説明

オゾン水処理方法及びオゾン水処理装置

【課題】被処理物の処理を悪影響がなく、オゾン気泡が容易に脱気しないことにより、充分な処理効果を得ることのできるオゾン水処理方法及びオゾン水処理装置を提供する。
【解決手段】添加物を含めない方法によって生成された超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水を用いて被処理物を処理するオゾン水処理方法及びオゾン水処理装置で、特に、超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水を加熱して被処理物の処理効率を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はオゾン水を用いて、例えば半導体ウエハのような半導体基板、ガラス基板、電子回路モジュール、液晶ディスプレイ等の基板のような被処理物を処理するためのオゾン水処理方法及びオゾン水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、半導体基板の洗浄に用いるオゾン水を、オゾン発生器で発生させたオゾン(オゾンガス)をエゼクタを介して被処理水に混入することによって生成する技術(以下、適宜「第1の先行技術」という)を開示する。さらに特許文献2は、エタノールやイソプロピルアルコールのような有機溶剤を添加したオゾン水を用いた半導体基板の洗浄方法(以下、適宜「第2の先行技術」という)を開示する。有機溶剤を添加するのは、洗浄槽のような開口部の大きな容器に貯留した場合は2〜5分と言われているオゾン水中のオゾン半減期を延長させるためである。他方において第3の先行技術は、必要以上の有機溶剤の添加は残留する炭素成分による基板品質の劣化を招くのでそれを防ぐために添加量の調整を求めている。特許文献3は、オゾン含有純水をほぼ22℃〜45℃程度の温度とほぼ30ppm以上の溶存オゾン濃度とを含む条件の下でフォトレジスト膜を除去しようとする技術(以下、適宜「第3の先行技術」という)を開示する。オゾン含有純水は、超純水の中に1μm程度の微小孔を有する多孔性チューブを介してオゾンを拡散するようになっている。また、第3の先行技術に係る上記温度条件は、加熱した純水にオゾンを溶解させる手法により実現させている。他方、特許文献4には、直径が10〜50μmのオゾン気泡を含む水溶液に、鉄、マンガン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムイオン、その他ミネラル類のイオン等の電解質を混入し、混入した水溶液に水中放電を行うことによって50〜500nmのナノバブルを得ることができる旨が記載されている。上記ナノバブルを含む水溶液のことを、以下において「従来のオゾン水」といい、従来のオゾン水の生成技術のことを適宜「第4の従来技術」という。
【特許文献1】特開2006−49453号公報(段落0034参照)
【特許文献2】特開2004−79649号公報(段落0011、0018参照)
【特許文献3】特開2002−33300号公報(段落0011、0018,0019、0022参照)
【特許文献4】特開2005−246293号公報(段落0016〜0025、図1参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、本願発明者が行った実験によれば、単にエゼクタを用いただけでは、生成したオゾン水のオゾン溶解度を充分に高めることができない。このため、オゾン水から大量のオゾンが脱気してしまい、求める洗浄効果を得られない。オゾン溶解度を高めることができない主な理由は、溶解させたオゾン気泡の粒径が概ね1μm(マイクロメートル)以上であるため、オゾン気泡がオゾン水から浮力を受けて水面まで浮上してしまう点にある。オゾン気泡を水面まで浮上させづらくするためには、溶解させたオゾン気泡の粒径を概ね500nm以下に抑えるとよい。しかしながら、前述した第1乃至第3の先行技術は、いずれも粒径500nm以下のオゾン気泡のみを含むオゾン水を実現したものではない。
前述した第4の技術は、粒径50〜500のオゾン気泡を含むオゾン水を提供するもののようであるが、これは、電解質混入を必須とする。鉄、マンガン、カルシウム、ナトリウム、マグネシウムイオン、その他ミネラル類のイオン等の電解質(添加物)を混入したオゾン水は、これらの電解質が半導体基板に悪影響を与える恐れがあるから半導体基板の洗浄には適さない。第2の従来技術が提供するオゾン水にも有機溶剤を混入させる必要があり、そのような有機溶剤も半導体基板の洗浄に適さないことは言うまでもない。この点、第3の先行技術は有機溶剤の添加量調節に、その解決を求めているが、有機溶剤も添加物であるかぎり含まれないほうがよいことは当然である。第3の従来技術で3では、オゾン拡散を1μm程度の微小孔を介して3行うようになっているため、オゾン含有純水が含有するオゾン気泡の粒径そのほとんどが1μmより小さくなることはない。したがって、第3の技術をもってしても、粒径1000nm(1μm)以下のオゾン気泡のみを含むオゾン水を実現することはできない。本発明が解決しようとする課題は、基板に悪影響を与えることのない、かつ、容易に脱気しないことにより充分な洗浄効果を得ることのできる基板洗浄方法及び基板洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた発明者は、水にオゾンを混合させてオゾン水を生成するに当たり、50nm以下の直径のオゾン気泡を含むオゾン水を得ることができた。このオゾン水には、電解質や有機溶剤のような添加物を、混入又は添加していない。添加物を含まない点で上記オゾン水は、背景技術の欄で説明した従来のオゾン水と大きく異なっている。本発明は、上記オゾン水を用いて被処理物の処理を行おうとするものである。
発明の詳しい構成については、項を改めて説明する。なお、何れかの請求項記載の発明を説明するに当たって行う用語の定義等は、発明のカテゴリーの違いや記載の前後等に関わりなく、その性質上可能な範囲において他の請求項記載の発明にも適用があるものとする。
【0005】
(請求項1記載の発明の特徴)
請求項1記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項1のオゾン水処理方法」という)は、添加物を含めない方法によって生成された超微細粒子のオゾン気泡を含有するオゾン水を用いて被処理物を処理するオズン水処理方法である。ここで、当該オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmである。
【0006】
(請求項2記載の発明の特徴)
請求項2記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項2のオ損水処理方法」という)では、被処理物の処理前のオゾン水を加熱する。加熱方法に制限はないが、たとえば、ヒーター、電磁誘導及び水蒸気による加熱方法がある。加熱温度は、生成時の温度にもよるが、たとえば、30℃〜80℃の範囲が可能となろう。
【0007】
請求項2のオゾン水処理方法によれば、オゾン水の温度を被処理物の処理のために適切な温度まで高めることによって、効率よく処理を行うことができる。適切な温度は、被処理物の性質、局所か全体かの違い、処理時間の長短その他の環境等に左右される場合があるが、概ね高いほうが好ましい。他方、オゾンは水温が低いほうが溶解しやすいため、オゾン水を加熱すると脱気や熱分解し易くなることも事実である。前掲の背景の技術の欄で紹介した第3の先行技術(特許文献3)では、45℃まで高められているが、これまで知られているオゾン水ではそれが限度と思われる。なぜなら、粒径1μm(1000nm)レベルのオゾン気泡は、前掲の発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、オゾン気泡がオゾン水から浮力を受けて水面まで浮上しやすい状態にあり、そこで加熱されれば、熱膨張により粒径はさらに大きくなり、その結果、さらに大きな浮力を受けることになりより浮上し易い状態になるからである。この点、本願発明に係るオゾン水が含有するオゾン気泡の粒径は50nm以下であるから、加熱による膨張があってもなお受ける浮力は小さくてすむ。したがって、オゾン気泡は依然としてオゾン水の中に滞留して容易には脱気しない。本件発明に係るオゾン水を80℃前後まで上昇させることができたのは、このオゾン気泡の粒径が充分に小さいからであると推測される。
