジションが変更されたか否かをシフトポジションセンサ82からの信号に基づいて判定する(ステップS100)。シフトポジションが変更されていないときには、現在のシフトポジションを調べ(ステップS110)、現在のシフトポジションが走行ポジション(例えばDポジションやRポジション)であるときには駆動制御処理を実行し(ステップS120)、このルーチンを終了する。ここで、駆動制御処理では、上述したトルク変換運転モードや充放電運転モード、モータ運転モードなどを切り替えつつ、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて入力軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とを運転制御する。
【0029】
一方、ステップS100でシフトポジションが変更されたときには、変更後のシフトポジションを調べ、変更後のシフトポジションが駐車ポジションであるときには、変速機60のブレーキB1〜B3及びクラッチC1,C2を開放すると共に駆動軸36をパーキングロック機構90によりパーキングロックする(ステップS140)。ステップS140のあと、または、ステップS110で現在のシフトポジションが駐車ポジションであるときには、駐車ポジション時運転制御処理を実行し(ステップS150)、このルーチンを終了する。
【0030】
ここで、メイン制御ルーチンの説明を中断し、駐車ポジション時運転制御ルーチンについて説明する。図3は、ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駐車ポジション時運転制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、ROM74に記憶され、シフトレバー81が駐車ポジションであるときに繰り返し実行される。このルーチンを実行すると、ハイブリッド自動車20のCPU72は、エンジン22の回転数Neや発電要求パワーPb*,モータ回転数Nm1,Nm2、回転数増加制御時フラグF,回転数減少制御時フラグGなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS200)。ここで、エンジン22の回転数Neは、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいて計算されたものをエンジンECU24から通信により入力するものとした。また、発電要求パワーPb*は、バッテリ50の残容量SOCや電池温度Tb,図示しない補機の目標消費電力などに基づいて、残容量SOCが小さくなると大きくなる傾向に設定されてRAM76の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。さらに、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されるモータMG1,MG2のロータの回転位置に基づいて計算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。回転数増加制御時フラグF及び回転数減少制御時フラグGの値は、RAM76の所定アドレスに書き込まれたものを読み込むことにより入力するものとした。この回転数増加制御時フラグFは、後述する駐車時のエンジン回転数Neの増加制御を実行中に値「1」にセットされるフラグであり、初期値は値「0」である。また、回転数減少制御時フラグGは、後述する駐車時のエンジン回転数Neの減少制御を実行中に値「1」にセットされるフラグであり、初期値は値「0」である。
【0031】
こうしてデータを入力すると、回転数増加制御時フラグFが値1であるか否かを判定し(ステップS210)、回転数増加制御時フラグFが値1でないときには、回転数減少制御時フラグGが値1であるか否かを判定する(ステップS220)。回転数減少制御時フラグGが値1でないときには、発電要求パワーPb*が閾値P1以上であるか否かを判定する(ステップS230)。この閾値P1は、停車中にエンジン22の動力による発電によりバッテリ50を蓄電するか否かを判定する値であり、実験によりエンジン22の運転効率などに基づいて経験的に定められている。発電要求パワーPb*が閾値P1以上でないときには、発電効率が低く且つバッテリ50に残容量SOCが十分あるものとして、エンジン22を停止し(ステップS240)、このルーチンを終了する。
【0032】
一方、発電要求パワーPb*が閾値P1以上であるとき、例えば、バッテリ50の残容量SOCが低くなり発電要求パワーPb*が大きな値になると、バッテリ50への蓄電が必要であるものとみなし、エンジン22が運転中であるか否かを判定し(ステップS250)、エンジン22が運転中でないときにはエンジンの始動処理を行ない(ステップS260)、このルーチンを終了する。ここで、エンジン22の始動処理について説明する。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図4に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2(リングギヤ32の回転数Nr)を示す。なお、S軸上の太線矢印がモータMG1から出力されたトルクTm1を示し、R軸上の太線矢印がモータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルク(反力トルク)及びこの反力トルクを打ち消すべくモータMG2から出力されたトルクTm2を示す。図4に示すように、エンジン22の始動処理では、動力分配統合機構30を介してエンジン22のクランクシャフト26をモータMG1によりモータリングすると共に、このモータMG1から出力されたトルクがリングギヤ軸32aに作用するトルクを打ち消すようモータMG2からトルクを出力させ、エンジン22が所定の運転可能回転数以上となったあと燃料噴射を行なうよう、モータECU40及びエンジンECU24がモータMG1,MG2及びエンジン22を制御する処理を行なうものとした。なお、ここでは、モータMG1からの反力トルクをモータMG2からのトルクにより打ち消すものとしたが、変速機60のブレーキB1〜B3及びクラッチC1,C2などを適宜係合し、駆動軸36をロックしたパーキングロック機構90によりモータMG1からの反力トルクを打ち消すものとしてもよい。
