車体制振制御装置
【課題】車体振動抑制用エンジントルク補正量が制御分解能未満でも、変速により、車体振動抑制用エンジントルクを補正制御する。
【解決手段】サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を、駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置において、車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して、駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを具備する。
【解決手段】サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を、駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置において、車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して、駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動、例えばピッチング振動や上下バウンス振動を駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体制振制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載されているごときものが知られている。
この車体制振制御技術は、駆動トルクおよび車輪速から、サスペンション装置のバネ上質量である車体の振動を推定して、この車体振動を抑制するための駆動力補正量を求め、この補正量だけ動力源であるエンジンの出力を補正して車体の制振を行うことを趣旨とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車体振動を抑制するための駆動力補正量が小さく、この駆動力補正量がエンジンの出力変更可能下限量により実現可能な補正量未満である場合、エンジンをその制御分解能に未たない僅かな量だけ出力補正する必要がある。
【0005】
しかし実際上、エンジンをその制御分解能に未たない僅かな量だけ出力補正することは不可能で、車体振動を抑制するための駆動力補正量をエンジン出力補正によって実現することができない。
このため従来の車体制振制御技術にあっては、制振用駆動力補正量が小さい場合、狙い通りに車体振動を抑制することができないのが実情であった。
【0006】
本発明は、車体振動を抑制するための駆動力補正量が上記のように小さい場合、駆動力伝達系の変速比をハイ側に変更すれば、同じ車体振動でもこれを抑制するための駆動力補正量が変速比の変更分だけ増大して、車体振動の抑制が可能になるとの観点から、
この着想を具体化して上記の問題を解消可能にした車体制振制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明による車体制振制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車体制振制御装置を説明するに、これは、
サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を駆動力補正制御により抑制するものである。
【0008】
本発明は、かかる車体制振制御装置に対し、
前記車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して前記駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、
該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、前記駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを設けて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明の車体制振制御装置によれば、
車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更するため、
制振用駆動力補正量が、駆動力伝達系の駆動力制御によって実現できないほどに小さなものである場合でも、上記変速比のハイ側への変更によりその後は、同じ車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量が変速比変更分だけ増大させて、制振用駆動力補正量を実現可能になる。
【0010】
よって、制振用駆動力補正量が小さい場合においても、これを実現し得ない状態が継続することがなく、上記した変速比のハイ側変更後は車体振動を狙い通りに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例になる車体制振制御装置を車載状態で示す概略系統図である。
【図2】同実施例になる車体制振制御装置の概略系統を示す機能別ブロック線図である。
【図3】図1,2における制振制御コントローラを、駆動力制御部および変速比制御部と共に示す機能別ブロック線図である。
【図4】図2,3における駆動力制御部の機能別ブロック線図である。
【図5】アクセル開度APOと、運転者が要求している要求エンジントルクTe_aとの関係を例示する特性線図である。
【図6】図2,3に示す制振制御システムが実行する制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図6のメインルーチンにおける制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理に関したサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図6,7の車体制振制御による動作を示す動作タイムチャートである。
【図9】図6,7の車体制振制御で用いた車両の運動モデルを説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2実施例になる車体制振制御装置の制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示す、図7に対応するフローチャートである。
【図11】図10に示す第2実施例の車体制振制御による動作を示す動作タイムチャートである。
【図12】本発明の第3実施例になる車体制振制御装置の制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示す、図7,10に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になる車体制振制御装置を示す概略系統図である。
図1において、1FL,1FRはそれぞれ左右前輪を示し、また1RL,1RRはそれぞれ左右後輪を示す。
左右前輪1FL,1FRはステアリングホイール2により転舵される操舵輪である。
また左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRはそれぞれ、図示せざるサスペンション装置により車体3に懸架され、この車体3は、サスペンション装置よりも上方に位置してバネ上質量を構成する。
【0013】
図1における車両は、動力源として図示せざるエンジンを搭載され、これにより、図示せざる有段式自動変速機を介し左右前輪1FL,1FRを駆動して走行可能な前輪駆動車とする。
これらエンジンおよび自動変速機のうち、エンジンは、運転者が操作するアクセルペダル4の踏み込み量に応じて図2のエンジンコントローラ11を介し出力を加減されるが、それとは別に車体振動を抑制するために(車体制振制御用に)駆動力制御部5を介してエンジンコントローラ11により出力を補正し得るものとし、
自動変速機は、図2の変速機コントローラ12を含む通常の変速制御システムにより変速段を決定されるが、それとは別に車体振動抑制時(車体制振制御時)に変速比制御部6を介して適宜、変速機コントローラ12により変速比(変速段)を変更し得るものとする。
【0014】
駆動力制御部5は、上記車体振動抑制用のエンジン出力補正に際し図2に示すごとく、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに応答し、これを実現するような制振用目標エンジントルクtTeを算出する。
そしてエンジンコントローラ11が、エンジントルクをこの制振用目標エンジントルクtTeに一致させるエンジン出力制御を行うことにより、上記の制振用エンジン出力補正を行う。
【0015】
変速比制御部6は、上記変速比(変速段)の変更に際し図2に示すごとく、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに応じて現在の変速比(変速段)CURGearからの制振時変速指令Gear_out(制振時の目標変速比)を算出する。
そして変速機コントローラ12は、この制振時変速指令Gear_outに応じて適宜、自動変速機の変速比(変速段)を制振時変速指令Gear_outに変更する。
【0016】
制振制御コントローラ7には、上記の制振用エンジントルク補正量Te_stabを求めるために、
左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRの車輪速Vwを個々に検出する車輪速センサ8からの信号と、
アクセル開度(アクセルペダル踏み込み量)APOを検出するアクセル開度センサ9からの信号とを入力する。
また変速比制御部6には、制振時変速指令Gear_outを求めるために、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに加え、
現在における自動変速機の変速比(変速段)CURGearを検知する変速比検知部10からの信号とを入力する。
【0017】
制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すように、要求駆動トルク演算部51と、前後外乱算出部52と、車体振動推定部53と、制振用エンジントルク補正量演算部54とで構成する。
【0018】
要求駆動トルク演算部51は、アクセル開度APOから、運転者が要求している車輪の要求駆動トルクを演算する。
前後外乱算出部52は、車輪速Vwに基づいて各車輪速の変化をモニタし、各車輪速の変化から車輪に働く前後方向外乱を算出する。
車体振動推定部53は、演算部51からの要求駆動トルクおよび算出部52からの車輪に作用する前後方向外乱から、車体3の振動を推定する。
制振用トルク補正量演算部54は、推定部53で求めた車体3の振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabを算出する。
【0019】
かかる要求駆動トルク演算部51、前後外乱算出部52、車体振動推定部53、および制振用エンジントルク補正量演算部54から成る制振制御コントローラ7とで図2,3のように制振制御システムを構成する駆動力制御部5および変速比制御部6のうち、駆動力制御部5は図4に示すようなものとし、先ず要求エンジントルク算出部5aにおいてアクセル開度APOから、運転者が要求しているエンジン要求トルクTe_aを算出する。
この算出に当たっては、図5に例示するような予定のマップを基にアクセル開度APOからエンジン要求トルクTe_aを検索して求める。
そして加算器5bで、当該エンジン要求トルクTe_aと、演算部54(図3参照)からの制振用エンジントルク補正量Te_stabとを合算して、目標エンジントルクtTe=Te_a+Te_stabを求め、これをエンジンコントローラ11に指令する。
【0020】
また変速比制御部6は図2,3に示すごとく、自動変速機の現在の変速比(変速段)CURGearと、コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabとを入力され、後で詳述するごとく制振用エンジントルク補正量Te_stabに応じて適宜、自動変速機を現在の変速比(変速段)CURGearからハイ側の変速比(変速段)Gear_outへの変速を変速機コントローラ12に指令する。
【0021】
<車体制振制御>
図2,3に示した制振制御コントローラ7、駆動力制御部5および変速比制御部6より成る車体制振制御システムは、図6,7の制御プログラムを実行して車体振動を抑制する車体制振制御を遂行する。
図6は、10msecごとに繰り返し実行されるメインルーチンを示し、図7は、当該メインルーチン内のステップS600に係わるサブルーチンを示す。
【0022】
図6のステップS100においては、センサ8で検出した車輪速Vw、センサ9で検出したアクセル開度APO、および検知部10で検知した自動変速機の変速比(変速段)CURGearを含む車両走行状態を読み込む。
【0023】
次のステップS200においては、当該読み込んだ車両走行状態を基に、要求駆動トルクTwを以下のようにして算出する。
図5に例示する予定のエンジントルクマップを基にアクセル開度APOから、運転者が要求している要求エンジントルクTe_aを検索により求める。
そして、要求エンジントルクTe_aを、ディファレンシャルギヤ比Kdif、および自動変速機のギヤ比Katに基づいて、次式の演算により駆動軸トルクに換算し、この換算値を要求駆動トルクTwとする。
Tw=Te_a/(Kdif・Kat)
【0024】
次のステップS300においては、車輪速Vw(左右前輪1FL,1FRの車輪速VwFL,VwFRおよび左右後輪1RL,1RRの車輪速VwRL,VwRR)から、後述の車両運動モデルへの入力となる前後外乱、つまり前輪の走行抵抗変動ΔFfおよび後輪の走行抵抗変動ΔFrを算出する。
これら走行抵抗変動ΔFfおよびΔFrの算出に当たっては、各車輪速VwFL,VwFR, VwRL,VwRRから実車速成分Vbodyを除去して各輪速度を算出し、各輪速度の前回値と今回値との差分をとる時間微分によって各輪加速度を算出し、各輪加速度にバネ下質量を乗じることで、前輪の走行抵抗変動ΔFfおよび後輪の走行抵抗変動ΔFrを算出する。