【0008】
(請求項3記載の発明の特徴)
請求項3記載の発明に係るオゾン水処理方法(以下、適宜「請求項3のオゾン水処理方法」という)は、被処理物を半導体基板とするオゾン水処理方法である。オゾン水を生成するオゾン水の性質やオゾン水により処理する方法の種類等については、請求項1のオズン水処理方法の説明の中で行ったものと異ならない。
【0009】
(請求項4記載の発明の特徴)
請求項4記載の発明に係るオズン水処理装置(以下、適宜「請求項4のオズン水処理装置」という)は、添加物を含まない方法によって超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水を生成するためのオゾン水生成装置と、このオゾン水生成装置において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理する処理装置とを備える構成にしてある。ここで、当該オゾン水生成装置は、含有するオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を生成可能に構成してある。
【0010】
(請求項5記載の発明の特徴)
請求項5記載の発明に係るオゾン水処理装置(以下、適宜「請求項5のオゾン水処理装置」という)では、請求項5のオゾン水処理装置における好ましい態様として、前記被処理物の処理前のオゾン水を加熱するための加熱手段を設けてある。加熱方法に制限はないが、たとえば、ヒーター、電磁誘導及び水蒸気による加熱方法がある。加熱温度は、生成時の温度にもよるが、たとえば、30℃〜80℃範囲が可能となろう。
【0011】
(請求項6記載の発明の特徴)
請求項6記載の発明に係るオゾン水処理装置(以下、適宜「請求項6のオゾン水処理装置」という)は、処理装置が半導体基板を処理する構成にしてある。
【発明の効果】
【0012】
前記構成により、この発明は以下のような効果を有する。
請求項1のオゾン水処理方法によれば、含有されるオゾン気泡がオゾン水から容易に脱気しないので、被処理物への処理効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を50nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。つまり、オゾン水中に安定して滞留する。安定して滞留するオゾン気泡は、オゾン水が被処理物と衝突したときの衝撃により脱気することも極めて少ない。これらが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。さらに、無添加のオゾン水を用いた処理であるから、添加物混入による悪影響を被処理物に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、処理後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。そして、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという人間が吸引すると有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。
【0013】
発明者らが行った実験によれば、粒径Rはそのほとんどが30nm以下であることが分かったが、気液混合を行う際の諸条件によっては30nmを超え50nm以下のオゾン気泡の存在も確認できた。水にオゾンを混合させる気液混合方法によって生成するオゾン水であるから、粒径50nm以下のオゾン気泡の他に50nmを超える粒径のオゾン気泡が僅かながら(たとえば、全体の1%未満の量又は数だけ)偶発的に含有される場合があることを完全には否定しきれないが、そのような場合が仮にあったとしても、粒径50nmを超えるオゾン気泡は粒径が大きいことに加えオゾン水全体に比べて量的に極僅かであることからオゾン水によって処理する被処理物に対する貢献度は全くないかあるとしても極めて低いものである。よって、粒径50nmを超えるオゾン気泡を含有する部分のオゾン水は本願発明に係るオゾン水の対象外である。すなわち、上記場合にオゾン水の処理に用いられるオゾン水は、本願発明に係る粒径50nm以下のオゾン気泡を含有する本願発明に係るオゾン水と、粒径50nmを超えるオゾン気泡を含む本願発明の対象外に係るオゾン水とが単に混在している、と解釈されるべきである。なお、オゾン水を用いた処理方法には、たとえば、被処理物をオゾン水に浸漬させたり、被処理物にオゾン水を散布したり、浴びせたり、する方法が挙げられる。無添加オゾン水の性質を害するものでなければ、後述するように光や超音波の照射等をオゾン水処理に併用することを妨げない。
【0014】
請求項2のオゾン水処理方法によれば、オゾン水の温度を被処理物の処理のために適切な温度まで高めることによって、効率よく処理を行うことができる。適切な温度は、被処理物の性質、局所か全体かの違い、処理時間の長短その他の環境等に左右される場合があるが、概ね高いほうが好ましい。他方、オゾンは水温が低いほうが溶解しやすいため、オゾン水を加熱すると脱気や熱分解し易くなることも事実である。前掲の背景の技術の欄で紹介した第3の先行技術(特許文献3)では、45℃まで高められているが、これまで知られているオゾン水ではそれが限度と思われる。なぜなら、粒径1μm(1000nm)レベルのオゾン気泡は、前掲の発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、オゾン気泡がオゾン水から浮力を受けて水面まで浮上しやすい状態にあり、そこで加熱されれば、熱膨張により粒径はさらに大きくなり、その結果、さらに大きな浮力を受けることになりより浮上し易い状態になるからである。この点、本願発明に係るオゾン水が含有するオゾン気泡の粒径は50nm以下であるから、加熱による膨張があってもなお受ける浮力は小さくてすむ。したがって、オゾン気泡は依然としてオゾン水の中に滞留して容易には脱気しない。本件発明に係るオゾン水を80℃前後まで上昇させることができたのは、このオゾン気泡の粒径が充分に小さいからであると推測される。
【0015】
請求項3のオゾン水処理方法によれば、含有されるオゾンがオゾン水から容易に脱気しないので、基板の洗浄効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径が極めて小さいから、基板表面や基板上形成物の表面には、ナノメートル(nm)レベルの寸法(たとえば60nm)の凹凸が形成されていることが多いが、その例における60nmの凹部においてオゾンを反応させるためにはその凹部の中にオゾン気泡が進入できなければならないところ、本願発明に係るオゾン水によればそのようなオゾン反応を可能にする。また、無添加のオゾン水を用いた洗浄であるから、添加物混入による悪影響を基板に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、洗浄後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。さらに、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。
【0016】
