説明

車両用動力伝達装置の制御装置

【課題】電動機と、その電動機に動力伝達可能に連結された変速部とを備える車両用動力伝達装置において、回生制御中に変速が実施されるに際して、トルク相中に発生する引き込み感を減少することができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供する。
【解決手段】回生制御手段実行中に自動変速部20の変速が実施されるとき、回生制御手段94は、自動変速部20のトルク相中において、自動変速部20への回生トルク(入力負トルク)を減少させるため、トルク相中に発生する回生トルク(入力負トルク)によって生じる引き込み感を減少させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機と、その電動機に動力伝達可能に連結された変速部とを備える車両用動力伝達装置に係り、特に、回生制御時に変速が実施されるに際して生じる、車両の引き込み感を低減する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機と、その電動機に動力伝達可能に連結された変速部とを備え、例えばエンジンなどの主動力源に対して電動機によってアシストトルクを付与する、或いは、駆動輪側からの被駆動トルクに対して回生制御を実施可能な車両用動力伝達装置の制御装置がよく知られている。例えば、特許文献1のハイブリッド駆動装置の制御装置がその一例である。特許文献1では、パワーオフ変速時において、変速部の入力回転速度を同期回転速度に制御した後、係合装置のトルク容量を増大させる技術が開示されている。このようにすれば、係合装置のトルク容量が増大することに伴う回転速度変化が小さくなり、ショックが低減される。
【0003】
【特許文献1】特開2004−203219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1において、大きな負トルク(回生トルク)が入力された状態で変速が進行すると、変速進行に必要な係合クラッチトルク容量も大きくなるに伴い、トルク相中に大きな引き込み感が発生する可能性があった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動機と、その電動機に動力伝達可能に連結された変速部とを備える車両用動力伝達装置において、回生制御中に変速が実施されるに際して、トルク相中に発生する引き込み感を減少することができる車両用動力伝達装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための、請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)電動機と、入力軸がその電動機に動力伝達可能に連結された変速部と、その変速部の出力軸側から動力が伝達される車両被駆動時に前記電動機を発電機として機能させることで回生制御を実行する回生制御手段とを、備える車両用動力伝達装置の制御装置において、(b)前記回生制御手段実行中に前記変速部の変速が実施されるとき、前記回生制御手段は、前記変速部のトルク相中において、その変速部への入力負トルクを減少させることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置において、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作が実施されているとき、前記回生制御手段は、トルク相中の前記入力負トルクの減少量を小さくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、回生制御手段実行中に変速部の変速が実施されるとき、回生制御手段は、変速部のトルク相中において、その変速部への入力負トルクを減少させるため、トルク相中に発生する入力負トルクによって生じる引き込み感を減少させることができる。
【0009】
また、請求項2にかかる発明の車両用動力伝達装置の制御装置によれば、運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作が実施されているとき、前記回生制御手段は、トルク相中の前記入力負トルクの減少量を小さくするため、入力負トルクが大きくなる、すなわち回生トルクが大きくなるので、回生量を増加させることができる。なお、ブレーキペダルの踏み込み中は、車両の減速度が大きくなるに伴い、引き込み感が掻き消されて気付きにくくなるので、入力負トルク(回生トルク)の増加が許容される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0011】
図1は、本発明の一実施例の動力伝達装置(車両用動力伝達装置)10の一部を示す骨子図である。図1において、動力伝達装置10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、その入力軸14と駆動輪32(図6参照)との間の動力伝達経路においてその入力軸14に連結された差動部11と、その差動部11と駆動輪32との間の動力伝達経路において伝達部材18(変速部の入力軸)を介してその差動部11に連結されている自動変速部(変速部)20と、その自動変速部20と駆動輪32との間の動力伝達経路においてその自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22(変速部の出力軸に対応)とを備えている。この動力伝達装置10は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸には、走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8が直接にあるいは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結されている。また、エンジン8の動力は、動力伝達装置10を介して、動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)および一対の車軸等を順次介して左右一対の駆動輪32へ伝達される。
【0012】
このように、本実施例の動力伝達装置10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、動力伝達装置10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側半分が省略されている。
【0013】
差動部11は、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機MG1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、その動力分配機構16に動力伝達可能に連結された第1電動機MG1と、伝達部材18と一体的に回転するように設けられている第2電動機MG2とを備えている。なお、第1電動機MG1および第2電動機MG2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、動力分配機構16の差動状態を制御するための差動用電動機として機能する第1電動機MG1は、反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備える。そして、駆動輪32に動力伝達可能に連結された第2電動機MG2は、走行用の駆動力源として駆動力を出力する走行用電動機として機能するためモータ(電動機)機能およびジェネレータ機能を備える。そして、図1から判るように、第2電動機MG2は直接に自動変速部20の入力回転速度NIN(伝達部材18の回転速度N18)を変化させ得るように動力伝達可能に自動変速部20に連結されており、第1電動機MG1は差動部遊星歯車装置24を介して自動変速部20の入力回転速度NINを変化させ得るように自動変速部20に連結されている。以下、これら第1電動機MG1および第2電動機MG2を特に区別しない場合には、単に「電動機MG」と表す。
【0014】
動力分配機構16は、エンジン8と駆動輪32との間に連結された差動機構であって、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ0を有するシングルピニオン型の差動部遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この差動部遊星歯車装置24は、差動部サンギヤS0、差動部遊星歯車P0、その差動部遊星歯車P0を自転および公転可能に支持する差動部キャリヤCA0、差動部遊星歯車P0を介して差動部サンギヤS0と噛み合う差動部リングギヤR0を回転要素(要素)として備えている。差動部サンギヤS0の歯数をZS0、差動部リングギヤR0の歯数をZR0とすると、上記ギヤ比ρ0はZS0/ZR0である。
【0015】
