説明

電力供給制御装置

【課題】 外部回路やパワーFETを保護することが可能な電力供給制御装置を提供する。
【解決手段】 短絡電流Is1が流れ続けると、RC並列回路12が次第に高変換率状態となり、通電時間がt1になったときに、端子電圧Voが閾値電圧Vrを超えてコンパレータ32から異常信号S2が出力される。この異常信号S2を受けて保護用論理回路40のRS−FF66はセット状態となってハイレベルの制御信号S4を出力して、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16に自己復帰不能な遮断動作をさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給制御装置に関し、特に、半導体スイッチに連なる外部回路等の保護技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電源と負荷とを接続する電流供給ラインに、例えばパワーMOSFETなどの大電力用半導体スイッチ素子を介設し、この半導体スイッチ素子をオンオフさせることにより負荷への電流供給を制御するようにした電力供給制御装置が提供されている。このような電力供給制御装置では、過電流が流れると上記半導体スイッチ素子の制御端子の電位を制御して当該スイッチ素子をオフにして通電を遮断することにより、上記半導体スイッチ素子を保護する自己保護機能を有するものが知られている。具体的には、例えば、電流検出抵抗を通電端子(例えばMOSFETであればソースまたはドレイン)に直列に接続し、この抵抗での電圧降下を検出して、この電圧降下が所定レベル以上になると過電流と判定するようなものがある。
【特許文献1】特開2001−217696公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述の自己保護機能を有する電力供給制御装置を用いた場合であっても、その自己保護機能が働いて半導体スイッチ素子に通電状態と遮断とを間欠的に行う強制オンオフ動作が継続的に実行されると、その電力供給によって電力供給制御装置に連なる外部回路(例えば配線部材(配線等))が発熱し、焼損するおそれがあった。このために、従来は、当該外部回路の負荷抵抗等を考慮したヒューズ素子を別途、電流供給ラインに設けるようにしていた。
【0004】
しかしながら、ヒューズ素子を別途設ける構成では、装置全体が大型化するため、近年、更に強まる装置の小型化、回路構成の集積化等の要請に応えることができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ヒューズ素子を別途設けることなく外部回路やパワーFETを保護することが可能な電力供給制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電力供給制御装置は、パワーFETを用いて電力供給制御を行う電力供給制御装置であって、前記パワーFETと、前記パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFETと、前記センス電流を電圧に変換する変換回路と、前記変換回路の端子電圧と、閾値電圧との比較に基づき異常信号を出力する異常検出回路と、を備え、前記変換回路は、前記センス電流の電流経路に対して直列接続された第1抵抗素子及びコンデンサと、これらの第1抵抗素子及びコンデンサに対して並列接続される第2抵抗素子と、を有して構成されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力供給制御装置において、前記第2抵抗素子は、前記第1抵抗素子よりも抵抗値が大きいことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置において、前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の発煙特性曲線よりも下の領域において当該発煙特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする。
なお、「発煙特性曲線」とは、上記外部回路(例えば配線部材(配線)など)に流れる電流とその電流レベルで焼損(発煙)が生じ得るまでの許容通電時間との関係を示した曲線をいう。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置において、前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETの自己破壊特性曲線よりも下の領域において当該自己破壊特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする。