請求項4のオゾン水処理装置によれば、添加物が含まれない方法によって超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水は、オゾン水生成装置が供給する。処理装置にて含有されるオゾン気泡がオゾン水から容易に脱気しないので、被処理物への処理効果を長く確実に保つことができる。オゾン脱気が有効に抑制されているからである。すなわち、粒径を50nm以下に抑えたことによりオゾン気泡がオゾン水から受ける浮力が極めて小さいので、オゾン気泡が水面まで上昇しづらい。つまり、オゾン水中に安定して滞留する。安定して滞留するオゾン気泡は、オゾン水が被処理物と衝突したときの衝撃により脱気することも極めて少ない。これらが、オゾン脱気の有効抑制を実現する。さらに、オゾン水生成装置は添加物を含まないオゾン水を生成し、このオゾン水を用いて処理装置で処理するから、添加物混入による悪影響を被処理物に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、処理後のオゾン水が、その添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。そして、オゾン脱気が有効抑制されているので、オゾンが脱気しない、若しくは極めて脱気しづらい。つまり、オゾンという人間が吸引すると有害なものがオゾン水から出ないということであるから安全面でも極めて使い勝手がよい。
なお、オゾン水を用いた処理装置には、たとえば、被処理物をオゾン水に浸漬させたり、被処理物にオゾン水を散布したり、浴びせたり、する装置が挙げられる。無添加オゾン水の性質を害するものでなければ、後述するように光や超音波の照射等をオゾン水処理に併用することを妨げない。
【0017】
請求項5のオゾン水処理装置によれば、請求項4のオゾン水処理装置の作用効果に加え、オゾン水の温度を適切な温度まで高めることによって、効率よく処理を行うことができる。適切な温度は、被処理物の性質その他の環境等に左右される場合があるが、概ね高いほうが好ましい。他方、オゾンは水温が低いほうが溶解しやすいため、オゾン水を加熱すると脱気し易くなることも事実である。前掲の背景の技術の欄で紹介した第3の先行技術(特許文献3)では、45℃まで高められているが、これまで知られているオゾン水ではそれが限度と思われる。なぜなら、粒径1μm(1000nm)レベルのオゾン気泡は、前掲の発明が解決しようとする課題の欄で述べたように、オゾン気泡がオゾン水から浮力を受けて水面まで浮上しやすい状態にあり、そこで加熱されれば、熱膨張により粒径はさらに大きくなり、その結果、さらに大きな浮力を受けるからより浮上し易い状態になるからである。この点、本願発明に係るオゾン水が含有するオゾン気泡の粒径は50nm以下であるから、加熱による膨張があってもなお受ける浮力は小さくてすむ。したがって、オゾン気泡は依然としてオゾン水の中に滞留して容易には脱気しない。本件発明に係るオゾン水を80℃前後まで上昇させることができたのは、このオゾン気泡の粒径が充分に小さいからであると推測される。
【0018】
請求項6の処理装置によれば、半導体基板の洗浄が行われる。洗浄のためのオゾン水は、オゾン水生成装置が供給する。オゾン水生成装置の主要部品であるベンチュリ管は、その小径路を通過する被処理水(純水若しくは超純水又はオゾン水)にオゾンを供給する。オゾン供給は、オゾン供給装置が行う。ベンチュリ管を通過する被処理水の圧力は、小径路に近づくにつれて一気に増加し、小径路通過後に一気に減少する。圧力減少する際のベンチュリ管内部は真空又は真空に近い負圧状態となり、この負圧状態によって供給されたオゾンが原水内に吸引される。吸引されたオゾンは、上記圧力変化と、小径路通過に伴う被処理水の流れの変化等が複雑に絡み合い、一気に攪拌混合される。この一連の作用が、磁力の作用と相まってオゾン水生成を容易にする要因の一つと考えられる。小径路に磁力を作用させることによってオゾン気泡の粒径を、50nm以下にすることができた。その因果関係は発明者において現在解明中であるが、この点は、後述する実験結果において明らかになる。洗浄に使用するオゾン水は無添加であるから、添加物混入による悪影響を基板に与える恐れがない。また、添加物を混入していないので、洗浄後のオゾン水がその添加物により与える環境への悪影響をもなくなる。請求項6の処理装置によれば、請求項1乃至3の処理方法を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】基板洗浄方法の一例を示すブロック図である。
【図2】半導体基板洗浄装置のブロック図である。
【図3】エキシマランプを併設した半導体基板洗浄装置の部分ブロック図である。
【図4】半導体基板洗浄装置が備えるオゾン水生成装置のブロック図である。
【図5】気液混合構造の正面図である。
【図6】気液混合構造の左側面図である。
【図7】図6に示す気液混合構造のX−X断面図である。
【図8】図5に示す気液混合構造の概略平面図である。
【図9】溶解促進構造の縦断面図である。
【図10】半導体基板洗浄装置の変形例を示す図である。
【図11】比較実験を行うためのオゾン水生成装置の概略構成図である。
【図12】オゾン気泡の作用を説明するための図である。
【図13】オゾン気泡の作用を説明するための図である。
【図14】オゾン気泡の作用を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各図を参照しながら、半導体基板の洗浄について実施の形態(以下、適宜「本実施形態」という)を説明するが、この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。
【0021】
本実施形態は、半導体基板の洗浄に係るものとした。半導体基板表面の凹凸寸法は、現時点において少なくとも60nm以下となっておりおそらく各種基板の中で最小であり、また、将来に向けてさらに縮小されるものと予想されるから、半導体基板に使用可能であれば、液晶その他の基板にも使用可能であろうからである。図1は、基板洗浄方法の一例を示すブロック図である。図2は半導体基板洗浄装置のブロック図である。図3は、エキシマランプを併設した半導体基板洗浄装置の部分ブロック図である。図4は、半導体基板洗浄装置が備えるオゾン水生成装置のブロック図である。図5は、気液混合構造の正面図である。図6は、気液混合構造の左側面図である。図7は、図6に示す気液混合構造のX−X断面図である。図8は、図5に示す気液混合構造の概略平面図である。図9は、溶解促進構造の縦断面図である。図10は、半導体基板洗浄装置の変形例を示す図である。図11は、比較実験を行うためのオゾン水生成装置の概略構成図である。図12乃至14は、オゾン気泡の作用を説明するための図である。
【0022】
(基板洗浄方法)
図1を参照しながら、半導体基板洗浄方法の一例について説明する。半導体洗浄方法は、まず、オゾン水の生成から始まる(S1)。ここで、生成するオゾン水は、純水又は超純水にオゾンを混合させる気液混合方式によって行う。オゾン水生成は、添加物を添加することなく無添加で行う。無添加としたのは、添加物による半導体基板への悪影響を防止するためである。生成したオゾン水が含有するオゾン気泡の粒径Rは、0<R≦50nmとする。オゾン脱気を有効抑制するとともに、洗浄効率を飛躍的に伸ばすためである。オゾン濃度は、たとえば、15乃至30ppm前後が適当である。生成したオゾン水は、必要に応じて加熱するとよい(S2)。被洗浄体の性質その他の環境にもよるが、加熱したほうが洗浄効果が高まるからである。加熱温度は、生成時の温度その他の環境にもよるが、たとえば、30℃〜80℃の範囲がよい。この範囲の温度を外れる加熱を排除する趣旨ではないが、30℃を下回ると加熱による洗浄効率の向上が充分でなく、80℃を超えるとオゾンが脱気し易くなるからである。
【0023】