この動力分配機構16においては、差動部キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、差動部リングギヤR0は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は差動部サンギヤS0とトランスミッションケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は差動部サンギヤS0と差動部キャリヤCA0との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されると、動力分配機構16は差動部遊星歯車装置24の3要素である差動部サンギヤS0、差動部キャリヤCA0、差動部リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機MG1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機MG1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機MG2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。このように動力分配機構16が差動状態とされると、動力分配機構16に動力伝達可能に連結された第1電動機MG1および/又は第2電動機MG2の運転状態が制御されることにより、動力分配機構16の差動状態、すなわち入力軸14の回転速度と伝達部材18の回転速度N18の差動状態が制御される。
【0016】
その差動状態で上記切換クラッチC0あるいは切換ブレーキB0が係合させられると、動力分配機構16は、前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、上記切換クラッチC0が係合させられて差動部サンギヤS0と差動部キャリヤCA0とが一体的に係合させられると、動力分配機構16は差動部遊星歯車装置24の3要素である差動部サンギヤS0、差動部キャリヤCA0、差動部リングギヤR0が共に回転すなわち一体回転させられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられて差動部サンギヤS0がトランスミッションケース12に連結させられると、動力分配機構16は、差動部サンギヤS0が非回転状態とさせられるロック状態とされて前記差動作用が不能な非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、差動部リングギヤR0は差動部キャリヤCA0よりも増速回転されるので、動力分配機構16は増速機構として機能するものであり、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
【0017】
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)の変速状態を差動状態すなわち非ロック状態と非差動状態すなわちロック状態とに選択的に切り換える差動状態切換装置として機能している。すなわち、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)を電気的な差動装置として作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な無段変速機として作動する電気的な無段変速作動可能な無段変速状態と、電気的な無段変速作動を為さない変速状態例えば無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化を一定にロックするロック状態すなわち1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動する電気的な無段変速作動をしないすなわち電気的な無段変速作動不能な定変速状態(非差動状態)、換言すれば変速比が一定の1段または複数段の変速機として作動する定変速状態とに、選択的に切り換える差動状態切換装置として機能している。
【0018】
本発明の変速部に対応する自動変速部20は、変速比(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)を段階的に変化させることができる有段式の自動変速機として機能する変速機であり、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置30を備えている。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ1を有している。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置30は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1、第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3である。
【0019】
自動変速部20では、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第1キャリヤCA1は第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3は第3ブレーキB3を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2と第3キャリヤCA3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。このように、自動変速部20と伝達部材18とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間すなわち差動部11(伝達部材18)と駆動輪32との間の動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、あるいは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
【0020】
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3は従来の車両用有段式自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介装されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
【0021】
以上のように構成された動力伝達装置10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれかあるいは後進ギヤ段(後進変速段)あるいはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度NIN/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では、動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、差動部11は、前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、動力伝達装置10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、また、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、動力伝達装置10は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。また、差動部11も有段変速状態と無段変速状態とに切り換え可能な変速機であると言える。
【0022】
例えば、動力伝達装置10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である最高速固定変速段として機能する第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば全てのクラッチおよびブレーキC0,C1,C2,B0,B1,B2,B3が解放される。
【0023】
しかし、動力伝達装置10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって動力伝達装置10全体としてのトータル変速比(総合変速比)γTが無段階に得られるようになる。このとき、自動変速部20が変速されるに際して、自動変速部20の変速進行に伴い回転速度が変化する伝達部材18の回転速度N18と整合させるように、差動部11が自動変速部20の変速方向に対して反対方向に変速させられる。
【0024】
図3は、無段変速部あるいは第1変速部として機能する差動部11と有段変速部あるいは第2変速部として機能する自動変速部20とを含んで構成される動力伝達装置10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表した共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρ0〜ρ3の関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度Nを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
【0025】