【0025】
ステップS400においては、車両運動モデルからバネ上振動(車体振動)を推定する。この推定に当たっては、ステップS200で求めた要求駆動トルクTw、およびステップS300で求めた前後輪の走行抵抗変動ΔFf,ΔFrを入力とし、後述の車両運動モデルを用いてバネ上振動(車体振動)の推定を行う。
【0026】
本実施例における車両運動モデルは図9に示すとおり、車体3に対して前後輪をそれぞれサスペンション装置により懸架された前後2輪モデルである。
すなわち本実施例における車両運動モデルは、車両に発生する駆動トルク変動ΔTw、路面状態変化、および制駆動力変化や、ステアリング操舵等に応じて前輪に発生する走行抵抗変動ΔFf、および後輪に発生する走行抵抗変動ΔFrをパラメータとし、
前後1輪に対応したサスペンション装置のバネ・ダンパ系とを有するサスペンションモデルと、車体重心位置の移動量を表現する車体バネ上モデルとから成り立っている。
【0027】
次に、車両に制駆動トルク変動が発生し、路面状態変化、制駆動力変化およびステアリング操舵の少なくとも一つがタイヤに加えられたことで走行抵抗変動が発生した場合につき、車両運動モデルを用いて車体振動を以下に説明する。
車体3に駆動トルク変動ΔTw、走行抵抗変動ΔFf,ΔFrの少なくとも一つが発生したとき、車体3はピッチ軸まわりに角度(ピッチ角)θpの回転が発生するとともに、重心位置に上下移動xbが発生する。
ここで駆動トルク変動ΔTwは、運転者のアクセル操作から算出された今回の駆動トルクΔTwnと、駆動トルク変動の前回値ΔTwn-1との差分から演算する。
【0028】
図9に示すように、前輪側サスペンション装置のバネ定数をKsf、振動減衰定数をCsfとし、また後輪側サスペンション装置のバネ定数をKsr、振動減衰定数をCsrとし、
前輪側サスペンション装置のリンク長をLsf、リンク揺動中心高をhbfとし、また後輪側サスペンション装置のリンク長をLsr、リンク揺動中心高をhbrとし、
更に、車体3のピッチ方向慣性モーメントをIp、前軸およびピッチ軸間距離をLf、後軸およびピッチ軸間距離をLr、重心高をhcg、バネ上質量をMとすると、
車体上下バウンス振動の運動方程式は、次式のごときものとなり、
【数1】
また、車体ピッチング振動の運動方程式は、
【数2】
で表すことができる。
【0029】
これら二つの運動方程式を、
【数3】
と置いて、状態方程式に変換すると
【数4】
と表現することができる。
ここで、それぞれの要素は
【数5】
である。
【0030】
更に、上記の状態方程式を入力信号によりフィードフォワード(F/F)項と、フィードバック(F/B)とに分割すると、
駆動トルクを入力とするフィードフォワード(F/F)項は、
【数6】
と表すことができ、
また前後輪の走行外乱を入力とするフィードバック(F/B)項は、
【数7】
と表すことができる。
【0031】
次のステップS500においては、ステップS400で上記のごとくに算出した車体振動(d/dt)xbおよび(d/dt)θpを抑制するための制振用駆動トルク補正量Tw_stabを算出する。
つまりステップS500においては、ステップS200でアクセル開度APOに基づき決定した、駆動トルク要求値の変動成分ΔTwおよび前後輪の路面反力変化ΔFf, ΔFrに基づく、それぞれの次式
【数8】
で表されるバネ上(車体)振動を駆動トルク要求値へフィードバックする制振用駆動トルク補正量Tw_stabを算出することを意味する。
【0032】
このときフィードバックゲインは、車体振動(d/dt)xbおよび(d/dt)θpが少なくなるように決定する。
例えば、フィードバック項において車体振動(d/dt)xbが少なくなるフィードバックゲインを算出するに際しては、重み行列を
【数9】
のように選び、
【数10】
で表されるJを最小にする制御入力を算出すればよい。
【0033】
その解は、リカッチ代数方程式
【数11】
の正定対称解pを元に、
【数12】
で与えられる。
ここでFxb_FBは、フィードフォワード項における(d/dt)xbに関するフィードバックゲイン行列である。
【0034】
フィードバック項における(d/dt)θp、およびフィードフォワード項における(d/dt)xb , (d/dt)θpが少なくなるフィードバックゲイン(それぞれFthp_FB,Fxb_FF, Fthp_FF)も同様に、
【数13】
として、
【数14】
により算出し、また、
【数15】
として、
【数16】
により算出し、更に、
【数17】
として、
【数18】
により算出する。
上記は最適レギュレータの手法であるが、極配置など他の手法により設計しても良い。
【0035】
上記4つの式から算出した制振用駆動トルク補正量に対してそれぞれ重み付けを行い、上記4つの重み付け済トルク補正量Tw_thp_ff,Tw_xb_ff,Tw_thp_fb,Tw_xb_fbを上記フィードフォワード項およびフィードバック項の2つにまとめると
Tw_ff = Tw_thp_ff + Tw_xb_ff
Tw_fb = Tw_thp_fb + Tw_xb_fb
となる。
そして、駆動トルク要求値にフィードバックする駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabは、
Tw_stab = Tw_ff + Tw_fb
として算出することができる。
【0036】
次のステップS600においては、ステップS500で上記のごとくに求めた駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabと、ステップS100で読み込んだ変速比(変速段)CURDearとから、自動変速機の制振制御時変速指令Gear_outを求めると共に、制振用エンジントルク補正量Testabを算出する。
【0037】
ステップS600の詳細は図7に示すごときもので、ステップS601において現在の自動変速機の変速比CURGearをC_Gearに格納する。
次のステップS602においては、駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabをエンジン出力軸上の制振用エンジントルク補正量に変換するための変換係数O_Gearを算出する。
ディファレンシャルギヤ装置のギヤ比をD_Gearとすると、このディファレンシャルギヤ比D_GearおよびステップS601でセットしたC_Gear=CURGearから、変換係数O_Gearは、
O_Gear=1/( C_Gear・D_Gear)
により算出することができる。
【0038】
ステップS603においては、図6のステップS500で求めた制振用駆動トルク補正量Tw_stabに上記の変換係数O_Gearを乗ずる次式の演算により、制振用エンジントルク補正量Te_stabを求める。
Te_stab=Tw_stab・O_Gear
【0039】
ステップS604においては、上記の制振用エンジントルク補正量Te_stabと、例えばエンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めたエンジントルク設定値T_Teとを比較し、Te_stab≧T_Teであるか否かをチェックする。
【0040】
Te_stab≧T_Teであれば、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御により実現可能であることから、制御を順次ステップS605およびステップS606に進める。
ステップS605においては、後述するごとくTe_stab<T_Teになってからの経過時間を計測するタイマカウンタC_Timeを0にリセットする。
【0041】
ステップS606においては、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比を制振制御時変速指令Gear_outとする。
ところで今回は変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであることから、Gear_out=CURGearであって変速は指令されないこととなる。
【0042】
ステップS604でTe_stab<T_Teと判定する場合は、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によっても実現不能であることから、制御をステップS607以降に進めて、以下の処理により制振制御が可能となるようにする。
ステップS607においては、ステップS605で0にリセットしたタイマカウンタC_Timeをインクリメント(歩進)させ、ステップS604でTe_stab<T_Teと判定されてからの経過時間を計測する。
【0043】
ステップS608においては、タイマカウンタC_Time により、Te_stab<T_Teとなってからの経過時間が設定時間Th_Time以上であるか否かをチェックする。
ここで設定時間Th_Timeは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないか否かを見極めるための時間で、例えば「5秒」と定める。
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定するまでは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定であるかもしれないから、制御をステップS606に進め、このステップにおいて前記したと同じ処理により制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
【0044】
しかし今回も、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであって、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=CURGearとなるため、変速は指令されない。
【0045】
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定された場合は、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないことから、制御を順次ステップS609、ステップS605およびステップS606に進める。
ステップS609においては、ステップS601で現在のギヤ比CURGearを格納されていた変速比格納アドレスC_Gear内に、現在のギヤ比CURGearよりもハイ側のギヤ比V_Gearを置き換える。
【0046】
ステップS605においては、タイマカウンタC_Timeを次回に備えて0にリセットし、ステップS606において前記したと同じ処理により、制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
【0047】
ところで今回は、ステップS609において変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS601での格納値(現在の変速比CURGear)から、これよりもハイ側のギヤ比V_Gearに置き換えられているため、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=V_Gearとなり、現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへの変速(アップシフト)を指令することとなる。
従ってステップS606は、本発明における変速比変更手段に相当する。
【0048】
図6のステップS600(図7の制御プログラム)で上記のごとく求めた変速(アップシフト)指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stab(ステップS603)は、図6のステップS700において出力する。
このとき制振時変速(アップシフト)指令Gear_outは、図2,3に示すように変速機コントローラ12に向かい、自動変速機を現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへ変速(アップシフト)させる制振時変速制御に供される。
また制振用エンジントルク補正量Te_stab(ステップS603)は、図2,3に示すように駆動力制御部5に向かい、この駆動力制御部5は図4につき前述したようにして制振用目標エンジントルクtTeを求めてエンジンコントローラ11に指令する。
エンジンコントローラ11はエンジンを、その出力トルクがこの制振用目標エンジントルクtTeに一致するよう出力制御する。
【0049】
かかる制振時変速制御により自動変速機が現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへ変速(アップシフト)し終えた後は、検知部10により検知する変速比CURGearがV_Gearであることから、
図7のステップS601〜603で求める次回の新たな制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のアップシフトによる変速比の変化分だけ大きくなり、その分だけ図2〜4における制振用目標エンジントルクtTeも上記のアップシフト後に増大される。
【0050】
これによっても尚ステップS604でTe_stab≧T_Teと判定するに至らない場合は、ステップS609を通るループが再度選択されて上記のアップシフト、および当該アップシフト完了後における制振用エンジントルク補正量Te_stab(制振用目標エンジントルクtTe)の増大が行われ、何れにしても最終的に制振用エンジントルク補正量Te_stabは、エンジン出力制御により実現可能な大きさになる。
【0051】
<第1実施例の効果>
上記した第1実施例の車体制振制御装置によれば、
