説明

銅相互接続層用の無電解NiP接着及び/又はキャップ層

銅相互接続層を、例えばTFT−LCDフラットパネル相互接続システムにおいて使用されるガラス基板などの基板上に堆積させる方法。本発明に従う方法は、a)任意に、基板を清浄化する工程と、b)任意に、この基板をミクロエッチングする工程と、c)触媒化層を基板上に堆積させて、触媒化基板を得る工程と、d)触媒化基板を、調整溶液を用いて調整して、調整触媒化基板を得る工程と、e)前記基板又はまたはその少なくとも一部をNi及びPの前駆体を含んだウェッツバス混合物と接触させることによって、前記触媒化基板に無電解NiP層を鍍金して、NiP鍍金調整触媒化基板を得る工程と、f)銅用触媒層をNiP鍍金層上に堆積させる工程と、g)Cu層を前記銅用触媒層上に堆積させる工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、銅相互接続層を、例えばTFT−LCDフラットパネル相互接続システムにおいて使用されるガラス基板などの基板上に堆積させる方法に関する。より詳細には、画素マトリックス内の各画素を、薄膜トランジスタ(TFT)を介して、液晶ディスプレイパネル(LCD)又はプラズマ若しくは類似のディスプレイパネルの信号電極バス(bus)及び走査電極バスへと電気的に接続する銅相互接続バスを具備した、TFT−LCDフラットディスプレイパネルの製造方法に関する。
【0002】
コンピュータスクリーン又はTVディスプレイとして有用なTFT−LCDパネルの基本原理は、よく知られている。それらは、例えば、E. Kanekoによる、"Liquid Crystal Television Display: Principles and applications of liquid crystals" KTK Scientific publishers Tokyo, chap. 7, 1987において詳細に開示されている。
【0003】
LCD又はプラズマパネルなどの典型的なフラットディスプレイパネルでは、(それぞれ)液晶又は放電ガスなどのディスプレイ材料が、2枚の電気絶縁性ガラス基板の間に挟持されている。間に液晶又は放電ガスが提供された電極に電圧をかけるために、電気的相互接続線又はバスが、少なくとも1つのガラス基板の1つの表面上に配置されている。
【0004】
例えば、アクティブマトリックスLCDシステムでは、複数の信号又はデータ電極線又はバスと、複数のゲート電極又は走査電極バスとが、或るマトリックス配置で、これらガラス基板のうちの一方の一表面上に提供されている。
【0005】
データ電極及びゲート電極が互いに交差する位置では、スイッチ(オン−オフ)として働く少なくとも1つの薄膜トランジスタ及び画素電極が提供されており、マトリックスの各行は、TFTスイッチを閉じ、且つ、この行の各画素電極をその対応するデータ線へと接続し、これが、従来のCRTシステムにおいて為されているのと類似して、信号情報を適切な色の関連する画素電極に提供するために、連続的に活性化(activate)される。
【0006】
ディスプレイパネルの大きさが増大する場合、駆動信号の頻度を増やす必要があり、それにより、これらラインの寄生容量の増加が生じ、これは、駆動信号の伝搬の遅延となる。
【0007】
これら遅延を減ずる試みの中で、例えば、"Low Resistance Copper Adress line for TFT-LCD" (Japan Display’ 89 p. 498-501)と題された論文において、銅の抵抗値はアルミニウムの抵抗値に比べて遥かに低いために、薄膜トランジスタのゲート電極材料及び関連するマトリックス相互接続ライン又はバスとして、アルミニウムの代わりに銅を使用することが既に提案されている。この銅層は、スパッタリングプロセスによって堆積されるが、ガラス表面に対するその接着性が乏しいので、タンタル中間層が必要である。
【0008】
また、このような金属相互接続子をTFT−LCDディスプレイパネルのガラス表面上に製造する方法であって、Ni膜を使用し、これが、前記ガラス表面上に無電解鍍金により堆積され、次に、金属堆積物をパターニングするためのフォトレジスト膜で被覆される方法が、米国特許第6413845号から知られている。次に、金膜をNi膜上に堆積ささせ、最後に、銅膜を無電解鍍金(湿式堆積方法)によって前記金層上に堆積させて、適切な相互接続システムを最終的に得る。しかしながら、フォトレジストの使用は、このプロセスの費用を増加させる。
