集束イオンビーム用ガス導入装置
【課題】本発明は集束イオンビーム用ガス導入装置に関し、試料への加工性能を向上させることができる集束イオンビーム用ガス導入装置を提供することを目的としている。
【解決手段】集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプ8を複数有し、該パイプ8の出口であるノズル8a同士が1次イオンビーム17の軸と対称で内部を通過する流体が試料18面に向かう形状で構成され、該パイプ8への導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有して構成される。
【解決手段】集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプ8を複数有し、該パイプ8の出口であるノズル8a同士が1次イオンビーム17の軸と対称で内部を通過する流体が試料18面に向かう形状で構成され、該パイプ8への導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有して構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は集束イオンビーム用ガス導入装置に関し、更に詳しくは半導体製造工程で使用されるマスクの修正・修復(リペア)や配線修正、微細加工を行なう集束イオンビーム用ガス導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GAE(Gas Assist Etching)やMDU(Metal Deposition Unit)と呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の技術は、イオンビーム関連事業としてますます重要になってきている。従来のこの種の装置としては、比較的蒸気圧の低い化合物蒸気をノズルを用いてビーム状に噴出させるようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。ノズルを円周上に複数個配置してガスビームが均一に噴出されるように構成されているものもある。また、加工物の蒸気圧が高い場合には、試料全体をガスで覆いイオンビームの入り口のみにビームを通過させるための穴を設けた技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、イオンビームの先にガス導入パイプを設け、そのパイプに上下の穴を設け、2つの穴の一方から1次イオンビームが通過する際にパイプから導入されたガスをイオン化し、もう一方の穴から1次イオンと2次イオンの複合ビームを照射してより加工性能を向上させるものが知られている(例えば特許文献2参照)。また、導入ガスを運ぶ流体導入管システムとして、先端が漏斗状の器の逆さ形状をなし、その狭い上端側から集束イオンビームを導入し、加工性能の反応促進等に流体導入管の運動時の分子エネルギーを利用する技術も知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特公平2−25425号公報(第2頁第4段4行目〜同段第44行目、第1図)
【特許文献2】特開平8−17385号公報(段落0007〜0008、図1、図4)。
【特許文献3】特許第3640261号公報(第6頁〜第7頁、図1、図2)
【非特許文献1】理化学研究所第15回シンポジウム「イオン注入とサブミクロン加工」(1984)121−124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス導入管(以下ノズルと略す)を試料(サンプル)面上で3次元として微小に動かす場合は、先端の微小振動からμm以下での微細調整は困難であり、ノズルと試料面とが衝突することも起きている。これはウエハ等の試料平面において試料室の外から一般的に調整する場合には、数10cmの長さがあるノズルの先端を、数μmかそれ以下で試料面に対する水平な移動と垂直な移動を要求することに起因していると考えられる。また、各種工程を経る中で試料が歪みや変形により、一度調整したノズルの高さを再調整しないので使用は難しい等の課題がある。
【0005】
また、特に試料の穴加工乃至リペア(パターンの修復)膜の形成を効果的に実施するには、イオンビームのフォーカス条件も適切であることが必要であり、導入ガスがイオンビーム周辺で等方的に広がった条件で雰囲気濃度の高さが性能に大きく寄与することは、当業者であればよく知られたことである。前記した特許文献2記載の発明や、特許文献3記載の発明では、ノズル先端に一体化した導入ガス制限領域とイオンビームの軸との一致を水平軸上で確認し、次に試料面とのギャップを確認する必要がある。
【0006】
これは適切な高さ及び水平位置でのガス導入ができないと性能を十分満足できなくなるからであり、必要な作業である。しかしながら、一連のルーチンワークでの操作は、テスト加工領域と試料の加工所望域との往復及びノズルの高さ調整を必要とする。先ず、試料でのダメージが最小でテスト加工が可能な場所を選択して、イオンビームの照射条件とノズル位置調整等を行なう。次に、ノズルの試料とのギャップを増加させ、試料の加工位置へステージ乃至ワークとなる試料を移動させる。ここで、移動時にノズルの高さを変えるか加工を所望する場所を画像で特定し、ウエハ面の高さ変化に対応してノズルを適正に上下させ、かつその再現性も高くないと全体の作業品質の向上が困難になるのは容易に想定される内容である。
【0007】
特に、ノズル上昇乃至下降の操作が不適切であれば、ルーチンワーク上のどこかの場所で接触事故が起こるということになる。ノズルの3次元移動とは、さながらSTMの針が試料表面で単独に移動するが如くノズル先端を器用に動かすことなので、各種自動化機構により微小移動ができたとしても移動軸が多い場合や、パイプの軸の長さが長い場合には各種振動や熱変形等の影響で、先端の位置を安定的に移動させるのは非常に困難な作業である。
【0008】
また、前記特許文献2及び特許文献3記載の発明では、ガスノズルが基本的には一方から構成されている。加工する試料は様々な形状があり、常に等方位的な深い溝を作るばかりではない。このような場合には、削りたくない部位への1次イオンビームの照射時間を短かくすることで対応することができるが、ガスアシスト(ガスの導入でエッチング等を速める)してしまうと少な目に削りたい方向もやや削りすぎてしまう弊害がある。ノズルをやや斜めに傾斜させて露光する場合も考えられるが、微妙な位置にあるので、衝突を回避しての微調整移動は困難であり、上下二つの穴位置の両方を意識しての調整が必要であるので、このような場合は現実的ではない。つまり、ガスアシストエッチングをせずに、1次イオンビームだけでの照射時間制御での加工を行なうことになる。
【0009】
試料の複雑な加工にはステージ傾斜は欠かせない。ステージの傾斜は、加工量の深さ認識と所望傾斜加工のために必要な機能である。深さ認識のためにはノズルを上昇させ、画像観察に支障のない条件で実施することで問題はないが、ノズルの移動が鏡筒のイオンビーム軸と同一方向である場合は、加工のためにノズルが接近できなくなるという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料への加工性能を向上させることができる集束イオンビーム用ガス導入装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1記載の発明は、集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプを複数有し、該パイプの出口であるノズル同士が主イオンビームの軸と対称で内部を通過する流体が試料面に向かう形状で構成され、該パイプへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有することを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、前記ノズルの先端はS字形状をなしていることを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記パイプの下に導入ガスを加熱するためのパイプ先端部加熱部と、ノズル相互の空間位置関係の適正配置を可能とする下面調整板を更に設けたことを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、前記パイプ先端加熱部のヒータによる下面調整板の温度を50゜C〜90゜Cとし、作業者の要望により200゜Cまでの加熱が行なえるように構成されていることを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、前記パイプ先端であるノズルが一体として上下移動し、ノズルと試料との高さが最小でも10μm以上離れることを特徴とする。