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する差動部サンギヤS0、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する差動部キャリヤCA0、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する差動部リングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は差動部遊星歯車装置24のギヤ比ρ0に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第1サンギヤS1および第2サンギヤS2を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第1キャリヤCA1を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第1リングギヤR1、第2キャリヤCA2、第3キャリヤCA3を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3サンギヤS3をそれぞれ表し、それらの間隔は第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ0に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
【0026】
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の動力伝達装置10は、動力分配機構16(差動部11)において、差動部遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(差動部キャリヤCA0)が入力軸14すなわちエンジン8に連結されるとともに切換クラッチC0を介して第2回転要素(差動部サンギヤS0)RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機MG1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第3回転要素(差動部リングギヤR0)RE3が伝達部材18および第2電動機MG2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部(有段変速部)20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により差動部サンギヤS0の回転速度と差動部リングギヤR0の回転速度との関係が示される。
【0027】
例えば、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態(差動状態)に切り換えられたときは、第1電動機MG1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される差動部サンギヤS0の回転が上昇あるいは下降させられると、車速Vに拘束される差動部リングギヤR0の回転速度が略一定である場合には、直線L0と縦線Y2との交点で示される差動部キャリヤCA0の回転速度が上昇あるいは下降させられる。また、切換クラッチC0の係合により差動部サンギヤS0と差動部キャリヤCA0とが連結されると、動力分配機構16は上記3回転要素が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度Nと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。あるいは、切換ブレーキB0の係合によって差動部サンギヤS0の回転が停止させられると動力分配機構16は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される差動部リングギヤR0すなわち伝達部材18の回転速度は、エンジン回転速度Nよりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
【0028】
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してトランスミッションケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結される。
【0029】
自動変速部20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点、および第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点を通る斜めの直線L1と、出力軸22に連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22に連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22に連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22に連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度Nと同じ回転速度で第8回転要素RE8に差動部11すなわち動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度Nよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
【0030】
図4は、動力伝達装置10を制御するための制御装置としての電子制御装置34に入力される信号およびその電子制御装置34から出力される信号を例示している。この電子制御装置34は、CPU、ROM、RAM、および入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1電動機MG1、および第2電動機MG2に関するハイブリッド駆動制御や、自動変速部20の変速制御、あるいは第2電動機MG2の回生制御時において変速が行われる際の車両の制御等を実行するものである。
【0031】
電子制御装置34には、図4に示す各センサやスイッチなどから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションPSHを表す信号、第1電動機MG1の回転速度NMG1を表す信号、第2電動機MG2の回転速度NMG2を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度Nを表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコン作動を示すエアコン信号、出力軸22の回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温を示す油温信号、ECTの作動を示すECT信号、サイドブレーキ操作を示す信号、常用ブレーキとしてのホイールブレーキ46の作動を制御する制動装置45(図6参照)を作動させるために操作されるブレーキペダル(操作体)36の操作量を検出するブレーキ操作量センサ37からのブレーキ操作量信号、触媒温度を示す触媒温度信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダル39の操作量(アクセル開度)Accを示すアクセル開度信号、エンジン8のカムの角度を表すカム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号、入力軸14の回転速度を表す信号、車両の重量を示す車重信号、各車輪38(図6参照)の車輪速を示す車輪速信号などが、それぞれ供給される。
【0032】
また、上記電子制御装置34からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図6参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管に備えられた電子スロットル弁のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号や燃料噴射装置によるエンジン8の各気筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコン作動のための電動エアコン駆動信号、第1電動機MG1およびMG2の作動を指令する指令信号、コントローラBの作動のための指令信号、コントローラAの作動のための指令信号、シフトインジケータ作動のためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時に各車輪38へ必要な制動力を分配するとともに制動時の車輪38のスリップを防止するABS制御やVSC制御などを行うために作動させられるABSアクチュエータ(ブレーキアクチュエータ)43の作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路44(図6参照)に含まれる電磁弁(たとえばリニアソレノイドバルブ等)を作動させるためのバルブ指令信号、油圧制御回路44に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁、ライン圧コントロールソレノイドバルブ)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動オイルポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