【0009】
銅は、それが堆積された材料の層の内部で拡散する傾向があり、それ故に、銅層を上に堆積させる前に、バリア層を基板上に準備することが必要であることも当業者に知られている。それは、例えば、"Electroless nickel ternary along deposition on Si02 for application to diffusion barrier layer in copper interconnect technology"(Journal of the Electronic Society - 149-11-2002)と題されたOsakaらの論文に開示されている。しかしながら、この文書に開示されたこれら膜は、この論文に開示された条件下では、ガラス基板に対する接着性の欠如と乏しい厚さ均一性とを示す。
【0010】
従って、今日に至っても、拡散バリア層の堆積の費用を増加させず、ガラス基板に対する良好な接着性を提供し、好ましくは、銅層のキャップ層(capping layer)の堆積方法に適用可能でもある方法を規定する必要が存在する。
【0011】
本発明に従うと、或る条件下で堆積された無電解鍍金NiP層が、良好なCuバリア性能を持った接着及びキャッピング層の両方をつくるのに適することがわかった。これら層の粗さ及び厚さ均一性は申し分ないこともわかった。
【0012】
Cu/NiP/ガラスからなる相互接続子及び/又はゲート構造体は、NiP及びCuの無電解鍍金によって作成される。NiP層は、Cuの接着及びバリアのために、ガラス基板上に鍍金され、Cu層は、例えばゲート材料として、このNiP上に鍍金される。NiP層は、ガラス基板に対する良好な接着特性と共に、銅の拡散を避ける良好なバリア特性を有することがわかった。同じく、NiP層の粗さ及び厚さ均一性も、申し分ないことがわかった。X線解析から、NiPは、アモルファスであり、良好な熱安定性を有していることが明らかになった。このNiP接着層は、単層であり、それ故に、米国特許第6413845号に開示された積層体よりも、実行するのが遥かに単純であり、それにより、他の乾式/湿式プロセルに比べて、製造費用を削減させる。
【0013】
銅相互接続層を、例えばTFT−LCDフラットパネル相互接続システムにおいて使用されるガラス基板などの基板上に堆積させる方法であって、本発明に従う方法は、
a)任意に、ガラス基板を清浄化する工程と、
b)任意に、この基板をミクロエッチングする工程と、
c)触媒化層(catalyzation layer)(101)を基板(100)上に堆積させて、触媒化(catalyzed)基板(100、101)を得る工程と、
d)触媒化基板を、調整(conditioning)溶液を用いて調整して、調整触媒化基板(100、101、102)を得る工程と、
e)前記基板又はまたはその少なくとも一部をNi及びPの前駆体を含んだウェッツバス(wetsbath)混合物と接触させることによって、触媒化基板に無電解NiP層(103)を鍍金して、NiP鍍金調整触媒化基板(100、101、102、103)を得る工程と、
f)銅用触媒層(copper catalyst layer)(104)をNiP鍍金層上に堆積させる工程と、
g)Cu層(105)を前記銅用触媒層(104)上に堆積させる工程と
を含んでいる。
【0014】
好ましくは、この方法の工程(f)は、銀又はパラジウム塩を使用して、銀薄膜(104)を前記NiP層上に堆積させることによって行われ、Cu層(105)は、CuSO4などの銅塩を使用する鍍金によって堆積される。
【0015】
また、本発明は、その少なくとも或る部分が、触媒化層、調整層、NiP層、銅用触媒層及び銅層で、連続的に被覆された基板材料に関する。
【0016】
ここで、本発明を、例を示した図面を参照しながら、詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、TFT−LCDディスプレイパネルの概略上面図を示している。
【図2】図2は、スイッチマトリックス編成の概略図である。
