説明

アルミニウム系合金配線回路の形成方法及び表示デバイス素子構造の形成方法

【課題】 アルミニウム系合金を配線材料として用い、アルミニウム系合金配線回路を形成する技術において、その工程数を大幅に減少し、効率的な素子の製造を可能とする技術を提案する。
【解決手段】
本発明は、アルミニウム系合金により配線回路を形成する方法であって、レジスト層が積層されたアルミニウム系合金膜に対して、レジスト層の現像処理とアルミニウム系合金膜のエッチング処理とを、現像液により同時に行うことを特徴とする。このアルミニウム系合金は、現像液によるエッチングレートが5Å/秒〜40Å/秒であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイなどの表示デバイスを構成する素子の製造技術に関し、特に、アルミニウム系合金配線回路の形成技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイなどの表示装置の開発は目覚ましく進行しており、この液晶ディスプレイの表示装置としては、例えば薄膜トランジスター(Thin Film Transistor、以下、TFTと略称する)を用いた素子が多用されている。そして、このTFTを構成する配線材料として、アルミニウム(以下、場合によりAlと略す)系合金が用いられている。
【0003】
このアルミニウム系合金を配線材料として用いる場合、現状、次のような配線回路形成が行われている。まず、スパッタリング法などによりAl系合金膜を基板上に成膜(1)し、そのAl系合金膜にレジストを塗布(2)し、プリベーキング処理(3)を行った後、回路パターンフィルムを配置して露光(4)をし、現像(5)、洗浄処理(6)を行う。そして、ポストベーキング処理(7)を行い、回路パターン形成用にエッチングされたレジストの検査(8)を行う。続いて、Al系合金膜のエッチング処理(9)をして洗浄(10)し、レジストの剥離(11)を行い、再度、洗浄処理(12)を行う。このようにしてAl系合金膜により配線回路を形成し、その配線回路の仕上がり状態を検査(13)する(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】S.M.ジィー著、訳/南日康夫、川辺光央、長谷川文夫、「半導体デバイス−基礎理論とプロセス技術」第2版、産業図書
【0004】
このアルミニウム系合金を配線材料として用いたアルミニウム系合金配線回路の従来の形成方法では、検査工程を含めると、基本的には13工程を必要とする。このようにアルミニウム系合金配線回路の形成だけに多工程を必要とすることは、TFTなどの素子の効率的な製造の障害に繋がり、製造設備や製造のコスト増加を招く。さらには、素子の製造歩留りを低下させる要因も多くするものとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を背景になされたものであり、アルミニウム系合金を配線材料として用い、アルミニウム系合金配線回路を形成する技術において、その工程数を大幅に減少し、効率的な素子の製造を可能とする技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、本発明は、アルミニウム系合金により配線回路を形成する方法であって、レジスト層が積層されたアルミニウム系合金膜に対して、レジスト層の現像処理とアルミニウム系合金膜のエッチング処理とを、現像液により同時に行うことを特徴とするものとした。
【0007】
本発明のアルミニウム系合金は、現像液によるエッチングレートが5Å/秒〜40Å/秒であることが好ましい。
【0008】
また、本発明のアルミニウム系合金は0.1at%〜8.0at%のニッケルを含むことが好ましい。
【0009】
そして、本発明のアルミニウム系合金が、0.05at%〜1.0at%のボロンを含むことが好ましい。
【0010】
さらに、本発明に係るアルミニウム系合金配線回路の形成方法では、現像液がTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)を含有する液であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、アルミニウム系合金配線回路と透明電極との直接接合部を有する表示デバイス素子を形成する場合、A:アルミニウム系合金膜を形成する成膜工程と、B:前記アルミニウム系合金膜上にレジスト層を配置し、配線パターンの露光処理を行う露光工程と、C:現像液により、レジスト層の配線回路パターンの現像処理とアルミニウム系合金配線回路の形成のためのエッチング処理とを同時に行うアルミニウム系合金配線回路形成工程と、D:アルミニウム系合金配線回路上のレジスト層を除去する剥離工程と、E:該アルミニウム系合金配線回路と透明電極とが直接接合される接合工程と、を含む表示デバイス素子構造の形成方法とした。