なお、「自己破壊特性曲線」とは、パワーFETに流れる電流とその電流レベルでパワーFETが自己破壊し得るまでの許容通電時間との関係を示した曲線をいう。
【0010】
請求項5の発明は、請求項3又は請求項4に記載の電力供給制御装置において、前記センス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の突入電流特性曲線よりも上の領域に位置するよう前記回路定数が設定されていることを特徴とする。
なお、「突入電流特性曲線」とは、上記外部回路(例えばランプやモータなど)に流れる負荷電流と、その通電時間との関係を示した曲線をいう。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置において、前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の突入電流特性曲線よりも上の領域において当該突入電流特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電力供給制御装置において、前記パワーFET、前記センスFET及び前記異常検出回路は、ワンチップ化された、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された半導体スイッチ素子とされ、前記変換回路は、前記半導体スイッチ素子の外部に設けられるとともに、当該半導体スイッチの外部端子を介して前記センス電流を受けることを特徴とする。
【0013】
請求項8の発明は、請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電力供給制御装置において、前記異常検出回路から異常信号が出力されたことを条件に、前記パワーFETに自己復帰不能な遮断動作をさせる保護回路を備えていることを特徴とする。
【0014】
請求項9の発明は、請求項8に記載の電力供給制御装置において、前記パワーFET、前記センスFET、前記異常検出回路及び前記保護回路は、ワンチップ化された、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された半導体スイッチ素子とされ、前記変換回路は、前記半導体スイッチ素子の外部に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
<請求項1,2の発明>
本構成によれば、変換回路は、センス電流の通電時間経過に伴ってそのセンス電流から電圧への変換率を増大させる特性を示す。つまり、例えば外部回路(配線部材など)の短絡異常や、短絡していなくても所定の規格電流よりも大きい電流がパワーFETに流れる過電流異常が発生した場合、その通電時間経過に伴う変換回路での変換率の増大により端子電圧が上昇し、閾値電圧に達したときに異常信号が出力される。そして、上記電流異常発生時から異常信号出力時までの異常電流の通電時間は、その異常電流レベルが大きいほど短く、小さいほど長くなることを意味する。
要するに、電力供給制御装置は、パワーFETに連なる外部回路(例えば配線部材(配線))に高いレベルの異常電流が流れたときには即時的に異常信号を出力し、比較的に低いレベルの異常電流が流れたときにはある程度の通電時間を許容した後に異常信号を出力するように動作する。これにより、外部回路に大電流が流れて焼損などすることを抑制することが可能となる。
そして、本構成では、変換回路は、センス電流の電流経路に対して直列接続された第1抵抗素子及びコンデンサと、それらに対して並列接続される第2抵抗素子(請求項2では第1抵抗素子よりも抵抗値が大きいもの)と、を有して構成した。このような構成であれば、変換回路の回路定数(各抵抗素子の抵抗値、コンデンサの容量)を変更することで、その端子電圧が閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線を適切なものに調整することができる。また、変換回路に流れるセンス電流の最大電流量は有限であるため、この最大電流量を、第1抵抗素子、第2抵抗素子のうち少なくともいずれか一方の抵抗値を調整することによりパワーFETの最大許容電流値に対応した値に設定することができる。また、第2抵抗素子の抵抗値を調整することにより過電流状態が長時間継続した場合におけるセンス電流の収束値を調整することができる。更に、第1及び第2の抵抗素子及びコンデンサの値を調整することによりセンス電流−通電時間の関係曲線の経時的な収束度合いを調整することができる。
【0016】
<請求項3の発明>
本構成によれば、変換回路の端子電圧が閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線を、外部回路の発煙特性曲線よりも下の領域において当該発煙特性曲線に沿った曲線にすることで、外部回路の焼損を確実に防止することができる。
【0017】