(6)請求項6記載の発明は、前記パイプの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することを特徴とする。
(7)請求項7記載の発明は、前記パイプの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を有することを特徴とする。
(8)請求項8記載の発明は、試料ステージを傾斜可能な試料傾斜ステージに対応してノズル及び下面調整板もステージ部と一体で傾斜するように構成されていることを特徴とする。
(9)請求項9記載の発明は、前記下面調整板の1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形乃至スリットとすることを特徴とする。
(10)請求項10記載の発明は、前記パイプの下面のパイプ連結機構は下部信号検出器に向けた部位が傾斜面をもつことを特徴とする。
(11)請求項11記載の発明は、前記傾斜面の角度は20°から50°の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1記載の発明によれば、複数ノズルのイオンビーム軸対称配置により等方性と異方性とのGAEやMDUと呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積等が行なえ、操作性能と加工性能の向上を期待することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、ノズル先端の形状をS字形状とすることにより、導入ガスの流速を適切に確保することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、下面調整板を設けることによりノズル相互の空間位置関係の適正配置が可能になる。また、下面調整板へのヒータ組み込みとその温度管理により、ノズルからのガス流量の安定供給及び温度に鋭敏な試料への熱輻射も考慮した適正対応が可能になる。
(4)請求項4記載の発明によれば、パイプ先端加熱部による下面調整板の温度を50℃から90℃とすることにより、導入ガスの均一化を図ることができる。更に必要な場合には、下面調整板の温度を最大200℃まで自由に設定することができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、ノズルが一体として上下移動することにより、ノズルと試料との高さを最小でも10μm以上離すことができるので、ノズルが試料に接触することを防止することができる。
(6)請求項6記載の発明によれば、前記ノズルの移動可能範囲の判定を所定の手続きにより求めることで、ノズルの高さ制限を行なうことができる。
(7)請求項7記載の発明によれば、ノズルの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を設けることで、発生する2次電子等の軌道を安定化させることができる。
(8)請求項8記載の発明によれば、試料ステージの傾斜と一体となってノズル及び下面調整板が傾斜するようにすることで、操作性を向上させることができる。
(9)請求項9記載の発明によれば、1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形スリットとすることで、試料面が傾斜した時にも試料にイオンビームを照射することが可能となる。
(10)請求項10記載の発明によれば、適度な傾斜面を拡散制御部に設け、検出器への信号到達を補助することで、下面調整板の試料への近傍による画像信号劣化を防止することができる。
(11)請求項11記載の発明によれば、前記傾斜角を20°から50°の範囲とすることで、画像信号劣化を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。図1は本発明の要部の構成例を示す図である。図において、18は試料、17は該試料18に照射される1次イオンビーム、7は対物レンズ、8は1次イオンビーム17に反応性のガスを導入するためのパイプであり、その先端はS字状のノズル8aになっている。パイプ8は、図に示すように光軸に対して対称に複数設けられている。23はノズル8aの下に設けられた下面調整板、25はノズル8aと下面調整板23との間に設けられたノズル部下面ヒータ(以下単にヒータという)である。
【0014】
ノズル8aは下面調整板23と接触しており、固着されている。この接触面でノズル8a同士間は連結されている。そして、各ノズル8aへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できるようになっている。14は下面調整板23と一体形成されたノズル8aを上下に移動させる微動装置である。WDは下面調整板23と試料間の距離(ワークディスタンス)である。このように、構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0015】
パイプ8から導入ガスが流入し、ノズル8a先端から導入ガスが噴出される。この噴出されたガスの中を1次イオンビーム17が通ることにより、ガスがイオン化され、試料18のエッチング又はリペア処理を促進させる。ここで、用いられるガスとしては、例えば試料18に金属薄膜を堆積させる場合には、例えばW(CO)6ガス、絶縁膜を堆積させる場合には、例えばシリコン化合物ガスが用いられる。
【0016】
ここで、下面調整板23は導入ガスの均一性を保ち、拡散領域を制限するために用いられる。ヒータ25は導入ガスの均一化を図るために用いられる。ここで、ヒータ25による下面調整板23の温度を50℃から90℃とすることにより、導入ガスの均一化を図ることができる。更に、必要な場合には下面調整板23の温度を200℃まで自由に設定することができる。また、ノズル8aの先端部をS字状としているため、導入ガスの流速を適切に確保することができる。
【0017】
また、本発明によれば、ノズル8a及び下面調整板23を微動装置14により一体として上下移動させることにより、ノズル8aと試料18との高さを最小でも10μm以上離すことができるので、ノズルが試料に接触することを防止することができる。
【0018】
また、本発明によれば、ノズル8aの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することができる。このようにすれば、ノズル8aの高さ制限を確実に行なうことができる。また、本発明によれば、ノズル8aの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を設けることができる。このようにすれば、イオンビームが試料に当たって発生する2次電子等の軌道を安定化させることができ、画像ノイズが減少する。これは、鋭角部が存在する時は、その表面への反射電子等の衝突で余分に2次電子が発生したり、鋭角部の表面電界により検出されるべき2次電子の軌道が曲げられ、検出率が低下することを回避するということである。
【0019】
図1に示す構成の装置を用いると、等方加工と異方加工を行なうことができる。図2は等方加工の説明図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態例では、光軸との対称性を維持しつつノズル8aを配置することにより、全てのノズル8aから均等にガスを噴射することにより試料18の表面を対称性を保持しつつエッチングし、或いはリペアすることができる。図2において、30はノズル8aから噴射されるガスが拡散しすぎないように規制するための規制部材である。θは、ノズル8aの光軸に対する傾斜角である。
【0020】
図3は異方加工の説明図である。図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。例えば2本あるノズル8aの内の1本をガスの噴射を停止し、残りのノズル8aからのみガスを噴射させるようにする。このようにすることで、ガスの拡散領域は片方のみに形成され、当該片方のみのエッチング処理を促すことができる。
【0021】
図4は異方性エッチングによる異物除去の説明図である。31〜33は配線パターン、34は配線パターン32に付着した異物である。この異物34のために配線パターン32と33が導通してしまう。そこで、この異物を除去する場合、異方性エッチングを行なう。例えば、異物34が付着している面のみにガスが拡散するように、ノズル8aを調整する。この結果、異物34付近のみがガスにより満たされ、(a)に示すような状態であったのが(b)に示すように異物34が除去されることになる。