【図3】図3は、TFTと電極との間の相互接続子線の詳細図である。
【図4】記載なし。
【0018】
液晶ディスプレイパネルは、複数の画素からなり、これらは、基板上で、マトリック状に組織化されており、全ての画素を合わせて被覆する薄いガラス基板の層で被覆されている。
【0019】
各画素は、下部及び上部透明電極を有しており、これらの間に液晶層が設置された正方形の電極システムと見なされ得る。透明電極上には、偏光層で被覆されたガラス基板が設けられている。
【0020】
シャドーマスクシステムが、カラードット及び電子ビームと関連付けられ、連続的な水平走査線をスクリーンの上部から下部に亘って有したマトリックスとして組織化されている従来のCRTシステムに類似した構造を有するべく、画素システムはそれに類似して組織化されており、画素の各行は連続的に活性化(走査)され、活性化された行内の各画素は、上部電極で、この画素に必要な色に見合った電気信号を受け取る。それ故に、各画素は、走査信号(線)によって駆動されるスイッチを必要とし、これは、活性化されたときに、各画素の上部電極を適切な電圧(信号ソース。通常、コンデンサを介する。)へと接続する。今日の適切なスイッチは、MOS技術に従って通常つくられる薄膜トランジスタ(TFT)である。
【0021】
従って、これらTFT−FDPスクリーンを製造するには、ドレイン電極と、ソース電極と、ゲート電極とを有した薄膜トランジスタ(MOS型)を規則正しい間隔でつくる必要がある。
【0022】
各TFTのドレイン電極は、通常、透明画素電極に接続されており、ソース電極は、ここでは銅からなる1つの電極バスに接続されており、ゲート電極は、走査電極バスに接続されている。
【0023】
図1は、列を成して配置された複数の画素を、それぞれ、10、11...12と、20、21...22と、30、31...32と、40、41...42と表記している。スイッチS10、S11...S12、...、S40、S41...S41は、それぞれ、それらのそれぞれのゲートを介して、走査線L1、L2、L3...L4へとそれぞれ接続されており、これらスイッチのそれぞれのソースは、信号列(signal column)C1、C2...C4に接続されており、各TFTのドレインは、その各々の画素電極へと接続されている。
【0024】
図2には、スイッチマトリックス回路の基礎が、概略的に説明されている(同じ番号は、同じ参照を意味している)。
【0025】
図2aには、基本的なTFTスイッチマトリックスが示されており、ここでは、各線L1、L2、L3は、MOSトランジスタのゲートに接続されており、各信号電極線C1、C2、C3は、トランジスタのソースに接続されており、前記トランジスタのドレインは、液晶画素電極へと接続されており、その他方の電極は接地されている。
【0026】
図2bには、画素10、11、12...の電極に対して並列に接続されたコンデンサF1、F2、F3を除くと、先と同様のマトリックス機構が記載されている。このシステムは、画素の電極間に常に電圧をかけることと、線走査の際にこの電圧(即ち、ドットの色)を変更することとを可能にする。
【0027】
図3は、行L及び列Cの交点に近い位置でのマトリックス相互接続システムを実現する相互接続システムの概略図である。「走査」相互接続線Lは、TFT66のゲート63に接続された小さな延長部(extension)62を有しており、行L及びTFTの双方共、透明ガラス基板上に堆積されている。相互接続線Lは、絶縁層60によって、この相互接続線Lに交差した信号(列)線Cから電気的に絶縁されている。しかしながら、信号線Cは、TFTのソース電極65へと電気的に接続されており、ドレイン電極64は、画素電極61へと電気的に接続されている。
【0028】
本発明は、銅からなり且つガラス基板上に堆積される、TFTスイッチの銅ゲート電極及び走査相互接続線L(信号相互接続線Cも)をつくる方法に本質的に関する。
【0029】
図4は、本発明に従う、ガラス基板上に堆積された銅層の断面図を例示している。ガラス基板100は、触媒化層101と、調整層102と、NiP層103と、銅用触媒層104と、銅層105とで被覆されている。
【0030】
このようなサンドイッチ型の層を得るための方法を、例として、以下に説明する。
【0031】