<請求項4の発明>
本構成によれば、変換回路の端子電圧が閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線を、パワーFETの自己破壊特性曲線よりも下の領域において当該自己破壊特性曲線に沿った曲線にすることで、パワーFETを保護することができる。
【0018】
<請求項5,6の発明>
例えば、外部回路がランプやモータ等である場合、通常、通電開始当初は、定常時よりもレベルが高い突入電流がパワーFET及び外部回路に流れるが、この突入電流が流れたことで異常検出されてしまうのは好ましくない。そこで、本構成では、センス電流−通電時間の関係曲線が、パワーFETに連なる外部回路の突入電流特性曲線よりも上の領域に位置するよう変換回路の回路定数を設定した。これにより、突入電流に対して異常検出を行わずに、定常状態以降における電流の異常検出を行うようにすることができる。
【0019】
<請求項7,9の発明>
本構成によれば、変換回路を、半導体スイッチ素子内に設けるのではなく、半導体スイッチ素子の外部に外付けとして設けることができるので、製造過程に起因する抵抗値のばらつき(いわゆる倍半分とも称されるような大きなばらつき)を抑えて変換回路の特性を精度よく設定でき、且つ、回路定数を自由に設定でき、ひいては、異常検出を高精度に行うことができ、且つ、異常検出特性を自由に設定できる。
【0020】
<請求項8の発明>
本構成のように、電力供給制御装置自体が、異常検出回路にて異常が検出されたことを条件にパワーFETに自己復帰不能な遮断動作(例えば、電力供給制御装置の外部から信号を受けることで初めて復帰可能な遮断動作)をさせる保護回路を備えて、外部回路を保護するヒューズ機能を有する構成が望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1〜図4を参照しつつ説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態に係る電力供給制御装置10の全体構成を示すブロック図であり、同図に示すように、本実施形態の電力供給制御装置10は、定電圧信号、或いは、PWM(Pulse Width Modulation。パルス幅変調)制御信号などの制御信号S1を直接又は間接的にパワーMOSFET15(パワーMOSFET15は、本発明の「パワーFET」に相当)の制御入力端子(ゲート端子G)に与えることで、このパワーMOSFET15の出力側に連なる車両用電源61(以下、単に電源61とも称する)から負荷50への電力供給を制御するように構成されている。なお、本実施形態では、電力供給制御装置10は図示しない車両に搭載され、負荷50として例えば車両用のランプ、クーリングファン用モータやデフォッガー用ヒータなどの駆動制御をするために使用される。この電力供給制御装置10は、入力端子P1において、操作スイッチ52が接続される構成をなし、操作スイッチ52がONとなることで動作するようになっている。
【0022】
図1に示すように、制御信号S1は入力端子P1に接続された入力インターフェース45に入力されるようになっており、この制御信号S1の入力に応じてFET47がオン状態となり、保護用論理回路40が通電される構成をなしている。保護用論理回路40にはチャージポンプ回路41とターンオフ回路42がそれぞれ接続されており、さらに過電流検知回路13、過温度検知回路48もそれぞれ接続されている。また、パワーMOSFET15のドレイン端子D及びゲート端子Gの間にはダイナミッククランプ44が接続されている。
【0023】
チャージポンプ回路41は、パワーMOSFET15のゲート端子Gに接続されており、チャージポンプ回路41とパワーMOSFET15のゲート端子Gとの間には、過電流検知回路13からのライン(具体的には、後述するセンスMOSFET16のゲート端子Gからのライン(図2参照))が接続されている。また、チャージポンプ回路41とパワーMOSFET15のゲート端子Gとの間のラインにおける過電流検知回路13との接続点と、パワーMOSFET15のゲート端子Gとの間には、ターンオフ回路42からのラインが接続されている。また、ターンオフ回路42は、パワーMOSFET15のドレイン端子Dとソース端子Sにもそれぞれ接続されている。なお、図1において図示は省略しているが、半導体スイッチ素子11の外部端子P4には、変換回路としてのRC並列回路12が接続され、センスMOSFET16からのセンス電流はこのRC並列回路12を通してグランドに流れ込む。RC並列回路12の詳細については後述する。
また、図1に示すように、電力供給制御装置10は、パワーMOSFET15と、過電流検知回路13と、保護用論理回路40等、同図において点線で囲まれた回路構成がワンチップ化された形態、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された形態にて半導体スイッチ素子11が構成されている。