【0022】
図5は図1のX−X断面を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。(a)はノズル8aが2本の場合、(b)は3本の場合、(c)は4本の場合である。図に示すように、ノズルは光軸に対して軸対称である必要はなく、光軸に対して対称性があればよい。例えば、(b)の場合は軸対称ではないが、3個のノズル8aが光軸に対してそれぞれ120度の角度をもって対称に配置されている。
【0023】
以下、集束イオンビーム装置(FIB)の動作について説明する。図6は本発明に係る集束イオンビーム装置の一実施の形態例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、40は鏡筒で、該鏡筒内に集束イオンビーム装置を構成する要素の殆どが含まれる。1はイオン源、17は該イオン源1から放出されるイオンビーム、3はガンアパーチャ、4はイオンビーム17を集束する集束レンズ、5はイオンビーム17の通過量を絞り込むアパーチャ、6は試料上を走査するための走査電極、7はイオンビーム17を細かく絞って試料に当てるための対物レンズ、8aは対物レンズ7の下面に設けられたノズル、23は該ノズル8aの下面に設けられた下面調整板である。
【0024】
図に示す装置は、集束レンズ4と対物レンズ7よりなる2段のレンズ系となっている。なお、イオンビーム装置の場合、電子レンズは静電レンズが用いられる。質量の重いイオンは電磁コイルではうまく曲がりきれないからである。9はヒータ、10は容器、11はガス源、12はノズル8aと接続され、ガスを注入するためのバルブ、13はバルブ12の開き角を調整するバルブ制御機構、14はノズル8aを微小量だけ上下に移動させるための微動装置、15は試料から放出される粒子を検出する検出器、16は試料を移動させる試料微動装置、18は試料である。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0025】
図6では、前述したように2段レンズ系としているが、基本的イオン光学システムはこれに限定されない。イオン源1に適切な加速電圧を与えて液体金属イオン源等のイオン源1から1次イオンビームとなるイオンを取り出す。そして、取り出したイオンをガンアパーチャ3でビームの拡散制限を行ない、所望する照射ビームをアパーチャ5から取り出す。イオン源1から出た1次イオンビームは、集束レンズ4により必要な結像系を作り、これを走査電極6で偏向してビーム走査をし、対物レンズ7で試料18上に必要な1次ビームの結像をさせる。
【0026】
試料18から出た2次電子等は検出器15で検出され、画像信号として鏡筒40の制御システムに出力され、モニター(図示せず)に表示される。このようなイオンビーム光学系において、試料18に長時間イオンビームを照射し続けると、電子ビームとは異なり、イオンの質量及び電離作用等によって試料を削り取る加工ができる。この加工反応を促進する触媒的な役割の流体やガスを導入することが、イオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積という技術として注目されている。
【0027】
ここでは、図1に示すように複数のノズルを1次イオンビームと対称的に配置し、導入ガス又は流体をここから均等に噴出させることで均質なイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の機能を提供するものである。この配置の対称性は、回転対称系に限らず、加工すべきサンプルのステージ移動軸に対しての軸対称でもよい。複数のノズルは、試料にできるだけ接近するのが好ましいが、図2又は図3にに示すように、導入流体が試料表面で描くガウス分布的形状の中心に1次イオンビーム17が来るのが最も好ましい。これは、ノズル8aの先端の形状に依存し、ノズル先端の形状は導入流体の流速が適切に確保される必要があるので、先端がS字型の形状を有することが好ましい。
【0028】
そして、ノズル管先端の弧の端点での中央から見た接線が流体の直接進む方向と想定でき、この方向と1次ビームとの直接交差する部分が試料の加工すべき部位であることが一番適当な条件になりうる。つまり、ノズル先端と試料表面との距離ができるだけ近く、一次ビームの軸にこのノズル8aが近い方が深い加工支援により貢献する。
【0029】
このようにしてノズル8aの先端とそのパイプの接線を決定すると、直線のパイプの場合は対物レンズ7のケーシングと干渉が起こる。それを避けるために曲線が優位であり、先端での形状の乱れが急激だと流体の乱流の正確が強まり、導入流体の試料照射時に不均一な照射広がりが考えられる。よって、最も好ましいのが連続的な変化であるがためにS字型となる。また、S字型とする場合には、下面調整板23との結合が楽になる点や下面調整板23へのヒータ組み込みによりノズル温度の適正化が可能になる等の利点が挙げられる。
【0030】
図2のような構成が対称な等方性のイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の2ノズルでの位置関係である。図3は異方性のイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の2ノズルの位置関係であり、一方のノズルのみでガス又は流体を試料面に照射する。
【0031】
ところで、試料の複雑な加工にはステージ傾斜は欠かせない。ステージの傾斜は加工量の深さ確認と所望する傾斜加工に必要な機能である。深さ確認のためにはノズルを上昇させ、画像観察に支障のない条件で実施することが好ましいが、ノズルの移動が鏡筒のイオンビーム軸と同一方向である場合は広角度傾斜をすると、加工のためのノズルの接近ができなくなる。そこで、図7又は図8に示すように傾斜対応ステージのベースプレートとノズルが一体で傾斜する構成に有用な効果がある。ノズルの最適高さ調整は試料面のみで決定され、傾斜とは無関係に高さ調整できる点に優位性がある。
【0032】
図7はステージ傾斜時のようすを示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図7はyz断面を示している。図において、50はベースプレート、51は該ベースプレート50上に取り付けられたステージ、52は該ステージ51を駆動するステージ駆動装置、18はステージ41上に載置された試料、7は対物レンズである。このように試料を傾斜した状態でイオンビームによるエッチングを行なうと、試料18の斜め方向にエッチングを行なうことができる。
【0033】
図8はステージ非傾斜時のようすを示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8はxz断面を示している。図1及び図7と同一の部分は同一の符号を付して示す。このように、本発明によれば、試料ステージの傾斜と一体となってノズル及び下面調整板が傾斜するようにすることで、操作性を向上させることができる。図9は下面調整板近傍拡大図で、上面から見た図を示す。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、Aは水平時1次イオンビーム照射位置を、Bはステージ水平時のガス照射の領域を示す。
【0034】
図10又は図11に示すように、1次イオンビーム通過孔の形状が、楕円やスリット或いは長方形等であれば、下面調整板23がステージと一体で傾斜しても、1次イオンビームの照射を損なうことなく、ノズルでのイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の機能を実現することができる。図10は下面調整板と1次イオンビームの拡大図である。17は1次イオンビーム、23は下面調整板、45は前記した1次ビーム通過孔である。図では、下面調整板23が平坦な状態を示している。これに対して図11に示す例は、下面調整板23が傾斜している状態を示している。
【0035】
なお、試料高さの微妙な違いで1次イオンビーム17と流体照射中心とがずれる場合がありえるが、本発明装置では、ノズル8aは上下動のみとして対応することがステージとの関係で好ましいので、イオンビームの軸を鏡筒40側でわずかにずらす対応が適当である。このような位置調整は、試料面高さと傾斜量に依存して発生する。イオンビームの移動量算出について説明する。
【0036】