車両運動モデルに基づきアクセル操作または走行抵抗変動ΔFfおよびΔFrから推定したピッチング振動(d/dt)θpおよび上下バウンス振動(d/dt)xbのような車体振動を抑制するのに必要な制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabが、例えばエンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めた設定値T_Te未満であるとき(ステップS604)、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS606)、以下の効果が奏し得られる。
【0052】
制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のように定めた設定値T_Te未満であるということは、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現することができないことを意味し、結果として、制振用駆動トルク補正量Tw_stabによる制振制御をいつまでも実行し得ないことになる。
【0053】
ところでこのような場合、本実施例では自動変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS606)、
これによる変速比の変化分だけ、同じ車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbでも、これを抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが上記アップシフトの終了に呼応して増大されることとなり、この制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上の値にすることができる。
よって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御をいつまでも実行し得ない状態になることがなくなり、上記のアップシフトの結果Te_stab≧T_Teとなる期間において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御を実行し得て、車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを抑制することができる。
【0054】
制振用駆動トルク補正量Tw_stabが図8に示すごとくに経時変化する場合につき上記の効果を更に付言する。
上記のアップシフトを行わない場合、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図8に破線で示すごときものとなり、
Te_stab<T_Teである、瞬時t1から瞬時t3までの長い間に亘って、制振用エンジントルク補正量Te_stabを実現し得ないため、これにより狙った通りに車体振動を抑制することができない。
【0055】
ところで本実施例においては、Te_stab<T_Teになった瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGear(第3速)からハイ側のギヤ比V_Gear(第4速)へアップシフトさせるため、
当該アップシフトの完了後はこれによる変速比の変化分だけ、同じ制振用駆動トルク補正量Tw_stabのもとでも(同じ車体振動のもとでも)、この車体振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが図8に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0056】
このため瞬時t1〜t3間においても、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上である期間を発生させることができ、瞬時t1〜t3において全く制振制御が行われないというようなことがなく、瞬時t1〜t3中のTe_stab≧T_Teとなる間に制振用駆動トルク補正量Tw_stabで狙った車体振動の抑制が可能となる。
よって、制振用エンジントルク補正量Te_stabが小さい場合においても、制振制御が全く実行されないということがなくなり、車体振動の抑制が可能である。
【0057】
また本実施例においては、図7のステップS604でTe_stab<T_Teと判定した図8の瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に(ステップS608)、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGear(第3速)からハイ側のギヤ比V_Gear(第4速)へアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS607)、
ノイズなどで一時的にTe_stab<T_Teとなったのに呼応して自動変速機が無駄にアップシフトされる弊害を回避することができる。
【0058】
しかも本実施例においては、上記の制振制御時アップシフトにより、以下の作用効果も奏し得られる。
つまり、制振制御時アップシフトにより運転者が駆動力低下を感じてアクセルペダルを踏み増すことから、エンジン要求負荷の増大により駆動トルクが増大することとなって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabの制御性が向上するという付加的な効果も得られて好都合である。
【0059】
<第2実施例>
図10は、本発明の第2実施例になる車体制振制御装置の制振制御時に行う変速指令算出処理および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示し、この図10は、前記した第1実施例における図7の制御プログラムに対応するものである。
本実施例においても、車体制振制御システムは図1,2の概略系統図に示すと同様なものとし、当該システムにおける制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すと同様なものとし、図2,3における駆動力制御部5は図4におけると同様なものとし、図2,3に示したコントローラ7、駆動力制御部5、および変速比制御部6より成る車体制振制御システムが実行する車体制振制御のメインルーチンは、図6に示すと同様なものとする。
【0060】
但し本実施例では車両が、第1実施例におけるような有段式自動変速機でなく、無段変速機を介しエンジントルクを左右前輪1FL,1FRへ伝達されて走行する、無段変速機搭載車であるものとする。
【0061】
図10は、図6のメインルーチン内のステップS600(制振制御時変速指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stabの算出処理)に係わるサブルーチンで、図10においては、図7におけると同様な処理を行うステップを同一符号により示した。
以下、図10に基づき制振制御時変速指令の算出処理および制振用エンジントルク補正量の算出処理を説明するが、各ステップでの処理は、図7における同符号で示したステップでの処理と同じであるため、各ステップに関する詳細な説明は省略し、簡単に述べるに止めた。
【0062】
ステップS601において現在の無段変速機の変速比CURGearをC_Gearに格納し、
ステップS602において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabを制振用エンジントルク補正量Te_stabに変換するための変換係数O_Gear=1/( C_Gear・D_Gear)を算出し、
ステップS603において、制振用エンジントルク補正量Te_stab=Tw_stab・O_Gearを算出する。
【0063】
ステップS604で制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジントルク設定値T_Te以上(制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御により実現可能)と判定するとき、
ステップS605においてタイマカウンタC_Timeを0にリセットし、
ステップS606において、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比を制振制御時変速指令Gear_outとする。
ところで今は、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであることから、Gear_out=CURGearであって変速は指令されない。
【0064】
ステップS604でTe_stab<T_Te(制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によっても実現不能)と判定する場合は、
ステップS607において、タイマカウンタC_Timeをインクリメント(歩進)させ、ステップS604でTe_stab<T_Teと判定されてからの経過時間を計測する。
【0065】
ステップS608においては、タイマカウンタC_Time により、Te_stab<T_Teとなってからの経過時間が設定時間Th_Time以上であるか否かをチェックし、
C_Time≧Th_Timeとなるまでは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定であるかもしれないから、ステップS606において前記したと同じ処理を引き続き行わせて、前記したと同様に制振制御時変速指令Gear_outを算出し続ける。
【0066】
しかし今回も、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであって、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=CURGearとなるため、変速は指令されない。
【0067】
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定された場合は、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないことから、制御を順次ステップS609およびステップS606に進める。
ステップS609においては、ステップS601で現在のギヤ比CURGearを格納されていた変速比格納アドレスC_Gear内に、現在のギヤ比CURGearよりもハイ側のギヤ比V_Gearを置き換える。
【0068】
次のステップS606において、前記したと同じ処理により制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
ところで今回は、ステップS609において変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS601での格納値(現在の変速比CURGear)から、これよりもハイ側のギヤ比V_Gearに置き換えられているため、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=V_Gearとなり、現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへの変速(アップシフト)を指令することとなる。
【0069】
<第2実施例の効果>
上記した第2実施例の車体制振制御装置においても、
ピッチング振動(d/dt)θpおよび上下バウンス振動(d/dt)xbのような車体振動を抑制するのに必要な制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabが、エンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めた設定値T_Te未満であるとき(ステップS604)、無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS606)、第1実施例と同様に以下の効果が奏し得られる。
【0070】
制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のように定めた設定値T_Te未満であるということは、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現することができないことを意味し、結果として、制振用エンジントルク補正量Te_stabにより抑制しようとする車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを狙い通りに軽減し得ない。
【0071】
ところでこのような場合、本実施例では無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS606)、
これによる変速比の変化分だけ、同じ車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbでも、これを抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが上記アップシフトの終了に呼応して増大されることとなり、この制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上の値にすることができる。
よって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御をいつまでも実行し得ない状態になることがなくなり、上記のアップシフトの結果Te_stab≧T_Teとなる期間において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御を実行し得て、車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを抑制することができる。
【0072】
制振用駆動トルク補正量Tw_stabが図11に示すごとくに経時変化する場合につき上記の効果を更に付言する。
