説明

ウェーハ欠陥分類

【課題】半導体処理中のオンザフライ自動検出分類(ADC)システムおよび方法を提供する。
【解決手段】このシステムの一実施形態において、光源、例えば、レーザ(21)が検査を受けるウェーハ(22)の狭い領域を照明する。4つの均等に配置した暗視野検出器、例えば、光電子増倍管またはCCD(26〜29)が、それぞれの視野が重複して検出ゾーンを形成するようにウェーハの縁に載置される。1以上の検出器(26〜29)の方向に散乱された光が集光され、アナライザモジュール(34)に伝送される電気信号に変換される。アナライザモジュール(34)は、ウェーハにある欠陥を検出し、それらを異なる欠陥タイプに分類するように作用する。任意に、システムは、暗視野検出器も含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造中および/または製造後、ウェーハの欠陥を検出および分類する一般的な分野に関する。
【背景技術】
【0002】
公知のように、ウェーハを別個のダイに分割、カプセル化した後、チップの形態で市場に出す前にウェーハの欠陥を検出可能にする技術の開発に、学界および産業界では多大な努力が注力されている。特に、欠陥ウェーハを廃棄することにより、結果的に生産ラインから供給される不良のないチップの占める割合が高くなるという点で、予備欠陥検出を行うと、「歩留り」が高くなる。
【0003】
近年、欠陥を異なる欠陥のタイプに分類するための技術により、欠陥検出が高められてきた。これらの技術により、欠陥ウェーハを識別して歩留りを高めるだけでなく、欠陥の原因に関する何らかの情報を与えることができる。その後、生産段階を再構築または修正して、より良好なウェーハを連続して製造できる。
【0004】
欠陥を分類することにより達成される高感度は、図1(10)に概して図示されており、連続して製造した4枚のウェーハ(X)のさまざまなタイプ(Y)の欠陥数(Z)を示す。総カウント数(12)は4枚のウェーハで本質的に同じであるのに対して、欠陥タイプDのカウント数(14)は、時間の経過に伴い急激に増加する。これにより、欠陥の原因が特定され修正される。
【0005】
初期の欠陥分類方法には、人が視覚的にウェーハを検査して欠陥を見つけ、所定の基準に従って欠陥を分類する方法がある。このような手動処理は、明らかに検査担当者ごとに異なる専門技術に依存するため、低速であるだけでなく、誤差が生じやすい。
【0006】
自動欠陥分類(ADC)技術は、手動処理の欠点の多くを解消するものである。したがって、例えば、カリフォルニア州サンタクララのKLAは、Indy2230などの検査・レビューシステムのアドオンオプションとして、Impactと呼ばれるソフトウェアを市場に出している。このソフトウェアでは、CCDカメラでとらえた欠陥像に特定のアルゴリズムを与えて、欠陥の分類を試みるものである。特に、Impactのアルゴリズムは、システムがレビューモードのときのみ動作可能で、システムが検査モードのときは動作不能である。従って、欠陥を分類するために、システムは、最初に検査モードでウェーハ全体を走査して、レビューモードに切り換え検査モード中に特定された疑わしい部位を再度訪れ、欠陥の拡大像と参照部位をえたのち、ADCアルゴリズムを与えるステップを経たときのみ欠陥を分類できる。レビューモードの動作は、「再訪ADC」として業界では一般に公知のものである。また、特に、このシステムは、単一の視点から欠陥の単一の像のみを使用する。
【0007】
CCD像ベースの解析が、手動処理よりも正確かつ再現可能なものである(すなわち、同じウェーハの解析を繰り返すことにより、ほとんど同一の結果が得られる)が、それでもいくつかの重大な欠点、例えば、時間がかかる点などが残る。これに関して、ウェーハ検査に要する時間が長くなれば、製造ラインのスループット全体に悪影響を及ぼすことになることに留意されたい。ウェーハ検査の生産ラインのスループットが過度に遅くなれば、高コストのチップ組立プロセスを考慮すると、多くの場合、コスト面から商業上実用不可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、比較的正確かつ再現性のある欠陥分類を行うと同時に、従来の公知の装置の欠陥分類ステージの持続時間を大幅に短縮するADC技術の提供が当業界において望まれている。この目的を達成するために、本発明において、欠陥分類をウェーハ検査段階に実質的に組み込んで、オンザフライ(on−the−fly)ADCを構成し、すなわち、ウェーハを走査して欠陥を探しながら、ADCが検査される。
【0009】