図12は移動量算出の説明図である。図において、18は試料、23は下面調整板、Lは基準高さ位置、ΔHは試料18の基準高さ位置Lからのずれ、ΔDは試料18と下面調整板23間の距離である。θはステージ(とりもなおさず試料)の傾斜角である。図に示すようなユーセントリックステージで、試料高さが最適な基準高さLからΔHだけ低い位置にある場合に、ステージの傾斜角θから、ΔH・sinθ分の1次イオンビームのY座標をずらすことで、同一位置照射を実現することができる。標準的な試料の場合、ΔHは±50μm以下なので、移動補正量も同じく±50μm未満に充分に収まる。この程度の量は、1次ビームのイメージシフトで対応可能であるので標準的な装置で充分実現することができる。
【0037】
また、ノズルの下面調整板23の基準高さズレはΔD−ΔHなので、
(ΔD−ΔH)・tanθ分だけ楕円の長さが確保されていれば、1次イオンビームと下面調整板23との干渉が発生しない。現実的な制約からステージ傾斜量は最大60°程度であり、ユーセントリックステージの傾斜基準高さLからのノズル最大離脱範囲が3mmなら、長方形又は楕円等の最小形状は前記式から3×tanθ=5.2mmであり、ビームの広がりを考慮しても楕円又は長方形等の長さは前記最大離脱範囲の2倍程度の長さであり、かつ水平状態での軸中心が長方形又は楕円等の端面から0.3から0.5mm程度の位置が、装置の実質的制約条件となる。この実施の形態例によれば、1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形スリットとすることで、試料面が傾斜した時にも試料にイオンビームを照射することが可能となる。
【0038】
以上、説明したように、本発明によれば、複数ノズルのイオンビームを光軸に対して対称性を持たせた配置により等方性と異方性とのGAEやMDUと呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積等が行なえ、操作性能と加工性能の向上を期待することができる。
【0039】
さて既に説明したように、ノズルと1次イオンビーム及び試料面との間で適切な幾何学的関係があり、この関係を実現するのに重要なことは、試料面の高さとノズル下面との距離関係である。ノズル及びこの下面は一体のものとして構成され、イオンビーム鏡筒の軸と同軸に下面の中心が配置されることが必要である。また、この下面の移動は適切に上下動のみする。
【0040】
この移動量は、試料面の高さで制限されるべきであり、この試料面高さの検出には、レーザー高さ検出器乃至静電容量高さ検出器乃至対物レンズでのイオンビームのフォーカス条件で決定するのが適当である。対物レンズ条件からの試料面算出は、予め決められた照射電流等の条件から適切な対物レンズの電圧条件と試料面高さについての関数テーブルを用意し、実際のフォーカス条件に応じてこの高さ換算を実施する方法である。但し、この方法では、深い溝等でのフォーカスを自動的に基準とすると、高さ換算で誤った結果を得ることになるので、作業者がほぼ適当とみなす条件でこの高さ演算をする指示を自動又は手動ですることが必要となる。このように、本発明によれば、前記ノズルの移動可能範囲を所定の手続きにより求めることで、ノズルの高さ制限を行なうことができる。
【0041】
このノズルを有する通常の装置は単数のものである。例えば、前記特許文献2記載の発明では、この先端を扁平にし、上下の小孔をビームが通過するようなタイプであり、また前記特許文献3記載の発明は、この先端に反転型の漏斗形状を有するようなタイプである。このようなタイプは、等方的なエッチングのみには利用できるが、加工すべき内容が斜め溝になるような場合は試料面の傾斜等が必要になる。試料移動を行なうと、ステージ移動精度に起因する位置ずれが加工の精度低下につながるので、本発明で示すような異方性のガス又は流体の適切導入が簡単に行えることは有用である。
【0042】
なお、ノズル先端の変形加工しない方式もある。この方式は、既に周知となっている。本発明はこの先端を変形加工をしないノズルを複数有し、それらがイオンビームの主軸に対して対称性を持つように配置されている(図5参照)。ノズルの根元部分には、ガス又は流体供給源があり、ノズル先端とこのパイプで形成された流体制御部のコンダクタンス(流体抵抗の逆数)を同一にすることで、一つの供給源から複数のノズルを経由して同一量の流体を試料表面に供給することができる。ここで、供給する流体が別の場合でも供給部の途中にガス選択の切替部を用意することで対応することができる。但し、パイプ配管での流体又はガスの混合が問題となる場合もあり得るので、4本のノズルを有している場合、対称となる2本をそれぞれ独立した流体供給部とすることが望ましい。
【0043】
本発明では、ノズル8aを図13に示すように光軸に対して傾斜させている。図に示す例では傾斜角θとなっている。30はノズル8aから噴射されるガスの拡散を防ぐための規制部材である。このように、光軸に対して角度θだけ傾けて噴射させることにより、下面調整板23の試料18への近接による画像信号の劣化要因を除去することができる。ここで、傾斜角θはガス又は流体の拡散と深い溝加工への関与を考え、20°以下になるのが好ましいが、実用的には20°から50°の範囲である。このような傾斜角の範囲とすることで、画像信号の劣化を有効に防止することができる。図14はノズルと下面調整板の配置を示す図である。光軸に対してノズル8aが傾斜してガスを噴出しているようすを示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の要部の構成例を示す図である。
【図2】等方加工の説明図である。
【図3】異方加工の説明図である。
【図4】異方性エッチングによる異物除去の説明図である。
【図5】図1のX−X断面を示す図である。
【図6】本発明に係る集束イオンビーム装置の構成例を示す図である。
【図7】ステージ傾斜時のようすを示す図である。
【図8】ステージ非傾斜時のようすを示す図である。
【図9】下面調整板近傍拡大図である。
【図10】下面調整板と1次ビームの拡大図である。
【図11】下面調整板と1次ビームの近傍拡大図である。
【図12】移動量算出の説明図である。
【図13】ノズルの入射角を示す図である。
【図14】ノズルと下面調整板の配置を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
7 対物レンズ
8 パイプ
8a ノズル
17 1次イオンビーム
23 下面調整板
25 ノズル部下面ヒータ
【技術分野】
【0001】
本発明は集束イオンビーム用ガス導入装置に関し、更に詳しくは半導体製造工程で使用されるマスクの修正・修復(リペア)や配線修正、微細加工を行なう集束イオンビーム用ガス導入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GAE(Gas Assist Etching)やMDU(Metal Deposition Unit)と呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の技術は、イオンビーム関連事業としてますます重要になってきている。従来のこの種の装置としては、比較的蒸気圧の低い化合物蒸気をノズルを用いてビーム状に噴出させるようにした技術が知られている(例えば特許文献1参照)。ノズルを円周上に複数個配置してガスビームが均一に噴出されるように構成されているものもある。また、加工物の蒸気圧が高い場合には、試料全体をガスで覆いイオンビームの入り口のみにビームを通過させるための穴を設けた技術が知られている(例えば非特許文献1参照)。
【0003】
また、イオンビームの先にガス導入パイプを設け、そのパイプに上下の穴を設け、2つの穴の一方から1次イオンビームが通過する際にパイプから導入されたガスをイオン化し、もう一方の穴から1次イオンと2次イオンの複合ビームを照射してより加工性能を向上させるものが知られている(例えば特許文献2参照)。また、導入ガスを運ぶ流体導入管システムとして、先端が漏斗状の器の逆さ形状をなし、その狭い上端側から集束イオンビームを導入し、加工性能の反応促進等に流体導入管の運動時の分子エネルギーを利用する技術も知られている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特公平2−25425号公報(第2頁第4段4行目〜同段第44行目、第1図)
【特許文献2】特開平8−17385号公報(段落0007〜0008、図1、図4)。
【特許文献3】特許第3640261号公報(第6頁〜第7頁、図1、図2)
【非特許文献1】理化学研究所第15回シンポジウム「イオン注入とサブミクロン加工」(1984)121−124