生成したオゾン水、さらに、必要に応じて加熱したオゾン水は、これを用いて半導体基板を洗浄する。洗浄方法は、半導体基板の種類その他の環境に応じて適宜選択することができる。たとえば、オゾン水をシャワー等で掛け流すシャワリング法や、回転する半導体基板上にオゾン水を供給するスピン洗浄法、半導体基板をオゾン水の入ったバッチ式洗浄槽に浸漬する浸漬洗浄法及びそれらの組み合わせた方法が、オゾン水を用いた洗浄方法として挙げられる。また、併せて、オゾン水に超音波を照射してオゾン水を流動させるようにすることもよい。オゾン水洗浄の最中に必要に応じてエキシマ光等を照射するなどの反応促進工程を含めることもできる(S7)。さらに、上記以外の方法をオゾン水洗浄の前後、最中に必要に応じて併用することも可能である。
【0024】
(半導体基板洗浄装置の概略構造)
図2を参照しながら、本実施形態における半導体基板洗浄方法を実施するための半導体基板洗浄装置装置(以下、適宜「洗浄装置」という)について説明する。洗浄装置1は、洗浄槽3と、オゾン水生成装置201と、から概ね構成してある。洗浄槽3は、その中で半導体基板Wを洗浄するための槽である。洗浄槽3の内部には、半導体基板の洗浄を補助するための洗浄機構7を配してある。オゾン水生成装置201は洗浄槽3へオゾン水を供給するための装置である。
【0025】
(洗浄槽及び洗浄機構の概略)
引き続き図2を参照しながら、洗浄槽及び洗浄機構の概略について説明する。図2に2点差線で示す洗浄槽3は、略機密密閉可能に構成してあり、半導体基板Aを入れたり出したりするための開閉機構(図示を省略)を有している。洗浄槽3内に設置した洗浄機構7は、駆動源となるモータ7mと、モータ7mによって回転させられる回転テーブル7tと、から概ね構成してある。回転テーブル7tは、その上に半導体基板Aを載置可能に構成してあり、半導体基板Aを下方から保持して一体回転可能となるように構成してある。半導体基板Aを回転させるのは、オゾン水Wを満遍なく行き渡らせることによって洗浄効率を高めるためである。モータ7mの回転は、洗浄槽3の外部にある回転速度制御装置7cによって制御可能に構成してある。符号11は、オゾン水供給装置201から供給されたオゾン水Wを、半導体基板Aの表面に吐出するためのノズルを示している。ノズル11は、洗浄槽3内に設置したノズル駆動装置13によって移動可能に保持され、その移動によって、半導体基板Aに対するオゾン水Wの吐出位置を変化させられるように構成してある。吐出位置を変化させるのは、位置変化によりオゾン水Wをより満遍なく行き渡らせるためである。ノズル駆動装置13の制御は、洗浄槽3の外部にある位置制御装置13cによって行う。なお、上記した洗浄槽3及び洗浄機構7は、半導体基板の洗浄用に構成してあるが、半導体基板以外の基板その他の電子部品を洗浄する場合は、その洗浄部品の形態や個数等に合わせた洗浄槽及び洗浄機構等を構成すべきであることは言うまでもない。符号Rは、半導体基板Aの表面に形成されたレジスト膜(被洗浄体)を示している。
【0026】
さらに、洗浄装置1には、図3に示すように、オゾン水Wを供給した半導体基板A上にエキシマレーザー(エキシマ光)8Lを照射するため光源8を必要に応じて併設することもできる。エキシマレーザーを照射するのは、そのエネルギーによってオゾン水Wの中のオゾンを分解することでラジカルを発生させるためである。ラジカル発生は半導体基板Aの表面に、たとえばレジスト膜Rが残る場合に、そのレジスト膜Rの結合の破壊を促進する。エキシマレーザーのエネルギーは、半導体基板A(又は、その表面に、たとえば、絶縁膜が形成されているときはその絶縁膜)の結合エネルギーよりも低いものである必要がある。半導体基板Aが受けるダメージを抑制するためである。光源8は、図外のエキシマランプから導光ライン8aを介して導光されたエキシマ光を照射可能に構成してある。上記エキシマ光と同等の作用効果を示す他の光(たとえば、ヤグ光)を、エキシマ光の代わりに照射するように構成してもよい。さらに、ノズル11に、超音波振動機構11aを設けてノズル先端部11bを吐出方向に沿って進退振動させ、これによりオゾン水Wに超音波エネルギーを与えるように構成することもよい。超音波エネルギーにより半導体基板Aに衝撃を与えてレジスト膜Rを剥離しやすくするためである。上記した光源8や超音波振動機構11a(ノズル先端部11b)は、オゾン水(オゾン)の反応促進機構として機能する。
【0027】
(オゾン水生成装置の概略)
図4を参照しながら、オゾン水生成装置について説明する。オゾン水生成装置201は、貯留タンク202と、オゾンを生成して供給するためのオゾン供給装置203と、貯留タンク202から取り出した被処理水を貯留タンク202に戻すための循環構造204と、循環構造204の途中に設けた気液混合構造205及び溶解促進槽206と、貯留タンク202に付設した温度保持構造207と、から概ね構成してある。以下の説明は、説明の都合上、貯留タンク202、温度保持構造207、オゾン供給装置203、気液混合構造205、溶解促進槽206を行った後、最後に循環構造204について行う。
【0028】
(貯留タンク周辺の構造)
図4に示すように、貯留タンク202には取水バルブ202vを介して被処理水としての原水(純水又は超純水)を注入可能に構成してある。貯留タンク202は取水した原水、及び、後述する循環構造204を介して循環させた被処理水(オゾン水)を貯留するためのものである。貯留タンク202に貯留された被処理水は、温度保持構造207によって、たとえば、0〜15℃の範囲に保持されるようになっている。上記範囲に温度設定したのは、オゾン溶解を効率よく行い、かつ、溶解させたオゾンを容易に脱気させないために適当であるからである。0℃未満が上記範囲に含まれないのは、0℃未満ではオゾン水が凍結してしまうからである。温度保持構造207は、貯留タンク202から被処理水を取り出すためのポンプ211と、取り出した被処理水を冷却するための冷却機212と、から概ね構成してあり、貯留タンク202とポンプ211、ポンプ211と冷却機212、冷却機212と貯留タンク202の間は被処理水を通過させる配管213によって連結してある。上記構成によって、貯留タンク202に貯留された被処理水(原水及び/又はオゾン水)は、ポンプ211の働きによって貯留タンク202から取り出され、冷却機212に送られる。冷却機212は送られてきた被処理水を所定範囲の温度に冷却して貯留タンク202に戻す。ポンプ211は、図外にある温度計によって計測された貯留タンク202内の被処理水の温度が所定範囲を超え冷却の必要があるときにのみ作動するようになっている。貯留タンク202を設けた理由は、被処理水を一旦貯留することによって上記冷却を可能にするとともに、被処理水を安定状態に置き、これによって、被処理水に対するオゾン溶解を熟成類似の作用によって促進させるためである。なお、たとえば、寒冷地等において被処理水が凍結する恐れがある場合は、上記冷却機の代わりに、又は、上記冷却機とともにヒーター装置を用いて被処理水を加温するように構成することもできる。なお、配管213から分岐させた配管213aを介して洗浄装置1にオゾン水を供給するように構成してある。すなわち、冷却機212で所定温度に冷却されたオゾン水は、ポンプ211の働きにより配管213aを介して洗浄装置1に供給される。符号213vは、配管213aに設けたオゾン水の流量を調整するための調整バルブを示す。
【0029】
(オゾン供給装置)
図4に示すオゾン供給装置203は、オゾンを生成供給するための装置である。必要なオゾン量を供給可能なものであれば、オゾン供給装置203が作用するオゾン発生原理等に何ら制限はない。たとえば、酸素ガス中で放電を起こしてオゾンを発生させる放電方式や、超純水中の水分子を電気分解してオゾンを発生させる電解方式が、オゾン発生方式として知られている。オゾン供給装置203によって生成されたオゾンは、オゾン供給管217の途中に設けた電磁バルブ218と逆止弁219を介して気液混合構造205に供給されるようになっている。
【0030】
(気液混合構造)