【0033】
ステップS250でエンジン22が運転中であるときには、発電要求パワーPb*に基づいて、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定すると共にこの設定した値をエンジンECU24へ送信する(ステップS270)。エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*との設定は、バッテリ50が要求する発電要求パワーPb*とロスLossとの和としてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定し、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと設定された要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。なお、駐車中であるが、例えば図示しない空調機の消費電力が変化するなど、車両の消費電力に応じて発電要求パワーPb*は変化する。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。ここでは、要求パワーPe*に対応する領域を複数定めておき、その領域毎に1つの目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを定めるよう設定してあるものとし(図5の運転ポイントA,B,C参照)、エンジン22の運転状態が頻繁に変動してしまうのを抑制するものとした。
【0034】
次に、エンジン22の目標回転数Ne*の値を調べ(ステップS280)、エンジン22の目標回転数Ne*が前回値を維持する、即ち変化していないときには、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてモータMG1の目標回転数Nm1*,トルク指令Tm1*及びモータMG2の目標回転数Nm2*,トルク指令Tm2*を設定し設定した値をモータECU40へ送信し(ステップS290)、このルーチンを終了する。このモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*及び目標回転数Nm1*,Nm2*の設定は、エンジン22が目標回転数Ne*及び目標トルクTe*の運転ポイント(例えば図5の運転ポイントA,B,C参照)で運転した際に最も効率よくモータMG1,MG2により発電を行うことができるポイントとなるように予め実験により経験的に定めた値をROM74に記憶しておき、エンジン22の運転ポイントが与えられるとそれに対応する値をROM74から読み出して設定するものとした。こうすれば、エンジン22の効率のよい運転ポイントと、モータMG1,MG2の効率のよい運転ポイントを組み合わせるため、極めて効率よくバッテリ50の蓄電処理を行なうことができる。そして、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、目標回転数Nm1*,Nm2*及びトルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0035】
一方、ステップS280でエンジン22の目標回転数Ne*が前回値よりも増加したとき、即ちバッテリ50への蓄電要求電力としての発電要求パワーPb*が増加したときには(例えば図5の運転ポイントAからBへの移行など)、駐車時のエンジン回転数Neの増加制御(ステップS300〜S330)を実行する。具体的には、回転数増加制御時フラグFに値1をセットし(ステップS300)、ステップS300のあと、または、ステップS210で回転数増加制御時フラグFが値1であるときには、ステップS270で設定したエンジン22の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*となるように、モータMG1及びモータMG2のうちイナーシャの大きいモータMG2の回転数を増加させる目標回転数Nm2*及びトルク指令Tm2*を設定すると共に、モータMG1及びモータMG2のうちイナーシャの小さいモータMG1の目標回転数Nm1*及びトルク指令Tm1*を維持する値(前回と同じ値)に設定し、設定した値をモータECU40へ送信する(ステップS310)。ここでは、次式(1)によりモータMG2の目標回転数Nm2*を設定すると共に、次式(2)によりトルク指令Tm2*を設定し、モータMG2の回転数を増加することによりエンジン22の回転数Neを増加させるものとした。バッテリ50への蓄電要求電力が増加した際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図6に示す。図6以降では、現在の状態を実線で示し、目標値を一点鎖線で示し、目標値の状態への移行を白矢印で示した。発電要求パワーPb*が増加しエンジン22の回転数を増加させるときには、イナーシャの小さいモータMG1の回転数を維持し、図中の白矢印で示すように、イナーシャの大きいモータMG2の回転数を増加することによりエンジンの回転数を増加させる。こうすれば、例えばエンジン22が急に吹き上がるようなときなどであっても、大きなイナーシャによりエンジン22の回転上昇を抑制しフューエルカットまでの時間を稼ぐことが可能であり、エンジンの過回転をより抑制することができる。なお、式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(2)は、モータMG2を目標回転数Nm2*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0036】