上記のアップシフトを行わない場合、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図11に破線で示すごときものとなり、
Te_stab<T_Teである、瞬時t1から瞬時t4までの長い間に亘って、制振用エンジントルク補正量Te_stabを実現し得ないため、これにより狙った通りに車体振動を抑制することができない。
【0073】
ところで本実施例においては、Te_stab<T_Teになった瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に、無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため、
これによる変速比の変化分だけ、同じ制振用駆動トルク補正量Tw_stabのもとでも(同じ車体振動のもとでも)、この車体振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが図11に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0074】
しかして本実施例のようにアップシフト対象が無段変速機である場合、図10のステップS609が1回実行されただけでは、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上になるほどのアップシフト量になり得ない。
ところで本実施例では、ステップS609の実行後にステップS605をスキップして制御をステップS606へ進めるため、タイマカウンタC_Timeを図11の瞬時t2以後も設定値Th_Time以上に保つことができる。
【0075】
このため、図11の瞬時t2以後もステップS608がステップS609をスキップすることなくステップS609を選択し続けることとなり、図11の瞬時t2以後もステップS606においてアップシフト指令Gear_outが出力され続ける結果、無段変速機はハイ側ギヤ比V_Gearへの図11に示すような連続的変化により、運転状態に応じた限界変速比まで逐次アップシフトされ、これに伴う変速が完了する度にステップS603での演算結果である制振用エンジントルク補正量Te_stabが図11に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0076】
そして、制振用エンジントルク補正量Te_stabが設定値T_Te以上となるアップシフト量となった図11の瞬時t3に、ステップS604がステップS605を選択してタイマカウンタC_Timeを0にリセットするため、ステップS609が実行されなくなり、制振制御時変速指令Gear_outの算出が終了する。
【0077】
以上により、瞬時t1〜t4間においても、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上である期間を発生させることができ、瞬時t1〜t3において全く制振制御が行われないというようなことがなく、瞬時t1〜t4中のTe_stab≧T_Teとなる間に制振用駆動トルク補正量Tw_stabで狙った車体振動の抑制が可能となる。
よって、制振用エンジントルク補正量Te_stabが小さい場合においても、制振制御が全く実行されないということがなくなり、車体振動の抑制が可能である。
【0078】
<第3実施例>
なお第1実施例および第2実施例のいずれにおいても、制振制御時アップシフト完了後に図7,10のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資することとしたが、
この場合前記した通り、制振制御時アップシフトが完了した後でないと、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分の増大を行われないことから、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトに対し遅れて、前記作用効果による恩恵を十分に享受することができない。
【0079】
そこで本実施例においては、制振制御時アップシフトが指令されたら直ちに、このアップシフトが完了していなくても、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大されるようにしたものである。
本実施例は、第2実施例と同様に無段変速機搭載車を前提とし、これに対し上記の着想を適用し、第2実施例における図10の制御プログラムを図12の制御プログラムに置換したものである。
【0080】
本実施例においても、車体制振制御システムは図1,2の概略系統図に示すと同様なものとし、当該システムにおける制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すと同様なものとし、図2,3における駆動力制御部5は図4におけると同様なものとし、図2,3に示したコントローラ7、駆動力制御部5、および変速比制御部6より成る車体制振制御システムが実行する車体制振制御のメインルーチンは、図6に示すと同様なものとする。
【0081】
図12は、図6のメインルーチン内のステップS600(制振制御時変速指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stabの算出処理)に係わるサブルーチンで、基本的に図10の制御プログラムと同様なものとし、図10におけると同様な処理を行うステップを同一符号により示した。
【0082】
図12は、図10の最後にステップS610を追加したものに相当し、それ以外のステップS601〜ステップS609は、相互間の関係も含め全て図10に同じものとする。
このため、追加したステップS610についてのみ、その詳細を以下に説明する。
このステップS610では、ステップS602におけると同様な考え方に基づき、変速比格納アドレスC_Gearおよびディファレンシャルギヤ比D_Gearから、変換係数O_Gear=1/( C_Gear ・D_Gear)を算出し、
次いで、ステップS603におけると同様、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに当該算出した変換係数O_Gearを乗じて制振用エンジントルク補正量Te_stab=Tw_stab・O_Gearを求める。
【0083】
ところで、ステップS609を含むループを通らない場合は、つまりステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられない場合は、
ステップS601でのC_Gear=CURGearが保たれているため、ステップS610で求める変換係数O_GearがステップS602で求めたと同じであり、また、この変換係数O_Gearを用いてステップS610で求める制振用エンジントルク補正量Te_stabもステップS603で求めたと同じ値になり、結果として制振用エンジントルク補正量Te_stabの求め直しは行われないこととなる。
しかし、ステップS609を含むループを通らない(ステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられない)場合は、変速が指令されないことから変更に伴う制振用エンジントルク補正量Te_stabの求め直しは不要である。
【0084】
しかしてステップS609を含むループを通る場合は、つまりステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられた場合は、
ステップS601でのC_Gear=CURGearが、ステップS609でC_Gear=V_Gearに置き換えられるため、ステップS610で求める変換係数O_GearがステップS602で求めたと同じにならず、アップシフト変速指令先の変速比V_Gear に応じたO_Gear=1/( V_Gear ・D_Gear)となり、また、この変換係数O_Gearを用いてステップS610で求める制振用エンジントルク補正量Te_stabもステップS603で求めたと同じ値にならず、アップシフト変速指令により生ずるであろう変速比変化分だけ増大された値に求め直されることとなる。
従ってステップS610は、本発明における制振用駆動力補正量演算手段に相当する。
【0085】
本実施例においては、図12のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabではなく、ステップS610で上記のごとくに求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700において出力する。
当該出力された制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図2,3に示すように駆動力制御部5に向かい、この駆動力制御部5は図4につき前述したようにして制振用目標エンジントルクtTeを求めてエンジンコントローラ11に指令する。
エンジンコントローラ11はエンジンを、その出力トルクがこの制振用目標エンジントルクtTeに一致するよう出力制御する。
【0086】
<第3実施例の効果>
上記した第3実施例によれば、第1,2実施例と同様な作用効果を奏し得るほかに、以下のような作用効果をも奏し得られる。
つまり第1実施例および第2実施例においては、制振制御時アップシフト完了後に図7,10のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資するため、
制振制御時アップシフト指令に対応する変速が完了した後でないと、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大され得ず、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトに対し遅れる。
【0087】
しかし本実施例においては、ステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabではなく、ステップS610で求めた制振制御時アップシフト指令対応の制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資するため、
制振制御時アップシフト指令が発せられると直ちに、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大されることとなり、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトの完了と同時に行われる。
従って、制振制御時アップシフトに対し制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が遅れることがなく、前記した作用効果による恩恵を十分に享受することができる。
【0088】
<その他の実施例>
上記した各実施例においては、内燃機関などのエンジンを搭載した車両にあって、エンジントルク補正により車体振動を抑制する場合につき車体制振制御装置を説明したが、
モータなどの回転電機を動力源とする電気自動車やハイブリッド車両において、回転電機の駆動力を補正して車体振動を抑制する車体制振制御装置として構成してもよいのは言うまでもない。
また、如何なる動力源を搭載するにしても、動力源の出力トルク補正により制振制御を行うものに限られず、制動力の付加により車輪駆動トルクを補正して制振制御を行うものであっても、本発明の着想は適用可能であること勿論である。
【0089】
更に図示例では、車体振動としてピッチ角速度(d/dt)θpおよび上下バウンス速度(d/dt)xbを例示したが、これに限られるものではなく、ピッチング量θpおよび上下バウンス量xbや、ピッチ角加速度(d2/dt)θpおよび上下バウンス加速度(d2/dt)xbのような車体振動を抑制する場合にも本発明の車体制振制御装置は有用である。
【符号の説明】
【0090】
1FL,1FR 左右前輪
1RL,1RR 左右後輪
2 ステアリングホイール
3 車体(バネ上質量)
4 アクセルペダル
5 駆動力制御部
5a 要求エンジントルク算出部
5b 加算器
6 変速比制御部
7 制振制御コントローラ
8 車輪速センサ
9 アクセル開度センサ
10 変速比検知部
11 エンジンコントローラ
12 変速機コントローラ
51 要求駆動トルク演算部
52 前後外乱算出部
53 車体振動推定部
54 制振用エンジントルク補正量演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動、例えばピッチング振動や上下バウンス振動を駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車体制振制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載されているごときものが知られている。
この車体制振制御技術は、駆動トルクおよび車輪速から、サスペンション装置のバネ上質量である車体の振動を推定して、この車体振動を抑制するための駆動力補正量を求め、この補正量だけ動力源であるエンジンの出力を補正して車体の制振を行うことを趣旨とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−247157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車体振動を抑制するための駆動力補正量が小さく、この駆動力補正量がエンジンの出力変更可能下限量により実現可能な補正量未満である場合、エンジンをその制御分解能に未たない僅かな量だけ出力補正する必要がある。
【0005】
しかし実際上、エンジンをその制御分解能に未たない僅かな量だけ出力補正することは不可能で、車体振動を抑制するための駆動力補正量をエンジン出力補正によって実現することができない。
このため従来の車体制振制御技術にあっては、制振用駆動力補正量が小さい場合、狙い通りに車体振動を抑制することができないのが実情であった。