【0012】
本発明の表示デバイス素子構造の形成方法では、F:アルミニウム系合金配線回路上に絶縁層を形成し、該絶縁層にコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程と、G:コンタクトホール上に透明電極を形成し、コンタクトホール内でアルミニウム系合金配線回路と透明電極とを直接接合させる素子構造形成工程と、を含むことができる。
【0013】
本発明に係る表示デバイス素子構造の形成方法では、透明電極がIn、Sn、Znのいずれかを含有する透明導電膜であることが好ましい。
【0014】
本発明の表示デバイス素子構造の形成方法におけるAl系合金は、現像液によるエッチングレートが5Å/秒〜40Å/秒であることが好ましく、0.1at%〜8.0at%のニッケルを含むことが好ましく、0.05at%〜1.0at%のボロンを含むことが好ましい。
【0015】
そして、本発明の表示デバイス素子構造の形成方法における成膜工程においては、スパッタリング法による場合、0.1at%〜8.0at%のニッケルを含むアルミニウム系合金ターゲットを用いることが好ましい。
【0016】
そしてさらに、本発明は、上記した本発明の表示デバイス素子構造の形成方法により製造された表示デバイス素子に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、TFTなどの表示デバイス素子の形成を効率よく製造できる。より具体的には、アルミニウム系合金により配線回路を形成する場合、従来では13工程必要であったものを8工程にまで減少させることができるので、製造設備コストや素子の製造コストを抑制することができ、工程に伴う製造歩留まりの低下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明における最良の実施形態について説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではない。
【0019】
Al系合金の組成:本発明におけるAl系合金は、現像液によるエッチングレートが5Å/秒〜40Å/秒であることが好ましい。本発明では、現像液によりAl系合金膜をエッチングするものであるから、現像液に対して所定のエッチング速度で溶解するAl系合金であることが好ましいからである。このエッチングレートが5Å/秒未満であると、配線回路の形成に非常に長時間を要するため実用的ではない。一方、40Å/秒を超えるエッチング速度の場合は、配線回路のサイドエッチングが進行し過ぎる傾向となり、エッチング処理の制御が困難となる。本発明では、現像液によりAl系合金膜のエッチングを行うものであるため、現像液により溶解できるAl系合金であれば、どのような現像液とどのような組成のAl系合金とを組み合わせるかは特に制限はない。
【0020】
現像液によるAl系合金の溶解現象は、Alの酸化還元電位より貴な酸化還元電位を有する金属がAlに添加され、その分極状態が大きな場合、現像液が電解液の役割をすることになり、Al系合金中で電池反応を起こし、Al系合金の溶解が生じるのである。つまり、Alに添加された貴な金属の量が多いほど、現像液へのエッチングレート(溶解速度)が大きくなる傾向となる。また、現像液は、通常、処理時の液温が高いほど、Al系合金を溶解し易くなる傾向があるため、現像液の種類、液条件に合わせて、適用するAl系合金を決定することが好ましい。
【0021】
また、本発明のAl系合金は、ニッケル(Ni)を0.1〜8.0at%含有されていることが好ましい。Ni含有量が0.1at%未満だと現像液におけるエッチングレートが遅くなり、現像・エッチング工程でAl系合金膜のエッチング除去が十分にできない傾向となる。Niが0.1at%以上であれば、現像液によるエッチングでAl系合金配線回路の形成が可能となり、0.5at%以上であればさらに好ましい。Ni含有量が0.5at%以上であれば透明電極との直接接合特性が確実に確保できるようになるからである。一方、Ni含有量が8.0at%を超えると、現像・エッチング工程で、Al合金膜が除去されて露出したガラス基板表面に曇りが発生する傾向があり好ましくない。Niを含有したAl系合金は、貴な電極電位となり、アルカリ性の現像液に接触した際に、Al系合金自体の電池反応が生じ、Al系合金のエッチングが進行し易くなる。Niを含有することで、透明電極との直接接合特性も良好となる。特に、Ni含有量が4.0at%〜6.0at%であると、高耐熱性と低抵抗性とを兼ね備えたAl系合金配線を形成でき好ましいものである。