上で述べた様々な工程を、以下、好ましい実施形態に従って開示する。
【0032】
工程(a):ガラス表面の清浄化
紫外光、オゾン溶液及び/又はNaOH、Na2CO3、Na3PO4の混合物などの脱脂溶液が、表面上の有機汚染物を除去するのに使用される。表面が十分に清浄である場合、又はこの処理が基板にダメージを与え得るか若しくは予期せぬ化学反応を起こし得る場合には、この工程を省くことができる。この工程は、UV及び/又はオゾン処理のためには、好ましくは10秒乃至10分、より好ましくは30秒乃至3分の時間に亘って行われる。脱脂溶液が使用される場合、この清浄化工程は、好ましくは、30秒乃至10分の時間に亘り、30℃乃至100℃に含まれる温度で行われ、より好ましくは、1分乃至5分の時間に亘り、50℃乃至90℃の下で行われる。その後、基板は、脱イオンされた純水で洗浄される。
【0033】
工程(b):ガラス表面のミクロエッチング
この工程の狙いは、微小な凹凸(roughness)をガラス基板上につくり、NiP層のこの基板に対する接着性を高めることにある。ガラス表面が接着性を提供するのに十分な粗さを既に有している場合、又は、この処理がガラス基板に対して有害な反応を起こす場合、この工程を省くことができる。典型的には、この工程は、10秒乃至5分間に亘り、0.1体積%乃至5体積%のHFを含んだ水溶液(それは、10g/L乃至100g/LのNH4Fも含み得る)中へと浸漬させることによって、又は、典型的には、30秒間乃至3分間に亘り、0.3体積%乃至3体積%のHFを含んだ水溶液及び30g/L乃至60g/LのNH4Fを用いて行われる。
【0034】
工程(c)NiP用の触媒化層
SnCl2及びPdCl2溶液は、この工程を行って、パラジウム超薄膜をガラス基板の表面上につくるのに使用され得る。この目的のために、基板が、SnCl2溶液中へと浸漬され、次に、脱イオン水(DI water)を用いてリンスされ、次に、PdCl2溶液中へと浸漬される。好ましくは、水溶液中で0.1g/L乃至50g/LのSnCl2は、0.1g/L乃至50g/LのSnCl2と共に、0.1体積%乃至10体積%のHClを含んでいる。PdCl2溶液は、0.01体積%乃至5体積%のHClと、0.01g/L乃至5g/LのPdCl2とを含んだ水溶液から得られる。より好ましくは、SnCl2溶液は、0.5%乃至5%のHCl溶液中へと溶解された1g/L乃至20g/l0のSnCl2を含んでおり、PdCl2溶液は、0.05%乃至1%のHCl溶液中へと溶解された0.1g/L乃至2g/LのPdCl2を含んでいる。ガラス基板上で以下の化学反応が起こることが予期される。
【0035】
Sn2+ + Pd2+ → Sn4+ + Pd
工程(d):調整
この工程を行うべく、還元剤を含有した水溶液が、通常使用される。この工程は、均一なNiP鍍金層(platied layer)を得るのに必須の工程であったことがわかった。この工程は、表面上の酸化剤(oxidative)Sn4+を還元し、還元的なNiP鍍金化学を促進し得る。この工程は、Ni塩を含有しないこと以外、以下の工程(e)で使用される溶液と類似した組成を有した溶液中に浸漬することによって行われる。5g/L乃至50g/LのNaH2PO2を含有した溶液が使用される。このプロセスは、通常、10秒間乃至3分間に亘って行われる。
【0036】
工程(e):NiP鍍金
NiSO4及びNaH2PO2が、Ni及びPのソースとして使用される。NaH2PO2は、還元剤としても働く。錯化剤は、カルボキシル基(−COOX。Xは、H、金属、アルキル)を有した有機化合物及びこれらの混合物から選択される。より典型的には、それは、酢酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸及びこれらの混合物から選択される。溶液のpHは、必要であれば、pH緩衝液によって調節される。或る実施形態では、10g/L乃至45g/LのNiSO4 7H2Oと、3g/L乃至50g/LのNaH2PO22Oと、5mL/L乃至50mL/Lのグリコール酸(70%)と、3g/Lの酒石酸とを含んだ溶液が使用され、基板がそれの中に浸漬される。鉛化合物は、安定化剤として、0.5ppm乃至10ppmの範囲内で添加されることができる。浴の温度及びpHの双方は、それぞれ、50℃乃至90℃の範囲及び2乃至9の範囲内、より典型的には、70℃乃至90℃の範囲及び2乃至6の範囲内にある。鍍金時間は、鍍金速度及び必要な厚さによって決定されることができ、典型的には、NiP層の場合、30秒間乃至1分間である。最後に、基板が、脱イオン水でリンスされる。