本願明細書全体を通して、便宜上、「検査」という用語は、基板を走査して基板上に欠陥が存在する疑いのある場所を特定するプロセスを指すのに対して、「レビュー」という用語は、疑いのある場所を再度訪れて、疑いのある場所の欠陥の存在を確認/証明し、欠陥が実際に存在するかを調査するプロセスを指し、これらすべて本質的に公知のものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の開示)
本発明は、ウェーハを照明して、少なくとも2つの検出器により散乱光を集光することにより、ウェーハにある欠陥を検出できるだけでなく、集めた光の特性を解析して欠陥を異なるタイプに分類することもできるという発見に基づくものである。このアプローチにより、「オンザフライ」ADCが達成される。本発明によれば、暗視野タイプの検出器を利用して散乱光が集光される。
【0011】
ウェーハは実質的に鏡のような表面をもつため、照明ビームが被検査ウェーハの不良のない領域上に入射する場合、予想される方向に(スネルの法則に従って)反射される。従って、例えば、入射ビームの角度がウェーハの表面に垂直であれば、散乱光の予想方向もウェーハ表面に垂直である(すなわち、照明ビームと散乱ビーム間の角度は実質的にゼロである)。他の例を挙げると、入射ビームの角度がウェーハの表面に対して45°であれば、散乱光の予想方向は、ウェーハ表面に対して135°である(すなわち、照明ビームと散乱ビーム間の角度は実質的に90°である)。
【0012】
暗視野検出器は、特定の予想方向とは実質的に異なる方向に散乱される光を検出するように配置される。従って、被検査ウェーハの不良のない領域にビームが入射する場合、暗視野検出器は、低エネルギー(少しでも存在するとした場合)を感知する。一方、暗視野検出器により高エネルギーが感知されると、照明ビームは鏡のような表面に入射せずに、所与のタイプの欠陥である不規則な地形に入射していることを表す。明視野検出器では対照的に、減衰エネルギーは、照明ビームが不規則な地形に入射していることを表すのに対し、高エネルギーは、照明ビームが鏡のような表面に入射していないことを表す。
【0013】
暗視野検出器は、欠陥に主に応答する(いわゆる、「明視野検出器」とは異なる)ため、「ノイズ」をフィルタリングして事実上除去し、「信号」(信号は「欠陥」を表す)に応答することから、欠陥検出と分類の全プロセスは、実質的に単純化されるだけでなく、より精度が増す。
【0014】
従って、本発明によれば、被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)方法であって、
(a)少なくとも2つの間隔をおいた検出器を設けるステップと、
(b)ウェーハ上に入射する照明スポットを発生させるために被走査ウェーハを照明するステップと、
(c)少なくとも2つの間隔をおいた検出器により、スポットから散乱された光を集光するステップと、
(d)ウェーハにある欠陥を検出するために集めた光を解析し、欠陥を異なる欠陥タイプに分類するステップとを備えることを特徴とする方法が提供される。
【0015】
本発明の内容において、検出器の場所を指す場合、これは必ずしも検出器のすべての構成要素が所定の位置に配置されることを意味するのではなく、むしろ少なくとも検出器の光感知または集光部分が特定の場所に配置されることを意味する。従って、例えば、一実施形態によれば、光ファイバ束(検出器の一部を形成する)の受光縁は、ウェーハの近端に配置されるのに対して、検出器の部品の残りは、光ファイバ束の反対側の離れた位置にある縁に結合される。
【0016】
一実施形態によれば、照明光は、ウェーハ表面に実質的に垂直な角度でウェーハに入射する。この実施形態によれば、各暗視野検出器の光軸は、被検査ウェーハの表面に対してグレージング角にある。
【0017】
別の実施形態によれば、照明光は、ウェーハ表面に対してグレージング角でウェーハに入射する。
【0018】
一実施形態によれば、上記光検出器は、各検出器が実質的に反対側に配置された別の検出器と対面するように配設される。
【0019】
別の実施形態によれば、上記検出器は実質的に等間隔に配置される。
【0020】
暗視野検出器の数は、特定の用途に応じて異なるものであってよく、例えば、2〜4個である。
【0021】
「集光ステップ」は、必要に応じて、受けた光エネルギーを電気信号に変換することを含むものであってよい。
【0022】
さらなる別の実施形態によれば、少なくとも1つのさらなる明視野検出器が用いられる。この実施形態によれば、少なくとも1つのさらなる明視野検出器を設けるステップがさらに提供され、散乱光は、ステップ(b)に従って上記のさらに少なくとも1つの明視野検出器により集光され、上記ステップ(c)で規定された上記解析が、上記のさらなる少なくとも1つの検出器により集められた散乱光に適用される。
【0023】
上述したような欠陥を分類するための解析は、いわゆる散乱光特性を利用することが好ましい。通常、特性の例は、反射光強度、反射光量、反射光線形性、反射光非対称性であるが、これらに限定されるものではない。特定の反射光特性の特質および利用性を以下により詳細に記載する。