【0022】
そして、本発明におけるAl系合金は、0.05〜1.0%のボロン(B)を含むようにすると、n−Siなどの半導体層との直接接合が可能となる。特に、B含有量が0.2at%〜0.8at%であると、高耐熱性と低抵抗性とを兼ね備えたAl系合金配線を形成でき好ましく、さらに、上記したNiとBとを含有し、残部がAlである3元系Al系合金が最も望ましい。尚、本発明のAl系合金は、現像液によりエッチングが可能であればその組成は特に制限されないが、Al自体は75at%以上含有していることが望ましい。
【0023】
Al系合金膜の成膜工程:本発明のAl系合金膜の成膜は、スパッタリング法、CVD法、印刷法などにより基板上にAl系合金膜を形成できる方法であれば制限はないが、特にスパッタリング法が好ましい。例えば、スパッタリング法で行う場合は、基板過熱温度室温(30℃)〜200℃、DC3〜30W/cm、スパッタ圧0.25〜0.6Pa、膜厚500〜5000Åの条件が適用できる。尚、本発明のAl系合金膜では、本発明の効果を奏する限り、成膜時に混入するスパッタリングガス成分などの不可避混入物の存在を妨げるものではない。
【0024】
スパッタリング法により成膜工程を行う際に用いるAl系合金ターゲットは、アルミニウムに各種金属を混合して、溶解鋳造することにより製造したものを用いることができる。また、粉末成型法、スプレーフォーミング法などの製法により得られたAl系合金ターゲットも使用できる。Al系合金膜の組成は、スパッタリング時の成膜条件に多少左右されることもあるが、ターゲット組成とほぼ同じ組成のAl系合金膜を容易に形成できる。
【0025】
レジスト塗布工程:TFTなどの素子の製造において使用されているレジストが適用でき、その塗布条件も公知のものを適用できる。具体的には、例えば、ノボラック樹脂を含有するレジストを用い、スピンコーター3000rpmでレジスト厚さ1.0〜1.5μmとすることができる。
【0026】
プリベーキング処理工程:ホットプレートを用い、100〜120℃の温度で、30秒間〜5分間行うことができる。
【0027】
露光工程:TFTなどの素子の製造において知られている一般的な露光条件が適用できる。具体的には、例えば、紫外線露光量は延べ積算露光量を15〜100mJ/cmとすることができる。回路パターンを形成するマスクには、Crフォトマスクを使用することができる。
【0028】
現像・エッチング工程:本発明においては、現像液については特に制限はないが、リン酸水素二ナトリウム、m−珪酸ナトリウム、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などを含有するものが好ましい。特に、TMAHが好ましい。TMAHを用いる場合には、TMAH濃度が2.0〜3.0wt%が適用できる。現像液の液温は、レジストのパターニング性に大きく影響を与えるため、20〜40℃で行うことが可能である。そのため、Al系合金のエッチングレートもこの現像液の液温に依存することになる。現像液の液温が20℃未満であると、レジストへの露光量を増加させる必要が生じ、実用的でない。一方、40℃超える液温であると、TMAH濃度の調整が難しくなり、現像液のランニング特性が悪くなる傾向となる。現像液はパドル法、DIP(浸漬)法、シャワー法などを適用して、現像・エッチング処理することができる。特にシャワー法が望ましい。シャワー圧力はより高い方が望ましいが、0.2〜1.0MPaで行うことができる。
【0029】
この現像・エッチング工程における処理は、現像液による、レジスト層の現像処理とAl系合金膜のエッチング処理とが完了するまで行えばよい。つまり、レジスト層の現像処理がされ、レジスト層が除去された部分に露出するAl系合金膜が現像液によりエッチングされて、上部にレジスト層を有した状態のAl系合金配線回路が形成されるまで、現像液により処理すればよい。尚、この現像・エッチング工程において、レジスト層の現像処理のみを行うようにすると、従来の方法と同様となる。
【0030】