【0033】
前記制動装置45は、後述の図6に示すように、常用ブレーキとしてよく知られた所謂ディスクブレーキであって、車軸に固定されて車輪38(駆動輪32)と共に回転するディスク47と、車体に連結されたサスペンションを構成する部材等に配設され、マスターシリンダー49等からブレーキ油圧が供給されることによりブレーキパッド(摩擦材)を介してディスク47を挟圧するキャリパ48とを備えるホイールブレーキ46と、ABSアクチュエータ43等とを有して構成されている。上記ABSアクチュエータ43(ブレーキアクチュエータ43)は、たとえば、ブレーキ油圧の元圧を発生させる油圧ポンプやアキュムレータ、および各車輪38のブレーキ油圧を独立に調圧する電磁弁(たとえばリニアソレノイドバルブ等)等を備え、電子制御装置34からの指令に従って各車輪38のキャリパ48へブレーキ油圧を供給するとともにその供給されるブレーキ油圧を調圧制御するものである。上記ホイールブレーキ46は、車両の制動時において、車輪38と共に回転するディスク47に対してキャリパ48からブレーキパッドが押し付けられることにより発生する摩擦により車輪38の回転を制動するものであり、その摩擦による制動力(油圧制動トルク、ブレーキ制動トルク)は、ABSアクチュエータ43から供給される油圧の大きさに応じて増減させられるようになっている。
【0034】
図5は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
【0035】
そのシフトレバー52は、動力伝達装置10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態(中立状態)とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、動力伝達装置10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
【0036】
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路44が電気的に切り換えられる。
【0037】
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切り換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジション、および「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切り換えを選択するための駆動ポジションでもある。
【0038】
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジションあるいは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジションあるいは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
【0039】
図6は、電子制御装置34による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、有段変速制御手段82は、自動変速部20の変速を行う変速制御手段として機能するものである。例えば、有段変速制御手段82は、予め記憶された図7に示す実線および一点鎖線に示す関係(変速線図、変速マップ)から車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断し、すなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の変速を実行する。このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を除いた油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令)を油圧制御回路44へ出力する。なお、アクセル開度Accと自動変速部20の要求出力トルクTOUT(図7の縦軸)とはアクセル開度Accが大きくなるほどそれに応じて上記要求出力トルクTOUTも大きくなる対応関係にあることから、図7の変速線図の縦軸はアクセル開度Accであっても差し支えない。
【0040】
ハイブリッド制御手段84は、動力伝達装置10の前記無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機MG2との駆動力の配分や第1電動機MG1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセルペダル操作量(アクセル開度)Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機MG2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NとエンジントルクTとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機MG1の発電量を制御する。
【0041】
ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度Nと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、例えば図8に示すようなエンジン回転速度Nとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)Tとをパラメータとする二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に定められたエンジン8の動作曲線の一種である最適燃費率曲線LEF(燃費マップ、関係)を予め記憶しており、その最適燃費率曲線LEFにエンジン8の動作点PEG(以下、「エンジン動作点PEG」と表す)が沿わされつつエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTとエンジン回転速度Nとなるように動力伝達装置10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。ここで、上記エンジン動作点PEGとは、エンジン回転速度N及びエンジントルクTなどで例示されるエンジン8の動作状態を示す状態量を座標軸とした二次元座標においてエンジン8の動作状態を示す動作点である。
【0042】
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機MG1により発電された電気エネルギをインバータ53を通して蓄電装置56や第2電動機MG2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機MG1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ53を通してその電気エネルギが第2電動機MG2へ供給され、その第2電動機MG2が駆動されて第2電動機MG2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機MG2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
【0043】
ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度信号Accに基づいてスロットルアクチュエータ40動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。
【0044】
前記図7の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機MG2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機MG2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図7に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図7中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に予め記憶されている。
【0045】
そして、ハイブリッド制御手段84は、例えば図7の駆動力源切換線図から車速Vと要求出力トルクTOUTとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。このように、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行は、図7から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT時すなわち低エンジントルクT時、或いは車速Vの比較的低車速時すなわち低負荷域で実行される。