Nm2*=Ne*・(1+ρ)-Nm1・ρ (1)
Tm2*=前回Tm2*+k1(Nm2*-Nm2)+k2∫(Nm2*-Nm2)dt (2)
【0037】
ステップS310のあと、モータMG2の回転数Nm2が目標回転数Nm2*に至ったか否かを判定し(ステップS320)、モータMG2の回転数Nm2が目標回転数Nm2*に至っていないときにはこのルーチンを終了する。続いて、ステップS210で回転数増加制御時フラグFが値1であると判定されると、ステップS310の目標回転数Nm2*及びトルク指令Tm2*を設定・送信する処理とステップS320の判定の処理を繰り返す。即ち、モータMG2の回転数Nm2が目標回転数Nm2*に至るまで待つ。そして、モータMG2の回転数Nm2が目標回転数Nm2*に至ったときには、回転数増加制御時フラグFに値0をセットし(ステップS330)、そのままこのルーチンを終了する。続いて、ステップS280ではエンジン22の目標回転数Ne*が維持されていると判定されるから、上述したステップS290の処理、即ち、発電効率のよい回転数及びトルクでモータMG1及びモータMG2を制御する処理に移行する。図7は、エンジン22の回転数が目標回転数Ne*へ至ったあとモータMG1,MG2の発電効率のよい運転ポイントへ移行する一例の共線図である。このように、シフトポジションが駐車ポジションであり、変速機60のクラッチを開放した状態で発電要求パワーPb*が増加したときには、イナーシャの大きなモータMG2の回転数を増加すると共にモータMG2よりもイナーシャの小さなモータMG1の回転数を維持した状態でエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*及び目標トルクTe*に至ったあとに、モータMG1,MG2を効率のよい目標回転数Nm1*,Nm2*及びトルク指令Tm1*,Tm2*に移行して駆動制御するのである。
【0038】
一方、ステップS280でエンジン22の目標回転数Ne*が前回値よりも減少したとき、即ちバッテリ50への蓄電要求電力としての発電要求パワーPb*が減少したときには(例えば図5の運転ポイントBからAへの移行など)、駐車時のエンジン回転数Neの減少制御(ステップS340〜S370)を実行する。具体的には、回転数減少制御時フラグGに値1をセットし(ステップS340)、ステップS340のあと、または、ステップS220で回転数減少制御時フラグGが値1であるときには、ステップS270で設定したエンジン22の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*となるように、モータMG1及びモータMG2のうちイナーシャの大きいモータMG2の目標回転数Nm2*及びトルク指令Tm2*を維持する値(前回と同じ値)に設定すると共に、モータMG1及びモータMG2のうちイナーシャの小さいモータMG1の回転数を減少させる目標回転数Nm1*及びトルク指令Tm1*を設定し、設定した値をモータECU40へ送信する(ステップS350)。ここでは、次式(3)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を設定すると共に、次式(4)によりトルク指令Tm1*を設定し、モータMG2の回転数は維持しモータMG1の回転数を減少することによりエンジン22の回転数Neを減少させるものとした。バッテリ50への蓄電要求電力が減少した際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図8に示す。発電要求パワーPb*が減少しエンジン22の回転数を減少させるときには、イナーシャの大きいモータMG2の回転数を維持し、図中の白矢印で示すように、イナーシャの小さいモータMG1の回転数を減少することによりエンジンの回転数を減少させる。こうすれば、例えばエンジン22がストールしそうになるときなどに、大きなイナーシャ側の回転数は変化しにくいためエンジン22の回転数を低下させにくくより安定することができるし、小さなイナーシャのモータMG1の回転数を調整することにより、応答よくエンジン22の回転数を調整することができる。なお、式(3)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。また、式(4)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(4)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0039】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/ρ (3)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (4)
【0040】
ステップS350のあと、モータMG1の回転数Nm1が目標回転数Nm1*に至ったか否かを判定し(ステップS360)、モータMG1の回転数Nm1が目標回転数Nm1*に至っていないときにはこのルーチンを終了する。続いて、ステップS220で回転数増加制御時フラグFが値1であると判定されると、ステップS350の目標回転数Nm1*及びトルク指令Tm1*を設定・送信する処理とステップS360の判定の処理を繰り返す。即ち、モータMG1の回転数Nm1が目標回転数Nm1*に至るまで待つ。そして、モータMG1の回転数Nm1が目標回転数Nm1*に至ったときには、回転数減少制御時フラグGに値0をセットし(ステップS370)、そのままこのルーチンを終了する。続いて、ステップS280ではエンジン22の目標回転数Ne*が維持されていると判定されるから、上述したステップS290の処理、即ち、発電効率のよい回転数及びトルクでモータMG1及びモータMG2を制御する処理に移行する。図9は、エンジン22の回転数が目標回転数Ne*へ至ったあとモータMG1,MG2の発電効率のよい運転ポイントへ移行する一例の共線図である。このように、シフトポジションが駐車ポジションであり、変速機60のクラッチを開放した状態で発電要求パワーPb*が減少したときには、イナーシャの大きなモータMG2の回転数を維持すると共にモータMG2よりもイナーシャの小さなモータMG1の回転数を減少させてエンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*及び目標トルクTe*に至ったあとに、モータMG1,MG2を効率のよい目標回転数Nm1*,Nm2*及びトルク指令Tm1*,Tm2*に移行して駆動制御するのである。