レジスト剥離工程:レジストの剥離液は特に限定されないが、水系剥離液、非水系剥離液のいずれも適用することができる。水系剥離液とは水を含む溶液からなるもので、水に有機アミン類やグリコールなどを含有したものがある。非水系剥離液とは水を含まない溶液からなるもので、ジメチルスルホキシド、アセトンなどの極性溶剤と、アルカノールアミン、2−アミノエタノールなどの有機アミン類との、いずれかあるいは両方を含有するものがある。より好ましくは、水系剥離液である。更に好ましくは、グリコール、有機アミン類を含有した水系剥離液で、有機アミン類を含有した水系剥離液が最も好ましい。液温は40〜80℃、剥離時間は1分間〜10分間の条件とすることができる。剥離処理の方法は、DIP(浸漬)法、シャワー法を適用できるが、好ましくはシャワー法である。
【0031】
洗浄工程:レジスト剥離後の洗浄処理は、TFTなどの素子の製造において知られている一般的な洗浄条件が適用できる。具体的には、例えばアルコール洗浄又は超純水洗浄を適用できる。洗浄方法はDIP(浸漬)法、シャワー法があるが、好ましくはシャワー法である。洗浄時間は1分間〜10分間に設定することができる。洗浄時間が長い方が、Al系合金膜がエッチングされて露出したガラス基板表面の曇りを確実に除去できる。
【0032】
本発明によれば、従来の13工程を必要としたAl系合金配線回路の形成方法と比較すると、Al系合金膜の成膜工程(1)、レジスト塗布工程(2)、プリベーキング処理工程(3)、露光工程(4)、現像・エッチング工程(5)、レジスト剥離工程(6)、洗浄処理(7)、検査(8)の8工程でAl系合金配線を形成することができる。
【0033】
本発明の表示デバイス素子構造の形成方法においては、上述した各工程条件に加え、次のような工程を備えるものである。
【0034】
透明電極の接合工程:Al系合金配線回路と直接接合する透明電極は、In、Sn、Znのいずれかを含有する透明導電膜であることが好ましい。いわゆるITO(Indium Tin Oxide)或いはIZO(Indium Zinc Oxide)などの透明電極膜が適用できる。透明電極の成膜条件としては、ITOの場合、ITOターゲット(組成In−10wt%SnO)を用いて、スパッタリング条件を基板温度200〜300℃、投入電力1.0〜3.0Watt/cm、アルゴンガス流量80ccm、酸素ガス流量1.5〜3.1ccm、圧力0.3〜0.4Pa)とすると、結晶化したITO膜を形成できる。また、基板温度50〜150℃、投入電力1.0〜3.0Watt/cm、酸素ガス流量0.3〜1.1ccm、圧力0.3〜0.4Paとすると、アモルファス化(非晶質)ITO膜を形成できる。アモルファス化(非晶質)ITO膜を成膜する場合、ArガスにHOを添加してスパッタリングを行っても良い。
【0035】
絶縁層の形成:絶縁層はSiNxで厚み2000Å〜5000Åとすることができる。この絶縁層は、スパッタリング法により、投入電力RF1.5〜6.2Watt/cm、アルゴンガス流量60〜200ccm、窒素ガス流量5〜10ccm、圧力0.3〜0.6Pa、基板温度200〜400℃の条件により成膜することができる。
【0036】
コンタクトホール形成工程:絶縁層にコンタクトホールを形成する場合、
CFまたはSFのドライエッチングガスを用いることが好ましい。コンタクトホール形成条件としては、CFガスの場合、CFガス流量35〜150ccm、酸素ガス流量0〜30ccm、圧力2.0〜10Pa、出力75〜200W/φ200mmであり、SFガスの場合、SFガス流量25〜125ccm、酸素ガス流量0〜30ccm、圧力2.0〜10Pa、出力50〜180W/φ200mmとすることができる。上記した剥離液によりレジストを剥離することが好ましい。
【0037】
上記した本発明の表示デバイス素子構造の形成方法によれば、レジストのポストベーキング処理、Al系合金膜のみのエッチング処理を省略できるため、従来に比べ効率的な表示デバイス素子の製造が可能となる。本発明の表示デバイス素子構造の形成方法は、液晶ディスプレイの製造に関してのみ適用されるものでなく、いわゆる半導体素子やMEMS(Micro Electro Mechanical System)などの製造プロセスに応用可能なものである。
【実施例1】
【0038】
以下に本発明の実施例について説明する。この実施例1では、表1に示す各組成のAl系合金膜を成膜して、所定パターンの配線回路を形成した。成膜条件、配線回路の形成条件は次のようにした。
【0039】