【0024】
(2)過電流検知回路
図2は、パワーMOSFET15に流れる電流の異常検出を行う過電流検知回路13(本発明の「異常検出回路」に相当)を主として示す回路図である。同図において、一点鎖線で囲まれた構成が過電流検知回路13である。この過電流検知回路13は、パワーMOSFET15の電流量に応じたセンス電流が流れるセンスMOSFET16(本発明の「センスFET」に相当)を有している。
【0025】
パワーMOSFET15は、ドレイン端子Dが電源端子P2に接続され、ソース端子Sが出力端子P3に接続されている。センスMOSFET16は、ゲート端子G及びドレイン端子DがパワーMOSFET15のゲート端子G及びドレイン端子Dと共通接続されている。また、パワーMOSFET15のソース端子S及びセンスMOSFET16のソース端子Sは、オペアンプ18の各入力端子にそれぞれ接続されており、このオペアンプ18の出力側には、FET20のゲート端子が接続されている。
【0026】
このように、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16のドレイン端子D同士、ソース端子S同士を互いに同電位することで、パワーMOSFET15に流れる電流Ipに対して安定した一定比率のセンス電流IsをセンスMOSFET16に流すことができる。これらのパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16は、操作スイッチ52がONとなって入力端子P1から制御信号S1が入力されることを前提条件としてONするように構成されている。
【0027】
センスMOSFET16からのセンス電流Isは、FET24及びFET26からなるカレントミラー回路によってセンス電流Isと同レベルのミラー電流Is’がFET26及びFET28の接続ラインに流れる。そして、更にFET28及びFET30からなるカレントミラー回路によってセンス電流Isと同レベルのミラー電流Is”がFET30及び外部端子P4に流れるようになっている。
【0028】
また、FET30と外部端子P4との接続ラインにはコンパレータ32の一方の入力端子が接続されている。また、電源61に連なる電源ラインとグランドとの間には、抵抗35及びツェナーダイオード34が直列接続されてなる定電圧手段が設けられ、抵抗35とツェナーダイオード34との接続点にコンパレータ32の他方の入力端子が接続されている。コンパレータ32は、次述するRC並列回路12が接続される外部端子P4の電圧(RC並列回路12の端子電圧Vo)が、ツェナーダイオード34による定電圧としての閾値電圧Vrを上回ったときにオン動作してハイレベルの異常信号S2を出力する。
【0029】
(3)RC並列回路
(a)回路構成
図2に示すように、RC並列回路12は、直列接続された第1抵抗60(抵抗値r)及びコンデンサ62と、第2抵抗64(抵抗値R)とが並列接続されて構成されている。そして、このRC並列回路12の一端側が外部端子P4に接続され、他端側がグランドに接続される。従って、RC並列回路12の端子電圧Voが外部端子P4を介してコンパレータ32の入力端子に与えられる。
【0030】
(b)回路定数の設定
ここで、RC並列回路12にセンス電流Is(詳しくは、センス電流のミラー電流Is”)を流した場合の端子電圧Voは、次の数式1で求めることができる。
【数1】

r:第1抵抗60の抵抗値
C:コンデンサ62の容量
R:第2抵抗64の抵抗値
t:通電時間
【0031】
従って、数式1から異常検出される電流(端子電圧Voが閾値電圧Vrに達したときのセンス電流Is、以下、「異常電流Io」という)は、次の数式2で表すことができる。
【数2】

そして、通電開始当初は、センス電流Isのミラー電流Is”が第1抵抗60、第2抵抗64及びコンデンサ62に流れる。このときの異常電流Ioは、上記数式2より、次の数式3に示す電流Io1となる。
【数3】

(通電時間t=0)
【0032】
そして、その通電状態が継続し通電時間tが経過するに従って、異常電流Ioは、数式4に示す電流Io2に収束していく。
【数4】

(通電時間t=∞)
以上から、異常電流Ioと通電時間tとの関係は、図3の点線で示す収束曲線L1となる。このことは、通電開始当初、RC並列回路12の電流/電圧の変換率が小さく異常電流Ioは大きなレベルとなり(つまり、大電流を流すことができ)、そのまま通電状態が継続した場合、RC並列回路12における電流/電圧の変換率が徐々に増大し、異常電流Ioのレベルが低減していく(流すことができる電流量が低減していく)ことを意味する。要するに、RC並列回路12は、それに流れたセンス電流Isの通電時間に応じて増大する変換率によって当該センス電流Isを端子電圧Voに変換するのである。