【0006】
本発明は、車体振動を抑制するための駆動力補正量が上記のように小さい場合、駆動力伝達系の変速比をハイ側に変更すれば、同じ車体振動でもこれを抑制するための駆動力補正量が変速比の変更分だけ増大して、車体振動の抑制が可能になるとの観点から、
この着想を具体化して上記の問題を解消可能にした車体制振制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明による車体制振制御装置は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の前提となる車体制振制御装置を説明するに、これは、
サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を駆動力補正制御により抑制するものである。
【0008】
本発明は、かかる車体制振制御装置に対し、
前記車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して前記駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、
該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、前記駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを設けて構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明の車体制振制御装置によれば、
車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更するため、
制振用駆動力補正量が、駆動力伝達系の駆動力制御によって実現できないほどに小さなものである場合でも、上記変速比のハイ側への変更によりその後は、同じ車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量が変速比変更分だけ増大させて、制振用駆動力補正量を実現可能になる。
【0010】
よって、制振用駆動力補正量が小さい場合においても、これを実現し得ない状態が継続することがなく、上記した変速比のハイ側変更後は車体振動を狙い通りに抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施例になる車体制振制御装置を車載状態で示す概略系統図である。
【図2】同実施例になる車体制振制御装置の概略系統を示す機能別ブロック線図である。
【図3】図1,2における制振制御コントローラを、駆動力制御部および変速比制御部と共に示す機能別ブロック線図である。
【図4】図2,3における駆動力制御部の機能別ブロック線図である。
【図5】アクセル開度APOと、運転者が要求している要求エンジントルクTe_aとの関係を例示する特性線図である。
【図6】図2,3に示す制振制御システムが実行する制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。
【図7】図6のメインルーチンにおける制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理に関したサブルーチンを示すフローチャートである。
【図8】図6,7の車体制振制御による動作を示す動作タイムチャートである。
【図9】図6,7の車体制振制御で用いた車両の運動モデルを説明するための説明図である。
【図10】本発明の第2実施例になる車体制振制御装置の制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示す、図7に対応するフローチャートである。
【図11】図10に示す第2実施例の車体制振制御による動作を示す動作タイムチャートである。
【図12】本発明の第3実施例になる車体制振制御装置の制振制御時変速指令および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示す、図7,10に対応するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1,2は、本発明の第1実施例になる車体制振制御装置を示す概略系統図である。
図1において、1FL,1FRはそれぞれ左右前輪を示し、また1RL,1RRはそれぞれ左右後輪を示す。
左右前輪1FL,1FRはステアリングホイール2により転舵される操舵輪である。
また左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRはそれぞれ、図示せざるサスペンション装置により車体3に懸架され、この車体3は、サスペンション装置よりも上方に位置してバネ上質量を構成する。
【0013】
図1における車両は、動力源として図示せざるエンジンを搭載され、これにより、図示せざる有段式自動変速機を介し左右前輪1FL,1FRを駆動して走行可能な前輪駆動車とする。
これらエンジンおよび自動変速機のうち、エンジンは、運転者が操作するアクセルペダル4の踏み込み量に応じて図2のエンジンコントローラ11を介し出力を加減されるが、それとは別に車体振動を抑制するために(車体制振制御用に)駆動力制御部5を介してエンジンコントローラ11により出力を補正し得るものとし、
自動変速機は、図2の変速機コントローラ12を含む通常の変速制御システムにより変速段を決定されるが、それとは別に車体振動抑制時(車体制振制御時)に変速比制御部6を介して適宜、変速機コントローラ12により変速比(変速段)を変更し得るものとする。
【0014】
駆動力制御部5は、上記車体振動抑制用のエンジン出力補正に際し図2に示すごとく、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに応答し、これを実現するような制振用目標エンジントルクtTeを算出する。
そしてエンジンコントローラ11が、エンジントルクをこの制振用目標エンジントルクtTeに一致させるエンジン出力制御を行うことにより、上記の制振用エンジン出力補正を行う。
【0015】
変速比制御部6は、上記変速比(変速段)の変更に際し図2に示すごとく、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに応じて現在の変速比(変速段)CURGearからの制振時変速指令Gear_out(制振時の目標変速比)を算出する。
そして変速機コントローラ12は、この制振時変速指令Gear_outに応じて適宜、自動変速機の変速比(変速段)を制振時変速指令Gear_outに変更する。
【0016】
制振制御コントローラ7には、上記の制振用エンジントルク補正量Te_stabを求めるために、
左右前輪1FL,1FRおよび左右後輪1RL,1RRの車輪速Vwを個々に検出する車輪速センサ8からの信号と、
アクセル開度(アクセルペダル踏み込み量)APOを検出するアクセル開度センサ9からの信号とを入力する。
また変速比制御部6には、制振時変速指令Gear_outを求めるために、制振制御コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabに加え、
現在における自動変速機の変速比(変速段)CURGearを検知する変速比検知部10からの信号とを入力する。
【0017】
制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すように、要求駆動トルク演算部51と、前後外乱算出部52と、車体振動推定部53と、制振用エンジントルク補正量演算部54とで構成する。
【0018】
要求駆動トルク演算部51は、アクセル開度APOから、運転者が要求している車輪の要求駆動トルクを演算する。
前後外乱算出部52は、車輪速Vwに基づいて各車輪速の変化をモニタし、各車輪速の変化から車輪に働く前後方向外乱を算出する。
車体振動推定部53は、演算部51からの要求駆動トルクおよび算出部52からの車輪に作用する前後方向外乱から、車体3の振動を推定する。
制振用トルク補正量演算部54は、推定部53で求めた車体3の振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabを算出する。
【0019】
かかる要求駆動トルク演算部51、前後外乱算出部52、車体振動推定部53、および制振用エンジントルク補正量演算部54から成る制振制御コントローラ7とで図2,3のように制振制御システムを構成する駆動力制御部5および変速比制御部6のうち、駆動力制御部5は図4に示すようなものとし、先ず要求エンジントルク算出部5aにおいてアクセル開度APOから、運転者が要求しているエンジン要求トルクTe_aを算出する。
この算出に当たっては、図5に例示するような予定のマップを基にアクセル開度APOからエンジン要求トルクTe_aを検索して求める。
そして加算器5bで、当該エンジン要求トルクTe_aと、演算部54(図3参照)からの制振用エンジントルク補正量Te_stabとを合算して、目標エンジントルクtTe=Te_a+Te_stabを求め、これをエンジンコントローラ11に指令する。
【0020】
また変速比制御部6は図2,3に示すごとく、自動変速機の現在の変速比(変速段)CURGearと、コントローラ7からの制振用エンジントルク補正量Te_stabとを入力され、後で詳述するごとく制振用エンジントルク補正量Te_stabに応じて適宜、自動変速機を現在の変速比(変速段)CURGearからハイ側の変速比(変速段)Gear_outへの変速を変速機コントローラ12に指令する。
【0021】
<車体制振制御>
図2,3に示した制振制御コントローラ7、駆動力制御部5および変速比制御部6より成る車体制振制御システムは、図6,7の制御プログラムを実行して車体振動を抑制する車体制振制御を遂行する。
図6は、10msecごとに繰り返し実行されるメインルーチンを示し、図7は、当該メインルーチン内のステップS600に係わるサブルーチンを示す。
【0022】
図6のステップS100においては、センサ8で検出した車輪速Vw、センサ9で検出したアクセル開度APO、および検知部10で検知した自動変速機の変速比(変速段)CURGearを含む車両走行状態を読み込む。
【0023】
次のステップS200においては、当該読み込んだ車両走行状態を基に、要求駆動トルクTwを以下のようにして算出する。
図5に例示する予定のエンジントルクマップを基にアクセル開度APOから、運転者が要求している要求エンジントルクTe_aを検索により求める。
そして、要求エンジントルクTe_aを、ディファレンシャルギヤ比Kdif、および自動変速機のギヤ比Katに基づいて、次式の演算により駆動軸トルクに換算し、この換算値を要求駆動トルクTwとする。
Tw=Te_a/(Kdif・Kat)
【0024】
次のステップS300においては、車輪速Vw(左右前輪1FL,1FRの車輪速VwFL,VwFRおよび左右後輪1RL,1RRの車輪速VwRL,VwRR)から、後述の車両運動モデルへの入力となる前後外乱、つまり前輪の走行抵抗変動ΔFfおよび後輪の走行抵抗変動ΔFrを算出する。
これら走行抵抗変動ΔFfおよびΔFrの算出に当たっては、各車輪速VwFL,VwFR, VwRL,VwRRから実車速成分Vbodyを除去して各輪速度を算出し、各輪速度の前回値と今回値との差分をとる時間微分によって各輪加速度を算出し、各輪加速度にバネ下質量を乗じることで、前輪の走行抵抗変動ΔFfおよび後輪の走行抵抗変動ΔFrを算出する。
【0025】
ステップS400においては、車両運動モデルからバネ上振動(車体振動)を推定する。この推定に当たっては、ステップS200で求めた要求駆動トルクTw、およびステップS300で求めた前後輪の走行抵抗変動ΔFf,ΔFrを入力とし、後述の車両運動モデルを用いてバネ上振動(車体振動)の推定を行う。
【0026】
本実施例における車両運動モデルは図9に示すとおり、車体3に対して前後輪をそれぞれサスペンション装置により懸架された前後2輪モデルである。
すなわち本実施例における車両運動モデルは、車両に発生する駆動トルク変動ΔTw、路面状態変化、および制駆動力変化や、ステアリング操舵等に応じて前輪に発生する走行抵抗変動ΔFf、および後輪に発生する走行抵抗変動ΔFrをパラメータとし、
前後1輪に対応したサスペンション装置のバネ・ダンパ系とを有するサスペンションモデルと、車体重心位置の移動量を表現する車体バネ上モデルとから成り立っている。
【0027】
次に、車両に制駆動トルク変動が発生し、路面状態変化、制駆動力変化およびステアリング操舵の少なくとも一つがタイヤに加えられたことで走行抵抗変動が発生した場合につき、車両運動モデルを用いて車体振動を以下に説明する。
車体3に駆動トルク変動ΔTw、走行抵抗変動ΔFf,ΔFrの少なくとも一つが発生したとき、車体3はピッチ軸まわりに角度(ピッチ角)θpの回転が発生するとともに、重心位置に上下移動xbが発生する。
ここで駆動トルク変動ΔTwは、運転者のアクセル操作から算出された今回の駆動トルクΔTwnと、駆動トルク変動の前回値ΔTwn-1との差分から演算する。
【0028】
図9に示すように、前輪側サスペンション装置のバネ定数をKsf、振動減衰定数をCsfとし、また後輪側サスペンション装置のバネ定数をKsr、振動減衰定数をCsrとし、
前輪側サスペンション装置のリンク長をLsf、リンク揺動中心高をhbfとし、また後輪側サスペンション装置のリンク長をLsr、リンク揺動中心高をhbrとし、
更に、車体3のピッチ方向慣性モーメントをIp、前軸およびピッチ軸間距離をLf、後軸およびピッチ軸間距離をLr、重心高をhcg、バネ上質量をMとすると、
車体上下バウンス振動の運動方程式は、次式のごときものとなり、
【数1】
また、車体ピッチング振動の運動方程式は、
【数2】
で表すことができる。
【0029】
これら二つの運動方程式を、
【数3】
と置いて、状態方程式に変換すると
【数4】
と表現することができる。
ここで、それぞれの要素は