まず、Al系合金膜の成膜について説明する。成膜は、スパッタリング法により行った。その際に使用したAl系合金ターゲットは、アルミニウムに各種金属を混合して、真空中で溶解攪拌した後、不活性ガス雰囲気中で鋳造した後、得られたインゴットを圧延、成型加工をし、スパッタに供する表面を平面加工して製造したものを用いた。スパッタリング条件は、基板加熱温度50℃、投入DC電力1kW(3.1W/cm)、アルゴンガス流量100ccm、アルゴン圧力0.5Paとして、マグネトロン・スパッタリング装置(MSL−464:トッキ(株)社製)により、厚み2000ÅのAl系合金膜を、ガラス基板(#1737 未研磨無アルカリガラス 0.7mm厚:コーニング社製)上に形成した。
【0040】
そして、Al系合金膜表面にレジスト(TFR−970:東京応化工業(株)社製/塗布条件:スピンコーター3000rpm、ベーキング後レジスト厚1.4μm目標)を被覆し、プリベーキング処理(ホットプレート110℃、1.5分間)を行った。
【0041】
そして、10μm、20μm、50μm、100μmの配線幅の回路パターンを形成するためのCrマスクパターンフィルムを用い、紫外線により25mJ/cmの露光を行った。
【0042】
その後、TMAH濃度が2.38wt%の現像液(液温23℃)を用い、シャワー圧0.3MPa、処理時間5分間として、現像・エッチング処理を行った。
【0043】
続いて、モノエタノールアミンとジエチルヒドロキシアミン、その他添加剤及び水からなる、有機アミン類を含有した水系剥離液(TST−AQ3:東京応化社製)を用い、液温40℃で、シャワー圧0.3MPa、処理時間5分間として、レジスト剥離処理を行った。
【0044】
レジスト剥離処理後、イソプロピルアルコール液にて洗浄(シャワー圧0.3MPa、処理時間5分間)て、さらに超純水で洗浄(シャワー圧0.3MPa、処理時間5分間)した。
【0045】
上記のようにして形成した各配線回路について、サイドエッチング特性(所望の配線幅にエッチングがされているか)と配線回路の仕上がり状態を確認した。また、各Al系合金膜のITO接合特性も調査した。各評価方法の詳細を以下に説明する。
【0046】
サイドエッチング特性:この特性は、形成したAl系合金配線の配線幅と、Crマスクの配線幅とを測定し、その線幅を比較することによって行った。配線幅は段差計(P−15:KLA Tencor社製)を用いて測定した。そして、Al系合金配線の配線幅値と、Crマスクの配線幅値とを比較して、マスクの配線幅に対し±3%以内のAl系合金配線の配線幅値を評価◎、±6%以内のものを評価○、±10%以内のものを評価△、それ以外の線幅のものを評価×とした。
【0047】
配線回路の仕上がり状態:この配線回路の仕上がりに関しては、光学顕微鏡で観察したガラス基板表面に発生していた曇り程度により判断した。そして、曇り無し(無)、薄く曇りが確認されたもの(少)、曇りが確認されたもの(中)、ひどく曇った状態のもの(多)の4段階に評価付けした。尚、この配線回路の仕上がり状態の確認は、現像・エッチング処理直後のガラス表面を観察することにより行った。
【0048】
ITO接合性:ITO接合性は、図1の概略斜視図に示すようにガラス基板上にITO(In−10wt%SnO)電極層(1000Å厚、回路幅10μm)を形成し、その上に各組成膜層(2000Å厚、回路幅10μm)をクロスするように形成した試験サンプル(ケルビン素子)を用いて評価した。
【0049】
この試験サンプルの作製は、まず、ガラス基板上に、表1に記載の各組成のAl系合金ターゲットを用い、上記スパッタリング条件にて、厚み2000ÅのAl系合金膜を形成した。このときのスパッタリング時の基板温度については、100℃にした。そして、各Al系合金膜表面にレジスト(TFR−970:東京応化工業(株)社製)を被覆し、50μm幅回路形成用パターンフィルムを配置して露光処理をし、濃度2.38%、液温23℃のTMAH液で現像・エッチング処理をした。その後、有機アミン類を含有した水系剥離液(TST−AQ3:東京応化社製)によりレジストの除去を行って、50μm幅のAl系合金配線回路を形成した。
【0050】
そして、50μm幅のAl系合金配線回路を形成した基板を、純水洗浄、乾燥処理を行い、その表面にSiNxの絶縁層(厚み4200Å)を形成した。この絶縁層の成膜は、スパッタリング装置を用い、投入電力RF3.0Watt/cm、アルゴンガス流量90sccm、窒素ガス流量10sccm、圧力0.5Pa、基板温度300℃のスパッタ条件により行った。
【0051】