【0041】
さて、図2に示したメイン制御ルーチンの説明に戻る。メイン制御ルーチンのステップS130で変更後のシフトポジションが走行ポジションであるとき、即ち、駐車ポジションから走行ポジションへ変更されたときには、エンジン22が運転中であるか否かを調べ(ステップS160)、エンジン22が運転中であるとき、即ちバッテリ50への蓄電制御を行なっているときには、エンジン22が自立運転する指令をエンジンECU24へ送信すると共に、変速機60のブレーキB1〜B3及びクラッチC1,C2が係合可能となるように、モータMG2の目標回転数Nm2*を値0に設定し、設定した目標回転数Nm2*をモータECU40へ送信し(ステップS170)、モータMG2の回転数Nm2が目標回転数Nm2*となるまで待機する(ステップS180)。ステップS180のあと、または、ステップS160でエンジンが運転中でないときには、変速機60のブレーキB1〜B3及びクラッチC1,C2を適宜係合し(ステップS190)、上述した駆動制御処理を実行し(ステップS120)、このルーチンを終了する。クラッチを係合する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図10に示し、走行状態での駆動制御を行なう際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図を図11に示す。図10に示すように、モータMG2側のトルク制御を行なうことにより、入力軸としてのリングギヤ軸32aの回転数を略値0とし、回転数が値0である駆動軸36と係合する際のショックを抑制するのである。そして、変速機60のクラッチC1,C2などを係合したあとは、エンジン22、モータMG1及びモータMG2を駆動制御して走行するのである(図11)。このように、リングギヤ軸32aと駆動軸36とを係合して動力を伝達させる際には、エンジン22を自立運転させると共にモータMG2側を制御するため、エンジン22からのトルク変動を考慮しなければならないモータMG1側を駆動制御するのに比して、より容易に走行状態に移行することができる。また、走行状態へ移行する際のショックをより低減することができる。
【0042】
以上詳述した本実施例のハイブリッド自動車20によれば、シフトポジションが駐車ポジションにある状態でバッテリ50に蓄電する際、入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側としての駆動軸36との間の動力の伝達を解除すると共に発電機としてのモータMG1及び電動機としてのモータMG2による発電によりバッテリ50へ蓄電するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御し、この蓄電制御中にバッテリ50への蓄電要求電力(発電要求パワーPb*)が増加したときには、イナーシャの大きいモータMG2から回転数を増加させると共に、イナーシャの小さいモータMG1の回転数を維持した状態でエンジン22の回転数を増加するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御する。このように、エンジン22の回転数を増加させる際に、モータMG1とモータMG2とのうちイナーシャの大きいモータMG2をエンジン22の回転数の低下を抑制する制御に用いるため、例えばエンジン22から出力される動力が予定以上に大きくなり吹き上がってしまうようなときでも、イナーシャの大きいモータMG2の回転数は増加しにくく、対処の時間を稼ぐことが可能であり、エンジン22の回転数の大きな増加を抑制しやすい。したがって、エンジン22をより安定な状態で運転することができる。また、駐車時の蓄電制御中に発電要求パワーPb*が減少したときには、イナーシャの大きいモータMG2の回転数を維持し、イナーシャの小さいモータMG1から回転数を減少させエンジン22の回転数を減少するようエンジン22とモータMG1及びモータMG2を制御するため、例えばエンジン22の回転数が予定以上に小さくなったときでも、イナーシャの大きい方の回転数は低下しにくく、イナーシャの小さい方は回転数を変化し易いため、より応答よくエンジン22の回転数を制御することができ、エンジン22の予期せぬ停止を抑制することができる。更に、バッテリ50への蓄電中にシフトポジションが駐車ポジションから走行ポジションへ変更された際には、自立運転するようエンジン22を制御すると共にリングギヤ軸32aの回転を停止するようモータMG2を制御し、この制御中にリングギヤ軸32aと駆動軸36との間の動力の伝達が行なわれるよう変速機60を制御するため、比較的容易にリングギヤ軸32aと駆動軸36との接続を行なうことができる。また、モータMG2でリングギヤ軸32aを固定するため、変速機60のクラッチC1,C2などを係合する際のショックをより抑制することができる。更にまた、クラッチC1,C2がリングギヤ軸32aと駆動軸36との間の変速段の変更を伴う動力の伝達および伝達の解除が可能な変速機60に含まれているため、リングギヤ軸32aと駆動軸36との間の動力の伝達を解除する機構を別に設ける必要がない。
【0043】