【数5】
である。
【0030】
更に、上記の状態方程式を入力信号によりフィードフォワード(F/F)項と、フィードバック(F/B)とに分割すると、
駆動トルクを入力とするフィードフォワード(F/F)項は、
【数6】
と表すことができ、
また前後輪の走行外乱を入力とするフィードバック(F/B)項は、
【数7】
と表すことができる。
【0031】
次のステップS500においては、ステップS400で上記のごとくに算出した車体振動(d/dt)xbおよび(d/dt)θpを抑制するための制振用駆動トルク補正量Tw_stabを算出する。
つまりステップS500においては、ステップS200でアクセル開度APOに基づき決定した、駆動トルク要求値の変動成分ΔTwおよび前後輪の路面反力変化ΔFf, ΔFrに基づく、それぞれの次式
【数8】
で表されるバネ上(車体)振動を駆動トルク要求値へフィードバックする制振用駆動トルク補正量Tw_stabを算出することを意味する。
【0032】
このときフィードバックゲインは、車体振動(d/dt)xbおよび(d/dt)θpが少なくなるように決定する。
例えば、フィードバック項において車体振動(d/dt)xbが少なくなるフィードバックゲインを算出するに際しては、重み行列を
【数9】
のように選び、
【数10】
で表されるJを最小にする制御入力を算出すればよい。
【0033】
その解は、リカッチ代数方程式
【数11】
の正定対称解pを元に、
【数12】
で与えられる。
ここでFxb_FBは、フィードフォワード項における(d/dt)xbに関するフィードバックゲイン行列である。
【0034】
フィードバック項における(d/dt)θp、およびフィードフォワード項における(d/dt)xb , (d/dt)θpが少なくなるフィードバックゲイン(それぞれFthp_FB,Fxb_FF, Fthp_FF)も同様に、
【数13】
として、
【数14】
により算出し、また、
【数15】
として、
【数16】
により算出し、更に、
【数17】
として、
【数18】
により算出する。
上記は最適レギュレータの手法であるが、極配置など他の手法により設計しても良い。
【0035】
上記4つの式から算出した制振用駆動トルク補正量に対してそれぞれ重み付けを行い、上記4つの重み付け済トルク補正量Tw_thp_ff,Tw_xb_ff,Tw_thp_fb,Tw_xb_fbを上記フィードフォワード項およびフィードバック項の2つにまとめると
Tw_ff = Tw_thp_ff + Tw_xb_ff
Tw_fb = Tw_thp_fb + Tw_xb_fb
となる。
そして、駆動トルク要求値にフィードバックする駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabは、
Tw_stab = Tw_ff + Tw_fb
として算出することができる。
【0036】
次のステップS600においては、ステップS500で上記のごとくに求めた駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabと、ステップS100で読み込んだ変速比(変速段)CURDearとから、自動変速機の制振制御時変速指令Gear_outを求めると共に、制振用エンジントルク補正量Testabを算出する。
【0037】
ステップS600の詳細は図7に示すごときもので、ステップS601において現在の自動変速機の変速比CURGearをC_Gearに格納する。
次のステップS602においては、駆動軸上の制振用駆動トルク補正量Tw_stabをエンジン出力軸上の制振用エンジントルク補正量に変換するための変換係数O_Gearを算出する。
ディファレンシャルギヤ装置のギヤ比をD_Gearとすると、このディファレンシャルギヤ比D_GearおよびステップS601でセットしたC_Gear=CURGearから、変換係数O_Gearは、
O_Gear=1/( C_Gear・D_Gear)
により算出することができる。
【0038】
ステップS603においては、図6のステップS500で求めた制振用駆動トルク補正量Tw_stabに上記の変換係数O_Gearを乗ずる次式の演算により、制振用エンジントルク補正量Te_stabを求める。
Te_stab=Tw_stab・O_Gear
【0039】
ステップS604においては、上記の制振用エンジントルク補正量Te_stabと、例えばエンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めたエンジントルク設定値T_Teとを比較し、Te_stab≧T_Teであるか否かをチェックする。
【0040】
Te_stab≧T_Teであれば、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御により実現可能であることから、制御を順次ステップS605およびステップS606に進める。
ステップS605においては、後述するごとくTe_stab<T_Teになってからの経過時間を計測するタイマカウンタC_Timeを0にリセットする。
【0041】
ステップS606においては、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比を制振制御時変速指令Gear_outとする。
ところで今回は変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであることから、Gear_out=CURGearであって変速は指令されないこととなる。
【0042】
ステップS604でTe_stab<T_Teと判定する場合は、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によっても実現不能であることから、制御をステップS607以降に進めて、以下の処理により制振制御が可能となるようにする。
ステップS607においては、ステップS605で0にリセットしたタイマカウンタC_Timeをインクリメント(歩進)させ、ステップS604でTe_stab<T_Teと判定されてからの経過時間を計測する。
【0043】
ステップS608においては、タイマカウンタC_Time により、Te_stab<T_Teとなってからの経過時間が設定時間Th_Time以上であるか否かをチェックする。
ここで設定時間Th_Timeは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないか否かを見極めるための時間で、例えば「5秒」と定める。
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定するまでは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定であるかもしれないから、制御をステップS606に進め、このステップにおいて前記したと同じ処理により制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
【0044】
しかし今回も、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであって、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=CURGearとなるため、変速は指令されない。
【0045】
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定された場合は、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないことから、制御を順次ステップS609、ステップS605およびステップS606に進める。
ステップS609においては、ステップS601で現在のギヤ比CURGearを格納されていた変速比格納アドレスC_Gear内に、現在のギヤ比CURGearよりもハイ側のギヤ比V_Gearを置き換える。
【0046】
ステップS605においては、タイマカウンタC_Timeを次回に備えて0にリセットし、ステップS606において前記したと同じ処理により、制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
【0047】
ところで今回は、ステップS609において変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS601での格納値(現在の変速比CURGear)から、これよりもハイ側のギヤ比V_Gearに置き換えられているため、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=V_Gearとなり、現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへの変速(アップシフト)を指令することとなる。
従ってステップS606は、本発明における変速比変更手段に相当する。
【0048】
図6のステップS600(図7の制御プログラム)で上記のごとく求めた変速(アップシフト)指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stab(ステップS603)は、図6のステップS700において出力する。
このとき制振時変速(アップシフト)指令Gear_outは、図2,3に示すように変速機コントローラ12に向かい、自動変速機を現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへ変速(アップシフト)させる制振時変速制御に供される。
また制振用エンジントルク補正量Te_stab(ステップS603)は、図2,3に示すように駆動力制御部5に向かい、この駆動力制御部5は図4につき前述したようにして制振用目標エンジントルクtTeを求めてエンジンコントローラ11に指令する。
エンジンコントローラ11はエンジンを、その出力トルクがこの制振用目標エンジントルクtTeに一致するよう出力制御する。
【0049】
かかる制振時変速制御により自動変速機が現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへ変速(アップシフト)し終えた後は、検知部10により検知する変速比CURGearがV_Gearであることから、
図7のステップS601〜603で求める次回の新たな制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のアップシフトによる変速比の変化分だけ大きくなり、その分だけ図2〜4における制振用目標エンジントルクtTeも上記のアップシフト後に増大される。
【0050】
これによっても尚ステップS604でTe_stab≧T_Teと判定するに至らない場合は、ステップS609を通るループが再度選択されて上記のアップシフト、および当該アップシフト完了後における制振用エンジントルク補正量Te_stab(制振用目標エンジントルクtTe)の増大が行われ、何れにしても最終的に制振用エンジントルク補正量Te_stabは、エンジン出力制御により実現可能な大きさになる。
【0051】
<第1実施例の効果>
上記した第1実施例の車体制振制御装置によれば、
車両運動モデルに基づきアクセル操作または走行抵抗変動ΔFfおよびΔFrから推定したピッチング振動(d/dt)θpおよび上下バウンス振動(d/dt)xbのような車体振動を抑制するのに必要な制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabが、例えばエンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めた設定値T_Te未満であるとき(ステップS604)、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS606)、以下の効果が奏し得られる。
【0052】
制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のように定めた設定値T_Te未満であるということは、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現することができないことを意味し、結果として、制振用駆動トルク補正量Tw_stabによる制振制御をいつまでも実行し得ないことになる。
【0053】
ところでこのような場合、本実施例では自動変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS606)、
これによる変速比の変化分だけ、同じ車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbでも、これを抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが上記アップシフトの終了に呼応して増大されることとなり、この制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上の値にすることができる。
よって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御をいつまでも実行し得ない状態になることがなくなり、上記のアップシフトの結果Te_stab≧T_Teとなる期間において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御を実行し得て、車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを抑制することができる。
【0054】
制振用駆動トルク補正量Tw_stabが図8に示すごとくに経時変化する場合につき上記の効果を更に付言する。
上記のアップシフトを行わない場合、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図8に破線で示すごときものとなり、