【0024】
通常、分類タイプの例は、小粒子または大粒子(実質的に3次元の欠陥)、小パターンまたは大パターン(実質的に2次元の欠陥)であるが、これらに限定されるものではない。より正確な分類を用いて、欠陥がスクラッチ(大または小)であるかを決定してもよい。未知の欠陥カテゴリーを含む他の欠陥タイプが、必要に応じて適切に使用されてもよいことは言うまでもない。
【0025】
本発明によれば、被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)システムであって、
(a)ウェーハ上に入射する照明スポットを発生させるために被走査ウェーハを照明する光源と、
(b)少なくとも2つの間隔をおいた検出器により、スポットから散乱された光を集光するセンサと、
(c)ウェーハにある欠陥を検出するために集めた光を解析し、欠陥を異なる欠陥タイプに分類するプロセッサとを備えることを特徴とするシステムがさらに提供される。
【0026】
本発明によれば、少なくとも1つのさらなる明視野検出器がさらに設けられ、上記散乱光が、上記の少なくとも1つのさらなる明視野検出器により集光され、上記プロセッサが、上記の少なくとも1つのさらなる明視野検出器により集められる散乱光に上記解析を適用する。
【0027】
さらに、本発明は、被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)システムにおいて、
少なくとも2つの間隔をおいた検出器から、ウェーハから散乱され上記検出器で検出された光を表す信号を受けるステップと、
上記ウェーハにある欠陥を検出するために上記信号を解析し、上記欠陥を異なる欠陥タイプに分類するステップと、
を備えるステップを実行するようにプログラミングされたプロセッサに備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】欠陥分類の利点を示す3次元グラフである。
【図2】本発明の一実施形態によるシステムの略図的ブロック図である。
【図3A】粒子タイプの欠陥の照明に応答して、それぞれ均等に配置された暗視野検出器により検出される場合の光散乱パターンのグラフである。
【図3B】粒子タイプの欠陥の照明に応答して、それぞれ均等に配置された暗視野検出器により検出される場合の光散乱パターンのグラフである。
【図4】パターンタイプの欠陥の照明に応答して、それぞれ均等に配置された暗視野検出器により検出される場合の光反射パターンのグラフである。
【図5】欠陥のピクセルを特定するための一実施形態のグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による一般化欠陥分類解析シーケンスを示すブロック図である。
【図7】本発明の一実施形態によるもので、欠陥分類解析処理において利用する量対強度特性を表すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態によるもので、欠陥分類解析処理において利用する非対称対線形性の特性を表すグラフである。
【図9】本発明の別の実施形態によるシステムの略図的ブロック図である。
【図10】本発明のさらなる別の実施形態によるシステムの略図的ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を理解し、本発明の実施方法を理解するために、添付の図面を参照にしながら、非制限的な例として、好適な実施形態を以下に記載する。
【0030】
(実施形態の詳細な説明)
最初に図2を参照すると、本発明の一実施形態によるシステム(20)の略図的ブロック図が示されている。図示されているように、本質的に公知のX−Yステージ(図示せず)に固定されている被検査ウェーハ(22)の狭い領域が、光源(21)により照明される。光源は、例えば、従来のレーザ源であってよい。入射光ビームは、ウェーハをX方向(矢印23)に継続的に走査する。各走査が終わると、ウェーハは、X−Yステージの制御下でY方向(矢印24)に変位され、全ウェーハが走査されるまでX方向にウェーハが再度走査され、これらはすべて本質的に公知のものである。4つの均等に配置された暗視野検出器26、27、28、29が、それぞれの視野が実質的に重複して検出ゾーンを形成するように、ウェーハの周辺縁に隣接して配置される。検出ゾーンは、ウェーハの照明領域を含み、検出器に対してウェーハがXY運動をするため、ウェーハ全体が検出ゾーンを均等に通過する。
【0031】
検出器26、27、28および/または29(例えば、光電子増倍管やCCD)の1以上の検出器の方向に散乱した任意の入射光が集光され、電気信号に変換されて、以下に動作を詳細に説明するアナライザモジュール34に電気信号が伝送(通常、ディジタル形式で)される。