図4乃至8を参照しながら気液混合構造205の詳細について説明する。気液混合構造205は、ベンチュリ管231と、オゾン供給パイプ239と、磁気回路243と、により概ね構成してある。ベンチュリ管231は、上流側(図5の向かって右側)から送られた被処理水(純水、超純水、オゾン水)を下流側(図5の向かって左側)へ通過させるためのパイプ状の外観を有している(図8参照)。ベンチュリ管231を長手方向に貫く中空部は、上流側から下流側に向かって上流側大経路232、絞り傾斜路233、小径路234、開放傾斜路235及び下流側大経路236の順に連通している。上流側大経路232は、軸線方向に対して50度前後の急角度をもって絞り方向に傾斜する絞り傾斜路233を介して小径路234に繋げられ、その後、開放傾斜路235によって同じく軸線方向に対して30度前後の緩やかな角度を持って開放される。開放傾斜路235は、上流側大経路232と同じ外径の下流側大経路236に繋がっている。他方、小径路234には、そこにオゾン供給パイプ239の開口端を臨ませてある。オゾン供給パイプ239の供給端にはオゾン供給装置203と連通するオゾン供給管217が接続してある。小径路234の中、又は、その近傍は、被処理水の圧力変化によって真空又は真空に近い状態になるため、開口端に及んだオゾンは吸引され乱流化した被処理水内に散気される。なお、図7に示す符号240は、ベンチュリ管231とオゾン供給パイプ239との間を補強するためのリブを示している。
【0031】
ベンチュリ管231には、磁気回路243をネジ(図示を省略)固定してある。磁気回路243は、ベンチュリ管231を挟んで対向する一方の磁石片245及び他方の磁石片246と、一方の磁石片245と他方の磁石片246とを連結するとともに、ベンチュリ管231への磁石片取り付けの機能を有する断面U字状(図6参照)の連結部材248と、により構成してある。磁石片245と磁石片246とは、小径路234(図8では破線で示す。図7を併せて参照)及び/又はその近傍(特に、下流側)をその磁力線(磁界)が最も多く通過するように配するとよい。ただ、実際には、小径路234のみに磁力線を集中させることは技術的困難を伴うことから、小径路234及び小径路234の近傍の双方に磁力線を通過させることになろう。被処理水とオゾンの双方に磁力を作用させることによって、被処理水に対して最も効率よくオゾンを溶解させることができると考えられるからである。磁石片245及び磁石片246は、7,000ガウス前後の磁力を持つネオジュウム磁石によって構成してある。磁力は強いほうがオゾン溶解効果が高いと思われるが、少なくとも1,000ガウス以上のものが望まれる。ここで、7,000ガウスの磁石を採用したのは、その調達容易性と経済性にある。7,000ガウス以上の磁力を持つ磁石(天然磁石、電磁石等)の採用を妨げる趣旨ではない。また、磁石片245と磁石片246との間の距離は、可能な限り短くするとよい。磁力は距離の二乗に反比例するので短くすればするほど強い磁力を得ることができるからである。連結部材248は、磁束漏れを抑制して磁力作用が被処理水等にできるだけ集中するように、磁力透磁率(μ)の大きい部材(たとえば、鉄)によって構成してある。
【0032】
(気液混合構造の作用効果)
以上の構成により、上流側大経路232を通過した被処理水は、絞り傾斜路233を通過するときに圧縮されて水圧が急激に高まり、同時に通過速度も急激に上昇する。高圧・高速のピークは、小径路234に達したときである。小径路234を通過した被処理水は、開放傾斜路235の中で急激に減圧・減速し、後続する被処理水との衝突の衝撃等を受け乱流化する。その後、被処理水は下流側大経路236を抜け、気液混合構造205の外へ出る。散気されたオゾンは、被処理水の乱流に巻き込まれ大小様々な大きさの気泡となり攪拌作用を受ける。小径路234及び少なくともその下流を流れる被処理水(オゾン水)には、上記攪拌作用とともに磁気回路243の働きによる磁力作用を受ける。すなわち、被処理水の水圧を圧力頂点(ピーク)に至るまで増圧させ当該圧力頂点に至った直後に減圧させるとともに当該圧力頂点に至った被処理水にオゾンを供給する、ことを磁界の中で行うことになる。攪拌作用と磁界の磁力作用が相乗効果を生み、その結果、被処理水にオゾンが溶解し高溶解度を持った高濃度オゾン水が生成される。
【0033】
(溶解促進槽)
図4及び9を参照しながら、溶解促進槽206について説明する。溶解促進槽206は、天板253と底板254とによって上下端を密閉した円筒状の外壁255によって、その外観を構成してある。天板253の下面には、その下面から垂下する円筒状の内壁256を設けてある。内壁256に囲まれた空間が、被処理水を貯留するための貯留室258となる。内壁256の外径は外壁255の外径よりも小さく設定してあり、これによって、内壁256と外壁255との間に所定幅の壁間通路259が形成される。他方、内壁256の下端は、底板254まで届かず、底板254との間に所定幅の間隙を形成する。この間隙は、下端連通路257として機能する。すなわち、内壁256が囲む貯留室258は、下端連通路257を介して壁間通路259と連通している。他方、内壁256の天板253の近傍には複数の連通孔256h,256h,・・を貫通させてあり、貯留室258と壁間通路259とは各連通孔256hを介しても連通している。底板254の上面略中央には、細長の揚水管261を起立させてある。揚水管261の中空部下端は、底板254を貫通する入水孔254hと連通し、中空部上端は、揚水管261上端に形成した多数の小孔261h,・・を介して貯留室258と連通している。揚水管261の上端は、内壁256が有する連通孔256hの位置よりも僅か下に位置させてある。外壁255の高さ方向上から略4分の1付近には、排水孔255hを貫通させてある。つまり、壁間通路259は、排水孔255hを介して外部と連通している。
【0034】
天板253の略中央には、揚水孔253hを貫通させてある。揚水孔253hは、天板253の外部に配した気液分離装置265の内部に連通している。気液分離装置265は、揚水孔253hを介して貯留室258から押し上げられる被処理水と、この被処理水から脱気するオゾンとを分離排出するための脱気構造として機能する。気液分離装置265によって分離されたオゾンは、オゾン分解装置267によって分解して無害化した後に装置外部に放出するようになっている。被処理水に対するオゾン溶解度はきわめて高く、したがって、脱気するオゾンは極めて少ないが、より安全性を高めるためにオゾン分解装置267等を設けてある。揚水管261によって貯留室258内に送り込まれた被処理水は、後続する被処理水に押されて下降する。下端に達した被処理水は下端連通路257を折り返して壁間通路259内を上昇し、排水孔255hを介して外部に排水される。また、一部の被処理水は気液分離装置265内に押し上げられる。この間、熟成類似の作用によってオゾンが被処理水に溶解して高溶解度のオゾン水を生成する。他方、溶解し切れなかったり、一旦は溶解したが脱気したオゾンがある場合に、そのオゾンは気液分離装置265内に上昇しそこで分離される。したがって、被処理水から溶解しきれないオゾンは、そのほとんどを排除することができる。この結果、溶解促進槽206を通過した被処理水のオゾン溶解度は、飛躍的に高くなっている。なお、気液分離装置265及びオゾン分解装置267は、これらを溶解促進槽206の代わりに、又は、溶解促進槽206とともに貯留タンク202その他の箇所に設けることもできる。
【0035】
(循環構造)
図4を参照しながら、循環構造について説明する。循環構造204は、気液混合構造205を通過した被処理水(既に原水からオゾン水になっている)を循環させて再度、気液混合構造205を通過させる機能を有している。再度、気液混合構造205を通過させるのは、既にオゾンを溶解させた被処理水に再度オゾンを注入することによって、オゾンの溶解度と濃度をさらに高めるためである。循環構造204は、ポンプ271を駆動源とし、貯留タンク202と溶解促進槽206を主要な構成要素とする。すなわち、ポンプ271は、貯留タンク202から配管270を介して取り出した被処理水を逆止弁272及び配管273を介して気液混合構造205に圧送する。圧送によって気液混合構造205を通過した被処理水は、配管274及び溶解促進槽206を抜け配管275を介して貯留タンク202に戻される。循環構造204は、上記した工程を必要に応じて繰り返して実施可能に構成してある。循環させる回数は、生成しようとするオゾン水のオゾン溶解度やオゾン濃度等を得るために自由に設定することができる。なお、符号276は、配管275の途中に設けたバルブを示している。バルブ276は、その開閉によって気液混合構造205の小径路234(図7参照)を通過させる被処理水の水圧を制御することを主目的として設けてある。