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガス導入管(以下ノズルと略す)を試料(サンプル)面上で3次元として微小に動かす場合は、先端の微小振動からμm以下での微細調整は困難であり、ノズルと試料面とが衝突することも起きている。これはウエハ等の試料平面において試料室の外から一般的に調整する場合には、数10cmの長さがあるノズルの先端を、数μmかそれ以下で試料面に対する水平な移動と垂直な移動を要求することに起因していると考えられる。また、各種工程を経る中で試料が歪みや変形により、一度調整したノズルの高さを再調整しないので使用は難しい等の課題がある。
【0005】
また、特に試料の穴加工乃至リペア(パターンの修復)膜の形成を効果的に実施するには、イオンビームのフォーカス条件も適切であることが必要であり、導入ガスがイオンビーム周辺で等方的に広がった条件で雰囲気濃度の高さが性能に大きく寄与することは、当業者であればよく知られたことである。前記した特許文献2記載の発明や、特許文献3記載の発明では、ノズル先端に一体化した導入ガス制限領域とイオンビームの軸との一致を水平軸上で確認し、次に試料面とのギャップを確認する必要がある。
【0006】
これは適切な高さ及び水平位置でのガス導入ができないと性能を十分満足できなくなるからであり、必要な作業である。しかしながら、一連のルーチンワークでの操作は、テスト加工領域と試料の加工所望域との往復及びノズルの高さ調整を必要とする。先ず、試料でのダメージが最小でテスト加工が可能な場所を選択して、イオンビームの照射条件とノズル位置調整等を行なう。次に、ノズルの試料とのギャップを増加させ、試料の加工位置へステージ乃至ワークとなる試料を移動させる。ここで、移動時にノズルの高さを変えるか加工を所望する場所を画像で特定し、ウエハ面の高さ変化に対応してノズルを適正に上下させ、かつその再現性も高くないと全体の作業品質の向上が困難になるのは容易に想定される内容である。
【0007】
特に、ノズル上昇乃至下降の操作が不適切であれば、ルーチンワーク上のどこかの場所で接触事故が起こるということになる。ノズルの3次元移動とは、さながらSTMの針が試料表面で単独に移動するが如くノズル先端を器用に動かすことなので、各種自動化機構により微小移動ができたとしても移動軸が多い場合や、パイプの軸の長さが長い場合には各種振動や熱変形等の影響で、先端の位置を安定的に移動させるのは非常に困難な作業である。
【0008】
また、前記特許文献2及び特許文献3記載の発明では、ガスノズルが基本的には一方から構成されている。加工する試料は様々な形状があり、常に等方位的な深い溝を作るばかりではない。このような場合には、削りたくない部位への1次イオンビームの照射時間を短かくすることで対応することができるが、ガスアシスト(ガスの導入でエッチング等を速める)してしまうと少な目に削りたい方向もやや削りすぎてしまう弊害がある。ノズルをやや斜めに傾斜させて露光する場合も考えられるが、微妙な位置にあるので、衝突を回避しての微調整移動は困難であり、上下二つの穴位置の両方を意識しての調整が必要であるので、このような場合は現実的ではない。つまり、ガスアシストエッチングをせずに、1次イオンビームだけでの照射時間制御での加工を行なうことになる。
【0009】
試料の複雑な加工にはステージ傾斜は欠かせない。ステージの傾斜は、加工量の深さ認識と所望傾斜加工のために必要な機能である。深さ認識のためにはノズルを上昇させ、画像観察に支障のない条件で実施することで問題はないが、ノズルの移動が鏡筒のイオンビーム軸と同一方向である場合は、加工のためにノズルが接近できなくなるという問題がある。
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、試料への加工性能を向上させることができる集束イオンビーム用ガス導入装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)請求項1記載の発明は、集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプを複数有し、該パイプの出口であるノズル同士が主イオンビームの軸と対称で内部を通過する流体が試料面に向かう形状で構成され、該パイプへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有することを特徴とする。
(2)請求項2記載の発明は、前記ノズルの先端はS字形状をなしていることを特徴とする。
(3)請求項3記載の発明は、前記パイプの下に導入ガスを加熱するためのパイプ先端部加熱部と、ノズル相互の空間位置関係の適正配置を可能とする下面調整板を更に設けたことを特徴とする。
(4)請求項4記載の発明は、前記パイプ先端加熱部のヒータによる下面調整板の温度を50゜C〜90゜Cとし、作業者の要望により200゜Cまでの加熱が行なえるように構成されていることを特徴とする。
(5)請求項5記載の発明は、前記パイプ先端であるノズルが一体として上下移動し、ノズルと試料との高さが最小でも10μm以上離れることを特徴とする。
(6)請求項6記載の発明は、前記パイプの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することを特徴とする。
(7)請求項7記載の発明は、前記パイプの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を有することを特徴とする。
(8)請求項8記載の発明は、試料ステージを傾斜可能な試料傾斜ステージに対応してノズル及び下面調整板もステージ部と一体で傾斜するように構成されていることを特徴とする。
(9)請求項9記載の発明は、前記下面調整板の1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形乃至スリットとすることを特徴とする。
(10)請求項10記載の発明は、前記パイプの下面のパイプ連結機構は下部信号検出器に向けた部位が傾斜面をもつことを特徴とする。
(11)請求項11記載の発明は、前記傾斜面の角度は20°から50°の範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(1)請求項1記載の発明によれば、複数ノズルのイオンビーム軸対称配置により等方性と異方性とのGAEやMDUと呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積等が行なえ、操作性能と加工性能の向上を期待することができる。
(2)請求項2記載の発明によれば、ノズル先端の形状をS字形状とすることにより、導入ガスの流速を適切に確保することができる。
(3)請求項3記載の発明によれば、下面調整板を設けることによりノズル相互の空間位置関係の適正配置が可能になる。また、下面調整板へのヒータ組み込みとその温度管理により、ノズルからのガス流量の安定供給及び温度に鋭敏な試料への熱輻射も考慮した適正対応が可能になる。
(4)請求項4記載の発明によれば、パイプ先端加熱部による下面調整板の温度を50℃から90℃とすることにより、導入ガスの均一化を図ることができる。更に必要な場合には、下面調整板の温度を最大200℃まで自由に設定することができる。
(5)請求項5記載の発明によれば、ノズルが一体として上下移動することにより、ノズルと試料との高さを最小でも10μm以上離すことができるので、ノズルが試料に接触することを防止することができる。
(6)請求項6記載の発明によれば、前記ノズルの移動可能範囲の判定を所定の手続きにより求めることで、ノズルの高さ制限を行なうことができる。
(7)請求項7記載の発明によれば、ノズルの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を設けることで、発生する2次電子等の軌道を安定化させることができる。
(8)請求項8記載の発明によれば、試料ステージの傾斜と一体となってノズル及び下面調整板が傾斜するようにすることで、操作性を向上させることができる。
(9)請求項9記載の発明によれば、1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形スリットとすることで、試料面が傾斜した時にも試料にイオンビームを照射することが可能となる。
(10)請求項10記載の発明によれば、適度な傾斜面を拡散制御部に設け、検出器への信号到達を補助することで、下面調整板の試料への近傍による画像信号劣化を防止することができる。
(11)請求項11記載の発明によれば、前記傾斜角を20°から50°の範囲とすることで、画像信号劣化を有効に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態例を詳細に説明する。図1は本発明の要部の構成例を示す図である。図において、18は試料、17は該試料18に照射される1次イオンビーム、7は対物レンズ、8は1次イオンビーム17に反応性のガスを導入するためのパイプであり、その先端はS字状のノズル8aになっている。パイプ8は、図に示すように光軸に対して対称に複数設けられている。23はノズル8aの下に設けられた下面調整板、25はノズル8aと下面調整板23との間に設けられたノズル部下面ヒータ(以下単にヒータという)である。