【0032】
当業者であれば、図2が本発明の多数の可能な実施形態のほんの1つを示すものであることは容易に理解されよう。従って、システムの検出器を考慮する場合、非制限的な例として、図2には4つの均等に配置した暗視野検出器が図示されているが、本発明は、例えば、検出器の数、検出器の場所および/または検出器の種類により制限されるべきものではない。以下、図9および図10にも2つの非制限的な暗視野の例が図示されている。
【0033】
以下に説明するように、検出分類プロセスにおいて使用される本発明の特定の実施形態による、いわゆる散乱光特性を以下に簡潔に記載する。粒子(図3A)タイプの欠陥の照明に応答して、ここで、それぞれ均等に配置された暗視野検出器により検出される場合の光散乱パターンのグラフ図を示す図3A〜Bを参照されたい。図3Aは、ウェーハに付着した粒子タイプの欠陥(32)(明確に示すために拡大して図示)を有するウェーハ(31)を示す。粒子タイプの欠陥は、ウェーハの表面よりも上に盛り上がった特徴をもつ。粒子地形が3次元(3D)であり、その表面が不規則(鏡のような表面ではない)であるため、入射光ビームは、図3Bにおいて明確に示されているように、さまざまな方向に散乱される。図3Bは、線A−Aに沿ったウェーハの略図的断面側面図を示す。このように、粒子(32)に入射する光ビーム(35)は、さまざまな方向(例えば、36(1)、36(2)、36(3)、36(4)、36(5))に反射される。再度図3Aを参照すると、反射光は、4つの均等に配置された検出器((26)、(27)、(28)、(29)―図2を参照)により検出され、各検出器により検出される強度(階調の面からの強度)が、図3Aのそれぞれの3Dグラフ(36)〜(39)に図式で示されている。各グラフは、ピクセルからなるX−Yマトリックスと8ビット階調値で示された検出された強度(Z)を表す。予想通り、欠陥のない平坦な領域(例えば、グラフ36の36’’)で反射された光を受けるピクセルにより感知されたエネルギーと比較すると、粒子(例えば、グラフ36の36’)で反射された光を受ける検出器のピクセルにより、より高いエネルギー(より高い階調値として表される)が感知される。
【0034】
3D粒子からすべての方向に光が散乱されるため、粒子タイプの欠陥は、ほとんどまたはすべての検出器により感知され、高エネルギーレベルとして検出される。それに対して、パターンタイプの欠陥は、被検査ウェーハの表面の上方に実質的に盛り上がっていない。従って、図4に図示されているように、パターンタイプの欠陥は、通常、数個の検出器のみにおいて検出された高エネルギーを生じる傾向がある。従って、例えば、隣接部分(42および43)のパターンと比較すると、欠陥(41)は不規則なパターンを有する。不規則なパターン(41)は、入射ビームにより照明されると、光を方向(46)および(47)に散乱反射する傾斜縁(44)および(45)を有し、検出器(26)および(28)の領域(48)および(49)においてそれぞれ高強度として検出される。
【0035】
図3および図4に図示した特定のパターンおよび粒子の例が制限的なものではないことは言うまでもなく、さらに現実的に予想できる展開では多数の他のものが存在する場合もあるが、これらの例は、一般に、パターンおよび粒子タイプの欠陥の区別を理解するためのものである。
【0036】
上記に説明したように、あるカテゴリーに欠陥を分類するためには、欠陥から発生するピクセルを識別する必要がある。文献上では予備欠陥検出を達成するための技術が知られており、図5を参照して一般的な技術を説明するが、これに制限されるものではない(Alumotの米国特許第5,699,447号を参照)。
【0037】
従って、図5は、欠陥からピクセルを識別するための方法を示すグラフである。図5のグラフは、被検査ウェーハの第1のダイにある(x,y)軸を有するピクセルの階調値を、隣接するダイにある同じ(x,y)軸を有するピクセルの階調値の関数としてプロットして構成されたものである。理想的な場合(欠陥がない場合)では、2つの階調値は等しく、結果的に図5においてすべての点が線(50)上にある。言い換えれば、第1のダイ(横座標)のピクセルの階調値は、隣接するダイ(縦座標)の対応ピクセルの階調値と同一のものである。実際には、図5のグラフにある点は、線(50)の周りに集まり、それらのほとんどは、境界(52)および(53)内に存在する。
【0038】
第1のダイにある欠陥に出会うと、第1のダイにある欠陥領域から発生するピクセルの階調値と、第2のダイにある不良のない領域から発生する対応ピクセルの階調値との間には、大きな差が検出される(例えば、検出の一部を形成するピクセル54、55、56)。
【0039】