【0033】
また、同図で実線で示した曲線は、例えば電力供給制御装置10及び負荷50の間に連なる配線51(例えば電線被覆材)の発煙特性について、電流レベルと通電時間(発煙時間)との関係を示した発煙特性曲線L2である。つまり、電線51に任意の一定電流(ワンショット電流)を継続して流したときに、当該電線51の被覆材の焼損が発生するまでの時間を示している。
【0034】
同図中でIstdは定格電流であり、Imaxは電線51における発熱と放熱のバランスがとれた熱平衡状態で流すことが可能な平衡時限界電流である。この平衡時限界電流Imaxよりも高いレベルの電流を流す場合には、過度熱抵抗領域となり、電流レベルと焼損までの通電時間tとが略反比例関係となる。なお、発煙特性曲線L2は例えば実験的に求めることができる。
【0035】
本実施形態では、図3に示すように、上記収束曲線L1が発煙特性曲線L2よりも低いレベル領域内において当該発煙特性曲線L2にほぼ平行な曲線になるように、RC並列回路12の各回路定数(第1抵抗60及び第2抵抗64の抵抗値r,R、コンデンサ62の容量C)が調整されている。また、上記電流Io2を配線51の定格電流Istdにほぼ一致させている。ここで、第1抵抗60及び第2抵抗64は、通電開始当初において上記電流Io1を設定し、上記発煙特性曲線L2を超えないようにする役割を果たす。
なお、上記発煙特性曲線L2は、電力供給制御装置10に接続される外部回路としての配線部材(例えば配線など)の種類等によって異なるが、外付けされたRC並列回路12の回路定数(r,C,R)を調整することによって、保護対象となる各配線部材の発煙特性曲線に応じた収束曲線を形成することができる。
【0036】
なお、上述の異常信号S2は保護用論理回路40に入力されるように構成されており、後述の保護動作がなされるようになっている。また、この異常信号S2はOR回路49にも入力されるようになっており、異常信号S2、或いは過温度検知回路48からの温度異常を示す異常信号S3のいずれかの信号が入力された場合には、FET46がオンされ、外部端子P5に連なるプルアップ抵抗54を利用して外部回路(例えば警告ランプ等)に異常を示す信号が出力される。温度異常が発生したときにはパワーMOSFET15を一時的又は継続的に遮断動作をさせる構成となっている。
【0037】
(4)保護用論理回路
図4には、前述の制御信号S1を受けることで起動する保護用論理回路40の構成が示されている。この保護用論理回路40は、チャージポンプ回路41、ターンオフ回路42に制御信号S4を与えてオンオフ動作させる、ラッチ回路としてのRS−FF66(RSフリップフロップ)を有している。このRS−FF66はセット端子SにOR回路68からのセット信号SETが入力され、リセット端子RにAND回路70からの出力信号が入力される。OR回路68には、電流異常の異常信号S2と温度異常の異常信号S3が入力され、いずれかの信号が入力されたときにセット信号SETを出力してRS−FF66をセット状態とし、これによりRS−FF66はハイレベルの制御信号S4を出力する。
【0038】
AND回路70には、温度異常の異常信号S3をレベル反転した信号と、リセット信号RSTとが入力される。これにより、AND回路70は、温度異常が発生せず或いは解消されて保護用論理回路40が異常信号S3を受けていないときはリセット信号RSTを有効化させてRS−FF66をリセット状態にする。一方、温度異常の発生により保護用論理回路40が異常信号3を受けているときはリセット信号RSTを無効化させる。このリセット信号RSTは、入力端子P1に制御信号S1が入力されたとき(負荷駆動信号が入力されたとき)、または、温度異常(過熱状態)から温度低下により復帰温度(正常に動作可能な閾値温度)に達したときにパルス信号として保護用論理回路40に与えられる。
【0039】
このような構成により、保護用論理回路40は、制御信号S1を受けることで起動し、正常時は、チャージポンプ回路41を駆動させ、このチャージポンプ回路41は昇圧した電圧をパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16の各ゲート−ソース間に与えてオンして通電状態にさせるように動作する。一方、保護用論理回路40は、上記電流異常の異常信号S2を受けた異常検出時には、チャージポンプ回路41をオフさせるとともに、ターンオフ回路42を駆動させるハイレベルの制御信号S4を出力し、これにより、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16の各ゲート−ソース間の電荷を放電し、遮断動作させるように動作する。そして、この遮断動作は、制御信号S1が再入力(例えば負荷駆動信号が入力)されない限り通電状態に復帰することができない、自己復帰不能な遮断動作である。