【0014】
ノズル8aは下面調整板23と接触しており、固着されている。この接触面でノズル8a同士間は連結されている。そして、各ノズル8aへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できるようになっている。14は下面調整板23と一体形成されたノズル8aを上下に移動させる微動装置である。WDは下面調整板23と試料間の距離(ワークディスタンス)である。このように、構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0015】
パイプ8から導入ガスが流入し、ノズル8a先端から導入ガスが噴出される。この噴出されたガスの中を1次イオンビーム17が通ることにより、ガスがイオン化され、試料18のエッチング又はリペア処理を促進させる。ここで、用いられるガスとしては、例えば試料18に金属薄膜を堆積させる場合には、例えばW(CO)6ガス、絶縁膜を堆積させる場合には、例えばシリコン化合物ガスが用いられる。
【0016】
ここで、下面調整板23は導入ガスの均一性を保ち、拡散領域を制限するために用いられる。ヒータ25は導入ガスの均一化を図るために用いられる。ここで、ヒータ25による下面調整板23の温度を50℃から90℃とすることにより、導入ガスの均一化を図ることができる。更に、必要な場合には下面調整板23の温度を200℃まで自由に設定することができる。また、ノズル8aの先端部をS字状としているため、導入ガスの流速を適切に確保することができる。
【0017】
また、本発明によれば、ノズル8a及び下面調整板23を微動装置14により一体として上下移動させることにより、ノズル8aと試料18との高さを最小でも10μm以上離すことができるので、ノズルが試料に接触することを防止することができる。
【0018】
また、本発明によれば、ノズル8aの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することができる。このようにすれば、ノズル8aの高さ制限を確実に行なうことができる。また、本発明によれば、ノズル8aの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を設けることができる。このようにすれば、イオンビームが試料に当たって発生する2次電子等の軌道を安定化させることができ、画像ノイズが減少する。これは、鋭角部が存在する時は、その表面への反射電子等の衝突で余分に2次電子が発生したり、鋭角部の表面電界により検出されるべき2次電子の軌道が曲げられ、検出率が低下することを回避するということである。
【0019】
図1に示す構成の装置を用いると、等方加工と異方加工を行なうことができる。図2は等方加工の説明図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。この実施の形態例では、光軸との対称性を維持しつつノズル8aを配置することにより、全てのノズル8aから均等にガスを噴射することにより試料18の表面を対称性を保持しつつエッチングし、或いはリペアすることができる。図2において、30はノズル8aから噴射されるガスが拡散しすぎないように規制するための規制部材である。θは、ノズル8aの光軸に対する傾斜角である。
【0020】
図3は異方加工の説明図である。図2と同一のものは、同一の符号を付して示す。例えば2本あるノズル8aの内の1本をガスの噴射を停止し、残りのノズル8aからのみガスを噴射させるようにする。このようにすることで、ガスの拡散領域は片方のみに形成され、当該片方のみのエッチング処理を促すことができる。
【0021】
図4は異方性エッチングによる異物除去の説明図である。31〜33は配線パターン、34は配線パターン32に付着した異物である。この異物34のために配線パターン32と33が導通してしまう。そこで、この異物を除去する場合、異方性エッチングを行なう。例えば、異物34が付着している面のみにガスが拡散するように、ノズル8aを調整する。この結果、異物34付近のみがガスにより満たされ、(a)に示すような状態であったのが(b)に示すように異物34が除去されることになる。
【0022】
図5は図1のX−X断面を示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。(a)はノズル8aが2本の場合、(b)は3本の場合、(c)は4本の場合である。図に示すように、ノズルは光軸に対して軸対称である必要はなく、光軸に対して対称性があればよい。例えば、(b)の場合は軸対称ではないが、3個のノズル8aが光軸に対してそれぞれ120度の角度をもって対称に配置されている。
【0023】
以下、集束イオンビーム装置(FIB)の動作について説明する。図6は本発明に係る集束イオンビーム装置の一実施の形態例を示す構成図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、40は鏡筒で、該鏡筒内に集束イオンビーム装置を構成する要素の殆どが含まれる。1はイオン源、17は該イオン源1から放出されるイオンビーム、3はガンアパーチャ、4はイオンビーム17を集束する集束レンズ、5はイオンビーム17の通過量を絞り込むアパーチャ、6は試料上を走査するための走査電極、7はイオンビーム17を細かく絞って試料に当てるための対物レンズ、8aは対物レンズ7の下面に設けられたノズル、23は該ノズル8aの下面に設けられた下面調整板である。
【0024】
図に示す装置は、集束レンズ4と対物レンズ7よりなる2段のレンズ系となっている。なお、イオンビーム装置の場合、電子レンズは静電レンズが用いられる。質量の重いイオンは電磁コイルではうまく曲がりきれないからである。9はヒータ、10は容器、11はガス源、12はノズル8aと接続され、ガスを注入するためのバルブ、13はバルブ12の開き角を調整するバルブ制御機構、14はノズル8aを微小量だけ上下に移動させるための微動装置、15は試料から放出される粒子を検出する検出器、16は試料を移動させる試料微動装置、18は試料である。このように構成された装置の動作を説明すれば、以下の通りである。
【0025】
図6では、前述したように2段レンズ系としているが、基本的イオン光学システムはこれに限定されない。イオン源1に適切な加速電圧を与えて液体金属イオン源等のイオン源1から1次イオンビームとなるイオンを取り出す。そして、取り出したイオンをガンアパーチャ3でビームの拡散制限を行ない、所望する照射ビームをアパーチャ5から取り出す。イオン源1から出た1次イオンビームは、集束レンズ4により必要な結像系を作り、これを走査電極6で偏向してビーム走査をし、対物レンズ7で試料18上に必要な1次ビームの結像をさせる。
【0026】
試料18から出た2次電子等は検出器15で検出され、画像信号として鏡筒40の制御システムに出力され、モニター(図示せず)に表示される。このようなイオンビーム光学系において、試料18に長時間イオンビームを照射し続けると、電子ビームとは異なり、イオンの質量及び電離作用等によって試料を削り取る加工ができる。この加工反応を促進する触媒的な役割の流体やガスを導入することが、イオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積という技術として注目されている。
【0027】
ここでは、図1に示すように複数のノズルを1次イオンビームと対称的に配置し、導入ガス又は流体をここから均等に噴出させることで均質なイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の機能を提供するものである。この配置の対称性は、回転対称系に限らず、加工すべきサンプルのステージ移動軸に対しての軸対称でもよい。複数のノズルは、試料にできるだけ接近するのが好ましいが、図2又は図3にに示すように、導入流体が試料表面で描くガウス分布的形状の中心に1次イオンビーム17が来るのが最も好ましい。これは、ノズル8aの先端の形状に依存し、ノズル先端の形状は導入流体の流速が適切に確保される必要があるので、先端がS字型の形状を有することが好ましい。
【0028】
そして、ノズル管先端の弧の端点での中央から見た接線が流体の直接進む方向と想定でき、この方向と1次ビームとの直接交差する部分が試料の加工すべき部位であることが一番適当な条件になりうる。つまり、ノズル先端と試料表面との距離ができるだけ近く、一次ビームの軸にこのノズル8aが近い方が深い加工支援により貢献する。