【0046】
ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度NMG1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用によりエンジン回転速度Nを零乃至略零に維持する。
【0047】
ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行とモータ走行とを切り換えるために、エンジン8の作動状態を運転状態と停止状態との間で切り換える、すなわちエンジン8の始動および停止を行うエンジン始動停止制御手段86を備えている。このエンジン始動停止制御手段86は、ハイブリッド制御手段84により例えば図7の駆動力源切換線図から車両状態に基づいてモータ走行とエンジン走行と切換えが判断された場合に、エンジン8の始動または停止を実行する。
【0048】
例えば、エンジン始動停止制御手段86は、図7の実線Bの点a→点bに示すように、アクセルペダル39が踏込操作されて要求出力トルクTOUTが大きくなり車両状態がモータ走行領域からエンジン走行領域へ変化した場合には、第1電動機MG1に通電して第1電動機回転速度NMG1を引き上げることで、すなわち第1電動機MG1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度Nを引き上げ、所定のエンジン回転速度N’例えば自律回転可能なエンジン回転速度Nで点火装置により点火させるようにエンジン8の始動を行って、ハイブリッド制御手段84によるモータ走行からエンジン走行へ切り換える。このとき、エンジン始動停止制御手段86は、第1電動機回転速度NMG1を速やかに引き上げることでエンジン回転速度Nを速やかに所定のエンジン回転速度N’まで引き上げてもよい。これにより、良く知られたアイドル回転速度NEIDL以下のエンジン回転速度領域における共振領域を速やかに回避できて始動時の振動が抑制される。
【0049】
また、エンジン始動停止制御手段86は、図7の実線Bの点b→点aに示すように、アクセルペダル39が戻されて要求出力トルクTOUTが小さくなり車両状態がエンジン走行領域からモータ走行領域へ変化した場合には、燃料噴射装置により燃料供給を停止させるように、すなわちフューエルカットによりエンジン8の停止を行って、ハイブリッド制御手段84によるエンジン走行からモータ走行へ切り換える。このとき、エンジン始動停止制御手段86は、第1電動機回転速度NMG1を速やかに引き下げることでエンジン回転速度Nを速やかに零乃至略零まで引き下げてもよい。これにより、上記共振領域を速やかに回避できて停止時の振動が抑制される。或いは、エンジン始動停止制御手段86は、フューエルカットより先に、第1電動機回転速度NMG1を引き下げてエンジン回転速度Nを引き下げ、所定のエンジン回転速度N’でフューエルカットするようにエンジン8の停止を行ってもよい。
【0050】
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機MG1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機MG2へ供給し、その第2電動機MG2を駆動してエンジン8の動力を補助するトルクアシストが可能である。よって、本実施例ではエンジン8と第2電動機MG2との両方を走行用の駆動力源とする車両の走行はモータ走行ではなくエンジン走行に含まれるものとする。
【0051】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の運転状態を維持させることができる。例えば、車両停止時に蓄電装置56の充電残量SOCが低下して第1電動機MG1による発電が必要となった場合には、エンジン8の動力により第1電動機MG1が発電させられてその第1電動機MG1の回転速度が引き上げられ、車速Vで一意的に決められる第2電動機回転速度NMG2が車両停止状態により零(略零)となっても動力分配機構16の差動作用によってエンジン回転速度Nが自律回転可能な回転速度以上に維持される。
【0052】
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NMG1および/または第2電動機回転速度NMG2を制御してエンジン回転速度Nを任意の回転速度に維持させられる。例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84はエンジン回転速度Nを引き上げる場合には、車速Vに拘束される第2電動機回転速度NMG2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NMG1の引き上げを実行する。
【0053】
増速側ギヤ段判定手段88は、動力伝達装置10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて予め記憶された前記図7に示す変速線図に従って動力伝達装置10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。
【0054】
切換制御手段90は、車両状態に基づいて前記差動状態切換装置(切換クラッチC0、切換ブレーキB0)の係合/解放を切り換えることにより、前記無段変速状態と前記有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と前記ロック状態とを選択的に切り換える。例えば、切換制御手段90は、予め記憶された前記図7の破線および二点鎖線に示す関係(切換線図、切換マップ)から車速Vおよび要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、動力伝達装置10(差動部11)の変速状態を切り換えるべきか否かを判断して、すなわち動力伝達装置10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは動力伝達装置10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定することにより動力伝達装置10の切り換えるべき変速状態を判断して、動力伝達装置10を前記無段変速状態と前記有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換える変速状態の切換えを実行する。
【0055】
具体的には、切換制御手段90は有段変速制御領域内であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段84に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段82に対しては、予め設定された有段変速時の変速を許可する。このときの有段変速制御手段82は、予め記憶された例えば図7に示す変速線図に従って自動変速部20の自動変速を実行する。例えば、予め記憶された図2は、このときの変速において選択される油圧式摩擦係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。すなわち、動力伝達装置10全体すなわち差動部11および自動変速部20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
【0056】
例えば、増速側ギヤ段判定手段88により第5速ギヤ段が判定される場合には、動力伝達装置10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切換制御手段90は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路44へ出力する。また、増速側ギヤ段判定手段88により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、動力伝達装置10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために切換制御手段90は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路44へ出力する。このように、切換制御手段90によって動力伝達装置10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、差動部11が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、動力伝達装置10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
【0057】