【0040】
また、保護用論理回路40は、温度異常の異常信号S3を受けたときも制御信号S4を出力してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16に遮断動作させる。この遮断動作は、パワーMOSFET15が復帰温度に達したときに、保護用論理回路40が温度異常の異常信号S3を受けなくなり、再び通電状態に復帰する、自己復帰可能な遮断動作である。
【0041】
(5)本実施形態の作用効果
操作スイッチ52がONされ制御信号S1が電力供給制御装置10に与えられると、保護用論理回路40のRS−FF66がリセット状態となる。これにより、チャージポンプ回路41が駆動しパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16がオンして通電状態となり、負荷50への電力供給が開始される。
【0042】
ここで、例えば配線部材(配線51など)が短絡し、パワーMOSFET15に大電流が流れると、これに比例した高いレベルのセンス電流Is(Is”)がRC並列回路12に流れる(以下、このときのセンス電流Isを「短絡電流Is1」という)。そして、この短絡電流Is1は、短絡異常の発生当初は、第1抵抗60、第2抵抗64及びコンデンサ62に流れ込む。このとき、RC並列回路12は低変換率状態にあるから、端子電圧Voは未だ閾値電圧Vrに達することはなく、コンパレータ32から異常信号S2は出力されない。
【0043】
そして、そのまま短絡電流Is1が流れ続けると、RC並列回路12が次第に高変換率状態となり、図3で示すように、通電時間がt1になったとき(短絡電流Is1と通電時間の関係が上記収束曲線L1上に達したとき)に、端子電圧Voが閾値電圧Vrを超えてコンパレータ32から異常信号S2が出力される。この異常信号S2を受けて保護用論理回路40のRS−FF66はセット状態となってハイレベルの制御信号S4を出力して、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16に上記自己復帰不能な遮断動作をさせる。ここで、収束曲線L1は配線51の発煙特性曲線L2よりも低いレベル領域内に設定されているから、短絡異常の発生後、その短絡異常が継続する場合には通電時間t1経過後にパワーMOSFET15に遮断動作させて、配線51が焼損等することを防止することができる。即ち、電力供給制御装置10は、配線51を保護する、いわゆるヒューズ機能を有しているのである。
【0044】
また、短絡状態にはならなくても何らかの原因により、パワーMOSFET15に定格電流Istdよりも大きい電流が流れる過電流異常が発生する場合がある(以下、このときのセンス電流Isを「過電流Is2(<短絡電流Is1)」という)。この場合、この過電流異常が継続し、図3に示すように、通電時間がt2(>t1)になったとき(過電流Is2と通電時間の関係が上記収束曲線L1上に達したとき)に、端子電圧Voが閾値電圧Vrを超えてコンパレータ32から異常信号S2が出力される。これにより、過電流異常の発生後、その過電流異常が継続する場合には通電時間t2経過後にパワーMOSFET15に自己復帰不能な遮断動作させて、配線51が焼損等することを防止することができる。
【0045】
このように、本実施形態に係る電力供給制御装置10は、例えば短絡異常や過電流異常などの電流異常が発生した場合、各異常電流レベルに応じた適切な通電時間(t1,t2)で自己復帰不能な遮断動作を実行することができる。
【0046】
また、RC並列回路12は、半導体スイッチ11の外部に設けた構成であるから、製造過程に起因する抵抗値のばらつき(いわゆる倍半分とも称されるような大きなばらつき)を抑えてRC並列回路12の特性を精度よく設定でき、且つ、回路定数を自由に設定でき、ひいては、配線に応じた高精度のヒューズ機能を実現できる。
【0047】
しかも、RC並列回路12は、直列接続された第1抵抗60及びコンデンサ62と、第2抵抗64とが並列接続された構成である。この構成であれば、通電開始当初や異常電流発生当初における異常電流Ioの最大電流量を、上記数式3で示すように有限値にすることができる。従って、第1,2抵抗60,64の抵抗値R,rを調整することで、パワーMOSFET15やセンスMOSFET16の最大許容電流値を超えない値に設定してパワーMOSFET15やセンスMOSFET16を保護できるようにすることができる。
【0048】
<実施形態2>
図5は(請求項5,6の発明に対応する)実施形態2を示す。前記実施形態との相違は、RC回路12の回路定数の設定値にあり、その他の点は前記実施形態1と同様である。従って、実施形態1と同一符号を付して重複する説明を省略し、異なるところのみを次に説明する。
【0049】