なお、本発明は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した実施例では、駐車ポジション時運転制御ルーチンで、バッテリ50への蓄電要求電力が増加したときにはイナーシャの大きなモータMG2の回転数を増加してエンジン22の回転数を増加させ、バッテリ50への蓄電要求電力が減少したときにはイナーシャの大きなモータMG2の回転数を維持してエンジン22の回転数を減少するものとしたが、いずれか一方を実行するものとしてもよい。こうすれば、採用したいずれか一方の際には、エンジン22をより安定な状態で運転することができる。
【0045】
上述した実施例では、駐車ポジション時運転制御ルーチンで、バッテリ50への蓄電要求電力が増加したときにはイナーシャの小さいモータMG1の回転数を維持した状態でエンジン22の回転数を増加させるものとしたが、イナーシャの小さいモータMG1の回転数を変化させてもよい。即ち、イナーシャの小さいモータMG1の回転数に関係なくイナーシャの大きいモータMG2の回転数を増加することによりエンジン22の回転数を増加するものとしてもよい。なお、エンジン22の回転を安定させる観点からは、モータMG1の回転数の変化は、より小さい方がより好ましい。
【0046】
上述した実施例では、駐車ポジション時運転制御ルーチンで、バッテリ50への蓄電要求電力が減少したときにはイナーシャの大きいモータMG2の回転数を維持しながらエンジン22の回転数を減少させるものとしたが、イナーシャの大きなモータMG2の回転数を変化させてもよい。即ち、イナーシャの大きいモータMG2の回転数に関係なくイナーシャの小さいモータMG1の回転数を減少することによりエンジン22の回転数を減少するものとしてもよい。なお、エンジン22の回転を安定させる観点からは、モータMG2の回転数の変化は、より小さい方がより好ましい。
【0047】
上述した実施例では、シフトポジションが駐車ポジションであるときに駐車ポジション時運転制御を行なうものとしたが、非走行ポジションとしての中立(ニュートラル)ポジションのときに、同様の処理を行なってもよい。なお、中立ポジション時には、メイン制御ルーチンのステップS140ではパーキングロックをしないものとしてもよい。
【0048】
上述した実施例では変速機60が備えるクラッチC1,C2を開放することにより、入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側としての駆動軸36との間の動力の伝達を解除するものとしたが、特にこれに限られず、入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側としての駆動軸36との間の動力の伝達を解除可能であるものであればよく、変速機60に代えて又はこれに加えてクラッチを設けるものとしてもよい。なお、変速機60は4段の変速段をもって変速可能なものとしたが、変速段は4段に限られるものではなく、2段以上の変速段をもって変速可能であってもよい。
【0049】
上述した実施例では、複数の領域毎に1つのエンジン22の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*を設定するものとしたが(図5)、バッテリ50の蓄電要求電力に基づいて連続的に変化する値としてエンジン22の目標回転数Ne*及び目標トルクTe*を設定するものとしてもよい。
【0050】
上述した実施例では、メイン制御ルーチンでシフトポジションが駐車ポジションから走行ポジションに変更されたときにエンジン22を自立運転させると共にリングギヤ軸32aの回転数が値0となるようにモータMG2を制御するものとしたが、特にこれに限られず、エンジン22を自立運転しないものとしてもよいし、リングギヤ軸32aの回転数が値0となるようにモータMG1を制御するものとしてもよい。こうしても、走行を開始することはできる。
【0051】
上述した実施例では、ハイブリッド用電子制御ユニット70がメイン制御ルーチンや駐車ポジション時運転制御ルーチンを実行するものとしたが、特にこれに限定されず、モータECU40で行なってもよいし、エンジンECU24で行なってもよいし、エンジンECU24とモータECU40とで分担して行なってもよいし、エンジンECU24、モータECU40、ハイブリッド用電子制御ユニット70で分担して行なってもよい。
【0052】
上述した実施例では、駆動輪39a,39bに連結された駆動軸36に変速機60を介して接続された動力軸としてのリングギヤ軸32aにエンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して出力するハイブリッド自動車20としたが、図12の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ132と駆動輪39a,39bに動力を出力する駆動軸36に変速機60を介して接続された入力軸32bに接続されたアウターロータ134とを有し、エンジン22の動力の一部を入力軸32b,変速機60,駆動軸36を介して駆動輪39a,39bに伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機130を備えるものとしてもよい。
【0053】