しかし、切換制御手段90は、動力伝達装置10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域内であると判定した場合は、動力伝達装置10全体として無段変速状態が得られるために差動部11を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路44へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段84に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段82には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは、予め記憶された例えば図7に示す変速線図に従って自動変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御手段82により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、切換制御手段90により無段変速状態に切り換えられた差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度すなわち伝達部材18の回転速度が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって動力伝達装置10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
【0058】
ここで前記図7について詳述すると、図7は自動変速部20の変速判断の基となる予め記憶された関係(変速線図、変速マップ)であり、車速Vと駆動力関連値である要求出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図の一例である。図7の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。
【0059】
また、図7の破線は切換制御手段90による有段制御領域と無段制御領域との判定のための判定車速V1および判定出力トルクT1を示している。つまり、図7の破線はハイブリッド車両の高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、ハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが高出力となる高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。さらに、図7の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図7は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして切換制御手段90により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。なお、この切換線図を含めて変速マップとして予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。
【0060】
上記変速線図、切換線図、或いは駆動力源切換線図等は、マップとしてではなく実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。この場合には、切換制御手段90は、車両状態例えば実際の車速が判定車速V1を越えたときに動力伝達装置10を有段変速状態とする。また、切換制御手段90は、車両状態例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1を越えたときに動力伝達装置10を有段変速状態とする。
【0061】
また、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時、例えば第1電動機MG1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわち第1電動機MG1、第2電動機MG2、インバータ53、蓄電装置56、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や、故障とか低温による機能低下が発生したような車両状態となる場合には、無段制御領域であっても車両走行を確保するために切換制御手段90は動力伝達装置10を優先的に有段変速状態としてもよい。
【0062】
前記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、車輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速部20の出力トルクTOUT、エンジントルクT、車両加速度や、例えばアクセル開度或いはスロットル弁開度θTH(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度Nとに基づいて算出されるエンジントルクTなどの実際値や、運転者のアクセルペダル操作量或いはスロットル開度等に基づいて算出される要求(目標)エンジントルクT、自動変速部20の要求(目標)出力トルクTOUT、要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、車輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
【0063】
また、例えば判定車速V1は、高速走行において動力伝達装置10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において動力伝達装置10が有段変速状態とされるように設定されている。また、判定トルクT1は、車両の高出力走行において第1電動機MG1の反力トルクをエンジンの高出力域まで対応させないで第1電動機MG1を小型化するために、例えば第1電動機MG1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機MG1の特性に応じて設定されている。
【0064】
図7の関係に示されるように、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速の比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
【0065】
これによって、例えば、車両の低中速走行および低中出力走行では、動力伝達装置10が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、実際の車速Vが前記判定車速V1を越えるような高速走行では動力伝達装置10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪32へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上する。また、出力トルクTOUTなどの前記駆動力関連値が判定トルクT1を越えるような高出力走行では動力伝達装置10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪32へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、第1電動機MG1が発生すべき電気的エネルギ換言すれば第1電動機MG1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて第1電動機MG1或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。また、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。これによって、ユーザは、例えば有段自動変速走行におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度Nの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度Nの変化が楽しめる。
【0066】
このように、本実施例の差動部11(動力伝達装置10)は無段変速状態と有段変速状態(定変速状態)とに選択的に切換え可能であって、前記切換制御手段90により車両状態に基づいて差動部11の切り換えるべき変速状態が判断され、差動部11が無段変速状態と有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換えられる。また、本実施例では、ハイブリッド制御手段84により車両状態に基づいてモータ走行或いはエンジン走行が実行されるが、このエンジン走行とモータ走行とを切り換えるために、エンジン始動停止制御手段86によりエンジン8の始動または停止が行われる。
【0067】
回生制御手段94は、惰性走行時やブレーキペダル39の踏み込み操作による減速走行時において、駆動輪32側から伝達される逆駆動力によって第2電動機MG2を発電機として機能させて回転駆動させることにより、運動エネルギを電気エネルギに変換し、インバータ53を介して蓄電装置56に充電する回生制御を実行する。また、ブレーキペダル39が踏み込まれる場合、その運転者による踏み込み操作に基づいて算出される車両制動力(車両制動トルク)Tに対して、第2電動機MG2による回生制動トルクTB−REとホイールブレーキ46(制動装置45)によるブレーキ制動トルクTB−BRとの割合が好適になるように協調制御が実施され、回生制御手段94は、その回生制動トルクTB−REが得られるように第2電動機MG2による回生トルクTMG2を制御する。なお、第2電動機MG2が本発明の電動機に対応する。