【0037】
工程(f):Cuのための触媒化
NiP表面上に銀又はパラジウムの超薄膜をつくるために、ガラス基板が、NH4OH中のAgNO3中へと、HCl中のPdCl2中へと、又はNH4OH溶液中のPd(NH34Cl2中へと浸漬される。より典型的には、0.01%乃至1%のNH4OH溶液中の0.1g/L乃至10g/LのAgNO3が使用される。この工程は、典型的には10秒間乃至5分間に亘って行われ、より好ましくは30秒間乃至1分間に亘って行われる。
【0038】
パラジウム層については、0.01%乃至5%のHCl中に0.01g/l乃至5g/lのPdCl2を含有した溶液が使用される。より好ましくは、0.1g/l乃至2g/lのPdCl2が、0.05%乃至1%のHCl溶液中へと溶解されている。他の実施形態では、0.1%乃至5%のNH4OH中の0.1g/l乃至10g/lのPd(NH34Clが使用される。
【0039】
鍍金されたCuの品質が十分でない場合には、その後、還元工程が更に行われ得る。典型的には、0.1%乃至5%のHCHO溶液が、10秒間乃至5分間に亘って使用され、より典型的には、0.5%乃至3%のHCHO溶液が使用される。HCHO溶液の代わりに、典型的には、0.1g/L乃至5g/LのDMAB(ジメチルアミンボラン)溶液が、30秒間乃至5分間に亘って使用され、より典型的には、0.5g/L乃至3g/LのDMAB溶液が、1分間乃至3分間に亘って使用される。
【0040】
工程(g):Cu鍍金
銅鍍金溶液は、銅ソースと、錯化剤と、還元剤と、pH緩衝剤とを含んでいる。典型的には、Cuソースとして、2g/L乃至15g/LのCuSO4が使用される。錯化剤は、EDTAS、酒石酸塩、クエン酸塩、ジアミン、糖アルコール及びこれらの混合物から選択される。或る実施形態では、20g/L乃至60g/Lの酒石酸カリウムナトリウムが使用される。還元剤は、アルデヒド、アミン、ヒドラジン、アミンボラン、グリオキシル酸、アスコルビン酸、次亜燐酸塩及びこれらの混合物から選択される。或る実施形態では、0.05%乃至1%のHCHOが使用される。Ni化合物(即ち、0.1g/L乃至10g/LのNiCl2)が、必要な場合にCu鍍金を促進するために添加され得る。硫黄化合物が、安定化剤として、0.1ppm乃至2ppmの範囲内で添加され得る。溶液のpHは、例えばNaOHを用いて、9乃至13の範囲内に調節される。鍍金時間は、鍍金速度及び必要とされる厚さによって決定され、典型的には1分間乃至60分間であり、より典型的には、数百nmの銅層のために、5分間乃至40分間である。
【0041】
本発明の他の実施形態に従うと、NiP層が、好ましくは工程(c)乃至(e)を(工程(c)の前において行われ得る銅の清浄化と共に)繰り返すことにより、キャップ層又は保護層として、Cu層上に堆積され得る。
【0042】
本発明は、以下の例及び比較例によって、より十分に理解されるであろう。
【0043】
例1
ガラス基板が、その上にある有機汚染物質を除去するために、3分間に亘り、80℃で、NaHと、Na2CO3と、Na3PO4とを含んだ脱脂溶液中へと浸漬された。脱イオン水を用いてリンスした後、表面に微小の凹凸をつくるために、それは、1分間に亘り、希薄HF/NH4HF溶液中に浸された。脱イオン水でリンスした後、それは、1%のHCl溶液中に10g/LのSnCl2を含んだSnCl2溶液中へと浸漬され、次に、0.1%HCl溶液中に0.3g/LのPdCl2を含んだPdCl2(溶液)中へと浸漬され、各溶液における浸漬は2分間であった。この基板を脱イオン水でリンスした後、それは、30秒間に亘り、還元剤を含有した調整溶液中へと浸漬された。次に、それは、NiP鍍金溶液中へと浸漬された。表1は、浴の組成及び鍍金条件を示している。
【表1】

【0044】
脱イオン水でリンスした後、この基板は、45秒間に亘り、0.3%のNH4OH溶液中に1.5g/LのAgNO3を含有したAgNO3溶液中に浸漬された。脱イオン水でこの基板をリンスした後、それは、表2に記載されたCu鍍金液中に、対応する鍍金条件で浸された。