ここで、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、入力軸としてのリングギヤ軸32aと車軸側としての駆動軸36との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な変速機60のクラッチC1,C2が「接続手段」に相当し、リングギヤ軸32aに接続されると共にこのリングギヤ軸32aとは独立に回転可能にエンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26に接続され、発電機としてのモータMG1による電力の入出力とリングギヤ軸32aおよびクランクシャフト26への駆動力の入出力とを伴ってリングギヤ軸32aに対するクランクシャフト26の回転数を調整可能なモータMG1及び動力分配統合機構30が「電力動力入出力手段」に相当し、エンジン22のクランクシャフト26と入力軸としてのリングギヤ軸32aに接続された動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、リングギヤ軸32aに動力を入出力可能なモータMG2が「電動機」に相当し、モータMG1およびモータMG2と電力をやりとり可能なバッテリ50が「蓄電手段」に相当し、シフトポジションが駐車ポジションにある状態でバッテリ50に蓄電する際、リングギヤ軸32aと駆動軸36との間の動力の伝達を解除するよう変速機60を制御すると共にモータMG1による発電及びモータMG2による発電によりバッテリ50へ蓄電するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御し、バッテリ50への蓄電要求電力が変化したときには、モータMG1とモータMG2とのうちイナーシャの大きい方をエンジン22の回転数の低下を抑制する方向へ制御すると共に、バッテリ50の蓄電要求電力の変化方向へエンジン22の回転数が変化するようモータMG1とモータMG2とのうちイナーシャの小さい方とエンジン22とを制御するエンジンECU24、モータECU40及びハイブリッド用電子制御ユニット70が「制御手段」に相当する。さらに、対ロータ電動機130も「電力動力入出力手段」に相当する。
【0054】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「変速手段」としては、4段変速の変速機60に限定されるものではなく、入力軸と車軸側との間の変速段の変更を伴う動力の伝達および伝達の解除が可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1との組み合わせによるものや対ロータ電動機130に限定されるものではなく、入力軸に接続されると共に入力軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って入力軸と出力軸とに動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、入力軸に回転子が接続され固定子の回転磁界により回転子を回転駆動させて入力軸に動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電力動力入出力手段および電動機と電力をやりとり可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。「制御手段」としては、シフトポジションSPが駐車ポジションにある状態でバッテリ50へ蓄電する際に、リングギヤ軸32aと駆動軸36との間の動力の伝達を解除するよう変速機60を制御すると共にモータMG1及びモータMG2による発電によりバッテリ50へ蓄電するようエンジン22とモータMG1とモータMG2とを制御し、バッテリ50への蓄電要求電力が変化したときには、モータMG1とモータMG2とのうちイナーシャの大きい方をエンジン22の回転数の低下を抑制する方向へ制御すると共に、バッテリ50の蓄電要求電力の変化方向へエンジン22の回転数が変化するようモータMG1とモータMG2とのうちイナーシャの小さい方とエンジン22とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる作動作用を有するものなど、入力軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれかの軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。
【0055】
なお、実施例や変形例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるメイン制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】ハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駐車ポジション時運転制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する説明図である。
【図6】バッテリ50への蓄電要求電力が増加した際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。
【図7】エンジン22の回転数が目標回転数Ne*へ至ったあとモータMG1,MG2の発電効率のよい運転ポイントへ移行する一例の共線図である。
【図8】バッテリ50への蓄電要求電力が減少した際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。
【図9】エンジン22の回転数が目標回転数Ne*へ至ったあとモータMG1,MG2の発電効率のよい運転ポイントへ移行する一例の共線図である。
【図10】クラッチを係合する際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。
【図11】走行状態での駆動制御を行なう際の動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図である。