図5のグラフ図は、1つの検出器から得られた結果を解析して得たものであることを留意されたい。再度言うが、1つの検出器で欠陥に出会っても、必ずしも、同じ欠陥が残りの検出器で遭遇することを意味するものではない(例えば、2つの検出器のみが欠陥を検出している図4を参照)。
【0040】
再度強調すべきことは、図5の例は、決して制限的なものではなく、疑いのある欠陥を検出するための他の技術も実現可能である。
【0041】
以下の記載により、本発明の一実施形態による欠陥分類に利用される特定の散乱光特性がより容易に理解されよう。すなわち、
・強度:欠陥から発生する(または欠陥から発生する疑いのある)ものとして少なくとも1つの検出器により分類されたすべてのピクセルに関して、その階調値を合計して、全強度値を出す。従って、例えば、第1の検出器において5個のピクセルが欠陥から発生するものとして分類され、さらに第2、第3および第4の検出器においてそれぞれ6個、8個および5個のピクセルが同様に欠陥から発生するものとして分類されると、全強度値は、特定された24個のピクセルの階調値を合計することにより計算される。
・量:少なくとも1つの検出器における欠陥から発生する疑いのあるピクセルの総数。従って、例えば、所与の欠陥が、第1の検出器において10個のピクセル、第2の検出器において15個のピクセル、第3の検出器において17個のピクセルにわたり、第4の検出器にはなければ、量の特性は、10+15+17=42となる。
・線形性:この特性は、各検出器において欠陥ピクセルのアレイがどの程度線形であるかを格付けするものである。従って、欠陥から発生する疑いのあるピクセルがすべて直線上にあれば(所与の検出器において)、線形性の程度は1である。ピクセルのアレイが直線から逸れると、線形性の程度は低減する。
・非対称性:この特性は、半径方向の反対側に配置された検出器対により検出される散乱光の強度を比較することによって、欠陥の対称性の格付けするものである。
【0042】
一般的に、本発明の一実施形態による散乱光特性を記載してきたが、以下、図6および図7を参照して、欠陥分類を実行するための一連のステップについて記載する。
【0043】
欠陥を構成するピクセルを検出した後(例えば、図5の技術を利用して)、ウェーハを検査しながら、特定された特性を利用して欠陥を分類する(すなわち、「オンザフライ」)。
【0044】
ここで、図6を参照すると、欠陥(61)が、その量特性がしきい値Bよりも大きいかまたは小さいかによって、大(62)または小(63)に分類される。この特定の例において、しきい値Bは16に設定される。「大」の欠陥(62)に関して、粒子タイプの欠陥(66)とパターンタイプの欠陥(67)とを区別するために、第1のしきい値T1(65)を用いたさらなる解析ステップが施される。再度言うが、粒子とは実質的に3次元の地形をもつものであるのに対して、パターンとは実質的に2次元の地形をもつものである。ここで、前述した記載をより深く理解するために、量(横座標)対強度(縦座標)の特性のグラフ図を示す図7を参照されたい。パターンと粒子間の区別は、所与の量特性(すなわち、欠陥を構成するピクセル数)に関して、粒子と関連する強度の程度が、パターンと関連する強度の程度よりも一般に高いという観察に基づくものである。これは、粒子が入射光をすべての方向に散乱する傾向をもつ結果、すべての検出器において高い強度が感知されるためである。これに対し、同じ大きさ(すなわち、同じ量の値を有する)のパターンタイプの欠陥は、入射光を特定の方向に散乱する傾向をもつため、検出器の一部のみが高い強度を感知する(例えば、図3A〜B対図4を参照)。従って、所与の欠陥サイズに関して、パターンよりも粒子がより高い強度特性を生じる。
【0045】
この観察を図7に明確に反映させており、「大」の量(すなわち、しきい値B(64)を超える量)の場合、しきい値T1(65)を超える欠陥は粒子として分類されるのに対して、T1を下回る欠陥はパターンとして分類される。従って、例えば、欠陥(71)および(72)は共に、量の程度が同じ30であるが、それぞれの強度値は、2200(しきい値T1よりも下)および6800(しきい値よりも上)である。従って、欠陥(71)はパターンとして分類され、欠陥(72)は粒子として分類される。
【0046】
ここで、図6を再度参照すると、T4(68)により、さらなる微調節ツールが与えられる。従って、T4は、横座標とT1との間(図6においてT4’’で示す)またはT1を超えた位置(図6においてT4’で示す)に配置可能である。最初のオプションでは、T4’’により、スクラッチとパターンが見分けやすくなる。このように、T4’’よりも下の疑いのある欠陥はすべてパターン(図6において70)として分類されるのに対して、T4’’とT1間にあるパターンはすべてさらなる解析にかけられて、パターンとスクラッチとを区別する(以下参照)。このような決定基準は、所与の量に関して、パターンはスクラッチよりも低い強度を発生するものとされるため、それらすべては所与の量に関して低い強度を発生する(すなわち、T4’’よりも下にあるもの)という仮定に基づいたものである。