【0036】
(加熱手段)
オゾン水生成装置201には、生成したオゾン水を処理槽3に供給する前に、加熱するための加熱手段を設けてある。半導体基板に接触する前のオゾン水の温度を必要に応じて高め、これによって、洗浄効率を高めるためである。加熱手段は、ヒーターHによって構成してある。ヒーター8は、発熱体や、電磁誘導を利用したインライン・インダクションヒーター、さらに、高温水蒸気発生装置等により構成することができる。
【0037】
(洗浄装置の変形例)
図10を参照しながら、処理槽3の変形例について説明する。本変形例に係る処理槽53は、図10では図外のオゾン水生成装置201から供給ノズル54,54を介してオゾン水Wの供給を受けるようになっている。処理槽53内には、ウエハポート56,・・が昇降可能に配してあり、ウエハポート56,・・は、紙面厚み方向に並ぶ複数枚の半導体基板A,・・(図示は1枚、他は裏に隠れている)を下方から支持可能に構成してある。支持された半導体基板A,・・は、処理槽53内に貯留されたオゾン水Wに浸漬され、洗浄されるようになっている。貯留されたオゾン水Wは、後からオゾン水Wが追供給されることによって処理槽53上面から溢れさせ、溢れたオゾン水Wha処理槽53の上端部に設けた排水路55,55から排水されるようにしてある。オゾン水Wを追供給するのは、オゾン水Wを常に流動させることによって、反応後に濃度が下がったオゾン水Wの代わりに濃度の高いオゾン水Wを半導体基板と接触させるとともに、流動による衝撃によっては半導体基板Aの表面に形成されたレジスト膜を剥離させ易くするためである。なお、排水路55,55から排水したオゾン水Wは、これを、たとえば、ろ過したりオゾンを再混合したりすることによって再利用するようにすることもできる。
【0038】
(実験例)
図4及び11を参照しながら、実験例について説明する。ここで、示す実験例は、背景技術の欄において説明した磁石の使用方法と本発明に係る磁石の使用方法の違いによって、オゾンの溶解度や濃度に著しい差が生じることを主として示すためのものである。本実験例では、本件発明に係る装置として図4に示すオゾン水生成装置(以下、「本件装置」という)を使用し、比較対象となる装置として図11に示すオゾン水生成装置(以下、「比較装置」という)を使用した。比較装置には、本件装置の構造と基本的に同じ構造を備えさせてあるが、磁気回路243の取付位置のみを異ならせてある。このため、図11では磁気回路を除き図4で使用する符号と同じ符号を使用し、図11に示す磁気回路には気液混合構造205の上流側にあるものに符号243aを、下流側にあるものに符号243bを、それぞれ付してある。整理すると、図4に示す本件装置は、磁気回路243と一体となった気液混合構造205を備え、図11に示す比較装置は、気液混合構造205の上流側配管に磁気回路243aを、同じく下流側配管に磁気回路243bを、それぞれ同時に又は選択的に取り付け取り外しできるように構成してある。なお、気液混合構造205として、米国マジェーインジェクター社(MAZZEI INJECTOR CORPORATION)製のモデル384を、磁気回路には7000ガウスのものを、それぞれ使用した。
【0039】
(濃度比較実験)
表1及び2を参照しながら、濃度比較実験について説明する。表1は、オゾン水のオゾン濃度と濃度上昇時間との関係を示している。表2は、表1に示すオゾン水のオゾン濃度が生成装置の運転停止後にゼロになるまでに要する時間を示している。ゼロになるまでの時間が長ければ長いほどオゾン溶解度が高いことを示す。表1及び2において、記号「□」は本件装置を用いて生成したオゾン水(以下、「本件オゾン水」という)を、記号「×」は比較装置から磁気回路のみを取り外した気液混合構造を用いて生成したオゾン水(以下、「磁気なしオゾン水」という)を、記号「△」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243aとにより生成したオゾン水(以下、「上流側磁気オゾン水」という)を、記号「○」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243bとにより生成したオゾン水(以下、「下流側磁気オゾン水」という)を、そして、記号「◇」は比較装置において気液混合構造205と磁気回路243a及び磁気回路243bの双方とにより生成したオゾン水(以下、「両側磁気オゾン水」という)を、それぞれ示している。被処理水の温度は5℃、周囲湿度は36〜43%、周囲温度は17℃であった。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
表1が示すように、生成装置運転開始後の生成時間35分で本件オゾン水はオゾン濃度20ppmに到達したが、同条件下において、磁気なしオゾン水はオゾン濃度8ppm前後、下流側磁気オゾン水はオゾン濃度11ppm前後、上流側磁気オゾン水はオゾン濃度12ppm前後、両側磁気オゾン水はオゾン濃度13ppm前後までしか上昇しなかった。このことから、まず、磁気回路を設けることにより設けない場合に比べてオゾン濃度を高められること、次に、同じ磁気回路を設けるとしても気液混合構造と一体化させた場合と気液混合構造以外の箇所に設けた場合とでは前者の方が後者よりも少なくとも7ppm高いオゾン水を生成可能であること、が分かった。つまり、オゾン濃度について本件オゾン水は、両側磁気オゾン水に比べて略54%((20−13)/13×100)高い、という結果を得た。
【0043】
表2が示すように、オゾン濃度20ppmに達した本件オゾン水のオゾン濃度がゼロになるまでに32時間以上要したのに対し、比較対象となるオゾン水のうち最も長くかかった両側磁気オゾン水のオゾン濃度は13ppmからゼロになるまでの時間は略3.5時間しか要しなかった。したがって、本件オゾン水は両側磁気オゾン水に比べて10倍近い時間オゾンを含有していたことになる。換言すると、両側磁気オゾン水に比べて本件オゾン水は、同じ時間をかけて同量のオゾンを注入し溶解させたオゾンを10倍近い時間保持していたことになる。本件オゾン水のオゾン溶解度の高さを端的に示している。
【0044】
(オゾン気泡の粒径測定実験)
表3及び4を参照しながら、本件オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径測定実験について説明する。表3及び4は、本件オゾン水に含まれるオゾン気泡の粒径分布を示す(左側縦軸参照)。本測定実験では、オゾン濃度とオゾン濃度保持時間との関係から4種類の本件オゾン水を測定対象とした。まず、オゾン濃度を3ppmと14ppmの2種類とし、次に、各濃度それぞれ当該濃度に達した直後のオゾン水(以下、各々「3ppm直後オゾン水」「14ppm直後オゾン水」という)と、当該濃度に達した後その濃度を15分間維持させたオゾン水(以下、各々「3ppm維持オゾン水」「14ppm維持オゾン水」という)と、に分けた。つまり、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」「14ppm維持オゾン水」の4種類が、本測定実験に係る測定対象である。ここで、本測定実験に使用した本件オゾン水の原水には、水道水を0.05μm(50nm)の微粒子絶対濾過の逆浸透膜で濾過して得た純水を用いた。本実験で純水を得るために使用した装置は、セナー株式会社製超純水装置(型名:Model・UHP)である。水道水には50nm以上の不純物(たとえば、鉄分やマグネシウム)が含まれているため、濾過してない原水から生成したオゾン水を測定対象としても、そこに含まれる不純物を測定してしまい測定誤差が生じかねないので、濾過によって予め不純物を取り除いておくことによってオゾンの気泡粒径の正しい測定ができるようにするためである。水道水以外の原水、たとえば、井戸水や河川水についても同じことがいえる。オゾン気泡の粒径測定に使用した測定器は、動的光散乱式粒径分布測定装置(株式会社堀場製作所(HORIBA,Ltd):型式LB500))である。原水から不純物を濾過せずともオゾン気泡の粒径を正しく測定できる手段があれば、その手段を用いて測定可能であることはいうまでもない。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