【0068】
ところで、回生制御手段94による回生制御が実施されているときに自動変速部20の変速が行われる場合がある。このとき、自動変速部20に大きな入力負トルク(回生トルク)が入力された状態で変速を進行させると、変速進行に必要な自動変速部20のトルク容量も大きくなるに伴い、トルク相中において大きな引き込み感が発生する可能性があった。これに対し、上記回生制御に代わって、ホイールブレーキ46による制動制御によって変速時の減速度を制御して引き込み感を抑制する方法も考えられるが、上記方法では、ホイールブレーキ46の使用頻度増加によって耐久性が低下したり、変速応答性が低下したりする問題があった。そこで、回生制御手段94は、自動変速部20のトルク相中において、自動変速部20の負入力トルク(回生トルク)を第2電動機MG2の回生トルク制御によって減少させることで、前記引き込み感を抑制する。以下、本発明の要部となる上記制御について説明する。
【0069】
回生制御手段94による上記制御は、被駆動変速判断手段96、アプライ油圧スイープ開始判断手段98、イナーシャ相開始判断手段100、ブレーキ操作判断手段102の各手段から供給される信号に基づいて実施される。
【0070】
被駆動変速判断手段96は、車両の被駆動状態において自動変速部20の変速が実施されるか否かを判定する。具体的には、被駆動変速判断手段96は、例えば、予め記憶されている図7に示す変速線図に基づいて、アクセルペダル39が踏み込まれない状態すなわちアクセル開度Accが零の状態で、アップシフト線またはダウンシフト線を跨いだ否かを判定する。そして、アクセル開度Accが零の状態でアップシフト線またはダウンシフト線を跨いだとき、車両被駆動状態での変速が実行されると判断され、本判定が肯定される。なお、ブレーキペダル36が踏み込まれた状態で変速が実行されると判定されるときも同様に、本判定が肯定される。この被駆動変速判断手段96が、回生制御手段94による本発明の要部となる制御を実施するか否かの判断手段として機能する。
【0071】
アプライ油圧スイープ開始判断手段98(以下、スイープ開始判断98と記載する)は、自動変速部20の有するトルク容量の変化が開始されるか、すなわちトルク相が開始されるか否かを判定する。具体的には、例えば、そのトルク相の開始を係合側クラッチの係合圧であるアプライ油圧の変化(スイープ)に基づいて判断する。図9は、回生制御時(車両被駆動時)にダウン変速が実施されたときの制御作動を説明するタイムチャートである。図9に示すように、係合側クラッチのアプライ油圧は、破線で示すように予め設定されており、変速が開始されるt0時点において、一時的に増圧される所謂ファーストフィルが実施される。そして、所定時間だけ定圧待機され、t1時点において再び漸増される。このt1時点がアプライ油圧の漸増開始(スイープ開始)時点となり、トルク相開始時点と略一致する。このt1時点は、予め設定されている破線に示す指示油圧を制御する図示しないリニアソレノイドバルブの出力信号、或いは、実際の係合側クラッチの油圧を検出することによる油圧値の変化等に基づいて判断する。
【0072】
イナーシャ相開始判断手段100は、自動変速部20の入力軸としても機能する伝達部材18の回転速度の変化が始まるイナーシャ相が開始されたか否かを判断する。具体的には、例えば伝達部材18に連結されている第2電動機MG2の回転速度NMG2を検出し、その回転速度NMG2に変化が生じたか否かに基づいてイナーシャ相開始を判断する。また、ブレーキ操作判断手段102は、ブレーキペダル39が踏み込まれ、ホイールブレーキ46が作動された状態か否かを判定する。
【0073】
そして、被駆動変速判断手段96によって回生制御中に変速が実施されると判断されると共に、スイープ開始判断手段98によってアプライ油圧の漸増(スイープ)開始が判断されると、回生制御手段94は、第2電動機MG2による自動変速部20の入力トルク(負入力負トルク、回生トルク)の減少制御を開始する。回生制御手段94は、図9に示すように、自動変速部20の入力トルク(負入力負トルク、回生トルク)を第2電動機MG2の回生トルク制御によって制御する。具体的には、係合側クラッチの破線に示す予め設定された指示油圧に応じて、或いは、実際に図示しない油圧センサによって検出される係合側クラッチの係合油圧に応じて、第2電動機MG2の回生トルクTMG2を減少させる。回生制御手段94は、例えば、現在の回生トルクTMG2に対する自動変速部20の変速後の変速比の変化等に基づいて予め設定される、第2電動機MG2の目標回生トルク値を目標に、予め設定される減少勾配で回生トルクTMG2を減少させ、自動変速部20のイナーシャ相開始時(図9においてt2時点)において、第2電動機MG2の回生トルクTMG2が前記目標回生トルク値と略等しくなるように回生制御を実行する。ここで、例えばイナーシャ相開始が検出されるt2時点において、前記目標回生トルク値と実際の第2電動機MG2との偏差αを算出し、その偏差αが所定値以下となるよう回生トルクTMG2の減少勾配を適宜変更する学習制御を実施しても構わない。そして、t2時点〜t3時点のイナーシャ相では、前記目標回生トルク値で一定制御される。
【0074】
上記のように回生制御手段94によって第2電動機MG2の回生トルクTMG2の減少制御が実施されると、t1時点〜t2時点に対応するトルク相において、自動変速部20の出力軸トルクTOUTが実線に示すように一定に保持される。したがって、車両の引き込み感が抑制される。なお、一点鎖線で示す自動変速部20の入力トルク(回生トルク)および出力軸トルクTOUTが従来の制御状態を示している。従来では、トルク相において第2電動機MG2の回生トルクTMG2の減少制御が実施されないので、出力軸トルクTOUTがさらに負の方向に低下するに伴い、車両の引き込み感が生じることとなる。
【0075】
また、ブレーキ操作判断手段102に基づいて、変速中にブレーキ操作が実施されているものと判断されると、回生制御手段94は、第2電動機MG2による回生トルクTMG2を図9に示す二点鎖線にように、回生トルクTMG2の低減量を小さくする。ブレーキ操作が実施される場合、車両が所定の減速度で減速走行されるので、上記引き込み感は問題にならなくなる。このような場合、回生トルクの減少量を小さくすることで、斜線に示す分だけ回生量が増加することとなる。
【0076】
図10は、電子制御装置34の制御作動の要部すなわち車両被駆動時(回生制御時)に自動変速部20が変速されるに際して、車両の引き込み感を減少させる制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実施されるものである。
【0077】
先ず、被駆動変速判断手段96に対応するステップSA1(以下、ステップを省略する)において、車両が被駆動状態(コースト走行状態)で自動変速部20の変速が実施されるか否かが判定される。SA1が否定される場合、SA1が肯定されるまで同様の判定が繰り返し実行される。SA1が肯定される場合、自動変速部20の変速が開始され、スイープ開始判断手段98に対応するSA2において、その変速がトルク相開始時点に対応する係合側クラッチのアプライ油圧の漸増(スイープ)が開始された否かが判定される。なお、上記スイープ開始記時点は図9においてt1時点が対応している。SA2が否定される場合、SA2が肯定されるまで繰り返し同様の判定が実施される。SA2が肯定されるとき、回生制御手段94およびブレーキ操作判断手段102に対応するSA3において、入力トルク解消制御すなわち第2電動機MG2による回生トルクTMG2の減少制御が実施される。さらに、ブレーキペダル39の踏み込み操作に応じて回生トルクTMG2の減少量が小さくなるように変更される。そして、イナーシャ相開始判断手段100に対応するSA4において、イナーシャ相が開始されたか否かが判定される。SA4が否定される場合、イナーシャ相が開始されるまで、第2電動機MG2による回生制御が継続される。SA4が肯定されると、回生制御手段94に対応するSA5において、上記回生トルクの減少制御が終了させられる。
【0078】
上述のように、本実施例によれば、回生制御手段実行中に自動変速部20の変速が実施されるとき、回生制御手段94は、自動変速部20のトルク相中において、自動変速部20への回生トルク(入力負トルク)を減少させるため、トルク相中に発生する回生トルク(入力負トルク)によって生じる引き込み感を減少させることができる。また、ホイールブレーキ46による前記引き込み感を抑制する代替制御を実施することも回避されるので、ホイールブレーキ46の耐久性低下を回避することができる。
【0079】
また、本実施例によれば、運転者によるブレーキペダル36の踏み込み操作が実施されているとき、回生制御手段は、94トルク相中の回生トルク(入力負トルク)の減少量を小さくするため、回生トルク(入力負トルク)が大きくなる、すなわち回生トルクが大きくなるので、回生量を増加させることができる。なお、ブレーキペダル36の踏み込み中は、車両の減速度が大きくなるに伴い、引き込み感が掻き消されて気付きにくくなるので、入力負トルク(回生トルク)の増加が許容される。
【0080】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0081】