図5で点線で示した収束曲線L3は、異常電流Ioと通電時間tとの関係を示すものであり、上記実施形態1の収束曲線と同様の数式1〜4で表すことができる。同図で実線で示した曲線は、パワーMOSFET15の自己破壊特性について、パワーMOSFET15に流れる電流レベルとその電流レベルでパワーFET15が自己破壊し得るまでの許容通電時間との関係を示した曲線を示した自己破壊特性曲線L4である。つまり、パワーMOSFET15に任意の一定電流(ワンショット電流)を継続して流したときに、当該パワーMOSFET15が自己破壊するまでの時間を示している。
【0050】
同図中でIstdは定格電流であり、ImaxはパワーMOSFET15における発熱と放熱のバランスがとれた熱平衡状態で流すことが可能な平衡時限界電流である。この平衡時限界電流Imaxよりも高いレベルの電流を流す場合には、過度熱抵抗領域となり、電流レベルと自己破壊までの通電時間tとが略反比例関係となる。なお、自己破壊特性曲線L4は例えば実験的に求めることができる。
【0051】
本実施形態では、図5に示すように、上記収束曲線L3が自己破壊特性曲線L4よりも低いレベル領域内において当該自己破壊特性曲線L4にほぼ平行な曲線になるように、RC並列回路12の各回路定数(第1抵抗60及び第2抵抗64の抵抗値r,R、コンデンサ62の容量C)が調整されている。また、上記電流Io2をパワーMOSFET15の定格電流Istdにほぼ一致させている。ここで、第1抵抗60及び第2抵抗64は、通電開始当初において上記電流Io1を設定し、上記自己破壊特性曲線L4を超えないようにする役割を果たす。
なお、上記自己破壊特性曲線L4は、パワーMOSFET15の構成や製造ばらつき等によって異なるが、外付けされたRC並列回路12の回路定数(r,C,R)を調整することによって、保護対象となる各パワーMOSFETの自己破壊特性曲線に応じた収束曲線を形成することができる。
【0052】
また、図5で一点鎖線で示した曲線は、例えばランプやモータなどの負荷50の突入電流特性について、その負荷50に流れる負荷電流レベルと、その通電時間との関係を示した突入電流特性曲線L5である。つまり、電流異常が発生しない状態において、負荷50への通電を開始してから定常状態になるまで負荷電流レベルの経時的変化を示している。なお、この突入電流特性曲線L5も例えば実験的に求めることができる。そして、上記収束曲線L3が、この突入電流特性曲線L5よりも高いレベル領域内に位置するように、RC並列回路12の各回路定数(第1抵抗60及び第2抵抗64の抵抗値r,R、コンデンサ62の容量C)が調整されている。
【0053】
このような構成であれば、例えば短絡異常や過電流異常などの電流異常が発生した場合、各異常電流レベルに応じた適切な通電時間(t1,t2)で自己復帰不能な遮断動作を実行させて、パワーMOSFET15を自己破壊から確実に保護することができる。しかも、負荷50への通電開始当初に流れる突入電流に対して異常検出してパワーMOSFET15に遮断動作させることも防止できる。
【0054】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
(1)上記各実施形態では、閾値電圧を付与する定電圧手段として、ツェナーダイオード34を用いた構成としたが、これに限らず、ダイオード接続したFETを用いた構成であってもよい。
【0055】
(2)上記各実施形態では、異常信号S2を受けてパワーMOSFET15に遮断動作させる保護用論理回路40を、電力供給制御装置10内に設けた構成としたが、これに限らず、電力供給制御装置10から外部に異常信号S2を出力し、外部に設けた保護回路によってパワーMOSFET15に遮断動作させる構成であってもよい。
【0056】
(3)上記各実施形態では、コンパレータ32は外部端子P4の電圧が閾値電圧Vrを上回ったときにハイレベルの異常信号S2を出力する正論理回路としたが、ローレベルの異常信号S2を出力する負論理回路で構成しても勿論よい。
【0057】
(4)上記実施形態1について、実施形態2と同様に、収束曲線L1を負荷50の突入電流特性曲線L5よりも高いレベル領域内に位置するようにして、突入電流に対する異常検出を回避する構成としてもよい。
【0058】
(5)上記実施形態2に対して、収束曲線L2を突入電流特性曲線L5よりも高いレベル領域内において当該突入電流特性曲線L5に沿った曲線であって、他の特性曲線(上記発煙特性曲線L2や上記自己破壊特性曲線L4以外の特性曲線)よりも低いレベル領域内に位置する曲線になるようにRC回路12の回路定数を設定する構成であってもよい。
【0059】