まず、表3に基づいて、3ppm直後オゾン水と3ppm維持オゾン水について考察する。表5右端のグラフが3ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが3ppm維持オゾン水を示している。3ppm直後オゾン水は、1.3μm(1300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、3ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0050μm(5.00nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0048】
次に、表4に基づいて14ppm直後オゾン水と14ppm維持オゾン水について考察する。表6右端のグラフが14ppm直後オゾン水を示し、同じく左端のグラフが14ppm維持オゾン水を示している。14ppm直後オゾン水は、2.3μm(2300nm)〜6.0μm(6000nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。他方、14ppm維持オゾン水は、0.0034nm(3.40nm)〜0.0058μm(5.80nm)の粒径を持ったオゾン気泡を含有していることが分かった。
【0049】
上記実験から明らかになった第1の点は、同じ濃度を持ったオゾン水であっても、当該濃度に達した直後のオゾン水(直後オゾン水)と当該濃度を所定時間維持したオゾン水(維持オゾン水)とでは含有されるオゾン気泡の粒径(以下、「気泡粒径」という)が異なるということである。3ppmオゾン水の場合、直後オゾン水の気泡粒径最小値は、維持オゾン水の気泡粒径最大値の、260倍(1300/5.0)の大きさを持っている。同様に14ppmオゾン水の場合は、約400倍(2300/5.8)の大きさを持っている。つまり、当該濃度を所定時間維持すること、すなわち、被処理水であるオゾン水を循環させることによって気泡粒径を小さくすることができるということである。気泡粒径が1000nm以下であること、好ましくは500nm以下であること、さらに好ましくは気泡粒径50nm未満のオゾン気泡であればより安定して水溶液中に浮遊させることができる。本願発明に係るオゾン水処理方法によれば、生成されるオゾン気泡の粒径Rが、50nm未満(0<R<50nm)のオゾン気泡を含有するオゾン水、すなわち、溶解度の高いオゾン水を得られることが分かった。含有するオゾン気泡が50nm〜1000nmのオゾン水は、上記した含有するオゾン気泡の粒径50nm未満のオゾン水を生成する過程で得ることができる。すなわち、循環させることなく生成したオゾン水や循環させる時間を短くしたオゾン水は、循環させて生成したオゾン水や循環時間の長いオゾン水に比べて、より粒径が大きいから、必要な粒径に併せて循環の有無や循環時間を調整するとよい。また、これら以外にも、循環系の水圧やベンチュリ管に作用させる磁石の強弱、供給オゾンの濃度や供給量、その他、生成する際の雰囲気等により変動することが考えられる。これが、実験から明らかになった第2の点である。なお、本実験によれば、オゾン気泡の粒径Rの実測最低値は3.4nmであり、それ以下の値は計測されていない。計測されないのは測定装置の測定能力の限界に起因すると思われる。他方、オゾン気泡の粒径Rは、濃度達成直後に比べ濃度維持後の方が小さくなっていることから、粒径小型化の延長線上には限りなくゼロに近い粒径Rを持ったオゾン気泡が存在しうることが容易に想像できる。
【0050】
(pH測定実験)
なお、上記4種類のオゾン水、すなわち、「3ppm直後オゾン水」「3ppm維持オゾン水」「14ppm直後オゾン水」及び「14ppm維持オゾン水」についてpH測定実験を行った。その結果は、表5及び6に線グラフで示してある(右側縦軸参照)。いずれのオゾン水についても、オゾン溶解の前後においてpH7.3前後を示した。すなわち、オゾン溶解は原水のpHにほとんど変化を与えないことがわかった。井戸水や水道水は概ね中性(pH6.5〜7.5)を示すことから、気液混合方式によって生成した本件オゾン水は、pHを調整するための添加物を添加しなくても中性を示すことがわかった。もっとも、原水がアルカリ性である場合は、オゾン溶解がオゾン水のpHを変化させないことからアルカリ性のオゾン水が生成される場合もあり得よう。
【0051】
上記実験結果を総括する。上記実験対象となった本件オゾン水は、何ら添加物を加えることなく原水にオゾンを混合させるという気液混合によって生成されたものである。さらに、オゾン溶解度が高いため常圧下においても容易にオゾンが脱気しない。したがって、本件オゾン水を使用すれば、半導体基板に悪影響を与えることなく、かつ、効率のより洗浄効果を得ることができる。
【0052】
(レジスト膜洗浄実験)
図10に示す処理槽53を簡略化した実験装置を作成し、オゾン水Wを用いたレジスト膜洗浄(剥離)実験を行った。洗浄実験は、2種類のシリコンウエハ基板を用いて行った。一方のシリコンウエハ基板(以下、「試料基板1」という。)は、シリコンウエハ基板上にノボララック系フォトレジスト膜を塗布後、120℃で20分間焼成したインプラ加工処理済みの基板である。試料基板1の大きさは25mm×25mmであり、フォトレジスト膜の膜厚は1μmであった。試料基板1は、試料基板1−1〜1−5までの5枚を試料とした(表5参照)。また、他方のシリコンウエハ基板(以下、「試料基板2」という)は、シリコンウエハ基板上にノボララック系フォトレジスト膜を塗布後、160℃で20分間焼成した基板である。試料基板2にはインプラ加工処理を施していない。試料基板2の大きさは25mm×35mmであり、フォトレジスト膜の膜厚は同じく1μmであった。試料基板2は、試料基板2−1〜2−6までの3枚を試料とし、試料基板2−1−〜2−3までをオゾン水Wの、試料基板2−4〜2−6までを比較用オゾン水の、それぞれ対象とした(表6参照)。比較用オゾン水が含有するオゾン気泡の粒径は、1μm以上と推定される。オゾン水Wの原水は水道水であり、オゾン水Wに含有されるオゾン気泡の粒径Rは、0<R≦50nmであった。オゾン水Wを貯留した処理槽(図示を省略)内に各試料基板を浸漬させた上で、その中央部付近に水圧約0.1MPaのオゾン水Wを噴出した。オゾン水Wの温度変化及び剥離速度等は、表5及び表6に示すとおりである。なお、オゾン(オゾンガス)発生量を50g/Nmとした結果、溶存オゾン濃度は、表5及び表6に示すとおり29〜27mg/L(g/Nm)となった。
【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
まず、表5を参照しながら、試料基板1の実験結果について検討する。オゾン水温度が7℃のときの膜剥離速度(膜溶解速度、膜洗浄速度)は、0.003μm/分であったことから、膜厚1μmのレジスト膜を除去するためには333時間以上を要することが分かった(試料基板1−5)。次に、オゾン水温度を35℃とすると膜剥離速度は0.04μm/分(除去まで約25分)に(試料基板1−4))、さらに、同じく50℃とすると0.4μm/分(除去まで約2分30秒)に(試料基板1−3)、まで速まった。さらに、オゾン水温度を60℃まで上昇させると膜剥離速度が1.1μm/分(除去まで約55秒)となり、除去時間が1分を切ることが確認できた(試料基板1−2))。温度水温を70℃まで上昇させたときの膜剥離速度は、1.9μm/分(除去まで約32秒)であった(試料基板1−1)。これらのことから、試料基板1については、オゾン水温度を50℃以上とすることで充分に実用性があることが分かった。