【0047】
ここで、非対称性と線形性の特性により、パターンをスクラッチタイプの欠陥とパターンタイプの欠陥とにより正確に分類しやすくなる。スクラッチとパターンとを区別する根拠となるものは、スクラッチが線形のものであるのに対して、他のパターンタイプの欠陥は円形のものである点である。線形性と非対称性の基準は、T4’’とT1との間にあるものにのみ適用される。
【0048】
このような一般的な観察を心に留めながら、ここで、スクラッチとパターン間の区別をさらに明確にする図8を参照する。図8の横座標は、線形回帰係数であり、ここで、1は完全線形性を表し、0はランダム散乱を表す。図8のグラフにおいて、非対称性の値は、0〜0.7の範囲のものである。非対称性の値は、以下のアルゴリズムの式により求められる。1−(A+B/C+D)
ここで、A、Bは、第1の対面する検出器対(例えば、図2の27および29)のそれぞれの部分で検出される強度であり、C、Dは、第2の対面する検出対(例えば、図2の26および28)のそれぞれの部分により検出される強度である。
【0049】
従って、例えば、図2において、欠陥(41)が一方の検出器対の方向にのみ光を散乱させ、他方の検出器対の方向に光を実質的に反射しない場合、欠陥(41)は非対称である。従って、A+B/C+Dの比率は小さいもので、最終的な結果である1−(A+B/C+D)は、1に近似するものであることは明らかである。
【0050】
従って、欠陥の特性が非対称性であるほど、非対称の程度は1に近くなる。
【0051】
図8において、領域(81、82、83)は、線形性と非対称性の程度が高いという特徴をもつため、その中にある欠陥は、スクラッチ(図6において69)として分類される。領域(84、85、86)にある欠陥は、線形性が低く、対称性の程度が高いという特徴をもつため、パターン(図6において(70))として分類される。
【0052】
残りの領域(87)、(88)、(89)は、スクラッチまたはパターンの両方にとれるものとして分類される。
【0053】
さまざまな修正を適用してもよいことに留意されたい。従って、非制限的な例として、特定の領域(縦座標の0.2および0.5)と(横座標の0.974および0.982)との間を区別するしきい値は、異なる値に設定されてもよく、同様に、必要に応じて適切に、領域の数を変更してもよい。
【0054】
T4’は、大粒子とスクラッチ間の微調節決定基準として作用する。従って、T4’よりも上にある欠陥はすべて大粒子として区別される(所与の量に関して、非常に高い強度を発生するため)のに対して、T1とT4’間にあるものは、非対称性・線形性の決定段階に送られ、スクラッチ、大粒子または決定不能(すなわち、スクラッチか大粒子のいずれか)として欠陥を分類する。
【0055】
ここで、小欠陥(図6において63)を参照すると、それらの地形が小さいため、大欠陥に用いた強度/量の基準を適用して、3D(粒子)と2D(パターン)の欠陥を区別することは困難である。従って、第2のしきい値T2(73)を用いて、小粒子(74)と小未知物(75)を区別する。前述したように、T2は、特定の用途に応じて経験上決定される。
【0056】
ここで、非対称性の程度に従って小粒子(74)と極小スクラッチ(76)間の区別がなされ、すなわち、対称的な欠陥は小粒子として分類されるのに対して、非対称的な欠陥は極小スクラッチとして分類される。欠陥の寸法が小さいため、極小スクラッチと小粒子間を区別するために線形性の特性の使用は信頼性がないため、用いられない。
【0057】
当業者であれば、特定の用途に応じて、必要であれば適切に、散乱光特性の定義を修正してもよく、1以上の特性の削除および/または他の特性の追加をしてもよいことは容易に理解されよう。同様に、欠陥を分類するための散乱光特性の利用は、図6〜図8を参照して説明した特定の例に限定されるべきものではない。言い換えれば、これらの特性は、必要に応じて適切に、特定の欠陥を分類するために異なる方法で利用されてもよいし、1以上の分類が修正されてもよいし、1以上の分類の削除および/または他の分類の追加をしてもよい。1つの非制限的な修正は、少なくとも1つの明視野検出器(図示せず)を利用することに関する。この特定の実施形態によれば、明視野検出器は、明視野検出器で検出される(および欠陥から発生する疑いのある)ピクセル数を、量の値を出すために暗視野検出器により寄与される場合の対応するピクセル数と共に合計した量の特性にのみ寄与する。従って、量の特性は、すべての暗視野検出器と明視野検出器の欠陥の一部を形成するピクセルの合計からなる。このような特定の実施形態によれば、明視野の利用は、問題となっている欠陥の部分のみで反射されるエネルギーを感知する暗視野検出器とは異なり、明視野検出器は、欠陥の上方に配置されるため、鮮明な欠陥の全体図または少なくともその主要な部分を有することに基づくものである。