Te_stab<T_Teである、瞬時t1から瞬時t3までの長い間に亘って、制振用エンジントルク補正量Te_stabを実現し得ないため、これにより狙った通りに車体振動を抑制することができない。
【0055】
ところで本実施例においては、Te_stab<T_Teになった瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGear(第3速)からハイ側のギヤ比V_Gear(第4速)へアップシフトさせるため、
当該アップシフトの完了後はこれによる変速比の変化分だけ、同じ制振用駆動トルク補正量Tw_stabのもとでも(同じ車体振動のもとでも)、この車体振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが図8に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0056】
このため瞬時t1〜t3間においても、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上である期間を発生させることができ、瞬時t1〜t3において全く制振制御が行われないというようなことがなく、瞬時t1〜t3中のTe_stab≧T_Teとなる間に制振用駆動トルク補正量Tw_stabで狙った車体振動の抑制が可能となる。
よって、制振用エンジントルク補正量Te_stabが小さい場合においても、制振制御が全く実行されないということがなくなり、車体振動の抑制が可能である。
【0057】
また本実施例においては、図7のステップS604でTe_stab<T_Teと判定した図8の瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に(ステップS608)、自動変速機の変速比を現在の変速比CURGear(第3速)からハイ側のギヤ比V_Gear(第4速)へアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS607)、
ノイズなどで一時的にTe_stab<T_Teとなったのに呼応して自動変速機が無駄にアップシフトされる弊害を回避することができる。
【0058】
しかも本実施例においては、上記の制振制御時アップシフトにより、以下の作用効果も奏し得られる。
つまり、制振制御時アップシフトにより運転者が駆動力低下を感じてアクセルペダルを踏み増すことから、エンジン要求負荷の増大により駆動トルクが増大することとなって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabの制御性が向上するという付加的な効果も得られて好都合である。
【0059】
<第2実施例>
図10は、本発明の第2実施例になる車体制振制御装置の制振制御時に行う変速指令算出処理および制振用エンジントルク補正量の算出処理を示し、この図10は、前記した第1実施例における図7の制御プログラムに対応するものである。
本実施例においても、車体制振制御システムは図1,2の概略系統図に示すと同様なものとし、当該システムにおける制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すと同様なものとし、図2,3における駆動力制御部5は図4におけると同様なものとし、図2,3に示したコントローラ7、駆動力制御部5、および変速比制御部6より成る車体制振制御システムが実行する車体制振制御のメインルーチンは、図6に示すと同様なものとする。
【0060】
但し本実施例では車両が、第1実施例におけるような有段式自動変速機でなく、無段変速機を介しエンジントルクを左右前輪1FL,1FRへ伝達されて走行する、無段変速機搭載車であるものとする。
【0061】
図10は、図6のメインルーチン内のステップS600(制振制御時変速指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stabの算出処理)に係わるサブルーチンで、図10においては、図7におけると同様な処理を行うステップを同一符号により示した。
以下、図10に基づき制振制御時変速指令の算出処理および制振用エンジントルク補正量の算出処理を説明するが、各ステップでの処理は、図7における同符号で示したステップでの処理と同じであるため、各ステップに関する詳細な説明は省略し、簡単に述べるに止めた。
【0062】
ステップS601において現在の無段変速機の変速比CURGearをC_Gearに格納し、
ステップS602において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabを制振用エンジントルク補正量Te_stabに変換するための変換係数O_Gear=1/( C_Gear・D_Gear)を算出し、
ステップS603において、制振用エンジントルク補正量Te_stab=Tw_stab・O_Gearを算出する。
【0063】
ステップS604で制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジントルク設定値T_Te以上(制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御により実現可能)と判定するとき、
ステップS605においてタイマカウンタC_Timeを0にリセットし、
ステップS606において、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比を制振制御時変速指令Gear_outとする。
ところで今は、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであることから、Gear_out=CURGearであって変速は指令されない。
【0064】
ステップS604でTe_stab<T_Te(制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によっても実現不能)と判定する場合は、
ステップS607において、タイマカウンタC_Timeをインクリメント(歩進)させ、ステップS604でTe_stab<T_Teと判定されてからの経過時間を計測する。
【0065】
ステップS608においては、タイマカウンタC_Time により、Te_stab<T_Teとなってからの経過時間が設定時間Th_Time以上であるか否かをチェックし、
C_Time≧Th_Timeとなるまでは、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定であるかもしれないから、ステップS606において前記したと同じ処理を引き続き行わせて、前記したと同様に制振制御時変速指令Gear_outを算出し続ける。
【0066】
しかし今回も、変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS602で格納された現在の変速比CURGearのままであって、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=CURGearとなるため、変速は指令されない。
【0067】
ステップS608でC_Time≧Th_Timeと判定された場合は、ステップS604におけるTe_stab<T_Teの判定が誤判定でないことから、制御を順次ステップS609およびステップS606に進める。
ステップS609においては、ステップS601で現在のギヤ比CURGearを格納されていた変速比格納アドレスC_Gear内に、現在のギヤ比CURGearよりもハイ側のギヤ比V_Gearを置き換える。
【0068】
次のステップS606において、前記したと同じ処理により制振制御時変速指令Gear_outを算出する。
ところで今回は、ステップS609において変速比格納アドレスC_Gear内における格納変速比が、ステップS601での格納値(現在の変速比CURGear)から、これよりもハイ側のギヤ比V_Gearに置き換えられているため、ステップS606におけるGear_out=C_Gearは結果的にGear_out=V_Gearとなり、現在の変速比CURGearからハイ側ギヤ比V_Gearへの変速(アップシフト)を指令することとなる。
【0069】
<第2実施例の効果>
上記した第2実施例の車体制振制御装置においても、
ピッチング振動(d/dt)θpおよび上下バウンス振動(d/dt)xbのような車体振動を抑制するのに必要な制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabが、エンジンの出力トルク変更可能下限量(エンジンのスロットル制御最小分解能0.2[Nm])に定めた設定値T_Te未満であるとき(ステップS604)、無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS609およびステップS606)、第1実施例と同様に以下の効果が奏し得られる。
【0070】
制振用エンジントルク補正量Te_stabが、上記のように定めた設定値T_Te未満であるということは、制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現することができないことを意味し、結果として、制振用エンジントルク補正量Te_stabにより抑制しようとする車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを狙い通りに軽減し得ない。
【0071】
ところでこのような場合、本実施例では無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため(ステップS606)、
これによる変速比の変化分だけ、同じ車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbでも、これを抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが上記アップシフトの終了に呼応して増大されることとなり、この制振用エンジントルク補正量Te_stabをエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上の値にすることができる。
よって、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御をいつまでも実行し得ない状態になることがなくなり、上記のアップシフトの結果Te_stab≧T_Teとなる期間において、制振用駆動トルク補正量Tw_stabにより狙った制振制御を実行し得て、車体振動(d/dt)θpおよび (d/dt)xbを抑制することができる。
【0072】
制振用駆動トルク補正量Tw_stabが図11に示すごとくに経時変化する場合につき上記の効果を更に付言する。
上記のアップシフトを行わない場合、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに対応した制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図11に破線で示すごときものとなり、
Te_stab<T_Teである、瞬時t1から瞬時t4までの長い間に亘って、制振用エンジントルク補正量Te_stabを実現し得ないため、これにより狙った通りに車体振動を抑制することができない。
【0073】
ところで本実施例においては、Te_stab<T_Teになった瞬時t1から設定時間Th_Timeに亘ってTe_stab<T_Teの状態が継続したと判定する瞬時t2に、無段変速機の変速比を現在の変速比CURGearからハイ側のギヤ比V_Gearへアップシフトさせるため、
これによる変速比の変化分だけ、同じ制振用駆動トルク補正量Tw_stabのもとでも(同じ車体振動のもとでも)、この車体振動を抑制するのに必要な制振用エンジントルク補正量Te_stabが図11に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0074】
しかして本実施例のようにアップシフト対象が無段変速機である場合、図10のステップS609が1回実行されただけでは、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上になるほどのアップシフト量になり得ない。
ところで本実施例では、ステップS609の実行後にステップS605をスキップして制御をステップS606へ進めるため、タイマカウンタC_Timeを図11の瞬時t2以後も設定値Th_Time以上に保つことができる。
【0075】
このため、図11の瞬時t2以後もステップS608がステップS609をスキップすることなくステップS609を選択し続けることとなり、図11の瞬時t2以後もステップS606においてアップシフト指令Gear_outが出力され続ける結果、無段変速機はハイ側ギヤ比V_Gearへの図11に示すような連続的変化により、運転状態に応じた限界変速比まで逐次アップシフトされ、これに伴う変速が完了する度にステップS603での演算結果である制振用エンジントルク補正量Te_stabが図11に破線で示す値から実線で示す値へと増大される。
【0076】
そして、制振用エンジントルク補正量Te_stabが設定値T_Te以上となるアップシフト量となった図11の瞬時t3に、ステップS604がステップS605を選択してタイマカウンタC_Timeを0にリセットするため、ステップS609が実行されなくなり、制振制御時変速指令Gear_outの算出が終了する。
【0077】
以上により、瞬時t1〜t4間においても、制振用エンジントルク補正量Te_stabがエンジンのトルク制御によって実現可能な設定値T_Te以上である期間を発生させることができ、瞬時t1〜t3において全く制振制御が行われないというようなことがなく、瞬時t1〜t4中のTe_stab≧T_Teとなる間に制振用駆動トルク補正量Tw_stabで狙った車体振動の抑制が可能となる。