【図12】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0058】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、32b 入力軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 変速機、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、90 パーキングロック機構、92 パーキングギヤ、94 パーキングロックポール、130 対ロータ電動機、132 インナーロータ、134 アウターロータ、MG1,MG2 モータ、B1〜B3 ブレーキ、C1〜C2 クラッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関からの動力を入力する入力軸と車軸側との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な接続手段と、
前記入力軸に接続されると共に該入力軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、発電機を含んで構成され該発電機による電力の入出力と前記入力軸および前記出力軸への駆動力の入出力とを伴って前記入力軸に対する前記出力軸の回転数を調整可能な電力動力入出力手段と、
前記入力軸に動力を入出力可能な電動機と、
前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力をやりとり可能な蓄電手段と、
シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する際、前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達を解除するよう接続手段を制御すると共に前記発電機による発電及び前記電動機による発電により前記蓄電手段へ蓄電するよう前記内燃機関と該発電機と該電動機とを制御し、該蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの小さい方の回転数を維持しながら前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段である、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方の回転数を維持しながら前記内燃機関の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段である、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記制御手段は、シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する蓄電制御中に該蓄電手段への蓄電要求電力が減少したときには、前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの小さい方から回転数を減少させ前記内燃機関の出力軸の回転数を減少するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する手段である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記制御手段は、前記蓄電手段への蓄電制御中にシフトポジションが非走行ポジションから走行ポジションへ変更された際には、自立運転するよう前記内燃機関を制御すると共に前記入力軸の回転を停止するよう前記電動機を制御し、その運転中に前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達が行なわれるよう前記接続手段を制御する手段である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記電力動力入出力手段は、前記接続手段の入力軸と前記内燃機関の出力軸と回転軸との3軸を有し該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、前記回転軸に動力を入出力可能な発電機と、を備える手段である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記接続手段は、入力軸と車軸側との間の変速段の変更を伴う動力の伝達および伝達の解除が可能な変速手段に含まれている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
内燃機関と、前記内燃機関からの動力を入力する入力軸と車軸側との間の動力の伝達および伝達の解除が可能な接続手段と、前記入力軸に接続されると共に該入力軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、発電機を含んで構成され該発電機による電力の入出力と前記入力軸および前記出力軸への駆動力の入出力とを伴って前記入力軸に対する前記出力軸の回転数を調整可能な電力動力入出力手段と、前記入力軸に動力を入出力可能な電動機と、前記電力動力入出力手段および前記電動機と電力をやりとり可能な蓄電手段と、を備える車両の制御方法であって、
シフトポジションが非走行ポジションにある状態で前記蓄電手段に蓄電する際、前記入力軸と前記車軸側との間の動力の伝達を解除するよう接続手段を制御すると共に前記発電機による発電及び前記電動機による発電により前記蓄電手段へ蓄電するよう前記内燃機関と該発電機と該電動機とを制御し、該蓄電制御中に蓄電手段への蓄電要求電力が増加したときには前記発電機と前記電動機とのうちイナーシャの大きい方から回転数を増加させ前記内燃機関の回転数を増加するよう該内燃機関と該発電機と該電動機とを制御する、
車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−6224(P2010−6224A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167300(P2008−167300)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】