【0058】
この特定の例によれば、明視野検出器は他の特性(強度、線形性および非対称性)には寄与しない。
【0059】
別の非制限的な修正を図9を参照して示し、この図9では、図2とは異なり、照明ビーム(90)が90°と実質的に異なる角度αでウェーハに入射する。図10は、照明ビーム(100)が90°と実質的に異なる角度αでウェーハに入射し、2つの暗視野検出器のみが利用されているさらなる別の非制限的な修正を示すものである。一般的に言えば、図6を参照して概して図示され記載されている強度、量、非対称性、線形性の特性の利用は、図9および/または図10の構造にも同様の方法で用いられてよい。しかしながら、これは必須のものではない。
【0060】
請求項にあるステップの順番は、便宜上の理由のみで指定されたものであることを留意されたい。
【0061】
本発明をある程度詳細に記載してきたが、請求の範囲に規定する本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく、さまざまな修正および変更を施してもよいことを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)方法であって、
(a)少なくとも2つの間隔をおいた検出器を設けるステップと、
(b)ウェーハ上に入射する照明スポットを発生させるために被走査ウェーハを照明するステップと、
(c)少なくとも2つの間隔をおいた検出器により、スポットから散乱された光を集光するステップと、
(d)前記ウェーハにある欠陥を検出するために前記集光を解析し、前記欠陥を異なる欠陥のタイプに分類するステップとを備える方法。
【請求項2】
前記ステップ(a)が、少なくとも2つの間隔をおいた暗視野検出器を設けるステップを含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)が、各検出器が実質的に反対側に配置した別の検出器と対面するように配設するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)が、被走査ウェーハの周りに実質的に均等に前記検出器を配設するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(a)が、各検出器の光軸が、被検査ウェーハの表面に対してグレージング角にあるように、前記検出器を配設するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(b)が、前記スポットがウェーハ表面に対してグレージング角でウェーハ上に入射するように、ウェーハを照明するステップを含む請求項2記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのさらなる明視野検出器を設けるステップと、ステップ(b)に従って前記少なくとも1つのさらなる明視野検出器により散乱光を集光するステップと、前記少なくとも1つのさらなる検出器により集光された散乱光に、前記ステップ(c)に規定された前記解析を適用するステップとをさらに含む請求項1記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つのさらなる明視野検出器を設けるステップと、ステップ(b)に従って前記少なくとも1つのさらなる明視野検出器により散乱光を集光するステップと、前記少なくとも1つのさらなる検出器により集光された散乱光に、前記ステップ(c)に規定された前記解析を適用するステップとをさらに含む請求項2記載の方法。
【請求項9】
欠陥を分類するための前記解析ステップが、散乱光特性を利用する請求項2記載の方法。
【請求項10】
散乱光特性を利用する欠陥を分類するための前記解析ステップが、以下の特性、すなわち散乱光強度、散乱光量、散乱光線形性および反射光非対称性の少なくとも1つを含む請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記分類ステップが、以下のタイプ、すなわち小粒子、大粒子と、小パターン、大パターンと、小スクラッチ、大スクラッチとの少なくとも2つを含む請求項1に従った方法。
【請求項12】
前記分類ステップが、以下のタイプ、すなわち小粒子、大粒子と、小パターン、大パターンと、小スクラッチ、大スクラッチとの少なくとも2つを含む請求項2に従った方法。
【請求項13】
被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)システムであって、
(a)ウェーハ上に入射する照明スポットを発生させるために被走査ウェーハを照明する光源と、