続いて、絶縁層表面にレジスト(TFR−970:東京応化工業(株)社製)を被覆し、10μm×10μm角のコンタクトホール開口用パターンフィルムを配置して露光処理をし、TMAH現像液により現像処理をした。そして、CFのドライエッチングガスを用いて、コンタクトホールを形成した。コンタクトホール形成条件は、CFガス流量50sccm、酸素ガス流量5sccm、圧力4.0Pa、出力150Wとした。
【0052】
その後、上記した有機アミン類を含有した水系剥離液(TST−AQ3:東京応化社製)によりレジストの剥離処理を行った。そして、イソプロピルアルコールを用いて残存剥離液を除去した後、水洗、乾燥処理を行った。このレジストの剥離処理が終了した各サンプルに対し、ITOターゲット(組成In−10wt%SnO)を用いて、コンタクトホール内及びその周囲にITOの透明電極層を形成した。透明電極層の形成は、スパッタリング(基板温度70℃、投入電力1.8Watt/cm、アルゴンガス流量80sccm、酸素ガス流量0.7sccm、圧力0.37Pa)を行い、厚み1000ÅのITO膜を形成した。
【0053】
このITO膜表面にレジスト(TFR−970:東京応化工業(株)社製)を被覆し、パターンフィルムを配置して露光処理をし、TMAH現像液で現像処理をし、しゅう酸系混酸エッチング液(関東化学(株)社製:ITO05N)により10μm幅回路の形成を行った。ITO膜回路形成後、有機アミン類を含有した水系剥離液(TST−AQ3:東京応化社製)によりレジストを除去した。
【0054】
以上のような作製方法により得られた各試験サンプルを使って、接合抵抗値を測定した。この接合抵抗値の測定法は、図1に示すような四端子法に基づき、試験サンプルの素子を大気中、250℃、30minのアニール処理後、抵抗値測定を行った。この四端子法では、熱処理後の試験サンプルの端子部分から100μAを通電して、その抵抗を測定した。そして、得られた接合抵抗値によりITO接合特性を次の4段階に評価分けした。接合抵抗値が、10Ω以下の試験サンプルを評価◎、10〜50Ωのものを評価○、50〜200Ωのものを評価△、200Ω以上のもの評価×とした。
【0055】
さらに、本実施例で評価した各Al系合金膜については、それぞれエッチングレートの測定を行った。エッチングレートの測定法は、まず、ガラス基板(#1737 未研磨無アルカリガラス 0.7mm厚:コーニング社製)上に、上記Al系合金膜の成膜条件と同じ条件で、2000Åの成膜を行った。そして、Al系合金膜が成膜されたガラス基板を幅約1cm、長さ約2.5cmの短冊状に、ガラス切りにより切断した。短冊状に切断したサンプルの膜面側の半分をマスキングテープで覆い、その状態で現像液に浸漬して、マスキングされていないAl系合金膜が完全に消失するまでの時間を測定した。予め測定した各サンプル膜厚と、膜の溶解完了時間とからエッチンレートを算出した。また、膜厚測定は、Al系合金膜が成膜されたガラス基板を幅約1.5cm、長さ約3cmの短冊状に、ガラス切りにより切断し、短冊の約半分を耐酸テープによりマスキングをし、その状態でアルミ混酸エッチャント(32℃、10分間)に浸漬して、十分にAl系合金膜をエッチングした。その後耐酸テープを剥ぎ取り、アルコール洗浄、乾燥処理後、短冊表面の段差部を段差計(P−15:KLA Tencor社製)で測定し、膜厚を計測した。尚、現像液は、TMAH濃度が2.38wt%の現像液で液温23℃とした。表1には、そのエッチングレートの測定結果も示す。
【0056】
【表1】

【0057】
また、TMAH濃度が2.38wt%の現像液(液温30℃)により、現像・エッチング処理を行った結果を表2に示す。また、エッチングレートについても、液温30℃にして測定した。その他の成膜条件、配線回路の形成条件、特性評価方法については、表1の場合と同じである。
【0058】
【表2】

【0059】
表1及び表2のサイドエッチング特性の結果より、エッチングレートが5〜40Å/秒の場合において、Al系合金配線回路の形成が良好に行えることが判明した。特にNiを含有したAl系合金での配線回路を形成することが好適であることが確認された。また、エッチングレートに関係なく、ガラス基板上に曇りが確認される場合もあった。TMAH液の液温が高温になると、Al系合金膜のエッチングレートが大きく変化した。尚、ニッケル含有量が8at%を超えた場合、ガラス基板表面に曇りが発生したものと発生しなかったものとが混在しているが、8at%以下のNi含有量であれば曇りの発生が無いことを経験的に確認している。
【実施例2】
【0060】