例えば、前述の実施例において、回生制御手段94による回生トルク量を、蓄電装置56の充電容量SOC、第2電動機MG2の電動機温度、自動変速部20の作動油温等に応じて、さらに細かく設定しても構わない。
【0082】
また、前述の実施例では、回生制御中に自動変速部20がダウン変速された場合を一例に説明が為されているが、本発明は、ダウン変速に限定されず、アップ変速であっても適用することができる。
【0083】
また、前述の実施例では、回生制御中に自動変速部20が変速されるに際して、第2電動機M2のトルク制御のみによって変速時の引き込み感が減少されているが、ホイールブレーキ46との協調制御によって引き込み感を減少させても構わない。上記においても、ホイールブレーキ46の負担が軽減されるので、ホイールブレーキ46の耐久性低下が回避されるという効果が得られる。
【0084】
また、前述の実施例においては、第1電動機M1の運転状態が制御されることにより、差動部11(動力分配機構16)はその変速比γ0が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、例えば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであってもよい。
【0085】
また、前述の実施例の動力伝達装置10においてエンジン8と差動部11とは直結されているが、エンジン8が差動部11にクラッチ等の係合要素を介して連結されていてもよい。
【0086】
また、前述の実施例の動力伝達装置10において第1電動機M1と第2回転要素RE2とは直結されており、第2電動機MG2と第3回転要素RE3とは直結されているが、第1電動機M1が第2回転要素RE2にクラッチ等の係合要素を介して連結され、第2電動機MG2が第3回転要素RE3にクラッチ等の係合要素を介して連結されていてもよい。
【0087】
また、前述の実施例の図1によれば、差動部11と自動変速部20は直列に連結されているが、動力伝達装置10全体として電気的に差動状態を変更し得る電気式差動機能とその電気式差動機能による変速とは異なる原理で変速する機能とが備わっていれば、差動部11と自動変速部20とが機械的に独立していなくても本発明は適用される。
【0088】
また、前述の実施例において動力分配機構16はシングルプラネタリであるが、ダブルプラネタリであってもよい。
【0089】
また、前述の実施例においては、差動部遊星歯車装置24を構成する第1回転要素RE1にはエンジン8が動力伝達可能に連結され、第2回転要素RE2には第1電動機M1が動力伝達可能に連結され、第3回転要素RE3には駆動輪38への動力伝達経路が連結されているが、例えば、2つの遊星歯車装置がそれを構成する一部の回転要素で相互に連結された構成において、その遊星歯車装置の回転要素にそれぞれエンジン、電動機、駆動輪が動力伝達可能に連結されており、その遊星歯車装置の回転要素に連結されたクラッチ又はブレーキの制御により有段変速と無段変速とに切換可能な構成にも本発明は適用される。
【0090】
また、前述の実施例における切換クラッチC0及び切換ブレーキB0等の油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁粉)クラッチ、電磁クラッチ、噛み合い型のドグクラッチ等の磁粉式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。
【0091】
また、前述の実施例の動力分配機構16では、差動部キャリヤCA0がエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0が第1電動機M1に連結され、差動部リングギヤR0が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、差動部遊星歯車装置24の3要素CA0、S0、R0のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
【0092】
また、前述の実施例においてエンジン8は入力軸14と直結されていたが、例えばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
【0093】
また、前述の実施例の第1電動機M1および第2電動機MG2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され第2電動機MG2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、例えばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され、第2電動機MG2は伝達部材18に連結されていてもよい。
【0094】
また、前述の実施例において自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられてそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配列されていてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、たとえば伝達部材18としてカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
【0095】
また、前述の実施例の動力分配機構16は1組の差動部遊星歯車装置24から構成されていたが、2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。
【0096】
また、前述の実施例において、動力分配機構16が切換クラッチC0および切換ブレーキB0を備えているが、切換クラッチC0および切換ブレーキB0は動力分配機構16とは別個に動力伝達装置10に備えられていてもよい。また、切換クラッチC0と切換ブレーキB0との何れか一方または両方がない構成も考え得る。
【0097】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施例である動力伝達装置の一部を示す骨子図である。
【図2】図1の動力伝達装置に備えられた自動変速部の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。
【図3】図1の動力伝達装置における各ギヤ段の相対回転速度を説明する共線図である。
【図4】図1の動力伝達装置を制御する制御装置としての電子制御装置の入出力信号を説明する図である。
【図5】シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。
【図6】図4の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図1の車両用駆動装置において、自動変速部の変速判断の基となる予め記憶された変速線図の一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換える為の予め記憶された駆動力源切換線図の一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。
【図8】図1のエンジンの最適燃費率曲線を表す図である。
【図9】回生制御時(車両被駆動時)にダウン変速が実施されたときの制御作動を説明するタイムチャートである。
【図10】電子制御装置の制御作動の要部すなわち車両被駆動時(回生制御時)に自動変速部が変速されるに際して、車両の引き込み感を減少させる制御作動を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0099】
10:車両用動力伝達装置
18:伝達部材(変速部の入力軸)
20:自動変速部(変速部)
22:出力軸(変速部の出力軸)
36:ブレーキペダル
94:回生制御手段
MG2:第2電動機(電動機)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、入力軸が該電動機に動力伝達可能に連結された変速部と、該変速部の出力軸側から動力が伝達される車両被駆動時に前記電動機を発電機として機能させることで回生制御を実行する回生制御手段とを、備える車両用動力伝達装置の制御装置であって、
前記回生制御手段実行中に前記変速部の変速が実施されるとき、前記回生制御手段は、前記変速部のトルク相中において、該変速部への入力負トルクを減少させることを特徴とする車両用動力伝達装置の制御装置。
【請求項2】
運転者によるブレーキペダルの踏み込み操作が実施されているとき、前記回生制御手段は、トルク相中の前記入力負トルクの減少量を小さくすることを特徴とする請求項1の車両用動力伝達装置の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−74886(P2010−74886A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236549(P2008−236549)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】