(b)少なくとも2つの間隔をおいた検出器により、スポットから散乱される光を集光するセンサと、
(c)前記ウェーハにある欠陥を検出するために前記集光を解析し、前記欠陥を異なる欠陥タイプに分類するプロセッサとを備えるシステム。
【請求項14】
前記少なくとも2つの間隔をおいた検出器が、暗視野タイプのものである請求項13記載のシステム。
【請求項15】
前記検出器が、各検出器が実質的に反対側に配置された別の検出器と対面するように配設される請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記検出器が、被走査表面の周りに実質的に均等に配設される請求項14記載のシステム。
【請求項17】
前記検出器が、各検出器の光軸が被検査ウェーハの表面に対してグレージング角にあるように配設される請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記光源が、前記スポットがウェーハ表面に対してグレージング角でウェーハ上に入射するように、ウェーハを照明する請求項14記載のシステム。
【請求項19】
少なくとも1つのさらなる明視野検出器をさらに備え、前記散乱光が、前記少なくとも1つのさらなる明視野検出器により集光され、前記プロセッサが、前記少なくとも1つのさらなる検出器により集光された散乱光に前記解析を適用する請求項14記載のシステム。
【請求項20】
少なくとも1つのさらなる明視野検出器をさらに備え、前記散乱光が、前記少なくとも1つのさらなる明視野検出器により集光され、前記プロセッサが、前記少なくとも1つのさらなる検出器により集光された散乱光に前記解析を適用する請求項14記載のシステム。
【請求項21】
前記解析に散乱光特性を利用する請求項14記載のシステム。
【請求項22】
前記散乱光特性が、以下の特性、すなわち散乱光強度、散乱光量、散乱光線形性および反射光非対称性の少なくとも1つを含む請求項21記載のシステム。
【請求項23】
前記プロセッサが、以下のタイプ、すなわち小粒子、大粒子と、小パターン、大パターンと、小スクラッチ、大スクラッチとの少なくとも2つを含む請求項14に従ったシステム。
【請求項24】
前記プロセッサが、以下のタイプ、すなわち小粒子、大粒子と、小パターン、大パターンと、小スクラッチ、大スクラッチとの少なくとも2つを含む請求項14記載のシステム。
【請求項25】
被走査ウェーハのオンザフライ自動欠陥分類(ADC)システムにおいて、
少なくとも2つの間隔をおいた検出器から、ウェーハから散乱され前記検出器で検出された光を表す信号を受信するステップと、
前記ウェーハにある欠陥を検出するために前記信号を解析し、前記欠陥を異なる欠陥タイプに分類するステップと、
を備えるステップを実行するようにプログラミングされたプロセッサ。
【請求項26】
前記強度および量の特性が、第1のしきい値(T1)を規定するために利用され、前記プロセッサが、前記欠陥を粒子タイプまたはパターンタイプに分類するために前記T1を利用可能である請求項22記載のシステム。
【請求項27】
前記強度と量の特性が、第2のしきい値(T4)を規定するためにさらに利用され、前記プロセッサが、前記パターン欠陥をパターンタイプの欠陥とスクラッチタイプの欠陥に分類するために前記T4を利用可能である請求項26記載のシステム。
【請求項28】
前記強度および量の特性が、第2のしきい値(T4)を規定するためにさらに利用され、前記プロセッサが、前記粒子欠陥を大粒子タイプまたはスクラッチ/粒子タイプの欠陥に分類するために前記T4を利用可能である請求項26記載のシステム。
【請求項29】
前記プロセッサが、パターンタイプの欠陥をスクラッチタイプの欠陥またはパターンタイプの欠陥に分類するために前記非対称性および線形性の特性を利用し、前記プロセッサが、粒子タイプの欠陥を粒子タイプまたはスクラッチタイプの欠陥に分類するために前記非対称性および線形性の特性をさらに利用する請求項22記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−19224(P2012−19224A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184443(P2011−184443)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【分割の表示】特願2000−556234(P2000−556234)の分割
【原出願日】平成11年6月9日(1999.6.9)
【出願人】(390040660)アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド (1,346)
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【Fターム(参考)】