【表2】

【0045】
鍍金されたCu/NiP層は、ガラス基板に対する優れた接着性を有しており、このことは、「テープ」試験を使用して証明された(剥離なし)。両方の層の粗さ及び厚さの均一性は、申し分なかった(それぞれ、5nm未満及び5%以内)。NiP膜は、91重量%のNiと、9重量%のPとからなっていた。X線分析は、NiPがアモルファスであったことを明らかにした。NiP層上に鍍金されたCu層は、低抵抗値(2.6μΩcm)を有していた。また、X線解析は、NiP及びCuのこれら2層は、400℃で1時間という良好な耐熱性を有していたことと、NiP中への銅の拡散は、僅かな(thin)加熱(thermal heating)工程後において無視できたこととを明らかにした。
【0046】
比較例1
NiP層の堆積工程を除き、例1において使用された全ての工程を使用して、銅層が同様のガラス基板上に鍍金された。得られた銅層は、基板に対して乏しい接着性を有しており、それは容易に剥離された。
【0047】
比較例2
工程(a)が行われなかったか又は工程(a)の溶液の温度が30C未満であった以外は例1と類似の方法で、NiP及びCuの層が鍍金された。鍍金された層は、表面が十分に清浄でなかったので、乏しい均一性と、再現性の欠如とを示した。
【0048】
比較例3
工程(b)を除き、例1の全ての工程が行われた。多くのNiP層が、基板に対する純粋な(pure)接着性を示した。
【0049】
比較例4
例1で挙げられた工程(a)及び(b)が、ガラス基板に対して行われた。工程(c)は省かれ、次に、工程(d)及び(e)が、例1で説明されたように試験的に行われた。しかしながら、NiP層はガラス基板上に堆積されなかった。
【0050】
比較例5
工程(c)におけるSnCl2の濃度が、0.1g/L未満であったか若しくは50g/Lより高かったか、又は、PdCl2の濃度が0.01g/L未満であったか若しくは5g/Lより高かった以外は、例1に従って、様々な比較例が行われた。これら全ての例では、NiPが基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金された場合でも、そのNiP層は、乏しい均一性、乏しい接着性及び/又は再現性の欠如を示した。
【0051】
比較例6
工程(d)が行われなかったか、又は、使用されたNaH2PO2溶液の濃度が、5g/L未満であったか若しくは50g/Lより高かった以外は、例1の全ての工程がガラス基板に対して行われた。これら全ての異なる場合において、NiP層が基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金されても、このNiP層は、乏しい厚み均一性、乏しい接着性及び/又は再現性の欠如を示した。
【0052】
比較例7
NiSO4 7H2O、NAH2PO22O、乳酸、グリコール酸、酒石酸及び鉛化合物の濃度が、上述の工程(e)で定義された各々の範囲外にあったこと以外は、例1に従って、様々な例が行われた。NiP層が基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金されても、NiP層は乏しい均一性、乏しい接着性及び/又は再現性の欠如を示した。
【0053】
比較例8
NiP鍍金浴の温度が50℃未満であったか又は90℃より高かった以外は、例1で開示されたのと類似の方法で様々な例が行われた。NiP層が基板上に堆積されなかった場合もあれば、鍍金された場合であって、そのNiP層が乏しい厚み均一性及び/又は再現性の欠如を示した場合もあった。
【0054】
比較例9
NiP鍍金浴のこのpHが2未満か又は9超に調節されたこと以外は、例1に従って、様々な例が行われた。これら全ての様々な例では、NiP層は基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金された場合でも、NiP層は乏しい均一性、乏しい接着性及び/又は再現性の欠如を示した。
【0055】
比較例10
工程(f)を除き、例1の様々な工程が行われ、この場合、Cu層はNiP層上に鍍金されなかった。
【0056】
比較例11