よって、制振用エンジントルク補正量Te_stabが小さい場合においても、制振制御が全く実行されないということがなくなり、車体振動の抑制が可能である。
【0078】
<第3実施例>
なお第1実施例および第2実施例のいずれにおいても、制振制御時アップシフト完了後に図7,10のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資することとしたが、
この場合前記した通り、制振制御時アップシフトが完了した後でないと、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分の増大を行われないことから、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトに対し遅れて、前記作用効果による恩恵を十分に享受することができない。
【0079】
そこで本実施例においては、制振制御時アップシフトが指令されたら直ちに、このアップシフトが完了していなくても、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大されるようにしたものである。
本実施例は、第2実施例と同様に無段変速機搭載車を前提とし、これに対し上記の着想を適用し、第2実施例における図10の制御プログラムを図12の制御プログラムに置換したものである。
【0080】
本実施例においても、車体制振制御システムは図1,2の概略系統図に示すと同様なものとし、当該システムにおける制振制御コントローラ7は、図3にブロック線図で示すと同様なものとし、図2,3における駆動力制御部5は図4におけると同様なものとし、図2,3に示したコントローラ7、駆動力制御部5、および変速比制御部6より成る車体制振制御システムが実行する車体制振制御のメインルーチンは、図6に示すと同様なものとする。
【0081】
図12は、図6のメインルーチン内のステップS600(制振制御時変速指令Gear_outおよび制振用エンジントルク補正量Te_stabの算出処理)に係わるサブルーチンで、基本的に図10の制御プログラムと同様なものとし、図10におけると同様な処理を行うステップを同一符号により示した。
【0082】
図12は、図10の最後にステップS610を追加したものに相当し、それ以外のステップS601〜ステップS609は、相互間の関係も含め全て図10に同じものとする。
このため、追加したステップS610についてのみ、その詳細を以下に説明する。
このステップS610では、ステップS602におけると同様な考え方に基づき、変速比格納アドレスC_Gearおよびディファレンシャルギヤ比D_Gearから、変換係数O_Gear=1/( C_Gear ・D_Gear)を算出し、
次いで、ステップS603におけると同様、制振用駆動トルク補正量Tw_stabに当該算出した変換係数O_Gearを乗じて制振用エンジントルク補正量Te_stab=Tw_stab・O_Gearを求める。
【0083】
ところで、ステップS609を含むループを通らない場合は、つまりステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられない場合は、
ステップS601でのC_Gear=CURGearが保たれているため、ステップS610で求める変換係数O_GearがステップS602で求めたと同じであり、また、この変換係数O_Gearを用いてステップS610で求める制振用エンジントルク補正量Te_stabもステップS603で求めたと同じ値になり、結果として制振用エンジントルク補正量Te_stabの求め直しは行われないこととなる。
しかし、ステップS609を含むループを通らない(ステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられない)場合は、変速が指令されないことから変更に伴う制振用エンジントルク補正量Te_stabの求め直しは不要である。
【0084】
しかしてステップS609を含むループを通る場合は、つまりステップS606で制振制御時アップシフト変速指令が発せられた場合は、
ステップS601でのC_Gear=CURGearが、ステップS609でC_Gear=V_Gearに置き換えられるため、ステップS610で求める変換係数O_GearがステップS602で求めたと同じにならず、アップシフト変速指令先の変速比V_Gear に応じたO_Gear=1/( V_Gear ・D_Gear)となり、また、この変換係数O_Gearを用いてステップS610で求める制振用エンジントルク補正量Te_stabもステップS603で求めたと同じ値にならず、アップシフト変速指令により生ずるであろう変速比変化分だけ増大された値に求め直されることとなる。
従ってステップS610は、本発明における制振用駆動力補正量演算手段に相当する。
【0085】
本実施例においては、図12のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabではなく、ステップS610で上記のごとくに求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700において出力する。
当該出力された制振用エンジントルク補正量Te_stabは、図2,3に示すように駆動力制御部5に向かい、この駆動力制御部5は図4につき前述したようにして制振用目標エンジントルクtTeを求めてエンジンコントローラ11に指令する。
エンジンコントローラ11はエンジンを、その出力トルクがこの制振用目標エンジントルクtTeに一致するよう出力制御する。
【0086】
<第3実施例の効果>
上記した第3実施例によれば、第1,2実施例と同様な作用効果を奏し得るほかに、以下のような作用効果をも奏し得られる。
つまり第1実施例および第2実施例においては、制振制御時アップシフト完了後に図7,10のステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資するため、
制振制御時アップシフト指令に対応する変速が完了した後でないと、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大され得ず、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトに対し遅れる。
【0087】
しかし本実施例においては、ステップS603で求めた制振用エンジントルク補正量Te_stabではなく、ステップS610で求めた制振制御時アップシフト指令対応の制振用エンジントルク補正量Te_stabを、図6のステップS700で図2,3の駆動力制御部5へ出力して制振用目標エンジントルクtTeの演算に資するため、
制振制御時アップシフト指令が発せられると直ちに、制振用エンジントルク補正量Te_stabが変速比変化分だけ増大されることとなり、制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が当該アップシフトの完了と同時に行われる。
従って、制振制御時アップシフトに対し制振用エンジントルク補正量Te_stabの増大が遅れることがなく、前記した作用効果による恩恵を十分に享受することができる。
【0088】
<その他の実施例>
上記した各実施例においては、内燃機関などのエンジンを搭載した車両にあって、エンジントルク補正により車体振動を抑制する場合につき車体制振制御装置を説明したが、
モータなどの回転電機を動力源とする電気自動車やハイブリッド車両において、回転電機の駆動力を補正して車体振動を抑制する車体制振制御装置として構成してもよいのは言うまでもない。
また、如何なる動力源を搭載するにしても、動力源の出力トルク補正により制振制御を行うものに限られず、制動力の付加により車輪駆動トルクを補正して制振制御を行うものであっても、本発明の着想は適用可能であること勿論である。
【0089】
更に図示例では、車体振動としてピッチ角速度(d/dt)θpおよび上下バウンス速度(d/dt)xbを例示したが、これに限られるものではなく、ピッチング量θpおよび上下バウンス量xbや、ピッチ角加速度(d2/dt)θpおよび上下バウンス加速度(d2/dt)xbのような車体振動を抑制する場合にも本発明の車体制振制御装置は有用である。
【符号の説明】
【0090】
1FL,1FR 左右前輪
1RL,1RR 左右後輪
2 ステアリングホイール
3 車体(バネ上質量)
4 アクセルペダル
5 駆動力制御部
5a 要求エンジントルク算出部
5b 加算器
6 変速比制御部
7 制振制御コントローラ
8 車輪速センサ
9 アクセル開度センサ
10 変速比検知部
11 エンジンコントローラ
12 変速機コントローラ
51 要求駆動トルク演算部
52 前後外乱算出部
53 車体振動推定部
54 制振用エンジントルク補正量演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置において、
前記車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して前記駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、
該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、前記駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを具備してなることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項2】
前記駆動力補正制御を、前記駆動力の伝達系における動力源の出力補正制御により行うものである、請求項1に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記制振用駆動力補正量として、前記車体振動を抑制可能な前記動力源の制振用動力源出力補正量を演算するものであり、
前記変速比変更手段は、該制振用動力源出力補正量が設定値未満であるとき、前記変速比をハイ側へ変更するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量に係わる設定値は、前記駆動力伝達系の駆動力変更可能下限量である制御分解能近傍の値であることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記変速比変更手段は、前記制振用駆動力補正量が設定値未満である状態を設定時間に亘って検出したとき、前記変速比のハイ側への変更を行うものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記変速比変更手段による変更後の変速比に基づき前記制振用駆動力補正量を演算し直して前記駆動力補正制御に資するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記動力源がエンジンであり、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記制振用駆動力補正量として、前記車体振動を抑制可能な前記エンジンの制振用エンジントルク補正量を演算するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項1】
サスペンション装置を介して車輪を懸架された車両のバネ上質量である車体の振動を駆動力補正制御により抑制するための車体制振制御装置において、
前記車体振動を抑制するための制振用駆動力補正量を演算して前記駆動力補正制御に資する制振用駆動力補正量演算手段と、
該手段で求めた制振用駆動力補正量が設定値未満であるとき、前記駆動力の伝達系における変速比をハイ側へ変更する変速比変更手段とを具備してなることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項2】
前記駆動力補正制御を、前記駆動力の伝達系における動力源の出力補正制御により行うものである、請求項1に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記制振用駆動力補正量として、前記車体振動を抑制可能な前記動力源の制振用動力源出力補正量を演算するものであり、
前記変速比変更手段は、該制振用動力源出力補正量が設定値未満であるとき、前記変速比をハイ側へ変更するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量に係わる設定値は、前記駆動力伝達系の駆動力変更可能下限量である制御分解能近傍の値であることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記変速比変更手段は、前記制振用駆動力補正量が設定値未満である状態を設定時間に亘って検出したとき、前記変速比のハイ側への変更を行うものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記変速比変更手段による変更後の変速比に基づき前記制振用駆動力補正量を演算し直して前記駆動力補正制御に資するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の車体制振制御装置において、
前記動力源がエンジンであり、
前記制振用駆動力補正量演算手段は、前記制振用駆動力補正量として、前記車体振動を抑制可能な前記エンジンの制振用エンジントルク補正量を演算するものであることを特徴とする車体制振制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−56377(P2012−56377A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199540(P2010−199540)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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