【0029】
このようにしてノズル8aの先端とそのパイプの接線を決定すると、直線のパイプの場合は対物レンズ7のケーシングと干渉が起こる。それを避けるために曲線が優位であり、先端での形状の乱れが急激だと流体の乱流の正確が強まり、導入流体の試料照射時に不均一な照射広がりが考えられる。よって、最も好ましいのが連続的な変化であるがためにS字型となる。また、S字型とする場合には、下面調整板23との結合が楽になる点や下面調整板23へのヒータ組み込みによりノズル温度の適正化が可能になる等の利点が挙げられる。
【0030】
図2のような構成が対称な等方性のイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の2ノズルでの位置関係である。図3は異方性のイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の2ノズルの位置関係であり、一方のノズルのみでガス又は流体を試料面に照射する。
【0031】
ところで、試料の複雑な加工にはステージ傾斜は欠かせない。ステージの傾斜は加工量の深さ確認と所望する傾斜加工に必要な機能である。深さ確認のためにはノズルを上昇させ、画像観察に支障のない条件で実施することが好ましいが、ノズルの移動が鏡筒のイオンビーム軸と同一方向である場合は広角度傾斜をすると、加工のためのノズルの接近ができなくなる。そこで、図7又は図8に示すように傾斜対応ステージのベースプレートとノズルが一体で傾斜する構成に有用な効果がある。ノズルの最適高さ調整は試料面のみで決定され、傾斜とは無関係に高さ調整できる点に優位性がある。
【0032】
図7はステージ傾斜時のようすを示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図7はyz断面を示している。図において、50はベースプレート、51は該ベースプレート50上に取り付けられたステージ、52は該ステージ51を駆動するステージ駆動装置、18はステージ41上に載置された試料、7は対物レンズである。このように試料を傾斜した状態でイオンビームによるエッチングを行なうと、試料18の斜め方向にエッチングを行なうことができる。
【0033】
図8はステージ非傾斜時のようすを示す図である。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図8はxz断面を示している。図1及び図7と同一の部分は同一の符号を付して示す。このように、本発明によれば、試料ステージの傾斜と一体となってノズル及び下面調整板が傾斜するようにすることで、操作性を向上させることができる。図9は下面調整板近傍拡大図で、上面から見た図を示す。図1と同一のものは、同一の符号を付して示す。図において、Aは水平時1次イオンビーム照射位置を、Bはステージ水平時のガス照射の領域を示す。
【0034】
図10又は図11に示すように、1次イオンビーム通過孔の形状が、楕円やスリット或いは長方形等であれば、下面調整板23がステージと一体で傾斜しても、1次イオンビームの照射を損なうことなく、ノズルでのイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積の機能を実現することができる。図10は下面調整板と1次イオンビームの拡大図である。17は1次イオンビーム、23は下面調整板、45は前記した1次ビーム通過孔である。図では、下面調整板23が平坦な状態を示している。これに対して図11に示す例は、下面調整板23が傾斜している状態を示している。
【0035】
なお、試料高さの微妙な違いで1次イオンビーム17と流体照射中心とがずれる場合がありえるが、本発明装置では、ノズル8aは上下動のみとして対応することがステージとの関係で好ましいので、イオンビームの軸を鏡筒40側でわずかにずらす対応が適当である。このような位置調整は、試料面高さと傾斜量に依存して発生する。イオンビームの移動量算出について説明する。
【0036】
図12は移動量算出の説明図である。図において、18は試料、23は下面調整板、Lは基準高さ位置、ΔHは試料18の基準高さ位置Lからのずれ、ΔDは試料18と下面調整板23間の距離である。θはステージ(とりもなおさず試料)の傾斜角である。図に示すようなユーセントリックステージで、試料高さが最適な基準高さLからΔHだけ低い位置にある場合に、ステージの傾斜角θから、ΔH・sinθ分の1次イオンビームのY座標をずらすことで、同一位置照射を実現することができる。標準的な試料の場合、ΔHは±50μm以下なので、移動補正量も同じく±50μm未満に充分に収まる。この程度の量は、1次ビームのイメージシフトで対応可能であるので標準的な装置で充分実現することができる。
【0037】
また、ノズルの下面調整板23の基準高さズレはΔD−ΔHなので、
(ΔD−ΔH)・tanθ分だけ楕円の長さが確保されていれば、1次イオンビームと下面調整板23との干渉が発生しない。現実的な制約からステージ傾斜量は最大60°程度であり、ユーセントリックステージの傾斜基準高さLからのノズル最大離脱範囲が3mmなら、長方形又は楕円等の最小形状は前記式から3×tanθ=5.2mmであり、ビームの広がりを考慮しても楕円又は長方形等の長さは前記最大離脱範囲の2倍程度の長さであり、かつ水平状態での軸中心が長方形又は楕円等の端面から0.3から0.5mm程度の位置が、装置の実質的制約条件となる。この実施の形態例によれば、1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形スリットとすることで、試料面が傾斜した時にも試料にイオンビームを照射することが可能となる。
【0038】
以上、説明したように、本発明によれば、複数ノズルのイオンビームを光軸に対して対称性を持たせた配置により等方性と異方性とのGAEやMDUと呼ばれるイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積等が行なえ、操作性能と加工性能の向上を期待することができる。
【0039】
さて既に説明したように、ノズルと1次イオンビーム及び試料面との間で適切な幾何学的関係があり、この関係を実現するのに重要なことは、試料面の高さとノズル下面との距離関係である。ノズル及びこの下面は一体のものとして構成され、イオンビーム鏡筒の軸と同軸に下面の中心が配置されることが必要である。また、この下面の移動は適切に上下動のみする。
【0040】
この移動量は、試料面の高さで制限されるべきであり、この試料面高さの検出には、レーザー高さ検出器乃至静電容量高さ検出器乃至対物レンズでのイオンビームのフォーカス条件で決定するのが適当である。対物レンズ条件からの試料面算出は、予め決められた照射電流等の条件から適切な対物レンズの電圧条件と試料面高さについての関数テーブルを用意し、実際のフォーカス条件に応じてこの高さ換算を実施する方法である。但し、この方法では、深い溝等でのフォーカスを自動的に基準とすると、高さ換算で誤った結果を得ることになるので、作業者がほぼ適当とみなす条件でこの高さ演算をする指示を自動又は手動ですることが必要となる。このように、本発明によれば、前記ノズルの移動可能範囲を所定の手続きにより求めることで、ノズルの高さ制限を行なうことができる。
【0041】
このノズルを有する通常の装置は単数のものである。例えば、前記特許文献2記載の発明では、この先端を扁平にし、上下の小孔をビームが通過するようなタイプであり、また前記特許文献3記載の発明は、この先端に反転型の漏斗形状を有するようなタイプである。このようなタイプは、等方的なエッチングのみには利用できるが、加工すべき内容が斜め溝になるような場合は試料面の傾斜等が必要になる。試料移動を行なうと、ステージ移動精度に起因する位置ずれが加工の精度低下につながるので、本発明で示すような異方性のガス又は流体の適切導入が簡単に行えることは有用である。
【0042】
なお、ノズル先端の変形加工しない方式もある。この方式は、既に周知となっている。本発明はこの先端を変形加工をしないノズルを複数有し、それらがイオンビームの主軸に対して対称性を持つように配置されている(図5参照)。ノズルの根元部分には、ガス又は流体供給源があり、ノズル先端とこのパイプで形成された流体制御部のコンダクタンス(流体抵抗の逆数)を同一にすることで、一つの供給源から複数のノズルを経由して同一量の流体を試料表面に供給することができる。ここで、供給する流体が別の場合でも供給部の途中にガス選択の切替部を用意することで対応することができる。但し、パイプ配管での流体又はガスの混合が問題となる場合もあり得るので、4本のノズルを有している場合、対称となる2本をそれぞれ独立した流体供給部とすることが望ましい。