【0056】
次に、表6を参照しながら、試料基板2の実験結果について検討する。オゾン水温度が6℃のときの膜剥離速度(膜溶解速度、膜洗浄速度)は、0.025μm/分であったことから、膜厚1μmのレジスト膜を除去するためには40時間以上を要することが分かった(試料基板2−3)。ほぼ同条件下における試料基板1と比べて除去時間が大幅に短くなっているのは、インプラ加工の有無による差であろう。次に、オゾン水温度を45℃とすると膜剥離速度は1.85μm/分(除去まで約32秒)に(試料基板2−2))、さらに、同じく75℃とすると3.6μm/分(除去まで約16秒)に(試料基板2−3)、まで速まった。これらのことから、試料基板2については、オゾン水温度を45℃以上とすることで充分に実用性があることが分かった。もっとも、試料基板2については、たとえば、同じオゾン水を用いて除去時間を1分前後に設定するなら、45℃以下(たとえば、35℃以上)であっても、充分に実用性があることが推測できよう。
【0057】
比較基板2−6の剥離速度は、130mg/Lの高濃度オゾン水で洗浄していながら0.002μm/分(7℃)であり、ほぼ5分の1のオゾン濃度(27mg/L)のオゾン水Wで洗浄した試料基板2−3の剥離速度と比べて10倍(0.025÷0.002)以上となることが分かった。同様にして比較基板2−5の剥離速度を試料基板2−2の剥離速度と比べると、ほぼ3倍(1.85÷0.65)の開きがあり、比較基板2−4の剥離速度を試料基板2−1の剥離速度と比べるとほぼ2.5倍(3.8÷1.5)の開きがあることが分かった。これらの結果から、剥離速度を速めるためにはオゾン気泡の粒径を小さくすることが極めて重要であることが分かった。さらに、オゾン発生量を50g/Nmとした結果、溶存オゾン濃度は、表5及び表6に示すとおり29〜27mg/L(g/Nm)となったことは前述したとおりであるところ、このオゾン発生量を高めることによって、今回の実験では行っていないが、オゾン水Wの溶存オゾン濃度をさらに高めることによってさらに効果的に洗浄することが可能になろう。すなわち、オゾン発生量を200g/Nmとしたり、350g/Nmとしたりすることによって、表6に示す130mg/L又はそれ以上の溶存オゾン濃度を実現可能であり、基板にダメージを与えない範囲において溶存オゾン濃度が高いほうが剥離速度が速まると考えられるからである。
【0058】
以上のとおり、含有されるオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を用いてシリコンウエハ基板(半導体基板)を洗浄すると、特に、オゾン水の温度を高めることにより、フォトレジスト膜を効率よく剥離できるであることが分かった。
【0059】
(実験結果による推察)
含有されるオゾン気泡の粒径Rが0<R≦50nmであるオゾン水を用いた半導体基板洗浄が極めて好適であることの因果関係を、発明者らは、次のとおり推察する。図12乃至14を参照しながら、説明する。図12に示すオゾン気泡Lzの粒径Dは、たとえば、500μmとする。オゾン気泡L′zの粒径D′は、たとえば、700μmとする。オゾン気泡L′zはオゾン気泡Lよりも体積が大きいので、その分オゾン水Wから受ける浮力が大きいため水面に向かって上昇する。このためオゾン気泡L′zはレジスト膜Rと接触する可能性が低く、そのため洗浄にはほとんど役に立たない。他方、オゾン気泡Lzは、オゾン水Wから受ける浮力が比較的小さいためオゾン水W中に浮遊する確率が高く、したがって、レジスト膜Rと接触する可能性がある。レジスト膜Rと接触したオゾン気泡Lz内のオゾンは反応してレジスト膜Rの剥離に貢献する。
【0060】
図13に示すオゾン気泡Szの粒径Rは、50nm以下、そのほとんどが30nm以下であるから、オゾン水Wから受ける浮力は極小さい。このため、オゾン水Wの水面に上昇しようとするオゾン気泡Szはほとんどない。このため、レジスト膜Rと接触する機会が図13に示すオゾン気泡Lzと比べて格段に多い。しかも、通常時のオゾン気泡はほぼ球形であるから、接触による変形はあるとしてもレジスト膜Rとの接触は点接触に近い。したがって、レジスト膜Rに接触したオゾン気泡Lzの接触面積と、同じくオゾン気泡Szの接触面積との間に大きな差はない。図12と図13を比較すれば直ちに理解されるように、レジスト膜Rとの接触面積に大差がないのであれば、図13に示すオゾン気泡Szのほうが図12に示すオゾン気泡Szよりも同時接触可能な気泡数が多いだけ総接触面積が広いことになる。しかも、図14に示すように、レジスト膜Rには、たとえば、60nm程度の幅寸法dを持った凹部Gがあり、その凹部G内においてレジスト膜Rの側壁と反応させるためには、凹部G内にオゾン気泡を進入させる必要がある。60nm程度の幅寸法dを通過できるオゾン気泡は、図12に示すオゾン気泡Lzではなく図13に示すオゾン気泡Szである。このように、オゾン水Wが含有する粒径50nm以下のオゾン気泡であれば、レジスト膜Rの凹部や凸部の側壁と接触して反応可能であるから、洗浄効果が飛躍的に高いのである。
【符号の説明】
【0061】
1,51 半導体基板洗浄装置
3 洗浄槽
7 洗浄機構
201 オゾン水生成装置
202 貯留タンク
203 オゾン供給装置
204 循環構造
205 気液混合構造
206 溶解促進槽
207 温度保持構造
231 ベンチュリ管
232 上流側大径路
233 絞り傾斜路
234 小径路
235 開放傾斜路
236 下流側大径路
239 オゾン供給パイプ
243 磁気回路
245 一方の磁石片
246 他方の磁石片
265 気液分離装置
267 オゾン分解装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加物を含めない方法によって生成された超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水を用いて被処理物を処理することを特徴とするオゾン水処理方法。
【請求項2】
前記被処理物の処理前の前記オゾン水を加熱することを特徴とする請求項1に記載のオゾン水処理方法。
【請求項3】
前記被処理物が半導体基板であること特徴とする請求項1又は請求項2記載のオゾン水処理方法。
【請求項4】
添加物を含めない方法によって超微細粒径のオゾン気泡を含有するオゾン水を生成するオゾン水生成装置と、このオゾン水生成装置において生成したオゾン水を用いて被処理物を処理する処理装置とを備えることを特徴とするオズン水処理装置。
【請求項5】
前記被処理物の処理前のオゾン水を加熱するための加熱手段を設けてあることを特徴とする請求項4に記載のオゾン水処理装置。
【請求項6】
前記処理装置は、半導体基板よりなる被処理物を処理することを特徴とする請求項4又は請求項5記載のオゾン水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−66389(P2011−66389A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93490(P2010−93490)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【分割の表示】特願2007−73040(P2007−73040)の分割
【原出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(503428747)
【出願人】(503428471)
【Fターム(参考)】