この実施例2では、上記実施例1におけるAl−8.0atNi、Al−9.0atNi、Al−10.0atNiの3種類のAl系合金について、レジストの剥離液を変更して回路形成を行った結果について説明する。成膜条件、回路形成条件は上記実施例1の場合と基本的に同じで、レジスト剥離液として、モノエタノールアミンとDMSO(ジメチルスルホキシド)とからなる非水系のアミン類剥離液1(ST106:東京応化工業(株)製)と、DMSO(ジメチルスルホキシド:100wt%)からなる極性溶剤である非水系の溶剤剥離液2とを用いた。また、現像液は、TMAH濃度2.38wt%、液温23℃とした。そして、この実施例2での評価は、光学顕微鏡による配線回路の仕上がり状態で、現像エッチング処理後のガラス基板表面の曇り状態と、レジスト剥離処理後のガラス基板表面の曇り状態とを確認した。その結果を表3に示す。
【0061】
【表3】

【0062】
表3の結果より、非水系の溶剤剥離液2では、ガラス基板上の曇りが残存していることが確認された。それに対して、有機アミンを含有する水系或いは非水系剥離液で、ガラス表面の曇りが解消されていることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ITO膜とAl系合金膜とをクロスして積層した試験サンプル概略斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム系合金により配線回路を形成する方法であって、
レジスト層が積層されたアルミニウム系合金膜に対して、レジスト層の現像処理とアルミニウム系合金膜のエッチング処理とを、現像液により同時に行うことを特徴とするアルミニウム系合金配線回路の形成方法。
【請求項2】
アルミニウム系合金は、現像液によるエッチングレートが5Å/秒〜40Å/秒である請求項1記載のアルミニウム系合金配線回路の形成方法。
【請求項3】
アルミニウム系合金は、0.1at%〜8.0at%のニッケルを含む請求項1または請求項2に記載のアルミニウム系合金配線回路の形成方法。
【請求項4】
アルミニウム系合金は、0.05at%〜1.0at%のボロンを含む請求項1〜請求項3いずれかに記載のアルミニウム系合金配線回路の形成方法。
【請求項5】
現像液がTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)を含有する液である請求項1〜請求項4いずれかに記載のアルミニウム系合金配線回路の形成方法。
【請求項6】
アルミニウム系合金配線回路と透明電極との直接接合部を有する表示デバイス素子構造の形成方法であって、下記A〜E工程を含むことを特徴とする表示デバイス素子構造の形成方法。
A:アルミニウム系合金膜を形成する成膜工程。
B:前記アルミニウム系合金膜上にレジスト層を配置し、配線パターンの露光処理を行う露光工程。
C:現像液により、レジスト層の配線回路パターンの現像処理とアルミニウム系合金配線回路の形成のためのエッチング処理とを同時に行うアルミニウム系合金配線回路形成工程。
D:アルミニウム系合金配線回路上のレジスト層を除去する剥離工程。
E:該アルミニウム系合金配線回路と透明電極とが直接接合される接合工程。
【請求項7】
下記F〜G工程を更に含む請求項6に記載の表示デバイス素子構造の形成方法。
F:アルミニウム系合金配線回路上に絶縁層を形成し、該絶縁層にコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程。
G:コンタクトホール上に透明電極を形成し、コンタクトホール内でアルミニウム系合金配線回路と透明電極とを直接接合させる素子構造形成工程。
【請求項8】
透明電極がIn、Sn、Znのいずれかを含有する透明導電膜である請求項6または請求項7記載の表示デバイス素子構造の形成方法。
【請求項9】
請求項6〜請求項8いずれかに記載の表示デバイス素子構造の形成方法により形成されたことを特徴とする表示デバイス素子。
【請求項10】
請求項6〜請求項8いずれかに記載の表示デバイス素子構造の形成方法における成膜工程に用いるアルミニウム系合金ターゲットであって、
0.1at%〜8.0at%のニッケルを含むアルミニウム系合金ターゲット。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−60418(P2008−60418A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236826(P2006−236826)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】