【0043】
本発明では、ノズル8aを図13に示すように光軸に対して傾斜させている。図に示す例では傾斜角θとなっている。30はノズル8aから噴射されるガスの拡散を防ぐための規制部材である。このように、光軸に対して角度θだけ傾けて噴射させることにより、下面調整板23の試料18への近接による画像信号の劣化要因を除去することができる。ここで、傾斜角θはガス又は流体の拡散と深い溝加工への関与を考え、20°以下になるのが好ましいが、実用的には20°から50°の範囲である。このような傾斜角の範囲とすることで、画像信号の劣化を有効に防止することができる。図14はノズルと下面調整板の配置を示す図である。光軸に対してノズル8aが傾斜してガスを噴出しているようすを示している。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の要部の構成例を示す図である。
【図2】等方加工の説明図である。
【図3】異方加工の説明図である。
【図4】異方性エッチングによる異物除去の説明図である。
【図5】図1のX−X断面を示す図である。
【図6】本発明に係る集束イオンビーム装置の構成例を示す図である。
【図7】ステージ傾斜時のようすを示す図である。
【図8】ステージ非傾斜時のようすを示す図である。
【図9】下面調整板近傍拡大図である。
【図10】下面調整板と1次ビームの拡大図である。
【図11】下面調整板と1次ビームの近傍拡大図である。
【図12】移動量算出の説明図である。
【図13】ノズルの入射角を示す図である。
【図14】ノズルと下面調整板の配置を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
7 対物レンズ
8 パイプ
8a ノズル
17 1次イオンビーム
23 下面調整板
25 ノズル部下面ヒータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、
イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプを複数有し、該パイプの出口であるノズル同士が主イオンビームの軸と対称で内部を通過する流体が試料面に向かう形状で構成され、該パイプへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有することを特徴とする集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項2】
前記ノズルの先端はS字形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項3】
前記パイプの下に導入ガスを加熱するためのパイプ先端部加熱部と、ノズル相互の空間位置関係の適正配置を可能とする下面調整板を更に設けたことを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項4】
前記パイプ先端加熱部のヒータによる下面調整板の温度を50゜C〜90゜Cとし、作業者の要望により200゜Cまでの加熱が行なえるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項5】
前記パイプ先端であるノズルが一体として上下移動し、ノズルと試料との高さが最小でも10μm以上離れることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項6】
前記ノズルの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することを特徴とする請求項4記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項7】
前記ノズルの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を有することを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項8】
試料ステージを傾斜可能な試料傾斜ステージに対応してノズル及び下面調整板もステージ部と一体で傾斜するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項9】
前記下面調整板の1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形乃至スリットとすることを特徴とする請求項8記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項10】
前記パイプの下面のパイプ連結機構は下部信号検出器に向けた部位が傾斜面をもつことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項11】
前記傾斜面の角度は20°から50°の範囲であることを特徴とする請求項10記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項1】
集束イオンビームを用いてイオンビーム支援エッチング又はビーム支援堆積を行なうことが可能な装置において、
イオンビーム鏡筒の下に複数の流体送出システムとしてのパイプを複数有し、該パイプの出口であるノズル同士が主イオンビームの軸と対称で内部を通過する流体が試料面に向かう形状で構成され、該パイプへの導入ガスの噴射条件を個別に制御できる構成であり、該パイプ同士間を連結する機構を有することを特徴とする集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項2】
前記ノズルの先端はS字形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項3】
前記パイプの下に導入ガスを加熱するためのパイプ先端部加熱部と、ノズル相互の空間位置関係の適正配置を可能とする下面調整板を更に設けたことを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項4】
前記パイプ先端加熱部のヒータによる下面調整板の温度を50゜C〜90゜Cとし、作業者の要望により200゜Cまでの加熱が行なえるように構成されていることを特徴とする請求項3記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項5】
前記パイプ先端であるノズルが一体として上下移動し、ノズルと試料との高さが最小でも10μm以上離れることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項6】
前記ノズルの移動可能範囲の判定をレーザー光乃至静電容量高さ検出装置乃至対物レンズのフォーカス条件からの換算条件により判定した高さで制限することを特徴とする請求項4記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項7】
前記ノズルの下面に鋭角部を持たないパイプ連結機構を有することを特徴とする請求項1記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項8】
試料ステージを傾斜可能な試料傾斜ステージに対応してノズル及び下面調整板もステージ部と一体で傾斜するように構成されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項9】
前記下面調整板の1次イオンビームの通過部を楕円乃至長方形乃至スリットとすることを特徴とする請求項8記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項10】
前記パイプの下面のパイプ連結機構は下部信号検出器に向けた部位が傾斜面をもつことを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【請求項11】
前記傾斜面の角度は20°から50°の範囲であることを特徴とする請求項10記載の集束イオンビーム用ガス導入装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−98232(P2008−98232A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275009(P2006−275009)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
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