工程(f)におけるAgNO3の濃度が0.1g/L未満であったか又は10g/Lより高かった以外は、例1と類似の様々な例が行われた。銅が鍍金されなかったか、又は、鍍金された銅は、乏しい厚み均一性、乏しい接着性、抵抗値及び/又は再現性の欠如を示した。
【0057】
比較例12
工程(f)で、NH4OH溶液中のAgNO3の代わりに、HCl溶液中のPdCl2又はNH4OH溶液中のPd(NH34Cl2が使用されたこと以外は、例1に従って、様々な例が行われた。この工程は、0.1%HCl中の0.3g/LのPdCl2又は2%NH4OH中の0.25g/LのPd(NH34Cl2を使用して、3分間の浸漬によって行われた。鍍金された銅層は、例1のものに匹敵する厚み均一性、接着性、抵抗性及び再現性を示した。
【0058】
比較例13
CuSO4 5H2O、C44KNaO6 5H2O、Ni化合物、HCHO、及び/又は硫黄化合物のそれぞれの濃度が上述の工程(g)において定義されたそれぞれの範囲外にあったこと以外は、例1と類似の様々な例が行われた。Cu層は、基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金された場合でも、乏しい均一性、乏しい接着性、高抵抗値及び/又は再現性の欠如を示した。
【0059】
比較例14
Cu鍍金浴のpHが9未満か又は13超に調節された以外は、例1と類似の様々な例が行われた。
【0060】
Cu層が基板上に鍍金されなかったか、又は、鍍金された場合でも、Cu層は、乏しい均一性、乏しい接着性、高抵抗値及び/又は再現性の欠如を示したかの何れかであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅相互接続層を、例えばTFT−LCDフラットパネル相互接続システムでの使用のためのガラス基板などの基板上に堆積させる方法であって、
a)任意に、前記基板を清浄化する工程と、
b)任意に、前記基板をミクロエッチングする工程と、
c)触媒化層(101)を前記基板(100)上に堆積させて、触媒化基板(100、101)を得る工程と、
d)前記触媒化基板を、調整溶液を用いて調整して、調整触媒化基板(100、101、102)を得る工程と、
e)前記基板又はまたはその少なくとも一部をNi及びPの前駆体を含んだウェッツバス混合物と接触させることによって、前記触媒化基板に無電解NiP層(103)を鍍金して、NiP鍍金調整触媒化基板(100、101、102、103)を得る工程と、
f)銅用触媒層(104)をNiP鍍金層上に堆積させる工程と、
g)Cu層(105)を前記銅用触媒層(104)上に堆積させる工程と
を含んでいる。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記工程f)は、銀塩を使用して、銀薄膜(104)を前記NiP層上に堆積させることによって行われる方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の方法であって、前記Cu層(105)は、CuSO4などの銅塩を使用する鍍金によって堆積される方法。
【請求項4】
基板材料(100)であって、その少なくとも或る部分は、触媒化層(101)、調整層(102)、NiP層(103)、銅用触媒層(104)及び銅層(105)で連続して被覆されている材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−540585(P2009−540585A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514649(P2009−514649)
【出願日】平成18年6月16日(2006.6.16)
【国際出願番号】PCT/EP2006/063286
【国際公開番号】WO2007/144026
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(591036572)レール・リキード−ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード (438)
【出願人】(592041786)インダストリアル テクノロジー リサーチ インスティテュート (10)
【Fターム(参考)】