(6)上記実施形態では、第2抵抗64を、第1抵抗60の抵抗値とほぼ同じものとしたが、これに限らず、第1抵抗60の抵抗値よりも大きいものや小さいものであってもよい。具体的には、例えば第1抵抗60と第2抵抗64の抵抗値の比を、1対4にする構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施形態1の電力供給制御装置の全体構成を例示するブロック図
【図2】図1の電力供給制御装置の過電流検知回路(異常検出回路)の構成を主として例示する回路図
【図3】収束曲線と発煙特性曲線とを示したグラフ
【図4】保護回路を概念的に例示するブロック図
【図5】実施形態2の収束曲線と自己破壊特性曲線と突入電流特性曲線を示したグラフ
【符号の説明】
【0061】
10…電力供給制御装置
11…半導体スイッチ素子
12…RC並列回路(変換回路)
13…過電流検知回路(異常検出回路)
15…パワーMOSFET(パワーFET)
16…センスMOSFET(センスFET)
40…保護用論理回路(保護回路)
51…配線(外部回路)
60…第1抵抗(第1抵抗素子)
62…コンデンサ
64…第2抵抗(第2抵抗素子)
L1,L3…収束曲線(関係曲線)
L2…発煙特性曲線
L4…自己破壊特性曲線
L5…突入電流特性曲線
P4…外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーFETを用いて電力供給制御を行う電力供給制御装置であって、
前記パワーFETと、
前記パワーFETの電流量に応じたセンス電流が流れるセンスFETと、
前記センス電流を電圧に変換する変換回路と、
前記変換回路の端子電圧と、閾値電圧との比較に基づき異常信号を出力する異常検出回路と、を備え、
前記変換回路は、前記センス電流の電流経路に対して直列接続された第1抵抗素子及びコンデンサと、これらの第1抵抗素子及びコンデンサに対して並列接続される第2抵抗素子と、を有して構成されていることを特徴とする電力供給制御装置。
【請求項2】
前記第2抵抗素子は、前記第1抵抗素子よりも抵抗値が大きいことを特徴とする請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の発煙特性曲線よりも下の領域において当該発煙特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETの自己破壊特性曲線よりも下の領域において当該自己破壊特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項5】
前記センス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の突入電流特性曲線よりも上の領域に位置するよう前記回路定数が設定されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の電力供給制御装置。
【請求項6】
前記変換回路は、その端子電圧が前記閾値電圧に達するまでのセンス電流−通電時間の関係曲線が、前記パワーFETに連なる外部回路の突入電流特性曲線よりも上の領域において当該突入電流特性曲線に沿った曲線になるよう回路定数が設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項7】
前記パワーFET、前記センスFET及び前記異常検出回路は、ワンチップ化された、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された半導体スイッチ素子とされ、
前記変換回路は、前記半導体スイッチ素子の外部に設けられるとともに、当該半導体スイッチの外部端子を介して前記センス電流を受けることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電力供給制御装置。
【請求項8】
前記異常検出回路から異常信号が出力されたことを条件に、前記パワーFETに自己復帰不能な遮断動作をさせる保護回路を備えていることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれかに記載の電力供給制御装置。
【請求項9】
前記パワーFET、前記センスFET、前記異常検出回路及び前記保護回路は、ワンチップ化された、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された半導体スイッチ素子とされ、
前記変換回路は、前記半導体スイッチ素子の外部に設けられていることを特徴とする請求項8に記載の電力供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−19728(P2007−19728A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−197626(P2005−197626)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】